内燃機関排気冷却装置
【課題】内燃機関の排気冷却用アダプタにおいて排気冷却機能を十分に発揮させると共に上流側と下流側との温度差による熱歪みや熱溜まりの発生を防止することを目的とする。
【解決手段】各断熱材10,12の伝熱性の差異により排気冷却用アダプタ4の上流側の総受熱量(Qfh+Qgh)と下流側の総受熱量(Qfe+Qge)との差が無い。このため排気通路14による排気冷却機能が十分に発揮できると共に上流側と下流側とで温度が同一化することから排気冷却用アダプタ4の熱歪みや熱溜まりの発生を確実に防止できる。ボルトB1,B2の締結は接続面の凹状空間周縁で行われている。このため内燃機関排気冷却装置2を適用するために排気冷却用アダプタ4をシリンダヘッドHdにボルト締結し、エキゾーストマニホールドExをボルト締結しても、断熱材10,12に対する締結応力集中は防止でき、断熱材10,12の変形による断熱性の悪化が防止できる。
【解決手段】各断熱材10,12の伝熱性の差異により排気冷却用アダプタ4の上流側の総受熱量(Qfh+Qgh)と下流側の総受熱量(Qfe+Qge)との差が無い。このため排気通路14による排気冷却機能が十分に発揮できると共に上流側と下流側とで温度が同一化することから排気冷却用アダプタ4の熱歪みや熱溜まりの発生を確実に防止できる。ボルトB1,B2の締結は接続面の凹状空間周縁で行われている。このため内燃機関排気冷却装置2を適用するために排気冷却用アダプタ4をシリンダヘッドHdにボルト締結し、エキゾーストマニホールドExをボルト締結しても、断熱材10,12に対する締結応力集中は防止でき、断熱材10,12の変形による断熱性の悪化が防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気経路に排気冷却用アダプタを配置して排気を冷却する内燃機関排気冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関排気系での熱害、特に排気浄化触媒の熱害を防止するために排気を冷却する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1では、ターボチャージャやエキゾーストマニホールドからの熱が排気冷却用アダプタを介して他方に伝達しないようにされている。
【0003】
又、内燃機関排気系にて排気浄化触媒の暖機を促進するために排気ポートでの伝熱性を調節している技術が知られている(例えば特許文献2,3参照)。
特許文献2では、排気ポート内に熱伝導率の低いポートライナを配置して冷間時に排気が冷却されないようにして触媒暖機を迅速化している。暖機後はエキゾーストマニホールドからはガスケットを介してシリンダヘッドに熱が逃がされる。
【0004】
特許文献3では、排気ポート内に断熱材を配置して冷間時に排気が冷却されないようにして触媒暖機を迅速化している。この触媒暖機を更に促進するために断熱材が配置されている下流側排気ポートにはウォータジャケットは形成されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭64−15718号全文公報(第13頁、図4,5)
【特許文献2】特開2004−156547号公報(第4〜7頁、図1)
【特許文献3】特開2002−115601号公報(第4頁、図1,2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の排気冷却用アダプタでは、排気流の上流と下流とに接続されている部材から受熱するが、上流側と下流側とで断熱空間により同等な断熱を実行しているのみである。上流と下流側とでの受熱量の違いや、排気冷却用アダプタ内を流れる排気からの受熱状態との関係を考慮した断熱性(伝熱性)の設定が行われているわけではない。
【0007】
このため排気冷却用アダプタの上下流に接続されている部材からの受熱量の違いや、内部を流れる排気からの上下流での受熱量の違いが蓄積し、上流側と下流側とで大きな温度差が生じるおそれがある。このような大きな温度差が排気冷却用アダプタの上流側と下流側との間で生じると、排気冷却用アダプタに大きな熱歪みを生じる。このことにより排気冷却用アダプタの耐久性が低下するおそれがある。
【0008】
更に受熱量の偏りにより熱溜まりが発生し、このことにより冷却水の部分沸騰を招いてしまうおそれがある。
特許文献1の排気冷却用アダプタに対して、特許文献2,3の排気ポートの構成を適用すると、特許文献1の排気冷却用アダプタ内の排気通路内面を断熱材で覆う構成となる。このように排気通路内面を覆うと、排気自体からの受熱を、排気冷却用アダプタ全体で少なくすることは可能となる。しかし、これでは肝心の排気冷却機能が阻害され、排気冷却用アダプタの機能を果たさなくなる。しかも上流側と下流側とに接続されている部材(ここではシリンダヘッドとエキゾーストマニホールド)からの受熱量の差による熱歪みや熱溜まりの発生については何らの対策もなされていない。
【0009】
本発明は、排気冷却用アダプタにおいて、排気冷却機能を十分に発揮させると共に、上流側と下流側との温度差を抑制して、熱歪みや熱溜まりの発生を防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用・効果について記載する。
請求項1に記載の内燃機関排気冷却装置は、内燃機関の排気経路に排気冷却用アダプタを配置し、この排気冷却用アダプタの上流側には排気流入側部材が接続され下流側に排気流出側部材が接続されて、前記排気流入側部材の排気通路から前記排気冷却用アダプタの排気通路に排気が導入され、前記排気冷却用アダプタの排気通路から前記排気流出側部材の排気通路に排気が排出されることにより内燃機関の排気を冷却する内燃機関排気冷却装置であって、前記排気冷却用アダプタと前記排気流入側部材との間の接続部分に設けられて、この接続部分での伝熱性を設定している上流側伝熱性設定部と、前記排気冷却用アダプタと前記排気流出側部材との間の接続部分に設けられて、この接続部分での伝熱性を、前記上流側伝熱性設定部とは異なる伝熱性に設定している下流側伝熱性設定部と、を備え、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、この差異が無い場合に比較して前記排気冷却用アダプタの上流側での総受熱量と下流側での総受熱量との差を小さくする設定であることを特徴とする。
【0011】
排気冷却用アダプタは、その内部の排気通路にて排気を冷却するため、上流側では、下流側に比較して排気が高温である。このため排気通路の上流側と下流側とでは排気からの受熱量には差が生じる。
【0012】
しかし受熱量は排気からの直接的なもののみでなく、排気流入側部材からの受熱量及び排気流出側部材からの受熱量が存在する。したがって排気冷却用アダプタは、排気上流側の総受熱量としては、排気からの直接の受熱量と排気流入側部材を介しての受熱量との合計である。排気下流側の総受熱量としては、排気から直接の受熱量と排気流出側部材を介しての受熱量との合計である。
【0013】
したがって実際には、排気上流側と排気下流側とにおける排気からの直接的な受熱量の差ではなく、上述した総受熱量の差が、排気上流側と排気下流側とで排気冷却用アダプタにおいて温度差を生じさせる要因となる。
【0014】
このため本発明では排気冷却用アダプタにおいて、排気通路ではなく、上下流に接続される排気流入側部材と排気流出側部材との間の各接続部分に、上流側伝熱性設定部と下流側伝熱性設定部とを設けている。
【0015】
この上流側伝熱性設定部及び下流側伝熱性設定部では、その伝熱性には差異が設定されている。この伝熱性の差異は、差異が無い場合に比較して排気冷却用アダプタの上流側での総受熱量と下流側での総受熱量との差を小さくする関係に設定とされている。
【0016】
すなわち、排気からの直接的な受熱量は上流側で大きく下流側では小さいくなるが、この関係がそのまま総受熱量の差とならないように、すなわちこの差が小さくなるように、上流側伝熱性設定部の伝熱性と下流側伝熱性設定部の伝熱性との差異が設定されている。
【0017】
このことにより排気流からの受熱量による排気冷却用アダプタの上流側と下流側との温度差を抑制できる。したがって排気冷却用アダプタの排気冷却機能を十分に発揮させることができると共に、上流側と下流側との温度差による熱歪みや熱溜まりの発生を防止することができる。
【0018】
請求項2に記載の内燃機関排気冷却装置は、請求項1に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、前記排気冷却用アダプタの上流側での総受熱量と下流側での総受熱量とを同一とする設定であることを特徴とする。
【0019】
ここでは上流側伝熱性設定部の伝熱性と下流側伝熱性設定部の伝熱性との関係は、排気冷却用アダプタの排気上流側と排気下流側とで総受熱量が同一となるように設定されている。
【0020】
したがって排気冷却用アダプタの排気冷却機能を十分に発揮させることができると共に、排気流からの受熱量による排気冷却用アダプタの上流側と下流側との温度差を無くすことができ、排気冷却用アダプタの熱歪みや熱溜まりの発生を確実に防止できる。
【0021】
請求項3に記載の内燃機関排気冷却装置は、請求項1又は2に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部の伝熱性と前記下流側伝熱性設定部の伝熱性との差異は、前記上流側伝熱性設定部を介する前記排気流入側部材からの受熱量と前記下流側伝熱性設定部を介する前記排気流出側部材からの受熱量との受熱量差が、前記排気冷却用アダプタの排気通路の上流側における排気からの受熱量と下流側における排気からの受熱量との受熱量差を相殺する関係に設定されていることを特徴とする。
【0022】
このような受熱量差の相殺関係となるように、上流側伝熱性設定部の伝熱性と下流側伝熱性設定部の伝熱性との関係を設定している。このことにより排気冷却用アダプタの排気冷却機能を十分に発揮させることができると共に、排気冷却用アダプタの上流側と下流側との温度差を抑制して、排気冷却用アダプタの熱歪みや熱溜まりの発生を防止できる。
【0023】
請求項4に記載の内燃機関排気冷却装置は、請求項3に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記排気流入側部材は前記排気通路として排気ポートを備える内燃機関のシリンダヘッドであり、前記排気流出側部材はエキゾーストマニホールドであり、前記シリンダヘッドの排気ポートから前記排気冷却用アダプタの排気通路に排気が導入され、前記排気冷却用アダプタの排気通路から前記エキゾーストマニホールドの排気通路に排気が排出され、前記下流側伝熱性設定部は前記上流側伝熱性設定部よりも伝熱性が低いことを特徴とする。
【0024】
このようにシリンダヘッドとエキゾーストマニホールドとの間に排気冷却用アダプタを介在させた構成では、エキゾーストマニホールドは、冷却水により十分に冷却されているシリンダヘッド側よりも高温となる。このことから、排気冷却用アダプタとエキゾーストマニホールドとの間に設けられている下流側伝熱性設定部は、シリンダヘッドと排気冷却用アダプタとの間に設けられている上流側伝熱性設定部よりも伝熱性を低下させている。このことで、シリンダヘッドから排気冷却用アダプタへの受熱量よりも、エキゾーストマニホールドから排気冷却用アダプタへの受熱量を少なくすることができる。
【0025】
このようにして排気上流側と排気下流側とで総受熱量の差が抑制できる。したがって、排気冷却用アダプタの排気冷却機能を十分に発揮させることができると共に、排気冷却用アダプタの上流側と下流側との温度差を抑制して、排気冷却用アダプタの熱歪みや熱溜まりの発生を防止できる。
【0026】
請求項5に記載の内燃機関排気冷却装置は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部と前記下流側伝熱性設定部とは、応力集中部位を避けて配置されていることを特徴とする。
【0027】
上流側伝熱性設定部及び下流側伝熱性設定部は、応力集中により大きな歪みが生じると伝熱性に影響が生じるおそれがある。このため、応力集中部位に上流側伝熱性設定部及び下流側伝熱性設定部を設けると、予め設定されている伝熱性が変化して予定する総受熱量を達成できなくなるおそれがある。
【0028】
このため応力集中部位を避けて上流側伝熱性設定部及び下流側伝熱性設定部を配置することで、設定通りに適切に排気冷却用アダプタの上流側と下流側との温度差を抑制でき、排気冷却用アダプタの熱歪みや熱溜まりの発生を十分に防止できる。
【0029】
請求項6に記載の内燃機関排気冷却装置は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、前記上流側伝熱性設定部と前記下流側伝熱性設定部とにそれぞれ配置されている断熱材の断熱性の差異により設定されていることを特徴とする。
【0030】
伝熱性の差異は、上流側伝熱性設定部と下流側伝熱性設定部とにそれぞれ配置されている断熱材の断熱性の差異により設定でき、上述したごとくの作用・効果を生じさせることができる。
【0031】
請求項7に記載の内燃機関排気冷却装置は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、前記上流側伝熱性設定部と前記下流側伝熱性設定部とにそれぞれ配置されているガスケットの厚さの差異により設定されていることを特徴とする。
【0032】
伝熱性の差異は、上流側伝熱性設定部と下流側伝熱性設定部とにそれぞれ配置されているガスケットの厚さの差異により設定でき、上述したごとくの作用・効果を生じさせることができる。
【0033】
請求項8に記載の内燃機関排気冷却装置は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、前記上流側伝熱性設定部と前記下流側伝熱性設定部とにそれぞれ形成されている空気層の領域面積又は空気層の厚さの差異により設定されていることを特徴とする。
【0034】
伝熱性の差異は、上流側伝熱性設定部と下流側伝熱性設定部とにそれぞれ形成されている空気層の領域面積又は空気層の厚さの差異により設定でき、上述したごとくの作用・効果を生じさせることができる。
【0035】
請求項9に記載の内燃機関排気冷却装置は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、前記上流側伝熱性設定部と前記下流側伝熱性設定部とにおける伝熱面積の差異により設定されていることを特徴とする。
【0036】
伝熱性の差異は、上流側伝熱性設定部と下流側伝熱性設定部とにおけるそれぞれの伝熱面積の差異により設定でき、上述したごとくの作用・効果を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施の形態1の内燃機関排気冷却装置の斜視図。
【図2】同じく内燃機関排気冷却装置の背面側からの斜視図。
【図3】同じく内燃機関排気冷却装置の正面図。
【図4】同じく内燃機関排気冷却装置の背面図。
【図5】(A)〜(D)同じく内燃機関排気冷却装置の構成説明図。
【図6】同じく図5の(A)X−X線で破断した内燃機関排気冷却装置の破断斜視図。
【図7】同じく図5の(A)X−X線で破断した内燃機関排気冷却装置の断面図。
【図8】同じく内燃機関排気冷却装置の分解斜視図。
【図9】同じく排気冷却用アダプタの斜視図。
【図10】同じく排気冷却用アダプタの背面側からの斜視図。
【図11】実施の形態2の内燃機関排気冷却装置の断面図。
【図12】同じく内燃機関排気冷却装置の分解斜視図。
【図13】実施の形態3の内燃機関排気冷却装置の分解斜視図。
【図14】同じく図13とは逆側から見た内燃機関排気冷却装置の分解斜視図。
【図15】同じく内燃機関排気冷却装置の断面図。
【図16】同じく内燃機関排気冷却装置の他の例を示す分解斜視図。
【図17】実施の形態4の内燃機関排気冷却装置の分解斜視図。
【図18】同じく内燃機関排気冷却装置の断面図。
【図19】排気冷却用アダプタの長さを変更した場合の上流側伝熱性設定部と下流側伝熱性設定部との設定関係を示すグラフ。
【図20】排気冷却用アダプタの排気通路における出口と入口との面積比を変更した場合の上流側伝熱性設定部と下流側伝熱性設定部との設定関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[実施の形態1]
〈実施の形態1の構成〉図1〜7は上述した発明が適用された内燃機関排気冷却装置2の概略構成を表す。この内燃機関排気冷却装置2は、図8に分解して示すごとく排気冷却用アダプタ4、ガスケット6,8、及び断熱材10,12を備えた構成である。
【0039】
内燃機関排気冷却装置2が適用される内燃機関は4気筒であり、そのシリンダヘッドHdには4つの排気ポートPeが開口している。この排気ポートPeに対応して、図9,10に示すごとく排気冷却用アダプタ4の内部には、4つの排気通路14が直線状に配列して形成されている。排気通路14における排気導入口14aはシリンダヘッド側接続面16に開口している。排気通路14における排気排出口14bはエキゾーストマニホールド側接続面18に開口している。
【0040】
排気冷却用アダプタ4の外周には、シリンダヘッドHdに対するボルト締結部20が形成されている。このボルト締結部20には、ボルトB1を挿通してシリンダヘッドHdに締結するためのボルト挿通孔20aが形成されている。更に排気冷却用アダプタ4の外周にはエキゾーストマニホールドExを締結するためのボルト締結部22が形成されている。このボルト締結部22には螺合孔22aが形成されている。この螺合孔22aに対して、エキゾーストマニホールドExのフランジに形成された挿通孔を介して、ボルトB2が螺合される。このことによりエキゾーストマニホールドExが排気冷却用アダプタ4に締結される。
【0041】
図6,7に示すごとく排気冷却用アダプタ4内には冷却水通路24が形成されている。冷却水通路24へは冷却水導入部26から冷却水が導入される。冷却水通路24へ入った冷却水は各排気通路14の周りを流れた後に、冷却水排出部28から排出される。
【0042】
このような排気冷却用アダプタ4において、そのシリンダヘッド側接続面16には外周縁部16aを除いて断熱材収納部16bが形成されている。エキゾーストマニホールド側接続面18にも外周縁部18aを除いて断熱材収納部18bが形成されている。これら断熱材収納部16b,18bは、外周縁部16a,18aの面に対し凹状に形成されている。この断熱材収納部16b,18bの凹状空間形状は、断熱材10,12の形状に対応している。
【0043】
内燃機関への取り付けに際しては、一方の断熱材10をシリンダヘッド側接続面16に形成された断熱材収納部16bに収納し、この上からガスケット6を配置する。そして、ボルトB1により、シリンダヘッドHdと排気冷却用アダプタ4との間に断熱材10及びガスケット6を挟んだ状態で、排気冷却用アダプタ4をシリンダヘッドHdに締結する。更に、他方の断熱材12をエキゾーストマニホールド側接続面18に形成された断熱材収納部18bに収納し、この上からガスケット8を配置する。そして、ボルトB2により、エキゾーストマニホールドExと排気冷却用アダプタ4との間に断熱材12及びガスケット8を挟んだ状態で、排気冷却用アダプタ4に対してエキゾーストマニホールドExを締結する。このことにより内燃機関に内燃機関排気冷却装置2が配置される。
【0044】
ここでシリンダヘッドHd側に配置されたヘッド側断熱材10(上流側伝熱性設定部に相当)と、エキゾーストマニホールドEx側に配置されたエキゾースト側断熱材12(下流側伝熱性設定部に相当)とは、形状は同一であるが、設定された伝熱性に差異が設けられている。この伝熱性の違いは、排気通路14を流れる排気から、排気冷却用アダプタ4が上流と下流とで受ける受熱量の差と関連して設定されている。
【0045】
断熱材10,12としては、例えばセラミック、シリコーン系樹脂などの材料が用いられる。
〈実施の形態1の作用〉次に本実施の形態の作用について説明する。内燃機関運転時において、排気冷却用アダプタ4全体の受熱量Qwは、図7に示したごとくシリンダヘッドHdからの受熱量Qfh、エキゾーストマニホールドExからの受熱量Qfe、排気通路14の上流側で排気からの受熱量Qgh、及び排気通路14の下流側で排気からの受熱量Qgeの合計である。すなわち式1に示すごとくの関係にある。
【0046】
[式1] Qw=Qfh+Qgh+Qfe+Qge
ここで排気冷却用アダプタ4は排気通路14により排気を冷却しているため、上流側での排気温は下流側よりも高温である。このため上流側での排気からの受熱量Qghは下流側での排気からの受熱量Qgeよりも大きい。
【0047】
しかし、本実施の形態の内燃機関排気冷却装置2では、排気冷却用アダプタ4における上流側の総受熱量(Qfh+Qgh)と、下流側の総受熱量(Qfe+Qge)との差が、排気のみの受熱量の差(Qgh−Qge)よりも、絶対値として小さくされている。
【0048】
内燃機関排気冷却装置2でのこのような機能は、ヘッド側断熱材10とエキゾースト側断熱材12との伝熱性の差により、シリンダヘッドHdからの受熱量QfhとエキゾーストマニホールドExからの受熱量Qfeとの大小関係を設定することにより実現している。
【0049】
特に本実施の形態では、式2の関係が実現するように、2つの受熱量Qfh,Qfeの大小関係が設定されている。
[式2] Qgh−Qge=Qfe−Qfh
上記式2は上下流での排気からの受熱量Qgh,Qgeの差(Qgh−Qge)とシリンダヘッドHdとエキゾーストマニホールドExとからの受熱量Qfe,Qfhの差(Qfe−Qfh)とが同一に設定されていることを表している。
【0050】
すなわちエキゾーストマニホールドExからの受熱量QfeとシリンダヘッドHdからの受熱量Qfhとの受熱量差(Qfe−Qfh)が、上流側での排気からの受熱量Qghと下流側での排気からの受熱量Qgeとの受熱量差(Qgh−Qge)を完全に相殺する関係を表している。
【0051】
この式2は、次式3の関係に変換できる。
[式3] Qfh+Qgh=Qfe+Qge
すなわち排気冷却用アダプタ4における上流側の総受熱量(Qfh+Qgh)と、下流側の総受熱量(Qfe+Qge)とが同一となるように、断熱材10,12間の伝熱性関係が設定されていることを表している。
【0052】
例えば、断熱材10,12の材料として無機物の発泡体が適用される場合には、その気泡の大きさや無機物の種類を選択することで伝熱性に差を設けることができる。そして平均的なあるいは代表的な内燃機関運転状態における、上下流での排気からの受熱量(あるいは排気温)、排気流入側部材であるシリンダヘッドHdの温度、排気流出側部材であるエキゾーストマニホールドExの温度、及び冷却水温を勘案して前記式2,3に適合する伝熱性を有する断熱材10,12の材料を決定する。
【0053】
ここで内燃機関のシリンダヘッドHdは水冷により冷却されており、エキゾーストマニホールドExは冷却されていない構成であるとすると、ヘッド側断熱材10に比較して、エキゾースト側断熱材12の伝熱性を十分に低く設定する。すなわちエキゾースト側断熱材12の断熱性を十分に高く設定することで、前記式2,3の関係を成立させることができる。
【0054】
尚、エキゾースト側断熱材12の断熱性の効果がヘッド側断熱材10より大きいのに、エキゾーストマニホールドExからの受熱量Qfeの方がシリンダヘッドHdからの受熱量Qfhよりも大きいのは、シリンダヘッドHdに比較してエキゾーストマニホールドExの方が高温だからである。
【0055】
ただしエキゾーストマニホールドExがシリンダヘッドHdと同様に冷却されていたりして、シリンダヘッドHdとエキゾーストマニホールドExとの間の温度関係が上述とは異なる場合がある。このような場合には、前記式2,3を成立させるために、ヘッド側断熱材10とエキゾースト側断熱材12との間の断熱性(伝熱性)の大小関係は、上述した関係とは逆になる場合もある。
〈実施の形態1の効果〉(1)各断熱材10,12の伝熱性の設定により上述した式3が成立している。すなわち排気冷却用アダプタ4の上流側の総受熱量(Qfh+Qgh)と、下流側の総受熱量(Qfe+Qge)との差が無い状態とされている。
【0056】
したがって排気冷却用アダプタ4の排気通路14による排気冷却機能が十分に発揮できると共に、排気冷却用アダプタ4の上流側と下流側とで温度が同一化することから、排気冷却用アダプタ4の熱歪みを確実に防止できる。
【0057】
更に排気冷却用アダプタ4の上流側と下流側とで受熱量の偏りが無くなるため、熱溜まりを防止することができる。このため冷却水通路24における冷却水の部分沸騰を防止できる。
【0058】
(2)断熱材収納部16b,18bは、各接続面16,18において凹状に形成されている。この凹状空間内部に断熱材10,12は収納されている。そしてボルトB1,B2による締結は、接続面16,18の凹状空間の周縁にて行われている。
【0059】
したがって内燃機関排気冷却装置2を適用するために、排気冷却用アダプタ4を内燃機関のシリンダヘッドHdにボルト締結し、更に排気冷却用アダプタ4に対してエキゾーストマニホールドExをボルト締結しても、断熱材10,12に対する締結時の応力集中は防止できる。
【0060】
このためボルト締結に伴う歪みが断熱材10,12に生じるのを防止でき、断熱材10,12において伝熱性の変化、特に断熱性の悪化を防止できる。したがってボルト締結後も前記式2,3の関係を維持することができる。
【0061】
このように応力集中部位を避けて断熱材10,12を配置できることで、排気冷却用アダプタ4による排気冷却機能を十分に発揮しつつ、適切に排気冷却用アダプタ4の上流側と下流側との温度差を抑制でき、排気冷却用アダプタ4の熱歪みや熱溜まりの発生を確実に防止できる。
【0062】
[実施の形態2]
〈実施の形態2の構成〉図11,12に示すごとく、本実施の形態の内燃機関排気冷却装置102は断熱材を用いていない。このため排気冷却用アダプタ104のシリンダヘッド側接続面116及びエキゾーストマニホールド側接続面118には、前記実施の形態1におけるような凹状の断熱材収納部は形成されていない。シリンダヘッド側接続面116及びエキゾーストマニホールド側接続面118はそれぞれ全体が平面である。
【0063】
この平面状のシリンダヘッド側接続面116には、ガスケット106を介して、内燃機関のシリンダヘッドHdがボルトB1により締結されている。そして平面状のエキゾーストマニホールド側接続面118には、ガスケット108を介して、エキゾーストマニホールドExがボルトB2により締結されている。排気通路114、冷却水通路124、その他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0064】
ここで2つのガスケット106,108は材質的には同じであるが、シリンダヘッドHd側のガスケット106よりもエキゾーストマニホールドEx側のガスケット108の方が厚い。ここではシリンダヘッドHd側のガスケット106が上流側伝熱性設定部に相当し、エキゾーストマニホールドEx側のガスケット108が下流側伝熱性設定部に相当する。
【0065】
この厚さの差により、排気冷却用アダプタ104におけるシリンダヘッドHd側からの受熱量QfhはエキゾーストマニホールドEx側からの受熱量Qfeより小さくされていると共に、受熱量Qfe,Qfhの差は、上流側での排気からの受熱量Qghと下流側での排気からの受熱量Qgeとの受熱量差を完全に相殺する。
〈実施の形態2の作用〉本実施の形態では、各ガスケット106,108の厚さの違いにより、それぞれの伝熱性が設定されている。このことにより前記実施の形態1に説明したごとく、前記式2,3を成立させている。
【0066】
尚、エキゾーストマニホールドEx側のガスケット108の方がシリンダヘッドHd側のガスケット106より厚いのに、エキゾーストマニホールドExからの受熱量Qfeの方がシリンダヘッドHdからの受熱量Qfhよりも大きいのは、シリンダヘッドHdに比較してエキゾーストマニホールドExの方が高温だからである。
【0067】
ただしエキゾーストマニホールドExがシリンダヘッドHdと同様に冷却されていたりして、シリンダヘッドHdとエキゾーストマニホールドExとの間の温度関係が上述とは異なる場合がある。このような場合には、前記式2,3を成立させるために、2つのガスケット106,108の間の厚さの大小関係は、上述した関係とは逆になる場合もある。
〈実施の形態2の効果〉(1)ガスケット106,108のみによっても前記式2,3の関係が設定できる。したがって排気冷却用アダプタ104の排気通路114による排気冷却機能が十分に発揮できると共に、より少ない部品点数で、排気冷却用アダプタ104の上流側と下流側とで温度を同一化でき、排気冷却用アダプタ104の熱歪みや熱溜まりの発生を確実に防止できる。
【0068】
(2)断熱材が用いられていないので、各接続面116,118には断熱材収納部が不要となる。このため排気冷却用アダプタ104の製造が容易となる。
[実施の形態3]
〈実施の形態3の構成〉図13〜15に示すごとく、本実施の形態の内燃機関排気冷却装置202は断熱材を用いていない。本実施の形態では空気層の厚さあるいは空気層の有無により、上流側伝熱性設定部と下流側伝熱性設定部との伝熱性の違いを設定している。
【0069】
ここで排気冷却用アダプタ204のシリンダヘッド側接続面216においてガスケット206との上流側間隙設定部210が上流側伝熱性設定部に相当する。エキゾーストマニホールド側接続面218においてガスケット208との下流側間隙設定部212が下流側伝熱性設定部に相当する。
【0070】
ここでは上流側間隙設定部210は実際には間隙設定量は0mmであり空気層は形成されていない。下流側間隙設定部212は或る程度の幅となる間隙設定量が存在し空気層が形成されている。
【0071】
ガスケット206,208、排気通路214、冷却水通路224、その他の構成は前記実施の形態1と同じである。
上述のごとく下流側間隙設定部212に空気層が存在し、上流側間隙設定部210には空気層が存在しない。このことにより、排気冷却用アダプタ204におけるシリンダヘッドHd側からの受熱量QfhはエキゾーストマニホールドEx側からの受熱量Qfeより小さくされていると共に、受熱量Qfe,Qfhの差は、上流側での排気からの受熱量Qghと下流側での排気からの受熱量Qgeとの受熱量差を完全に相殺する。
【0072】
尚、シリンダヘッドHd側での断熱性が不足(伝熱性が高すぎる)場合には、図16に示すごとくの排気冷却用アダプタ234としても良い。この排気冷却用アダプタ234では、シリンダヘッド側接続面246に、エキゾーストマニホールド側接続面218(図13)より少ない領域面積の空気層246aを形成している。すなわち伝熱面積を少なく調節していることになる。
【0073】
このように空気層246aの占める領域面積を調節(伝熱面積の調節にも相当する)したり、あるいは空気層246aの厚さを調節したりすることにより、シリンダヘッドHd側から排気冷却用アダプタ234への受熱量Qfhを調節できる。このことはエキゾーストマニホールドEx側の空気層(下流側間隙設定部212)についても同じである。
〈実施の形態3の作用〉本実施の形態では、各間隙設定部210,212の空気層の厚さの違いにより、それぞれの伝熱性が設定されている。このことにより前記実施の形態1にて説明したごとく、前記式2,3を成立させている。
【0074】
尚、エキゾーストマニホールドEx側の間隙設定部212の方がシリンダヘッドHd側の間隙設定部210より厚い空気層が存在するのに、エキゾーストマニホールドExからの受熱量Qfeの方がシリンダヘッドHdからの受熱量Qfhよりも大きいのは、シリンダヘッドHdに比較してエキゾーストマニホールドExの方が高温だからである。
【0075】
ただしエキゾーストマニホールドExがシリンダヘッドHdと同様に冷却されていたりして、シリンダヘッドHdとエキゾーストマニホールドExとの間の温度関係が上述とは異なる場合がある。このような場合には、前記式2,3を成立させるために、2つの間隙設定部210,212の空気層の厚さの大小関係は、上述した関係とは逆になる場合もある。
〈実施の形態3の効果〉(1)断熱材によらずガスケット206,208と排気冷却用アダプタ204,234との間の間隙設定部210,212によっても前記式2,3の関係が設定できる。
【0076】
したがって排気冷却用アダプタ204,234の排気通路214による排気冷却機能が十分に発揮できると共に、より少ない部品点数で、排気冷却用アダプタ204,234の上流側と下流側とで温度を同一化でき、排気冷却用アダプタ204,234の熱歪みや熱溜まりの発生を確実に防止できる。
(2)断熱材が用いられず、空気層のみであることから、内燃機関の軽量化に貢献できる。
【0077】
[実施の形態4]
〈実施の形態4の構成〉図17,18に示すごとく、本実施の形態の内燃機関排気冷却装置302は断熱材を用いていない。この排気冷却用アダプタ304は、シリンダヘッド側接続面316の面積及び形状は、前記実施の形態3のシリンダヘッド側接続面216(図14)と同じであり、シリンダヘッドHdとの間に配置されるガスケット306の形状及び厚さも前記実施の形態3のガスケット206(図14)と同じである。
【0078】
エキゾーストマニホールド側接続面318は、前記実施の形態3のエキゾーストマニホールド側接続面218(図13)の外形よりも縮小されている。ただし前記実施の形態3とは異なり、エキゾーストマニホールド側接続面318には凹状の間隙設定部212(図13)は存在せず平面状である。
【0079】
したがってこの排気冷却用アダプタ304は、シリンダヘッド側接続面316の面積よりも、エキゾーストマニホールド側接続面318の面積が十分に縮小されている。これに対応して、エキゾーストマニホールドExとの間に配置されるガスケット308についても小面積の形状とされている。
【0080】
排気通路314、冷却水通路324、その他の構成は前記実施の形態3と同じである。
本実施の形態では、上述したごとく排気冷却用アダプタ304のエキゾーストマニホールドEx側では、シリンダヘッドHd側よりも伝熱面積が十分に小さくされている。
【0081】
このことにより、排気冷却用アダプタ304におけるシリンダヘッドHd側からの受熱量QfhはエキゾーストマニホールドEx側からの受熱量Qfeより小さくされていると共に、受熱量Qfe,Qfhの差は、上流側での排気からの受熱量Qghと下流側での排気からの受熱量Qgeとの受熱量差を完全に相殺する。
【0082】
本実施の形態では、シリンダヘッド側接続面316が上流側伝熱性設定部に相当し、エキゾーストマニホールド側接続面318が下流側伝熱性設定部に相当する。
〈実施の形態4の作用〉上述したごとく、伝熱面積である接続面316,318の面積の違いにより、それぞれの伝熱性が設定されている。このことにより前記実施の形態1にて説明したごとく、前記式2,3を成立させている。
【0083】
尚、エキゾーストマニホールド側接続面318の方がシリンダヘッド側接続面316より小面積であるのに、エキゾーストマニホールドExからの受熱量Qfeの方がシリンダヘッドHdからの受熱量Qfhよりも大きいのは、シリンダヘッドHdに比較してエキゾーストマニホールドExの方が高温だからである。
【0084】
ただしエキゾーストマニホールドExがシリンダヘッドHdと同様に冷却されていたりして、シリンダヘッドHdとエキゾーストマニホールドExとの間の温度関係が上述とは異なる場合がある。このような場合には、前記式2,3を成立させるために、2つの接続面316,318の間の面積の大小関係は、上述した関係とは逆になる場合もある。
〈実施の形態4の効果〉(1)断熱材によらず接続面316,318の面積の違いによっても前記式2,3の関係が設定できる。
【0085】
したがって排気冷却用アダプタ304の排気通路314による排気冷却機能が十分に発揮できると共に、より少ない部品点数で、排気冷却用アダプタ304の上流側と下流側とで温度を同一化でき、排気冷却用アダプタ304の熱歪みや熱溜まりの発生を確実に防止できる。
(2)断熱材が用いられず、エキゾーストマニホールド側接続面318及びエキゾーストマニホールドEx側のガスケット308が小面積であることから、内燃機関の軽量化に貢献できる。
【0086】
[その他の実施の形態]
・前記各実施の形態においては、シリンダヘッドHdからの受熱量QfhとエキゾーストマニホールドExからの受熱量Qfeとの受熱量差(Qfe−Qfh)が、上流側での排気からの受熱量Qghと下流側での排気からの受熱量Qgeとの受熱量差(Qgh−Qge)を完全に相殺する関係とした。すなわち前記式2,3が成立する受熱量Qfh,Qfeに設定し、このことにより排気冷却用アダプタの上流側での総受熱量と下流側での総受熱量との差が無いようにしていた。
【0087】
このように完全に前記式2,3の関係が成立しなくても、上流側の接続部分での伝熱性(あるいは断熱性)と下流側の接続部分での伝熱性(あるいは断熱性)とに差を設けることで、排気冷却用アダプタの上流側での総受熱量と下流側での総受熱量との差を小さくするようにしても良い。
【0088】
・前記各実施の形態において、排気流方向での排気冷却用アダプタの長さを変更した場合、例えば短くした場合には、上流側での排気からの受熱量Qghと下流側での排気からの受熱量Qgeとは近づき、差が小さくなる。長くした場合には、下流側の受熱量Qgeが上流側の受熱量Qghよりも小さくなる方向に離れ、差が大きくなる。したがって排気冷却用アダプタの長さに対しては、シリンダヘッドHdからの受熱量QfhとエキゾーストマニホールドExからの受熱量Qfeとの比が、図19に示すごとくとなるように、上流側伝熱性設定部と下流側伝熱性設定部との伝熱性設定状態を変更する。このことにより排気冷却用アダプタの上流側と下流側とで温度を同一化でき、排気冷却用アダプタの熱歪みや熱溜まりの発生を確実に防止できる。
【0089】
・前記各実施の形態において、排気通路の排気導入口と排気排出口との面積比を変更した場合、例えば排気導入口面積と排気排出口面積とを近づけた場合には、上流側での排気からの受熱量Qghと下流側での排気からの受熱量Qgeとは近づき、差が小さくなる。排気導入口面積よりも排気排出口面積を大きくした場合には、下流側の受熱量Qgeが上流側の受熱量Qghよりも小さくなる方向に離れ、差が大きくなる。したがって排気通路の排気導入口と排気排出口との面積比に対しては、シリンダヘッドHdからの受熱量QfhとエキゾーストマニホールドExからの受熱量Qfeとの比が、図20に示すごとくとなるように、上流側伝熱性設定部と下流側伝熱性設定部との伝熱性設定状態を変更する。このことにより排気冷却用アダプタの上流側と下流側とで温度を同一化でき、排気冷却用アダプタの熱歪みや熱溜まりの発生を確実に防止できる。
【符号の説明】
【0090】
2…内燃機関排気冷却装置、4…排気冷却用アダプタ、6,8…ガスケット、10…ヘッド側断熱材、12…エキゾースト側断熱材、14…排気通路、14a…排気導入口、14b…排気排出口、16…シリンダヘッド側接続面、16a…外周縁部、16b…断熱材収納部、18…エキゾーストマニホールド側接続面、18a…外周縁部、18b…断熱材収納部、20…ボルト締結部、20a…ボルト挿通孔、22…ボルト締結部、22a…螺合孔、24…冷却水通路、26…冷却水導入部、28…冷却水排出部、102…内燃機関排気冷却装置、104…排気冷却用アダプタ、106…ガスケット、108…ガスケット、114…排気通路、116…シリンダヘッド側接続面、118…エキゾーストマニホールド側接続面、124…冷却水通路、202…内燃機関排気冷却装置、204…排気冷却用アダプタ、206,208…ガスケット、210…上流側間隙設定部、212…下流側間隙設定部、214…排気通路、216…シリンダヘッド側接続面、218…エキゾーストマニホールド側接続面、224…冷却水通路、234…排気冷却用アダプタ、246…シリンダヘッド側接続面、246a…空気層、302…内燃機関排気冷却装置、304…排気冷却用アダプタ、306,308…ガスケット、314…排気通路、316…シリンダヘッド側接続面、318…エキゾーストマニホールド側接続面、324…冷却水通路、B1,B2…ボルト、Ex…エキゾーストマニホールド、Hd…シリンダヘッド、Pe…排気ポート、Qfh,Qfe,Qgh,Qge…受熱量、Qw…全体の受熱量。
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気経路に排気冷却用アダプタを配置して排気を冷却する内燃機関排気冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関排気系での熱害、特に排気浄化触媒の熱害を防止するために排気を冷却する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1では、ターボチャージャやエキゾーストマニホールドからの熱が排気冷却用アダプタを介して他方に伝達しないようにされている。
【0003】
又、内燃機関排気系にて排気浄化触媒の暖機を促進するために排気ポートでの伝熱性を調節している技術が知られている(例えば特許文献2,3参照)。
特許文献2では、排気ポート内に熱伝導率の低いポートライナを配置して冷間時に排気が冷却されないようにして触媒暖機を迅速化している。暖機後はエキゾーストマニホールドからはガスケットを介してシリンダヘッドに熱が逃がされる。
【0004】
特許文献3では、排気ポート内に断熱材を配置して冷間時に排気が冷却されないようにして触媒暖機を迅速化している。この触媒暖機を更に促進するために断熱材が配置されている下流側排気ポートにはウォータジャケットは形成されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭64−15718号全文公報(第13頁、図4,5)
【特許文献2】特開2004−156547号公報(第4〜7頁、図1)
【特許文献3】特開2002−115601号公報(第4頁、図1,2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の排気冷却用アダプタでは、排気流の上流と下流とに接続されている部材から受熱するが、上流側と下流側とで断熱空間により同等な断熱を実行しているのみである。上流と下流側とでの受熱量の違いや、排気冷却用アダプタ内を流れる排気からの受熱状態との関係を考慮した断熱性(伝熱性)の設定が行われているわけではない。
【0007】
このため排気冷却用アダプタの上下流に接続されている部材からの受熱量の違いや、内部を流れる排気からの上下流での受熱量の違いが蓄積し、上流側と下流側とで大きな温度差が生じるおそれがある。このような大きな温度差が排気冷却用アダプタの上流側と下流側との間で生じると、排気冷却用アダプタに大きな熱歪みを生じる。このことにより排気冷却用アダプタの耐久性が低下するおそれがある。
【0008】
更に受熱量の偏りにより熱溜まりが発生し、このことにより冷却水の部分沸騰を招いてしまうおそれがある。
特許文献1の排気冷却用アダプタに対して、特許文献2,3の排気ポートの構成を適用すると、特許文献1の排気冷却用アダプタ内の排気通路内面を断熱材で覆う構成となる。このように排気通路内面を覆うと、排気自体からの受熱を、排気冷却用アダプタ全体で少なくすることは可能となる。しかし、これでは肝心の排気冷却機能が阻害され、排気冷却用アダプタの機能を果たさなくなる。しかも上流側と下流側とに接続されている部材(ここではシリンダヘッドとエキゾーストマニホールド)からの受熱量の差による熱歪みや熱溜まりの発生については何らの対策もなされていない。
【0009】
本発明は、排気冷却用アダプタにおいて、排気冷却機能を十分に発揮させると共に、上流側と下流側との温度差を抑制して、熱歪みや熱溜まりの発生を防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用・効果について記載する。
請求項1に記載の内燃機関排気冷却装置は、内燃機関の排気経路に排気冷却用アダプタを配置し、この排気冷却用アダプタの上流側には排気流入側部材が接続され下流側に排気流出側部材が接続されて、前記排気流入側部材の排気通路から前記排気冷却用アダプタの排気通路に排気が導入され、前記排気冷却用アダプタの排気通路から前記排気流出側部材の排気通路に排気が排出されることにより内燃機関の排気を冷却する内燃機関排気冷却装置であって、前記排気冷却用アダプタと前記排気流入側部材との間の接続部分に設けられて、この接続部分での伝熱性を設定している上流側伝熱性設定部と、前記排気冷却用アダプタと前記排気流出側部材との間の接続部分に設けられて、この接続部分での伝熱性を、前記上流側伝熱性設定部とは異なる伝熱性に設定している下流側伝熱性設定部と、を備え、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、この差異が無い場合に比較して前記排気冷却用アダプタの上流側での総受熱量と下流側での総受熱量との差を小さくする設定であることを特徴とする。
【0011】
排気冷却用アダプタは、その内部の排気通路にて排気を冷却するため、上流側では、下流側に比較して排気が高温である。このため排気通路の上流側と下流側とでは排気からの受熱量には差が生じる。
【0012】
しかし受熱量は排気からの直接的なもののみでなく、排気流入側部材からの受熱量及び排気流出側部材からの受熱量が存在する。したがって排気冷却用アダプタは、排気上流側の総受熱量としては、排気からの直接の受熱量と排気流入側部材を介しての受熱量との合計である。排気下流側の総受熱量としては、排気から直接の受熱量と排気流出側部材を介しての受熱量との合計である。
【0013】
したがって実際には、排気上流側と排気下流側とにおける排気からの直接的な受熱量の差ではなく、上述した総受熱量の差が、排気上流側と排気下流側とで排気冷却用アダプタにおいて温度差を生じさせる要因となる。
【0014】
このため本発明では排気冷却用アダプタにおいて、排気通路ではなく、上下流に接続される排気流入側部材と排気流出側部材との間の各接続部分に、上流側伝熱性設定部と下流側伝熱性設定部とを設けている。
【0015】
この上流側伝熱性設定部及び下流側伝熱性設定部では、その伝熱性には差異が設定されている。この伝熱性の差異は、差異が無い場合に比較して排気冷却用アダプタの上流側での総受熱量と下流側での総受熱量との差を小さくする関係に設定とされている。
【0016】
すなわち、排気からの直接的な受熱量は上流側で大きく下流側では小さいくなるが、この関係がそのまま総受熱量の差とならないように、すなわちこの差が小さくなるように、上流側伝熱性設定部の伝熱性と下流側伝熱性設定部の伝熱性との差異が設定されている。
【0017】
このことにより排気流からの受熱量による排気冷却用アダプタの上流側と下流側との温度差を抑制できる。したがって排気冷却用アダプタの排気冷却機能を十分に発揮させることができると共に、上流側と下流側との温度差による熱歪みや熱溜まりの発生を防止することができる。
【0018】
請求項2に記載の内燃機関排気冷却装置は、請求項1に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、前記排気冷却用アダプタの上流側での総受熱量と下流側での総受熱量とを同一とする設定であることを特徴とする。
【0019】
ここでは上流側伝熱性設定部の伝熱性と下流側伝熱性設定部の伝熱性との関係は、排気冷却用アダプタの排気上流側と排気下流側とで総受熱量が同一となるように設定されている。
【0020】
したがって排気冷却用アダプタの排気冷却機能を十分に発揮させることができると共に、排気流からの受熱量による排気冷却用アダプタの上流側と下流側との温度差を無くすことができ、排気冷却用アダプタの熱歪みや熱溜まりの発生を確実に防止できる。
【0021】
請求項3に記載の内燃機関排気冷却装置は、請求項1又は2に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部の伝熱性と前記下流側伝熱性設定部の伝熱性との差異は、前記上流側伝熱性設定部を介する前記排気流入側部材からの受熱量と前記下流側伝熱性設定部を介する前記排気流出側部材からの受熱量との受熱量差が、前記排気冷却用アダプタの排気通路の上流側における排気からの受熱量と下流側における排気からの受熱量との受熱量差を相殺する関係に設定されていることを特徴とする。
【0022】
このような受熱量差の相殺関係となるように、上流側伝熱性設定部の伝熱性と下流側伝熱性設定部の伝熱性との関係を設定している。このことにより排気冷却用アダプタの排気冷却機能を十分に発揮させることができると共に、排気冷却用アダプタの上流側と下流側との温度差を抑制して、排気冷却用アダプタの熱歪みや熱溜まりの発生を防止できる。
【0023】
請求項4に記載の内燃機関排気冷却装置は、請求項3に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記排気流入側部材は前記排気通路として排気ポートを備える内燃機関のシリンダヘッドであり、前記排気流出側部材はエキゾーストマニホールドであり、前記シリンダヘッドの排気ポートから前記排気冷却用アダプタの排気通路に排気が導入され、前記排気冷却用アダプタの排気通路から前記エキゾーストマニホールドの排気通路に排気が排出され、前記下流側伝熱性設定部は前記上流側伝熱性設定部よりも伝熱性が低いことを特徴とする。
【0024】
このようにシリンダヘッドとエキゾーストマニホールドとの間に排気冷却用アダプタを介在させた構成では、エキゾーストマニホールドは、冷却水により十分に冷却されているシリンダヘッド側よりも高温となる。このことから、排気冷却用アダプタとエキゾーストマニホールドとの間に設けられている下流側伝熱性設定部は、シリンダヘッドと排気冷却用アダプタとの間に設けられている上流側伝熱性設定部よりも伝熱性を低下させている。このことで、シリンダヘッドから排気冷却用アダプタへの受熱量よりも、エキゾーストマニホールドから排気冷却用アダプタへの受熱量を少なくすることができる。
【0025】
このようにして排気上流側と排気下流側とで総受熱量の差が抑制できる。したがって、排気冷却用アダプタの排気冷却機能を十分に発揮させることができると共に、排気冷却用アダプタの上流側と下流側との温度差を抑制して、排気冷却用アダプタの熱歪みや熱溜まりの発生を防止できる。
【0026】
請求項5に記載の内燃機関排気冷却装置は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部と前記下流側伝熱性設定部とは、応力集中部位を避けて配置されていることを特徴とする。
【0027】
上流側伝熱性設定部及び下流側伝熱性設定部は、応力集中により大きな歪みが生じると伝熱性に影響が生じるおそれがある。このため、応力集中部位に上流側伝熱性設定部及び下流側伝熱性設定部を設けると、予め設定されている伝熱性が変化して予定する総受熱量を達成できなくなるおそれがある。
【0028】
このため応力集中部位を避けて上流側伝熱性設定部及び下流側伝熱性設定部を配置することで、設定通りに適切に排気冷却用アダプタの上流側と下流側との温度差を抑制でき、排気冷却用アダプタの熱歪みや熱溜まりの発生を十分に防止できる。
【0029】
請求項6に記載の内燃機関排気冷却装置は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、前記上流側伝熱性設定部と前記下流側伝熱性設定部とにそれぞれ配置されている断熱材の断熱性の差異により設定されていることを特徴とする。
【0030】
伝熱性の差異は、上流側伝熱性設定部と下流側伝熱性設定部とにそれぞれ配置されている断熱材の断熱性の差異により設定でき、上述したごとくの作用・効果を生じさせることができる。
【0031】
請求項7に記載の内燃機関排気冷却装置は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、前記上流側伝熱性設定部と前記下流側伝熱性設定部とにそれぞれ配置されているガスケットの厚さの差異により設定されていることを特徴とする。
【0032】
伝熱性の差異は、上流側伝熱性設定部と下流側伝熱性設定部とにそれぞれ配置されているガスケットの厚さの差異により設定でき、上述したごとくの作用・効果を生じさせることができる。
【0033】
請求項8に記載の内燃機関排気冷却装置は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、前記上流側伝熱性設定部と前記下流側伝熱性設定部とにそれぞれ形成されている空気層の領域面積又は空気層の厚さの差異により設定されていることを特徴とする。
【0034】
伝熱性の差異は、上流側伝熱性設定部と下流側伝熱性設定部とにそれぞれ形成されている空気層の領域面積又は空気層の厚さの差異により設定でき、上述したごとくの作用・効果を生じさせることができる。
【0035】
請求項9に記載の内燃機関排気冷却装置は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、前記上流側伝熱性設定部と前記下流側伝熱性設定部とにおける伝熱面積の差異により設定されていることを特徴とする。
【0036】
伝熱性の差異は、上流側伝熱性設定部と下流側伝熱性設定部とにおけるそれぞれの伝熱面積の差異により設定でき、上述したごとくの作用・効果を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施の形態1の内燃機関排気冷却装置の斜視図。
【図2】同じく内燃機関排気冷却装置の背面側からの斜視図。
【図3】同じく内燃機関排気冷却装置の正面図。
【図4】同じく内燃機関排気冷却装置の背面図。
【図5】(A)〜(D)同じく内燃機関排気冷却装置の構成説明図。
【図6】同じく図5の(A)X−X線で破断した内燃機関排気冷却装置の破断斜視図。
【図7】同じく図5の(A)X−X線で破断した内燃機関排気冷却装置の断面図。
【図8】同じく内燃機関排気冷却装置の分解斜視図。
【図9】同じく排気冷却用アダプタの斜視図。
【図10】同じく排気冷却用アダプタの背面側からの斜視図。
【図11】実施の形態2の内燃機関排気冷却装置の断面図。
【図12】同じく内燃機関排気冷却装置の分解斜視図。
【図13】実施の形態3の内燃機関排気冷却装置の分解斜視図。
【図14】同じく図13とは逆側から見た内燃機関排気冷却装置の分解斜視図。
【図15】同じく内燃機関排気冷却装置の断面図。
【図16】同じく内燃機関排気冷却装置の他の例を示す分解斜視図。
【図17】実施の形態4の内燃機関排気冷却装置の分解斜視図。
【図18】同じく内燃機関排気冷却装置の断面図。
【図19】排気冷却用アダプタの長さを変更した場合の上流側伝熱性設定部と下流側伝熱性設定部との設定関係を示すグラフ。
【図20】排気冷却用アダプタの排気通路における出口と入口との面積比を変更した場合の上流側伝熱性設定部と下流側伝熱性設定部との設定関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[実施の形態1]
〈実施の形態1の構成〉図1〜7は上述した発明が適用された内燃機関排気冷却装置2の概略構成を表す。この内燃機関排気冷却装置2は、図8に分解して示すごとく排気冷却用アダプタ4、ガスケット6,8、及び断熱材10,12を備えた構成である。
【0039】
内燃機関排気冷却装置2が適用される内燃機関は4気筒であり、そのシリンダヘッドHdには4つの排気ポートPeが開口している。この排気ポートPeに対応して、図9,10に示すごとく排気冷却用アダプタ4の内部には、4つの排気通路14が直線状に配列して形成されている。排気通路14における排気導入口14aはシリンダヘッド側接続面16に開口している。排気通路14における排気排出口14bはエキゾーストマニホールド側接続面18に開口している。
【0040】
排気冷却用アダプタ4の外周には、シリンダヘッドHdに対するボルト締結部20が形成されている。このボルト締結部20には、ボルトB1を挿通してシリンダヘッドHdに締結するためのボルト挿通孔20aが形成されている。更に排気冷却用アダプタ4の外周にはエキゾーストマニホールドExを締結するためのボルト締結部22が形成されている。このボルト締結部22には螺合孔22aが形成されている。この螺合孔22aに対して、エキゾーストマニホールドExのフランジに形成された挿通孔を介して、ボルトB2が螺合される。このことによりエキゾーストマニホールドExが排気冷却用アダプタ4に締結される。
【0041】
図6,7に示すごとく排気冷却用アダプタ4内には冷却水通路24が形成されている。冷却水通路24へは冷却水導入部26から冷却水が導入される。冷却水通路24へ入った冷却水は各排気通路14の周りを流れた後に、冷却水排出部28から排出される。
【0042】
このような排気冷却用アダプタ4において、そのシリンダヘッド側接続面16には外周縁部16aを除いて断熱材収納部16bが形成されている。エキゾーストマニホールド側接続面18にも外周縁部18aを除いて断熱材収納部18bが形成されている。これら断熱材収納部16b,18bは、外周縁部16a,18aの面に対し凹状に形成されている。この断熱材収納部16b,18bの凹状空間形状は、断熱材10,12の形状に対応している。
【0043】
内燃機関への取り付けに際しては、一方の断熱材10をシリンダヘッド側接続面16に形成された断熱材収納部16bに収納し、この上からガスケット6を配置する。そして、ボルトB1により、シリンダヘッドHdと排気冷却用アダプタ4との間に断熱材10及びガスケット6を挟んだ状態で、排気冷却用アダプタ4をシリンダヘッドHdに締結する。更に、他方の断熱材12をエキゾーストマニホールド側接続面18に形成された断熱材収納部18bに収納し、この上からガスケット8を配置する。そして、ボルトB2により、エキゾーストマニホールドExと排気冷却用アダプタ4との間に断熱材12及びガスケット8を挟んだ状態で、排気冷却用アダプタ4に対してエキゾーストマニホールドExを締結する。このことにより内燃機関に内燃機関排気冷却装置2が配置される。
【0044】
ここでシリンダヘッドHd側に配置されたヘッド側断熱材10(上流側伝熱性設定部に相当)と、エキゾーストマニホールドEx側に配置されたエキゾースト側断熱材12(下流側伝熱性設定部に相当)とは、形状は同一であるが、設定された伝熱性に差異が設けられている。この伝熱性の違いは、排気通路14を流れる排気から、排気冷却用アダプタ4が上流と下流とで受ける受熱量の差と関連して設定されている。
【0045】
断熱材10,12としては、例えばセラミック、シリコーン系樹脂などの材料が用いられる。
〈実施の形態1の作用〉次に本実施の形態の作用について説明する。内燃機関運転時において、排気冷却用アダプタ4全体の受熱量Qwは、図7に示したごとくシリンダヘッドHdからの受熱量Qfh、エキゾーストマニホールドExからの受熱量Qfe、排気通路14の上流側で排気からの受熱量Qgh、及び排気通路14の下流側で排気からの受熱量Qgeの合計である。すなわち式1に示すごとくの関係にある。
【0046】
[式1] Qw=Qfh+Qgh+Qfe+Qge
ここで排気冷却用アダプタ4は排気通路14により排気を冷却しているため、上流側での排気温は下流側よりも高温である。このため上流側での排気からの受熱量Qghは下流側での排気からの受熱量Qgeよりも大きい。
【0047】
しかし、本実施の形態の内燃機関排気冷却装置2では、排気冷却用アダプタ4における上流側の総受熱量(Qfh+Qgh)と、下流側の総受熱量(Qfe+Qge)との差が、排気のみの受熱量の差(Qgh−Qge)よりも、絶対値として小さくされている。
【0048】
内燃機関排気冷却装置2でのこのような機能は、ヘッド側断熱材10とエキゾースト側断熱材12との伝熱性の差により、シリンダヘッドHdからの受熱量QfhとエキゾーストマニホールドExからの受熱量Qfeとの大小関係を設定することにより実現している。
【0049】
特に本実施の形態では、式2の関係が実現するように、2つの受熱量Qfh,Qfeの大小関係が設定されている。
[式2] Qgh−Qge=Qfe−Qfh
上記式2は上下流での排気からの受熱量Qgh,Qgeの差(Qgh−Qge)とシリンダヘッドHdとエキゾーストマニホールドExとからの受熱量Qfe,Qfhの差(Qfe−Qfh)とが同一に設定されていることを表している。
【0050】
すなわちエキゾーストマニホールドExからの受熱量QfeとシリンダヘッドHdからの受熱量Qfhとの受熱量差(Qfe−Qfh)が、上流側での排気からの受熱量Qghと下流側での排気からの受熱量Qgeとの受熱量差(Qgh−Qge)を完全に相殺する関係を表している。
【0051】
この式2は、次式3の関係に変換できる。
[式3] Qfh+Qgh=Qfe+Qge
すなわち排気冷却用アダプタ4における上流側の総受熱量(Qfh+Qgh)と、下流側の総受熱量(Qfe+Qge)とが同一となるように、断熱材10,12間の伝熱性関係が設定されていることを表している。
【0052】
例えば、断熱材10,12の材料として無機物の発泡体が適用される場合には、その気泡の大きさや無機物の種類を選択することで伝熱性に差を設けることができる。そして平均的なあるいは代表的な内燃機関運転状態における、上下流での排気からの受熱量(あるいは排気温)、排気流入側部材であるシリンダヘッドHdの温度、排気流出側部材であるエキゾーストマニホールドExの温度、及び冷却水温を勘案して前記式2,3に適合する伝熱性を有する断熱材10,12の材料を決定する。
【0053】
ここで内燃機関のシリンダヘッドHdは水冷により冷却されており、エキゾーストマニホールドExは冷却されていない構成であるとすると、ヘッド側断熱材10に比較して、エキゾースト側断熱材12の伝熱性を十分に低く設定する。すなわちエキゾースト側断熱材12の断熱性を十分に高く設定することで、前記式2,3の関係を成立させることができる。
【0054】
尚、エキゾースト側断熱材12の断熱性の効果がヘッド側断熱材10より大きいのに、エキゾーストマニホールドExからの受熱量Qfeの方がシリンダヘッドHdからの受熱量Qfhよりも大きいのは、シリンダヘッドHdに比較してエキゾーストマニホールドExの方が高温だからである。
【0055】
ただしエキゾーストマニホールドExがシリンダヘッドHdと同様に冷却されていたりして、シリンダヘッドHdとエキゾーストマニホールドExとの間の温度関係が上述とは異なる場合がある。このような場合には、前記式2,3を成立させるために、ヘッド側断熱材10とエキゾースト側断熱材12との間の断熱性(伝熱性)の大小関係は、上述した関係とは逆になる場合もある。
〈実施の形態1の効果〉(1)各断熱材10,12の伝熱性の設定により上述した式3が成立している。すなわち排気冷却用アダプタ4の上流側の総受熱量(Qfh+Qgh)と、下流側の総受熱量(Qfe+Qge)との差が無い状態とされている。
【0056】
したがって排気冷却用アダプタ4の排気通路14による排気冷却機能が十分に発揮できると共に、排気冷却用アダプタ4の上流側と下流側とで温度が同一化することから、排気冷却用アダプタ4の熱歪みを確実に防止できる。
【0057】
更に排気冷却用アダプタ4の上流側と下流側とで受熱量の偏りが無くなるため、熱溜まりを防止することができる。このため冷却水通路24における冷却水の部分沸騰を防止できる。
【0058】
(2)断熱材収納部16b,18bは、各接続面16,18において凹状に形成されている。この凹状空間内部に断熱材10,12は収納されている。そしてボルトB1,B2による締結は、接続面16,18の凹状空間の周縁にて行われている。
【0059】
したがって内燃機関排気冷却装置2を適用するために、排気冷却用アダプタ4を内燃機関のシリンダヘッドHdにボルト締結し、更に排気冷却用アダプタ4に対してエキゾーストマニホールドExをボルト締結しても、断熱材10,12に対する締結時の応力集中は防止できる。
【0060】
このためボルト締結に伴う歪みが断熱材10,12に生じるのを防止でき、断熱材10,12において伝熱性の変化、特に断熱性の悪化を防止できる。したがってボルト締結後も前記式2,3の関係を維持することができる。
【0061】
このように応力集中部位を避けて断熱材10,12を配置できることで、排気冷却用アダプタ4による排気冷却機能を十分に発揮しつつ、適切に排気冷却用アダプタ4の上流側と下流側との温度差を抑制でき、排気冷却用アダプタ4の熱歪みや熱溜まりの発生を確実に防止できる。
【0062】
[実施の形態2]
〈実施の形態2の構成〉図11,12に示すごとく、本実施の形態の内燃機関排気冷却装置102は断熱材を用いていない。このため排気冷却用アダプタ104のシリンダヘッド側接続面116及びエキゾーストマニホールド側接続面118には、前記実施の形態1におけるような凹状の断熱材収納部は形成されていない。シリンダヘッド側接続面116及びエキゾーストマニホールド側接続面118はそれぞれ全体が平面である。
【0063】
この平面状のシリンダヘッド側接続面116には、ガスケット106を介して、内燃機関のシリンダヘッドHdがボルトB1により締結されている。そして平面状のエキゾーストマニホールド側接続面118には、ガスケット108を介して、エキゾーストマニホールドExがボルトB2により締結されている。排気通路114、冷却水通路124、その他の構成は前記実施の形態1と同じである。
【0064】
ここで2つのガスケット106,108は材質的には同じであるが、シリンダヘッドHd側のガスケット106よりもエキゾーストマニホールドEx側のガスケット108の方が厚い。ここではシリンダヘッドHd側のガスケット106が上流側伝熱性設定部に相当し、エキゾーストマニホールドEx側のガスケット108が下流側伝熱性設定部に相当する。
【0065】
この厚さの差により、排気冷却用アダプタ104におけるシリンダヘッドHd側からの受熱量QfhはエキゾーストマニホールドEx側からの受熱量Qfeより小さくされていると共に、受熱量Qfe,Qfhの差は、上流側での排気からの受熱量Qghと下流側での排気からの受熱量Qgeとの受熱量差を完全に相殺する。
〈実施の形態2の作用〉本実施の形態では、各ガスケット106,108の厚さの違いにより、それぞれの伝熱性が設定されている。このことにより前記実施の形態1に説明したごとく、前記式2,3を成立させている。
【0066】
尚、エキゾーストマニホールドEx側のガスケット108の方がシリンダヘッドHd側のガスケット106より厚いのに、エキゾーストマニホールドExからの受熱量Qfeの方がシリンダヘッドHdからの受熱量Qfhよりも大きいのは、シリンダヘッドHdに比較してエキゾーストマニホールドExの方が高温だからである。
【0067】
ただしエキゾーストマニホールドExがシリンダヘッドHdと同様に冷却されていたりして、シリンダヘッドHdとエキゾーストマニホールドExとの間の温度関係が上述とは異なる場合がある。このような場合には、前記式2,3を成立させるために、2つのガスケット106,108の間の厚さの大小関係は、上述した関係とは逆になる場合もある。
〈実施の形態2の効果〉(1)ガスケット106,108のみによっても前記式2,3の関係が設定できる。したがって排気冷却用アダプタ104の排気通路114による排気冷却機能が十分に発揮できると共に、より少ない部品点数で、排気冷却用アダプタ104の上流側と下流側とで温度を同一化でき、排気冷却用アダプタ104の熱歪みや熱溜まりの発生を確実に防止できる。
【0068】
(2)断熱材が用いられていないので、各接続面116,118には断熱材収納部が不要となる。このため排気冷却用アダプタ104の製造が容易となる。
[実施の形態3]
〈実施の形態3の構成〉図13〜15に示すごとく、本実施の形態の内燃機関排気冷却装置202は断熱材を用いていない。本実施の形態では空気層の厚さあるいは空気層の有無により、上流側伝熱性設定部と下流側伝熱性設定部との伝熱性の違いを設定している。
【0069】
ここで排気冷却用アダプタ204のシリンダヘッド側接続面216においてガスケット206との上流側間隙設定部210が上流側伝熱性設定部に相当する。エキゾーストマニホールド側接続面218においてガスケット208との下流側間隙設定部212が下流側伝熱性設定部に相当する。
【0070】
ここでは上流側間隙設定部210は実際には間隙設定量は0mmであり空気層は形成されていない。下流側間隙設定部212は或る程度の幅となる間隙設定量が存在し空気層が形成されている。
【0071】
ガスケット206,208、排気通路214、冷却水通路224、その他の構成は前記実施の形態1と同じである。
上述のごとく下流側間隙設定部212に空気層が存在し、上流側間隙設定部210には空気層が存在しない。このことにより、排気冷却用アダプタ204におけるシリンダヘッドHd側からの受熱量QfhはエキゾーストマニホールドEx側からの受熱量Qfeより小さくされていると共に、受熱量Qfe,Qfhの差は、上流側での排気からの受熱量Qghと下流側での排気からの受熱量Qgeとの受熱量差を完全に相殺する。
【0072】
尚、シリンダヘッドHd側での断熱性が不足(伝熱性が高すぎる)場合には、図16に示すごとくの排気冷却用アダプタ234としても良い。この排気冷却用アダプタ234では、シリンダヘッド側接続面246に、エキゾーストマニホールド側接続面218(図13)より少ない領域面積の空気層246aを形成している。すなわち伝熱面積を少なく調節していることになる。
【0073】
このように空気層246aの占める領域面積を調節(伝熱面積の調節にも相当する)したり、あるいは空気層246aの厚さを調節したりすることにより、シリンダヘッドHd側から排気冷却用アダプタ234への受熱量Qfhを調節できる。このことはエキゾーストマニホールドEx側の空気層(下流側間隙設定部212)についても同じである。
〈実施の形態3の作用〉本実施の形態では、各間隙設定部210,212の空気層の厚さの違いにより、それぞれの伝熱性が設定されている。このことにより前記実施の形態1にて説明したごとく、前記式2,3を成立させている。
【0074】
尚、エキゾーストマニホールドEx側の間隙設定部212の方がシリンダヘッドHd側の間隙設定部210より厚い空気層が存在するのに、エキゾーストマニホールドExからの受熱量Qfeの方がシリンダヘッドHdからの受熱量Qfhよりも大きいのは、シリンダヘッドHdに比較してエキゾーストマニホールドExの方が高温だからである。
【0075】
ただしエキゾーストマニホールドExがシリンダヘッドHdと同様に冷却されていたりして、シリンダヘッドHdとエキゾーストマニホールドExとの間の温度関係が上述とは異なる場合がある。このような場合には、前記式2,3を成立させるために、2つの間隙設定部210,212の空気層の厚さの大小関係は、上述した関係とは逆になる場合もある。
〈実施の形態3の効果〉(1)断熱材によらずガスケット206,208と排気冷却用アダプタ204,234との間の間隙設定部210,212によっても前記式2,3の関係が設定できる。
【0076】
したがって排気冷却用アダプタ204,234の排気通路214による排気冷却機能が十分に発揮できると共に、より少ない部品点数で、排気冷却用アダプタ204,234の上流側と下流側とで温度を同一化でき、排気冷却用アダプタ204,234の熱歪みや熱溜まりの発生を確実に防止できる。
(2)断熱材が用いられず、空気層のみであることから、内燃機関の軽量化に貢献できる。
【0077】
[実施の形態4]
〈実施の形態4の構成〉図17,18に示すごとく、本実施の形態の内燃機関排気冷却装置302は断熱材を用いていない。この排気冷却用アダプタ304は、シリンダヘッド側接続面316の面積及び形状は、前記実施の形態3のシリンダヘッド側接続面216(図14)と同じであり、シリンダヘッドHdとの間に配置されるガスケット306の形状及び厚さも前記実施の形態3のガスケット206(図14)と同じである。
【0078】
エキゾーストマニホールド側接続面318は、前記実施の形態3のエキゾーストマニホールド側接続面218(図13)の外形よりも縮小されている。ただし前記実施の形態3とは異なり、エキゾーストマニホールド側接続面318には凹状の間隙設定部212(図13)は存在せず平面状である。
【0079】
したがってこの排気冷却用アダプタ304は、シリンダヘッド側接続面316の面積よりも、エキゾーストマニホールド側接続面318の面積が十分に縮小されている。これに対応して、エキゾーストマニホールドExとの間に配置されるガスケット308についても小面積の形状とされている。
【0080】
排気通路314、冷却水通路324、その他の構成は前記実施の形態3と同じである。
本実施の形態では、上述したごとく排気冷却用アダプタ304のエキゾーストマニホールドEx側では、シリンダヘッドHd側よりも伝熱面積が十分に小さくされている。
【0081】
このことにより、排気冷却用アダプタ304におけるシリンダヘッドHd側からの受熱量QfhはエキゾーストマニホールドEx側からの受熱量Qfeより小さくされていると共に、受熱量Qfe,Qfhの差は、上流側での排気からの受熱量Qghと下流側での排気からの受熱量Qgeとの受熱量差を完全に相殺する。
【0082】
本実施の形態では、シリンダヘッド側接続面316が上流側伝熱性設定部に相当し、エキゾーストマニホールド側接続面318が下流側伝熱性設定部に相当する。
〈実施の形態4の作用〉上述したごとく、伝熱面積である接続面316,318の面積の違いにより、それぞれの伝熱性が設定されている。このことにより前記実施の形態1にて説明したごとく、前記式2,3を成立させている。
【0083】
尚、エキゾーストマニホールド側接続面318の方がシリンダヘッド側接続面316より小面積であるのに、エキゾーストマニホールドExからの受熱量Qfeの方がシリンダヘッドHdからの受熱量Qfhよりも大きいのは、シリンダヘッドHdに比較してエキゾーストマニホールドExの方が高温だからである。
【0084】
ただしエキゾーストマニホールドExがシリンダヘッドHdと同様に冷却されていたりして、シリンダヘッドHdとエキゾーストマニホールドExとの間の温度関係が上述とは異なる場合がある。このような場合には、前記式2,3を成立させるために、2つの接続面316,318の間の面積の大小関係は、上述した関係とは逆になる場合もある。
〈実施の形態4の効果〉(1)断熱材によらず接続面316,318の面積の違いによっても前記式2,3の関係が設定できる。
【0085】
したがって排気冷却用アダプタ304の排気通路314による排気冷却機能が十分に発揮できると共に、より少ない部品点数で、排気冷却用アダプタ304の上流側と下流側とで温度を同一化でき、排気冷却用アダプタ304の熱歪みや熱溜まりの発生を確実に防止できる。
(2)断熱材が用いられず、エキゾーストマニホールド側接続面318及びエキゾーストマニホールドEx側のガスケット308が小面積であることから、内燃機関の軽量化に貢献できる。
【0086】
[その他の実施の形態]
・前記各実施の形態においては、シリンダヘッドHdからの受熱量QfhとエキゾーストマニホールドExからの受熱量Qfeとの受熱量差(Qfe−Qfh)が、上流側での排気からの受熱量Qghと下流側での排気からの受熱量Qgeとの受熱量差(Qgh−Qge)を完全に相殺する関係とした。すなわち前記式2,3が成立する受熱量Qfh,Qfeに設定し、このことにより排気冷却用アダプタの上流側での総受熱量と下流側での総受熱量との差が無いようにしていた。
【0087】
このように完全に前記式2,3の関係が成立しなくても、上流側の接続部分での伝熱性(あるいは断熱性)と下流側の接続部分での伝熱性(あるいは断熱性)とに差を設けることで、排気冷却用アダプタの上流側での総受熱量と下流側での総受熱量との差を小さくするようにしても良い。
【0088】
・前記各実施の形態において、排気流方向での排気冷却用アダプタの長さを変更した場合、例えば短くした場合には、上流側での排気からの受熱量Qghと下流側での排気からの受熱量Qgeとは近づき、差が小さくなる。長くした場合には、下流側の受熱量Qgeが上流側の受熱量Qghよりも小さくなる方向に離れ、差が大きくなる。したがって排気冷却用アダプタの長さに対しては、シリンダヘッドHdからの受熱量QfhとエキゾーストマニホールドExからの受熱量Qfeとの比が、図19に示すごとくとなるように、上流側伝熱性設定部と下流側伝熱性設定部との伝熱性設定状態を変更する。このことにより排気冷却用アダプタの上流側と下流側とで温度を同一化でき、排気冷却用アダプタの熱歪みや熱溜まりの発生を確実に防止できる。
【0089】
・前記各実施の形態において、排気通路の排気導入口と排気排出口との面積比を変更した場合、例えば排気導入口面積と排気排出口面積とを近づけた場合には、上流側での排気からの受熱量Qghと下流側での排気からの受熱量Qgeとは近づき、差が小さくなる。排気導入口面積よりも排気排出口面積を大きくした場合には、下流側の受熱量Qgeが上流側の受熱量Qghよりも小さくなる方向に離れ、差が大きくなる。したがって排気通路の排気導入口と排気排出口との面積比に対しては、シリンダヘッドHdからの受熱量QfhとエキゾーストマニホールドExからの受熱量Qfeとの比が、図20に示すごとくとなるように、上流側伝熱性設定部と下流側伝熱性設定部との伝熱性設定状態を変更する。このことにより排気冷却用アダプタの上流側と下流側とで温度を同一化でき、排気冷却用アダプタの熱歪みや熱溜まりの発生を確実に防止できる。
【符号の説明】
【0090】
2…内燃機関排気冷却装置、4…排気冷却用アダプタ、6,8…ガスケット、10…ヘッド側断熱材、12…エキゾースト側断熱材、14…排気通路、14a…排気導入口、14b…排気排出口、16…シリンダヘッド側接続面、16a…外周縁部、16b…断熱材収納部、18…エキゾーストマニホールド側接続面、18a…外周縁部、18b…断熱材収納部、20…ボルト締結部、20a…ボルト挿通孔、22…ボルト締結部、22a…螺合孔、24…冷却水通路、26…冷却水導入部、28…冷却水排出部、102…内燃機関排気冷却装置、104…排気冷却用アダプタ、106…ガスケット、108…ガスケット、114…排気通路、116…シリンダヘッド側接続面、118…エキゾーストマニホールド側接続面、124…冷却水通路、202…内燃機関排気冷却装置、204…排気冷却用アダプタ、206,208…ガスケット、210…上流側間隙設定部、212…下流側間隙設定部、214…排気通路、216…シリンダヘッド側接続面、218…エキゾーストマニホールド側接続面、224…冷却水通路、234…排気冷却用アダプタ、246…シリンダヘッド側接続面、246a…空気層、302…内燃機関排気冷却装置、304…排気冷却用アダプタ、306,308…ガスケット、314…排気通路、316…シリンダヘッド側接続面、318…エキゾーストマニホールド側接続面、324…冷却水通路、B1,B2…ボルト、Ex…エキゾーストマニホールド、Hd…シリンダヘッド、Pe…排気ポート、Qfh,Qfe,Qgh,Qge…受熱量、Qw…全体の受熱量。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気経路に排気冷却用アダプタを配置し、この排気冷却用アダプタの上流側には排気流入側部材が接続され下流側に排気流出側部材が接続されて、前記排気流入側部材の排気通路から前記排気冷却用アダプタの排気通路に排気が導入され、前記排気冷却用アダプタの排気通路から前記排気流出側部材の排気通路に排気が排出されることにより内燃機関の排気を冷却する内燃機関排気冷却装置であって、
前記排気冷却用アダプタと前記排気流入側部材との間の接続部分に設けられて、この接続部分での伝熱性を設定している上流側伝熱性設定部と、
前記排気冷却用アダプタと前記排気流出側部材との間の接続部分に設けられて、この接続部分での伝熱性を、前記上流側伝熱性設定部とは異なる伝熱性に設定している下流側伝熱性設定部と、
を備え、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、この差異が無い場合に比較して前記排気冷却用アダプタの上流側での総受熱量と下流側での総受熱量との差を小さくする設定であることを特徴とする内燃機関排気冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、前記排気冷却用アダプタの上流側での総受熱量と下流側での総受熱量とを同一とする設定であることを特徴とする内燃機関排気冷却装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部の伝熱性と前記下流側伝熱性設定部の伝熱性との差異は、前記上流側伝熱性設定部を介する前記排気流入側部材からの受熱量と前記下流側伝熱性設定部を介する前記排気流出側部材からの受熱量との受熱量差が、前記排気冷却用アダプタの排気通路の上流側における排気からの受熱量と下流側における排気からの受熱量との受熱量差を相殺する関係に設定されていることを特徴とする内燃機関排気冷却装置。
【請求項4】
請求項3に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記排気流入側部材は前記排気通路として排気ポートを備える内燃機関のシリンダヘッドであり、前記排気流出側部材はエキゾーストマニホールドであり、前記シリンダヘッドの排気ポートから前記排気冷却用アダプタの排気通路に排気が導入され、前記排気冷却用アダプタの排気通路から前記エキゾーストマニホールドの排気通路に排気が排出され、前記下流側伝熱性設定部は前記上流側伝熱性設定部よりも伝熱性が低いことを特徴とする内燃機関排気冷却装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部と前記下流側伝熱性設定部とは、応力集中部位を避けて配置されていることを特徴とする内燃機関排気冷却装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、前記上流側伝熱性設定部と前記下流側伝熱性設定部とにそれぞれ配置されている断熱材の断熱性の差異により設定されていることを特徴とする内燃機関排気冷却装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、前記上流側伝熱性設定部と前記下流側伝熱性設定部とにそれぞれ配置されているガスケットの厚さの差異により設定されていることを特徴とする内燃機関排気冷却装置。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、前記上流側伝熱性設定部と前記下流側伝熱性設定部とにそれぞれ形成されている空気層の領域面積又は空気層の厚さの差異により設定されていることを特徴とする内燃機関排気冷却装置。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、前記上流側伝熱性設定部と前記下流側伝熱性設定部とにおける伝熱面積の差異により設定されていることを特徴とする内燃機関排気冷却装置。
【請求項1】
内燃機関の排気経路に排気冷却用アダプタを配置し、この排気冷却用アダプタの上流側には排気流入側部材が接続され下流側に排気流出側部材が接続されて、前記排気流入側部材の排気通路から前記排気冷却用アダプタの排気通路に排気が導入され、前記排気冷却用アダプタの排気通路から前記排気流出側部材の排気通路に排気が排出されることにより内燃機関の排気を冷却する内燃機関排気冷却装置であって、
前記排気冷却用アダプタと前記排気流入側部材との間の接続部分に設けられて、この接続部分での伝熱性を設定している上流側伝熱性設定部と、
前記排気冷却用アダプタと前記排気流出側部材との間の接続部分に設けられて、この接続部分での伝熱性を、前記上流側伝熱性設定部とは異なる伝熱性に設定している下流側伝熱性設定部と、
を備え、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、この差異が無い場合に比較して前記排気冷却用アダプタの上流側での総受熱量と下流側での総受熱量との差を小さくする設定であることを特徴とする内燃機関排気冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、前記排気冷却用アダプタの上流側での総受熱量と下流側での総受熱量とを同一とする設定であることを特徴とする内燃機関排気冷却装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部の伝熱性と前記下流側伝熱性設定部の伝熱性との差異は、前記上流側伝熱性設定部を介する前記排気流入側部材からの受熱量と前記下流側伝熱性設定部を介する前記排気流出側部材からの受熱量との受熱量差が、前記排気冷却用アダプタの排気通路の上流側における排気からの受熱量と下流側における排気からの受熱量との受熱量差を相殺する関係に設定されていることを特徴とする内燃機関排気冷却装置。
【請求項4】
請求項3に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記排気流入側部材は前記排気通路として排気ポートを備える内燃機関のシリンダヘッドであり、前記排気流出側部材はエキゾーストマニホールドであり、前記シリンダヘッドの排気ポートから前記排気冷却用アダプタの排気通路に排気が導入され、前記排気冷却用アダプタの排気通路から前記エキゾーストマニホールドの排気通路に排気が排出され、前記下流側伝熱性設定部は前記上流側伝熱性設定部よりも伝熱性が低いことを特徴とする内燃機関排気冷却装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部と前記下流側伝熱性設定部とは、応力集中部位を避けて配置されていることを特徴とする内燃機関排気冷却装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、前記上流側伝熱性設定部と前記下流側伝熱性設定部とにそれぞれ配置されている断熱材の断熱性の差異により設定されていることを特徴とする内燃機関排気冷却装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、前記上流側伝熱性設定部と前記下流側伝熱性設定部とにそれぞれ配置されているガスケットの厚さの差異により設定されていることを特徴とする内燃機関排気冷却装置。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、前記上流側伝熱性設定部と前記下流側伝熱性設定部とにそれぞれ形成されている空気層の領域面積又は空気層の厚さの差異により設定されていることを特徴とする内燃機関排気冷却装置。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関排気冷却装置において、前記上流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性と前記下流側伝熱性設定部に設定されている伝熱性との差異は、前記上流側伝熱性設定部と前記下流側伝熱性設定部とにおける伝熱面積の差異により設定されていることを特徴とする内燃機関排気冷却装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−57272(P2013−57272A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195314(P2011−195314)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】
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