分割容易な錠剤および分割容易な錠剤の製造方法
【課題】本発明は、分割錠剤等に関し、特に、欠けを生じることなく、容易に且つ精度よく分割でき、耐衝撃性にも優れ、且つ、フィルムコーティング工程時に錠剤同士がツウィンニング等を生じない形状を有する分割錠剤等である。
【解決手段】分割錠剤は、錠剤の上面に中心線に沿って形成された割線と、錠剤の上面に割線により形成される2つの領域の各々に、割線を囲むように且つ錠剤の縁部より内側に位置するように稜線と、錠剤の下面に、錠剤の縁部から中心部に向かって徐々に盛り上がる形状とを設け、且つ、2本の稜線の各々の稜線周辺領域を、凸面形状の曲面で構成している。
【解決手段】分割錠剤は、錠剤の上面に中心線に沿って形成された割線と、錠剤の上面に割線により形成される2つの領域の各々に、割線を囲むように且つ錠剤の縁部より内側に位置するように稜線と、錠剤の下面に、錠剤の縁部から中心部に向かって徐々に盛り上がる形状とを設け、且つ、2本の稜線の各々の稜線周辺領域を、凸面形状の曲面で構成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割容易な錠剤および分割容易な錠剤の製造方法に関し、特に、欠けを生じることなく、容易に且つ精度よく分割でき、対衝撃性にも優れ、且つ、フィルムコーティング工程時に錠剤同士がツウィンニング等を生じない形状を有する分割容易な錠剤および分割容易な錠剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分割錠剤は、服用量に応じて調剤時に薬剤師よって、又は、服用時に患者自身によって、分割される錠剤であり、個々の患者に対する服用量の管理を最適にし、処方の利便性を高めるために開発されている。
このような分割錠剤は、一般に、錠剤を分割するための割線(割溝)が設けられている。
【0003】
図13は、従来の平型分割錠剤を概略的に示す図であり、図13(a)は平面図を、図13(b)は底面図を、又、図13(c)は側面図を、各々、示している。
この平型分割錠剤Teは、上面Saと下面Sbとがともに平面形状を有しており、その上面Saには、中心線に沿って、割線Ldが形成されている。
この分割錠剤Teを2つに分割する際には、その上面Saに割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の各々を、薬剤師や患者等が手指で、直接、つかんで、割線Ldを押し広げるようにして、割線Ldに沿って、分割錠剤Teを分割するようにしている。
しかしながら、図13に示す分割錠剤Teは、2つに分割するのに力が入り、指先の力や感覚の低下した高齢者にとっては、分割錠剤Teを分割するのが難しい、という問題がある。
【0004】
また、図14は、特許文献1に記載の従来のカラテ型分割錠剤を概略的に示す図であり、図14(a)は平面図を、図14(b)は底面図を、又、図14(c)は側面図を、各々、示している。
カラテ型錠剤Tfは、下面Sbが平面形状にされている。また、その上面Saには、中心線に沿って、割線Ldが設けられており、上面Saに割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の各々は、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から、錠剤の周縁方向に、次第に肉厚になるように傾斜するように設けられた平面を有している。
この分割錠剤Tfには、2つに分割する際に、薬剤師や患者等が手指で、2つの領域R1、R2の各々を直接つかんで、割線Ldに沿って分割するという方法の他に、分割錠剤Tfの割線Ldが設けられた上面Saを下にし、下面Sbを上にして、上方より下方に押せば、2つに割ることができるという利点がある。
【0005】
ところで、錠剤には、有効成分として、不快な臭いや味を有する成分や、光等に対する安定性があまり良くない成分が含まれている場合があり、そのような有効成分を含む錠剤は、有効成分の不快な臭いや味をマスクしたり、光等に対する安定性を確保するために、一般に、フィルムコートが施される。
【0006】
しかしながら、従来の分割錠剤Teは、その上面Saと下面Sbとがともに平面で形成されているため、錠剤Te、・・・同士が互いに面接触し易い。このため、錠剤Teの表面にフィルムコートを施すフィルムコーティング工程において、錠剤Te、・・・同士が互いにくっつく現象(いわゆる、ツウィンニング)を生じ易いという問題がある。
同様に、従来の分割錠剤Tfは、その上面Saに割線Ldによって形成される2つの領域R1、R2の各々の面が平面で形成され、且つ、下面Sbが平面で形成されているため、錠剤Tf、・・・同士が互いに面接触し易い。このため、錠剤Tfの表面にフィルムコートを施すと、フィルムコーティング工程において、錠剤Tf、・・・同士が互いにくっつく現象(いわゆる、ツウィンニング)を生じ易いという問題がある。
【0007】
また、従来の分割錠剤Te、Tfに、フィルムコートを施すと、フィルムコートにより錠剤の強度が増強するため、分割時に更に強い力が必要になったり、分割が不均一になり易くなるという問題がある。
フィルムコートを施した場合に、フィルムコーティング工程において、ツウィンニングを生じ難く、且つ、2つに分割し易いようにした分割錠剤としては、例えば、特許文献2に記載の分割錠剤が既に提案されている。
【0008】
図15は、特許文献2に記載の分割錠剤の一例を概略的に示す図であり、図15(a)は平面図を、図15(b)は底面図を、又、図15(c)は側面図を、各々、示している。
この分割錠剤Tgは、その上面Saには、中心線に沿って、割線Ldが設けられており、上面Saに割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の各々は、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から、錠剤の周縁方向に、次第に肉厚になるような傾斜した平面を有しており、且つ、錠剤Tgの下面Sbが、その形状が、中央部Cが縁部Eより盛り上がるような凸面形状とされている。
【0009】
この分割錠剤Tgは、錠剤Tgの下面Sbを、中央部Cが縁部Eより盛り上がるような凸面形状にしているため、錠剤Tg、・・・同士が、互いに、面接触する場合より、点接触する場合の方が多くなる。このため、フィルムコーティングの工程中に、ツウィンニング等が生じ難い。
また、錠剤Tgは、2つに分割する際に、薬剤師や患者等が手指で、2つの領域R1、R2の各々を直接つかんで、割線Ldに沿って分割するという方法の他に、錠剤Tgを、上方より下方に押せば2つに割ることができるという利点がある。
【0010】
また、図16は、特許文献2に記載の分割錠剤の他例を概略的に示す図であり、図16(a)は平面図を、図16(b)は底面図を、又、図16(c)は側面図を、各々、示している。
この分割錠剤(下杵曲型カラテ錠)Thは、その上面Saには、中心線に沿って割線Ldが設けられており、その上面Saに割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の各々は、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から、錠剤Thの周縁E方向に、次第に肉厚になるような凹面形状を有しており、且つ、錠剤Thの下面Sbが、その形状が、中央部Cが縁部Eより盛り上がるような凸面形状とされている。
【0011】
この分割錠剤Thも、分割錠剤Tgと同様に、錠剤Thの下面Sbを、中央部Cが縁部Eより盛り上がるような凸面形状にしているため、錠剤Th、・・・同士が、互いに、面接触するより、点接触し易い構成にしてある。
更に、この分割錠剤Thでは、その上面Saに割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の各々の形状を、凹面形状とすることで、錠剤Thの表面から、平面形状の部分をなくすようにしているので、分割錠剤Tgに比べ、フィルムコーティングの工程中に、更に、ツウィンニングが生じ難い。
また、錠剤Thは、2つに分割する際に、薬剤師や患者等が手指で、2つの領域R1、R2の各々を直接つかんで、割線Ldに沿って分割するという方法の他に、錠剤Thを、上方より下方に押せば2つに割ることができるという利点がある。
【0012】
ところで、錠剤は、保存中に、湿気たり、埃、かび、細菌等に汚染されないようにするため、一般に、プレススルーパック(一般に、PTP包装と言われている。)に収容されている。
図17は、そのようなプレススルーパックの一例を模式的に示す断面図である。
このプレススルーパック101は、収納本体102と、封緘シート103とを備える。
収納本体102は、一般に、ポリ塩化ビニルやポリプロピレンや環状ポリオレフィン等の合成樹脂によって製されており、板状部102a、・・・、102aによって連結され、通常、錠剤T、・・・、Tの形状に応じて形成された複数の収納凹所102b、・・・、102bを有した形状となっている。
また、封緘シート103は、アルミニウム箔等で製される基材105と、基材105の片側表面上に設けられた接着剤層104とを備える。
そして、プレススルーパック101は、収納凹所102b、・・・、102bの各々内に、錠剤T、・・・、Tを収納させた状態で、封緘シート103の接着剤層104と収納本体102の板状部102a、・・・、102aの各々とが接着されて、収納本体102が封緘シート103により密封されて構成されている。
【0013】
このようなプレススルーパック101は、収納本体102の収納凹所102b、・・・、102bの外側となる凸部102c、・・・、102cの各々を押圧すれは、収納凹所102b、・・・、102bの各々を密封している封緘シート103の部分r1、・・・、r1が、収納凹所102b、・・・、102bの各々に収容された錠剤T、・・・、Tの各々によって、破断して、プレススルーパック101から錠剤T、・・・、Tを一個ずつ取り出すことができるようになっている。
このようなプレススルーパック101に、分割錠剤Te、Tfを収納されている場合には、一般に、収納凹所102b、・・・、102bの各々に収容された分割錠剤Te、Tfによって、破断して、プレススルーパック101から分割錠剤Te、Tfを一個ずつ取り出し、その後、必要により、分割錠剤Te、Tfを、薬剤師または患者が手指で、2つに分割している。
また、特許文献2によれば、プレススルーパック101に、分割錠剤Tg、Thを収納した場合には、プレススルーパック101から、分割錠剤Tg、Thを取り出す前にも、分割錠剤Tg、Thを2つに分割できる、との記載がある。
【0014】
このように、分割錠剤Tg、Thを、プレススルーパック101から取り出す前に、2つに分割できるようにすれば、分割錠剤Tg、Thを2つに分割する際に、分割錠剤Tg、Thを手指でつかむ必要がなくなる。これにより、分割錠剤Tg、Thを2つに分割する際に、手指により錠剤Tg、Thが汚染されるといった事態が生じない。
しかしながら、分割錠剤Tg、Thは、上方から下方に縦方向に力を加えて分割しようとした場合には、2つに分割し難いという問題や、打錠工程やコーティング工程において、不良品が発生し易いという問題を十分に解決できているとは言えず、更に、分割錠剤Tg、Thは、ある場所からある場所に空気輸送したり、プレススルーパック101や瓶詰めにして搬送した場合に、搬送中に、欠けが生じ易い、という問題がある。
【0015】
例えば、分割錠剤Tgを上方から下方に縦方向に力を加えて分割しようとした場合(図18(a)を参照)には、図18(b)に示すように、錠剤Tgの上面Saのエッジ部Peが、尖がっているため、この尖がったエッジ部Peに力が集中し、エッジ部Peが押し潰れたり欠ける場合がある。
また、分割錠剤Tgでは、打錠工程において、尖がったエッジ部Peにおいて、キャッピングを生じ易いという問題がある。
また、錠剤Tgの上面Saに割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の各々が平面であるために、ある錠剤Tgの領域R1とある錠剤Tgの領域R1と互いに接触したり、ある錠剤Tgの領域R1とある錠剤Tgの領域R2と互いに接触したり、また、ある錠剤Tgの領域R2とある錠剤Tgの領域R2と互いに接触したりする関係になると、錠剤Tgと錠剤Tgとが面接触する関係になると、この場合には、錠剤Tg、・・・同士が、面接触したしまうため、コーティング工程において、ツウィンニングが生じるという問題が、尚、解決されない。
また、錠剤Tgの上面Saのエッジ部Peが、尖がっているため、コーティング工程において、錠剤Tg、・・・が互いに衝突することで、コアエロージョン(素錠の摩損する現象)や、エッジチッピング(縁部分の欠ける現象)等を生じ易い。
また、錠剤Tg、・・・を、ある場所からある場所に空気輸送すると、空気輸送する際に、錠剤Tg、・・・同士が互いに衝突したり、錠剤Tg、・・・が輸送管に衝突したりすることで、錠剤Tgの上面Saのエッジ部Peが、欠けてしまうといった問題や、また、プレススルーパック101にして搬送すると、搬送中に生じる振動等により、錠剤Tgの上面Saのエッジ部Peが、収納本体102や封緘シート103に衝突し、欠けを生じたり、また、封緘シート103がエッジ部Peにより破断してしまう、といった問題がある。
また、瓶詰めにした場合には、搬送中に生じる振動等により、錠剤Tg、・・・同士が衝突したり、錠剤Tg、・・・が瓶に衝突したりして、エッジ部Peが、欠けてしまうといったような問題がある。
【0016】
更には、錠剤Tgをプレススルーパック101に収容した場合、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102b内に、錠剤Tgが、封緘シート103の方に、錠剤Tgの割線Ldが設けられた側の上面Saが向いている場合(図19(a)中の右側の収納凹所102b内に収容されている錠剤Tgを参照)には、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102bとなる凸部102cを、指で押したときには、錠剤Tgの下面Sbの凸形状の中央部を指で押すことにより、錠剤Tgを容易に2つに分割することができる(図19(b)中の右側の収納凹所102b内に収容されている錠剤Tgを参照)ものの、これとは逆に、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102b内に、錠剤Tgが、収納本体102の方に、錠剤Tgの割線Ldが設けられた側の上面Saが向いている場合(図19(a)中の左側の収納凹所102b内に収容されている錠剤Tgを参照)には、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102bとなる凸部102cを指で押すと、収容凹所102bがV字状にへこみ、収容凹所102bの内部に存在する錠剤Tgは、その上面Saの割線Ldと2つの領域R1、R2で形成される凹所に指が入り込むため、指に相当の力を入れなければ、錠剤Tgが2つに分割できないという問題がある。
【0017】
このため、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102bから錠剤Tgを取り出す前に、錠剤Tgを容易に2つに分割できるようにするためには、図19(a)中の右側に示すように、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102b、・・・の各々に収容する錠剤Tg、・・・の全てが、封緘シート103の方に、錠剤Tgの割線Ldが設けられた側の上面Saが向くように方向規制しなければならないが、このように錠剤Tg、・・・の全ての向きをある方向に方向規制して、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102b、・・・の各々に収容するには、実現するのが極めて難しいという問題がある。
【0018】
また、仮に、そのような方向規制をして、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102b、・・・の各々に、全ての錠剤Tg、・・・を収容できたとしても、錠剤Tg、・・・の各々を、封緘シート103の方に、錠剤Tgの割線Ldが設けられた側の上面Saが向くようにして、収納凹所102b、・・・の各々に収容した場合には、尖がったエッジ部Peが封緘シート103の方向に向き合うため、尖がったエッジ部Peにより、封緘シート103が、指等で押さなくても、勝手に、破断し易い。
また、分割錠剤Thも、分割錠剤Tgと同様、上方から下方に縦方向に力を加えて分割しようとした場合(図20(a)を参照)には、錠剤Thの上面Saのエッジ部Peが、尖がっているため、この尖がったエッジ部Peに力が集中し、エッジ部Peが押し潰れたり欠けたり等して、2つに分割し難いという問題(図20(b)を参照)や、打錠工程において、尖がったエッジ部Peにおいて、キャッピングが、生じ易いという問題がある。
また、錠剤Thの上面Saのエッジ部Peが、尖がっているため、分割錠剤Tgと同様、コーティング工程において、錠剤Th、・・・が互いに衝突することて、コアエロージョン(素錠の摩損する現象)や、エッジチッピング(縁部分の欠ける現象)等を生じ易い。
【0019】
更にまた、錠剤Th、・・・を、ある場所からある場所に空気輸送すると、搬送中に、錠剤Th、・・・同士が衝突したり、錠剤Th、・・・が輸送管に衝突したりして、錠剤Thの上面Saのエッジ部Peに、欠けを生じたり、プレススルーパック101にして搬送すると、搬送中に生じる振動等により、錠剤Thの上面Saのエッジ部Peが、収納本体102や封緘シート103に衝突し、欠けを生じたり、また、封緘シート103がエッジ部Peにより破断してしまう、といった問題や、また、瓶詰めにした場合には、搬送中に生じる振動等により、錠剤Th、・・・同士が衝突したり、錠剤Th、・・・が瓶に衝突したりして、エッジ部Peが、欠けてしまうといったような問題がある。
【0020】
更には、錠剤Thをプレススルーパック101に収容した場合、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102b内に、錠剤Thが、封緘シート103の方に、錠剤Tgの割線Ldが設けられた側の上面Saが向いている場合(図21(a)中の右側の収納凹所102b内に収容されている錠剤Thを参照)には、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102bとなる凸部102cを、指で押したときには、錠剤Thの下面Sbの凸形状の中央部を指で押すことにより、錠剤Thを容易に2つに分割することができる(図21(b)中の右側の収納凹所102b内に収容されている錠剤Thを参照)ものの、これとは逆に、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102b内に、錠剤Tgが、収納本体102の方に、錠剤Thの割線Ldが設けられた側の上面Saが向いている場合(図21(a)中の左側の収納凹所102b内に収容されている錠剤Thを参照)には、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102bとなる凸部102cを指で押すと、収容凹所102bがV字状にへこみ、収容凹所102bの内部に存在する錠剤Thは、その上面Saの割線Ldと2つの領域R1、R2で形成される凹所に指が入り込むため、指に相当の力を入れなければ、錠剤Thが2つに分割できないという問題がある。
【0021】
また、錠剤Thの場合には、上面Saに割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の各々が凹面にしているので、分割錠剤Tgのように、錠剤同士が互いに面接触するということが無いため、コーティング工程において、分割錠剤Tgに比べ、ツウィンニングが生じ難いものの、錠剤Thの上面Saの割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の各々が凹面とされているため、割線Ldにおいて分割がされない場合、2つの領域R1、R2のいずれかの割線Ldの近傍において、錠剤Thが2つに割れてしまう、という現象を生じ易い(図20(b)の割目R11を参照)。
更には、プレススルーパックに収納された分割錠剤を、プレススルーパックに収納した状態のまま分割した場合、従来のプレススルーパックシートは、錠剤を1つずつ取り出すことを前提に作製されているため、2つに分割された錠剤を、収納凹所102b、・・・の各々からいちいち取り出さなければならず、プレススルーパックから2つに分割された錠剤を取り出す作業が煩わしいという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開昭61-289027号公報
【特許文献2】特開平8-53345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、以上のような問題を解決するためになされたものであって、錠剤の上面または下面に対して方向規制をしなくとも、容易かつ精度よく2分割できるとともに、製造時、空気輸送時及び/又は搬送時に、錠剤に欠けを生じ難く、且つ、フィルムコーティングした場合にも、ツウィンニング等の問題を生じないようにした、分割容易な錠剤および分割容易な錠剤の製造方法を提供することを目的としている。
更に、本発明は、薬剤師や患者等が、一度に分割錠剤を手指で触れることなく、簡便に分割できるようにした分割容易な錠剤および分割容易な錠剤の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明における錠剤は、例えば、下記の(1)〜(8)の錠剤があげられる。
(1) 錠剤の上面に中心線に沿って形成された割線と、
前記錠剤の上面に前記割線により形成される2つの領域の各々に、前記割線を囲むように且つ錠剤の縁部より内側に位置するように稜線と、
前記錠剤の下面に、前記錠剤の縁部から中心部に向かって徐々に盛り上がる形状とを設け、且つ、
前記2本の稜線の各々の稜線周辺領域を、凸面形状の曲面で構成した、分割錠剤。
(2) 前記錠剤の上面に前記割線により形成される2つの領域の各々の、前記割線の起端となる線の各々から前記2つの稜線の各々迄の面の形状が、凸面形状の曲面で構成されている、前記(1)に記載の分割錠剤。
(3) 前記割線が、前記錠剤の縁部の上面より、深い溝で形成されていることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載の分割錠剤。
(4) 前記割線が、V溝又はU溝であることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の分割錠剤。
(5) 前記割線の起端となる線の各々が、前記錠剤の縁部の上面より上方の位置に設けられていることを特徴とする、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の分割錠剤。
(6) 前記錠剤の上面の2つの稜線の各々から前記錠剤の縁部までの形状が、急な斜面であることを特徴とする、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の分割錠剤。
(7) 前記急な斜面が、断面視した場合、直線または凸面形状の曲線であることを特徴とする、前記(6)に記載の分割錠剤。
(8) 前記割線が、前記錠剤の縁部との交点の近傍領域の各々が、前記割線を挟むようにして形成された2つの凸面形状に面取りされていることを特徴とする、前記(1)〜(7)のいずれかに記載の分割錠剤。
【0025】
前記(1)に記載の分割錠剤は、錠剤の上面に中心線に沿って形成された割線と、錠剤の上面に割線により形成される2つの領域の各々に、割線を囲むように且つ錠剤の縁部より内側に位置するように稜線と、錠剤の下面に、錠剤の縁部から中心部に向かって徐々に盛り上がる形状とを設け、且つ、2本の稜線の各々の稜線周辺領域の各々を、凸面形状の曲面で構成した。
この分割錠剤では、錠剤の上面に割線により形成される2つの領域の各々に稜線を形成する際に、2本の稜線の各々の稜線周辺領域を、凸面形状の曲面で構成し、錠剤の上面から尖ったエッジ部を無くすようにしているので、錠剤の上方から下方に力を加えた場合に、錠剤に欠けを生じることなく、割線に沿って、きれいに分割できる。且つ、打錠工程、空気輸送時や、プレススルーパックや瓶詰めにして搬送する際に、錠剤の欠けが生じ難い。
【0026】
また、錠剤の上面から尖ったエッジ部を無くすようにしているので、コーティングの工程において、コアエロージョンや、エッジチッピング等を生じ難い。
また、錠剤の上面から尖ったエッジ部を無くすようにしているので、プレススルーパックの収納凹所に錠剤を収容した場合に、錠剤により、手指等で押さなくても、勝手に、封緘シートが破断するといった事態が生じ難い。
【0027】
前記(2)に記載の分割錠剤は、前記(1)に記載の分割錠剤の、錠剤の上面に割線により形成される2つの領域の各々の、割線の起端となる線の各々から2つの稜線の各々迄の面の形状が、凸面形状の曲面で構成されている。
ここで、2つの領域の各々の、割線の起端となる線の各々から2つの稜線の各々迄の面の形状の、「凸面形状の曲面」は、ゆるやかな隆起曲面となっている。
より具体的に説明すると、2つの領域の各々の表面は、割線の起端となる線から稜線方向に、曲率の小さい面から、次第に、曲率の大きい面になるように曲率が連続的に変化することで、全体として、ゆるやかな隆起曲面となっている。
【0028】
この分割錠剤では、錠剤の下面に、錠剤の縁部から中心部に向かって徐々に盛り上がる形状を設けているので、プレススルーパックの収納本体の収納凹所内に、封緘シートの方に、錠剤の割線が設けられた側の上面が向いている場合には、プレススルーパックの収納本体の収納凹所となる凸部を、指で押したときには、錠剤の下面の凸形状の中央部を指で押すことにより、錠剤を容易に2つに分割することができる。
且つ、割線の起端となる線の各々から2つの稜線の各々迄の面の形状を凸面形状の曲面で構成しているので、プレススルーパックの収納凹所に、錠剤の割線が設けられた側が、収納本体の方を向くように収容された場合でも、プレススルーパックの収納凹所の凸部を指で押したときには、側面視した場合、概ねV字形状に押しつぶされる収納凹所や指の形状に、錠剤の上面の割線により形成される2つの領域の各々が対向する曲面を持っているため、指に力を入れなくても、割線を開く方向に、錠剤に力が働く。これにより、プレススルーパックの収納凹所に、錠剤の割線が設けられた側が、収納本体の方を向くように収容された場合でも、錠剤を容易に2つに分割することができる。
【0029】
このように、この分割錠剤では、プレススルーパックの収納本体の収納凹所内に、錠剤を方向規制することなく収容した場合にも、プレススルーパックから錠剤を取り出す前に、2つに分割することができる。
また、この分割錠剤は、上面に2つの凸形状の面と、下面に凸形状の面とを有しているので、錠剤同士が面接触せず、点接触する。これにより、コーティングの工程において、ツウィンニングを生じ難い。
【0030】
前記(3)に記載の分割錠剤は、前記(1)又は(2)に記載の分割錠剤の、割線が、錠剤の縁部の上面より、深い溝で形成されていることを特徴とする。
ここに、本発明で用いる用語「深い溝」は、錠剤の上面の縁部より、その最深部が、下に位置する溝を意味する。
より特定的には、錠剤の底面の頂点から割線の最深部までの垂直方向の距離が、錠剤の底面の頂点から錠剤の縁部の上面までの垂直方向の距離に比べて、短い関係にあることを意味する。
この分割錠剤では、錠剤の割線を、通常の分割錠剤の割線に比べて、深く形成していているので、割線に沿って、きれいに分割できる。
【0031】
前記(4)に記載の分割錠剤は、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の分割錠剤の、割線がV溝又はU溝であることを特徴とする。
ここで、本明細書で用いる用語「V溝」は、V溝と概ねV溝である場合とを意味する。また、「概ねV溝」は、例えば、V溝の頂角の近傍が丸く曲線で形成されているような形状や、放物線(2次曲線)の頂点周辺のような形状や、V溝の頂角の近傍の丸い曲線部分が、屈曲部を有する多角形状にされている場合等を含む。
また、本明細書で用いる用語「U溝」は、U溝と概ねU溝である場合とを意味する。また、「概ねU溝」は、例えば、U溝の丸い曲線部分が、屈曲部を有する多角形状にされている場合等を含む。
この分割錠剤では、割線を形成する面の形状を、平面又は凹面とし、割線の起端となる線から、稜線の各々までの2つの領域の各々の凸面形状と異なる形状にしている。
割線は、V溝又はU溝であるので、割線の最深部から割線の起端となる線の各々までの錠剤の厚さは、V溝の場合には、概ね一様に次第に厚くなり、U溝の場合には、割線領域内において、割線の最深部から割線の起端となる線の各々までゆるやかに厚くなり、割線の起端となる線の各々の近傍において急激に厚くなる。
【0032】
一方、割線の起端となる線の各々から稜線の各々までの2つの領域の各々迄の面は凸面形状とされているので、割線の起端となる線から稜線の各々の方向の、起端となる線の近傍の各々の位置においては、錠剤の厚さが急激に厚くなる。
このように、この分割錠剤では、割線領域内に於ける、錠剤の厚さの変化と、割線の起端となる線から稜線の各々の方向の、起端となる線の近傍の各々の位置に於ける錠剤の厚さの変化をとを著しく異ならせるとともに、割線の起端となる線から稜線の各々の方向の、起端となる線の近傍の各々の位置に於ける錠剤の厚さを急激に厚くなるようにし、単位体積当りに錠剤の外部から働く力が、割線領域内において大きく、且つ、割線の起端となる線から稜線の各々の方向の、起端となる線の近傍の各々の位置において、割線領域内の単位体積当りに錠剤の外部から働く力に比べ、小さくなるようにしているので、この錠剤は、2つに分割すると、割線に従ってきれいに分割できる。
【0033】
前記(5)に記載の分割錠剤は、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の分割錠剤の、割線の起端となる線部の各々が、錠剤の縁部の上面より上方の位置に設けられていることを特徴とする。
ここに、「割線の起端となる線」は、割線の起端となる2本の線を意味する。
また、「錠剤の縁部の上面より上方の位置」は、より特定的には、割線の起端となる線の各々から2つの稜線の各々迄の2つの面の各々の表面上の位置を意味する。
分割錠剤は、割線を大きく(割線の深さを深く)すれば、2つに分割し易くなるものの、割線を大きく(割線の深さを深く)する際に、錠剤の上面から錠剤に縦方向に深く割線を形成すると、割線が設けられた領域において、錠剤の機械的強度が弱くなり、分割することを意図していないにもかかわらず、錠剤が、勝手に、2つに分割されてしまい易くなるという問題がある。
【0034】
この分割錠剤では、割線の起端となる線を錠剤の上面に形成するのではなく、錠剤の縁部の上面より上方の位置に設けているので、錠剤の上面から錠剤に縦方向に深く割線を形成することなく、割線を大きく(割線の深さを深く)することができる。
これにより、錠剤の上面から錠剤に縦方向に深く割線を形成した場合のように、割線が設けられた領域において、錠剤の機械的強度が弱くすることなく、割線を大きく(割線の深さを深く)することができるので、2つに分割し易く、且つ、分割することを意図していない場合に、錠剤が、勝手に、2つに分割されてしまうことのない、分割錠剤を得ることができる。
【0035】
前記(6)に記載の分割錠剤は、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の分割錠剤の、錠剤の上面の2つの稜線の各々から錠剤の縁部からまでの形状が、急な斜面であることを特徴とする。
この分割錠剤では、錠剤の上面の2つの稜線の各々から錠剤の縁部からまでの形状を、急な斜面にし、錠剤の上面の割線の起端となる線から稜線までの形状を、2つの稜線の各々から錠剤の縁部からまでの形状に比べ、緩やかな隆起曲線にしているので、錠剤に上から下方向に力を加えた場合、割線を開く方向に力が加わり易い。これにより、小さな力で、割線に沿って、きれいに分割することができる。
【0036】
前記(7)に記載の分割錠剤は、前記(6)に記載の分割錠剤の、急な斜面が、断面視した場合、直線または凸面形状の曲線であることを特徴とする。
この分割錠剤では、錠剤の上面に形成する2つの稜線の近傍が、尖ったエッジ部にならず、凸面形状の曲面で構成され、且つ、錠剤に上から下方向に力を加えた場合に、割線を開く方向に力が加わり易いようにするために、錠剤の上面の割線の起端となる線から稜線までの形状を、緩やかな隆起曲線にできる限り、錠剤の上面の稜線から錠剤の縁部までの形状を急な斜面の形状は、断面視した場合に、凹面でなければ、直線または凸面形状の曲線であってもよい。
【0037】
したがって、錠剤の上面の稜線から錠剤の縁部までの形状を急な斜面の形状を、直線または凸面形状の曲線にするかは、錠剤のデザイン面から決定すればよい。
従って、分割錠剤の薬効、効能、効果等に基づいて、錠剤の形状を、医師、薬剤師、患者等に、印象付けることができるように、錠剤の形状を作製することができる。
【0038】
前記(8)に記載の分割錠剤は、前記(1)〜(7)のいずれかに記載の分割錠剤の、割線が、錠剤の縁部との交点の近傍領域の各々が、割線を挟むようにして形成された2つの凸面形状に面取りされていることを特徴とする。
この分割錠剤では、錠剤の縁部と交わる交点の近傍領域の各々が、割線を挟むようにして形成された2つの凸面形状に面取りされているので、更に、錠剤に欠けが生じ難い。
尚、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の分割錠剤は、素錠(裸錠)であっても、表面に、フィルムコートや糖衣等の適当な剤皮が施されたものであってもよい。
【0039】
また、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の分割錠剤は、有効成分の他に、賦形剤、結合剤、崩壊剤、場合によっては滑沢剤などを含んでいてよい。更には、必要により、甘味剤、着色剤、香味剤、抗酸化剤などが添加されて製剤化されていてもよい。
このような分割錠剤は、例えば、圧縮成形法によって製造することができる。
圧縮成形法としては、混合粉体を直接打錠してもよく、粉体を乾式や湿式で所定の粒径・粒度分布を有する造粒物を造粒し、乾燥工程、整粒工程を経て、顆粒剤や細粒剤とし、これに、少量の滑沢剤を混合し、その後、圧縮成形して錠剤としてもよい。
【0040】
前記(1)〜(8)のいずれかに記載の分割錠剤は、いずれも、尖った部分を有していないので、打錠工程において、スティッキングやラミネーティングやキャッピング等が生じ難いので、単発式のエキセントリック型打錠機のみならず、ロータリー型打錠機を用いて連続打錠により製造することができる。
【0041】
尚、滑沢剤は、有効成分、賦形剤等中に、予め、添加しておき、有効成分、賦形剤等と滑沢剤との混練物を打錠するようにしてもよく(このような錠剤の製造方法は、内部滑沢法と称される)、また、有効成分、賦形剤等中には添加せずに、杵や臼の表面に滑沢剤を噴霧して、表面に滑沢剤層を有する杵や臼を用いて、有効成分、賦形剤等の混練物を打錠するようにしてもよい(このような錠剤の製造方法は、外部滑沢法と称される)。
また、コーティング法としては、慣用のコーティング法であれば、種々のコーティング法を用いることができ、例えば、パン(あるいはドラム)コーティング法や流動コーティング法等を用いることができる。
尚、このようなコーティングの膜圧は、特に限定されることはないが、10μm以上50μm以下になるようにするのが好ましい。
【0042】
また、賦形剤としては、種々のものを用いることができ、特に限定されることはなく、例えば、乳糖、マンニトール、ショ糖、ブドウ糖などの糖類や、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン、部分α化デンプンなどのデンプン類、あるいは、沈降炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、塩化ナトリウムなどの無機塩類や結晶セルロースなどの公知のものであれば、何でも用いることができる。
尚、賦形剤は、一般に、一錠中、10重量部以上95重量部以下の範囲で含まれる。
【0043】
また、結合剤としては、種々のものを用いることができ、特に限定されることはなく、例えば、部分けん化ポリピニルアルコール、ヒドロキシプロセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセツロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、メチルセルロース、アラビアゴム、デンプン類などの公知のものであれば、何でも用いることができる。
尚、結合剤は、一般に、一錠中、0.5重量部以上5重量部以下の範囲で含まれる。
【0044】
また、崩壊剤としては、種々のものを用いることができ、特に限定されることはなく、例えば、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分アルファ化デンプンヒドロキシプロピルスターチなどの公知のものであれば、何でも用いることができるが、好ましくは、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウムである。
尚、崩壊剤は、一錠中、1重量部以上15重量部以下の範囲で含まれる。
【0045】
打錠する際に用いられる滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、滑石、水素添加植物油、タルクなどがあげられるが、好ましくはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムである。
尚、滑沢剤は、一般に、一錠中、0.01重量部以上5重量部以下の範囲で含まれる。
【0046】
本発明におけるプレススルーパックは、例えば、板状部によって連結された複数の収納凹所を有する収納本体と、基材と、基材の片側表面上に設けられた接着剤層とを有する封緘シートとを備え、収納本体の複数の収納凹所の各々に、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の分割錠剤を収容させた状態で、封緘シートの接着剤層と収納本体の板状部とが接着されて、収納本体が封緘シートにより密封されており、封緘シートは、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の分割錠剤を収容した収納凹所の外部となる凸部を指で押したときには、封緘シートの接着剤層と収納本体の板状部との接着部において、浮きや剥がれを生じることなく、収納凹所を密封している封緘シートの部分を破断させて、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の分割錠剤を取り出すことができ、且つ、収納本体から容易に剥離できるように収納本体の板状部に接着されている。
【0047】
ここに、「収納本体から容易に剥離できるように収納本体の板状部に接着されている。」は、より詳しく説明すると、プレススルーパックの封緘シートの一部をめくり上げたときに、封緘シートが容易に、且つ、破断することなく、収納本体の板状部から剥離できるように接着されていることを意味する。
また、このプレススルーパックでは、収納本体の収納凹所のいずれかに、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の分割錠剤が、1以上収納されていればよい。
また、収納本体の収納凹所のいずれかに収容される分割錠剤は、収納凹所内に、分割錠剤の割線が設けられた表面が、収納本体側を向くように収納されていてもよく、分割錠剤の割線が設けられた表面に対向する表面が収納本体側を向くように収納されていてもよく、更には、分割錠剤の割線が設けられた表面が、収納本体側を向くように収納されたものと、分割錠剤の割線が設けられた表面に対向する表面が収納本体側を向くように収納されたものとの両者が、任意に混在するように収納本体の収納凹所の各々に収納されていてもよい。
【0048】
また、このプレススルーパックの封緘シートと収納本体の板状部との接着強度が、T剥離試験を剥離速度200mm/分で行った場合には、0.9N/15mm幅以上3.1N/15mm幅以下であることが好ましく、1.9N/15mm幅以上2.7N/15mm以下であることが、更に好ましい。
また、T剥離試験を剥離速度100mmで行った場合には、4.2N/15mm幅以上7.0N/15mm以下であることが好ましく、は、4.8N/15mm以上6.5N/15mm幅以下であることが、更に好ましい。
ここに、本明細書で用いる単位「N/15mm幅」は、収納本体と封緘シートとを接着し、その後、収納本体と封緘シートとの接着部を15mm幅に切断し、これをテスト用試料として、T剥離試験をしたときの剥離強さを意味する。
【0049】
又、本明細書で用いる用語「T剥離試験」は、JIS K6845に準じた試験を意味する。
上記範囲内であれば、収納本体の分割錠剤を収納した収納凹所の外面となる凸部を、封緘シート方向へ、指で押し出して、封緘シートの収納凹所を密封している部分を破断して分割錠剤を取り出す際に、封緘シートの分割錠剤が取り出された収納凹所(いわゆる、ポケット)の領域の外側の封緘シートの接着剤層と収納本体の板状部との接着部において、収納本体と封緘シートとの間に、剥がれや浮きが生じず、且つ、封緘シートを剥してめくり上げたときには、封緘シートに破断を生じることなく、収納本体から封緘シートを引き剥がすことができる。
【0050】
これに対し、上記範囲未満では、封緘シートを剥してめくり上げたときには、封緘シートに破断を生じることなく、収納本体から封緘シートを引き剥がすことができるものの、収納本体の分割錠剤を収納した収納凹所の外面となる凸部を、封緘シート方向へ、指で押し出して、封緘シートを破断して分割錠剤を取り出す際に、封緘シートの分割錠剤が取り出された収納凹所の領域の外側の封緘シートの接着剤層と収納本体の板状部との接着部において、収納本体と封緘シートとの間に剥がれや浮きが生じ、好ましくない。
【0051】
また、上記範囲を超えると、収納本体の分割錠剤を収納した収納凹所の外面となる凸部を、封緘シート方向へ、指で押し出して、封緘シートを破断して分割錠剤を取り出す際に、分割錠剤が取り出された収納凹所の外側の封緘シートの接着剤層と収納本体の板状部との接着部において、封緘シートの収納本体と封緘シートとの間に、剥がれや浮きが生じないものの、封緘シートを剥してめくり上げ、収納本体から封緘シートを引き剥がすことが困難であり、これを無理に引き剥そうとすると、封緘シートの一部が破断して好ましくない。
【0052】
ここで、「接着成分」は、通常の、ヒートシールやコールドシールに用いられる接着剤を意味する。
また、「接着力低下成分」は、接着成分の接着力を弱める作用を有する成分を意味し、接着力の弱い接着剤や、通常、離型剤、充填剤等として用いられるものを意味し、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の離型剤等として用いられる樹脂を挙げることができる。また、収納本体がポリ塩化ビニルで製されている場合は、接着力低下成分として、アクリル樹脂を挙げることができる。
また、充填剤としては、酸化珪素、珪酸マグネシウム、二酸化チタン、亜鉛華、炭酸カルシウム、アルミナ、タルク等の微粉末を挙げることができる。
【0053】
このプレススルーパックでは、接着成分に適当量の接着低下成分を配合することで、接着剤の接着力を、収納本体の分割錠剤を収納した収納凹所の外面となる凸部を、封緘シート方向へ、指で押して、封緘シートの一部を破断して、固形物を取り出す際に、封緘シートに、固形物が取り出された収納凹所(いわゆる、ポケット)の領域の外側の部分において、封緘シートの収納本体と封緘シートとの間に剥がれや浮きが生じず、且つ、封緘シートの一部を収納本体から剥してめくり上げたときには、封緘シートに破断を生じることなく、収納本体から封緘シートを引き剥がすことができる接着力に調整している。
【0054】
本発明におけるプレススルーパックは、封緘シートの接着剤層が、封緘シートの片側の表面上に、部分塗工されていてもよい。
「部分塗工」の方法としては、種々の方法が考えられるが、収納本体の収納凹所の各々内に収容される分割錠剤を完全に密封することができる限り、封緘シートの収納本体に対向する側の表面に、接着剤を、編目状、線状等のいずれに塗工してもよく、又は、これらの少なくとも2種を組み合わせて塗工してもよい。
【0055】
このプレススルーパックは、接着剤を部分塗工することで、接着剤の接着力を、分割錠剤を収納した収納凹所の外面となる凸部を、指で押して、封緘シートの一部を破断して固形物を取り出す際に、いわゆる、ポケットの外側において、収納本体と封緘シートとの剥がれや浮きが生じず、且つ、封緘シートの一部を収納本体から剥してめくり上げたときには、封緘シートに破断を生じることなく、収納本体から封緘シートを引き剥がすことができるように調整している。
したがって、このプレススルーパックは、分割錠剤を一つずつ、収納凹所から取り出したり、収納本体から封緘シートを引き剥がすことで、このプレススルーパックに収容されている分割錠剤を一度に取り出すこともできる。
【0056】
更には、プレススルーパックの収納凹所の各々に、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の分割錠剤を収容するようにしているので、分割錠剤の方向規制をすることなく、収納凹所の各々に分割錠剤を収容した場合にも、分割錠剤を収容した収納凹所の外部となる凸部を指で押すことで、収納凹所から分割錠剤を取り出す前に、容易且つ簡単に分割錠剤を2つに分割することができる。
したがって、収納凹所から分割錠剤を取り出す前に、容易且つ簡単に分割錠剤を2つに分割してから、2つに分割された錠剤を収納凹所から取り出すようにすることもできる。
更には、プレススルーパックの収納凹所の各々に収容されている分割錠剤を、収納凹所から分割錠剤を取り出す前に、容易且つ簡単に分割錠剤を2つに分割し、その後、収納本体から封緘シートを引き剥がすことで、このプレススルーパックに収容されている2つに分割された錠剤を一度に取り出すこともできる。
【発明の効果】
【0057】
前記(1)に記載の分割錠剤では、錠剤の上面に割線により形成される2つの領域の各々に稜線を形成する際に、2本の稜線周辺領域の各々を、凸面形状の曲面で構成し、錠剤の上面から尖ったエッジ部を無くすようにしているので、錠剤の上方から下方に力を加えた場合に、錠剤に欠けを生じることなく、割線に沿って、きれいに分割できる。且つ、打錠工程、空気輸送時や、プレススルーパックや瓶詰めにして搬送する際に、錠剤の欠けを生じ難い。
また、錠剤の上面から尖ったエッジ部を無くすようにしているので、コーティングの工程において、コアエロージョンや、エッジチッピング等を生じ難い。
また、錠剤の上面から尖ったエッジ部を無くすようにしているので、プレススルーパックの収納凹所に錠剤を収容した場合に、錠剤により、勝手に封緘シートが破断するといった事態が生じ難い。
【0058】
前記(2)に記載の分割錠剤では、錠剤の下面に、錠剤の縁部から中心部に向かって徐々に盛り上がる形状を設けているので、プレススルーパックの収納本体の収納凹所内に、封緘シートの方に、錠剤の割線が設けられた側の上面が向いている場合には、プレススルーパックの収納本体の収納凹所となる凸部を、指で押したときには、錠剤の下面の凸形状の中央部を指で押すことにより、錠剤を容易に2つに分割することができる。
且つ、割線の起端となる線から2つの稜線の各々迄の面の形状を凸面形状の曲面で構成しているので、プレススルーパックの収納凹所に、錠剤の割線が設けられた側が、収納本体の方を向くように収容された場合でも、プレススルーパックの収納凹所の凸部を指で押したときには、側面視した場合、概ねV字形状に押しつぶされる収納凹所や指の形状に、錠剤の上面の割線により形成される2つの領域の各々が対向する曲面を持っているため、従来の分割錠剤に比べ、指に力を入れなくても、割線を開く方向に、錠剤に力が働く。これにより、プレススルーパックの収納凹所に、錠剤の割線が設けられた側が、収納本体の方を向くように収容された場合でも、錠剤を容易に2つに分割することができる。
【0059】
このように、この分割錠剤では、プレススルーパックの収納本体の収納凹所内に、錠剤を方向規制することなく収容した場合にも、プレススルーパックから錠剤を取り出す前に、2つに分割することができる。これにより、プレススルーパックの収納凹所から分割錠剤を取り出す前に、収納凹所に収容されている分割錠剤を容易に2つに分割することができるプレススルーパックを実現できる。
また、この分割錠剤は、上面に2つの凸形状の面と、下面に凸形状の面とを有しているので、錠剤同士が面接触せず、点接触する。これにより、コーティングの工程において、ツウィンニングを生じ難い。
【0060】
前記(3)に記載の分割錠剤では、錠剤の割線を、通常の分割錠剤の割線に比べて、深く形成していているので、割線に沿って、きれいに分割できる。
【0061】
前記(4)に記載の分割錠剤では、割線領域内に於ける、錠剤の厚さの変化と、割線の起端となる線から稜線の各々の方向の、起端となる線の近傍の各々の位置に於ける錠剤の厚さの変化をとを著しく異ならせるとともに、割線の起端となる線から稜線の各々の方向の、起端となる線の近傍の各々の位置に於ける錠剤の厚さを急激に厚くなるようにし、単位体積当りに錠剤の外部から働く力が、割線領域内において大きく、且つ、割線の起端となる線から稜線の各々の方向の、起端となる線の近傍の各々の位置において、割線領域内の単位体積当りに錠剤の外部から働く力に比べ、小さくなるようにしているので、この錠剤は、2つに分割すると、割線に従ってきれいに分割できる。
【0062】
前記(5)に記載の分割錠剤では、割線の起端となる線を錠剤の上面に形成するのではなく、錠剤の縁部の上面より上方の位置に設けているので、錠剤の上面から錠剤に縦方向に深く割線を形成することなく、割線を大きく(割線の深さを深く)することができる。これにより、錠剤の上面から錠剤に縦方向に深く割線を形成した場合のように、割線が設けられた領域において、錠剤の機械的強度が弱くすることなく、割線を大きく(割線の深さを深く)することができるので、2つに分割し易く、且つ、分割することを意図していない場合に、錠剤が、勝手に、2つに分割されてしまうことのない、分割錠剤を得ることができる。
【0063】
前記(6)に記載の分割錠剤では、錠剤の上面の2つの稜線の各々から錠剤の縁部からまでの形状が、急な斜面にし、錠剤の上面の割線の起端となる線から稜線までの形状を、2つの稜線の各々から錠剤の縁部からまでの形状に比べ、緩やかな隆起曲線にしているので、錠剤に上から下方向に力を加えた場合、割線を開く方向に力が加わり易い。これにより、小さな力で、割線に沿って、きれいに分割することができる。
【0064】
前記(7)に記載の分割錠剤では、錠剤の上面の稜線から錠剤の縁部までの形状を急な斜面の形状を、直線または凸面形状の曲線にするかは、錠剤のデザイン面から決定すればよい。従って、分割錠剤の薬効、効能、効果等に基づいて、錠剤の形状を、医師、薬剤師、患者等に、印象付けることができるように、錠剤の形状を作製することができる。
【0065】
前記(8)に記載の分割錠剤では、錠剤の縁部と交わる交点の近傍領域の各々が、割線を挟むようにして形成された2つの凸面形状に面取りされているので、更に、錠剤に欠けが生じ難い。
【0066】
本発明におけるプレススルーパックは、例えば、接着剤を調整することで、接着剤の接着力を、分割錠剤を収納した収納凹所の外面となる凸部を、指で押して、封緘シートの一部を破断して固形物を取り出す際に、いわゆる、ポケットの外側において、収納本体と封緘シートとの剥がれや浮きが生じず、且つ、封緘シートの一部を収納本体から剥してめくり上げたときには、封緘シートに破断を生じることなく、収納本体から封緘シートを引き剥がすことができるように調整しているプレススルーパックがあげられる。
したがって、このプレススルーパックは、分割錠剤を一つずつ、収納凹所から取り出したり、収納本体から封緘シートを引き剥がすことで、このプレススルーパックに収容されている分割錠剤を一度に取り出すこともできる。
更には、プレススルーパックの収納凹所の各々に、請求項1〜8のいずれかに記載の分割錠剤を収容するようにしているので、分割錠剤の方向規制をすることなく、収納凹所の各々に分割錠剤を収容した場合にも、分割錠剤を収容した収納凹所の外部となる凸部を指で押すことで、収納凹所から分割錠剤を取り出す前に、容易且つ簡単に分割錠剤を2つに分割することができる。
【0067】
したがって、収納凹所から分割錠剤を取り出す前に、容易且つ簡単に分割錠剤を2つに分割してから、2つに分割された錠剤を収納凹所から取り出すようにすることもできる。
更には、プレススルーパックの収納凹所の各々に収容されている分割錠剤を、収納凹所から分割錠剤を取り出す前に、容易且つ簡単に分割錠剤を2つに分割し、その後、収納本体から封緘シートを引き剥がすことで、このプレススルーパックに収容されている2つに分割された錠剤を一度に取り出すこともできる。
したがって、このプレススルーパックを採用すれば、病院等における調剤業務を大幅に簡易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明における分割錠剤の一例を概略的に示す図であり、図1(a)は平面図を、図1(b)は底面図を、又、図1(c)は、図1(a)中に示すI-I線に従う側面図を、各々、示している。
【図2】本発明における分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加えて分割する際に、分割錠剤に生じる現象を模式的に示す側面図であり、図2(a)は、分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加える直前の状態を、また、図2(b)は、分割錠剤Taを上方から下方に縦方向に力を加えた直後の状態を、各々、示している。
【図3】プレススルーパックの収納本体の収納凹所に収納された本発明における分割錠剤を、収納凹所から取り出す前に、上方から下方に縦方向に力を加えて分割する際に、分割錠剤に生じる現象を模式的に示す側面図であり、図3(a)は、分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加える直前の状態を、また、図3(b)は、分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加えた直後の状態を、各々、示している。
【図4】本発明におけるプレススルーパックの使用例の一例を模式的にしめす説明図である。
【図5】本発明における分割錠剤の他の一例を概略的に示す図であり、図5(a)は平面図を、図5(b)は底面図を、又、図5(c)は側面図を、各々、示している。
【図6】本発明における分割錠剤の他の一例を概略的に示す図であり、図6(a)は平面図を、図6(b)は底面図を、又、図6(c)は側面図を、各々、示している。
【図7】本発明における分割錠剤の他の一例を概略的に示す図であり、図7(a)は平面図を、図7(b)は底面図を、又、図7(c)は側面図を、各々、示している。
【図8】本発明における分割錠剤に設ける割線の形状を概略的に示す模式図であり、図8(a)〜図8(e)の各々は、そのような割線の好ましい形状を例示している。
【図9】本発明における分割錠剤を作製するために使用した上杵の形状を概略的に示す図であり、図9(a)〜図9(c)の各々は、実験に用いた上杵を示している。
【図10】本発明における分割錠剤を作製するために使用した下杵の形状を概略的に示す図であり、図10(a)及び図10(b)の各々は、実験に用いた下杵を示している。
【図11】従来公知の下杵曲形カラテ錠を作製するために使用した上杵と下杵の形状を概略的に示す図であり、図11(a)は実験に用いた上杵を、また、図11(b)は実験に用いた下杵を、各々、示している。
【図12】落下試験における、錠剤の欠けの部位の観察場所を説明する説明図であり、図12(a)は、分割錠剤の上面Saの観察場所を、また、図12(b)は分割錠剤の下面Sbの観察場所を、各々、示している。
【図13】従来の平型分割錠剤を概略的に示す図であり、図13(a)は平面図を、図13(b)は底面図を、又、図13(c)は、図13(a)中に示すI-I線に従う側面図を、各々、示している。
【図14】特開昭61-289027号公報に記載の従来のカラテ型分割錠剤を概略的に示す図であり、図14(a)は平面図を、図14(b)は底面図を、又、図14(c)は、図14(a)中に示すI-I線に従う側面図を、各々、示している。
【図15】特開昭8-53345号公報に記載の分割錠剤の一例を概略的に示す図であり、図15(a)は平面図を、図15(b)は底面図を、又、図15(c)は、図15(a)中に示すI-I線に従う側面図を、各々、示している。
【図16】特開昭8-53345号公報に記載の分割錠剤の他例を概略的に示す図であり、図16(a)は平面図を、図16(b)は底面図を、又、図16(c)は、図16(a)中に示すI-I線に従う側面図を、各々、示している。
【図17】従来のプレススルーパックの一例を模式的に示す断面図である。
【図18】従来の分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加えて分割する際に、分割錠剤に生じる現象を模式的に示す側面図であり、図18(a)は、分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加える直前の状態を、また、図18(b)は、分割錠剤Taを上方から下方に縦方向に力を加えた直後の状態を、各々、示している。
【図19】プレススルーパックの収納本体の収納凹所に従来の分割錠剤を収納凹所に収容したまま2つに分割する場合に生じる問題を模式的に説明する図であり、図18(a)は、分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加える直前の状態を、また、図18(b)は、分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加えた直後の状態を、各々、示している。
【図20】従来の分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加えて分割する際に、分割錠剤に生じる現象を模式的に示す側面図であり、図20(a)は、分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加える直前の状態を、また、図20(b)は、分割錠剤Taを上方から下方に縦方向に力を加えた直後の状態を、各々、示している。
【図21】プレススルーパックの収納本体の収納凹所に従来の分割錠剤を収納凹所に収容したまま2つに分割する場合に生じる問題を模式的に説明する図であり、図21(a)は、分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加える直前の状態を、また、図21(b)は、分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加えた直後の状態を、各々、示している。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下、図面を参照しながら、本発明における分割錠剤とプレススルーパックとに
ついて、更に、詳しく説明する。
図1は、本発明における分割錠剤の一例を概略的に示す図であり、図1(a)は平面図を、図1(b)は底面図を、又、図1(c)は側面図を、各々、示している。
【0070】
この分割錠剤Taは、図1(a)に示すように、平面視した場合、円形状を有しており、その上面Saに、中心線に沿って、割線Ldが設けられている。
錠剤Taの上面Saに、割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の形状は、割線Ldを挟んで、鏡像関係にある形状を有している。
割線Ldは、錠剤Taの一縁部e1から一縁部e1の反対側の他縁部e2まで続いており、深い溝となっている。
より詳しく説明すると、この錠剤Taでは、図1(a)及び図1(c)に示すように、割線Ldは、V溝形状にされている。
尚、割線Ldの割れ易さを考慮した場合には、割線Ldを構成するV溝の頂角θは、40度以上90度以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは、45度以上90度以下の範囲であり、更に、50度以上60度以下の範囲にあることが好ましい。
尚、割線Ldの起端となる線Ld2の垂直方向(図1(c)中に示すY軸方向)の位置H2は、割線Ldの最深部(割線の最深部に形成される線)Ld1の垂直方向(図1(c)中に示すY軸方向)の位置H1より高い関係にあれば、どのような位置にあってもよい。
【0071】
しかしながら、錠剤Taの割れ易さの容易性等を考慮した場合は、上面Saの縁部Eの垂直方向の位置H3より高い位置にあることが好ましい。
また、割線Ldの最深部Ld1の垂直方向の位置H1は、錠剤Taの上面Saの縁部Eの位置H3より上に位置していてもよいが、錠剤Taの分割の容易性等を考慮した場合は、割線Ldの最深部Ld1の垂直方向の位置H1は、錠剤Taの上面Saの縁部Eの位置H3より下に位置するようにされているのが好ましい。
より特定的に説明すると、錠剤Taの底面の頂点(図1(c)中に示す頂点A5)から割線Ldの最深部Ld1までの垂直方向の距離Y3が、錠剤Taの底面の頂点A5から錠剤Taの縁部Eの上面Saまでの垂直方向の距離Y1に比べて、短い関係にあることが好ましい。
尚、分割錠剤Taは、割線Ldを大きく(割線Ldの最深部Ld1を深く)すれば、2つに分割され易くなるが、割線Ldの最深部Ld1を、錠剤Taの上面Saの位置H3より、垂直方向(図1(c)中に示すY軸方向)に、錠剤Taの下面Sb方向に深く形成すると、錠剤Taの機械的な強度が弱くなり、分割する必要がないのに、勝手に、2つに分割され易くなる。
このような問題を解決するためには、割線Ldの最深部Ld1の位置は、錠剤Taの上面Saの位置H3より、あまり深い位置に設けずに、割線Ldの起端となる線Ld2の位置A2、A2を、錠剤Taの上面Saの位置H3より、高い位置に設けることで、割線Ldを大きくするのが好ましい。
【0072】
錠剤Taの上面Saの、割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の各々には、割線Ldを囲むように、且つ、錠剤Taの縁部Eより内側に位置するように稜線L1、L2が設けられている。
稜線L1、L2の各々の稜線周辺領域RL1、RL2の各々は、尖ったエッジ部とならないように凸面形状の曲面で構成されている。
2つの領域R1、R2のうち、領域R1に形成されている稜線L1は、割線Ldの起端となる線Ld2から形成されている緩やかな隆起曲線(凸面形状の曲線)と、錠剤Taの縁部E側に、錠剤Taの縁部Eに沿って、錠剤Taの上面Saに形成されている急な斜面R3とにより形成された凸面形状の曲面とが組み合わされて構成されており、旦つ、稜線L1の稜線周辺領域RL1が凸面形状の曲面で構成されている。
【0073】
ここで、領域R1の、割線Ldの起端となる線Ld2から形成されている緩やかな隆起曲線(凸面形状の曲線)について、より具体的に説明すると、領域R1の表面は、割線Ldの起端となる線Ld2から稜線L1方向に、曲率の小さい面から、次第に、曲率の大きい面になるように曲率が連続的に変化することで、全体として、ゆるやかな隆起曲面となっている。
急な斜面R3と領域R1又は領域R2の隆起曲面は、稜線L1の頂上又は頂上近傍で結合されるが、急な斜面R3と領域R1又は領域R2の隆起曲面とは、複数の曲面を介して行われても良い。
【0074】
また、2つの領域R1、R2のうち、領域R2に形成されている稜線L2も、割線Ldの起端となる線Ld2から形成されている緩やかな隆起曲線(凸面形状の曲線)と、錠剤の縁部E側に、錠剤Taの縁部Eに沿って、錠剤Taの上面Saに形成されている急な斜面R4とにより形成された凸面形状の曲面とが組み合わされて構成されており、且つ、稜線L2の稜線周辺領域RL2も凸面形状の曲面で構成されている。
ここで、領域R2の、割線Ldの起端となる線Ld2から形成されている緩やかな隆起曲線(凸面形状の曲線)について、より具体的に説明すると、領域R2の表面は、割線Ldの起端となる線Ld2から稜線L2方向に、曲率の小さい面から、次第に、曲率の大きい面になるように曲率が連続的に変化することで、全体として、ゆるやかな隆起曲面となっている。
又、必要により、割線Ldと稜線L1との交点付近、割線Ldと稜線L2との交点付近に面取りを行ってもよい。
【0075】
また、割線Ldが錠剤の縁部Eに交わる一縁部e1の近傍位置R5、R6、及び、割線Ldが錠剤の縁部Eに交わる他縁部e2の近傍位置R7、R8は、各々、凸面形状に、面取りがされた形状になっている。
尚、面取りの形状は、平面であってもよい。
【0076】
稜線L1は、割線Ldの起端となる線Ld2と、面取りがされた形状とされている領域R5との交点A1、及び、割線Ldの起端となる線Ld2と、面取りがされた形状とされている領域R7との交点A2まで続いており、交点A1及び交点A2の各々から次第に錠剤Taの垂直方向(Y軸方向)に徐々に隆起し、錠剤Taの中心点Cから割線Ldに直交する線L3との交点A3において、垂直方向(Y軸方向)において、最高の位置H4となっている。
稜線L2も、稜線L1と同様に、割線Ldの起端となる線Ld2と、面取りがされた形状とされている領域R6との交点A1、及び、割線Ldの起端となる線Ld2と、面取りがされた形状とされている領域R8との交点A2まで続いており、交点A1及び交点A2の各々から次第に錠剤Taの垂直方向(Y軸方向)に徐々に隆起し、錠剤Taの中心点Cから割線Ldに直交する線L3との交点A3において、垂直方向(Y軸方向)において、最高の位置H4となっている。
【0077】
また、錠剤Taは、その下面Sbに、錠剤Taの縁部Eから中心部Cに向かって徐々に盛り上がる形状、即ち、凸面形状を有している(図1(c)を参照)。
今、錠剤Taの中心点Cから、中心点Cを通り割線Ldに直交する線L3と稜線L1との交点A2までの水平方向(図1(c)中に示すX軸方向)の距離をX1とし、錠剤Taの中心点Cから、中心点Cを通り割線Ldに直交する線L3と縁部Eとの交点A4までの水平方向(図1(c)中に示すX軸方向)の距離をX2とすると、距離X1の距離X2に対する割合((X1/X2)×100)は、60%以上80%以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは、70%以上80%以下の範囲の範囲であり、75%であることが、特に好ましい。
【0078】
また、今、錠剤Taの中心点Cから、錠剤Taの縁部Eの上面Saまでの垂直方向の距離をY1とし、錠剤Taの縁部Eの上面Saから、中心点Cを通り割線Ldに直交する線L3と稜線L1との交点A3までの垂直方向の距離をY2とすると、距離Y1の距離Y2に対する割合((Y1/Y2)×100)は、20%以上50%以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは、20%以上30%以下の範囲の範囲であり、23%以上25%以下であることが、特に好ましい。
また、錠剤Taの下面Sbに形成する、錠剤Taの縁部Eから中心部Cに向かって徐々に盛り上がる形状、即ち、凸面形状の曲線の曲率は、曲線半径(図1(c)に示す曲線半径Ds)の、錠剤Taの直径(図1(b)に示す錠剤Taの直径D)に対する割合(Ds/D)が、1.25以上2.5以下の範囲にあることが好ましい。
また、錠剤Taの直径Dは、分割せずに服用する際のペイシェントコンプライアンス及び分割の容易性を考慮した場合には、5mm以上14mm以下であることが好ましく、更に、7mm以上10mm以下であることが好ましい。
この分割錠剤Taは、2つに分割する際に、薬剤師や患者等が手指で、2つの領域R1、R2の各々を直接つかんで、割線Ldに沿って分割することができる。
更に、錠剤Taを、上方より下方に押せば2つに割ることができるという利点がある。
【0079】
図2は、分割錠剤Taを上方から下方に縦方向に力を加えて分割する際に、分割錠剤Taに生じる現象を模式的に示す側面図であり、図2(a)は、分割錠剤Taを上方から下方に縦方向に力を加える直前の状態を、また、図2(b)は、分割錠剤Taを上方から下方に縦方向に力を加えた直後の状態を、各々、示している。
分割錠剤Taでは、錠剤Taの上面Saの稜線L1、L2の稜線周辺領域RL1、RL2の各々を凸面形状の曲面て構成し(図2(a)を参照)、錠剤Tgや錠剤Thに見られたような、錠剤Tg、Thの上面Saの尖ったエッジ部Peをなくすようにしているので、稜線周辺領域RL1、RL2の各々が押し潰れたり欠けたり等しない。これにより、錠剤Taを、上方より下方に押せば、錠剤Taをきれいに2つに分割することができる。
【0080】
また、分割錠剤Taは、錠剤Taの上面Saから、錠剤Tgや錠剤Thに見られたような、尖がったエッジ部Peをなくすようにしているので、打錠工程において、キャッピングを生じ難い(図2(b)を参照)。
また、錠剤Taの上面Saから、尖がったエッジ部Peをなくすようにしているので、コーティング工程において、錠剤Ta、・・・が互いに衝突しても、コアエロージョンや、エッジチッピング等を生じ難い。
また、錠剤Ta、・・・を、ある場所からある場所に空気輸送しても、空気輸送する際に、錠剤Ta、・・・同士が互いに衝突したり、錠剤Ta、・・・が輸送管に衝突しても、錠剤Taには、尖ったエッジ部Peがないので、錠剤Taは、欠けを生じ難い。
また、この分割錠剤Taは、上面に2つの凸形状の面R1、R2と、下面に凸形状の面R6とを有しているので、錠剤同士が面接触せず、点接触する。これにより、コーティングの工程において、ツウィンニングを生じ難い。
更に、この錠剤Taでは、割線LdをV溝形状にしている。
【0081】
割線LdをV溝にすると、最深部Ld1と起端となる線Ld2、Ld2の各々とを結ぶ、V溝を形成する2つの傾斜面SLd、SLdの各々は、平面となる。
一方、この錠剤Taでは、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から、稜線L1、L2の各々までの2つの領域R1、R2の各々の形状を凸面形状とし、V溝を形成する2つの傾斜面SLd、SLdの形状とは、異なる形状にしている。
この結果、割線Ldは、V溝であるので、水平方向(図1(c)中に示すX軸方向)に対する、割線Ldの最深部Ld1から割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々までの錠剤Taの厚さ(垂直方向(図1(c)中に示すY軸方向)の厚さ)の増加率は、一様であり、一様に次第に厚くなる。
【0082】
一方、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々までの2つの領域R1、R2の各々迄の面は凸面形状とされているので、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々の方向の、起端となる線Ld2、Ld2の各々の近傍位置において、水平方向(図1(c)中に示すX軸方向)に対する、割線Ldの最深部Ld1から割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々までの錠剤Taの厚さ(垂直方向(図1(c)中に示すY軸方向)の厚さ)は、急激に厚くなる。
このように、この錠剤Taでは、割線Ldの領域内に於ける、錠剤Taの水平方向に対する垂直方向の厚さの変化と、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々の方向の、起端となる線Ld2、Ld2の各々の近傍位置に於ける錠剤Taの水平方向に対する垂直方向の厚さの変化を著しく異ならせるとともに、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々の方向の、起端となる線Ld2、Ld2の各々の近傍位置に於ける錠剤Taの水平方向に対する垂直方向の厚さを急激に厚くなるようにし、単位体積当りに錠剤Taの外部から働く力が、割線Ldの領域内において大きく、且つ、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々の方向の、起端となる線Ld2、Ld2の各々の近傍位置において、割線Ldの領域内の単位体積当りに錠剤Taの外部から働く力に比べ、小さくなるようにしているので、この錠剤Taは、2つに分割すると、割線Ldに従ってきれいに分割できる。
【0083】
更に、この錠剤Taでは、割線Ldの最深部Ld1を、錠剤Taの縁部Eの上面の位置H3より、その最深部Ld1の位置H1が、下に位置するようにし、割線Ldを、通常の分割錠剤の割線に比べて、深く形成していているので、割線Ldに沿って、きれいに分割できる。
更に、この錠剤Taは、プレススルーパック包装した場合、プレススルーパックの収納本体の収納凹所内に、錠剤を方向規制することなく収容した場合にも、プレススルーパックから錠剤を取り出す前に、2つに分割することができるという利点がある。
このことを、図3を用いて、更に詳しく説明する。
【0084】
図3は、プレススルーパック1の収納本体2の収納凹所2bに収納された分割錠剤Taを、収納凹所2bから取り出す前に、上方から下方に縦方向に力を加えて分割する際に、分割錠剤Taに生じる現象を模式的に示す側面図であり、図3(a)は、分割錠剤Taを上方から下方に縦方向に力を加える直前の状態を、また、図3(b)は、分割錠剤Taを上方から下方に縦方向に力を加えた直後の状態を、各々、示している。
この分割錠剤Taでは、錠剤Taの下面Sbに、錠剤Taの縁部Eから中心部Cに向かって徐々に盛り上がる形状を設けているので、プレススルーパック1の収納本体2の収納凹所2b内に、封緘シート3の方に、割線Ldが設けられた側の上面Saが向いている場合(図3(a)中の左側の収納凹所2b内に収容されている錠剤Taを参照)には、プレススルーパック1の収納本体2の収納凹所2bの外部となる凸部2cを、指で押したときには、錠剤Taの下面Sbの凸形状の中央部A5を指で押すことにより、錠剤Taを容易に2つに分割することができる(図3(b)中の左側の収納凹所2b内に収容されている錠剤Taを参照)。
且つ、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から2つの稜線L1、L2の各々迄の面の形状を凸面形状の曲面で構成しているので、プレススルーパック1の収納凹所2bに、錠剤Taの割線Ldが設けられた側が、収納本体2の方を向くように収容された場合(図3(a)中の右側の収納凹所2b内に収容されている錠剤Taを参照)でも、プレススルーパック1の収納凹所2bの外部となる凸部2cを指で押したときには、側面視した場合、概ねV字形状に押しつぶされる収納凹所2bや指の形状に対し、錠剤Taの上面Saの割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の各々が対向する凸面形状の曲面を持っているため、指による力が、錠剤Taに容易に伝わる。これにより、指に力を入れなくても、割線Ldを開く方向に、錠剤に力が働く結果、プレススルーパック1の収納凹所2bに、錠剤Taの割線Ldが設けられた側が、収納本体2の方を向くように収容された場合でも、錠剤Taを容易に2つに分割することができる(図3(b)中の右側の収納凹所2b内に収容されている錠剤Taを参照)。
【0085】
尚、図3に示すプレススルーパック1は、収納本体2と、封緘シート5とを備え、封緘シート3の接着剤層4が収納本体2の板状部2a、・・・、2aに接着された構造になっている。
収納本体2は、通常、収納すべき分割錠剤Ta、・・・、Taの形状に応じて、加熱成形して、複数の収納凹所2b、・・・、2bが、板状部2a、・・・、2aで連結されてた形状となっている。
【0086】
収納本体2の材料としては、一般に使用されている、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、環状ポリオレフィン等の熱可塑性の合成樹脂を用いることができ、このような収納本体材料を用いれば、複数の収納凹所2b、・・・、2bは、収納すべき分割錠剤Ta、・・・、Taの形状に応じて、加熱成形して、容易に形成できる。
【0087】
また、封緘シート3は、基材5と、基材5の片側の表面上に設けられた接着剤層4とを有する。
封緘シート3の基材5の材料としては、収納本体2の収納凹所2b、・・・、2bの各々内に収容される分割錠剤Ta、・・・、Taを密封でき、且つ、収納本体2の収納凹所2b、・・・、2bの外面となる凸部2c、・・・、2cの各々を、封緘シート3方向へ、押圧すれば、収納凹所2b、・・・、2bの各々に収容された分割錠剤Ta、・・・、Taの各々によって容易に破断する材料であれば、一般に、包装材として使用されている種々の材料を用いることができ、そのような材料としては、例えば、アルミニウム箔、グラシン紙、破断させやすくするための充填剤を含有させた合成樹脂シート、紙等を、その好ましい例として挙げることができる。
【0088】
具体的には、封緘シート3の基材5として、アルミニウム箔を用いる場合には、好ましくは、厚さが、5μm以上30μm以下、より好ましくは、15μm以上25μm以下の硬質箔を用いる。
また、封緘シート3の基材5として、グラシン紙を用いる場合には、好ましくは、坪量(平方メートル当りの重さ)が、30.5g/m2のものを用いる。
また、封緘シート3の基材5として、破断しやすくするために充填材を含有させた合成樹脂シートを用いる場合には、好ましくは、厚さが9μm以上100μm以下、より好ましくは、12μm以上80μm以下のものを用いる。
この合成樹脂は、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、線状ポリオレフィン等の熱可塑性合成樹脂が好適に使用される。
【0089】
また、合成樹脂に含有させる充填剤としては、例えば、酸化珪素、珪酸マグネシウム、二酸化チタン、亜鉛華、炭酸カルシウム、アルミナ、タルク等、種々のものを使用でき、平均粒径が、1μm以上10μm以下のものを、5重量%以上15重量%以下、好ましくは、5重量%以上70重量%以下を合成樹脂中に混入する。
また、封緘シート3の基材5として、紙を用いる場合には、坪量が、13g/m2以上100g/m2以下のものを用いるのが好ましい。
【0090】
以上説明したような封緘シート3の基材5の物性や組成は、主として、収納本体2の、分割錠剤Tを収納した収納凹所2bの外面となる凸部2cを、封緘シート5方向に、指で押したときには、その収納凹所2bを密封している封緘シート5の収納凹所2b、・・・、2bを密封している部分r1、・・・、r1を破断させて、分割錠剤Tを取り出すことができる程度の強靭さを有している。
以上の構成は、従来のプレススルーパック101と同様であるが、このプレススルーパック1では、封緘シート3の接着剤層4と収納本体2の板状部2a、・・・、2aとの接着強度を、分割錠剤Ta、・・・、Taの各々を収納している収納凹所2b、・・・、2bの各々の外面となる凸部2c、・・・、2cの各々を、封緘シート3方向に、指で押し出したときには、封緘シート3の破断が、板状部2aと接着剤層4との接着部r2、・・・、r2側へ広がることなく、収納凹所2b、・・・、2bを密封している封緘シート3の部分(いわゆる、ポケット部)r1・・・、r1だけが破断し、分割錠剤Ta、・・・、Taの各々を1錠ずつ取り出すことができるとともに、封緘シート3を剥してめくり上げたときには、封緘シート3が途中で破断することなく、収納本体2から容易に分離できるように、調整している点に特徴がある。
【0091】
以下、封緘シート3の接着強度を調整する方法について、接着剤層4を構成する接着強度を接着剤の成分によって調整する場合と、接着剤の接着強度を封緘シート3の基材5への塗工方法によって調整する場合とに、場合分けをして、説明する。
A.接着強度を接着剤の成分によって調整する場合。
接着剤を構成する成分によって、接着強度を調整する場合には、接着成分に、適当量の接着低下成分を配合するようにする。
【0092】
具体的には、接着成分は、収納本体2と封緘シート3の基材5とを接着できる成分であれば、何でもよく、例えば、ヒートシールが可能な熱可塑性樹脂であっても、コールドシールが可能なコールドシール接着剤であってもよい。
ヒートシールが可能な熱可塑性樹脂としては、以下のものに限定されることは無いが、例えば、収納本体2が、ポリ塩化ビニルで製されている場合には、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体を、その好ましい例として挙げることができ、例えば、収納本体2が、ポリプロピレンで製されている場合には、塩素化ポリプロピレン、カルボキシル化ポリプロピレンを、その好ましい例として挙げることができる。又、例えば、収納本体2が、ポリスチレンで製されている場合には、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との混合体を、その好ましい例として挙げることができる。
【0093】
また、コールドシール接着剤としては、例えば、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ゴム等を挙げることができる。
ここに、「コールドシール接着剤」は、部材と部材とを貼着する際に、部材と部材とを加圧するだけで接着することができる接着剤をいう。
また、接着剤に配合する接着力低下成分は、封緘シート3の接着剤層4と収納本体2との接着強度、又は、封緘シート3の接着剤層4と封緘シート3の基材5との接着強度を低下させる物質であれば使用可能である。
そのような物質としては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の離型剤等として用いられる樹脂や、アクリル樹脂、線状ポリエステル樹脂等をその好ましい例として挙げることができる。
また、酸化珪素、珪酸マグネシウム、二酸化チタン、亜鉛華、炭酸カルシウム、アルミナ、タルク等の充填剤等として用いられる微粉末も、その好ましい例として挙げることができる。
接着剤の接着成分と接着力低下成分との配合割合は、後述する、接着強度試験、押し出し試験及び剥離試験によって決められる。
【0094】
B.接着強度を、封緘シートの基材への接着剤の塗工方法によって調整する場合。
この場合は、封緘シート3の基材5へ接着剤を、全面塗工したり、部分塗工したりするようにしたり、また、封緘シート3の基材5へ塗工する接着剤の単位面積当りの塗工量を調整をしたりすることで、所望の接着強度を得ることができる。
尚、部分塗工は、例えば、収納本体2の収納凹所2bの各々内に収容される分割錠剤Ta、・・・、Taの各々を完全に密封することができる限り、封緘シート3の収納本体2に対向する側の表面に、接着剤を、編目状、線状に塗工してもよく、又は、これらの少なくとも2種を組み合わせて塗工してもよい。
また、封緘シート3の基材5へ塗工する接着剤の単位面積当りの塗工量の調整するには、接着剤として、希釈剤を適宜配合したものを用いたり、封緘シート3の基材5に塗工する接着剤の単位面積当りの膜厚を調整すればよい。
また、接着強度を封緘シート3の基材5への接着剤の塗工方法によって調整する場合には、接着剤中に、接着力低下成分が含まれていても、含まれていなくてもよいことを付記しておく。
【0095】
このプレススルーパック1では、収納凹所2b、・・・、2bの各々に、分割錠剤Ta、・・・、Taの各々を収容するようにしている。
したがって、収納凹所2b、・・・2bの外面となる凸部2c、・・・、2cの各々を、手指等で押しつぶせば、分割錠剤Ta、・・・、Taを個別に、収納凹所2b、・・・2bの各々から個別に取り出すことができる。
また、薬剤師や患者等は、このようにして、収納凹所2b、・・・2bの各々から個別に必要な個数の分割錠剤Ta、・・・を取り出し、その後、必要により、手指等で、錠剤Taを個別につかんで、割線Ldに沿って、2つに、簡単に分割することができる。
【0096】
また、このプレススルーパック1では、収納凹所2b、・・・2bの各々に、2つに分割する際に、方向規制がされることのない分割錠剤Ta、・・・、Taを収容しているので、封緘シート3側がテーブル等の平坦な面に接するようにして、収納凹所2b、・・・2bの外面となる凸部2c、・・・、2cの各々を、手指等で押しつぶせば、収納凹所2b、・・・2bの各々から分割錠剤Ta、・・・、Taの各々を取り出す前に、収納凹所2b、・・・2bの各々内に分割錠剤Ta、・・・、Taの各々を収容した状態で、分割錠剤Ta、・・・、Taの各々を2つに分割することができる。
【0097】
したがって、分割錠剤Ta、・・・、Taのうち、必要な錠数の分割錠剤Ta、・・・を収納凹所2b、・・・に収容したまま、2つに分割した後、2つに分割した分割錠剤Ta、・・・が収容されている収納凹所2b、・・・の外面となる凸部2c、・・・の各々を、手指等で押しつぶせば、収納凹所2b、・・・の各々から個別に2つに分割した分割錠剤Ta、・・・、Taの各々を取り出すことができる。
更に、このプレススルーパック1では、封緘シート3を剥してめくり上げたときには、封緘シート3が途中で破断することなく、収納本体2から容易に分離できるようにしているので、収納本体2から封緘シート3を剥してめくり上げれば、プレススルーパック1に収容されている、全ての分割錠剤Ta、・・・、Taを、プレススルーパック1から、一度に、取り出すことができる。
のみならず、このプレススルーパック1では、2つに分割する際に、方向規制がされることのない分割錠剤Ta、・・・、Taを収容しているので、図4に示すように、まず、封緘シート3側がテーブル等の平坦な面に接するようにして、収納凹所2b、・・・2bの外面となる凸部2c、・・・、2cの各々を、手指や治具等で押しつぶして、収納凹所2b、・・・2bの各々から分割錠剤Ta、・・・、Taの各々を取り出す前に、全ての分割錠剤Ta、・・・、Taを2つに分割しておき(図4(a)〜図4(c))、その後、収納本体2から封緘シート3を剥してめくり上げれば、プレススルーパック1に収容されている、2つに分割されている、全ての分割錠剤Ta、・・・、Taを、プレススルーパック1から、一度に、取り出すことができる。
【0098】
これにより、このプレススルーパック1を採用すれば、分割錠剤Ta、・・・を収納本体2の収納凹所2b、・・・から取り出す前に、2つに分割することができるので、手指等により、錠剤Taを2つに分割する際に、錠剤Taが、手指等に付着している細菌やかび等によって汚染されることがなくなるとともに、病院等において、大量の錠剤を調剤する際には、収納本体2から封緘シート3を剥してめくり上げれば、プレススルーパック1に収容されている、全ての分割錠剤Ta、・・・、Taを、プレススルーパック1から、一度に、取り出すことができる。
更には、このプレススルーパック1を採用すれば、2つに分割された錠剤Ta、・・・、Taを大量に用意することが必要な場合には、収納凹所2b、・・・2bの各々から分割錠剤Ta、・・・、Taの各々を取り出す前に、全ての分割錠剤Ta、・・・、Taを2つに分割し、その後、収納本体2から封緘シート3を剥してめくり上げれば、プレススルーパック1に収容されている、2つに分割されている、全ての分割錠剤Ta、・・・、Taを、プレススルーパック1から、一度に、取り出すことができるため、病院等における調剤業務を大幅に改善することができる。
尚、上記した分割錠剤Taは、単に本発明を説明するために、その好ましい例として例示したに過ぎす、本発明は、分割錠剤Taに限定されることはない。
【0099】
図5〜図7は、本発明の変形例を例示的に示す図である。図5は、本発明における分割錠剤の他の一例を概略的に示す図であり、図5(a)は平面図を、図5(b)は底面図を、又、図5(c)は側面図を、各々、示している。
この分割錠剤Tbは、分割錠剤Taに比べて、割線Ldが大きく形成されている点で、分割錠剤Taと異なっている。
即ち、この分割錠剤Tbは、分割錠剤Taに比べ、割線Ldを形成する2本の起端となる線Ld2、Ld2との間の幅(図5(a)に示す幅w2)が、分割錠剤Taの割線Ldを形成する2本の起端となる線Ld2、Ld2との間の幅(図1(a)に示す幅w1)より大きく形成されている(w2>w1)。且つ、分割錠剤Tbは、割線Ldを形成する2本の起端となる線Ld2、Ld2から最深部Ld1までの垂直方向の距離(図5(c)に示す距離Y8)が、分割錠剤Taの割線Ldを形成する2本の起端となる線Ld2、Ld2から最深部Ld1までの垂直方向の距離(図1(c)に示す距離Y7)より長くなるように形成されている(Y8>Y7)。
【0100】
これにより、この分割錠剤Tbは、分割錠剤Taに比べ、割線Ldのサイズが大きくなっているので、分割錠剤Taに比べ、小さい力で2つに容易に分割することができる。
のみならず、この分割錠剤Tbでは、割線Ldのサイズを大きくする際に、錠剤Tbの縁部Eの上面Saの位置H3から割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2までの垂直方向の距離(図5(c)に示す距離Y10)を、錠剤Taの縁部Eの上面Saの位置H3から割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2までの垂直方向の距離(図5(c)に示す距離Y9)より長くする(Y10>Y9)ようにし、割線Ldの最深部Ld1から錠剤Tbの底部頂点A5までの垂直方向の距離(図5(c)に示す距離Y6)は、錠剤Taの割線Ldの最深部Ld1から錠剤Taの底部頂点A5までの垂直方向の距離(図1(c)に示す距離Y3)と同じ距離(Y6=Y3)にしているので、錠剤Tbの割線Ldの最深部Ld1の位置における機械的な強度は、錠剤Taの割線Ldの最深部Ld1の位置における機械的な強度と概ね同じである。
【0101】
これにより、この分割錠剤Tbは、技術的に相反すると考えられる2つに分割する際には、割線Ldのサイズが大きいので、2つに小さい力で分割できるということを両立させている。
尚、この分割錠剤Tbの他の形状は、分割錠剤Taと同様であるので、相当する部分には、相当する参照符号を付して、その説明を省略する。
【0102】
図6は、本発明における分割錠剤の他の一例を概略的に示す図であり、図6(a)は平面図を、図6(b)は底面図を、又、図6(c)は側面図を、各々、示している。
この分割錠剤Tcは、割線LdをU溝にしている点で、割線LdをV溝にしている分割錠剤Taと、異なっている。
この分割錠剤Tcでは、割線LdをU溝にしているので、割線Ldの領域内において、錠剤Tcの厚さは、割線Ldの最深部Ld1から割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々までゆるやかに厚くなり、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々の近傍において急激に厚くなる。
【0103】
一方、この分割錠剤Tcでは、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々までの2つの領域R1、R2の各々迄の面は凸面形状とされているので、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々の方向の、起端となる線Ld2、Ld2の各々の近傍位置においては、錠剤Tcの厚さが急激に厚くなる。
このように、この錠剤Tcでは、割線Ldの領域内に於ける、錠剤Tcの厚さの変化と、割線Tcの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々の方向の、起端となる線Ld2、Ld2の各々の近傍位置に於ける錠剤Tcの厚さの変化とを著しく異ならせるとともに、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々の方向の、起端となる線Ld2、Ld2の各々の近傍位置に於ける錠剤Tcの厚さを急激に厚くなるようにし、単位体積当りに錠剤Tcの外部から働く力が、割線Ldの領域内において大きく、且つ、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々の方向の、起端となる線Ld2、Ld2の各々の近傍位置において、割線Ldの領域内の単位体積当りに錠剤Tcの外部から働く力に比べ、小さくなるようにしているので、この錠剤Tcは、2つに分割すると、割線Ldに従ってきれいに分割できる。
尚、この分割錠剤Tcの他の形状は、分割錠剤Taと同様であるので、相当する部分には、相当する参照符号を付して、その説明を省略する。
【0104】
図7は、本発明における分割錠剤の他の一例を概略的に示す図であり、図7(a)は平面図を、図7(b)は底面図を、又、図7(c)は側面図を、各々、示している。
この分割錠剤Tdは、錠剤の形状を、平面視した場合、楕円形状にしている点(図7(a)を参照)で、錠剤の形状を、平面視した場合、円形状にしているにしている分割錠剤Taと異なっている(図1(a)を参照)。
この分割錠剤Tdは、割線Ldが、短軸L4に沿って形成されている。
尚、錠剤の形状を、平面視した場合、楕円形状にした場合には、底面の曲線L6の曲率は、曲線半径(図7(c)に示す曲線半径Ds)は、錠剤Tdの長径(長軸L5の長さ)(図7(b)に示す錠剤Tdの長径Do)に対する割合(Ds/Do)が、1.25以上2.5以下の範囲にあることが好ましい。
【0105】
この分割錠剤Tdも分割錠剤Taと同様の効果を奏する。更に、分割錠剤Tdでは、錠剤の形状を、平面視した場合、楕円形状にし、短軸L4に沿って、割線Ldを設けているので、割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の割線Ldから、この錠剤Tdの縁部Eと長軸L5とが交わる交点A4、A4の各々までの距離が、長径の2分の一の寸法Do/2となり、長くなる。これにより手指等で、2つに分割する際のモーメントを大きくできるので、手指等に力をあまり入れなくても、2つに分割することができる。
尚、この例では、割線Ldが、短軸L4に沿って設けられている例について説明したが、割線Ldは、長軸L5に沿って設けるようにしてもよいことは、言うまでもない。
尚、この分割錠剤Tdの他の形状は、分割錠剤Taと同様の関係にあるので、相当する部分には、相当する参照符号を付して、その説明を省略する。
【0106】
また、上記に示した分割錠剤Ta、Tb、Tc、Tdでは、いずれも、分割錠剤Ta、Tb、Tc、Tdの縁部Eと、割線Ldとが交わる交点e1、e2の近傍において、凸面形状に面とりした領域R5、R6、R7、R8を有するものについて説明したが、凸面形状に面とりした領域R5、R6、R7、R8は、必ずしも必要な面ではないが、分割錠剤Ta、Tb、Tc、Tdのように凸面形状に面とりした領域R5、R6、R7、R8を設けると、分割錠剤Ta、Tb、Tc、Tdを製造する際や、搬送する際に、尚、一層、欠けを生じ難くなる(尚、このことについては、以下に示す、実験例1及び実験例2により、本発明者等が、実験により見いだした。)
【0107】
また、上記に示した分割錠剤Ta、Tb、Tc、Tdでは、割線Ldとして、V溝又はU溝を設けた場合について説明したが、本発明における分割錠剤に設ける割線の形状は、図8(a)に示すV溝形状であっても、図8(d)に示すU溝形状であってもよいが、図8(b)に示すような、V溝の長角近傍に丸いラウンド部R11を有する形状又は放物線(2次曲線)形状であっても、図8(c)に示すような、v溝の長角近傍に丸いラウンド部R11を滑らかな曲線にするのではなく、屈曲部Lbを1以上有する多角形状(図8(c)に示す領域R12を参照)にしてもよく、又、図8(e)に示すような、通常のU溝のように、その下部の丸いラウンド部を滑らかな曲線(図8(d)に示す領域R13を参照)にするのではなく、屈曲部Lbを1以上有する多角形状にしてもよい(図8(e)に示す領域R14を参照)。
割線Ldを、屈曲部Lbを1以上有する多角形状にすれば、分割錠剤を2つに分割する際に、屈曲部Lbのいずれかに力が集中するので、屈曲部Lbのいずれかに沿って、2つに分割され易くなるため、尚、一層、割線Ldに沿って、きれいに分割できるようになる。
【0108】
また、分割錠剤Ta、Tb、Tc、Tdでは、いずれも、錠剤Ta、Tb、Tc、Tdの各々の上面Saの稜線L1、L2の各々から錠剤Ta、Tb、Tc、Tdの各々の縁部Eまでの急な斜面R3、R4の形状を、断面視した場合に、凸面形状の曲線とした場合について説明したが、急な斜面R3、R4の形状を、断面視した場合、平面形状としてもよい。
この場合、錠剤Ta、Tb、Tc、Tdの上面の割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々までの、凸面(緩やかな隆起曲線)形状の面R1、R2と、断面視した場合、平面形状の急な斜面R3、R4との接合部は、錠剤に欠けを生じないようにするためには、稜線L1、L2で接合せずに、稜線L1、L2より錠剤Ta、Tb、Tc、Tdの各々の縁部Eに寄った位置の、稜線L1、L2より、垂直方向の高さが低い位置に設けることが好ましい。
【0109】
本発明における分割錠剤は、錠剤の上面の稜線から錠剤の縁部までの形状を急な斜面の形状を、直線または凸面形状の曲線にするかは、錠剤のデザイン面から決定することができる。
従って、本発明における分割錠剤は、その薬効、効能、効果等に基づいて、錠剤の形状を、医師、薬剤師、患者等に、印象付けることができるように、錠剤の形状を作製することができる。
【0110】
より具体的に説明すると、例えば、錠剤の上面の割線の起端となる線から稜線までの形状を、断面視した場合、直線にすれば、観者の錠剤全体の見た目の印象が、シャープになるので、シャープな切れ味を製品特徴とする、例えば、経口抗生製剤や鎮痛消炎剤の形状にすれば、観者に、これらの薬剤のシャープな切れ味を印象付けることができる。
また、錠剤の上面の割線の起端となる線から稜線までの形状を、断面視した場合、緩やかな隆起曲線にすれば、観者の錠剤全体の見た目の印象が、マイルドになるので、作用効果のマイルドさや副作用の少なさを製品特徴とする。例えば、降圧薬等の循環器系作用薬や、睡眠・鎮静薬等の中枢神経系作用薬の形状にすれば、観者に、これらの薬剤の作用効果のマイルドさや副作用の少なさを印象付けることができる。
次に、具体的な実験データに基づいて、本発明について説明する。
【実施例1】
【0111】
乳糖(DMV社製:200M)を67.5重量%、トウモロコシ澱粉(日本食品加工社製:日食コーンスターチW)29.0重量%を流動層造粒機(フロイント社製:フローコーターFLO-15)内に仕込み、これらの粉末へ結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製:HPC-L)を7重量%水溶液を調整し、これをスプレーすることにより、造粒、乾燥させて、乾燥粉末を得た。尚、乾燥粉末には、結合剤が、3重量%含まれていた。
次に、以上により作製した乾燥粉末を整粒機(徳寿工作所製:ランデルミルRM-I)で整粒し、得られた整流物に滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム(堺化学社製))を0.5重量%を加えてブレンダー(徳寿工作所製):ミックスウェル混合機V1-60)で、5分間、混合し、成形材料を得た。
次に、本発明における分割錠剤を作製するため、図9に示す、上杵pa1、上杵pa2及び上杵pa3と、図10に示す下杵pb1及び下杵pb2とを作製した。
【0112】
尚、上杵pa1及び上杵pa2は、割線Ldと錠剤の縁部との交点の近傍に、面取りした領域(図1に示す領域R5、R6、R7、R8)を形成していない分割錠剤を作製する上杵であり、また、上杵pa3は、割線Ldと錠剤の縁部との交点の近傍に、面取りした領域(図1に示す領域R5、R6、R7、R8)を形成した分割錠剤を作製する上杵である。
上杵pa1、pa2、pa3の各々は、成形する分割錠剤の上面の形状の雌型をしており、下杵pb1、pb2の各々は、成形する分割錠剤の下面の形状の雌型をしている。
【0113】
また、図9及び図10の各々の図面には、参考のため、上杵pa1、pa2、pa3、及び、下杵pb1、pb2の各々に、分割錠剤の形状に対応する部位を、分割錠剤の形状の部位に相当する参照符号を付するとともに、作製した上杵pa1、pa2、pa3、及び、下杵pb1、pb2の各々の寸法を記入している。
次に、上杵pa1と下杵pb1とを組合せ、これらを高速ロータリ式打錠機(菊水製作所製:VIRGO12)に装着し、上記により作製した成形材料を打錠した。
また、上杵pa1と下杵pb2との組合せ、上杵pa2と下杵pb1との組合せ、及び、上杵pa2と下杵pb2との組合せ、これらを高速ロータリ式打錠機(菊水製作所製:VIRGO12)に装着し、上記により作製した成形材料を打錠した。
【0114】
以上の工程により、本発明における、合計4種類の分割錠剤を作製した。
尚、1錠当りの重量は、いずれも130mgであった。
次に、これら4種類の錠剤を、無作為に選出した5人のパネラー(男性3人:M、女性2人:W)により平らなテーブルの上で、割線を上向きまたは下向きにして分割してもらい、このときの分割のし易さを4段階で官能試験した。
評価は割れ易い:3点、割れにくい:2点、非常に割れにくい:1点、割れない:0点とし、15点満点とした。
【0115】
また、比較例として、既に、市販されている下杵曲形カラテ錠(商品名ノルパスク錠:ファイザー製薬株式会社製)を同様の方法で分割してもらい、このときの分割のし易さを4段階で官能試験した。
結果を表1に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
尚、表1中、分割方向は、錠剤の割線の向きが、上を向いているか、下をむいているかを、示している。
表1により、本発明における4種類の分割錠剤は、比較例(商品名ノルパスク錠:ファイザー製薬株式会社製)と比較して、割線Ldが上を向く状態にして分割した場合には、格段に分割し易いことが、明らかになった。
また、割線Ldを下を向く状態にして分割した場合には、比較例と、同等以上に分割し易いことが、明らかになった。
【実施例2】
【0118】
実験例1の官能試験で、分割が良好であった、本発明における4種類の分割錠剤を更に改良するため、図9(c)に示す上杵pa3と、図10(b)に示す下杵pb2を組み合わせて、本発明における分割錠剤を、実験例1と同様の方法により製造した。
また、比較例として、図11に示す上杵pa4と下杵pb2とを組み合わせた、従来公知の下杵曲形カラテ錠を、実験例1と同様の同様の方法で製造した。
次に、得られた分割錠剤の各々について、落下試験を行った。落下試験は、高さ40cmの位置から、本発明における分割錠剤100錠及び比較例(下杵曲形カラテ錠)100錠を、各々、ステンレス板へ落下させ、欠けの部位および錠数を目視観察することにより行った。
尚、欠けの部位の観察場所は、図12(a)に示す、分割錠剤の上面Saの3箇所の部位F1、F2、F3と、図12(b)に示す、分割錠剤の下面Sbの部位F4の合計4箇所とした。
落下試験の結果を、表2に示す。
【0119】
【表2】
【0120】
表2より、本発明における分割錠剤は、比較例(下杵曲形カラテ錠)に比べ、総欠け数が著しく少ないことが、明らかになった。
また、欠けの種類を分析すると縁部分の欠け(エッジチッピング)が特に減少していた。
【実施例3】
【0121】
図9(c)に示す上杵pa3と、図10(a)に示す下杵pb1とを用いて、実験例1と同様にして、本発明における分割錠剤を作製した。
また、図9(c)に示す上杵pa3と、図10(b)に示す下杵pb2とを用いて、実験例1と同様にして、本発明における分割錠剤を作製した。
また、比較例として、図11に示す上杵pa4と下杵pb1とを用いて、実験例1と同様にして、従来公知の下杵曲形カラテ錠を作製した。
また、比較例として、図11(a)に示す上杵pa4と、図10(a)に示す下杵pb1とを用いて、実験例1と同様にして、従来公知の下杵曲形カラテ錠を作製した。
次に、得られた分割錠剤の各々について、摩損度試験を行った。
摩損度試験は、本発明における分割錠剤20錠及び比較例(下杵曲形カラテ錠)20錠をフライアビレーターに入れ、毎分25回転で、10分または20分回転さた後の摩損度を測定することにより行った。
摩損度試験の結果を、表3に示す。
【0122】
【表3】
【0123】
表3により、本発明における分割錠剤は、比較例(下杵曲形カラテ錠)に比べ、約半分の摩損度であることが、明らかになった。
【実施例4】
【0124】
実験例3において作製した本発明における分割錠剤1kgに、コーティング液(OPADRY-II(カラコン社製:OY-LS-22813)水溶液)をコーティング機(フロイント社製:HCT-30N)を用いて被覆した。
また、実験例3において、比較例として作製した従来公知の下杵曲形カラテ錠1kgに、コーティング液(OPADRY-II(カラコン社製:OY-LS-22813)水溶液)をコーティング機(フロイント社製:HCT-30N)を用いて被覆した。
その結果、本発明における分割錠剤は、ツウィンニングを生じず、且つ、ツウィンニングが原因して発生するコーティング膜の剥がれも認められなかった。
【実施例5】
【0125】
ここでは、本願発明の分割錠剤をプレススルーパックに収納した場合に、錠剤の大量分割が可能になることを試験した。
実験例4において作製した本発明における分割錠剤(コーティングが施されている)を、プレススルーパックの収納凹所に収容した。
次に、プレススルーパックの収納凹所に収容されている、本発明における分割錠剤(コーティングが施されている)であって、割線が上向きに収容されている錠剤10錠と、本発明における分割錠剤(コーティングが施されている)であって、割線が下向きに収容されている錠剤10錠とを、各々、収納凹所から取り出さずに、指で押し割り、2つに分割された錠剤の各々を化学天秤で精秤して、2つに分割した際に、本発明における分割錠剤(コーティングが施されている)に生じた、錠剤の重量変動係数を求めた。
【0126】
比較例としては、市販の錠剤カッター(小林製薬社製)を用いて、本発明における分割錠剤(コーティングが施されている)であって、割線を上向きにした錠剤10錠と、本発明における分割錠剤(コーティングが施されている)であって、割線を下上向きにした錠剤10錠とを、各々、割線に沿って切断し、2つに分割された錠剤の各々を化学天秤で精秤して、2つに分割した際に、本発明における分割錠剤(コーティングが施されている)に生じた、錠剤の重量変動係数を求めた。
結果を表4に示す。
【0127】
【表4】
【0128】
表4により、本発明における分割錠剤は、割線が上を向いていようと下を向いていようと、2つに分割した後の錠剤の重量変動係数が、錠剤カッターにより割線に沿って分割した後の錠剤の重量変動係数と大差なく、これにより、本発明における分割錠剤は、割線が上を向いていようと下を向いていようと、指で、精度よく2つに分割できることが、明らかになった。
更に、この実験により、下杵pb1に比べ、曲率半径が大きい下杵pb2を用いて作製した錠剤の方が、下杵pb1を用いて作製した錠剤に比べ、さらに、変動係数が小さくなることが、明らかになった。これは、分割時の破断面積が小さくなるためと考えられる。
【実施例6】
【0129】
実施例2で作製した本発明における分割錠剤を、プレススルーパックに収納し、プレススルーパックの収納凹所に分割錠剤を収容した状態で、分割に必要な硬度を、錠剤硬度測定器(ジャパンマシナリー社製、PTB-311/P)で測定した。
また、比較例として、市販の下杵曲形カラテ錠(商品名ノルパスク錠:ファイザー製薬株式会社製)を用い、プレススルーパックの収納凹所に分割錠剤を収容した状態で、分割に必要な硬度を、錠剤硬度測定器(ジャパンマシナリー社製、PTB-311/P)で測定した。
尚、比較例で用いたプレススルーパックは、本発明における分割錠剤を収納するのに用いたプレススルーパックと同様のものであり、また、比較例の包装方法も、本発明における分割錠剤をプレススルーパックに収納した方法と同様の方法で行った。
結果を表5に示す。
【0130】
【表5】
【0131】
表5より、本発明における分割錠剤は、比較例の約4分の1の力で分割できることが、明らかになった。
以上の結果より、本発明における分割錠剤は、従来公知の分割錠剤よりも、分割し易い形状であることが、明らかになった。
【符号の説明】
【0132】
Ta、Tb、Tc、Td 分割錠剤
Sa 分割錠剤の上面
Sb 分割錠剤の下面
E 分割錠剤の縁部
L1、L2 稜線
RL1、RL2 稜線周辺領域
R5、R6、R7、R8 凸面形状に面取りがされた形状とされている領域
Ld 割線
Ld1 割線の最深部(割線の最深部に形成される線)
Ld2 割線の起端となる線
θ 割線V溝の頂角
e1 一縁部
e2 他縁部
R1、R2 割線により錠剤の上面に形成される領域
1 プレススルーパック
2 収納本体
2a 板状部
2b 収納凹所
2c 凸部
3 封緘シート
4 接着剤層
5 基材
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割容易な錠剤および分割容易な錠剤の製造方法に関し、特に、欠けを生じることなく、容易に且つ精度よく分割でき、対衝撃性にも優れ、且つ、フィルムコーティング工程時に錠剤同士がツウィンニング等を生じない形状を有する分割容易な錠剤および分割容易な錠剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分割錠剤は、服用量に応じて調剤時に薬剤師よって、又は、服用時に患者自身によって、分割される錠剤であり、個々の患者に対する服用量の管理を最適にし、処方の利便性を高めるために開発されている。
このような分割錠剤は、一般に、錠剤を分割するための割線(割溝)が設けられている。
【0003】
図13は、従来の平型分割錠剤を概略的に示す図であり、図13(a)は平面図を、図13(b)は底面図を、又、図13(c)は側面図を、各々、示している。
この平型分割錠剤Teは、上面Saと下面Sbとがともに平面形状を有しており、その上面Saには、中心線に沿って、割線Ldが形成されている。
この分割錠剤Teを2つに分割する際には、その上面Saに割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の各々を、薬剤師や患者等が手指で、直接、つかんで、割線Ldを押し広げるようにして、割線Ldに沿って、分割錠剤Teを分割するようにしている。
しかしながら、図13に示す分割錠剤Teは、2つに分割するのに力が入り、指先の力や感覚の低下した高齢者にとっては、分割錠剤Teを分割するのが難しい、という問題がある。
【0004】
また、図14は、特許文献1に記載の従来のカラテ型分割錠剤を概略的に示す図であり、図14(a)は平面図を、図14(b)は底面図を、又、図14(c)は側面図を、各々、示している。
カラテ型錠剤Tfは、下面Sbが平面形状にされている。また、その上面Saには、中心線に沿って、割線Ldが設けられており、上面Saに割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の各々は、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から、錠剤の周縁方向に、次第に肉厚になるように傾斜するように設けられた平面を有している。
この分割錠剤Tfには、2つに分割する際に、薬剤師や患者等が手指で、2つの領域R1、R2の各々を直接つかんで、割線Ldに沿って分割するという方法の他に、分割錠剤Tfの割線Ldが設けられた上面Saを下にし、下面Sbを上にして、上方より下方に押せば、2つに割ることができるという利点がある。
【0005】
ところで、錠剤には、有効成分として、不快な臭いや味を有する成分や、光等に対する安定性があまり良くない成分が含まれている場合があり、そのような有効成分を含む錠剤は、有効成分の不快な臭いや味をマスクしたり、光等に対する安定性を確保するために、一般に、フィルムコートが施される。
【0006】
しかしながら、従来の分割錠剤Teは、その上面Saと下面Sbとがともに平面で形成されているため、錠剤Te、・・・同士が互いに面接触し易い。このため、錠剤Teの表面にフィルムコートを施すフィルムコーティング工程において、錠剤Te、・・・同士が互いにくっつく現象(いわゆる、ツウィンニング)を生じ易いという問題がある。
同様に、従来の分割錠剤Tfは、その上面Saに割線Ldによって形成される2つの領域R1、R2の各々の面が平面で形成され、且つ、下面Sbが平面で形成されているため、錠剤Tf、・・・同士が互いに面接触し易い。このため、錠剤Tfの表面にフィルムコートを施すと、フィルムコーティング工程において、錠剤Tf、・・・同士が互いにくっつく現象(いわゆる、ツウィンニング)を生じ易いという問題がある。
【0007】
また、従来の分割錠剤Te、Tfに、フィルムコートを施すと、フィルムコートにより錠剤の強度が増強するため、分割時に更に強い力が必要になったり、分割が不均一になり易くなるという問題がある。
フィルムコートを施した場合に、フィルムコーティング工程において、ツウィンニングを生じ難く、且つ、2つに分割し易いようにした分割錠剤としては、例えば、特許文献2に記載の分割錠剤が既に提案されている。
【0008】
図15は、特許文献2に記載の分割錠剤の一例を概略的に示す図であり、図15(a)は平面図を、図15(b)は底面図を、又、図15(c)は側面図を、各々、示している。
この分割錠剤Tgは、その上面Saには、中心線に沿って、割線Ldが設けられており、上面Saに割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の各々は、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から、錠剤の周縁方向に、次第に肉厚になるような傾斜した平面を有しており、且つ、錠剤Tgの下面Sbが、その形状が、中央部Cが縁部Eより盛り上がるような凸面形状とされている。
【0009】
この分割錠剤Tgは、錠剤Tgの下面Sbを、中央部Cが縁部Eより盛り上がるような凸面形状にしているため、錠剤Tg、・・・同士が、互いに、面接触する場合より、点接触する場合の方が多くなる。このため、フィルムコーティングの工程中に、ツウィンニング等が生じ難い。
また、錠剤Tgは、2つに分割する際に、薬剤師や患者等が手指で、2つの領域R1、R2の各々を直接つかんで、割線Ldに沿って分割するという方法の他に、錠剤Tgを、上方より下方に押せば2つに割ることができるという利点がある。
【0010】
また、図16は、特許文献2に記載の分割錠剤の他例を概略的に示す図であり、図16(a)は平面図を、図16(b)は底面図を、又、図16(c)は側面図を、各々、示している。
この分割錠剤(下杵曲型カラテ錠)Thは、その上面Saには、中心線に沿って割線Ldが設けられており、その上面Saに割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の各々は、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から、錠剤Thの周縁E方向に、次第に肉厚になるような凹面形状を有しており、且つ、錠剤Thの下面Sbが、その形状が、中央部Cが縁部Eより盛り上がるような凸面形状とされている。
【0011】
この分割錠剤Thも、分割錠剤Tgと同様に、錠剤Thの下面Sbを、中央部Cが縁部Eより盛り上がるような凸面形状にしているため、錠剤Th、・・・同士が、互いに、面接触するより、点接触し易い構成にしてある。
更に、この分割錠剤Thでは、その上面Saに割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の各々の形状を、凹面形状とすることで、錠剤Thの表面から、平面形状の部分をなくすようにしているので、分割錠剤Tgに比べ、フィルムコーティングの工程中に、更に、ツウィンニングが生じ難い。
また、錠剤Thは、2つに分割する際に、薬剤師や患者等が手指で、2つの領域R1、R2の各々を直接つかんで、割線Ldに沿って分割するという方法の他に、錠剤Thを、上方より下方に押せば2つに割ることができるという利点がある。
【0012】
ところで、錠剤は、保存中に、湿気たり、埃、かび、細菌等に汚染されないようにするため、一般に、プレススルーパック(一般に、PTP包装と言われている。)に収容されている。
図17は、そのようなプレススルーパックの一例を模式的に示す断面図である。
このプレススルーパック101は、収納本体102と、封緘シート103とを備える。
収納本体102は、一般に、ポリ塩化ビニルやポリプロピレンや環状ポリオレフィン等の合成樹脂によって製されており、板状部102a、・・・、102aによって連結され、通常、錠剤T、・・・、Tの形状に応じて形成された複数の収納凹所102b、・・・、102bを有した形状となっている。
また、封緘シート103は、アルミニウム箔等で製される基材105と、基材105の片側表面上に設けられた接着剤層104とを備える。
そして、プレススルーパック101は、収納凹所102b、・・・、102bの各々内に、錠剤T、・・・、Tを収納させた状態で、封緘シート103の接着剤層104と収納本体102の板状部102a、・・・、102aの各々とが接着されて、収納本体102が封緘シート103により密封されて構成されている。
【0013】
このようなプレススルーパック101は、収納本体102の収納凹所102b、・・・、102bの外側となる凸部102c、・・・、102cの各々を押圧すれは、収納凹所102b、・・・、102bの各々を密封している封緘シート103の部分r1、・・・、r1が、収納凹所102b、・・・、102bの各々に収容された錠剤T、・・・、Tの各々によって、破断して、プレススルーパック101から錠剤T、・・・、Tを一個ずつ取り出すことができるようになっている。
このようなプレススルーパック101に、分割錠剤Te、Tfを収納されている場合には、一般に、収納凹所102b、・・・、102bの各々に収容された分割錠剤Te、Tfによって、破断して、プレススルーパック101から分割錠剤Te、Tfを一個ずつ取り出し、その後、必要により、分割錠剤Te、Tfを、薬剤師または患者が手指で、2つに分割している。
また、特許文献2によれば、プレススルーパック101に、分割錠剤Tg、Thを収納した場合には、プレススルーパック101から、分割錠剤Tg、Thを取り出す前にも、分割錠剤Tg、Thを2つに分割できる、との記載がある。
【0014】
このように、分割錠剤Tg、Thを、プレススルーパック101から取り出す前に、2つに分割できるようにすれば、分割錠剤Tg、Thを2つに分割する際に、分割錠剤Tg、Thを手指でつかむ必要がなくなる。これにより、分割錠剤Tg、Thを2つに分割する際に、手指により錠剤Tg、Thが汚染されるといった事態が生じない。
しかしながら、分割錠剤Tg、Thは、上方から下方に縦方向に力を加えて分割しようとした場合には、2つに分割し難いという問題や、打錠工程やコーティング工程において、不良品が発生し易いという問題を十分に解決できているとは言えず、更に、分割錠剤Tg、Thは、ある場所からある場所に空気輸送したり、プレススルーパック101や瓶詰めにして搬送した場合に、搬送中に、欠けが生じ易い、という問題がある。
【0015】
例えば、分割錠剤Tgを上方から下方に縦方向に力を加えて分割しようとした場合(図18(a)を参照)には、図18(b)に示すように、錠剤Tgの上面Saのエッジ部Peが、尖がっているため、この尖がったエッジ部Peに力が集中し、エッジ部Peが押し潰れたり欠ける場合がある。
また、分割錠剤Tgでは、打錠工程において、尖がったエッジ部Peにおいて、キャッピングを生じ易いという問題がある。
また、錠剤Tgの上面Saに割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の各々が平面であるために、ある錠剤Tgの領域R1とある錠剤Tgの領域R1と互いに接触したり、ある錠剤Tgの領域R1とある錠剤Tgの領域R2と互いに接触したり、また、ある錠剤Tgの領域R2とある錠剤Tgの領域R2と互いに接触したりする関係になると、錠剤Tgと錠剤Tgとが面接触する関係になると、この場合には、錠剤Tg、・・・同士が、面接触したしまうため、コーティング工程において、ツウィンニングが生じるという問題が、尚、解決されない。
また、錠剤Tgの上面Saのエッジ部Peが、尖がっているため、コーティング工程において、錠剤Tg、・・・が互いに衝突することで、コアエロージョン(素錠の摩損する現象)や、エッジチッピング(縁部分の欠ける現象)等を生じ易い。
また、錠剤Tg、・・・を、ある場所からある場所に空気輸送すると、空気輸送する際に、錠剤Tg、・・・同士が互いに衝突したり、錠剤Tg、・・・が輸送管に衝突したりすることで、錠剤Tgの上面Saのエッジ部Peが、欠けてしまうといった問題や、また、プレススルーパック101にして搬送すると、搬送中に生じる振動等により、錠剤Tgの上面Saのエッジ部Peが、収納本体102や封緘シート103に衝突し、欠けを生じたり、また、封緘シート103がエッジ部Peにより破断してしまう、といった問題がある。
また、瓶詰めにした場合には、搬送中に生じる振動等により、錠剤Tg、・・・同士が衝突したり、錠剤Tg、・・・が瓶に衝突したりして、エッジ部Peが、欠けてしまうといったような問題がある。
【0016】
更には、錠剤Tgをプレススルーパック101に収容した場合、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102b内に、錠剤Tgが、封緘シート103の方に、錠剤Tgの割線Ldが設けられた側の上面Saが向いている場合(図19(a)中の右側の収納凹所102b内に収容されている錠剤Tgを参照)には、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102bとなる凸部102cを、指で押したときには、錠剤Tgの下面Sbの凸形状の中央部を指で押すことにより、錠剤Tgを容易に2つに分割することができる(図19(b)中の右側の収納凹所102b内に収容されている錠剤Tgを参照)ものの、これとは逆に、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102b内に、錠剤Tgが、収納本体102の方に、錠剤Tgの割線Ldが設けられた側の上面Saが向いている場合(図19(a)中の左側の収納凹所102b内に収容されている錠剤Tgを参照)には、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102bとなる凸部102cを指で押すと、収容凹所102bがV字状にへこみ、収容凹所102bの内部に存在する錠剤Tgは、その上面Saの割線Ldと2つの領域R1、R2で形成される凹所に指が入り込むため、指に相当の力を入れなければ、錠剤Tgが2つに分割できないという問題がある。
【0017】
このため、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102bから錠剤Tgを取り出す前に、錠剤Tgを容易に2つに分割できるようにするためには、図19(a)中の右側に示すように、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102b、・・・の各々に収容する錠剤Tg、・・・の全てが、封緘シート103の方に、錠剤Tgの割線Ldが設けられた側の上面Saが向くように方向規制しなければならないが、このように錠剤Tg、・・・の全ての向きをある方向に方向規制して、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102b、・・・の各々に収容するには、実現するのが極めて難しいという問題がある。
【0018】
また、仮に、そのような方向規制をして、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102b、・・・の各々に、全ての錠剤Tg、・・・を収容できたとしても、錠剤Tg、・・・の各々を、封緘シート103の方に、錠剤Tgの割線Ldが設けられた側の上面Saが向くようにして、収納凹所102b、・・・の各々に収容した場合には、尖がったエッジ部Peが封緘シート103の方向に向き合うため、尖がったエッジ部Peにより、封緘シート103が、指等で押さなくても、勝手に、破断し易い。
また、分割錠剤Thも、分割錠剤Tgと同様、上方から下方に縦方向に力を加えて分割しようとした場合(図20(a)を参照)には、錠剤Thの上面Saのエッジ部Peが、尖がっているため、この尖がったエッジ部Peに力が集中し、エッジ部Peが押し潰れたり欠けたり等して、2つに分割し難いという問題(図20(b)を参照)や、打錠工程において、尖がったエッジ部Peにおいて、キャッピングが、生じ易いという問題がある。
また、錠剤Thの上面Saのエッジ部Peが、尖がっているため、分割錠剤Tgと同様、コーティング工程において、錠剤Th、・・・が互いに衝突することて、コアエロージョン(素錠の摩損する現象)や、エッジチッピング(縁部分の欠ける現象)等を生じ易い。
【0019】
更にまた、錠剤Th、・・・を、ある場所からある場所に空気輸送すると、搬送中に、錠剤Th、・・・同士が衝突したり、錠剤Th、・・・が輸送管に衝突したりして、錠剤Thの上面Saのエッジ部Peに、欠けを生じたり、プレススルーパック101にして搬送すると、搬送中に生じる振動等により、錠剤Thの上面Saのエッジ部Peが、収納本体102や封緘シート103に衝突し、欠けを生じたり、また、封緘シート103がエッジ部Peにより破断してしまう、といった問題や、また、瓶詰めにした場合には、搬送中に生じる振動等により、錠剤Th、・・・同士が衝突したり、錠剤Th、・・・が瓶に衝突したりして、エッジ部Peが、欠けてしまうといったような問題がある。
【0020】
更には、錠剤Thをプレススルーパック101に収容した場合、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102b内に、錠剤Thが、封緘シート103の方に、錠剤Tgの割線Ldが設けられた側の上面Saが向いている場合(図21(a)中の右側の収納凹所102b内に収容されている錠剤Thを参照)には、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102bとなる凸部102cを、指で押したときには、錠剤Thの下面Sbの凸形状の中央部を指で押すことにより、錠剤Thを容易に2つに分割することができる(図21(b)中の右側の収納凹所102b内に収容されている錠剤Thを参照)ものの、これとは逆に、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102b内に、錠剤Tgが、収納本体102の方に、錠剤Thの割線Ldが設けられた側の上面Saが向いている場合(図21(a)中の左側の収納凹所102b内に収容されている錠剤Thを参照)には、プレススルーパック101の収納本体102の収納凹所102bとなる凸部102cを指で押すと、収容凹所102bがV字状にへこみ、収容凹所102bの内部に存在する錠剤Thは、その上面Saの割線Ldと2つの領域R1、R2で形成される凹所に指が入り込むため、指に相当の力を入れなければ、錠剤Thが2つに分割できないという問題がある。
【0021】
また、錠剤Thの場合には、上面Saに割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の各々が凹面にしているので、分割錠剤Tgのように、錠剤同士が互いに面接触するということが無いため、コーティング工程において、分割錠剤Tgに比べ、ツウィンニングが生じ難いものの、錠剤Thの上面Saの割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の各々が凹面とされているため、割線Ldにおいて分割がされない場合、2つの領域R1、R2のいずれかの割線Ldの近傍において、錠剤Thが2つに割れてしまう、という現象を生じ易い(図20(b)の割目R11を参照)。
更には、プレススルーパックに収納された分割錠剤を、プレススルーパックに収納した状態のまま分割した場合、従来のプレススルーパックシートは、錠剤を1つずつ取り出すことを前提に作製されているため、2つに分割された錠剤を、収納凹所102b、・・・の各々からいちいち取り出さなければならず、プレススルーパックから2つに分割された錠剤を取り出す作業が煩わしいという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開昭61-289027号公報
【特許文献2】特開平8-53345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、以上のような問題を解決するためになされたものであって、錠剤の上面または下面に対して方向規制をしなくとも、容易かつ精度よく2分割できるとともに、製造時、空気輸送時及び/又は搬送時に、錠剤に欠けを生じ難く、且つ、フィルムコーティングした場合にも、ツウィンニング等の問題を生じないようにした、分割容易な錠剤および分割容易な錠剤の製造方法を提供することを目的としている。
更に、本発明は、薬剤師や患者等が、一度に分割錠剤を手指で触れることなく、簡便に分割できるようにした分割容易な錠剤および分割容易な錠剤の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明における錠剤は、例えば、下記の(1)〜(8)の錠剤があげられる。
(1) 錠剤の上面に中心線に沿って形成された割線と、
前記錠剤の上面に前記割線により形成される2つの領域の各々に、前記割線を囲むように且つ錠剤の縁部より内側に位置するように稜線と、
前記錠剤の下面に、前記錠剤の縁部から中心部に向かって徐々に盛り上がる形状とを設け、且つ、
前記2本の稜線の各々の稜線周辺領域を、凸面形状の曲面で構成した、分割錠剤。
(2) 前記錠剤の上面に前記割線により形成される2つの領域の各々の、前記割線の起端となる線の各々から前記2つの稜線の各々迄の面の形状が、凸面形状の曲面で構成されている、前記(1)に記載の分割錠剤。
(3) 前記割線が、前記錠剤の縁部の上面より、深い溝で形成されていることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載の分割錠剤。
(4) 前記割線が、V溝又はU溝であることを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の分割錠剤。
(5) 前記割線の起端となる線の各々が、前記錠剤の縁部の上面より上方の位置に設けられていることを特徴とする、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の分割錠剤。
(6) 前記錠剤の上面の2つの稜線の各々から前記錠剤の縁部までの形状が、急な斜面であることを特徴とする、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の分割錠剤。
(7) 前記急な斜面が、断面視した場合、直線または凸面形状の曲線であることを特徴とする、前記(6)に記載の分割錠剤。
(8) 前記割線が、前記錠剤の縁部との交点の近傍領域の各々が、前記割線を挟むようにして形成された2つの凸面形状に面取りされていることを特徴とする、前記(1)〜(7)のいずれかに記載の分割錠剤。
【0025】
前記(1)に記載の分割錠剤は、錠剤の上面に中心線に沿って形成された割線と、錠剤の上面に割線により形成される2つの領域の各々に、割線を囲むように且つ錠剤の縁部より内側に位置するように稜線と、錠剤の下面に、錠剤の縁部から中心部に向かって徐々に盛り上がる形状とを設け、且つ、2本の稜線の各々の稜線周辺領域の各々を、凸面形状の曲面で構成した。
この分割錠剤では、錠剤の上面に割線により形成される2つの領域の各々に稜線を形成する際に、2本の稜線の各々の稜線周辺領域を、凸面形状の曲面で構成し、錠剤の上面から尖ったエッジ部を無くすようにしているので、錠剤の上方から下方に力を加えた場合に、錠剤に欠けを生じることなく、割線に沿って、きれいに分割できる。且つ、打錠工程、空気輸送時や、プレススルーパックや瓶詰めにして搬送する際に、錠剤の欠けが生じ難い。
【0026】
また、錠剤の上面から尖ったエッジ部を無くすようにしているので、コーティングの工程において、コアエロージョンや、エッジチッピング等を生じ難い。
また、錠剤の上面から尖ったエッジ部を無くすようにしているので、プレススルーパックの収納凹所に錠剤を収容した場合に、錠剤により、手指等で押さなくても、勝手に、封緘シートが破断するといった事態が生じ難い。
【0027】
前記(2)に記載の分割錠剤は、前記(1)に記載の分割錠剤の、錠剤の上面に割線により形成される2つの領域の各々の、割線の起端となる線の各々から2つの稜線の各々迄の面の形状が、凸面形状の曲面で構成されている。
ここで、2つの領域の各々の、割線の起端となる線の各々から2つの稜線の各々迄の面の形状の、「凸面形状の曲面」は、ゆるやかな隆起曲面となっている。
より具体的に説明すると、2つの領域の各々の表面は、割線の起端となる線から稜線方向に、曲率の小さい面から、次第に、曲率の大きい面になるように曲率が連続的に変化することで、全体として、ゆるやかな隆起曲面となっている。
【0028】
この分割錠剤では、錠剤の下面に、錠剤の縁部から中心部に向かって徐々に盛り上がる形状を設けているので、プレススルーパックの収納本体の収納凹所内に、封緘シートの方に、錠剤の割線が設けられた側の上面が向いている場合には、プレススルーパックの収納本体の収納凹所となる凸部を、指で押したときには、錠剤の下面の凸形状の中央部を指で押すことにより、錠剤を容易に2つに分割することができる。
且つ、割線の起端となる線の各々から2つの稜線の各々迄の面の形状を凸面形状の曲面で構成しているので、プレススルーパックの収納凹所に、錠剤の割線が設けられた側が、収納本体の方を向くように収容された場合でも、プレススルーパックの収納凹所の凸部を指で押したときには、側面視した場合、概ねV字形状に押しつぶされる収納凹所や指の形状に、錠剤の上面の割線により形成される2つの領域の各々が対向する曲面を持っているため、指に力を入れなくても、割線を開く方向に、錠剤に力が働く。これにより、プレススルーパックの収納凹所に、錠剤の割線が設けられた側が、収納本体の方を向くように収容された場合でも、錠剤を容易に2つに分割することができる。
【0029】
このように、この分割錠剤では、プレススルーパックの収納本体の収納凹所内に、錠剤を方向規制することなく収容した場合にも、プレススルーパックから錠剤を取り出す前に、2つに分割することができる。
また、この分割錠剤は、上面に2つの凸形状の面と、下面に凸形状の面とを有しているので、錠剤同士が面接触せず、点接触する。これにより、コーティングの工程において、ツウィンニングを生じ難い。
【0030】
前記(3)に記載の分割錠剤は、前記(1)又は(2)に記載の分割錠剤の、割線が、錠剤の縁部の上面より、深い溝で形成されていることを特徴とする。
ここに、本発明で用いる用語「深い溝」は、錠剤の上面の縁部より、その最深部が、下に位置する溝を意味する。
より特定的には、錠剤の底面の頂点から割線の最深部までの垂直方向の距離が、錠剤の底面の頂点から錠剤の縁部の上面までの垂直方向の距離に比べて、短い関係にあることを意味する。
この分割錠剤では、錠剤の割線を、通常の分割錠剤の割線に比べて、深く形成していているので、割線に沿って、きれいに分割できる。
【0031】
前記(4)に記載の分割錠剤は、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の分割錠剤の、割線がV溝又はU溝であることを特徴とする。
ここで、本明細書で用いる用語「V溝」は、V溝と概ねV溝である場合とを意味する。また、「概ねV溝」は、例えば、V溝の頂角の近傍が丸く曲線で形成されているような形状や、放物線(2次曲線)の頂点周辺のような形状や、V溝の頂角の近傍の丸い曲線部分が、屈曲部を有する多角形状にされている場合等を含む。
また、本明細書で用いる用語「U溝」は、U溝と概ねU溝である場合とを意味する。また、「概ねU溝」は、例えば、U溝の丸い曲線部分が、屈曲部を有する多角形状にされている場合等を含む。
この分割錠剤では、割線を形成する面の形状を、平面又は凹面とし、割線の起端となる線から、稜線の各々までの2つの領域の各々の凸面形状と異なる形状にしている。
割線は、V溝又はU溝であるので、割線の最深部から割線の起端となる線の各々までの錠剤の厚さは、V溝の場合には、概ね一様に次第に厚くなり、U溝の場合には、割線領域内において、割線の最深部から割線の起端となる線の各々までゆるやかに厚くなり、割線の起端となる線の各々の近傍において急激に厚くなる。
【0032】
一方、割線の起端となる線の各々から稜線の各々までの2つの領域の各々迄の面は凸面形状とされているので、割線の起端となる線から稜線の各々の方向の、起端となる線の近傍の各々の位置においては、錠剤の厚さが急激に厚くなる。
このように、この分割錠剤では、割線領域内に於ける、錠剤の厚さの変化と、割線の起端となる線から稜線の各々の方向の、起端となる線の近傍の各々の位置に於ける錠剤の厚さの変化をとを著しく異ならせるとともに、割線の起端となる線から稜線の各々の方向の、起端となる線の近傍の各々の位置に於ける錠剤の厚さを急激に厚くなるようにし、単位体積当りに錠剤の外部から働く力が、割線領域内において大きく、且つ、割線の起端となる線から稜線の各々の方向の、起端となる線の近傍の各々の位置において、割線領域内の単位体積当りに錠剤の外部から働く力に比べ、小さくなるようにしているので、この錠剤は、2つに分割すると、割線に従ってきれいに分割できる。
【0033】
前記(5)に記載の分割錠剤は、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の分割錠剤の、割線の起端となる線部の各々が、錠剤の縁部の上面より上方の位置に設けられていることを特徴とする。
ここに、「割線の起端となる線」は、割線の起端となる2本の線を意味する。
また、「錠剤の縁部の上面より上方の位置」は、より特定的には、割線の起端となる線の各々から2つの稜線の各々迄の2つの面の各々の表面上の位置を意味する。
分割錠剤は、割線を大きく(割線の深さを深く)すれば、2つに分割し易くなるものの、割線を大きく(割線の深さを深く)する際に、錠剤の上面から錠剤に縦方向に深く割線を形成すると、割線が設けられた領域において、錠剤の機械的強度が弱くなり、分割することを意図していないにもかかわらず、錠剤が、勝手に、2つに分割されてしまい易くなるという問題がある。
【0034】
この分割錠剤では、割線の起端となる線を錠剤の上面に形成するのではなく、錠剤の縁部の上面より上方の位置に設けているので、錠剤の上面から錠剤に縦方向に深く割線を形成することなく、割線を大きく(割線の深さを深く)することができる。
これにより、錠剤の上面から錠剤に縦方向に深く割線を形成した場合のように、割線が設けられた領域において、錠剤の機械的強度が弱くすることなく、割線を大きく(割線の深さを深く)することができるので、2つに分割し易く、且つ、分割することを意図していない場合に、錠剤が、勝手に、2つに分割されてしまうことのない、分割錠剤を得ることができる。
【0035】
前記(6)に記載の分割錠剤は、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の分割錠剤の、錠剤の上面の2つの稜線の各々から錠剤の縁部からまでの形状が、急な斜面であることを特徴とする。
この分割錠剤では、錠剤の上面の2つの稜線の各々から錠剤の縁部からまでの形状を、急な斜面にし、錠剤の上面の割線の起端となる線から稜線までの形状を、2つの稜線の各々から錠剤の縁部からまでの形状に比べ、緩やかな隆起曲線にしているので、錠剤に上から下方向に力を加えた場合、割線を開く方向に力が加わり易い。これにより、小さな力で、割線に沿って、きれいに分割することができる。
【0036】
前記(7)に記載の分割錠剤は、前記(6)に記載の分割錠剤の、急な斜面が、断面視した場合、直線または凸面形状の曲線であることを特徴とする。
この分割錠剤では、錠剤の上面に形成する2つの稜線の近傍が、尖ったエッジ部にならず、凸面形状の曲面で構成され、且つ、錠剤に上から下方向に力を加えた場合に、割線を開く方向に力が加わり易いようにするために、錠剤の上面の割線の起端となる線から稜線までの形状を、緩やかな隆起曲線にできる限り、錠剤の上面の稜線から錠剤の縁部までの形状を急な斜面の形状は、断面視した場合に、凹面でなければ、直線または凸面形状の曲線であってもよい。
【0037】
したがって、錠剤の上面の稜線から錠剤の縁部までの形状を急な斜面の形状を、直線または凸面形状の曲線にするかは、錠剤のデザイン面から決定すればよい。
従って、分割錠剤の薬効、効能、効果等に基づいて、錠剤の形状を、医師、薬剤師、患者等に、印象付けることができるように、錠剤の形状を作製することができる。
【0038】
前記(8)に記載の分割錠剤は、前記(1)〜(7)のいずれかに記載の分割錠剤の、割線が、錠剤の縁部との交点の近傍領域の各々が、割線を挟むようにして形成された2つの凸面形状に面取りされていることを特徴とする。
この分割錠剤では、錠剤の縁部と交わる交点の近傍領域の各々が、割線を挟むようにして形成された2つの凸面形状に面取りされているので、更に、錠剤に欠けが生じ難い。
尚、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の分割錠剤は、素錠(裸錠)であっても、表面に、フィルムコートや糖衣等の適当な剤皮が施されたものであってもよい。
【0039】
また、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の分割錠剤は、有効成分の他に、賦形剤、結合剤、崩壊剤、場合によっては滑沢剤などを含んでいてよい。更には、必要により、甘味剤、着色剤、香味剤、抗酸化剤などが添加されて製剤化されていてもよい。
このような分割錠剤は、例えば、圧縮成形法によって製造することができる。
圧縮成形法としては、混合粉体を直接打錠してもよく、粉体を乾式や湿式で所定の粒径・粒度分布を有する造粒物を造粒し、乾燥工程、整粒工程を経て、顆粒剤や細粒剤とし、これに、少量の滑沢剤を混合し、その後、圧縮成形して錠剤としてもよい。
【0040】
前記(1)〜(8)のいずれかに記載の分割錠剤は、いずれも、尖った部分を有していないので、打錠工程において、スティッキングやラミネーティングやキャッピング等が生じ難いので、単発式のエキセントリック型打錠機のみならず、ロータリー型打錠機を用いて連続打錠により製造することができる。
【0041】
尚、滑沢剤は、有効成分、賦形剤等中に、予め、添加しておき、有効成分、賦形剤等と滑沢剤との混練物を打錠するようにしてもよく(このような錠剤の製造方法は、内部滑沢法と称される)、また、有効成分、賦形剤等中には添加せずに、杵や臼の表面に滑沢剤を噴霧して、表面に滑沢剤層を有する杵や臼を用いて、有効成分、賦形剤等の混練物を打錠するようにしてもよい(このような錠剤の製造方法は、外部滑沢法と称される)。
また、コーティング法としては、慣用のコーティング法であれば、種々のコーティング法を用いることができ、例えば、パン(あるいはドラム)コーティング法や流動コーティング法等を用いることができる。
尚、このようなコーティングの膜圧は、特に限定されることはないが、10μm以上50μm以下になるようにするのが好ましい。
【0042】
また、賦形剤としては、種々のものを用いることができ、特に限定されることはなく、例えば、乳糖、マンニトール、ショ糖、ブドウ糖などの糖類や、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン、部分α化デンプンなどのデンプン類、あるいは、沈降炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、塩化ナトリウムなどの無機塩類や結晶セルロースなどの公知のものであれば、何でも用いることができる。
尚、賦形剤は、一般に、一錠中、10重量部以上95重量部以下の範囲で含まれる。
【0043】
また、結合剤としては、種々のものを用いることができ、特に限定されることはなく、例えば、部分けん化ポリピニルアルコール、ヒドロキシプロセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセツロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、メチルセルロース、アラビアゴム、デンプン類などの公知のものであれば、何でも用いることができる。
尚、結合剤は、一般に、一錠中、0.5重量部以上5重量部以下の範囲で含まれる。
【0044】
また、崩壊剤としては、種々のものを用いることができ、特に限定されることはなく、例えば、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分アルファ化デンプンヒドロキシプロピルスターチなどの公知のものであれば、何でも用いることができるが、好ましくは、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウムである。
尚、崩壊剤は、一錠中、1重量部以上15重量部以下の範囲で含まれる。
【0045】
打錠する際に用いられる滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、滑石、水素添加植物油、タルクなどがあげられるが、好ましくはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムである。
尚、滑沢剤は、一般に、一錠中、0.01重量部以上5重量部以下の範囲で含まれる。
【0046】
本発明におけるプレススルーパックは、例えば、板状部によって連結された複数の収納凹所を有する収納本体と、基材と、基材の片側表面上に設けられた接着剤層とを有する封緘シートとを備え、収納本体の複数の収納凹所の各々に、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の分割錠剤を収容させた状態で、封緘シートの接着剤層と収納本体の板状部とが接着されて、収納本体が封緘シートにより密封されており、封緘シートは、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の分割錠剤を収容した収納凹所の外部となる凸部を指で押したときには、封緘シートの接着剤層と収納本体の板状部との接着部において、浮きや剥がれを生じることなく、収納凹所を密封している封緘シートの部分を破断させて、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の分割錠剤を取り出すことができ、且つ、収納本体から容易に剥離できるように収納本体の板状部に接着されている。
【0047】
ここに、「収納本体から容易に剥離できるように収納本体の板状部に接着されている。」は、より詳しく説明すると、プレススルーパックの封緘シートの一部をめくり上げたときに、封緘シートが容易に、且つ、破断することなく、収納本体の板状部から剥離できるように接着されていることを意味する。
また、このプレススルーパックでは、収納本体の収納凹所のいずれかに、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の分割錠剤が、1以上収納されていればよい。
また、収納本体の収納凹所のいずれかに収容される分割錠剤は、収納凹所内に、分割錠剤の割線が設けられた表面が、収納本体側を向くように収納されていてもよく、分割錠剤の割線が設けられた表面に対向する表面が収納本体側を向くように収納されていてもよく、更には、分割錠剤の割線が設けられた表面が、収納本体側を向くように収納されたものと、分割錠剤の割線が設けられた表面に対向する表面が収納本体側を向くように収納されたものとの両者が、任意に混在するように収納本体の収納凹所の各々に収納されていてもよい。
【0048】
また、このプレススルーパックの封緘シートと収納本体の板状部との接着強度が、T剥離試験を剥離速度200mm/分で行った場合には、0.9N/15mm幅以上3.1N/15mm幅以下であることが好ましく、1.9N/15mm幅以上2.7N/15mm以下であることが、更に好ましい。
また、T剥離試験を剥離速度100mmで行った場合には、4.2N/15mm幅以上7.0N/15mm以下であることが好ましく、は、4.8N/15mm以上6.5N/15mm幅以下であることが、更に好ましい。
ここに、本明細書で用いる単位「N/15mm幅」は、収納本体と封緘シートとを接着し、その後、収納本体と封緘シートとの接着部を15mm幅に切断し、これをテスト用試料として、T剥離試験をしたときの剥離強さを意味する。
【0049】
又、本明細書で用いる用語「T剥離試験」は、JIS K6845に準じた試験を意味する。
上記範囲内であれば、収納本体の分割錠剤を収納した収納凹所の外面となる凸部を、封緘シート方向へ、指で押し出して、封緘シートの収納凹所を密封している部分を破断して分割錠剤を取り出す際に、封緘シートの分割錠剤が取り出された収納凹所(いわゆる、ポケット)の領域の外側の封緘シートの接着剤層と収納本体の板状部との接着部において、収納本体と封緘シートとの間に、剥がれや浮きが生じず、且つ、封緘シートを剥してめくり上げたときには、封緘シートに破断を生じることなく、収納本体から封緘シートを引き剥がすことができる。
【0050】
これに対し、上記範囲未満では、封緘シートを剥してめくり上げたときには、封緘シートに破断を生じることなく、収納本体から封緘シートを引き剥がすことができるものの、収納本体の分割錠剤を収納した収納凹所の外面となる凸部を、封緘シート方向へ、指で押し出して、封緘シートを破断して分割錠剤を取り出す際に、封緘シートの分割錠剤が取り出された収納凹所の領域の外側の封緘シートの接着剤層と収納本体の板状部との接着部において、収納本体と封緘シートとの間に剥がれや浮きが生じ、好ましくない。
【0051】
また、上記範囲を超えると、収納本体の分割錠剤を収納した収納凹所の外面となる凸部を、封緘シート方向へ、指で押し出して、封緘シートを破断して分割錠剤を取り出す際に、分割錠剤が取り出された収納凹所の外側の封緘シートの接着剤層と収納本体の板状部との接着部において、封緘シートの収納本体と封緘シートとの間に、剥がれや浮きが生じないものの、封緘シートを剥してめくり上げ、収納本体から封緘シートを引き剥がすことが困難であり、これを無理に引き剥そうとすると、封緘シートの一部が破断して好ましくない。
【0052】
ここで、「接着成分」は、通常の、ヒートシールやコールドシールに用いられる接着剤を意味する。
また、「接着力低下成分」は、接着成分の接着力を弱める作用を有する成分を意味し、接着力の弱い接着剤や、通常、離型剤、充填剤等として用いられるものを意味し、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の離型剤等として用いられる樹脂を挙げることができる。また、収納本体がポリ塩化ビニルで製されている場合は、接着力低下成分として、アクリル樹脂を挙げることができる。
また、充填剤としては、酸化珪素、珪酸マグネシウム、二酸化チタン、亜鉛華、炭酸カルシウム、アルミナ、タルク等の微粉末を挙げることができる。
【0053】
このプレススルーパックでは、接着成分に適当量の接着低下成分を配合することで、接着剤の接着力を、収納本体の分割錠剤を収納した収納凹所の外面となる凸部を、封緘シート方向へ、指で押して、封緘シートの一部を破断して、固形物を取り出す際に、封緘シートに、固形物が取り出された収納凹所(いわゆる、ポケット)の領域の外側の部分において、封緘シートの収納本体と封緘シートとの間に剥がれや浮きが生じず、且つ、封緘シートの一部を収納本体から剥してめくり上げたときには、封緘シートに破断を生じることなく、収納本体から封緘シートを引き剥がすことができる接着力に調整している。
【0054】
本発明におけるプレススルーパックは、封緘シートの接着剤層が、封緘シートの片側の表面上に、部分塗工されていてもよい。
「部分塗工」の方法としては、種々の方法が考えられるが、収納本体の収納凹所の各々内に収容される分割錠剤を完全に密封することができる限り、封緘シートの収納本体に対向する側の表面に、接着剤を、編目状、線状等のいずれに塗工してもよく、又は、これらの少なくとも2種を組み合わせて塗工してもよい。
【0055】
このプレススルーパックは、接着剤を部分塗工することで、接着剤の接着力を、分割錠剤を収納した収納凹所の外面となる凸部を、指で押して、封緘シートの一部を破断して固形物を取り出す際に、いわゆる、ポケットの外側において、収納本体と封緘シートとの剥がれや浮きが生じず、且つ、封緘シートの一部を収納本体から剥してめくり上げたときには、封緘シートに破断を生じることなく、収納本体から封緘シートを引き剥がすことができるように調整している。
したがって、このプレススルーパックは、分割錠剤を一つずつ、収納凹所から取り出したり、収納本体から封緘シートを引き剥がすことで、このプレススルーパックに収容されている分割錠剤を一度に取り出すこともできる。
【0056】
更には、プレススルーパックの収納凹所の各々に、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の分割錠剤を収容するようにしているので、分割錠剤の方向規制をすることなく、収納凹所の各々に分割錠剤を収容した場合にも、分割錠剤を収容した収納凹所の外部となる凸部を指で押すことで、収納凹所から分割錠剤を取り出す前に、容易且つ簡単に分割錠剤を2つに分割することができる。
したがって、収納凹所から分割錠剤を取り出す前に、容易且つ簡単に分割錠剤を2つに分割してから、2つに分割された錠剤を収納凹所から取り出すようにすることもできる。
更には、プレススルーパックの収納凹所の各々に収容されている分割錠剤を、収納凹所から分割錠剤を取り出す前に、容易且つ簡単に分割錠剤を2つに分割し、その後、収納本体から封緘シートを引き剥がすことで、このプレススルーパックに収容されている2つに分割された錠剤を一度に取り出すこともできる。
【発明の効果】
【0057】
前記(1)に記載の分割錠剤では、錠剤の上面に割線により形成される2つの領域の各々に稜線を形成する際に、2本の稜線周辺領域の各々を、凸面形状の曲面で構成し、錠剤の上面から尖ったエッジ部を無くすようにしているので、錠剤の上方から下方に力を加えた場合に、錠剤に欠けを生じることなく、割線に沿って、きれいに分割できる。且つ、打錠工程、空気輸送時や、プレススルーパックや瓶詰めにして搬送する際に、錠剤の欠けを生じ難い。
また、錠剤の上面から尖ったエッジ部を無くすようにしているので、コーティングの工程において、コアエロージョンや、エッジチッピング等を生じ難い。
また、錠剤の上面から尖ったエッジ部を無くすようにしているので、プレススルーパックの収納凹所に錠剤を収容した場合に、錠剤により、勝手に封緘シートが破断するといった事態が生じ難い。
【0058】
前記(2)に記載の分割錠剤では、錠剤の下面に、錠剤の縁部から中心部に向かって徐々に盛り上がる形状を設けているので、プレススルーパックの収納本体の収納凹所内に、封緘シートの方に、錠剤の割線が設けられた側の上面が向いている場合には、プレススルーパックの収納本体の収納凹所となる凸部を、指で押したときには、錠剤の下面の凸形状の中央部を指で押すことにより、錠剤を容易に2つに分割することができる。
且つ、割線の起端となる線から2つの稜線の各々迄の面の形状を凸面形状の曲面で構成しているので、プレススルーパックの収納凹所に、錠剤の割線が設けられた側が、収納本体の方を向くように収容された場合でも、プレススルーパックの収納凹所の凸部を指で押したときには、側面視した場合、概ねV字形状に押しつぶされる収納凹所や指の形状に、錠剤の上面の割線により形成される2つの領域の各々が対向する曲面を持っているため、従来の分割錠剤に比べ、指に力を入れなくても、割線を開く方向に、錠剤に力が働く。これにより、プレススルーパックの収納凹所に、錠剤の割線が設けられた側が、収納本体の方を向くように収容された場合でも、錠剤を容易に2つに分割することができる。
【0059】
このように、この分割錠剤では、プレススルーパックの収納本体の収納凹所内に、錠剤を方向規制することなく収容した場合にも、プレススルーパックから錠剤を取り出す前に、2つに分割することができる。これにより、プレススルーパックの収納凹所から分割錠剤を取り出す前に、収納凹所に収容されている分割錠剤を容易に2つに分割することができるプレススルーパックを実現できる。
また、この分割錠剤は、上面に2つの凸形状の面と、下面に凸形状の面とを有しているので、錠剤同士が面接触せず、点接触する。これにより、コーティングの工程において、ツウィンニングを生じ難い。
【0060】
前記(3)に記載の分割錠剤では、錠剤の割線を、通常の分割錠剤の割線に比べて、深く形成していているので、割線に沿って、きれいに分割できる。
【0061】
前記(4)に記載の分割錠剤では、割線領域内に於ける、錠剤の厚さの変化と、割線の起端となる線から稜線の各々の方向の、起端となる線の近傍の各々の位置に於ける錠剤の厚さの変化をとを著しく異ならせるとともに、割線の起端となる線から稜線の各々の方向の、起端となる線の近傍の各々の位置に於ける錠剤の厚さを急激に厚くなるようにし、単位体積当りに錠剤の外部から働く力が、割線領域内において大きく、且つ、割線の起端となる線から稜線の各々の方向の、起端となる線の近傍の各々の位置において、割線領域内の単位体積当りに錠剤の外部から働く力に比べ、小さくなるようにしているので、この錠剤は、2つに分割すると、割線に従ってきれいに分割できる。
【0062】
前記(5)に記載の分割錠剤では、割線の起端となる線を錠剤の上面に形成するのではなく、錠剤の縁部の上面より上方の位置に設けているので、錠剤の上面から錠剤に縦方向に深く割線を形成することなく、割線を大きく(割線の深さを深く)することができる。これにより、錠剤の上面から錠剤に縦方向に深く割線を形成した場合のように、割線が設けられた領域において、錠剤の機械的強度が弱くすることなく、割線を大きく(割線の深さを深く)することができるので、2つに分割し易く、且つ、分割することを意図していない場合に、錠剤が、勝手に、2つに分割されてしまうことのない、分割錠剤を得ることができる。
【0063】
前記(6)に記載の分割錠剤では、錠剤の上面の2つの稜線の各々から錠剤の縁部からまでの形状が、急な斜面にし、錠剤の上面の割線の起端となる線から稜線までの形状を、2つの稜線の各々から錠剤の縁部からまでの形状に比べ、緩やかな隆起曲線にしているので、錠剤に上から下方向に力を加えた場合、割線を開く方向に力が加わり易い。これにより、小さな力で、割線に沿って、きれいに分割することができる。
【0064】
前記(7)に記載の分割錠剤では、錠剤の上面の稜線から錠剤の縁部までの形状を急な斜面の形状を、直線または凸面形状の曲線にするかは、錠剤のデザイン面から決定すればよい。従って、分割錠剤の薬効、効能、効果等に基づいて、錠剤の形状を、医師、薬剤師、患者等に、印象付けることができるように、錠剤の形状を作製することができる。
【0065】
前記(8)に記載の分割錠剤では、錠剤の縁部と交わる交点の近傍領域の各々が、割線を挟むようにして形成された2つの凸面形状に面取りされているので、更に、錠剤に欠けが生じ難い。
【0066】
本発明におけるプレススルーパックは、例えば、接着剤を調整することで、接着剤の接着力を、分割錠剤を収納した収納凹所の外面となる凸部を、指で押して、封緘シートの一部を破断して固形物を取り出す際に、いわゆる、ポケットの外側において、収納本体と封緘シートとの剥がれや浮きが生じず、且つ、封緘シートの一部を収納本体から剥してめくり上げたときには、封緘シートに破断を生じることなく、収納本体から封緘シートを引き剥がすことができるように調整しているプレススルーパックがあげられる。
したがって、このプレススルーパックは、分割錠剤を一つずつ、収納凹所から取り出したり、収納本体から封緘シートを引き剥がすことで、このプレススルーパックに収容されている分割錠剤を一度に取り出すこともできる。
更には、プレススルーパックの収納凹所の各々に、請求項1〜8のいずれかに記載の分割錠剤を収容するようにしているので、分割錠剤の方向規制をすることなく、収納凹所の各々に分割錠剤を収容した場合にも、分割錠剤を収容した収納凹所の外部となる凸部を指で押すことで、収納凹所から分割錠剤を取り出す前に、容易且つ簡単に分割錠剤を2つに分割することができる。
【0067】
したがって、収納凹所から分割錠剤を取り出す前に、容易且つ簡単に分割錠剤を2つに分割してから、2つに分割された錠剤を収納凹所から取り出すようにすることもできる。
更には、プレススルーパックの収納凹所の各々に収容されている分割錠剤を、収納凹所から分割錠剤を取り出す前に、容易且つ簡単に分割錠剤を2つに分割し、その後、収納本体から封緘シートを引き剥がすことで、このプレススルーパックに収容されている2つに分割された錠剤を一度に取り出すこともできる。
したがって、このプレススルーパックを採用すれば、病院等における調剤業務を大幅に簡易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明における分割錠剤の一例を概略的に示す図であり、図1(a)は平面図を、図1(b)は底面図を、又、図1(c)は、図1(a)中に示すI-I線に従う側面図を、各々、示している。
【図2】本発明における分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加えて分割する際に、分割錠剤に生じる現象を模式的に示す側面図であり、図2(a)は、分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加える直前の状態を、また、図2(b)は、分割錠剤Taを上方から下方に縦方向に力を加えた直後の状態を、各々、示している。
【図3】プレススルーパックの収納本体の収納凹所に収納された本発明における分割錠剤を、収納凹所から取り出す前に、上方から下方に縦方向に力を加えて分割する際に、分割錠剤に生じる現象を模式的に示す側面図であり、図3(a)は、分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加える直前の状態を、また、図3(b)は、分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加えた直後の状態を、各々、示している。
【図4】本発明におけるプレススルーパックの使用例の一例を模式的にしめす説明図である。
【図5】本発明における分割錠剤の他の一例を概略的に示す図であり、図5(a)は平面図を、図5(b)は底面図を、又、図5(c)は側面図を、各々、示している。
【図6】本発明における分割錠剤の他の一例を概略的に示す図であり、図6(a)は平面図を、図6(b)は底面図を、又、図6(c)は側面図を、各々、示している。
【図7】本発明における分割錠剤の他の一例を概略的に示す図であり、図7(a)は平面図を、図7(b)は底面図を、又、図7(c)は側面図を、各々、示している。
【図8】本発明における分割錠剤に設ける割線の形状を概略的に示す模式図であり、図8(a)〜図8(e)の各々は、そのような割線の好ましい形状を例示している。
【図9】本発明における分割錠剤を作製するために使用した上杵の形状を概略的に示す図であり、図9(a)〜図9(c)の各々は、実験に用いた上杵を示している。
【図10】本発明における分割錠剤を作製するために使用した下杵の形状を概略的に示す図であり、図10(a)及び図10(b)の各々は、実験に用いた下杵を示している。
【図11】従来公知の下杵曲形カラテ錠を作製するために使用した上杵と下杵の形状を概略的に示す図であり、図11(a)は実験に用いた上杵を、また、図11(b)は実験に用いた下杵を、各々、示している。
【図12】落下試験における、錠剤の欠けの部位の観察場所を説明する説明図であり、図12(a)は、分割錠剤の上面Saの観察場所を、また、図12(b)は分割錠剤の下面Sbの観察場所を、各々、示している。
【図13】従来の平型分割錠剤を概略的に示す図であり、図13(a)は平面図を、図13(b)は底面図を、又、図13(c)は、図13(a)中に示すI-I線に従う側面図を、各々、示している。
【図14】特開昭61-289027号公報に記載の従来のカラテ型分割錠剤を概略的に示す図であり、図14(a)は平面図を、図14(b)は底面図を、又、図14(c)は、図14(a)中に示すI-I線に従う側面図を、各々、示している。
【図15】特開昭8-53345号公報に記載の分割錠剤の一例を概略的に示す図であり、図15(a)は平面図を、図15(b)は底面図を、又、図15(c)は、図15(a)中に示すI-I線に従う側面図を、各々、示している。
【図16】特開昭8-53345号公報に記載の分割錠剤の他例を概略的に示す図であり、図16(a)は平面図を、図16(b)は底面図を、又、図16(c)は、図16(a)中に示すI-I線に従う側面図を、各々、示している。
【図17】従来のプレススルーパックの一例を模式的に示す断面図である。
【図18】従来の分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加えて分割する際に、分割錠剤に生じる現象を模式的に示す側面図であり、図18(a)は、分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加える直前の状態を、また、図18(b)は、分割錠剤Taを上方から下方に縦方向に力を加えた直後の状態を、各々、示している。
【図19】プレススルーパックの収納本体の収納凹所に従来の分割錠剤を収納凹所に収容したまま2つに分割する場合に生じる問題を模式的に説明する図であり、図18(a)は、分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加える直前の状態を、また、図18(b)は、分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加えた直後の状態を、各々、示している。
【図20】従来の分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加えて分割する際に、分割錠剤に生じる現象を模式的に示す側面図であり、図20(a)は、分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加える直前の状態を、また、図20(b)は、分割錠剤Taを上方から下方に縦方向に力を加えた直後の状態を、各々、示している。
【図21】プレススルーパックの収納本体の収納凹所に従来の分割錠剤を収納凹所に収容したまま2つに分割する場合に生じる問題を模式的に説明する図であり、図21(a)は、分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加える直前の状態を、また、図21(b)は、分割錠剤を上方から下方に縦方向に力を加えた直後の状態を、各々、示している。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下、図面を参照しながら、本発明における分割錠剤とプレススルーパックとに
ついて、更に、詳しく説明する。
図1は、本発明における分割錠剤の一例を概略的に示す図であり、図1(a)は平面図を、図1(b)は底面図を、又、図1(c)は側面図を、各々、示している。
【0070】
この分割錠剤Taは、図1(a)に示すように、平面視した場合、円形状を有しており、その上面Saに、中心線に沿って、割線Ldが設けられている。
錠剤Taの上面Saに、割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の形状は、割線Ldを挟んで、鏡像関係にある形状を有している。
割線Ldは、錠剤Taの一縁部e1から一縁部e1の反対側の他縁部e2まで続いており、深い溝となっている。
より詳しく説明すると、この錠剤Taでは、図1(a)及び図1(c)に示すように、割線Ldは、V溝形状にされている。
尚、割線Ldの割れ易さを考慮した場合には、割線Ldを構成するV溝の頂角θは、40度以上90度以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは、45度以上90度以下の範囲であり、更に、50度以上60度以下の範囲にあることが好ましい。
尚、割線Ldの起端となる線Ld2の垂直方向(図1(c)中に示すY軸方向)の位置H2は、割線Ldの最深部(割線の最深部に形成される線)Ld1の垂直方向(図1(c)中に示すY軸方向)の位置H1より高い関係にあれば、どのような位置にあってもよい。
【0071】
しかしながら、錠剤Taの割れ易さの容易性等を考慮した場合は、上面Saの縁部Eの垂直方向の位置H3より高い位置にあることが好ましい。
また、割線Ldの最深部Ld1の垂直方向の位置H1は、錠剤Taの上面Saの縁部Eの位置H3より上に位置していてもよいが、錠剤Taの分割の容易性等を考慮した場合は、割線Ldの最深部Ld1の垂直方向の位置H1は、錠剤Taの上面Saの縁部Eの位置H3より下に位置するようにされているのが好ましい。
より特定的に説明すると、錠剤Taの底面の頂点(図1(c)中に示す頂点A5)から割線Ldの最深部Ld1までの垂直方向の距離Y3が、錠剤Taの底面の頂点A5から錠剤Taの縁部Eの上面Saまでの垂直方向の距離Y1に比べて、短い関係にあることが好ましい。
尚、分割錠剤Taは、割線Ldを大きく(割線Ldの最深部Ld1を深く)すれば、2つに分割され易くなるが、割線Ldの最深部Ld1を、錠剤Taの上面Saの位置H3より、垂直方向(図1(c)中に示すY軸方向)に、錠剤Taの下面Sb方向に深く形成すると、錠剤Taの機械的な強度が弱くなり、分割する必要がないのに、勝手に、2つに分割され易くなる。
このような問題を解決するためには、割線Ldの最深部Ld1の位置は、錠剤Taの上面Saの位置H3より、あまり深い位置に設けずに、割線Ldの起端となる線Ld2の位置A2、A2を、錠剤Taの上面Saの位置H3より、高い位置に設けることで、割線Ldを大きくするのが好ましい。
【0072】
錠剤Taの上面Saの、割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の各々には、割線Ldを囲むように、且つ、錠剤Taの縁部Eより内側に位置するように稜線L1、L2が設けられている。
稜線L1、L2の各々の稜線周辺領域RL1、RL2の各々は、尖ったエッジ部とならないように凸面形状の曲面で構成されている。
2つの領域R1、R2のうち、領域R1に形成されている稜線L1は、割線Ldの起端となる線Ld2から形成されている緩やかな隆起曲線(凸面形状の曲線)と、錠剤Taの縁部E側に、錠剤Taの縁部Eに沿って、錠剤Taの上面Saに形成されている急な斜面R3とにより形成された凸面形状の曲面とが組み合わされて構成されており、旦つ、稜線L1の稜線周辺領域RL1が凸面形状の曲面で構成されている。
【0073】
ここで、領域R1の、割線Ldの起端となる線Ld2から形成されている緩やかな隆起曲線(凸面形状の曲線)について、より具体的に説明すると、領域R1の表面は、割線Ldの起端となる線Ld2から稜線L1方向に、曲率の小さい面から、次第に、曲率の大きい面になるように曲率が連続的に変化することで、全体として、ゆるやかな隆起曲面となっている。
急な斜面R3と領域R1又は領域R2の隆起曲面は、稜線L1の頂上又は頂上近傍で結合されるが、急な斜面R3と領域R1又は領域R2の隆起曲面とは、複数の曲面を介して行われても良い。
【0074】
また、2つの領域R1、R2のうち、領域R2に形成されている稜線L2も、割線Ldの起端となる線Ld2から形成されている緩やかな隆起曲線(凸面形状の曲線)と、錠剤の縁部E側に、錠剤Taの縁部Eに沿って、錠剤Taの上面Saに形成されている急な斜面R4とにより形成された凸面形状の曲面とが組み合わされて構成されており、且つ、稜線L2の稜線周辺領域RL2も凸面形状の曲面で構成されている。
ここで、領域R2の、割線Ldの起端となる線Ld2から形成されている緩やかな隆起曲線(凸面形状の曲線)について、より具体的に説明すると、領域R2の表面は、割線Ldの起端となる線Ld2から稜線L2方向に、曲率の小さい面から、次第に、曲率の大きい面になるように曲率が連続的に変化することで、全体として、ゆるやかな隆起曲面となっている。
又、必要により、割線Ldと稜線L1との交点付近、割線Ldと稜線L2との交点付近に面取りを行ってもよい。
【0075】
また、割線Ldが錠剤の縁部Eに交わる一縁部e1の近傍位置R5、R6、及び、割線Ldが錠剤の縁部Eに交わる他縁部e2の近傍位置R7、R8は、各々、凸面形状に、面取りがされた形状になっている。
尚、面取りの形状は、平面であってもよい。
【0076】
稜線L1は、割線Ldの起端となる線Ld2と、面取りがされた形状とされている領域R5との交点A1、及び、割線Ldの起端となる線Ld2と、面取りがされた形状とされている領域R7との交点A2まで続いており、交点A1及び交点A2の各々から次第に錠剤Taの垂直方向(Y軸方向)に徐々に隆起し、錠剤Taの中心点Cから割線Ldに直交する線L3との交点A3において、垂直方向(Y軸方向)において、最高の位置H4となっている。
稜線L2も、稜線L1と同様に、割線Ldの起端となる線Ld2と、面取りがされた形状とされている領域R6との交点A1、及び、割線Ldの起端となる線Ld2と、面取りがされた形状とされている領域R8との交点A2まで続いており、交点A1及び交点A2の各々から次第に錠剤Taの垂直方向(Y軸方向)に徐々に隆起し、錠剤Taの中心点Cから割線Ldに直交する線L3との交点A3において、垂直方向(Y軸方向)において、最高の位置H4となっている。
【0077】
また、錠剤Taは、その下面Sbに、錠剤Taの縁部Eから中心部Cに向かって徐々に盛り上がる形状、即ち、凸面形状を有している(図1(c)を参照)。
今、錠剤Taの中心点Cから、中心点Cを通り割線Ldに直交する線L3と稜線L1との交点A2までの水平方向(図1(c)中に示すX軸方向)の距離をX1とし、錠剤Taの中心点Cから、中心点Cを通り割線Ldに直交する線L3と縁部Eとの交点A4までの水平方向(図1(c)中に示すX軸方向)の距離をX2とすると、距離X1の距離X2に対する割合((X1/X2)×100)は、60%以上80%以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは、70%以上80%以下の範囲の範囲であり、75%であることが、特に好ましい。
【0078】
また、今、錠剤Taの中心点Cから、錠剤Taの縁部Eの上面Saまでの垂直方向の距離をY1とし、錠剤Taの縁部Eの上面Saから、中心点Cを通り割線Ldに直交する線L3と稜線L1との交点A3までの垂直方向の距離をY2とすると、距離Y1の距離Y2に対する割合((Y1/Y2)×100)は、20%以上50%以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは、20%以上30%以下の範囲の範囲であり、23%以上25%以下であることが、特に好ましい。
また、錠剤Taの下面Sbに形成する、錠剤Taの縁部Eから中心部Cに向かって徐々に盛り上がる形状、即ち、凸面形状の曲線の曲率は、曲線半径(図1(c)に示す曲線半径Ds)の、錠剤Taの直径(図1(b)に示す錠剤Taの直径D)に対する割合(Ds/D)が、1.25以上2.5以下の範囲にあることが好ましい。
また、錠剤Taの直径Dは、分割せずに服用する際のペイシェントコンプライアンス及び分割の容易性を考慮した場合には、5mm以上14mm以下であることが好ましく、更に、7mm以上10mm以下であることが好ましい。
この分割錠剤Taは、2つに分割する際に、薬剤師や患者等が手指で、2つの領域R1、R2の各々を直接つかんで、割線Ldに沿って分割することができる。
更に、錠剤Taを、上方より下方に押せば2つに割ることができるという利点がある。
【0079】
図2は、分割錠剤Taを上方から下方に縦方向に力を加えて分割する際に、分割錠剤Taに生じる現象を模式的に示す側面図であり、図2(a)は、分割錠剤Taを上方から下方に縦方向に力を加える直前の状態を、また、図2(b)は、分割錠剤Taを上方から下方に縦方向に力を加えた直後の状態を、各々、示している。
分割錠剤Taでは、錠剤Taの上面Saの稜線L1、L2の稜線周辺領域RL1、RL2の各々を凸面形状の曲面て構成し(図2(a)を参照)、錠剤Tgや錠剤Thに見られたような、錠剤Tg、Thの上面Saの尖ったエッジ部Peをなくすようにしているので、稜線周辺領域RL1、RL2の各々が押し潰れたり欠けたり等しない。これにより、錠剤Taを、上方より下方に押せば、錠剤Taをきれいに2つに分割することができる。
【0080】
また、分割錠剤Taは、錠剤Taの上面Saから、錠剤Tgや錠剤Thに見られたような、尖がったエッジ部Peをなくすようにしているので、打錠工程において、キャッピングを生じ難い(図2(b)を参照)。
また、錠剤Taの上面Saから、尖がったエッジ部Peをなくすようにしているので、コーティング工程において、錠剤Ta、・・・が互いに衝突しても、コアエロージョンや、エッジチッピング等を生じ難い。
また、錠剤Ta、・・・を、ある場所からある場所に空気輸送しても、空気輸送する際に、錠剤Ta、・・・同士が互いに衝突したり、錠剤Ta、・・・が輸送管に衝突しても、錠剤Taには、尖ったエッジ部Peがないので、錠剤Taは、欠けを生じ難い。
また、この分割錠剤Taは、上面に2つの凸形状の面R1、R2と、下面に凸形状の面R6とを有しているので、錠剤同士が面接触せず、点接触する。これにより、コーティングの工程において、ツウィンニングを生じ難い。
更に、この錠剤Taでは、割線LdをV溝形状にしている。
【0081】
割線LdをV溝にすると、最深部Ld1と起端となる線Ld2、Ld2の各々とを結ぶ、V溝を形成する2つの傾斜面SLd、SLdの各々は、平面となる。
一方、この錠剤Taでは、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から、稜線L1、L2の各々までの2つの領域R1、R2の各々の形状を凸面形状とし、V溝を形成する2つの傾斜面SLd、SLdの形状とは、異なる形状にしている。
この結果、割線Ldは、V溝であるので、水平方向(図1(c)中に示すX軸方向)に対する、割線Ldの最深部Ld1から割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々までの錠剤Taの厚さ(垂直方向(図1(c)中に示すY軸方向)の厚さ)の増加率は、一様であり、一様に次第に厚くなる。
【0082】
一方、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々までの2つの領域R1、R2の各々迄の面は凸面形状とされているので、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々の方向の、起端となる線Ld2、Ld2の各々の近傍位置において、水平方向(図1(c)中に示すX軸方向)に対する、割線Ldの最深部Ld1から割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々までの錠剤Taの厚さ(垂直方向(図1(c)中に示すY軸方向)の厚さ)は、急激に厚くなる。
このように、この錠剤Taでは、割線Ldの領域内に於ける、錠剤Taの水平方向に対する垂直方向の厚さの変化と、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々の方向の、起端となる線Ld2、Ld2の各々の近傍位置に於ける錠剤Taの水平方向に対する垂直方向の厚さの変化を著しく異ならせるとともに、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々の方向の、起端となる線Ld2、Ld2の各々の近傍位置に於ける錠剤Taの水平方向に対する垂直方向の厚さを急激に厚くなるようにし、単位体積当りに錠剤Taの外部から働く力が、割線Ldの領域内において大きく、且つ、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々の方向の、起端となる線Ld2、Ld2の各々の近傍位置において、割線Ldの領域内の単位体積当りに錠剤Taの外部から働く力に比べ、小さくなるようにしているので、この錠剤Taは、2つに分割すると、割線Ldに従ってきれいに分割できる。
【0083】
更に、この錠剤Taでは、割線Ldの最深部Ld1を、錠剤Taの縁部Eの上面の位置H3より、その最深部Ld1の位置H1が、下に位置するようにし、割線Ldを、通常の分割錠剤の割線に比べて、深く形成していているので、割線Ldに沿って、きれいに分割できる。
更に、この錠剤Taは、プレススルーパック包装した場合、プレススルーパックの収納本体の収納凹所内に、錠剤を方向規制することなく収容した場合にも、プレススルーパックから錠剤を取り出す前に、2つに分割することができるという利点がある。
このことを、図3を用いて、更に詳しく説明する。
【0084】
図3は、プレススルーパック1の収納本体2の収納凹所2bに収納された分割錠剤Taを、収納凹所2bから取り出す前に、上方から下方に縦方向に力を加えて分割する際に、分割錠剤Taに生じる現象を模式的に示す側面図であり、図3(a)は、分割錠剤Taを上方から下方に縦方向に力を加える直前の状態を、また、図3(b)は、分割錠剤Taを上方から下方に縦方向に力を加えた直後の状態を、各々、示している。
この分割錠剤Taでは、錠剤Taの下面Sbに、錠剤Taの縁部Eから中心部Cに向かって徐々に盛り上がる形状を設けているので、プレススルーパック1の収納本体2の収納凹所2b内に、封緘シート3の方に、割線Ldが設けられた側の上面Saが向いている場合(図3(a)中の左側の収納凹所2b内に収容されている錠剤Taを参照)には、プレススルーパック1の収納本体2の収納凹所2bの外部となる凸部2cを、指で押したときには、錠剤Taの下面Sbの凸形状の中央部A5を指で押すことにより、錠剤Taを容易に2つに分割することができる(図3(b)中の左側の収納凹所2b内に収容されている錠剤Taを参照)。
且つ、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から2つの稜線L1、L2の各々迄の面の形状を凸面形状の曲面で構成しているので、プレススルーパック1の収納凹所2bに、錠剤Taの割線Ldが設けられた側が、収納本体2の方を向くように収容された場合(図3(a)中の右側の収納凹所2b内に収容されている錠剤Taを参照)でも、プレススルーパック1の収納凹所2bの外部となる凸部2cを指で押したときには、側面視した場合、概ねV字形状に押しつぶされる収納凹所2bや指の形状に対し、錠剤Taの上面Saの割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の各々が対向する凸面形状の曲面を持っているため、指による力が、錠剤Taに容易に伝わる。これにより、指に力を入れなくても、割線Ldを開く方向に、錠剤に力が働く結果、プレススルーパック1の収納凹所2bに、錠剤Taの割線Ldが設けられた側が、収納本体2の方を向くように収容された場合でも、錠剤Taを容易に2つに分割することができる(図3(b)中の右側の収納凹所2b内に収容されている錠剤Taを参照)。
【0085】
尚、図3に示すプレススルーパック1は、収納本体2と、封緘シート5とを備え、封緘シート3の接着剤層4が収納本体2の板状部2a、・・・、2aに接着された構造になっている。
収納本体2は、通常、収納すべき分割錠剤Ta、・・・、Taの形状に応じて、加熱成形して、複数の収納凹所2b、・・・、2bが、板状部2a、・・・、2aで連結されてた形状となっている。
【0086】
収納本体2の材料としては、一般に使用されている、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、環状ポリオレフィン等の熱可塑性の合成樹脂を用いることができ、このような収納本体材料を用いれば、複数の収納凹所2b、・・・、2bは、収納すべき分割錠剤Ta、・・・、Taの形状に応じて、加熱成形して、容易に形成できる。
【0087】
また、封緘シート3は、基材5と、基材5の片側の表面上に設けられた接着剤層4とを有する。
封緘シート3の基材5の材料としては、収納本体2の収納凹所2b、・・・、2bの各々内に収容される分割錠剤Ta、・・・、Taを密封でき、且つ、収納本体2の収納凹所2b、・・・、2bの外面となる凸部2c、・・・、2cの各々を、封緘シート3方向へ、押圧すれば、収納凹所2b、・・・、2bの各々に収容された分割錠剤Ta、・・・、Taの各々によって容易に破断する材料であれば、一般に、包装材として使用されている種々の材料を用いることができ、そのような材料としては、例えば、アルミニウム箔、グラシン紙、破断させやすくするための充填剤を含有させた合成樹脂シート、紙等を、その好ましい例として挙げることができる。
【0088】
具体的には、封緘シート3の基材5として、アルミニウム箔を用いる場合には、好ましくは、厚さが、5μm以上30μm以下、より好ましくは、15μm以上25μm以下の硬質箔を用いる。
また、封緘シート3の基材5として、グラシン紙を用いる場合には、好ましくは、坪量(平方メートル当りの重さ)が、30.5g/m2のものを用いる。
また、封緘シート3の基材5として、破断しやすくするために充填材を含有させた合成樹脂シートを用いる場合には、好ましくは、厚さが9μm以上100μm以下、より好ましくは、12μm以上80μm以下のものを用いる。
この合成樹脂は、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、線状ポリオレフィン等の熱可塑性合成樹脂が好適に使用される。
【0089】
また、合成樹脂に含有させる充填剤としては、例えば、酸化珪素、珪酸マグネシウム、二酸化チタン、亜鉛華、炭酸カルシウム、アルミナ、タルク等、種々のものを使用でき、平均粒径が、1μm以上10μm以下のものを、5重量%以上15重量%以下、好ましくは、5重量%以上70重量%以下を合成樹脂中に混入する。
また、封緘シート3の基材5として、紙を用いる場合には、坪量が、13g/m2以上100g/m2以下のものを用いるのが好ましい。
【0090】
以上説明したような封緘シート3の基材5の物性や組成は、主として、収納本体2の、分割錠剤Tを収納した収納凹所2bの外面となる凸部2cを、封緘シート5方向に、指で押したときには、その収納凹所2bを密封している封緘シート5の収納凹所2b、・・・、2bを密封している部分r1、・・・、r1を破断させて、分割錠剤Tを取り出すことができる程度の強靭さを有している。
以上の構成は、従来のプレススルーパック101と同様であるが、このプレススルーパック1では、封緘シート3の接着剤層4と収納本体2の板状部2a、・・・、2aとの接着強度を、分割錠剤Ta、・・・、Taの各々を収納している収納凹所2b、・・・、2bの各々の外面となる凸部2c、・・・、2cの各々を、封緘シート3方向に、指で押し出したときには、封緘シート3の破断が、板状部2aと接着剤層4との接着部r2、・・・、r2側へ広がることなく、収納凹所2b、・・・、2bを密封している封緘シート3の部分(いわゆる、ポケット部)r1・・・、r1だけが破断し、分割錠剤Ta、・・・、Taの各々を1錠ずつ取り出すことができるとともに、封緘シート3を剥してめくり上げたときには、封緘シート3が途中で破断することなく、収納本体2から容易に分離できるように、調整している点に特徴がある。
【0091】
以下、封緘シート3の接着強度を調整する方法について、接着剤層4を構成する接着強度を接着剤の成分によって調整する場合と、接着剤の接着強度を封緘シート3の基材5への塗工方法によって調整する場合とに、場合分けをして、説明する。
A.接着強度を接着剤の成分によって調整する場合。
接着剤を構成する成分によって、接着強度を調整する場合には、接着成分に、適当量の接着低下成分を配合するようにする。
【0092】
具体的には、接着成分は、収納本体2と封緘シート3の基材5とを接着できる成分であれば、何でもよく、例えば、ヒートシールが可能な熱可塑性樹脂であっても、コールドシールが可能なコールドシール接着剤であってもよい。
ヒートシールが可能な熱可塑性樹脂としては、以下のものに限定されることは無いが、例えば、収納本体2が、ポリ塩化ビニルで製されている場合には、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体を、その好ましい例として挙げることができ、例えば、収納本体2が、ポリプロピレンで製されている場合には、塩素化ポリプロピレン、カルボキシル化ポリプロピレンを、その好ましい例として挙げることができる。又、例えば、収納本体2が、ポリスチレンで製されている場合には、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との混合体を、その好ましい例として挙げることができる。
【0093】
また、コールドシール接着剤としては、例えば、アクリル樹脂、シリコン樹脂、ゴム等を挙げることができる。
ここに、「コールドシール接着剤」は、部材と部材とを貼着する際に、部材と部材とを加圧するだけで接着することができる接着剤をいう。
また、接着剤に配合する接着力低下成分は、封緘シート3の接着剤層4と収納本体2との接着強度、又は、封緘シート3の接着剤層4と封緘シート3の基材5との接着強度を低下させる物質であれば使用可能である。
そのような物質としては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の離型剤等として用いられる樹脂や、アクリル樹脂、線状ポリエステル樹脂等をその好ましい例として挙げることができる。
また、酸化珪素、珪酸マグネシウム、二酸化チタン、亜鉛華、炭酸カルシウム、アルミナ、タルク等の充填剤等として用いられる微粉末も、その好ましい例として挙げることができる。
接着剤の接着成分と接着力低下成分との配合割合は、後述する、接着強度試験、押し出し試験及び剥離試験によって決められる。
【0094】
B.接着強度を、封緘シートの基材への接着剤の塗工方法によって調整する場合。
この場合は、封緘シート3の基材5へ接着剤を、全面塗工したり、部分塗工したりするようにしたり、また、封緘シート3の基材5へ塗工する接着剤の単位面積当りの塗工量を調整をしたりすることで、所望の接着強度を得ることができる。
尚、部分塗工は、例えば、収納本体2の収納凹所2bの各々内に収容される分割錠剤Ta、・・・、Taの各々を完全に密封することができる限り、封緘シート3の収納本体2に対向する側の表面に、接着剤を、編目状、線状に塗工してもよく、又は、これらの少なくとも2種を組み合わせて塗工してもよい。
また、封緘シート3の基材5へ塗工する接着剤の単位面積当りの塗工量の調整するには、接着剤として、希釈剤を適宜配合したものを用いたり、封緘シート3の基材5に塗工する接着剤の単位面積当りの膜厚を調整すればよい。
また、接着強度を封緘シート3の基材5への接着剤の塗工方法によって調整する場合には、接着剤中に、接着力低下成分が含まれていても、含まれていなくてもよいことを付記しておく。
【0095】
このプレススルーパック1では、収納凹所2b、・・・、2bの各々に、分割錠剤Ta、・・・、Taの各々を収容するようにしている。
したがって、収納凹所2b、・・・2bの外面となる凸部2c、・・・、2cの各々を、手指等で押しつぶせば、分割錠剤Ta、・・・、Taを個別に、収納凹所2b、・・・2bの各々から個別に取り出すことができる。
また、薬剤師や患者等は、このようにして、収納凹所2b、・・・2bの各々から個別に必要な個数の分割錠剤Ta、・・・を取り出し、その後、必要により、手指等で、錠剤Taを個別につかんで、割線Ldに沿って、2つに、簡単に分割することができる。
【0096】
また、このプレススルーパック1では、収納凹所2b、・・・2bの各々に、2つに分割する際に、方向規制がされることのない分割錠剤Ta、・・・、Taを収容しているので、封緘シート3側がテーブル等の平坦な面に接するようにして、収納凹所2b、・・・2bの外面となる凸部2c、・・・、2cの各々を、手指等で押しつぶせば、収納凹所2b、・・・2bの各々から分割錠剤Ta、・・・、Taの各々を取り出す前に、収納凹所2b、・・・2bの各々内に分割錠剤Ta、・・・、Taの各々を収容した状態で、分割錠剤Ta、・・・、Taの各々を2つに分割することができる。
【0097】
したがって、分割錠剤Ta、・・・、Taのうち、必要な錠数の分割錠剤Ta、・・・を収納凹所2b、・・・に収容したまま、2つに分割した後、2つに分割した分割錠剤Ta、・・・が収容されている収納凹所2b、・・・の外面となる凸部2c、・・・の各々を、手指等で押しつぶせば、収納凹所2b、・・・の各々から個別に2つに分割した分割錠剤Ta、・・・、Taの各々を取り出すことができる。
更に、このプレススルーパック1では、封緘シート3を剥してめくり上げたときには、封緘シート3が途中で破断することなく、収納本体2から容易に分離できるようにしているので、収納本体2から封緘シート3を剥してめくり上げれば、プレススルーパック1に収容されている、全ての分割錠剤Ta、・・・、Taを、プレススルーパック1から、一度に、取り出すことができる。
のみならず、このプレススルーパック1では、2つに分割する際に、方向規制がされることのない分割錠剤Ta、・・・、Taを収容しているので、図4に示すように、まず、封緘シート3側がテーブル等の平坦な面に接するようにして、収納凹所2b、・・・2bの外面となる凸部2c、・・・、2cの各々を、手指や治具等で押しつぶして、収納凹所2b、・・・2bの各々から分割錠剤Ta、・・・、Taの各々を取り出す前に、全ての分割錠剤Ta、・・・、Taを2つに分割しておき(図4(a)〜図4(c))、その後、収納本体2から封緘シート3を剥してめくり上げれば、プレススルーパック1に収容されている、2つに分割されている、全ての分割錠剤Ta、・・・、Taを、プレススルーパック1から、一度に、取り出すことができる。
【0098】
これにより、このプレススルーパック1を採用すれば、分割錠剤Ta、・・・を収納本体2の収納凹所2b、・・・から取り出す前に、2つに分割することができるので、手指等により、錠剤Taを2つに分割する際に、錠剤Taが、手指等に付着している細菌やかび等によって汚染されることがなくなるとともに、病院等において、大量の錠剤を調剤する際には、収納本体2から封緘シート3を剥してめくり上げれば、プレススルーパック1に収容されている、全ての分割錠剤Ta、・・・、Taを、プレススルーパック1から、一度に、取り出すことができる。
更には、このプレススルーパック1を採用すれば、2つに分割された錠剤Ta、・・・、Taを大量に用意することが必要な場合には、収納凹所2b、・・・2bの各々から分割錠剤Ta、・・・、Taの各々を取り出す前に、全ての分割錠剤Ta、・・・、Taを2つに分割し、その後、収納本体2から封緘シート3を剥してめくり上げれば、プレススルーパック1に収容されている、2つに分割されている、全ての分割錠剤Ta、・・・、Taを、プレススルーパック1から、一度に、取り出すことができるため、病院等における調剤業務を大幅に改善することができる。
尚、上記した分割錠剤Taは、単に本発明を説明するために、その好ましい例として例示したに過ぎす、本発明は、分割錠剤Taに限定されることはない。
【0099】
図5〜図7は、本発明の変形例を例示的に示す図である。図5は、本発明における分割錠剤の他の一例を概略的に示す図であり、図5(a)は平面図を、図5(b)は底面図を、又、図5(c)は側面図を、各々、示している。
この分割錠剤Tbは、分割錠剤Taに比べて、割線Ldが大きく形成されている点で、分割錠剤Taと異なっている。
即ち、この分割錠剤Tbは、分割錠剤Taに比べ、割線Ldを形成する2本の起端となる線Ld2、Ld2との間の幅(図5(a)に示す幅w2)が、分割錠剤Taの割線Ldを形成する2本の起端となる線Ld2、Ld2との間の幅(図1(a)に示す幅w1)より大きく形成されている(w2>w1)。且つ、分割錠剤Tbは、割線Ldを形成する2本の起端となる線Ld2、Ld2から最深部Ld1までの垂直方向の距離(図5(c)に示す距離Y8)が、分割錠剤Taの割線Ldを形成する2本の起端となる線Ld2、Ld2から最深部Ld1までの垂直方向の距離(図1(c)に示す距離Y7)より長くなるように形成されている(Y8>Y7)。
【0100】
これにより、この分割錠剤Tbは、分割錠剤Taに比べ、割線Ldのサイズが大きくなっているので、分割錠剤Taに比べ、小さい力で2つに容易に分割することができる。
のみならず、この分割錠剤Tbでは、割線Ldのサイズを大きくする際に、錠剤Tbの縁部Eの上面Saの位置H3から割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2までの垂直方向の距離(図5(c)に示す距離Y10)を、錠剤Taの縁部Eの上面Saの位置H3から割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2までの垂直方向の距離(図5(c)に示す距離Y9)より長くする(Y10>Y9)ようにし、割線Ldの最深部Ld1から錠剤Tbの底部頂点A5までの垂直方向の距離(図5(c)に示す距離Y6)は、錠剤Taの割線Ldの最深部Ld1から錠剤Taの底部頂点A5までの垂直方向の距離(図1(c)に示す距離Y3)と同じ距離(Y6=Y3)にしているので、錠剤Tbの割線Ldの最深部Ld1の位置における機械的な強度は、錠剤Taの割線Ldの最深部Ld1の位置における機械的な強度と概ね同じである。
【0101】
これにより、この分割錠剤Tbは、技術的に相反すると考えられる2つに分割する際には、割線Ldのサイズが大きいので、2つに小さい力で分割できるということを両立させている。
尚、この分割錠剤Tbの他の形状は、分割錠剤Taと同様であるので、相当する部分には、相当する参照符号を付して、その説明を省略する。
【0102】
図6は、本発明における分割錠剤の他の一例を概略的に示す図であり、図6(a)は平面図を、図6(b)は底面図を、又、図6(c)は側面図を、各々、示している。
この分割錠剤Tcは、割線LdをU溝にしている点で、割線LdをV溝にしている分割錠剤Taと、異なっている。
この分割錠剤Tcでは、割線LdをU溝にしているので、割線Ldの領域内において、錠剤Tcの厚さは、割線Ldの最深部Ld1から割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々までゆるやかに厚くなり、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々の近傍において急激に厚くなる。
【0103】
一方、この分割錠剤Tcでは、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々までの2つの領域R1、R2の各々迄の面は凸面形状とされているので、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々の方向の、起端となる線Ld2、Ld2の各々の近傍位置においては、錠剤Tcの厚さが急激に厚くなる。
このように、この錠剤Tcでは、割線Ldの領域内に於ける、錠剤Tcの厚さの変化と、割線Tcの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々の方向の、起端となる線Ld2、Ld2の各々の近傍位置に於ける錠剤Tcの厚さの変化とを著しく異ならせるとともに、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々の方向の、起端となる線Ld2、Ld2の各々の近傍位置に於ける錠剤Tcの厚さを急激に厚くなるようにし、単位体積当りに錠剤Tcの外部から働く力が、割線Ldの領域内において大きく、且つ、割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々の方向の、起端となる線Ld2、Ld2の各々の近傍位置において、割線Ldの領域内の単位体積当りに錠剤Tcの外部から働く力に比べ、小さくなるようにしているので、この錠剤Tcは、2つに分割すると、割線Ldに従ってきれいに分割できる。
尚、この分割錠剤Tcの他の形状は、分割錠剤Taと同様であるので、相当する部分には、相当する参照符号を付して、その説明を省略する。
【0104】
図7は、本発明における分割錠剤の他の一例を概略的に示す図であり、図7(a)は平面図を、図7(b)は底面図を、又、図7(c)は側面図を、各々、示している。
この分割錠剤Tdは、錠剤の形状を、平面視した場合、楕円形状にしている点(図7(a)を参照)で、錠剤の形状を、平面視した場合、円形状にしているにしている分割錠剤Taと異なっている(図1(a)を参照)。
この分割錠剤Tdは、割線Ldが、短軸L4に沿って形成されている。
尚、錠剤の形状を、平面視した場合、楕円形状にした場合には、底面の曲線L6の曲率は、曲線半径(図7(c)に示す曲線半径Ds)は、錠剤Tdの長径(長軸L5の長さ)(図7(b)に示す錠剤Tdの長径Do)に対する割合(Ds/Do)が、1.25以上2.5以下の範囲にあることが好ましい。
【0105】
この分割錠剤Tdも分割錠剤Taと同様の効果を奏する。更に、分割錠剤Tdでは、錠剤の形状を、平面視した場合、楕円形状にし、短軸L4に沿って、割線Ldを設けているので、割線Ldにより形成される2つの領域R1、R2の割線Ldから、この錠剤Tdの縁部Eと長軸L5とが交わる交点A4、A4の各々までの距離が、長径の2分の一の寸法Do/2となり、長くなる。これにより手指等で、2つに分割する際のモーメントを大きくできるので、手指等に力をあまり入れなくても、2つに分割することができる。
尚、この例では、割線Ldが、短軸L4に沿って設けられている例について説明したが、割線Ldは、長軸L5に沿って設けるようにしてもよいことは、言うまでもない。
尚、この分割錠剤Tdの他の形状は、分割錠剤Taと同様の関係にあるので、相当する部分には、相当する参照符号を付して、その説明を省略する。
【0106】
また、上記に示した分割錠剤Ta、Tb、Tc、Tdでは、いずれも、分割錠剤Ta、Tb、Tc、Tdの縁部Eと、割線Ldとが交わる交点e1、e2の近傍において、凸面形状に面とりした領域R5、R6、R7、R8を有するものについて説明したが、凸面形状に面とりした領域R5、R6、R7、R8は、必ずしも必要な面ではないが、分割錠剤Ta、Tb、Tc、Tdのように凸面形状に面とりした領域R5、R6、R7、R8を設けると、分割錠剤Ta、Tb、Tc、Tdを製造する際や、搬送する際に、尚、一層、欠けを生じ難くなる(尚、このことについては、以下に示す、実験例1及び実験例2により、本発明者等が、実験により見いだした。)
【0107】
また、上記に示した分割錠剤Ta、Tb、Tc、Tdでは、割線Ldとして、V溝又はU溝を設けた場合について説明したが、本発明における分割錠剤に設ける割線の形状は、図8(a)に示すV溝形状であっても、図8(d)に示すU溝形状であってもよいが、図8(b)に示すような、V溝の長角近傍に丸いラウンド部R11を有する形状又は放物線(2次曲線)形状であっても、図8(c)に示すような、v溝の長角近傍に丸いラウンド部R11を滑らかな曲線にするのではなく、屈曲部Lbを1以上有する多角形状(図8(c)に示す領域R12を参照)にしてもよく、又、図8(e)に示すような、通常のU溝のように、その下部の丸いラウンド部を滑らかな曲線(図8(d)に示す領域R13を参照)にするのではなく、屈曲部Lbを1以上有する多角形状にしてもよい(図8(e)に示す領域R14を参照)。
割線Ldを、屈曲部Lbを1以上有する多角形状にすれば、分割錠剤を2つに分割する際に、屈曲部Lbのいずれかに力が集中するので、屈曲部Lbのいずれかに沿って、2つに分割され易くなるため、尚、一層、割線Ldに沿って、きれいに分割できるようになる。
【0108】
また、分割錠剤Ta、Tb、Tc、Tdでは、いずれも、錠剤Ta、Tb、Tc、Tdの各々の上面Saの稜線L1、L2の各々から錠剤Ta、Tb、Tc、Tdの各々の縁部Eまでの急な斜面R3、R4の形状を、断面視した場合に、凸面形状の曲線とした場合について説明したが、急な斜面R3、R4の形状を、断面視した場合、平面形状としてもよい。
この場合、錠剤Ta、Tb、Tc、Tdの上面の割線Ldの起端となる線Ld2、Ld2の各々から稜線L1、L2の各々までの、凸面(緩やかな隆起曲線)形状の面R1、R2と、断面視した場合、平面形状の急な斜面R3、R4との接合部は、錠剤に欠けを生じないようにするためには、稜線L1、L2で接合せずに、稜線L1、L2より錠剤Ta、Tb、Tc、Tdの各々の縁部Eに寄った位置の、稜線L1、L2より、垂直方向の高さが低い位置に設けることが好ましい。
【0109】
本発明における分割錠剤は、錠剤の上面の稜線から錠剤の縁部までの形状を急な斜面の形状を、直線または凸面形状の曲線にするかは、錠剤のデザイン面から決定することができる。
従って、本発明における分割錠剤は、その薬効、効能、効果等に基づいて、錠剤の形状を、医師、薬剤師、患者等に、印象付けることができるように、錠剤の形状を作製することができる。
【0110】
より具体的に説明すると、例えば、錠剤の上面の割線の起端となる線から稜線までの形状を、断面視した場合、直線にすれば、観者の錠剤全体の見た目の印象が、シャープになるので、シャープな切れ味を製品特徴とする、例えば、経口抗生製剤や鎮痛消炎剤の形状にすれば、観者に、これらの薬剤のシャープな切れ味を印象付けることができる。
また、錠剤の上面の割線の起端となる線から稜線までの形状を、断面視した場合、緩やかな隆起曲線にすれば、観者の錠剤全体の見た目の印象が、マイルドになるので、作用効果のマイルドさや副作用の少なさを製品特徴とする。例えば、降圧薬等の循環器系作用薬や、睡眠・鎮静薬等の中枢神経系作用薬の形状にすれば、観者に、これらの薬剤の作用効果のマイルドさや副作用の少なさを印象付けることができる。
次に、具体的な実験データに基づいて、本発明について説明する。
【実施例1】
【0111】
乳糖(DMV社製:200M)を67.5重量%、トウモロコシ澱粉(日本食品加工社製:日食コーンスターチW)29.0重量%を流動層造粒機(フロイント社製:フローコーターFLO-15)内に仕込み、これらの粉末へ結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製:HPC-L)を7重量%水溶液を調整し、これをスプレーすることにより、造粒、乾燥させて、乾燥粉末を得た。尚、乾燥粉末には、結合剤が、3重量%含まれていた。
次に、以上により作製した乾燥粉末を整粒機(徳寿工作所製:ランデルミルRM-I)で整粒し、得られた整流物に滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム(堺化学社製))を0.5重量%を加えてブレンダー(徳寿工作所製):ミックスウェル混合機V1-60)で、5分間、混合し、成形材料を得た。
次に、本発明における分割錠剤を作製するため、図9に示す、上杵pa1、上杵pa2及び上杵pa3と、図10に示す下杵pb1及び下杵pb2とを作製した。
【0112】
尚、上杵pa1及び上杵pa2は、割線Ldと錠剤の縁部との交点の近傍に、面取りした領域(図1に示す領域R5、R6、R7、R8)を形成していない分割錠剤を作製する上杵であり、また、上杵pa3は、割線Ldと錠剤の縁部との交点の近傍に、面取りした領域(図1に示す領域R5、R6、R7、R8)を形成した分割錠剤を作製する上杵である。
上杵pa1、pa2、pa3の各々は、成形する分割錠剤の上面の形状の雌型をしており、下杵pb1、pb2の各々は、成形する分割錠剤の下面の形状の雌型をしている。
【0113】
また、図9及び図10の各々の図面には、参考のため、上杵pa1、pa2、pa3、及び、下杵pb1、pb2の各々に、分割錠剤の形状に対応する部位を、分割錠剤の形状の部位に相当する参照符号を付するとともに、作製した上杵pa1、pa2、pa3、及び、下杵pb1、pb2の各々の寸法を記入している。
次に、上杵pa1と下杵pb1とを組合せ、これらを高速ロータリ式打錠機(菊水製作所製:VIRGO12)に装着し、上記により作製した成形材料を打錠した。
また、上杵pa1と下杵pb2との組合せ、上杵pa2と下杵pb1との組合せ、及び、上杵pa2と下杵pb2との組合せ、これらを高速ロータリ式打錠機(菊水製作所製:VIRGO12)に装着し、上記により作製した成形材料を打錠した。
【0114】
以上の工程により、本発明における、合計4種類の分割錠剤を作製した。
尚、1錠当りの重量は、いずれも130mgであった。
次に、これら4種類の錠剤を、無作為に選出した5人のパネラー(男性3人:M、女性2人:W)により平らなテーブルの上で、割線を上向きまたは下向きにして分割してもらい、このときの分割のし易さを4段階で官能試験した。
評価は割れ易い:3点、割れにくい:2点、非常に割れにくい:1点、割れない:0点とし、15点満点とした。
【0115】
また、比較例として、既に、市販されている下杵曲形カラテ錠(商品名ノルパスク錠:ファイザー製薬株式会社製)を同様の方法で分割してもらい、このときの分割のし易さを4段階で官能試験した。
結果を表1に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
尚、表1中、分割方向は、錠剤の割線の向きが、上を向いているか、下をむいているかを、示している。
表1により、本発明における4種類の分割錠剤は、比較例(商品名ノルパスク錠:ファイザー製薬株式会社製)と比較して、割線Ldが上を向く状態にして分割した場合には、格段に分割し易いことが、明らかになった。
また、割線Ldを下を向く状態にして分割した場合には、比較例と、同等以上に分割し易いことが、明らかになった。
【実施例2】
【0118】
実験例1の官能試験で、分割が良好であった、本発明における4種類の分割錠剤を更に改良するため、図9(c)に示す上杵pa3と、図10(b)に示す下杵pb2を組み合わせて、本発明における分割錠剤を、実験例1と同様の方法により製造した。
また、比較例として、図11に示す上杵pa4と下杵pb2とを組み合わせた、従来公知の下杵曲形カラテ錠を、実験例1と同様の同様の方法で製造した。
次に、得られた分割錠剤の各々について、落下試験を行った。落下試験は、高さ40cmの位置から、本発明における分割錠剤100錠及び比較例(下杵曲形カラテ錠)100錠を、各々、ステンレス板へ落下させ、欠けの部位および錠数を目視観察することにより行った。
尚、欠けの部位の観察場所は、図12(a)に示す、分割錠剤の上面Saの3箇所の部位F1、F2、F3と、図12(b)に示す、分割錠剤の下面Sbの部位F4の合計4箇所とした。
落下試験の結果を、表2に示す。
【0119】
【表2】
【0120】
表2より、本発明における分割錠剤は、比較例(下杵曲形カラテ錠)に比べ、総欠け数が著しく少ないことが、明らかになった。
また、欠けの種類を分析すると縁部分の欠け(エッジチッピング)が特に減少していた。
【実施例3】
【0121】
図9(c)に示す上杵pa3と、図10(a)に示す下杵pb1とを用いて、実験例1と同様にして、本発明における分割錠剤を作製した。
また、図9(c)に示す上杵pa3と、図10(b)に示す下杵pb2とを用いて、実験例1と同様にして、本発明における分割錠剤を作製した。
また、比較例として、図11に示す上杵pa4と下杵pb1とを用いて、実験例1と同様にして、従来公知の下杵曲形カラテ錠を作製した。
また、比較例として、図11(a)に示す上杵pa4と、図10(a)に示す下杵pb1とを用いて、実験例1と同様にして、従来公知の下杵曲形カラテ錠を作製した。
次に、得られた分割錠剤の各々について、摩損度試験を行った。
摩損度試験は、本発明における分割錠剤20錠及び比較例(下杵曲形カラテ錠)20錠をフライアビレーターに入れ、毎分25回転で、10分または20分回転さた後の摩損度を測定することにより行った。
摩損度試験の結果を、表3に示す。
【0122】
【表3】
【0123】
表3により、本発明における分割錠剤は、比較例(下杵曲形カラテ錠)に比べ、約半分の摩損度であることが、明らかになった。
【実施例4】
【0124】
実験例3において作製した本発明における分割錠剤1kgに、コーティング液(OPADRY-II(カラコン社製:OY-LS-22813)水溶液)をコーティング機(フロイント社製:HCT-30N)を用いて被覆した。
また、実験例3において、比較例として作製した従来公知の下杵曲形カラテ錠1kgに、コーティング液(OPADRY-II(カラコン社製:OY-LS-22813)水溶液)をコーティング機(フロイント社製:HCT-30N)を用いて被覆した。
その結果、本発明における分割錠剤は、ツウィンニングを生じず、且つ、ツウィンニングが原因して発生するコーティング膜の剥がれも認められなかった。
【実施例5】
【0125】
ここでは、本願発明の分割錠剤をプレススルーパックに収納した場合に、錠剤の大量分割が可能になることを試験した。
実験例4において作製した本発明における分割錠剤(コーティングが施されている)を、プレススルーパックの収納凹所に収容した。
次に、プレススルーパックの収納凹所に収容されている、本発明における分割錠剤(コーティングが施されている)であって、割線が上向きに収容されている錠剤10錠と、本発明における分割錠剤(コーティングが施されている)であって、割線が下向きに収容されている錠剤10錠とを、各々、収納凹所から取り出さずに、指で押し割り、2つに分割された錠剤の各々を化学天秤で精秤して、2つに分割した際に、本発明における分割錠剤(コーティングが施されている)に生じた、錠剤の重量変動係数を求めた。
【0126】
比較例としては、市販の錠剤カッター(小林製薬社製)を用いて、本発明における分割錠剤(コーティングが施されている)であって、割線を上向きにした錠剤10錠と、本発明における分割錠剤(コーティングが施されている)であって、割線を下上向きにした錠剤10錠とを、各々、割線に沿って切断し、2つに分割された錠剤の各々を化学天秤で精秤して、2つに分割した際に、本発明における分割錠剤(コーティングが施されている)に生じた、錠剤の重量変動係数を求めた。
結果を表4に示す。
【0127】
【表4】
【0128】
表4により、本発明における分割錠剤は、割線が上を向いていようと下を向いていようと、2つに分割した後の錠剤の重量変動係数が、錠剤カッターにより割線に沿って分割した後の錠剤の重量変動係数と大差なく、これにより、本発明における分割錠剤は、割線が上を向いていようと下を向いていようと、指で、精度よく2つに分割できることが、明らかになった。
更に、この実験により、下杵pb1に比べ、曲率半径が大きい下杵pb2を用いて作製した錠剤の方が、下杵pb1を用いて作製した錠剤に比べ、さらに、変動係数が小さくなることが、明らかになった。これは、分割時の破断面積が小さくなるためと考えられる。
【実施例6】
【0129】
実施例2で作製した本発明における分割錠剤を、プレススルーパックに収納し、プレススルーパックの収納凹所に分割錠剤を収容した状態で、分割に必要な硬度を、錠剤硬度測定器(ジャパンマシナリー社製、PTB-311/P)で測定した。
また、比較例として、市販の下杵曲形カラテ錠(商品名ノルパスク錠:ファイザー製薬株式会社製)を用い、プレススルーパックの収納凹所に分割錠剤を収容した状態で、分割に必要な硬度を、錠剤硬度測定器(ジャパンマシナリー社製、PTB-311/P)で測定した。
尚、比較例で用いたプレススルーパックは、本発明における分割錠剤を収納するのに用いたプレススルーパックと同様のものであり、また、比較例の包装方法も、本発明における分割錠剤をプレススルーパックに収納した方法と同様の方法で行った。
結果を表5に示す。
【0130】
【表5】
【0131】
表5より、本発明における分割錠剤は、比較例の約4分の1の力で分割できることが、明らかになった。
以上の結果より、本発明における分割錠剤は、従来公知の分割錠剤よりも、分割し易い形状であることが、明らかになった。
【符号の説明】
【0132】
Ta、Tb、Tc、Td 分割錠剤
Sa 分割錠剤の上面
Sb 分割錠剤の下面
E 分割錠剤の縁部
L1、L2 稜線
RL1、RL2 稜線周辺領域
R5、R6、R7、R8 凸面形状に面取りがされた形状とされている領域
Ld 割線
Ld1 割線の最深部(割線の最深部に形成される線)
Ld2 割線の起端となる線
θ 割線V溝の頂角
e1 一縁部
e2 他縁部
R1、R2 割線により錠剤の上面に形成される領域
1 プレススルーパック
2 収納本体
2a 板状部
2b 収納凹所
2c 凸部
3 封緘シート
4 接着剤層
5 基材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と下面とその間に錠剤の縁部とを有し、
前記上面には、中心線に沿って割線が形成され、前記割線の最深部が錠剤の縁部の上面より下方の位置に形成され、
前記割線により形成される2つの領域の各々に、前記割線を囲むように且つ錠剤の縁部より内側に位置するように稜線が形成され、
前記下面が、前記錠剤の縁部から中心部に向かって徐々に盛り上がる形状をなし、かつ
前記2本の稜線の各々の稜線周辺領域、前記割線から前記2本の稜線の各々迄に至る面および前記2本の稜線の各々から前記錠剤の縁部に至る面が、凸面形状の曲面であることを特徴とする、
プレススルーパック内に収納したまま、割線を上向きにして上から圧力を加えることで容易に分割可能な分割錠剤。
【請求項2】
前記割線が、溝の最深部と割線の起端となる2本の線とで構成されていることを特徴とする、請求項1記載の分割錠剤。
【請求項3】
前記割線の起端となる線の各々が、前記錠剤の縁部の上面より、上方の位置に形成されていることを特徴とする、請求項2記載の分割錠剤。
【請求項4】
前記割線が、V溝又はU溝であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の分割錠剤。
【請求項5】
中心線に沿って割線が形成され、前記割線の最深部が錠剤の縁部の上面より下方の位置に形成され、
前記割線により形成される2つの領域の各々に、前記割線を囲むように且つ錠剤の縁部より内側に位置するように稜線が形成され、かつ
前記2本の稜線の各々の稜線周辺領域、前記割線から前記2本の稜線の各々迄に至る面および前記2本の稜線の各々から前記錠剤の縁部に至る面が、凸面形状の曲面で構成されている錠剤の上面用の上杵と、
縁部から中心部に向かって徐々に盛り上がる形状をなしている錠剤の下面用の下杵とを用いて、成形材料を打錠することを特徴とする、
プレススルーパック内に収納したまま、割線を上向きにして上から圧力を加えることで容易に分割可能な錠剤の製造方法。
【請求項6】
前記割線が、溝の最深部と割線の起端となる2本の線とで構成されていることを特徴とする、請求項5記載の錠剤の製造方法。
【請求項7】
前記割線の起端となる線の各々が、前記錠剤の縁部の上面より、上方の位置に形成されていることを特徴とする、請求項6記載の錠剤の製造方法。
【請求項8】
前記割線が、V溝又はU溝であることを特徴とする、請求項5〜7のいずれかに記載の錠剤の製造方法。
【請求項1】
上面と下面とその間に錠剤の縁部とを有し、
前記上面には、中心線に沿って割線が形成され、前記割線の最深部が錠剤の縁部の上面より下方の位置に形成され、
前記割線により形成される2つの領域の各々に、前記割線を囲むように且つ錠剤の縁部より内側に位置するように稜線が形成され、
前記下面が、前記錠剤の縁部から中心部に向かって徐々に盛り上がる形状をなし、かつ
前記2本の稜線の各々の稜線周辺領域、前記割線から前記2本の稜線の各々迄に至る面および前記2本の稜線の各々から前記錠剤の縁部に至る面が、凸面形状の曲面であることを特徴とする、
プレススルーパック内に収納したまま、割線を上向きにして上から圧力を加えることで容易に分割可能な分割錠剤。
【請求項2】
前記割線が、溝の最深部と割線の起端となる2本の線とで構成されていることを特徴とする、請求項1記載の分割錠剤。
【請求項3】
前記割線の起端となる線の各々が、前記錠剤の縁部の上面より、上方の位置に形成されていることを特徴とする、請求項2記載の分割錠剤。
【請求項4】
前記割線が、V溝又はU溝であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の分割錠剤。
【請求項5】
中心線に沿って割線が形成され、前記割線の最深部が錠剤の縁部の上面より下方の位置に形成され、
前記割線により形成される2つの領域の各々に、前記割線を囲むように且つ錠剤の縁部より内側に位置するように稜線が形成され、かつ
前記2本の稜線の各々の稜線周辺領域、前記割線から前記2本の稜線の各々迄に至る面および前記2本の稜線の各々から前記錠剤の縁部に至る面が、凸面形状の曲面で構成されている錠剤の上面用の上杵と、
縁部から中心部に向かって徐々に盛り上がる形状をなしている錠剤の下面用の下杵とを用いて、成形材料を打錠することを特徴とする、
プレススルーパック内に収納したまま、割線を上向きにして上から圧力を加えることで容易に分割可能な錠剤の製造方法。
【請求項6】
前記割線が、溝の最深部と割線の起端となる2本の線とで構成されていることを特徴とする、請求項5記載の錠剤の製造方法。
【請求項7】
前記割線の起端となる線の各々が、前記錠剤の縁部の上面より、上方の位置に形成されていることを特徴とする、請求項6記載の錠剤の製造方法。
【請求項8】
前記割線が、V溝又はU溝であることを特徴とする、請求項5〜7のいずれかに記載の錠剤の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2009−292845(P2009−292845A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218646(P2009−218646)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【分割の表示】特願2006−129626(P2006−129626)の分割
【原出願日】平成11年4月1日(1999.4.1)
【出願人】(000001029)協和発酵キリン株式会社 (276)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【分割の表示】特願2006−129626(P2006−129626)の分割
【原出願日】平成11年4月1日(1999.4.1)
【出願人】(000001029)協和発酵キリン株式会社 (276)
【Fターム(参考)】
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