説明

冷蔵庫

【課題】送風機より吐出された冷気をロスなく貯蔵室中央に届け、効率よく貯蔵室を冷却することができる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【解決手段】吐出口111eの少なくとも一部が、冷気整流部111dに配置されていることにより、送風機113より吐出された冷気が冷気整流部111dによって放射状に整流され、そのままロスすることなく貯蔵室へ吐出される。またこのとき、冷気にはコアンダ効果により冷気整流部111dに沿うように力が働くため、吐出される際の冷気は送風機113正面に向けて吐出されることにより、従来では直接冷気を送ることができなかった送風機113正面の貯蔵室中央へ冷気を導くことができるため、効果的に貯蔵物を冷却することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却器で生成した冷気を強制循環させて貯蔵室を冷却する冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
省エネルギに対する要求が厳しくなる中、冷却器で生成した冷気を強制循環させて貯蔵室を冷却する冷蔵庫においては、その冷却器の冷凍効率だけでなく、送風機の送風効率も重視されている。そのため、送風機から吐出された冷気を効率よく運搬する送風技術が重要となる。従来は送風機の吐出側に整流案内板を設ける構成が用いられている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、図面を参照しながら従来の冷蔵庫を説明する。
【0004】
図8は従来の冷蔵庫の平面断面図である。図において、貯蔵室51の背面には、冷気を生成する冷却室52が配設され、冷却室カバー53により、冷却室52とその他の空間を隔てている。冷却室52には、冷却器54が配設され、その上方において、送風機55が、送風機モータ56に接続されている。さらに、冷却室カバー53の前面には、仕切板57が、送風機55より吐出された冷気の通る風路と貯蔵室51を隔てている。仕切板57には、送風機55に対向する位置に円錐形状を有する整流案内板58と、平面部に吐出口59とを一体で形成する。
【0005】
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作を説明する。
【0006】
冷却室52内の空気が冷却器54により冷却され、送風機55によって整流案内板58に向けて吐出されると、整流案内板58の円錐面に沿って放射状に流出する。そして放射状に拡散し後、吐出口59を通って貯蔵室51に送風される。
【0007】
以上のように、従来の冷蔵庫では、送風機55の前面の仕切板57に整流案内板58を一体に設けることで、吐出冷気を放射状の流れのみとし、送風機55の中心に向かう逆流する流れを防止すると同時に、整流された冷気を直接吐出口59より貯蔵室51に送ることができ、冷気の損失を最小限に押さえ、効率よく貯蔵室を冷却できる冷蔵庫を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3631316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の冷蔵庫の構成では、放射状に整流された冷気は、仕切板57の平面状に設けられた吐出口59より吐出される際、外向きに広がろうとする力が大きいために、貯蔵物が多い貯蔵室51の中央である送風機6の正面を冷やしにくいという問題があった。
【0010】
さらに、外向きに吐出された冷気は貯蔵室51の内壁に沿って流れるため、冷蔵庫本体の壁を通した外気との熱交換が促進され、消費電力を増大させる可能性があった。
【0011】
本発明は、従来の課題を解決するもので、送風機より吐出された冷気をロスなく貯蔵室中央に届け、効率よく貯蔵室を冷却することができる冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従来の課題を解決するために、本発明の冷蔵庫は、貯蔵室と、前記貯蔵室を冷却する冷気を生成する冷却器と、前記冷却器で生成された冷気を強制的に貯蔵室に送風する送風機と、前記貯蔵室と前記送風機との間に位置する仕切部材とを備える冷蔵庫において、前記仕切部材は、冷気を貯蔵室へ送る吐出口と、前記送風機に対向する部分を送風機側に突出させた冷気整流部とを有し、前記吐出口の少なくとも一部が、該冷気整流部の内部に配置されていることを特徴とする。これにより、送風機より吐出された冷気は冷気整流部によって放射状に整流され、そのままロスすることなく貯蔵室へ吐出される。またこのとき、冷気にはコアンダ効果により冷気整流部に沿うように力が働くため、吐出される際の冷気は送風機正面に向けて吐出される。これにより従来では直接冷気を送ることができなかった送風機正面の貯蔵室中央へ冷気を導くことができるため、効果的に貯蔵物を冷却することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の冷蔵庫は、送風機より吐出された冷気をロスなく貯蔵室中央に届け、効率よく貯蔵室を冷却することができる冷蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の正面図
【図2】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の縦断面図
【図3】本発明の実施の形態1における要部正面図
【図4】本発明の実施の形態1における要部縦断面拡大図
【図5】本発明の実施の形態1における要部平面断面図
【図6】本発明の実施の形態1における貯蔵室側仕切部材の斜視図
【図7】本発明の実施の形態2における冷蔵庫の縦断面図
【図8】従来の冷蔵庫の平面断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
請求項1に記載の発明は、貯蔵室と、前記貯蔵室を冷却する冷気を生成する冷却器と、前記冷却器で生成された冷気を強制的に貯蔵室に送風する送風機と、前記貯蔵室と前記送風機との間に位置する仕切部材とを備える冷蔵庫において、前記仕切部材は、冷気を貯蔵室へ送る吐出口と、前記送風機に対向する部分を送風機側に突出させた冷気整流部とを有し、前記吐出口の少なくとも一部が該冷気整流部に配置されていることを特徴とする。これにより、送風機より吐出された冷気は冷気整流部によって放射状に整流され、そのままロスすることなく貯蔵室へ吐出される。またこのとき、冷気にはコアンダ効果により冷気整流部に沿うように力が働くため、吐出される際の冷気は送風機正面に向けて吐出される。これにより従来では直接冷気を送ることができなかった送風機正面の貯蔵室中央へ冷気を導くことができるため、効果的に貯蔵物を冷却することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記吐出口が、冷気ガイド部を備えたことを特徴とする。これにより、吐出口から吐出される冷気の向きを任意に制御することが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記冷気ガイド部が、前記仕切部材に設けられたリブにより構成されたことを特徴とする。これにより、冷気ガイド部を吐出口と一体に成型することが可能であり、部品点数を増やす必要はないため、固体
による風向のばらつき小さく抑えることができる構造を安価に提供することができる。また、冷蔵庫の吐出口に付着しやすい結露を溜めない構造とすることができるため、品質の良い冷蔵庫を提供することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、前記貯蔵室は貯蔵物を収納する一つまたは複数の貯蔵ケースを備え、前記送風機が該貯蔵ケースの少なくとも一つの奥面上端よりも上方に配置され、前記冷気整流部に配置される吐出口は、前記冷気整流部の中心よりも下方で、且つ、前記貯蔵ケース奥面上端よりも上方に設けられたことを特徴とする。これにより、送風機より下方向に吐出された冷気を貯蔵室へと導くことができるため、貯蔵ケースの上から、貯蔵ケースの中に冷気を吹き込むことが可能となるため、より効果的に貯蔵物を冷却することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明において、前記送風機は、前記冷蔵庫本体正面より見た場合、前記貯蔵室の左右方向の中心垂線に対して、回転方向と反対側に配置したことを特徴とする。送風機より吐出された冷気は送風機の回転方向に旋回しながら放射状に広がるため、貯蔵室の中心線上で、冷気の持つ速度の旋回成分が下向きとなるため、より効果的に冷気をケース内に吹き込むことができる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における冷蔵庫の正面図、図2は図1におけるA−A断面図、図3は実施の形態1における要部正面図、図4は図2における要部拡大図、図5は実施の形態1における要部平面断面図、図6は貯蔵室側仕切部材の斜視図である。
【0022】
図1から6において、冷蔵庫100の冷蔵庫本体である断熱箱体101は、主に鋼板を用いた外箱102と、ABSなどの樹脂で成型された内箱103と、外箱102と内箱103との間の空間に発泡充填される硬質発泡ウレタンなどの発泡断熱材とで構成され、周囲と断熱され、複数の貯蔵室に区画されている。最上部に第一の貯蔵室としての冷蔵室104、その冷蔵室104の下部に第四の貯蔵室としての第二の冷凍室105と第五の貯蔵室としての製氷室106が横並びに設けられ、その第二の冷凍室105と製氷室106の下部に第二の貯蔵室としての第一の冷凍室107、そして最下部に第三の貯蔵室としての野菜室108が配置される構成となっている。
【0023】
冷蔵室104は、回転扉である冷蔵室右扉104aと冷蔵室左扉104bを備え、内部には、冷蔵室棚104cや冷蔵室ケース104dが適切に配設され、貯蔵空間を整理し易く構成している。一方、その他の貯蔵室は引き出し式扉を有し、それぞれ第二の冷凍室扉105aには第二の冷凍室ケース105cが、製氷室扉106aには製氷室ケース106bが、第一の冷凍室扉107aには上段冷凍室ケース107bおよび下段冷凍室ケース107cが、野菜室扉108aには上段野菜室ケース108bおよび下段野菜室ケース108cが、それぞれ扉に取り付けられたフレームに載置される。
【0024】
冷蔵室104は冷蔵保存のために凍らない温度である冷蔵温度帯に設定されており、通常1℃から5℃とし、野菜室108は冷蔵室104と同等の冷蔵温度帯もしくは若干高い温度設定の野菜温度帯2℃から7℃としている。第一の冷凍室107は冷凍温度帯に設定されており、冷凍保存のために通常−22℃から−15℃で設定されているが、冷凍保存状態の向上のために、例えば−30℃や−25℃の低温で設定されることもある。
【0025】
第二の冷凍室105は、第一の冷凍室107と同等の冷凍温度帯または若干高い温度設定−20℃から−12℃の第一の収納区画である。製氷室106は、冷蔵室104内の貯水タンク(図示せず)から送られた水で室内上部に設けられた自動製氷機(図示せず)で氷を作り、製氷室ケース106bに貯蔵する。
【0026】
断熱箱体101の天面部は冷蔵庫の背面方向に向かって階段状に凹みを設けた形状であり、この階段状の凹部に機械室101aを形成して、機械室101aに、圧縮機109、水分除去を行うドライヤ(図示せず)等の冷凍サイクルの高圧側構成部品が収容されている。すなわち、圧縮機109を配設する機械室101aは、冷蔵室104内の最上部の後方領域に食い込んで形成されることになる。
【0027】
このように、手が届きにくくデッドスペースとなっていた断熱箱体101の最上部の貯蔵室後方領域に機械室101aを設けて圧縮機109を配置することにより、従来の冷蔵庫で、使用者が使いやすい断熱箱体101の最下部にあった機械室のスペースを貯蔵室容量として有効に転化することができ、収納性や使い勝手を大きく改善することができる。
【0028】
冷凍サイクルは、圧縮機109と凝縮器と減圧器であるキャピラリーと冷却器112とを順に備えた一連の冷媒流路から形成されており、冷媒として炭化水素系冷媒である例えばイソブタンが封入されている。
【0029】
圧縮機109はピストンがシリンダ内を往復動することで冷媒の圧縮を行う往復動型圧縮機である。断熱箱体101に、三方弁や切替弁を用いる冷凍サイクルの場合は、それらの機能部品が機械室101a内に配設されている場合もある。
【0030】
また、本実施の形態では冷凍サイクルを構成する減圧器をキャピラリーとしたが、パルスモーターで駆動する冷媒の流量を自由に制御できる電子膨張弁を用いてもよい。
【0031】
なお、本実施の形態における、以下に述べる発明の要部に関する事項は、従来一般的であった断熱箱体101の最下部の貯蔵室後方領域に機械室を設けて圧縮機109を配置するタイプの冷蔵庫に適用しても構わない。
【0032】
第一の冷凍室107の背面には冷気を生成する冷却室110が設けられ、第二の冷凍室105および製氷室106、第一の冷凍室107からなる貯蔵室と冷却室110とを区画するために仕切部材111が構成されている。冷却室110内には、冷却器112が配設されており、貯蔵室と熱交換して温められた空気と熱交換し、冷気を生成している。仕切部材111は、貯蔵室側仕切部材111aと冷却室側仕切部材111bとから構成され、冷却室側仕切部材111bは、送風機113を備える。貯蔵室側仕切部材111aと冷却室側仕切部材111bとの間の空間は、送風ダクト111cであり、送風機113により強制的に送り出された冷気を冷蔵室104、第二の冷凍室105、製氷室106、第一の冷凍室107、野菜室108に導く。
【0033】
また、冷却器112の下部空間には冷却時に冷却器112やその周辺に付着する霜や氷を除霜するためのガラス管製のラジアント加熱手段114が設けられ、さらにその下部には除霜時に生じる除霜水を受けるためのドレンパン115、その最深部から庫外に貫通したドレンチューブ116が構成され、その下流側の庫外に蒸発皿117が構成されている。
【0034】
ここで、送風機113は、吐出面からみて時計回りをする軸流ファンである。以下、冷蔵庫の左右方向の位置を指定する場合、送風機113の回転方向を基準とする。回転方向が反時計回りの送風機を使用する場合は、左右を反転させることで同様の効果を得ること
ができる。
【0035】
送風機113の吐出面は冷蔵庫100の正面に対し角度を持って取り付けられ、冷気は斜め上向きに吹き上げるように配設されている。また、第一の冷凍室107正面より見て、送風機113の中心は、第一の冷凍室107の左右方向の中心垂線に対し左側に位置し、上段冷凍室ケース107bの奥面上端より上方に位置する。
【0036】
貯蔵室側仕切部材111aの送風機113に対向する部分は、送風機113側に突出した冷気整流部111dを構成する。冷気整流部111dは送風機113の回転軸を中心とする略円錐台形状をしている。冷気整流部111dの先端は送風機113吐出面に平行な平面で構成され、その径は送風機113のボス径と略同径である。貯蔵室側仕切部材111aの冷気整流部111dを除く部分は、略平面により構成される。
【0037】
また、貯蔵室側仕切部材111aには、第一の冷凍室107へ冷気を送る吐出口111eを備える。吐出口111eは冷気整流部111dの中心よりも下方で、且つ、上段冷凍室ケース107bの奥面上端の上方、および、上段冷凍室ケース107bの下面よりも下方で、且つ下段冷凍室ケース107c奥面上端の上方の二箇所に位置する。また、各箇所には、横長の孔が一段または複数段で複数列設けられる。また吐出口111eの少なくとも一部は、冷気整流部111dに跨って形成されている。
【0038】
吐出口111eの上段中央の孔は、正面より見て、第一の冷凍室107の中心を通り、冷気整流部111dより遠い側の辺に垂直に、貯蔵室に向けて風向リブ119を有する。
【0039】
なお、吐出口111eの位置及び個数、形状を変更することで、送風機113の能力や位置、貯蔵室の構造や設定温度などに合わせた、効率のよい風路とすることが可能である。また、中央の孔に限らず、いずれの孔にも風向リブ等の冷気ガイド部を設けることで、より精度良く風向を制御することができる。
【0040】
冷蔵室104と他貯蔵室とを区画する仕切壁118と貯蔵室側仕切部材111aとの間に上部吐出口120を有し、第二の冷凍室105および製氷室106へ冷気を送る。仕切壁118には、ダンパ121が配設され、ダンパ121を通った冷気は、さらに冷蔵室ダクト122および野菜室ダクト(図示せず)に分流され、それぞれの吐出口から冷蔵室104および野菜室108に送られる。
【0041】
なお、本実施の形態における、以下に述べる発明の要部に関する事項は、いずれの貯蔵室においても回転扉を有し、内箱103に貯蔵ケースが載置される構造を有するタイプの冷蔵庫に適用しても構わない。
【0042】
以上のように構成された本実施の形態の冷蔵庫100について、以下その動作、作用を説明する。
【0043】
まず、冷凍サイクルの動作について説明する。庫内の設定された温度に応じて制御装置(図示せず)からの信号により冷凍サイクルが動作して冷却運転が行われる。圧縮機109の動作により吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器(図示せず)である程度凝縮液化し、さらに冷蔵庫本体である断熱箱体101の側面や背面、また断熱箱体101の前面間口に配設された冷媒配管(図示せず)などを経由し断熱箱体101の結露を防止しながら凝縮液化し、キャピラリーチューブ(図示せず)に至る。その後、キャピラリーチューブでは圧縮機109への吸入管(図示せず)と熱交換しながら減圧されて低温低圧の液冷媒となって冷却器112に至る。
【0044】
ここで、冷却室110では、送風機113の動作により集められた各貯蔵室内の空気が、冷却器112により液冷媒と熱交換され、冷却器112内の冷媒は蒸発気化する。この時、貯蔵室から戻ってきた空気は、冷却室110内で再び各貯蔵室を冷却するための冷気となる。低温の冷気は送風機113から送風ダクト111cを通り、風路やダンパを用いて分流され、冷蔵室104、第二の冷凍室105、製氷室106、第一の冷凍室107、野菜室108をそれぞれの目的温度帯に冷却する。
【0045】
送風機113は、時計回りに回転する軸流ファンであることから、吐出された冷気は、時計回りに旋回しながら放射状に広がるように円錐状に流れる。したがって、冷気整流部111dを吐出冷気の流れに合わせた形状にすることで、渦を発生させることなく、冷気を送風ダクト111c内にスムーズに送り出すことができる。また、軸流ファンの吐出側では、中心に向かって戻る気流が発生するが、冷気整流部111dの円錐台上面径をファンのボス径と略同径とすることで、この戻り気流を抑制することができるため、送風機113より冷気に与えられたエネルギを無駄なく送風に生かすことができる。
【0046】
吐出冷気の作る円錐面と送風機113の回転軸のなす角は送風機113の送る流量や回転数により異なるため、冷気整流部111dの円錐面の角度を変えることで、設計流量に応じた最適設計を行うことができる。例えば、羽根径が90から110mmの送風機113を1200から3000rpm前後で回転させ、0.5から1.0m/minの風量を得る場合、実験に因れば、回転軸と冷気整流部111dの円錐面とのなす角は50から85°が望ましい。半径方向に広がるにつれ徐々に送風機113との距離を大きくすることで、吐出冷気の持つ運動エネルギを圧力エネルギとして効率よく回収することができるため、送風機113の仕事を増やすことなく吐出圧力を高めることができる。本実施の形態のように、貯蔵室が多く、送風回路が多岐にわたり、ダンパ121のように風路抵抗になる部品を多く必要とする風路では、送風機113の仕事が大きくなるため、冷気整流部111dの果たす役割はより大きいものとなる。
【0047】
冷気整流部111dに沿って広がった冷気の一部は、冷気整流部111d内に設けられた吐出口111eより第一の冷凍室107内に吐出される。このとき、冷気にはコアンダ効果により冷気整流部111dに沿うような力が働いている。従って、冷気整流部111d内に設けられた吐出口から吐出された冷気は送風機113の正面方向に向かってスムーズに吐出される。従って、従来冷気を直接送ることが難しかった送風機113の正面にも冷気を送ることが可能となる。
【0048】
吐出口111eは、横長の形状を持つため、冷気整流部111dの影響を強く受け送風機113正面に向かう冷気から、貯蔵室側仕切部材111aの平面部分を流れ、遠心成分が大きい速度を持つ冷気まで、連続して変化する。そのため、送風機113の正面から、貯蔵室内壁まで広がる、幅広い帯状の冷気を得ることができ、貯蔵室内の温度ムラを最小限に抑制することができる。
【0049】
さらに、内箱103の側面に近い位置や、下段冷凍室ケース107cの直上など、送風機113から離れた位置にも吐出口111eを設けることで、より広範囲に冷気を届けることができる。
【0050】
また、吐出口111eは、冷気整流部111dよりも下方に設けられている。送風機113より吐出された冷気は、冷気整流部111dに沿って、放射状に吐出される。従って、冷気整流部111dよりも下方に設けられた吐出口111eからは、下向きの速度を持った冷気が吐出される。吐出口111eの上段の孔は上段冷凍室ケース107bの上方に、下段の孔は下段冷凍室ケース107cの上方に配設されているため、吐出口111eより吐出された冷気は、各ケース内部に吹き降ろすように送風される。従って、直接ケース
内部を冷却することが可能となるため、貯蔵物を急速に冷却することができる。
【0051】
さらに、吐出口111e上段中央の孔は、送風機113の右下であり、第一の冷凍室107の中心に位置する。送風機113は時計回りの軸流ファンであるため、冷気は時計回りに旋回しながら放射状に広がる。このとき、送風機113は、冷蔵庫100正面より見て、第一の冷凍室107の中心に対し左側に位置しているため、送風機113の右側にあたる、第一の冷凍室107の左右方向中心付近では冷気は下方向の速度が大きい。従って、第一の冷凍室107の中心に位置する吐出口111e上段中央の孔から上段冷凍室ケース107bに吹き込む冷気はケースの中央に向かって吹き降ろす様に吐出され、より効果的に貯蔵物を冷却することができる。
【0052】
なお、送風機113と吐出口111e上段中央の孔との関係をそのままに、第一の冷凍室107に対する位置を変更することで、任意の箇所を重点的に冷却することが可能である。また、本実施の形態では、吐出口111e上段中央の孔から出た冷気は、送風機113正面に向かって吐出する効果が得られるため、吐出口111e上段中央の孔は必ずしも第一の冷凍室107の中心を通る必要はなく、冷気整流板から完全に出ない程度に、右側に配置することも可能である。
【0053】
また、吐出口111e上部中央の孔には、冷気整流部111dより遠い側の辺に垂直に、貯蔵室に向けて風向リブ119を有するため、冷気の速度のうち放射状に広がる成分も貯蔵室内部へ向けることができる。このため、上段冷凍室ケース107b内部向かう冷気を増やすことができ、さらに急速に貯蔵物を冷却することができる。風向リブ119は部品点数を増やすことなく、貯蔵室側仕切部材111aと一体に成型することが可能であるため、固体による風向のばらつきを小さく抑えることができる構造を安価に作ることができる。
【0054】
風向リブ119は冷気整流部111dより遠い側の辺に垂直にのみ設けられているため、万が一、温度差により吐出口111eに結露が生じた際も、その結露が溜まって氷として成長する心配のない。そのため、品質の良い冷蔵庫を提供することができる。もし、風向リブ119が水平に構成されていれば、結露が流れ落ちず、吐出される冷気により冷やされ氷となる現象を繰り返し、吐出口111eを塞ぐ恐れがある。
【0055】
なお、本実施の形態では、風向リブ119は貯蔵室側に設けたが、冷却室側に設けてもよい。また、冷気ガイド部形状としては、リブに限らず、吐出口111eそのものを仕切部材111の平面部よりも貯蔵室側へ突出させたり、吐出口111eまでの風路形状を流線型にしたりすることでも、同様の効果が得られる。このときも、水平面や、一部だけ低い場所を持たない構成にすることで、氷の成長を防ぐことが可能である。
【0056】
以上のように、本実施の形態では、吐出口111eの少なくとも一部が、冷気整流部111dに跨って配置されていることにより、送風機113より吐出された冷気が冷気整流部111dによって放射状に整流され、そのままロスすることなく貯蔵室へ吐出される。またこのとき、冷気にはコアンダ効果により冷気整流部111dに沿うように力が働くため、吐出される際の冷気は送風機113正面に向けて吐出されることにより、従来では直接冷気を送ることができなかった送風機113正面の貯蔵室中央へ冷気を導くことができるため、効果的に貯蔵物を冷却することができる。
【0057】
また、吐出口111eが、風向リブ119により構成された冷気ガイド部を持つことにより、確実に上段冷凍室ケース107bの中心に冷気を送ることができる。その際、冷気ガイド部を吐出口と一体に成型することが可能であり、部品点数を増やす必要はないため、固体による風向のばらつき小さく抑えることができる構造を安価に提供することができ
る。さらに、冷蔵庫の吐出口に付着しやすい結露を溜めない構造とすることができるため、品質の良い冷蔵庫を提供することができる。
【0058】
また、第一の冷凍室107は貯蔵物を収納する上段冷凍室ケース107bと下段冷凍室ケース107cとを備え、送風機113は上段冷凍室ケース107bおよび下段冷凍室ケース107cの奥面上端よりも上方に配置され、吐出口111eは、冷気整流部111dの中心よりも下方に設けられたことにより、送風機113より下方向に吐出された冷気を第一の冷凍室107へと導くことができるため、冷凍室ケースの上から、冷凍室ケースの中に冷気を吹き込むことが可能となるため、より効果的に貯蔵物を冷却することができる。
【0059】
また、吐出口111eは第一の冷凍室107の中心が通る位置に、時計回りの軸流ファンである送風機113は第一の冷凍室107の中心よりも左側に配設されていることにより、送風機113より吐出された冷気は時計回りに旋回しながら放射状に広がるため、冷気の持つ速度の旋回成分が下向きの場所に吐出口111eを設けることになり、より効果的に上部冷凍室ケース107b内に冷気を下向きに吹き付けることができる。
【0060】
(実施の形態2)
図7は本発明の実施の形態2の冷蔵庫の縦断面図である。なお、実施の形態1と同様の構成および同様の技術思想が適用できる部分については、説明を省略するが、不具合がない限り実施の形態1の構成に本実施の形態を組み合わせて適用することが可能である。
【0061】
図7において、冷蔵室104の背面には、冷却室110で生成された冷気を冷蔵室104に搬送するための冷蔵室ダクト201が設けられ、冷蔵室仕切部材202により、冷蔵室104と区画される。冷蔵室仕切部材202は前仕切部材202aと奥仕切部材202bにより構成され、冷蔵室ダクト201は前ダクト201aと奥ダクト201bに区画される。前仕切部材202aは、ポリプロピレンなどの樹脂成型品により、奥仕切部材202bは断熱性の高い発泡樹脂成型品により構成されることが多い。
【0062】
奥仕切部材202bには、冷蔵室送風機203が配設され、冷却室110に設けられた送風機113の働きを補助し、冷蔵室104全体に冷気を循環させる。ここで、冷蔵室送風機203は、吐出面からみて時計回りをする軸流ファンである。
【0063】
前仕切部材202aの冷蔵室送風機203に対向する部分は、冷蔵室送風機203側に突出した冷蔵室冷気整流部202cを構成する。冷蔵室冷気整流部202cは冷蔵室送風機203の回転軸を中心とする略円錐台形状をしている。冷蔵室冷気整流部202cの先端は冷蔵室送風機203吐出面に平行な面で構成され、その径は冷蔵室送風機203のボス径と略同径である。冷蔵室104を構成する内箱103の上部は、冷蔵庫100上部に設けられた機械室101aの形状に合わせ、内側に凸部を有する。従って、前仕切部材202aの上端は、内箱103の形状に合わせて湾曲している。
【0064】
また、前仕切部材202aは、冷蔵室104へ冷気を送る冷蔵室吐出口202dを備える。冷蔵室吐出口202dは冷蔵室冷気整流部202cの内部に、上下2箇所に配設される。冷蔵室棚104cは、二つの冷蔵室吐出口202dを間に挟むように適度に間隔を空けて配置される。
【0065】
なお、冷蔵室吐出口202dの位置及び個数、形状を変更することで、冷蔵室送風機203の能力や位置、冷蔵室104の構造や設定温度などに合わせた、効率のよい風路とすることが可能である。
【0066】
以上のように構成された本発明の実施の形態2における冷蔵庫について、以下その動作を説明する。
【0067】
冷却器112と熱交換を行い、生成された冷気は、送風機113により送風ダクト111cに吐出される。その一部が吹き上げられ、ダンパ121を通過し奥ダクト201bに流れ込む。冷蔵室送風機203の働きにより、奥ダクト201bに流れ込んだ冷気は前ダクトに吐出される。このとき、冷蔵室送風機203は、時計回りに回転する軸流ファンであることから、吐出された冷気は、時計回りに旋回しながら放射状に広がるように円錐状に流れる。したがって、冷蔵室冷気整流部202cを吐出冷気の流れに合わせた形状にすることで、渦を発生させることなく、冷気を前ダクト201a内にスムーズに送り出すことができる。また、軸流ファンの吐出側では、中心に向かって戻る気流が発生するが、冷蔵室冷気整流部202cの円錐台上面径をファンのボス径と略同径とすることで、この戻り気流を抑制することができるため、冷蔵室送風機203より冷気に与えられたエネルギを無駄なく送風に生かすことができる。
【0068】
冷蔵室冷気整流部202cに沿って広がった冷気の一部は、冷蔵室冷気整流部202c内に設けられた冷蔵室吐出口202dより冷蔵室104内に吐出される。このとき、冷気にはコアンダ効果により冷蔵室冷気整流部202cに沿うような力が働いている。従って、冷蔵室冷気整流部202c内に設けられた吐出口から吐出された冷気は冷蔵室送風機203の正面方向に向かってスムーズに吐出される。従って、従来冷気を直接送ることが難しかった冷蔵室送風機203の正面にも冷気を送ることが可能となる。
【0069】
冷蔵室吐出口202dは冷蔵室送風機203の上下に配設されているため、放射状に吐出される冷気は、吐出口付近においてそれぞれ上下方向の速度成分を持つ。このとき、冷蔵室棚104cが冷蔵室吐出口202dの上下に配設されているため、冷蔵室棚104cが冷気ガイドの役目を果たし、上下方向に吐出される冷気を正面方向に導き、貯蔵物を冷却することが可能となる。冷蔵室棚104cは一般的に使用者が任意に高さを変更できるように構成されるが、その場合も、使用状況に合わせて貯蔵物の載置される場所に冷気を導くことになるため、どのような状況でも同様の効果を発揮することができる。
【0070】
なお、冷蔵室吐出口202dの形状を上下に長くし、冷蔵室冷気整流部202cの内部から外部にまで及ぶ形状にすることで、一つの吐出口から吐出される冷気の持つ上下方向の速度分布が大きくなる。なぜなら、冷蔵室冷気整流部202cに近い部分から吐出される冷気は、前述の通り冷蔵室送風機203正面に向かうのに対し、冷蔵室冷気整流部202cから離れた部分から吐出される冷気は、放射状に広がる方向、つまり上下方向の速度成分が大きくなるためである。従って、冷蔵室吐出口202dの形状を上下に長くすることで、冷気の上下方向の吐出角度を広げることができ、冷蔵室内をムラなく冷却することが可能となる。
【0071】
以上のように、本実施の形態では、冷蔵室吐出口202dの少なくとも一部が、冷蔵室冷気整流部202cの内部に配置されていることにより、冷蔵室送風機203より吐出された冷気が冷蔵室冷気整流部202cによって放射状に整流され、そのままロスすることなく冷蔵室104へ吐出される。またこのとき、冷気にはコアンダ効果により冷蔵室冷気整流部202cに沿うように力が働くため、吐出される際の冷気は冷蔵室送風機203正面に向けて吐出されることにより、従来では直接冷気を送ることができなかった冷蔵室送風機203正面の冷蔵室中央へ冷気を導くことができるため、効果的に貯蔵物を冷却することができる。
【0072】
また、冷蔵室棚104cが、冷気ガイドの役割を果たし、確実に前方に冷気を送ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上のように、本発明にかかる冷蔵庫は、送風機により送風される冷気の流れを整流し、ロスなく必要な場所に的確に届けることができる冷蔵庫を提供することができるので、送風機を備えたあらゆる冷却機器にも適用できる。
【符号の説明】
【0074】
100 冷蔵庫
104 冷蔵室(貯蔵室)
104c 冷蔵室棚(冷気ガイド)
107 第一の冷凍室(貯蔵室)
107c 下段冷凍室ケース
110 冷却室
111 仕切部材
111d 冷気整流部
111e 吐出口
112 冷却器
113 送風機
119 風向リブ(冷気ガイド)
202c 冷蔵室冷気整流部
202d 冷蔵室吐出口
202 冷蔵室仕切部材
203 冷蔵室送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室と、前記貯蔵室を冷却する冷気を生成する冷却器と、前記冷却器で生成された冷気を強制的に貯蔵室に送風する送風機と、前記貯蔵室と前記送風機との間に位置する仕切部材とを備える冷蔵庫において、前記仕切部材は、冷気を貯蔵室へ送る吐出口と、前記送風機に対向する部分を送風機側に突出させた冷気整流部とを有し、前記吐出口の少なくとも一部が該冷気整流部に配置されていることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記吐出口は、冷気ガイド部を有することを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記冷気ガイド部は、前記仕切部材に設けられたリブであることを特徴とする請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記貯蔵室は貯蔵物を収納する一つまたは複数の貯蔵ケースを備え、前記送風機が該貯蔵ケースの少なくとも一つの奥面上端よりも上方に配置され、前記冷気整流部に配置される吐出口は、前記冷気整流部の中心よりも下方で、且つ、前記貯蔵ケース奥面上端よりも上方に設けられたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記送風機は、前記冷蔵庫本体正面より見た場合、前記貯蔵室の左右方向の中心垂線に対して、回転方向と反対側に配置したことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の冷蔵庫。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−100974(P2013−100974A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246056(P2011−246056)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)