説明

冷媒圧縮機

【課題】筐体の肉厚を厚くせずに耐圧強度を確保することができると共に、吐出管の肉厚を厚くせずに疲労強度を高めた冷媒圧縮機を得ること。
【解決手段】上部シェル10aを有する筐体10と、前記上部シェルに設けられた第1の貫通孔10bに気密に固定された電源端子台115と、前記上部シェルに設けられた第2の貫通孔10cに挿通され接合されて冷媒圧縮部で圧縮された冷媒を外部へ吐出する吐出管107と、を備える冷媒圧縮機において、前記吐出管107は、前記上部シェルの外部に配置された拡径部108aと前記上部シェルの第2の貫通孔10cに挿通されて前記上部シェルの内部に配置された非拡径部108bとを有し、前記拡径部108aと非拡径部108bの間の段部108cが前記上部シェルに接合された鋼管108と、前記鋼管108の拡径部108aに挿入され前記拡径部108aの端部に接合された銅管109と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍装置や空気調和機等の冷凍サイクルに使用されるロータリ式の冷媒圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、密閉容器内に電動要素と圧縮要素とを備えて成る、密閉型圧縮機において、前記密閉容器から冷媒ガスを吐出するために備えられた吐出管を、前記密閉容器の上側を構成する上密閉容器の内側の内管と外側の外管で構成し、内管の材質を鋼材、外管の材質を銅材とし、内管の一方の開口部を拡管し、拡管された前記開口部に外管を挿入した状態で該開口部の先端部及び外管を前記上密閉容器にロー材で溶接固定した密閉型圧縮機が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、密閉容器内に電動要素と圧縮要素とを備えて成る密閉型圧縮機において、前記密閉容器から冷媒ガスを吐出するために備えられた吐出管を、前記密閉容器の上側を構成する上密閉容器の内側の内管と外側の外管で構成し、内管の材質を鋼材、外管の材質を銅材とし、内管の一方の開口部を拡管すると共に先端部を反り返り形状とし、拡管された前記開口部に外管を挿入した状態で前記先端部及び外管を前記上密閉容器にロー材で溶接固定した密閉型圧縮機が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−038086号公報
【特許文献2】特開2010−038087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術によれば、内管の拡管された開口部を上密閉容器の貫通孔に通すため、貫通孔の径が大きくなり、この貫通孔と同一面上に設けた電源端子台用貫通孔との距離が短くなって、上密閉容器の耐圧強度が小さくなってしまう、という問題がある。密閉容器の胴部には、通常、吸音断熱材が巻かれるので、吐出管又は電源端子台を密閉容器の胴部へ移動させて両者の貫通孔間の距離を長くすることはできない。また、上密閉容器の耐圧強度を上げるために上密閉容器の肉厚を厚くするとコストアップになる、という問題が発生する。
【0006】
さらに、外管の材質を銅材とし、この外管を上密閉容器に溶接固定しているので、この外管を空気調和機の冷凍サイクル側の銅管に接続した場合、密閉型圧縮機の振動により、外管には繰り返し応力が発生し、外管の根元部、すなわち、外管の上密閉容器との溶接部で、繰返し応力が最大となる。そのため、外管には、疲労強度が要求され、銅管の場合鋼管よりも肉厚が必要となりコストアップになる、という問題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、上密閉容器の肉厚を厚くせずに耐圧強度を確保することができると共に、吐出管の肉厚を厚くせずに疲労強度を高めた冷媒圧縮機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、上部シェルを有する筐体と、前記筐体内に配置された冷媒圧縮部と、前記筐体内に配置され前記冷媒圧縮部を駆動するモータと、前記上部シェルに設けられた第1の貫通孔に気密に固定された電源端子台と、前記上部シェルに設けられた第2の貫通孔に挿通され接合されて前記冷媒圧縮部で圧縮された冷媒を外部へ吐出する吐出管と、を備える冷媒圧縮機において、前記吐出管は、前記上部シェルの外部に配置された拡径部と前記上部シェルの第2の貫通孔に挿通されて前記上部シェルの内部に配置された非拡径部とを有し、前記拡径部と非拡径部の間の段部が前記上部シェルに接合された鋼管と、前記鋼管の拡径部に挿入され前記拡径部の端部に接合された銅管と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる冷媒圧縮機は、密閉容器(筐体)の耐圧強度が確保されると共に、吐出管の疲労強度が高い、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明に係る冷媒圧縮機の実施例を示す縦断面図である。
【図2】図2は、図1のA部拡大図である。
【図3】図3は、本発明に係る冷媒圧縮機の上部シェルを示す上面図である。
【図4】図4は、本発明に係る冷媒圧縮機の上部シェルを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る冷媒圧縮機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明に係る冷媒圧縮機の実施例を示す縦断面図であり、図2は、図1のA部拡大図であり、図3は、本発明に係る冷媒圧縮機の上部シェルを示す上面図であり、図4は、本発明に係る冷媒圧縮機の上部シェルを示す縦断面図である。
【0013】
図1に示すように、冷媒圧縮機1は、ロータリ式圧縮機であり、密閉された縦置き円筒状の筐体10の下部に配置された冷媒圧縮部12と、筐体10の上部に配置され、回転軸15を介して冷媒圧縮部12を駆動するモータ11と、を備えている。
【0014】
モータ11のステータ111は、筐体10の内周面に固定されている。モータ11のロータ112は、ステータ111の中央部に配置され、モータ11と冷媒圧縮部12とを機械的に接続する回転軸15に固定されている。
【0015】
モータ11が作動して回転軸15が回転すると、冷媒圧縮部12は、アキュムレータ25及び低圧連絡管31を介して、冷凍サイクルの低圧側から連続的に冷媒ガスを吸入して圧縮し、筐体10内及び吐出管107を通して外部(冷凍サイクルの高圧側)へ吐出する。
【0016】
図1〜図4に示すように、筐体10の上部シェル10aに設けられた第1の貫通孔10bには、モータ11のステータ巻線の電源接続端子116を固定する電源端子台115が、上部シェル10aの内側から外側に嵌入されて気密に固定されている。電源端子台115には、複数(3本)の電源接続端子116が貫通して固定されている。電源接続端子116と電源端子台115との間は、絶縁シール材(例えば、ガラス)により絶縁シールされている。
【0017】
吐出管107は、筐体10の上部シェル10aに設けられた第2の貫通孔10cに挿通され銀ロー付けにより接合されている。吐出管107は、銅材料の使用量を減らしてコストダウンを図るために、一部分を鋼管108で構成し、鋼管108と銅管109とを接続した構造となっている。
【0018】
鋼管108は、上部シェル10aの外部に配置された拡径部108aと、上部シェル10aの第2の貫通孔10cに挿通されて上部シェル10aの内部に配置された非拡径部108bとを有し、拡径部108aと非拡径部108bの間の段部108cが上部シェル10aに銀ロー付けにより接合されている。銅管109は、一端109aが鋼管108の拡径部108aに挿入され、拡径部108aの端部108aaに銀ロー付けにより接合されている。銅管109の他端は、冷凍サイクルの高圧側の銅管(図示せず)に接続される。
【0019】
以上説明した実施例の冷媒圧縮機1によれば、上部シェル10aの第2の貫通孔10cには、鋼管108の非拡径部108bが挿通されるので、拡径部108aを挿通するのに比べ、第2の貫通孔10cの内径が小さくて済む。そのため、上部シェル10aの、第1の貫通孔10bと第2の貫通孔10cとの間の幅L(図3、図4参照)が広くなり、上部シェル10aの耐圧強度が小さくなるのを防ぐことができる。
【0020】
また、冷媒圧縮機1の運転時の振動により、吐出管107には、応力が発生し、吐出管107と上部シェル10aとの銀ロー付けによる接合部でこの応力が最大となるが、鋼管108の拡径部108aと非拡径部108bの間の段部108cを上部シェル10aに銀ロー付けにより接合し、銅管109の一端109aを鋼管108の拡径部108aに挿入して拡径部108aの端部108aaに銀ロー付けにより接合したので、上記応力が最大となる部分を素材強度の大きい鋼管108とすることができ、応力が最大となる部分を銅管109とするよりもコストを抑えて必要な疲労強度を得ることができる。
【0021】
さらに、上部シェル10aの第2の貫通孔10cに、鋼管108の非拡径部108bを挿通し、段部108cを上部シェル10aに銀ロー付けにより接合するとき、段部108cが第2の貫通孔10cに当接して鋼管108が位置決め保持されるので、銀ロー付けによる接合作業が容易である。実施例の冷媒圧縮機1は、電源端子台115を吐出管107の近傍に配置せざるを得ない小型の冷媒圧縮機1に有用である。
【符号の説明】
【0022】
1 冷媒圧縮機
10 筐体
10a 上部シェル
10b 第1の貫通孔
10c 第2の貫通孔
11 モータ
12 冷媒圧縮部
15 回転軸
25 アキュムレータ
31 低圧連絡管
107 吐出管
108 鋼管
108a 拡径部
108b 非拡径部
108c 段部
109 銅管
111 ステータ
112 ロータ
115 電源端子台
116 電源接続端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部シェルを有する筐体と、前記筐体内に配置された冷媒圧縮部と、前記筐体内に配置され前記冷媒圧縮部を駆動するモータと、前記上部シェルに設けられた第1の貫通孔に気密に固定された電源端子台と、前記上部シェルに設けられた第2の貫通孔に挿通され接合されて前記冷媒圧縮部で圧縮された冷媒を外部へ吐出する吐出管と、を備える冷媒圧縮機において、
前記吐出管は、前記上部シェルの外部に配置された拡径部と前記上部シェルの第2の貫通孔に挿通されて前記上部シェルの内部に配置された非拡径部とを有し、前記拡径部と非拡径部の間の段部が前記上部シェルに接合された鋼管と、前記鋼管の拡径部に挿入され前記拡径部の端部に接合された銅管と、を備えることを特徴とする冷媒圧縮機。
【請求項2】
前記上部シェルの第2の貫通孔は、前記第1の貫通孔の近傍に設けられることを特徴とする請求項1に記載の冷媒圧縮機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−32704(P2013−32704A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167791(P2011−167791)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】