説明

冷蔵庫

【目的】 本発明は、冷蔵庫の圧縮機起動時の圧縮機へ蒸発器からの液冷媒が流入による液圧縮防止を目的とする。
【構成】 圧縮機1、凝縮器2、キャピラリチューブ3、蒸発器4とこれらを順次環状に接続した冷凍サイクルと、前記圧縮機1の吸入管1aに設置した液冷媒加熱手段12と、吸入温度検知手段13とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、冷蔵庫に関し、特に圧縮機の起動時に発生する圧縮機への液戻りの防止に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の冷蔵庫は、特開昭61−91477号公報の従来例や特開昭64−67583号公報にて知られるような構成を持っている。以下、図9、図10を参考に従来の冷蔵庫の構成について説明を行う。
【0003】1は高圧密閉容器の圧縮機、2は凝縮器、3はキャピラリチューブ等の減圧装置、4はフィンコイル型の蒸発器であり、圧縮機1、凝縮器2、減圧装置3、蒸発器4は順次環状に接続し、冷凍サイクルを形成している。5は冷蔵庫の本体で内部を区画し、それぞれ冷凍室6と冷蔵室7の2室を形成している。
【0004】8は除霜用ヒータで、蒸発器4の近傍に設けられている。9は除霜検知手段であらかじめ設定した時間間隔や、蒸発器4の温度、着霜状態を検知し、また除霜運転時には、除霜の終了を検知する。
【0005】10は除霜制御手段で、除霜検知手段の検知出力により圧縮機の運転、停止、除霜用ヒータの運転停止を制御する。11は温度調節手段であり、冷凍室6、冷蔵室7を所定の温度に保持するため、圧縮機1の運転停止を行う。
【0006】次に上記従来の構成の動作について説明する。圧縮機1の運転により、圧縮機1より吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器2により凝縮液化し、さらに、キャピラリチューブ等の減圧装置3にて減圧され、蒸発器4で蒸発気化し図示しない熱搬送手段により冷凍室6、冷蔵室7を冷却する。蒸発器4で気化した冷媒は、再び、圧縮機1に吸入される。
【0007】このような冷却運転により、冷凍室6、冷蔵室7が所定の温度となると温度調節手段11が、圧縮機1を停止する。この後、冷凍室6、冷蔵室7の温度が上昇すると、再び温度調節手段11が、圧縮機1を起動し、冷却運転を行う。
【0008】この様な冷却運転を行うことにより、冷凍室6、冷蔵室7内の空気に含まれる水分が、蒸発器4で熱交換される際に霜として、蒸発器4の表面に付着する。この着霜が進むと、蒸発器4の熱交換効率が減少し、充分な冷却運転が不可能となってくる。
【0009】この状態を除霜検知手段9が検知し、除霜制御手段10に除霜開始信号を出力する。この信号を受け除霜検知手段10は、除霜を開始する。
【0010】除霜制御手段10は、圧縮機1を停止し除霜用ヒータ8を運転し、除霜を開始する。除霜用ヒータ8の運転により、蒸発器4の表面の霜を発熱により融解する。
【0011】蒸発器4の表面の霜が融解すると、除霜検知手段9は除霜が完了したことを通常蒸発器4の温度が所定温度(一般的には10から20℃)以上になることで検知し、除霜制御手段10へ除霜終了信号を出力する。
【0012】除霜制御手段10は除霜運転を終了するため、除霜用ヒータ8を停止し、その後、圧縮機1を起動する。この操作により冷凍サイクルは再び冷却運転を開始する。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記構成では、圧縮機1の停止中に温度の低い蒸発器4に冷媒が集中液化し、次回の圧縮機1の起動時にこの冷媒液が、一度に圧縮機1に到達し、液圧縮が発生する。また、除霜時については、除霜開始直前に蒸発器4内に保持される冷媒に加え、圧縮機1停止と同時に、凝縮器2及び圧縮機1の周囲温度と蒸発器4の周囲温度の差によりその温度における冷媒の飽和圧力差により、圧縮機1、凝縮器2から蒸発器4へ冷媒が移動を始める。そして、除霜の進行により蒸発器4の温度が上昇し、圧縮機1、凝縮器2の周囲温度より蒸発器4及びその周囲温度が高くなると、除霜運転初期とは逆に、冷媒の飽和圧力が蒸発器内の方が高くなり、冷媒は蒸発器4から圧縮機1、凝縮器2へ移動を行う。
【0014】このため、圧縮機1の吸入管には、凝縮した液冷媒で満たされてしまう。高圧容器型の圧縮機では吸入管は、直接圧縮機構に接続されているため、圧縮機1内へ液冷媒が流入し、機械部に付着した冷凍器油を洗い流してしまう。そして、この状態で除霜運転が終了し、圧縮機1が起動すると圧縮機械部には冷凍器油による油膜が形成されないまま運転を行うために、異常な摩耗が発生することとなる。
【0015】さらに、吸入管に液冷媒が満たされているため、圧縮機1の起動と共に液冷媒が吸入され液圧縮が発生することとなる。
【0016】このようなことから、圧縮機信頼性の面から非常に大きな課題であった。
【0017】
【課題を解決するための手段】そこで本発明の冷蔵庫は、圧縮機、凝縮器、キャピラリチューブ、蒸発器とこれらを順次環状に接続した冷凍サイクルと、前記圧縮吸入管に設置した液冷媒加熱手段と、吸入温度検知手段とを設けた。
【0018】また、圧縮機の吸入管に電気ヒータを設置した。また、蒸発器と圧縮機の間に設けた冷媒タンクと、圧縮機の吐出管と前記冷媒タンクとを連通する吐出バイパス管と、前記吐出バイパス管を任意に閉鎖するバイパス弁を設けた。
【0019】さらに蒸発器と圧縮機の接続配管に並列に配設し圧縮機に熱交換的に配設した圧縮機熱交換パイプと、前記圧縮機熱交換パイプの蒸発器側端に設けた切り替え弁とを設けた。
【0020】
【作用】上記構成により、本発明の冷蔵庫は、圧縮機の起動時に圧縮機への吸入冷媒の温度を検知し、この温度を情報として圧縮機の吸入冷媒を加熱することにより、液冷媒を蒸発気化させる。
【0021】また、吸入冷媒を電気ヒータにより加熱して、蒸発気化させた。さらに、圧縮機の起動時、バイパス弁を開放して、圧縮機吐出ガスの一部を冷媒タンクにバイパスし、蒸発器から流出する液冷媒と混合し、冷媒のエンタルピを上昇させることで、圧縮機に吸入させる冷媒を加熱ガスとした。
【0022】また、同様に圧縮機の起動時、吸入配管経路を切り替え弁により、圧縮機熱交換パイプに切り替え、圧縮機本体の温度により、蒸発器から流出する液冷媒を蒸発気化させる。
【0023】これらの作用により、圧縮機起動時に蒸発器から圧縮機に吸い込まれる液冷媒は、著しく減少し、液圧縮の危険が非常に小さくなる。
【0024】
【実施例】本発明の一実施例について図1から図2を参考に説明するが、従来と同一構成については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0025】12は液冷媒加熱手段であり圧縮機1の近傍の圧縮機1と蒸発器4の接続配管1aに熱交換的に設置している。13は吸入温度検知手段で、圧縮機1と液冷媒加熱手段12設置位置との間に設置される。
【0026】吸入温度検知手段13は、液冷媒加熱手段12と電気的に接続されている。次に動作について説明する。温度調節手段11が、冷蔵室6、冷凍室7の温度を検知して、所定温度に達したとき、圧縮機1を停止する。圧縮機1が停止すると冷媒の分布は冷凍サイクル構成部品の温度により変化するので、最も温度の低い蒸発器4に、凝縮器2からキャピラリチューブ3を通じて液冷媒が流入する。
【0027】このため、冷凍サイクルに封入された冷媒の大部分が蒸発器4に液冷媒として集中する。
【0028】冷凍室6、冷蔵室7の温度が上昇すると温度調節手段11は、圧縮機1を起動させる。このとき同時に、液冷媒加熱手段12が加熱を開始する。また、吸入温度検知手段13が、吸入冷媒温度を検知開始する。圧縮機1の起動後、蒸発器4から圧縮機1に流入してくる液冷媒は、液冷媒加熱手段12により、加熱され蒸発気化する。この後、蒸発器4から流出してくる液冷媒が無くなると、これまで液冷媒の蒸発潜熱により小さかった温度変化が、急激に変化し上昇し始める。この温度変化を、吸入温度検知手段13が検知し、液冷媒加熱手段12へ、加熱停止信号を出力する。これにより、冷凍サイクルは通常の運転状態となり、冷却運転を行う。
【0029】次に第2の実施例について説明する。14は電気ヒータであり、圧縮機1の近傍の圧縮機1と蒸発器4の接続配管1aに熱交換的に設置している。
【0030】次に動作について説明する。温度調節手段11が、冷蔵室6、冷凍室7の温度を検知して、所定温度に達したとき、圧縮機1を停止する。圧縮機1が停止すると冷媒の分布は冷凍サイクル構成部品の温度により変化するので、最も温度の低い蒸発器4に、凝縮器2からキャピラリチューブ3を通じて液冷媒が流入する。
【0031】このため、冷凍サイクルに封入された冷媒の大部分が蒸発器4に液冷媒として集中する。
【0032】冷凍室6、冷蔵室7の温度が上昇すると温度調節手段11は、圧縮機1を起動させる。このとき同時に、電気ヒータ14が加熱を開始する。また、吸入温度検知手段13が、吸入冷媒温度を検知開始する。圧縮機1の起動後、蒸発器4から圧縮機1に流入してくる液冷媒は、電気ヒータ14により、加熱され蒸発気化する。この後、蒸発器4から流出してくる液冷媒が無くなると、これまで液冷媒の蒸発潜熱により小さかった温度変化が、急激に変化し上昇し始める。この温度変化を、吸入温度検知手段13が検知し、電気ヒータ14へ、加熱停止信号を出力する。これにより、冷凍サイクルは通常の運転状態となり、冷却運転を行う。
【0033】つぎに、第3の実施例について説明する。15は冷媒タンクで圧縮機1と蒸発器4の間の圧縮機吸入管1aよりも下方に設置される。16は吐出バイパス管であり、圧縮機1の吐出管1bと冷媒タンク15間を接続連通する。17はバイパス弁であり、前記吐出バイパス管16に設置する。
【0034】次に動作について説明する。温度調節手段11の指令により圧縮機1が起動する。これと同時に、バイパス弁17を開路する。これにより、圧縮機1から吐出されたエンタルピの大きい過熱ガス冷媒が、吐出バイパス管16を通り、冷媒タンク15に到達する。一方、蒸発器4に滞留した液冷媒が、蒸発器4から流出し、冷媒タンク15に到達する。ここで、液冷媒と過熱ガス冷媒が混合される。ここで、液冷媒は、過熱ガス冷媒と混合され、エンタルピが上昇し、ガス冷媒となる。この状態で、冷媒タンク15より、圧縮機へ流入する。吸入温度検知手段13は、この混合された冷媒の温度が十分高くなったことを検知すると、バイパス弁17を閉路する。これにより、冷凍サイクルは通常の運転状態となり、冷却運転を行う。
【0035】また除霜運転中の蒸発器4からの液戻りに対しては、冷媒タンク15の位置が、圧縮機吸入管1aよりも下方に位置しているため、液冷媒が冷媒タンク15内に滞留し、圧縮機1の起動時、同様に吐出冷媒ガスと混合されて圧縮機1に吸入されるため通常運転時の起動と同様な動作となる。
【0036】次に第4の実施例について説明する。18は圧縮機熱交換パイプであり、蒸発器4と圧縮機1の接続配管19と並列に接続され、圧縮機1の表面に熱交換的に設置される。20は切り替え弁であり、前記圧縮機熱交換パイプ18の蒸発器4側端に設置される。
【0037】次に動作について説明する。温度調節手段11の指令により圧縮機1が起動する。これと同時に切り替え弁20が、圧縮機1の吸入ガス経路を圧縮機熱交換パイプ18側に切り替える。圧縮機1は、運転中の温度は十分高く、熱容量が大きく停止中の温度降下も少ないため、起動時にも十分に温度が高い。このため、起動時蒸発器4から流出した液冷媒が、圧縮機熱交換パイプ18を通過することにより蒸発気化し、圧縮機1へは、冷媒ガスの状態で吸入される。この後、蒸発器4から流出してくる液冷媒が無くなると、これまで液冷媒の蒸発潜熱により小さかった温度変化が、急激に変化し上昇し始める。この温度変化を、吸入温度検知手段13が検知し、切り替え弁20を通常経路へ切り替える。これにより、冷凍サイクルは通常の運転状態となり、冷却運転を行う。
【0038】除霜運転中は、切り替え弁20を圧縮機熱交換パイプ18側へ切り替えることにより、蒸発器4から流出してきた液冷媒が、ここで蒸発気化し、液冷媒の状態で圧縮機1へ到達することが無くなる。
【0039】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明の冷蔵庫は、圧縮機、凝縮器、キャピラリチューブ、蒸発器とこれらを順次環状に接続した冷凍サイクルと、前記圧縮吸入管に設置した液冷媒加熱手段と、吸入温度検知手段とを設けたので、起動時の蒸発器に滞留した冷媒を過熱することで気化させ、圧縮機への液戻りを防止することが可能となり、圧縮機の信頼性を低下させる液圧縮が発生しない。。
【0040】また、圧縮機の吸入管に電気ヒータを設置したので、封入冷媒量により、電気ヒータの容量を調節することで、十分に液冷媒を過熱することが可能であるため、圧縮機への液戻りを発生させないことができる。。
【0041】また、蒸発器と圧縮機の間に設けた冷媒タンクと、圧縮機の吐出管と前記冷媒タンクとを連通する吐出バイパス管と、前記吐出バイパス管を任意に閉鎖するバイパス弁を設けたので、吐出ガスと吸入冷媒を混合し、過熱ガスとするため、圧縮機への液冷媒流入を防止し、また、除霜中の蒸発器からの液冷媒の圧縮機への流入も防止することができる。
【0042】さらに、蒸発器と圧縮機の接続配管に並列に配設し圧縮機に熱交換的に配設した圧縮機熱交換パイプと、前記圧縮機熱交換パイプの蒸発器側端に設けた切り替え弁とを設けたので、停止中や、起動時の圧縮機に蓄熱された温度を用いることで、液冷媒を蒸発気化させることが可能となり、圧縮機へ液冷媒を到達させないことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例の冷蔵庫の冷凍サイクル図
【図2】同実施例の冷蔵庫の動作のタイミングチャート
【図3】本発明の第2の実施例の冷蔵庫の冷凍サイクル図
【図4】同実施例の冷蔵庫の動作のタイミングチャート
【図5】本発明の第3の実施例の冷蔵庫の冷凍サイクル図
【図6】同実施例の冷蔵庫の動作のタイミングチャート
【図7】本発明の第4の実施例の冷蔵庫の冷凍サイクル図
【図8】同実施例の冷蔵庫の動作のタイミングチャート
【図9】従来の冷蔵庫の冷凍サイクル図
【図10】従来の冷蔵庫の電気回路のブロック図
【符号の説明】
1 圧縮機
2 凝縮器
3 減圧装置
4 蒸発器
12 液冷媒過熱手段
13 吸入温度検知手段
14 電気ヒータ
15 冷媒タンク
16 吐出バイパス管
17 バイパス弁
18 圧縮機熱交換パイプ
20 切り替え弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】 圧縮機、凝縮器、キャピラリチューブ、蒸発器とこれらを順次環状に接続した冷凍サイクルと、前記圧縮吸入管に設置した液冷媒加熱手段と、吸入温度検知手段とを設けた冷蔵庫。
【請求項2】 圧縮機の吸入管に電気ヒータを設置した請求項1の冷蔵庫。
【請求項3】 蒸発器と圧縮機の間に設けた冷媒タンクと、圧縮機の吐出管と前記冷媒タンクとを連通する吐出バイパス管と、前記吐出バイパス管を任意に閉鎖するバイパス弁を設けた請求項1記載の冷蔵庫。
【請求項4】 蒸発器と圧縮機の接続配管に並列に配設し圧縮機に熱交換的に配設した圧縮機熱交換パイプと、前記圧縮機熱交換パイプの蒸発器側端に設けた切り替え弁とを設けた請求項1記載の冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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