内燃機関バルブタイミング制御装置
【課題】ポート噴射型内燃機関の冷間時に液状燃料が燃焼室の内壁面に付着するのを防止することを目的とする。
【解決手段】アトキンソンサイクルを実行する内燃機関の冷間時において、吸気バルブ開弁タイミングを、吸気ポートに逆流が発生し始めるタイミングに調節している(S106〜S114)。したがって吸気バルブの開弁直後に筒内への急激な吸い込み流は生じない。このため冷間時に吸気ポートの壁面や吸気バルブの背面に存在していた液状燃料は、比較的穏やかな気流の中で、その表面から気化して燃焼室内に吸入される。このことから燃料が液状で筒内に吸い込まれることはなく、燃焼室の内壁面への液状燃料の付着が防止できる。このことにより局所リッチでの燃焼が生じることはなく、PM発生を防止できる。
【解決手段】アトキンソンサイクルを実行する内燃機関の冷間時において、吸気バルブ開弁タイミングを、吸気ポートに逆流が発生し始めるタイミングに調節している(S106〜S114)。したがって吸気バルブの開弁直後に筒内への急激な吸い込み流は生じない。このため冷間時に吸気ポートの壁面や吸気バルブの背面に存在していた液状燃料は、比較的穏やかな気流の中で、その表面から気化して燃焼室内に吸入される。このことから燃料が液状で筒内に吸い込まれることはなく、燃焼室の内壁面への液状燃料の付着が防止できる。このことにより局所リッチでの燃焼が生じることはなく、PM発生を防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気ポートに燃料噴射する内燃機関において、この内燃機関の運転状態に応じて吸気バルブ開弁タイミングをTDCよりも遅角する制御を実行する内燃機関バルブタイミング制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷間時の内燃機関において、噴射された燃料の霧化を促進して燃焼性を改善する技術が提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。
特許文献1では、吸気ポート燃料噴射を実行している内燃機関において燃料の霧化を良好にするために、吸気ポートでの受熱による燃料霧化促進と燃料凝集とのバランスを考慮して、吸気バルブ開弁タイミングが早ければ燃料噴射タイミングも早くし、吸気バルブ開弁タイミングが遅ければ燃料噴射タイミングも遅くする制御を実行している。
【0003】
特許文献2では、筒内燃料噴射を実行している内燃機関において、筒内噴射した燃料の一部をアトキンソンサイクルを利用して吸気ポートに戻して霧化を促進している。
特許文献3では、吸気ポート燃料噴射を実行している内燃機関の冷間時には吸気バルブからの排気の吹き返し量に応じて燃料噴射終了タイミングを制御して霧化を促進している。更に特許文献3では、吸気バルブによる吸い込み速度が遅い場合には吸気バルブ開タイミングに燃料噴射タイミングを近づけ、吸気バルブによる吸い込み速度が速い場合には吸気バルブ開タイミングから燃料噴射タイミングを遠ざけている。このことにより吸い込み速度の速さを利用して吸気バルブに付着している燃料を気流に乗せて筒内へ流入させて未燃HC(hydro carbon:炭化水素)残留の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−144753号公報(第4−7頁、図3,4)
【特許文献2】特開2009−174345号公報(第7−10頁、図1,2)
【特許文献3】特開2010−275932号公報(第12−14頁、図9〜11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アトキンソンサイクルなどのように、吸気バルブの開弁期間全体を遅角させて、一旦筒内に吸い込んだ吸気を再度吸気ポート側に戻す制御を実行している場合には、吸気バルブ開弁タイミングはTDC以後に設定される。このため筒内が負圧状態となったタイミングで吸気バルブが開くことになる。吸気バルブ開弁タイミングの遅角の程度が大きくて、吸気ポートと筒内との差圧が大きくなっている場合には、吸気バルブの開弁開始直後に吸気ポートから筒内へ急激に吸気が流れ込む状態が発生する。
【0006】
冷間時にこのような急激な吸気の流れが発生すると、燃料噴射によって吸気ポート壁面や吸気バルブの背面に付着した液状燃料が吹き飛ばされて液状のままで筒内に吸い込まれる。このため燃焼室の内壁面に液状燃料が付着する事態が発生する。
【0007】
この状態で燃焼すると局所リッチ状態での燃焼となり、PM(particulate matter:粒子状物質)発生の原因となる。
特許文献1では、吸気ポートでの燃料霧化を考慮した制御であり、吸気バルブ開弁タイミングがTDC以後になった場合でも燃料噴射時期を遅角側へ制御するのみである。このため冷間時に吸気バルブ開弁直後に筒内に吸い込まれて燃焼室の内壁面に付着した液状燃料については何らの対策もなされていない。したがってPM防止の効果はない。
【0008】
特許文献2では、筒内にて噴射されて浮遊している燃料の一部を、アトキンソンサイクルの利用により、BDC以後に吸気ポート側に戻している技術である。このためTDC以後に吸気ポート側から吸い込まれて燃焼室の内壁面に付着した液状燃料については、吸気ポート側に戻ることはない。したがってこのような液状燃料については何らの対策もなされていないので、PM防止の効果はない。
【0009】
特許文献3では、排気の吹き返しが無い状態では、吸気バルブでの吸い込み速度を考慮した制御が行われている。この制御は燃料を吸い込み気流に乗せて筒内に送り込むことが目的である。したがって、冷間時の吸い込みにより燃焼室の内壁面に付着してしまった液状燃料については考慮していない。このためPM防止の効果はない。
【0010】
本発明は、内燃機関冷間時に液状燃料が燃焼室の内壁面に付着するのを防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用・効果について記載する。
請求項1に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置では、吸気ポートに燃料噴射する内燃機関において、この内燃機関の運転状態に応じて吸気バルブ開弁タイミングをTDCよりも遅角する制御を実行する内燃機関バルブタイミング制御装置であって、内燃機関冷間時に、吸気バルブ開弁タイミングでの筒内圧力が吸気ポートの圧力と同等以上の圧力となる状態を目標状態として、吸気バルブ開弁タイミング及び排気バルブ閉弁タイミングの一方又は両方を調節する冷間時バルブタイミング設定手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
このように内燃機関の運転状態に応じて吸気バルブ開弁タイミングをTDCよりも遅角する制御を実行している場合に、冷間時に吸気ポート壁面や吸気バルブの背面に付着している液状燃料が、吸気バルブ開弁直後に生じる急激な吸い込み流により筒内に吸い込まれ、燃焼室の内壁面に付着するおそれがある。
【0013】
しかし本発明では、冷間時バルブタイミング設定手段が、内燃機関冷間時に、吸気バルブ開弁タイミングでの筒内圧力が吸気ポートの圧力と同等以上の圧力となる状態を目標状態として、吸気バルブ開弁タイミング及び排気バルブ閉弁タイミングの一方又は両方を調節する。このため吸気バルブ開弁直後に急激な吸い込み流が生じることはなく、その後に吸気流の吸い込みが生じることになる。
【0014】
このため冷間時に、液体として吸気ポート壁面や吸気バルブの背面に存在していた燃料は、液状で筒内に吸い込まれることはなく、十分に霧化された状態で筒内に吸入されることになる。したがって内燃機関冷間時に液状燃料が燃焼室の内壁面に付着するのを防止することができる。このことによりPM発生を防止できる。
【0015】
請求項2に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置では、請求項1に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、前記冷間時バルブタイミング設定手段は、内燃機関冷間時に前記目標状態に近づく方向に吸気バルブ開弁タイミングを調節することを特徴とする。
【0016】
このように冷間時バルブタイミング設定手段は、吸気バルブ開弁タイミングのみの調節により前記目標状態となるように制御している。このように吸気バルブ開弁タイミングのみを調節することでも、吸気バルブ開弁直後に急激な吸い込み流が生じないようにできる。したがって内燃機関冷間時に液状燃料が燃焼室の内壁面に付着するのを防止することができる。
【0017】
請求項3に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置では、請求項2に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、前記冷間時バルブタイミング設定手段は、吸気ポートでの気流の逆流状態を検出する吸気ポート逆流検出手段を備え、内燃機関冷間時に吸気バルブ開弁タイミング直後に前記吸気ポート逆流検出手段が逆流の発生を検出しない場合は吸気バルブ開弁タイミングを進角し、逆流の発生を検出した場合は吸気バルブ開弁タイミングを遅角することを特徴とする。
【0018】
このような手法により冷間時バルブタイミング設定手段は前記目標状態となるように吸気バルブ開弁タイミングを調節することができる。
すなわち、冷間時バルブタイミング設定手段は、吸気ポートでの逆流発生直前の状態、すなわち燃焼室から排気の吹き返しが発生し始める状態にて、吸気バルブが開弁するように、吸気バルブ開弁タイミングの進角・遅角を制御している。燃焼室から排気の吹き返しが発生し始める状態は、筒内圧力が吸気ポートの圧力と同等の圧力、あるいはわずかに筒内圧力が高い状態であることから、前記目標状態を達成することができる。
【0019】
このように吸気ポート逆流検出手段の検出状態に応じて、吸気バルブ開弁タイミングを制御することで、吸気バルブ開弁直後に急激な吸い込み流が発生するのを防止できる。したがって内燃機関冷間時に液状燃料が燃焼室の内壁面に付着するのを防止することができる。
【0020】
更に逆流を検出した場合には吸気バルブ開弁タイミングを遅角して逆流を必要以上に強めていないので、燃費の悪化を防止できる。
請求項4に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置では、請求項2に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、前記冷間時バルブタイミング設定手段は、吸気ポートでの気流の逆流状態を検出する吸気ポート逆流検出手段を備え、内燃機関冷間時に吸気バルブ開弁タイミング直後に前記吸気ポート逆流検出手段が逆流の発生を検出しない場合は吸気バルブ開弁タイミングを進角し、逆流の発生を検出した場合は吸気バルブ開弁タイミングに対する調節は実行しないことを特徴とする。
【0021】
冷間時バルブタイミング設定手段は、逆流が発生していない場合のみ、吸気バルブ開弁タイミングを進角し、逆流の発生を検出した場合は吸気バルブ開弁タイミングに対する調節は実行しないようにしている。すなわち遅角側の調節はせずに進角側のみの調節としている。
【0022】
逆流、すなわち排気の吹き返しが発生している場合には、少なくとも筒内圧力が吸気ポートの圧力より高い状態である。このことから、逆流の発生を検出しない場合に実行する進角側への調節のみとしても前記目標状態を達成することができる。
【0023】
このことにより内燃機関冷間時に液状燃料が燃焼室の内壁面に付着するのを防止することができる。
請求項5に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置では、請求項2に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、前記冷間時バルブタイミング設定手段は、吸気ポートでの気流の逆流状態を検出する吸気ポート逆流検出手段を備え、内燃機関冷間時に吸気バルブ開弁タイミング直後に前記吸気ポート逆流検出手段が逆流の発生を検出しない場合は吸気バルブ開弁タイミングを前記目標状態に対応する進角値に設定し、逆流の発生を検出した場合は吸気バルブ開弁タイミングに対する調節は実行しないことを特徴とする。
【0024】
このように冷間時バルブタイミング設定手段は、吸気ポート逆流検出手段が逆流の発生を検出しない場合は、直ちに吸気バルブ開弁タイミングを目標状態に対応する進角値に設定している。
【0025】
このことにより急激な吸い込み防止処理が迅速に実行できるので、内燃機関冷間時に液状燃料が燃焼室の内壁面に付着するのを、より確実に防止することができる。
請求項6に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置では、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、アトキンソンサイクルとして、吸気バルブ開弁タイミングをTDCよりも遅角する制御を実行していることを特徴とする。
【0026】
吸気バルブ開弁タイミングをTDCよりも遅角する制御としては、アトキンソンサイクルの実行が挙げられる。したがって内燃機関冷間時にアトキンソンサイクルを実行する場合に燃焼室の内壁面への液状燃料付着が防止される。
【0027】
請求項7に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置では、請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、前記冷間時バルブタイミング設定手段が吸気バルブ開弁タイミング及び排気バルブ閉弁タイミングの一方又は両方を調節して前記目標状態に制御する際に生じる内燃機関の出力トルク変動を抑制するトルク変動抑制手段を備えたことを特徴とする。
【0028】
冷間時バルブタイミング設定手段が吸気バルブ開弁タイミング及び排気バルブ閉弁タイミングの一方又は両方を調節した際には、内燃機関には出力トルク変動が生じる場合がある。このような場合には、トルク変動抑制手段により内燃機関の出力トルク変動を抑制する。このことで、内燃機関が適用されている装置におけるショック、例えば内燃機関が車両に適用されていれば、車両に対するショックを防止でき、このことにより乗員に違和感を生じさせることがない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態1の内燃機関とその制御系の概略構成図。
【図2】吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの変化における吸気バルブ開弁直後の気流状態と燃焼室内のPM発生量との関係を示すグラフ。
【図3】実施の形態1のECUが実行する冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理のフローチャート。
【図4】(A)〜(C)実施の形態1の制御の一例を示すグラフ。
【図5】実施の形態2の冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理のフローチャート。
【図6】実施の形態3の冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理のフローチャート。
【図7】実施の形態4の出力トルク変動防止処理のフローチャート。
【図8】実施の形態5の内燃機関とその制御系の概略構成図。
【図9】実施の形態6の冷間時排気バルブ閉弁タイミング設定処理の一例を示すフローチャート。
【図10】実施の形態6の冷間時排気バルブ閉弁タイミング設定処理の一例を示すフローチャート。
【図11】実施の形態6の冷間時排気バルブ閉弁タイミング設定処理の一例を示すフローチャート。
【図12】(A),(B)吸気ポートの逆流有無による温度上昇状態を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[実施の形態1]
〈実施の形態1の構成〉図1に上述した発明が適用された内燃機関2とその制御系である電子制御ユニット(以下「ECU」と称する)4との概略構成を表す。この内燃機関2はガソリンエンジンであり、車両駆動用に車両に搭載されたものである。内燃機関2は複数気筒を備えている。例えば直列4気筒のガソリンエンジンとして構成されている。気筒数としては、6気筒や8気筒などのその他の気筒数の内燃機関でも良く、あるいはV型内燃機関であっても良い。尚、図1では複数気筒の内の1気筒のみ示している。
【0031】
内燃機関2の各燃焼室6は、吸気バルブ8にて開閉される吸気ポート10を介して吸気系に接続され、排気バルブ12にて開閉される排気ポート14を介して排気系と接続されている。
【0032】
吸気ポート10には燃料噴射弁16が設けられ、燃料噴射時には吸気バルブ8側に向けて吸気中に燃料噴射することで混合気を形成する。吸気ポート10の上流側には、サージタンク18aと分岐管18bとからなる吸気マニホールド18が接続されている。この吸気マニホールド18の上流側にはスロットルバルブ20が設けられている。
【0033】
尚、この内燃機関2では、吸気量は吸気バルブ8のリフト量にて調節される。したがってスロットルバルブ20の開度はモータ20aにて調節可能であるが、通常、内燃機関2の運転時には全開とされ、内燃機関2の停止時には全閉とされる。このスロットルバルブ20にはスロットル開度TAを検出するスロットル開度センサ20bが設けられている。スロットルバルブ20より上流側には吸気量センサ22が設けられて吸気量GAを検出している。
【0034】
燃料噴射弁16にて燃料噴射がなされて吸気ポート10に混合気が形成され、この混合気が吸気バルブ8が開弁することで燃焼室6内に吸入される。そして点火タイミングにて点火プラグ24のスパークによる点火が行われることにより燃焼室6内の混合気が燃焼する。このことでピストン26が押し下げられて出力軸であるクランクシャフト28を回転させる。
【0035】
そして燃焼後の混合気は、排気バルブ12の開弁により排気として燃焼室6から排気ポート14に排出される。このように排出された排気は、排気浄化触媒やマフラーを介して外部へ排出される。
【0036】
ここで吸気バルブ8に開閉駆動力を伝達する吸気カムシャフト30にはバルブタイミング可変機構32が設けられている。このバルブタイミング可変機構32は、クランクシャフト28に対する吸気カムシャフト30の相対回転位相を調節するものである。したがってバルブタイミング可変機構32により、吸気バルブ8のバルブタイミングを連続的に進角又は遅角させることができる。
【0037】
更に吸気カムシャフト30と吸気バルブ8との間にはリフト量可変機構34が設けられている。このリフト量可変機構34は、吸入行程における吸気バルブ8の最大バルブリフト量を連続的に可変とするものである。尚、最大バルブリフト量の変化は、吸気バルブ8の作用角の変化に対応している。
【0038】
上述したバルブタイミング可変機構32とリフト量可変機構34とにより、吸気バルブ8の可変動弁機構が形成されている。
アクセルペダル36の踏み込み量は、アクセル操作量センサ36aによりアクセル操作量ACCPとして検出される。このアクセル操作量ACCPに応じて、ECU4はリフト量可変機構34を制御して吸気バルブ8の最大バルブリフト量(あるいは作用角)を調節する。このことによりアクセルペダル36の踏み込み量に応じた混合気を燃焼室6内に導入することができる。このことにより内燃機関2の出力トルクが調節される。
【0039】
排気バルブ12は、クランクシャフト28により回転される排気カムシャフト38から回転駆動力が伝達される。
ECU4は、内燃機関2の燃料噴射量、燃料噴射時期、吸入空気量、バルブオーバーラップの制御以外に、点火時期制御、その他の処理を実行している。これらの処理のためにECU4は、機関回転数センサ42、冷却水温センサ44、スロットル開度センサ20b、吸気量センサ22、アクセル操作量センサ36a、カムポジションセンサ30bなどによる検出信号を入力している。この他、排気系に設けられた空燃比センサなどからも検出信号を入力している。
【0040】
機関回転数センサ42はクランクシャフト28の回転に対応した機関回転数NEを、冷却水温センサ44はエンジン温度としての冷却水温度THWを検出している。吸気カムシャフト30に対して設けられたカムポジションセンサ30bは吸気バルブ8を駆動する吸気カム30aのカム角を検出している。
【0041】
吸気ポート10には吸気バルブ8の近傍に吸気ポート逆流検出センサ46が設けられている。この吸気ポート逆流検出センサ46は、吸気バルブ8の開弁状態で燃焼室6から吸気ポート10側への気流の逆流が生じているか否かを検出するセンサである。
【0042】
このような吸気ポート逆流検出センサ46としては、吸気バルブ8側に開口する気体導入口を設けた構成とすることで、燃焼室6側から吸気ポート10へ逆流する気体の流量や流速を検出する流量センサあるいは流速センサが挙げられる。この他には吸気バルブ8からの逆流は燃焼後の排気の逆流であることから、CO2濃度を検出するCO2センサ、あるいは高温の排気の温度を検出する温度センサが挙げられる。この場合には、CO2の高濃度化や気流の高温化が生じたことにより逆流を検出することができる。
【0043】
センサを用いなくても、この内燃機関2の物理モデルを用いて演算による逆流が生じる期間が判るので、内燃機関2の運転状態、特にバルブタイミング可変機構32とリフト量可変機構34との調節量に基づいて逆流量あるいは逆流有無を算出しても良い。
【0044】
物理モデルによる演算でなく、図1のごとく吸気ポート逆流検出センサ46を配置する場合には、1つの気筒を代表とし、この代表気筒の吸気ポート10にのみ吸気ポート逆流検出センサ46を配置して、逆流状態を検出しても良い。本実施の形態では、#1気筒のみに吸気ポート逆流検出センサ46を配置して、逆流の有無を検出しているものとする。
【0045】
ECU4は、上述した各信号、記憶しているデータ、演算結果などに基づいて各種制御を実行する。すなわち点火プラグ24による点火時期、燃料噴射弁16の開弁制御による燃料噴射量や燃料噴射時期、吸気バルブ8のバルブタイミング、吸気バルブ8のリフト量調節、スロットルバルブ20の開度調節などの制御を実行する。
【0046】
本発明者の知見により、冷間時の内燃機関運転においては、吸気バルブ8の開弁直後(例えば吸気バルブ開弁タイミングから20°CAぐらいまでの期間)の吸気バルブ8での気流状態と、燃焼室6内のPM発生量(g)との関係は、図2に示したごとくであることが判明している。
【0047】
すなわち吸気バルブ開弁タイミングが遅角側である場合は開弁直後の気流は順流であるが、開弁タイミングが進角側である場合は逆流が生じている。そして気流の逆流側と順流側との境界領域ではPM発生量が大きく変化し、順流側でPM発生量が急激に増加していることが判る。
【0048】
吸気バルブ開弁タイミングの遅角側において、特にTDC以後に吸気バルブ8が開弁する状態では、開弁までに燃焼室6内は負圧状態となる。すなわち吸気ポート10の圧力よりも筒内圧力(燃焼室6内の圧力)が低下した状態となる。この筒内圧力の低下状態は吸気バルブ開弁タイミングが遅角すればするほど強くなる。
【0049】
したがって吸気バルブ開弁タイミングでは、吸気ポート10と筒内圧力との差圧により急激な吸い込み流が吸気バルブ8の周りで発生することになる。
内燃機関冷間時では燃料噴射弁16から噴射された燃料は吸気バルブ8の背面や吸気ポート10の壁面に液状で付着しており、このような状態で急激な吸い込み流が生じた場合には、燃料は液状のまま吹き飛ばされて燃焼室6内部に吸い込まれる。そして燃焼室6の内壁(特に排気バルブ12の周辺部分)に液状で付着する。
【0050】
この液状燃料が内面に付着したままで燃焼室6内にて燃焼が行われると、局所リッチでの燃焼となり、燃焼室6内でのPM発生量が高くなるのである。
PM発生を防止するためには、冷間時に液状燃料が燃焼室6内に吸い込まれないように制御する必要がある。このためにECU4は前記図2の関係に基づいて、冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)を実行する。
〈実施の形態1の作用〉本実施の形態の作用について、冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)に基づいて説明する。この処理は、一定クランク角周期(あるいは一定時間周期)で繰り返し実行される。尚、個々の処理内容に対応するフローチャート中のステップを「S〜」で表す。
【0051】
本処理が開始されると、まず内燃機関2が冷間時運転であるか否かが判定される(S102)。これは冷却水温センサ44により検出される冷却水温度THWが基準温度以下か否かにより判定される。
【0052】
冷間時でない場合には(S102でNO)、このまま本処理を出る。
冷間時であれば(S102でYES)、次に#1気筒の吸気バルブ8が開弁状態か否かが判定される(S104)。#1気筒の開弁期間は、バルブタイミング可変機構32及びリフト量可変機構34の制御量からクランク角(°CA)にて算出できる。このクランク角と、機関回転数センサ42の信号から算出される実際のクランク角との比較から#1気筒の吸気バルブ8が開弁状態にあるか否かを判定できる。
【0053】
ここで#1気筒の吸気バルブ8が開弁していなければ(S104でNO)、このまま処理を出る。
冷間時(S102でYES)ではあるが、#1気筒の吸気バルブ8が開弁していない状態が継続していれば(S104でNO)、このまま処理を出る状態が継続する。
【0054】
#1気筒の吸気バルブ8が開弁状態になると(S104でYES)、今回の開弁時での吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正(後述するステップS110又はS114)が未完了か否かが判定される(S105)。
【0055】
この吸気バルブ開弁タイミング進角値VTは、基準開弁タイミングからの進角量を示すものである。吸気バルブ開弁タイミング進角値VTが大きいほど、吸気バルブ8の開弁は早くなり、小さいほど遅くなる。
【0056】
#1気筒の吸気バルブ8が開弁した当初は吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正処理はなされていないので(S105でYES)、次に#1気筒の吸気ポート10に設けられている吸気ポート逆流検出センサ46の出力UdirecがECU4の作業メモリに読み込まれる(S106)。
【0057】
次にこの出力Udirecの値が逆流を示しているか否かが判定される(S108)。すなわち燃焼室6内に残留している排気が、開弁した吸気バルブ8を介して吸気ポート10側に逆流しているか否かを判定する。
【0058】
ここでECU4はアトキンソンサイクルを実行しているものとする。このアトキンソンサイクルにより、吸気バルブ8の開弁期間全体が大きく遅角して、吸気バルブ開弁タイミングがTDCよりもかなり後になっている状態であるとする。この状態において吸気バルブ開弁タイミング直前では、ピストン26は吸気バルブ8と排気バルブ12とが共に閉じた状態で低下しつつあることから、燃焼室6内は負圧状態となっている。
【0059】
このため吸気バルブ開弁タイミングの直後には、吸気ポート10側から急激に燃焼室6内に吸気が吸い込まれることになる。このような急激な吸い込みは逆流ではなく順流である。したがって吸気バルブ開弁タイミング直後では、吸気ポート逆流検出センサ46では逆流は検出されない(S108でNO)。
【0060】
そして次に#1気筒の吸気バルブ開弁タイミングから規定時間を経過したか否かが判定される(S112)。この規定時間は、吸気ポート逆流検出センサ46にて確実に逆流が生じていないことを検出するための遅延時間として設定されている。尚、規定時間は時間でなく、規定クランク角幅として設定しても良い。
【0061】
規定時間が経過していなければ(S112でNO)、このまま処理を出る。
吸気ポート逆流検出センサ46の出力Udirecが逆流を検出しない状態のまま(S108でNO)、規定期間が経過すると(S112でYES)、逆流が生じていないことが確実となる。そして、このことは、吸気バルブ開弁タイミングがTDCよりも後であることにより、吸気バルブ開弁タイミング直後に、吸気ポート10から燃焼室6内へ吸気の急激な吸い込みが発生している可能性があることを示すものである。
【0062】
このため吸気バルブ開弁タイミングを進角側に補正する(S114)。すなわち式1に示すごとく現在の吸気バルブ開弁タイミング進角値VT[i−1]を、進角側補正量ΔVTb分増加させて、新たな吸気バルブ開弁タイミング進角値VT[i]として設定する。
【0063】
[式1] VT[i]←VT[i−1]+ΔVTb
この吸気バルブ開弁タイミング進角値VTは、ECU4が、バルブタイミング可変機構32及びリフト量可変機構34の一方又は両方を駆動することで、実際の吸気バルブ開弁タイミングを調節するための制御量である。したがってこのように進角側に補正された制御量を用いて、ECU4は、実際の吸気バルブ開弁タイミングを進角側に制御する。
【0064】
こうして処理を出る。
次の実行周期では、ステップS102及びステップS104で共にYESと判定されても、今回の開弁時での吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正は完了しているので(S105でNO)、このまま本処理を出る。
【0065】
以後は、#2気筒、#4気筒、#3気筒の吸気バルブ開弁タイミングが順次経過することで、再度、#1気筒の吸気バルブ開弁タイミングになるまでは、ステップS104又はステップS105にてNOと判定される。
【0066】
そして再度、冷間時のままで#1気筒の開弁状態になると(S104でYES)、今回の開弁時での吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正は未完了であるので(S105でYES)、出力Udirecが読み込まれ(S106)、出力Udirecが逆流を示しているか否かが判定される(S108)。
【0067】
今回の吸気バルブ開弁タイミングでも規定期間経過しても逆流が生じていない場合には(S112でYES)、前記式1に従って、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTを進角側に補正する(S114)。
【0068】
以後、#1気筒の開弁タイミングになって、規定期間経過しても逆流が生じていなければ(S112でYES)、進角側への吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正が継続する(S114)。
【0069】
このことにより内燃機関2の全気筒について、吸気バルブ8の開弁タイミングがTDCに近づくことになる。
次に最初から出力Udirecが逆流を示していたり、あるいは前記式1の処理(S114)を繰り返したことにより、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTが大きくなって、規定時間内に出力Udirecが逆流を示した場合(S108でYES)を考える。
【0070】
この場合には、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTを遅角側に補正する(S110)。すなわち式2に示すごとく現在の吸気バルブ開弁タイミング進角値VT[i−1]を、遅角側補正量ΔVTa分減少させて、新たな吸気バルブ開弁タイミング進角値VT[i]として設定する。
【0071】
[式2] VT[i]←VT[i−1]−ΔVTa
このように遅角側に補正された制御量を用いて、ECU4は、実際の吸気バルブ開弁タイミングを遅角側に制御する。
【0072】
こうして本処理を出る。
次に実行周期では、ステップS102及びステップS104で共にYESと判定されても、今回の開弁時での吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正は完了しているので(S105でNO)、このまま本処理を出る。
【0073】
以後は、#2気筒、#4気筒、#3気筒の吸気バルブ開弁タイミングが順次経過することで、再度、#1気筒の吸気バルブ開弁タイミングになるまでは、ステップS104又はステップS105にてNOと判定される。
【0074】
そして再度、冷間時のままで#1気筒の開弁状態になると(S104でYES)、今回の開弁時での吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正は未完了であるので(S105でYES)、出力Udirecが読み込まれ(S106)、出力Udirecが逆流を示しているか否かが判定される(S108)。
【0075】
今回の吸気バルブ開弁タイミングでも逆流が生じている場合には(S108でYES)、前記式2に従って、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTを遅角側に補正する(S110)。
【0076】
以後、#1気筒の開弁タイミングになって、まだ逆流が生じていれば(S108でYES)、遅角側への吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正が継続する(S110)。
このことにより内燃機関2の全気筒について、吸気バルブ開弁タイミングが遅角されることで逆流が抑制されることになる。
【0077】
このように冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)では、逆流が生じていない場合には、吸気バルブ開弁タイミングが進角され、逆流が生じた場合には、吸気バルブ開弁タイミングが遅角される処理がなされる。
【0078】
本実施の形態による処理の一例を図4に示す。このグラフは吸気バルブ8を流れる単位時間当たりの気流の流量(g/s)を示すグラフであり、特に開弁期間(吸気バルブ開弁タイミングTOから吸気バルブ閉弁タイミングTCまでの期間)で、クランク角(°CA)の変化に対する流量(g/s)の変化を示している。
【0079】
図4の(A)は、冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)による吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正が適用されていない状態でのアトキンソンサイクルを示している。
【0080】
すなわち開弁タイミングがTDCから大きく遅角しているので、開弁タイミング直後では、流量の立ち上がりが急峻であり、急激な吸い込みが生じていることが判る。
図4の(B)は、冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)により図4の(A)の状態から吸気バルブ開弁タイミングTOを進角させて、逆流直前の状態になった例(例えば吸気バルブ開弁タイミングTO=TDC)を示している。この場合には、開弁タイミング直後に急激な吸い込みは生じていない。
【0081】
図4の(C)は、更に吸気バルブ8の開弁タイミングを進角させて、逆流がわずかに生じている状態となった例を示している。この場合、逆流後(Ti〜)に吸気が吸い込まれる状態となるが、この場合にも急激な吸い込みは生じていない。尚、逆流が生じたので、冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)では、吸気バルブ開弁タイミングTOを遅角する。このことにより図4の(B)の状態に近づくことになる。
【0082】
したがって冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)のステップS110,S114の処理により、図4の(B)〜(C)の間の状態に吸気バルブ開弁タイミングTOが調節されることになる。すなわち吸気バルブ開弁タイミングTOでの筒内圧力が吸気ポート10の圧力と同等以上の圧力となる状態を目標状態として、吸気バルブ開弁タイミングTOを調節している。
【0083】
このことにより吸気バルブ開弁タイミングTOでは、急激な吸い込みが生じることなくかつ大きな逆流が生じない開弁タイミングに維持されることになる。
〈実施の形態1と請求項との関係〉上述した構成において、ECU4及び吸気ポート逆流検出センサ46が冷間時バルブタイミング設定手段に相当し、吸気ポート逆流検出センサ46が吸気ポート逆流検出手段に相当する。ECU4が実行する冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)が冷間時バルブタイミング設定手段としての処理に相当する。
〈実施の形態1の効果〉(1)ECU4は、冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)により前述した目標状態が冷間時に達成されるように、吸気バルブ開弁タイミングを調節している。
【0084】
このため冷間時において吸気バルブ8の開弁直後に筒内への急激な吸い込み流が生じることが無い。すなわち、吸気流は吸気バルブ8の開弁直後にはほとんど流れない状態、あるいはわずかな逆流状態になるのみである。その後に、徐々に吸気流の流れが生じて燃焼室6に吸い込まれる。
【0085】
したがって冷間時に、吸気ポート10の壁面や吸気バルブ8の背面に存在していた液状燃料は、比較的穏やかな気流の中で、その表面から気化して燃焼室6内に吸入される。このため燃料が液状で筒内に吸い込まれることはなく、燃焼室6の内壁面への液状燃料の付着が防止できる。したがって局所リッチでの燃焼が生じることはなく、PM発生を防止できる。
【0086】
(2)冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)による吸気バルブ開弁タイミング制御は、特にステップS110の処理により、燃焼室6からの逆流、すなわち排気の吹き返しが発生し始めるタイミングになるように、吸気バルブ開弁タイミングを設定している。このことにより燃焼室6内からの排気の逆流を必要以上に強くしないようにできる。このためPM発生防止と共に燃費の悪化も防止できる。
【0087】
[実施の形態2]
〈実施の形態2の構成〉本実施の形態では、冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理として図5の処理を実行する。これ以外の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0088】
冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図5)のステップS202〜S208,S212,S214の処理は、前記図3のステップS102〜S108,S112,S114の処理と同じである。本実施の形態の冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図5)では、前記図3のステップS110の代わりに、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTを補正せずに補正完了設定する処理(S210)が実行される。
〈実施の形態2の作用〉したがって本実施の形態では、吸気ポート逆流検出センサ46の出力Udirecが逆流を示さないまま(S208でNO)、規定期間が経過すると(S212でYES)、前記実施の形態1の場合と同様に、前記式1により吸気バルブ開弁タイミングを進角側に補正する(S214)。この進角側への補正を繰り返すことにより急激な吸い込み流が存在しない状態で吸気バルブ8を開弁できるようになる。
【0089】
しかし規定期間が経過する前に、吸気ポート逆流検出センサ46の出力Udirecが逆流を示した場合には(S208でNO)、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTに対して遅角側への補正を実行せずに補正完了とする(S210)。
〈実施の形態2と請求項との関係〉上述した構成において、ECU4及び吸気ポート逆流検出センサ46が冷間時バルブタイミング設定手段に相当し、吸気ポート逆流検出センサ46が吸気ポート逆流検出手段に相当する。ECU4が実行する冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図5)が冷間時バルブタイミング設定手段としての処理に相当する。
〈実施の形態2の効果〉(1)冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図5)では、吸気バルブ開弁タイミング直後に逆流が発生していない場合のみ、開弁タイミングを進角している(S214)。しかし逆流の発生を検出した場合には開弁タイミングに対する調節は実行しない。
【0090】
吸気バルブ開弁タイミング直後に排気の吹き返しが存在すれば、吸気バルブ開弁タイミング直後には急激な吸い込み流が生じてはいないことから、開弁タイミングの補正はせずに終了している。
【0091】
このように吸気バルブ開弁タイミングを進角側へのみ制御する構成でも、急激な吸い込み流が防止できるので、冷間時において燃焼室6の内壁面へ液状燃料が付着することが防止でき、このことによりPM発生を防止できる。
【0092】
更に進角側への補正は、実際には逆流がわずかに生じた段階で停止するので、燃費の悪化も抑制できる。
[実施の形態3]
〈実施の形態3の構成〉本実施の形態では、冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理として図6の処理を実行する。これ以外の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0093】
冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図6)のステップS302〜S312の処理は、前記図5のステップS202〜S212の処理と同じである。
本実施の形態の冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図6)では、前記図5の処理の内、ステップS214の代わりに、新たに設定する吸気バルブ開弁タイミング進角値VT[i]として、目標状態に対応した進角値VTxを設定する処理(S314)が実行される。
〈実施の形態3の作用〉本実施の形態では、吸気ポート逆流検出センサ46の出力Udirecが逆流を示さないまま(S308でNO)、規定期間が経過すると(S312でYES)、吸気バルブ開弁タイミング直後に燃焼室6内への吸気の急激な吸い込み流が発生している可能性があると判断できる。
【0094】
この判断に基づいて、吸気バルブ開弁タイミング直後における吸気ポート10での気流が、吸い込みも逆流もなくほぼ停止する状態を目標状態として、その目標状態に対応する進角値VTxを、新たな吸気バルブ開弁タイミング進角値VT[i]として設定している(S314)。このことにより急激な吸い込み流が存在しない状態で吸気バルブ8を開弁できる状態に、迅速に移行できる。
【0095】
尚、規定期間が経過する前に、吸気ポート逆流検出センサ46の出力Udirecが逆流を示した場合には(S308でNO)、前記実施の形態2の場合と同様に、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTを補正せずに補正完了設定を実行する(S310)。
〈実施の形態3と請求項との関係〉上述した構成において、ECU4及び吸気ポート逆流検出センサ46が冷間時バルブタイミング設定手段に相当し、吸気ポート逆流検出センサ46が吸気ポート逆流検出手段に相当する。ECU4が実行する冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図6)が冷間時バルブタイミング設定手段としての処理に相当する。
〈実施の形態3の効果〉(1)冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図6)では、吸気バルブ開弁タイミング直後に逆流が発生していない場合のみ、吸気バルブ開弁タイミングを直ちに最適とされる進角値VTxに設定している。そして逆流の発生を検出した場合は吸気バルブ開弁タイミングに対する調節は実行しない。
【0096】
このように吸気バルブ開弁タイミングを吸気ポート10での気流がほぼ停止する状態に直ちに移行させることにより、吸気バルブ開弁タイミング直後に急激な吸い込みが行われるのを迅速に防止できる。
【0097】
したがって、燃焼室6の内壁面への液状燃料付着が早期に防止され、このことによりPM発生もより効果的に防止できる。
更に目標状態に対応する進角値VTxは、逆流が生じる直前の進角値にしていることから、燃費の悪化も確実に防止できる。
【0098】
[実施の形態4]
〈実施の形態4の構成〉本実施の形態では、前記実施の形態1、2又は3において、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTを補正した場合には内燃機関2の出力トルク変動が生じる。この出力トルク変動を防止するための出力トルク変動防止処理を実行するものである。このためにECU4は、前記各実施の形態にて説明した冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3,5,6のいずれか)と共に、図7に示す出力トルク変動防止処理を実行している。
【0099】
これ以外の構成は前記実施の形態1と同じである。
〈実施の形態4の作用〉本実施の形態における特徴的な作用について、出力トルク変動防止処理(図7)に基づいて説明する。この処理は一定クランク角周期(あるいは一定時間周期)で繰り返し実行される。
【0100】
出力トルク変動防止処理(図7)が開始されると、まず、吸気バルブ開弁タイミングの補正がなされたか否かが判定される(S402)。
この補正は前記冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3,5,6のいずれか)における、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正処理(S110,S114,S214,S314のいずれか)である。この補正処理がなされていればステップS402の判定条件は成立する。
【0101】
ステップS402の判定条件が成立した場合には、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正による出力トルク変動を相殺するための出力トルク調節処理を実行する(S404)。
【0102】
上述した吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正が進角側になされた場合(S114,S214,S314のいずれか)は、内燃機関2の出力トルクは高い方に変化する。
したがってステップS404では、このような出力トルクが高くなる方への変動ショックを防止するため、点火時期の遅角補正、スロットルバルブ20による吸入空気量の減少補正、吸気バルブ8の閉弁タイミングの遅角補正、燃料噴射量減量補正のいずれかあるいはこれらの組み合わせにより、出力トルクの増加を相殺する。
【0103】
上述した吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正が遅角側になされた場合(S110)は、内燃機関2の出力トルクは低い方に変化する。
したがってステップS404では、このような出力トルクが低くなる方への変動ショックを防止するため、点火時期の進角補正、スロットルバルブ20による吸入空気量の増加補正、吸気バルブ8の閉弁タイミングの進角補正、燃料噴射量増量補正のいずれかあるいはこれらの組み合わせにより、出力トルクの減少を相殺する。
【0104】
吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正がなされていない場合には(S402でNO)、出力トルク変動を相殺する処理は実行されない。
〈実施の形態4と請求項との関係〉上述した構成において、冷間時バルブタイミング設定手段及び吸気ポート逆流検出手段について、請求項との関係は前記各実施の形態にて説明したごとくである。ECU4がトルク変動抑制手段に相当し、出力トルク変動防止処理(図7)がトルク変動抑制手段としての処理に相当する。
〈実施の形態4の効果〉(1)前記各実施の形態のいずれかの効果と共に、吸気バルブ開弁タイミングを補正した際に出力トルク変動が内燃機関2に生じるのを防止できる。
【0105】
したがって車両乗員の違和感を防止することができる。
[実施の形態5]
〈実施の形態5の構成〉本実施の形態の構成は図8に示すごとくである。内燃機関102には排気バルブ112にバルブタイミング可変機構240が設けられている。したがってECU104は吸気バルブ8側のバルブタイミングと共に、排気バルブ112についてもバルブタイミングを調節している。このため排気カムシャフト138の回転位相を検出するためにカムポジションセンサ138aが配置されている。他の構成は前記図1に説明したごとくである。したがって同一構成は同一符号にて示す。
【0106】
ECU104が実行する処理については、前記実施の形態1〜4のいずれかの処理が実行される。
尚、図8の構成を前記実施の形態4に適用した場合には、前記図7のステップS404では、排気バルブ112のバルブタイミングを調節することにより、あるいはこの調節と共に前記実施の形態4に述べた他の処理を組み合わせることにより、出力トルク変動を防止しても良い。
〈実施の形態5の作用〉本実施の形態では、排気バルブ112のバルブタイミングに応じて、逆流が生じ始める吸気バルブ開弁タイミング進角値VTも異なる。
【0107】
この場合でも、前記図3又は前記図5の処理を用いた場合には、ステップS110,S114又はステップS214の処理により、自動的に適切な吸気バルブ開弁タイミング進角値VTに収束することになる。
【0108】
前記図6の処理を用いた場合には、そのステップS314にて、まず排気バルブ閉弁タイミングに対応して適切な進角値VTxを算出して、この算出した進角値VTxを吸気バルブ開弁タイミング進角値VTに設定することになる。
〈実施の形態5と請求項との関係〉前記各実施の形態にて説明した関係と同じである。
〈実施の形態5の効果〉(1)このように排気バルブ112のバルブタイミングが変更される内燃機関102であっても前記各実施の形態に述べた効果と同様な効果を生じる。
【0109】
[実施の形態6]
〈実施の形態6の構成〉本実施の形態の構成は前記図8に示したごとくである。
ただし前記冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3,5,6のいずれか)の代わりに、図9〜11に示すいずれかの冷間時排気バルブ閉弁タイミング設定処理を実行する。
【0110】
図9の冷間時排気バルブ閉弁タイミング設定処理を実行した場合については、そのステップS502,S504,S506,S508,S512は、前記冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)のステップS102,S104,S106,S108,S112と同じである。
【0111】
異なる点は次のごとくである。すなちわ今回の開弁時での吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正が未完了か否かの判定(図3:S105)の代わりに、今回の開弁時での排気バルブ閉弁タイミング進角値VTeの補正が未完了か否かの判定がなされる(S505)。
【0112】
吸気バルブ開弁タイミング進角値VTを進角側に補正する処理(図3:S114)の代わりに、式3に示すごとく排気バルブ閉弁タイミング進角値VTeを遅角側に補正する処理(S514)を実行する。
【0113】
[式3] VT[i]←VT[i−1]−ΔVTeb
すなわち式3は、排気バルブ112の閉弁タイミングを遅くすることで、吸気バルブ8の開弁タイミングに近づける。このことにより吸気バルブ8の開弁タイミングがTDCよりも遅れても、燃焼室6内が負圧状態にならないようにしている。
【0114】
更に、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTを遅角側に補正する処理(図3:S110)の代わりに、式4に示すごとく排気バルブ閉弁タイミング進角値VTeを進角側に補正する処理(S510)を実行する。
【0115】
[式4] VTe[i]←VTe[i−1]+ΔVTea
すなわち式4は排気バルブ112の閉弁タイミングを早くすることで、前記式3により排気バルブ閉弁タイミングが遅角しすぎて、他の気筒からの排気が燃焼室6に流入し、燃焼室6から吸気系への逆流が生じた場合に、排気バルブ112の閉弁タイミングを早くすることで、その逆流を小さくする処理である。
【0116】
図10の冷間時排気バルブ閉弁タイミング設定処理を実行した場合については、そのステップS602,S604,S606,S608,S612は、前記冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図5)のステップS202,S204,S206,S208,S212と同じである。
【0117】
異なる点は次のごとくである。すなわち今回の開弁時での吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正が未完了か否かの判定(図5:S205)の代わりに、今回の開弁時での排気バルブ閉弁タイミング進角値VTeの補正が未完了か否かの判定がなされる(S605)。
【0118】
吸気バルブ開弁タイミング進角値VTを補正せずに設定処理完了する処理(図5:S210)の代わりに、排気バルブ閉弁タイミング進角値VTeを補正せずに補正完了設定する処理(S610)を実行する。
【0119】
そして吸気バルブ開弁タイミング進角値VTを進角側に補正する処理(図5:S214)の代わりに、前記式3に示したごとく排気バルブ閉弁タイミング進角値VTeを遅角側に補正する処理(S614)を実行する。
【0120】
すなわち逆流が生じていない場合に、排気バルブ閉弁タイミングを遅くすることで、吸気バルブ8の開弁タイミングに近づけ、このことで吸気バルブ8の開弁タイミングがTDCよりも遅れても燃焼室6内が負圧状態にならないようにしている。逆流が生じている場合には、排気バルブ閉弁タイミングはそのままとしている。
【0121】
図11の冷間時排気バルブ閉弁タイミング設定処理を実行した場合については、そのステップS702〜S712は、前記図10のステップS602〜S612と同じである。異なる点は、排気バルブ閉弁タイミング進角値VTeを遅角側に補正する処理(S614)の代わりに、目標状態に対応した進角値VTexを、排気バルブ閉弁タイミング進角値VTeに設定する処理(S714)を実行する点である。
【0122】
すなわち吸気バルブ開弁タイミングに逆流も急激な吸い込み流も生じない気流状態にできる進角値VTexを、排気バルブ閉弁タイミング進角値VTeに直ちに設定している。
〈実施の形態6の作用〉本実施の形態では、吸気バルブ8から燃焼室6へ急激に吸気が吹き込む可能性がある場合に、排気バルブ112の閉弁タイミングを遅角させている。
【0123】
この排気バルブ閉弁タイミングの遅角により、TDC以後のピストン26下降時に、排気系に存在する排気が燃焼室6内に戻ることになる。このことによりTDCよりも吸気バルブ開弁タイミングが遅くなっても、吸気バルブ開弁タイミング直後での燃焼室6内は負圧化せず、急激な吸気の吹き込みが生じない。
〈実施の形態6と請求項との関係〉上述した構成において、ECU104及び吸気ポート逆流検出センサ46が冷間時バルブタイミング設定手段に相当し、吸気ポート逆流検出センサ46が吸気ポート逆流検出手段に相当する。ECU104が実行する冷間時排気バルブ閉弁タイミング設定処理(図9〜11)がそれぞれ冷間時バルブタイミング設定手段としての処理に相当する。
【0124】
更に前記実施の形態4にて説明した図7と同じ処理を、排気バルブ閉弁タイミング補正時の出力トルク変動防止処理として追加しても良く。この場合には、ECU104がトルク変動抑制手段に相当し、上記出力トルク変動防止処理がトルク変動抑制手段としての処理に相当する。
〈実施の形態6の効果〉(1)このようにバルブタイミング可変機構240を備えて、排気バルブ112のバルブタイミングについても調節対象とする内燃機関102であっても前記実施の形態1〜4のいずれかに述べた効果と同様に、燃焼室6の内壁面への液状燃料の付着が防止でき、このことによりPM発生を防止できる。
【0125】
[その他の実施の形態]
・図1や図8に示した吸気ポート逆流検出センサ46としては、温度センサを用いても良い。燃焼室6から吸気ポート10への逆流が無い場合には、図12の(A)に示すごとく、吸気ポート10では温度変化はほとんど無いが、逆流が有る場合には、図12の(B)に示すごとく排気から伝熱されて温度変化(ピークPt)が生じる。
【0126】
したがって吸気ポート逆流検出センサ46として温度センサを用いる場合には、このようなピークPtの有無によって逆流の有無を検出できる。
このことはCO2濃度を検出するCO2センサを、吸気ポート逆流検出センサ46として用いる場合も同じであり、CO2濃度のピークが生じることにより逆流が生じていることが判定できる。
【0127】
・前記実施の形態5では吸気開弁タイミングの調節によりPM防止処理を行っていたが、前記実施の形態6の処理を組み合わせることにより、吸気開弁タイミングの調節と排気閉弁タイミングの調節との両方で、PM防止処理を実行しても良い。
【0128】
・可変動弁機構の構成としては、前記図1に示したリフト量可変機構34が無くても良い。すなわち、吸気バルブ8のバルブタイミング可変機構32のみでも良く、あるいは前記図8に示したごとく吸気バルブ8のバルブタイミング可変機構32と排気バルブ112のバルブタイミング可変機構240との組み合わせのみでも良い。
【0129】
・前記各実施の形態では、吸気ポート逆流検出センサ46は#1気筒の吸気ポートに設けられていたが、その他の気筒の吸気ポートに設ける構成、あるいは、全ての吸気ポートに吸気ポート逆流検出センサ46を配置する構成としても良い。このことにより、各気筒の開弁時にそれぞれ逆流状態を検出できる。したがって高頻度に吸気バルブ開弁タイミング進角値VTや排気バルブ閉弁タイミング進角値VTeの補正が可能となるので、燃焼室の内壁面への液状燃料付着が迅速かつ確実に防止され、PM発生防止を更に高めることができる。
【符号の説明】
【0130】
2…内燃機関、4…ECU、6…燃焼室、8…吸気バルブ、10…吸気ポート、12…排気バルブ、14…排気ポート、16…燃料噴射弁、18…吸気マニホールド、18a…サージタンク、18b…分岐管、20…スロットルバルブ、20a…モータ、20b…スロットル開度センサ、22…吸気量センサ、24…点火プラグ、26…ピストン、28…クランクシャフト、30…吸気カムシャフト、30a…吸気カム、30b…カムポジションセンサ、32…バルブタイミング可変機構、34…リフト量可変機構、36…アクセルペダル、36a…アクセル操作量センサ、38…排気カムシャフト、42…機関回転数センサ、44…冷却水温センサ、46…吸気ポート逆流検出センサ、102…内燃機関、104…ECU、112…排気バルブ、138…排気カムシャフト、138a…カムポジションセンサ、240…バルブタイミング可変機構、Pt…ピーク、TC…吸気バルブ閉弁タイミング、TO…吸気バルブ開弁タイミング、VT…吸気バルブ開弁タイミング進角値。
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気ポートに燃料噴射する内燃機関において、この内燃機関の運転状態に応じて吸気バルブ開弁タイミングをTDCよりも遅角する制御を実行する内燃機関バルブタイミング制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷間時の内燃機関において、噴射された燃料の霧化を促進して燃焼性を改善する技術が提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。
特許文献1では、吸気ポート燃料噴射を実行している内燃機関において燃料の霧化を良好にするために、吸気ポートでの受熱による燃料霧化促進と燃料凝集とのバランスを考慮して、吸気バルブ開弁タイミングが早ければ燃料噴射タイミングも早くし、吸気バルブ開弁タイミングが遅ければ燃料噴射タイミングも遅くする制御を実行している。
【0003】
特許文献2では、筒内燃料噴射を実行している内燃機関において、筒内噴射した燃料の一部をアトキンソンサイクルを利用して吸気ポートに戻して霧化を促進している。
特許文献3では、吸気ポート燃料噴射を実行している内燃機関の冷間時には吸気バルブからの排気の吹き返し量に応じて燃料噴射終了タイミングを制御して霧化を促進している。更に特許文献3では、吸気バルブによる吸い込み速度が遅い場合には吸気バルブ開タイミングに燃料噴射タイミングを近づけ、吸気バルブによる吸い込み速度が速い場合には吸気バルブ開タイミングから燃料噴射タイミングを遠ざけている。このことにより吸い込み速度の速さを利用して吸気バルブに付着している燃料を気流に乗せて筒内へ流入させて未燃HC(hydro carbon:炭化水素)残留の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−144753号公報(第4−7頁、図3,4)
【特許文献2】特開2009−174345号公報(第7−10頁、図1,2)
【特許文献3】特開2010−275932号公報(第12−14頁、図9〜11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アトキンソンサイクルなどのように、吸気バルブの開弁期間全体を遅角させて、一旦筒内に吸い込んだ吸気を再度吸気ポート側に戻す制御を実行している場合には、吸気バルブ開弁タイミングはTDC以後に設定される。このため筒内が負圧状態となったタイミングで吸気バルブが開くことになる。吸気バルブ開弁タイミングの遅角の程度が大きくて、吸気ポートと筒内との差圧が大きくなっている場合には、吸気バルブの開弁開始直後に吸気ポートから筒内へ急激に吸気が流れ込む状態が発生する。
【0006】
冷間時にこのような急激な吸気の流れが発生すると、燃料噴射によって吸気ポート壁面や吸気バルブの背面に付着した液状燃料が吹き飛ばされて液状のままで筒内に吸い込まれる。このため燃焼室の内壁面に液状燃料が付着する事態が発生する。
【0007】
この状態で燃焼すると局所リッチ状態での燃焼となり、PM(particulate matter:粒子状物質)発生の原因となる。
特許文献1では、吸気ポートでの燃料霧化を考慮した制御であり、吸気バルブ開弁タイミングがTDC以後になった場合でも燃料噴射時期を遅角側へ制御するのみである。このため冷間時に吸気バルブ開弁直後に筒内に吸い込まれて燃焼室の内壁面に付着した液状燃料については何らの対策もなされていない。したがってPM防止の効果はない。
【0008】
特許文献2では、筒内にて噴射されて浮遊している燃料の一部を、アトキンソンサイクルの利用により、BDC以後に吸気ポート側に戻している技術である。このためTDC以後に吸気ポート側から吸い込まれて燃焼室の内壁面に付着した液状燃料については、吸気ポート側に戻ることはない。したがってこのような液状燃料については何らの対策もなされていないので、PM防止の効果はない。
【0009】
特許文献3では、排気の吹き返しが無い状態では、吸気バルブでの吸い込み速度を考慮した制御が行われている。この制御は燃料を吸い込み気流に乗せて筒内に送り込むことが目的である。したがって、冷間時の吸い込みにより燃焼室の内壁面に付着してしまった液状燃料については考慮していない。このためPM防止の効果はない。
【0010】
本発明は、内燃機関冷間時に液状燃料が燃焼室の内壁面に付着するのを防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用・効果について記載する。
請求項1に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置では、吸気ポートに燃料噴射する内燃機関において、この内燃機関の運転状態に応じて吸気バルブ開弁タイミングをTDCよりも遅角する制御を実行する内燃機関バルブタイミング制御装置であって、内燃機関冷間時に、吸気バルブ開弁タイミングでの筒内圧力が吸気ポートの圧力と同等以上の圧力となる状態を目標状態として、吸気バルブ開弁タイミング及び排気バルブ閉弁タイミングの一方又は両方を調節する冷間時バルブタイミング設定手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
このように内燃機関の運転状態に応じて吸気バルブ開弁タイミングをTDCよりも遅角する制御を実行している場合に、冷間時に吸気ポート壁面や吸気バルブの背面に付着している液状燃料が、吸気バルブ開弁直後に生じる急激な吸い込み流により筒内に吸い込まれ、燃焼室の内壁面に付着するおそれがある。
【0013】
しかし本発明では、冷間時バルブタイミング設定手段が、内燃機関冷間時に、吸気バルブ開弁タイミングでの筒内圧力が吸気ポートの圧力と同等以上の圧力となる状態を目標状態として、吸気バルブ開弁タイミング及び排気バルブ閉弁タイミングの一方又は両方を調節する。このため吸気バルブ開弁直後に急激な吸い込み流が生じることはなく、その後に吸気流の吸い込みが生じることになる。
【0014】
このため冷間時に、液体として吸気ポート壁面や吸気バルブの背面に存在していた燃料は、液状で筒内に吸い込まれることはなく、十分に霧化された状態で筒内に吸入されることになる。したがって内燃機関冷間時に液状燃料が燃焼室の内壁面に付着するのを防止することができる。このことによりPM発生を防止できる。
【0015】
請求項2に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置では、請求項1に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、前記冷間時バルブタイミング設定手段は、内燃機関冷間時に前記目標状態に近づく方向に吸気バルブ開弁タイミングを調節することを特徴とする。
【0016】
このように冷間時バルブタイミング設定手段は、吸気バルブ開弁タイミングのみの調節により前記目標状態となるように制御している。このように吸気バルブ開弁タイミングのみを調節することでも、吸気バルブ開弁直後に急激な吸い込み流が生じないようにできる。したがって内燃機関冷間時に液状燃料が燃焼室の内壁面に付着するのを防止することができる。
【0017】
請求項3に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置では、請求項2に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、前記冷間時バルブタイミング設定手段は、吸気ポートでの気流の逆流状態を検出する吸気ポート逆流検出手段を備え、内燃機関冷間時に吸気バルブ開弁タイミング直後に前記吸気ポート逆流検出手段が逆流の発生を検出しない場合は吸気バルブ開弁タイミングを進角し、逆流の発生を検出した場合は吸気バルブ開弁タイミングを遅角することを特徴とする。
【0018】
このような手法により冷間時バルブタイミング設定手段は前記目標状態となるように吸気バルブ開弁タイミングを調節することができる。
すなわち、冷間時バルブタイミング設定手段は、吸気ポートでの逆流発生直前の状態、すなわち燃焼室から排気の吹き返しが発生し始める状態にて、吸気バルブが開弁するように、吸気バルブ開弁タイミングの進角・遅角を制御している。燃焼室から排気の吹き返しが発生し始める状態は、筒内圧力が吸気ポートの圧力と同等の圧力、あるいはわずかに筒内圧力が高い状態であることから、前記目標状態を達成することができる。
【0019】
このように吸気ポート逆流検出手段の検出状態に応じて、吸気バルブ開弁タイミングを制御することで、吸気バルブ開弁直後に急激な吸い込み流が発生するのを防止できる。したがって内燃機関冷間時に液状燃料が燃焼室の内壁面に付着するのを防止することができる。
【0020】
更に逆流を検出した場合には吸気バルブ開弁タイミングを遅角して逆流を必要以上に強めていないので、燃費の悪化を防止できる。
請求項4に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置では、請求項2に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、前記冷間時バルブタイミング設定手段は、吸気ポートでの気流の逆流状態を検出する吸気ポート逆流検出手段を備え、内燃機関冷間時に吸気バルブ開弁タイミング直後に前記吸気ポート逆流検出手段が逆流の発生を検出しない場合は吸気バルブ開弁タイミングを進角し、逆流の発生を検出した場合は吸気バルブ開弁タイミングに対する調節は実行しないことを特徴とする。
【0021】
冷間時バルブタイミング設定手段は、逆流が発生していない場合のみ、吸気バルブ開弁タイミングを進角し、逆流の発生を検出した場合は吸気バルブ開弁タイミングに対する調節は実行しないようにしている。すなわち遅角側の調節はせずに進角側のみの調節としている。
【0022】
逆流、すなわち排気の吹き返しが発生している場合には、少なくとも筒内圧力が吸気ポートの圧力より高い状態である。このことから、逆流の発生を検出しない場合に実行する進角側への調節のみとしても前記目標状態を達成することができる。
【0023】
このことにより内燃機関冷間時に液状燃料が燃焼室の内壁面に付着するのを防止することができる。
請求項5に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置では、請求項2に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、前記冷間時バルブタイミング設定手段は、吸気ポートでの気流の逆流状態を検出する吸気ポート逆流検出手段を備え、内燃機関冷間時に吸気バルブ開弁タイミング直後に前記吸気ポート逆流検出手段が逆流の発生を検出しない場合は吸気バルブ開弁タイミングを前記目標状態に対応する進角値に設定し、逆流の発生を検出した場合は吸気バルブ開弁タイミングに対する調節は実行しないことを特徴とする。
【0024】
このように冷間時バルブタイミング設定手段は、吸気ポート逆流検出手段が逆流の発生を検出しない場合は、直ちに吸気バルブ開弁タイミングを目標状態に対応する進角値に設定している。
【0025】
このことにより急激な吸い込み防止処理が迅速に実行できるので、内燃機関冷間時に液状燃料が燃焼室の内壁面に付着するのを、より確実に防止することができる。
請求項6に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置では、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、アトキンソンサイクルとして、吸気バルブ開弁タイミングをTDCよりも遅角する制御を実行していることを特徴とする。
【0026】
吸気バルブ開弁タイミングをTDCよりも遅角する制御としては、アトキンソンサイクルの実行が挙げられる。したがって内燃機関冷間時にアトキンソンサイクルを実行する場合に燃焼室の内壁面への液状燃料付着が防止される。
【0027】
請求項7に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置では、請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、前記冷間時バルブタイミング設定手段が吸気バルブ開弁タイミング及び排気バルブ閉弁タイミングの一方又は両方を調節して前記目標状態に制御する際に生じる内燃機関の出力トルク変動を抑制するトルク変動抑制手段を備えたことを特徴とする。
【0028】
冷間時バルブタイミング設定手段が吸気バルブ開弁タイミング及び排気バルブ閉弁タイミングの一方又は両方を調節した際には、内燃機関には出力トルク変動が生じる場合がある。このような場合には、トルク変動抑制手段により内燃機関の出力トルク変動を抑制する。このことで、内燃機関が適用されている装置におけるショック、例えば内燃機関が車両に適用されていれば、車両に対するショックを防止でき、このことにより乗員に違和感を生じさせることがない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態1の内燃機関とその制御系の概略構成図。
【図2】吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの変化における吸気バルブ開弁直後の気流状態と燃焼室内のPM発生量との関係を示すグラフ。
【図3】実施の形態1のECUが実行する冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理のフローチャート。
【図4】(A)〜(C)実施の形態1の制御の一例を示すグラフ。
【図5】実施の形態2の冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理のフローチャート。
【図6】実施の形態3の冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理のフローチャート。
【図7】実施の形態4の出力トルク変動防止処理のフローチャート。
【図8】実施の形態5の内燃機関とその制御系の概略構成図。
【図9】実施の形態6の冷間時排気バルブ閉弁タイミング設定処理の一例を示すフローチャート。
【図10】実施の形態6の冷間時排気バルブ閉弁タイミング設定処理の一例を示すフローチャート。
【図11】実施の形態6の冷間時排気バルブ閉弁タイミング設定処理の一例を示すフローチャート。
【図12】(A),(B)吸気ポートの逆流有無による温度上昇状態を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[実施の形態1]
〈実施の形態1の構成〉図1に上述した発明が適用された内燃機関2とその制御系である電子制御ユニット(以下「ECU」と称する)4との概略構成を表す。この内燃機関2はガソリンエンジンであり、車両駆動用に車両に搭載されたものである。内燃機関2は複数気筒を備えている。例えば直列4気筒のガソリンエンジンとして構成されている。気筒数としては、6気筒や8気筒などのその他の気筒数の内燃機関でも良く、あるいはV型内燃機関であっても良い。尚、図1では複数気筒の内の1気筒のみ示している。
【0031】
内燃機関2の各燃焼室6は、吸気バルブ8にて開閉される吸気ポート10を介して吸気系に接続され、排気バルブ12にて開閉される排気ポート14を介して排気系と接続されている。
【0032】
吸気ポート10には燃料噴射弁16が設けられ、燃料噴射時には吸気バルブ8側に向けて吸気中に燃料噴射することで混合気を形成する。吸気ポート10の上流側には、サージタンク18aと分岐管18bとからなる吸気マニホールド18が接続されている。この吸気マニホールド18の上流側にはスロットルバルブ20が設けられている。
【0033】
尚、この内燃機関2では、吸気量は吸気バルブ8のリフト量にて調節される。したがってスロットルバルブ20の開度はモータ20aにて調節可能であるが、通常、内燃機関2の運転時には全開とされ、内燃機関2の停止時には全閉とされる。このスロットルバルブ20にはスロットル開度TAを検出するスロットル開度センサ20bが設けられている。スロットルバルブ20より上流側には吸気量センサ22が設けられて吸気量GAを検出している。
【0034】
燃料噴射弁16にて燃料噴射がなされて吸気ポート10に混合気が形成され、この混合気が吸気バルブ8が開弁することで燃焼室6内に吸入される。そして点火タイミングにて点火プラグ24のスパークによる点火が行われることにより燃焼室6内の混合気が燃焼する。このことでピストン26が押し下げられて出力軸であるクランクシャフト28を回転させる。
【0035】
そして燃焼後の混合気は、排気バルブ12の開弁により排気として燃焼室6から排気ポート14に排出される。このように排出された排気は、排気浄化触媒やマフラーを介して外部へ排出される。
【0036】
ここで吸気バルブ8に開閉駆動力を伝達する吸気カムシャフト30にはバルブタイミング可変機構32が設けられている。このバルブタイミング可変機構32は、クランクシャフト28に対する吸気カムシャフト30の相対回転位相を調節するものである。したがってバルブタイミング可変機構32により、吸気バルブ8のバルブタイミングを連続的に進角又は遅角させることができる。
【0037】
更に吸気カムシャフト30と吸気バルブ8との間にはリフト量可変機構34が設けられている。このリフト量可変機構34は、吸入行程における吸気バルブ8の最大バルブリフト量を連続的に可変とするものである。尚、最大バルブリフト量の変化は、吸気バルブ8の作用角の変化に対応している。
【0038】
上述したバルブタイミング可変機構32とリフト量可変機構34とにより、吸気バルブ8の可変動弁機構が形成されている。
アクセルペダル36の踏み込み量は、アクセル操作量センサ36aによりアクセル操作量ACCPとして検出される。このアクセル操作量ACCPに応じて、ECU4はリフト量可変機構34を制御して吸気バルブ8の最大バルブリフト量(あるいは作用角)を調節する。このことによりアクセルペダル36の踏み込み量に応じた混合気を燃焼室6内に導入することができる。このことにより内燃機関2の出力トルクが調節される。
【0039】
排気バルブ12は、クランクシャフト28により回転される排気カムシャフト38から回転駆動力が伝達される。
ECU4は、内燃機関2の燃料噴射量、燃料噴射時期、吸入空気量、バルブオーバーラップの制御以外に、点火時期制御、その他の処理を実行している。これらの処理のためにECU4は、機関回転数センサ42、冷却水温センサ44、スロットル開度センサ20b、吸気量センサ22、アクセル操作量センサ36a、カムポジションセンサ30bなどによる検出信号を入力している。この他、排気系に設けられた空燃比センサなどからも検出信号を入力している。
【0040】
機関回転数センサ42はクランクシャフト28の回転に対応した機関回転数NEを、冷却水温センサ44はエンジン温度としての冷却水温度THWを検出している。吸気カムシャフト30に対して設けられたカムポジションセンサ30bは吸気バルブ8を駆動する吸気カム30aのカム角を検出している。
【0041】
吸気ポート10には吸気バルブ8の近傍に吸気ポート逆流検出センサ46が設けられている。この吸気ポート逆流検出センサ46は、吸気バルブ8の開弁状態で燃焼室6から吸気ポート10側への気流の逆流が生じているか否かを検出するセンサである。
【0042】
このような吸気ポート逆流検出センサ46としては、吸気バルブ8側に開口する気体導入口を設けた構成とすることで、燃焼室6側から吸気ポート10へ逆流する気体の流量や流速を検出する流量センサあるいは流速センサが挙げられる。この他には吸気バルブ8からの逆流は燃焼後の排気の逆流であることから、CO2濃度を検出するCO2センサ、あるいは高温の排気の温度を検出する温度センサが挙げられる。この場合には、CO2の高濃度化や気流の高温化が生じたことにより逆流を検出することができる。
【0043】
センサを用いなくても、この内燃機関2の物理モデルを用いて演算による逆流が生じる期間が判るので、内燃機関2の運転状態、特にバルブタイミング可変機構32とリフト量可変機構34との調節量に基づいて逆流量あるいは逆流有無を算出しても良い。
【0044】
物理モデルによる演算でなく、図1のごとく吸気ポート逆流検出センサ46を配置する場合には、1つの気筒を代表とし、この代表気筒の吸気ポート10にのみ吸気ポート逆流検出センサ46を配置して、逆流状態を検出しても良い。本実施の形態では、#1気筒のみに吸気ポート逆流検出センサ46を配置して、逆流の有無を検出しているものとする。
【0045】
ECU4は、上述した各信号、記憶しているデータ、演算結果などに基づいて各種制御を実行する。すなわち点火プラグ24による点火時期、燃料噴射弁16の開弁制御による燃料噴射量や燃料噴射時期、吸気バルブ8のバルブタイミング、吸気バルブ8のリフト量調節、スロットルバルブ20の開度調節などの制御を実行する。
【0046】
本発明者の知見により、冷間時の内燃機関運転においては、吸気バルブ8の開弁直後(例えば吸気バルブ開弁タイミングから20°CAぐらいまでの期間)の吸気バルブ8での気流状態と、燃焼室6内のPM発生量(g)との関係は、図2に示したごとくであることが判明している。
【0047】
すなわち吸気バルブ開弁タイミングが遅角側である場合は開弁直後の気流は順流であるが、開弁タイミングが進角側である場合は逆流が生じている。そして気流の逆流側と順流側との境界領域ではPM発生量が大きく変化し、順流側でPM発生量が急激に増加していることが判る。
【0048】
吸気バルブ開弁タイミングの遅角側において、特にTDC以後に吸気バルブ8が開弁する状態では、開弁までに燃焼室6内は負圧状態となる。すなわち吸気ポート10の圧力よりも筒内圧力(燃焼室6内の圧力)が低下した状態となる。この筒内圧力の低下状態は吸気バルブ開弁タイミングが遅角すればするほど強くなる。
【0049】
したがって吸気バルブ開弁タイミングでは、吸気ポート10と筒内圧力との差圧により急激な吸い込み流が吸気バルブ8の周りで発生することになる。
内燃機関冷間時では燃料噴射弁16から噴射された燃料は吸気バルブ8の背面や吸気ポート10の壁面に液状で付着しており、このような状態で急激な吸い込み流が生じた場合には、燃料は液状のまま吹き飛ばされて燃焼室6内部に吸い込まれる。そして燃焼室6の内壁(特に排気バルブ12の周辺部分)に液状で付着する。
【0050】
この液状燃料が内面に付着したままで燃焼室6内にて燃焼が行われると、局所リッチでの燃焼となり、燃焼室6内でのPM発生量が高くなるのである。
PM発生を防止するためには、冷間時に液状燃料が燃焼室6内に吸い込まれないように制御する必要がある。このためにECU4は前記図2の関係に基づいて、冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)を実行する。
〈実施の形態1の作用〉本実施の形態の作用について、冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)に基づいて説明する。この処理は、一定クランク角周期(あるいは一定時間周期)で繰り返し実行される。尚、個々の処理内容に対応するフローチャート中のステップを「S〜」で表す。
【0051】
本処理が開始されると、まず内燃機関2が冷間時運転であるか否かが判定される(S102)。これは冷却水温センサ44により検出される冷却水温度THWが基準温度以下か否かにより判定される。
【0052】
冷間時でない場合には(S102でNO)、このまま本処理を出る。
冷間時であれば(S102でYES)、次に#1気筒の吸気バルブ8が開弁状態か否かが判定される(S104)。#1気筒の開弁期間は、バルブタイミング可変機構32及びリフト量可変機構34の制御量からクランク角(°CA)にて算出できる。このクランク角と、機関回転数センサ42の信号から算出される実際のクランク角との比較から#1気筒の吸気バルブ8が開弁状態にあるか否かを判定できる。
【0053】
ここで#1気筒の吸気バルブ8が開弁していなければ(S104でNO)、このまま処理を出る。
冷間時(S102でYES)ではあるが、#1気筒の吸気バルブ8が開弁していない状態が継続していれば(S104でNO)、このまま処理を出る状態が継続する。
【0054】
#1気筒の吸気バルブ8が開弁状態になると(S104でYES)、今回の開弁時での吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正(後述するステップS110又はS114)が未完了か否かが判定される(S105)。
【0055】
この吸気バルブ開弁タイミング進角値VTは、基準開弁タイミングからの進角量を示すものである。吸気バルブ開弁タイミング進角値VTが大きいほど、吸気バルブ8の開弁は早くなり、小さいほど遅くなる。
【0056】
#1気筒の吸気バルブ8が開弁した当初は吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正処理はなされていないので(S105でYES)、次に#1気筒の吸気ポート10に設けられている吸気ポート逆流検出センサ46の出力UdirecがECU4の作業メモリに読み込まれる(S106)。
【0057】
次にこの出力Udirecの値が逆流を示しているか否かが判定される(S108)。すなわち燃焼室6内に残留している排気が、開弁した吸気バルブ8を介して吸気ポート10側に逆流しているか否かを判定する。
【0058】
ここでECU4はアトキンソンサイクルを実行しているものとする。このアトキンソンサイクルにより、吸気バルブ8の開弁期間全体が大きく遅角して、吸気バルブ開弁タイミングがTDCよりもかなり後になっている状態であるとする。この状態において吸気バルブ開弁タイミング直前では、ピストン26は吸気バルブ8と排気バルブ12とが共に閉じた状態で低下しつつあることから、燃焼室6内は負圧状態となっている。
【0059】
このため吸気バルブ開弁タイミングの直後には、吸気ポート10側から急激に燃焼室6内に吸気が吸い込まれることになる。このような急激な吸い込みは逆流ではなく順流である。したがって吸気バルブ開弁タイミング直後では、吸気ポート逆流検出センサ46では逆流は検出されない(S108でNO)。
【0060】
そして次に#1気筒の吸気バルブ開弁タイミングから規定時間を経過したか否かが判定される(S112)。この規定時間は、吸気ポート逆流検出センサ46にて確実に逆流が生じていないことを検出するための遅延時間として設定されている。尚、規定時間は時間でなく、規定クランク角幅として設定しても良い。
【0061】
規定時間が経過していなければ(S112でNO)、このまま処理を出る。
吸気ポート逆流検出センサ46の出力Udirecが逆流を検出しない状態のまま(S108でNO)、規定期間が経過すると(S112でYES)、逆流が生じていないことが確実となる。そして、このことは、吸気バルブ開弁タイミングがTDCよりも後であることにより、吸気バルブ開弁タイミング直後に、吸気ポート10から燃焼室6内へ吸気の急激な吸い込みが発生している可能性があることを示すものである。
【0062】
このため吸気バルブ開弁タイミングを進角側に補正する(S114)。すなわち式1に示すごとく現在の吸気バルブ開弁タイミング進角値VT[i−1]を、進角側補正量ΔVTb分増加させて、新たな吸気バルブ開弁タイミング進角値VT[i]として設定する。
【0063】
[式1] VT[i]←VT[i−1]+ΔVTb
この吸気バルブ開弁タイミング進角値VTは、ECU4が、バルブタイミング可変機構32及びリフト量可変機構34の一方又は両方を駆動することで、実際の吸気バルブ開弁タイミングを調節するための制御量である。したがってこのように進角側に補正された制御量を用いて、ECU4は、実際の吸気バルブ開弁タイミングを進角側に制御する。
【0064】
こうして処理を出る。
次の実行周期では、ステップS102及びステップS104で共にYESと判定されても、今回の開弁時での吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正は完了しているので(S105でNO)、このまま本処理を出る。
【0065】
以後は、#2気筒、#4気筒、#3気筒の吸気バルブ開弁タイミングが順次経過することで、再度、#1気筒の吸気バルブ開弁タイミングになるまでは、ステップS104又はステップS105にてNOと判定される。
【0066】
そして再度、冷間時のままで#1気筒の開弁状態になると(S104でYES)、今回の開弁時での吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正は未完了であるので(S105でYES)、出力Udirecが読み込まれ(S106)、出力Udirecが逆流を示しているか否かが判定される(S108)。
【0067】
今回の吸気バルブ開弁タイミングでも規定期間経過しても逆流が生じていない場合には(S112でYES)、前記式1に従って、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTを進角側に補正する(S114)。
【0068】
以後、#1気筒の開弁タイミングになって、規定期間経過しても逆流が生じていなければ(S112でYES)、進角側への吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正が継続する(S114)。
【0069】
このことにより内燃機関2の全気筒について、吸気バルブ8の開弁タイミングがTDCに近づくことになる。
次に最初から出力Udirecが逆流を示していたり、あるいは前記式1の処理(S114)を繰り返したことにより、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTが大きくなって、規定時間内に出力Udirecが逆流を示した場合(S108でYES)を考える。
【0070】
この場合には、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTを遅角側に補正する(S110)。すなわち式2に示すごとく現在の吸気バルブ開弁タイミング進角値VT[i−1]を、遅角側補正量ΔVTa分減少させて、新たな吸気バルブ開弁タイミング進角値VT[i]として設定する。
【0071】
[式2] VT[i]←VT[i−1]−ΔVTa
このように遅角側に補正された制御量を用いて、ECU4は、実際の吸気バルブ開弁タイミングを遅角側に制御する。
【0072】
こうして本処理を出る。
次に実行周期では、ステップS102及びステップS104で共にYESと判定されても、今回の開弁時での吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正は完了しているので(S105でNO)、このまま本処理を出る。
【0073】
以後は、#2気筒、#4気筒、#3気筒の吸気バルブ開弁タイミングが順次経過することで、再度、#1気筒の吸気バルブ開弁タイミングになるまでは、ステップS104又はステップS105にてNOと判定される。
【0074】
そして再度、冷間時のままで#1気筒の開弁状態になると(S104でYES)、今回の開弁時での吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正は未完了であるので(S105でYES)、出力Udirecが読み込まれ(S106)、出力Udirecが逆流を示しているか否かが判定される(S108)。
【0075】
今回の吸気バルブ開弁タイミングでも逆流が生じている場合には(S108でYES)、前記式2に従って、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTを遅角側に補正する(S110)。
【0076】
以後、#1気筒の開弁タイミングになって、まだ逆流が生じていれば(S108でYES)、遅角側への吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正が継続する(S110)。
このことにより内燃機関2の全気筒について、吸気バルブ開弁タイミングが遅角されることで逆流が抑制されることになる。
【0077】
このように冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)では、逆流が生じていない場合には、吸気バルブ開弁タイミングが進角され、逆流が生じた場合には、吸気バルブ開弁タイミングが遅角される処理がなされる。
【0078】
本実施の形態による処理の一例を図4に示す。このグラフは吸気バルブ8を流れる単位時間当たりの気流の流量(g/s)を示すグラフであり、特に開弁期間(吸気バルブ開弁タイミングTOから吸気バルブ閉弁タイミングTCまでの期間)で、クランク角(°CA)の変化に対する流量(g/s)の変化を示している。
【0079】
図4の(A)は、冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)による吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正が適用されていない状態でのアトキンソンサイクルを示している。
【0080】
すなわち開弁タイミングがTDCから大きく遅角しているので、開弁タイミング直後では、流量の立ち上がりが急峻であり、急激な吸い込みが生じていることが判る。
図4の(B)は、冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)により図4の(A)の状態から吸気バルブ開弁タイミングTOを進角させて、逆流直前の状態になった例(例えば吸気バルブ開弁タイミングTO=TDC)を示している。この場合には、開弁タイミング直後に急激な吸い込みは生じていない。
【0081】
図4の(C)は、更に吸気バルブ8の開弁タイミングを進角させて、逆流がわずかに生じている状態となった例を示している。この場合、逆流後(Ti〜)に吸気が吸い込まれる状態となるが、この場合にも急激な吸い込みは生じていない。尚、逆流が生じたので、冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)では、吸気バルブ開弁タイミングTOを遅角する。このことにより図4の(B)の状態に近づくことになる。
【0082】
したがって冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)のステップS110,S114の処理により、図4の(B)〜(C)の間の状態に吸気バルブ開弁タイミングTOが調節されることになる。すなわち吸気バルブ開弁タイミングTOでの筒内圧力が吸気ポート10の圧力と同等以上の圧力となる状態を目標状態として、吸気バルブ開弁タイミングTOを調節している。
【0083】
このことにより吸気バルブ開弁タイミングTOでは、急激な吸い込みが生じることなくかつ大きな逆流が生じない開弁タイミングに維持されることになる。
〈実施の形態1と請求項との関係〉上述した構成において、ECU4及び吸気ポート逆流検出センサ46が冷間時バルブタイミング設定手段に相当し、吸気ポート逆流検出センサ46が吸気ポート逆流検出手段に相当する。ECU4が実行する冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)が冷間時バルブタイミング設定手段としての処理に相当する。
〈実施の形態1の効果〉(1)ECU4は、冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)により前述した目標状態が冷間時に達成されるように、吸気バルブ開弁タイミングを調節している。
【0084】
このため冷間時において吸気バルブ8の開弁直後に筒内への急激な吸い込み流が生じることが無い。すなわち、吸気流は吸気バルブ8の開弁直後にはほとんど流れない状態、あるいはわずかな逆流状態になるのみである。その後に、徐々に吸気流の流れが生じて燃焼室6に吸い込まれる。
【0085】
したがって冷間時に、吸気ポート10の壁面や吸気バルブ8の背面に存在していた液状燃料は、比較的穏やかな気流の中で、その表面から気化して燃焼室6内に吸入される。このため燃料が液状で筒内に吸い込まれることはなく、燃焼室6の内壁面への液状燃料の付着が防止できる。したがって局所リッチでの燃焼が生じることはなく、PM発生を防止できる。
【0086】
(2)冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)による吸気バルブ開弁タイミング制御は、特にステップS110の処理により、燃焼室6からの逆流、すなわち排気の吹き返しが発生し始めるタイミングになるように、吸気バルブ開弁タイミングを設定している。このことにより燃焼室6内からの排気の逆流を必要以上に強くしないようにできる。このためPM発生防止と共に燃費の悪化も防止できる。
【0087】
[実施の形態2]
〈実施の形態2の構成〉本実施の形態では、冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理として図5の処理を実行する。これ以外の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0088】
冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図5)のステップS202〜S208,S212,S214の処理は、前記図3のステップS102〜S108,S112,S114の処理と同じである。本実施の形態の冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図5)では、前記図3のステップS110の代わりに、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTを補正せずに補正完了設定する処理(S210)が実行される。
〈実施の形態2の作用〉したがって本実施の形態では、吸気ポート逆流検出センサ46の出力Udirecが逆流を示さないまま(S208でNO)、規定期間が経過すると(S212でYES)、前記実施の形態1の場合と同様に、前記式1により吸気バルブ開弁タイミングを進角側に補正する(S214)。この進角側への補正を繰り返すことにより急激な吸い込み流が存在しない状態で吸気バルブ8を開弁できるようになる。
【0089】
しかし規定期間が経過する前に、吸気ポート逆流検出センサ46の出力Udirecが逆流を示した場合には(S208でNO)、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTに対して遅角側への補正を実行せずに補正完了とする(S210)。
〈実施の形態2と請求項との関係〉上述した構成において、ECU4及び吸気ポート逆流検出センサ46が冷間時バルブタイミング設定手段に相当し、吸気ポート逆流検出センサ46が吸気ポート逆流検出手段に相当する。ECU4が実行する冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図5)が冷間時バルブタイミング設定手段としての処理に相当する。
〈実施の形態2の効果〉(1)冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図5)では、吸気バルブ開弁タイミング直後に逆流が発生していない場合のみ、開弁タイミングを進角している(S214)。しかし逆流の発生を検出した場合には開弁タイミングに対する調節は実行しない。
【0090】
吸気バルブ開弁タイミング直後に排気の吹き返しが存在すれば、吸気バルブ開弁タイミング直後には急激な吸い込み流が生じてはいないことから、開弁タイミングの補正はせずに終了している。
【0091】
このように吸気バルブ開弁タイミングを進角側へのみ制御する構成でも、急激な吸い込み流が防止できるので、冷間時において燃焼室6の内壁面へ液状燃料が付着することが防止でき、このことによりPM発生を防止できる。
【0092】
更に進角側への補正は、実際には逆流がわずかに生じた段階で停止するので、燃費の悪化も抑制できる。
[実施の形態3]
〈実施の形態3の構成〉本実施の形態では、冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理として図6の処理を実行する。これ以外の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0093】
冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図6)のステップS302〜S312の処理は、前記図5のステップS202〜S212の処理と同じである。
本実施の形態の冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図6)では、前記図5の処理の内、ステップS214の代わりに、新たに設定する吸気バルブ開弁タイミング進角値VT[i]として、目標状態に対応した進角値VTxを設定する処理(S314)が実行される。
〈実施の形態3の作用〉本実施の形態では、吸気ポート逆流検出センサ46の出力Udirecが逆流を示さないまま(S308でNO)、規定期間が経過すると(S312でYES)、吸気バルブ開弁タイミング直後に燃焼室6内への吸気の急激な吸い込み流が発生している可能性があると判断できる。
【0094】
この判断に基づいて、吸気バルブ開弁タイミング直後における吸気ポート10での気流が、吸い込みも逆流もなくほぼ停止する状態を目標状態として、その目標状態に対応する進角値VTxを、新たな吸気バルブ開弁タイミング進角値VT[i]として設定している(S314)。このことにより急激な吸い込み流が存在しない状態で吸気バルブ8を開弁できる状態に、迅速に移行できる。
【0095】
尚、規定期間が経過する前に、吸気ポート逆流検出センサ46の出力Udirecが逆流を示した場合には(S308でNO)、前記実施の形態2の場合と同様に、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTを補正せずに補正完了設定を実行する(S310)。
〈実施の形態3と請求項との関係〉上述した構成において、ECU4及び吸気ポート逆流検出センサ46が冷間時バルブタイミング設定手段に相当し、吸気ポート逆流検出センサ46が吸気ポート逆流検出手段に相当する。ECU4が実行する冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図6)が冷間時バルブタイミング設定手段としての処理に相当する。
〈実施の形態3の効果〉(1)冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図6)では、吸気バルブ開弁タイミング直後に逆流が発生していない場合のみ、吸気バルブ開弁タイミングを直ちに最適とされる進角値VTxに設定している。そして逆流の発生を検出した場合は吸気バルブ開弁タイミングに対する調節は実行しない。
【0096】
このように吸気バルブ開弁タイミングを吸気ポート10での気流がほぼ停止する状態に直ちに移行させることにより、吸気バルブ開弁タイミング直後に急激な吸い込みが行われるのを迅速に防止できる。
【0097】
したがって、燃焼室6の内壁面への液状燃料付着が早期に防止され、このことによりPM発生もより効果的に防止できる。
更に目標状態に対応する進角値VTxは、逆流が生じる直前の進角値にしていることから、燃費の悪化も確実に防止できる。
【0098】
[実施の形態4]
〈実施の形態4の構成〉本実施の形態では、前記実施の形態1、2又は3において、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTを補正した場合には内燃機関2の出力トルク変動が生じる。この出力トルク変動を防止するための出力トルク変動防止処理を実行するものである。このためにECU4は、前記各実施の形態にて説明した冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3,5,6のいずれか)と共に、図7に示す出力トルク変動防止処理を実行している。
【0099】
これ以外の構成は前記実施の形態1と同じである。
〈実施の形態4の作用〉本実施の形態における特徴的な作用について、出力トルク変動防止処理(図7)に基づいて説明する。この処理は一定クランク角周期(あるいは一定時間周期)で繰り返し実行される。
【0100】
出力トルク変動防止処理(図7)が開始されると、まず、吸気バルブ開弁タイミングの補正がなされたか否かが判定される(S402)。
この補正は前記冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3,5,6のいずれか)における、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正処理(S110,S114,S214,S314のいずれか)である。この補正処理がなされていればステップS402の判定条件は成立する。
【0101】
ステップS402の判定条件が成立した場合には、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正による出力トルク変動を相殺するための出力トルク調節処理を実行する(S404)。
【0102】
上述した吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正が進角側になされた場合(S114,S214,S314のいずれか)は、内燃機関2の出力トルクは高い方に変化する。
したがってステップS404では、このような出力トルクが高くなる方への変動ショックを防止するため、点火時期の遅角補正、スロットルバルブ20による吸入空気量の減少補正、吸気バルブ8の閉弁タイミングの遅角補正、燃料噴射量減量補正のいずれかあるいはこれらの組み合わせにより、出力トルクの増加を相殺する。
【0103】
上述した吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正が遅角側になされた場合(S110)は、内燃機関2の出力トルクは低い方に変化する。
したがってステップS404では、このような出力トルクが低くなる方への変動ショックを防止するため、点火時期の進角補正、スロットルバルブ20による吸入空気量の増加補正、吸気バルブ8の閉弁タイミングの進角補正、燃料噴射量増量補正のいずれかあるいはこれらの組み合わせにより、出力トルクの減少を相殺する。
【0104】
吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正がなされていない場合には(S402でNO)、出力トルク変動を相殺する処理は実行されない。
〈実施の形態4と請求項との関係〉上述した構成において、冷間時バルブタイミング設定手段及び吸気ポート逆流検出手段について、請求項との関係は前記各実施の形態にて説明したごとくである。ECU4がトルク変動抑制手段に相当し、出力トルク変動防止処理(図7)がトルク変動抑制手段としての処理に相当する。
〈実施の形態4の効果〉(1)前記各実施の形態のいずれかの効果と共に、吸気バルブ開弁タイミングを補正した際に出力トルク変動が内燃機関2に生じるのを防止できる。
【0105】
したがって車両乗員の違和感を防止することができる。
[実施の形態5]
〈実施の形態5の構成〉本実施の形態の構成は図8に示すごとくである。内燃機関102には排気バルブ112にバルブタイミング可変機構240が設けられている。したがってECU104は吸気バルブ8側のバルブタイミングと共に、排気バルブ112についてもバルブタイミングを調節している。このため排気カムシャフト138の回転位相を検出するためにカムポジションセンサ138aが配置されている。他の構成は前記図1に説明したごとくである。したがって同一構成は同一符号にて示す。
【0106】
ECU104が実行する処理については、前記実施の形態1〜4のいずれかの処理が実行される。
尚、図8の構成を前記実施の形態4に適用した場合には、前記図7のステップS404では、排気バルブ112のバルブタイミングを調節することにより、あるいはこの調節と共に前記実施の形態4に述べた他の処理を組み合わせることにより、出力トルク変動を防止しても良い。
〈実施の形態5の作用〉本実施の形態では、排気バルブ112のバルブタイミングに応じて、逆流が生じ始める吸気バルブ開弁タイミング進角値VTも異なる。
【0107】
この場合でも、前記図3又は前記図5の処理を用いた場合には、ステップS110,S114又はステップS214の処理により、自動的に適切な吸気バルブ開弁タイミング進角値VTに収束することになる。
【0108】
前記図6の処理を用いた場合には、そのステップS314にて、まず排気バルブ閉弁タイミングに対応して適切な進角値VTxを算出して、この算出した進角値VTxを吸気バルブ開弁タイミング進角値VTに設定することになる。
〈実施の形態5と請求項との関係〉前記各実施の形態にて説明した関係と同じである。
〈実施の形態5の効果〉(1)このように排気バルブ112のバルブタイミングが変更される内燃機関102であっても前記各実施の形態に述べた効果と同様な効果を生じる。
【0109】
[実施の形態6]
〈実施の形態6の構成〉本実施の形態の構成は前記図8に示したごとくである。
ただし前記冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3,5,6のいずれか)の代わりに、図9〜11に示すいずれかの冷間時排気バルブ閉弁タイミング設定処理を実行する。
【0110】
図9の冷間時排気バルブ閉弁タイミング設定処理を実行した場合については、そのステップS502,S504,S506,S508,S512は、前記冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図3)のステップS102,S104,S106,S108,S112と同じである。
【0111】
異なる点は次のごとくである。すなちわ今回の開弁時での吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正が未完了か否かの判定(図3:S105)の代わりに、今回の開弁時での排気バルブ閉弁タイミング進角値VTeの補正が未完了か否かの判定がなされる(S505)。
【0112】
吸気バルブ開弁タイミング進角値VTを進角側に補正する処理(図3:S114)の代わりに、式3に示すごとく排気バルブ閉弁タイミング進角値VTeを遅角側に補正する処理(S514)を実行する。
【0113】
[式3] VT[i]←VT[i−1]−ΔVTeb
すなわち式3は、排気バルブ112の閉弁タイミングを遅くすることで、吸気バルブ8の開弁タイミングに近づける。このことにより吸気バルブ8の開弁タイミングがTDCよりも遅れても、燃焼室6内が負圧状態にならないようにしている。
【0114】
更に、吸気バルブ開弁タイミング進角値VTを遅角側に補正する処理(図3:S110)の代わりに、式4に示すごとく排気バルブ閉弁タイミング進角値VTeを進角側に補正する処理(S510)を実行する。
【0115】
[式4] VTe[i]←VTe[i−1]+ΔVTea
すなわち式4は排気バルブ112の閉弁タイミングを早くすることで、前記式3により排気バルブ閉弁タイミングが遅角しすぎて、他の気筒からの排気が燃焼室6に流入し、燃焼室6から吸気系への逆流が生じた場合に、排気バルブ112の閉弁タイミングを早くすることで、その逆流を小さくする処理である。
【0116】
図10の冷間時排気バルブ閉弁タイミング設定処理を実行した場合については、そのステップS602,S604,S606,S608,S612は、前記冷間時吸気バルブ開弁タイミング設定処理(図5)のステップS202,S204,S206,S208,S212と同じである。
【0117】
異なる点は次のごとくである。すなわち今回の開弁時での吸気バルブ開弁タイミング進角値VTの補正が未完了か否かの判定(図5:S205)の代わりに、今回の開弁時での排気バルブ閉弁タイミング進角値VTeの補正が未完了か否かの判定がなされる(S605)。
【0118】
吸気バルブ開弁タイミング進角値VTを補正せずに設定処理完了する処理(図5:S210)の代わりに、排気バルブ閉弁タイミング進角値VTeを補正せずに補正完了設定する処理(S610)を実行する。
【0119】
そして吸気バルブ開弁タイミング進角値VTを進角側に補正する処理(図5:S214)の代わりに、前記式3に示したごとく排気バルブ閉弁タイミング進角値VTeを遅角側に補正する処理(S614)を実行する。
【0120】
すなわち逆流が生じていない場合に、排気バルブ閉弁タイミングを遅くすることで、吸気バルブ8の開弁タイミングに近づけ、このことで吸気バルブ8の開弁タイミングがTDCよりも遅れても燃焼室6内が負圧状態にならないようにしている。逆流が生じている場合には、排気バルブ閉弁タイミングはそのままとしている。
【0121】
図11の冷間時排気バルブ閉弁タイミング設定処理を実行した場合については、そのステップS702〜S712は、前記図10のステップS602〜S612と同じである。異なる点は、排気バルブ閉弁タイミング進角値VTeを遅角側に補正する処理(S614)の代わりに、目標状態に対応した進角値VTexを、排気バルブ閉弁タイミング進角値VTeに設定する処理(S714)を実行する点である。
【0122】
すなわち吸気バルブ開弁タイミングに逆流も急激な吸い込み流も生じない気流状態にできる進角値VTexを、排気バルブ閉弁タイミング進角値VTeに直ちに設定している。
〈実施の形態6の作用〉本実施の形態では、吸気バルブ8から燃焼室6へ急激に吸気が吹き込む可能性がある場合に、排気バルブ112の閉弁タイミングを遅角させている。
【0123】
この排気バルブ閉弁タイミングの遅角により、TDC以後のピストン26下降時に、排気系に存在する排気が燃焼室6内に戻ることになる。このことによりTDCよりも吸気バルブ開弁タイミングが遅くなっても、吸気バルブ開弁タイミング直後での燃焼室6内は負圧化せず、急激な吸気の吹き込みが生じない。
〈実施の形態6と請求項との関係〉上述した構成において、ECU104及び吸気ポート逆流検出センサ46が冷間時バルブタイミング設定手段に相当し、吸気ポート逆流検出センサ46が吸気ポート逆流検出手段に相当する。ECU104が実行する冷間時排気バルブ閉弁タイミング設定処理(図9〜11)がそれぞれ冷間時バルブタイミング設定手段としての処理に相当する。
【0124】
更に前記実施の形態4にて説明した図7と同じ処理を、排気バルブ閉弁タイミング補正時の出力トルク変動防止処理として追加しても良く。この場合には、ECU104がトルク変動抑制手段に相当し、上記出力トルク変動防止処理がトルク変動抑制手段としての処理に相当する。
〈実施の形態6の効果〉(1)このようにバルブタイミング可変機構240を備えて、排気バルブ112のバルブタイミングについても調節対象とする内燃機関102であっても前記実施の形態1〜4のいずれかに述べた効果と同様に、燃焼室6の内壁面への液状燃料の付着が防止でき、このことによりPM発生を防止できる。
【0125】
[その他の実施の形態]
・図1や図8に示した吸気ポート逆流検出センサ46としては、温度センサを用いても良い。燃焼室6から吸気ポート10への逆流が無い場合には、図12の(A)に示すごとく、吸気ポート10では温度変化はほとんど無いが、逆流が有る場合には、図12の(B)に示すごとく排気から伝熱されて温度変化(ピークPt)が生じる。
【0126】
したがって吸気ポート逆流検出センサ46として温度センサを用いる場合には、このようなピークPtの有無によって逆流の有無を検出できる。
このことはCO2濃度を検出するCO2センサを、吸気ポート逆流検出センサ46として用いる場合も同じであり、CO2濃度のピークが生じることにより逆流が生じていることが判定できる。
【0127】
・前記実施の形態5では吸気開弁タイミングの調節によりPM防止処理を行っていたが、前記実施の形態6の処理を組み合わせることにより、吸気開弁タイミングの調節と排気閉弁タイミングの調節との両方で、PM防止処理を実行しても良い。
【0128】
・可変動弁機構の構成としては、前記図1に示したリフト量可変機構34が無くても良い。すなわち、吸気バルブ8のバルブタイミング可変機構32のみでも良く、あるいは前記図8に示したごとく吸気バルブ8のバルブタイミング可変機構32と排気バルブ112のバルブタイミング可変機構240との組み合わせのみでも良い。
【0129】
・前記各実施の形態では、吸気ポート逆流検出センサ46は#1気筒の吸気ポートに設けられていたが、その他の気筒の吸気ポートに設ける構成、あるいは、全ての吸気ポートに吸気ポート逆流検出センサ46を配置する構成としても良い。このことにより、各気筒の開弁時にそれぞれ逆流状態を検出できる。したがって高頻度に吸気バルブ開弁タイミング進角値VTや排気バルブ閉弁タイミング進角値VTeの補正が可能となるので、燃焼室の内壁面への液状燃料付着が迅速かつ確実に防止され、PM発生防止を更に高めることができる。
【符号の説明】
【0130】
2…内燃機関、4…ECU、6…燃焼室、8…吸気バルブ、10…吸気ポート、12…排気バルブ、14…排気ポート、16…燃料噴射弁、18…吸気マニホールド、18a…サージタンク、18b…分岐管、20…スロットルバルブ、20a…モータ、20b…スロットル開度センサ、22…吸気量センサ、24…点火プラグ、26…ピストン、28…クランクシャフト、30…吸気カムシャフト、30a…吸気カム、30b…カムポジションセンサ、32…バルブタイミング可変機構、34…リフト量可変機構、36…アクセルペダル、36a…アクセル操作量センサ、38…排気カムシャフト、42…機関回転数センサ、44…冷却水温センサ、46…吸気ポート逆流検出センサ、102…内燃機関、104…ECU、112…排気バルブ、138…排気カムシャフト、138a…カムポジションセンサ、240…バルブタイミング可変機構、Pt…ピーク、TC…吸気バルブ閉弁タイミング、TO…吸気バルブ開弁タイミング、VT…吸気バルブ開弁タイミング進角値。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気ポートに燃料噴射する内燃機関において、この内燃機関の運転状態に応じて吸気バルブ開弁タイミングをTDCよりも遅角する制御を実行する内燃機関バルブタイミング制御装置であって、
内燃機関冷間時に、吸気バルブ開弁タイミングでの筒内圧力が吸気ポートの圧力と同等以上の圧力となる状態を目標状態として、吸気バルブ開弁タイミング及び排気バルブ閉弁タイミングの一方又は両方を調節する冷間時バルブタイミング設定手段を備えたことを特徴とする内燃機関バルブタイミング制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、前記冷間時バルブタイミング設定手段は、内燃機関冷間時に前記目標状態に近づく方向に吸気バルブ開弁タイミングを調節することを特徴とする内燃機関バルブタイミング制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、前記冷間時バルブタイミング設定手段は、吸気ポートでの気流の逆流状態を検出する吸気ポート逆流検出手段を備え、内燃機関冷間時に吸気バルブ開弁タイミング直後に前記吸気ポート逆流検出手段が逆流の発生を検出しない場合は吸気バルブ開弁タイミングを進角し、逆流の発生を検出した場合は吸気バルブ開弁タイミングを遅角することを特徴とする内燃機関バルブタイミング制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、前記冷間時バルブタイミング設定手段は、吸気ポートでの気流の逆流状態を検出する吸気ポート逆流検出手段を備え、内燃機関冷間時に吸気バルブ開弁タイミング直後に前記吸気ポート逆流検出手段が逆流の発生を検出しない場合は吸気バルブ開弁タイミングを進角し、逆流の発生を検出した場合は吸気バルブ開弁タイミングに対する調節は実行しないことを特徴とする内燃機関バルブタイミング制御装置。
【請求項5】
請求項2に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、前記冷間時バルブタイミング設定手段は、吸気ポートでの気流の逆流状態を検出する吸気ポート逆流検出手段を備え、内燃機関冷間時に吸気バルブ開弁タイミング直後に前記吸気ポート逆流検出手段が逆流の発生を検出しない場合は吸気バルブ開弁タイミングを前記目標状態に対応する進角値に設定し、逆流の発生を検出した場合は吸気バルブ開弁タイミングに対する調節は実行しないことを特徴とする内燃機関バルブタイミング制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、アトキンソンサイクルとして、吸気バルブ開弁タイミングをTDCよりも遅角する制御を実行していることを特徴とする内燃機関バルブタイミング制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、
前記冷間時バルブタイミング設定手段が吸気バルブ開弁タイミング及び排気バルブ閉弁タイミングの一方又は両方を調節して前記目標状態に制御する際に生じる内燃機関の出力トルク変動を抑制するトルク変動抑制手段を備えたことを特徴とする内燃機関バルブタイミング制御装置。
【請求項1】
吸気ポートに燃料噴射する内燃機関において、この内燃機関の運転状態に応じて吸気バルブ開弁タイミングをTDCよりも遅角する制御を実行する内燃機関バルブタイミング制御装置であって、
内燃機関冷間時に、吸気バルブ開弁タイミングでの筒内圧力が吸気ポートの圧力と同等以上の圧力となる状態を目標状態として、吸気バルブ開弁タイミング及び排気バルブ閉弁タイミングの一方又は両方を調節する冷間時バルブタイミング設定手段を備えたことを特徴とする内燃機関バルブタイミング制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、前記冷間時バルブタイミング設定手段は、内燃機関冷間時に前記目標状態に近づく方向に吸気バルブ開弁タイミングを調節することを特徴とする内燃機関バルブタイミング制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、前記冷間時バルブタイミング設定手段は、吸気ポートでの気流の逆流状態を検出する吸気ポート逆流検出手段を備え、内燃機関冷間時に吸気バルブ開弁タイミング直後に前記吸気ポート逆流検出手段が逆流の発生を検出しない場合は吸気バルブ開弁タイミングを進角し、逆流の発生を検出した場合は吸気バルブ開弁タイミングを遅角することを特徴とする内燃機関バルブタイミング制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、前記冷間時バルブタイミング設定手段は、吸気ポートでの気流の逆流状態を検出する吸気ポート逆流検出手段を備え、内燃機関冷間時に吸気バルブ開弁タイミング直後に前記吸気ポート逆流検出手段が逆流の発生を検出しない場合は吸気バルブ開弁タイミングを進角し、逆流の発生を検出した場合は吸気バルブ開弁タイミングに対する調節は実行しないことを特徴とする内燃機関バルブタイミング制御装置。
【請求項5】
請求項2に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、前記冷間時バルブタイミング設定手段は、吸気ポートでの気流の逆流状態を検出する吸気ポート逆流検出手段を備え、内燃機関冷間時に吸気バルブ開弁タイミング直後に前記吸気ポート逆流検出手段が逆流の発生を検出しない場合は吸気バルブ開弁タイミングを前記目標状態に対応する進角値に設定し、逆流の発生を検出した場合は吸気バルブ開弁タイミングに対する調節は実行しないことを特徴とする内燃機関バルブタイミング制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、アトキンソンサイクルとして、吸気バルブ開弁タイミングをTDCよりも遅角する制御を実行していることを特徴とする内燃機関バルブタイミング制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の内燃機関バルブタイミング制御装置において、
前記冷間時バルブタイミング設定手段が吸気バルブ開弁タイミング及び排気バルブ閉弁タイミングの一方又は両方を調節して前記目標状態に制御する際に生じる内燃機関の出力トルク変動を抑制するトルク変動抑制手段を備えたことを特徴とする内燃機関バルブタイミング制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−50061(P2013−50061A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187906(P2011−187906)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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