説明

内燃機関の廃熱利用装置

【課題】EGRガスを含む内燃機関の複数の熱源をEGRガス中の水分を凝縮させることなく効率よくランキンサイクルシステムに利用可能な内燃機関の廃熱利用装置を提供する。
【解決手段】ランキン回路(40)は複数の熱交換器としてEGR回路のEGRクーラ(36)と排気通路の排ガス熱交換器(41)を有し、これらEGRクーラと排ガス熱交換器とをランキン回路の作動流体の流れ方向で視てEGRクーラが排ガス熱交換器よりも上流に位置するように配置し、制御手段(60)により、EGRガス温度検出手段(39)により検出されるEGRガスの温度が所定温度範囲(例えば150℃〜200℃)となるよう、EGRクーラでのEGRガスと作動流体との熱交換量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の廃熱利用装置に係り、詳しくは、車両の内燃機関の廃熱を回収して利用するのに好適な廃熱利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の廃熱利用装置は、作動流体としての冷媒の循環路に、内燃機関の廃熱により作動流体を加熱して蒸発させる蒸発器、該蒸発器を経由した作動流体を膨張させて回転駆動力を発生する膨張機、該膨張機にて発生した回転駆動力が伝達される被動力伝達装置、該膨張機を経由した作動流体を凝縮させる凝縮器、該凝縮器を経由した作動流体を前記蒸発器に送出するポンプが順次介装されたランキンサイクルを備えている。
【0003】
内燃機関の廃熱の一つとして、NOx低減のために排ガスの一部を吸気に還流されるEGRガス(排気再循環ガス)の熱、即ちEGR通路にEGRガスの温度を低下させるべく設けられたEGRクーラからの放熱があり、かかるEGRガスの熱を利用したランキンサイクルシステムが公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−239513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示の技術では、EGRガスを熱源に利用してランキンサイクルシステムを構成するようにしているが、例えば内燃機関の運転状況によってはEGR通路に設けられたEGRバルブを調節することでEGRガス流量を増減させる必要があり、EGRバルブによりEGRガスが遮断されたような場合には、遮断されている間、EGRガスの熱をランキンサイクルシステムに全く利用できないという問題がある。
また、上記特許文献1に開示される技術では、EGRガスの熱をランキンサイクルシステムに利用するため、逆にEGRガスの温度は低下することになるが、一般にEGRガスは温度が100℃を下回るとEGRガス中の水分が凝縮し、酸が発生してEGR通路等を腐食させるという問題があり、EGRガス中の水分を如何に凝縮させないようするかが課題となっている。
【0006】
また、特許文献1に開示の技術では、基本的にEGRガスを熱源として利用するようにしているが、例えばEGRガス以外に内燃機関の複数の熱源を利用してランキンサイクルシステムを構成する場合、如何に内燃機関の複数の熱源を利用してランキンサイクルシステムを構成するかも課題となる。
本発明は、このような課題に鑑みなされたもので、EGRガスを含む内燃機関の複数の熱源をEGRガス中の水分を凝縮させることなく効率よくランキンサイクルシステムに利用可能な内燃機関の廃熱利用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するべく、請求項1の内燃機関の廃熱利用装置は、作動流体の循環路に、内燃機関の廃熱により作動流体を加熱する複数の熱交換器、該複数の熱交換器を経由した作動流体を膨張させて回転駆動力を発生する膨張機、該膨張機を経由した作動流体を凝縮させる凝縮器、該凝縮器を経由した作動流体を前記熱交換器に送出するポンプが順次介装されたランキン回路と、内燃機関の排ガスを大気に放出させる排気通路に介装された排ガス熱交換器と、内燃機関の排ガスの一部をEGRガスとして吸気に還流させるEGR通路、該EGR通路に介装されて少なくとも内燃機関の運転状態に応じた開閉によりEGRガスの流通と遮断を行うEGRバルブ及び該EGR通路に介装されてEGRガスを冷却するEGRクーラを有するEGR回路と、前記EGR通路のEGRガスの流れ方向で視て前記EGRクーラの下流に設けられ、EGRガスの温度を検出するEGRガス温度検出手段と、少なくとも、前記EGRバルブが開でEGRガスが流通しているとき、前記EGRクーラでのEGRガスの熱交換量を制御する制御手段とを備え、前記ランキン回路における前記複数の熱交換器は、前記EGRクーラと前記排ガス熱交換器であって、前記循環路の作動流体の流れ方向で視て前記EGRクーラが前記排ガス熱交換器よりも上流に位置し、前記EGRクーラでEGRガスの熱により作動流体を加熱し、前記排ガス熱交換器で排ガスの熱により作動流体を加熱するよう構成され、前記制御手段は、前記EGRガス温度検出手段により検出されるEGRガスの温度が所定温度範囲となるよう、前記EGRクーラでのEGRガスと作動流体との熱交換量を制御することを特徴とする。
【0008】
請求項2の内燃機関の廃熱利用装置では、請求項1において、前記制御手段は、前記EGRガス温度検出手段により検出されるEGRガスの温度が所定温度範囲となるよう、前記ランキン回路の前記膨張機の負荷を変えることで前記EGRクーラを通る作動流体の圧力を可変させることを特徴とする。
請求項3の内燃機関の廃熱利用装置では、請求項1または2において、前記制御手段は、前記EGRガス温度検出手段により検出されるEGRガスの温度が所定温度範囲となるよう、前記ランキン回路の前記ポンプの吐出量を変えることで前記EGRクーラを通る作動流体の流量を可変させることを特徴とする。
【0009】
請求項4の内燃機関の廃熱利用装置では、請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記ランキン回路は、前記循環路から分岐合流して前記EGRクーラをバイパスするEGRクーラバイパス通路と、作動流体の流れを前記循環路と該EGRクーラバイパス通路とで調節する調節弁とを備え、前記制御手段は、前記EGRガス温度検出手段により検出されるEGRガスの温度が所定温度範囲となるよう、前記調節弁を調節することにより前記EGRクーラを通る作動流体の流量を可変させることを特徴とする。
請求項5の内燃機関の廃熱利用装置では、請求項1乃至4のいずれかにおいて、内燃機関の冷却水をラジエータに循環させる冷却水通路と、該冷却水通路に介装されて冷却水の熱と作動流体の熱を熱交換する冷却水熱交換器を有する冷却水回路をさらに備え、前記ランキン回路における前記循環路の作動流体の流れ方向で視て前記冷却水熱交換器が前記EGRクーラ及び前記排ガス熱交換器より上流に位置することを特徴とする。
【0010】
請求項6の内燃機関の廃熱利用装置では、請求項5において、前記ランキン回路は、前記循環路から分岐合流して前記冷却水熱交換器をバイパスする冷却水熱交換器バイパス通路と、作動流体の流れを前記循環路と該冷却水熱交換器バイパス通路とで調節する第2の調節弁と、内燃機関に返戻される冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段とを備え、前記制御手段は、前記冷却水温度検出手段により検出される冷却水の温度が規定温度以下にならないよう、前記第2の調節弁を調節することにより前記冷却水熱交換器を通る作動流体の流量を可変させることを特徴とする。
請求項7の内燃機関の廃熱利用装置では、請求項6において、前記制御手段は、前記EGRガス温度検出手段により検出されるEGRガスの温度が所定温度範囲となるよう、前記第2の調節弁を調節し前記冷却水熱交換器を通る作動流体の流量を変えることで前記冷却水熱交換器での吸熱量を可変させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の内燃機関の廃熱利用装置によれば、ランキン回路は複数の熱交換器を有し、複数の熱交換器は、EGR回路のEGRクーラと排気通路の排ガス熱交換器であって、これらEGRクーラと排ガス熱交換器とをランキン回路の作動流体の流れ方向で視てEGRクーラが排ガス熱交換器よりも上流に位置するように配置しておき、制御手段により、EGRガス温度検出手段により検出されるEGRガスの温度が所定温度範囲となるよう、EGRクーラでのEGRガスと作動流体との熱交換量を制御するようにしている。
従って、ランキン回路の作動流体は、EGRガスが還流しているときには、先ずEGRクーラにおいてEGRガスの熱を吸熱することでEGRガスを所定温度範囲まで低下させ、その後排ガス熱交換器において排ガスの熱をさらに吸熱することとなる。
これにより、EGRガスを例えばEGRガス中の水分が凝縮せず酸を発生しない100℃以上に保持してEGR通路やEGRバルブの腐食を防止しながら、EGRクーラでEGRガスの熱をランキン回路の作動流体に充分に吸熱させることによりEGRガスの温度を所定温度範囲に低下させ、さらに排ガス熱交換器で排ガスの熱をランキン回路の作動流体に吸熱させることができ、内燃機関の廃熱を効率よく利用することができる。
【0012】
また、ランキン回路の作動流体は、EGRガスが還流していないときであっても、排ガス熱交換器において排ガスの熱を吸熱して昇温し昇圧するので、やはり内燃機関の廃熱を効率よく利用することができる。
請求項2の内燃機関の廃熱利用装置によれば、ランキン回路の膨張機の負荷を変えてEGRクーラを通る作動流体の圧力を可変させること、即ち蒸発温度を可変させることでEGRクーラでの熱交換量を調整でき、EGRガスの温度を所定温度範囲に保持するようにできる。
請求項3の内燃機関の廃熱利用装置によれば、ランキン回路のポンプの吐出量を変えてEGRクーラを通る作動流体の流量を可変させることでEGRクーラでの熱交換量を調整でき、EGRガスの温度を所定温度範囲に保持するようにできる。
請求項4の内燃機関の廃熱利用装置によれば、作動流体の流れを循環路とEGRクーラバイパス通路とで調節する調節弁を調節してEGRクーラを通る作動流体の流量を可変させることでEGRクーラでの熱交換量を調整でき、EGRガスの温度を所定温度範囲に保持するようにできる。
【0013】
請求項5の内燃機関の廃熱利用装置によれば、冷却水熱交換器とEGRクーラと排ガス熱交換器とをランキン回路の作動流体の流れ方向で視て冷却水熱交換器がEGRクーラ及び排ガス熱交換器よりも上流に位置するように配置しておき、制御手段により、EGRガス温度検出手段により検出されるEGRガスの温度が所定温度範囲となるよう、EGRクーラでのEGRガスと作動流体との熱交換量を制御するようにしている。
従って、ランキン回路の作動流体は、EGRガスが還流しているときには、先ず冷却水熱交換器において冷却水の熱を吸熱し、次にEGRクーラにおいてEGRガスの熱を吸熱することでEGRガスを所定温度範囲まで低下させ、その後排ガス熱交換器において排ガスの熱を吸熱することとなる。
これにより、先ず冷却水熱交換器でEGRガスや排ガスより温度の低い冷却水の熱を先ずランキン回路の作動流体に吸熱した後、EGRガスを例えばEGRガス中の水分が凝縮せず酸を発生しない100℃以上の所定温度範囲に保持してEGR通路やEGRバルブの腐食を防止しながら、EGRクーラでEGRガスの熱をランキン回路の作動流体に充分に吸熱させ、排ガス熱交換器でさらに排ガスの熱をランキン回路の作動流体に吸熱させることができ、内燃機関の廃熱をさらに効率よく利用することができる。
【0014】
請求項6の内燃機関の廃熱利用装置によれば、作動流体の流れを循環路と冷却水熱交換器バイパス通路とで調節する第2の調節弁を調節し冷却水熱交換器を通る作動流体の流量を可変させることで冷却水熱交換器での熱交換量を調整でき、冷却水の温度が規定温度以下にならないようにできる。これにより、内燃機関の効率の低下を防止することができる。
請求項7の内燃機関の廃熱利用装置によれば、第2の調節弁を調節し冷却水熱交換器を通る作動流体の流量を変えて冷却水熱交換器での吸熱量を可変させることでEGRクーラでの熱交換量を調整でき、EGRガスの温度を所定温度範囲に保持するようにできる。例えば、EGRガスの温度が所定温度範囲よりも高いような場合に、第2の調節弁を調節し冷却水熱交換器を通る作動流体の流量を少なくして冷却水熱交換器での吸熱量を低く抑えることで、EGRクーラにおけるEGRガスの熱の作動流体への吸熱を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施例に係る内燃機関の廃熱利用装置を示す模式図である。
【図2】第1実施例に係るモリエル線図を模式的に示す図である。
【図3】本発明の第2実施例に係る内燃機関の廃熱利用装置を示す模式図である。
【図4】第2実施例に係るモリエル線図を模式的に示す図である。
【図5】本発明の第3実施例に係る内燃機関の廃熱利用装置を示す模式図である。
【図6】第3実施例に係るモリエル線図を模式的に示す図である。
【図7】本発明の第4実施例に係る内燃機関の廃熱利用装置を示す模式図である。
【図8】第4実施例に係るモリエル線図を模式的に示す図である。
【図9】トラック等の重量車両におけるエンジン出力とガス温度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面により本発明の一実施形態について説明する。
[第1実施例]
図1は、本発明の第1実施例に係る内燃機関の廃熱利用装置を模式的に示した図である。
廃熱利用装置は、例えば車両に搭載され、エンジン2及びランキン回路40から構成されている。
エンジン2は、エンジン本体(内燃機関)3が例えばディーゼルエンジンであって、エンジン本体3の吸気ポートに吸気マニフォールドを介して吸気通路4が連通され、排気ポートに排気マニフォールドを介して排気通路6が連通して構成されている。また、吸気通路4及び排気通路6には、吸気通路4と排気通路6とを跨いで過給機8が設けられており、当該過給機8により、排ガス流を利用して吸気を過給することができる。吸気通路4にはインタークーラ10が介装されており、当該インタークーラ10により、吸気を冷却して吸気効率の向上を図ることができる。
【0017】
エンジン2には、エンジン本体3の内部のウォータジャケットを冷却水が循環する冷却水回路20が設けられており、冷却水回路20は、ウォータジャケットと連通する冷却水循環通路22に、冷却水の流れ方向で視て順にラジエータ24、サーモスタット26、エンジン本体3により駆動される水ポンプ27、エンジン本体3が介装されて構成されている。サーモスタット26には、ラジエータ24をバイパスするラジエータバイパス流路28が合流しており、これにより、サーモスタット26は、冷却水の温度に応じて自動的に、冷却水をラジエータ24をバイパスさせて流し、或いはラジエータ24に流すようにできる。なお、ラジエータ24には冷却ファン25が設けられている。これにより、冷却水がラジエータ24にて外気と熱交換され、エンジン本体3が冷却される。
また、エンジン2には、主にNOx低減のために排ガスの一部をEGRガス(排気再循環ガス)として吸気に還流させるEGR回路(排気再循環回路)30が設けられており、EGR回路30は、EGR通路32にEGRガスの流量を調節するEGRバルブ34とEGRガスの温度を低下させるEGRクーラ36とが介装されて構成されている。
【0018】
ランキン回路40は、作動流体(例えば、エタノール)の循環路42に、作動流体の流れ方向で視て順に、上記EGRクーラ(熱交換器)36、排気通路6との間で熱交換を行う排ガス熱交換器(熱交換器、過熱器)41、これらEGRクーラ36や排ガス熱交換器41にて加熱され過熱状態となる作動流体の膨張によって回転駆動力を発生する膨張機44、ランキンコンデンサ(凝縮器)45、作動流体を循環させるポンプ46が介装されて構成されている。なお、ランキンコンデンサ45には冷却ファン47が設けられている。
ランキン回路40の循環路42には、EGRクーラ36をバイパスするようにしてEGRクーラバイパス通路50が設けられており、EGRクーラバイパス通路50の循環路42からの分岐部には三方弁(調節弁)52が介装されている。
このような構成により、ランキン回路40では、EGRクーラ36を介してEGR回路30を還流するEGRガスから作動流体に吸熱を行うとともに排ガス熱交換器41でエンジン2の排気通路6を流れる排ガスから作動流体に吸熱を行うことでエンジン2の廃熱を回収可能である。
なお、EGRクーラ36を排ガス熱交換器41よりも上流側に配置するのは、先に排ガス熱交換器41に作動流体を流したとすると、排ガス熱交換器41で作動流体が充分吸熱されてしまい、EGRクーラ36で吸熱できる熱量が不足し、EGRガスが所定の温度まで下がらない可能性があるためである。
【0019】
膨張機44には、同期回転可能に発電機56が連結されるとともに上記ポンプ46が連結されている。これにより、膨張機44によって発生した回転駆動力が発電機56及びポンプ46に伝達され、発電機56により発電が行われ、ポンプ46によって作動流体の循環が行われる。なお、発電機56は発電負荷を可変可能に構成され、ポンプ46は容量を可変可能に構成されている。ここに、発電機56により発電された電力は、バッテリに蓄えられ、例えば車両の空調装置の動力源として、或いは車両が冷凍車のような場合には冷凍冷蔵用コンプレッサの動力源として使用される。
冷却水回路20の冷却水循環通路22の水ポンプ27近傍位置には冷却水の温度Twを検出する冷却水温度センサ(冷却水温度検出手段)29が設けられ、EGR回路30のEGR通路32のEGRクーラ36下流位置にはEGRガスの温度Tegrを検出するEGRガス温度センサ(EGRガス温度検出手段)39が設けられ、エンジン2の排気通路6の排気マニフォールド近傍位置には排ガスの温度Texを検出する排気温度センサ19が設けられている。
【0020】
そして、廃熱利用装置には、エンジン2及びランキン回路40を総合的に制御する電子制御ユニット(ECU)(制御手段)60が設けられ、その入力側には排気温度センサ19、冷却水温度センサ29、EGRガス温度センサ39等の各種センサ類が電気的に接続され、その出力側には、冷却ファン25、EGRバルブ34、ポンプ46、冷却ファン47、三方弁52、発電機56等の各種デバイス類が電気的に接続されている。
これにより、ECU60は、排気温度センサ19、冷却水温度センサ29、EGRガス温度センサ39からの入力に基づき、冷却ファン25、EGRバルブ34、ポンプ46、冷却ファン47、三方弁52、発電機56を適宜制御可能である。
【0021】
以下、このように構成された第1実施例に係る内燃機関の廃熱利用装置の作動について説明する。
エンジン2は、エンジン本体3が始動されると、冷却水回路20の水ポンプ27が駆動を開始し、冷却水循環通路22を冷却水が循環し始める。この際、エンジン本体3が冷態始動状態にあって冷却水の温度Twが所定温度T1(サーモスタット設定値)よりも低い場合には、サーモスタット26により冷却水はラジエータ24をバイパスするように流れ、冷却水の温度Twが所定温度T1になると、冷却水はラジエータ24を流れて冷却される。これにより、エンジン本体3が冷態始動状態にあるときには、エンジン本体3の暖機が促進され、エンジン本体3の暖機後には冷却ファン25が適宜作動制御され、ラジエータ24にて冷却される冷却水の温度Twは所定温度T2(例えば、80℃)に保持される。
【0022】
エンジン2がEGRガスを吸気に還流可能な運転状態にあるときには、EGRガスがEGRバルブ34の開度に応じてEGR通路32を還流する。
このとき、ランキン回路40において三方弁52が作動流体をEGRクーラ36側に流すように操作されていると、EGRガスと循環路42を流れる作動流体とがEGRクーラ36において熱交換され、EGRガスの温度が低下する一方、作動流体の温度及び圧力が上昇する。
ランキン回路40の循環路42を流れる作動流体は、EGRクーラ36にて吸熱した後、排ガス熱交換器41においてさらに排ガスと熱交換され、排ガスの温度が低下する一方、作動流体の温度及び圧力がさらに上昇する。
このように昇温し昇圧した作動流体は、膨張機44に流入し、膨張機44にて回転駆動力を発生する。これにより発電機56が発電駆動される。また、ポンプ46が駆動されることで作動流体が循環路42を循環する。
【0023】
膨張機44からは作動流体が減圧されて排出され、この減圧された作動流体はランキンコンデンサ45によって外気に放熱される。
ところで、このようにEGR回路30のEGRガスの熱と排気通路6の排ガスの熱とがランキン回路40の循環路42を流れる作動流体に吸熱され、昇温及び昇圧した作動流体によって発電機56が駆動されて発電が行われるが、EGRクーラ36において作動流体に吸熱する吸熱量(熱交換量)は、ECU60によって適宜調整される。詳しくは、EGRガス温度センサ39により検出されるEGRガスの温度Tegrに基づき、吸気に還流されるEGRガスの温度Tegrが所定温度T3を維持するよう、作動流体への吸熱量が制御される。
ここに、所定温度T3は、EGRクーラ36の蒸発温度を100℃以上として、例えば150℃〜200℃(所定温度範囲)とされる。このように所定温度T3を100℃以上の例えば150℃〜200℃とするのは、EGRガスの温度Tegrが100℃未満になると、EGRガス中の水分が凝縮し酸を発生してEGR通路32やEGRバルブ34等の腐食を招くおそれがある一方、できるだけ低い温度にすることが望ましいためである。
【0024】
具体的には、作動流体への吸熱量は、EGRクーラ36を流れる作動流体の蒸発温度、即ち蒸発圧力を調節することで制御できることから、ECU60により、EGRガスの温度Tegrが所定温度T3を維持するよう、膨張機44ひいては発電機56の負荷を可変操作して作動流体の圧力を調節する。
また、作動流体への吸熱量は、EGRクーラ36を流れる作動流体の流量を調節することでも制御できることから、ECU60により、EGRガスの温度Tegrが所定温度T3を維持するよう、ポンプ46の容量(吐出量)を可変操作して作動流体の流量を調節する。
或いは、EGRクーラ36を流れる作動流体の流量の調節は、三方弁52の開度を調節することでも制御できることから、ECU60により、EGRガスの温度Tegrが所定温度T3を維持するよう、三方弁52の開度を可変操作して作動流体の流量を調節する。
また、これらを組み合わせ、EGRガスの温度Tegrが所定温度T3に維持されるよう、発電機56の負荷を可変操作するとともに、ポンプ46の容量を可変操作し、さらに三方弁52の開度を可変操作するようにしてもよい。
【0025】
このように、本発明の第1実施例に係る内燃機関の廃熱利用装置では、ランキン回路40は、作動流体の流れ方向で視て順に、上流側にEGRクーラ36が配設され、下流側に排ガス熱交換器41が配設されているので、ランキン回路40の循環路42を流れる作動流体は、図2に第1実施例に係るモリエル線図を模式的に示すように、先ずEGRクーラ36においてEGRガスの熱を吸熱してEGRガスの温度を充分に低下させるようにでき、その後さらに排ガス熱交換器41において排ガスの熱をも吸熱するようにできる。これにより、作動流体の温度及び圧力を上昇させて膨張機44を作動させ、エンジン2の廃熱を効果的に発電機56による発電に利用することができる。
特に、EGRガスの温度Tegrが所定温度T3を維持するよう、発電機56の負荷を可変操作して作動流体の圧力を調節し、或いはポンプ46の容量を可変操作して作動流体の流量を調節し、或いは三方弁52の開度を可変操作して作動流体の流量を調節し、或いはこれらを組み合わせて実施するので、EGRガスの還流が行われる場合には、EGRガスの温度Tegrを確実に所定温度T3(例えば、150℃〜200℃)に維持するようにでき、EGRガス中の水分が凝縮して酸を発生しないようにでき、EGR通路32やEGRバルブ34等の腐食を好適に防止することができる。
【0026】
一方、エンジン2がEGRガスを吸気へ還流できない運転状態にあるときには、EGRバルブ34は遮断されてEGRガスは吸気へ還流されないことから、EGRガスの熱をランキン回路40で利用することはできない。この場合には、ランキン回路40の循環路42を流れる作動流体は、排ガス熱交換器41において排ガスのみと熱交換され、排ガスの温度が低下する一方、作動流体の温度及び圧力が上昇する。
これにより、EGRガスの還流が遮断された状況であっても、排ガス熱交換器41を介して排ガスの熱を吸熱するようにでき、EGR回路30の状態に拘わらず、エンジン2の廃熱を効果的に発電機56による発電に利用することができる。
【0027】
[第2実施例]
図3は、本発明の第2実施例に係る内燃機関の廃熱利用装置を模式的に示した図である。
第2実施例では、冷却水回路20の冷却水循環通路22を流れる冷却水の熱をもランキン回路40で利用する点が上記第1実施例と異なっており、以下第1実施例と異なる部分について説明する。
図3に示すように、エンジン2には、冷却水回路20’が設けられており、冷却水回路20’の冷却水循環通路22’のうち冷却水の流れ方向で視てラジエータ24の上流には、ランキン回路40’との間で熱交換を行うプリヒータ(冷却水熱交換器、熱交換器)23が介装されている。
プリヒータ23は、ランキン回路40’においては、循環路42’のうちEGRクーラ36よりも上流側に位置してポンプ46と三方弁52との間に介装されている。即ち、第2実施例では、ランキン回路40’は、作動流体の流れ方向で視て順に、最も上流側にプリヒータ23が配設され、次にEGRクーラ36が配設され、最も下流側に排ガス熱交換器41が配設されて構成されている。
なお、プリヒータ23をEGRクーラ36よりも上流側に配置するのは、作動流体の蒸発温度は100℃以上、例えば150℃であり、冷却水の温度は例えば80℃とそれよりも低いため、上流側にないとプリヒータ23から吸熱できないためである。
【0028】
また、ランキン回路40’の循環路42’には、プリヒータ23をバイパスするようにしてプリヒータバイパス通路(冷却水熱交換器バイパス通路)53が設けられており、プリヒータバイパス通路53の循環路42’からの分岐部には三方弁(第2の調節弁)54が介装されている。そして、三方弁54はECU60の出力側に電気的に接続されている。
また、ランキン回路40’の循環路42’のプリヒータ23下流位置には作動流体の温度Trを検出する作動流体温度センサ59が設けられている。
以下、このように構成された第2実施例に係る内燃機関の廃熱利用装置の作動について説明する。
エンジン2において、エンジン本体3が冷態始動状態にあって冷却水回路20’の冷却水の温度Twが所定温度T1よりも低い場合には、サーモスタット26により冷却水はラジエータ24をバイパスするように流れる。この際、ランキン回路40’では、三方弁54が作動流体をプリヒータバイパス通路53に流すように操作され、作動流体のプリヒータ23への流通が回避される。これにより、エンジン本体3の冷却水の熱が不必要にランキン回路40’の作動流体に吸熱されることが防止され、エンジン本体3の暖機が促進される。
【0029】
エンジン本体3が暖機し、冷却水の温度Twが所定温度T1になると、冷却水回路20’の冷却水はラジエータ24を流れて冷却され、ランキン回路40’においては三方弁54が作動流体をプリヒータ23に流すように操作される。これにより、エンジン本体3の冷却水の熱がプリヒータ23を介してランキン回路40の作動流体に吸熱され始め、冷却水の温度が低下する一方、作動流体の温度が上昇する。
そして、エンジン2がEGRガスを吸気に還流可能な運転状態にあるときには、EGRガスがEGRバルブ34の開度に応じてEGR通路32を還流し、ランキン回路40’において三方弁52が作動流体をEGRクーラ36側に流すよう操作されていると、EGRガスと循環路42’を流れる作動流体とがEGRクーラ36において熱交換され、EGRガスの温度が低下する一方、作動流体の温度及び圧力が上昇する。
【0030】
ランキン回路40’の循環路42’を流れる作動流体は、EGRクーラ36にて吸熱した後、排ガス熱交換器41においてさらに排ガスと熱交換され、排ガスの温度が低下する一方、作動流体の温度及び圧力がより一層上昇する。
このように昇温し昇圧した作動流体は、膨張機44に流入し、膨張機44にて回転駆動力を発生する。これにより発電機56が発電駆動される。また、ポンプ46が駆動されることで作動流体が循環路42’を循環する。
ところで、第2実施例では、このように冷却水回路20’の冷却水の熱とEGR回路30のEGRガスの熱と排気通路6の排ガスの熱とがランキン回路40’の循環路42’を流れる作動流体に吸熱され、昇温及び昇圧した作動流体によって発電機56が駆動されて発電が行われるが、プリヒータ23及びEGRクーラ36において作動流体に吸熱する吸熱量(熱交換量)は、ECU60によって適宜調整される。
【0031】
プリヒータ23においては、冷却水温度センサ29により検出される冷却水の温度Twに基づき、エンジン本体3に返戻される冷却水の温度Twが上記所定温度T2(規定温度、例えば、80℃)以下にならないよう、作動流体への吸熱量が制御される。具体的には、作動流体への吸熱量は、プリヒータ23を流れる作動流体の流量を調節することで制御できることから、ECU60により、三方弁54の開度を可変操作し、プリヒータ23を流れる作動流体の流量を冷却水の温度Twが所定温度T2以下にならないように調節する。これにより、冷却水の温度Twが所定温度T2より高い温度に保持され、エンジン本体3の過度の冷却による効率の低下が防止される。
また、同時に、冷却水の温度Twが所定温度T2よりも高くなるような場合には、冷却ファン25が適宜作動制御され、ラジエータ24にて冷却される冷却水の温度Twは所定温度T2に保持される。
【0032】
EGRクーラ36については、EGRガス温度センサ39により検出されるEGRガスの温度Tegrに基づき、吸気に還流されるEGRガスの温度Tegrが所定温度T3を維持するよう、作動流体への吸熱量が制御される。ここに、所定温度T3は、第1実施例の場合と同様、100℃以上の例えば150℃〜200℃とされる。
具体的には、第1実施例の場合と同様、EGRガスの温度Tegrが所定温度T3に維持されるよう、発電機56の負荷を可変操作して作動流体の圧力を調節し、或いはポンプ46の容量を可変操作して作動流体の流量を調節し、或いは三方弁52の開度を可変操作して作動流体の流量を調節する。或いは、EGRクーラ36でのEGRガスの熱の作動流体への吸熱が促進されるよう、三方弁54の開度を可変操作し、プリヒータ23を流れる作動流体の流量を調節してプリヒータ23での吸熱量を調節する。また、EGRガスの温度Tegrが所定温度T3に維持されるよう、これらを選択的に組み合わせて実施するようにしてもよい。
【0033】
このように、本発明の第2実施例に係る内燃機関の廃熱利用装置では、ランキン回路40’は、作動流体の流れ方向で視て順に、最も上流側にプリヒータ23が配設され、次にEGRクーラ36が配設され、最も下流側に排ガス熱交換器41が配設されているので、ランキン回路40’の循環路42’を流れる作動流体は、図4に第2実施例に係るモリエル線図を模式的に示すように、先ずプリヒータ23において冷却水の熱を吸熱し、次にEGRクーラ36においてEGRガスの熱を吸熱してEGRガスの温度を充分に低下させるようにでき、その後さらに排ガス熱交換器41において排ガスの熱をも吸熱するようにできる。これにより、作動流体の温度及び圧力を充分に上昇させて膨張機44を作動させ、エンジン2の廃熱を効果的に発電機56による発電に利用することができる。
特に、本発明の第2実施例に係る内燃機関の廃熱利用装置では、プリヒータ23において、エンジン本体3に返戻される冷却水の温度Twが上記所定温度T2(例えば、80℃)以下にならないように作動流体の流量を調節するので、プリヒータ23にて冷却水の熱を作動流体に良好に吸熱しながら、エンジン2の性能の低下を抑制できるとともに、下流に位置するEGRクーラ36でEGRガスの熱を充分に吸熱するようにできる。
【0034】
また、第1実施例と同様、EGRガスの温度Tegrが所定温度T3を維持するよう、発電機56の負荷を可変操作して作動流体の圧力を調節し、或いはポンプ46の容量を可変操作して作動流体の流量を調節し、或いは三方弁52の開度を可変操作して作動流体の流量を調節し、或いは三方弁54の開度を可変操作してプリヒータ23を流れる作動流体の流量を調節し、或いはこれらを組み合わせて実施するので、EGRガスの還流が行われる場合には、EGRガスの温度Tegrを確実に所定温度T3(例えば、150℃〜200℃)に維持するようにでき、EGRガス中の水分が凝縮して酸を発生しないようにでき、EGR通路32やEGRバルブ34等の腐食を好適に防止することができる。
一方、エンジン2がEGRガスを吸気へ還流できない運転状態にあるときには、EGRバルブ34は遮断されてEGRガスは吸気へ還流されないことから、EGRガスの熱をランキン回路40’で利用することはできない。この場合には、ランキン回路40’の循環路42’を流れる作動流体は、プリヒータ23において冷却水と熱交換されるとともに排ガス熱交換器41において排ガスと熱交換され、或いは冷却水の温度Twや作動流体の温度Trによっては排ガス熱交換器41において排ガスのみと熱交換されて温度及び圧力が上昇する。
【0035】
これにより、EGRガスの還流が遮断された状況であっても、プリヒータ23や排ガス熱交換器41を介してエンジン本体3の冷却水や排ガスの熱をランキン回路40’の作動流体に良好に吸熱するようにでき、EGR回路30の状態に拘わらず、エンジン2の廃熱を効果的に発電機56による発電に利用することができる。
[第3実施例]
図5は、本発明の第3実施例に係る内燃機関の廃熱利用装置を模式的に示した図である。
第3実施例では、ランキン回路140において2段膨張を行う点が上記第1実施例と異なっており、以下第1実施例と異なる部分について説明する。
【0036】
図5に示すように、ランキン回路140は、作動流体(例えば、水)の循環路142に、作動流体の流れ方向で視て順に、上記EGRクーラ36、排気通路6との間で熱交換を行う排ガス熱交換器(熱交換器、過熱器)41、膨張機44、第2の排ガス熱交換器(熱交換器、過熱器)141、第2の膨張機144、ランキンコンデンサ45、作動流体を循環させるポンプ46が介装されて構成されている。なお、ランキンコンデンサ45には冷却ファン47が設けられている。そして、膨張機44には、同期回転可能に発電機56が連結され、第2の膨張機144には、同期回転可能に第2の発電機156が連結されており、それぞれECU60の出力側に電気的に接続されている。
このように、ランキン回路140では、EGRクーラ36及び排ガス熱交換器41において作動流体を昇温し昇圧させ、昇温し昇圧した作動流体により膨張機44にて回転駆動力を発生した後、さらに第2の排ガス熱交換器141で作動流体を再び昇温させ、再び昇温した作動流体によりさらに第2の膨張機144にて回転駆動力を発生させるようにしている。
【0037】
この際、第1実施例の場合と同様、EGRクーラ36において作動流体に吸熱する吸熱量は、ECU60によって適宜調整される。詳しくは、EGRガス温度センサ39により検出されるEGRガスの温度Tegrに基づき、吸気に還流されるEGRガスの温度Tegrが所定温度T3を維持するよう、作動流体への吸熱量が制御される。ここに、所定温度T3は、第1実施例の場合と同様、100℃以上の例えば150℃〜200℃とされる。
具体的には、第1実施例の場合と同様、EGRガスの温度Tegrが所定温度T3を維持するよう、発電機56の負荷を可変操作して作動流体の圧力を調節し、或いはポンプ46の容量を可変操作して作動流体の流量を調節し、或いは三方弁52の開度を可変操作して作動流体の流量を調節する。また、これらを組み合わせ、EGRガスの温度Tegrが所定温度T3に維持されるよう、発電機56の負荷を可変操作するとともに、ポンプ46の容量を可変操作し、さらに三方弁52の開度を可変操作するようにしてもよい。
ここに、発電機56の負荷を可変操作するのは、蒸発圧力はランキンコンデンサ45に接続されている膨張機44の負荷を変えてコントロールするためである。即ち、第2の発電機156ではなく発電機56の負荷を可変操作するのは、例えば発電機56の負荷が軽いと膨張機44が高速で回り、作動流体が次々とランキンコンデンサ45側に送られ、EGRクーラ36での蒸発が追いつかずに蒸発圧力が下がるのであるが、一方、第2の発電機156の負荷を可変操作し2段目の膨張機144の負荷を軽くして膨張機144が高速で回っても、1段目の膨張機44が速く回らなければ蒸発圧力は変化しないためである。
【0038】
このように、本発明の第3実施例に係る内燃機関の廃熱利用装置においても、ランキン回路140は、作動流体の流れ方向で視て順に、上流側にEGRクーラ36が配設され、下流側に排ガス熱交換器41及び第2の排ガス熱交換器141が配設されているので、ランキン回路140の循環路142を流れる作動流体は、図6に第3実施例に係るモリエル線図を模式的に示すように、先ずEGRクーラ36においてEGRガスの熱を吸熱してEGRガスの温度を充分に低下させるようにでき、その後さらに排ガス熱交換器41及び第2の排ガス熱交換器141において排ガスの熱をも吸熱するようにでき、作動流体の温度及び圧力を上昇させてエンジン2の廃熱を効果的に発電機56及び第2の発電機156による発電に利用することができる。
特に、本発明の第3実施例に係る内燃機関の廃熱利用装置では、ランキン回路40において、膨張機44と第2の膨張機144とを備えるとともに、排ガス熱交換器41と第2の排ガス熱交換器141とを備え、排ガス熱交換器41において排ガスから吸熱した作動流体で膨張機44を作動させて発電機56により発電を行った後、さらに第2の排ガス熱交換器141において排ガスから吸熱した作動流体で第2の膨張機144を作動させて第2の発電機156により発電を行うようにしているので、2段膨張を実施することにより、エンジン2の廃熱をより一層効果的に利用することができる。
ところで、上記第1及び第2実施例の場合のように作動流体がエタノールにあっては、膨張機44の入口200℃で等エントロピ膨張させて、ランキンコンデンサ45の入口でガスの状態を保つことができる。しかしながら、本実施例のように作動流体が水にあっては、膨張機44の入口200℃で等エントロピ膨張させて、ランキンコンデンサ45の入口で気液二相となってしまう。少しの液相は問題ないが、大幅に液相になるとエロージョン等で膨張機44が壊れるという問題がある。そこで、本実施例においては、途中で一旦温度を上昇させてから再膨張させるようにしている。
【0039】
[第4実施例]
図7は、本発明の第4実施例に係る内燃機関の廃熱利用装置を模式的に示した図である。
第4実施例では、上記第2実施例と同様に冷却水回路20の冷却水循環通路22を流れる冷却水の熱をもランキン回路140で利用する点が上記第3実施例と異なっている。
図7に示すように、エンジン2には、冷却水回路20’が設けられており、冷却水回路20’の冷却水循環通路22’のうち冷却水の流れ方向で視てラジエータ24の上流には、ランキン回路140’との間で熱交換を行うプリヒータ23が介装されている。
プリヒータ23は、第2実施例と同様、ランキン回路140’においては、循環路142’のうちEGRクーラ36よりも上流側に位置してポンプ46と三方弁52との間に介装されている。即ち、第4実施例では、ランキン回路140’は、作動流体の流れ方向で視て順に、最も上流側にプリヒータ23が配設され、次にEGRクーラ36が配設され、最も下流側に排ガス熱交換器41及び第2の排ガス熱交換器141が配設されて構成されている。そして、ランキン回路140’の循環路142’には、第2実施例と同様、プリヒータ23をバイパスするようにしてプリヒータバイパス通路53が設けられており、プリヒータバイパス通路53の循環路142’からの分岐部には三方弁54が介装され、循環路142’のプリヒータ23下流位置には作動流体の温度Trを検出する作動流体温度センサ59が設けられている。
【0040】
このように、本発明の第4実施例に係る内燃機関の廃熱利用装置では、ランキン回路140’は、作動流体の流れ方向で視て順に、最も上流側にプリヒータ23が配設され、次にEGRクーラ36が配設され、最も下流側に排ガス熱交換器41及び第2の排ガス熱交換器141が配設されているので、ランキン回路140’の循環路142’を流れる作動流体は、図8に第4実施例に係るモリエル線図を模式的に示すように、先ずプリヒータ23において冷却水の熱を吸熱し、次にEGRクーラ36においてEGRガスの熱を吸熱してEGRガスの温度を充分に低下させるようにでき、その後さらに排ガス熱交換器41及び第2の排ガス熱交換器141において排ガスの熱をも吸熱するようにでき、上記第2実施例と同様の効果及び2段膨張による第3実施例と同様の効果を奏しながら、作動流体の温度及び圧力を充分に上昇させてエンジン2の廃熱をさらに一層効果的に利用することができる。
【0041】
以上、第1乃至第4実施例に基づき説明したように、本発明に係る内燃機関の廃熱利用装置によれば、EGRガスを含むエンジン2の複数の熱源を、EGRガス中の水分を凝縮させることなく、効率よくランキン回路40、40’、140、140’に利用することができる。
なお、冷却水やEGRガスや排ガスからランキン回路40、40’、140、140’の作動流体に吸熱できる熱量は、車両の積載量や道路勾配の変化に応じて変動するエンジン本体3の負荷により増減するが、エンジン本体3の負荷の増減は排ガスの温度Texに比例することから、ECU60により、排気温度センサ19により検出される排ガスの温度Texに応じてランキンコンデンサ45の冷却ファン47の作動を制御するのがよい。
具体的には、排気温度センサ19により検出される排ガスの温度Texの上昇に応じて冷却ファン47の回転速度を増大させる。このようにすることで、車両の積載量が多い場合や勾配が大きい場合であっても、ランキン回路40、40’、140、140’をさらに効率よく機能させることができる。
冷却水やEGRガスや排ガスからランキン回路40、40’、140、140’の作動流体が吸熱できる熱量が十分であり膨張機44入力前の蒸発圧力(高圧側圧力)を上昇させることができても、ランキンコンデンサ45における放熱量が十分でなければ凝縮圧(低圧側圧力)が上昇し、膨張機44前後の圧力比が十分とれず、膨張機44で回収できる出力が向上できない。つまり、ランキン回路40、40’、140、140’の高圧側での入力が増加した分、ランキン回路40、40’、140、140’の低圧側での放熱量も増加させなければならない。
そのため、ランキンコンデンサ45の圧力や温度を検出してランキンコンデンサ45の圧力が所定圧力値になるよう冷却ファン47の回転速度を制御してランキンコンデンサ45での放熱量を増加させることは既に行われている。
しかしながら、ランキンコンデンサ45の圧力や温度を検出してランキンコンデンサ45の圧力が所定圧力値になるよう冷却ファン47の回転速度を制御する場合、車両が上り坂道走行状態に入ったことによりエンジン本体3の負荷が大きくなってエンジン本体3からの廃熱回収ができる状態にも拘わらず、ランキンコンデンサ45の圧力や温度の変動が少し遅れて検出されるため、エンジン本体3の負荷増大による廃熱が十分に回収されない状態が暫く続く。また、車両が上り坂道走行状態から平地走行状態に移った場合、エンジン本体3の負荷が減少しエンジン本体3からの廃熱回収量が少なくなった状態であるにも拘わらず、ランキンコンデンサ45の圧力や温度の変動が少し遅れて検出されるため、冷却ファン47を作動させて無駄な電力を消費する状態が発生することがある。
一方、トラック等の重量車両の場合、車両の積載量や上り坂勾配等の影響でエンジン本体3の負荷が変動するが、図9に示すように、エンジン本体3の負荷(エンジン出力)の増減は排ガス温度(ガス温度)に比例すること、及び、排ガス温度はランキン回路40、40’、140、140’におけるランキンコンデンサ45の圧力や温度に比してエンジン負荷に対する応答性が速いことが本発明の発明者の研究結果により明らかとなった。このことから、ECU60が、排気温度センサ19により検出される排ガスの温度Texに応じてランキンコンデンサ45の冷却ファン47の作動を制御することにより、エンジン本体3の負荷変動に即座に対応して廃熱回収が図られ、ランキン回路40、40’、140、140’を効率よく作動させることができる。また、排ガスの温度は、EGRガス温度を測定することにより、さらに応答性よく廃熱回収が図られ、ランキン回路40、40’、140、140’を効率よく作動させることができる。
【0042】
以上で本発明の一実施形態についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。
例えば、上記実施形態では、ランキン回路40、40’、140、140’において、膨張機44、144にて回転駆動力を発生させ、発電機56、156で発電を行うようにしてエンジン2の廃熱を電気エネルギに変換して利用するようにしているが、これに限られず、例えば膨張機44、144の回転駆動力でエンジン本体3の駆動をアシストするようにしてもよい。
また、上記実施形態では、エンジン本体3が例えばディーゼルエンジンである場合を例に説明したが、エンジン本体3は内燃機関であれば例えばガソリンエンジンであってもよい。
また、上記実施形態では、排ガス熱交換器41及び第2の排ガス熱交換器141は、排気通路6に直列に配置したが、排気通路を2重にして並列にしてもよい。
また、上記実施形態では、プリヒータ23、EGRクーラ36での吸熱量は、作動流体をバイパスさせて調整したが、冷却水やEGRガスをバイパスさせて調整してもよい。
また、吸熱源として、さらにインタークーラ10の廃熱や図示しないオイルクーラ等を追加するようにしてもよい。
また、膨張機44及び第2の膨張機144を同軸に配し、発電機56及び第2の発電機156を1つに統合するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
2 エンジン
3 エンジン本体(内燃機関)
6 排気通路
20、20’ 冷却水回路
23 プリヒータ(冷却水熱交換器、熱交換器)
29 冷却水温度センサ(冷却水温度検出手段)
30 EGR回路
36 EGRクーラ(熱交換器)
39 EGRガス温度センサ(EGRガス温度検出手段)
40、40’、140、140’ ランキン回路
41 排ガス熱交換器(熱交換器、、過熱器)
44 膨張機
45 ランキンコンデンサ(凝縮器)
46 ポンプ
50 EGRクーラバイパス通路
52 三方弁(調節弁)
53 プリヒータバイパス通路(冷却水熱交換器バイパス通路)
54 三方弁(第2の調節弁)
56 発電機
60 電子制御ユニット(ECU)
141 第2の排ガス熱交換器(熱交換器、過熱器)
144 第2の膨張機
156 第2の発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体の循環路に、内燃機関の廃熱により作動流体を加熱する複数の熱交換器、該複数の熱交換器を経由した作動流体を膨張させて回転駆動力を発生する膨張機、該膨張機を経由した作動流体を凝縮させる凝縮器、該凝縮器を経由した作動流体を前記熱交換器に送出するポンプが順次介装されたランキン回路と、
内燃機関の排ガスを大気に放出させる排気通路に介装された排ガス熱交換器と、
内燃機関の排ガスの一部をEGRガスとして吸気に還流させるEGR通路、該EGR通路に介装されて少なくとも内燃機関の運転状態に応じた開閉によりEGRガスの流通と遮断を行うEGRバルブ及び該EGR通路に介装されてEGRガスを冷却するEGRクーラを有するEGR回路と、
前記EGR通路のEGRガスの流れ方向で視て前記EGRクーラの下流に設けられ、EGRガスの温度を検出するEGRガス温度検出手段と、
少なくとも、前記EGRバルブが開でEGRガスが流通しているとき、前記EGRクーラでのEGRガスの熱交換量を制御する制御手段とを備え、
前記ランキン回路における前記複数の熱交換器は、前記EGRクーラと前記排ガス熱交換器であって、前記循環路の作動流体の流れ方向で視て前記EGRクーラが前記排ガス熱交換器よりも上流に位置し、前記EGRクーラでEGRガスの熱により作動流体を加熱し、前記排ガス熱交換器で排ガスの熱により作動流体を加熱するよう構成され、
前記制御手段は、前記EGRガス温度検出手段により検出されるEGRガスの温度が所定温度範囲となるよう、前記EGRクーラでのEGRガスと作動流体との熱交換量を制御することを特徴とする内燃機関の廃熱利用装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記EGRガス温度検出手段により検出されるEGRガスの温度が所定温度範囲となるよう、前記ランキン回路の前記膨張機の負荷を変えることで前記EGRクーラを通る作動流体の圧力を可変させることを特徴とする、請求項1記載の内燃機関の廃熱利用装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記EGRガス温度検出手段により検出されるEGRガスの温度が所定温度範囲となるよう、前記ランキン回路の前記ポンプの吐出量を変えることで前記EGRクーラを通る作動流体の流量を可変させることを特徴とする、請求項1または2記載の内燃機関の廃熱利用装置。
【請求項4】
前記ランキン回路は、前記循環路から分岐合流して前記EGRクーラをバイパスするEGRクーラバイパス通路と、作動流体の流れを前記循環路と該EGRクーラバイパス通路とで調節する調節弁とを備え、
前記制御手段は、前記EGRガス温度検出手段により検出されるEGRガスの温度が所定温度範囲となるよう、前記調節弁を調節することにより前記EGRクーラを通る作動流体の流量を可変させることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか記載の内燃機関の廃熱利用装置。
【請求項5】
内燃機関の冷却水をラジエータに循環させる冷却水通路と、該冷却水通路に介装されて冷却水の熱と作動流体の熱を熱交換する冷却水熱交換器を有する冷却水回路をさらに備え、
前記ランキン回路における前記循環路の作動流体の流れ方向で視て前記冷却水熱交換器が前記EGRクーラ及び前記排ガス熱交換器より上流に位置することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか記載の内燃機関の廃熱利用装置。
【請求項6】
前記ランキン回路は、前記循環路から分岐合流して前記冷却水熱交換器をバイパスする冷却水熱交換器バイパス通路と、作動流体の流れを前記循環路と該冷却水熱交換器バイパス通路とで調節する第2の調節弁と、内燃機関に返戻される冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段とを備え、
前記制御手段は、前記冷却水温度検出手段により検出される冷却水の温度が規定温度以下にならないよう、前記第2の調節弁を調節することにより前記冷却水熱交換器を通る作動流体の流量を可変させることを特徴とする、請求項5記載の内燃機関の廃熱利用装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記EGRガス温度検出手段により検出されるEGRガスの温度が所定温度範囲となるよう、前記第2の調節弁を調節し前記冷却水熱交換器を通る作動流体の流量を変えることで前記冷却水熱交換器での吸熱量を可変させることを特徴とする、請求項6記載の内燃機関の廃熱利用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−77630(P2012−77630A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220987(P2010−220987)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】