説明

分子遮断性を有するシート状接着剤

【課題】分子遮断性のすぐれたシート状の接着剤を提供する。
【解決手段】有機化層状粘土鉱物(A)及び(メタ)アクリレート(B)及びラジカル重合開始剤(C)を含有する第一剤と有機化層状粘土鉱物(A)及び(メタ)アクリレート(B)及び還元剤(D)を含有する第二剤とから構成される二剤型の接着剤組成物のうち、第一剤を第一の基材に塗布し、第二剤を第二の基材に塗布した一組のシート状接着剤であって、(メタ)アクリレート(B)が、炭素数1〜20の炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレート(B−1)を含むシート状接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化層状粘土鉱物及び(メタ)アクリレートを含有する接着剤組成物を基材に塗工したシート状接着剤に関するものである。詳しくは、太陽光発電システムを構成する太陽電池モジュール用の保護シート等、分子遮断性を有する多層シートや多層フィルムの製造に用いられるシート状接着剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅用太陽光発電システムや独立電源システム、集中太陽光発電所等に用いられる太陽光発電モジュールは、過酷な気象環境下で使用されることが多く、長期信頼性とそれを維持する耐久性が要求される。このため、直接過酷な外的環境に晒される受光面側にはガラスが用いられることが多い。内側には軟質樹脂からなる封止材で保護された発電セルと配線が設けられるが、裏側には空気、特に酸素や水蒸気を遮蔽遮断して発電セルの劣化を防ぐ裏面保護部材が積層される。裏面の保護部材としては、金属箔や樹脂フィルム等からなる多層シート等が用いられてきた。
【0003】
このような酸素や水蒸気を遮蔽遮断できる多層シートとして、金属箔やシリカ等の蒸着膜を表面に備えた分子遮断性の樹脂シートを、構成要件とした多層シートが知られている。例えば特許文献1では、ポリビニルフルオライド/金属箔/ポリビニルフルオライドの複層構造やポリエチレンテレフタレート/シリカ/耐湿性樹脂/シリカ/ポリエチレンテレフタレート/耐湿性樹脂の複層構造を用いた多層シートが開示されているが、金属箔を用いる場合は導電性の課題が残り、金属箔を用いない場合は複雑な多層構造が必要となる。
【0004】
そこで分子遮断性を有する接着剤を用いることで多層シートに分子遮断性を付与する試みがなされている。例えば特許文献2および特許文献3では、特定のキシリレン構造を有するラミネート用接着剤が開示されている。
【0005】
一方、高分子化合物に層状粘土鉱物を分散させることにより、有機材料の分子遮断性を改良することも知られている。
【0006】
例えば特許文献4では、分子内に四級アンモニウム塩を有するアクリル樹脂と、0.1〜30重量%(アクリル樹脂組成物中)の粘土鉱物とからなるアクリル樹脂組成物が開示されており、気体のバリア性の改良に効果があることが記載されている。
【0007】
また、特許文献5では、分子末端にビニル基を含むオニウムイオンによりイオン交換された有機層状粘土鉱物とビニル系単量体を混合したのち、重合させることにより、樹脂中に粘土鉱物が分散した樹脂組成物を得る方法が提案されている。
【0008】
さらに、特許文献6では、アルキル基の炭素数が2〜18のアルキル(メタ)アクリレートと、該アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な極性基含有ビニルモノマーと、光重合開始剤とからなるアクリル系モノマー混合物を光重合して得られたアクリル系共重合体と、層状珪酸塩とを含む粘弾性組成物が提案されている。
【0009】
加えて、特許文献7では、ビニル系単量体と、イソシアネート基含有単量体との系共重合体と、有機化粘土鉱物とを含有する樹脂組成物が提案されている。
【0010】
なお特許文献8では、有機カチオンによる変性粘土と添加剤から構成される、ガスバリア性を有する自立粘土膜が開示されている。
【0011】
さらに特許文献9では、炭素数6以上のアルキルアンモニウムイオンを含有する層状珪酸塩と(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなる保護層用樹脂組成物が開示されている。
【0012】
さらに特許文献10では、層状物を、少なくとも6の炭素原子を有するアルキル基を包含するインターカラント表面修飾剤および重合可能なモノマー等と接触させることで形成されるインターカレーション物から調製されるナノ合成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−289889号公報
【特許文献2】特開2003−155465号公報
【特許文献3】特開2005−54145号公報
【特許文献4】特開平6−172605号公報
【特許文献5】特開昭63−215775号公報
【特許文献6】特開2002−302583号公報
【特許文献7】特開2004−2538号公報
【特許文献8】特開2007−277078号公報
【特許文献9】特開2005−162868号公報
【特許文献10】特開平11−60983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献2および特許文献3に記載の該接着剤では、特定のキシリレン構造を接着剤中に導入することで分子遮断性を付与しているが、層状粘土鉱物を添加することについては記載も示唆もされていない。
特許文献4に記載の組成物においては粘土鉱物として、水または水を主とする混合媒体に分散可能な、水膨潤性粘土鉱物を用いており、有機化粘土鉱物については記載も示唆もされていない。また該組成物を接着剤に用いることについても、記載も示唆もされていない。
特許文献5に記載の方法では、樹脂中に粘土鉱物が層状に剥離して均一かつ微細に分散した樹脂組成物を得られず、また分子遮断性の改良効果については記載も示唆もされていない。
特許文献6においては粘弾性組成物の分子遮断性については記載されておらず、また制振材としての用途のみが開示され、接着剤としての用途については記載も示唆もされていない。そして該組成物は光重合により得られるが、有機過酸化物や、有機過酸化物と還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤による加熱硬化あるいは室温硬化により得られる組成物については言及していない。
特許文献7においては、樹脂組成物の透明性、機械強度、耐溶剤性のみについて記載しており、分子遮断性についての記載はなく、接着剤としての用途に関しても、記載も示唆もされていない。
特許文献8に記載の膜は、自立膜として利用可能な機械的強度を有する必要があり、接着剤としての用途については記載も示唆されていない。
特許文献9には、当該文献に記載の樹脂組成物を接着剤として用いることは記載も示唆もされていない。
特許文献10には、当該文献に記載のナノ合成物を接着剤として用いることは記載も示唆もされていない。
【0015】
このように、従来技術では、高い分子遮断性を有する、層状粘土鉱物を均一に分散させた、積層シート或いは積層フィルムのラミネート用の接着剤組成物を得ることは非常に難しかった。本発明はこのような事情に照らし、分子遮断性のすぐれたシート状の接着剤を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、有機化された層状粘土鉱物を特定のアルキル(メタ)アクリレートの液中に分散させることにより、粒子状の有機化層状粘土鉱物がアルキル(メタ)アクリレート分子を吸収して膨張しゲル状の膨潤状態となり、この状態でせん断や重力による応力をかけることで、層状粘土鉱物が薄片化して剥離するため、接着剤として該分散液を基材に塗布することで、接着層内で層状粘土鉱物が薄片状態で分散したシート状接着剤を形成し、基材同士を貼り合わせることで、薄片化し剥離した粘土鉱物が該分散液中で積層した状態で(メタ)アクリレートが重合硬化するため、接着接合した基材間の接着剤層自体に分子遮断性が付与されることがわかり、課題を解決するに至った。
【0017】
本発明は、以上の知見をもとにして、完成されたものである。
【0018】
本発明は一側面において、有機化層状粘土鉱物(A)及び(メタ)アクリレート(B)及びラジカル重合開始剤(C)を含有する第一剤と有機化層状粘土鉱物(A)及び(メタ)アクリレート(B)及び還元剤(D)を含有する第二剤とから構成される二剤型の接着剤組成物のうち、第一剤を第一の基材に塗布し、第二剤を第二の基材に塗布した一組のシート状接着剤であって、(メタ)アクリレート(B)が、炭素数1〜20の炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレート(B−1)を含むシート状接着剤である。
【0019】
本発明に係るシート状接着剤の一実施形態においては、(メタ)アクリレート(B)が更に、(メタ)アクリル基を1分子内に2以上有し、フッ素を含有しない多官能(メタ)アクリレート(B−2)を含む。
【0020】
本発明に係るシート状接着剤の別の一実施形態においては、炭素数1〜20の炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレート(B−1)がフッ素を含有しない。
【0021】
本発明に係るシート状接着剤の更に別の一実施形態においては、(メタ)アクリレート(B)が50〜98質量%を占める。
【0022】
本発明に係るシート状接着剤の更に別の一実施形態においては、第一剤及び第二剤の少なくとも一方が更に接着性向上剤(E)を含有する。
【0023】
本発明に係るシート状接着剤の更に別の一実施形態においては、有機化層状粘土鉱物(A)が有機層状ケイ酸塩である。
【0024】
本発明に係るシート状接着剤の更に別の一実施形態においては、ラジカル重合開始剤(C)が熱ラジカル重合開始剤である。
【0025】
本発明に係るシート状接着剤の更に別の一実施形態においては、熱ラジカル重合開始剤が有機過酸化物である。
【0026】
本発明は別の一側面において、本発明に係るシート状接着剤のお互いの塗布面を貼り合わせた後に、(メタ)アクリレート(B)を重合して硬化させてなる多層積層体である。
【0027】
本発明に係る多層積層体の一実施形態においては、多層積層体が物品の保護部材である。
【0028】
本発明に係る多層積層体の一実施形態においては、前記物品が太陽光発電モジュールである。
【0029】
本発明は更に別の一側面において、本発明に係る多層積層体によって表面が保護された物品である。
【0030】
本発明は更に別の一側面において、本発明に係る多層積層体によって表面が保護された太陽電池モジュールである。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、高い分子遮蔽性を有するシート状接着剤が提供される。当該分子遮蔽性シート状接着剤は、ハイバリア性のシートを製造するためのラミネート用接着剤として有用である。
【0032】
また、本発明にかかる、異種又は同種のフィルム又はシート等の基材に接着剤組成物を塗布して得られるシート状接着剤は、これらの基材を貼り合わせことにより、得られる多層積層体に高い分子遮蔽性を付与するものである。なお本発明にかかる分子遮蔽性を有するシート状接着剤の硬化層は、上述のようにフィルム又はシート等の基材を貼り合わせるためのバリア性の高い接着層として有効であり、自立膜としての利用可能な機械的強度を有する必要ない。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明に用いられる有機化層状粘土鉱物は、層状粘土鉱物を有機化処理したものである。通常は層状粘土鉱物の交換性無機イオンが有機オニウムイオンによってイオン交換されたものが用いられる。層状粘土鉱物としては層状ケイ酸塩等が挙げられ、具体的には、雲母、タルク、バーミキュライト、スメクタイト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイト、ハロイサイト、膨潤性マイカなどが用いられる。これらの層状粘土鉱物は、天然又は合成物であってよい。
【0034】
イオン交換に使用する有機オニウムイオンには、有機アンモニウムイオン、有機ピリジニウムイオン、有機スルホニウムイオン、有機ホスホニウムイオンなどがあり、とくに、有機アンモニウムイオンが好ましい。この有機アンモニウムイオンとしては、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミンなどの有機アミンを塩酸などによりカチオン化したアルキルアミン塩酸塩や、テトラアルキルアンモニウム塩などの第四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0035】
有機化層状粘土鉱物の生成は、層状粘土鉱物のナトリウムやマグネシウムなどの交換性無機イオンを有機オニウムイオンでイオン交換することにより行われるが、その際、層状粘土鉱物の陽イオン交換量と当量の有機オニウムイオンを使用するのが望ましい。イオン交換時の溶媒には、層状粘土鉱物の分散性の点より、水、アルコールなどのプロトン性溶媒が、好ましく用いられる。
【0036】
このようにして得られる有機化層状粘土鉱物は、層状粘土鉱物の主成分であるシリケート層の層間に、有機オニウムイオンが挿入され、イオン的な相互作用でシリケート表面に吸着した、いわゆる、挿入(インターカレーション) 構造をとっている。この構造により、単量体や有機溶媒などをその層間に呼び込みやすくなる。この挿入構造は、広角または小角のX線散乱分析による層間間隔の拡大の定量化、熱重量分析による有機含有量の定量化により、追跡できる。
【0037】
本発明で用いられる有機化層状粘土鉱物は、その層間間隔(底面間隔とも言う)が好ましくは20Å〜40Åの間にあると、シート状接着剤の分子遮断性が良好になるが、これに限定されるものではない。ただし、層間間隔が40Åより大きいと、シート状接着剤の分子遮断性が低下する場合があり、層間間隔が20Åより小さいと、層間に(メタ)アクリレート分子が挿入するインターカレーション現象が起こりにくくなる場合がある。なお層間間隔はX線回折等により測定される平均値を用いる。
【0038】
また本発明で用いられる有機化層状粘土鉱物は、そのアスペクト比が200〜2200の範囲にあるとシート状接着剤の分子遮断性が良好になるため好ましく、300〜700の範囲にあるとさらに好ましいが、これに限定されるものではない。アスペクト比が2200より大きいと、(メタ)アクリレートと混合した後の液の粘度が高くなりすぎて、シート状に塗工しにくくなる場合があり、アスペクト比が200より小さいと、シート状接着剤の分子遮断性が低くなる場合がある。なおアスペクト比は、レーザー回折散乱式粒度分布計により板状結晶の面の径の平均値をまず求め、一方X線回折から板状結晶の厚みの平均値を求め、これらの面の径と厚みの比として算出する。
【0039】
本発明では、有機化層状粘土鉱物のなかでは、有機ベントナイトや有機マイカ等の有機化層状ケイ酸塩が好ましく用いられ、有機ベントナイトが特に好ましく用いられる。有機ベントナイトは、スメクタイトやモンモリロナイト等をはじめとするベントナイトを第四級アンモニウムイオンと反応させた有機粘土であり、例えば、株式会社ホージュン販売品エスベンN−400や株式会社ホージュン販売品エスベンNX等が挙げられる。
【0040】
本発明では、有機化層状粘土鉱物の層状結晶構造を利用し、剥離させて自由運動できる状態で積層させ、この構造を固定することが骨子となっている。このため、有機化層状粘土鉱物が結晶層薄片に剥離することが必要であり、具体的には層間に(メタ)アクリレート分子が挿入するインターカレーション現象を活用して、薄片を剥離させる。この操作によって、粒子状の層状粘土鉱物は分子を吸収して膨張し、ゲル状の膨潤状態となる。この状態をミクロに考えると、層状薄片が動ける状態にあり、せん断や重力による応力をかけることにより薄片を積層させることが可能である。
【0041】
本発明の二剤型の接着剤組成物は、(メタ)アクリレート(B)を含有しており、層状粘土鉱物をゲル状の膨潤状態にして、せん断や重力による応力をかけることにより、容易に結晶層薄片に剥離し積層することができるように、(メタ)アクリレート(B)は当該組成物中で50〜98質量%を占めることが好ましく、75〜95質量%を占めることがより好ましい。
本発明では、(メタ)アクリレート(B)として、炭素数1〜20の炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレート(B−1)を使用し、これを重合性モノマーとして用いる。炭素数1〜20の炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレートを用いることにより、有機化層状粘土鉱物が(メタ)アクリレート中に均一に薄片状に剥離するようになるとともに、様々な材質の基材に対して良好な接着性が発現するようになる。また(メタ)アクリレートは、フッ素系ポリマーだけでなくポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン等、様々な材質の基材に対してバランスよく接着性が発現するように、フッ素を含有しないことが好ましい。
【0042】
炭素数1〜20の炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレート(B−1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレートが好ましく、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のような、炭素数4〜8個の炭化水素基をエステル残基に持つフッ素を含有しない(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0043】
また本発明では、接着性および分子遮断性を一層高めるために、炭素数1〜20の炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレート(B−1)に加えて、(メタ)アクリル基を1分子内に2以上有するフッ素を含有しない多官能(メタ)アクリレート(B−2)を用いることが出来る。このようなモノマーとして、2官能以上のフッ素を含有しないモノマーが挙げられる。多官能(メタ)アクリレート(B−2)を使用する場合は、シート状接着剤層の各種基材への適度な密着性を発現させるためには、(メタ)アクリレート(B)100質量部に対して最大50質量部配合することが好ましく、1〜25質量部配合されていることがより好ましい。
【0044】
2官能以上のフッ素を含有しないモノマーとしては、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、及び2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0045】
本発明の二剤型の接着剤組成物は、第一剤、第二剤ともに、有機化層状粘土鉱物(A)、及び(メタ)アクリレート(B)として炭素数1〜20の炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレート(B−1)を含有する。
【0046】
本発明の有機化層状粘土鉱物(A)の添加量は、有機化層状粘土鉱物(A)と(メタ)アクリレート(B)の配合比率(質量比)が(A):(B)=1:99〜90:10の範囲であることが好ましく、3:97〜40:60の範囲であることがより好ましく、5:95〜30:70の範囲であることがさらに好ましく、10:90〜20:80の範囲であることがなお好ましい。なお上記の添加量は、第一剤と第二剤を混合した液において満たせばよい。
【0047】
有機化層状粘土鉱物(A)が、有機化層状粘土鉱物(A)及び(メタ)アクリレート(B)の合計100質量部に対して1〜90質量部配合されていると、層状粘土鉱物は(メタ)アクリレートの液体を吸収してゲル状の膨潤状態となって、容易に結晶層薄片に剥離できる。そして層状薄片が動ける状態になるため、せん断や重力による応力がかかることにより、薄片を積層させることが可能となる。
【0048】
また、有機化層状粘土鉱物(A)及び(メタ)アクリレート(B)の合計100質量部に対して、有機化層状粘土鉱物(A)が1質量部以上だと、層状粘土鉱物が均一に剥離し、接着剤組成物の分子遮断性が効率よく発現するようになる。有機化層状粘土鉱物(A)が90質量部以下だと、層状粘土鉱物が均一に剥離し、又、得られる重合性組成物が低粘度になるため、一様に基材に塗布することが容易となる。
【0049】
本発明の接着剤組成物では、第一剤において、ラジカル重合開始剤(C)を含有する。特に、本発明の接着剤組成物では、(メタ)アクリレートを重合させて層状粘土鉱物を含む接着剤組成物を硬化させるために、熱ラジカル重合開始剤を使用することができる。熱ラジカル重合開始剤としては、有機又は無機の過酸化物が好ましく、有機過酸化物がより好ましい。本発明の過酸化物の単独での10時間半減期温度の範囲は30〜200℃が好ましく、60〜170℃がより好ましい。
【0050】
本発明の有機過酸化物としては、t−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。これらの中では、取扱の容易さや接着剤組成物の貯蔵安定性等の点で、t−ブチルパーオキシベンゾエートとクメンハイドロパーオキサイドからなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0051】
本発明の熱ラジカル重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリレート(B)100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。有機若しくは無機の過酸化物の使用量がこの範囲にあると、(メタ)アクリレートが効率良く重合して層状粘土鉱物を含む接着剤組成物を硬化させることができるようになり、ハイバリア性の機能を発現し、高い分子遮蔽性を有するようになる。
【0052】
尚、本発明の接着剤組成物では、第二剤には還元剤(D)を含有する。還元剤としては、トリメチルチオ尿素、エチレンチオ尿素等のチオアミド化合物、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、バナジルアセチルアセトネート、オクテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、銅アセチルアセトネート等の遷移金属塩が挙げられる。又、これらの還元剤を併用することも可能である。これらの中では、遷移金属塩が好ましく、バナジルアセチルアセトネートやオクテン酸コバルトがより好ましい。このなかでもバナジルアセチルアセトネートが特に好ましい。
【0053】
本発明の還元剤の使用量は、(メタ)アクリレート(B)100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
【0054】
このように、本発明の接着剤組成物は、有機化層状粘土鉱物(A)及び(メタ)アクリレート(B)及びラジカル重合開始剤(C)を含有する第一剤と有機化層状粘土鉱物(A)及び(メタ)アクリレート(B)及び還元剤(D)を含有する第二剤とから構成される二剤型の接着剤組成物である。
【0055】
本発明の二剤型の接着剤組成物では、この他に粘度や流動性を調整する目的で、高分子、並びに、微粉末シリカ等も使用することができる。更に、空気に接している部分の硬化を迅速にするために、各種パラフィン類を使用することができる。又、貯蔵安定性を維持する目的で、重合禁止剤を含む市販の酸化防止剤等を使用することができる。尚、これらの他にも所望により可塑剤、充填剤、着色剤又は防錆剤等の既に知られている物質を使用することもできる。
【0056】
本発明の二剤型の接着剤組成物では、接着性を向上させるために、更に接着性向上剤(E)を添加することができる。接着性向上剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、共重合ポリエステル等が挙げられる。これらの中では、シランカップリング剤と共重合ポリエステルからなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0057】
シランカップリング剤としては、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ユレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。特に接着耐久性の向上効果の観点から、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ基及び/又は(メタ)アクリル基を有するシランカップリング剤が好まれる。
【0058】
共重合ポリエステルは、結晶性でも非晶性でも制限はないが、非晶性の共重合ポリエステルが好ましい。本発明の共重合ポリエステルは二塩基酸成分、ジオール成分の縮合重合で得られるポリマーであるが、二塩基酸成分、ジオール成分のそれぞれの合計量を100モル%としたとき、二塩基酸成分の50モル%以上が芳香族二塩基酸であることが望ましい。二塩基酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族二塩基酸成分、p−オキシ安息香酸、p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸等の芳香族オキシカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチルペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ノナンジオール、メチルオクタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及び/又はプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及び/又はプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。又、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトン、ポリカーボネートジオール等の高分子量グリコールを共重合しても良い。
【0059】
接着性向上剤の使用量は、(メタ)アクリレート(B)100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
【0060】
本発明の二剤型の接着剤組成物は、第一剤、第二剤ともに、剥離した有機化層状粘土鉱物を、(メタ)アクリレートを含む液体中に分散させたものである。第一剤及び第二剤をそれぞれ別々の基材に塗布して、剥離した有機化層状粘土鉱物を各基材上に積層させた後に、積層状態を保った状態で両基材の塗布面を貼り合わせ、(メタ)アクリレートを重合して硬化させることで、ハイバリア性の機能を持つ、高い分子遮蔽性を有する接着剤層を形成することができる。
【0061】
本発明のシート状接着剤は、二剤型の接着剤組成物を基材表面等に塗布することよりシート状の形態にした接着剤である。ここで該接着剤組成物を塗布する基材としては、フィルム又はシート等の基材が好ましく用いられる。フィルム又はシートとしては、フッ素系ポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン等から構成されるものが好ましい。
【0062】
フッ素系ポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンとポリメチルメタクリレートのポリマーブレンド等のようなフッ素を含有するポリマー等が挙げられる。
【0063】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。ポリカーボネートとしてはビスフェノールA−ポリカーボネート等が挙げられる。ポリオレフィンとしては、ポリプロピレンやポリエチレン、又、シクロオレフィンポリマー等が挙げられる。尚、ここで言うシクロオレフィンポリマーとは、例えば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等の環状オレフィン(シクロオレフィン)モノマー由来の構成単位を有する熱可塑性樹脂である。シクロオレフィンポリマーとしては、シクロオレフィンの開環重合体、2種以上のシクロオレフィンを用いた開環共重合体の水素添加物、鎖状オレフィンやビニル基を有する芳香族化合物とシクロオレフィンとの付加共重合体等が挙げられる。尚、シクロオレフィンポリマーに極性基が導入されていてもよい。
【0064】
該接着剤組成物の第一剤及び第二剤をそれぞれ基材に塗布する際、せん断や重力による応力をかけることで、剥離した層状粘土鉱物の薄片を積層させることが可能である。剪断応力を接着剤組成物の第一剤及び第二剤にかける方法としては、基材に該組成物の第一剤及び第二剤をバーコーター、ブレードコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、バーコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター等を用いて塗工する、Tダイ等のダイを通して該組成物を基材上に吐出させる等、該組成物の第一剤及び第二剤に剪断応力が掛かる状態で塗布できるものであれば、特に制限はない。
【0065】
又、該組成物の第一剤及び第二剤を基材に塗布した後に、時間を十分にかけて放置することによって、重力によって層状粘土鉱物の薄片が沈降し、これによって積層させることも可能である。但し生産性等を考慮すると、該組成物の第一剤及び第二剤に剪断応力が掛かる状態で塗布して、剥離した層状粘土鉱物の薄片を積層させるほうが好ましい。
【0066】
更に本発明では、第一剤にラジカル重合開始剤を含有してなり、第二剤に還元剤を含有してなる二剤型の接着剤組成物を用いるが、このとき二剤型の接着剤組成物のうちの第一剤を第一の基材に塗布し、第二剤を第一の基材と同種又は異種の第二の基材に塗布し、続いて第一剤を塗布した第一の基材と第二剤を塗布した第二の基材について、お互いの塗布面を貼り合わせた後に、重合性モノマーである(メタ)アクリレートを重合して硬化させることが可能であり、この場合、分子遮断性を有する接着層により同種又は異種の基材を接合した積層フィルム又はシートである、多層積層体が形成されることになる。当該積層フィルム乃至シートは高い分子遮蔽性が付与されるため、水蒸気やガスを透過しないハイバリア性のシートとして活用できる。
【0067】
なお二剤型の接着剤組成物のうちの第一剤を第一の基材に塗布し、第二剤を第一の基材と同種又は異種の第二の基材に塗布し、続いて第一剤を塗布した第一の基材と第二剤を塗布した第二の基材について、お互いの塗布面を貼り合わせた後に、重合性モノマーである(メタ)アクリレートを重合させて硬化させる際の温度については、加熱せずに室温で放置して硬化させても構わないし、加熱して硬化させても構わない。加熱する場合は、40〜180℃の範囲の温度で加熱するのが好ましく、60〜160℃がより好ましい。多層積層体の生産性等を考慮すると、加熱して重合性モノマーを重合硬化させるのが好ましい。
【0068】
本発明の多層積層体は分子遮蔽性に優れ、柔軟性、強度、耐久性にも優れる。
【0069】
本発明のシート状接着剤は高い分子遮蔽性を有する接着層を形成することができるが、この接着層は、自立膜としての利用可能な機械的強度を有する必要はない。形成された分子遮断性を有する接着層は、接着剤としての機能さえ発現すれば、自立膜としての利用可能な機械的強度を有さなくても、本発明では事足りるからである。本発明のシート状接着剤は、その硬化物が水蒸気、酸素、二酸化炭素等に対する高いバリア性を有するので、接着接合シートにバリア性を付与できる高機能性の接着剤として有用である。例えば、本発明に係る一組のシート状接着剤の塗布面同士を貼り合わせて多層積層体を形成し、太陽光発電モジュール等の物品の保護部材として利用することができる。
【0070】
以下、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明する。本願発明はこれら実施例に限定されるものではない。特記しない限り、数字の単位は質量である。
【実施例1】
【0071】
アクリレートとして2−エチルヘキシルアクリレート(東亞合成社製)98.9gに熱ラジカル重合開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド(製品名:PH−80、日本油脂製、10時間半減期温度158℃)0.9gを添加・混合して得られた液に、有機化層状粘土鉱物である有機化クレイ(株式会社ホージュン販売品エスベンN−400;平均粒子径16.4μm(粉体)、ホスト:モンモリロナイト、挿入有機化合物(ゲスト):ジメチルジオクタデシルアンモニウム塩(第四級アンモニウム塩)、挿入有機化合物含有率:39.9%、アスペクト比330、底面間隔28.5Å)を11.09g加えて、自転・公転ミキサーで攪拌し、有機化クレイを10質量%含有する粘度58Pa・s(25℃)の重合性組成物を得た(これを第一剤とする)。
一方、アクリレートとして2−エチルヘキシルアクリレート(東亞合成社製)98.9gに還元剤としてバナジルアセチルアセトネート0.9gを添加・混合して得られた液に、有機化層状粘土鉱物である有機化クレイ(株式会社ホージュン販売品エスベンN−400)を24.95g加えて、自転・公転ミキサーで攪拌し、有機化クレイを20質量%含有する粘度507Pa・s(25℃)の重合性組成物を得た(これを第二剤とする)。
粘度は、25℃の環境下でB型粘度計を用いてローターの回転開始後300秒目における粘度を読み取り、測定した(以下同じ。)。
続いて、2枚の易接着処理PETフィルム(品番A4300、東洋紡績株式会社製、規格厚さ75μm)に、それぞれ、得られた重合性組成物(第一液および第二剤)をアプリケーター(マイクロメーターにより任意なクリアランスに調整可能な機構を有するドクターブレード)を用いて厚み25μmになるように塗布し、シート状の接着剤を得た。続いて、これらをお互いに貼り合わせ、ホットプレスを用いて加熱し(プレス温度70℃、プレス圧力0.7MPa、プレス時間10分)、接着層を硬化させた。こうしてPETフィルムを接着層を介して貼り合わせた積層フィルムを得た。
【実施例2】
【0072】
有機化層状粘土鉱物である有機化クレイとして、株式会社ホージュン販売品エスベンNX(平均粒子径<75μm(乾式篩い通過分95%以上)、ホスト:モンモリロナイト、挿入有機化合物(ゲスト):ジメチルジステアリルアンモニウム塩(第四級アンモニウム塩)、挿入有機化合物含有率:41.8%、底面間隔38.4Å)を用いる他は、実施例1と同様にして、粘度60Pa・s(25℃)の接着剤組成物(第一剤)および粘度600Pa・s(25℃)の接着剤組成物(第二剤)を得、これらを2枚の易接着処理PETフィルムに塗工してシート状接着剤を得た。続いて、やはり実施例1と同様、これらをお互いに貼り合わせて、PETフィルムを接着層を介して貼り合わせた積層フィルムを得た。
【実施例3】
【0073】
有機化層状粘土鉱物である有機化マイカとして、トピー工業株式会社の膨潤系有機化マイカ粉体4C−TS(平均粒径12μm、ホスト:ナトリウム四ケイ素雲母、挿入有機化合物(ゲスト):ステアリルトリメチルアンモニウム塩(第四級アンモニウム塩)、挿入有機化合物含有率:23質量%、アスペクト比300、底面間隔25.3Å)を用いる他は、実施例1と同様にして、粘度45Pa・s(25℃)の接着剤組成物(第一剤)および粘度470Pa・s(25℃)の接着剤組成物(第二剤)を得、これらを2枚の易接着処理PETフィルムに塗工してシート状接着剤を得た。続いて、やはり実施例1と同様、これらをお互いに貼り合わせて、PETフィルムを接着層を介して貼り合わせた積層フィルムを得た。
【実施例4】
【0074】
ホットプレスのプレス温度を150℃にした他は、実施例1と同様にして、易接着処理PETフィルムに塗工したシート状接着剤を得た。続いて、実施例1と同様、これらをお互いに貼り合わせて、PETフィルムを接着層を介して貼り合わせた積層フィルムを得た。
【実施例5】
【0075】
ホットプレスを用いず、室温で24時間放置して接着剤層を硬化させた他は、実施例1と同様にして、易接着処理PETフィルムに塗工したシート状接着剤を得た。続いて、実施例1と同様、これらをお互いに貼り合わせて、PETフィルムを接着層を介して貼り合わせた積層フィルムを得た。
【実施例6】
【0076】
アクリレートとして2−エチルヘキシルアクリレート(東亞合成社製)19.8gとステアリルアクリレート(ライトアクリレートS−A、共栄社化学社製)79.1gの混合液に熱ラジカル重合開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド(製品名:PH−80、日本油脂製、10時間半減期温度158℃)0.9gを添加・混合して得られた液に、有機化層状粘土鉱物である有機化クレイ(株式会社ホージュン販売品エスベンN−400)を11.09g加えて、自転・公転ミキサーで攪拌し、有機化クレイを10質量%含有する粘度80Pa・s(25℃)の重合性組成物を得た(これを第一剤とする)。
一方、アクリレートとして2−エチルヘキシルアクリレート(東亞合成社製)19.8gとステアリルアクリレート(ライトアクリレートS−A、共栄社化学社製)79.1gの混合液に還元剤としてバナジルアセチルアセトネート0.9gを添加・混合して得られた液に、有機化層状粘土鉱物である有機化クレイ(株式会社ホージュン販売品エスベンN−400)を24.95g加えて、自転・公転ミキサーで攪拌し、有機化クレイを20質量%含有する粘度740Pa・s(25℃)の重合性組成物を得た(これを第二剤とする)。
続いて、2枚の易接着処理PETフィルム(品番A4300、東洋紡績株式会社製、規格厚さ75μm)に、それぞれ、得られた重合性組成物(第一液および第二剤)をアプリケーター(マイクロメーターにより任意なクリアランスに調整可能な機構を有するドクターブレード)を用いて厚み25μmになるように塗布して、シート状接着剤を得た。続いてこれらを貼り合わせ、ホットプレスを用いて加熱し(プレス温度70℃、プレス圧力0.7MPa、プレス時間10分)、接着層を硬化させた。こうしてPETフィルムを接着層を介して貼り合わせた積層フィルムを得た。
【実施例7】
【0077】
メタクリレートとしてn−ブチルメタクリレート(ライトエステルNB、共栄社化学社製)98.9gに熱ラジカル重合開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド(製品名:PH−80、日本油脂製、10時間半減期温度158℃)0.9gを添加・混合して得られた液に、有機化層状粘土鉱物である有機化クレイ(株式会社ホージュン販売品エスベンN−400)を11.09g加えて、自転・公転ミキサーで攪拌し、有機化クレイを10質量%含有する粘度42Pa・s(25℃)の重合性組成物を得た(これを第一剤とする)。
一方、メタクリレートとしてn−ブチルメタクリレート(ライトエステルNB、共栄社化学社製)98.9gに還元剤としてバナジルアセチルアセトネート0.9gを添加・混合して得られた液に、有機化層状粘土鉱物である有機化クレイ(株式会社ホージュン販売品エスベンN−400)を24.95g加えて、自転・公転ミキサーで攪拌し、有機化クレイを20質量%含有する粘度435Pa・s(25℃)の重合性組成物を得た(これを第二剤とする)。
続いて、2枚の易接着処理PETフィルム(品番A4300、東洋紡績株式会社製、規格厚さ75μm)に、それぞれ、得られた重合性組成物(第一液および第二剤)をアプリケーター(マイクロメーターにより任意なクリアランスに調整可能な機構を有するドクターブレード)を用いて厚み25μmになるように塗布し、シート状接着剤を得た。そしてこれらをお互いに貼り合わせ、ホットプレスを用いて加熱し(プレス温度70℃、プレス圧力0.7MPa、プレス時間10分)、接着層を硬化させた。こうしてPETフィルムを接着層を介して貼り合わせた積層フィルムを得た。
【実施例8】
【0078】
アクリレートとして2−エチルヘキシルアクリレート(東亞合成社製)96.9gとトリエチレングリコールジアクリレート(ライトアクリレート3EG−A、共栄社化学社製)2gの混合液に熱ラジカル重合開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド(製品名:PH−80、日本油脂製、10時間半減期温度158℃)0.9gを添加・混合して得られた液に、有機化層状粘土鉱物である有機化クレイ(株式会社ホージュン販売品エスベンN−400)を11.09g加えて、自転・公転ミキサーで攪拌し、有機化クレイを10質量%含有する粘度65Pa・s(25℃)の重合性組成物を得た(これを第一剤とする)。
一方、アクリレートとして2−エチルヘキシルアクリレート(東亞合成社製)96.9gとトリエチレングリコールジアクリレート(ライトアクリレート3EG−A、共栄社化学社製)2gの混合液に還元剤としてバナジルアセチルアセトネート0.9gを添加・混合して得られた液に、有機化層状粘土鉱物である有機化クレイ(株式会社ホージュン販売品エスベンN−400)を24.95g加えて、自転・公転ミキサーで攪拌し、有機化クレイを20質量%含有する粘度545Pa・s(25℃)の重合性組成物を得た(これを第二剤とする)。
続いて、2枚の易接着処理PETフィルム(品番A4300、東洋紡績株式会社製、規格厚さ75μm)に、それぞれ、得られた重合性組成物(第一液および第二剤)をアプリケーター(マイクロメーターにより任意なクリアランスに調整可能な機構を有するドクターブレード)を用いて厚み25μmになるように塗布し、シート状接着剤を得た。そしてこれらをお互いに貼り合わせ、ホットプレスを用いて加熱し(プレス温度70℃、プレス圧力0.7MPa、プレス時間10分)、接着層を硬化させた。こうしてPETフィルムを接着層を介して貼り合わせた積層フィルムを得た。
【実施例9】
【0079】
アクリレートとして2−エチルヘキシルアクリレート(東亞合成社製)98.8gに熱ラジカル重合開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド(製品名:PH−80、日本油脂製、10時間半減期温度158℃)0.9gと接着性向上剤としてγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.1gを添加・混合して得られた液に、有機化層状粘土鉱物である有機化クレイ(株式会社ホージュン販売品エスベンN−400)を11.09g加えて、自転・公転ミキサーで攪拌し、有機化クレイを10質量%含有する粘度48Pa・s(25℃)の重合性組成物を得た(これを第一剤とする)。
一方、アクリレートとして2−エチルヘキシルアクリレート(東亞合成社製)98.8gに還元剤としてバナジルアセチルアセトネート0.9gおよび接着性向上剤としてγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.1gを添加・混合して得られた液に、有機化層状粘土鉱物である有機化クレイ(株式会社ホージュン販売品エスベンN−400)を24.95g加えて、自転・公転ミキサーで攪拌し、有機化クレイを20質量%含有する粘度485Pa・s(25℃)の重合性組成物を得た(これを第二剤とする)。
続いて、2枚の易接着処理PETフィルム(品番:A4300、東洋紡績株式会社製、規格厚さ75μm)に、それぞれ、得られた重合性組成物(第一液および第二剤)をアプリケーター(マイクロメーターにより任意なクリアランスに調整可能な機構を有するドクターブレード)を用いて厚み25μmになるように塗布し、シート状接着剤を得た。そしてこれらをお互いに貼り合わせ、ホットプレスを用いて加熱し(プレス温度70℃、プレス圧力0.7MPa、プレス時間10分)、接着層を硬化させた。こうしてPETフィルムを接着層を介して貼り合わせた積層フィルムを得た。
【0080】
(比較例1)
本比較例は、有機化層状粘土鉱物(A)を使用しない例である。
アクリレートとして2−エチルヘキシルアクリレート(東亞合成社製)98.9gに熱ラジカル重合開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド(製品名:PH−80、日本油脂製、10時間半減期温度158℃)0.9gを添加・混合して、粘度10mPa・s(25℃)の重合性組成物を得た(これを第一剤とする)。
一方、アクリレートとして2−エチルヘキシルアクリレート(東亞合成社製)98.9gに還元剤としてバナジルアセチルアセトネート0.9gを添加・混合して粘度10mPa・s(25℃)の重合性組成物を得た(これを第二剤とする)。
続いて、2枚の易接着処理PETフィルム(品番:A4300、東洋紡績株式会社製、規格厚さ75μm)に、それぞれ、得られた重合性組成物(第一液および第二剤)をアプリケーター(マイクロメーターにより任意なクリアランスに調整可能な機構を有するドクターブレード)を用いて厚み25μmになるように塗布し、シート状接着剤を得た。そしてこれらをお互いに貼り合わせ、ホットプレスを用いて加熱し(プレス温度70℃、プレス圧力0.7MPa、プレス時間10分)、接着層を硬化させた。こうしてPETフィルムを接着層を介して貼り合わせた積層フィルムを得た。
【0081】
(比較例2)
本比較例は、有機化されていない層状粘土鉱物を使用した例である。
アクリレートとして2−エチルヘキシルアクリレート(東亞合成社製)98.9gに熱ラジカル重合開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド(製品名:PH−80、日本油脂製、10時間半減期温度158℃)0.9gを添加・混合して得られた液に、有機化されていないクレイ(株式会社ホージュン販売品ベンゲルA、平均粒子径<0.5μm(湿式)、材質:精製ベントナイト(モンモリロナイト))を11.09g加えて、自転・公転ミキサーで攪拌した。しかしクレイは均一に液中に分散しなかった。
一方、アクリレートとして2−エチルヘキシルアクリレート(東亞合成社製)98.9gに還元剤としてバナジルアセチルアセトネート0.9gを添加・混合して得られた液に、有機化されていないクレイ(株式会社ホージュン販売品ベンゲルA)を24.95g加えて、自転・公転ミキサーで攪拌した。しかしクレイは均一に液中に分散しなかった。
【0082】
(比較例3)
本比較例は、(メタ)アクリレートが本発明の範囲外のものを用いた例である。
水酸基を有するメタクリレートである2−ヒドロキシエチルメタクリレート(ライトエステルHO、共栄社化学社製)を用いた他は、実施例1と同様にして、重合性組成物(第一剤の粘度100Pa・s(25℃)、第二剤の粘度1100Pa・s(25℃))を得た。続いて、2枚の易接着処理PETフィルム(品番:A4300、東洋紡績株式会社製、規格厚さ75μm)に、やはり実施例1と同様にして、それぞれ得られた重合性組成物(第一液および第二剤)をアプリケーター(マイクロメーターにより任意なクリアランスに調整可能な機構を有するドクターブレード)を用いて厚み25μmになるように塗布し、シート状接着剤を得た。そしてこれらをお互いに貼り合わせ、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0083】
(評価)
上記の実施例1〜9及び比較例1〜3で作製した積層フィルムに関して、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
ガスバリア性(水蒸気透過度):
差圧式ガス・水蒸気透過率測定装置(GTR−30X、GTRテック社製)を用いて、透過面積15.2cm2の測定セルに合うよう円形状に試料をカットしたものについて1気圧の差圧でバブリング方式により供給した水蒸気の透過成分をガスクロマトグラフで検量することによって、40℃/90%RHの条件における水蒸気の透過率を測定した。
【0084】
接着強度:
積層フィルムを構成する、2種のフィルム(易接着処理PETフィルム(品番:A4300、東洋紡績株式会社製、規格厚さ75μm))間の接着強度(引張剪断接着強度)を測定した。引張剪断接着強度は、接着面積を10cm2(幅20mm×長さ50mm)としたものを接着試験片として用い、両端部を引張試験機にチャックして、引張速度10mm/分で該接着試験片を引張り、測定した。
【0085】
光学特性:
積層フィルムの光学特性として、全光線透過率およびヘーズを測定した。測定形態としては、積分球によるダブルビーム方式で全光線透過率およびヘーズが同時測定可能なヘーズメーター(型番:NDH5000、日本電色工業株式会社製)を用いた。なおフィルム(易接着処理PETフィルム(品番:A4300、東洋紡績株式会社製、規格厚さ75μm))同士を、接着層厚み50μmで貼り合わせたものを試験片として用いた。
【0086】
【表1−1】

【0087】
【表1−2】

【0088】
【表1−3】

【0089】
本発明によれば、有機化層状粘土鉱物と(メタ)アクリレートを含む二剤型の接着剤組成物をそれぞれ基材に塗布してシート状接着剤が得られる。このシート状接着剤の接着層は、重合硬化させることによって、分子の移動を抑制する遮蔽性が発現する。更に、この二剤型の接着剤組成物を異種又は同種のフィルム又はシート等の基材にそれぞれ塗工して得られるシート状接着剤を、お互いに貼り合わせることにより、得られる多層積層体に高い分子遮蔽性を付与することができる。このため、得られる積層体は高いバリヤー性や水蒸気遮断性を有すことから、屋外用途の保護シート等、とりわけ太陽電池モジュール用保護シートとして有効に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化層状粘土鉱物(A)及び(メタ)アクリレート(B)及びラジカル重合開始剤(C)を含有する第一剤と有機化層状粘土鉱物(A)及び(メタ)アクリレート(B)及び還元剤(D)を含有する第二剤とから構成される二剤型の接着剤組成物のうち、第一剤を第一の基材に塗布し、第二剤を第二の基材に塗布した一組のシート状接着剤であって、(メタ)アクリレート(B)が、炭素数1〜20の炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレート(B−1)を含むシート状接着剤。
【請求項2】
(メタ)アクリレート(B)が更に、(メタ)アクリル基を1分子内に2以上有し、フッ素を含有しない多官能(メタ)アクリレート(B−2)を含む請求項1に記載のシート状接着剤。
【請求項3】
炭素数1〜20の炭化水素基を有する単官能(メタ)アクリレート(B−1)がフッ素を含有しない請求項1又は2に記載のシート状接着剤。
【請求項4】
(メタ)アクリレート(B)が50〜98質量%を占める請求項1〜3の何れか一項に記載のシート状接着剤。
【請求項5】
第一剤及び第二剤の少なくとも一方が更に接着性向上剤(E)を含有する請求項1〜4の何れかに記載のシート状接着剤。
【請求項6】
有機化層状粘土鉱物(A)が有機層状ケイ酸塩である請求項1〜5の何れかに記載のシート状接着剤。
【請求項7】
ラジカル重合開始剤(C)が熱ラジカル重合開始剤である請求項1〜6の何れかに記載のシート状接着剤。
【請求項8】
熱ラジカル重合開始剤が有機過酸化物である請求項7に記載のシート状接着剤。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載のシート状接着剤のお互いの塗布面を貼り合わせた後に、(メタ)アクリレート(B)を重合して硬化させてなる多層積層体。
【請求項10】
物品の保護部材である請求項9に記載の多層積層体。
【請求項11】
物品が太陽光発電モジュールである請求項10に記載の多層積層体。
【請求項12】
請求項10に記載の多層積層体によって表面が保護された物品。
【請求項13】
請求項11に記載の多層積層体によって表面が保護された太陽電池モジュール。

【公開番号】特開2012−207116(P2012−207116A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73395(P2011−73395)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】