説明

光走査型顕微鏡およびそれの使用

【課題】少なくとも2つの照明チャネルへのレーザ光の可変的分割のための装置が装備されていて、同じまたは異なった試料領域へ試料に対して共通の照明が行われる、少なくとも1つの照明モジュールを有する光走査型顕微鏡。
【解決手段】光学素子による制限なくフレキシブルな光源の分割、偏光ビームスプリッタ24、前置接続された回転可能なλ/2板または個々のレーザ別に偏光の回転を可能にするその他素子(液晶、ポッケルセル、ファラデー回転子…)による、光源の2光路への分割

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0001】
発明の作用態様および長所の説明
2つまたはそれ以上の走査モジュールの本発明に基づく使用は、特に次の方法の組み合わせには有意である(列挙された文献はいずれも、共用レーザモジュールとの組み合わせシステムについて明確に特徴付けしている。それは、単独システムに比べてコスト、再現性およびフレキシビリティが明らかに最適化されるとしているからである):
【0002】
1. 撮像/迅速走査における方法の組み合せ(例えば、高分解性の点像スキャナおよび迅速型ディスクスキャナ)
Egner他がJ. Microsc. 2002、206巻、24〜32ページでスピニングディスクとマルチフォーカル多光点顕微鏡の効率および分解能を比較している。プレパラートの如何によるが、両システムとも有意としている。
StephensおよびAllan他が、Science 2003、第300巻、82〜86ページに生体細胞撮影用の様々な光学顕微鏡および共焦点顕微鏡の技術的長所を記述している。高価値システムの場合、検出方法に違いがあるものの殆どの場合光源としてレーザが使用されている。
【0003】
2. 撮影/マニピュレーションにおける方法の組み合せ(例えば、アンケージング/NLOのためのUV結合)
Knight他が、Am J. Physiol. Cell Physiol、2003、第284巻C、1083〜1089ページにレーザによる光活性化のもとでのCa2+撮影のことを記述している。レーザは撮像にも利用できるとしている。
Denkが、J. Neurisc. Methods 1997、第72巻、39〜42ページに薬剤遊離用としてパルス化した水銀蒸気灯の使用について記述している。ここではレーザが利用されていて、位置設定および効率の点で明白な改良が得られるとしている。
WangおよびAugustineが、Neuron 1995、第15巻、755〜760ページにレーザ光による薬剤の局部遊離を伴う迅速Ca2+撮影のことを記述している。レーザは撮像にも利用できるとしている。
【0004】
3. 撮影/分光法FCSにおける方法の組み合せ(同じVISレーザの使用)
Quing他が、Appl. Opt. 2003、第42巻、2987〜2994ページに水中FCSによる細菌検査のことを記述している。レーザは画像生成成分もFCS成分も供給するとしている。
Bigelow他が、Opt. Lett. 2003、第28巻、695〜697ページにコンフォカール蛍光分光法、蛍光異方性法による腫瘍細胞の検査について記述している。レーザは画像生成成分も分光法成分も供給するとしている。
【0005】
4. 複数顕微鏡装置での平行的撮像(同一パルスNIRレーザの使用)
McLellan他が、J. Neurosc. 2003、第23巻2212〜2217ページにアミロイド斑表示のための生体内多光子顕微鏡法の適用について記述している。顕微鏡構造は特に動物モデル用として適合化されている。複数台数とレーザとの共同使用で検出量は明らかに増大するとしている。
Zipfel他が、Proc. Natl. Acad. Sci USA 2003、第100巻、7075〜7080ページに多光子顕微鏡法およびSHG顕微鏡法による生体組織内の自家蛍光検査について記述している。顕微鏡構成は特殊適合化されていてあまり汎用タイプではない。第2構造によりフレキシビリティが増すとしている。
【0006】
5. 共焦点顕微鏡法とTIRF顕微鏡法の組み合せ
PollardおよびAppsが、Ann. N. Y. Acad. Sci. 2002、第971巻、617〜619ページにTIRF顕微鏡法によるエキソサイトーシスおよびイオン運搬についての検査のための新技術のことを記述している。
RuckstuhlおよびSeegerが、Appl. Opt. 2003、第42巻、3277〜3283ページにTIRF顕微鏡法の新型ミラー対物レンズによるナノ粒子および分子の共焦点、分光法検査について記述している。特殊な光学系であり、あまり汎用タイプの構造ではない。第2撮像構造によりフレキシビリティが増すとしている。
Tsuboi他が、Biophys. J. 2002、第83巻、172〜183ページにレーザ顕微鏡強制法およびTIRF顕微鏡法による内分泌細胞の検査について記述している。撮影用レーザはTIRF励起にも利用できるとしている。
【0007】
この関係の中で、レーザモジュールにおける光路はそれぞれ、使用照明モジュール間で無段の/可変的なビーム分割が可能になるように形成することが有利であるし、あるいは必要でさえある。装置費用の引き下げおよびそれによるコスト節減には、レーザモジュールの使用台数を1台に限定するのが有意である。
【0008】
可変的なビーム分割型式は、光源の個別波長または波長領域を、その他の波長に影響を与えることなく様々な光路に接続させて、同時に個別にラインの選択およびビームの減衰を確保するという目的に寄与している。これは以下のような様々な方法で行うことができる :
【課題を解決するための手段】
【0009】
1. 光学素子による、少なくとも2つに分離された光路への光源の分割。光学素子における分割比はアプリケーションの要求に対して制限なくフレキシブルに適合させることができる。その場合、両光路には方法の組み合せ1〜4の1つが適用される、あるいはそれに代わり、保有レーザ出力をアプリケーションの要求に適合させるため、
a.少なくとも1つのファイバ結合により、
b.レーザ線別の選択的ビーム減衰のための少なくとも1つのAOTFにより
1つの光路を光の落降方向へ誘導する。
【0010】
2. 偏光ビームスプリッタ、前置接続された回転可能なλ/2板または個々のレーザ別に偏光の回転を可能にするその他素子(液晶、ポッケルセル、ファラデー回転子…)による、光源の2光路への分割。λ/2板を通じて準無段に設定可能なEベクトルの方位(必要な場合は各レーザ別)により、偏光ビームスプリッタにおける分割比は準無段に調整可能であり、したがって、
a.少なくとも1つのファイバ結合により、
b.レーザ線別の選択的ビーム減衰のための少なくとも1つのAOTFにより
アプリケーションの要求にフレキシブルに適合させることができる。
【0011】
3. その反射特性または透過特性が手動式または動力式傾倒によって変更される1つまたは複数のダイクロイックビームスプリッタにより行なわれる、光源の2光路への分割。
シフト式の実施を構想とする、角度変更(例えば、45°から50°)がスペクトル特性に変化をもたらす。それは、シフト式(ファブリー・ペロ干渉計にほぼ一致)では波長に変化が生じるからである。それにより、建設的または破壊的な干渉領域も移動するが可変的に調整可能であり、したがって分割比は、
a.少なくとも1つのファイバ結合により、
b.レーザ線別の選択的ビーム減衰のための少なくとも1つのAOTFにより
アプリケーションの要求にフレキシブルに適合させることができる。
【0012】
4. 音響光学素子またはその他回折素子による、光源の2光路への分割。その場合、回折効率は次数0との比率で次数(+)1または(-)1に可変的に調整することができ、したがって次数0と次数(+)1または(-)1間の分割比は、
a.少なくとも1つのファイバ結合により、
b.レーザ線別の選択的ビーム減衰のための少なくとも1つのAOTFにより
アプリケーションの要求にフレキシブルに適合させることができる。
【0013】
5. 迅速に切換可能なミラーによる、光源の2光路への分割。その場合、切換頻度は撮像速度相応の範囲内とする。さらに、個別光路へ送られるエネルギーに影響を与えるため、ミラーの切換頻度に同期させた迅速切換可能なビーム減衰装置を液晶フィルタを通じて各レーザ用に統合させることができる。
【0014】
6. 上記5と同様であるが、ビーム減衰装置をレーザに後続配置して、音響光学素子またはその他回折構成素子により行う光源分割。
【発明の効果】
【0015】
方法1〜4の長所は、光路切換時に部品を動かす必要なく、したがって構成体の動力学的性能が完全に維持されるところにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図面に基づく説明
以下では図1〜4を手掛かりにライン走査式RT(リアルタイム)スキャナについて詳細に説明する。
図1は、主要部が5つのコンポーネント、すなわち、レーザ走査型顕微鏡検査のための励起光を生成する光源モジュール2、励起光をコリメートして試料上の走査のため然るべき偏向を行なう走査モジュール3、走査モジュールによって用意された走査ビームを顕微鏡光路内で試料の方向に向ける顕微鏡モジュール4および試料からの光線を受け止め検出する検出モジュール5から成るレーザ走査型顕微鏡1の模式図である。その場合検出モジュール5は、図1に描かれているように、スペクトル別のマルチチャネル型に構成することができる。
点状走査式のレーザ走査型顕微鏡に関する一般事項についてはDE 19702753A1が参考になり、したがってその内容は本明細書の構成部分でもある。
【0017】
光源モジュール2は、レーザ走査型顕微鏡検査に適した照明光、したがって特に蛍光を誘起し得るビームを生成する。適用法に対応させるため、光源モジュールは当目的用に複数の光源を有している。図示された実施態様では光源モジュール2に2つのレーザ6および7が配備されている。それらの後にはそれぞれ光バルブ8および減衰器9が接続されており、それらはビームを結合ポイント10を通じて光ファイバ11に連結させている。光バルブ8は、レーザユニット6または7のレーザ自体の作動を遮断しなくてもビームを遮断させることのできるビーム偏向器として機能する。光バルブ8は、例えば、ビーム遮断のためレーザビームを光ファイバ11へ連結する手前で、図示されていない光の落下方向に偏向させるAOTF(音響光学フィルタ)として形成されている。
【0018】
図1のモデル例では、レーザユニット6は3つのレーザB、C、Dを有しているが、それに対しレーザユニット7はレーザAを1つ持つのみである。したがって、図の6と7は単一波長用レーザと多種波長用レーザの組み合せモデルであり、個別に、または共同で1つまたは複数のファイバに連結されている。複数ファイバを通じてビームを同時連結することも可能であるが、その場合ではビームは後に、すなわち適合光学系の通過後にカラー結合器によって混合される。このようにして、励起光用に種々様々な波長または波長領域を使用することができる。
光ファイバ11に通されたビームは、移動式のコリメーション光学系12および13によりビーム結合ミラー14,15を通じて合一化され、ビーム形成ユニット内でビームの特性が変更される。
【0019】
コリメータ12、13は、光源モジュール2から走査モジュール3へ送られるビームが無限大光路にコリメートされるように作用する。これはそれぞれ、(図には描かれていない)中央制御ユニットの制御下のもと光軸に沿って移動することでフォーカシング機能を発揮する個別レンズで行うのが有利である。コリメータ12、13とそれぞれの光ファイバ末端との距離は変更可能なようになっている。
【0020】
ビーム形成ユニットについては後にさらに詳しく説明するが、これは、ビーム結合ミラー14、15の後方に位置する回転対称なガウス型プロフィールのレーザビームから、もはや回転対称でない、長方形型照明フィールドの形成に適した横断面を持つ線形ビームを生成する。
線形ビームとも言われるこの照明光は、励起光として用いられ、メインカラースプリッタ17を通じてスキャナ18に誘導される。メインカラースプリッタについては後ほど詳しく述べるので、ここでは顕微鏡モジュール4から戻ってきた試料光を励起光から分離させる機能を持つことだけを指摘しておく。
【0021】
スキャナ18は線形ビームを1軸または2軸方向に偏向させるので、ビームは走査対物レンズ19および顕微鏡モジュール4の鏡筒レンズ、対物レンズを通って、プレパラートまたは試料内にある焦点22に集束する。その場合光学結像は、試料が励起光により焦点で照明されるように行なわれる。
線形フォーカスで励起されたこのような蛍光ビームは、顕微鏡モジュール4の対物レンズ、鏡筒レンズおよび走査対物レンズ19を通ってスキャナ18に戻るので、スキャナ18に向かっての戻り過程の方向では再び定常ビームになっている。したがって、スキャナ18は蛍光ビームをデスキャンするとも言われる。
【0022】
メインカラースプリッタ17は、励起光とは別な波長領域にある蛍光ビームを通すことができるので、蛍光ビームは検出モジュール5の転向ミラー24で転向させた後分析することができる。検出モジュール5は、図1の実施態様では複数のスペクトルチャネルを有している。すなわち、転向ミラー24のほうから来た蛍光ビームはサブカラースプリッタ25により2つのスペクトルチャネルに分割される。
【0023】
各スペクトルチャネルは、試料23に対して共焦点結合あるいは部分共焦点結合を実現するスリット絞り26を有しており、その大きさがビームの検出を可能にする焦点深度を決定する。したがって、スリット絞り26の幾何学構造は、蛍光ビームの検出がなされる(厚みのある)プレパラート内の切断面を決定づける。
スリット絞り26の後方には、さらに検出モジュール5に到達した歓迎されざる励起光をブロックするためのブロックフィルタ27が配置されている。特定深度の切断面に由来する、このように分離され扇形に広がった線形ビームは、次に然るべき検出器28によって分析される。上記のカラーチャネルと同様に、スリット絞り26a、ブロックフィルタ27aおよび検出器28aを持つ第2スペクトル検出チャネルも構成されている。
【0024】
検出モジュール5における共焦点スリット開口の使用はモデル例に過ぎない。もちろん、単点型スキャナの実現も可能である。その場合ではスリット絞り26、26aはホール型絞りに代えられ、ビーム形成ユニットは省くことができる。因みに、そのような構造様式にはすべての光学系が回転対称に構成される。もちろん、単点式の走査および検出に代えて、後に図3および4を手掛かりに改めて説明する点雲形式またはニポーディスク形式のコンセプトなど、原則として任意の多点型装置を使用することもできる。ただし、スキャナの通過時には複数の試料点が平行して捕捉されるので、検出器28はスポット分解能を有していることが重要である。
【0025】
図1から分かるように、可動式、すなわち移動可能なコリメータ12および13の後方にあるガウス光線束はビーム結合ミラー14、15形式のステップ型ミラーを通じて合一化され、続いて、図示された共焦点スリット絞り付き構造様式の場合では、長方形の横断面を持つ光線束に変換される。図1の実施例では、ビーム形成ユニット内には円筒型テレスコープ37が使用されていて、その後ろには非球面ユニット38、さらに円筒型光学系39が配置されている。
【0026】
ビーム変形後では、ビームはプロフィール平面にはほぼ長方形のフィールドを照らし出す。その場合フィールドの長軸に沿った強度分布はガウス形ではなくボックス形である。
非球面ユニット38を持つ照明装置は、鏡筒レンズと対物レンズ間にあるひとみを均一充填させるのに用いられる。それによって、対物レンズの光学分解能を完全に発揮させることができる。したがって、このバリエーション法は単点走査式または多点走査式の顕微鏡システム、例えばライン走査システムにも有用である(後者の場合、当該軸に加えそれ以外にも、試料上または試料中にフォーカシングされる)。
【0027】
例えば線形に整えられた励起光がメインカラースプリッタ17の方向に偏向される。当カラースプリッタは、好ましい実施態様では分割ミラーとして、つまり本発明でもその内容を包括的に取り入れているDE
10257237 A1記載のスペクトル中性な分割ミラーとして形成されている。したがって、「カラースプリッタ」の概念には非スペクトル的に作用する分割システムの意が含まれている。記述のスペクトル非依存型カラースプリッタの代わりに、均一型中性スプリッタ(例えば50/50、70/30、80/20タイプなど)またはダイクロイックスプリッタを使用することができる。それにより、適用別に選択することが可能になるので、メインカラースプリッタとしては、交換可能な個別スプリッタを含む、例えば然るべきスプリッタ切換ダイヤルにより簡易交換のできる機構の備わっているのが好ましい。
【0028】
例えば、反射、ストークス/反ストークスラマン分光法、高次数のコヒーレントラマンプロセスや、第2高調波発生、第3高調波発生、和周波混合発生などの一般的パラメトリック非線光学プロセス、2光子、多光子吸収および蛍光におけるコヒーレントビーム、すなわち特に方向づけられたビームを検出すべき場合はダイクロイックメインカラースプリッタが有利である。これらの方法のうち、非線光学分光法のいくつかは、コリニヤ重畳をなす2つまたはそれ以上のレーザビームの使用を必要とする。この場合、図示されているような複数レーザビームの結合が特に有利であると実証されている。原則的には、蛍光顕微鏡検査で広く普及しているダイクロイックビームスプリッタであれば使用可能である。また、ラマン顕微鏡検査には、レイリー散乱成分の抑制のため検出器の前にホログラフィックノッチ・スプリッタまたはフィルタを設置するのが有利である。
【0029】
図1の実施態様では、励起光または照明光はモータ制御式ズーム光学系41を通じてスキャナ18に送り込まれる。ズーム倍率は当方式で適合化させることができ、走査される視野は特定の調整領域内で連続的に変更することができる。ズーム光学系としては、連続的同調過程における焦点位置および結像倍率の適合化のあいだ、ひとみ位置が維持されたままであるようなタイプが特に有利である。
図1に矢印で示されたモータによるズーム光学系41の自由移動度は、結像倍率、焦点位置、ひとみ位置の3つのパラメータの適合化に想定されている自由度の数値に精確に一致している。その出力側のひとみに固定式絞り42の配置されたズーム光学系41が特に好ましい。絞り42を実地で簡単に実現するには、スキャナ18鏡面幅の制限によって構成することもできる。
【0030】
ズーム光学系41を持つ出力側絞り42により、ズーム倍率の設定如何に拘わらず常に一定したひとみ直径を走査対物レンズ19上に結像させることが可能になる。このように、ズーム光学系41を任意に設定した場合でも対物レンズのひとみは依然として完全に照らし出されたままである。スキャナ18領域での願わしくない散乱光発生事態の阻止には独自型絞り42の使用が好ましい。ズーム光学系41と共同作用をする円筒型テレスコープ37は、同じくモータ作動式であり、非球面ユニット38の前に配置されている。図1の実施態様ではコンパクト構造の理由からこれが選ばれているが、そのようにする必要はない。
【0031】
ズーム倍率1.0未満が望まれる場合、円筒型テレスコープ37は自動的に光学光路内に旋回挿入される。これは、ズーム対物レンズ41が縮小された場合に開口絞り42への照明が不完全になるのを防止する。したがって、旋回挿入の可能なこの円筒型テレスコープ37により、ズーム倍率1未満の場合でも、すなわちズーム対物レンズ41の設定の如何に拘わらず、対物レンズひとみの位置では常に一定長の照明光線の到達が保証される。それにより、単式視野ズームに比較して、照明光におけるレーザ出力損失が避けられる。
円筒型テレスコープ37の旋回挿入時には、照明光線による画像明度の急変が避けられないので、画像明度を一定に保つため、(図には描かれていない)制御ユニットでは、円筒型テレスコープ37が作動している場合、スキャナ18の送出し速度または検出モジュール5における検出器の増幅係数がそれ相応に適合するような設計がなされている。
【0032】
図1のレーザ走査型顕微鏡では、モータ作動式ズーム光学系41およびモータにより操作切換可能な円筒型テレスコープ37のほか、検出モジュール5でも遠隔制御可能な調整素子が設置されている。例えば、色波長誤差の補正のため、スリット絞りの前に丸型光学系44と円筒型光学系39が、検出器28の直前に円筒型光学系39が設置されており、それらはモータによりそれぞれ軸方向に移動できるようになっている。
【0033】
加えて、補償のため補正ユニット40が配備されているが、それについては以下に簡単に説明する。
スリット絞り26は、前方配置の丸型光学系44、同様に前方配置の第1円筒型光学系39および後方配置の第2円筒型光学系と共に検出システム5のピンホール対物レンズを形成するが、この場合のピンホールはスリット絞り26によって実現される。システム内で反射した励起光の意図しない検出を避けるため、第2円筒型レンズ39の前にはブロックフィルタ27も設置されており、これは求める蛍光ビームだけを検出器28、28aに到達させるべく、それに適したスペクトル特性を有している。
【0034】
カラースプリッタ25またはブロックフィルタ27を取り換えて旋回挿入した場合、幾分かの傾斜誤差または楔角誤差が発生するのは避けられない。カラースプリッタは、試料領域とスリット絞り26間の誤差を、ブロックフィルタ27はスリット絞り26と検出器28間の誤差を持ち込む可能性がある。その場合に、スリット絞り26または検出器28の新たな位置調整が必要になることがないように、丸型光学系44とスリット絞り26の間に、すなわち試料と検出器28間の結像光路内に、コントローラの制御下で様々な傾斜位置に設定することのできるオプチカルフラットのプレート40が配置されている。オプチカルフラットのプレート40は、その目的のために然るべきホルダ内に位置調整可能なように設置されている。
【0035】
図2は、ズーム光学系41を利用すれば提供された最大限の視野SF内で如何にしてROI(観察対象領域)が選択できるかを示している。例えば、共振型スキャナの場合では必ず必要なことであるが、振幅に変化が起きないようにスキャナ18を持続的に制御すれば、ズーム光学系においてセットされた1.0以上の倍率により走査フィールドSFの光軸を中心として選択されるROI領域が狭められる。
共振型スキャナに関しては、例えばPawley著“Handbook of Biological Confocal Microscopy”Plenum
Press社1994年刊、461ページ以降に記述されている。
スキャナがフィールドを、光軸に対し、すなわち走査ミラーの定常位置に対し非対称に走査するように、スキャナの制御を行えば、ズーム作用との関連性から選定ROI領域の補正移動OFが得られる。既に触れたスキャナ18のデスキャン作用およびズーム光学系41の再通過により、検出器方向への検出光路における観察対象領域ROIの選択が改めて中断される。それにより、走査画像SF内のROI領域に対し任意の選択が可能になる。様々なROI領域の選択毎に画像を追加獲得することができ、それらを高分解性画像に合成することができる。
【0036】
選択ROI領域を光軸に対する補正分OFだけ移動させるのでなく、それに加えて回転もさせたい場合は、メインカラースプリッタ17と試料23間の光路のひとみに、周知のとおり画像フィールドに対して回転作用のあるアッベ・ケーニッヒプリズムを配置した実施態様が目的に適っている。この場合も検出器方向で作業の中断を行う。
【0037】
それにより、様々な補正シフトOFおよび様々な回転角を持つ画像が測定でき、続いて、例えば文献
“Three−dimensional and multidimensional microscopy ; Image
acquisition processing VII” Proceedings of SPIE第3919巻(2000年)、141〜150ページのGustafsson,
M.著“Doubling the lateral resolution of wide−field fluorescence microscopy using
structured illumination”に記載されているようなアルゴリズムに従って高分解性のある画像に修正することができる。
【0038】
図3は、ニポーディスク方式を実現するレーザ走査型顕微鏡1として考えられる別な構造様式を示している。図3では極端に簡略描画されている光源モジュールが、ミニレンズアレー65からメインカラースプリッタ17を通過して、例えばUS
6,028,306、WO 88 07695またはDE 2360197
A1に記載されているようなニポーディスク64を照明する。ミニレンズアレー65を通じて照明されたニポーディスクのピンホールは顕微鏡モジュール4内の試料に結像する。ここでも試料側の画像サイズを変更できるように、ズーム光学系41が設置されている。
ニポースキャナの場合、図1の構造様式からは変更部分があり、照明はメインカラースプリッタ17を通過させて行われ、検出光は反射分離される。さらに、ニポーディスク64による多点照明の場合では、それに対応した平行な走査が行われるように、図2に変更を加えて検出器28はスポット分解能を持つように作られている。
【0039】
そのほか、ニポーディスク64とズーム光学系41の間には、ニポーディスク64のピンホールを通り抜ける発散光を適当な束直径に変換させる、正の屈折力を持った然るべき固定型光学系63が配置されている。メインカラースプリッタ17は、図3のニポー式構造の場合では旧来型のダイクロイックビームスプリッタであり、したがってスリット状または点状の反射領域を持つ上記ビームスプリッタではない。
ズーム光学系41は上段で説明した構造様式に対応しているが、この場合はニポーディスク64があるため、もちろんスキャナ18は不要になる。しかし、図2を基に説明したROI領域の選択を行いたい場合は、これを設置することができる。同じことがアッベ・ケーニッヒプリズムについても言える。
【0040】
多点走査による別法が模式図として図4に示されているが、その方法では複数の光源がスキャナのひとみに対して斜めに照射される。この場合でもメインカラースプリッタ17とスキャナ18間での結像にズーム光学系41を使用することにより、図2に描かれたようなズーム機能を実現することができる。ひとみに共役な平面に様々な角度から光線束を同時入射することにより、光点が対象物平面に共役な平面に形成され、それがスキャナ18により同時に対象物フィールド全体のうちの一部領域上に誘導される。スポット分解性のあるマトリックス検出器28では部分画像全体の評価を通して画像情報が生成される。
【0041】
その他の実施態様としては、US 6,028,306に記載されているような多点走査があるが、その開示内容の中で関連事項は本発明に包括的に取り入れられている。ここでもスポット分解性のある検出器28を設置することができる。その場合では試料は多点光源によって照明されるが、それは、多点光源が実現されるようにマルチ開口プレートを照明する、マイクロレンズアレーの後続配置されたビームエキスパンダによってなされる。
【0042】
以降の図面では次の素子が描かれ、次の名称が使用されている(説明についてはEP 977069A1参照)。
光源としてのレーザ 1〜4またはA〜G、
レーザビーム転向のための転向ミラー US、
遮光装置としてのフラップまたはシャッタ V、
回転可能なλ/2板、
偏光分離器 PT、
光伝送用光ファイバ、
ファイバカップリング用のファイバ結合ポート、
減衰器 A(好ましくはAOTFまたはAOM)、
ビーム検出用モニタダイオード MD、
波長別の選択的ビーム検出のための検出器 PMT 1〜3、
透過ビーム検出のための検出器 T−PMT、
ピンホール PH 1〜4、
カラースプリッタ DBS 1〜3、
ピンホールへのフォーカシング用ピンホール光学系、
メインカラースプリッタ MDB、
放出用フィルタ EF 1〜3、
波長別調整のためのコリメータ、
スキャナ、
走査光学系または走査レンズ、
接眼レンズ、
鏡筒レンズ、
ビーム結合器、
対物レンズとスキャナ間のノンデスキャン検出器、
対物レンズ、
試料、
コンデンサ、
白色光源 HBO、
透過照明用のハロゲンランプ HAL、
テレスコープ光学系、
ズーム光学系、
照明光生成のためのビーム生成器、
円筒型テレスコープ、
円筒型光学系、
スリット、
ライン捕捉用のスリット絞り付き検出器、
迅速切換ミラー SS、
【0043】
図5には異なった波長を持つ4つのレーザ1〜4が描かれている。光の進行順序で言えば、それらの後にシャッタおよび回転可能なλ/2板が、直線偏光レーザビームから成る定義付けされた偏光平面の調整のために配置されている。レーザ1〜3は転向ミラーおよびダイクロイックスプリッタを通じて合一化され、レーザ4と同様ダイス型偏光ビームスプリッタに達する。その場合ダイクロイックスプリッタは、その透過特性または反射特性が偏光平面の回転に依存しないような特別な構造に作られていなければならない。
【0044】
レーザは、偏光平面のそれぞれの調整に対応して完全に、または一部だけ透過または反射し(レーザ4は本例では他のレーザと合一化せずに直接偏光分離器に導かれる)、選択したビーム減衰器(AOTF)を経由して光ファイバの方向へと到る。固定λ/2板は透過ビーム(VIS)または反射ビーム(V)の場合にAOTFにとって正しい偏光平面を設定する。
様々な顕微鏡システムに向けた光ファイバ結合ポートが配備されているが、それについては後々詳細に説明する。
【0045】
ダイス型偏光ビームスプリッタは2つの状態しか認識しない。透過光は常に取付板に平行に偏光し、反射光は常に取付板に垂直に偏光する。レーザ偏光(直線偏光、取付板に対して垂直)に対して22.5°の光軸を持つλ/2板をレーザの前に設置すれば、偏光面は45°回転する。これは、偏光ビームスプリッタが50/50スプリッタとして作用することを意味している。別な角度であれば別な分離状況になる。例えば45°のλ/2板では偏光面の回転は90°になり、理論的にはダイス型偏光スプリッタでは100%反射される。さらに、反射路(偏光分離器の位置)のAOTFで常に垂直偏光であれば、AOTFが正しく使用されていると言える。透過路では、「入射偏光AOTFが取付板に対して垂直」という条件を満たすためには偏光面は固定回転角90°が必要である。λ/2板に対する減結合はダイス型偏光スプリッタによって行われる。
【0046】
本例では走査型顕微鏡RTとスキャンマニピュレータが示されていて、それぞれに対し別な波長に分割できる。
これは、個々のλ/2板の電子コード化された然るべき回転によって無段で行われる。
それにより、また複数の独立した観察システムおよび/またはマニピュレーションシステムにより非常にバリエーション豊かな作動が可能である。
【0047】
図6にはAOMクリスタルが図解されている。これは入射光、例えば波長405 nmのレーザビームを相互に直交する、次数0と1の2つの直線偏光ビームに分割し、それぞれを異なった光路に結合させることができる。AOMの然るべき制御により成分比は変更される。
【0048】
図7には2つのレーザが示されていて、それらは転向ミラーとビーム結合器を通じて合一化されるが、それらの後方には次数0と1のビームに調整分割するためのAOTF
1が配置されている。
AOTFの1次回折成分である本来の作業ビームは、定義付けされた全スペクトル領域(例えば450 〜700 nm)に対してコリニヤの関係にある。0次成分はクリスタルのプリズム作用により分割される。したがって、当装置は特定波長にしか利用することができない(確認の必要がある)。1次数のスペクトル分割を補償する配置も当然考えられる(変形AOTFクリスタルに相当する逆分散第2プリズム)。
次数の異なる分岐における強度は波長別に調整可能である。設定制御電圧は1次数回折強度を制御し、残りは0次数のままである。
0次数のビームと1次数のビームは別々の観察システムおよび/またはマニピュレーションシステムに誘導することができる。
分岐路に、ここでは1次数側に、新たな分割が可能である別なAOTF 2を配備することができる。
【0049】
図8では、別な分岐路(0次数)に同様にAOTF 3が配備されている。例えば、AOTF 1がこの分岐路に完全な強度を持つ波長を導入すれば、AOTF
3により同じく分割を行うことができる。
図9では、照明部にはレーザAが装備されていて、その光は偏光面方位に関してはλ/2板により調整可能であり、ダイス型偏光スプリッタではそれに対応して反射または透過され、図示された光ファイバを通って調整下別々のシステムに、例えばLSM510およびラインスキャナRTに送られる。
レーザB〜Dの光は、図1と同様に合一化されるが、それぞれその前にλ/2板を通じて偏光面の方位が調整される。
光は偏光分離器において反射または透過して、それぞれ光ファイバを通じてラインスキャナRTまたはレーザE〜Gを持つ別な照明モジュールに到達する。
【0050】
レーザE〜Gの照明光路への連結は、例えば、当光路の接続、遮断を交互に行う迅速切換ミラーSSを通じてなされる。
切換ミラーは、反射セグメントと透過セグメントが交互に切換るダイヤルにすることもできる。
合一化のための固定式ビームスプリッタも同様に考えられる。
このように、レーザB〜Dの光はこの結合部によりレーザE〜Gの光と調整下で混合することができ、その後光ファイバを通じて、例えばLSM
510に達する。
【0051】
図10に描かれているのは、例えばDE特許に記載されているようなレーザ走査型顕微鏡であり、光源E〜G、走査モジュール(LSM)および顕微鏡モジュールが装備されている。
光源モジュールおよびマニピュレータモジュールから成るマニピュレーションシステムはビーム結合器を通じて連結される。マニピュレータのスキャナを通じて、例えば試料の照準領域をブリーチングしたり、生理学反応を惹起させることが可能である。その場合同時に、またはそれに代わり、LSM
510により撮像を行うことができる。
マニピュレータの光源モジュールには、例えばレーザAの後方には、レーザAの光を、上記と同様調整下で、それぞれ光ファイバを通じてマニピュレーション光路とLSM
510光路とに分割するダイス型偏光ビームスプリッタと共同で作用するλ/2板が配置されている。
【0052】
LSMには上記目的のためセパレート式の結合部が配備されている。なお、別々の結合部は(内部)ミラーおよびビームスプリッタを通じて改めて合一化される。
このようにレーザAは両システムが利用できる。
さらに、図11ではマニピュレータにおけるレーザB〜Dの比率もλ/2板およびダイス型偏光ビームスプリッタを通じて調整可能であり、そのほか、偏光分離器には光ファイバを通じてLSM方向へ到る別な連結路が存在する。その場合LSMには、例えば迅速切換可能なミラー(フラップ式ミラー)を通じて連結することができる。
このように、レーザB〜Gの光もレーザAの光と共に調整下で両光路に到達する。
【0053】
図12ではマニピュレータのほかにラインスキャナRTも設置されていて、そこでは光はビーム形成器を通ってライン状で顕微鏡光路に達する。
ここでは共通の光源モジュールが配備されているが、やはりλ/2板と偏光分離器とでシステムへの分割を行うことができる。
このようにレーザA〜Dの光は両システムに提供されている。これは、本質的な簡易化およびコスト節減を意味している。
もう1つの光源Eは、その波長がRTスキャナには必要ないものなので、例えばマニピュレータ用など、オプショナルな設置に限定される。
【0054】
図13には、RTスキャナおよび点像スキャナLSMが配置されているが、それらは共通のビーム結合器を通じて試料の同じ領域、または異なった領域からそれぞれの画像を生成することができる。
様々なレーザモジュールB〜D、A、G〜Eが配備されているが、それぞれ上記のように両システムに対して選択および調整の上、使用できるようになっている。
【0055】
図14では、下方および側方から連結される光路を切換ユニット(挿入可能なミラー)で切り換えることによりRTスキャナとマニピュレータとが選択的に、または交互に顕微鏡構成部へ連結される。
共通の光源が、上記と同様両システムに有効である。
【0056】
図15には、有利なことにそれぞれ複数のレーザから成る光源1および2の調整可能な結合が、例えば迅速切換ミラーSSによって行われることが示されている。レーザに対し、後続配置のλ/2板により少なくとも部分的にはその偏光に影響を与えることができる。共通の光路へ連結する前にその光成分に影響を与えるために行う、光源2からの光のλ/2板通過に関しては、光ファイバ通過後に初めて行うようにすることもできる。
共通光路の偏光分離器は、撮像および/またはマニピュレーションのための各走査装置用に設置された別々の照明モジュール1および2への再分割に用いられる。その場合、個別照明モジュールに達する光成分および強度は、有利なことに制御可能である。制御は、再分離された光路においてλ/2板の経由により、あるいはまた減衰器(AOTF)の利用により行われる。
【0057】
図16には図15と同様に、ただし光ファイバの経由はなく、例えばケーシングチャネル内のモジュール2の光がビーム結合器に導かれる経緯が描かれている。
【0058】
本発明は、迅速作業性のある共焦点レーザ走査型顕微鏡の適用可能性を大幅に拡大するものである。このような改良開発の重要性は、細胞生物学的に関する標準文献およびそこに記述されている細胞、副細胞の迅速な変化過程、さらには多数の色素を用いた検査方法を手掛かりに読み取ることができる。
例えば下記の文献が参考になる :

B. Alberts他著(2002年): Molecular
Biology of the Cell ; Garland Science刊
1,2 G. Karp著(2002年): Cell and Molecular Biology ; Concepts and Experiments ; Wiley Text
Books刊
1,2 R. Yuste他著(2000年): Imaging
neurons – a laboratory Manual ; Cold Spring Harbor Laboratory Press刊、 ニューヨーク
R.P. Haugland著(2003年):
Handbook of fluorescent Probes and research Products第10版 ; Molecular Probes Inc. and Molecular Probes Europe BV刊
【0059】
本発明は次のプロセスおよび変遷にとって非常に重要な意味を持っている :
有機体の生育
記述の本発明は、なかでも1/10秒から時間レベルまでのダイナミックな変遷を特徴とする生育過程の研究に適している。ここでは細胞結合面および有機体全体への適用例について記述する :
【0060】
・ Abdul−Karin、M. A.他は2003年“Microvasc. Res.”第66巻、113〜125ページに動物生体における血管の変化に関する長期分析結果を記録した。その場合、蛍光画像は数日間隔で撮影された。運動の定角軌道を模式的に描くために、3次元のデータ記録が適合アルゴリズムで評価されている。
・ Soll、D. R.他は2003年“Scientic World Journ.”第3巻827〜841ページに3次元空間全体における生体細胞の核および偽足に関する顕微鏡データのソフトウェアベースによる運動分析について記述している。
・ Grossmann, R他は2002年“Glia”第37巻229〜240ページにラットの微小神経膠細胞における運動の3次元分析について記述している。そのデータは10時間以上に亘って記録されたものである。神経膠細胞にはトラウマ性傷害の後に同時に迅速反応が発現するので、高いデータ収得率およびそれ相応のデータ量が得られる。
これに関しては特に次のことが重要なポイントである :
・ その隣接細胞がレーザ照明に敏感に反応するので3次元ROI照明から保護されねばならない3次元領域での生細胞の分析
・ 例えばFRET実験などにおいて、3次元のレーザ照準照明下で退色するマーカーによる生細胞の3次元領域での分析
・ 例えば3次元FRAP、FLIP実験などにおいて、レーザ照準照明下で退色する、同時にROI外の観察も必要なマーカーによる生細胞の3次元領域での分析
・ 例えば3次元伝達物質の活性化など、レーザ照明下での操作原因により変化するマーカーおよび薬剤による生細胞の3次元領域での照準分析
・ 例えばpaGFP、Kaedeなど、レーザ照明下での操作原因により変色するマーカーによる生細胞の3次元領域での照準分析
・ 例えばコンフォーカル性と検出感度との最適バランスが要求される微弱マーカーによる生細胞の3次元領域での照準分析
・ 例えばCFP、GFP、YFP、DsRed、HcRedなど可変性多重マーキングのなされた3次元組織結合における生細胞
・ 機能に依存して変色する、例えばCa+マーカーなどでマーキングのなされた3次元組織結合における生細胞
・ 生育に起因して変色するマーキングのなされた3次元組織結合における生細胞、例えばGFPによる形質転換動物
・ 例えばpaGFP、Kaedeなど、レーザ照明下での操作原因により変色するマーキングのなされた3次元組織結合における生細胞
・ 検出感度に有利なようにコンフォーカル性の制限を要求する微弱マーキングのなされた3次元組織結合における生細胞
・ 最終項目とそれ以前の項目との組み合せ
【0061】
細胞内の運搬過程
記述の本発明は細胞内運搬過程の研究にはこの上なく適している。この場合では正しく非常に微小な運動構造体、例えばタンパク質を高速度で(殆どが1/100秒の領域)描写しなければならないからである。複雑な運搬過程のダイナミックスを捕捉するためには、ROIブリーチングを伴うFRAPもしばしば適用される。そのような研究例として、ここでは以下のものを挙げておく :
・ Umenishi, F.他が2000年“Biophys
J.”第78巻1024〜1035ページに、GFP変換された培養細胞におけるアクアポリンの空間運動性についての分析結果を記述している。その場合、細胞膜の照準点を局部ブリーチングして、周辺における蛍光拡散の分析を行っている。
・ Gimpl, G.他が2002年“Prog. Brain Res.”第139巻43〜55ページに、ROIブリーチングによる実験、運動性分析のための蛍光撮像およびGFPマーキングされたオキシトシン受容体の線維芽細胞内での分布について記述している。その場合、空間位置設定、分解能およびブリーチングと撮像との直接的な時間的連続性に関して高い要求が課されている。
・ Zhang他が2001年“Neuron”第31巻261〜275ページに、GFP変換された神経細胞における生細胞の撮像について記述している。その場合、顆粒の運動がブリーチングと蛍光撮像との組み合せにより分析された。神経細胞のダイナミックスに起因して、撮像速度には高い要求が課される。
【0062】
分子間の相互作用
記述の本発明は、特に分子間およびその他副細胞間の相互作用の描写に適している。これらの場合では非常に微小な構造が高速度(1/100秒レベル)で描出されねばならない。相互作用に必要な分子の空間ポジションの解明には、例えばROIブリーチングを伴うFRETなどの間接的な技術を使用することもできる。適用される例として、ここでは以下のものを挙げておく :
・ Petersen, M. A.およびDalley, M. E.が2004年“Glia”第46巻195〜206ページに、ラット海馬角の培養における2チャネル撮影について記述している。この場合は、マーカーとしてのレクチンとシトックスについて3次元空間において長時間に亘り2チャネルで記録される。
・ Yamamoto, N.他が2003年“Clin. Exp. Metastasis”第20巻633〜638ページに、ヒトの線維肉腫細胞の2色撮影について記述している。この場合では緑色と赤色の蛍光タンパク質(GFPおよびRFP)が同時にリアルタイムで観察された。
・ Bertera, S.他が2003年“Biotechniques”第35巻718〜722ページに、合成後色が緑から赤に変化するタイムレポータプロテインによってマーキングされた転換マウスのマルチカラー撮影について記述している。撮像は生体動物の組織内3次元空間で迅速シリーズとして行われる。
【0063】
細胞間の信号伝達
記述の本発明は、殆どが極端に迅速になる信号伝達過程の研究には他に抜きん出て適している。殆どが神経生理学に関するこの過程では経時的分解能に最大限の要求が課される。それは、イオンによって媒介される活動が1/100秒から1/1000秒以下の範囲で起こるからである。筋肉系または神経系の検査への適用例として、ここでは次のものを挙げておく :
・ Brum G他が2000年“J Physiol”第528巻419〜433ページに、伝達物質としてのカフェインによる刺激後のカエルの筋肉細胞における迅速なCa+活動の位置確認について記述している。この位置確認およびマイクロメータ単位の精度を持つ分解能は、迅速型の共焦点顕微鏡の使用下でないと達成されない。
・ Schmidt H他が2003年“J Physiol”第551巻13〜32ページに、転換マウスの神経細胞突起におけるCa+イオンの分析について記述している。変化するCa+に結合するタンパク質による、マウス内での迅速なCa+変化状況についての研究は、高分解能を持つ共焦点顕微鏡により初めて行うことができた。それは、神経細胞内におけるCa+活動の位置確認およびその精確な経時的動力学が重要な役割を果たしているからである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】レーザ走査型顕微鏡の模式図
【図2】最大限の視野SF内で如何にしてROI(観察対象領域)が選択できるかを示している
【図3】ニポーディスク方式を実現するレーザ走査型顕微鏡として考えられる別な構造様式
【図4】多点走査による別法の模式図
【図5】異なった波長を持つ4つのレーザ
【図6】AOMクリスタルの図解
【図7】転向ミラーとビーム結合器を通じて合一化され、次数0と1のビームに調整分割するAOTF 1の配置
【図8】別な分岐路(0次数)に配置されたAOTF 3の配備
【図9】レーザAの光が偏光面方位に関してはλ/2板により調整され、ダイス型偏光スプリッタで反射または透過され、光ファイバを通って別々のシステムに送られる構造図
【図10】公知のレーザ走査型顕微鏡
【図11】マニピュレータにおけるレーザB〜Dが偏光分離器の光ファイバを通じてLSM方向への連結している
【図12】マニピュレータのほかにラインスキャナが設置され、光がビーム形成器を通ってライン状で顕微鏡光路に達する
【図13】RTスキャナおよび点像スキャナLSMが配置され、共通のビーム結合器を通じて試料の同じ領域、または異なった領域からそれぞれの画像を生成する
【図14】下方および側方から連結される光路を切換ユニットで切り換え、RTスキャナとマニピュレータとが選択的に、または交互に顕微鏡構成部へ連結
【図15】複数のレーザから成る光源の調整可能な結合
【図16】光がビーム結合器に導かれる経緯
【符号の説明】
【0065】
1 レーザ走査型顕微鏡
2 光源モジュール
3 走査モジュール
4 顕微鏡モジュール
5 検出モジュール
6,7 レーザユニット
8 光バルブ
10 結合ポイント
11 光ファイバ
12,13 コリメータ
14,15 ビーム結合ミラー
17 メインカラースプリッタ
18 スキャナ
19 走査対物レンズ
20 鏡筒レンズ
21 対物レンズ
22 焦点
23 試料
24 転向ミラー
26 スリット絞り
27 ブロックフィルタ
28 検出器
29 ハロゲンランプ
34 水銀蒸気ランプ
36 ビームスプリッタ
37 円筒形テレスコープ
38 非球面ユニット
40 補正ユニット
41 ズーム光学系
42 絞り
64 ニポーディスク
SF 視野(走査フィールド)
A〜G レーザ
US 転向ミラー
V フラップまたはシャッタ
PT 偏光分離器
A,AOTF,AOM 減衰器
MD ビーム検出用モニタダイオード
PMT 波長別の選択的ビーム検出のための検出器、
T−PMT 透過ビーム検出のための検出器
PH ピンホール、
DBS カラースプリッタ
MDB メインカラースプリッタ
EF 放出用フィルタ
LSM スキャナ、
HBO 白色光源、
HAL 透過照明用のハロゲンランプ
SS 迅速切換ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの照明チャネルへのレーザ光の可変的分割のための装置が装備されていて、同じまたは異なった試料領域へ試料に対して共通の照明が行われる、少なくとも1つの照明モジュールを有する光走査型顕微鏡。
【請求項2】
共通の照明が、同時に、または交互に行なわれる、請求項1に記載の光走査型顕微鏡。
【請求項3】
照明モジュールに少なくとも1つのレーザが装備されている、請求項1または2に記載の光走査型顕微鏡。
【請求項4】
分割された照明の強度および/または波長および/または偏光が変更される、請求項1、2または3に記載の光走査型顕微鏡。
【請求項5】
波長の異なる複数のレーザが配備されている、請求項1〜4の1つに記載の光走査型顕微鏡。
【請求項6】
分割装置の配置されている共通の光路内で複数のレーザが合一化される、先行請求項の1つに記載の光走査型顕微鏡。
【請求項7】
好ましくは、調整可能なレーザが少なくとも2つのチャネルに分割される、先行請求項の1つに記載の光走査型顕微鏡。
【請求項8】
分割の前に、少なくとも1つの別なレーザとの合一化が行われる、先行請求項の1つに記載の光走査型顕微鏡。
【請求項9】
強度および/または波長が調整可能である、先行請求項の1つに記載の光走査型顕微鏡。
【請求項10】
分割された照明チャネルの1つが別な光走査型顕微鏡および/または光学マニピュレーションユニットと光学的に結合している、先行請求項の1つに記載の光走査型顕微鏡。
【請求項11】
ラインスキャナが第2の光走査型顕微鏡として配備されている、先行請求項の1つに記載の光走査型顕微鏡。
【請求項12】
試料を同時に、および/または交互に照明する第1の、および少なくとも1つの第2の光走査型顕微鏡および/または光学マニピュレーションユニットからの組み合せであって、第1および/または第2の光走査型顕微鏡および/またはマニピュレーションユニットからの照明光が、光学的に分割され、それらがそれぞれ別な光走査型顕微鏡および/またはマニピュレーションユニットの照明に用いられる組み合せ。
【請求項13】
光ファイバを通じて、それぞれ別なシステムへ光学的結合がなされる、請求項12に記載の組み合せ。
【請求項14】
試料に対しラスタ状に照明する独立した複数のシステム用として、少なくとも1つ共通の照明モジュールが配備されている、請求項11〜13の1つに記載の組み合せ。
【請求項15】
分割装置が音響光学特性を有している、先行請求項の1つに記載の光走査型顕微鏡。
【請求項16】
分割装置が回折特性を有している、先行請求項の1つに記載の光走査型顕微鏡。
【請求項17】
分割装置が偏光光学特性を有している、先行請求項の1つに記載の光走査型顕微鏡。
【請求項18】
分割装置が分割ミラーである、先行請求項の1つに記載の光走査型顕微鏡。
【請求項19】
分割装置が旋回可能なミラーである、先行請求項の1つに記載の光走査型顕微鏡。
【請求項20】
分割において強度および/または波長が調整可能である、先行請求項の1つに記載の光走査型顕微鏡。
【請求項21】
分割装置が迅速切換装置である、先行請求項の1つに記載の光走査型顕微鏡。
【請求項22】
特に細胞結合面および有機体全体における、なかでも1/10秒から時間単位までのダイナミックなプロセス等の生育過程、それも特に下記諸点、すなわち
・ その隣接細胞がレーザ照明に敏感に反応するので3次元ROI照明から保護されねばならない3次元領域での生細胞の分析
・ 例えばFRET実験などにおいて、3次元のレーザ照準照明下で退色するマーカーによる生細胞の3次元領域での分析
・ 例えば3次元FRAP、FLIP実験などにおいて、レーザ照準照明下で退色する、同時にROI外の観察も必要なマーカーによる生細胞の3次元領域での分析
・ 例えば3次元伝達物質の活性化など、レーザ照明下での操作原因により変化するマーカーおよび薬剤による生細胞の3次元領域での照準分析
・ 例えばPaGFP、Kaedeなど、レーザ照明下での操作原因により変色するマーカーによる生細胞の3次元領域での照準分析
・ 例えばコンフォーカル性と検出感度との最適バランスが要求される微弱マーカーによる生細胞の3次元領域での照準分析
・ 例えばCFP、GFP、YFP、DsRed、HcRedなど可変性多重マーキングのなされた3次元組織結合における生細胞
・ 機能に依存して変色する、例えばCa+マーカーなどでマーキングのなされた3次元組織結合における生細胞
・ 生育に起因して変色するマーキングのなされた3次元組織結合における生細胞、例えばGFPによる形質転換動物
・ 例えばpaGFP、Kaedeなど、レーザ照明下での操作原因により変色するマーキングのなされた3次元組織結合における生細胞
・ 検出感度に有利なようにコンフォーカル性の制限を要求する微弱マーキングのなされた3次元組織結合における生細胞
・ 最終項目とそれ以前の項目との組み合せ
のうちの少なくとも1つの研究のための、先行請求項の少なくとも1つに記載の装置および/または方法の使用。
【請求項23】
特に、微小な運動構造体、例えばタンパク質の高速度描写に(殆どが1/100秒の領域)、それも特にROIブリーチングを伴うFRAPなどに適用される、細胞内運搬過程の研究のための先行請求項の少なくとも1つに記載の装置および/または方法の使用。
【請求項24】
例えば、副分子構造解明のためのROIブリーチングを伴うFRETなど、好ましくは間接的技術の使用下における、特に、非常に微小な構造の高速度描写など、分子およびその他副細胞の描写のための先行請求項の少なくとも1つに記載の装置および/または方法の使用。
【請求項25】
特に筋肉系または神経系に関する研究における迅速な信号伝達過程のための、特に、1/100秒から1/1000秒以下に到るまでの領域で展開されるイオン介在活動に関係する、高い経時的分解能による神経生理学過程のための、先行請求項の少なくとも1つに記載の装置および/または方法の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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