凹溝付きコンクリートブロックの製造方法
【課題】 コンクリートブロックの背面又は裏面に水案内用の凹溝を形成するのに、従来では枠板内面に凹溝形成用の凸状部を設けた型枠を使用する必要があるが、型枠の構造が複雑になり、しかも型枠解体時に離型しにくいとともに離型時に凹溝の口縁部分が欠け落ち易い。
【解決手段】 ブロック本体背面12(又は裏面12A)に水案内用の凹溝13(又は13A)を形成するのに、上面が開放する型枠1と、凹溝形成用の複数本の棒状体21を一体に組付けた組枠2と、型枠1を振動させる振動装置3とを使用し、型枠1内の所定高さまで生コンクリート6を充填し、該生コンクリート6の上面に組枠2を載せた状態で、型枠1を振動装置3で振動させて組枠2の棒状体21を生コンクリート6の上面部分に凹溝13の深さだけ沈み込ませ、生コンクリート6が固化した後に組枠2を取外すとともに型枠1を解体することで、凹溝付きコンクリートブロックを製造する。
【解決手段】 ブロック本体背面12(又は裏面12A)に水案内用の凹溝13(又は13A)を形成するのに、上面が開放する型枠1と、凹溝形成用の複数本の棒状体21を一体に組付けた組枠2と、型枠1を振動させる振動装置3とを使用し、型枠1内の所定高さまで生コンクリート6を充填し、該生コンクリート6の上面に組枠2を載せた状態で、型枠1を振動装置3で振動させて組枠2の棒状体21を生コンクリート6の上面部分に凹溝13の深さだけ沈み込ませ、生コンクリート6が固化した後に組枠2を取外すとともに型枠1を解体することで、凹溝付きコンクリートブロックを製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば擁壁用ブロックや舗装板等のコンクリートブロックの製造方法に関し、さらに詳しくはブロック本体の背面(擁壁用ブロックの場合)又は裏面(舗装板の場合)に水案内用の凹溝を形成した凹溝付きコンクリートブロックの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路側面や造成土地側面あるいは山肌等における土砂の崩壊を防止するのにコンクリート製の擁壁用ブロックが使用されており、他方、歩道(公園や駐車場等の敷地も含む)にはコンクリート製の舗装板が使用されている。尚、擁壁用ブロックとしては、従来から例えば間知ブロックや直方体状ブロックが多用されており、舗装板としては、従来からコンクリート平板やインターロッキングと称される厚手のコンクリートブロックが多用されている。
【0003】
間知ブロックを使用した従来の擁壁構造として、図13に示すもたれ式擁壁がある。この図13の擁壁構造では、多数個の間知ブロック60,60・・を上下・左右に組付け、各間知ブロック60,60・・の裏側に裏込めコンクリート層61を打設し、さらにその裏込めコンクリート層61の裏側に砕石を充填(砕石層62を形成)した後、その砕石層62の裏側に土壌Sを埋戻して完成させている。尚、間知ブロックを使用したもたれ式擁壁として、例えば特許文献1(特開2000−355949号公報)に示されるものがある。
【0004】
この種の擁壁には、擁壁裏側に溜まる水(浸透水)を擁壁外側に排出する水抜き管63が埋設されている。又、砕石層62は、土壌S中の水が擁壁背面に溜まらないようにするための透水層となるもので、土壌S中の水が該透水層(砕石層62)に達すると水の流動性が良くなって、水抜き管63への水の流入(擁壁外への排水)を促進させる。
【0005】
ところで、砕石層62は、擁壁裏側の土壌S中の浸透水を速やかに流下させるものであるが、この砕石層62は、間知ブロック60を1段積み上げるごとに、裏込めコンクリート層61の裏側に仕切り型枠を組立て、その仕切り型枠内に砕石を20〜30cm高さずつ投入しながら振動機で締め固め、仕切り型枠の裏側に埋戻し土壌Sを20〜30cm高さずつ投入しながら締め固めた後、仕切り型枠を抜外し、順次同様の作業を行って擁壁全高に亘って形成される。従って、この砕石層62を形成するのに、多大の時間とコストを要するという問題があった。
【0006】
そこで、本出願人は、上記のような擁壁裏側の砕石層62を無くすことができる擁壁用ブロックを既に特許出願している(特願2004−244675号)。この既出願の擁壁用ブロックは、図14に示すように、ブロック本体11の背面12に複数本(図示例では5本)の縦凹溝13,13・・と、それらの縦凹溝に連続する1本の横凹溝14を形成している。この各凹溝(縦凹溝13,横凹溝14)は、後述するように擁壁背面側の水(浸透水)を下方に案内するためのものである。
【0007】
この凹溝付き擁壁用ブロック10の背面12は、透水マット9で被覆される(図14の符号9′参照)。この透水マット9は、合成樹脂線材を立体網状に絡め合わせて3〜5cm厚さのマット状に成形したもので、図示例のものではブロック本体背面12のほぼ全面を被覆し得る面積を有している。
【0008】
この図14の凹溝付き擁壁用ブロック10は、透水マット9を併用して図15に示すように擁壁を構築する。即ち、擁壁用ブロック10の背面を透水マット9で被覆し、その透水マット9付きの擁壁用ブロック10,10・・を、凹溝13形成面が裏側に向く状態で上下・左右に組付けて擁壁を構築し、その擁壁の背面(各透水マット9の背面)に直接(砕石層なしに)土壌Sを充填する。尚、上下に積層された各擁壁用ブロック10,10は、その各縦凹溝13,13が上下に連続する状態で組付けられている。
【0009】
この図15の擁壁構造では、各擁壁用ブロック10,10・・の背面と土壌Sとの間に透水マット9,9・・が介在されており、土壌S中の水(浸透水)が透水マット9部分まで浸透すると該水がスムーズに透水マット9中に流入するようになる。そして、透水マット9中に流入した水の一部は、擁壁用ブロック10の背面にある凹溝(縦凹溝13,横凹溝14)内に浸入し、上下に連続する各縦凹溝13,13を通って速やかに流下する。尚、各凹溝13,13・・を通って流下した水は、擁壁を貫通する水抜き管16や擁壁背面の下部付近に設置される導水管17等を通して擁壁外側に排出される。
【0010】
このように、凹溝付き擁壁用ブロック10と透水マット9を使用した擁壁では、擁壁背面側に水案内用の砕石層(図13の符号62)が不要になるので、工期の短縮とコストの低減を達成し得る。
【0011】
ところで、図14に示す凹溝付き擁壁用ブロック10をコンクリート成型するのに、従来では、背面成型枠板の内面に凹溝(縦凹溝13,横凹溝14)を形成するための凸状部を形成した型枠を組立てて該型枠内に生コンクリートを充填し、その生コンクリートが固化した後に、型枠を解体して凹溝付き擁壁用ブロック10を成型するようにしている。
【0012】
他方、例えば歩道の舗装材として、従来からコンクリート舗装板が多用されているが、この種のコンクリート舗装板を使用した舗装構造として、図16に示すものがある。この図16に示す舗装構造は、土壌質からなる路床Pの上に砂や砕石等からなる路盤層Qを敷き、該路盤層Qの上に多数枚のコンクリート舗装板10B,10B・・を縦横に敷き詰めて構成されている。従って、この図16の舗装構造では、降雨時に、その雨水が各舗装板10B,10B間の目地Mを通って路盤層Q及び路床P部分に浸透していき、舗装面上に水が比較的溜まりにくい構造となっている。
【0013】
しかし、図16の舗装構造では、長時間に亘って(又は大量の)降雨があると、舗装板10Bの下面側に浸透する雨水量が路盤層Q及び路床Pでの保水能力及び排水能力を超え、路面上(舗装板10B上)に雨水が溜まってしまうという問題がある。
【0014】
そこで、本出願人は、上記のように長時間に亘って降雨があっても、舗装板の下面側に浸透する雨水を効率よく排出できるようにした舗装板及びその舗装構造を既に特許出願している(特願2004−280874号)。この既出願の舗装板及び舗装構造は、図17〜図19に示している。図17に示す舗装板10Aは、コンクリート平板からなるブロック本体11Aの裏面12Aに、縦横各方向に向けて複数本ずつ(3本ずつ)の水案内用の凹溝13A,14Aを形成している。尚、以下の説明では、符号13Aの凹溝を縦凹溝といい、符号14Aの凹溝を横凹溝という。
【0015】
図17の凹溝付き舗装板10Aは、例えば歩道の舗装に使用されるが、図18及図19の舗装構造では、路床P上の路盤層Q上にシート9Aを敷き、該シート9Aの上に多数の凹溝付き舗装板10Aを縦横に敷き詰めて構成されている。尚、シート9Aは、舗装板裏面12Aの各凹溝(縦凹溝13A、横凹溝14A)が土壌で目詰まりするのを防止するためのものであるが、該シート9Aで舗装板裏面12Aを被覆していることにより、縦横の各凹溝13A,14Aを水案内用の空洞通路(水の流通抵抗が小さい)として維持させ得る。
【0016】
そして、図18及び図19の舗装構造では、縦横に隣接する各舗装板10A,10Aの各凹溝(縦凹溝13A,13A同士、横凹溝14A,14A同士)が相互に連通しているので、降雨時に目地M等を通って舗装板10Aの下面側に浸透した雨水がシート9Aで受けられて縦横の凹溝13A,14A内に入り、該雨水が各凹溝13A,14Aを通って下降傾斜側(歩車道境界ブロックRの設置側)にスムーズに流動し、導水材Tから集水管Uに流入した後、集水桝Vに集められる。従って、このように水案内用の凹溝付き舗装板10Aを使用した舗装構造では、長時間(大量)の降雨があっても、舗装面(舗装板10A)の上に雨水が溜まらない。
【0017】
ところで、図17に示す凹溝付き舗装板10Aをコンクリート成型するのに、従来では、裏面成型枠板の内面に凹溝(縦凹溝13A,横凹溝14A)を形成するための凸状部を形成した型枠を組立てて該型枠内に生コンクリートを充填し、その生コンクリートが固化した後に、型枠を解体して凹溝付き舗装板10Aを成型するようにしている。
【0018】
尚、凸状部つき型枠を使用したコンクリート製品の成型方法として、例えば特開平11−28710号公報(特許文献2)又は特開2000−117719号公報(特許文献3)等に示されるものがある。
【0019】
【特許文献1】特開2000−355949号公報
【特許文献2】特開平11−28710号公報
【特許文献3】2000−117719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ところで、図14に示すように擁壁用ブロック10の背面12に凹溝(縦凹溝13、横凹溝14)を形成する際、及び図17に示すように舗装板10Aの裏面12Aに凹溝(縦凹溝13A、横凹溝14A)を形成する際に、従来では型枠内面に凹溝形成用の凸状部を形成したものを使用しているが、該凸状部付きの型枠では構造が複雑になって型枠製作費が高価になる。又、型枠内面に凹溝形成用の凸状部を形成したものでは、型枠内に充填した生コンクリートが固化した後、該型枠を解体する際に、枠板の凸状部がコンクリート壁面に食い込んでいるので凸状部付き枠板がブロック外面から剥がれにくいという問題がある。特に、図14又は図17に示すように、ブロック背面12又はブロック裏面12Aに縦凹溝13(又は13A)と横凹溝14(又は14A)とを形成したものでは、凸状部付き枠板が一層剥がれにくくなる。又、該凸状部付き枠板を無理に剥がそうとすると、ブロック外面(背面又は裏面)に成形されている凹溝の開口縁部が欠け落ちるおそれがあり、その場合は品質の悪い製品となり、さらにその欠け落ち部分が大きいと不良品となる。
【0021】
そこで、本願発明は、上記のような凹溝付きコンクリートブロック(擁壁用ブロックやコンクリート舗装板)を製造するのに、簡単で且つ凹溝成形状態を良好にし得るようにした、凹溝付きコンクリートブロックの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、例えば擁壁用ブロックや舗装板等のコンクリート成型品からなるブロック本体の背面又は裏面に水案内用の凹溝を形成した凹溝付きコンクリートブロックの製造方法を対象にしている。
【0023】
本願請求項1の発明
本願請求項1の発明の製造方法では、上面が開放するコンクリート成型用の型枠と、凹溝形成用の複数本の棒状体を一体に組付けた組枠と、型枠を振動させる振動装置とを使用して行う。
【0024】
型枠は、上面が開放され、前後左右(4枚)の各枠板が組立・分解可能となっている。尚、前後左右の各枠板は、成型されるコンクリートブロックが擁壁用ブロックではその上・下面及び左右各側面を形成するものであり、成型されるコンクリートブロックが舗装板ではその側周4面を形成するものである。又、型枠の下面側(底板)で擁壁用ブロックの前面又は舗装板の上面を形成し、型枠の上面開放部で擁壁用ブロックの背面又は舗装板の裏面を形成する。
【0025】
組枠は、凹溝形成用の各棒状体を所定間隔をもって並置した状態で連結材で一体に連結したものが使用される。各棒状体の並置状態は、平行並置が好ましいが、非平行状態(例えば隣接する各棒状体がクロスする状態)でもよい。尚、擁壁用ブロックの背面に形成される凹溝は、該擁壁用ブロックの施工状態で上下方向に向く姿勢に形成される。又、舗装板の裏面に形成される凹溝は、縦横(例えば格子状)に形成するとよい。そして、この組枠は、コンクリートブロックに形成すべき凹溝の形態に応じて各棒状体を組付けて構成される。
【0026】
この組枠は、鉄等の比重の大きい材料製のものが好ましい。特に、この請求項1の製造方法で使用する組枠は、振動だけで生コンクリート中に沈み込ませるものであるので、該生コンクリートの比重よりかなり大きい比重の材質(例えば鉄材がコスト面で好適である)のものを使用するとよい。尚、この組枠として、合成樹脂材料で成形したものを使用することができるが、この場合は、合成樹脂製組枠の上面に適宜重量のウエイト材を取付けることで対応することができる。
【0027】
組枠の棒状体は、製造すべきコンクリートブロック(擁壁用ブロック又は舗装板)の大きさによって、長さ、幅、厚さ(生コンクリート埋込み部分の突出高さ)、使用本数等が決められる。例えば、擁壁用ブロックの場合で、その背面視の大きさが例えば高さ50cm、左右幅100cm程度のものでは、棒状体として、長さが50cm、幅が3〜6cm、生コンクリート埋込み部分の突出高さが3〜5cm程度のものを使用し、該棒状体を2〜8本程度1組として使用するとよい。又、コンクリート平板製の舗装板の場合で、一辺長さが30cm程度の正方形で厚さが3cm程度のものでは、縦横の各棒状体として、それぞれ長さが30cm、幅が5〜10mm、生コンクリート埋込み部分の突出高さが5〜10mm程度のものを使用し、縦横の各棒状体をそれぞれ1〜4本程度1組として使用するとよい。尚、この組枠は、型枠の上部開口内に収容された状態で、各棒状体が型枠の対向内面間にほぼ過不足なく収容される大きさとなっている。
【0028】
各棒状体を連結している連結材は、各棒状体の上面を連結して型枠内に充填される生コンクリートに接触しない状態で組付けてもよく、あるいは各棒状体と同じ突出高さまで突出させて横凹溝形成用に利用してもよい。尚、組枠における生コンクリート中に沈み込ませる部分(各棒状体)は、断面が逆台形状あるいは半円状のものを使用すると、コンクリート固化後の組枠取外しが容易となる。
【0029】
この組枠には、型枠内に充填される所定量の生コンクリートの上面から、各棒状体が凹溝形成深さだけ沈み込んだ位置でそれ以上沈み込まないようにするための沈下防止手段(例えば型枠上面に掛止される掛止突棒のようなもの)を設けておくとよい。
【0030】
振動装置としては、振動モータが使用でき、例えば型枠を載せる台板を振動モータで高速振動させ得るようにしたものが採用できる。尚、この種の型枠振動装置は、型枠内に生コンクリートを高密度に充填する際に従来から一般に使用されており、コンクリート成型品の製造業者は通常設備として保有している場合が多い(その場合は、新規に振動装置を購入する必要はない)。
【0031】
そして、本願請求項1の凹溝付きコンクリートブロックの製造方法は、次のように行う。まず、型枠を上面側が開放する姿勢で設置し、該型枠内の所定高さまで生コンクリートを充填する。尚、型枠内に充填した生コンクリートの上面は、粗均しをしておく。
【0032】
次に、型枠内に充填した生コンクリートの上面に組枠を載せた状態で、型枠を振動装置で振動させて、組枠の棒状体を生コンクリートの上面部分に凹溝の形成深さだけ沈み込ませる。即ち、型枠を振動させると、その内部の生コンクリートも振動し、生コンクリート上面に載せている組枠が自重で生コンクリートの上面下に沈み込んでいく。このとき、各棒状体の下面側で生コンクリートを押し退けながら沈降していくので、生コンクリート上面における棒状体接触部分に空気溜まりが生じない。そして、各棒状体が所定深さ(凹溝形成深さ)だけ生コンクリート上面部に沈み込んだところで、その沈降が停止する。尚、この時点で、型枠内の生コンクリートに過不足があると、余分な生コンクリートを削除したり不足分を補充する一方、各棒状体を除く部分の生コンクリート上面をきれいに均しておく。
【0033】
そして、型枠内の生コンクリートが固化した後、組枠を取外すとともに型枠を解体することで、凹溝付きコンクリートブロックを製造できる。
【0034】
組枠の取外し時において、該組枠の棒状体の下面側が型枠内で固化しているコンクリート上面から所定深さだけ沈み込んでいるが、この組枠は、その対向両端部を持ってそのまま上方に持ち上げることでコンクリート上面から取外す(剥離させる)ことができる。又、型枠の各枠板は、内面が平滑なものでよいので、支障なく解体できる。
【0035】
本願請求項2の発明
本願請求項2の発明の凹溝付きコンクリートブロックの製造方法では、型枠を振動させる振動装置と、組枠を上方から押圧する押圧装置を併用して行う。尚、押圧装置としては、油圧シリンダが使用できる。
【0036】
そして、この請求項2の発明では、、振動装置の作動中に押圧装置で組枠を上方から押圧しながら行うことで、組枠の棒状体を生コンクリート上面から所定深さだけ沈み込ませるようにしている。
【0037】
このように、振動装置による型枠(内部の生コンクリートを含む)の振動と、押圧装置
による組枠の押し下げとを併用すると、組枠の各棒状体を生コンクリート上面部に確実に沈み込ませることができ、しかも固練りの生コンクリートであっても該組枠の各棒状体を生コンクリート上面部に沈み込ませ得る。
【0038】
本願請求項3の発明
本願請求項3の発明の凹溝付きコンクリートブロックの製造方法では、上面が開放するコンクリート成型用の型枠と、凹溝形成用の複数本の棒状体を一体に組付けた組枠と、組枠を振動させる振動装置とを使用する。型枠及び組枠は、上記請求項1に記載のものを使用できる。又、組枠を振動させる振動装置には、振動モータを採用できる。尚、この請求項3の製造方法では、請求項1における型枠振動用の振動装置は不要である。
【0039】
そして、この請求項3の発明では、型枠内の所定高さまで生コンクリートを充填し、該生コンクリートの上面に組枠を載せた状態で、組枠を振動装置で振動させて組枠の棒状体を生コンクリートの上面部に形成すべき凹溝の深さだけ沈み込ませ、生コンクリートが固化した後に組枠を取外すとともに型枠を解体するようにしている。
【0040】
この請求項3の凹溝付きコンクリートブロックの製造方法では、振動装置で組枠を直接振動させることで組枠の棒状体を生コンクリート上面部に沈み込ませるようにしているところが、上記請求項1の製造方法と異なるが、この請求項3の製造方法でも、有効に棒状体を沈み込ませることができる。
【発明の効果】
【0041】
本願各請求項(請求項1〜3)の発明では、複数本の棒状体を一体化させた組枠を型枠内に充填した生コンクリートの上面に載せ、型枠を振動させる(請求項1及び2の場合)か、組枠を振動させる(請求項3の場合)かによって、組枠の棒状体を生コンクリート上面から所定深さまで沈み込ませて、コンクリートブロックの背面又は裏面となる面に凹溝を形成するようにしている。従って、凸状部付きの型枠が不要になり、型枠としてシンプルなもの(安価である)を使用できるので、型枠コストを安価にできるという効果がある。
【0042】
又、本願各請求項(請求項1〜3)の発明では、型枠内の生コンクリートが固化後に組枠を取外すが、その際に組枠をそのまま上方に持ち上げることでコンクリート上面から取外すことができるので、組枠取外し作業が容易であり且つその取外し作業中に擁コンクリートブロックに形成されている凹溝の開口縁部付近が欠け落ちることがなく、品質の良好な凹溝付きコンクリートブロックを製造することができる。
【0043】
さらに、本願請求項2の発明では、組枠の棒状体を生コンクリート上面から沈み込ませるのに、型枠を振動装置で振動させるとともに組枠を押圧装置で下方に押し下げるようにしているので、組枠の各棒状体を確実に且つ短時間で生コンクリート上面部の所定深さまで押込むことができるという効果がある。又、このように押圧装置で組枠を強制的に押し下げるようにしたものでは、生コンクリートとして固練りのものを使用しても、組枠を支障なく生コンクリート上面部に沈降させることができる。
【実施例】
【0044】
以下、図1〜図12を参照して本願のいくつかの実施例を説明すると、図1〜図3には第1実施例(請求項1に対応)の凹溝付き擁壁用ブロックの製造方法を示し、図4には本願の実施例で製造された凹溝付き擁壁用ブロックを示し、図5〜図6には図4の凹溝付き擁壁用ブロックの使用形態を示し、図7には第2実施例(請求項2に対応)の凹溝付き擁壁用ブロックの製造方法を示し、図8〜図9には第3実施例(請求項3に対応)の凹溝付き擁壁用ブロックの製造方法を示し、図10には他の実施例で使用される組枠を示し、図11には第1実施例(請求項1に対応)の変形例(第4実施例)のコンクリート舗装板の製造方法を示し、図12には第4実施例で製造されたコンクリート舗装板を示している。
【0045】
図1〜図3に示す第1実施例の製造方法は、図4に示す凹溝付き擁壁用ブロック10を製造するものであり、先にこの凹溝付き擁壁用ブロック1の構成を説明する。
【0046】
図4に示す擁壁用ブロック10は、直方体形状のブロック本体11の背面12となる面に、5本の縦向き凹溝(以下、単に縦凹溝という)13,13・・を形成しているとともに、該背面12の上部寄り位置と下部寄り位置にそれぞれ1本ずつの横向き凹溝(以下、単に横凹溝という)14,14を形成している。各縦凹溝13,13・・と各横凹溝14,14とは相互に連通していて、例えば特定の縦凹溝13が土壌で目詰まりしたときには、そこの凹溝13を通って流下しようとしている水が横凹溝14を通って隣の縦凹溝13に流入し得るようになっている。尚、他の実施例では、縦凹溝13,13・・のみの(横凹溝14の無い)凹溝付き擁壁用ブロック10も採用できる。
【0047】
この種の擁壁用ブロックは、用途や使用場所によって適宜の大きさ・形状のものが使用されるが、図4の擁壁用ブロック10では、例えば横幅が100cm、高さが50cm、奥行き幅が35cm程度の大きさで中味の詰まった状態で成型されている。又、各縦凹溝13,13・・及び各横凹溝14,14は、断面が台形状で、開口幅が5cm、底幅が4cm、深さが3cm程度の大きさに形成されている。尚、この擁壁用ブロック10の各数値は、特に限定されるものではなく、適宜に設計変更可能である。
【0048】
図1〜図3に示す第1実施例の製造方法では、上面が開放するコンクリート成型用の型枠1と、縦凹溝形成用の5本の棒状体21,21・・と横凹溝形成用の2本の棒状体22,22とを一体に組付けた組枠2と、型枠1を振動させる振動装置3とを使用して行う。
【0049】
型枠1は、使用状態で上面及び下面がそれぞれ開放された前後左右(4枚)の各枠板(1a〜1d)で構成されている。尚、型枠1の底板は、後述する振動装置3の台板32で共用されている。
【0050】
この型枠1の各枠板(1a〜1d)は、コンクリート成型時にはそれぞれ縦向きの側周壁(4面)を構成するものである。各枠板(1a〜1d)の高さは、この実施例では成型すべき擁壁用ブロック10の前後厚さと同じにしている。又、この各枠板(1a〜1d)は、組立・分解可能となっている。尚、前後の各枠板1a,1bは成型される擁壁用ブロック10(図4)の上面及び下面を形成するものであり、左右の各枠板1c,1dは成型される擁壁用ブロック10の左右各側面を形成するものである。又、型枠1の下面側(振動装置3の台板32)で擁壁用ブロック10の前面を形成し、型枠1の上面開放部で擁壁用ブロック10の背面を形成する。
【0051】
組枠2は、縦凹溝形成用の5本の棒状体21,21・・を所定間隔をもって平行に並置した状態で2本の連結材(この実施例では横凹溝形成用棒状体となる)22,22で一体に連結して構成されている。この実施例で製造される擁壁用ブロック10は、図4に示すように5本の縦凹溝13,13・・と上下2本の横凹溝14,14を形成している関係で、2本の連結材(棒状体)22,22も横凹溝形成用として利用している。尚、以下の説明では、便宜上、縦凹溝形成用の棒状体21を単に縦棒状体といい、横凹溝形成用の棒状体22を単に横棒状体ということがある。
【0052】
組枠2は、鉄等の比重の大きい材料で成形している。特に、図1〜図3に示す第1実施例の製造方法では、後述するように組枠2の縦棒状体21と横棒状体22とを振動だけで生コンクリート6中に沈み込ませるものであるので、該組枠2として生コンクリート6の比重よりかなり大きい比重の材質のものを使用している。尚、比重が大きく且つ安価な材料としては鉄が最適である。
【0053】
各縦棒状体21,21・・と各横棒状体22,22とは、擁壁用ブロック10の背面12に形成すべき縦凹溝13及び横凹溝14の各断面形状とそれぞれ同形の断面形状(逆台形状)を有している。そして、各縦棒状体21,21・・と各横棒状体22,22とは、上面及び下面がそれぞれ同一平面になる状態で一体に連続している。
【0054】
組枠2の各縦棒状体21,21・・は、型枠1の前後枠板1a,1bの内面間隔と同長さのものが使用されており、他方、組枠2の各横棒状体22,22は、型枠1の左右枠板1c,1dの内面間隔と同長さのものが使用されている。そして、各縦棒状体21,21・・と各横棒状体22,22を組付けた組枠2は、型枠1の上部開口内に収容したときに、各棒状体21,22が型枠1の各対向内面間にほぼ過不足なく収容される大きさになっている。
【0055】
組枠2には、型枠1内に充填される所定量の生コンクリート6の上面から、各棒状体21,22が凹溝形成深さだけ沈み込んだ位置でそれ以上沈み込まないようにするための沈下防止手段を設けている。この実施例では、該沈下防止手段として、2本の横棒状体22,22の各端部の上面に、型枠1の左右各枠板1c,1dよりそれぞれ外側にはみ出るようにして合計4本の掛止突棒23,23・・を固定している。この各掛止突棒23,23・・の下面は組枠2の上面と同高さ位置にあり、組枠2を型枠1の上部開口内に収容させたときに、各掛止突棒23,23・・が左右枠板1c,1dの上面に載せ掛けられて、組枠2がそれ以上沈降しないようになる(図2、図3の状態)。尚、この各掛止突棒23,23・・は、組枠2の把手として利用できる。
【0056】
振動装置3は、基台31の上部離間位置に台板32を4本の伸縮支持脚(コイルバネ入り)34,34・・で弾性支持しているとともに、台板32の下面に振動モータ33を取付けて構成されている。
【0057】
台板32上には型枠1が載置されるが、該型枠1は台板32上に適宜の手段で固定される。尚、この台板32は、この第1実施例では型枠1の底板を共用している。
【0058】
そして、この振動装置3は、振動モータ33を作動させると、基台31上に弾性支持されている台板32が高速振動するようになっており、台板32上に載置される型枠1(及び型枠内に充填される生コンクリート6)を振動させ得るようになっている。尚、この種の型枠振動装置は、型枠内に生コンクリートを高密度に充填する際に従来から一般に使用されており、コンクリート成型品の製造業者は通常設備として保有している場合が多い。従って、この第1実施例の製造方法を実施するのに、型枠振動装置3を新規に購入する必要は少ない。
【0059】
図1〜図3に示す第1実施例の凹溝付き擁壁用ブロックの製造方法は、上記の型枠1、組枠2及び振動装置3を使用して次のように行う。
【0060】
まず、台板32上に型枠1を上面側が開放する姿勢で組立てる。このとき、型枠1は台板32上に移動不能に固定しておく。そして、型枠1内の上端高さ(満杯位置)まで生コンクリート6を充填する(図1の状態)。このとき、型枠1内に充填した生コンクリート6の上面は、粗均しをしておく。
【0061】
次に、型枠1内に充填した生コンクリート6の上面に組枠2を載せる。このとき、組枠2が型枠1の上部開口内に沈降し得る位置に位置合わせしておく。尚、組枠2を生コンクリート6上面に載せただけでは、該組枠2が生コンクリート6中にほとんど沈降することはない。
【0062】
そして、振動装置3(振動モータ33)を作動させると、振動モータ33により台板32を高速振動させ、その上部の型枠1及び型枠内の生コンクリート6も高速振動させる。すると、生コンクリート6の振動作用によって、生コンクリート上面に載せている組枠2が自重で生コンクリート6の上面部に沈み込んでいく。このとき、縦棒状体21及び横棒状体22の下面側で生コンクリート6を押し退けながら沈降していくので、生コンクリート上面における棒状体接触部分に空気溜まりが生じない(成形される凹溝内面に傷ができない)。そして、各棒状体21,22が所定深さ(凹溝形成深さ)だけ生コンクリート6の上面中に沈み込んだところで、各掛止突棒23,23・・が型枠1(左右の各枠板1c,1d)の上面に接触し、組枠2の沈降が停止する(図2及び図3の状態)。その後、振動モータ33を停止させる。尚、この時点で、型枠1内の生コンクリート6に過不足があると、余分な生コンクリートを削除したり不足分を補充する一方、各棒状体21,22を除く部分の生コンクリート6の上面をきれいに均しておく。
【0063】
そして、型枠1内の生コンクリート6を固化させ、該コンクリート6が固化した後、組枠2を取外すとともに型枠1を解体することで、図4に示す凹溝付き擁壁用ブロック10を製造できる。尚、組枠2は、左右の各掛止突棒23,23・・を握ってそのまま持ち上げることで簡単に取外すことができる。又、型枠1の各枠板1a〜1dは、内面が平滑なものでよいので、支障なく解体できる。
【0064】
このようにして製造された凹溝付き擁壁用ブロック10(図4)は、その背面12を被覆する透水マット9を併用して、図5及び図6に示すように擁壁を構築する。即ち、擁壁用ブロック10の背面12を透水マット9で被覆し、その透水マット9付きの擁壁用ブロック10,10・・を、凹溝形成面(背面12)が裏側に向く状態で上下・左右に組付けて擁壁を構築し、その擁壁の背面(各透水マット9の背面)に直接土壌Sを充填する。尚、上下に積層された各擁壁用ブロック10,10は、その各縦凹溝13,13が上下に連続する状態で組付けられている。
【0065】
この図5及び図6の擁壁構造では、上記背景技術の項で説明した図14及び図15の既出願例と同様に、各擁壁用ブロック10,10・・の背面と土壌Sとの間に透水マット9,9・・が介在されており、土壌S中の水(浸透水)が透水マット9部分まで浸透すると該水がスムーズに透水マット9中に流入するようになる。そして、透水マット9中に流入した水の一部は、擁壁用ブロック10の背面12にある凹溝(縦凹溝13,横凹溝14)内に浸入し、上下に連続する各縦凹溝13,13を通って速やかに流下し、擁壁を貫通する水抜き管(図示省略)や擁壁の内面側下部に設けた導水管17等を通して擁壁外側に排出される。従って、この凹溝付き擁壁用ブロック10と透水マット9を使用した擁壁では、擁壁背面側に水案内用の砕石層(図13の符号62)が不要になる。
【0066】
図7に示す第2実施例の凹溝付き擁壁用ブロックの製造方法では、上記第1実施例で使用した型枠1、組枠2、及び振動装置3のほかに、組枠2の上面を下方に押し下げる押圧装置4を使用する。尚、型枠1、組枠2、及び振動装置3は、第1実施例のものと同じであるので、それらの説明は第1実施例のものを援用する。
【0067】
押圧装置4は、組枠2上に載せられる載せ台41とその上方に固定される固定台42との間に油圧シリンダ(図示例では2本)43,43を介在させて構成している。そして、この押圧装置4は、油圧シリンダ43,43を伸長させることで、載せ台41を下方に押し下げ得るようになっている。
【0068】
この図7に示す製造方法では、上記第1実施例と同様に、振動装置3の台板32上に型枠1を組立て、該型枠1内に満杯状態まで生コンクリート6を充填し、その生コンクリート上に組枠2を載せ、該組枠2上に押圧装置4の載せ台41を載せ、油圧シリンダ43,43を載せ台41の上面に位置させてセットしておく。そして、振動装置3の振動モータ33を作動させて、台板32、型枠1、及び生コンクリート6を高速振動させるとともに、押圧装置4の油圧シリンダ43,43を伸長させて組枠2を生コンクリート6の上面部内方に押し下げる。尚、組枠2の沈降は、各掛止突棒23,23が型枠1の上面に接触した時点で停止し、その後、振動モータ33及び油圧シリンダ43,43の作動を停止させる。
【0069】
このように、振動装置3による振動と押圧装置4による押し下げとを同時に行うと、組枠を生コンクリート6の上面中に確実に且つ短時間で沈み込ませることができる。又、このように押圧装置4で組枠2を強制的に押し下げるようにしたものでは、生コンクリート6として固練りのものを使用しても、組枠2を支障なく生コンクリート上面中に沈降させることができる。
【0070】
尚、この第2実施例の場合は、その後、型枠1内の生コンクリート6を固化させ、押圧装置4を取除き、組枠2を上方に取外し、型枠1を解体すれば、凹溝付き擁壁用ブロック10(図4)の製造は完了する。
【0071】
図8及び図9に示す第3実施例の製造方法では、振動装置5で組枠2に振動を加えることで、該組枠2を生コンクリート6の上面から沈降させるようにしている。又、この第3実施例では、型枠1は、動かない基台7の上に組立てられる。尚、型枠1及び組枠2は、上記第1実施例のものと同じものが使用されている。
【0072】
図8及び図9の第3実施例で使用される振動装置5は、組枠2の上面に載せられる載せ台51と、該載せ台51の上面に取付けた振動モータ52とを有して構成されている。
【0073】
この第3実施例の製造方法では、基台7上に型枠1を組立て、該型枠1内に生コンクリート6を満杯状態まで充填し、その生コンクリート6の上面に組枠2を載せ、さらに該組枠2の上に振動装置5(振動モータ52付きの載せ台51)をセットする。そして、振動装置5の振動モータ52を作動させると、その振動が載せ台51を介して組枠2に伝達されて、該組枠2を振動させる。又、このとき、載せ台51及び振動モータ52の重量が組枠2上に加わり、その荷重と振動とによって組枠2(各縦棒状体21及び各横棒状体22)を生コンクリート6の上面部内に沈み込ませる。尚、この場合も、組枠2の各掛止突棒23,23が型枠1の上面に接触した時点で組枠2の沈降が停止し、その後、振動モータ52を停止させる。
【0074】
尚、この第3実施例の場合も、その後、型枠1内の生コンクリート6を固化させ、振動装置5を取除き、組枠2を上方に取外し、型枠1を解体すれば、凹溝付き擁壁用ブロック10(図4)の製造は完了する。
【0075】
図10には、上記第1〜第3実施例で使用した組枠2の変形例を示している。この図10の組枠2は、5本の縦棒状体21,21・・と2本の横棒状体22,22を同一平面上に組付けていることは上記第1〜第3実施例ものと同じであるが、この第3実施例の組枠2では、各縦棒状体21,21・・と各横棒状体22,22のそれぞれ下面側を断面半円状に形成している。このように、各棒状体21,22の下面側を断面半円状にすると、生コンクリート固化後に組枠2を取外す際に、上記各実施例の断面逆台形状のものより剥がし易くなるとともに、成形された各凹溝13,14の開口付近の欠け落ちが一層発生しにくくなる。
【0076】
図11に示す第4実施例の製造方法は、図12に示す平板状のコンクリート舗装板10Aを製造するためのものであり、基本的には図1〜図3に示す第1実施例と同様に振動装置3の振動のみによって、組枠2を生コンクリート6の上面に沈み込ませるようにしている。
【0077】
図12に示すコンクリート舗装板10Aは、従来技術の項で説明した図17のコンクリート舗装板10Aと同じもので、ブロック本体11Aの大きさが、一辺30cm程度の正方形で厚さ3cmの平板状に形成されている。ブロック本体11Aの裏面12Aには、縦横に等間隔で3本ずつの凹溝13A,14Aを形成している。縦横の各凹溝13A,14Aは、幅が5〜10mm、深さが5〜10mm程度の断面台形状である。尚、この縦横の各凹溝13A,14Aは、舗装板施工状態(例えば図18)で隣接する舗装板10A,10Aの各各縦凹溝13A,13A同士あるいは各横凹溝14A,14A同士がそれぞれ連続するようになっている。
【0078】
型枠1は、成型すべき舗装板10Aに対応する大きさで、一辺30cm程度の正方形で深さが3cmの容積を有している。
【0079】
組枠2は、上記縦横の各凹溝13A,14Aを形成し得るように、縦横3本ずつの棒状体(縦棒状体21,21,21、横棒状体22,22,22)を等間隔で格子状に組付け、さらに外側に位置する各横棒状体22,22の端部上面にそれぞれ把手兼用の掛止突起23,23・・を取付けて構成されている。
【0080】
そして、図11の第4実施例の製造方法は、振動装置3の台板32上に型枠1を組立て、該型枠1内に生コンクリート6を充填し、該生コンクリート6上に組枠2を載せた状態で、振動装置3の振動モータ33を作動させることで、組枠2の縦横の各棒状体21,22を生コンクリート6の上面に所定深さだけ沈み込ませ、生コンクリート6が固化した後に組枠2を取外し、型枠1を解体させることによって、図12に示すコンクリート舗装板10Aを製造するようになっている。
【0081】
図12に示すコンクリート舗装板10Aは、従来技術の項で説明した図18及び図19に示すように歩道舗装用に使用され、舗装板下面の各凹溝13A,14Aにより排水機能の良好な舗装構造を提供できる。
【0082】
尚、コンクリート舗装板10Aの製造方法として、図11の第4実施例のほかに、図7に示す第2実施例の方法(振動装置3と押圧装置4を使用するもの)や、図8及び図9に示す第3実施例の方法(組枠2を振動装置5で直接振動させるもの)も採用できる。又、製造すべきコンクリート舗装板10Aも、用途によって各種の大きさ・厚さ・形状のものを製造でき、且つブロック本体裏面12Aの凹溝13A,14Aの大きさ・本数等も適宜に設計変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】擁壁用ブロックを製造する場合の本願第1実施例の製造方法を行う装置類の斜視図である。
【図2】図1からの状態変化図(組枠の沈み込み状態図)である。
【図3】図2のII−II断面図である。
【図4】図1〜図3の製造方法で製造された擁壁用ブロックとそれに使用される透水マットの斜視図である。
【図5】図4の凹溝付き擁壁用ブロックと透水マットを使用した擁壁構造の縦断面図である。
【図6】図5のVI−VI矢視図である。
【図7】擁壁用ブロックを製造する場合の本願第2実施例の製造方法を行う装置類の縦断面図である。
【図8】擁壁用ブロックを製造する場合の本願第3実施例の製造方法を行う装置類の斜視図である。
【図9】図8のIX−IX断面相当図である。
【図10】擁壁用ブロックを製造する場合の本願の他の実施例で使用される組枠の斜視図である。
【図11】コンクリート舗装板を製造する場合の本願第4実施例の製造方法を行う装置類の斜視図である。
【図12】図11の製造方法で製造されたコンクリート舗装板の上方斜視図である。
【図13】従来の間知ブロックを使用した擁壁構造の概略図である。
【図14】本出願人の既出願にかかる擁壁用ブロックと透水マットの斜視図である。
【図15】図14の擁壁用ブロックと透水マットを使用した擁壁構造の概略図である。
【図16】従来のコンクリート舗装板を使用した舗装構造の斜視図である。
【図17】本出願人の既出願にかかるコンクリート舗装板の下方斜視図である。
【図18】図17のコンクリート舗装板を使用した舗装構造の平面図である。
【図19】図18の舗装構造のXIX−XIX拡大断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1は型枠、2は組枠、3は振動装置、4は押圧装置、5は振動装置、6は生コンクリート、9は透水マット、10は擁壁用ブロック、10Aはコンクリート舗装板、12は背面、12Aは裏面、13,13Aは縦凹溝、14,14Aは横凹溝、21は縦棒状体、22は横棒状体、23は掛止突棒である。
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば擁壁用ブロックや舗装板等のコンクリートブロックの製造方法に関し、さらに詳しくはブロック本体の背面(擁壁用ブロックの場合)又は裏面(舗装板の場合)に水案内用の凹溝を形成した凹溝付きコンクリートブロックの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路側面や造成土地側面あるいは山肌等における土砂の崩壊を防止するのにコンクリート製の擁壁用ブロックが使用されており、他方、歩道(公園や駐車場等の敷地も含む)にはコンクリート製の舗装板が使用されている。尚、擁壁用ブロックとしては、従来から例えば間知ブロックや直方体状ブロックが多用されており、舗装板としては、従来からコンクリート平板やインターロッキングと称される厚手のコンクリートブロックが多用されている。
【0003】
間知ブロックを使用した従来の擁壁構造として、図13に示すもたれ式擁壁がある。この図13の擁壁構造では、多数個の間知ブロック60,60・・を上下・左右に組付け、各間知ブロック60,60・・の裏側に裏込めコンクリート層61を打設し、さらにその裏込めコンクリート層61の裏側に砕石を充填(砕石層62を形成)した後、その砕石層62の裏側に土壌Sを埋戻して完成させている。尚、間知ブロックを使用したもたれ式擁壁として、例えば特許文献1(特開2000−355949号公報)に示されるものがある。
【0004】
この種の擁壁には、擁壁裏側に溜まる水(浸透水)を擁壁外側に排出する水抜き管63が埋設されている。又、砕石層62は、土壌S中の水が擁壁背面に溜まらないようにするための透水層となるもので、土壌S中の水が該透水層(砕石層62)に達すると水の流動性が良くなって、水抜き管63への水の流入(擁壁外への排水)を促進させる。
【0005】
ところで、砕石層62は、擁壁裏側の土壌S中の浸透水を速やかに流下させるものであるが、この砕石層62は、間知ブロック60を1段積み上げるごとに、裏込めコンクリート層61の裏側に仕切り型枠を組立て、その仕切り型枠内に砕石を20〜30cm高さずつ投入しながら振動機で締め固め、仕切り型枠の裏側に埋戻し土壌Sを20〜30cm高さずつ投入しながら締め固めた後、仕切り型枠を抜外し、順次同様の作業を行って擁壁全高に亘って形成される。従って、この砕石層62を形成するのに、多大の時間とコストを要するという問題があった。
【0006】
そこで、本出願人は、上記のような擁壁裏側の砕石層62を無くすことができる擁壁用ブロックを既に特許出願している(特願2004−244675号)。この既出願の擁壁用ブロックは、図14に示すように、ブロック本体11の背面12に複数本(図示例では5本)の縦凹溝13,13・・と、それらの縦凹溝に連続する1本の横凹溝14を形成している。この各凹溝(縦凹溝13,横凹溝14)は、後述するように擁壁背面側の水(浸透水)を下方に案内するためのものである。
【0007】
この凹溝付き擁壁用ブロック10の背面12は、透水マット9で被覆される(図14の符号9′参照)。この透水マット9は、合成樹脂線材を立体網状に絡め合わせて3〜5cm厚さのマット状に成形したもので、図示例のものではブロック本体背面12のほぼ全面を被覆し得る面積を有している。
【0008】
この図14の凹溝付き擁壁用ブロック10は、透水マット9を併用して図15に示すように擁壁を構築する。即ち、擁壁用ブロック10の背面を透水マット9で被覆し、その透水マット9付きの擁壁用ブロック10,10・・を、凹溝13形成面が裏側に向く状態で上下・左右に組付けて擁壁を構築し、その擁壁の背面(各透水マット9の背面)に直接(砕石層なしに)土壌Sを充填する。尚、上下に積層された各擁壁用ブロック10,10は、その各縦凹溝13,13が上下に連続する状態で組付けられている。
【0009】
この図15の擁壁構造では、各擁壁用ブロック10,10・・の背面と土壌Sとの間に透水マット9,9・・が介在されており、土壌S中の水(浸透水)が透水マット9部分まで浸透すると該水がスムーズに透水マット9中に流入するようになる。そして、透水マット9中に流入した水の一部は、擁壁用ブロック10の背面にある凹溝(縦凹溝13,横凹溝14)内に浸入し、上下に連続する各縦凹溝13,13を通って速やかに流下する。尚、各凹溝13,13・・を通って流下した水は、擁壁を貫通する水抜き管16や擁壁背面の下部付近に設置される導水管17等を通して擁壁外側に排出される。
【0010】
このように、凹溝付き擁壁用ブロック10と透水マット9を使用した擁壁では、擁壁背面側に水案内用の砕石層(図13の符号62)が不要になるので、工期の短縮とコストの低減を達成し得る。
【0011】
ところで、図14に示す凹溝付き擁壁用ブロック10をコンクリート成型するのに、従来では、背面成型枠板の内面に凹溝(縦凹溝13,横凹溝14)を形成するための凸状部を形成した型枠を組立てて該型枠内に生コンクリートを充填し、その生コンクリートが固化した後に、型枠を解体して凹溝付き擁壁用ブロック10を成型するようにしている。
【0012】
他方、例えば歩道の舗装材として、従来からコンクリート舗装板が多用されているが、この種のコンクリート舗装板を使用した舗装構造として、図16に示すものがある。この図16に示す舗装構造は、土壌質からなる路床Pの上に砂や砕石等からなる路盤層Qを敷き、該路盤層Qの上に多数枚のコンクリート舗装板10B,10B・・を縦横に敷き詰めて構成されている。従って、この図16の舗装構造では、降雨時に、その雨水が各舗装板10B,10B間の目地Mを通って路盤層Q及び路床P部分に浸透していき、舗装面上に水が比較的溜まりにくい構造となっている。
【0013】
しかし、図16の舗装構造では、長時間に亘って(又は大量の)降雨があると、舗装板10Bの下面側に浸透する雨水量が路盤層Q及び路床Pでの保水能力及び排水能力を超え、路面上(舗装板10B上)に雨水が溜まってしまうという問題がある。
【0014】
そこで、本出願人は、上記のように長時間に亘って降雨があっても、舗装板の下面側に浸透する雨水を効率よく排出できるようにした舗装板及びその舗装構造を既に特許出願している(特願2004−280874号)。この既出願の舗装板及び舗装構造は、図17〜図19に示している。図17に示す舗装板10Aは、コンクリート平板からなるブロック本体11Aの裏面12Aに、縦横各方向に向けて複数本ずつ(3本ずつ)の水案内用の凹溝13A,14Aを形成している。尚、以下の説明では、符号13Aの凹溝を縦凹溝といい、符号14Aの凹溝を横凹溝という。
【0015】
図17の凹溝付き舗装板10Aは、例えば歩道の舗装に使用されるが、図18及図19の舗装構造では、路床P上の路盤層Q上にシート9Aを敷き、該シート9Aの上に多数の凹溝付き舗装板10Aを縦横に敷き詰めて構成されている。尚、シート9Aは、舗装板裏面12Aの各凹溝(縦凹溝13A、横凹溝14A)が土壌で目詰まりするのを防止するためのものであるが、該シート9Aで舗装板裏面12Aを被覆していることにより、縦横の各凹溝13A,14Aを水案内用の空洞通路(水の流通抵抗が小さい)として維持させ得る。
【0016】
そして、図18及び図19の舗装構造では、縦横に隣接する各舗装板10A,10Aの各凹溝(縦凹溝13A,13A同士、横凹溝14A,14A同士)が相互に連通しているので、降雨時に目地M等を通って舗装板10Aの下面側に浸透した雨水がシート9Aで受けられて縦横の凹溝13A,14A内に入り、該雨水が各凹溝13A,14Aを通って下降傾斜側(歩車道境界ブロックRの設置側)にスムーズに流動し、導水材Tから集水管Uに流入した後、集水桝Vに集められる。従って、このように水案内用の凹溝付き舗装板10Aを使用した舗装構造では、長時間(大量)の降雨があっても、舗装面(舗装板10A)の上に雨水が溜まらない。
【0017】
ところで、図17に示す凹溝付き舗装板10Aをコンクリート成型するのに、従来では、裏面成型枠板の内面に凹溝(縦凹溝13A,横凹溝14A)を形成するための凸状部を形成した型枠を組立てて該型枠内に生コンクリートを充填し、その生コンクリートが固化した後に、型枠を解体して凹溝付き舗装板10Aを成型するようにしている。
【0018】
尚、凸状部つき型枠を使用したコンクリート製品の成型方法として、例えば特開平11−28710号公報(特許文献2)又は特開2000−117719号公報(特許文献3)等に示されるものがある。
【0019】
【特許文献1】特開2000−355949号公報
【特許文献2】特開平11−28710号公報
【特許文献3】2000−117719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
ところで、図14に示すように擁壁用ブロック10の背面12に凹溝(縦凹溝13、横凹溝14)を形成する際、及び図17に示すように舗装板10Aの裏面12Aに凹溝(縦凹溝13A、横凹溝14A)を形成する際に、従来では型枠内面に凹溝形成用の凸状部を形成したものを使用しているが、該凸状部付きの型枠では構造が複雑になって型枠製作費が高価になる。又、型枠内面に凹溝形成用の凸状部を形成したものでは、型枠内に充填した生コンクリートが固化した後、該型枠を解体する際に、枠板の凸状部がコンクリート壁面に食い込んでいるので凸状部付き枠板がブロック外面から剥がれにくいという問題がある。特に、図14又は図17に示すように、ブロック背面12又はブロック裏面12Aに縦凹溝13(又は13A)と横凹溝14(又は14A)とを形成したものでは、凸状部付き枠板が一層剥がれにくくなる。又、該凸状部付き枠板を無理に剥がそうとすると、ブロック外面(背面又は裏面)に成形されている凹溝の開口縁部が欠け落ちるおそれがあり、その場合は品質の悪い製品となり、さらにその欠け落ち部分が大きいと不良品となる。
【0021】
そこで、本願発明は、上記のような凹溝付きコンクリートブロック(擁壁用ブロックやコンクリート舗装板)を製造するのに、簡単で且つ凹溝成形状態を良好にし得るようにした、凹溝付きコンクリートブロックの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、例えば擁壁用ブロックや舗装板等のコンクリート成型品からなるブロック本体の背面又は裏面に水案内用の凹溝を形成した凹溝付きコンクリートブロックの製造方法を対象にしている。
【0023】
本願請求項1の発明
本願請求項1の発明の製造方法では、上面が開放するコンクリート成型用の型枠と、凹溝形成用の複数本の棒状体を一体に組付けた組枠と、型枠を振動させる振動装置とを使用して行う。
【0024】
型枠は、上面が開放され、前後左右(4枚)の各枠板が組立・分解可能となっている。尚、前後左右の各枠板は、成型されるコンクリートブロックが擁壁用ブロックではその上・下面及び左右各側面を形成するものであり、成型されるコンクリートブロックが舗装板ではその側周4面を形成するものである。又、型枠の下面側(底板)で擁壁用ブロックの前面又は舗装板の上面を形成し、型枠の上面開放部で擁壁用ブロックの背面又は舗装板の裏面を形成する。
【0025】
組枠は、凹溝形成用の各棒状体を所定間隔をもって並置した状態で連結材で一体に連結したものが使用される。各棒状体の並置状態は、平行並置が好ましいが、非平行状態(例えば隣接する各棒状体がクロスする状態)でもよい。尚、擁壁用ブロックの背面に形成される凹溝は、該擁壁用ブロックの施工状態で上下方向に向く姿勢に形成される。又、舗装板の裏面に形成される凹溝は、縦横(例えば格子状)に形成するとよい。そして、この組枠は、コンクリートブロックに形成すべき凹溝の形態に応じて各棒状体を組付けて構成される。
【0026】
この組枠は、鉄等の比重の大きい材料製のものが好ましい。特に、この請求項1の製造方法で使用する組枠は、振動だけで生コンクリート中に沈み込ませるものであるので、該生コンクリートの比重よりかなり大きい比重の材質(例えば鉄材がコスト面で好適である)のものを使用するとよい。尚、この組枠として、合成樹脂材料で成形したものを使用することができるが、この場合は、合成樹脂製組枠の上面に適宜重量のウエイト材を取付けることで対応することができる。
【0027】
組枠の棒状体は、製造すべきコンクリートブロック(擁壁用ブロック又は舗装板)の大きさによって、長さ、幅、厚さ(生コンクリート埋込み部分の突出高さ)、使用本数等が決められる。例えば、擁壁用ブロックの場合で、その背面視の大きさが例えば高さ50cm、左右幅100cm程度のものでは、棒状体として、長さが50cm、幅が3〜6cm、生コンクリート埋込み部分の突出高さが3〜5cm程度のものを使用し、該棒状体を2〜8本程度1組として使用するとよい。又、コンクリート平板製の舗装板の場合で、一辺長さが30cm程度の正方形で厚さが3cm程度のものでは、縦横の各棒状体として、それぞれ長さが30cm、幅が5〜10mm、生コンクリート埋込み部分の突出高さが5〜10mm程度のものを使用し、縦横の各棒状体をそれぞれ1〜4本程度1組として使用するとよい。尚、この組枠は、型枠の上部開口内に収容された状態で、各棒状体が型枠の対向内面間にほぼ過不足なく収容される大きさとなっている。
【0028】
各棒状体を連結している連結材は、各棒状体の上面を連結して型枠内に充填される生コンクリートに接触しない状態で組付けてもよく、あるいは各棒状体と同じ突出高さまで突出させて横凹溝形成用に利用してもよい。尚、組枠における生コンクリート中に沈み込ませる部分(各棒状体)は、断面が逆台形状あるいは半円状のものを使用すると、コンクリート固化後の組枠取外しが容易となる。
【0029】
この組枠には、型枠内に充填される所定量の生コンクリートの上面から、各棒状体が凹溝形成深さだけ沈み込んだ位置でそれ以上沈み込まないようにするための沈下防止手段(例えば型枠上面に掛止される掛止突棒のようなもの)を設けておくとよい。
【0030】
振動装置としては、振動モータが使用でき、例えば型枠を載せる台板を振動モータで高速振動させ得るようにしたものが採用できる。尚、この種の型枠振動装置は、型枠内に生コンクリートを高密度に充填する際に従来から一般に使用されており、コンクリート成型品の製造業者は通常設備として保有している場合が多い(その場合は、新規に振動装置を購入する必要はない)。
【0031】
そして、本願請求項1の凹溝付きコンクリートブロックの製造方法は、次のように行う。まず、型枠を上面側が開放する姿勢で設置し、該型枠内の所定高さまで生コンクリートを充填する。尚、型枠内に充填した生コンクリートの上面は、粗均しをしておく。
【0032】
次に、型枠内に充填した生コンクリートの上面に組枠を載せた状態で、型枠を振動装置で振動させて、組枠の棒状体を生コンクリートの上面部分に凹溝の形成深さだけ沈み込ませる。即ち、型枠を振動させると、その内部の生コンクリートも振動し、生コンクリート上面に載せている組枠が自重で生コンクリートの上面下に沈み込んでいく。このとき、各棒状体の下面側で生コンクリートを押し退けながら沈降していくので、生コンクリート上面における棒状体接触部分に空気溜まりが生じない。そして、各棒状体が所定深さ(凹溝形成深さ)だけ生コンクリート上面部に沈み込んだところで、その沈降が停止する。尚、この時点で、型枠内の生コンクリートに過不足があると、余分な生コンクリートを削除したり不足分を補充する一方、各棒状体を除く部分の生コンクリート上面をきれいに均しておく。
【0033】
そして、型枠内の生コンクリートが固化した後、組枠を取外すとともに型枠を解体することで、凹溝付きコンクリートブロックを製造できる。
【0034】
組枠の取外し時において、該組枠の棒状体の下面側が型枠内で固化しているコンクリート上面から所定深さだけ沈み込んでいるが、この組枠は、その対向両端部を持ってそのまま上方に持ち上げることでコンクリート上面から取外す(剥離させる)ことができる。又、型枠の各枠板は、内面が平滑なものでよいので、支障なく解体できる。
【0035】
本願請求項2の発明
本願請求項2の発明の凹溝付きコンクリートブロックの製造方法では、型枠を振動させる振動装置と、組枠を上方から押圧する押圧装置を併用して行う。尚、押圧装置としては、油圧シリンダが使用できる。
【0036】
そして、この請求項2の発明では、、振動装置の作動中に押圧装置で組枠を上方から押圧しながら行うことで、組枠の棒状体を生コンクリート上面から所定深さだけ沈み込ませるようにしている。
【0037】
このように、振動装置による型枠(内部の生コンクリートを含む)の振動と、押圧装置
による組枠の押し下げとを併用すると、組枠の各棒状体を生コンクリート上面部に確実に沈み込ませることができ、しかも固練りの生コンクリートであっても該組枠の各棒状体を生コンクリート上面部に沈み込ませ得る。
【0038】
本願請求項3の発明
本願請求項3の発明の凹溝付きコンクリートブロックの製造方法では、上面が開放するコンクリート成型用の型枠と、凹溝形成用の複数本の棒状体を一体に組付けた組枠と、組枠を振動させる振動装置とを使用する。型枠及び組枠は、上記請求項1に記載のものを使用できる。又、組枠を振動させる振動装置には、振動モータを採用できる。尚、この請求項3の製造方法では、請求項1における型枠振動用の振動装置は不要である。
【0039】
そして、この請求項3の発明では、型枠内の所定高さまで生コンクリートを充填し、該生コンクリートの上面に組枠を載せた状態で、組枠を振動装置で振動させて組枠の棒状体を生コンクリートの上面部に形成すべき凹溝の深さだけ沈み込ませ、生コンクリートが固化した後に組枠を取外すとともに型枠を解体するようにしている。
【0040】
この請求項3の凹溝付きコンクリートブロックの製造方法では、振動装置で組枠を直接振動させることで組枠の棒状体を生コンクリート上面部に沈み込ませるようにしているところが、上記請求項1の製造方法と異なるが、この請求項3の製造方法でも、有効に棒状体を沈み込ませることができる。
【発明の効果】
【0041】
本願各請求項(請求項1〜3)の発明では、複数本の棒状体を一体化させた組枠を型枠内に充填した生コンクリートの上面に載せ、型枠を振動させる(請求項1及び2の場合)か、組枠を振動させる(請求項3の場合)かによって、組枠の棒状体を生コンクリート上面から所定深さまで沈み込ませて、コンクリートブロックの背面又は裏面となる面に凹溝を形成するようにしている。従って、凸状部付きの型枠が不要になり、型枠としてシンプルなもの(安価である)を使用できるので、型枠コストを安価にできるという効果がある。
【0042】
又、本願各請求項(請求項1〜3)の発明では、型枠内の生コンクリートが固化後に組枠を取外すが、その際に組枠をそのまま上方に持ち上げることでコンクリート上面から取外すことができるので、組枠取外し作業が容易であり且つその取外し作業中に擁コンクリートブロックに形成されている凹溝の開口縁部付近が欠け落ちることがなく、品質の良好な凹溝付きコンクリートブロックを製造することができる。
【0043】
さらに、本願請求項2の発明では、組枠の棒状体を生コンクリート上面から沈み込ませるのに、型枠を振動装置で振動させるとともに組枠を押圧装置で下方に押し下げるようにしているので、組枠の各棒状体を確実に且つ短時間で生コンクリート上面部の所定深さまで押込むことができるという効果がある。又、このように押圧装置で組枠を強制的に押し下げるようにしたものでは、生コンクリートとして固練りのものを使用しても、組枠を支障なく生コンクリート上面部に沈降させることができる。
【実施例】
【0044】
以下、図1〜図12を参照して本願のいくつかの実施例を説明すると、図1〜図3には第1実施例(請求項1に対応)の凹溝付き擁壁用ブロックの製造方法を示し、図4には本願の実施例で製造された凹溝付き擁壁用ブロックを示し、図5〜図6には図4の凹溝付き擁壁用ブロックの使用形態を示し、図7には第2実施例(請求項2に対応)の凹溝付き擁壁用ブロックの製造方法を示し、図8〜図9には第3実施例(請求項3に対応)の凹溝付き擁壁用ブロックの製造方法を示し、図10には他の実施例で使用される組枠を示し、図11には第1実施例(請求項1に対応)の変形例(第4実施例)のコンクリート舗装板の製造方法を示し、図12には第4実施例で製造されたコンクリート舗装板を示している。
【0045】
図1〜図3に示す第1実施例の製造方法は、図4に示す凹溝付き擁壁用ブロック10を製造するものであり、先にこの凹溝付き擁壁用ブロック1の構成を説明する。
【0046】
図4に示す擁壁用ブロック10は、直方体形状のブロック本体11の背面12となる面に、5本の縦向き凹溝(以下、単に縦凹溝という)13,13・・を形成しているとともに、該背面12の上部寄り位置と下部寄り位置にそれぞれ1本ずつの横向き凹溝(以下、単に横凹溝という)14,14を形成している。各縦凹溝13,13・・と各横凹溝14,14とは相互に連通していて、例えば特定の縦凹溝13が土壌で目詰まりしたときには、そこの凹溝13を通って流下しようとしている水が横凹溝14を通って隣の縦凹溝13に流入し得るようになっている。尚、他の実施例では、縦凹溝13,13・・のみの(横凹溝14の無い)凹溝付き擁壁用ブロック10も採用できる。
【0047】
この種の擁壁用ブロックは、用途や使用場所によって適宜の大きさ・形状のものが使用されるが、図4の擁壁用ブロック10では、例えば横幅が100cm、高さが50cm、奥行き幅が35cm程度の大きさで中味の詰まった状態で成型されている。又、各縦凹溝13,13・・及び各横凹溝14,14は、断面が台形状で、開口幅が5cm、底幅が4cm、深さが3cm程度の大きさに形成されている。尚、この擁壁用ブロック10の各数値は、特に限定されるものではなく、適宜に設計変更可能である。
【0048】
図1〜図3に示す第1実施例の製造方法では、上面が開放するコンクリート成型用の型枠1と、縦凹溝形成用の5本の棒状体21,21・・と横凹溝形成用の2本の棒状体22,22とを一体に組付けた組枠2と、型枠1を振動させる振動装置3とを使用して行う。
【0049】
型枠1は、使用状態で上面及び下面がそれぞれ開放された前後左右(4枚)の各枠板(1a〜1d)で構成されている。尚、型枠1の底板は、後述する振動装置3の台板32で共用されている。
【0050】
この型枠1の各枠板(1a〜1d)は、コンクリート成型時にはそれぞれ縦向きの側周壁(4面)を構成するものである。各枠板(1a〜1d)の高さは、この実施例では成型すべき擁壁用ブロック10の前後厚さと同じにしている。又、この各枠板(1a〜1d)は、組立・分解可能となっている。尚、前後の各枠板1a,1bは成型される擁壁用ブロック10(図4)の上面及び下面を形成するものであり、左右の各枠板1c,1dは成型される擁壁用ブロック10の左右各側面を形成するものである。又、型枠1の下面側(振動装置3の台板32)で擁壁用ブロック10の前面を形成し、型枠1の上面開放部で擁壁用ブロック10の背面を形成する。
【0051】
組枠2は、縦凹溝形成用の5本の棒状体21,21・・を所定間隔をもって平行に並置した状態で2本の連結材(この実施例では横凹溝形成用棒状体となる)22,22で一体に連結して構成されている。この実施例で製造される擁壁用ブロック10は、図4に示すように5本の縦凹溝13,13・・と上下2本の横凹溝14,14を形成している関係で、2本の連結材(棒状体)22,22も横凹溝形成用として利用している。尚、以下の説明では、便宜上、縦凹溝形成用の棒状体21を単に縦棒状体といい、横凹溝形成用の棒状体22を単に横棒状体ということがある。
【0052】
組枠2は、鉄等の比重の大きい材料で成形している。特に、図1〜図3に示す第1実施例の製造方法では、後述するように組枠2の縦棒状体21と横棒状体22とを振動だけで生コンクリート6中に沈み込ませるものであるので、該組枠2として生コンクリート6の比重よりかなり大きい比重の材質のものを使用している。尚、比重が大きく且つ安価な材料としては鉄が最適である。
【0053】
各縦棒状体21,21・・と各横棒状体22,22とは、擁壁用ブロック10の背面12に形成すべき縦凹溝13及び横凹溝14の各断面形状とそれぞれ同形の断面形状(逆台形状)を有している。そして、各縦棒状体21,21・・と各横棒状体22,22とは、上面及び下面がそれぞれ同一平面になる状態で一体に連続している。
【0054】
組枠2の各縦棒状体21,21・・は、型枠1の前後枠板1a,1bの内面間隔と同長さのものが使用されており、他方、組枠2の各横棒状体22,22は、型枠1の左右枠板1c,1dの内面間隔と同長さのものが使用されている。そして、各縦棒状体21,21・・と各横棒状体22,22を組付けた組枠2は、型枠1の上部開口内に収容したときに、各棒状体21,22が型枠1の各対向内面間にほぼ過不足なく収容される大きさになっている。
【0055】
組枠2には、型枠1内に充填される所定量の生コンクリート6の上面から、各棒状体21,22が凹溝形成深さだけ沈み込んだ位置でそれ以上沈み込まないようにするための沈下防止手段を設けている。この実施例では、該沈下防止手段として、2本の横棒状体22,22の各端部の上面に、型枠1の左右各枠板1c,1dよりそれぞれ外側にはみ出るようにして合計4本の掛止突棒23,23・・を固定している。この各掛止突棒23,23・・の下面は組枠2の上面と同高さ位置にあり、組枠2を型枠1の上部開口内に収容させたときに、各掛止突棒23,23・・が左右枠板1c,1dの上面に載せ掛けられて、組枠2がそれ以上沈降しないようになる(図2、図3の状態)。尚、この各掛止突棒23,23・・は、組枠2の把手として利用できる。
【0056】
振動装置3は、基台31の上部離間位置に台板32を4本の伸縮支持脚(コイルバネ入り)34,34・・で弾性支持しているとともに、台板32の下面に振動モータ33を取付けて構成されている。
【0057】
台板32上には型枠1が載置されるが、該型枠1は台板32上に適宜の手段で固定される。尚、この台板32は、この第1実施例では型枠1の底板を共用している。
【0058】
そして、この振動装置3は、振動モータ33を作動させると、基台31上に弾性支持されている台板32が高速振動するようになっており、台板32上に載置される型枠1(及び型枠内に充填される生コンクリート6)を振動させ得るようになっている。尚、この種の型枠振動装置は、型枠内に生コンクリートを高密度に充填する際に従来から一般に使用されており、コンクリート成型品の製造業者は通常設備として保有している場合が多い。従って、この第1実施例の製造方法を実施するのに、型枠振動装置3を新規に購入する必要は少ない。
【0059】
図1〜図3に示す第1実施例の凹溝付き擁壁用ブロックの製造方法は、上記の型枠1、組枠2及び振動装置3を使用して次のように行う。
【0060】
まず、台板32上に型枠1を上面側が開放する姿勢で組立てる。このとき、型枠1は台板32上に移動不能に固定しておく。そして、型枠1内の上端高さ(満杯位置)まで生コンクリート6を充填する(図1の状態)。このとき、型枠1内に充填した生コンクリート6の上面は、粗均しをしておく。
【0061】
次に、型枠1内に充填した生コンクリート6の上面に組枠2を載せる。このとき、組枠2が型枠1の上部開口内に沈降し得る位置に位置合わせしておく。尚、組枠2を生コンクリート6上面に載せただけでは、該組枠2が生コンクリート6中にほとんど沈降することはない。
【0062】
そして、振動装置3(振動モータ33)を作動させると、振動モータ33により台板32を高速振動させ、その上部の型枠1及び型枠内の生コンクリート6も高速振動させる。すると、生コンクリート6の振動作用によって、生コンクリート上面に載せている組枠2が自重で生コンクリート6の上面部に沈み込んでいく。このとき、縦棒状体21及び横棒状体22の下面側で生コンクリート6を押し退けながら沈降していくので、生コンクリート上面における棒状体接触部分に空気溜まりが生じない(成形される凹溝内面に傷ができない)。そして、各棒状体21,22が所定深さ(凹溝形成深さ)だけ生コンクリート6の上面中に沈み込んだところで、各掛止突棒23,23・・が型枠1(左右の各枠板1c,1d)の上面に接触し、組枠2の沈降が停止する(図2及び図3の状態)。その後、振動モータ33を停止させる。尚、この時点で、型枠1内の生コンクリート6に過不足があると、余分な生コンクリートを削除したり不足分を補充する一方、各棒状体21,22を除く部分の生コンクリート6の上面をきれいに均しておく。
【0063】
そして、型枠1内の生コンクリート6を固化させ、該コンクリート6が固化した後、組枠2を取外すとともに型枠1を解体することで、図4に示す凹溝付き擁壁用ブロック10を製造できる。尚、組枠2は、左右の各掛止突棒23,23・・を握ってそのまま持ち上げることで簡単に取外すことができる。又、型枠1の各枠板1a〜1dは、内面が平滑なものでよいので、支障なく解体できる。
【0064】
このようにして製造された凹溝付き擁壁用ブロック10(図4)は、その背面12を被覆する透水マット9を併用して、図5及び図6に示すように擁壁を構築する。即ち、擁壁用ブロック10の背面12を透水マット9で被覆し、その透水マット9付きの擁壁用ブロック10,10・・を、凹溝形成面(背面12)が裏側に向く状態で上下・左右に組付けて擁壁を構築し、その擁壁の背面(各透水マット9の背面)に直接土壌Sを充填する。尚、上下に積層された各擁壁用ブロック10,10は、その各縦凹溝13,13が上下に連続する状態で組付けられている。
【0065】
この図5及び図6の擁壁構造では、上記背景技術の項で説明した図14及び図15の既出願例と同様に、各擁壁用ブロック10,10・・の背面と土壌Sとの間に透水マット9,9・・が介在されており、土壌S中の水(浸透水)が透水マット9部分まで浸透すると該水がスムーズに透水マット9中に流入するようになる。そして、透水マット9中に流入した水の一部は、擁壁用ブロック10の背面12にある凹溝(縦凹溝13,横凹溝14)内に浸入し、上下に連続する各縦凹溝13,13を通って速やかに流下し、擁壁を貫通する水抜き管(図示省略)や擁壁の内面側下部に設けた導水管17等を通して擁壁外側に排出される。従って、この凹溝付き擁壁用ブロック10と透水マット9を使用した擁壁では、擁壁背面側に水案内用の砕石層(図13の符号62)が不要になる。
【0066】
図7に示す第2実施例の凹溝付き擁壁用ブロックの製造方法では、上記第1実施例で使用した型枠1、組枠2、及び振動装置3のほかに、組枠2の上面を下方に押し下げる押圧装置4を使用する。尚、型枠1、組枠2、及び振動装置3は、第1実施例のものと同じであるので、それらの説明は第1実施例のものを援用する。
【0067】
押圧装置4は、組枠2上に載せられる載せ台41とその上方に固定される固定台42との間に油圧シリンダ(図示例では2本)43,43を介在させて構成している。そして、この押圧装置4は、油圧シリンダ43,43を伸長させることで、載せ台41を下方に押し下げ得るようになっている。
【0068】
この図7に示す製造方法では、上記第1実施例と同様に、振動装置3の台板32上に型枠1を組立て、該型枠1内に満杯状態まで生コンクリート6を充填し、その生コンクリート上に組枠2を載せ、該組枠2上に押圧装置4の載せ台41を載せ、油圧シリンダ43,43を載せ台41の上面に位置させてセットしておく。そして、振動装置3の振動モータ33を作動させて、台板32、型枠1、及び生コンクリート6を高速振動させるとともに、押圧装置4の油圧シリンダ43,43を伸長させて組枠2を生コンクリート6の上面部内方に押し下げる。尚、組枠2の沈降は、各掛止突棒23,23が型枠1の上面に接触した時点で停止し、その後、振動モータ33及び油圧シリンダ43,43の作動を停止させる。
【0069】
このように、振動装置3による振動と押圧装置4による押し下げとを同時に行うと、組枠を生コンクリート6の上面中に確実に且つ短時間で沈み込ませることができる。又、このように押圧装置4で組枠2を強制的に押し下げるようにしたものでは、生コンクリート6として固練りのものを使用しても、組枠2を支障なく生コンクリート上面中に沈降させることができる。
【0070】
尚、この第2実施例の場合は、その後、型枠1内の生コンクリート6を固化させ、押圧装置4を取除き、組枠2を上方に取外し、型枠1を解体すれば、凹溝付き擁壁用ブロック10(図4)の製造は完了する。
【0071】
図8及び図9に示す第3実施例の製造方法では、振動装置5で組枠2に振動を加えることで、該組枠2を生コンクリート6の上面から沈降させるようにしている。又、この第3実施例では、型枠1は、動かない基台7の上に組立てられる。尚、型枠1及び組枠2は、上記第1実施例のものと同じものが使用されている。
【0072】
図8及び図9の第3実施例で使用される振動装置5は、組枠2の上面に載せられる載せ台51と、該載せ台51の上面に取付けた振動モータ52とを有して構成されている。
【0073】
この第3実施例の製造方法では、基台7上に型枠1を組立て、該型枠1内に生コンクリート6を満杯状態まで充填し、その生コンクリート6の上面に組枠2を載せ、さらに該組枠2の上に振動装置5(振動モータ52付きの載せ台51)をセットする。そして、振動装置5の振動モータ52を作動させると、その振動が載せ台51を介して組枠2に伝達されて、該組枠2を振動させる。又、このとき、載せ台51及び振動モータ52の重量が組枠2上に加わり、その荷重と振動とによって組枠2(各縦棒状体21及び各横棒状体22)を生コンクリート6の上面部内に沈み込ませる。尚、この場合も、組枠2の各掛止突棒23,23が型枠1の上面に接触した時点で組枠2の沈降が停止し、その後、振動モータ52を停止させる。
【0074】
尚、この第3実施例の場合も、その後、型枠1内の生コンクリート6を固化させ、振動装置5を取除き、組枠2を上方に取外し、型枠1を解体すれば、凹溝付き擁壁用ブロック10(図4)の製造は完了する。
【0075】
図10には、上記第1〜第3実施例で使用した組枠2の変形例を示している。この図10の組枠2は、5本の縦棒状体21,21・・と2本の横棒状体22,22を同一平面上に組付けていることは上記第1〜第3実施例ものと同じであるが、この第3実施例の組枠2では、各縦棒状体21,21・・と各横棒状体22,22のそれぞれ下面側を断面半円状に形成している。このように、各棒状体21,22の下面側を断面半円状にすると、生コンクリート固化後に組枠2を取外す際に、上記各実施例の断面逆台形状のものより剥がし易くなるとともに、成形された各凹溝13,14の開口付近の欠け落ちが一層発生しにくくなる。
【0076】
図11に示す第4実施例の製造方法は、図12に示す平板状のコンクリート舗装板10Aを製造するためのものであり、基本的には図1〜図3に示す第1実施例と同様に振動装置3の振動のみによって、組枠2を生コンクリート6の上面に沈み込ませるようにしている。
【0077】
図12に示すコンクリート舗装板10Aは、従来技術の項で説明した図17のコンクリート舗装板10Aと同じもので、ブロック本体11Aの大きさが、一辺30cm程度の正方形で厚さ3cmの平板状に形成されている。ブロック本体11Aの裏面12Aには、縦横に等間隔で3本ずつの凹溝13A,14Aを形成している。縦横の各凹溝13A,14Aは、幅が5〜10mm、深さが5〜10mm程度の断面台形状である。尚、この縦横の各凹溝13A,14Aは、舗装板施工状態(例えば図18)で隣接する舗装板10A,10Aの各各縦凹溝13A,13A同士あるいは各横凹溝14A,14A同士がそれぞれ連続するようになっている。
【0078】
型枠1は、成型すべき舗装板10Aに対応する大きさで、一辺30cm程度の正方形で深さが3cmの容積を有している。
【0079】
組枠2は、上記縦横の各凹溝13A,14Aを形成し得るように、縦横3本ずつの棒状体(縦棒状体21,21,21、横棒状体22,22,22)を等間隔で格子状に組付け、さらに外側に位置する各横棒状体22,22の端部上面にそれぞれ把手兼用の掛止突起23,23・・を取付けて構成されている。
【0080】
そして、図11の第4実施例の製造方法は、振動装置3の台板32上に型枠1を組立て、該型枠1内に生コンクリート6を充填し、該生コンクリート6上に組枠2を載せた状態で、振動装置3の振動モータ33を作動させることで、組枠2の縦横の各棒状体21,22を生コンクリート6の上面に所定深さだけ沈み込ませ、生コンクリート6が固化した後に組枠2を取外し、型枠1を解体させることによって、図12に示すコンクリート舗装板10Aを製造するようになっている。
【0081】
図12に示すコンクリート舗装板10Aは、従来技術の項で説明した図18及び図19に示すように歩道舗装用に使用され、舗装板下面の各凹溝13A,14Aにより排水機能の良好な舗装構造を提供できる。
【0082】
尚、コンクリート舗装板10Aの製造方法として、図11の第4実施例のほかに、図7に示す第2実施例の方法(振動装置3と押圧装置4を使用するもの)や、図8及び図9に示す第3実施例の方法(組枠2を振動装置5で直接振動させるもの)も採用できる。又、製造すべきコンクリート舗装板10Aも、用途によって各種の大きさ・厚さ・形状のものを製造でき、且つブロック本体裏面12Aの凹溝13A,14Aの大きさ・本数等も適宜に設計変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】擁壁用ブロックを製造する場合の本願第1実施例の製造方法を行う装置類の斜視図である。
【図2】図1からの状態変化図(組枠の沈み込み状態図)である。
【図3】図2のII−II断面図である。
【図4】図1〜図3の製造方法で製造された擁壁用ブロックとそれに使用される透水マットの斜視図である。
【図5】図4の凹溝付き擁壁用ブロックと透水マットを使用した擁壁構造の縦断面図である。
【図6】図5のVI−VI矢視図である。
【図7】擁壁用ブロックを製造する場合の本願第2実施例の製造方法を行う装置類の縦断面図である。
【図8】擁壁用ブロックを製造する場合の本願第3実施例の製造方法を行う装置類の斜視図である。
【図9】図8のIX−IX断面相当図である。
【図10】擁壁用ブロックを製造する場合の本願の他の実施例で使用される組枠の斜視図である。
【図11】コンクリート舗装板を製造する場合の本願第4実施例の製造方法を行う装置類の斜視図である。
【図12】図11の製造方法で製造されたコンクリート舗装板の上方斜視図である。
【図13】従来の間知ブロックを使用した擁壁構造の概略図である。
【図14】本出願人の既出願にかかる擁壁用ブロックと透水マットの斜視図である。
【図15】図14の擁壁用ブロックと透水マットを使用した擁壁構造の概略図である。
【図16】従来のコンクリート舗装板を使用した舗装構造の斜視図である。
【図17】本出願人の既出願にかかるコンクリート舗装板の下方斜視図である。
【図18】図17のコンクリート舗装板を使用した舗装構造の平面図である。
【図19】図18の舗装構造のXIX−XIX拡大断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1は型枠、2は組枠、3は振動装置、4は押圧装置、5は振動装置、6は生コンクリート、9は透水マット、10は擁壁用ブロック、10Aはコンクリート舗装板、12は背面、12Aは裏面、13,13Aは縦凹溝、14,14Aは横凹溝、21は縦棒状体、22は横棒状体、23は掛止突棒である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート成型品からなるブロック本体(11,11A)の背面(12)又は裏面(12A)に水案内用の凹溝(13,14,13A,14A)を形成した凹溝付きコンクリートブロック(10,10A)の製造方法であって、
上面が開放するコンクリート成型用の型枠(1)と、凹溝形成用の複数本の棒状体(21,22)を間隔をもって一体に組付けた組枠(2)と、型枠(1)を振動させる振動装置(3)とを使用し、
上面側が開放する姿勢で設置した型枠(1)内の所定高さまで生コンクリート(6)を充填し、該生コンクリート(6)の上面に組枠(2)を載せた状態で、型枠(1)を振動装置(3)で振動させて組枠(2)の棒状体(21,22)を生コンクリート(6)の上面部分に凹溝(13)の深さだけ沈み込ませ、生コンクリート(6)が固化した後に組枠(2)を取外すとともに型枠(1)を解体する、
ことを特徴とする凹溝付きコンクリートブロックの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、組枠(2)を上方から押圧する押圧装置(4)を使用し、振動装置(3)の作動中に押圧装置(4)で組枠(2)を上方から押圧しながら行うことを特徴とする凹溝付きコンクリートブロックの製造方法。
【請求項3】
コンクリート成型品からなるブロック本体(11,11A)の背面(12)又は裏面(12A)に上下方向に向く水案内用の凹溝(13,14,13A,14A)を形成した凹溝付きコンクリートブロック(10,10A)の製造方法であって、
上面が開放するコンクリート成型用の型枠(1)と、凹溝形成用の複数本の棒状体(21,22)を間隔をもって一体に組付けた組枠(2)と、組枠(2)を振動させる振動装置(4)とを使用し、
上面側が開放する姿勢で設置した型枠(1)内の所定高さまで生コンクリート(6)を充填し、該生コンクリート(6)の上面に組枠(2)を載せた状態で、組枠(2)を振動装置(5)で振動させて組枠(2)の棒状体(21,22)を生コンクリート(6)の上面部分に凹溝(13)の深さだけ沈み込ませ、生コンクリート(6)が固化した後に組枠(2)を取外すとともに型枠(1)を解体する、
ことを特徴とする凹溝付きコンクリートブロックの製造方法。
【請求項1】
コンクリート成型品からなるブロック本体(11,11A)の背面(12)又は裏面(12A)に水案内用の凹溝(13,14,13A,14A)を形成した凹溝付きコンクリートブロック(10,10A)の製造方法であって、
上面が開放するコンクリート成型用の型枠(1)と、凹溝形成用の複数本の棒状体(21,22)を間隔をもって一体に組付けた組枠(2)と、型枠(1)を振動させる振動装置(3)とを使用し、
上面側が開放する姿勢で設置した型枠(1)内の所定高さまで生コンクリート(6)を充填し、該生コンクリート(6)の上面に組枠(2)を載せた状態で、型枠(1)を振動装置(3)で振動させて組枠(2)の棒状体(21,22)を生コンクリート(6)の上面部分に凹溝(13)の深さだけ沈み込ませ、生コンクリート(6)が固化した後に組枠(2)を取外すとともに型枠(1)を解体する、
ことを特徴とする凹溝付きコンクリートブロックの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、組枠(2)を上方から押圧する押圧装置(4)を使用し、振動装置(3)の作動中に押圧装置(4)で組枠(2)を上方から押圧しながら行うことを特徴とする凹溝付きコンクリートブロックの製造方法。
【請求項3】
コンクリート成型品からなるブロック本体(11,11A)の背面(12)又は裏面(12A)に上下方向に向く水案内用の凹溝(13,14,13A,14A)を形成した凹溝付きコンクリートブロック(10,10A)の製造方法であって、
上面が開放するコンクリート成型用の型枠(1)と、凹溝形成用の複数本の棒状体(21,22)を間隔をもって一体に組付けた組枠(2)と、組枠(2)を振動させる振動装置(4)とを使用し、
上面側が開放する姿勢で設置した型枠(1)内の所定高さまで生コンクリート(6)を充填し、該生コンクリート(6)の上面に組枠(2)を載せた状態で、組枠(2)を振動装置(5)で振動させて組枠(2)の棒状体(21,22)を生コンクリート(6)の上面部分に凹溝(13)の深さだけ沈み込ませ、生コンクリート(6)が固化した後に組枠(2)を取外すとともに型枠(1)を解体する、
ことを特徴とする凹溝付きコンクリートブロックの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−192674(P2006−192674A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5811(P2005−5811)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(502443105)有限会社アスラック (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(502443105)有限会社アスラック (15)
【Fターム(参考)】
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