冷却効果を考慮したケーブル導体温度推定方法、ケーブル導体温度推定システム、及びケーブル導体温度推定プログラム
【課題】 地中に埋設された電力ケーブルに冷却水路が並設される場合の該冷却水路による効果を考慮したケーブル導体温度の変化を有限要素法によって推定可能なシステム等を提供することを課題とする。
【解決手段】 地中に埋設されたケーブルと冷却水路とを横断する複数の解析面を設定し、これらの解析面間で冷却水路の上流側から下流側への冷却水温度の受渡し処理を行いながら、これらの解析面に熱伝導方程式に基づく有限要素法を適用して一定周期ごとに温度解析することにより、冷却水が供給時の所定温度から周囲の熱を吸収しながらケーブルを冷却する状態を反映して、ケーブル導体温度の変化をシミュレーションする。
【解決手段】 地中に埋設されたケーブルと冷却水路とを横断する複数の解析面を設定し、これらの解析面間で冷却水路の上流側から下流側への冷却水温度の受渡し処理を行いながら、これらの解析面に熱伝導方程式に基づく有限要素法を適用して一定周期ごとに温度解析することにより、冷却水が供給時の所定温度から周囲の熱を吸収しながらケーブルを冷却する状態を反映して、ケーブル導体温度の変化をシミュレーションする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設される電力ケーブルの導体温度を有限要素法を用いて推定する方法及びシステム、並びにその方法やシステムをコンピュータを用いて実現させるプログラムに関し、有限要素法を用いた温度解析技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設される電力ケーブルには許容導体温度が設定されており、目標とする電流を通電したときに、導体温度がこの許容温度を超えないように、ケーブルの種類やサイズ等の仕様或いはケーブル管路の構成等を設計する必要があり、その目安として、日本電線工業会より電力ケーブル許容電流計算マニュアル(JCS168号E)が提供されている。
【0003】
しかし、このマニュアルでは、管路の周囲の土壌の熱容量や熱伝導率等の熱定数が安全サイドに設定された固定値とされており、そのため、導体温度の計算値が実際より高い値となって、徒に通電電流を制限したり、必要以上にケーブルをサイズアップするなどの無駄を生じていた。
【0004】
このような問題に対し、近年、電力ケーブルの効率的運用等を目的として、導体温度のより高精度な推定が試みられており、その一環として、ケーブル管路に隣接して埋設された空管路内の温度と、これらの管路の周辺の土壌温度及び土壌熱定数とを測定し、これらの実測データを電力ケーブル許容電流計算マニュアルに代入してケーブル導体温度を算出するようにした発明が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
この発明によれば、電力ケーブルを設置した管路周辺の土壌の温度や熱定数として従来より実際に近い値が採用されることになり、ケーブル導体温度がより精度よく推定されることになる。
【0006】
また、空管路内の温度や管路周辺における土壌の温度や熱定数等の実測に変え、通電電流による発熱量を算出すると共に、その発熱量と予め設定したケーブル管路やその周辺の土壌の熱定数等に基づいて、特定地点におけるケーブル導体温度を有限要素法を用いてシミュレーションすることが試みられており、その例として、本件出願人が先に特許出願した発明がある(特許文献2参照)。
【0007】
この発明によれば、土壌温度等の実測を要することなく、ケーブル敷設計画の段階で、ケーブル導体温度がその経時変化を含めてシミュレーションすることが可能となるが、特に、この特許文献2の発明では、当該地点における気象データを利用して地表面における熱収支量を算出し、これを有限要素解析のためのデータとして用いるので、ケーブル導体温度の経時変化が、1日の間の時間による変化や1年の間の季節による変化等を含めて、一層精度よくシミュレーションされることになる。
【0008】
【特許文献1】特開2001−165781号公報
【特許文献2】特開2004−112964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、長距離にわたって電力ケーブルを敷設する場合、埋設環境や気象条件等により、一部の地域のみでケーブルの導体温度が許容温度を超えることが予想される場合がある。この場合、その地域で導体温度が許容温度を超えないようにするために、ケーブル全体のサイズアップを要したり、全線路にわたって通電電流を低減させたりする必要が生じ、条件の厳しい一部地域のために、全体としての効率が犠牲にされることになる。
【0010】
これに対しては、埋設環境や気象条件が温度的に厳しい地域では、ケーブルに冷却水路を並設し、その地域におけるケーブルの導体温度を許容温度以下に低下させることにより、全体としてのケーブルのサイズアップや通電電流の抑制を回避して、電力輸送の効率を向上させることが考えられる。
【0011】
そこで、本発明は、冷却水路を設けた場合にケーブル導体温度の上昇がどのように抑制されるかなどを、その長期的な経時変化を含めて精度よく推定することができる方法やシステム等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0013】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、地中に埋設された電力ケーブルに冷却水路を並設した場合における該水路並設地域のケーブル導体温度を有限要素法を用いて推定する方法に関するものであって、導体温度に影響するパラメータとして、上記ケーブルの通電電流に対応する発熱量と、当該地域における冷却水温度とを計算すると共に、これらのパラメータと当該地域におけるケーブル及び冷却水路並びにその周辺構成要素の熱定数とを用い、上記ケーブルの導体温度を計算することを特徴とする。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の方法において、導体温度に影響するパラメータとして、ケーブルの通電電流に対応する発熱量と冷却水温度とに加えて、気象データから算出される当該地域の地表面における熱収支量を用いることを特徴とする。
【0015】
一方、請求項3に記載の発明は、地中に埋設された電力ケーブルに冷却水路を並設した場合における該水路並設地域のケーブル導体温度を、該ケーブル及び冷却水路を横断する断面について適用される有限要素法を用いて推定する導体温度推定システムに関するものであって、当該地域におけるケーブル及び冷却水路並びにその周辺構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段と、ケーブル及び冷却水路の配設構成を設定する配設構成設定手段と、ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段と、冷却水の供給に関するデータを設定する冷却水データ設定手段と、上記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段と、上記冷却水データ設定手段で設定された冷却水に関するデータに基づいて冷却水温度を算出する水温算出手段と、上記配設構成設定手段で設定されたケーブル及び冷却水路の配設構成に基づいて、ケーブルを横断する解析面の所定解析対象領域を有限要素分割して有限要素モデルを作成するモデル作成手段と、上記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて上記解析対象領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段と、上記発熱量算出手段及び水温算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量及び冷却水温度に基づいて上記解析対象領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段と、上記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で上記解析対象領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段とを有することを特徴とする。
【0016】
ここで、上記熱定数記録手段は、ケーブル自体、ケーブル用や冷却水用の管路、及びこれらが埋設された土壌等の比熱容量や熱伝導率(熱抵抗)等を記録するようになっており、配設構成設定手段は、ケーブル用及び冷却用管路の数、配設位置、内外径等を記録するようになっており、通電電流設定手段は、各ケーブルへの通電電流やその経時変化等を記録するようになっており、さらに冷却水データ設定手段は、冷却水の供給温度や供給量等を設定するようになっている。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、上記請求項3に記載のシステムにおいて、冷却水路が並設された地域内に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段が設けられていると共に、水温算出手段は、冷却水入口近傍の解析面では冷却水温度を一定の入口温度に設定し、各解析面に位置する他の水路断面については、その上流側断面における温度変化を反映させて順次下流側の断面の冷却水温度を算出し、かつ、節点温度算出手段は、冷却水路の節点については上記水温算出手段で算出された冷却水温度を用いて、各解析面ごとに解析対象領域の各節点温度を計算することを特徴とする。
【0018】
そして、請求項5に記載の発明は、上記請求項3または請求項4に記載のシステムにおいて、各地域各時期の気象データを記録した気象データ記録手段と、指定された解析対象地域及び時期の気象データを上記気象データ記録手段から読み出し、その気象データに基づいて地表面の熱収支量を算出する熱収支量算出手段とが備えられ、ベクトル作成手段は、発熱量算出手段で算出されたケーブルの発熱量と、水温算出手段で算出された冷却水温度と、上記熱収支量算出手段で算出された地表面の熱収支量集とに基づいて熱荷重ベクトルを作成することを特徴とする。
【0019】
さらに、請求項6に記載の発明は、地中に埋設された電力ケーブルに冷却水路を並設した場合における該水路並設地域のケーブル導体温度を、該ケーブル及び冷却水路を横断する断面について適用される有限要素法を用いて推定する導体温度推定プログラムに関するものであって、コンピュータを、当該地域におけるケーブル及び冷却水路並びにその周辺構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段、ケーブル及び冷却水路の配設構成を設定する配設構成設定手段、ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段、冷却水の供給に関するデータを設定する冷却水データ設定手段、上記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段、上記冷却水データ設定手段で設定された冷却水に関するデータに基づいて冷却水温度を算出する水温算出手段、上記配設構成設定手段で設定されたケーブル及び冷却水路の配設構成に基づいて、ケーブルを横断する解析面の所定解析対象領域を有限要素分割して有限要素モデルを作成するモデル作成手段、上記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて上記解析対象領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段、上記発熱量算出手段及び水温算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量及び冷却水温度に基づいて上記解析対象領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段、及び、上記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で上記解析対象領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段として機能させることを特徴とする。
【0020】
また、請求項7に記載の発明は、上記請求項6に記載のプログラムにおいて、コンピュータを、冷却水路が並設された地域内に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段として機能させると共に、水温算出手段として機能させるときは、冷却水入口近傍の解析面では冷却水温度を一定の入口温度に設定し、各解析面に位置する他の水路断面については、その上流側断面における温度変化を反映させて順次下流側の断面の冷却水温度を算出するように機能させ、かつ、節点温度算出手段として機能させるときは、冷却水路の節点については上記水温算出手段で算出された冷却水温度を用いて、各解析面ごとに解析対象領域の各節点温度を計算するように機能させることを特徴とする。
【0021】
そして、請求項8に記載の発明は、上記請求項6または請求項7に記載のプログラムにおいて、コンピュータを、各地域各時期の気象データを記録した気象データ記録手段、及び、指定された解析対象地域及び時期の気象データを上記気象データ記録手段から読み出し、その気象データに基づいて地表面の熱収支量を算出する熱収支量算出手段として機能させると共に、ベクトル作成手段として機能させるときは、発熱量算出手段で算出されたケーブルの発熱量と、水温算出手段で算出された冷却水温度と、上記熱収支量算出手段で算出された地表面の熱収支量集とに基づいて熱荷重ベクトルを作成するように機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
上記の構成により、本願の各請求項に記載した発明によれば、それぞれ次のような効果が得られる。
【0023】
まず、本願の請求項1に記載の方法によれば、地中に埋設される電力ケーブルに冷却水路が並設される場合に、該水路並設地域におけるケーブルの導体温度が冷却水温度の影響を含めて計算されることになる。したがって、例えば長距離に及ぶケーブル埋設区間における温度的に厳しい地域について、どのように冷却水路を設ければ、線路全体としての通電電流の低減やケーブルのサイズアップが不要になるかなどの推定が可能となり、電力輸送の効率の向上に寄与することになる。
【0024】
また、請求項2に記載の方法によれば、ケーブルの導体温度推定のためのパラメータとして、ケーブル自体の発熱量と冷却水温度とに加えて、地表面における熱収支量が含まれるから、当該推定地域におけるケーブル導体温度が、より現実に近い値に推定されることになる。
【0025】
一方、請求項3に記載のシステムによれば、上記請求項1に記載の方法がコンピュータの中央処理装置、記録装置及び入出力装置等の各種ハードウェア資源を用いて具体的に実行されることになり、冷却水温度を反映したケーブル導体温度のシミュレーションをコンピュータを用いて行うことが可能となって、例えば、最適な冷却水路の設定を容易に見出すことが可能となるなど、電力ケーブル敷設の設計が効率よく行われることになる。
【0026】
また、請求項4に記載のシステムによれば、冷却水温度の計算に際して、水路入口の一定温度からケーブルの熱を吸収することにより次第に温度が上昇しながら流れる状態が反映されることになり、冷却水温度の影響を含めたケーブル導体温度のシミュレーションが一層精度よく行われることになる。
【0027】
さらに、請求項5に記載のシステムによれば、上記請求項2に記載の方法と同様に、地表面における熱収支量をも含めてケーブル導体温度が計算されるので、シミュレーションがより現実に近い状態で行われることになる。
【0028】
そして、請求項6〜8に記載のプログラムによれば、これらをコンピュータに搭載することにより、請求項3〜6に記載のシステムと同様のシステムが構成されることになり、これらのシステムと同様の効果が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明に係るケーブル導体温度推定システムについてのものであるが、このシステムで用いられるシミュレーション方法及びそのプログラムは、本発明に係るケーブル導体温度推定方法及びケーブル導体温度推定用プログラムの実施の形態を構成する。
【0030】
図1は、この実施の形態に係るシステムのコンピュータの構成を示すもので、このコンピュータ10は、中央処理装置11を中心として、各種条件の設定やシステムの制御等に用いられる入力装置12と、CD−ROM等の記録媒体20からプログラムや各種データ等の情報を読み込む読込み装置13と、該装置13によって読み込んだプログラムやデータを記録する記録装置14と、入力画面や計算結果等を表示する表示装置15と、計算結果等を印刷する印刷装置16とを有する。また、上記中央処理装置11には、処理中に一時的にデータを格納するメモリ17が付設されている。
【0031】
上記記録媒体20には、コンピュータ10の制御や計算動作のプログラムと、土壌熱定数データベースDB1、管路熱定数データベースDB2、ケーブル管路データベースDB3、冷却水管路データベースDB4、線路データベースDB5、地温データベースDB6、気象データベースDB7、冷却水データベースDB8、負荷率データベースDB9とが記録されており、該記録媒体20から上記読込み装置13によってこれらのプログラムやテーブルが読み込まれ、上記記録装置14に記録されるようになっている。また、この記録装置14には、上記中央処理装置11による計算結果も記録されるようになっている。
【0032】
上記土壌熱定数データベースDB1には、図2に示すように、土壌の種類ごとに、その名前、質量密度、比熱、及び熱抵抗が記録されるようになっている。
【0033】
また、管路熱定数データベースDB2には、図3に示すように、ケーブルが収納される管路及び冷却水路を構成する管路について、その種類ごとに、名前、質量密度、比熱、及び熱抵抗が記録されるようになっている。また、このデータベースDB2には、管路内空として空気の質量密度、比熱、及び熱抵抗も記録されるようになっている。
【0034】
また、ケーブル管路データベースDB3には、図4に示すように、ケーブル収納用の各管路について、その仕様の名称と外径及び内径とが記録されるようになっている。
【0035】
同様に、冷却水管路データベースDB4には、図5に示すように、冷却水路を構成する各管路について、その仕様の名称と外径及び内径とが記録されるようになっている。
【0036】
また、線路データベースDB5には、図6に示すように、各種類のケーブル線路について、適用電圧、種類名、心数、及びサイズをインデックスとして、線路を構成する導体、絶縁体及びシースについての外径、比熱容量、及び固有熱抵抗、並びに単位長さあたりの電気抵抗値であるRACの各値がそれぞれ記録されるようになっている。
【0037】
また、地温データベースDB6には、図7に東京のものを例にとって示すように、各地域ごとに、各深さの地温が月別に記録されるようになっている。
【0038】
また、気象データベースDB7には、図8に東京のものを例にとって示すように、各地域ごとに、1年間の1時間ごとの気温、湿度、風速、日射量及び降水量の各データが記録されるようになっている。
【0039】
また、冷却水データベースDB8には、図9に示すように、冷却水の動粘性係数、プラントル数及び熱伝導率が、水温ごとに記録されるようになっている。
【0040】
さらに、負荷率データベースDB9には、図10に示すように、例えば斜線で示す8月の平日の14時等の1年中で最も電気使用量が多くなる時点の通電量を1としたときの各時点の通電量の比率を、月別、曜日別(日曜、平日、土曜)、及び時間別に示したデータが記録されるようになっている。
【0041】
そして、記録媒体20から記録装置14に読み込まれるプログラムは、中央処理装置11を作動させ、上記各データベースDB1〜DB9に記録されているデータと、入力装置12によって設定されるデータ等に基づき、有限要素法を用いて、対象地域のケーブル及び冷却水路を含む所定の解析対象領域内各部の温度を所定の時間間隔で計算し、冷却水温度の影響を反映したケーブル導体温度の変化をシミュレーションする。
【0042】
ここで、上記プログラムによる有限要素法を用いたシミュレーションの理論的背景ないし計算方法について説明する。
【0043】
このシミュレーションは、次式、
KX(∂2θ/∂x2)+KY(∂2θ/∂y2)+Q
=ρC(∂θ/∂t) …(1)
で示される2次元の熱伝導方程式を基礎とし、この式(1)をケーブル及び冷却水路を横断する解析断面について適用する。
【0044】
この式(1)は、点(x,y)における各時刻tの温度θを示すものであり、KX、KYはX、Y方向の熱伝導係数、Qは単位時間、単位体積(面積)あたりの熱収支や内部発熱等に由来する熱量、ρは質量密度、Cは比熱である。
【0045】
この式(1)を、有限要素法の適用のためにマトリックス表示すると、
[C]・[dθ/dt]+[K]・[θ]=[Q] …(2)
となる。
【0046】
ここで、[C]は熱容量マトリクス、[K]は熱伝導マトリクス、[θ]は節点温度ベクトル、[dθ/dt]は節点温度の時間微分ベクトル、[Q]は熱荷重ベクトルを示し、図11に示すように、当該断面における所定の解析領域を多数の要素に有限要素分割して各節点に番号1…i…j…を付したときに、熱容量マトリックス[C]を構成する項Cijは、節点i,j間の比熱容量(比熱×質量密度:J/cm3・°K)とその間における体積に関連した値の積を示し、熱伝導マトリックス[K]を構成する項Kijは、節点i,j間の各要素の熱伝導率(J/sec・cm3・°K)とその間の体積に関連した値との積を示す。
【0047】
また、熱荷重ベクトル[Q]を構成する項Qjは、地表面上の節点の場合は、その節点によって代表される領域の地表面での単位面積、単位時間あたりの熱収支量q1(J/sec・cm2)とその領域の面積(当該断面上の長さ×単位長さ)の積を、地中内の節点については、その節点によって代表される領域における単位体積、単位時間あたりの内部発熱量q2(J/sec・cm3)とその領域の体積(当該断面上の面積×単位長さ)との積を、冷却管路の内面の節点については、その節点によって代表される領域における単位面積、単位時間当たりの伝熱量q3(J/sec・cm2)とその領域の面積(当該断面上の長さ×単位長さ)との積をそれぞれ示し、さらに、冷却水内に設定した節点については、その節点によって代表される冷却水の単位面積、単位時間当たりの伝熱量q4(J/sec・cm2)とその管路内部の断面積との積をそれぞれ示すが、当該節点が地表面上や冷却水路内等になく、かつ内部発熱を伴わない領域の点である場合には、Qj=0となる。
【0048】
そして、実際のシミュレーションに際しては、上記式(2)に基づき、各節点の時刻tの温度θtからΔt時間後の時刻t′(=t+Δt)における温度θt′を、次式、
(2[C]t″/Δt+[K]t″)[θ]t′=
(2[C]t″/Δt−[K]t″)[θ]t +2[Q]t″ …(3)
に従って求めることになる。
【0049】
ここで、時刻t″は時刻tとt′の中間の時刻(=t+Δt/2)であって、この時刻t″について上記式(2)を示した式、
[C]t″・[dθ/dt]t″+[K]t″・[θ]t″=[Q]t″
に、
[θ]t″=([θ]t+[θ]t′)/2
[dθ/dt]t″=([θ]t′−[θ]t)/Δt
の関係を代入することにより、上記式(3)が得られる。
【0050】
そして、この式(3)において、熱容量マトリックス[C]t″を構成する各項(Cij)t″に各要素の比熱容量から求めた値を与え、熱伝導マトリックス[K]t″を構成する各項(Kij)t″に各要素の熱伝導率から求めた値を与えると共に、熱荷重ベクトル[Q]t″の各項(Qj)t″の値として、地表面上の節点、冷却管路内面の節点及び冷却水内の節点には、その節点によって代表される面での時刻t″における熱の伝達量を与え、導体内部の節点には、その節点によって代表される領域内での時刻t″における発熱量を与える。
【0051】
また、節点温度ベクトルの初期値[θ]t=0としては、各節点の位置(深さ)に応じた地温を各項の値とするベクトルを与え、また、節点温度の時間微分ベクトルの初期値[dθ/dt]t=0として、各項の値が0のベクトルを与え、その状態から任意の期間、所定の解析周期Δtごとに節点温度ベクトル[θ]を順次算出する。
【0052】
なお、冷却水内の節点温度ベクトルの初期値については、管路に冷却水を満たした後、直ちに解析を開始する場合は、上記のような深さに応じた地温とするのではなく、周囲からの熱の吸収による温度上昇前の水温、即ち冷却水起動直後に管路の入口に供給される冷却水の温度(以下、「入口温度」という)を初期値とすることになる。
【0053】
また、各要素の比熱容量及び熱伝導率が時間の関数として与えられるときは、上記熱容量マトリクス[C]t″の各項の値、及び熱伝導マトリックス[K]t″の各項の値は、それぞれの時間に関する関数から求められるが、時間依存性がないときは一定値が用いられる。
【0054】
一方、このシミュレーションにおいて、熱荷重ベクトル[Q]の項Qjの値として与えられる地表面における熱収支量q1(J/sec・cm2)、導体内部における内部発熱量q2(J/sec・cm3)、冷却管路内面における伝熱量q3(J/sec・cm2)及び冷却水の伝熱量q4(J/sec・cm2)は、例えば次のように計算される。
【0055】
まず、地表面の単位時間、単位面積あたりの熱収支量q1を、
q1=日射吸収量(q11)
+大気から地表面への輻射量(q12)
−地表面から大気への輻射量(q13)
−地表面から大気への伝熱量(q14) …(4)
と定義する。
【0056】
ここで、日射吸収量q11は、
q11=日射量×(1−地表面反射率)
である。
【0057】
また、大気から地表面への輻射量q12及び地表面から大気への輻射量q13は、σをステファンボルツマン定数(J/sec・cm2・°K4)とし、ε12、ε13を輻射率(無次元)、Tを大気温度(°K)、Twを地表面における当該要素の温度(°K)として、
q12=σ×ε12×T4
q13=σ×ε13×Tw4
で示される。
【0058】
その場合に、大気から地表面への輻射量q12については、輻射率ε12は、例えば、
降水量なし、かつ湿度50%未満で、ε12=0.650
降水量なし、かつ湿度50%以上で、ε12=0.850
降水量ありで、 ε12=0.925
と設定する。
【0059】
また、地表面から大気への輻射量q13については、輻射率ε13は、降水量及び湿度に関係なく、
ε13=0.965
と設定する。
【0060】
さらに、地表面から大気への伝熱量q14は、
q14=ρ′×Cp×D×(Tw−T)
と定義する。
【0061】
ここで、ρ′は空気密度(g/cm3)、Cpは空気の定圧比熱(J/g・°K)、Twは地表面における当該要素の温度(°K)、Tは大気温度(°K)であり、また、Dは外部拡散係数(cm/sec)であって、Uを風速として、例えば、
D=0.0027+0.031×U
と設定する。
【0062】
なお、上記の日射量、大気温度(気温)、湿度、降水量、風速は気象データベースDB7から読み出される。また、地表面反射率はプログラムに組み込まれた一定値が用いられるが、例えば土壌熱定数データベースDB1に地表面を構成する土壌ごとに反射率を記録しておき、それを読み出して用いるようにしてもよい。
【0063】
そして、式(4)で示される地表面でのトータルの熱収支量q1に各節点によって代表される地表面の領域の面積を掛けた値が、前述の式(3)における熱荷重ベクトル[Q]の地表面に位置する節点についての項Qjの値として用いられる。
【0064】
また、ケーブル導体における内部発熱量q2については、
q2=(I2×RAC)/S …(5)
と定義する。
【0065】
この式(5)の分子は、ケーブルの単位長さあたりの発熱量(J/sec・cm)を示し、これをケーブルの導体部分の断面積Sで割った値が、導体の単位時間、単位体積あたりの内部発熱量(J/sec・cm3)となる。
【0066】
ここで、Iは電流(A)、RACはケーブルの単位長さあたりの抵抗(Ω/cm)であり、RACは線路データベースDB5から求められる。また、電流Iは、別途設定された値と負荷率データベースDB9とを用いて求められる。
【0067】
そして、式(5)で示される内部発熱量q2にケーブル導体内の節点によって代表される領域の体積を掛けた値が、前述の式(3)における熱荷重ベクトル[Q]の当該節点についての項Qjの値として用いられる。
【0068】
さらに、冷却管路内面の伝熱量q3及び冷却水の伝熱量q4は、管路内面と冷却水との間の熱伝達によるものとして求められ、図12に示すように、冷却水を代表する節点の温度をTc、管路内面における複数の節点での温度をTfi(i=1、2、…)とすれば、
冷却管路内面の各節点の伝熱量q3は、
q3=α(Tfi−Tc) …(6)
で示され、冷却水内の節点の伝熱量q4は、
q4=αΣ(Tfi−Tc) …(7)
で示される。
【0069】
そして、これらの値に当該節点で代表される領域の面積を掛けた値が、前述の式(3)で、熱荷重ベクトル[Q]の当該節点についての項Qjの値として用いられる。
【0070】
なお、上記式(6)、(7)におけるαは、管路内面と冷却水との間の平均熱伝達率(J/sec・cm2・℃)であって、
α=Nu・λ/d
で示される。
【0071】
ここで、λは冷却水の熱伝導率(J/sec・℃)、dは管路内径(cm)である。また、Nuはヌセルト数であって、流速0の場合、即ち冷却水が停止しているときは、例えば、管内壁温一定の層流熱伝達の式から、
Nu=3.66
とされる。
【0072】
また、冷却水が流れる場合には、例えば、管内の乱流熱伝達の式、
Nu=0.023・Re0.8・Pr0.4
が用いられる。なお、Reはレイノルズ数、Prはプラントル数で、それぞれ
Re=ωd/ν
Pr=ν/a
であり、ωは冷却水の平均流速度(cm/sec)、νは冷却水の動粘性係数(cm2/sec)、aは冷却水の温度伝導率(cm2/sec)である。
【0073】
したがって、冷却水が停止しているときは、
α=3.66・λ/d
流れているときは、
α=0.023・(ωd/ν)0.8・(ν/a)0.4・λ/d
となる。
【0074】
そして、熱伝導率λ、動粘性係数ν及びプラントル数Pr(=ν/a)は、図9の冷却水データベースDB8から、そのときの水温に応じて読み取られ、また、管路内径dは図5の冷却水管路データベースDB4から読み取られると共に、平均流速度ωは、管路内径dと解析時に設定される流量とから求められる。
【0075】
ここで、図13に、冷却水路用として一般に使用される各内径の管路に流量を異ならせて、0℃及び60℃の冷却水をそれぞれ流したときのレイノルズ数Remin、Remaxを示すが、いずれも、乱流条件の2320を超え、これらの条件での流れは乱流であることが示されている。
【0076】
一方、上記式(6)、(7)における冷却水温度Tcは、次のような方法で求められる。
【0077】
今、図14、図15に示すように、冷却水管路1が、冷却水供給装置2からケーブル管路3…3に平行に延びた後、Uターンして再び冷却水供給装置2に戻るように配設され、冷却水管路1の往路(以下、「Go管」という)の入口1′に上記供給装置2によって一定温度(入口温度)に設定された冷却水が供給されると共に、周囲の熱により温度上昇しながら、復路(以下、「Re管」という)によって冷却水供給装置2に戻され、該装置2によって上記入口温度に冷却された後、再びGo管の入口1′に供給されるシステムが設けられているものと想定する。その場合、上記冷却水供給装置2における熱交換による発熱は当該解析領域外で行われるものとする。
【0078】
そして、上記のような冷却水管路1の配設地域に、管路入口1′を通る解析面Aを含んで、冷却水管路1及びケーブル管路3…3を横断する複数の解析面A〜Dを設定し、各面A〜Dについて、以下に詳述する有限要素法による温度変化の解析をそれぞれ行う。
【0079】
その場合に、冷却水が流れている状態では、その流れに伴って、各解析面上の上流側の管路断面から下流側の管路断面へ冷却水温度が順次受け渡されるものとし、その場合の温度の受け渡し処理を次のような方法で行う。
【0080】
つまり、各解析面A〜DにおけるGo管の断面をAGO〜DGOと表示し、Re管の断面をARE〜DREと表示し、これらの各断面を、AGO→BGO→CGO→DGO→DRE→CRE→BRE→AREの順に冷却水が流れるときの各隣接断面間を移動する時間をΔtab、Δtbc、Δtcd、Δtdd、Δtdc、Δtcb、Δtbaとする。これらの時間は、冷却水の流量と、冷却水管路の断面積とから算出される。また、これらの時間のうちの最も長い時間を最長移動時間Δtcとする。
【0081】
そして、各解析面A〜Dのそれぞれについて、ケーブル管路による内部発熱量や地表面における熱収支量などと共に、所定の解析時間間隔(解析周期)Δtで有限要素解析を行い、各解析面ごとに独立して、解析領域内の全ての節点と共に冷却水を代表する節点の温度を計算する。
【0082】
また、冷却水の起動から上記最長移動時間Δtcが経過した直後の解析周期では、各解析面についての節点温度の計算後に、断面AGOについては、その時点の計算値を冷却水の入口温度に置換すると共に、断面BGOから断面AREまでの各断面の温度については、その上流側の断面において、その上流側断面から当該断面までの冷却水移動時間の間に上昇した温度を前回の解析周期で得られた計算値と今回の計算値で得られた計算値とから線形補間法により算出し、その時点の計算値を線形補間によって得られた値に置換する。そして、次の解析周期では、このようにして置換した値に基づいて、各解析面ごとに再度解析を行う。
【0083】
このようにして、全ての断面間で冷却水の移動が終了した時間Δtcごとに、各断面の冷却水温度を上流側の断面から下流側の断面に受け渡しながら解析を続行することにより、冷却水が流れることによる効果を反映しながら、各解析面におけるケーブル導体温度をシミュレーションする。
【0084】
その場合に、上記最長移動時間Δtcが解析周期Δtより短いときは、毎解析周期Δtごとに上記の温度の受け渡しが行われることになる。また、折り返し点直前の解析面Dにおいて、Go管からRe管までの距離が短い場合は、断面DGOの温度と断面DREの温度を同一とする。
【0085】
以上のシミュレーション方法は、具体的には図1に示すコンピュータ10の記憶装置14に記録媒体20から読み込まれて記録されたプログラム及び各種データベースDB1〜DB9、並びに入力装置12によって入力された各種データ等に基づき、中央処理装置11が実行することになり、以下、これらの動作をフローチャートに従って説明する。
【0086】
図16に示すフローチャートは、当該システムを用いた導体温度解析作業の全体の流れを示すもので、まず、ステップS1で、図17に示すコンピュータ10の表示装置13に表示される画面W1のフォームF1上で、冷却水路が配設されている領域に、該水路を横断する複数の解析面を設定する。その場合に、冷却水供給装置に最も近い位置に最初の解析面A(位置0.00)を設定し、水路の折り返し点に向かって順次後続の解析面B、C…の位置を入力する。なお、この画面W1では、全解析面同一間隔のチェックボタンをオンにすれば、その間隔と解析面数とを入力することによって、各解析面の位置の入力が省略されるようになっている。
【0087】
次に、フローチャートのステップS2で、ケーブル用及び冷却水用管路の構成や土層の構成等を設定する。この設定は、図18に示す画面W2に表示されたフォームF2を用い、次のように行われる。
【0088】
まず、ケーブル用管路については、埋設モデルの選択、管路の本数、各管路の中心位置、管路タイプ、内、外径等の管路定義、及び上記埋設モデルが埋め戻しである場合の埋め戻し領域の設定(管路周辺定義)等を行う。その場合に、上記の管路定義においては、管路タイプを選択することにより、その内、外径がケーブル管路データベースDB3から読み出されて表示されるようになっている。
【0089】
また、土層定義として、土層の数や層厚等を設定する共に、有限要素法を適用する解析対象領域を自動で設定するか否かを符号aで示すチェックボックスで指示し、自動で設定しない場合はその領域の幅及び深さを入力する。自動で設定する場合は、幅は管路周辺の幅から自動計算され、深さは所定の値(例えば8m)に自動設定される。
【0090】
また、冷却水路については、水路の数、各水路についてのGo管及びRe管の中心位置、管路タイプ、内、外径等が設定される。この冷却水用管路についても、管路タイプを選択することにより、その内、外径が冷却水管路データベースDB4から読み出されて表示されるようになっている。
【0091】
これにより、ケーブル管路及び冷却水管路、並びにその周辺の土層を含む解析領域全体の構成が確定され、その領域を有限要素分割した有限要素法による解析用の全体モデルが自動作成される。今、例えば、管路の埋設モデルが図18の画面W2に符号bで示す埋め戻しモデルであり、管路の本数が6本であり、土層の層数が2であって、管路周辺定義及び第1層の層厚が画面W2に示すように設定されたものとすると、図19に示すように、次の画面W3のフォームF3に、領域全体が有限要素分割されてなる全体モデルが表示される。
【0092】
次に、フローチャートのステップS3として、上記全体モデルが表示された図19の画面W3上で、土壌データを設定する。この画面W3に表示されるフォームF4で、土壌の種類を指定すると、記録装置14に記録されている土壌熱定数データベースDB1からその土壌の質量密度、比熱、熱抵抗等の熱定数が読み出され、フォームF5に表示される。なお、このフォームF5では、上記質量密度等のデータの変更が可能とされている。
【0093】
そして、この土壌データの設定は、フォームF3に示すモデルの場合、管路周辺の埋め戻した部分の土壌c1、領域の上層の土壌c2、及び領域の下層の土壌c3について行うことになる。
【0094】
次に、フローチャートのステップS4として、図20に示す画面W4上で線路データを設定する。この画面W4には、上記全体モデルのケーブル管路d…d及び冷却水管路e…eの周辺部分を拡大表示したフォームF6と、線路データ設定用のフォームF7とが表示され、フォームF7上で、フォームF6に表示された各ケーブル管路d…dごとに、線路タイプを設定する。
【0095】
すなわち、線路タイプとして1相布設タイプまたは3条俵積タイプのいずれかを選択すると共に、各ケーブルの電圧、ケーブルの種類、及びケーブルのサイズ(心数)を指定する。このとき、線路データベースDB5から指定したケーブルについての各種データが読み出され、後の有限要素分割や解析に用いられる。なお、管路内にケーブル線路が敷設されていない空の状態であるときは、符号fで示すチェックボックスをオフにする。以下同様にして、各管路についての線路タイプやケーブルの種類等の設定を順次行う。
【0096】
これにより、1つの解析面について、各ケーブル管路及び冷却水管路の構成が確定し、その管路が占める領域を有限要素分割した解析用の管路モデルが作成される。今、例えば、図20のフォームF7に示すように、ケーブル管路番号1の管路が3条俵積タイプでケーブルが敷設されるように設定され、かつ、そのケーブルの種類やサイズ等が設定されたものとすると、上記線路データベースDB5から読み出されたそのケーブルについての導体部分、絶縁体部分及びシース部分の外径寸法を用い、3条俵積タイプで当該管路内領域が自動的に有限要素分割され、図21に示すように、次の画面W5のフォームF8にその有限要素分割モデルが表示される。
【0097】
そして、図16のフローチャートのステップS5で、上記ステップS2からステップS4までの設定が、ステップS1で設定した全解析面について終了したか否かを判定し、全解析面について終了するまで、ステップS2からステップS4までの設定作業を繰り返す。
【0098】
次に、フローチャートのステップS6で、冷却水データを設定する。この設定は、図22に示す画面W6のフォームF9を用いて行われ、冷却水の起動条件をケーブル通電電流かケーブル表面温度のいずれにするかを選択し、通電電流を選択したときには、冷却を開始する電流値と冷却を終了する電流値とを設定し、ケーブル表面温度を選択したときは、冷却を開始する温度と冷却を終了する温度とを設定する。図例の場合、ケーブル表面温度の解析値が60℃を超えたときに冷却水を起動し、40℃まで低下すれば冷却水を停止することになる。
【0099】
また、この冷却水データの設定フォームF9では、冷却水の供給温度(入口温度)及び供給流量と、冷却管路の折り返し部において、最終解析面上におけるGo管とRe管とで冷却水温度を同じにするか、Go管からRe管への温度の受け渡しを考慮するかを選択し、後者の場合は、最終解析面上におけるGo管からRe管までの冷却水の到達時間を入力するようになっている。
【0100】
以上の冷却水データの設定は、冷却水路が複数ある場合には各水路ごとに行い、図16のフローチャートのステップS7で全水路についての設定が終了するまで繰り返し実行する。
【0101】
さらに、フローチャートのステップS8で、図23に示す画面W7のフォームF10を用いて通電条件の設定を行う。このフォームF10には、先に設定した各管路d…dについての番号、線路タイプ及びケーブルの種類やサイズ等が表示される。そこで、番号が表示された管路について、ケーブルに通電する最大電流を入力すると共に、年上昇を考慮するか否かを選択し、考慮する場合には年上昇率を入力する。
【0102】
また、フローチャートのステップS9で、図24に示す画面W8のフォームF11上で、解析対象地域に関するデータを設定する。つまり、シミュレーションを開始する月、及びシミュレーションを行う地域を設定する。これは、シミュレーション開始時に解析対象領域の全域に対する温度の初期値として、地温データベースDB6から読み出した当該地域各深さのシミュレーション開始月の地温を与え、かつ、気象データテーブルDB7から解析対象地域の気象データを読み出すためである。なお、解析開始と同時に冷却水が起動するものとするときは、冷却水の温度の初期値として前述の入口温度が用いられる。
【0103】
さらに、フローチャートのステップS10で、図25の画面W9を用いて、解析条件を設定する。即ち、画面W9のフォームF12上で、今回のシミュレーションが初期解析であるかリスタート解析であるかを選択する。初期解析の場合は、解析期間を年数または終了時刻で指定すると共に、解析時間間隔の単位、例えば時間、日、月等と、計算結果の出力時間間隔を設定する。ここで、出力時間間隔は、解析周期Δtごとに行われる全解析の結果の出力か、別途入力する時間間隔かのいずれかを選択する。
【0104】
一方、リスタート解析の場合は、上記の設定に加えて、リスタートの基礎となるプロジェクトの名称及びそのプロジェクトを格納している記録装置14内の場所を指定すると共に、基礎となるプロジェクトの継続か中間時点からのリスタートかのいずれかを選択し、後者の場合は、リスタートする時点を指定する。また、リスタートに際して通電条件を変更する場合は、図23に示す画面W7のフォームF10で、通電電流の条件を再設定することになる。
【0105】
以上のようにして、すべての設定が終了し、設定されたデータがメモリ17に記録されると、図16のフローチャートのステップS11として、コンピュータ10の中央処理装置11はケーブル温度シミュレーションのための解析処理を実行する。
【0106】
この処理動作については、改めて詳述するが、その解析処理が終了すれば、ステップS12として、その結果を例えば図26〜図28に示すように表示装置15に表示し、また、要求に応じて印刷装置16によってプリントアウトする。ここで、図26は、冷却水起動から終了までの解析面BにおけるGo管及びRe管の冷却水温度の変化を示し、図27は、解析開始から終了までの解析面Bにおけるケーブル導体温度の変化を示し、図28は解析面Bにおける温度分布を示している。
【0107】
次に、上記解析処理動作を図29以下のフローチャートに従って説明する。
【0108】
まず、図29のフローチャートのステップS21で、メモリ17に記録され或いは記録装置14に記録されているデータベースから必要なデータを読み込み、次いでステップS22で、解析時間間隔(解析周期)Δtを設定するとともに、各解析面間での冷却水移動時間Δtab、Δtbc、Δtcd、Δtdd、Δtdc、Δtcb、Δtbaのうちの最も長い最長移動時間Δtcを設定する。
【0109】
なお、以下の説明の便宜上、管径が一定であるとして、上記各時間を解析周期Δtの何倍かという形式で、例えば次のように設定する。
【0110】
Δtab=Δtba=1.7Δt
Δtbc=Δtcb=0.8Δt
Δtcd=Δtdc=2.5Δt
Δtdd=1.2Δt
この場合、冷却水移動時間が最も長いのは、解析面C、D間の2.5Δtであるから、最長移動時間Δtc=2.5Δtとなる。
【0111】
そして、イニシャライズとして、ステップS23で、現時点の時刻をtを0とした上で、ステップS24で、冷却水起動条件が成立しているか否かを判定する。この判定は、いずれかの解析面においてケーブル導体温度の計算値が冷却水起動温度を超えているか否か、或いはケーブル通電電流が冷却水起動電流値を超えているか否かにより行い、当初はこの条件が成立していないものとする。
【0112】
この場合、次にステップS25で、時刻tに解析周期Δtを加算し、現時刻tをΔtとすると共に、ステップS26で、その時刻が解析終了時刻に達しているか否かを判定する。
【0113】
解析開始当初は、解析終了時刻に達していないから、次にステップS27を実行することになり、各解析面A〜Dのそれぞれについて、前回の解析時刻(t-Δt=0)での解析領域内の全節点の温度から、現時点の時刻(t=Δt)における全節点の温度を計算する。この場合は、前回の各節点の値は初期値(深さに応じた地中温度又は冷却水の入口温度)であり、この値から現在の温度を求めることになる。
【0114】
この前回の計算時の値(又は初期値)から時間Δt後の現時刻tにおける各節点温度を求める計算は、前述した式(1)〜(5)で示す理論に基き、図30に示すフローチャートに従って次のように行われる。なお、以下の説明では、熱容量マトリクス[C]及び熱伝導マトリクス[K]は温度及び時間に対する依存性を有しないものとし、前述の式(3)における[C]t″、[K]t″の各項の値は、いずれもテーブルから読み取られるデータに基づいて算出される固定値とする。
【0115】
まず、ステップS41で、画面W3のフォームF3や画面W5のフォームF8に示すように有限要素分割された全体モデル及び管路モデルについて、土壌熱定数データベースDB1や管路熱定数データベースDB2から読み込んだ該当する土壌や管路の質量密度及び比熱のデータ、及び線路データベースDB5から読み込んだ該当するケーブルの各部の比熱容量データ等を用いて、全解析領域にわたる各節点間の熱容量を算出し、これを各項の値とする熱容量マトリクス[C]を作成する。なお、冷却水の比熱容量は常に「1」とする。
【0116】
また、ステップS42で、上記土壌熱定数データベースDB1や管路熱定数データベースDB2から読み込んだ該当する土壌や管路の熱抵抗データ、及び線路データベースDB5から読み込んだケーブルの各部の固有熱抵抗データ等を用いて、全解析領域にわたる各節点間の熱伝導率を算出し、これを各項の値とする熱伝導マトリクス[K]を作成する。
【0117】
さらに、ステップS43で、当該時点における熱荷重ベクトル[Q]を作成する。
【0118】
この熱荷重ベクトル[Q]の各項のうち、地表面に位置する節点に対応する項の値は、気象データベースDB7から読み出した該当する地域の当該時点の気象データを用い、前述の式(4)に従って算出される熱収支量に基づいて設定される。
【0119】
また、ケーブルの導体内に位置する節点に対応する項については、負荷率データベースDB9から読み出した該当する月、曜日、時間の負荷率と画面W7のフォームF10上で設定した最大電流及び年上昇率とから当該時点の通電電流を算出すると共に、その電流値と、線路データベースDB5から読み出した該当するケーブルのRACのデータとを用いて、前述の式(5)から算出される内部発熱量に基づいて設定される。
【0120】
さらに、冷却水路を構成する冷却管路内面の節点及び冷却水内の節点に対応する項ついては、前回の解析によって得られた管路内面の各接点の温度Tfiと冷却水温度Tcとに基づき、前述の式(6)、(7)からそれぞれ求められる。
【0121】
また、地表面、導体内部、冷却管路内面及び冷却水内部のいずれにも位置しない節点に対応する項の値は0とされ、これにより、現時点における熱荷重ベクトル[Q]の各項の値が設定される。そして、この熱荷重ベクトル[Q]を前述の式(3)における[Q]t″とする。
【0122】
以上のようにして、熱容量マトリクス[C]、熱伝導マトリクス[K]、及び熱荷重ベクトル[Q]t″が作成されると、次にステップS44で、前述の式(3)にこれらを代入し、時刻tでの節点温度ベクトル[θ]tから、時間Δt後の節点温度ベクトル[θ]t′を求める。つまり、温度ベクトル[θ]tの各項の値として、対応する各節点の深さに応じて、地温データベースDB6から読み出した当該地域、当該開始月の各深さの地温(冷却水内部の節点については地温または冷却水入口温度)を代入することにより、節点温度ベクトルの初期値[θ]t=0を作成し、また、各項の値が0の節点温度の時間微分ベクトルの初期値[dθ/dt]t=0を作成すれば、これらを基礎としてΔt時間後の温度ベクトル[θ]t′が順次計算されることになる。
【0123】
そして、ステップS45で、このΔt時間後の温度ベクトル[θ]t′をメモリ17に記録する。
【0124】
以上のようにして、図29のフローチャートのステップS27が全解析面について実行され、次にステップS28で、冷却水が起動中であるか否かを判定し、起動中であると判定されるまで、ステップS24〜S28が繰り返される。これにより、各解析面において、全節点温度が初期値からΔt時間ごとに計算されることになり、ケーブル導体温度の変化が得られる。
【0125】
そして、その間に、前述の冷却水起動条件が成立すれば、冷却水の移動による各断面間での冷却水温度の受け渡し処理を含んだ計算が開始され、冷却水の影響を反映したケーブル導体温度の変化が求められることになる。
【0126】
つまり、ステップ24で、冷却水起動条件が成立したものと判定されると、まず、ステップS29で、現時刻tを冷却水温度の受渡し基準時刻tpとして設定する。次いで、上記ステップS25〜S28を前回同様に実行し、現時刻tを1周期Δt分加算して更新した上で(t=tp+Δt)、ステップS27で、前回の各節点温度の解析値に基づいて現時刻tの各節点温度を各解析面ごとに計算する。このときの計算結果は、図35の表に起動条件成立判定後、1回目の解析時刻(起動後時間:Δt)の値として示す。
【0127】
ここで、図35の表中、TAG0、TAR0、TBG0、TBR0…は、起動条件成立判定直前の解析時における解析面A、B…のGo管及びRe管の冷却水温度の計算結果を示し、同様に、TAG1、TAR1、TBG1、TBR1…は、起動条件成立判定後、1回目の解析時における解析面A、B…のGo管及びRe管の冷却水温度の計算結果を示す。つまり、添え字の1番目の記号は解析面を示し、2番面の記号はGo管、Re管の別を示し、最後の数字は、起動条件成立後、何回目の解析周期で得られた値かを示す。
【0128】
そして、今度は冷却水が起動したから、ステップS28からステップS30を実行し、現時刻tが、温度受渡し基準時刻tpに冷却水の最長移動時間Δtcを加えた時刻を超えたか否か、すなわち、冷却水起動後、各解析面間で冷却水の移動が終了しているか否かを判定する。
【0129】
上記の数値例では、Δtc=2.5Δtであるから、現時刻(tp+Δt)は、まだこの周期が来る時刻(tp+Δtc)に達しておらず、したがって、上記ステップS25〜S28を再び実行し、ステップS27で、上記時刻(tp+Δt)での計算結果TAG1、TAR1、TBG1、TBR1…を用いて、現時刻(tp+2Δt)における各解析面の値TAG2、TAR2、TBG2、TBR2…を計算する。
【0130】
以下同様に、各解析面ごとに解析を行い、現時刻tが温度受渡し基準時刻tpに最長移動時間Δtcを加えた時刻を経過したこと、即ち、t>tp+Δtcとなったことが判定されたとき、上記例では、Δtc=2.5Δtであるから、今回の解析周期が、冷却水起動後、3回目の周期となったとき(t=tp+3Δt)に、ステップS27で、各解析面ごとに冷却水温度を計算した後、ステップS30からステップS31を実行し、冷却水温度の各解析面間での受け渡し処理を実行する。
【0131】
この処理は図31〜図34に示すフローチャートに従って行われ、まず、図31のフローチャートのステップS51で、解析面AのGo管の温度として、計算によって得られたTAG3に変えて、入口温度T0を代入する(図35の起動後時間3Δtの欄参照)。
【0132】
次いで、ステップS52で、解析面BのGo管の温度を設定するが、この設定は、図32に示すフローチャートに従って次のように行われる。
【0133】
即ち、図32のフローチャートのステップS61で、予め計算してメモリ17に記録してある解析面AのGo管から解析面BのGo管まで冷却水が移動する時間Δtabを読み出し、次いで、ステップS62で、この移動時間Δtabが、iΔtよりも大きく、(i+1)Δtよりも小さくなるiを求める。つまり、冷却水起動時からカウントして、何回目と何回目の解析周期の間に時間Δtabが経過するかを求めることになる。上記の例示した値の場合、Δtab=1.7Δtであるから、i=1であって、この移動時間Δtabは、温度受渡し基準時刻tp後、1回目の解析周期と2回目の解析周期との間で経過することになる。
【0134】
そこで、次にステップS63で、解析面AのGo管の1回目の解析周期(tp+Δt)における温度TAG1と、2回目の解析周期(tp+2Δt)における温度TAG2とをメモリ17から読み出し、図36に示すように、これらの値を3:7の内分比で線形補間し、これによって得られた値TAG1−2を、計算によって得られた値TBG3に代えて、解析面BのGo管温度とする。
【0135】
図31のフローチャートのステップS53の解析面CのGo管温度の設定も同様に行われ、この場合、解析面B、C間の移動時間Δtbc=0.8Δtであるから、i=0であって、解析面BのGo管の温度受渡し基準時刻tpの直前の解析周期で計算した温度TBG0と、次の周期(tp+Δt)で計算した温度TBG1とを8:2の内分比で線形補間した値TBG0−1を、計算によって求めたTCG3に代え、解析面CのGo管温度とする。
【0136】
さらに、ステップS54の解析面DのGo管温度の設定も同様に行われ、この場合、解析面C、D間の移動時間Δtbc=2.5Δtであるから、i=2であって、解析面CのGo管の温度受渡し基準時刻tpから2回目の解析周期(tp+2Δt)で計算した温度TCG2と、次の周期(tp+3Δt)で計算した温度TCG3とを5:5の内分比で線形補間した値TCG2−3を、計算によって求めたTDG3に代え、解析面DのGo管温度とする。
【0137】
次に、ステップS55の冷却管路の折り返し点における温度の受け渡し、即ち、解析面DにおけるGo管からRe管への温度の受け渡しは、図33に示すフローチャートに従って次のように行われる。
【0138】
まず、ステップS71で、図22の画面W6で冷却水路について、最終解析面DでのGo管からRe管への冷却水温度の受け渡しを、どのように設定したかを判定し、Go管温度とRe管温度とを同一に設定した場合には、ステップS72で、解析面Cの温度から線形補間により求めた上記のGo管温TCG2−3を、解析面DのRe管温度としても採用する。
【0139】
これに対して、最終解析面DのGo管からRe管への冷却水の移動に所定の時間Δtddを要すると設定した場合は、図32のフローチャートのステップS61〜S63と同様に、ステップS73で、上記移動時間Δtddを読み出し、ステップS74で、その時間Δtddが、iΔtよりも大きく、(i+1)Δtよりも小さくなるiを求める。
【0140】
今、Δtdd=1.2Δtであるから、i=1となり、したがって、解析面DのGo管の1回目の解析周期(tp+Δt)で計算した温度TDG1と、次の周期(tp+2Δt)で計算した温度TDG2とを2:8の内分比で線形補間した値TDG1−2を求め、ステップS75で、この値を計算によって求めたTDR3に代えて、解析面DのRe管温度とする。
【0141】
さらに、図31のフローチャートのステップS56で、解析面CのRe管の温度を設定するが、この設定は、図34に示すフローチャートに従って次のように行われる。
【0142】
即ち、図32のフローチャートと同様に、まず、ステップS81で、解析面DのRe管から解析面CのRe管まで冷却水が移動する時間Δtdcを読み出し、次いで、ステップS82で、この移動時間Δtdcが、iΔtよりも大きく、(i+1)Δtよりも小さくなるiを求める。
【0143】
今、Δtdc=2.5Δtであるから、i=2であり、したがって、ステップS83で、解析面DのRe管温度の、温度受渡し基準時刻tp後、2回目の解析周期(tp+2Δt)における温度TDR2と、3回目の解析周期(tp+3Δt)における温度TDR3とを5:5の内分比で線形補間し、これによって得られた値TDR2−3を、計算によって得られた値TCR3に代えて解析面CのRe管温度とする。
【0144】
図31のフローチャートのステップS57の解析面BのRe管温度の設定も同様に行われ、この場合、解析面C、B間の移動時間Δtcb=0.8Δtであるから、i=0であって、解析面CのRe管の温度受渡し基準時刻tpの直前の解析周期で計算した温度TCR0と、次の周期(tp+Δt)で計算した温度TCR1とを8:2の内分比で線形補間した値TCR0−1を、計算によって求めたTBR3に代え、解析面BのRe管温度とする。
【0145】
さらに、ステップS58の解析面AのRe管温度の設定も同様に行われ、この場合、解析面B、A間の移動時間Δtba=1.7Δtであるから、i=1であって、解析面BのRe管の温度受渡し基準時刻tp後、1回目の解析周期(tp+Δt)で計算した温度TBR1と、次の周期(tp+2Δt)で計算した温度TBR2とを7:3の内分比で線形補間した値TBR1−2を、計算によって求めたTAR3に代え、解析面AのRe管温度とする。
【0146】
以上のようにして、図29のフローチャートのステップS31による冷却水温度の受渡し処理が終了することになる。そして、次に、ステップS32で、冷却水停止条件が成立したか否かを判定し、未だケーブル導体温度が十分冷却されていないなどの理由で、この条件が成立していないときは、上記ステップS29を再度実行し、その時点の時刻(t=tp+3Δt)を新たな温度受渡し基準時刻tpとする。
【0147】
そして、次に、再びステップS25〜S27を実行することになるが、ステップS31による冷却水温度の受渡し処理を行った次の解析周期(t=tp+Δt;冷却水起動後、通算4周期目)では、この受渡し処理によって置換した値を初期値として、ステップS27の各解析面A〜Dごとの解析を行うことになる。
【0148】
その後、現時刻tがtp+Δtcを越えるまで、ステップS27の各解析面A〜Dごとの解析を行うと共に、次にt>tp+Δtcとなった時点、即ち、t=tp+3Δtであって、前回の冷却水温度受渡し処理後、3解析周期目(冷却水起動後、通算6周期目)で、再びステップS31として、図31〜図34のフローチャートに示す冷却水温度の受渡し処理を実行する(図35参照)。
【0149】
以上のように、一定周期(3Δt)ごとの温度受渡し処理を伴う動作を、図29のフローチャートのステップS32で例えばケーブル導体温度が所定温度以下まで低下するなど、冷却水停止条件が成立したことが判定されるまで繰り返されることになり、その間、冷却水が入口温度から熱を吸収しながら管路を循環することによる効果が反映されて、ケーブル導体温度が計算されることになる。
【0150】
そして、上記ステップS32で、冷却水停止条件の成立が判定されれば、ステップS25〜S27のみを繰り返し実行し、冷却水温度の受渡し処理を行うことなく、各解析面A〜Dごとに解析を行い、また、その間に再び冷却水起動条件が成立すれば、一定周期ごとの温度受渡し処理を伴う解析が行われると共に、ステップS26で、現時刻tが解析終了時刻に達したことが判定された時点で解析動作を終了する。
【0151】
そして、その結果は、コンピュータ10の記録装置14に記録されると共に、要求に応じて、例えば、前述の図26〜図27に示すような冷却水温度の変化、ケーブル導体温度の変化、或は各解析面における温度分布等として、表示装置15に表示され或は印刷装置16でプリントアウトされる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
以上のように、本発明によれば、地中に埋設された或いは計画段階にある電力ケーブル線路の導体温度の変化を、冷却水路を並設することに効果を反映して推定することが可能となる。これにより、温度条件が厳しい一部地域のためにケーブル通電電流の抑制やケーブルのサイズアップ等を回避するための有効な冷却水路の設計が可能となり、既設の電力ケーブル線路については、その効率的運用が図られると共に、新たな線路の敷設に際してはコストが削減されるなど、電力輸送技術分野に寄与することになる。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明の実施の形態の全体の構成を示すシステム図である。
【図2】同実施の形態で用いられる土壌熱定数データベースの構成図である。
【図3】管路熱定数データベースの構成図である。
【図4】ケーブル管路データベースの構成図である。
【図5】冷却水管路データベースの構成図である。
【図6】線路データベースの構成図である。
【図7】地温データベースの構成図である。
【図8】気象データベースの構成図である。
【図9】冷却水データベースの構成図である。
【図10】負荷率データベースの構成図である。
【図11】熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスの説明図である。
【図12】冷却水路の有限要素モデルの説明図である。
【図13】乱流判定データの説明図である。
【図14】ケーブル管路及び冷却水管路の増せ粒の断面図である。
【図15】冷却水管路の構成を示す概略平面図である。
【図16】解析操作の流れを示すフローチャートである。
【図17】解析面設定画面の説明図である。
【図18】管路構成設定画面の説明図である。
【図19】土壌データ設定画面の説明図である。
【図20】線路データ設定画面の説明図である。
【図21】有限要素分割されたケーブル管路モデル表示画面の説明図である。
【図22】冷却水データ設定画面の説明図である。
【図23】通電条件設定画面の説明図である。
【図24】地域データ設定画面の説明図である。
【図25】解析条件設定画面の説明図である。
【図26】解析結果に基づく冷却水温度の変化を示す画面の説明図である。
【図27】同じくケーブル導体温度の変化を示す画面の説明図である。
【図28】同じく解析面の温度分布を示す画面の説明図である。
【図29】コンピュータによる解析動作のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図30】同ルーチン中における節点温度計算サブルーチンを示すフローチャートである。
【図31】水温の受渡し処理サブルーチンを示すフローチャートである。
【図32】解析面BのGo管温度設定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図33】解析面DのRe管温度設定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図34】解析面CのRe管温度設定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図35】解析面間での冷却水温度受渡し状態を示す表である。
【図36】受渡し温度を求める補間方法の説明図である。
【符号の説明】
【0154】
1 冷却水管路
3 ケーブル管路
10 コンピュータ
11 中央処理装置
12 入力装置
13 読み込み装置
14 記録装置
15 表示装置
16 印刷装置
17 メモリ
DB1〜DB9 データベース
A〜D 解析面
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設される電力ケーブルの導体温度を有限要素法を用いて推定する方法及びシステム、並びにその方法やシステムをコンピュータを用いて実現させるプログラムに関し、有限要素法を用いた温度解析技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設される電力ケーブルには許容導体温度が設定されており、目標とする電流を通電したときに、導体温度がこの許容温度を超えないように、ケーブルの種類やサイズ等の仕様或いはケーブル管路の構成等を設計する必要があり、その目安として、日本電線工業会より電力ケーブル許容電流計算マニュアル(JCS168号E)が提供されている。
【0003】
しかし、このマニュアルでは、管路の周囲の土壌の熱容量や熱伝導率等の熱定数が安全サイドに設定された固定値とされており、そのため、導体温度の計算値が実際より高い値となって、徒に通電電流を制限したり、必要以上にケーブルをサイズアップするなどの無駄を生じていた。
【0004】
このような問題に対し、近年、電力ケーブルの効率的運用等を目的として、導体温度のより高精度な推定が試みられており、その一環として、ケーブル管路に隣接して埋設された空管路内の温度と、これらの管路の周辺の土壌温度及び土壌熱定数とを測定し、これらの実測データを電力ケーブル許容電流計算マニュアルに代入してケーブル導体温度を算出するようにした発明が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
この発明によれば、電力ケーブルを設置した管路周辺の土壌の温度や熱定数として従来より実際に近い値が採用されることになり、ケーブル導体温度がより精度よく推定されることになる。
【0006】
また、空管路内の温度や管路周辺における土壌の温度や熱定数等の実測に変え、通電電流による発熱量を算出すると共に、その発熱量と予め設定したケーブル管路やその周辺の土壌の熱定数等に基づいて、特定地点におけるケーブル導体温度を有限要素法を用いてシミュレーションすることが試みられており、その例として、本件出願人が先に特許出願した発明がある(特許文献2参照)。
【0007】
この発明によれば、土壌温度等の実測を要することなく、ケーブル敷設計画の段階で、ケーブル導体温度がその経時変化を含めてシミュレーションすることが可能となるが、特に、この特許文献2の発明では、当該地点における気象データを利用して地表面における熱収支量を算出し、これを有限要素解析のためのデータとして用いるので、ケーブル導体温度の経時変化が、1日の間の時間による変化や1年の間の季節による変化等を含めて、一層精度よくシミュレーションされることになる。
【0008】
【特許文献1】特開2001−165781号公報
【特許文献2】特開2004−112964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、長距離にわたって電力ケーブルを敷設する場合、埋設環境や気象条件等により、一部の地域のみでケーブルの導体温度が許容温度を超えることが予想される場合がある。この場合、その地域で導体温度が許容温度を超えないようにするために、ケーブル全体のサイズアップを要したり、全線路にわたって通電電流を低減させたりする必要が生じ、条件の厳しい一部地域のために、全体としての効率が犠牲にされることになる。
【0010】
これに対しては、埋設環境や気象条件が温度的に厳しい地域では、ケーブルに冷却水路を並設し、その地域におけるケーブルの導体温度を許容温度以下に低下させることにより、全体としてのケーブルのサイズアップや通電電流の抑制を回避して、電力輸送の効率を向上させることが考えられる。
【0011】
そこで、本発明は、冷却水路を設けた場合にケーブル導体温度の上昇がどのように抑制されるかなどを、その長期的な経時変化を含めて精度よく推定することができる方法やシステム等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0013】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、地中に埋設された電力ケーブルに冷却水路を並設した場合における該水路並設地域のケーブル導体温度を有限要素法を用いて推定する方法に関するものであって、導体温度に影響するパラメータとして、上記ケーブルの通電電流に対応する発熱量と、当該地域における冷却水温度とを計算すると共に、これらのパラメータと当該地域におけるケーブル及び冷却水路並びにその周辺構成要素の熱定数とを用い、上記ケーブルの導体温度を計算することを特徴とする。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の方法において、導体温度に影響するパラメータとして、ケーブルの通電電流に対応する発熱量と冷却水温度とに加えて、気象データから算出される当該地域の地表面における熱収支量を用いることを特徴とする。
【0015】
一方、請求項3に記載の発明は、地中に埋設された電力ケーブルに冷却水路を並設した場合における該水路並設地域のケーブル導体温度を、該ケーブル及び冷却水路を横断する断面について適用される有限要素法を用いて推定する導体温度推定システムに関するものであって、当該地域におけるケーブル及び冷却水路並びにその周辺構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段と、ケーブル及び冷却水路の配設構成を設定する配設構成設定手段と、ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段と、冷却水の供給に関するデータを設定する冷却水データ設定手段と、上記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段と、上記冷却水データ設定手段で設定された冷却水に関するデータに基づいて冷却水温度を算出する水温算出手段と、上記配設構成設定手段で設定されたケーブル及び冷却水路の配設構成に基づいて、ケーブルを横断する解析面の所定解析対象領域を有限要素分割して有限要素モデルを作成するモデル作成手段と、上記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて上記解析対象領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段と、上記発熱量算出手段及び水温算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量及び冷却水温度に基づいて上記解析対象領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段と、上記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で上記解析対象領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段とを有することを特徴とする。
【0016】
ここで、上記熱定数記録手段は、ケーブル自体、ケーブル用や冷却水用の管路、及びこれらが埋設された土壌等の比熱容量や熱伝導率(熱抵抗)等を記録するようになっており、配設構成設定手段は、ケーブル用及び冷却用管路の数、配設位置、内外径等を記録するようになっており、通電電流設定手段は、各ケーブルへの通電電流やその経時変化等を記録するようになっており、さらに冷却水データ設定手段は、冷却水の供給温度や供給量等を設定するようになっている。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、上記請求項3に記載のシステムにおいて、冷却水路が並設された地域内に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段が設けられていると共に、水温算出手段は、冷却水入口近傍の解析面では冷却水温度を一定の入口温度に設定し、各解析面に位置する他の水路断面については、その上流側断面における温度変化を反映させて順次下流側の断面の冷却水温度を算出し、かつ、節点温度算出手段は、冷却水路の節点については上記水温算出手段で算出された冷却水温度を用いて、各解析面ごとに解析対象領域の各節点温度を計算することを特徴とする。
【0018】
そして、請求項5に記載の発明は、上記請求項3または請求項4に記載のシステムにおいて、各地域各時期の気象データを記録した気象データ記録手段と、指定された解析対象地域及び時期の気象データを上記気象データ記録手段から読み出し、その気象データに基づいて地表面の熱収支量を算出する熱収支量算出手段とが備えられ、ベクトル作成手段は、発熱量算出手段で算出されたケーブルの発熱量と、水温算出手段で算出された冷却水温度と、上記熱収支量算出手段で算出された地表面の熱収支量集とに基づいて熱荷重ベクトルを作成することを特徴とする。
【0019】
さらに、請求項6に記載の発明は、地中に埋設された電力ケーブルに冷却水路を並設した場合における該水路並設地域のケーブル導体温度を、該ケーブル及び冷却水路を横断する断面について適用される有限要素法を用いて推定する導体温度推定プログラムに関するものであって、コンピュータを、当該地域におけるケーブル及び冷却水路並びにその周辺構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段、ケーブル及び冷却水路の配設構成を設定する配設構成設定手段、ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段、冷却水の供給に関するデータを設定する冷却水データ設定手段、上記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段、上記冷却水データ設定手段で設定された冷却水に関するデータに基づいて冷却水温度を算出する水温算出手段、上記配設構成設定手段で設定されたケーブル及び冷却水路の配設構成に基づいて、ケーブルを横断する解析面の所定解析対象領域を有限要素分割して有限要素モデルを作成するモデル作成手段、上記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて上記解析対象領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段、上記発熱量算出手段及び水温算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量及び冷却水温度に基づいて上記解析対象領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段、及び、上記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で上記解析対象領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段として機能させることを特徴とする。
【0020】
また、請求項7に記載の発明は、上記請求項6に記載のプログラムにおいて、コンピュータを、冷却水路が並設された地域内に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段として機能させると共に、水温算出手段として機能させるときは、冷却水入口近傍の解析面では冷却水温度を一定の入口温度に設定し、各解析面に位置する他の水路断面については、その上流側断面における温度変化を反映させて順次下流側の断面の冷却水温度を算出するように機能させ、かつ、節点温度算出手段として機能させるときは、冷却水路の節点については上記水温算出手段で算出された冷却水温度を用いて、各解析面ごとに解析対象領域の各節点温度を計算するように機能させることを特徴とする。
【0021】
そして、請求項8に記載の発明は、上記請求項6または請求項7に記載のプログラムにおいて、コンピュータを、各地域各時期の気象データを記録した気象データ記録手段、及び、指定された解析対象地域及び時期の気象データを上記気象データ記録手段から読み出し、その気象データに基づいて地表面の熱収支量を算出する熱収支量算出手段として機能させると共に、ベクトル作成手段として機能させるときは、発熱量算出手段で算出されたケーブルの発熱量と、水温算出手段で算出された冷却水温度と、上記熱収支量算出手段で算出された地表面の熱収支量集とに基づいて熱荷重ベクトルを作成するように機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
上記の構成により、本願の各請求項に記載した発明によれば、それぞれ次のような効果が得られる。
【0023】
まず、本願の請求項1に記載の方法によれば、地中に埋設される電力ケーブルに冷却水路が並設される場合に、該水路並設地域におけるケーブルの導体温度が冷却水温度の影響を含めて計算されることになる。したがって、例えば長距離に及ぶケーブル埋設区間における温度的に厳しい地域について、どのように冷却水路を設ければ、線路全体としての通電電流の低減やケーブルのサイズアップが不要になるかなどの推定が可能となり、電力輸送の効率の向上に寄与することになる。
【0024】
また、請求項2に記載の方法によれば、ケーブルの導体温度推定のためのパラメータとして、ケーブル自体の発熱量と冷却水温度とに加えて、地表面における熱収支量が含まれるから、当該推定地域におけるケーブル導体温度が、より現実に近い値に推定されることになる。
【0025】
一方、請求項3に記載のシステムによれば、上記請求項1に記載の方法がコンピュータの中央処理装置、記録装置及び入出力装置等の各種ハードウェア資源を用いて具体的に実行されることになり、冷却水温度を反映したケーブル導体温度のシミュレーションをコンピュータを用いて行うことが可能となって、例えば、最適な冷却水路の設定を容易に見出すことが可能となるなど、電力ケーブル敷設の設計が効率よく行われることになる。
【0026】
また、請求項4に記載のシステムによれば、冷却水温度の計算に際して、水路入口の一定温度からケーブルの熱を吸収することにより次第に温度が上昇しながら流れる状態が反映されることになり、冷却水温度の影響を含めたケーブル導体温度のシミュレーションが一層精度よく行われることになる。
【0027】
さらに、請求項5に記載のシステムによれば、上記請求項2に記載の方法と同様に、地表面における熱収支量をも含めてケーブル導体温度が計算されるので、シミュレーションがより現実に近い状態で行われることになる。
【0028】
そして、請求項6〜8に記載のプログラムによれば、これらをコンピュータに搭載することにより、請求項3〜6に記載のシステムと同様のシステムが構成されることになり、これらのシステムと同様の効果が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明に係るケーブル導体温度推定システムについてのものであるが、このシステムで用いられるシミュレーション方法及びそのプログラムは、本発明に係るケーブル導体温度推定方法及びケーブル導体温度推定用プログラムの実施の形態を構成する。
【0030】
図1は、この実施の形態に係るシステムのコンピュータの構成を示すもので、このコンピュータ10は、中央処理装置11を中心として、各種条件の設定やシステムの制御等に用いられる入力装置12と、CD−ROM等の記録媒体20からプログラムや各種データ等の情報を読み込む読込み装置13と、該装置13によって読み込んだプログラムやデータを記録する記録装置14と、入力画面や計算結果等を表示する表示装置15と、計算結果等を印刷する印刷装置16とを有する。また、上記中央処理装置11には、処理中に一時的にデータを格納するメモリ17が付設されている。
【0031】
上記記録媒体20には、コンピュータ10の制御や計算動作のプログラムと、土壌熱定数データベースDB1、管路熱定数データベースDB2、ケーブル管路データベースDB3、冷却水管路データベースDB4、線路データベースDB5、地温データベースDB6、気象データベースDB7、冷却水データベースDB8、負荷率データベースDB9とが記録されており、該記録媒体20から上記読込み装置13によってこれらのプログラムやテーブルが読み込まれ、上記記録装置14に記録されるようになっている。また、この記録装置14には、上記中央処理装置11による計算結果も記録されるようになっている。
【0032】
上記土壌熱定数データベースDB1には、図2に示すように、土壌の種類ごとに、その名前、質量密度、比熱、及び熱抵抗が記録されるようになっている。
【0033】
また、管路熱定数データベースDB2には、図3に示すように、ケーブルが収納される管路及び冷却水路を構成する管路について、その種類ごとに、名前、質量密度、比熱、及び熱抵抗が記録されるようになっている。また、このデータベースDB2には、管路内空として空気の質量密度、比熱、及び熱抵抗も記録されるようになっている。
【0034】
また、ケーブル管路データベースDB3には、図4に示すように、ケーブル収納用の各管路について、その仕様の名称と外径及び内径とが記録されるようになっている。
【0035】
同様に、冷却水管路データベースDB4には、図5に示すように、冷却水路を構成する各管路について、その仕様の名称と外径及び内径とが記録されるようになっている。
【0036】
また、線路データベースDB5には、図6に示すように、各種類のケーブル線路について、適用電圧、種類名、心数、及びサイズをインデックスとして、線路を構成する導体、絶縁体及びシースについての外径、比熱容量、及び固有熱抵抗、並びに単位長さあたりの電気抵抗値であるRACの各値がそれぞれ記録されるようになっている。
【0037】
また、地温データベースDB6には、図7に東京のものを例にとって示すように、各地域ごとに、各深さの地温が月別に記録されるようになっている。
【0038】
また、気象データベースDB7には、図8に東京のものを例にとって示すように、各地域ごとに、1年間の1時間ごとの気温、湿度、風速、日射量及び降水量の各データが記録されるようになっている。
【0039】
また、冷却水データベースDB8には、図9に示すように、冷却水の動粘性係数、プラントル数及び熱伝導率が、水温ごとに記録されるようになっている。
【0040】
さらに、負荷率データベースDB9には、図10に示すように、例えば斜線で示す8月の平日の14時等の1年中で最も電気使用量が多くなる時点の通電量を1としたときの各時点の通電量の比率を、月別、曜日別(日曜、平日、土曜)、及び時間別に示したデータが記録されるようになっている。
【0041】
そして、記録媒体20から記録装置14に読み込まれるプログラムは、中央処理装置11を作動させ、上記各データベースDB1〜DB9に記録されているデータと、入力装置12によって設定されるデータ等に基づき、有限要素法を用いて、対象地域のケーブル及び冷却水路を含む所定の解析対象領域内各部の温度を所定の時間間隔で計算し、冷却水温度の影響を反映したケーブル導体温度の変化をシミュレーションする。
【0042】
ここで、上記プログラムによる有限要素法を用いたシミュレーションの理論的背景ないし計算方法について説明する。
【0043】
このシミュレーションは、次式、
KX(∂2θ/∂x2)+KY(∂2θ/∂y2)+Q
=ρC(∂θ/∂t) …(1)
で示される2次元の熱伝導方程式を基礎とし、この式(1)をケーブル及び冷却水路を横断する解析断面について適用する。
【0044】
この式(1)は、点(x,y)における各時刻tの温度θを示すものであり、KX、KYはX、Y方向の熱伝導係数、Qは単位時間、単位体積(面積)あたりの熱収支や内部発熱等に由来する熱量、ρは質量密度、Cは比熱である。
【0045】
この式(1)を、有限要素法の適用のためにマトリックス表示すると、
[C]・[dθ/dt]+[K]・[θ]=[Q] …(2)
となる。
【0046】
ここで、[C]は熱容量マトリクス、[K]は熱伝導マトリクス、[θ]は節点温度ベクトル、[dθ/dt]は節点温度の時間微分ベクトル、[Q]は熱荷重ベクトルを示し、図11に示すように、当該断面における所定の解析領域を多数の要素に有限要素分割して各節点に番号1…i…j…を付したときに、熱容量マトリックス[C]を構成する項Cijは、節点i,j間の比熱容量(比熱×質量密度:J/cm3・°K)とその間における体積に関連した値の積を示し、熱伝導マトリックス[K]を構成する項Kijは、節点i,j間の各要素の熱伝導率(J/sec・cm3・°K)とその間の体積に関連した値との積を示す。
【0047】
また、熱荷重ベクトル[Q]を構成する項Qjは、地表面上の節点の場合は、その節点によって代表される領域の地表面での単位面積、単位時間あたりの熱収支量q1(J/sec・cm2)とその領域の面積(当該断面上の長さ×単位長さ)の積を、地中内の節点については、その節点によって代表される領域における単位体積、単位時間あたりの内部発熱量q2(J/sec・cm3)とその領域の体積(当該断面上の面積×単位長さ)との積を、冷却管路の内面の節点については、その節点によって代表される領域における単位面積、単位時間当たりの伝熱量q3(J/sec・cm2)とその領域の面積(当該断面上の長さ×単位長さ)との積をそれぞれ示し、さらに、冷却水内に設定した節点については、その節点によって代表される冷却水の単位面積、単位時間当たりの伝熱量q4(J/sec・cm2)とその管路内部の断面積との積をそれぞれ示すが、当該節点が地表面上や冷却水路内等になく、かつ内部発熱を伴わない領域の点である場合には、Qj=0となる。
【0048】
そして、実際のシミュレーションに際しては、上記式(2)に基づき、各節点の時刻tの温度θtからΔt時間後の時刻t′(=t+Δt)における温度θt′を、次式、
(2[C]t″/Δt+[K]t″)[θ]t′=
(2[C]t″/Δt−[K]t″)[θ]t +2[Q]t″ …(3)
に従って求めることになる。
【0049】
ここで、時刻t″は時刻tとt′の中間の時刻(=t+Δt/2)であって、この時刻t″について上記式(2)を示した式、
[C]t″・[dθ/dt]t″+[K]t″・[θ]t″=[Q]t″
に、
[θ]t″=([θ]t+[θ]t′)/2
[dθ/dt]t″=([θ]t′−[θ]t)/Δt
の関係を代入することにより、上記式(3)が得られる。
【0050】
そして、この式(3)において、熱容量マトリックス[C]t″を構成する各項(Cij)t″に各要素の比熱容量から求めた値を与え、熱伝導マトリックス[K]t″を構成する各項(Kij)t″に各要素の熱伝導率から求めた値を与えると共に、熱荷重ベクトル[Q]t″の各項(Qj)t″の値として、地表面上の節点、冷却管路内面の節点及び冷却水内の節点には、その節点によって代表される面での時刻t″における熱の伝達量を与え、導体内部の節点には、その節点によって代表される領域内での時刻t″における発熱量を与える。
【0051】
また、節点温度ベクトルの初期値[θ]t=0としては、各節点の位置(深さ)に応じた地温を各項の値とするベクトルを与え、また、節点温度の時間微分ベクトルの初期値[dθ/dt]t=0として、各項の値が0のベクトルを与え、その状態から任意の期間、所定の解析周期Δtごとに節点温度ベクトル[θ]を順次算出する。
【0052】
なお、冷却水内の節点温度ベクトルの初期値については、管路に冷却水を満たした後、直ちに解析を開始する場合は、上記のような深さに応じた地温とするのではなく、周囲からの熱の吸収による温度上昇前の水温、即ち冷却水起動直後に管路の入口に供給される冷却水の温度(以下、「入口温度」という)を初期値とすることになる。
【0053】
また、各要素の比熱容量及び熱伝導率が時間の関数として与えられるときは、上記熱容量マトリクス[C]t″の各項の値、及び熱伝導マトリックス[K]t″の各項の値は、それぞれの時間に関する関数から求められるが、時間依存性がないときは一定値が用いられる。
【0054】
一方、このシミュレーションにおいて、熱荷重ベクトル[Q]の項Qjの値として与えられる地表面における熱収支量q1(J/sec・cm2)、導体内部における内部発熱量q2(J/sec・cm3)、冷却管路内面における伝熱量q3(J/sec・cm2)及び冷却水の伝熱量q4(J/sec・cm2)は、例えば次のように計算される。
【0055】
まず、地表面の単位時間、単位面積あたりの熱収支量q1を、
q1=日射吸収量(q11)
+大気から地表面への輻射量(q12)
−地表面から大気への輻射量(q13)
−地表面から大気への伝熱量(q14) …(4)
と定義する。
【0056】
ここで、日射吸収量q11は、
q11=日射量×(1−地表面反射率)
である。
【0057】
また、大気から地表面への輻射量q12及び地表面から大気への輻射量q13は、σをステファンボルツマン定数(J/sec・cm2・°K4)とし、ε12、ε13を輻射率(無次元)、Tを大気温度(°K)、Twを地表面における当該要素の温度(°K)として、
q12=σ×ε12×T4
q13=σ×ε13×Tw4
で示される。
【0058】
その場合に、大気から地表面への輻射量q12については、輻射率ε12は、例えば、
降水量なし、かつ湿度50%未満で、ε12=0.650
降水量なし、かつ湿度50%以上で、ε12=0.850
降水量ありで、 ε12=0.925
と設定する。
【0059】
また、地表面から大気への輻射量q13については、輻射率ε13は、降水量及び湿度に関係なく、
ε13=0.965
と設定する。
【0060】
さらに、地表面から大気への伝熱量q14は、
q14=ρ′×Cp×D×(Tw−T)
と定義する。
【0061】
ここで、ρ′は空気密度(g/cm3)、Cpは空気の定圧比熱(J/g・°K)、Twは地表面における当該要素の温度(°K)、Tは大気温度(°K)であり、また、Dは外部拡散係数(cm/sec)であって、Uを風速として、例えば、
D=0.0027+0.031×U
と設定する。
【0062】
なお、上記の日射量、大気温度(気温)、湿度、降水量、風速は気象データベースDB7から読み出される。また、地表面反射率はプログラムに組み込まれた一定値が用いられるが、例えば土壌熱定数データベースDB1に地表面を構成する土壌ごとに反射率を記録しておき、それを読み出して用いるようにしてもよい。
【0063】
そして、式(4)で示される地表面でのトータルの熱収支量q1に各節点によって代表される地表面の領域の面積を掛けた値が、前述の式(3)における熱荷重ベクトル[Q]の地表面に位置する節点についての項Qjの値として用いられる。
【0064】
また、ケーブル導体における内部発熱量q2については、
q2=(I2×RAC)/S …(5)
と定義する。
【0065】
この式(5)の分子は、ケーブルの単位長さあたりの発熱量(J/sec・cm)を示し、これをケーブルの導体部分の断面積Sで割った値が、導体の単位時間、単位体積あたりの内部発熱量(J/sec・cm3)となる。
【0066】
ここで、Iは電流(A)、RACはケーブルの単位長さあたりの抵抗(Ω/cm)であり、RACは線路データベースDB5から求められる。また、電流Iは、別途設定された値と負荷率データベースDB9とを用いて求められる。
【0067】
そして、式(5)で示される内部発熱量q2にケーブル導体内の節点によって代表される領域の体積を掛けた値が、前述の式(3)における熱荷重ベクトル[Q]の当該節点についての項Qjの値として用いられる。
【0068】
さらに、冷却管路内面の伝熱量q3及び冷却水の伝熱量q4は、管路内面と冷却水との間の熱伝達によるものとして求められ、図12に示すように、冷却水を代表する節点の温度をTc、管路内面における複数の節点での温度をTfi(i=1、2、…)とすれば、
冷却管路内面の各節点の伝熱量q3は、
q3=α(Tfi−Tc) …(6)
で示され、冷却水内の節点の伝熱量q4は、
q4=αΣ(Tfi−Tc) …(7)
で示される。
【0069】
そして、これらの値に当該節点で代表される領域の面積を掛けた値が、前述の式(3)で、熱荷重ベクトル[Q]の当該節点についての項Qjの値として用いられる。
【0070】
なお、上記式(6)、(7)におけるαは、管路内面と冷却水との間の平均熱伝達率(J/sec・cm2・℃)であって、
α=Nu・λ/d
で示される。
【0071】
ここで、λは冷却水の熱伝導率(J/sec・℃)、dは管路内径(cm)である。また、Nuはヌセルト数であって、流速0の場合、即ち冷却水が停止しているときは、例えば、管内壁温一定の層流熱伝達の式から、
Nu=3.66
とされる。
【0072】
また、冷却水が流れる場合には、例えば、管内の乱流熱伝達の式、
Nu=0.023・Re0.8・Pr0.4
が用いられる。なお、Reはレイノルズ数、Prはプラントル数で、それぞれ
Re=ωd/ν
Pr=ν/a
であり、ωは冷却水の平均流速度(cm/sec)、νは冷却水の動粘性係数(cm2/sec)、aは冷却水の温度伝導率(cm2/sec)である。
【0073】
したがって、冷却水が停止しているときは、
α=3.66・λ/d
流れているときは、
α=0.023・(ωd/ν)0.8・(ν/a)0.4・λ/d
となる。
【0074】
そして、熱伝導率λ、動粘性係数ν及びプラントル数Pr(=ν/a)は、図9の冷却水データベースDB8から、そのときの水温に応じて読み取られ、また、管路内径dは図5の冷却水管路データベースDB4から読み取られると共に、平均流速度ωは、管路内径dと解析時に設定される流量とから求められる。
【0075】
ここで、図13に、冷却水路用として一般に使用される各内径の管路に流量を異ならせて、0℃及び60℃の冷却水をそれぞれ流したときのレイノルズ数Remin、Remaxを示すが、いずれも、乱流条件の2320を超え、これらの条件での流れは乱流であることが示されている。
【0076】
一方、上記式(6)、(7)における冷却水温度Tcは、次のような方法で求められる。
【0077】
今、図14、図15に示すように、冷却水管路1が、冷却水供給装置2からケーブル管路3…3に平行に延びた後、Uターンして再び冷却水供給装置2に戻るように配設され、冷却水管路1の往路(以下、「Go管」という)の入口1′に上記供給装置2によって一定温度(入口温度)に設定された冷却水が供給されると共に、周囲の熱により温度上昇しながら、復路(以下、「Re管」という)によって冷却水供給装置2に戻され、該装置2によって上記入口温度に冷却された後、再びGo管の入口1′に供給されるシステムが設けられているものと想定する。その場合、上記冷却水供給装置2における熱交換による発熱は当該解析領域外で行われるものとする。
【0078】
そして、上記のような冷却水管路1の配設地域に、管路入口1′を通る解析面Aを含んで、冷却水管路1及びケーブル管路3…3を横断する複数の解析面A〜Dを設定し、各面A〜Dについて、以下に詳述する有限要素法による温度変化の解析をそれぞれ行う。
【0079】
その場合に、冷却水が流れている状態では、その流れに伴って、各解析面上の上流側の管路断面から下流側の管路断面へ冷却水温度が順次受け渡されるものとし、その場合の温度の受け渡し処理を次のような方法で行う。
【0080】
つまり、各解析面A〜DにおけるGo管の断面をAGO〜DGOと表示し、Re管の断面をARE〜DREと表示し、これらの各断面を、AGO→BGO→CGO→DGO→DRE→CRE→BRE→AREの順に冷却水が流れるときの各隣接断面間を移動する時間をΔtab、Δtbc、Δtcd、Δtdd、Δtdc、Δtcb、Δtbaとする。これらの時間は、冷却水の流量と、冷却水管路の断面積とから算出される。また、これらの時間のうちの最も長い時間を最長移動時間Δtcとする。
【0081】
そして、各解析面A〜Dのそれぞれについて、ケーブル管路による内部発熱量や地表面における熱収支量などと共に、所定の解析時間間隔(解析周期)Δtで有限要素解析を行い、各解析面ごとに独立して、解析領域内の全ての節点と共に冷却水を代表する節点の温度を計算する。
【0082】
また、冷却水の起動から上記最長移動時間Δtcが経過した直後の解析周期では、各解析面についての節点温度の計算後に、断面AGOについては、その時点の計算値を冷却水の入口温度に置換すると共に、断面BGOから断面AREまでの各断面の温度については、その上流側の断面において、その上流側断面から当該断面までの冷却水移動時間の間に上昇した温度を前回の解析周期で得られた計算値と今回の計算値で得られた計算値とから線形補間法により算出し、その時点の計算値を線形補間によって得られた値に置換する。そして、次の解析周期では、このようにして置換した値に基づいて、各解析面ごとに再度解析を行う。
【0083】
このようにして、全ての断面間で冷却水の移動が終了した時間Δtcごとに、各断面の冷却水温度を上流側の断面から下流側の断面に受け渡しながら解析を続行することにより、冷却水が流れることによる効果を反映しながら、各解析面におけるケーブル導体温度をシミュレーションする。
【0084】
その場合に、上記最長移動時間Δtcが解析周期Δtより短いときは、毎解析周期Δtごとに上記の温度の受け渡しが行われることになる。また、折り返し点直前の解析面Dにおいて、Go管からRe管までの距離が短い場合は、断面DGOの温度と断面DREの温度を同一とする。
【0085】
以上のシミュレーション方法は、具体的には図1に示すコンピュータ10の記憶装置14に記録媒体20から読み込まれて記録されたプログラム及び各種データベースDB1〜DB9、並びに入力装置12によって入力された各種データ等に基づき、中央処理装置11が実行することになり、以下、これらの動作をフローチャートに従って説明する。
【0086】
図16に示すフローチャートは、当該システムを用いた導体温度解析作業の全体の流れを示すもので、まず、ステップS1で、図17に示すコンピュータ10の表示装置13に表示される画面W1のフォームF1上で、冷却水路が配設されている領域に、該水路を横断する複数の解析面を設定する。その場合に、冷却水供給装置に最も近い位置に最初の解析面A(位置0.00)を設定し、水路の折り返し点に向かって順次後続の解析面B、C…の位置を入力する。なお、この画面W1では、全解析面同一間隔のチェックボタンをオンにすれば、その間隔と解析面数とを入力することによって、各解析面の位置の入力が省略されるようになっている。
【0087】
次に、フローチャートのステップS2で、ケーブル用及び冷却水用管路の構成や土層の構成等を設定する。この設定は、図18に示す画面W2に表示されたフォームF2を用い、次のように行われる。
【0088】
まず、ケーブル用管路については、埋設モデルの選択、管路の本数、各管路の中心位置、管路タイプ、内、外径等の管路定義、及び上記埋設モデルが埋め戻しである場合の埋め戻し領域の設定(管路周辺定義)等を行う。その場合に、上記の管路定義においては、管路タイプを選択することにより、その内、外径がケーブル管路データベースDB3から読み出されて表示されるようになっている。
【0089】
また、土層定義として、土層の数や層厚等を設定する共に、有限要素法を適用する解析対象領域を自動で設定するか否かを符号aで示すチェックボックスで指示し、自動で設定しない場合はその領域の幅及び深さを入力する。自動で設定する場合は、幅は管路周辺の幅から自動計算され、深さは所定の値(例えば8m)に自動設定される。
【0090】
また、冷却水路については、水路の数、各水路についてのGo管及びRe管の中心位置、管路タイプ、内、外径等が設定される。この冷却水用管路についても、管路タイプを選択することにより、その内、外径が冷却水管路データベースDB4から読み出されて表示されるようになっている。
【0091】
これにより、ケーブル管路及び冷却水管路、並びにその周辺の土層を含む解析領域全体の構成が確定され、その領域を有限要素分割した有限要素法による解析用の全体モデルが自動作成される。今、例えば、管路の埋設モデルが図18の画面W2に符号bで示す埋め戻しモデルであり、管路の本数が6本であり、土層の層数が2であって、管路周辺定義及び第1層の層厚が画面W2に示すように設定されたものとすると、図19に示すように、次の画面W3のフォームF3に、領域全体が有限要素分割されてなる全体モデルが表示される。
【0092】
次に、フローチャートのステップS3として、上記全体モデルが表示された図19の画面W3上で、土壌データを設定する。この画面W3に表示されるフォームF4で、土壌の種類を指定すると、記録装置14に記録されている土壌熱定数データベースDB1からその土壌の質量密度、比熱、熱抵抗等の熱定数が読み出され、フォームF5に表示される。なお、このフォームF5では、上記質量密度等のデータの変更が可能とされている。
【0093】
そして、この土壌データの設定は、フォームF3に示すモデルの場合、管路周辺の埋め戻した部分の土壌c1、領域の上層の土壌c2、及び領域の下層の土壌c3について行うことになる。
【0094】
次に、フローチャートのステップS4として、図20に示す画面W4上で線路データを設定する。この画面W4には、上記全体モデルのケーブル管路d…d及び冷却水管路e…eの周辺部分を拡大表示したフォームF6と、線路データ設定用のフォームF7とが表示され、フォームF7上で、フォームF6に表示された各ケーブル管路d…dごとに、線路タイプを設定する。
【0095】
すなわち、線路タイプとして1相布設タイプまたは3条俵積タイプのいずれかを選択すると共に、各ケーブルの電圧、ケーブルの種類、及びケーブルのサイズ(心数)を指定する。このとき、線路データベースDB5から指定したケーブルについての各種データが読み出され、後の有限要素分割や解析に用いられる。なお、管路内にケーブル線路が敷設されていない空の状態であるときは、符号fで示すチェックボックスをオフにする。以下同様にして、各管路についての線路タイプやケーブルの種類等の設定を順次行う。
【0096】
これにより、1つの解析面について、各ケーブル管路及び冷却水管路の構成が確定し、その管路が占める領域を有限要素分割した解析用の管路モデルが作成される。今、例えば、図20のフォームF7に示すように、ケーブル管路番号1の管路が3条俵積タイプでケーブルが敷設されるように設定され、かつ、そのケーブルの種類やサイズ等が設定されたものとすると、上記線路データベースDB5から読み出されたそのケーブルについての導体部分、絶縁体部分及びシース部分の外径寸法を用い、3条俵積タイプで当該管路内領域が自動的に有限要素分割され、図21に示すように、次の画面W5のフォームF8にその有限要素分割モデルが表示される。
【0097】
そして、図16のフローチャートのステップS5で、上記ステップS2からステップS4までの設定が、ステップS1で設定した全解析面について終了したか否かを判定し、全解析面について終了するまで、ステップS2からステップS4までの設定作業を繰り返す。
【0098】
次に、フローチャートのステップS6で、冷却水データを設定する。この設定は、図22に示す画面W6のフォームF9を用いて行われ、冷却水の起動条件をケーブル通電電流かケーブル表面温度のいずれにするかを選択し、通電電流を選択したときには、冷却を開始する電流値と冷却を終了する電流値とを設定し、ケーブル表面温度を選択したときは、冷却を開始する温度と冷却を終了する温度とを設定する。図例の場合、ケーブル表面温度の解析値が60℃を超えたときに冷却水を起動し、40℃まで低下すれば冷却水を停止することになる。
【0099】
また、この冷却水データの設定フォームF9では、冷却水の供給温度(入口温度)及び供給流量と、冷却管路の折り返し部において、最終解析面上におけるGo管とRe管とで冷却水温度を同じにするか、Go管からRe管への温度の受け渡しを考慮するかを選択し、後者の場合は、最終解析面上におけるGo管からRe管までの冷却水の到達時間を入力するようになっている。
【0100】
以上の冷却水データの設定は、冷却水路が複数ある場合には各水路ごとに行い、図16のフローチャートのステップS7で全水路についての設定が終了するまで繰り返し実行する。
【0101】
さらに、フローチャートのステップS8で、図23に示す画面W7のフォームF10を用いて通電条件の設定を行う。このフォームF10には、先に設定した各管路d…dについての番号、線路タイプ及びケーブルの種類やサイズ等が表示される。そこで、番号が表示された管路について、ケーブルに通電する最大電流を入力すると共に、年上昇を考慮するか否かを選択し、考慮する場合には年上昇率を入力する。
【0102】
また、フローチャートのステップS9で、図24に示す画面W8のフォームF11上で、解析対象地域に関するデータを設定する。つまり、シミュレーションを開始する月、及びシミュレーションを行う地域を設定する。これは、シミュレーション開始時に解析対象領域の全域に対する温度の初期値として、地温データベースDB6から読み出した当該地域各深さのシミュレーション開始月の地温を与え、かつ、気象データテーブルDB7から解析対象地域の気象データを読み出すためである。なお、解析開始と同時に冷却水が起動するものとするときは、冷却水の温度の初期値として前述の入口温度が用いられる。
【0103】
さらに、フローチャートのステップS10で、図25の画面W9を用いて、解析条件を設定する。即ち、画面W9のフォームF12上で、今回のシミュレーションが初期解析であるかリスタート解析であるかを選択する。初期解析の場合は、解析期間を年数または終了時刻で指定すると共に、解析時間間隔の単位、例えば時間、日、月等と、計算結果の出力時間間隔を設定する。ここで、出力時間間隔は、解析周期Δtごとに行われる全解析の結果の出力か、別途入力する時間間隔かのいずれかを選択する。
【0104】
一方、リスタート解析の場合は、上記の設定に加えて、リスタートの基礎となるプロジェクトの名称及びそのプロジェクトを格納している記録装置14内の場所を指定すると共に、基礎となるプロジェクトの継続か中間時点からのリスタートかのいずれかを選択し、後者の場合は、リスタートする時点を指定する。また、リスタートに際して通電条件を変更する場合は、図23に示す画面W7のフォームF10で、通電電流の条件を再設定することになる。
【0105】
以上のようにして、すべての設定が終了し、設定されたデータがメモリ17に記録されると、図16のフローチャートのステップS11として、コンピュータ10の中央処理装置11はケーブル温度シミュレーションのための解析処理を実行する。
【0106】
この処理動作については、改めて詳述するが、その解析処理が終了すれば、ステップS12として、その結果を例えば図26〜図28に示すように表示装置15に表示し、また、要求に応じて印刷装置16によってプリントアウトする。ここで、図26は、冷却水起動から終了までの解析面BにおけるGo管及びRe管の冷却水温度の変化を示し、図27は、解析開始から終了までの解析面Bにおけるケーブル導体温度の変化を示し、図28は解析面Bにおける温度分布を示している。
【0107】
次に、上記解析処理動作を図29以下のフローチャートに従って説明する。
【0108】
まず、図29のフローチャートのステップS21で、メモリ17に記録され或いは記録装置14に記録されているデータベースから必要なデータを読み込み、次いでステップS22で、解析時間間隔(解析周期)Δtを設定するとともに、各解析面間での冷却水移動時間Δtab、Δtbc、Δtcd、Δtdd、Δtdc、Δtcb、Δtbaのうちの最も長い最長移動時間Δtcを設定する。
【0109】
なお、以下の説明の便宜上、管径が一定であるとして、上記各時間を解析周期Δtの何倍かという形式で、例えば次のように設定する。
【0110】
Δtab=Δtba=1.7Δt
Δtbc=Δtcb=0.8Δt
Δtcd=Δtdc=2.5Δt
Δtdd=1.2Δt
この場合、冷却水移動時間が最も長いのは、解析面C、D間の2.5Δtであるから、最長移動時間Δtc=2.5Δtとなる。
【0111】
そして、イニシャライズとして、ステップS23で、現時点の時刻をtを0とした上で、ステップS24で、冷却水起動条件が成立しているか否かを判定する。この判定は、いずれかの解析面においてケーブル導体温度の計算値が冷却水起動温度を超えているか否か、或いはケーブル通電電流が冷却水起動電流値を超えているか否かにより行い、当初はこの条件が成立していないものとする。
【0112】
この場合、次にステップS25で、時刻tに解析周期Δtを加算し、現時刻tをΔtとすると共に、ステップS26で、その時刻が解析終了時刻に達しているか否かを判定する。
【0113】
解析開始当初は、解析終了時刻に達していないから、次にステップS27を実行することになり、各解析面A〜Dのそれぞれについて、前回の解析時刻(t-Δt=0)での解析領域内の全節点の温度から、現時点の時刻(t=Δt)における全節点の温度を計算する。この場合は、前回の各節点の値は初期値(深さに応じた地中温度又は冷却水の入口温度)であり、この値から現在の温度を求めることになる。
【0114】
この前回の計算時の値(又は初期値)から時間Δt後の現時刻tにおける各節点温度を求める計算は、前述した式(1)〜(5)で示す理論に基き、図30に示すフローチャートに従って次のように行われる。なお、以下の説明では、熱容量マトリクス[C]及び熱伝導マトリクス[K]は温度及び時間に対する依存性を有しないものとし、前述の式(3)における[C]t″、[K]t″の各項の値は、いずれもテーブルから読み取られるデータに基づいて算出される固定値とする。
【0115】
まず、ステップS41で、画面W3のフォームF3や画面W5のフォームF8に示すように有限要素分割された全体モデル及び管路モデルについて、土壌熱定数データベースDB1や管路熱定数データベースDB2から読み込んだ該当する土壌や管路の質量密度及び比熱のデータ、及び線路データベースDB5から読み込んだ該当するケーブルの各部の比熱容量データ等を用いて、全解析領域にわたる各節点間の熱容量を算出し、これを各項の値とする熱容量マトリクス[C]を作成する。なお、冷却水の比熱容量は常に「1」とする。
【0116】
また、ステップS42で、上記土壌熱定数データベースDB1や管路熱定数データベースDB2から読み込んだ該当する土壌や管路の熱抵抗データ、及び線路データベースDB5から読み込んだケーブルの各部の固有熱抵抗データ等を用いて、全解析領域にわたる各節点間の熱伝導率を算出し、これを各項の値とする熱伝導マトリクス[K]を作成する。
【0117】
さらに、ステップS43で、当該時点における熱荷重ベクトル[Q]を作成する。
【0118】
この熱荷重ベクトル[Q]の各項のうち、地表面に位置する節点に対応する項の値は、気象データベースDB7から読み出した該当する地域の当該時点の気象データを用い、前述の式(4)に従って算出される熱収支量に基づいて設定される。
【0119】
また、ケーブルの導体内に位置する節点に対応する項については、負荷率データベースDB9から読み出した該当する月、曜日、時間の負荷率と画面W7のフォームF10上で設定した最大電流及び年上昇率とから当該時点の通電電流を算出すると共に、その電流値と、線路データベースDB5から読み出した該当するケーブルのRACのデータとを用いて、前述の式(5)から算出される内部発熱量に基づいて設定される。
【0120】
さらに、冷却水路を構成する冷却管路内面の節点及び冷却水内の節点に対応する項ついては、前回の解析によって得られた管路内面の各接点の温度Tfiと冷却水温度Tcとに基づき、前述の式(6)、(7)からそれぞれ求められる。
【0121】
また、地表面、導体内部、冷却管路内面及び冷却水内部のいずれにも位置しない節点に対応する項の値は0とされ、これにより、現時点における熱荷重ベクトル[Q]の各項の値が設定される。そして、この熱荷重ベクトル[Q]を前述の式(3)における[Q]t″とする。
【0122】
以上のようにして、熱容量マトリクス[C]、熱伝導マトリクス[K]、及び熱荷重ベクトル[Q]t″が作成されると、次にステップS44で、前述の式(3)にこれらを代入し、時刻tでの節点温度ベクトル[θ]tから、時間Δt後の節点温度ベクトル[θ]t′を求める。つまり、温度ベクトル[θ]tの各項の値として、対応する各節点の深さに応じて、地温データベースDB6から読み出した当該地域、当該開始月の各深さの地温(冷却水内部の節点については地温または冷却水入口温度)を代入することにより、節点温度ベクトルの初期値[θ]t=0を作成し、また、各項の値が0の節点温度の時間微分ベクトルの初期値[dθ/dt]t=0を作成すれば、これらを基礎としてΔt時間後の温度ベクトル[θ]t′が順次計算されることになる。
【0123】
そして、ステップS45で、このΔt時間後の温度ベクトル[θ]t′をメモリ17に記録する。
【0124】
以上のようにして、図29のフローチャートのステップS27が全解析面について実行され、次にステップS28で、冷却水が起動中であるか否かを判定し、起動中であると判定されるまで、ステップS24〜S28が繰り返される。これにより、各解析面において、全節点温度が初期値からΔt時間ごとに計算されることになり、ケーブル導体温度の変化が得られる。
【0125】
そして、その間に、前述の冷却水起動条件が成立すれば、冷却水の移動による各断面間での冷却水温度の受け渡し処理を含んだ計算が開始され、冷却水の影響を反映したケーブル導体温度の変化が求められることになる。
【0126】
つまり、ステップ24で、冷却水起動条件が成立したものと判定されると、まず、ステップS29で、現時刻tを冷却水温度の受渡し基準時刻tpとして設定する。次いで、上記ステップS25〜S28を前回同様に実行し、現時刻tを1周期Δt分加算して更新した上で(t=tp+Δt)、ステップS27で、前回の各節点温度の解析値に基づいて現時刻tの各節点温度を各解析面ごとに計算する。このときの計算結果は、図35の表に起動条件成立判定後、1回目の解析時刻(起動後時間:Δt)の値として示す。
【0127】
ここで、図35の表中、TAG0、TAR0、TBG0、TBR0…は、起動条件成立判定直前の解析時における解析面A、B…のGo管及びRe管の冷却水温度の計算結果を示し、同様に、TAG1、TAR1、TBG1、TBR1…は、起動条件成立判定後、1回目の解析時における解析面A、B…のGo管及びRe管の冷却水温度の計算結果を示す。つまり、添え字の1番目の記号は解析面を示し、2番面の記号はGo管、Re管の別を示し、最後の数字は、起動条件成立後、何回目の解析周期で得られた値かを示す。
【0128】
そして、今度は冷却水が起動したから、ステップS28からステップS30を実行し、現時刻tが、温度受渡し基準時刻tpに冷却水の最長移動時間Δtcを加えた時刻を超えたか否か、すなわち、冷却水起動後、各解析面間で冷却水の移動が終了しているか否かを判定する。
【0129】
上記の数値例では、Δtc=2.5Δtであるから、現時刻(tp+Δt)は、まだこの周期が来る時刻(tp+Δtc)に達しておらず、したがって、上記ステップS25〜S28を再び実行し、ステップS27で、上記時刻(tp+Δt)での計算結果TAG1、TAR1、TBG1、TBR1…を用いて、現時刻(tp+2Δt)における各解析面の値TAG2、TAR2、TBG2、TBR2…を計算する。
【0130】
以下同様に、各解析面ごとに解析を行い、現時刻tが温度受渡し基準時刻tpに最長移動時間Δtcを加えた時刻を経過したこと、即ち、t>tp+Δtcとなったことが判定されたとき、上記例では、Δtc=2.5Δtであるから、今回の解析周期が、冷却水起動後、3回目の周期となったとき(t=tp+3Δt)に、ステップS27で、各解析面ごとに冷却水温度を計算した後、ステップS30からステップS31を実行し、冷却水温度の各解析面間での受け渡し処理を実行する。
【0131】
この処理は図31〜図34に示すフローチャートに従って行われ、まず、図31のフローチャートのステップS51で、解析面AのGo管の温度として、計算によって得られたTAG3に変えて、入口温度T0を代入する(図35の起動後時間3Δtの欄参照)。
【0132】
次いで、ステップS52で、解析面BのGo管の温度を設定するが、この設定は、図32に示すフローチャートに従って次のように行われる。
【0133】
即ち、図32のフローチャートのステップS61で、予め計算してメモリ17に記録してある解析面AのGo管から解析面BのGo管まで冷却水が移動する時間Δtabを読み出し、次いで、ステップS62で、この移動時間Δtabが、iΔtよりも大きく、(i+1)Δtよりも小さくなるiを求める。つまり、冷却水起動時からカウントして、何回目と何回目の解析周期の間に時間Δtabが経過するかを求めることになる。上記の例示した値の場合、Δtab=1.7Δtであるから、i=1であって、この移動時間Δtabは、温度受渡し基準時刻tp後、1回目の解析周期と2回目の解析周期との間で経過することになる。
【0134】
そこで、次にステップS63で、解析面AのGo管の1回目の解析周期(tp+Δt)における温度TAG1と、2回目の解析周期(tp+2Δt)における温度TAG2とをメモリ17から読み出し、図36に示すように、これらの値を3:7の内分比で線形補間し、これによって得られた値TAG1−2を、計算によって得られた値TBG3に代えて、解析面BのGo管温度とする。
【0135】
図31のフローチャートのステップS53の解析面CのGo管温度の設定も同様に行われ、この場合、解析面B、C間の移動時間Δtbc=0.8Δtであるから、i=0であって、解析面BのGo管の温度受渡し基準時刻tpの直前の解析周期で計算した温度TBG0と、次の周期(tp+Δt)で計算した温度TBG1とを8:2の内分比で線形補間した値TBG0−1を、計算によって求めたTCG3に代え、解析面CのGo管温度とする。
【0136】
さらに、ステップS54の解析面DのGo管温度の設定も同様に行われ、この場合、解析面C、D間の移動時間Δtbc=2.5Δtであるから、i=2であって、解析面CのGo管の温度受渡し基準時刻tpから2回目の解析周期(tp+2Δt)で計算した温度TCG2と、次の周期(tp+3Δt)で計算した温度TCG3とを5:5の内分比で線形補間した値TCG2−3を、計算によって求めたTDG3に代え、解析面DのGo管温度とする。
【0137】
次に、ステップS55の冷却管路の折り返し点における温度の受け渡し、即ち、解析面DにおけるGo管からRe管への温度の受け渡しは、図33に示すフローチャートに従って次のように行われる。
【0138】
まず、ステップS71で、図22の画面W6で冷却水路について、最終解析面DでのGo管からRe管への冷却水温度の受け渡しを、どのように設定したかを判定し、Go管温度とRe管温度とを同一に設定した場合には、ステップS72で、解析面Cの温度から線形補間により求めた上記のGo管温TCG2−3を、解析面DのRe管温度としても採用する。
【0139】
これに対して、最終解析面DのGo管からRe管への冷却水の移動に所定の時間Δtddを要すると設定した場合は、図32のフローチャートのステップS61〜S63と同様に、ステップS73で、上記移動時間Δtddを読み出し、ステップS74で、その時間Δtddが、iΔtよりも大きく、(i+1)Δtよりも小さくなるiを求める。
【0140】
今、Δtdd=1.2Δtであるから、i=1となり、したがって、解析面DのGo管の1回目の解析周期(tp+Δt)で計算した温度TDG1と、次の周期(tp+2Δt)で計算した温度TDG2とを2:8の内分比で線形補間した値TDG1−2を求め、ステップS75で、この値を計算によって求めたTDR3に代えて、解析面DのRe管温度とする。
【0141】
さらに、図31のフローチャートのステップS56で、解析面CのRe管の温度を設定するが、この設定は、図34に示すフローチャートに従って次のように行われる。
【0142】
即ち、図32のフローチャートと同様に、まず、ステップS81で、解析面DのRe管から解析面CのRe管まで冷却水が移動する時間Δtdcを読み出し、次いで、ステップS82で、この移動時間Δtdcが、iΔtよりも大きく、(i+1)Δtよりも小さくなるiを求める。
【0143】
今、Δtdc=2.5Δtであるから、i=2であり、したがって、ステップS83で、解析面DのRe管温度の、温度受渡し基準時刻tp後、2回目の解析周期(tp+2Δt)における温度TDR2と、3回目の解析周期(tp+3Δt)における温度TDR3とを5:5の内分比で線形補間し、これによって得られた値TDR2−3を、計算によって得られた値TCR3に代えて解析面CのRe管温度とする。
【0144】
図31のフローチャートのステップS57の解析面BのRe管温度の設定も同様に行われ、この場合、解析面C、B間の移動時間Δtcb=0.8Δtであるから、i=0であって、解析面CのRe管の温度受渡し基準時刻tpの直前の解析周期で計算した温度TCR0と、次の周期(tp+Δt)で計算した温度TCR1とを8:2の内分比で線形補間した値TCR0−1を、計算によって求めたTBR3に代え、解析面BのRe管温度とする。
【0145】
さらに、ステップS58の解析面AのRe管温度の設定も同様に行われ、この場合、解析面B、A間の移動時間Δtba=1.7Δtであるから、i=1であって、解析面BのRe管の温度受渡し基準時刻tp後、1回目の解析周期(tp+Δt)で計算した温度TBR1と、次の周期(tp+2Δt)で計算した温度TBR2とを7:3の内分比で線形補間した値TBR1−2を、計算によって求めたTAR3に代え、解析面AのRe管温度とする。
【0146】
以上のようにして、図29のフローチャートのステップS31による冷却水温度の受渡し処理が終了することになる。そして、次に、ステップS32で、冷却水停止条件が成立したか否かを判定し、未だケーブル導体温度が十分冷却されていないなどの理由で、この条件が成立していないときは、上記ステップS29を再度実行し、その時点の時刻(t=tp+3Δt)を新たな温度受渡し基準時刻tpとする。
【0147】
そして、次に、再びステップS25〜S27を実行することになるが、ステップS31による冷却水温度の受渡し処理を行った次の解析周期(t=tp+Δt;冷却水起動後、通算4周期目)では、この受渡し処理によって置換した値を初期値として、ステップS27の各解析面A〜Dごとの解析を行うことになる。
【0148】
その後、現時刻tがtp+Δtcを越えるまで、ステップS27の各解析面A〜Dごとの解析を行うと共に、次にt>tp+Δtcとなった時点、即ち、t=tp+3Δtであって、前回の冷却水温度受渡し処理後、3解析周期目(冷却水起動後、通算6周期目)で、再びステップS31として、図31〜図34のフローチャートに示す冷却水温度の受渡し処理を実行する(図35参照)。
【0149】
以上のように、一定周期(3Δt)ごとの温度受渡し処理を伴う動作を、図29のフローチャートのステップS32で例えばケーブル導体温度が所定温度以下まで低下するなど、冷却水停止条件が成立したことが判定されるまで繰り返されることになり、その間、冷却水が入口温度から熱を吸収しながら管路を循環することによる効果が反映されて、ケーブル導体温度が計算されることになる。
【0150】
そして、上記ステップS32で、冷却水停止条件の成立が判定されれば、ステップS25〜S27のみを繰り返し実行し、冷却水温度の受渡し処理を行うことなく、各解析面A〜Dごとに解析を行い、また、その間に再び冷却水起動条件が成立すれば、一定周期ごとの温度受渡し処理を伴う解析が行われると共に、ステップS26で、現時刻tが解析終了時刻に達したことが判定された時点で解析動作を終了する。
【0151】
そして、その結果は、コンピュータ10の記録装置14に記録されると共に、要求に応じて、例えば、前述の図26〜図27に示すような冷却水温度の変化、ケーブル導体温度の変化、或は各解析面における温度分布等として、表示装置15に表示され或は印刷装置16でプリントアウトされる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
以上のように、本発明によれば、地中に埋設された或いは計画段階にある電力ケーブル線路の導体温度の変化を、冷却水路を並設することに効果を反映して推定することが可能となる。これにより、温度条件が厳しい一部地域のためにケーブル通電電流の抑制やケーブルのサイズアップ等を回避するための有効な冷却水路の設計が可能となり、既設の電力ケーブル線路については、その効率的運用が図られると共に、新たな線路の敷設に際してはコストが削減されるなど、電力輸送技術分野に寄与することになる。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明の実施の形態の全体の構成を示すシステム図である。
【図2】同実施の形態で用いられる土壌熱定数データベースの構成図である。
【図3】管路熱定数データベースの構成図である。
【図4】ケーブル管路データベースの構成図である。
【図5】冷却水管路データベースの構成図である。
【図6】線路データベースの構成図である。
【図7】地温データベースの構成図である。
【図8】気象データベースの構成図である。
【図9】冷却水データベースの構成図である。
【図10】負荷率データベースの構成図である。
【図11】熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスの説明図である。
【図12】冷却水路の有限要素モデルの説明図である。
【図13】乱流判定データの説明図である。
【図14】ケーブル管路及び冷却水管路の増せ粒の断面図である。
【図15】冷却水管路の構成を示す概略平面図である。
【図16】解析操作の流れを示すフローチャートである。
【図17】解析面設定画面の説明図である。
【図18】管路構成設定画面の説明図である。
【図19】土壌データ設定画面の説明図である。
【図20】線路データ設定画面の説明図である。
【図21】有限要素分割されたケーブル管路モデル表示画面の説明図である。
【図22】冷却水データ設定画面の説明図である。
【図23】通電条件設定画面の説明図である。
【図24】地域データ設定画面の説明図である。
【図25】解析条件設定画面の説明図である。
【図26】解析結果に基づく冷却水温度の変化を示す画面の説明図である。
【図27】同じくケーブル導体温度の変化を示す画面の説明図である。
【図28】同じく解析面の温度分布を示す画面の説明図である。
【図29】コンピュータによる解析動作のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図30】同ルーチン中における節点温度計算サブルーチンを示すフローチャートである。
【図31】水温の受渡し処理サブルーチンを示すフローチャートである。
【図32】解析面BのGo管温度設定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図33】解析面DのRe管温度設定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図34】解析面CのRe管温度設定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図35】解析面間での冷却水温度受渡し状態を示す表である。
【図36】受渡し温度を求める補間方法の説明図である。
【符号の説明】
【0154】
1 冷却水管路
3 ケーブル管路
10 コンピュータ
11 中央処理装置
12 入力装置
13 読み込み装置
14 記録装置
15 表示装置
16 印刷装置
17 メモリ
DB1〜DB9 データベース
A〜D 解析面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設された電力ケーブルに冷却水路を並設した場合における該水路並設地域のケーブル導体温度を有限要素法を用いて推定する方法であって、導体温度に影響するパラメータとして、上記ケーブルの通電電流に対応する発熱量と、当該地域における冷却水温度とを計算すると共に、これらのパラメータと当該地域におけるケーブル及び冷却水路並びにその周辺構成要素の熱定数とを用い、上記ケーブルの導体温度を計算することを特徴とするケーブル導体温度推定方法。
【請求項2】
導体温度に影響するパラメータとして、ケーブルの通電電流に対応する発熱量と冷却水温度とに加えて、気象データから算出される当該地域の地表面における熱収支量を用いることを特徴とする請求項1に記載のケーブル導体温度推定方法。
【請求項3】
地中に埋設された電力ケーブルに冷却水路を並設した場合における該水路並設地域のケーブル導体温度を、該ケーブル及び冷却水路を横断する断面について適用される有限要素法を用いて推定する導体温度推定システムであって、当該地域におけるケーブル及び冷却水路並びにその周辺構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段と、ケーブル及び冷却水路の配設構成を設定する配設構成設定手段と、ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段と、冷却水の供給に関するデータを設定する冷却水データ設定手段と、上記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段と、上記冷却水データ設定手段で設定された冷却水に関するデータに基づいて冷却水温度を算出する水温算出手段と、上記配設構成設定手段で設定されたケーブル及び冷却水路の配設構成に基づいて、ケーブルを横断する解析面の所定解析対象領域を有限要素分割して有限要素モデルを作成するモデル作成手段と、上記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて上記解析対象領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段と、上記発熱量算出手段及び水温算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量及び冷却水温度に基づいて上記解析対象領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段と、上記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で上記解析対象領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段とを有することを特徴とするケーブル導体温度推定システム。
【請求項4】
冷却水路が並設された地域内に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段が設けられていると共に、水温算出手段は、冷却水入口近傍の解析面では冷却水温度を一定の入口温度に設定し、各解析面に位置する他の水路断面については、その上流側断面における温度変化を反映させて順次下流側の断面の冷却水温度を算出し、かつ、節点温度算出手段は、冷却水路の節点については上記水温算出手段で算出された冷却水温度を用いて、各解析面ごとに解析対象領域の各節点温度を計算することを特徴とする請求項3に記載のケーブル導体温度推定システム。
【請求項5】
各地域各時期の気象データを記録した気象データ記録手段と、指定された解析対象地域及び時期の気象データを上記気象データ記録手段から読み出し、その気象データに基づいて地表面の熱収支量を算出する熱収支量算出手段とが備えられ、ベクトル作成手段は、発熱量算出手段で算出されたケーブルの発熱量と、水温算出手段で算出された冷却水温度と、上記熱収支量算出手段で算出された地表面の熱収支量集とに基づいて熱荷重ベクトルを作成することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のケーブル導体温度推定システム。
【請求項6】
地中に埋設された電力ケーブルに冷却水路を並設した場合における該水路並設地域のケーブル導体温度を、該ケーブル及び冷却水路を横断する断面について適用される有限要素法を用いて推定する導体温度推定プログラムであって、コンピュータを、当該地域におけるケーブル及び冷却水路並びにその周辺構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段、ケーブル及び冷却水路の配設構成を設定する配設構成設定手段、ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段と、冷却水の供給に関するデータを設定する冷却水データ設定手段、上記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段、上記冷却水データ設定手段で設定された冷却水に関するデータに基づいて冷却水温度を算出する水温算出手段、上記配設構成設定手段で設定されたケーブル及び冷却水路の配設構成に基づいて、ケーブルを横断する解析面の所定解析対象領域を有限要素分割して有限要素モデルを作成するモデル作成手段、上記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて上記解析対象領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段、上記発熱量算出手段及び水温算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量及び冷却水温度に基づいて上記解析対象領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段、及び、上記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で上記解析対象領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段として機能させることを特徴とするケーブル導体温度推定プログラム。
【請求項7】
コンピュータを、冷却水路が並設された地域内に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段として機能させると共に、水温算出手段として機能させるときは、冷却水入口近傍の解析面では冷却水温度を一定の入口温度に設定し、各解析面に位置する他の水路断面については、その上流側断面における温度変化を反映させて順次下流側の断面の冷却水温度を算出するように機能させ、かつ、節点温度算出手段として機能させるときは、冷却水路の節点については上記水温算出手段で算出された冷却水温度を用いて、各解析面ごとに解析対象領域の各節点温度を計算するように機能させることを特徴とする請求項6に記載のケーブル導体温度推定プログラム。
【請求項8】
コンピュータを、各地域各時期の気象データを記録した気象データ記録手段、及び、指定された解析対象地域及び時期の気象データを上記気象データ記録手段から読み出し、その気象データに基づいて地表面の熱収支量を算出する熱収支量算出手段として機能させると共に、ベクトル作成手段として機能させるときは、発熱量算出手段で算出されたケーブルの発熱量と、水温算出手段で算出された冷却水温度と、上記熱収支量算出手段で算出された地表面の熱収支量集とに基づいて熱荷重ベクトルを作成するように機能させることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のケーブル導体温度推定プログラム。
【請求項1】
地中に埋設された電力ケーブルに冷却水路を並設した場合における該水路並設地域のケーブル導体温度を有限要素法を用いて推定する方法であって、導体温度に影響するパラメータとして、上記ケーブルの通電電流に対応する発熱量と、当該地域における冷却水温度とを計算すると共に、これらのパラメータと当該地域におけるケーブル及び冷却水路並びにその周辺構成要素の熱定数とを用い、上記ケーブルの導体温度を計算することを特徴とするケーブル導体温度推定方法。
【請求項2】
導体温度に影響するパラメータとして、ケーブルの通電電流に対応する発熱量と冷却水温度とに加えて、気象データから算出される当該地域の地表面における熱収支量を用いることを特徴とする請求項1に記載のケーブル導体温度推定方法。
【請求項3】
地中に埋設された電力ケーブルに冷却水路を並設した場合における該水路並設地域のケーブル導体温度を、該ケーブル及び冷却水路を横断する断面について適用される有限要素法を用いて推定する導体温度推定システムであって、当該地域におけるケーブル及び冷却水路並びにその周辺構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段と、ケーブル及び冷却水路の配設構成を設定する配設構成設定手段と、ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段と、冷却水の供給に関するデータを設定する冷却水データ設定手段と、上記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段と、上記冷却水データ設定手段で設定された冷却水に関するデータに基づいて冷却水温度を算出する水温算出手段と、上記配設構成設定手段で設定されたケーブル及び冷却水路の配設構成に基づいて、ケーブルを横断する解析面の所定解析対象領域を有限要素分割して有限要素モデルを作成するモデル作成手段と、上記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて上記解析対象領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段と、上記発熱量算出手段及び水温算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量及び冷却水温度に基づいて上記解析対象領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段と、上記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で上記解析対象領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段とを有することを特徴とするケーブル導体温度推定システム。
【請求項4】
冷却水路が並設された地域内に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段が設けられていると共に、水温算出手段は、冷却水入口近傍の解析面では冷却水温度を一定の入口温度に設定し、各解析面に位置する他の水路断面については、その上流側断面における温度変化を反映させて順次下流側の断面の冷却水温度を算出し、かつ、節点温度算出手段は、冷却水路の節点については上記水温算出手段で算出された冷却水温度を用いて、各解析面ごとに解析対象領域の各節点温度を計算することを特徴とする請求項3に記載のケーブル導体温度推定システム。
【請求項5】
各地域各時期の気象データを記録した気象データ記録手段と、指定された解析対象地域及び時期の気象データを上記気象データ記録手段から読み出し、その気象データに基づいて地表面の熱収支量を算出する熱収支量算出手段とが備えられ、ベクトル作成手段は、発熱量算出手段で算出されたケーブルの発熱量と、水温算出手段で算出された冷却水温度と、上記熱収支量算出手段で算出された地表面の熱収支量集とに基づいて熱荷重ベクトルを作成することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のケーブル導体温度推定システム。
【請求項6】
地中に埋設された電力ケーブルに冷却水路を並設した場合における該水路並設地域のケーブル導体温度を、該ケーブル及び冷却水路を横断する断面について適用される有限要素法を用いて推定する導体温度推定プログラムであって、コンピュータを、当該地域におけるケーブル及び冷却水路並びにその周辺構成要素の熱定数を記録した熱定数記録手段、ケーブル及び冷却水路の配設構成を設定する配設構成設定手段、ケーブルへの通電電流を設定する通電電流設定手段と、冷却水の供給に関するデータを設定する冷却水データ設定手段、上記通電電流設定手段で設定された通電電流に基づいてケーブルの発熱量を算出する発熱量算出手段、上記冷却水データ設定手段で設定された冷却水に関するデータに基づいて冷却水温度を算出する水温算出手段、上記配設構成設定手段で設定されたケーブル及び冷却水路の配設構成に基づいて、ケーブルを横断する解析面の所定解析対象領域を有限要素分割して有限要素モデルを作成するモデル作成手段、上記熱定数記録手段に記録されている熱定数を用いて上記解析対象領域内の各節点についての熱容量マトリクス及び熱伝導マトリクスを作成するマトリクス作成手段、上記発熱量算出手段及び水温算出手段でそれぞれ算出されたケーブルの発熱量及び冷却水温度に基づいて上記解析対象領域内の各節点についての熱荷重ベクトルを作成するベクトル作成手段、及び、上記マトリクス作成手段及びベクトル作成手段で作成された熱容量マトリクス、熱伝導マトリクス及び熱荷重ベクトルを用い、所定の初期状態から所定時間間隔で上記解析対象領域内の各節点温度を計算する節点温度計算手段として機能させることを特徴とするケーブル導体温度推定プログラム。
【請求項7】
コンピュータを、冷却水路が並設された地域内に有限要素解析のための複数の解析面を設定する解析面設定手段として機能させると共に、水温算出手段として機能させるときは、冷却水入口近傍の解析面では冷却水温度を一定の入口温度に設定し、各解析面に位置する他の水路断面については、その上流側断面における温度変化を反映させて順次下流側の断面の冷却水温度を算出するように機能させ、かつ、節点温度算出手段として機能させるときは、冷却水路の節点については上記水温算出手段で算出された冷却水温度を用いて、各解析面ごとに解析対象領域の各節点温度を計算するように機能させることを特徴とする請求項6に記載のケーブル導体温度推定プログラム。
【請求項8】
コンピュータを、各地域各時期の気象データを記録した気象データ記録手段、及び、指定された解析対象地域及び時期の気象データを上記気象データ記録手段から読み出し、その気象データに基づいて地表面の熱収支量を算出する熱収支量算出手段として機能させると共に、ベクトル作成手段として機能させるときは、発熱量算出手段で算出されたケーブルの発熱量と、水温算出手段で算出された冷却水温度と、上記熱収支量算出手段で算出された地表面の熱収支量集とに基づいて熱荷重ベクトルを作成するように機能させることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のケーブル導体温度推定プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図2】
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【図11】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【公開番号】特開2006−38631(P2006−38631A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218894(P2004−218894)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(302064762)株式会社日本総合研究所 (367)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(302064762)株式会社日本総合研究所 (367)
【Fターム(参考)】
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