説明

内視鏡流体制御装置

【目的】 洗浄とか消毒作業を容易にできる内視鏡流体制御装置を提供すること。
【構成】 送水タンク12からの空気及び洗浄水をそれぞれ送気導入管路及び第1の送水管路31等を介して内視鏡内の送気及び送水管路に供給する制御を行う管路制御装置5を有し、第1の送水管路31を管路制御装置5から着脱自在のチューブ61を用いて形成した。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は内視鏡に送液制御管路を着脱自在に設けた内視鏡流体制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、医療分野及び工業分野において内視鏡が広く用いられるようになった。
この内視鏡には挿入部の先端に対物レンズが設けられており、体内等に挿入して使用されるため、対物レンズの表面が体液等の付着により観察が妨げられることがある。このため、送気及び送水手段を設け、体液等を除去できるようにしてある。又、処置具を挿入して生検等の処置を行うことができるようになっていたり、不要な体液等を吸引排除するための吸引管路等が設けてある。
【0003】
従来の流体制御装置は例えば特公昭63ー29538号に示されるように吸引管路は着脱交換可能にした技術が知られている。 しかし、送気、送水管路及びその制御部に関しては流体制御装置内部に固定されており、着脱交換はおろか洗浄手段すら設けられていなかった。
【0004】
【考案が解決しようとする問題点】
吸引管路内には体液内の低液、粘液、汚物等を吸引するため、非常に汚いことは言うまでもない。内視鏡内の吸引管路の特に挿入部側は処置具等の挿通路でもあり、十分な洗浄、消毒がされていないと感染の危険性がある。しかし、吸引管路は先端側から流体制御装置側へ流体が流れるため、内視鏡内の吸引管路さえ、十分に洗浄、消毒していれば、流体制御装置内の吸引管路内が汚染されていても、感染の危険性は非常に少ない。
【0005】
一方、送気、送水管路系は逆に水道水の介在菌、かび又は病院内に介在する病原菌が何らかの原因で装置内に入り、装置内が汚染された場合、汚染された管路を通った洗浄水が体腔内に入り込むことになる。すなわち、汚染源が上流側にある事となり、非常に危険である。特に、水が通る送水管路系は水中で菌が繁殖し易く、危険度は非常に高い。 このように、従来の流体制御装置では送気管路、送水管路系が汚染された場合、流体制御装置を分解し、上記管路系を交換又は消毒すること等が必要で、汚染が発生する毎に修理に出さなければならなかった。
【0006】
本考案は上述した点に鑑みてなされたもので、洗浄とか消毒作業を容易にできる内視鏡流体制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【問題点を解決する手段及び作用】 本考案では気体の供給を制御する送気制御手段と、該送気制御手段を介して内視鏡内の管路へ気体を導入する送気制御管路と、液体の供給を制御する送水制御手段と、該送水制御手段を介して内視鏡内に設けられた管路へ液体を導入する送液制御管路とを有する内視鏡流体制御装置において、少なくとも送液制御管路を着脱自在に設けたことにより、送液制御管路を取り外しての洗浄作業が容易になるとか、定期的に交換することなどにより常に衛生的な状態で用することが可能になる。
【0008】
【実施例】
以下、図面を参照して本考案の第1実施例を具体的に説明する。図1ないし図7は本考案の第1実施例に係り、図1は第1実施例の管路系の構成を示し、図2は管路制御装置の外観を示し、図3は第1実施例を備えた内視鏡装置を示し、図4はアダプタの構造を示し、図5は管路制御装置の内部構成を示し、図6は蓋を設けた管路制御装置を示し、図7は変形例の管路制御装置の外観を示す。
【0009】
図3に示すように第1実施例を備えた内視鏡装置1は撮像手段を内蔵した電子内視鏡2と、この電子内視鏡2に照明光を供給する照明光供給手段及び電子内視鏡2の撮像手段に対する信号処理を行うビデオプロセッサとを内蔵した光源装置3と、このビデオプロセッサから出力される標準的な映像信号が入力されることによって、撮像手段で撮像した被写体を表示するモニタ4と、送気、送水、吸引を制御する流体制御装置としての管路制御装置5とを有する。
【0010】
上記電子内視鏡2は体腔内等に挿入できるように細長の挿入部6と、その後端に形成された太幅の操作部7とを有し、この操作部7からユニバーサルコード8が延出され、このユニバーサルコード8の先端に設けたコネクタ9を例えば光源装置3に着脱自在で接続できるようになっている。このコネクタ9には電子内視鏡2内に設けられた各管路と管路制御装置5内に設けられた後述する管路とを連通する接続部11の一方の端部が着脱自在で接続され、この接続部11の他方の端部は制御装置5に着脱自在で接続される。
【0011】
上記管路制御装置5には洗浄液を貯蔵した送水タンク12を取り付けられる。
又、この管路制御装置5には吸引ビン13と吸引ポンプ14が接続される。尚、上記電子内視鏡2には処置具等を挿入する鉗子口15が設けてある。次に図1の管路系を参照して第1実施例を説明する。
【0012】
図1において、電子内視鏡2に照明光を供給するためのランプ19を収納した光源装置3に内蔵されている送気ポンプ20はこの光源装置3内の送気管路21を介して接続部11内の第1の送気導入管路22に連通し、さらに管路制御装置5内の第2の送気導入管路23に接続される。この第2の送気導入管路23は第1の電磁弁(V1)24を介した第1の送気管路25と送水タンク加圧管路26に分岐し、この送水タンク加圧管路26は送水タンク12と接続されている。
【0013】
上記第1の送気管路25は接続部11内の送気接続管路27を介して電子内視鏡2内の送気管路28に連通している。端部が送水タンク12の液面に漬けた第1の送水管路31は第2の電磁弁(V2)32を介して接続部11内の送水接続管路33に連通し、さらに電子内視鏡2内の送水管路34に連通している。
【0014】
上記送気管路28と送水管路34は挿入部6の先端側で合流し、送気送水管路35となり、ノズル36に連通している。尚、送気管路28の送水管路34との合流部より上流側には逆止弁37を設けてあり、送水時の送気管路28への洗浄水逆流を防止している。又、送水停止後、ノズル36から水が流れ落ちることを防止できる。つまり、水切れを向上できる。 一方、吸引管路系の構成は以下のようになっている。
【0015】
電子内視鏡2内に形成されている吸引管路38は途中で鉗子口15と接続されている。この吸引管路38は、コネクタ9を介して接続部11内の吸引接続管路39と連通し、さらにこの吸引接続管路39を介して第1の吸引管路41に連通している。
【0016】
この第1の吸引管路41は途中に第3の電磁弁(V3)42が介装されている。又、この第1の吸引管路41の下流側にはリーク管路43が接続され、第3の電磁弁42を介して大気に連通している。上記第1の吸引管路41は吸引ビン13を介して第2の吸引管路44と接続され、この第2の吸引管路44は吸引ポンプ14と接続されている。
【0017】
上記第1〜3の電磁弁24、32、42は電気的に管路制御装置5内の制御部45に接続され、この制御部45は管路制御装置5に設けたスイッチ(SW1)
46、電子内視鏡2の操作部7に設けられたスイッチ(SW2)47、(SW3)48、(SW4)49と接続されている。管路制御装置5の外側に装着される接続部11等の外観を図2に示す。
【0018】
コネクタ9は光源装置3に接続されると共に、接続部11が接続されている。
この接続部11は管路制御装置5にアダプタ50を介して接続されている。又、送水タンク12はアダプタ51を介して管路制御装置5に接続されている。上記アダプタ50、51は図4に示すような構成になっている。
【0019】
すなわち、アダプタ50には第1の送気導入管路22に接続し、第2の送気導入管路23とを連結させる口金52と、第1の送気管路25と送気接続管路27を連結させる口金53と、第1の送水管路31と送水接続管路33を連通させる口金54と、吸引接続管路39第1の吸引管路41を連通させる口金55とが設けられており、管路制御装置5と固定させるCリング56が設けられている。
【0020】
一方、管路制御装置5にはアダプタ50が嵌合される接続孔57が設けられている。この接続孔57内には第2の送気導入管路23の開口部58と第1の送気管路25の開口部59が設けられている。アダプタ51にはこの図では示していない送水タンクの接続口金が接続される接続口60が設けられ、第1の送水管路31を構成し、アダプタ51とアダプタ50の口金54を連通させるチューブ61を接続する口金62が設けられている。
【0021】
さらに、アダプタ51にはこのアダプタ51を管路制御装置5に固定するためのCリング63が設けられている。図4又は図2から分かるように第2及び第3の電磁弁32、42はピンチバルブで形成されている。第2の電磁弁32には第1の送水管路31を構成する上記チューブ61が着脱自在で接続される。
【0022】
一方、管路制御装置5にはアダプタ51を接続するための接続孔64が設けられている。この接続孔64内には送水タンク加圧管路26の開口部65が開口している。管路制御装置5内の管路系は図5に示す構成である。
【0023】
図5において、この管路制御装置5内にはほぼ透明なパイプ、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFEと略記)等から成る第2の送気導入管路23、送水タンク加圧管路26が設けられ、さらに第1の送気管路25を形成するチューブ25aと透明なパイプ25bが設けられており、接続孔57に開口している。
この管路制御装置5内には殺菌透66が設けられており、図示しない電源に接続されており、ほぼ透明なパイプで形成された第2の送気導入管路23、送水タンク加圧管路26内などを殺菌できるようにしてある。又、第2の送気導入管路23、送気タンク加圧管路26、第1の送気管路25は管路制御装置5内で滑らかに曲げられ、ブラシ68でブラッシングし易い配管となっっている。
【0024】
以上のような構成では管路制御装置5のフロントパネル部が非常に複雑となっているが、図6に示すようにフロントパネルに蓋67を設け、アダプタ50、51等を外部から見えなくするような構成にすることで外観をすっきり見せることができる。このような構成において、送気、送水、吸引等は次のように行われる。
【0025】
送気はスイッチ47をONすることで第1の電磁弁24が開になり、ノズル36より送気される。一方、送水はスイッチ48をONする事で、第2の電磁弁32が開になり、送水タンク12内の洗浄水をノズル36より噴出する。吸引はスイッチ49をONすると、第3の電磁弁42を動作させる。この第3の電磁弁42は2本の管路の制御を行うように構成され、一方の管路が開になると他方が閉となる動作を行う。
【0026】
すなわち、待機状態ではリーク管路43側が開、第1の吸引管路41側が閉となっているものをスイッチ49をONにすることでリーク管路43を閉、第1の吸引管路41を開にして行う。管路制御装置5の洗浄は次のように行う。
【0027】
送気管路系は空気しか流れないため、洗浄は不要であり、かつ殺菌燈66により装置5内の殺菌も可能である。送水管路系はアダプタ50、51を外し、かつチューブ61を外し、アダプタ50、51は各口金内をブラシ68でブラッシングして超音波洗浄器等にかけ、必要に応じてオートクレーブや薬液による消毒を行う。一方、チューブ61は新品と交換するか、アダプタ50、51と同様の洗浄、消毒を行う。
【0028】
一方、吸引管路系は第1の吸引管路41、リーク管路43を新品に交換する事で行う。もし、装置5内をブラッシングで洗浄したい場合にはスイッチ46をONにすると、第1の電磁弁24が開となるので、洗浄液を管路内に注入したり、ブラッシングすることができる。尚、この実施例では送気管路系を管路制御装置5内に設けたが、図7に示す変形例のようにこの送気管路系を管路制御装置5の外側に全て設けるような構造にして着脱自在にすると、さらに効果的である。
【0029】
この第1実施例によれば、洗浄液等の液体を供給する送水タンク12と接続さ接続部11の送水接続管路33を介して電子内視鏡2の送水管路34に送液する管路部分となる第1の送水管路31を管路制御装置5の外側で着脱自在のチューブ61で形成しているので、ブラッシング等による洗浄とか消毒の作業が容易にできると共に、新しいものとの交換により常に衛生的に維持することも可能になる。
【0030】
次に本考案の第2実施例を説明する。この第2実施例は第1実施例の送水をローラポンプで行うように代えたものである。第1実施例と異なる部分のみを説明する。図8に示す第2実施例を備えた内視鏡装置71において、72は送水タンクである。この送水タンク72は大気に開口しているリーク管路73と送水タンク72内の洗浄水に開口端を浸漬した状態で設けられ、ローラポンプ74を介して接続部11内の送水接続管路33に連通している第1の送水管路75より構成される。
【0031】
第1実施例では送水タンク加圧管路26が設けられ、これにより送水タンク12内が加圧されて送水されていたが、この実施例では送水タンク加圧管路26が設けられていない。この実施例の送水動作は次のようになる。
【0032】
スイッチ48をONにすると、制御部45がローラポンプ74を回転させ、送水タンク72内の洗浄水を第1の送水管路75を介して吸い出し、送水接続管路33、送水管路34、送気送水管路35を経てノズル36より洗浄水を押し出す。この際、ローラポンプ74が回転すると同時に第1の電磁弁24が一瞬開となり、送気管路28の内圧を高める動作を行うと、洗浄水が送気管路28内に逆流する事がない。
【0033】
スイッチ48をOFFにすると、ローラポンプ74が一瞬逆転して停止すると共に、第1の電磁弁24が一瞬開となり、送気送水管路35内の洗浄水を吹き飛ばし、水切りをする動作を自動的に行うものである。これにより、水切れ性が向上する。第2実施例における管路制御装置5のフロントパネルは図9に示すような構成である。
【0034】
すなわち、送水系が管路制御装置5の外観上に形成され、着脱自在に設けられている。又、図7に示すように送気管路系も外観上に形成しても良い。この第2実施例は第1実施例に比較して送水タンク12を加圧する管路がない洗浄、消毒性が良く、又洗浄、消毒の作業性も向上する。 なお、本考案は電子内視鏡に限定されるものでなく、ファイバスコープ等の光学式内視鏡にも適用できる。
【0035】
【考案の効果】
以上説明したように本考案によれば、送水制御手段における少なくとも送水管路を着脱自在に設けているので、洗浄とか消毒作業等が容易になるとか交換できることになり、衛生的な流体制御装置を実現できる。
【提出日】平成4年11月2日

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 気体の供給を制御する送気制御手段と、該送気制御手段を介して内視鏡内の管路へ気体を導入する送気制御管路と、液体の供給を制御する送水制御手段と、該送水制御手段を介して内視鏡内に設けられた管路へ液体を導入する送液制御管路とを有する内視鏡流体制御装置において、少なくとも送液制御管路を着脱自在に設けたことを特徴とする内視鏡流体制御装置。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】実開平5−65301
【公開日】平成5年(1993)8月31日
【考案の名称】内視鏡流体制御装置
【国際特許分類】
【出願番号】実願平4−6509
【出願日】平成4年(1992)2月18日
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)