説明

円形導波管用のTE01モードマイクロ波励振器

【課題】
小型で単純な構造を有するTE01モードマイクロ波の励振器を提供する。
【解決手段】
円形導波管内にマイクロ波を放射して液位を測定する液面計用のマイクロ波励振器であって、円形または多角形をなす第1と第2の2枚の互いに平行な平面導体板1、2を周辺部3で短絡したラジアル導波路4を形成し、第1の平面導体板の中心部に接続した給電用入力線路5の先端をラジアル導波路の中心部に臨ませ、第2の平面導体板に、周方向の電界を放射せしめる径方向に長いスロット7、7を軸対称に複数対設け、かつ、前記ラジアル導波路内において電磁界を擾乱せしめて磁界を前記スロットアンテナに結合させる擾乱素子8、8を前記スロットアンテナ近傍に配設し、前記ラジアル導波路と同一軸上に接続した円形導波管内にTE01モードのマイクロ波を放射するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク内に立設された円形導波管内において上方から液面に向かってマイクロ波を放射し、液面にて反射して戻されるマイクロ波の伝播時間から液位を計測するのに使用されるTE01モードマイクロ波の励振器に関する。
【背景技術】
【0002】
円形導波管内にTE01モードを励振する方法としては、導波管の断面形状を徐々に変化するさせる方法が従来からあり(例えば、非特許文献1、2参照)、具体的には、矩形導波管のTE10モードをTE20モードに変換した後、中央に仕切りを設けた矩形導波管の断面形状を長方形からくさび形に徐々に変化させ、円形導波管に緩やかにつなげることで所望のTE01モードへ変更するようにしたものがある。
【0003】
しかし、上述のように長い距離をかけて導波管の断面形状を徐々に変化させることによって反射を抑えながらモードを変換する従来の方法では、装置構造が寸法の大なるものとなり、しかも高精度な加工が必要となる。
【非特許文献1】コロナ社発行 電気通信学会編 「マイクロ波工学」(第37頁、第1・2・13図)
【非特許文献2】コロナ社発行 宮内一洋、山本平一著 「通信用マイクロ波回路」(第46〜47頁、図2・10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題とするところは、小型で単純な構造を有するTE01モードマイクロ波の励振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る励振器は、円形導波管内にマイクロ波を放射して液位を測定する液面計用のマイクロ波励振器であって、円形または多角形をなす第1と第2の2枚の互いに平行な平面導体板を周辺部で短絡したラジアル導波路を形成し、第1の平面導体板の中心部に接続した給電用入力線路の先端をラジアル導波路の中心部に臨ませ、第2の平面導体板に、周方向の電界を放射せしめる径方向に長いスロットを軸対称に複数対設け、かつ、前記ラジアル導波路内において電磁界を擾乱せしめて磁界を前記スロットアンテナに結合させる擾乱素子を前記スロットアンテナ近傍に配設し、前記ラジアル導波路と同一軸上に接続した円形導波管内にTE01モードのマイクロ波を放射するように構成したものとしてある。
【0006】
本発明の請求項2に係る励振器は、前記入力線路を同軸線路とし、同同軸線路の内導体先端に接続したプローブを前記ラジアル導波路内中央に設けるとともに、前記同軸線路の外導体を前記第1の平面導体板に接続し、また、前記プローブの先端を前記第2の平面導体板に接続し、前記プローブによりラジアル導波路内にTEMモードのマイクロ波を励振する構成のものとしてある。
【0007】
本発明の請求項3に係る励振器は、前記入力線路を同軸線路とし、同同軸線路の内導体先端に接続したプローブを前記ラジアル導波路内中央に設けるとともに、前記同軸線路の外導体を前記第1の平面導体板に接続し、また、前記プローブの先端と前記第2の平面導体板との間に所要の間隙を設け、前記プローブによりラジアル導波路内にTEMモードのマイクロ波を励振する構成のものとしてある。
【0008】
本発明の請求項4に係る励振器は、前記入力線路を同軸線路とし、同同軸線路の内導体先端に接続したプローブを前記ラジアル導波路内中央に設けるとともに、前記同軸線路の外導体を前記第2の平面導体板に接続し、また、前記プローブの先端を前記第1の平面導体板に接続し、前記プローブによりラジアル導波路内にTEMモードのマイクロ波を励振する構成とし、さらに、前記第2の平面導体板側の同軸線路まわりにマイクロ波の反射板を設けてなる請求項1に記載の円形導波管用のTE01モードマイクロ波励振器。
【0009】
本発明の請求項5に係る励振器は 前記入力線路を同軸線路とし、同同軸線路の内導体先端に接続したプローブを前記ラジアル導波路内中央に設けるとともに、前記同軸線路の外導体を前記第2の平面導体板に接続し、また、前記プローブの先端と前記第1の平面導体板との間に所要の間隙を設け、前記プローブによりラジアル導波路内にTEMモードのマイクロ波を励振する構成とし、さらに、前記第2の平面導体板側の同軸線路まわりにマイクロ波の反射板を設けてなる請求項1に記載の円形導波管用のTE01モードマイクロ波励振器。
【0010】
本発明の請求項6に係る励振器は、前記擾乱素子を、少なくとも一端が前記第1または第2の平面導体板に接続された導体棒で構成したものとしてある。
本発明の請求項7に係る励振器は、前記擾乱素子を、少なくとも一端が前記第1または第2の平面導体板に接続された誘電体で構成したものとしてある。
【0011】
本発明の請求項8に係る励振器は、前記ラジアル導波路周辺の短絡部を、高誘電率誘電体で構成したものとしてある。
本発明の請求項9に係る励振器は、前記ラジアル導波路の2枚の平面導体板の間を、所定の誘電率を有する誘電体で充填してなる構成のものとしてある。
【発明の効果】
【0012】
給電用入力線路によってラジアル導波路内に発生させられるTEMモードの磁界は擾乱素子によってスロットアンテナと結合し、同スロットアンテナは周方向成分の電界を発生する。
【0013】
したがって、従来のもののように複雑な形状の導波管を製作する必要がなく、構造が簡単で容易に製作でき、しかも小型軽量な円形導波管用のTE01モードマイクロ波励振器を実現することができる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明に係る励振器の実施例を添付図面に基づいて説明する。
互いに平行をなす第1と第2の平面導体板1、2は円形のものとしてあって、これら平面導体板の周辺部間を外壁体3で接続してあって、これら平面導体板1、2と外壁体でラジアル導波路4を構成してある。
なお、前記平面導体板1、2は円形ではなく多角形状のものとする場合もある。
【0015】
上記外壁体3は第1と第2の平面導体板1、2間を短絡するものとしてあり、外壁体の材料は導体とする場合もあるし、電波を反射する素材のものであれば高誘電率の材料を用いる場合もある。
【0016】
前記第1の平面導体板1の中心には給電用の入力線路5を接続してあって、この入力線路は外導体5aと内導体5bとが同軸をなす同軸線路としてあり、外導体5aは第1の平面導体板1に接続され、内導体5bの先端には給電プローブ6を設けてあって、同プローブはラジアル導波路4内中央に臨んでおり、この給電プローブによってラジアル導波路4内にTEMモードの磁界が励振される。
【0017】
なお、給電プローブ6の先端は図1、2に示されるように第2の平面導体板2との間に間隙αを設ける場合もあるし、この間隙を設けず接触させる場合もある。
また、前記入力線路5は上述のような同軸線路ではなく円形導波管とする場合もあり、この場合には円形導波管のTM01モードをラジアル路線のTEMモードに変換して給電を行う。
【0018】
しかして、前記第2の平面導体板2には、同平面導体板2の中心から放射状をなす複数のスロットアンテナ7、7を中心軸線に対して対象となるよう複数対設けてあり、これらスロットアンテナは平面導体板の半径方向に長い矩形を呈している。
【0019】
そして、前記第1の平面導体板1上には擾乱素子8、8を、各擾乱素子の先端がスロットアンテナ近傍に臨む位置に配設してあり、これら擾乱素子8、8は、ラジアル導波路4内の電磁界を歪ませるためのものとしてあって、例えば円柱状の導体棒で構成してある。
【0020】
なお、上記擾乱素子4はラジアル導波路4内の電磁界を歪ませて磁界の径方向成分を作り出すことができればいかなる形状であってもよく、導体に限らず誘電体であってもよい。
また、図1、2では擾乱素子8、8を第1の平面導体板1上に取り付けてあるが、第2の平面導体板に取り付ける場合もあるし、第1と第2の平面導体板に両端を取り付けるように構成する場合もある。
【0021】
上述のように構成した本発明の励振器9は、図3に示すように液位を測定しようとするタンク10内に垂直に設けられた円形導波管11内にマイクロ波を放射して液位計測を行うためのものとしてあり、円形導波管11と励振器9は同心に設けられる。
なお同図において符号12は浮き屋根、13は液面計ハウジングをそれぞれ示している。
【0022】
次に、本発明に係る励振器の作用について説明する。
前記入力線路5からの給電によって給電プローブ6からTEMモードの磁界がラジアル導波路4内に放射されると、図4(a)に示されるように擾乱素子8、8によって非円形に歪んだ磁界14が形成される。
【0023】
ところで、擾乱素子8、8がない場合には同図4(b)に示されるように磁界15はラジアル導波路4内において同心円状に形成され、この磁界は周方向成分しか持たないので、半径方向に長い前記スロットアンテナ7、7とは結合せず、同スロットアンテナからは電波が放射されない。
【0024】
しかしながら、本発明のものにおいては前記擾乱素子8、8によって磁界に歪みが形成されているため、磁界に半径方向成分を有し、同半径方向成分とスロットアンテナ7、7とが結合してスロットアンテナからは図5に示されるように周方向の電界16が励振され、円形導波管11内には図6に示されるようにTE01モードと同様な周方向成分の電界16が生じる。
【0025】
上述した実施例のものは、スロットアンテナ7、7をあけた第2の平面導体板2を導波管11内に下向きに取り付けて使用する構成のものとしてあるが、図7に示すように、同軸線路5を第2の平面導体板2側に設けてスロットアンテナ7、7が上方へ向くように構成した励振器17とする場合もあり、この場合には図8に示されるように導波管11内における励振器17の上方に、下側が凹面をなし、径が励振器17よりも大なるマイクロ波用の反射板18を設け、励振器17を反射板の1次放射器として作用させてスロットアンテナ7、7からのマイクロ波を反射板18で反射してマイクロ波を下向きに放射するように構成する。
【0026】
上記実施例のものは、導波管11の径が大径のものである場合に好適であり、導波管内に効率良くマイクロ波を放射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る励振器の実施例を示す一部破断斜視図。
【図2】入力線路の一部を拡大して示す縦断面図。
【図3】本発明に係る励振器の使用状態を示す縦断面図。
【図4】ラジアル導波路内における磁界の状態を示す平面図。
【図5】スロットアンテナから放射される電界の状態を示す平面図。
【図6】円形導波管内における電界の状態を示す平面図。
【図7】本発明に係る励振器の第2実施例を示す斜視図。
【図8】第2実施例の励振器の使用状態を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0028】
1 第1の平面導体板
2 第2の平面導体板
3 外壁体
4 ラジアル導波路
5 入力線路
6 給電プローブ
7 スロットアンテナ
8 擾乱素子
9 励振器
10 タンク
11 円形導波管
12 浮き屋根
13 液面計ハウジング
14、15 磁界
16 電界
17 励振器
18 反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形導波管内にマイクロ波を放射して液位を測定する液面計用のマイクロ波励振器であって、円形または多角形をなす第1と第2の2枚の互いに平行な平面導体板を周辺部で短絡したラジアル導波路を形成し、第1の平面導体板の中心部に接続した給電用入力線路の先端をラジアル導波路の中心部に臨ませ、第2の平面導体板に、周方向の電界を放射せしめる径方向に長いスロットアンテナを軸対称に複数対設け、かつ、前記ラジアル導波路内において電磁界を擾乱せしめて磁界を前記スロットアンテナに結合させる擾乱素子を前記スロットアンテナ近傍に配設し、前記ラジアル導波路と同一軸上に接続した円形導波管内にTE01モードのマイクロ波を放射するように構成してなる円形導波管用のTE01モードマイクロ波励振器。
【請求項2】
前記入力線路を同軸線路とし、同同軸線路の内導体先端に接続したプローブを前記ラジアル導波路内中央に設けるとともに、前記同軸線路の外導体を前記第1の平面導体板に接続し、また、前記プローブの先端を前記第2の平面導体板に接続し、前記プローブによりラジアル導波路内にTEMモードのマイクロ波を励振する構成とした請求項1に記載の円形導波管用のTE01モードマイクロ波励振器。
【請求項3】
前記入力線路を同軸線路とし、同同軸線路の内導体先端に接続したプローブを前記ラジアル導波路内中央に設けるとともに、前記同軸線路の外導体を前記第1の平面導体板に接続し、また、前記プローブの先端と前記第2の平面導体板との間に所要の間隙を設け、前記プローブによりラジアル導波路内にTEMモードのマイクロ波を励振する構成とした請求項1に記載の円形導波管用のTE01モードマイクロ波励振器。
【請求項4】
前記入力線路を同軸線路とし、同同軸線路の内導体先端に接続したプローブを前記ラジアル導波路内中央に設けるとともに、前記同軸線路の外導体を前記第2の平面導体板に接続し、また、前記プローブの先端を前記第1の平面導体板に接続し、前記プローブによりラジアル導波路内にTEMモードのマイクロ波を励振する構成とし、さらに、前記第2の平面導体板側の同軸線路まわりにマイクロ波の反射板を設けてなる請求項1に記載の円形導波管用のTE01モードマイクロ波励振器。
【請求項5】
前記入力線路を同軸線路とし、同同軸線路の内導体先端に接続したプローブを前記ラジアル導波路内中央に設けるとともに、前記同軸線路の外導体を前記第2の平面導体板に接続し、また、前記プローブの先端と前記第1の平面導体板との間に所要の間隙を設け、前記プローブによりラジアル導波路内にTEMモードのマイクロ波を励振する構成とし、さらに、前記第2の平面導体板側の同軸線路まわりにマイクロ波の反射板を設けてなる請求項1に記載の円形導波管用のTE01モードマイクロ波励振器。
【請求項6】
前記擾乱素子を、少なくとも一端が前記第1または第2の平面導体板に接続された導体棒である請求項1に記載の円形導波管用のTE01モードマイクロ波励振器。
【請求項7】
前記擾乱素子を、少なくとも一端が前記第1または第2の平面導体板に接続された誘電体である請求項1に記載の円形導波管用のTE01モードマイクロ波励振器。
【請求項8】
前記ラジアル導波路周辺の短絡部を、高誘電率誘電体で構成してなる請求項1に記載の円形導波管用のTE01モードマイクロ波励振器。
【請求項9】
前記ラジアル導波路の2枚の平面導体板の間を、所定の誘電率を有する誘電体で充填してなる請求項1に記載の円形導波管用のTE01モードマイクロ波励振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−74328(P2006−74328A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253980(P2004−253980)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2004年3月8日 社団法人電子情報通信学会発行の「EiC電子情報通信学会2004年総合大会講演論文集 通信1」に発表
【出願人】(390026996)東京計装株式会社 (57)
【Fターム(参考)】