説明

内側カバーが厚い多層ゴルフボール

【課題】インパクト速度が小さくても大きくても反発係数が大きなゴルフボールを提供する。
【解決手段】ゴルフボールは、直径が0.5インチから1.4インチで、圧縮が約45以下で、さらに反発係数が0.730から0.810のコアと、注型ポリ尿素カバーと、上記コアおよび上記カバーの間に配され、その厚さが0.11インチ以上で、高度に中和され水蒸気透過率が8g・mil/100in/日以下の組成物から製造された中間層とを有し、上記コアおよび上記中間層の組み合わせが約70から約100の圧縮を実現し、当該ゴルフボールの反発係数が、125ft/sの入力速度で測定したときに、0.805から0.820でありで、160ft/sの入力速度で測定したときに、0.75以上であり、当該ゴルフボールの圧縮が75から105である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、反発係数が大きく、変形が小さなゴルフボールに関し、より具体的には、クラブ速度が大きくても反発係数が大きなゴルフボールに関する。
【0002】
この出願は、米国特許出願11/267,487の部分継続出願であり、当該出願は、2004年5月7日の出願の米国特許出願10/267,487の部分継続出願である。
【背景技術】
【0003】
ゴルフボールは具体的なプレイ特性を実現するように設計されてきた。これら特性は、一般に、ボールの初期ボール速度、反発係数(COR)、圧縮、重量分散およびスピン速度であり、種々のタイプのプレイヤに最適化できる。
【0004】
従来のゴルフボールは2つの概略的なクラス、すなわちソリッドおよび糸巻に分けることができる。ソリッドゴルフボールは、単一層、二重層(すなわち、ソリッドコアおよびカバー)、および多層(すなわち、ソリッドコアツーピース(すなわち1または複数層のソリッドコアおよび/または1または複数層のカバー)のゴルフボールに分けられる。糸巻ボールは、典型的には、典型的には、引っ張られた弾性材料により包囲されたソリッド、空洞、または液体充填のセンタと、カバーとを含む。
【0005】
一般に、ゴルフボールまたはゴルフボールコアの硬度は、ゴルフボールを設計する賽に採用する多くのファクタのうちの1つである。典型的には、ボールが硬いと、例えば、高圧縮を有し、クラブで打ったときの変形が小さいと、ボールは大きなCORを有し、ゴルフクラブで打撃したのちの初期速度が大きい。ボールがより柔らかくなると、例えば、圧縮がより小さく、かつ変形が大きいと、「ソフト」なフィーリングが実現され、グリーンサイドのプレイにおいてショートアイアンで制御がより用意になる。最近開発されたソリッドボールは、コア、少なくとも1つの中間層、およびカバーを具備する。中間層はソリッドボールの他のプレイ特性を改善し、また熱硬化性または熱可塑性材料から製造して良い。
【0006】
ゴルフボールの設計における最近の進展により、ソフトな「フィーリング」のために低圧縮で、長飛距離のために高CORのゴルフボールが実現可能である。しかしながら、低圧縮ボールのCORはゴルフクラブのインパクト速度がより大きくなると小さくなる。
【0007】
インパクト速度が小さくでも大きくても反発係数が大きな低圧縮ゴルフボールの要請が当業界において依然としてある。
【発明の開示】
【0008】
[定義]
この出願において採用される以下の用語は、つぎの番号付けされたASTMテストの観点において定義される。すなわち、比重ASTM D−792、曲げ弾性率ASTM D−790、ショアD硬度ASTM D−2240、およびショアC硬度ASTM D−2240である。ASTM D−792テストは、温度が20〜23°Cの実験室条件で実行された。
【0009】
ここで用いられるように、用語「ポイント」および「圧縮ポイント」は、圧縮スケールすなわちATTI Engineering Testerに基づく圧縮スケールを指す。このスケールは当業者には周知であり、コアまたはボールの相対的な圧縮を決定するのに採用される。測定対象のゴルフボールセンタ、ゴルフボールコア、またはゴルフボールにバネ荷重力を印可して、ニュージャージー州のユニオンシティのAtti Engineering Company製の手動機器(「Attiゲージ」)を用いて、圧縮が測定される。この機器は、Federal Dial Gauge Model D81−Cを装備し、既知の荷重の下で較正バネを用いる。検査対象の球はこのバネに対して0.2インチ(5mm)の距離だけ力を受ける。バネが0.2インチだけ圧縮したら、圧縮は100と評価され、バネが0.1インチだけ圧縮したら圧縮値はゼロと評価される。より分かりやすく説明すると、柔らかい材料は、硬く縮まりにくい材料より、小さなAtti圧縮値を有する。この装置で測定された圧縮はPGA圧縮とも呼ばれる。
【0010】
ここで用いられるように、「COR」は反発係数を指し、これは、ボールの跳ね返り速度をその初速度(すなわち入力速度)で割って得られる。このテストは、サンプルを空気砲から垂直スチール板にテスト速度(75から150ft/s)で打ち出すことにより実行される。CORが大きなゴルフボールは、CORが小さなボールに較べて、板に衝突して跳ね返るときに、全エネルギーのよりわずかな部分しか消費しない。とくに記載しない場合、報告されるCORの値は入力速度が125ft/sで決定されたものである。
【0011】
ここで使用されるように、用語「コポリマー」は2以上のモノマーから製造されたポリマーを指す。ただし、モノマーは同一でない。
【0012】
ここで使用されるように、用語「ターポリマー」は、3つのモノマーから製造されたポリマーを指す。ただし、モノマーは同一でない。
【0013】
ここで使用されるように、用語「フィラー」は対象の歩流布ボールコアの密度やその他の特性を修正するのに採用できる任意の化合物または組成物を含む。
【0014】
ここで用いられるように、用語「phr」は、バッチ調合との関連では、ベース組成物(例えば、エラストマー)の100部に対する成分の重量部を指す。
【0015】
ここで用いられるように、用語「ムーニー粘度」は、生すなわち非加硫のゴムの可塑性を測定するのに採用する単位を指す。ムーニー単位の可塑性は、任意のスケールで測定された、100°Cの温度のゴムを含み、1分に2回転する容器中のディスクに加わるトルクと等しい。ムーニー粘度の測定はASTM D−1646に規定されている。
【0016】
ここで使用されるように、用語「約」は、1または複数の数および数の範囲との関係で、そのようなすべての数、範囲に含まれるそのようなすべての数を、指すと理解されたい。
【発明の詳細な説明】
【0017】
この発明のゴルフボールは、ツーピース、多層および糸巻ボールのような種々の構造のうちの任意の1つを有して良く、これらは種々のコア、中間層、カバーおよびコーティングを有する。この発明のカバーおよびコアは、1または複数の層を有する構造を含む。コアは、中心から外側周囲まで至るコア全体を有する唯一の単一の層であってよく、また、センタとこれを取り巻く少なくとも1つの外側カバー層を有しても良い。センタ、コアの最内側の部分は、好ましくはソリッドであるが、空洞でも、液体充填、ゲル充填、気体充填であってもよい。外側コア層は、引っ張られた弾性材料から生成された糸巻層であってもよい。この発明のゴルフボールのカバーは1または複数の層、例えば、内側および外側のカバー層を具備する二重カバーを含んでよい。オプションとして、コアおよびカバーの間に配された中間層を組みこんで良い。中間層は、これがあるときにには、1または複数の層を有してよく、当業界でそのように呼ばれるように、ここでも、内側カバー層、外側コア層、またはマントル層と呼ばれる。
【0018】
この発明によれば、低圧縮で高CORの層がゴルフボールに設けられ、これが低歪み層により支持され、または他の手法により強化される。好ましくは、低圧縮で高CORの層は、ハロゲン化チオフェノール化合物を含むポリマー組成物から製造される。そのようなゴムおよびハロゲン化チオフェノール組成物は米国特許第6,635,716号に十分に開示され、その開示内容は参照してここに組み入れる。
【0019】
好ましいコア組成物はベースゴム化合物、共反応剤、フィラー、オプションのハロゲン化チオフェノール化合物、および共架橋または開始剤を有する。
【0020】
ベースゴム化合物は典型的には天然または合成ゴムを含む。好ましいベースゴムはシス−構造を少なくとも40%、好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも約95%有する1,4−ポリブタジエンである。最も好ましくは、ベースゴムは高ムーニー粘度のゴムである。好ましくは、ベースゴムのムーニー粘度は約35より大きく、より好ましくは約50より大きい。好ましくは、ポリブタジエンゴムの分子量は約400,000より大きく、そ多分散性はやく2より大きくない。ポリマーの分子量の分散の程度の一般的な指標は、多分散性であり、これは重量平均分子量Nの数平均分子量Mに対する非として定義される。多分散性(「分散性」)は、ポリマー鎖が同一の重合度を共有する程度の指標にもなる。Nは常にM以上であるから、定義上、多分散性は1.0以上である。そのようなゴム化合物は、アクロンのバイエル(Bayer of Akron,OH)、東京のウベ工業(UBE Industries of Tokyo,日本)、およびヒューストンのシェル(Shell of Houston,TX)から市販品として入手可能である。コアの性質を変性するために、ポリブタジエンに本技術分野で公知の他のエラストマー、例えば天然ゴム、ポリイソプレンゴムおよび/またはスチレン−ブタジエンゴムを混合してもよい。
【0021】
適切な共反応剤はジアクリレート、ジメタクリレート、またはモノメタクリレートの金属塩を含む。好ましくは、共反応剤は、亜鉛ジアクリレート(ZDA)であり、ゴム化合物100部あたり(phr)約5から約40の量だけ、より好ましくは、約5から約30の量だけ、最も好ましくは、約10から約20だけ存在する。適切な架橋剤は、硬化サイクル中で分解する公知の重合開始剤のいずれであってもよい。適切な開始剤は有機ペルオキシド化合物、例えばジクミルペルオキシドである。純粋な形態では、オキペルオキシドの好ましい量は、約0.25phrから約2.5phrである。任意のフィラーを任意の所望の量だけ用いて、比重、曲げ弾性率、慣性モーメント、流動特性、その他の、コアの特性を、修正できる。適切なフィラーは、これに限定されないが、タングステン、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、シリカ、酸化金属、セラミックおよびファイバを含む。
【0022】
この発明のポリブタジエンゴム組成物は、オプションとしてハロゲン化チオフェノール化合物を含んでよい。ハロゲン化チオフェノールは好ましくは0.01pphから約5pph、より好ましくは約2.2pphから約5pph、最も好ましくは約2.3pphから4pphだけ存在する。ハロゲン化チオフェノール化合物は、ペンタフルオロチオフェノール;2−フルオロチオフェノール;3−フルオロチオフェノール;4−フルオロチオフェノール;2,3−フルオロチオフェノール;2,4−フルオロチオフェノール;3,4−フルオロチオフェノール;3,5−フルオロチオフェノール;2,3,4−フルオロチオフェノール;3,4,5−フルオロチオフェノール;2,3,4,5−テトラフルオロチオフェノール;2,3,5,6−テトラフルオロチオフェノール;4−クロロテトラフルオロチオフェノール;ペンタクロロチオフェノール;2−クロロチオフェノール;3−クロロチオフェノール;4−クロロチオフェノール;2,3−クロロチオフェノール;2,4−クロロチオフェノール;3,4−クロロチオフェノール;3,5−クロロチオフェノール;2,3,4−クロロチオフェノール;3,4,5−クロロチオフェノール;2,3,4,5−テトラクロロチオフェノール;2,3,5,6−テトラクロロチオフェノール;ペンタブロモチオフェノール;2−ブロモチオフェノール;3−ブロモチオフェノール;4−ブロモチオフェノール;2,3−ブロモチオフェノール;2,4−ブロモチオフェノール;3,4−ブロモチオフェノール;3,5−ブロモチオフェノール;2,3,4−ブロモチオフェノール;3,4,5−ブロモチオフェノール;2,3,4,5−テトラブロモチオフェノール;2,3,5,6−テトラブロモチオフェノール;ペンタヨードチオフェノール;2−ヨードチオフェノール;3−ヨードチオフェノール;4−ヨードチオフェノール;2,3−ヨードチオフェノール;2,4−ヨードチオフェノール;3,4−ヨードチオフェノール;3,5−ヨードチオフェノール;2,3,4−ヨードチオフェノール;3,4,5−ヨードチオフェノール;2,3,4,5−テトラヨードチオフェノール;2,3,5,6−テトラヨードチオフェノール;およびこれらの亜鉛塩、その金属塩およびその混合物である。金属塩は、亜鉛、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、およびリチウムであるが、亜鉛が好ましい。ペンタクロロチオフェノールは、ストウのストラクトルカンパニー(Struktol Company,Stow,OH)から市場を通じて入手可能である。ペンタクロロチオフェノールは市場を通じてサンフランシスコのエキナケム(eChinachem of San Francisco,CA)から純粋な形態でまたは塩の形態で入手可能である。亜鉛ペンタクロロチオフェノールはエキナケム(eChinachem、San Francisco,CA)から入手できる。
【0023】
好ましいポリブタジエンゴム組成物は、さらに、α,β−不飽和カルボン酸またはその金属塩、有機過酸化物、およびフィラーを含んでよい。また’448特許出願において検討されるように、ハロゲン化チオフェノールを有する他の好ましいポリブタジエンゴム化合物は、約40ムーニーから約60ムーニーの範囲の粘度を有する中程度ムーニー粘度のポリブタジエンである。
【0024】
この発明は、また、コアおよびカバーの間に配されたゴルフボールの中間層、好ましくは、厚い中間層用の、「改質」ソフト、弾力性熱可塑性アイオノマーに関する。これら「ソフト」なアイオノマーは、典型的には、(a)酸コポリマーまたは上述のように製造されたメルトプロセス可能なアイオノマーと(b)1または複数の有機酸またはその塩とのメルトブレンドを含み、すべての酸(a)および(b)のうちの80%より多く、好ましくは90%より多くのものがカチオン源により中和されている。好ましくは、すべての酸(a)および(b)の100%がカチオン源により中和されている。好ましくは、酸(a)および(b)の中和に必要とされる量より多くのカチオン源が、酸(a)および(b)を中和するのに用いられる。脂肪酸または脂肪酸塩とブレンドすることが好ましい。
【0025】
有機酸またはその塩が、コポリマーの柔軟性を増大させるのに十分なだけ添加される。好ましくは、コポリマーの残存のエチレン結晶性を実質的に除去するのに十分な量、有機酸またはその塩が添加される。
【0026】
好ましくは、有機酸またはその塩は、コポリマーおよび有機酸の全量に対して少なくとも約5%(重量ベース)だけ添加される。より好ましくは、有機酸またはその塩は少なくとも約15%、さらにより好ましくは少なくとも約20%添加される。好ましくは、有機酸は、コポリマーおよび有機酸の全量に対して約50%(重量ベース)まで添加される。より好ましくは、有機酸またはその塩は約40%まで、さらにより好ましくは約35%まで添加される。非揮発性(non−volatile)、非移行性(non−imigrate)の有機酸は、好ましくは、1または複数の脂肪族、単官能性有機酸またはその塩であり、以下に記述されるとおりであり、具体的には、36個未満の炭素原子を有する、1または複数の脂肪族、単官能性飽和または不飽和有機酸であり、好ましくは、ステアリン酸またはオレイン酸である。脂肪酸または脂肪酸塩が最も好ましい。
【0027】
脂肪酸(塩)改質のプロセスは当技術分野で知られている。具体的には、この発明の改質された高中和のソフト弾力性の酸コポリマーアイオノマーは、つぎの(a)および(b)により製造できる。
(a)(1)柔軟化モノマーまたは他の手段を添加して結晶性を破壊させた、エチレン、α,β−エチレン系不飽和C3−8カルボン酸コポリマーまたはそのメルトプロセス可能なアイオノマーに、(2)実質的に弾力性を増強させ残存のエチレン結晶性を破壊(好ましくは除去)するにたる非揮発性、非移行性の有機酸を、同時に、または順次にメルトブレンドし、同時にまた順次に、
(b)すべての酸部分(酸コポリマー中の酸部分、および非揮発性、非移行性有機酸が有機酸であればその有機酸中の酸部分を含む)の中和レベルを所望のレベルにするのに十分な量のカチオン源を添加する。
【0028】
組成物中のX対Yの重量比は少なくとも約1:20である。好ましくは、X対Yの重量比は少なくとも約1:15であり、より好ましくは約1:10である。さらに組成物中のX対Yの重量比は約1:1.67までであり、より好ましくは、約1:2までである。最も好ましくは、組成物中のX対Yの重量比は約1:2.2までである。
【0029】
この発明でアイオノマーを生成するために使用される酸コポリマーは好ましくは「直接」酸コポリマー(高レベルの軟化モノマーを含む)である。上述のとおり、酸コポリマーは少なくとも部分的に中和され、好ましくは組成物中の少なくとも約40%のXが中和される。より好ましくは少なくとも約55%のXが中和される。さらに好ましくは少なくとも約70%、最も好ましくは少なくとも約80%のXが中和される。コポリマーが高度に中和される場合(例えば、少なくとも45%、好ましくは50%、55%、70%または80%の酸部分)、酸コポリマーのMIを十分に大きくして、中和された樹脂のMIが、ASTM D−1238、条件Eで100°C、2160グラムの重さで、測定できるようにする。好ましくは、得られたMIは少なくとも0.1であり、好ましくは少なくとも0.5であり、より好ましくは少なくとも1.0またはそれ以上である。好ましくは、高度に中和したコポリマーについて、酸コポリマーベースの樹脂のMIは少なくとも20または少なくとも40、少なくとも70であり、より好ましくは、少なくとも150である。
【0030】
酸コポリマーは好ましくはαオレフィン、具体的にはC3−8、α,β−エチレン系不飽和カルボン酸、具体的にはアクリル酸およびメタクリル酸、およびアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートから選択された柔軟化モノマーを含み、アルキル基は1−8の炭素原子を含むコポリマーである。「柔軟化」は結晶性が破壊(ポリマーの結晶性が少なくなる)されることを意味する。アルファオレフィンはC−Cのアルファオレフィンであるが、この発明に使用するに際してはエチレンが最も好ましい。したがってアルファオレフィンとしてエチレンを中心に説明する。
【0031】
酸コポリマーは、アルファオレフィンがエチレンの場合、E/X/Yコポリマーとして記述でき、ここで、Eはエチレン、Xはα,β−エチレン系不飽和カルボン酸、かつYは柔軟化コモノマーである。Xは好ましくはポリマーの2〜30重量%(より好ましくは4〜20重量%、最も好ましくは5〜15重量%)の量で存在する。Yは好ましくはポリマーの17〜40重量%(より好ましくは20〜40重量%、最も好ましくは24〜35重量%)の量で存在する。
【0032】
高レベルの酸(X)を伴うエチレン酸コポリマーは、モノマー・ポリマー層分離に起因して、連続して重合するように準備するのが困難である。ただし、米国特許第5,028,674号に記載されている「共溶媒法」(co−solvent technology)を採用して、または、低酸を伴うコポリマーを準備できる圧力よりいくらか大きな圧力を採用することにより、この困難を回避できる。
【0033】
具体的な酸コポリマーはエチレン/(メタ)アクリル酸/n−ブチル(メタ)アクリレート、エチレン/(メタ)アクリル酸/イソ−ブチル(メタ)アクリレート、エチレン/(メタ)アクリル酸/メチル(メタ)アクリレート、およびエチレン/(メタ)アクリル酸/メチル(メタ)アクリレートターポリマーである。
【0034】
採用される有機酸は、脂肪族、モノ官能性(飽和、不飽和または多不飽和)有機酸であり、具体的には36個未満の炭素原子を具備するものである。脂肪酸または脂肪酸塩が好ましい。塩は広範囲のうちのいずれのものでもよく、具体的には、有機酸のバリウム、リチウム、ナトリウム、亜鉛、ビスマス、カリウム、ストロンチウム、マグネシウムまたはカルシウムの塩である。この発明に有益な具体的な有機酸は、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリル酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、およびリノール酸である。
【0035】
オプションのフィラー要素は上述の要素のブレンドの密度を調製するために選択され、その選択は、部品(例えば、カバー、アントル、コアー、センター、多層コアーまたはボール中の中間層)ごとに異なり、また所望のゴルフボールの種類(例えばワンピース、ツーピース、スリーピースまたはマルチピースボール)ごとに異なる。これについては以下に詳述する。
【0036】
一般に、フィラーは約4g/cmを上回る密度、好ましくは5g/cmを上回る密度の無機物であり、組成物の全重量を基準にして0から役60重量%の間の量だけ存在する。有益なフィラーの例は、酸化亜鉛、硫化バリウム、ケイ酸鉛、炭化タングステン、その他、ゴルフボールに用いられる周知の他のフィラーである。フィラー材料は非反応性またはほとんど非反応性であって、かつ硬質化させたり圧縮を大きくしたりするものでなく、また著しく反発係数を減少させたりしないことが好ましい。
【0037】
この発明の実施するうえで有益な付加的なオプションの添加物は、酸コポリマーワックス(例えばAllied wax AC143で、これはエチレン/16−18%アクリル酸コパリマーで、平均分子量が2040と考えられている)であり、これは、フィラー材料(例えばZnO)とエチレンコパリマーの酸部分との間の反応を阻止するのに役立つ。他のオプションの添加物はTiOであり、これは漂白剤、光沢剤、界面活性剤、処理助剤として用いられる。
【0038】
アイオノマー(HNPタイプまたはその他)は通常のアイオノマーコポリマー(ジ−、ター−等)とブレンドしてもよく、周知の手法を用いて製品特性を所望のものに調整する。ブレンドしても、依然として、従来のアイオノマーをベースにしてブレンドした場合に較べて硬度が小さく、弾性率が大きい。
【0039】
また、アイオノマーは非イオン性熱可塑性樹脂とブレンドして製品特性を調製しても良い。非イオン性の熱可塑性樹脂は、これら例示に限定されないが、熱可塑性エラストマー例えばポリウレタン、ポリ−エーテル−エステル、ポリ−アミド−エーテル、ポリエーテル−尿素、PEBAX(ポリエーテル−ブロック−アミドをベースにしたブロックコポリマーの族で、Atochemから商業的に入手できる)、シチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロックコポリマー、スチレン(エチレン−ブチレン)−スチレンブロックコポリマー、その他、ポリアミド(オリゴマーまたはポリマー)、ポリエステル、ポリオレフィン(PE、PP、E/Pコパリマー等を含む)、種々のコモノマーを伴うエチレンコポリマー(これは例えばビニルアセテート、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、エポキシ官能化モノマー、CO等)、マレイン酸無水物グラフト化、エポキシ化等を伴う官能価コポリマー、EPDMのようなエラストマー、メタローセン触媒PEおよびコポリマー、熱硬化性エラストマーの粉砕粉末、その他を含む。そのような熱可塑性ブレンドでは、第1の熱可塑性材料は約1%から約99%の重量であってよく、また、第2の熱可塑性材料は約99%から約1%の重量であってよい。
【0040】
さらに、米国特許第6,953,820号および米国特許第6,653,382号はソリッド球として製造される高CORの組成物を検討しており、その開示内容は参照してここに組み入れる。
【0041】
この発明のHNP熱可塑性組成物は、(a)36個未満の炭素原子を有する脂肪族、モノ官能性有機酸および(b)エチレン、α,β−エチレン系不飽和C3−8カルボン酸コポリマーおよびそのアイオノマーを含み、(a)および(b)のすべての酸のうちの90%超、好ましくは100%近く、より好ましくは100%が中和される。
【0042】
上述のHNP熱可塑性組成物は好ましくはメルト加工可能な、高中和(90%超、好ましくは00%近く、より好ましくは100%)の(1)柔軟化モノマーの添加または他の手段、例えば高酸レベルにより結晶性を破壊させた、エチレン、α,β−エチレン系不飽和C3−8カルボン酸コポリマー、(2)実質的に残存のエチレン結晶性を破壊するにたるように選択された非揮発性、非移行性の薬剤、例えば有機酸(または塩)のポリマーを含む。有機酸(または塩)以外の薬剤を用いてもよい。
【0043】
酸コポリマーまたはアイオノマーを特別の有機酸(またはその塩)で改質することにより、加工性または特性、例えば延伸性や強靱性を失わせることなくその酸ポリマーを高度に中和できることがわかった。この発明で採用される有機酸は、脂肪族、モノ官能性、飽和または不飽和有機酸、とくに、炭素原子の数が36未満のもの、また非揮発性で非移行性がありイオン性配列軟化性およびエチレン結晶抑制特性を有するものである。
【0044】
十分な有機酸を添加することにより、アイオノマーを生成するための酸コポリマー中の90%を上回る、100%近くの、また好ましくは100%の酸部分が中和でき、この際、加工性や延伸性、強靱性のような特性を損なうことがない。
【0045】
メルトプロセス可能な、高中和の酸コポリマーアイオノマーはつぎのようにして製造できる。
(a)(1)エチレン、α,β−エチレン系不飽和C3−8カルボン酸コポリマーまたはそのメルトプロセス可能なアイオノマー(アイオノマーは処理不能すなわちメルトプロセス不能なレベルまで中和されていない)に、(1)36個未満の炭素原子を有する1または複数の脂肪族、モノ官能性、飽和または不飽和有機酸またはその塩をメルトブレンドし、さらに同時に、または順次に、
(b)すべての酸部分(酸コポリマー中および有機酸中のものを含む)の中和レベルを90%を越え、好ましくは100%近く、より好ましくは100%に増加させるに足る量のカチオン源を添加する。
【0046】
好ましくは、この発明の高中和熱可塑材はつぎのようにして製造される。
(a)(1)柔軟化モノマーまたは他の手段を添加して結晶性を破壊させた、エチレン、α,β−エチレン系不飽和C3−8カルボン酸コポリマーまたはそのメルトプロセス可能なアイオノマーに、(2)実質的に残存のエチレン結晶性を除去するにたる非揮発性、非移行性の有機酸を、メルトブレンドし、同時に、または順次に、
(b)すべての酸部分(酸コポリマー中の酸部分、および非揮発性、非移行性有機酸が有機酸であればその有機酸中の酸部分を含む)の中和レベルを90%を越え、好ましくは100%近く、より好ましくは100%のレベルにするのに十分な量のカチオン源を添加する。
【0047】
この発明でアイオノマーを製造するために用いられる酸コポリマーは好ましくは「直接」酸コポリマーである。酸コポリマーは好ましくはアルファオレフィン、具体的にはC3−8、α,β−エチレン系不飽和カルボン酸、具体的にはアクリル酸およびメタクリル酸、コポリマーである。それらはオプションとして第3の柔軟化モノマーを含んで良い。「柔軟化」は結晶性が破壊(ポリマーの結晶性が少なくなる)されることを意味する。適切な「柔軟化」コモノマーはアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートから選択された柔軟化モノマーであり、アルキル基は1−8の炭素原子を含む。
【0048】
この発明の中間層は、オプションとして、耐久性がある低変形材料、例えば、金属、堅固なプラスチック、または、高強度有機または無機フィラーまたはファイバで強化されたポリマー、またはそれらのブレンドまたは複合材を含んで良く、これについては以下に検討する。適切はプラスチックまたはポリマーは、これに限定されないが、高シス−、またはトランス−ポリブタジエン、1または複数の部分的にまたは十分に中和されたアイオノマー(これは金属イオンが有機酸の塩である場合には当該金属イオンで中和されたものを含む)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンを含むポリオレフィン、および、それらのコポリマー(ポリエチレンアクリル酸またはメタアクリル酸コポリマーを含む)、または、エチレンと、メチルアクリレート、n−ブチル−アクリレート、またはイソ−ブチル−アクリレートのような柔軟化アクリレートクラスのエステルと、アクリル酸またはメタクリル酸のようなカルボン酸とのターポリマー(例えば、ポリエチレン−メタクリル酸−nまたはイソ−ブチルアクリレートおよびポリエチレン−アクリル酸−メチルアクリレート、ポリエチレンビニルアセテート、ポリエチレングリシジルアルキルアクリレートを含むターポリマー)を含む。適切なポリマーは、メタローセン触媒ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミン、非イオン性熱可塑性エラストマー、コポリエーテル−エステル、コポリエーテル−アミド、EPR、EPDM、熱可塑性または熱硬化性ポリウレタン、ポリ尿素、ポリウレタンアイオノマー、エポキシ、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリイソプレン、およびこれらのブレンドも含む。メタローセンの場合には、ポリマーは、フリーラジカル源、例えば、過酸化物や高照射により架橋されて良い。適切なポリマー材料は米国特許第6,187,864号、同第6,232,400号、同第6,245,862号、同第6,290,611号、同第6,142,887号、同第5,902,855号、および同第5,306,760号ならびにPCT公報WO01/29129および同WO00/23519に列挙されたものも含む。
【0049】
好ましくは、中間層をポリブタジエンまたは他の合成または天然ボムから製造するときには、ゴム組成物は、少なくとも50phrの適切な共反応剤で硬度に架橋され、これはジアクリレート、ジメタクリレート、またはモノメタクリレートの金属塩を含む。好ましくは、共反応剤はジアクリレート亜鉛である。高架橋ゴム化合物は本出願人の「ゴルフボールおよびそのスピンレートを制御する方法」という題名の、2002年7月20日出願の出願番号10/178,580の特許出願に検討されている。その検討内容は参照してここに組み入れる。
【0050】
必要であれば、ゴルフボールは非常に堅固な材料、例えば、所定の金属を含んで良く、これは、非制約的には、タングステン、スチール、チタン、クロム、ニッケル、同、アルミニウム、亜鉛、マンガン、鉛、錫、鉄、モリブデン、およびこれらの合金を含む。適切な非常に堅固な材料は米国特許第6,244,977号に列挙されているものを含む。比重が大きなフィラー、例えば、米国特許第6,287,217号に開示されているものを内側コアに組みこんでも良い。適切なフィラーおよび複合材は、これに限定されないが、グラファイトを含むカーボン、ガラス、アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、炭化珪素、炭化ホウ素、天然または人工絹を含む。
【0051】
この発明の1実施例に従うと、ゴルフボールは、少なくとも2つのコア層、最も内側のコア、および、外側コア、ならびにカバーを有する。好ましくは、外側コアは、柔軟な、低圧縮、高CORの上述のゴム組成物を有し、内側コアは上述の低ひずみ材料を有する。硬く、低ひずみの内側コアは高クラブ速度の変形に抗して最適レベルのCORを維持し、他方、弾力性のある外側層が低クラブ速度のときに高CORを実現し、ショートアイアンクラブのプレイに要求される条件を実現する。したがって、この発明のボールは、高クラブヘッド速度および低クラブヘッド速度において大きな初速度および高いCORを実現し、同時にグリーンサイドのプレイに望まれるソフトなフィーリングおよびサウンドを維持する。
【0052】
外側コア用の他のゴム化合物は、任意の低圧縮、高弾力性のポリマーであってもよく、このポリマーは、シス−ポリイソプレン、トランス−ポリイソプレン、またはバラタを含む天然ゴム、1,2−ポリブタジエン、シス−ポリブタジエン、トランス−ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ポリ(ノルボルネン)、ポリオクテナメル、ポリペンテナメルを含む合成ゴム、その他のジエンポリマーを有する。外側コアは複数の層、例えばラミネートを含んで良く、この場合、いくつかの薄く柔らかい層が積層さえ、その他、一緒に接着される。
【0053】
堅固な内側コアがある場合には、好ましくは、その曲げ弾性率が約25000psiから約250000psiの範囲である。より好ましくは、堅固な内側コアの曲げ弾性率は、約75000psiから約225000psiの範囲であり、最も好ましくは、約80000psiから約200000psiの範囲である。さらに、堅固な内側コアのショアCスケールのデュロメータ硬度は約70より大きな範囲にある。堅固な内側コアの圧縮は好ましくは約60PGAまたはAttiより大きい。より好ましくはこの圧縮は約70より大きく、最も好ましくは約80より大きい。ショア硬度はASTM D−2240−00で測定され、曲げ弾性率はASTM D6272−98に従ってテスト資料を準備した後約2週間で測定される。
【0054】
好ましくは、外側コアはより柔らかく、その圧縮は内側コアより小さい。好ましくは、外側コアの曲げ弾性率は約500psiから約25000psiである。より好ましくは、曲げ弾性率は約15000psiより小さい。外側コアの硬度は、好ましくはショアCスケールで約25から約70である。より好ましくは、硬度はショアCスケールで60未満である。
【0055】
内側コアおよび外側コアの間に硬度の差を実現する1つの好ましい方法は、内側コアを非発泡ポリマーから製造し、外側コアを上述の適切な材料から選択した発泡ポリマーから製造することである。代替的には、外側コアを比重が減少された適切な材料から製造してよい。この実施例において、内側コアおよび外側コアは同一ポリマーまたはポリマー性組成物から製造して良い。
【0056】
好ましくは、外側コア層の厚さは約0.001インチから約0.1インチであり、好ましくは、約0.01インチから約0.08インチであり、より好ましくは、約0.03インチから約0.05インチである。好ましくは、全体のコアの直径は約1.50インチ未満であり、好ましくは、約1.45インチ未満、より好ましくは約0.5インチから約1.4インチである。全体のコアの直径が先に列挙した好ましい寸法である限り内側コアの寸法は任意で良い。
【0057】
カバーは、丈夫で耐切断性があり、所望の性能特性に基づいてゴルフボールカバーとして採用されている通常の材料から選択する必要がある。カバーは1または複数の層を有してよく、例えば、外側カバー層および内側カバー層を有して良い。カバー材料、例えば、アイオノマー樹脂、アイオノマー樹脂のブレンド、および熱可塑性または熱硬化性ウレタンおよび尿素を当業界で知られているように採用して良い。
【0058】
カバーは、好ましくは、弾力性のある、比重を減少させていない層である。適切な材料は、ボールの圧縮、反発係数、スピンレート当を調整できる任意の材料を含み、米国特許第6,419,535号、同第6,152,834号、同第5,919,100号および同第5,885,172号に開示されている。アイオノマー、アイオノマーブレンド、熱硬化性または熱可塑性ポリウレタン、メタローセン、ポリウレタンおよびポリ尿素(およしそのハイブリッド)が好ましい材料である。カバーは、注型方法、反応性射出成型、射出または圧縮成型、スプレイまたは浸漬方法により製造できる。好ましくは、カバーはコアのまわりに注型され、より好ましくはカバーは厚い中間層の回りに注型され、ポリ尿素を有する。
【0059】
好ましい実施例では、ゴルフボールは、外側カバー層に加えて、外側コア層または内側カバーとして、中間層を含む。米国特許第5,885,172号および同第6,132,324号に開示されるように、外側カバー層は柔らかな熱硬化性材料、例えば注型ポリウレタンまたはポリ尿素から製造され、内側カバーがアイオノマー材料、好ましくは少なくとも2つのアイオノマーを含むものから製造される。
【0060】
中間層が内側カバー層のときには、これは、好ましくは、高曲げ弾性率の材料から形成され、この材料は、ロングショットを打ったときに(例えばドライバまたはロングアイアン)現在要求されている、低スピン、距離特性に寄与する。具体的には、内側カバー層のショアD硬度は、約55以上、好ましくは約55−77、最も好ましくは約60−70である。内側カバー層の曲げ弾性率は少なくとも約50000psi、好ましくは約50000psiから約150000psi、最も好ましくは75000psiから125000psiである。好ましい実施例において、中間層の厚さは、約0.1インチから約0.5インチ、より好ましくは約0.11インチから約0.12インチ、最も好ましくは約0.115インチから約0.119インチである。他の薄い層の実施例では、中間層の厚さは、約0.020インチから約0.045インチ、より好ましくは約0.030インチから約0.040インチ、最も好ましくは約0.035インチである。
【0061】
外側カバー層を比較的ソフトな熱硬化材料から形成して「ショートゲーム」ショット用にバラタボールのソフトなフィーリングおよび高スピンのプレイ特性を模倣できる。具体的には、外側カバー層のショアD硬度は、65未満、または、約20から約65、好ましくは約30から約60、最も好ましくは約35から約50である。さらに外側カバー層の材料は、ゴルフボールカバーの使用に適した磨耗耐性を有さなければならない。この発明の外側カバー層は任意の適切な熱硬化性材料を有してよく、これは、好ましくは、注型可能な反応性液体材料から形成する。外側カバー層用の好ましい材料は、これに限定されないが、熱硬化性ウレタンおよびポリウレタン、熱硬化性ウレタンアイオノマー、および熱硬化性ウレタンエポキシを含む。適切なポリウレタンアイオノマーの例は米国特許第5,692,974号に開示されており、その開示内容は参照してここに組み入れる。熱硬化性ポリウレタンおよびポリ尿素はこの発明のボールの外側カバー層に好適である。最も好ましくは、外側カバー層は注型尿素材料である。
【0062】
この発明の他の実施例に従うと、ゴルフボールは、比較的小さく、低圧縮、高CORの内側コアを有する。内側コア(またはセンタ)の直径は好ましくは1.40インチ未満またはこれより小さく、より好ましくは約0.25インチから約1.25インチ、最も好ましくは約0.5インチから約1.0インチである。コア(センタ)または中間層の所望の厚さは、各層の材料の曲げ弾性率および所望のボールの全体の圧縮およびボールの変形に関連して選択できる。
【0063】
他の実施例において、内側コアは上述したようなハロゲン化チオフェノールを含有するゴム組成物から製造される。内側コアに適切な他のポリマーはポリエチレンコポリマー、EPR、EPDM、メタローセン触媒ポリマーまたは、上述の外側コアとの関連で検討した任意の材料を含む。ただし、好ましい圧縮、硬度およびCOEが満たされなければならない。ここに開示されるゴム化合物は好ましくは高シス−またはトランス−ポリブタジエンであり、その粘度は約40ムーニーから約60ムーニーである。最も好ましくは、ゴム組成物は高シスである。コアの硬度はショアCスケールで約70より大きく、好ましくはショアCスケールで80より大きい。また、コアのAtti圧縮は約60未満であり、好ましくは約50未満である。生成されたコアのCPRは、125ft/sの入力速度で測定して、少なくとも約0.730、より好ましくは少なくとも約0.800、最も好ましくは少なくとも約0.810である。
【0064】
好ましくは、中間層は低歪みのポリマー材料、例えば、アイオノマーであり、これは、低および高酸のアイオノマー、任意に部分的に、または十分に中和されたアイオノマー、または任意の熱可塑性または熱硬化性ポリマーを含む。中間層の曲げ弾性率は、好ましくは約10000psi以上、より好ましくは約10000psiから約100000psi、最も好ましくは約50000psiから約75000psiである。他の好ましい材料は、硬く、高曲げ弾性率のアイオノマー樹脂およびこれらのブレンドである。さらに、他の適切なマントル材料(コアおよびカバー材料も)は、米国特許第5,919,100号および国際公報WO00/23519および同WO01/29129に開示されている。WO01/29129に開示されている1つのとくに適切な材料は硬度に中和れたエチレンコポリマー、および1または複数の、炭素原子が36未満の脂肪族、単官能性有機酸またはその塩を有する溶融処理可能な組成物である。ただし、エチレンコポリマーのすべての酸のうちの90%より多くが中和されている。
【0065】
これらアイオノマーは、モノオレフィンのポリマーに、炭素原子数が3から12の不飽和モノ−またはジ−カルボン酸およびそのエステルからなるグループから選択した1または複数の要素に関連して異種金属結合(cross metallic bond)を実現することにより取得される(ポリマーが不飽和モノ−またはジ−カルボン酸および/またはそのエステルの重量の1から50%を含む)。より具体的には、そのような酸含有エチレンコポリマーのアイオノマー要素はE/X/Yコポリマーを含み、ここでEはエチレン、Xは、ポリマーの0−50重量パーセントの柔軟化コモノマー、例えばアクリレートまたはメタクリレート(好ましくは、0−25wt.%、最も好ましくは0−20wt.%)、Yはポリマーの5−35重量パーセントのアクリル酸またはメタクリル酸(好ましくは少なくとも約16wt.%mより好ましくは約16−35wt.%、最も好ましくは約16−20wt.%)であり、酸部分は1−90%(好ましくは少なくとも約40%、最も好ましくは少なくとも約60%)がカチオン、例えば、リチウム*、ナトリウム*、カリウム、マグネシウム*、カルシウム、バリウム、鉛、錫、亜鉛*、またはアルミニウム、またはそれらの組み合わせにより中和されてアイオノマーを製造する(「*」は好ましいものであることを示す)。具体的な酸含有エチレンコポリマは、エチレン/アクリル酸、エチレン/メタクリル酸、エチレン/アクリル酸/n−ブチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/n−ブチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/イソ−ブチルアクリレート、エチレン/アクリル酸/イソ−ブチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/メチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/n−ブチルメタクリレート、エチレン/アクリル酸/メチルメタクリレート、エチレン/メタクリル酸/n−ブチルメタクリレート、エチレン/アクリル酸/メチルメタクリレート、エチレン/アクリル酸/メチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/メチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/メチルメタクリレート、およびエチレン/アクリル酸/n−ブチルメタクリレートを含む。好ましい酸含有エチレンコポリマーは、エチレン/メタクリル酸、エチレン/アクリル酸、エチレン/メタクリル酸/n−ブチルアクリレート、エチレン/メタクリル酸/メチルアクリレート、およびエチレン/アクリル酸/メチルアクリレートコポリマーである。最も好ましい酸含有エチレンコポリマーは、エチレン/メタクリル酸、エチレン/アクリル酸、エチレン/(メタ)アクリル酸/n−ブチルアクリレート、エチレン/(メタ)アクリル酸/エチルアクリレート、およびエチレン/(メタ)アクリル酸/メチルアクリレートコポリマーである。
【0066】
アイオノマーを製造する態様は米国特許第3,262,272号に説明されるように当業界で周知である。そのようなアイオノマー樹脂はDuPont社からSURLYN(商標)の商標名の下で、また、Exxon社からIotek(商標)の商標名の下で、商業的に入手可能である。いくつかのとくに適切なSURLYN(商標)はSURLYN(商標)8140(Na)およびSURLYN(商標)8546(Li)であり、これらのメタクリル酸含量は約19%である。
【0067】
この発明のゴルフボールは、種々のコア構造、中間層、カバーおよびコーティングを具備する、ワンピース、ツーピース、多層、および糸巻ゴルフボールを含む。ゴルフボールコアは、中心から外側周囲まで至るコア全体を有する唯一の単一の層であってよく、また、センタとこれを取り巻く少なくとも1つの外側カバー層を有しても良い。センタ、コアの最内側の部分は、好ましくはソリッドであるが、空洞でも、液体充填、ゲル充填、気体充填であってもよい。外側コア層は、ソリッドでもよく、また、引っ張られた弾性材料から生成された糸巻層であってもよい。ゴルフボールのカバーは1または複数の層、例えば、内側および外側のカバー層を具備する二重カバーを含んでよい。オプションとして、付加的な層が、コアおよびカバーの間に配されて良い。この発明のゴルフボールにおいては、少なくとも1つの層が、8g・mil/100in/日以下の水蒸気透過率で硬度に中和された酸ポリマーを有するポリマー組成物から製造される。最も好ましい実施例では、この発明の組成物は多層ゴルフボールの(カバーおよびコアの間の)比較的厚い(0.110インチ以上)中間層中に存在する。
【0068】
ここで用いられるように、「高度に中和された酸ポリマー」は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは100%の酸基が中和された後の酸ポリマーを指す。この発明によれば、酸ポリマーまたは部分的に中和されている酸ポリマーが、伝統的にHNPを生産するために使用されているマグネシウムをベースにしたカチオン源より親水性が小さなカチオン源を用いて70%以上に中和されると、その結果として得られるこの発明のHNPは水蒸気透過率が改善された組成物を実現することが見いだされた。例えば、HNPを親水性が小さいカチオン源を用いて製造した場合、HNPを有するポリマー組成物の水蒸気透過率は8g・mil/100in/日以下、または、5g・mil/100in/日以下、または、3g・mil/100in/日以下、または、2g・mil/100in/日以下、1g・mil/100in/日以下、または1g・mil/100in/日未満である。ここで用いられるように、水蒸気透過率(MVTR)はg・mil/100in/日で与えられ、20°Cで測定され、ASTM F1249−99に従う。
【0069】
「より親水性が小さい」は、ここでは、カチオン源が通常のマグネシウムをベースにしたカチオン源に対して親水性が小さいことを意味するように用いられる。この発明のHNPはそのような親水性がより小さい1または複数のカチオン源を用いて製造される。親水性のより小さな適切なカチオン源の例は、これに限定されないが、シリコーン、シラン、珪酸誘導体、および錯体配位子;希土類元素の金属イオンおよび化合物;およびアルカリ金属、アルカリ土類金属、および遷移金属の親水性がより小さな金属イオンおよび化合物;およびこれらの組み合わせを含む。親水性がより小さな具体的なカチオン源は、これに限定されないが、カリウム、セシウム、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、亜鉛、錫、および希土類金属の金属イオンおよび化合物を含む。カリウムをベースにした化合物が好ましい親水性がより少ないカチオン源であり、とくに、E.I.DuPont社から商業的に入手可能なOxane(商標)が好ましい。Oxaneはモノ過硫酸塩であり、ここで、モノ過硫酸カリウムは2KHSO・KHSO・KSO[カリウム水素ペルオキシモノスルフェートスルフェート(5:3:2:2)]の化学式の三塩の要素として損辞する活性成分である。親水性がより小さなカチオン源の量は所望の中和のレベルに基づいて容易に決定できる。
【0070】
この発明の高度に中和された酸ポリマーは、α,β−エチレン系の不飽和モノまたはジカルボン酸のホモポリマーおよびコポリマーの塩、およびこれらの組み合わせである。用語「コポリマー」は、ここで使用されるように、2種類のモノマーを含むポリマー、3種類のモノマーを含むポリマー、4以上の種類のモノマーを含むポリマーを含む。好ましいα,β−エチレン系の不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸は、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸である。(メタ)アクリル酸がとりわけ好ましい。ここで使用される「(メタ)アクリル酸」はメタアクリル酸および/またはアクリル酸を意味する。同様に「(メタ)アクリレート」はメタクリラートおよび/またはアクリレートを意味する。好ましい酸ポリマーはCからCのα,β−エチレン系の不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸およびエチレンまたはCからCのα−オレフィンであり、オプションとして軟化用モノマーを含む。とくに好ましい酸ポリマーは、エチレンおよび(メタ)アクリル酸のコポリマーである。
【0071】
軟化用モノマーを含むときには、そのようなコポリマーはE/X/Yタイプのコポリマーと呼ばれ、ここで、Eはエチレン、XはCからCのα,β−エチレン系の不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸、Yは軟化用モノマーである。軟化用モノマーは典型的にはアルキル(メタ)アクリレートであり、ここでアルキル基は1から8個の炭素原子を含む。好ましいE/X/Yタイプのコポリマーは、Xが(メタ)アクリル酸および/またはYが(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、およびエチル(メタ)アクリレートであるコポリマーである。より好ましいE/X/Yタイプのコポリマーは、エチレン/(メタ)アクリル酸/n−ブチルアクリレート、エチレン/(メタ)アクリル酸/メチルアクリレート、およびエチレン/(メタ)アクリル酸/エチルアクリレートである。
【0072】
酸コポリマー中のエチレンまたはCからCのα−オレフィンの量は、典型的には、コポリマーの全重量を基準にして、少なくとも15wt%、好ましくは少なくとも25wt%、さらに好ましくは少なくとも40wt%、それよりさらに好ましくは60wt%である。酸コポリマー中のCからCのα,β−エチレン系の不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸の量は、典型的には、コポリマーの全重量を基準にして、1wt%から35wt%、好ましくは4wt%から35wt%、さらに好ましくは6wt%から35wt%、それよりさらに好ましくは8wt%から20wt%である。酸コポリマー中のオプションの軟化コモノマーの量は、典型的には、コポリマーの全重量を基準にして、0wt%から50wt%である。
【0073】
適切な酸ポリマーは、部分的に中和されている酸ポリマーも含む。適切な部分的に中和されている酸ポリマーの例は、これに限定されないが、E.I.DuPont社から商業的に入手可能なSURLYN(商標)アイオノマー;Honeywell International社から商業的に入手可能なAClyn(商標)アイオノマー;およびExxonMobile Chemical社から商業的に入手可能なIotek(商標)アイオノマーを含む。付加的な適切な酸ポリマーは例えば米国特許第6,953,820号および米国特許出願公開2005/0049367に記載されており、それらの記載出願の内容は参照してここに組み入れる。
【0074】
この発明の酸ポリマーは、すべてのモノマーを同時に添加してポリマーを重合するダイレクトコポリマーであってよく、これは例えば米国特許第4,351,931号に記載されており、参照してその内容をここに組み入れる。アイオノマーは、米国特許第3,264,272号に記載されるようにダイレクトコポリマーから製造でき、この特許の内容は参照してここに組み入れる。代替的には、この発明の酸ポリマーは、既存のポリマーにモノマーがグラフト化されるグラフトコポリマーであってよく、これは例えば米国特許出願公開2002/0013413に記載されており、その内容は参照してここに組み入れる。
【0075】
この発明の組成物は、好ましくは中間層用であり、少なくとも1つの発明に係るHNP(すなわち親水性がより小さいカチオン源を用いて製造されたもの)と、オプションの1または複数の付加的なHNPを含む。付加的なHNPが含まれる場合、その付加的なHNPは1または複数の発明に係るHNPおよび/または1または複数の通常のHNP(すなわち通常のカチオン源を用いて製造されたもの)であってよい。組成物中のHNPの総量は、組成物のポリマーの総重量を基準にして好ましくは少なくとも30wt%、より好ましくは少なくとも50wt%、されに好ましくは50wt%から99.5wt%、さらに好ましくは、60wt%から98wt%である。好ましくはこの発明に係るHNPの量は組成物中で少なくとも30wt%である。
【0076】
加工可能にするために、この発明のアイオノマー含有組成物のメルトフロー指数は少なくとも0.5g/10分である。好ましくは、HNP含有組成物のメルトフロー指数は、0.5g/10分から100.0g/10分、より好ましくは、1.0g/10分から10.0g/10分、さらに好ましくは、1.0g/10分から5.0g/10分であり、さらに好ましくは、1.0g/10分から4.0g/10分である。
【0077】
この発明の組成物は、オプションとして、1または複数のメルトフロー修正剤を含んでも良い。適切なメルトフロー修正剤は、有機酸およびその塩、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエーテル、熱可塑性ポリ尿素、多価アルコール、およびそれらの組み合わせを含む。適切な有機酸は、脂肪族有機酸、芳香族有機酸、飽和モノ官能性有機酸、不飽和モノ官能性有機酸、マルチ不飽和モノ官能性有機酸、およびそれらのダイマー誘導体である。適切な有機酸の具体的な例は、これに限定されないが、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、リノール酸、ミリスチン酸、安息香酸、パルミチン酸、フェニル酢酸、ナフタレノン酸、それらのダイマー誘導体を含む。この発明の組成物中に1または複数の有機酸塩が含まれる場合、有機酸塩を生成するために用いたカチオン源は好ましくは親水性がより小さなカチオン源である。適切な有機酸は例えば米国特許第6,756,436号により詳細に説明されており、その内容は参照してここに組み入れる。
【0078】
この発明の組成物中に使用して好適な付加的な非脂肪酸メルトフロー修正剤は、米国特許出願11/216725および同11/216726に記載されているものを含み、その開示内容は参照してここに組み入れる。
【0079】
この発明の組成物は、組成物の全重量を基準にして、0wt%から60wt%の量の1または複数の添加物を含んで良い。適切な添加物は、これに限定されないが、化学膨張および発泡剤、光学的明色化剤、着色剤、蛍光剤、白色剤、UV吸収剤、光安定剤、消泡剤、処理助剤、雲母、タルク、ナノフィラー、酸化防止剤、安定化剤、軟化剤、香料成分、可塑剤、衝撃修正剤、TiO、酸コポリマーワックス、界面活性剤、およびフィラー、例えば、酸化亜鉛、酸化錫、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、クレイ、タングステン、炭化タングステン、シリカ、亜鉛シリケート、リグリンド(リサイクルした材料)、およびこれらの混合物を含む。適切な添加剤は例えば米国特許出願公開2003/0225197に十分に説明されており、参照してここに組み入れる。
【0080】
中間層はオプションとしてこの発明のHNPに1または複数の付加的なポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーおよびエラストマーをブレンドして製造してよい。この発明のHNPにブレンドするのに適した熱可塑性ポリマーの例は、これに限定されないが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアセタール、ポリラクトン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレンマレイン酸無水物、ポリイミド、芳香族ポリケトン、アイオノマーおよびアイオノマー先駆体、酸コポリマー、通常のHNP、ポリウレタン、グラフト化または非グラフト化メタローセン触媒ポリマー、シングルサイト触媒重合ポリマー、高結晶性酸ポリマー、カチオン性アイオノマー、およびこれらの組み合わせを含む。ブレンドの適した具体的なポリオレフィンは1または複数の線形または分岐または環状のC−C40のオレフィン、具体的には、1または複数のC−C40のオレフィン、C−C20のα−オレフィン、または、C−C10のα−オレフィンで共重合したエチレンまたはプロピレンを含むポリマーである。ブレンドに適した具体的な従来のHNPは、これに限定されないが、米国特許第6756436号、同第6894098号、および同第6953820号に開示されている1または複数のHNPを含み、その開示内容は参照してここに組み入れる。この発明のポリマーにブレンドするのに適したエラストマーの例は、すべての天然および合成ゴムを含み、これに限定されないが、エチレンプロピレンゴム(「EPR」)、エチレンプロピレンジエンゴム(「EPDM」)、スチレンブロックコポリマーゴム(例えばSI、SIS、SB、SBS、SIBS等であり、「S」はスチレン、「I」はイソブチレン、「B」はブタジエンである)、ブチルゴム、ハロブチルゴム、イソブチレンおよびパラ−アルキルスチレンのコポリマー、イソブチレンおよびパラ−アルキルスチレンのハロゲン化コポリマー、天然ゴム、ポリイソプレン、ブタジエンのアクリロニトリルによるコポリマー、ポリクロロプレン、アルキルアクリレートゴム、塩化イソプレンゴム、アクリロニトリル塩化イソプレンゴム、およびポリブタジエンゴム(シスおよびトランス)を含む。さらに他の適切なブレンドポリマーは米国特許第5981658号、例えばその第14欄、第30−56行に開示されているものを含み、参照してその内容をここに組み入れる。ここに説明されているブレンドは、リアクターの後のブレンドにより、リアクターブレンドと直列にリアクターを結合することにより、また、同一のリアクターに複数の触媒を用いて複数種類のポリマーを製造することにより、製造できる。ポリマーは押出機に入れる前に混合してもよいし、押出機中で混合してもよい。
【0081】
この発明の中間層の曲げ弾性率は典型的には3000psiから200000psi、好ましくは5000psiから150000psi、より好ましくは10000psiから125000psi、さらにより好ましくは50000psiから750000psiである。組成物の材料硬度は、一般に、30ショアDから80ショアDである。当該組成物がゴルフボールのセンターにある実施例では、材料硬度は好ましくは30ショアDから50ショアDである。当該組成物がゴルフボールのカバー層、外側コア層またはコアおよびカバーの間の中間層にある実施例では、材料硬度は好ましくは30ショアDから70ショアDである。この発明の有組成物のノッチ付きアイゾッド衝撃強さは一般にASTM D256に従って23°Cで測定して少なくとも2ft・lb/inである。
【0082】
この発明は、組成物の具体的な製造方法または装置に限定されない。好ましい実施例においては、以下のプロセスで準備される。酸ポリマー、好ましくは、エチレン/(メタ)アクリル酸が、溶融押出機、例えば、シングルまたはツインスクリュー押出機に供給される。適切な量の親水性がより小さいカチオン源を、溶融した酸ポリマーに添加する。酸ポリマーは、カチオン源、好ましくはカルシウム、マグネシウムおよび亜鉛の金属塩および化合物から選択されたカチオン源と接触する前に部分的に中和されていてもよい。酸ポリマー/カチオン混合物が、金型ヘッドからストランドとして押し出される前に集中的に混合される。オプションとして、脂肪酸塩または非脂肪酸塩のメルトフロー修正剤をベースにした親水性がより小さいカチオン源をHNP生成時に導入される。この発明の具体的な側面では、エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーは、E.I.DuPont社から商業的に入手できるNucrel(商標)酸コポリマー(例えばNucrel 960。エチレン/メタクリル酸コポリマー)およびDow Chemical社から商業的に入手できるPrimacor(商標)ポリマー(例えばPrimacor XUS 60758.08LおよびXUS 60751.18。それぞれ13.5%および15.0%の酸を含有するエチレン/アクリル酸コポリマー)から選択される。
【0083】
中間層(コアおよびカバーの間に配された厚い中間層、または代替的には、典型的には相対的に薄い内側カバー層)に適した他の材料は、ショアDスケールで少なくとも約50のデュロメータ硬度および少なくとも約150000psiの曲げ弾性率を有する、剛性が大きく、高度に中和されたアイオノマーである。曲げ弾性率の範囲は約50000psiから約150000psiである。硬度は約55から約80ショアDの範囲であり、より好ましくは約55から約70ショアDの範囲である。このアイオノマー、好ましくは少なくとも2つのアイオノマーが、酸量が5から25%の低中和のアイオノマーとブレンドしてよく、また、非アイオノマーポリマーまたはコンパティビライザ(例えばグリシジルまたはマレイン酸無水物)とブレンドしてよい。ただし、好ましい硬度および曲げ弾性率が満たされなければならない。高度に中和されたアイオノマーは、本出願人に係る特許出願公報2003/0013549に開示されており、これは参照してここに組み入れる。
【0084】
好ましい1実施例において、この適切な材料は、脂肪酸塩で高度に中和されたポリマー、例えば、高度に中和されたコポリマーおよび1または複数の炭素原子数が36未満の脂肪族、モノ官能性有機酸またはその塩を有する溶融処理可能で、エチレンコポリマーのすべての酸の90%を越えて中和されている組成物と、剛性が大きく、部分的に中和されているアイオノマー、例えばSURLYN(商標)8945、7940、8140、および9120として商業的に入手可能なもの、その他とのブレンドである。このブレンドの硬度の範囲はショアDスケールで約65から75である。
【0085】
中間層は、必要であればラミネートされた層を有する。例えば、中間層はつぎの4つの層を有するラミネートを有して良い。すなわち、曲げ弾性率が約200000psiのポリアミド層、曲げ弾性率が約30000psiのターポリマーアイオノマーまたは非中和酸ターポリマー、曲げ弾性率が約60000psiのポリアミド層、低酸アイオノマー、および曲げ弾性率が約70000psiの高酸アイオノマーである。4層のラミネートの複合曲げ弾性率は、約90000psiすなわち、概略、各層の厚さが同一と仮定して、4つの層の曲げ弾性率の平均値である。
【0086】
好ましい実施例では、内側コアがある場合には、その内側コアの直径は約0.800インチから1.400インチであり、より好ましくは1.3インチから約1.4インチであり、その圧縮は約44以下であり、そのCORは約0.800である。中間層は少なくとも2つのアイオノマーを有し、その曲げ弾性率は約50000psi以上でその厚さは少なくとも約0.110インチで、より好ましくは約0.11インチから約0.12インチである。カバーは好ましくは注型ポリウレタンまたはポリ尿素であり、その硬度は約40から約60ショアDである。コアの圧縮は好ましくは約44以下であり、コアおよび中間層の組み合わせは約70から約100の圧縮を有する。
【0087】
コアは好ましくは単一のソリッド層である。代替的には、コアは複数層を有してよいお。好ましくは、その直径は約1.400インチ以下、より好ましくは約0.8インチおよび約1.4インチの間であり、最も好ましくは約1.3インチおよび約1.4インチの間である。コアのCORは約0.770以上であり、より好ましくは約0.800以上であり、最も好ましくは約0.820以上であり、ボールのCORが少なくとも0.800、より好ましくは約0.805から約0.820の範囲になるようになす。好ましい1実施例では、コアのCORは約0.770から約0.810である。
【0088】
好ましい実施例では、漸進的な性能を実現するために、中間カバー層および外側カバー層はそれぞれカバーの内側カバー層および外側カバー層と類似である。例えば、外側カバー層がソフトな熱硬化性ポリマー、例えば、注型ポリ尿素から製造され、中間カバー層が、硬度がショアDスケールで少なくとも55で曲げ弾性率が少なくとも55000psiの堅固なアイオノマーまたは類似の組成物から製造される。
【0089】
カバーの全体の厚さは好ましくは0.125インチ未満である。最も内側の層は、好ましくは、約0.005インチから約0.100インチ、より好ましくは約0.010インチから約0.090インチ、最も好ましくは約0.015インチから約0.070インチである。中間カバー層の厚さは好ましくは約0.010インチから約0.050インチであり、外側カバー層の厚さは好ましくは約0.020インチから約0.040インチである。
【0090】
この発明に従い製造され、先に開示されたゴルフボールの圧縮は約60PGAより大きく、より好ましくは約80PGAより大きく、さらに好ましくは約90GPAより大きい。これらのボールは125ft/sで少なくとも0.80、さらに好ましくは0.81のCORを実現する。これらのボールは160ft/sで少なくとも0.75、さらに好ましくは0.76のCORを実現する。
【0091】
ここに引用した、すべての特許および特許出願は、参照して、ここに明瞭ににくみいれる。
【0092】
ここに説明され特許請求の範囲に記載される発明はここに開示された具体的な実施例に限定されないことに留意されたい。これら実施例はこの発明のいくつかの側面を説明することを意図するにすぎないからである。どのような均等な実施例もこの発明の範囲内であることを意図されている。実際、ここに開示され示されたものに加えてこの発明の種々の変更は当業者には先の記述から明瞭である。そのような変更が特許請求の範囲内であることも意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径が1.27cm(0.5インチ)から3.56cm(1.4インチ)で、圧縮が約45以下で、さらに反発係数が0.730から0.810のコアと、
注型ポリ尿素カバーと、
上記コアおよび上記カバーの間に配され、その厚さが0.279cm(0.11インチ)以上で、高度に中和され水蒸気透過率が8g・mil/100in/日以下の組成物から製造された中間層とを有し、
上記コアおよび上記中間層の組み合わせが約70から約100の圧縮を実現し、当該ゴルフボールの反発係数が、38.1m/s(125ft/s)の入力速度で測定したときに、0.805から0.820でありで、48.8m/s(160ft/s)の入力速度で測定したときに、0.75以上であり、当該ゴルフボールの圧縮が75から105であることを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
上記コアの直径が3.30cm(1.3インチ)から3.36cm(1.4インチ)ある請求項1記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記中間層の硬度が55ショアDから70ショアDである請求項1記載のゴルフボール。
【請求項4】
上記注型ポリ尿素カバーの硬度が40ショアDから60ショアDである請求項1記載のゴルフボール。
【請求項5】
上記中間層および上記コアの組み合わせの反発係数が、38.1m/s(125ft/s)の入力速度で測定したときに、0.810から0.820である請求項1記載のゴルフボール。

【公開番号】特開2008−55174(P2008−55174A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−225114(P2007−225114)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(390023593)アクシュネット カンパニー (155)
【氏名又は名称原語表記】ACUSHNET COMPANY