説明

冷蔵庫

【課題】冷却器で生成した冷気を、ダクトを介して冷却ファンにより貯蔵室内へと循環させる冷蔵庫において、冷却ファンの圧力損失を低減する。
【解決手段】貯蔵室3背面に収納された冷却器4と、冷却器4で生成した冷気を貯蔵室3内へ循環させる冷却ファン5と、冷却ファン5と対向する位置に冷却ファン5側へ突出した整流部11を有したダクト10とを備え、整流部11は傾斜部12と平面部13とを備えた略円錐台状としたことにより、ダクト10の奥行き寸法を抑えながら、冷却ファン5の吸い込み側の圧力損失を増加させずに、吹き出し側の圧力損失を低減することができ、収納効率および冷却効率が高く、騒音の低い冷蔵庫を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関し、特に、冷却器で生成した冷気を庫内ファンによって庫内に循環させる冷蔵庫において、冷却ファンの冷却風を庫内へ効率よく循環させる構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来の冷蔵庫の冷却ファン周囲の断面図である。図7は従来の冷蔵庫の整流部周辺を拡大した断面図である。図6、図7において、1は断熱壁により構成された冷蔵庫本体であり、前部に開口し、断熱扉2により閉塞された貯蔵室3を少なくとも一つ備え、貯蔵室3背面に圧縮機(図示せず)、凝縮器(図示せず)減圧装置(図示せず)と直列に接続され、冷媒回路を構成する冷却器4を収納する。冷却器4の上部には、冷却器4により生成された冷気を貯蔵室3内へと循環させる、軸流式または斜流式の冷却ファン5を備えており、冷却器4の断熱扉2側には、冷却ファン5と対向する位置に、冷却ファン5側に略円錐台状に突出した整流部6を備えたダクト7を備え、貯蔵室3を冷却器4及び冷却ファン5のある冷却室8と仕切っている。
【0003】
また、ダクト7の平面部には、貯蔵室3と冷却室8を連通するスリット9を設け、冷却ファン5による冷却風を貯蔵室3内へと導いている。
【0004】
冷蔵庫運転中、冷却器4で生成された冷気を貯蔵室3へと導くべく冷却ファン5が運転する。一般的に、軸流式、斜流式ファンは、ファン近傍の羽根部よりも内側の圧力が低くなることにより、ファン吐出側近傍の中心部で、主流とは逆方向の流れが生じることにより、渦が発生する。これにより、圧力損失が大きくなり、ファンの騒音が高くなったり、風量が減少するなどの課題があった。
【0005】
従来の冷蔵庫では、この課題を解決するために、ダクト7の冷却ファン5と対向する部分に、突出した円錐状の整流部6を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3631316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば奥行きの短い冷蔵庫においては冷却ファン5の吸い込み側の空間を大きく取るために、冷却ファン5の回転軸を、吸い込み方向が冷却器側を向くように、水平方向から傾けて配置する場合、上記従来の構成では、ダクト7の基本平面を鉛直方向としたとき、整流部6と冷却ファン5の下の隙間が小さく、上の隙間が大きくなる。その結果、整流部6の圧力損失低減効果が小さくなり、風量が低下したり、騒音が大きくなってしまう恐れがあった。
【0008】
また、整流部6の圧力低減効果を大きくするために、ダクト7の基本平面を冷却ファン5の回転軸と垂直方向とした場合には、冷却ファン5の吐出側の空間が小さくなり、ダクト7内での圧力損失が増加し、風量が低下したり、騒音が大きくなってしまう恐れがあった。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、冷却室内で冷却ファンと整流部を効
率良く配置することにより、冷却ファンの風量を増加させ、冷却効率が高く、騒音の低い冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を解決するために、本発明の冷蔵庫は、断熱壁で囲われ前面に開口部を有した貯蔵室と、前記開口部を閉塞する断熱扉と、前記貯蔵室背面に収納された冷却器と、前記冷却器で生成した冷気を前記貯蔵室内へ循環させる冷却ファンと、前記冷却ファンと対向する位置に前記冷却ファン側へ突出した整流部を有したダクトとを備え、前記整流部は傾斜部と平面部とを備えた略円錐台状としたものである。
【0011】
これにより、ダクトの奥行き寸法を抑えながら、冷却ファンの吸い込み側の圧力損失を増加させずに、吹き出し側の圧力損失を低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の冷蔵庫は、冷却ファンと対向する位置に冷却ファン側へ突出した整流部を有したダクトとを備え、前記整流部は傾斜部と平面部とを備えた略円錐台状としたことにより、ダクトの奥行き寸法を抑えながら、冷却ファンの吸い込み側の圧力損失を増加させずに、吹き出し側の圧力損失を低減することができ、収納効率および冷却効率が高く、騒音の低い冷蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の断面図
【図2】同実施の形態における冷蔵庫の冷却ファン周囲の断面図
【図3】同実施の形態における冷蔵庫の整流部周囲を拡大した断面図
【図4】同実施の形態における冷蔵庫の冷却ファンと整流部の距離と冷却ファン風量の関係を示した相関図
【図5】同実施の形態における冷蔵庫の整流部の傾斜部の角度と冷却ファン風量の関係を示した相関図
【図6】従来の冷蔵庫の冷却ファン周囲の断面図
【図7】従来の冷蔵庫の整流部周辺を拡大した断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
請求項1に記載の発明は、断熱壁で囲われ前面に開口部を有した貯蔵室と、前記開口部を閉塞する断熱扉と、前記貯蔵室背面に収納された冷却器と、前記冷却器で生成した冷気を前記貯蔵室内へ循環させる冷却ファンと、前記冷却ファンと対向する位置に前記冷却ファン側へ突出した整流部を有したダクトとを備え、前記整流部は傾斜部と平面部とを備えた略円錐台状としたものであり、ダクトの奥行き寸法を抑えながら、冷却ファンの吸い込み側の圧力損失を増加させずに、吹き出し側の圧力損失を低減することができ、収納効率および冷却効率が高く、騒音の低い冷蔵庫を提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ダクトの基本平面を略鉛直方向とし、前記冷却ファンを鉛直方向に対して傾斜配置するとともに、前記整流部が前記冷却ファンと対向するように前記整流部を傾斜配置したものであり、冷却室の奥行き寸法を抑えながら、冷却ファンの吸い込み側の圧力損失を増加させずに、吹き出し側の圧力損失を低減することができ、さらに収納効率および冷却効率が高く、騒音の低い冷蔵庫を提供することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記整流部の平面部の略中心部と冷却ファンの回転軸とが略同一線上となるように構成したものであり、冷却室のスペースの有効活用を図りながら、整流部の整流効果を高めることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、前記平面部と冷却ファン先端面との距離を20mm以下とするものであり、圧力損失を効率的に低減することができ、より冷却ファンの風量を増加させるとともに、騒音も低くすることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明において、前記整流部の傾斜部と、冷却ファンの回転軸と垂直な平面との角度を20度以下とするものであり、圧力損失を効率的に低減することができ、より冷却ファンの風量を増加させるとともに、騒音も低くすることができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明において、前記整流部の平面部の最大寸法を、冷却ファンのモーター部の寸法と同等以下とするものであり、圧力損失を効率的に低減することができ、より冷却ファンの風量を増加させるとともに、騒音も低くすることができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態における冷蔵庫の断面図である。図2は同実施の形態の冷却ファン周囲の断面図である。図3は同実施の形態の整流部周囲を拡大した断面図である。図4は、冷却ファンと整流部の距離と冷却ファン風量の関係を示した相関図である。図5は、整流部の傾斜部の角度と冷却ファン風量の関係を示した相関図である。尚、従来と同一構成については、同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0022】
図1から図3において、10はダクトであり、冷却室8と貯蔵室3を仕切るとともに、冷却ファン5と対向する位置に整流部11を有する。
【0023】
冷却ファン5は、矩形状の軸流ファンで、モーター部5aと羽根部5bから構成されており、下端が断熱扉2側、上端が断熱扉2と反対側となるように、回転軸が水平方向に対して傾いて配設されている。
【0024】
整流部11は、傾斜部12と平面部13を有した略円錐台状の形状をしており、連結部14によってダクト10と滑らかに繋がっている。
【0025】
次に整流部11の詳細な構成について説明する。整流部11と冷却ファン5は、平面部13と冷却ファン5の吹き出し側中心部との距離が20mm以下、好ましくは10mmから15mm程度となるような位置関係で設置されている。
【0026】
また、傾斜部12と平面部13の面とがなす角度は20度以下、好ましくは10度から15度程度の角度となるような構成としている。
【0027】
また、整流部11の平面部13の略中心部と冷却ファン5の回転軸とが略同一線上となるように配置構成している。
【0028】
また、整流部11の平面部13の最大寸法を、冷却ファン5のモーター部5aの寸法と同等以下としている。具体的には、平面部13の直径は、冷却ファン5のモーター部5aの直径と同等以下としている。
【0029】
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作を説明する。
【0030】
冷蔵庫運転中、冷却器4で生成された冷気を貯蔵室3へと導くべく冷却ファン5が運転する。この時、冷却ファン5の吐出側近傍に発生する渦を抑制すべく、冷却ファン5と対向する位置に整流部11を設けている。これにより、圧力損失を低くすることができ、冷却ファン5の風量を増加させることができるとともに、騒音を低減することができる。
【0031】
冷却ファン5の風量が増加すると、冷却器4の冷却効率が向上し、貯蔵室3内を効率よく冷却することができる。
【0032】
ここで、冷却ファン5の回転軸は、水平方向に対して傾いて設置されていることにより、冷却ファン5の吸い込み側の空間を大きくとることができる。これにより、奥行きが短い冷蔵庫など、冷却ファン5の吸い込み側の空間を大きく取れない冷蔵庫において、冷却ファン5の吸い込み側の圧力損失を低減しつつ、冷却ファン5の吐出側の圧力損失を低減することができ、冷却ファン5の風量を増加させることができる。一方、ダクト10の基本平面を鉛直方向としつつ整流部11を構成できるため、ダクト10内での圧力損失を増加させることなく冷却ファン5の吐出側の圧力損失を低減することができ、冷却ファン5の風量を増加させることができる。
【0033】
従って、冷却室8、ダクト10全体としての圧力損失を低減することができ、冷却効率が高く、騒音の低い冷蔵庫とすることができる。
【0034】
また、ダクト10の整流部11は平面部13を有した略円錐台状の形状をしているので、ダクト10の奥行寸法を小さくでき、貯蔵室3内のスペースの有効活用が可能となる。
【0035】
また、本実施の形態においては、整流部11の平面部13との距離は、20mm以下としている。筆者の検討によれば、冷蔵庫に使用される代表的な冷却ファンの仕様に対しては、距離が大きすぎると整流の効果は得られず、20mm前後から風量増加の効果が現れてくるとの結果を得ている(図4参照)。
【0036】
よって、整流部11の平面部13と冷却ファン5の距離を20mm以下としたことにより、圧力損失を低減することができ、より冷却ファン5の風量を増加させるとともに、騒音も低くすることができる。従って、より冷却効率が高く騒音の低い冷蔵庫とすることができる。
【0037】
また、本実施の形態においては、整流部11の傾斜部12と平面部13がなす角度は20度以下としている。筆者の検討によれば、冷蔵庫に使用される代表的な冷却ファンの使用に対しては、角度が大きすぎると整流の効果は得られず、20度前後から風量増加の効果が現れてくるとの結果を得ている(図5参照)。
【0038】
よって、整流部11の、傾斜部12と平面部13のなす角度を20mm以下としたことにより、圧力損失を低減することができ、より冷却ファン5の風量を増加させるとともに、騒音も低くすることができる。従って、より冷却効率が高く騒音の低い冷蔵庫とすることができる。
【0039】
また、軸流式ファンや斜流式ファンにおいて、吐出側で渦が発生するのは、モーター部5aよりも羽根側であり、モーター部5aよりも平面部13の直径が大きいと、かえって圧力損失が大きくなり、冷却ファン5の風量を低下させることになる。本実施の形態においては、整流部11の平面部13の直径を、冷却ファン5のモーター部5aの直径と同等以下としているため、圧力損失を低減することができ、より冷却ファン5の風量を増加さ
せるとともに、騒音も低くすることができる。従って、より冷却効率が高く騒音の低い冷蔵庫とすることができる。
【0040】
尚、本実施の形態では、連結部14とダクト10との繋ぎ目を、できるだけ大きな半径の曲線で滑らかに繋ぐことにより、急拡大、急縮小による圧力損失を最小限にすることができる、より圧力損失低減効果を高くすることができる。
【0041】
また、本実施の形態では、整流部11とダクト10は一体の構成として説明したが、別部品で整流部11を構成し、ダクト10に後付けする構成としても、同様の効果が得られる。
【0042】
また、ダクト10の整流部11による凹みを化粧版などで隠すことにより、貯蔵室3内奥面の凹凸が無くなり、デザイン性に優れた冷蔵庫とすることができる。
【0043】
また、本実施の形態では、冷却ファン5の風量が増加することにより、冷却効率が高くなるとして説明したが、風量増加した分、冷却ファン5の回転数を低くして同等風量を確保することにより、冷却ファン5の入力を低くでき、消費電力量の低い冷蔵庫とすることもできる。
【0044】
また、本実施の形態においては、平面部13の直径を、冷却ファン5のモーター部5aの直径以下とする構成として説明したが、例えば冷却ファン5のモーター部5aに、モーター部5aよりも大きな直径の安全ガードのような部品が取り付けられている場合には、平面部13の直径は安全ガードの直径以下とすることで同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、冷却器で生成した冷気を、ダクトを介して冷却ファンにより貯蔵室内へと循環させる冷蔵庫であって、貯蔵室を効率よく冷却できる冷蔵庫を提供することができる。
【0046】
従って、本発明は、家庭用および業務用など様々な種類及び大きさの冷蔵庫等として有用である。
【符号の説明】
【0047】
1 冷蔵庫
2 断熱扉
3 貯蔵室
4 冷却器
5 冷却ファン
5a モーター部
5b 羽根部
10 ダクト
11 整流部
12 傾斜部
13 平面部
14 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱壁で囲われ前面に開口部を有した貯蔵室と、前記開口部を閉塞する断熱扉と、前記貯蔵室背面に収納された冷却器と、前記冷却器で生成した冷気を前記貯蔵室内へ循環させる冷却ファンと、前記冷却ファンと対向する位置に前記冷却ファン側へ突出した整流部を有したダクトとを備え、前記整流部は傾斜部と平面部とを備えた略円錐台状としたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記ダクトの基本平面を略鉛直方向とし、前記冷却ファンを鉛直方向に対して傾斜配置するとともに、前記整流部が前記冷却ファンと対向するように前記整流部を傾斜配置したことを特徴とした請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記整流部の平面部の略中心部と冷却ファンの回転軸とが略同一線上となるように構成した請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記平面部と冷却ファン先端面との距離を20mm以下とすることを特徴とした請求項1から3のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記整流部の傾斜部と、冷却ファンの回転軸と垂直な平面との角度を20度以下とすることを特徴とした請求項1から4のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記整流部の平面部の最大寸法を、冷却ファンのモーター部の寸法と同等以下とすることを特徴とした請求項1から5のいずれか一項に記載の冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−100973(P2013−100973A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246055(P2011−246055)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)