説明

冷媒圧縮機とそれを用いた冷凍機

冷媒圧縮機は、圧縮部と、駆動部と、第1、第2接触部とを有する。圧縮部は密閉容器内に収容され、冷媒ガスを圧縮する。駆動部は圧縮部を駆動する。第1、第2接触部は、圧縮部の駆動により接触したり摺動したりする。その表面には均等に配置された複数のくぼみと、二硫化モリブデン(MoS)を固着させた混合層との少なくともいずれかが形成されている。この構成により、第1、第2接触部の耐摩耗性が高まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、冷蔵庫、エアーコンディショナー等に使用される冷媒圧縮機とそれを用いた冷凍機に関する。
【背景技術】
近年、地球環境保護の観点から化石燃料の使用を少なくする高効率の圧縮機の開発が進められている。
図58は従来技術による密閉型電動冷媒圧縮機の断面図である。図59はその圧縮機の支持構造図である。密閉容器(以下、容器)1は底部にオイル2を貯留するとともに、固定子3と回転子4からなる電動部5とこれによって駆動される圧縮部6を収容している。電動部5と圧縮部6からなる圧縮機本体7は密閉容器1内に圧縮コイルばね(以下、ばね)8によって弾性的に支持されている。
クランクシャフト9は回転子4を固定した主軸部9Aと主軸部9Aに対し偏心して形成された偏心部9Bからなり、給油ポンプ10が設けられている。主軸部9Aは軸受部23により軸支されている。シリンダーブロック11は略円筒形のボア12からなる圧縮室13を有している。ボア12に遊嵌されたピストン14は、偏心部9Bとスライド機構にて連結されており、ボア12の端面はバルブプレート15で封止されている。
ヘッド16は高圧室を形成し、ヘッド16から容器1外に圧縮された冷媒ガスを導出する吐出経路17は管体18を介して容器1外の冷凍サイクルの高圧側(図示せず)に接続されている。管体18は、耐熱性、耐冷媒性、耐油性を有する高分子材料からなり、吐出経路17の共振を防止している。
電動部5の固定子締結ボルト19の頭部には合成樹脂製の保持部材20が装着され、容器1の内壁に設けた突起部21には合成樹脂製の保持部材22が装着されている。保持部材20、22にはばね8が嵌装されている。
以上のように構成された冷媒圧縮機について、以下その動作を説明する。商用電源から供給される電力は電動部5に供給され、電動部5の回転子4を回転させる。回転子4はクランクシャフト9を回転させ、偏心部9Bの偏心運動がピストン14を駆動する。これによりピストン14はボア12内を往復運動し、容器1内に導かれた冷媒ガスは吸入バルブ(図示せず)を介して圧縮室13内に導入される。そして連続して圧縮され、圧縮された冷媒ガスは、吐出バルブ(図示せず)、吐出経路17、管体18を介して容器1外へ送られる。
オイル2はクランクシャフト9の回転に伴って給油ポンプ10から各摺動部に給油され、摺動部を潤滑するとともに、偏芯部9B先端より容器1内に放出される。ピストン14とボア12との間ではシールとして機能する。
クランクシャフト9の主軸部9Aと軸受部23、ピストン14とボア12等はそれぞれ相互に摺動部を形成している。従来の圧縮機では、摺動部を構成する摺動部材の一方は、窒化処理した鉄系材料にリン酸マンガン処理した材料にて形成され、摺動部材の他方は、陽極酸化処理したアルミニウムダイキャストにて形成されている。このような技術は例えば特開平6−117371号公報に開示されている。
しかしながら、摺動部に硬度が低いリン酸マンガン処理を用いている場合、起動時等の摺動部に油膜が発生しない状態で金属接触が生じるとリン酸マンガン層が摩耗して無くなる。このため摩擦係数が高くなり摺動損失が増加する可能性がある。また摩擦係数を低減するために、摺動部間の隙間を小さくすると、金属接触が生じてリン酸マンガン層が摩耗して無くなり摩耗の増加や異常摩耗が発生する可能性がある。更に、ピストン14−ボア12間では、ピストン14の摩耗量が多くなることにより、ピストン14−ボア12間の隙間が大きくなる。これにより、圧縮した冷媒ガスがピストン14とボア12との隙間から漏れて効率が低下する可能性がある。
加えて、摺動部における粘性抵抗を下げるためにオイルの粘度を低くした場合には、上記課題がさらに顕著になる。
また、別の従来の技術による圧縮機では、摺動部表面に固体潤滑剤である二硫化モリブデン(MoS)が塗布されている。このような圧縮機は例えば、特開平8−121361号公報、特開平9−112469号公報に開示されている。
MoSは摺動面に塗布するためにポリアミドイミド樹脂(PAI)のバインダーを含んでいる。しかしながらPAIは、MoS単体に比較して摩擦係数が高く、その結果、摺動損失が増加する。また、摺動部の母材を鉄やアルミニウム等の金属材料で構成する場合、バインダーとして用いるPAIとの結合力が通常の金属結合に比較して弱い。このため、MoSを塗布した摺動部において母材とバインダーとの界面ではく離が生じ、その結果MoSの耐摩粍性向上の効果が得られず、摩耗量が増加することがある。
また、ピストン14の直線運動が圧縮部6を加振することで冷媒圧縮機7の回転中、常にばね8は微振動を発生するとともに、起動、停止時は慣性力によって圧縮部6が大きく振れる。その結果、ばね8もゆれるため、ばね8と保持部材20,22とが間欠的に接触しこすれる。このとき、保持部材20、22は合成樹脂製である為にこすれ音を吸収する。このような冷媒圧縮機に関する技術は特開平6−81766号公報に開示されている。
しかしながら、この構成では、保持部材20と保持部材22が合成樹脂製の別部品である為に部品点数が増加し、製作コストが増加する。
また、圧縮部6の起動、停止時に、圧縮部6が大きく振れるため、吐出経路22も大きく揺れる。このため、吐出経路22と管体23とが間欠的に接触しこすれる。管体23は高分子材料からなるため、この際のこすれ音は吸収されるが、耐熱性、耐冷媒性、耐油性を有するため高コストである。
さらに圧縮機では圧縮部6の駆動に伴い、圧縮室13と容器1との間で冷媒ガスを吸入、吐出するためのバルブ(図示せず)が作動する。その際、弁座とバルブシート等(図示せず)が接触し、騒音を発する。
このように、圧縮部6の駆動に伴い、様様な部分が接触し足り摺動する。そのために磨耗による性能低下を生じたり、騒音を発したりする。従来の技術でこれを解消するには、部品点数の増加や高価な材料を適用する必要がある。
【発明の開示】
本発明の冷媒圧縮機は、圧縮部と、駆動部と、第1、第2接触部とを有する。圧縮部は密閉容器内に収容され、冷媒ガスを圧縮する。駆動部は圧縮部を駆動する。第1、第2接触部は、圧縮部の駆動により接触したり摺動したりする。その表面には均等に配置された複数のくぼみと、二硫化モリブデン(MoS)を固着させた混合層との少なくともいずれかが形成されている。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の実施の形態における冷媒圧縮機の断面図である。
図2は図1におけるピストンとボアとにより形成される摺動部の拡大図である。
図3は図1におけるピストンとボアとが摺動する時のオイルの流れを示した図である。
図4は図1の冷媒圧縮機を含む冷凍機の冷凍サイクル図である。
図5は本発明の実施の形態における焼付き面圧を示した図である。
図6は本発明の実施の形態における摩擦係数を示した図である。
図7は本発明の実施の形態における摩耗量を示した図である。
図8は図1における主軸部と軸受部とにより形成される摺動部の拡大図である。
図9は図1におけるピストン周辺の拡大図である。
図10は図9におけるピストンピンとコンロッドとにより形成される摺動部の拡大図である。
図11は図1におけるスラスト軸受部周辺の拡大図である。
図12は図11におけるスラスト部とスラストワッシャとにより形成される摺動部の拡大図である。
図13は本発明の実施の形態における摺動面とリン酸マンガン層との摩擦係数の特性図である。
図14は本発明の実施の形態におけるコンプレッサーの冷凍能力の特性図である。
図15は本発明の実施の形態によるコンプレッサーにおける効率の特性図である。
図16は本発明の実施の形態における他の冷媒圧縮機の断面図である。
図17は図16の冷媒圧縮機を含む冷凍機の冷凍サイクル図である。
図18は図16におけるG−G線断面図である。
図19は図18におけるベーンとローリングピストンとにより形成される摺動部の拡大図である。
図20は図18におけるローリングピストンと偏心部とにより形成される摺動部の拡大図である。
図21A,Bは、本発明の実施の形態におけるピストンとボアとにより形成される摺動部の拡大図である。
図22は、図21Bにおける摺動時のオイルの流れを示した図である。
図23は本発明の実施の形態における摩擦係数を示した図である。
図24は本発明の実施の形態における摩擦量を示した図である。
図25A,Bは、図1における主軸部と軸受部とにより形成される別の摺動部の拡大図である。
図26A,Bは、図1におけるピストンピンとコンロッドとにより形成される別の摺動部の拡大図である。
図27A,Bは、図1におけるスラスト部とスラストワッシャとにより形成される別の摺動部の拡大図である。
図28は本発明の実施の形態における摩擦係数の特性図である。
図29は本発明の実施の形態におけるコンプレッサーの冷凍能力の特性図である。
図30は本発明の実施の形態におけるコンプレッサーの効率の特性図である。
図31A,Bは、図16におけるベーンとローリングピストンとにより形成される別の摺動部の拡大図である。
図32A,Bは、図16におけるローリングピストンと偏心部とにより形成される別の摺動部の拡大図である。
図33は本発明の実施の形態における冷媒圧縮機に設けた吸入バルブ装置の縦断面図である。
図34は図33における吸入バルブ装置の吸入弁座を示す平面図である。
図35は図33における吸入バルブ装置の吸入可動弁を示す平面図である。
図36は本発明の実施の形態における冷媒圧縮機に設けた吐出バルブ装置の縦断面図である。
図37は図36における吐出バルブ装置の吐出弁座を示す平面図である。
図38は図36における吐出バルブ装置の吐出可動弁の相互シール面側を示す平面図である。
図39は図36における吐出バルブ装置の吐出可動弁の衝打部側を示す平面図である。
図40は図36における吐出バルブ装置のストッパを示す平面図である。
図41は本発明の実施の形態における冷媒圧縮機に設けた他の吐出バルブ装置の縦断面図である。
図42は図41における吐出バルブ装置のバックアップリードの吐出可動弁との衝打部側を示す平面図である。
図43は図41における吐出バルブ装置のバックアップリードのストッパとの衝打部側を示す平面図である。
図44は図33における吸入バルブ装置の他の吸入弁座を示す平面図である。
図45は図33における吸入バルブ装置の他の吸入可動弁を示す平面図である。
図46は図36における吐出バルブ装置の他の吐出弁座を示す平面図である。
図47は図36における吐出バルブ装置の他の吐出可動弁の相互シール面側を示す平面図である。
図48は図36における吐出バルブ装置の他の吐出可動弁の衝打部側を示す平面図である。
図49は図36における吐出バルブ装置の他のストッパを示す平面図である。
図50は図41における吐出バルブ装置の他のバックアップリードの吐出可動弁との衝打部側を示す平面図である。
図51は図41における吐出バルブ装置の他のバックアップリードのストッパとの衝打部側を示す平面図である。
図52は本発明の実施の形態によるさらに他の冷媒圧縮機の断面図である。
図53は図52の冷媒圧縮機を含む冷凍機の冷凍サイクル図である。
図54は図52の冷媒圧縮機における吐出経路と密着コイルばねとが接触する部分の拡大図である。
図55A、Bは図52の冷媒圧縮機における他の吐出経路と密着コイルばねとが接触する部分の拡大図である。
図56は本発明の実施の形態によるさらに他の冷媒圧縮機の断面図である。
図57A、B、Cは図56の冷媒圧縮機における圧縮コイルばねと保持部材とが接触する部分の拡大図である。
図58は従来技術による密閉型電動冷媒圧縮機の断面図である。
図59は図58の圧縮機の支持構造図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、各実施の形態において、先行する実施の形態と同様の構成をなすものには同じ符号を付して説明し、詳細な説明を省略する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1による冷媒圧縮機100の断面図である。図2は図1におけるピストンとボアとにより形成される摺動部の拡大図である。図3は図1におけるピストンとボアとが摺動する時のオイルの流れを示した図である。図4は、冷媒圧縮機100を含む冷凍機の冷凍サイクル図である。図5は、微細くぼみ有り無しでの焼付き面圧を示した特性図である。図6は、微細くぼみの形状、大きさの違いでの摩擦係数を示した特性図である。図7は、摺動部表面積に対する微細くぼみの占める割合の違いでの摩耗量を示した特性図である。
図1〜図3において、密閉容器(以下、容器)101内にはイソブタンからなる冷媒ガス102が充填されている。容器101は、底部にオイル103を貯留し、固定子104と回転子105とからなる106と、これによって駆動される往復式の圧縮部107とを収容している。電動部106は駆動部であり、圧縮部107を容器101内に密閉できれば、容器101外に設けてもよい。
次に圧縮部107を詳細に説明する。クランクシャフト108は回転子105を圧入固定した主軸部109と、主軸部109に対し偏心して形成された偏心部110からなる。クランクシャフト108は下端に、オイル103に連通する給油ポンプ111を設けられている。鋳鉄からなるシリンダーブロック112は略円筒形のボア113と主軸部109を軸支する軸受部114とを形成している。
ボア113に遊嵌されたピストン115は鉄系の材料からなり、ボア113と共に圧縮室116を形成している。ピストン115は、ピストンピン117を介して、連結部であるコンロッド118によって偏心部110と連結されている。ボア113の端面はバルブプレート119で封止されている。
ヘッド120は高圧室を形成し、バルブプレート119の、ボア113と反対側に固定されている。サクションチューブ121は容器101に固定されるとともに冷凍サイクルの低圧側で熱交換器60に接続され、冷媒ガス102を容器101内に導く。サクションマフラー122は、バルブプレート119とヘッド120に挟持されている。ヘッド120から吐出される圧縮された冷媒102は熱交換器70へ送られ、放熱し、膨張弁80を介して熱交換器60へ戻り、吸熱する。このようにして冷凍機が構成されている。
主軸部109と軸受部114、ピストン115とボア113、ピストンピン117とコンロッド118、偏心部110とコンロッド118はそれぞれ相互に摺動部を形成している。摺動部を形成する各部は圧縮部107の駆動により摺動し合う接触部である。
ピストン115の摺動面115Aには、複数の微細くぼみ(以下、くぼみ)123がほぼ均一に形成されている。くぼみ123の形状は球面であり、さらに大きさが直径20μm〜50μm、深さが1μm〜10μmであることがより好ましい。さらに摺動面115Aの表面積に対するくぼみ123の占める面積の割合は40〜80%であることがより好ましい。さらに鉄系材料においては摺動部表面の組織をマルテンサイト化することがより好ましい。
このようなくぼみ123は、表面のエッチング、プレス成型等により形成される。本実施の形態においては、鋼球やセラミック球等の硬度の硬い球をある速度以上で衝突させる方法でくぼみ123を形成している。例えば鋳鉄の表面を加工硬化によって硬度を高くする場合には、鋳鉄材料の表面に直径2〜50μm程度のセラミックスや鋼球のような、被加工部品より硬質の小球を20sec/min以上の速度になるように投射装置により加速して噴射させる。このように、被加工部品に高速で衝突させると、表面に残留圧縮応力が付与され、ビッカース硬度で600Hv程度まで硬度を高めることができる。
以上のように構成された冷媒圧縮機100について、以下その動作を説明する。
商用電源から供給される電力は電動部106に供給され、電動部106の回転子105が回転する。回転子105はクランクシャフト108を回転させ、偏心部110の偏心運動が連結部のコンロッド118からピストンピン117を介してピストン115を駆動する。これによりピストン115はボア113内を往復運動する。サクションチューブ121を通して容器101内に導かれた冷媒ガス102はサクションマフラー122から吸入され、圧縮室116内で連続して圧縮される。
オイル103はクランクシャフト108の回転に伴い、給油ポンプ111から各摺動部に給油され、摺動部を潤滑するとともに、ピストン14とボア12との間ではシールとして機能する。
ピストン115がボア113内を往復運動して冷媒ガス102を圧縮する際、圧縮された冷媒ガス102の一部はピストン115とボア113との隙間を経て容器101内に漏出し、体積効率を下げる。しかしながら、本実施の形態においてはピストン115とボア113との隙間に漏出したガスはくぼみ123に達する。すると、くぼみ123においてピストン115とボア113の隙間の体積が増加することからラビリンスシールと同様の作用が生じ、漏出した冷媒ガスの流速は急速に低下する。この結果、冷媒ガス102の漏れ量が減少する。その結果、冷媒圧縮機100の体積効率が向上するため、冷媒圧縮機100の圧縮効率は向上する。
次に、図5を用いて微細くぼみ有り無しでの焼付き面圧を測定した結果について説明する。測定は、CHFCF冷媒の雰囲気圧力0.4MPaのもと、ISO粘度グレードがVG8からVG10のエステルオイルを使用し、摺動速度を1.0m/sにおいて行われる。
図5より明らかに、くぼみ123を設けたピストン115はくぼみ123が無いものに比べ、焼きつき面圧の大幅な改善がされている。摺動部表面にくぼみ123をほぼ均一に形成することにより、供給されたオイル103がくぼみ123に保持される。摺動部材どうしの隙間が摺動方向に対して狭くなったとき、くぼみ123内のオイル103の粘性と摺動部の相対運動とにより、狭くなった隙間にオイル103が引き込まれる。これにより、負荷を支える圧力がオイル103に生じくさび形油膜が形成される。このくさび形油膜が、摺動部間に発生する金属接触を防止する。このことから焼付き荷重が上昇すると考えられる。
次にくぼみ123の形状と大きさをパラメーターに摩擦係数を測定した結果を図6に示す。測定は、CHFCF冷媒の雰囲気圧力0.4MPaのもと、VG8からVG10のエステルオイルを使用し、摺動速度を1.0m/s、面圧:0.5MPaにおいて行われる。
この結果から、球面形状のくぼみ123を設けたピストン115は、角状の微細くぼみを設けたものに比べ、摩擦係数が低下していることがわかる。これは、くぼみ123の形状を球面とすることにより、投影面積の同じ多角錐に比べて体積が増加することにより、形成されるくさび形油膜の油圧が増加することによると考えられる。つまり、図3に示すように、くぼみの形状が球面であれば、摺動部が摺動する際に生じる油膜を発生させるオイルの流れがくぼみの中でうず流を形成し易くなり、その結果油圧が発生することで金属接触が防止される。
また、形状が球面であることから、摺動方向に関わらず、摺動にともなう摺動部間の隙間の変化量が一定となり、摺動部全体に均一な油膜が形成される。そして、ピストン115とボア113との隙間の偏りが小さくなり、ピストン115の側面から冷媒ガス102の漏れる量が少なくなるためと考えられる。
さらに、くぼみ123の大きさが直径20〜30μm、深さ1〜5μmの場合に摩擦係数が最小の値になる。この大きさを中心にくぼみ123の大きさが直径20μm〜50μm、深さ1μm〜10μmの範囲でリン酸マンガン処理した場合より低い値となっており、潤滑摺動条件が改善される。
オイル103への冷媒102の溶け込み量は雰囲気圧力が低いほど少なくなる。くぼみの大きさが直径50μm、深さ10μm以上とした場合に比較して、体積が小さくなる直径20μm〜50μm、深さを1〜10μmのくぼみにおいては、雰囲気圧力の低下が少ない。このため、圧縮された冷媒ガス102の圧力が高圧のまま保たれ、オイル103中に溶け込み可能な冷媒量の低下が抑えられる。これによりオイル103中の冷媒の発泡現象が少なくなり、発泡により摺動部に形成された油膜の破断により生じる金属接触の発生が防止される。このようにして、摩擦係数の上昇が防止されると考えられる。
図7に示す摩耗体積からも同様のことが言える。なお、測定は、CHFCF冷媒の雰囲気圧力0.4MPaのもと、VG8からVG10のエステルオイルを使用し、摺動速度を1.0m/s、面圧:0.5MPaにおいて行われる。図7は、摺動部表面積に対するくぼみ123以外の平面部分の占める割合と摩耗体積との関係を示している。すなわち平面比が小さいほどくぼみ123の占める割合が大きい。
この結果からは、くぼみ123を摺動部表面に設けることにより、リン酸マンガン処理した場合より摩耗量が少なくなることが判る。平面比が52%では摩耗量が0mmとなる。しかし、摺動部表面積に対するくぼみ123の占める割合を多くすることにより摩耗量が増加する。さらに詳細な検討の結果、平面比が20%以上、60%以下、すなわち動部表面積に対する微細くぼみの占める面積割合が、40%以上80%以下の場合に、図中点線で示した実使用上問題のない摩耗量である0.05mm以下となる。
このような範囲においては、くぼみ123により滑り方向へのくさび膜が形成される傾斜表面部と、摺動面に対して平行となる平面部とが摺動部に設けられると考えられる。これにより、テーパーランド軸受と同様の形状、効果が得られ、発生する油圧により支えられる限界荷重が上昇し、金属接触が低下すると考えられる。
なお、摺動部材に鉄系材料を用いる場合、摺動部表面にくぼみ123を形成する手法として、表面に銅球、セラミックス球等の物質を一定速度以上で衝突させる。この方法によると、摺動部の表面層の組織がマルテンサイト化し、摺動部材の表面強度が上昇し、摩耗の進行速度が低下する。またくぼみ123を形成することにより摺動部間の面積が低減され、金属接触が低減される。
以上、本実施の形態においては、ピストン115の摺動面にほぼ均一にくぼみ123を設ける。また、ボア113にくぼみ123を設けたり、ピストン115とボア113との双方に施しても、同様の作用効果が得られる。
次に、主軸部109と軸受部114とにより形成される摺動部について説明する。図8は図1における主軸部109と軸受部114とにより形成される摺動部の拡大図である。
クランクシャフト108の主軸部109には、その摺動面125に複数のくぼみ123がほぼ均一に形成されている。
以上のように構成された冷媒圧縮機100について、以下その動作を説明する。
摺動面125にくぼみ123をほぼ均一に形成したクランクシャフト108の主軸部109が軸受部114内を回転運動する。これにより、給油ポンプ111から冷媒を含んだオイル103が軸受部114とクランクシャフト108との間の摺動部に供給される。一方、軸受部114内をクランクシャフト108が一回転する間に主軸部109と軸受部114との隙間がくぼみ123の深さに対応して変化する。その際、主軸部109と軸受部114との隙間に、オイル103が引き込まれ、くさび形油膜が形成される。
また、くぼみ123が微細であることから冷媒が溶け込んだオイル103がくぼみ123内に供給されてもくぼみ123での体積変化が小さく雰囲気圧力の低下が少ない。このため、圧縮された冷媒ガス102の圧力が高圧のまま保たれ、オイル103中に溶け込み可能な冷媒量の低下が抑えられる。これによりオイル103中の冷媒の発泡現象が少なくなり、発泡により摺動部に形成された油膜の破断により生じる金属接触の発生が防止され、摩擦係数の上昇が防止される。
さらに、オイル103がくぼみ123に溜められ、摺動部への給油が行われない冷媒圧縮機100運転開始時においても軸受部114と主軸部109との間に常にオイル103が存在する。このため焼付き荷重が上昇して異常摩耗が防止される。
以上、本実施の形態においては、クランクシャフト108の主軸部109の摺動面125にくぼみ123をほぼ均一に設ける。くぼみ123を形成することにより摺動部間の面積が低減され、金属接触が低減される。また、軸受部114にくぼみ123を設けても、主軸部109と軸受部114との双方に設けても、同様の作用効果が得られる。
次に、コンロッド118とピストンピン117とにより形成される摺動部について説明する。図9は図1におけるピストン周辺の拡大図である。図10は図9におけるピストンピン117とコンロッド118とにより形成される摺動部の拡大図である。
ピストンピン117は、摺動面127にくぼみ123をほぼ均一に形成されている。くぼみ123を形成することにより摺動部間の面積が低減され、金属接触が低減される。
以上のように構成された冷媒圧縮機100について、以下その動作を説明する。クランクシャフト108が回転することにより連結部であるコンロッド118によって連結されているピストンピン117を介してボア113に遊嵌されたピストン115が往復運動する。この際、コンロッド118とピストンピン117とは、揺動運動を行ない、ピストン115が上死点または下死点に達したときに速度が0m/sとなり、油膜が形成できない状態になる。この時にも、ピストンピン117の摺動面127におけるくぼみ123にオイル103が保持されている。このため、摺動部分に常にオイル103が存在し、焼付き荷重が上昇して異常摩耗が防止される。
以上、本実施の形態においては、ピストンピン117の摺動面127にくぼみ123をほぼ均一に設ける。また、コンロッド118にくぼみ123を設けても、ピストンピン117とコンロッド118との双方に設けても、同様の作用効果が得られる。
次に、スラスト軸受部135に形成される摺動部について説明する。図11は図1におけるスラスト軸受部135周辺の拡大図である。図12は図11におけるスラスト部130とスラストワッシャ134とが接する部分の拡大図である。
スラスト部130は摺動面130Aにくぼみ123をほぼ均一に形成されている。
以上のように構成された冷媒圧縮機100について、以下その動作を説明する。
クランクシャフト108には、回転子105が圧入固定されている。また、回転子105にはフランジ面132が形成され、軸受部114の上端面はスラスト部130になっている。フランジ面132と軸受部114のスラスト部130との間にはスラストワッシャ134が挿入されている。フランジ面132とスラスト部130とスラストワッシャ134とがスラスト軸受部135を構成し、クランクシャフト108、回転子105等の垂直荷重を支えている。従って、冷媒圧縮機100が運転を停止しているときも、スラスト軸受部135には垂直荷重が負荷されている。
ここで、スラスト部130の摺動面130Aにくぼみ123を形成することにより、摺動部への給油が行われない冷媒圧縮機100運転開始時においても摺動部表面のくぼみ123にオイル103が保持される。このため、スラスト部130とスラストワッシャ134の間に金属接触が発生する場合でも、摺動部の摩擦係数が低くなり、摺動損失が低下する。さらに、くぼみ123にオイル103が保持され、摺動部分に常にオイル103が存在することにより焼付き荷重が上昇して異常摩耗が防止される。また、くぼみ123を形成することにより摺動部間の面積が低減され、金属接触が低減される。
以上、本実施の形態においては、スラスト軸受部135をフランジ面132、スラスト部130、スラストワッシャ134にて構成し、くぼみ123を摺動面130Aに形成している。なお、クランクシャフト108の主軸部109と偏心部110との間にもスラスト部137となるフランジ面136がある。フランジ面136とそれに対向する軸受部114のスラスト部139とでスラスト軸受を構成してもよい。その場合、スラスト部137にくぼみ123を設ける。このようにしてする場合においても、同様の作用効果が得られる。
なお本実施の形態においては軸受部114のスラスト部130の摺動面130Aにくぼみ123をほぼ均一に設ける。また、スラストワッシャ134にくぼみ123を設けても、スラストワッシャ134とスラスト部130との双方に設けても、同様の作用効果が得られる。また、スラストワッシャ134が回転子105のフランジ面に接する面に微小くぼみ123を設けてもよい。回転子105のフランジ面に微小くぼみ123を設けてもよい。さらにクランクシャフト108のスラスト部137にくぼみ123を設けても、クランクシャフト108のスラスト部137と軸受部114のスラスト部139との双方に設けても、同様の作用効果が得られる。
次に、オイル103に冷媒102が溶け込み易い組合せの場合について、くぼみ123の大きさとオイルの粘度との関係について説明する。図13は、微細くぼみをほぼ均一に形成した摺動面とリン酸マンガン層との摩擦係数の特性図である。図14は、摺動面に微細くぼみをほぼ均一に形成した場合とリン酸マンガン層を施した場合でのコンプレッサーにおける冷凍能力の特性図である。図15は、摺動面に微細くぼみをほぼ均一に形成した場合とリン酸マンガン層をほどこした場合でのコンプレッサーにおける効率の特性図である。
なお図1において、容器101内はイソブタンからなる冷媒ガス102が充填されているとともに、底部には鉱油からなりVG10未満VG5以上の粘度のオイル103を貯留している。これ以外の構成は上述と同様である。
ここで主軸部109と軸受部114、ピストン115とボア113、ピストンピン117とコンロッド118、偏心部110とコンロッド118の各摺動部材間に形成された各摺動部における動作について説明する。以下、ピストン115を例に説明する。
上記各摺動部間においてはオイル103の粘度がVG10未満VG5以上と低いため、摺動部品同士が固体接触を起こしやすい。さらに、冷媒がイソブタンであることから、鉱油からなるオイル103に溶け込みやすく、オイル103の粘度が低下することで、さらに固体接触を起こしやすくなる。
しかしながら、図3に示すように、摺動部が摺動する際に生じる油膜を発生させるオイルの流れが球面状のくぼみ123の中でうず流を形成し易くなり、その結果油圧が発生することで固体接触が防止され、耐摩耗性が向上する。また、くぼみ123を形成することにより摺動部間の面積が低減され、金属接触が低減される。
加えて、鋼球やセラミック球等の硬度の硬い球をある速度以上で衝突させる方法でくぼみ123を形成していることから、加工硬化等により表面の硬度が上昇している。このため固体接触が生じる場合にも、異常摩耗が防がれ、耐摩耗性が向上する。特に摺動部がピストン115とボア113、ピストンピン117とコンロッド118で構成されている場合、1圧縮工程当たり2回、相互摺動速度が0m/sとなる。このため、油圧がゼロとなり、固体接触が生じやすいので、本技術が極めて有効である。
ここで、図13を用いて本実施の形態による摺動面に微細くぼみ323をほぼ均一に形成した場合とリン酸マンガン層をほどこした場合とにおけるオイル粘度を変えた際の摩擦係数について説明する。
測定は、CHFCF冷媒の雰囲気圧力0.4MPaのもと、VG4からVG22のエステルオイル、VG1相当のエタノールを使用して行う。まず、
1)直径が2μm〜15μmで深さが0.5μm〜1μmの大きさのくぼみ123
2)直径が40μm〜50μmで深さが7μm〜10μmの大きさのくぼみ123
3)直径が60μm〜70μmで深さが15μm〜20μmの大きさのくぼみ123
を形成した円盤を用意する。このような円盤を、摺動速度を1.0m/sで回転させ、リング状に形成された相手材を、面圧0.5MPaで押し付ける。図13はこのような条件で磨耗試験を行った結果を示している。
この結果から、リン酸マンガン層を形成した場合と、直径が60μm〜70μm、深さが15μm〜20μmの大きさのくぼみ123をほぼ均一に形成した場合には、オイル粘度をVG10未満にすると摩擦係数が上昇する。一方、直径が40μm〜50μm、深さが7μm〜10μmの大きさのくぼみ123をほぼ均一に形成した場合と、直径が2μm〜15μmで深さが0.5μm〜1μmの大きさのくぼみ123をほぼ均一に形成した場合には、VG8までオイル粘度を低下させても摩擦係数が上昇しない。VG4までオイル粘度を低下させた場合でも、僅かに摩擦係数が上昇するのみである。さらに、リン酸マンガン処理に比べ摩擦係数が低下していることもわかる。
摺動部にほぼ均一に設けたくぼみ123の大きさが、直径40μm〜50μm、深さ7μm〜10μm、もしくは直径2μm〜15μm、深さ0.5μm〜1μmであれば、摺動部間の動圧が均一化されることで隙間が一定となる。さらに詳細な検討により、これらの中間的な大きさのくぼみを設けても同様の効果が得られる。また、くぼみ123での体積変動が小さくなり、冷媒102を含んだオイル103がくぼみ123に供給される際に発生する隙間部での圧力低下が少ない。これにより、オイル103中での発泡現象が抑えられ油膜の破断が防止され、形成される油膜の油圧が増加する。このようにして固体接触部にかかる荷重が低減されることにより、摩擦係数が低下すると考えられる。
さらに、オイル粘度をパラメータに、往復式冷媒圧縮機の冷凍能力と、冷媒圧縮機の成績係数(COP)の変化を測定した結果を図14、15に示す。
試験は、ピストン115の摺動部に直径が2μm〜50μmで深さが0.5μm〜10μmの大きさのくぼみ123を均一に設け、イソブタン冷媒と、VG5とVG10の鉱油を用い、凝縮温度/蒸発温度:54.4℃/−23.3℃、吸入ガス、膨張弁前温度:32.2℃の条件にて行う。その時の冷媒圧縮機の冷凍能力と成績係数(COP)を測定する。図14,15は、その結果をリン酸マンガン処理と比較して示している。
図14では、リン酸マンガン処理したピストンを用いた圧縮機においてオイル103の粘度をVG10からVG5に低下させた際、11W程度まで大きく冷凍能力が低下している。一方、くぼみ123を設けたピストンを用いた圧縮機100においては、冷凍能力の低下は1W程度であり、極めて少ない。
ピストン115がボア113内を往復運動して冷媒ガス102を圧縮する際、オイル103の粘度が非常に低いため、シール性が低下する。このため、圧縮室116で圧縮された冷媒ガス102がピストンとボア113の隙間から容器101内に漏出し冷凍能力が低下し易い。しかし、ピストン115に設けたくぼみ123により、くさび形油膜が形成される。このようにしてピストン115とボア113の隙間から漏出する冷媒ガスの量が低減されると推定される。
すなわち、ピストン115とボア113との隙間に漏出した冷媒ガス102がくぼみ123に達すると、くぼみ123においてピストン115とボア113との隙間の体積が増加する。このため、ラビリンスシールと同様の作用が生じ、漏出した冷媒ガス102の流速は急速に低下することで冷媒ガス102の漏れ量が減少する。その結果冷媒圧縮機の冷凍能力の低下が極めて小さく抑えられると考えられる。
同様に図15においては、リン酸マンガン処理したピストンを用いた圧縮機に較べてくぼみ123を設けたピストン115を用いた圧縮機100の方が圧縮機の効率を示す成績係数(COP)が上昇している。これは図14に示したとおり、冷媒圧縮機の冷凍能力の低下が極めて小さく抑えられ、体積効率が維持されることによる。また、図13に示したように摺動部における摩擦係数の上昇がリン酸マンガン処理した場合に較べて極めて少ないことから入力が低減されていることにもよる。またVG10からVG5へのオイル粘度の低下に伴う粘性抵抗の低減が冷媒圧縮機の入力の低減に大きく寄与していると考えられる。
また、イソブタンと鉱油との組合せを例に挙げて説明をしたが、冷媒102に同じハイドロカーボン系冷媒であるプロパンを使用する場合においても、また、オイル103にアルキルベンゼン、エステル、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコール等を使用する場合においてもオイル103中に冷媒102が溶け込み更に粘度を低下させる。このため、本構成を適用することにより同様の効果が得られる。
なお上記説明では、摺動部の双方に直径が2μm〜50μmで深さが0.5μm〜10μmの大きさのくぼみ123をほぼ均一に設ける。くぼみ123は摺動部のいずれか一方に施してもよく、同様の作用効果が得られる。
また上記説明では、微小くぼみ123をピストン115に形成する場合について説明したが、他の摺動部についても同様である。
なお、オイル103の粘度はVG10未満VG5以上とすることが好ましい。このようにすることで、摺動部表面のくぼみ123にオイル103が溜まり、摺動面にオイルが保持される。また摺動時に摺動部間の隙間が微小に変化することにより摺動部間に動圧が発生して油膜が保持されやすく、固体接触の頻度が少なくなる。またシール部においてはシール性を向上させ、信頼性と効率とが高まる。
(実施の形態2)
図16は、本発明の実施の形態2による冷媒圧縮機200の断面図である。図17は冷媒圧縮機200を含む冷凍機の冷凍サイクル図である。図18は図16におけるG−G線断面図である。図19は図18におけるベーン216とローリングピストン(以下、ピストン)215とが接する部分の拡大図である。図20は図18におけるピストン215と偏心部207とが接する部分の拡大図である。
密閉容器(以下、容器)101には固定子104と回転子105からなる電動部106と、電動部106によって駆動されるローリングピストン型の圧縮部205がオイル103とともに収納されている。電動部106は駆動部である。
圧縮部205は、シャフト210と、シリンダー212と、主軸受213と副軸受214と、ピストン215と、板状のベーン216とを有する。シャフト210は偏心部207、主軸部208、副軸部209を有する。シリンダー212は圧縮室211を形成する。主軸受213と副軸受214とは、シリンダー212の両端面を封止するとともに各々主軸部208と副軸部209とを軸支する。ピストン215は偏心部207に遊嵌され圧縮室211内を転動する。ベーン216はピストン215に挿圧され、圧縮室211を高圧側と低圧側とに仕切る。主軸部208には回転子105が固定されている。
副軸受214に固定されたオイルポンプ217はオイル103に連通している。オイルポンプ217は、偏心部207とピストン215、主軸部208と主軸受213、副軸部209と副軸受214が各々形成する摺動部へオイル103を供給する。摺動部を形成する各部は圧縮部205の駆動により摺動し合う接触部である。
図19、20に示すように、ピストン215の摺動面218、偏心部207の摺動面219には、微細くぼみ(以下、くぼみ)123がほぼ均一に形成されている。また図示していないが、主軸部208、副軸部209の摺動面にもくぼみ123がほぼ均一に形成されている。実施の形態1と同様に、くぼみ123の形状は球面であり、さらに大きさが直径20μm〜50μm、深さが1μm〜10μmであることがより好ましい。さらに各摺動面の表面積に対するくぼみ123の占める面積の割合は40〜80%であることがより好ましい。さらに鉄系材料においては摺動部表面の組織をマルテンサイト化することがより好ましい。
以上のように構成された冷媒圧縮機200について、以下その動作を説明する。
回転子105の回転に伴ってシャフト210は回転し、偏心部207に遊嵌されたピストン215が圧縮室211内を転動する。これにより、ベーン216に仕切られた圧縮室211の高圧側と低圧側との部屋の容積は連続的に変化し、これに伴って冷媒ガスは連続して圧縮される。さらに圧縮された冷媒ガスは容器101内に吐出され、吐出経路220を介して熱交換器70へ送られ、外部へ放熱し、膨張弁80を介して熱交換器60へ戻り、外部から吸熱する。このようにして冷凍機が構成されている。
上述のように、容器101内が高圧雰囲気となる。また、容器101内が高圧であることからベーン216に容器101内の雰囲気圧力は、背圧として働きピストン215の外周表面にベーン216の先端を押しつける。ピストン215の外周表面にベーン216の先端が接触する部分では、円弧と円弧の接触となり線接触の形態であることから金属接触が頻繁に生じる。
ここで、ピストン215の外周表面にはくぼみ123がほぼ均一に形成されている。そのため、摺動部間の面積が低減され、金属接触が低減される。また、くぼみ123にオイル103が保持され、摺動部分に常にオイル103が存在することにより焼付き荷重が上昇して異常摩耗が防止される。なお、ピストン215の外周表面にくぼみ123を設けているが、ベーン216にくぼみ123を設けてもよい。またピストン215の外周表面とベーン216の双方に設けても、同等の効果を有する。
また、シャフト210の回転に伴ってオイルポンプ217はオイル103を連続的に各摺動部へ給油する。ここで、偏心部207の摺動面219や主軸部208、副軸部209の摺動面にはくぼみ123がほぼ均一に形成されている。これにより、偏心部207とピストン215、主軸部208と主軸受213、副軸部209と副軸受214が各々形成する摺動部の隙間に、オイルが引き込まれ、くさび形油膜が形成される。
ローリングピストン型の冷媒圧縮機200では、ピストン215が偏心部207に回転自在に遊嵌されている。そして、ピストン215と偏心部207との間の相対速度は主軸部208−主軸受213間、副軸部209−副軸受214間の相対速度に比較して小さい。このため、数式(1)により求められるジャーナル軸受の特性を示すゾンマーフェルト数Sが小さくなる。これは、摺動潤滑上不利な条件である。
S=μ×N/P×(R/C)...(1)
数式(1)のように、ゾンマーフェルト数Sは、軸受半径Rと半径すきまCと速度Nとオイル粘度μと面圧Pから求められる。
しかしながらピストン215と偏心部207との隙間がくぼみ123の深さに対応して変化する。このため、摺動速度が遅くても、ピストン215と偏心部207との隙間にオイルが引き込まれて、くさび形油膜が形成される。
さらにローリングピストン型の冷媒圧縮機では、容器101内が凝縮圧力となるため、内圧が高く、オイル103の冷媒が溶け込みやすい。これにより、オイルの粘度は低下するので、上述したゾンマーフェルト数Sが小さくなり、摺動潤滑上不利な条件である。
しかしながら、くぼみ123が微細であることから冷媒が溶け込んだオイル103がくぼみ123内に供給されてもくぼみ123での体積変化が小さく雰囲気圧力の低下が少ない。すなわち、圧縮された冷媒ガスの圧力が高圧のまま保たれる。このため、オイル中に溶け込み可能な冷媒量の低下が抑えられ、オイル中の冷媒の発泡現象が少なくなる。そして、発泡により摺動部に形成される油膜の破断により生じる金属接触の発生が防止され、摩擦係数の上昇が防止される。
なお、偏心部207、主軸部208、副軸部209の摺動面に、ほぼ均一にくぼみ123を設けている。また、ピストン215の内周表面、主軸受213、副軸受214ならびに、偏心部207とピストン215の内周表面の双方、主軸部208と主軸受213の双方、副軸部209副軸受214の双方にくぼみ123を設けても同様の作用効果が得られる。
次に、オイル103に冷媒が溶け込み易い組合せの場合について、くぼみ123の大きさについて説明する。
ここでは図16において、容器101に封入されているオイル103は鉱油からなり粘度VG10未満VG5以上で、冷媒ガス(図示せず)はイソブタンからなるとする。
既述のように偏心部207とピストン215、主軸部208と主軸受213、副軸部209と副軸受214とは、相互に摺動部を形成している。ここで、各摺動部の母材である鉄系材料の表面にほぼ均一に形成されているくぼみ123の大きさは、直径が2μm〜50μmで深さが0.5μm〜10μmである。また、くぼみ123は、偏心部207の摺動面219に鋼球やセラミック球等の硬度の硬い球をある速度以上で衝突させる方法で形成されている。これにより摺動面219は加工硬化等により表面硬度が上昇している。このため耐摩耗性が向上し、固体接触が生じても異常摩耗が防止される。またくぼみ123をこのような大きさにすることで、実施の形態1と同様に、冷媒がオイル103に溶け込みやすい場合でも固体接触の発生が減少し、摩擦係数の上昇が防止される。
また、上記説明ではイソブタンと鉱油との組合せを例に挙げて説明をしたが、冷媒に同じハイドロカーボン系冷媒であるプロパンを使用する場合にも、また、オイル103にアルキルベンゼン、エステル、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコール等を使用する場合にも、オイル103中に冷媒が溶け込み更に粘度を低下させる。この場合も本構成を適用することにより同様の効果が得られる。
(実施の形態3)
本実施の形態による冷媒圧縮機の基本的な構成は図1を用いて説明した実施の形態1と同様である。実施の形態1との違いは、主軸部109と軸受部114、ピストン115とボア113、ピストンピン117とコンロッド118、偏心部110とコンロッド118がそれぞれ相互に形成している摺動部である。摺動部を形成する各部は圧縮部107の駆動により接触し合う接触部である。
図21A,Bはピストン115とボア113とにより形成される摺動部の拡大図である。図21Aにおいて、ピストン115の母材である鉄系材料の表面部分である摺動面324には二硫化モリブデン(MoS)を固着させた混合層323が形成されている。MoSの純度を98%以上とし、図21Bのように摺動面324に微細くぼみ(以下、くぼみ)123をほぼ均一に形成することがより好ましい。さらにくぼみ123は表面形状が球形で、かつ直径が2μm〜20μmで、深さが0.2μm〜1.0μmであることが好ましい。
図21AのようにMoSを摺動面324に形成する方法の例を説明する。イミド基等の熱硬化性樹脂をバインダーとして用い、ジメチルアセトアミド等の溶剤に上記バインダー溶け込ませた溶液にMoSの粒子をいれる。このような溶液を摺動面324に塗布した後、数百度で焼き付ける。
次に図21BのようにMoSを固着させた混合層323を表面に形成する方法を説明する。MoSの粒をある速度以上で摺動部品の母材である鉄系あるいはアルミニウム系等の金属の摺動面に衝突させる。このようにすると、衝突の際に生じる熱エネルギーによりMoSの一部が母材に溶け込み金属結合する。これにより混合層323が固着すると共に、衝突の際の衝撃力によりくぼみ123が形成される。
以上のように構成された冷媒圧縮機100について、以下その動作を図1、図21A,Bを参照しながら説明する。
商用電源から供給される電力は駆動部である電動部106に供給され、電動部106の回転子105を回転させる。回転子105はクランクシャフト108を回転させ、偏心部110の偏心運動が連結部のコンロッド118からピストンピン117を介してピストン115を駆動する。これによりピストン115はボア113内を往復運動し、サクションチューブ121を通して容器101内に導かれた冷媒ガス102はサクションマフラー122から吸入され、圧縮室116内で圧縮される。
この際、ピストン115が上死点、下死点に達したときに速度が0m/sとなり金属接触が生じることが多い。しかしながら、ピストン115の表面層にMoSを固着させた混合層323を形成することからMoSの持つ自己潤滑作用により摩擦係数が低下して摺動損失が低下する。
さらに図21Bの構成では、ピストン115の摺動面324の混合層323にほぼ均一にくぼみ123を設けている。これにより実施の形態1と同様の効果が得られる。すなわち、くぼみ123を形成することにより摺動部間の面積が低減され、金属接触が低減される。また、ピストン115とボア113の隙間の漏出ガスがピストン115の表面にほぼ均一に形成したくぼみ123に達すると、くぼみ123においてピストン115とボア113の隙間の体積が増加する。このためラビリンスシールと同様の作用が生じ、漏出した冷媒ガスの流速は急速に低下する。この結果、冷媒ガスの漏れ量が減少する。その結果、冷媒圧縮機の体積効率が向上するため、冷媒圧縮機の圧縮効率は向上する。
図22は、本実施の形態における摺動時のオイルの流れを示した図である。くぼみ123の形状が球面であれば、摺動部が摺動する際に生じる油膜を発生させるオイル103の流れがくぼみの中でうず流を形成し易くなる。その結果油圧が発生することで金属接触を防止し、耐摩耗性が向上する。また、形状が球面であることから、摺動方向に関わらず、摺動にともなう摺動部間の隙間の変化量が一定となり、摺動部全体に均一な油膜が形成される。これによりピストン115とボア113との隙間の偏りが小さくなり、ピストン115の側面から冷媒ガスの漏れる量が少なくなる。
次に、図23に示す摩擦係数の特性図を用いて鉄系材料にMoSを固着させた混合層323の有り無しならびにくぼみ123有り無しでの摩擦係数を測定した結果について説明する。この測定は、CHFCF冷媒の雰囲気圧力0.4MPaのもと、VG8からVG10のエステルオイルを使用し、摺動速度を1.0m/s、面圧:0.5MPaにおいて行われる。
この結果から、鉄系材料にMoSを固着させた混合層323はリン酸マンガン処理に比べ摩擦係数が低下していることがわかる。混合層323を形成しているMoSの組織は稠密六方晶で、分子の大きさは、約6×10−4μmと小さい。このことから、鉄系材料、アルミニウム等の相手材に接触した場合、低い摩擦係数でへき開すると考えられる。これにより、金属接触が生じている摺動部の摩擦係数が低下すると考えられる。また、バインダーとして用いられるポリアミドイミド樹脂(PAI)等の不純物の摩擦係数は、MoSに比較して高いので、MoSの純度を98%以上にすることが望ましい。
さらに鉄系材料にMoSを固着させた混合層323に球形でかつ直径を2μm〜20μm、深さを0.2μm〜1.0μmの大きさのくぼみ123を設けることにより摩擦係数は低下する。これはくぼみ123により、形成されるくさび形油膜の油圧が増加することで、金属接触部にかかる荷重が低減され摩擦係数が低下したことによると考えられる。
次に、鉄系材料にMoSを固着させた混合層323に球形でかつ直径を2μm〜20μm、深さを0.2μm〜1.0μmの大きさのくぼみ123を設けた場合の摩耗量を測定した結果を説明する。図24は、混合層323の表面にくぼみ123をほぼ均一に形成した場合と混合層323無しでリン酸マンガン処理した場合との摩耗量の特性図である。試験は、CHFCF冷媒の雰囲気圧力0.4MPaのもと、VG8からVG10のエステルオイルを使用し、摺動速度を1.0m/s、面圧:0.5MPaの条件で20時間行われる。
この結果から、混合層323にくぼみ123を設けることにより、リン酸マンガン処理の場合より摩耗量が少なくなることがわかる。これは、くぼみ123を形成することにより摺動部間の面積が低減され、金属接触が低減されることによる。また、形成されるくさび形油膜の油圧がくぼみ123により増加することで、金属接触部にかかる荷重が低減されることによると考えられる。さらに、MoSの粒をある速度以上で鉄系材料の表面に衝突させる方法でMoSを固着させた混合層323ならびにくぼみ123を同時に形成している。このことから、MoSが母材内部に入り込みMoSの一部が硬度の高い金属間化合物を形成することによりさらに耐摩耗性が向上している。
本実施の形態においてはピストン115の摺動面324にMoSを固着させた混合層323を設けている。またさらに混合層323表面に直径を2μm〜20μm、深さを0.2μm〜1.0μmの大きさのくぼみ123をほぼ均一に設けている。またボア113にこのような混合層323を設けてもよい。ピストン115とボア113との双方に設けても、同様の作用効果が得られる。
次に、主軸部109と軸受部114とにより形成される摺動部について説明する。図25A,Bは主軸部109と軸受部114とにより形成される摺動部の拡大図である。
クランクシャフト108の主軸部109の母材である鉄系材料の表面にMoSを含有させることにより金属材料中にMoSを固着させた混合層323を形成している。混合層323のより好ましい形態は、前述と同様である。図25Bは混合層323の表面である摺動面328にくぼみ123を形成した場合を示している。
混合層323を形成することにより、摺動部への給油が行われない冷媒圧縮機運転開始時において軸受け部114とクランクシャフト108の間に金属接触が発生しても摺動部の摩擦係数が低くなり、摺動損失が低下する。
さらに混合層323にくぼみ123をほぼ均一に形成することにより、実施の形態1と同様の効果を奏する。
本実施の形態においては主軸部109の摺動面328にMoSを固着させた混合層323を設けている。そしてさらに混合層323表面に直径を2μm〜20μm、深さを0.2μm〜1.0μmの大きさのくぼみ123をほぼ均一に設けている。また軸受部114にこのような混合層323を設けてもよい。主軸部109と軸受部114との双方に設けても、同様の作用効果が得られる。
次に、コンロッド118とピストンピン117とにより形成される摺動部について説明する。図26A,Bはピストンピン117とコンロッド118とにより形成される摺動部の拡大図である。
ピストンピン117の摺動面331にはMoSを固着させた混合層323が形成されている。混合層323のより好ましい形態は上述と同様である。図26Bは混合層323の表面にくぼみ123をほぼ均一に形成した状態を示している。
コンロッド118とピストンピン117とは、ピストン115が上死点、下死点に達したときに速度が0m/sとなり、油膜が形成できず金属接触が発生する。このような場合でも、混合層323を形成することにより、摺動部の摩擦係数が低くなり、摺動損失が低下する。
さらに混合層323にくぼみ123をほぼ均一に形成することにより、実施の形態1と同様の効果を奏する。
本実施の形態においてはピストンピン117の摺動面331にMoSを固着させた混合層323を設けている。そしてさらに混合層323表面に直径を2μm〜20μm、深さを0.2μm〜1.0μmの大きさのくぼみ123をほぼ均一に設けている。またコンロッド118にこのような混合層323を設けてもよい。ピストンピン117とコンロッド118との双方に設けても、同様の作用効果が得られる。
次に、スラスト軸受部135に形成される摺動部について説明する。図27A,Bはスラスト部130とスラストワッシャ134とが接する部分の拡大図である。
スラスト部130の摺動面335にはMoSを固着させた混合層323が形成されている。混合層323のより好ましい形態は上述と同様である。図27Bは混合層323の表面にくぼみ123をほぼ均一に形成した状態を示している。くぼみ123のより好ましい形態も上述と同様である。
冷媒圧縮機が運転を停止しているときも、スラスト軸受部135には垂直荷重が負荷されている。このように垂直荷重が負荷され、さらに、摺動部への給油が行われない冷媒圧縮機運転開始時において、スラスト部130とスラストワッシャ134との間に金属接触が発生する。このような場合でも、混合層323を形成することにより、摺動部の摩擦係数が低くなり、摺動損失が低下する。
さらに混合層323にくぼみ123をほぼ均一に形成することにより、実施の形態1と同様の効果を奏する。
本実施の形態においては軸受部114のスラスト部130の摺動面335にMoSを固着させた混合層323を設けている。そしてさらに混合層323表面に直径を2μm〜20μm、深さを0.2μm〜1.0μmの大きさのくぼみ123をほぼ均一に設けている。またスラストワッシャ134にこのような混合層323を設けてもよい。スラスト部130とスラストワッシャ134との双方に設けても、同様の作用効果が得られる。
以上、本実施の形態においては、スラスト軸受部135をフランジ面132、スラスト部130、スラストワッシャ134にて構成し、混合層323を摺動面335に形成している。なお、クランクシャフト108の主軸部109と偏心部110との間にもフランジ面136がある。フランジ面136とそれに対向する軸受部114のスラスト部139とでスラスト軸受を構成してもよい。その場合、スラスト部137に混合層323を設ける。このようにしてスラスト軸受を構成する場合においても、同様の作用効果が得られる。
なお、スラストワッシャ134とに混合層323を設けても、スラストワッシャ134とスラスト部130との双方に設けても、同様の作用効果が得られる。また、スラストワッシャ134が回転子105のフランジ面に接する面に混合層323を設けてもよい。回転子105のフランジ面に混合層323を設けてもよい。クランクシャフト108のスラスト部137に混合層323を設けても、クランクシャフト108のスラスト部137と軸受部114のスラスト部139との双方に設けても、同様の作用効果が得られる。
また、冷媒102としてハイドロカーボン系冷媒であるイソブタンやプロパンを使用する場合や、オイル103として鉱油、アルキルベンゼン、エステル、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコール等を使用する場合においては、オイル103中に冷媒102が溶け込み更に粘度を低下させる。このため、本構成を適用することにより同様の効果が得られる。これについて以下に述べる。
図28は、MoSを固着させて形成した混合層323に微小くぼみ123を形成した場合と、リン酸マンガン層を形成した場合との摩擦係数の特性図である。図29は、ピストンとボアとに、上記のような混合層323を形成した場合とリン酸マンガン層を形成した場合とのコンプレッサーにおける冷凍能力の特性図である。図30は、上記2種類のコンプレッサーにおける効率の特性図である。
図1において、容器101内にはイソブタンからなる冷媒ガス102が充填されている。容器101は、鉱油からなりVG10未満VG1以上の粘度のオイル103を底部に貯留し、固定子104、回転子105からなる電動部106とこれによって駆動される往復式の圧縮部107を収容している。
主軸部109と軸受部114、ピストン115とボア113、ピストンピン117とコンロッド118、偏心部110とコンロッド118は相互に摺動部を形成する。各摺動部は圧縮部107の駆動により摺動する接触部である。
そして上記摺動部表面には、母材である鉄系材料の表面にMoSを固着させた混合層323が形成されている。そして更に、表面に直径2μm〜50μm、深さを0.5μm〜10μmの大きさのくぼみ123がほぼ均一に形成されている。
上記各摺動部間において、オイル103の粘度がVG10未満VG1以上と低いため、摺動部品同士が固体接触を起こしやすい。さらには冷媒ガス102がイソブタンであることからオイル103に溶け込みやすく、オイル103の粘度は低下することで、さらに固体接触を起こしやすくなる。特に摺動部がピストン115とボア113、ピストンピン117とコンロッド118である場合、1圧縮工程当たり2回、相互摺動速度が0m/sとなるため、油圧がゼロとなり、固体接触が生じる。
しかしながら、ピストン115の表面層にMoSを固着させた混合層323が形成されていることから、MoSの持つ固体潤滑作用により異常摩耗が防がれるとともに、摩擦係数が低下して摺動損失が低下する。
加えて図22に示すように、摺動部が摺動する際に生じる油膜を発生させるオイル103の流れがくぼみ123の中でうず流を形成し易い。その結果油圧が発生することで固体接触が防止され、耐摩耗性が向上する。
ここで、図28を用いてオイル103の粘度を変えた際の摩擦係数について説明する。この測定は、CHFCF冷媒の雰囲気圧力0.4MPaのもと、VG4からVG22のエステルオイル、VG1相当のエタノールを使用し、摺動速度を1.0m/s、面圧:0.5MPaの条件にて行われる。
この結果から、リン酸マンガン処理しただけの場合は、オイル粘度をVG10未満にすると摩擦係数が上昇することがわかる。一方、くぼみ123を設けた混合層323を設けた場合は、VG1までオイル粘度を低下させても摩擦係数は上昇せず、リン酸マンガン処理した場合に比べ摩擦係数が低下していることがわかる。
さらにオイル粘度をパラメータに、往復式冷媒圧縮機の冷凍能力と冷媒圧縮機の成績係数(COP)の変化とを測定した結果を図29、図30を用いて説明する。鉄系材料のピストン115の摺動面324には、MoSを固着させた混合層323に直径2μm〜50μm、深さを0.5μm〜10μmの大きさのくぼみ123が均一に設けられている。測定は、イソブタン冷媒とVG5とVG10の鉱油を用い、凝縮温度/蒸発温度:54.4℃/−23.3℃、吸入ガス、膨張弁前温度:32.2℃の条件にて行われる。
図29において、リン酸マンガン処理をピストンに施した圧縮機では、オイル103の粘度をVG10からVG5に低下させた際、大きく冷凍能力が低下している。一方、混合層323をピストンに形成した圧縮機では、冷凍能力の低下が極めて少ないことが分かる。
このことは、実施の形態1と同様のくぼみ123による効果と、混合層323による効果と推定される。
図30においては、リン酸マンガン処理をピストンに施した圧縮機に比べて、くぼみ123を有する混合層323をピストンに設けた圧縮機の効率を示す成績係数(COP)が上昇している。これは図29に示したとおり、冷媒圧縮機の冷凍能力の低下が極めて小さく抑えられていることにより体積効率が維持されることによる。また、図28に示したように摺動部における摩擦係数の上昇がリン酸マンガン処理した場合に比べて極めて少ないことから入力が低減されていることにもよる。またVG10からVG5へのオイル粘度の低下に伴う粘性抵抗の低減が冷媒圧縮機の入力の低減に大きく寄与していると考えられる。
なお、イソブタンと鉱油の組合せを例に挙げて説明をしたが、冷媒ガス102に同じハイドロカーボン系冷媒であるプロパンを使用する場合にも、オイル103にアルキルベンゼン、エステル、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコール等を使用する場合にもオイル103中に冷媒が溶け込み更に粘度を低下させる。このため、本構成を適用することにより同様の効果が得られる。
なお上記説明では、摺動部の双方に混合層323を設ける。混合層323は摺動部のいずれか一方に施してもよく、同様の作用効果が得られる。
また上記説明では、混合層323をピストン115に形成する場合について説明したが、他の摺動部についても同様である。
なお、オイル103の粘度はVG10未満VG1以上とし、摺動部でのオイル103の保持性が低下しても、摺動面に形成した混合層323中のMoSの固体潤滑性により摩擦係数が低下する。このため、摺動損失が低減される。さらに低粘度のオイル103を用いることにより、摺動損失が低減される。
(実施の形態4)
本実施の形態による冷媒圧縮機の基本的な構成は図16を用いて説明した実施の形態2と同様である。実施の形態2との違いは、偏心部207とローリングピストン(以下、ピストン)215、主軸部208と主軸受213、副軸部209と副軸受214がそれぞれ相互に形成している摺動部である。摺動部を形成する各部は圧縮部205の駆動により摺動し合う接触部である。
図31A,Bはピストン215とベーン216とにより形成される摺動部の拡大図である。図32A,Bはピストン215と偏心部207とにより形成される摺動部の拡大図である。
ピストン215の摺動面419には、母材の鉄系材料に二硫化モリブデン(MoS)を固着させた混合層323が形成されている。偏心部207の摺動面419や、主軸部208、副軸部209の摺動部表面にもMoSを含む混合層323が形成されている。MoSの純度を98%以上とし、図31B、図32Bのように摺動面に微細くぼみ(以下、くぼみ)123をほぼ均一に形成することがより好ましい。さらにくぼみ123は表面形状が球形で、かつ直径が2μm〜20μmで、深さが0.2μm〜1.0μmであることが好ましい。
以上のように構成された冷媒圧縮機200について、図16、図31A,B、図32A,Bを参照しながら以下その動作を説明する。
駆動部である電動部106が通電されると回転子103が回転する。これに伴ってシャフト210は回転し、偏心部207に遊嵌されたピストン215が圧縮室211内を転動する。これにより、ベーン216で仕切られた圧縮室211の高圧側と低圧側の部屋の容積は連続的に変化する。これに伴って冷媒ガスは連続して圧縮される。さらに圧縮された冷媒ガスは密閉容器(以下、容器)101内に吐出され、容器101内が高圧雰囲気となる。また、容器101内が高圧であることからベーン216に容器101内の雰囲気圧力が背圧として働き、ピストン215の外周表面にベーン216の先端が押しつけられる。ピストン215の外周表面とベーン216の先端との接触部分においては円弧と円弧の接触となり線接触の形態であることから金属接触が頻繁に生じる。
その際、ピストン215の外周表面にMoSを含む混合層323を形成することにより、摺動部の摩擦係数が低くなり、摺動損失が低下する。なお、本実施の形態において、混合層323をピストン215の外周表面に設けているが、ベーン216に設けてもよい。ピストン215の外周表面とベーン216の双方に設けても、同等の効果を有する。
また、シャフト210の回転に伴ってオイルポンプ217はオイル103を連続的に各摺動部へ給油する。
偏心部207、主軸部208、副軸部209の摺動部表面の混合層323には、くぼみ123がほぼ均一に形成されている。これにより、実施の形態2と同様の効果を奏する。
実施の形態2で述べたようにローリングピストン型の冷媒圧縮機では、ピストン215が偏心部207に回転自在に遊嵌されている。そして、ピストン215と偏心部207との間の相対速度は主軸部208−主軸受213間、副軸部209−副軸受214間の相対速度に比較して小さくなる。これは摺動潤滑上金属接触が発生しやすい不利な条件である。しかしながら偏心部207の摺動面419には、MoSを固着させた混合層323を設けている。金属接触が発生した場合、MoSの組織が稠密六方晶で、分子の大きさが約6×10−4μmと小さくことから低い摩擦係数でへき開する。これにより、摺動部の摩擦係数が低くなり、摺動損失が低下する。
さらにローリングピストン型の冷媒圧縮機は容器101内が凝縮圧力となるため、内圧が高く、オイル103に冷媒が溶け込みやすい。このことによりオイルの粘度が低下する。これも、摺動潤滑上不利な条件である。しかしながら、くぼみ123が混合層323の表面に設けられていることにより、実施の形態2と同様の効果を奏する。
なお、偏心部207、主軸部208、副軸部209の摺動面に、直径を2μm〜20μm、深さを0.2μm〜1.0μmの大きさの微細くぼみ219をほぼ均一に設けたMoSを固着させた混合層323を設けている。また、ピストン215の内周表面、主軸受213、副軸受214に混合層323を設けてもよい。偏心部207とピストン215の内周表面の双方、主軸部208と主軸受213の双方、副軸部209副軸受214の双方に混合層323を設けても、同様の作用効果が得られる。
また、冷媒としてハイドロカーボン系冷媒であるイソブタンやプロパンを使用する場合や、オイル103として鉱油、アルキルベンゼン、エステル、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコール等を使用する場合には、オイル103中に冷媒が溶け込み更に粘度が低下する。これにより耐摩耗性が低下することから本構成を適用することにより同様の効果が得られる。これについて以下に述べる。
ここでは図16において、容器101に封入されているオイル103は鉱油からなり粘度VG10未満VG5以上で、冷媒ガス(図示せず)はイソブタンからなるとする。
既述のように偏心部207とピストン215、主軸部208と主軸受213、副軸部209と副軸受214は相互に摺動部を形成している。そして各摺動部の表面では、母材である鉄系材料の表面にMoSを固着させた混合層323が形成されている。この構成により、実施の形態3と同様に、固体接触が発生してもMoSが低い摩擦係数でへき開し、摺動部の摩擦係数が低くなり、摺動損失が低下する。さらにその表面には、直径2μm〜50μm、深さを0.5μm〜10μmの大きさのくぼみ123がほぼ均一に形成されている。くぼみ123をこのような大きさにすることで、実施の形態2と同様に、冷媒がオイル103に溶け込みやすい場合でも固体接触の発生が減少し、摩擦係数の上昇が防止される。
また、上記説明ではイソブタンと鉱油との組合せを例に挙げて説明をしたが、冷媒に同じハイドロカーボン系冷媒であるプロパンを使用する場合にも、また、オイル103にアルキルベンゼン、エステル、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコール等を使用する場合にも、オイル103中に冷媒が溶け込み更に粘度を低下させる。この場合も本構成を適用することにより同様の効果が得られる。
以上、実施の形態1〜4において、一定速度の圧縮機について述べている。なお、インバーター化に伴い冷媒圧縮機の低速化が進む中、特に20Hzを切るような超低速運転や同様に低速で起動をかけた場合に於いてはさらに異常摩耗の課題が大きい。このような圧縮機に本発明の構成を適用すれば、その効果が顕著になる。
一方、起動時に誘導電動機として働き、その後、電源周波数に同期して運転を行なう誘導同期モータを搭載した冷媒圧縮機においても、起動時同期運転に入り込む際の加速力が強い。そのため、異常摩耗の課題が大きい。このような圧縮機に本発明の構成を適用すれば、その効果が顕著になる。
さらに、摺動部材料を鉄以外にアルミ等の他の材料としても油膜の形成原理から考え、同様の作用効果が得られる。
(実施の形態5)
本実施の形態による冷媒圧縮機の基本的な構成は図1を用いて説明した実施の形態1と同様である。実施の形態1との違いは、バルブプレート119に設けられた吸入バルブ装置527と、吐出バルブ装置534である。
まず吸入バルブ装置について説明する。図33は本実施の形態における吸入バルブ装置の縦断面図である。図34は吸入バルブ装置527の吸入弁座(以下、弁座)517を示す平面図である。図35は吸入バルブ装置527の吸入可動弁(以下、弁)519を示す平面図である。
バルブプレート119は弁座517を有し、弁519と共に吸入バルブ装置527を構成する。弁座517と、弁519のシール部519Aとには、相互シール面に微細くぼみ(以下、くぼみ)123Aがほぼ均一に形成されている。弁座517と、弁519のシール部519Aとは、圧縮部107の駆動により接触し合う接触部である。また、弁519の腕部519Bには微細くぼみ(以下、くぼみ)123Bがほぼ均一に形成されている。くぼみ123A、123Bの形状は球面が好ましく、さらに大きさは直径2μm〜20μm、深さを0.2〜1.0μmとすることが好ましい。さらに相互シール表面積に対するくぼみ123A、123Bの占める面積割合は40〜80%が好ましい。
なお、弁座517と弁519とにくぼみ123Aを形成する方法は実施の形態1でくぼみ123を形成する方法と同様である。弁519の部材として表面組織がマルテンサイトの板ばね材料を用いる場合についても同様に形成することができる。
以上のように構成された圧縮機について、図1、図33〜35を参照しながらその動作を説明する。
商用電源から供給される電力は駆動部である電動部106に供給され、電動部106の回転子105を回転させる。回転子105はクランクシャフト108を回転させ、偏心部110の偏心運動が連結部のコンロッド118からピストンピン117を介してピストン115を駆動する。これによりピストン115はボア113内を往復運動する。サクションチューブ121を通して密閉容器(以下、容器)101内に導かれた冷媒ガス102はサクションマフラー122から吸入バルブ装置527を介して吸入され、圧縮室116内で連続して圧縮される。
吸入バルブ装置527から吸入される冷媒ガス102はミスト状となったオイル103を微量に含んでおり、吸入バルブ装置527を構成する弁座517と弁519との相互シール面にオイル103を供給する。供給されたオイル103は相互シール面のシールと潤滑との機能を果す。
ここで、くぼみ123Aを形成する際に、弁座517と弁519との表面層の組織がマルテンサイト化し、表面強度が上昇している。このため、これらの耐磨耗性と耐衝撃性とが向上する。またくぼみ123Aを形成することにより接触部間の面積が低減され、金属接触が低減される。
ピストン115がボア113内を往復運動して冷媒ガス102を圧縮する際、圧縮された冷媒ガス102の一部は吸入バルブ装置527の相互シール面からサクションマフラー122へと漏出する。この漏出は体積効率を下げる。しかしながら、本実施の形態においては吸入バルブ装置527を構成する弁座517と弁519のシール部519Aとにほぼ均一にくぼみ123Aを形成し、そこにオイル103が滞留している。オイル103が圧縮された冷媒ガス102の漏出に対して抵抗となる。この際、くぼみ123Aの形状を球面とすることにより、同じ表面部への投影面積の多角錐に比べて体積が増加し、滞留するオイル103の量が増加する。この結果、冷媒ガス102の漏れ量が減少し、圧縮機の体積効率が向上するため、圧縮機の圧縮効率は向上する。
また、くぼみ123Aに滞留したオイル103は、弁座517と弁519との相互シール面における潤滑性の向上にも寄与し、吸入バルブ装置527の耐摩耗性が向上する。また、くぼみ123Aに滞留したオイル103は、弁519が弁座517へと着座する際の衝撃に対するダンパーの効果があることから吸入バルブ装置527着座衝撃に起因する圧縮機の騒音を低減する。さらには、腕部519Bにくぼみ123Bを形成する際に圧縮の残留応力を付与することで表面をマルテンサイト化することにより硬度が上がり耐衝撃性が向上し、疲労破壊強度が向上する。
なお、本実施の形態ではくぼみ123Aを弁座517と弁519のシール部519Aとの両方に設けているが、いずれか一方に設けてもよい。また、くぼみ123Bを弁519の腕部519Bの両面に設けているが、いずれか一面に設けてもよい。
次に吐出バルブ装置について説明する。図36は本実施の形態における吐出バルブ装置534の縦断面図である。図37は吐出バルブ装置534の吐出弁座(以下、弁座)528を示す平面図である。図38は吐出バルブ装置534の吐出可動弁(以下、弁)525の相互シール面側を示す平面図である。図39は吐出バルブ装置534の弁525の衝打部541A側を示す平面図である。図40は吐出バルブ装置534のストッパ537を示す平面図である。
バルブプレート119は弁座528を有し、弁525、ストッパ537と共に吐出バルブ装置534を構成する。弁座528と、弁525のシール部525Aとは、圧縮部107の駆動により接触し合う接触部である。弁座528と、弁525のシール部525Aとには、相互シール面にくぼみ123Aがほぼ均一に形成されている。また、弁525の腕部525Bにはくぼみ123Bがほぼ均一に形成されている。そして弁525の衝打部541Aとストッパ537の衝打部541Bにもくぼみ123Aがほぼ均一に形成されている。衝打部541A、541Bもまた、圧縮部107の駆動により接触し合う接触部である。くぼみ123A、123Bのより好ましい形態は、前述と同様であり、その形成方法も同様である。
以下その動作を説明する。商用電源から供給される電力は駆動部である電動部106に供給され、電動部106の回転子105を回転させる。回転子105はクランクシャフト108を回転させ、偏心部110の偏心運動が連結部であるコンロッド118からピストンピン117を介してピストン115を駆動する。これによりピストン115はボア113内を往復運動する。サクションチューブ121を通して容器101内に導かれた冷媒ガス102はサクションマフラー122から吸入バルブ装置527を介して吸入され、圧縮室116内で連続して圧縮される。圧縮された冷媒ガス102は、吐出バルブ装置534、ヘッド120を介して吐出管(図示せず)から冷凍サイクルの高圧側である熱交換器70へと排出される。
圧縮室116内で連続して圧縮された冷媒ガス102はミスト状となったオイル103を微量に含んでいる。冷媒ガス102は吐出バルブ装置534を構成する弁座528と弁525のシール部525Aとの相互シール面と、弁525の衝打部541Aとストッパ537の衝打部541Bとにオイル103を供給する。供給されたオイル103は相互シール面のシールと潤滑、衝打部541A、541Bの潤滑との機能を果す。
ここで、くぼみ123Aを形成する際に、弁座528、弁525、衝打部541A、541Bとの表面層の組織がマルテンサイト化し、表面強度が上昇している。このため、これらの耐磨耗性と耐衝撃性とが向上する。またくぼみ123Aを形成することにより接触部間の面積が低減され、金属接触が低減される。
ピストン115がボア113内を往復運動して冷媒ガス102を吸入、圧縮する際、吐出バルブ装置534からヘッド120へと吐出された冷媒ガス102の一部は吐出バルブ装置534の相互シール面から圧縮室116へと漏出する。漏出した冷媒ガス102は再膨張を行うことから体積効率を下げる。しかしながら、本実施の形態においては吐出バルブ装置534を構成する弁座528と弁525のシール部525Aとの相互シール面にほぼ均一に形成したくぼみ123Aにオイル103が滞留している。オイル103が、一度ヘッド120へと吐出された冷媒ガス102の圧縮室116への漏出に対して抵抗となる。この際、くぼみ123Aの形状を球面とすることにより、同じ表面部への投影面積の多角錐に比べて体積が増加し、滞留するオイル103の量が増加する。この結果、冷媒ガス102の漏れ量が減少し、圧縮機の体積効率が向上するため、圧縮機の圧縮効率は向上する。
また、くぼみ123Aに滞留したオイル103は、弁座528と弁525のシール部525Aとにおける相互シール面の潤滑性の向上にも寄与し、吐出バルブ装置534の耐摩耗性が向上する。
また、くぼみ123Aに滞留したオイル103は、弁525のシール部525Aが弁座528へと着座する際の衝撃に対するダンパーの効果がある。このため吐出バルブ装置534の着座衝撃に起因する圧縮機の騒音が低減される。さらには、腕部525Bにくぼみ123Bを形成する際に圧縮の残留応力を付与することで表面がマルテンサイト化され硬度が上がり、耐衝撃性が向上し、疲労破壊強度が向上する。
また、弁525の衝打部541Aとストッパ537の衝打部541Bに、ほぼ均一に形成したくぼみ123Aにオイル103が滞留する。このオイル103が衝打部541A,541Bの潤滑性の向上にも寄与し、吐出バルブ装置534の耐摩耗性が向上する。
また、くぼみ123Aに滞留したオイル103は、弁525が開放しストッパ537へと衝突する際の衝撃に対するダンパーの効果がある。このため吐出バルブ装置534の開放衝撃に起因する圧縮機の騒音が低減される。さらには、表面をマルテンサイト化することにより硬度が上がり耐衝撃性が向上する。
なおくぼみ123Aを弁座528と弁525のシール部525A、衝打部541Aと衝打部541Bの全てに設けているが、それぞれの組合せの一方に設けてもよい。またくぼみ123Bを弁525の腕部525Bの両面に設けているが、いずれか一面に設けてもよい。
次にバックアップリード535を有する吐出バルブ装置について説明する。図41は本発明の実施の形態における他の吐出バルブ装置534Aの縦断面図である。図42は吐出バルブ装置534Aのバックアップリード535の、吐出可動弁(以下、弁)525との衝打部541C側を示す平面図である。図43は吐出バルブ装置534Aのバックアップリード535の、ストッパ537との衝打部541D側を示す平面図である。
図41に示す吐出バルブ装置534Aは、弁525とストッパ537との間にバックアップリード535を有する。弁525の衝打部541Aとバックアップリード535の衝打部541C、バックアップリード535の衝打部541Dとストッパ537の衝打部541Bは、それぞれ圧縮部107の駆動により接触し合う接触部である。そしてバックアップリード535の衝打部541Cと衝打部541Dとには、くぼみ123Aがほぼ均一に形成されている。くぼみ123Aのより好ましい形態は前述と同様であり、その形成方法も同様である。これ以外の構成は、図36の吐出バルブ装置534と同様である。
以下その動作を説明する。商用電源から供給される電力は駆動部である電動部106に供給され、電動部106の回転子105を回転させる。回転子105はクランクシャフト108を回転させ、偏心部110の偏心運動が連結部であるコンロッド118からピストンピン117を介してピストン115を駆動する。これによりピストン115はボア113内を往復運動する。サクションチューブ121を通して容器101内に導かれた冷媒ガス102はサクションマフラー122から吸入バルブ装置527を介して吸入され、圧縮室116内で連続して圧縮される。圧縮された冷媒ガス102は、吐出バルブ装置534、ヘッド120を介して吐出管(図示せず)から冷凍サイクルの高圧側である熱交換器70へと排出される。
圧縮室116内で連続して圧縮された冷媒ガス102はミスト状となったオイル103を微量に含んでいる。圧縮された冷媒ガス102は、吐出バルブ装置534Aを構成する弁525の衝打部541Aとバックアップリード535の衝打部541C、バックアップリード535の衝打部541Dとストッパ537の衝打部541Bとにオイル103を供給する。供給されたオイル103は衝打部541A、541B、541C、541Dの潤滑の機能を果す。
くぼみ123Aを形成する際に、弁525の衝打部541Aとバックアップリード535の衝打部541C、バックアップリード535の衝打部541Dとストッパ537の衝打部541Bの表面層組織がマルテンサイト化し、表面強度が上昇する。このため、これらの耐磨耗性と耐衝撃性とが向上する。またくぼみ123Aを形成することにより接触部間の面積が低減され、金属接触が低減される。
また、くぼみ123Aの形状を球面とすることにより、同じ表面部への投影面積の多角錐に比べて体積が増加し、滞留するオイル103の量が増加する。くぼみ123Aに滞留したオイル103は、弁525とバックアップリード535の衝打部541A,541C、およびバックアップリード535とストッパ537の衝打部541D、541Bの潤滑性の向上に寄与する。その結果、吐出バルブ装置534の耐摩耗性が向上する。また、くぼみ123Aに滞留したオイル103は、弁525がバックアップリード535へと衝突したり、バックアップリード535がストッパ537へと衝突する際の衝撃に対するダンパーの効果がある。このため吐出バルブ装置534Aの開放衝撃に起因する圧縮機の騒音を低減する。さらには、表面をマルテンサイト化することにより硬度が上がり、各接触部の耐衝撃性が向上する。
なおくぼみ123Aを弁座528と弁525のシール部525A、衝打部541Aと衝打部541C、衝打部541Dと衝打部541Bの全てに設けているが、それぞれの組合せの一方に設けてもよい。
以上のように本実施の形態によれば、吸入バルブ装置、吐出バルブ装置の耐摩耗性、耐衝撃性、疲労破壊強度が向上し、圧縮機の圧縮効率が向上し、圧縮機の騒音が低減される。
(実施の形態6)
本実施の形態による冷媒圧縮機の基本的な構成は図1を用いて説明した実施の形態5と同様である。実施の形態5との違いは、バルブプレート119に設けられた吸入バルブ装置527と、吐出バルブ装置534における各接触部である。
まず吸入バルブ装置について説明する。図44は図33における他の吸入バルブ装置527の吸入弁座(以下、弁座)517を示す平面図である。図45は吸入バルブ装置527の吸入可動弁(以下、弁)519を示す平面図である。実施の形態5では、接触部である弁座517と、弁519のシール部519Aとに微小くぼみ123Aを設けているが、本実施の形態では二硫化モリブデン(MoS)を固着させた混合層323が形成されている。これ以外の構成は実施の形態5における吸入バルブ装置と同様である。
弁座517と弁519とにMoSを固着させた混合層323を形成する方法は実施の形態3と同様である。特に、表面にMoSの微細粒を一定速度以上で衝突させる方法によれば、衝突の際に生じる熱エネルギーによりMoSの一部が母材に溶け込み金属結合することにより固着させた混合層323が形成される。また同時に、衝突の際の衝撃力により実施の形態3と同様に微細くぼみが形成される。その際、表面層の組織がマルテンサイト化し、弁座517と弁519との表面強度が上昇する。弁519の部材に表面組織がマルテンサイトの板ばね材料を用いる場合についても同様に形成することができる。
このように、吸入バルブ装置527を構成する弁座517と弁519のシール部519Aとには、MoSを固着させた混合層323が形成されている。これより、MoSの自己潤滑作用によって弁座517と弁519のシール部519Aとの相互シール面の摩擦係数が低くなり耐摩耗性が向上する。なお、MoSの純度を98%以上としてMoSと比較して摩擦係数が高い不純物の量を極力抑えることにより、より高い効果が得られる。また、混合層323の表面にほぼ均一に微細くぼみを形成すれば、そこにオイル103が介在し、実施の形態5と同様の効果が得られる。この場合、微細くぼみの好ましい形態は実施の形態5と同様である。
以上のように本実施の形態によれば、混合層323を弁座517と、弁519のシール部519Aとに設けることによって、圧縮機の吸入バルブ装置527の耐摩耗性が向上する。さらに、混合層323の表面に微小くぼみを均一に設ければ、吸入バルブ装置527の耐衝撃性が向上し、圧縮機の性能と効率が向上し、吸入バルブ装置527に起因する騒音が低減される。
なお、本実施の形態では微小くぼみを設けた混合層323を弁座517と弁519のシール部519Aとの両方に設けているが、いずれか一方に設けてもよい。また、実施の形態5と同様に、微小くぼみを弁519の腕部519Bの少なくともいずれか一面に設けてもよい。
次に吐出バルブ装置について説明する。図46は図36における他の吐出バルブ装置534の吐出弁座(以下、弁座)528を示す平面図である。図47は吐出バルブ装置534の吐出可動弁(以下、弁)525の相互シール面側を示す平面図である。図48は吐出バルブ装置534の弁525の衝打部541A側を示す平面図である。図49は吐出バルブ装置534のストッパ537を示す平面図である。
実施の形態5では、接触部である弁座528と弁525のシール部525A、衝打部541Aと衝打部541Bとに微小くぼみ123Aを設けている。一方、本実施の形態では二硫化モリブデン(MoS)を固着させた混合層323が形成されている。これ以外の構成は実施の形態5における吐出バルブ装置と同様である。
弁座528と弁525、衝打部541Aと衝打部541BとにMoSを固着させた混合層323を形成する方法は実施の形態3と同様である。特に、表面にMoSの微細粒を一定速度以上で衝突させる方法によれば、衝突の際に生じる熱エネルギーによりMoSの一部が母材に溶け込み金属結合することにより固着させた混合層323が形成される。また同時に、衝突の際の衝撃力により実施の形態3と同様に微細くぼみが形成される。その際、表面層の組織がマルテンサイト化し、弁座528と弁525、衝打部541Aと衝打部541Bとのそれぞれの表面強度が上昇する。弁525の部材に表面組織がマルテンサイトの板ばね材料を用いる場合についても同様に形成することができる。
このように、吐出バルブ装置534を構成する弁座528と弁525のシール部525A、衝打部541Aと衝打部541Bとに、MoSを固着させた混合層323が形成されている。これより、MoSの自己潤滑作用によって弁座528と弁525のシール部525Aとの相互シール面、衝打部541A、衝打部541Bのそれぞれの摩擦係数が低くなり耐摩耗性が向上する。なお、MoSの純度を98%以上としてMoSと比較して摩擦係数が高い不純物の量を極力抑えることにより、より高い効果が得られる。また、混合層323の表面にほぼ均一に微細くぼみを形成すれば、実施の形態5と同様の効果が得られる。この場合、微細くぼみの好ましい形態は実施の形態5と同様である。
以上のように本実施の形態によれば、混合層323を弁座528と弁525のシール部525Aと、衝打部541Aと衝打部541Bとに設けることによって、圧縮機の吐出バルブ装置534の耐摩耗性が向上する。さらに、混合層323の表面に微小くぼみを均一に設ければ、吐出バルブ装置534の耐衝撃性が向上し、圧縮機の性能と効率が向上し、吐出バルブ装置534に起因する騒音が低減される。
なお微小くぼみを設けた混合層323を弁座528と弁525のシール部525A、衝打部541Aと衝打部541Bの全てに設けているが、それぞれの組合せの一方に設けてもよい。また実施の形態5と同様に、微小くぼみを弁525の腕部525Bの少なくともいずれか一面に設けてもよい。
次にバックアップリード535を有する吐出バルブ装置について説明する。図50は図41における他の吐出バルブ装置534Aのバックアップリード535の、吐出可動弁(以下、弁)525との衝打部541C側を示す平面図である。図51は吐出バルブ装置534Aのバックアップリード535の、ストッパ537との衝打部541D側を示す平面図である。
実施の形態5では、接触部である弁座528と弁525のシール部525A、衝打部541Aと衝打部541C、衝打部541Dと衝打部541Bとにそれぞれ微小くぼみ123Aを設けている。一方、本実施の形態では二硫化モリブデン(MoS)を固着させた混合層323が形成されている。これ以外の構成は実施の形態5における吐出バルブ装置と同様である。
弁座528と弁525、衝打部541Aと衝打部541C、衝打部541Dと衝打部541BとにMoSを固着させた混合層323を形成する方法は実施の形態3と同様である。特に、表面にMoSの微細粒を一定速度以上で衝突させる方法によれば、衝突の際に生じる熱エネルギーによりMoSの一部が母材に溶け込み金属結合することにより固着させた混合層323が形成される。また同時に、衝突の際の衝撃力により実施の形態3と同様に微細くぼみが形成される。その際、表面層の組織がマルテンサイト化し、弁座528と弁525、衝打部541Aと衝打部541C、衝打部541Dと衝打部541Bとのそれぞれの表面強度が上昇する。弁525やバックアップリード535の部材に表面組織がマルテンサイトの板ばね材料を用いる場合についても同様に形成することができる。
このように、吐出バルブ装置534Aを構成する弁座528と弁525のシール部525A、衝打部541Aと衝打部541C、衝打部541Dと衝打部541Bとに、MoSを固着させた混合層323が形成されている。これより、MoSの自己潤滑作用によって弁座528と弁525のシール部525Aとの相互シール面、衝打部541A、衝打部541C、衝打部541D、衝打部541Bのそれぞれの摩擦係数が低くなり耐摩耗性が向上する。なお、MoSの純度を98%以上としてMoSと比較して摩擦係数が高い不純物の量を極力抑えることにより、より高い効果が得られる。また、混合層323の表面にほぼ均一に微細くぼみを形成すれば、実施の形態5と同様の効果が得られる。この場合、微細くぼみの好ましい形態は実施の形態5と同様である。
以上のように本実施の形態によれば、混合層323を弁座528と弁525のシール部525Aと、衝打部541Aと衝打部541Cと、衝打部541Dと衝打部541Bとに設けることによって、圧縮機の吐出バルブ装置534Aの耐摩耗性が向上する。さらに、混合層323の表面に微小くぼみを均一に設ければ、吐出バルブ装置534Aの耐衝撃性が向上し、圧縮機の性能と効率が向上し、吐出バルブ装置534Aに起因する騒音が低減される。
なお微小くぼみ有する混合層323を弁座528と弁525のシール部525A、衝打部541Aと衝打部541C、衝打部541Dと衝打部541Bの全てに設けているが、それぞれの組合せの一方に設けてもよい。
以上のように本実施の形態によれば、吸入バルブ装置、吐出バルブ装置の耐摩耗性、耐衝撃性、疲労破壊強度が向上し、圧縮機の圧縮効率が向上し、圧縮機の騒音が低減される。
なお、実施の形態5,6ではオイル103を内包したレシプロ式圧縮機について説明したが、他のロータリー式、スクロール式、リニア式等の圧縮方式の圧縮機についても同様の効果が得られる。また、オイルを用いないリニア式圧縮機等の圧縮機についてもオイルが関与しない効果が得られる。たとえば硬度や疲労破壊強度の改善によりもたらされる耐摩耗性や耐衝撃性や耐疲労破壊性が向上する。
(実施の形態7)
図52は、本発明の実施の形態7による、冷媒圧縮機の断面図である。図53は図52の冷媒圧縮機を含む冷凍機の冷凍サイクル図である。図54は、図52の冷媒圧縮機における吐出経路と密着コイルばねとが接触する部分の拡大図である。
密閉容器(以下、容器)101は底部にオイル103を貯留するとともに、固定子104と回転子105とからなる駆動部である電動部106とこれによって駆動される圧縮部107を収容している。また、圧縮部107から容器101外に圧縮された冷媒ガスを導出する吐出経路717が設けられている。なお、鋼管からなる吐出経路717には、共振による異常振動を防止する為に密着コイルばね(以下、ばね)718が被覆されている。ばね718は吐出経路717の共振防止部であり、ゴム等の弾性体で構成してもよい。
クランクシャフト108は回転子105を固定した主軸部109と、主軸部109に対し偏心して形成された偏心部110からなり、給油ポンプ111を設けている。シリンダーブロック112は略円筒形のボア113からなる圧縮室116を有している。ボア113に遊嵌されたピストン115は、偏心部110と連結部であるコネクティングロッド719にて連結されており、ボア113の端面はバルブプレート119で封止されている。
ヘッド120は高圧室を形成し、ヘッド120から容器101外に圧縮された冷媒ガスを導出する吐出経路717は容器101を介して冷凍サイクルの高圧側である熱交換器70に接続されている。
また、吐出経路717の表面には、微細くぼみ(以下、くぼみ)123がほぼ均一に形成されている。くぼみ123は球形でその大きさは直径2μm〜20μm、深さが0.2〜1.0μmであることが好ましい。さらにばね718に吐出経路717が接触する接触面717Aの表面積に対するくぼみ123の占める面積割合が40〜80%であることが好ましい。
このようなくぼみ123を形成する方法は、実施の形態1と同様である。
なお、冷媒ガスは塩素を含まない炭化水素系冷媒であり、オイル103はこの冷媒と相溶性を有する。
以上のように構成された冷媒圧縮機について、以下その動作を説明する。クランクシャフト108の回転に伴ってピストン115が直線運動することにより、圧縮室116が体積変化する。これにより冷媒ガス(図示せず)が圧縮され、吐出経路717を通って容器101外に導出され、熱交換器70に送られる。冷媒ガスは熱交換器70で外部へ放熱し、膨張弁80を介して熱交換器60へ戻り、外部から吸熱する。このようにして冷凍機が構成されている。
オイル103はクランクシャフト108の回転に伴って給油ポンプ111から各摺動部に給油され、摺動部を潤滑するとともに、偏芯部110先端より容器101内に放出され、吐出経路717にも放出される。
また、圧縮機本体707は圧縮部107の駆動中、常に微振動を発生するとともに、起動、停止時は慣性力によって圧縮機本体707が大きく振れる。その結果、吐出経路717が左右、前後にゆれるため、吐出経路717を構成する鋼管とばね718とが間欠的に接触しこすれる。このように、吐出経路717とばね718とは圧縮部107の駆動に伴い接触し合う接触部である。
しかしながら、本実施の形態においては図54に示すように、吐出経路717の接触面717Aにくぼみ123がほぼ均一に形成されている。これにより、接触部間の面積が低減され、金属接触が低減される。また、くぼみ123を形成する際に、吐出経路717とばね718との表面層の組織がマルテンサイト化し、表面強度が上昇している。このため、これらの耐磨耗性と耐衝撃性とが向上する。また、オイル103がくぼみ123に保持される。吐出経路717とばね718との隙間が狭くなったとき、くぼみ123内のオイル103の粘性と接触部との相対運動により、狭くなった隙間にオイル103が引き込まれる。そして、負荷を支える圧力がオイル103に生じくさび形油膜を形成する。このくさび形油膜により、接触面717Aに発生する金属接触が防止され、異常音の発生を効果的に抑えられる。
またくぼみ123の形状を球面とすれば、実施の形態1における図3と同様のオイル103の流れが生じ、その結果油圧が発生することで金属接触が防止される。これにより、異常音の発生が防止される。
くぼみ123の大きさは直径20μm〜50μm、深さを1μm〜10μmとくぼみ123の体積を小さく設定している。これにより、冷媒を含んだオイル103がくぼみ123に供給される際の体積変動が小さい。その結果、隙間での圧力低下があまり生じない。このため、オイル103中へ溶け込んでいる冷媒の発泡現象があまり生じないため、摺動時に発生する動圧により作り出される油膜が冷媒の発泡により破断されることが少ない。従って金属接触を防止する作用が高く維持されるため、耐磨耗性が高く、また異常音の発生を防止する作用が高まる。
また、摺動面717Aの表面積に対するくぼみ123の占める面積割合が40〜80%とすれば、くぼみ123の球面形状が維持される。その結果、吐出経路717とばね718との間にくぼみ123による傾斜表面部と摺動面717Aに対して平行な平面部が一様に設けられる。すなわち、一般的なテーパーランド軸受と同様の効果が得られる。これにより摺動時に発生する動圧が更に大きくなり、金属接触をさらに防止する効果が得られる。
そして、吐出経路717を構成する鋼管の表面にくぼみ123を形成する為に、鋼球、セラミックス球等の物質を表面に一定速度以上で衝突させている。このため、吐出経路717表面層の組織がマルテンサイト化しているので表面硬度が上昇し、耐摩耗性が向上している。
また冷媒ガスには炭化水素系冷媒を使用しているが、オイル103との相溶性の高い冷媒にもかかわらず、上述したようにオイル103中へ溶け込んでいる冷媒の発泡現象があまり生じない。このため、油膜が冷媒の発泡により破断されることが少ないので、オゾン層の破壊や地球温暖化を抑えた上でなおかつ耐磨耗性が高く異常音の発生が防止される。これらにより、部品点数を低減して製作コストを低減した冷媒圧縮機が得られる。
(実施の形態8)
図55A,Bは本発明の実施の形態8による、冷媒圧縮機における吐出経路と密着コイルばねとが接触する部分の拡大図である。本実施の形態による冷媒圧縮機は、実施の形態7で図52を用いて説明した冷媒圧縮機と基本的な構造は同様である。実施の形態7では、吐出経路717を構成する鋼管の表面に、微細くぼみ(以下、くぼみ)123がほぼ均一に形成されている。これに対し本実施の形態では図55Aに示すように、吐出経路717を構成する鋼管の表面に二硫化モリブデン(MoS)を含む混合層323が形成されている。これ以外は、実施の形態7と同様である。
また、図55Bに示すように、混合層323の表面にくぼみ123をほぼ均一に形成することが好ましい。また、くぼみ123は球形でその大きさは直径2μm〜20μm、深さが0.2〜1.0μmであることが好ましい。さらにばね718に吐出経路717が接触する接触面717Aの表面積に対するくぼみ123の占める面積割合が40〜80%であることが好ましい。
このような混合層323やくぼみ123を形成する方法は、実施の形態3と同様である。
なお、冷媒ガスは塩素を含まない炭化水素系冷媒であり、オイル103はこの冷媒と相溶性を有する。
圧縮機本体707は圧縮部107の駆動中、常に微振動を発生するとともに、起動、停止時は慣性力によって圧縮機本体707が大きく振れる。その結果、吐出経路717が左右、前後にゆれるため、吐出経路717を構成する鋼管とばね718とが間欠的に接触しこすれる。このように、吐出経路717とばね718とは圧縮部107の駆動に伴い接触し合う接触部である。
しかしながら、本実施の形態においては、吐出経路717の接触面717AにMoSを含む混合層323が形成されている。MoSの組織が稠密六方晶であることから、固体接触が生じてもMoSが低い摩擦係数でへき開することで固体潤滑作用を発揮する。これにより、接触部の摩擦係数が低くなり、金属接触による異常音の発生が効果的に抑えられる。
なおMoSの純度を98%以上とすることが好ましい。MoSより高い摩擦係数を持つ不純物が極めて微量となることで、接触部の摩擦係数がさらに低くなり、金属接触による異常音の発生がさらに抑えられる。
また図55Bに示すように、混合層323の接触面725にくぼみ123をほぼ均一に形成することにより、実施の形態7と同様の効果が得られる。
くぼみ123の好ましい形態は実施の形態7と同様である。そして、鋼管からなる吐出経路717の表面にくぼみ123を形成する為に、MoSの球を表面に一定速度以上で衝突させている。このため、吐出経路717表面層の組織がマルテンサイト化しているので表面硬度が上昇し、耐摩耗性が向上している。
また冷媒ガスには炭化水素系冷媒を使用しているが、オイル103との相溶性の高い冷媒にもかかわらず、オイル103中へ溶け込んでいる冷媒の発泡現象があまり生じない。このため、油膜が冷媒の発泡により破断されることが少ないので、オゾン層の破壊や地球温暖化を抑えた上でなおかつ耐磨耗性が高く異常音の発生が防止される。これらにより、部品点数を低減して製作コストを低減した冷媒圧縮機が実現される。
なお、実施の形態7,8において冷媒圧縮機はレシプロ式圧縮機として説明している。また、冷媒圧縮機はロータリ式圧縮機、リニア式圧縮機等の圧縮機構から冷媒ガスを容器外へ導出する経路を有するものでも同様の効果が得られる。
(実施の形態9)
本実施の形態による冷媒圧縮機は、実施の形態7で図52を用いて説明した冷媒圧縮機と基本的な構造は同様である。実施の形態7との違いは、固定子104を介して圧縮部107を密閉容器(以下、容器)101内に弾性的に支持する支持部923の構成である。図56は本実施の形態による冷媒圧縮機の断面図である。図57Aは図56の冷媒圧縮機における支持部923において圧縮コイルばね908と保持部材922とが接触する部分の拡大図である。
電動部106の固定子104を締結する固定子締結ボルト919には、頭部に一体に保持部材920が形成されている。容器101の内壁底部には保持部材922が固着されている。圧縮コイルばね(以下、ばね)908は、保持部材920と保持部材922とに各々上端、下端を挿入され、ばね908と保持部材920,922により支持部923が構成されている。
また、ばね908、保持部材920、922は鉄系の金属材料から形成されている。そしてばね908と保持部材920、ばね908と保持部材922の相互接触面の少なくともいずれか一方には微小くぼみ(以下、くぼみ)123がほぼ均一に形成されている。図57Aではその一例として、保持部材922の接触面924に微小くぼみ123を形成した状態を示している。
くぼみ123の形状は球面が好ましく、さらに大きさは直径2μm〜20μm、深さを0.2〜1.0μmとすることが好ましい。さらに相互シール表面積に対するくぼみ123の占める面積割合は40〜80%が好ましい。
なお、ばね908と保持部材920、922とにくぼみ123を形成する方法は実施の形態1でくぼみ123を形成する方法ど同様である。
なお、冷媒ガスは塩素を含まない炭化水素系冷媒であり、オイル103はこの冷媒と相溶性を有する。
以上のように構成された冷媒圧縮機について、以下その動作を説明する。クランクシャフト108の回転に伴ってピストン115が直線運動することにより、圧縮室116が体積変化する。これにより冷媒ガス(図示せず)が圧縮され、吐出経路717を通って容器101外に導出される。オイル103はクランクシャフト108の回転に伴って給油ポンプ111から各摺動部に給油され、摺動部を潤滑するとともに、偏芯部110先端より容器101内に放出される。
また、圧縮機本体707は圧縮部107の駆動中、常に微振動を発生するとともに、起動、停止時は慣性力によって圧縮機本体707が大きく振れる。その結果、ばね908が左右、前後にゆれるため、ばね908と保持部材920、ばね908と保持部材922とが間欠的に接触しこすれる。このように、ばね908と保持部材920、ばね908と保持部材922とは圧縮部107の駆動に伴い接触し合う接触部である。
しかしながら図57Aに示すように、保持部材922の接触面924には、ほぼ均等に微小くぼみ123が形成されている。これにより接触部間の面積が低減され、金属接触が低減される。また、くぼみ123を形成する際に、保持部材922の表面層の組織がマルテンサイト化し、表面強度が上昇している。このため、保持部材922の耐磨耗性と耐衝撃性とが向上する。この効果を有効にするためには、ばね908と保持部材920、922の全ての接触面に微小くぼみ123を形成することが望ましい。
また、接触面924等の相互接触面にくぼみ123をほぼ均一に形成することにより、オイル103がくぼみ123に保持される。ばね908と保持部材920、922との隙間が狭くなったとき、くぼみ123内のオイル103の粘性と接触部の相対運動により、狭くなった隙間にオイル103が引き込まれる。これにより、負荷を支える圧力がオイル103に生じくさび形油膜を形成する。このくさび形油膜が、相互接触面に発生する金属接触を防止することで異常音の発生が効果的に抑えられる。
さらに、くぼみ123の形状が球面であるため、接触する際に生じる油膜を発生させるオイル103の流れがくぼみ123の中でうず流を形成し易くなる。この様子は、実施の形態1で図3を用いて説明したのと同様である。その結果、発生する油圧が金属接触を防止することから、異常音の発生が防止される。
くぼみ123の大きさや、接触部表面積に対するくぼみ123の占める割合の好ましい形態についての説明は、他の実施の形態を同様なので省略する。
冷媒ガスには炭化水素系冷媒を使用しているが、オイル103との相溶性の高い冷媒にもかかわらず、上述したようにオイル103中へ溶け込んでいる冷媒の発泡現象があまり生じない。このため、油膜が冷媒の発泡により破断されることが少ない。また塩素を含まない炭化水素系冷媒を使用することで、大気開放時においてもオゾン層の破壊や地球温暖化を抑えた上でなおかつ耐摩耗性が高く異常音の発生が防止される。以上より、部品点数が低減され製作コストが低減された冷凍機が得られる。
なお、図57Bに示すように、接触面924等の相互接触面に二硫化モリブデン(MoS)を固着させた混合層323を形成してもよい。MoSを接触部表面に形成する方法は実施の形態3と同様である。この構成では、固体接触が生じてもMoSが低い摩擦係数でへき開することで固体潤滑作用を発揮する。これにより、接触部の摩擦係数が低くなり、金属接触による異常音の発生が効果的に抑えられる。なお、MoSの純度についての説明は、実施の形態3と同様である。
さらに、図57Cに示すように、混合層323の表面に、図57Aに示したようにくぼみ123をほぼ均等に形成してもよい。このように混合層323とくぼみ123とを同時に形成する方法は実施の形態3と同様である。また、くぼみ123の好ましい形態は上述と同様である。このようにすることで、図57A、図57Bを用いて説明した効果が複合的に発揮される。
なお本実施の形態では、保持部材920、922とその間に配置されたばね908が支持部923を構成しており、いわゆるコイルスプリング懸架方式である。これ以外に、例えばリーフスプリング方式やトーションバー方式で支持部923を構成してもよい。それらの場合にも、圧縮部107の駆動により摺動する箇所にくぼみ123や混合層323を設けることにより、同様の効果が得られる。
なお、本実施の形態において冷凍機はレシプロ式圧縮機としたが、冷凍機はロータリ式圧縮機、スクロール圧縮機、リニア式圧縮機、スターリング式ポンプ等、種類に関わらず内部懸架式であれば同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
本発明の冷媒圧縮機は、圧縮部と、駆動部と、第1、第2接触部とを有する。圧縮部は密閉容器内に収容され、冷媒ガスを圧縮する。駆動部は圧縮部を駆動する。第1、第2接触部は、圧縮部の駆動により接触したり摺動したりする。その表面には均等に配置された複数のくぼみと、二硫化モリブデン(MoS)を固着させた混合層との少なくともいずれかが形成されている。これらの接触部としては、ピストンとボアなどの摺動部、吸入弁、吐出弁の弁座と可動弁、吐出経路を構成する鋼管と密着コイルばね、圧縮部を保持する保持部材とばね等の支持部などがある。この構成により、第1、第2接触部の耐摩耗性が高くなり、信頼性が高く、高効率な圧縮機が得られる。またこのような圧縮機を用いた冷凍機も信頼性が高く、高効率である。
図面の参照符号の一覧表
1 密閉容器
2 オイル
3 固定子
4 回転子
5 電動部
6 圧縮部
7 圧縮機本体
8 圧縮コイルばね
9 クランクシャフト
9A 主軸部
9B 偏心部
10 給油ポンプ
11 シリンダーブロック
12 ボア
13 圧縮室
14 ピストン
15 バルブプレート
16 ヘッド
17 吐出経路
18 管体
19 固定子締結ボルト
20,22 保持部材
21 突起部
23 軸受部
60,70 熱交換器
90 膨張弁
100 冷媒圧縮機
101 密閉容器
102 冷媒ガス
103 オイル
104 固定子
105 回転子
106 電動部
107 圧縮部
108 クランクシャフト
109 主軸部
110 偏心部
111 給油ポンプ
112 シリンダーブロック
113 ボア
114 軸受部
115 ピストン
115A,125,127,130A 摺動面
116 圧縮室
117 ピストンピン
118 コンロッド
119 バルブプレート
120 ヘッド
121 サクションチューブ
122 サクションマフラー
123,123A,123B 微細くぼみ
130,137,139 スラスト部
132,136 フランジ面
134 スラストワッシャ
135 スラスト軸受部
200 冷媒圧縮機
205 圧縮部
207 偏心部
208 主軸部
209 副軸部
210 シャフト
211 圧縮室
212 シリンダー
213 主軸受
214 副軸受
215 ピストン
216 ベーン
217 オイルポンプ
218,219,摺動面
220 吐出経路
323 混合層
324,328,331,335 摺動面
419 摺動面
517 吸入弁座
519 吸入可動弁
519A シール部
519B 腕部
525 吐出可動弁
525A シール部
525B 腕部
527 吸入バルブ装置
528 吐出弁座
534,534A 吐出バルブ装置
535 バックアップリード
537 ストッパ
541A,541B,541C,541D 衝打部
707 圧縮機本体
717 吐出経路
717A,725 接触面
718 密着コイルばね
719 コネクティングロッド
908 圧縮コイルばね
919 固定子締結ボルト
920,922 保持部材
923 支持部
924 接触面
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】


【図22】

【図23】

【図24】




【図28】

【図29】

【図30】



【図33】

【図34】

【図35】

【図36】

【図37】

【図38】

【図39】

【図40】

【図41】

【図42】

【図43】

【図44】

【図45】

【図46】

【図47】

【図48】

【図49】

【図50】

【図51】

【図52】

【図53】

【図54】


【図56】


【図58】

【図59】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器と、
前記密閉容器内に収容され、冷媒を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する駆動部と、
前記圧縮部の駆動により接触と摺動とのいずれかを行う第1接触部と第2接触部と、を備え、
前記第1接触部と前記第2接触部との少なくともいずれかの表面に、均一に配置された複数のくぼみと、二硫化モリブデンを固着させた混合層との少なくともいずれかを形成した、
冷媒圧縮機。
【請求項2】
前記第1接触部と前記第2接触部が前記圧縮部を構成する摺動部品である、
請求項1記載の冷媒圧縮機。
【請求項3】
前記圧縮部が、
ピストンと、
前記ピストンを遊嵌したボアと、を有し、
前記第1接触部が前記ピストンであり、前記第2接触部が前記ボアである、
請求項1記載の冷媒圧縮機。
【請求項4】
前記圧縮部が、
主軸部と偏心部とを有するクランクシャフトと、
前記主軸部を軸支した軸受部と、を有し、
前記第1接触部が前記主軸部であり、前記第2接触部が前記軸受部である、
請求項1記載の冷媒圧縮機。
【請求項5】
前記圧縮部が、
主軸部と偏心部とを有するクランクシャフトと、
ピストンと、
前記ピストンに設けられたピストンピンと、
前記偏心部と前記ピストンピンとを連結したコンロッドと、を有し、
前記第1接触部が前記ピストンピンであり、前記第2接触部が前記コンロッドである、
請求項1記載の冷媒圧縮機。
【請求項6】
前記駆動部が回転子を有し、
前記圧縮部が、
主軸部と偏心部とを有するクランクシャフトと、
前記主軸部を軸支した軸受部と、を有し、
前記冷媒圧縮機は、前記回転子と前記軸受部との間に、スラストワッシャをさらに備え、
前記回転子は、前記スラストワッシャと接するフランジ面を有し、
前記軸受部は、前記スラストワッシャと接するスラスト部を有し、
前記第1接触部が、前記スラストワッシャであり、前記第2接触部が、前記フランジ面と前記スラスト面との少なくともいずれかである、
請求項1記載の冷媒圧縮機。
【請求項7】
前記圧縮部が、
主軸部と、偏心部と、前記主軸部と前記偏心部との間に設けられたフランジ部とを有するクランクシャフトと、
前記主軸部を軸支し、前記フランジ部と接するスラスト部を設けた軸受部と、を有し、
前記第1接触部が、前記フランジ部であり、前記第2接触部が、前記スラスト部である、
請求項1記載の冷媒圧縮機。
【請求項8】
前記圧縮部が、
圧縮室と、
前記圧縮室内を転動するローリングピストンと、
前記ローリングピストンに挿圧され、前記圧縮室を仕切るベーンと、を有し、
前記第1接触部が、前記ローリングピストンであり、前記第2接触部が、前記ベーンである、
請求項1記載の冷媒圧縮機。
【請求項9】
前記圧縮部が、
主軸部と、副軸部と、偏心部とを有するシャフトと、
前記偏心部に遊嵌されたローリングピストンと、
前記主軸部を軸支する主軸受と、
前記副軸部を軸支する副軸受と、を有し、
前記第1接触部と前記第2接触部との組が、前記偏心部と前記ローリングピストン、前記主軸部と前記主軸受、前記副軸部と前記副軸受の少なくともいずれかである、
請求項1記載の冷媒圧縮機。
【請求項10】
前記圧縮部は、
吸入弁座と、
吸入可動弁と、を有し、吸入工程で前記吸入可動弁が開く吸入バルブ装置と、
吐出弁座と、
吐出可動弁と、を有し吐出工程で前記吐出可動弁が開く吐出バルブ装置と、の少なくとも一方を含み、
前記第1接触部と前記第2接触部の組が、前記吸入弁座と前記吸入可動弁、前記吐出弁座と前記吐出可動弁の少なくともいずれかの組である、
請求項1記載の冷媒圧縮機。
【請求項11】
前記吸入可動弁と前記吐出可動弁との少なくともいずれかが、表面組織がマルテンサイトの板ばね材で形成された、
請求項10記載の冷媒圧縮機。
【請求項12】
前記吸入可動弁と前記吐出可動弁との少なくともいずれかが腕部を有し、
前記腕部の少なくとも一方の面に複数のくぼみを均一に形成した、
請求項10記載の冷媒圧縮機。
【請求項13】
前記吐出可動弁は第1衝打部を有し、
前記吐出バルブ装置は、前記吐出可動弁の動きを規制し、前記吐出可動弁の開動作により前記第1衝打部と接する第2衝打部を有するストッパと、をさらに有し、
前記第1接触部が前記第1衝打部であり、前記第2接触部が前記第2衝打部である、
請求項10記載の冷媒圧縮機。
【請求項14】
前記吐出バルブ装置は、前記ストッパと前記吐出可動弁との間に、第3衝打部と第4衝打部とを有するバックアップリードと、をさらに有し、
前記第1接触部と前記第2接触部の組が、前記第1衝打部と前記第3衝打部、前記第2衝打部と前記第4衝打部の少なくともいずれかの組である、
請求項13記載の冷媒圧縮機。
【請求項15】
前記圧縮部から前記密閉容器外に、圧縮された冷媒を導出する吐出経路と、
前記吐出経路に被覆させた共振防止部と、をさらに備え、
前記第1接触部が前記吐出経路であり、前記第2接触部が前記共振防止部である、
請求項1記載の冷媒圧縮機。
【請求項16】
前記圧縮部を前記密閉容器に弾接的に支持し、前記第1接触部と前記第2接触部とを有する支持部と、をさらに備えた、
請求項1記載の冷媒圧縮機。
【請求項17】
前記支持部は、
前記圧縮部を保持する第1保持部材と、
前記密閉容器内面に設けられた第2保持部材と、
前記第1保持部材と前記第2保持部材との間に設けられたばねと、を有し、
前記第1接触部が前記ばねであり、前記第2接触部が前記第1保持部材と前記第2保持部材の少なくともいずれかである、
請求項16記載の冷媒圧縮機。
【請求項18】
オイルをさらに備え、
前記オイルは、前記くぼみに滞留した状態と前記混合層の表面に介在した状態との少なくともいずれかの状態にある、
請求項1記載の冷媒圧縮機。
【請求項19】
前記くぼみの表面形状が球面である、
請求項18記載の冷媒圧縮機。
【請求項20】
前記くぼみの直径が2μm以上50μm以下であり、かつ前記くぼみの深さが0.5μm以上10μm以下である、
請求項18記載の冷媒圧縮機。
【請求項21】
前記くぼみを設けた前記第1接触部と前記第2接触部との少なくともいずれかの表面積に対する前記くぼみの占める面積割合が40%以上80%以下である、
請求項18記載の冷媒圧縮機。
【請求項22】
前記オイルの粘度はVG5以上VG10未満である、
請求項18記載の冷媒圧縮機。
【請求項23】
前記冷媒は、塩素フリーな炭化水素であり、前記オイルは前記冷媒と相溶性がある、
請求項18記載の冷媒圧縮機。
【請求項24】
前記冷媒は、イソブタンとプロパンとの少なくともいずれかを含み、
前記オイルは、アルキルベンゼン、鉱油、エステル、ポリビニルエーテル、ポリアクリレングリコールのうち少なくともいずれかを含む、
請求項18記載の冷媒圧縮機。
【請求項25】
前記第1接触部と前記第2接触部の母材が鉄系の材料であり、前記第1接触部と前記第2接触部との少なくともいずれかの表面組織がマルテンサイトである、
請求項1記載の冷媒圧縮機。
【請求項26】
前記混合層の二硫化モリブデンの純度が98%以上である、
請求項1記載の冷媒圧縮機。
【請求項27】
前記くぼみの表面に前記混合層を形成した、
請求項1記載の冷媒圧縮機。
【請求項28】
密閉容器と、
前記密閉容器内に収容され、冷媒を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する駆動部と、
前記圧縮部の駆動により接離と摺動のいずれかを行う第1接触部と第2接触部と、を備え、
前記第1接触部と前記第2接触部との少なくともいずれかの表面に、均一に配置された複数のくぼみと、二硫化モリブデンを固着させた混合層との少なくともいずれかを形成した冷媒圧縮機と、
前記冷媒圧縮機の高圧側に接続された第1熱交換器と、
前記冷媒圧縮機の低圧側に接続された第2熱交換器と、
前記第1熱交換器と前記第2熱交換器との間に接続された膨張弁と、を備えた、
冷凍機。

【国際公開番号】WO2004/055371
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【発行日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502492(P2005−502492)
【国際出願番号】PCT/JP2003/016023
【国際出願日】平成15年12月15日(2003.12.15)
【出願人】(000004488)松下冷機株式会社 (25)
【Fターム(参考)】