説明

光軸制御装置

【課題】走行時の車体ピッチ角に対し時間的な遅れが抑制されたヘッドランプ照射角度の適切な制御を実現できる光軸制御装置を提供する。
【解決手段】車体が一定以上の大きさの上下加速度を受けると、そのときの車両ピッチング減衰特性を上下加速度に対応させて車両減衰特性データベース3へ記録し、一定以上の大きさの上下加速度を受けるたびに更新されるようにする。さらに一定範囲内の大きさの上下加速度入力時の車両ピッチング減衰特性を車両減衰特性データベース3へ記録する。一方、一定以上の大きさの上下加速度を車体が受けると、前記上下加速度に対応して車両減衰特性データベース3に記録されている車両ピッチング減衰特性を読み出し、逆位相のヘッドライト照射角制御信号をフィードフォワード的にヘッドライト照射角制御信号生成手段18により生成し、時間的な遅れなくヘッドライトの照射角を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のピッチング運動に伴うヘッドライト光軸の上下方向の変動を抑制し、ヘッドライトの光軸方向を一定に制御する光軸制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路走行時あるいは冬季降雪時の運転では、そうでないときに比較してより前方を照射する必要があることから、ドライバー操作により車両のヘッドライトの照射角度を通常時よりも上方へ切り替える照射角度切替機構が設けられている。そして、通常、車両のヘッドライトの照射角度は、車両本体に対し一定の角度で前方を照射するように固定されている。
このため、車両が走行中、路面上の突起物を乗り越えて走行するような場合、最初、前輪が路面上の突起物に乗り上げることで、車体の前部が上方へ跳ね上げられる状態となり、車体の前部には上方への加速度が加わる。上方へ跳ね上げられた状態の車体の前輪が前記突起物を超えて路面上に着地した後、続いて車体の後輪が前記突起物に乗り上げることで、今度は車体の後部が上方へ跳ね上げられる状態となり、車体の前部には下方への加速度が加わる。車両は、通常、サスペンション機構により車輪軸と車体が係合しており、車輪の上下方向の動きが直接車体に伝わるような構造とはなっていないが、車輪が前記突起物へ乗り上げることにより車体も影響を受け、この結果、車両のヘッドライトの照射角度も、最初上方へ変化し、続いて車体の後輪が前記突起物に乗り上げて車体先端部が前方へ傾く分、下方へ変化する。
したがって、このような突起物、凹凸のある路面上を走行するときのヘッドライトの照射角度の変動は運転者の視界を十分に確保する上で不利となることから、車体のピッチ角を検出し、検出したピッチ角に応じて車体に設けられたヘッドライトの照射角度を制御する技術が提案されている。
このようなヘッドライトの照射角度を制御する従来技術としては、車体のピッチ角角速度を検出する角速度センサと、角速度センサから一定時間ごとに入力する車体ピッチ角角速度を積分して車体ピッチ角を算出する積分器と、車体ピッチ角に比例したヘッドランプ照射角度の制御信号を出力する演算器と、前記演算器からの制御信号を増幅する駆動回路と、前記駆動回路により駆動されヘッドランプに連動してその照射角度を制御するアクチュエータとを有した車両のヘッドランプ機構がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−250901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、従来技術では、角速度センサから入力される車体ピッチ角角速度を積分処理するため、周期的に入力される車体ピッチ角に対するヘッドランプ照射角度の制御に時間的な遅れが生じる可能性があり、ヘッドランプ照射角度の適切な制御を実現できないという課題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、走行時の車体ピッチ角に対しヘッドランプ照射角度の時間的な遅れが抑制された適切な制御を実現できる光軸制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明の光軸制御装置は、車体に作用する上下方向の加速度を検出する加速度センサと、前輪側および後輪側の車高の変位量を検出するハイトセンサと、予め規定された一定以上の大きさの上下加速度を前記加速度センサにより検出すると、記ハイトセンサにより検出された前輪側および後輪側の車高の変位量をもとに前記検出した上下加速度に応じた車両ピッチング減衰特性を取得する減衰特性取得手段と、前記車両ピッチング減衰特性を保存する車両減衰特性データベースと、前記加速度センサにより前記一定以上の大きさの上下加速度を検出すると、前記上下加速度に対応した車両ピッチング減衰特性を前記車両減衰特性データベースから読み出す減衰特性読出手段と、前記減衰特性読出手段により読み出した前記車両ピッチング減衰特性をもとにヘッドライトの照射角を制御するヘッドライト照射角制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、一定以上の大きさの上下加速度を検出すると、上下加速度に対応した車両ピッチング減衰特性をもとにヘッドライトの照射角が制御されるので、走行時の車体ピッチ角に対し時間的な遅れが抑制されたヘッドランプ照射角度の適切な制御を実現する上で有利となる。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、車両ピッチング減衰特性を、減衰特性取得手段により取得された最新の車両ピッチング減衰特性に更新するので、乗員数や荷物の増減による車体の重量変化などの影響に対応してヘッドランプ照射角度を適切に制御する上で有利となる。
【0009】
請求項3記載の発明によれば、減衰特性予測手段により予測された車両ピッチング減衰特性を用いるようにしたので、データベースに蓄積された車両ピッチング減衰特性の量が少ない状況であっても、ヘッドランプ照射角度の適切な制御を実現する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態である光軸制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態である光軸制御装置のヘッドライトレベリング機構の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態の光軸制御装置における車両ピッチング減衰特性の一例を示す波形図である。
【図4】本発明の実施の形態の光軸制御装置における車両ピッチング減衰特性の取得動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態の光軸制御装置における積載重量に応じた車両ピッチング減衰特性の周波数変化を示す特性図である。
【図6】本発明の実施の形態の光軸制御装置における上下加速度が0.5Gであるときの積載重量に応じた車両ピッチング減衰特性の周波数変化を示す特性図である。
【図7】本発明の実施の形態の光軸制御装置における予測された車両ピッチング減衰特性を示す特性図である。
【図8】本発明の実施の形態の光軸制御装置におけるヘッドライト照射角制御動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態の光軸制御装置におけるヘッドライト照射角制御信号を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の実施の形態である光軸制御装置は車両に搭載されている。この光軸制御装置は、走行する路面の凹凸により車体に加わる上下方向の加速度の大きさに応じて車体にピッチング運動が生じるとき、車体に取り付けられたヘッドライトの照射角を、走行時に予め取得しデータベースに保存してあるピッチング減衰特性をもとに生成されたヘッドライトレベリング制御信号を用いて制御し、ヘッドライトの照射角の上下方向の変動を相殺し、車体のピッチングによるヘッドライトの照射角の変動を抑制するものである。
【0012】
図1は、この実施の形態である光軸制御装置の構成を示すブロック図である。この光軸制御装置は、ハイトセンサ1、加速度センサ2、減衰特性データベース3、ヘッドライトレベルリングECU4およびヘッドライトレベリング機構5を備えており、車体のピッチング運動によるヘッドライト6の照射角の変動を抑制する。
ハイトセンサ1は、車両の前輪側の車軸に設けられたフロント側ハイトセンサと後輪側の車軸に設けられたリア側ハイトセンサとから構成されており、前輪側の車高の変位量をフロント側ハイトセンサで検出し、後輪側の車高の変位量をリア側ハイトセンサで検出する。そして、ハイトセンサ1により検出された前輪側と後輪側の車高の変位量の時間的な変化をもとに、例えば縦軸を車両ピッチング角度θ、横軸を時間tで表わされるピッチング減衰特性がデータベースに記録される。
図3は、この実施の形態の光軸制御装置における車両ピッチング減衰特性の一例を示す波形図である。
加速度センサ2は、車体に作用した上下方向の加速度を検出する。
減衰特性データベース3は、車両の路面走行時に、あらかじめ規定された一定以上の大きさの上下方向の加速度、上下加速度が車体に作用したとき、ハイトセンサ1により検出された車高の変位量をもとに取得された車両ピッチング減衰特性を保存している。
すなわち、減衰特性データベース3は、前記一定以上の大きさの上下加速度入力時の車両ピッチング減衰特性を保存する。車両ピッチング減衰特性は車体に作用した上下加速度に対応して保存される。
さらに、この車両減衰特性データベース3には後述する減衰特性予測反映手段13により予測された車両ピッチング減衰特性がその上下加速度に対応して保存される。
ヘッドライトレベリング機構5は、ヘッドライトの上下方向の照射角を可変する構造を有しており、この実施の形態では光源と反射体とからなるヘッドライト全体の向きを上下方向へ変えることでヘッドライトの上下方向の照射角を可変する構成とする。
図2は、ヘッドライトレベルリング機構5の構成を示す斜視図である。このヘッドライトレベリング機構5は、回転中心線が光源61の位置を通る回転軸63,64を有し、回転軸64にはウオームホイール65が固定されている。このウオームホイール65は、ステッピングモータ67の出力軸に取り付けられたウオームギヤー66と噛み合っている。
回転軸63,64は、例えばベアリングを介して回転自在に取り付けられている。ステッピングモータ67は時計方向あるいは反時計方向へ必要な角度だけ回転制御される。
符号71,72,73はヘッドライトの光軸であり、ステッピングモータ6が時計方向に駆動されるとヘッドライト6は下方向へ回転軸63,64を中心にして回転し、ヘッドライト6の光軸71は光軸73のように下方に傾いた状態となる。またステッピングモータ6が反時計方向に駆動されるとヘッドライト6は上方向へ回転軸63,64を中心にして回転し、ヘッドライト6の光軸71は光軸72のように上方に傾いた状態となる。
【0013】
ヘッドライトレベルリングECU4は、未取得減衰特性判定手段11、減衰特性更新手段12、減衰特性予測反映手段13、減衰特性記録手段14、減衰特性読出手段15、読出減衰特性判定手段16、減衰特性取得手段17およびヘッドライト照射角制御信号生成手段18を備えている。
【0014】
未取得減衰特性判定手段11は、ハイトセンサ1により検出された車高の変位量をもとに取得されたピッチング減衰特性とパラメータが一致するピッチング減衰特性が車両減衰特性データベース3にすでに保存されているか否かを判定する。なお、このピッチング減衰特性のパラメータは、車体に作用した上下加速度を含み、ピッチング減衰特性はこのパラメータにより規定される。
【0015】
減衰特性更新手段12は、車体に作用した上下加速度を含むパラメータが一致すると判定された車両減衰特性データベース3に記録されているピッチング減衰特性を、今回、ハイトセンサ1により検出されたピッチング減衰特性により更新する。
すなわち、減衰特性更新手段12は、車両減衰特性データベース3に、加速度センサ2により検出された最新の上下加速度に一致する上下加速度に対応する車両ピッチング減衰特性が記録されていると、車両ピッチング減衰特性を、減衰特性取得手段17により取得された最新の車両ピッチング減衰特性に更新する。
【0016】
減衰特性予測反映手段13は、加速度センサ2により検出された上下加速度を基準として予め規定された所定範囲内の大きさの上下加速度入力時の車両ピッチング減衰特性を予測する。
減衰特性予測反映手段13による車両ピッチング減衰特性の予測は、上下加速度および車両ピッチング減衰特性の相関関係を示す相関式、あるいは、相関マップに基づいて行うことができる。このような相関式あるいは相関マップは、例えば、上下加速度および車両ピッチング減衰特性の実測データあるいはシミュレーション結果などに基づいて生成するなど従来公知の様々な手法が採用可能である。
【0017】
減衰特性記録手段14は、車体に作用した上下加速度を含むパラメータが一致すると判定されたピッチング減衰特性が車両減衰特性データベース3に記録されていないとき、減衰特性予測反映手段13により予測されたピッチング減衰特性を車両減衰特性データベース3へ記録する。
【0018】
減衰特性読出手段15は、加速度センサ2により検出された上下加速度に対応するピッチング減衰特性を車両減衰特性データベース3から読み出す。
読出減衰特性判定手段16は、車両減衰特性データベース3から読み出されるピッチング減衰特性がどのピッチング減衰特性であるかを判定する。
減衰特性取得手段17は、ハイトセンサ1により検出された前輪側と後輪側の車高の変位量の時間的な変化をもとに車両ピッチング角度θの時間変化として例えば図3に示す車両ピッチング減衰特性を生成し取得する。
ヘッドライト照射角制御信号生成手段18は、ヘッドライトのピッチ角制御を行うヘッドライトピッチ角制御信号を生成する。
【0019】
次に動作について説明する。
この実施の形態の光軸制御装置では、車両ピッチング減衰特性を車両減衰特性データベース3へ記録する減衰特性収集動作と、車両減衰特性データベース3に記録された車両ピッチング減衰特性を用いたフィードフォワード制御によるヘッドライト照射角制御とが同時的に実行される。
図4は、この実施の形態の光軸制御装置における車両ピッチング減衰特性の取得動作を示すフローチャートである。図8は、この実施の形態の光軸制御装置におけるヘッドライト照射角制御動作を示すフローチャートである。
先ず、図4に示す車両ピッチング減衰特性の取得動作から説明すると、最初、車両が走行中であるか否かを判定する(ステップS1)。この走行中であるか否かの判定は、例えば車輪の回転数が予め定められた一定以上の回転数を示しているか否かを判定することで可能である。
車両が走行中であると判定すると、次に加速度センサ2による上下加速度の検出を行う(ステップS2)。車両が滑らかな路面を走行している場合、加速度センサ2は微細な上下加速度を検出することがあっても、一定以上の大きさの上下加速度を検出することはないが、路面の継ぎ目や凹凸の上を走行する場合には、加速度センサ2は一定以上の大きさの上下加速度を検出する。このため加速度センサ2により検出された上下加速度が予め設定された一定以上の大きさの上下加速度であるか否を判定し(ステップS3)、加速度センサ2により一定以上の大きさの上下加速度を検出すると、検出した上下加速度に応じた車両ピッチング減衰特性を、減衰特性取得手段17により、ハイトセンサ1により検出された前輪側と後輪側の車高の変位量の時間的な変化をもとに生成し取得する(ステップS4)。
【0020】
そして、今回取得した車両ピッチング減衰特性とパラメータが一致する、つまり上下加速度が一致する車両ピッチング減衰特性が車両減衰特性データベース3に記録済みであるか否かを判定し(ステップS5)、車両減衰特性データベース3に上下加速度が一致する車両ピッチング減衰特性が記録されていなければ今回、取得した車両ピッチング減衰特性をそのときの上下加速度に対応させて車両減衰特性データベース3へ記録する(ステップS7)。
一方、ステップS5において、車両減衰特性データベース3に前記パラメータが一致する、つまり上下加速度が一致する車両ピッチング減衰特性が記録されている場合には、減衰特性更新手段12により、今回取得した車両ピッチング減衰特性で、車両減衰特性データベース3に記録されている車両ピッチング減衰特性を更新する(ステップS6)。
さらに、今回、加速度センサ2より検出された上下加速度を基準にして予め規定された所定範囲内の大きさの上下加速度入力時の車両ピッチング減衰特性が車両減衰特性データベース3に記録されているか否かを判定し(ステップS8)、記録されていなければ、今回取得した車両ピッチング減衰特性から、その上下加速度を基準にした場合の一定範囲内の上下加速度入力時の車両ピッチング減衰特性を減衰特性予測反映手段13により予測し、車両減衰特性データベース3へ前記一定範囲内の上下加速度に対応させて減衰特性記録手段14により記録し、車両減衰特性データベース3に反映させる(ステップS9)。
【0021】
つまり、この車両ピッチング減衰特性の取得動作では、路面を走行したときに路面から受ける一定以上の大きさの上下加速度を加速度センサ2で検出し、このとき、車両の前輪と後輪に取り付けられたハイトセンサ1により検出された車高の変位量の時間的な変化をもとに取得された車両ピッチング減衰特性を車両減衰特性データベース3に記録する。この車両ピッチング減衰特性は、路面走行時の路面凹凸により車体に作用する上下加速度の大きさをパラメータとして車両減衰特性データベース3に記録される。
図5および図6に示すように、車両ピッチング減衰特性は、路面走行時の路面凹凸により車体に作用する上下加速度の大きさ、車両速度、車両種別(サスペンションの構造)、積載重量などに応じて車両ピッチング角度θ、ゼロクロスする振動回数である周波数、周期、上下加速度が加わってからのピッチングが減衰してゼロになるまでの時間(ピッチングレート)などが異なってくる。図5は、上下加速度の大きさと積載重量とに応じた車両ピッチング減衰特性の周波数変化を示す特性図である。図6は、上下加速度が0.5Gであるときの積載重量に応じた車両ピッチング減衰特性の周波数変化を示す特性図である。このため、車両減衰特性データベース3に記録された車両ピッチング減衰特性に今回検出された車両ピッチング減衰特性と等価なものが記録されている場合には、その車両ピッチング減衰特性を今回検出された車両ピッチング減衰特性で更新する。
さらに、今回検出した上下加速度を基準に一定範囲内の異なる値の上下加速度入力時の車両ピッチング減衰特性が車両減衰特性データベース3に記録されているか否かを判定し、記録されていない場合、今回検出した上下加速度を基準に一定範囲内の異なる値の上下加速度入力時の車両ピッチング減衰特性を、今回検出した車両ピッチング減衰特性から減衰特性予測反映手段13により予測し、車両減衰特性データベース3へ記録し反映させる。
図7は、予測された車両ピッチング減衰特性を示す特性図である。図7では、今回検出した上下加速度0.5Gを基準に一定範囲内の異なる値の上下加速度0.4Gと上下加速度0.6G入力時の予測された車両ピッチング減衰特性を示している。
【0022】
次に、図8に示すヘッドライト照射角制御動作について説明する。
このヘッドライト照射角制御では、先ずヘッドライトオンか否かを判定する(ステップS11)。このヘッドライトオン、つまり前消灯による照明が行われている状態か否かの判定は、例えばヘッドライトオンスイッチの状態から判定可能である。ヘッドライトオン
の状態であると判定すると、次に加速度センサ2による上下加速度の検出を行う(ステップS12)。そして、加速度センサ2により検出された上下加速度が予め設定された一定以上の大きさの上下加速度であるか否を判定し(ステップS13)、一定上の大きさの上下加速度を検出すると、加速度センサ1により検出した上下加速度に応じた車両ピッチング減衰特性が車両減衰特性データベース3に保存されているか否かを読出減衰特性判定手段16により判定する(ステップS14)。この結果、保存されていないと判定すると、今回、検出した予め設定された一定以上の大きさの上下加速度に応じて取得された車両ピッチング減衰特性を車両減衰特性データベース3へ記録する(ステップS18)。この車両ピッチング減衰特性は、加速度センサ2により検出された予め設定された一定以上の大きさの上下加速度に応じて、ハイトセンサ1により検出された前輪側と後輪側の車高の変位量の時間的な変化をもとに減衰特性取得手段17により生成され取得された減衰特性である。
一方、加速度センサ1により検出した上下加速度に応じた車両ピッチング減衰特性が車両減衰特性データベース3に保存されていると判定すると、車両減衰特性データベース3から前記上下加速度に対応する車両ピッチング減衰特性を読み出す(ステップS15)。そして、ヘッドライト照射角制御信号生成手段18により、前記車両ピッチング減衰特性とは逆位相の図9に示すヘッドライト照射角制御信号を生成し(ステップS16)、ヘッドライトレベリング機構へ出力し、ヘッドライトの照射角の制御を行う(ステップS17)。ヘッドライトレベリング機構では、ヘッドライト照射角制御信号をもとに図2に示すステッピングモータ67が駆動されウオームギヤー66、ウオームホイール65を介して、車両ピッチング減衰特性に応じた車両のピッチングに伴うヘッドランプの上下方向の動きを相殺する上下運動を発生させる。
【0023】
以上説明したように、この実施の形態によれば、走行時に路面から車体が一定以上の大きさの上下加速度を受けると、この一定以上の大きさの上下加速度に応じた車両ピッチング減衰特性を前記上下加速度に対応させて車両減衰特性データベース3へ記録し、この車両減衰特性データベース3の車両ピッチング減衰特性が一定以上の大きさの上下加速度を受けるたびに更新されるようにする。さらに前記一定以上の大きさの上下加速度に対する一定範囲内の大きさの上下加速度入力時の車両ピッチング減衰特性を車両減衰特性データベース3へ記録する。前記一定以上の大きさの上下加速度を路面から車体が受けると、車体が受けた上下加速度に対応して車両減衰特性データベース3に記録されている車両ピッチング減衰特性を読み出し、読み出した車両ピッチング減衰特性と逆位相のヘッドライト照射角制御信号をフィードフォワード的にヘッドライト照射角制御信号生成手段18により生成する。そして、このヘッドライト照射角制御信号によりヘッドライトレベリング機構でヘッドライトの照射角を制御し、フィードバック的にヘッドライトの照射角を制御するときの時間的な遅れを抑制し、上下加速度入力時の車両ピッチング減衰特性によるヘッドライトの照射角の上下運動を相殺し、ヘッドライトの照射範囲の上下のブレを抑制し安定化する。
従って、この実施の形態によれば、走行時の車体ピッチ角に対し時間的な遅れが抑制されたヘッドランプ照射角度の適切な制御を実現できる光軸制御装置を提供できる効果がある。
【0024】
また、減衰特性更新手段12により、車両減衰特性データベース3の車両ピッチング減衰特性を、減衰特性取得手段17により取得された最新の車両ピッチング減衰特性に更新するので、乗員数や荷物の増減による車体の重量変化などの影響に対応してヘッドランプ照射角度を適切に制御する上で有利となる。
【0025】
また、減衰特性予測反映手段13により予測された車両ピッチング減衰特性を用いるようにしたので、車両減衰特性データベース3に蓄積された車両ピッチング減衰特性の量が少ない状況であっても、ヘッドランプ照射角度の適切な制御を実現する上で有利となる。
【符号の説明】
【0026】
1……ハイトセンサ、2……加速度センサ、3……車両減衰特性データベース、4……ヘッドライトレベリングECU、5……ヘッドライトレベリング機構(ヘッドライト照射角制御手段)、12……減衰特性更新手段、13……減衰特性予測反映手段(減衰特性予測手段)、14……減衰特性記録手段、15……減衰特性読出手段、17……減衰特性取得手段、18……ヘッドライト照射角制御信号生成手段(ヘッドライト照射角制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に作用する上下方向の加速度を検出する加速度センサと、
前輪側および後輪側の車高の変位量を検出するハイトセンサと、
予め規定された一定以上の大きさの上下加速度を前記加速度センサにより検出すると、
前記ハイトセンサにより検出された前輪側および後輪側の車高の変位量をもとに前記検出した上下加速度に応じた車両ピッチング減衰特性を取得する減衰特性取得手段と、
前記車両ピッチング減衰特性を保存する車両減衰特性データベースと、
前記加速度センサにより前記一定以上の大きさの上下加速度を検出すると、前記上下加速度に対応した車両ピッチング減衰特性を前記車両減衰特性データベースから読み出す減衰特性読出手段と、
前記減衰特性読出手段により読み出した前記車両ピッチング減衰特性をもとにヘッドライトの照射角を制御するヘッドライト照射角制御手段と、
を備えたことを特徴とする光軸制御装置。
【請求項2】
前記車両減衰特性データベースに、前記加速度センサにより検出された最新の上下加速度に一致する上下加速度に対応する車両ピッチング減衰特性が記録されていると、前記車両ピッチング減衰特性を、前記減衰特性取得手段により取得された最新の車両ピッチング減衰特性に更新する減衰特性更新手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の光軸制御装置。
【請求項3】
前記加速度センサにより検出された上下加速度を基準として予め規定された所定範囲内の大きさの上下加速度入力時の車両ピッチング減衰特性を予測する減衰特性予測手段と、
前記車両減衰特性データベースに、前記一定以上の大きさの上下加速度に対応する前記所定範囲内の上下加速度入力時の車両ピッチング減衰特性が保存されていない場合、前記予測された車両ピッチング減衰特性を前記車両減衰特性データベースに保存する減衰特性記録手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の光軸制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−86747(P2013−86747A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231609(P2011−231609)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】