説明

内燃機関のカムシャフト支持構造

【課題】 簡素な構成でカムシャフトのスラスト方向移動を規制する
【解決手段】 エンジン1のカムシャフト支持構造であって、シリンダヘッド2に設けられた複数の軸受47によって支持されたカムシャフト48と、複数の軸受のうち一方端に配置された端末軸受51と、カムシャフトから端末軸受よりも一方へと突出したカムシャフト延長部52と、カムシャフト延長部に設けられたポンプ駆動カム53と、端末軸受に支持されたジャーナル部61のポンプ駆動カムと相反する側のカムシャフトに設けられたパルサープレート62とを有し、ポンプ駆動カム及びパルサープレートは、カムシャフトの軸線と直交する平面であるポンプ駆動カム端面55及びパルサープレート端面66を有し、ポンプ駆動カム端面及びパルサープレート端面のそれぞれが、端末軸受に摺接するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のカムシャフト支持構造に係り、詳しくはカムシャフトのスラスト方向移動を規制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において、カムシャフトは、シリンダヘッドに設けられた複数の軸受に回転可能に支持されている。このようなカムシャフトの支持構造において、カムシャフトの外周面から径方向外方に突出する板状のスラスト規制部を設け、スラスト規制部の一部を回転可能に受容するスラストホルダを軸受に突設し、スラスト規制部とスラストホルダとの係合によって、カムシャフトのスラスト方向移動を規制したものがある(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の発明では、カムシャフトを支持する軸受は、シリンダヘッドに一体に突設された軸受下部と、軸受下部に締結され、軸受下部との間にカムシャフトを回転可能に支持するカムキャップとから構成されている。スラストホルダは、カムキャップに一体に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2789220号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、スラストホルダが形成された特殊な形状のカムキャップを用意する必要があるため、製造コストが増大する。また、スラストホルダはカムキャップが片持ち梁状に突設されているため、カムシャフトのスラスト荷重に抗するためには、高剛性化が必要となり、コストの増大につながる。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑みてなされたものであって、内燃機関のカムシャフト支持構造において、簡素な構成でカムシャフトのスラスト方向移動を規制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、内燃機関(1)のカムシャフト支持構造であって、一側に動弁室(16)を有するシリンダヘッド(2)と、前記シリンダヘッドの前記動弁室側に設けられた複数の軸受(47)によって回転自在に支持されたカムシャフト(48)と、前記複数の軸受のうち前記カムシャフトの一方端に配置された端末軸受(51)と、前記カムシャフトから前記端末軸受よりも前記一方へと突出したカムシャフト延長部(52)と、前記カムシャフト延長部に設けられた補機駆動カム(53)と、前記シリンダヘッドに設けられ、前記補機駆動カムによって進退させられるプランジャ(101)を備えた補機(102)と、前記端末軸受に支持された前記カムシャフトのジャーナル部(61)の前記補機駆動カムと相反する側の前記カムシャフトに設けられ、前記カムシャフトの径方向に突出したパルサープレート(62)とを有し、前記補機駆動カムは、前記端末軸受と対向する側部に前記カムシャフトの軸線と直交する第1平面部(55)を有し、前記パルサープレートは、前記端末軸受と対向する側部に前記カムシャフトの軸線と直交する第2平面部(66)を有し、前記第1平面部及び前記第2平面部のそれぞれが、前記端末軸受に摺接することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、カムシャフトの外面に突設されたパルサープレートと、補機駆動カムとによって、端末軸受をカムシャフトのスラスト方向から挟み込むようにしたため、カムシャフトのスラスト方向移動が規制される。スラストプレートとして機能するパルサープレートや補機駆動カムを回転可能に受容するホルダを別途設ける必要がないため、部品点数の削減を図ることができる。また、カムシャフトを支持する軸受は、シリンダヘッドを構成する部材において比較的剛性が高いため、カムシャフトのスラスト荷重に抗することができる。
【0008】
本発明の他の側面は、前記端末軸受は、前記シリンダヘッドに設けられた端末軸受下部(45)と、前記端末軸受下部に締結された端末軸受上部(46)とを有し、前記第1平面部及び前記第2平面部のそれぞれが、少なくとも前記端末軸受上部に摺接することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、端末軸受上部はシリンダヘッドと別体に形成されるため、第1平面部及び第2平面部の距離に合わせた加工が容易である。
【0010】
本発明の他の側面は、前記端末軸受は、前記シリンダヘッドに設けられた端末軸受下部(45)と、前記端末軸受下部に締結された端末軸受上部(46)とを有し、前記第1平面部及び前記第2平面部のそれぞれが、少なくとも前記端末軸受下部に摺接することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、カムシャフトのスラスト荷重が、パルサープレート又は補機駆動カムを介して、端末軸受下部に加わるため、端末軸受下部と端末軸受上部との締結面の口開きや端末軸受上部の変形を抑制することができる。
【0012】
本発明の他の側面は、前記カムシャフト及び前記カムシャフト延長部の内部には、軸線方向に延在するカムシャフト油路(111)が形成され、前記ジャーナル部には、その外周面と前記カムシャフト油路とを連通する連通油路(115)が形成され、前記端末軸受の前記ジャーナル部との摺接面には、前記連通油路に連続する油溝(116)が凹設され、潤滑油が、前記カムシャフト油路から、前記連通油路及び油溝を介して前記ジャーナル部と前記端末軸受との摺接面間に供給され、前記ジャーナル部と前記端末軸受との摺接面間から溢れ出て、前記第1平面部及び前記第2平面部と前記端末軸受との摺接面間に供給されるようになっていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、端末軸受とジャーナル部との摺接面間に潤滑油が供給されると共に、第1平面部及び第2平面部と端末軸受との摺接面間に潤滑油が供給されるようになる。
【0014】
本発明の他の側面は、前記パルサープレートは、前記第2平面部を有する円板部(63)と、前記円板部の外周に設けられると共に、前記端末軸受から離間して配置された周縁部(64)とを有することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、パルサープレートと端末軸受との接触面積を小さくして摩擦抵抗の低減を図ることができる。また、パルサープレートの端末軸受との接触(摺接)部分を、周縁部よりも剛性が高くなる径方向内側の円板部とすることによって、パルサープレートの変形を抑制することができる。
【0016】
本発明の他の側面は、前記カムシャフト延長部、前記補機駆動カム及び前記パルサープレートを覆うように、前記シリンダヘッドに結合された補機支持ハウジング(91)を有し、前記補機支持ハウジングに、前記補機と、前記パルサープレートの回転を検出する回転センサ(104、105)とが結合されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、補機を支持する補機支持ハウジングによって、回転センサを支持すると共に、シリンダヘッドの一部を覆い、各要素をコンパクトに集積することができる。
【0018】
本発明の他の側面は、内燃機関(1)のカムシャフト支持構造であって、一側に動弁室(16)を有するシリンダヘッド(2)と、前記シリンダヘッドの前記動弁室側に設けられた複数の軸受(31)によって回転自在に支持されたカムシャフト(32)と、前記カムシャフトに設けられ、前記カムシャフトの径方向に突出したパルサープレート(77)と、前記カムシャフトに設けられ、前記カムシャフトの径方向に突出したスラストプレート(78)と、前記パルサープレートと前記スラストプレートとは、前記軸受のうちの1つである第1軸受(31)を挟むように配置され、前記スラストプレートは、前記第1軸受と対向する側部に前記カムシャフトの軸線と直交する第1平面部(83)を有し、前記パルサープレートは、前記第1軸受と対向する側部に前記カムシャフトの軸線と直交する第2平面部(78)を有し、前記第1平面部及び前記第2平面部のそれぞれが、前記第1軸受に摺接することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、カムシャフトの外面に突設されたパルサープレートと、スラストプレートとによって、第1軸受をカムシャフトのスラスト方向から挟み込むようにしたため、カムシャフトのスラスト方向移動が規制される。スラストプレート及びパルサープレートを回転可能に受容するホルダを別途設ける必要がないため、部品点数の削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上の構成によれば、内燃機関のカムシャフト支持構造において、簡素な構成でカムシャフトのスラスト方向移動を規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】エンジンの上部構造を破断して示す分解斜視図
【図2】動弁室を上方より見た図
【図3】動弁室を上方より見た図であって、カムシャフト等を取り除いて示す図
【図4】図2のIV-IV断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明を自動車のエンジンに適用した実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係るエンジン1は、直列4気筒4バルブDOHC型のガソリン直噴エンジンである。図に示す方向は、車体の進行方向を前方とし、シリンダ軸線方向においてシリンダブロックに対するシリンダヘッド(ヘッドカバー)側を上方として定めている。エンジン1は、車体に横置きに配置されており、シリンダ列方向(クランク軸方向)が左右方向(車幅方向)と一致している。
【0023】
図1に示すように、シリンダヘッド2は、左右方向に延在した略直方体状の下部と、下部の上端に設けられた箱形の上部とを有している。シリンダヘッドの下部には、シリンダヘッド2の下面に開口する燃焼室4と、燃焼室4から前方に延びる排気ポート5と、燃焼室4から後方に延び、シリンダヘッドの後側面に開口する吸気ポート6とが形成されている。シリンダヘッド2の上部は、シリンダヘッド2の下部の縁部に沿って上方へと立設された前縁壁11、後縁壁12、右縁壁13及び左縁壁(図示しない)と、下部の上面をなす底壁15とによって、上方に向けて開口する略直方体箱形の動弁室16を画成している。前縁壁11、後縁壁12、右縁壁13及び左縁壁の上端には、上方を向く結合面17が形成されている。
【0024】
底壁15の後側には、シリンダ列方向に複数の吸気側シャフト支持部21が一体に突設されている(図中では、右端側に配置された1つの吸気側シャフト支持部21を示す)。吸気側シャフト支持部21は、貫通孔を有する壁状を呈し、吸気側ロッカシャフト22が固定支持されている。吸気側ロッカシャフト22には、吸気側ロッカアーム23の基端が回転自在に支持されている。シリンダヘッド2の底壁15には、吸気ポート6へと貫通する貫通孔が形成されており、貫通孔には吸気バルブガイド24が嵌め付けられている。吸気バルブガイド24には、ポペット弁である吸気バルブ25のステム部が摺動可能に挿通されている。吸気バルブ25は、ステム部側の端部が動弁室16内に突出し、弁体が燃焼室4に配置されている。吸気バルブ25は、圧縮コイルばね27によって、動弁室16内に突出する方向、すなわち弁体が吸気ポート6を閉塞する方向に付勢されている。吸気側ロッカアーム23の先端は、吸気バルブ25のステム側の端部を押圧し、吸気バルブ25を押し下げて吸気ポート6を開閉する。吸気側ロッカアーム23の長手方向における中間部には、カムローラ26が回転可能に支持されている。
【0025】
図3に示すように、吸気側シャフト支持部21の突出端(上端)には、上方に向けて開口した半円状の凹溝が形成された吸気側カムシャフト軸受下部28が形成されている。吸気側カムシャフト軸受下部28は、吸気側シャフト支持部21と一体に形成されてもよく、或いは別体に形成され、吸気側シャフト支持部21に締結されていてもよい。吸気側カムシャフト軸受下部28の上面には、凹部を覆うように吸気側カムキャップ(吸気側カムシャフト軸受上部)29が締結される。吸気側カムシャフト軸受下部28及び吸気側カムキャップ29は、吸気側カムシャフト軸受31を形成する。吸気側カムシャフト軸受31には、吸気側カムシャフト32が回転自在に支持されている。吸気側カムシャフト32の適所には、カムローラ26を介して吸気側ロッカアーム23を駆動するカム33が形成されている。
【0026】
底壁15の前側には、シリンダ列方向に複数の排気側シャフト支持部35が一体に突設されている(図中では、右端側に配置された1つの排気側シャフト支持部35を示す)。排気側シャフト支持部35は、貫通孔を有する壁状を呈し、排気側ロッカシャフト36が固定支持されている。排気側ロッカシャフト36には、排気側ロッカアーム37の基端が回転自在に支持されている。シリンダヘッド2の底壁15には、排気ポート5へと貫通する貫通孔が形成されており、貫通孔には排気バルブガイド38が嵌め付けられている。排気バルブガイド38には、ポペット弁である排気バルブ39のステム部が摺動可能に挿通されている。排気バルブ39は、ステム部側の端部が動弁室16内に突出し、弁体が燃焼室4に配置されている。排気バルブ39は、圧縮コイルばね41によって、動弁室16内に突出する方向、すなわち弁体が排気ポート5を閉塞する方向に付勢されている。排気側ロッカアーム37の先端は、排気バルブ39のステム側の端部を押圧し、排気バルブ39を押し下げて排気ポート5を開閉する。排気側ロッカアーム37の長手方向における中間部には、カムローラ(図示しない)が回転可能に支持されている。
【0027】
図3に示すように、排気側シャフト支持部35の突出端(上端)には、上方に向けて開口した半円状の凹溝が形成された排気側カムシャフト軸受下部45が形成されている。排気側カムシャフト軸受下部45は、排気側シャフト支持部35と一体に形成されてもよく、或いは別体に形成され、排気側シャフト支持部35に締結されていてもよい。排気側カムシャフト軸受下部45の上面には、凹部を覆うように排気側カムキャップ(排気側カムシャフト軸受上部)46が締結される。排気側カムシャフト軸受下部45及び排気側カムキャップ46は、排気側カムシャフト軸受47を形成する。排気側カムシャフト軸受47には、排気側カムシャフト48が回転自在に支持されている。排気側カムシャフト48の適所には、カムローラを介して排気側ロッカアーム37を駆動するカム(図示しない)が形成されている。
【0028】
排気側カムシャフト48は、複数の排気側カムシャフト軸受47のうちでシリンダ列方向(排気側カムシャフト48の延在方向)における右端側に設けられた排気側端末軸受51を通過して更に右方へと延出し、排気側カムシャフト延長部52を形成している。図2に示すように、右縁壁13は排気側カムシャフト延長部52に対向する部分が右方へと膨出しており、排気側カムシャフト延長部52は右縁壁13よりも左方、すなわち動弁室16内に配置されている。排気側カムシャフト延長部52は、排気側端末軸受51に片持ち支持されている。排気側カムシャフト延長部52には、排気側カムシャフト軸受47の径方向外方へと突出したポンプ駆動カム53が形成されている。ポンプ駆動カム53は、突出端に周方向に連続した環状のカム面を有している。ポンプ駆動カム53は、その左端部分、すなわち排気側端末軸受51側と対向する部分に排気側カムシャフト48の軸線と直交する平面であるポンプ駆動カム端面55を有している。
【0029】
排気側カムシャフト48の排気側端末軸受51に支持された部分を排気側ジャーナル部61とすると、排気側カムシャフト48の排気側ジャーナル部61よりも左方(ポンプ駆動カム53と相反する側)の部分には、径方向外方に突出する円板状の排気側パルサープレート62が設けられている。排気側パルサープレート62は、排気側カムシャフト48と一体に形成された円板状の基部63と、基部63の周縁に結合された環状の周縁部64とを有している。周縁部64の外周部には、回転に応じたパルス信号を発生するための凸部65が径方向外方へと突設されている。基部63は、その右端部分、すなわち排気側端末軸受51側と対向する部分に排気側カムシャフト48の軸線と直交する平面である排気側パルサープレート端面66を有している。周縁部64は、基部63に比べて、左右方向(排気側カムシャフト48の軸線方向)に幅が狭く、排気側パルサープレート端面66よりも左方に偏倚して配置されている。
【0030】
図2に示すように、排気側端末軸受51を構成する排気側カムキャップ46は、その左右両側部に排気側カムシャフト48の軸線と直交する平面である左端面68及び右端面69を有している。排気側カムキャップ46の左端面68及び右端面69は、排気側端末軸受51を構成する排気側カムシャフト軸受下部45よりも左右側に突出して配置されている。すなわち、排気側端末軸受51を構成する排気側カムキャップ46は、排気側カムシャフト軸受下部45よりも左右方向に幅が広くなっている。
【0031】
排気側端末軸受51に排気側カムシャフト48が支持された状態で、排気側カムキャップ46の右端面69にはポンプ駆動カム53のポンプ駆動カム端面55が摺接し、左端面68には排気側パルサープレート62の基部63の排気側パルサープレート端面66が摺接する。すなわち、排気側カムシャフト48の軸線方向において、ポンプ駆動カム53と排気側パルサープレート62との間に排気側カムキャップ46が挟まれた配置となる。この構成により、排気側カムシャフト48のスラスト方向移動が規制されている。排気側カムキャップ46が排気側カムシャフト軸受下部45よりも左右方向に突出しているため、ポンプ駆動カム53及び排気側パルサープレート62の基部63は排気側カムシャフト軸受下部45に接触することはない。また、排気側パルサープレート62の周縁部64は、排気側パルサープレート端面66よりも左方に偏倚して配置されているため、排気側カムキャップ46の左端面68に接触することはない。
【0032】
吸気側カムシャフト32は、複数の吸気側カムシャフト軸受31のうちで右端側に設けられた吸気側端末軸受75を通過して更に右方へと延出し、吸気側カムシャフト延長部76を形成している。図2に示すように、吸気側カムシャフト延長部76は右縁壁13よりも左方、すなわち動弁室16内に配置されている。吸気側カムシャフト延長部76は、吸気側端末軸受75に片持ち支持されている。吸気側カムシャフト延長部76には、吸気側カムシャフト軸受31の径方向外方に突出する円板状の吸気側パルサープレート77が設けられている。吸気側パルサープレート77の周縁部には回転に応じたパルス信号を発生するための凸部が形成されている。吸気側パルサープレート77は、その左端部分、すなわち吸気側端末軸受75側と対向する部分に吸気側カムシャフト32の軸線と直交する平面である吸気側パルサープレート端面78を有している。
【0033】
吸気側カムシャフト32の吸気側端末軸受75に支持された部分を吸気側ジャーナル部81とすると、吸気側カムシャフト32の吸気側ジャーナル部81よりも左方(吸気側パルサープレート77と相反する側)の部分には、径方向外方に突出する円板状のスラストプレート82が設けられている。スラストプレート82は、その右端部分、すなわち吸気側端末軸受75側と対向する部分に吸気側カムシャフト32の軸線と直交する平面であるスラストプレート端面83を有している。
【0034】
図2及び図3に示すように、吸気側端末軸受75を構成する吸気側カムシャフト軸受下部28は、吸気側カムキャップ29に対して左方及び右方に突出し、その右側部に右方へと突出する半割り円筒状(弧が180°)のカラー85を有している。カラー85の内周面は、吸気側カムシャフト32(吸気側カムシャフト延長部76)の外周面から離間して配置されている。なお、他の実施形態では、カラー85が、内周部において吸気側カムシャフト32を回転自在に下方より支持するようにしてもよい。カラー85は、その右端に、吸気側カムシャフト32の軸線と直交する平面であるカラー端面86を有している。吸気側端末軸受75を構成する吸気側カムシャフト軸受下部28は、その左端部分に吸気側カムシャフト32の軸線と直交する平面である吸気側軸受下部端面87を有している。
【0035】
吸気側端末軸受75に吸気側カムシャフト32が支持された状態で、カラー85のカラー端面86には吸気側パルサープレート77の吸気側パルサープレート端面78が摺接し、吸気側カムシャフト軸受下部28の吸気側軸受下部端面87にスラストプレート82のスラストプレート端面83が摺接する。すなわち、吸気側カムシャフト32の軸線方向において、吸気側パルサープレート77とスラストプレート82との間に吸気側カムシャフト軸受下部28及びカラー85が挟まれた配置となる。この構成により、吸気側カムシャフト32のスラスト方向移動が規制されている。
【0036】
図1に示すように、動弁室16の右端部分を上方から覆うように、燃料ポンプ支持ハウジング91がシリンダヘッド2の上部に結合される。燃料ポンプ支持ハウジング91は、コ字状に連続した下向きのフランジ92を有し、フランジ92において、右縁壁13、前縁壁11及び後縁壁12の右端部分の結合面17に締結される。燃料ポンプ支持ハウジング91は、シリンダヘッド2に締結された状態において、吸気側カムシャフト延長部76及び排気側カムシャフト延長部52を上方から覆う。また、燃料ポンプ支持ハウジング91は、シリンダヘッド2に締結された状態において、左端部が左方に開口している。燃料ポンプ支持ハウジング91の上面の左端縁93は、シリンダヘッド2の上方左部を覆うヘッドカバー(図示しない)の右端縁によって上方からオーバーラップされるようになっている。このように、燃料ポンプ支持ハウジング91とヘッドカバーとによって動弁室16の上部が閉塞される。
【0037】
燃料ポンプ支持ハウジング91には、ポンプ取付孔95、吸気側回転角センサ取付孔96、排気側回転角センサ取付孔97が形成されている。ポンプ取付孔95には、プランジャ101の進退によって駆動される公知の燃料噴射ポンプ102が取り付けられる。プランジャ101は、ポンプ取付孔95を通過し、その先端がポンプ駆動カム53に当接する。プランジャ101は、ポンプ駆動カム53によって進退させられることによって、燃料噴射ポンプ102内への燃料の引き込みと、燃焼の圧送(排出)を行う。吸気側回転角センサ取付孔96には、回転角センサ104が取り付けられる。回転角センサ104は、公知の金属の接近を検出するホール効果を利用したセンサであって、吸気側パルサープレート77の周縁部に対向して配置され、吸気側パルサープレート77の凸部を検出する。排気側回転角センサ取付孔97には、回転角センサ105が取り付けられる。回転角センサ105は、回転角センサ104と同様のセンサであって、排気側パルサープレート62の周縁部に対向して配置され、凸部65を検出する。
【0038】
次に、排気側端末軸受51及び吸気側端末軸受75の潤滑構造について説明する。図1及び図4に示すように、排気側カムシャフト48及び吸気側カムシャフト32の内部には、軸線方向に延在する排気側カムシャフト油路111及び吸気側カムシャフト油路112が形成されている。図4に示すように、排気側カムシャフト油路111の左端は、排気側カムシャフト延長部52の端部においてキャップ113によって閉塞されている。排気側ジャーナル部61には、その外周面から排気側カムシャフト油路111へと径方向に延びる連通油路115が形成されている。排気側ジャーナル部61の外周面の連通油路115が開口した部分に対応する排気側カムキャップ46の支持面(摺接面)には、排気側カムシャフト48の周方向に延在する排気側軸受油溝116が形成されている。
【0039】
吸気側ジャーナル部81には、その外周面から吸気側カムシャフト油路112へと径方向に延びる連通油路(図示しない)が形成されている。吸気側ジャーナル部81の外周面の連通油路が開口した部分に対応する吸気側カムシャフト軸受下部28の支持面(摺接面)には、吸気側カムシャフト32の周方向に延在する吸気側軸受油溝117が形成されている(図3参照)。
【0040】
以上のように構成された排気側端末軸受51及び吸気側端末軸受75の潤滑構造では、エンジン補機として公知のオイルポンプ(図示しない)からシリンダブロック及びシリンダヘッド2等を介して排気側カムシャフト油路111及び吸気側カムシャフト油路112に潤滑油が供給される。排気側カムシャフト油路111に供給された潤滑油は、連通油路115を通過して排気側軸受油溝116に供給される。これにより、排気側カムシャフト軸受47(排気側端末軸受51)と排気側ジャーナル部61との摺接面間に潤滑油が供給される。摺接面間に供給された潤滑油は、摺接面間から溢れ出て、ポンプ駆動カム端面55と排気側カムキャップ46の右端面69との間、排気側パルサープレート端面66と排気側カムキャップ46の左端面68との間に供給される。
【0041】
吸気側カムシャフト油路112に供給された潤滑油は、連通油路を通過して吸気側軸受油溝117に供給される。これにより、吸気側カムシャフト軸受31(吸気側端末軸受75)と吸気側ジャーナル部81との摺接面間に潤滑油が供給される。摺接面間に供給された潤滑油は、摺接面間から溢れ出て、カラー85の内周面を伝って吸気側パルサープレート端面78とカラー端面86との間に供給されると共に、スラストプレート端面83と吸気側軸受下部端面87との間に供給される。
【0042】
以上のように構成したエンジンでは、排気側カムシャフト48は、排気側端末軸受51を左右方向から挟み込むポンプ駆動カム53と排気側パルサープレート62とによってスラスト方向移動が規制される。吸気側カムシャフト32は、吸気側端末軸受75を左右方向から挟み込むスラストプレート82と吸気側パルサープレート77とによってスラスト方向移動が規制される。
【0043】
排気側カムシャフト48については、排気側カムシャフト軸受下部45と別体に形成される排気側カムキャップ46がポンプ駆動カム53及び排気側パルサープレート62に摺接するようにしたため、ポンプ駆動カム端面55と排気側パルサープレート端面66との間に距離に応じた加工が容易である。また、排気側パルサープレート62が、基部63のみにおいて排気側カムキャップ46に摺接し、周縁部64が排気側カムキャップ46に接触しないようにしたため、接触面積を小さくして摩擦抵抗を小さくすることができる。また、周縁部64の剛性を低く設定することが可能になる。
【0044】
吸気側カムシャフト32については、互いに一体的に形成された吸気側カムシャフト軸受下部28及びカラー85が、吸気側パルサープレート77及びスラストプレート82に摺接するようにしたため、吸気側カムシャフト軸受下部28と吸気側カムキャップ29との接合面にスラスト荷重が加わらず、両者間の口開きが抑制される。吸気側カムシャフト軸受下部28と吸気側シャフト支持部21と一体に形成した場合には、吸気側端末軸受75のスラスト荷重に対する剛性がより向上する。
【0045】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。本実施形態では、シリンダヘッド2に取り付けられるエンジン補機の例として燃料噴射ポンプ102を例示したが、燃料噴射ポンプ102に代えて、ウォータポンプやエアコンプレッサ等の他のエンジン補機を適用してもよい。また、本実施形態では、排気側シャフト支持部35を介して排気側端末軸受51をシリンダヘッド2に設けたが、シリンダヘッド2に燃料噴射ポンプ102等の他の補機ハウジングを取り付け、補機ハウジング内に排気側カムシャフト48を突入させる構成とした場合には、補機ハウジングに排気側端末軸受51を設けるようにしてもよい。すなわち、排気側端末軸受51は、シリンダヘッド2に取り付けられる他の部材に設けることができる。また、本実施形態では、排気側カムシャフト48において、排気側カムカップ46のみがポンプ駆動カム53及び排気側パルサープレート62に摺接するようにしたが、更に排気側カムシャフト軸受下部45もポンプ駆動カム53及び排気側パルサープレート62に摺接するようにしてもよい。この構成によって、排気側カムカップ46と排気側カムシャフト軸受下部45との口開きが抑制される。
【符号の説明】
【0046】
1…エンジン、2…シリンダヘッド、16…動弁室、21…吸気側シャフト支持部、28…吸気側カムシャフト軸受下部、29…吸気側カムキャップ、31…吸気側カムシャフト軸受、32…吸気側カムシャフト、35…排気側シャフト支持部、45…排気側カムシャフト軸受下部、46…排気側カムキャップ、47…排気側カムシャフト軸受、48…排気側カムシャフト、51…排気側端末軸受、52…排気側カムシャフト延長部、53…ポンプ駆動カム、55…ポンプ駆動カム端面(第1平面部)、61…排気側ジャーナル部、62…排気側パルサープレート、63…基部、64…周縁部、65…凸部、66…排気側パルサープレート端面(第2平面部)、68…排気側カムキャップの左端面、69…排気側カムキャップの右端面、75…吸気側端末軸受(第1軸受)、76…吸気側カムシャフト延長部、77…吸気側パルサープレート、78…吸気側パルサープレート端面(第2平面部)、81…吸気側ジャーナル部、82…スラストプレート、83…スラストプレート端面(第1平面部)、85…カラー、86…カラー端面、87…吸気側軸受下部端面、91…燃料ポンプ支持ハウジング、101…プランジャ、102…燃料噴射ポンプ(補機)、104…回転角センサ、105…回転角センサ、111…排気側カムシャフト油路、112…吸気側カムシャフト油路、115…連通油路、116…排気側軸受油溝、117…吸気側軸受油溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側に動弁室を有するシリンダヘッドと、
前記シリンダヘッドの前記動弁室側に設けられた複数の軸受によって回転自在に支持されたカムシャフトと、
前記複数の軸受のうち前記カムシャフトの一方端に配置された端末軸受と、
前記カムシャフトから前記端末軸受よりも前記一方へと突出したカムシャフト延長部と、
前記カムシャフト延長部に設けられた補機駆動カムと、
前記シリンダヘッドに設けられ、前記補機駆動カムによって進退させられるプランジャを備えた補機と、
前記端末軸受に支持された前記カムシャフトのジャーナル部の前記補機駆動カムと相反する側の前記カムシャフトに設けられ、前記カムシャフトの径方向に突出したパルサープレートとを有し、
前記補機駆動カムは、前記端末軸受と対向する側部に前記カムシャフトの軸線と直交する第1平面部を有し、
前記パルサープレートは、前記端末軸受と対向する側部に前記カムシャフトの軸線と直交する第2平面部を有し、
前記第1平面部及び前記第2平面部のそれぞれが、前記端末軸受に摺接することを特徴とする内燃機関のカムシャフト支持構造。
【請求項2】
前記端末軸受は、前記シリンダヘッドに設けられた端末軸受下部と、前記端末軸受下部に締結された端末軸受上部とを有し、
前記第1平面部及び前記第2平面部のそれぞれが、少なくとも前記端末軸受上部に摺接することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のカムシャフト支持構造。
【請求項3】
前記端末軸受は、前記シリンダヘッドに設けられた端末軸受下部と、前記端末軸受下部に締結された端末軸受上部とを有し、
前記第1平面部及び前記第2平面部のそれぞれが、少なくとも前記端末軸受下部に摺接することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のカムシャフト支持構造。
【請求項4】
前記カムシャフト及び前記カムシャフト延長部の内部には、軸線方向に延在するカムシャフト油路が形成され、
前記ジャーナル部には、その外周面と前記カムシャフト油路とを連通する連通向油路が形成され、
前記端末軸受の前記ジャーナル部との摺接面には、前記連通油路に連続する油溝が凹設され、
潤滑油が、前記カムシャフト油路から、前記連通油路及び油溝を介して前記ジャーナル部と前記端末軸受との摺接面間に供給され、前記ジャーナル部と前記端末軸受との摺接面間から溢れ出て、前記第1平面部及び前記第2平面部と前記端末軸受との摺接面間に供給されるようになっていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載の内燃機関のカムシャフト支持構造。
【請求項5】
前記パルサープレートは、前記第2平面部を有する円板部と、前記円板部の外周に設けられると共に、前記端末軸受から離間して配置された周縁部とを有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つの項に記載の内燃機関のカムシャフト支持構造。
【請求項6】
前記カムシャフト延長部、前記補機駆動カム及び前記パルサープレートを覆うように、前記シリンダヘッドに結合された補機支持ハウジングを有し、
前記補機支持ハウジングに、前記補機と、前記パルサープレートの回転を検出する回転センサとが結合されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つの項に記載の内燃機関のカムシャフト支持構造。
【請求項7】
一側に動弁室を有するシリンダヘッドと、
前記シリンダヘッドの前記動弁室側に設けられた複数の軸受によって回転自在に支持されたカムシャフトと、
前記カムシャフトに設けられ、前記カムシャフトの径方向に突出したパルサープレートと、
前記カムシャフトに設けられ、前記カムシャフトの径方向に突出したスラストプレートと、
前記パルサープレートと前記スラストプレートとは、前記軸受のうちの1つである第1軸受を挟むように配置され、
前記スラストプレートは、前記第1軸受と対向する側部に前記カムシャフトの軸線と直交する第1平面部を有し、
前記パルサープレートは、前記第1軸受と対向する側部に前記カムシャフトの軸線と直交する第2平面部を有し、
前記第1平面部及び前記第2平面部のそれぞれが、前記第1軸受に摺接することを特徴とする内燃機関のカムシャフト支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−113147(P2013−113147A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257918(P2011−257918)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】