説明

分散型電源系統連系装置

【課題】電力系統側の電圧波形の歪みの発生を防止することのできる分散型電源系統連系装置を提供する。
【解決手段】分散型電源14と電力系統Aとを連系リアクトル11を介して接続し、連系リアクトル11に並列接続された開閉スイッチSを備え、連系リアクトル11に高調波バイパス回路20を並列接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、分散型電源と電力系統とを連系リアクトルによって接続する分散型電源系統連系装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、分散型電源と電力系統とを連系リアクトルで接続し、この連系リアクトルに開閉スイッチを並列接続した系統連系装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる系統連系装置は、負荷に印加される電圧を検出する電圧検出器と、この電圧検出器が検出する電圧に基づいて開閉スイッチの開閉と分散型電源を制御する制御回路等とを備えている。
【0004】
制御回路は、逆潮流などにより連系点の電圧が管理値を逸脱した場合、開閉スイッチを開成することにより、分散型電源が行う遅相無効電力の消費による電圧上昇の抑制効果を高めるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3962318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような系統連系装置にあっては、分散型電源側の負荷(一般需要家の負荷)の中には異常に大きな高調波電流を流して電圧を歪ます場合があり、このような場合、高調波電流が系統連系装置を介して電力系統側へ流れていき、その系統連系装置で電圧降下が発生することにより、負荷側の電圧波形を歪ませてしまうという問題があった。
【0007】
この発明の目的は、負荷側の電圧波形の歪みの発生を防止することのできる分散型電源系統連系装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、分散型電源と電力系統とを連系リアクトルを介して接続し、前記連系リアクトルに並列接続された開閉スイッチを備えた分散型電源系統連系装置であって、
前記連系リアクトルに高調波電流用のバイパス回路を並列接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、連系リアクトルに高調波電流用のバイパス回路を並列接続したものであるから、分散型電源側に接続された負荷の高調波電流がバイパス回路を通って電力系統側へ流れていくため、そのバイパス回路での高調波電流に対する電圧降下は僅かであり、このため負荷側の電圧波形の歪みの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明に係る分散型電源系統連系装置の構成を示した回路図である。
【図2A】分散型電源系統連系装置のバイパス回路の基本構成を示した回路図である。
【図2】分散型電源系統連系装置のバイパス回路の構成を具体的に示した回路図である。
【図3】バイパス回路などのインピーダンスを示したグラフである。
【図4】バイパス回路の構成を示した説明図である。
【図5】一方の直流コンデンサの電圧を示したグラフである。
【図6】他方の直流コンデンサの電圧を示したグラフである。
【図7】両直流コンデンサに印加する電圧を示したグラフである。
【図8】第2実施例の高調波バイパス回路の構成を示した回路図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明に係る分散型電源系統連系装置の実施の形態である実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0012】
[第1実施例]
図1に示す分散型電源系統連系装置10は、電力系統Aと分散型電源側Bとを接続した連系リアクトル11と、この連系リアクトル11に並列接続された開閉スイッチSと、連系リアクトル11に並列接続された高調波電流用のバイパス回路(高調波バイパス回路)20と、電力系統側から供給される電圧を検出する電圧検出器13と、例えば太陽光発電などの分散型電源14と、電圧検出器13が検出する電圧に基づいて開閉スイッチSの開閉と分散型電源14のインバータ(図示せず)の無効電力を制御する制御回路15等とを備えている。16は電力系統Aの商用電源であり、柱上変圧器(図示せず)の低圧側から引き込み線を介して需要家へ電力を供給する電源を示す。
【0013】
高調波バイパス回路20は、図2Aに示すように、交流用コンデンサC0で構成され、連系リアクトル11に並列接続されている。
【0014】
また、高調波バイパス回路の小型化を図るために、高調波バイパス回路20は、図2に示すように、極性を互いに逆にして直列接続した一対の直流用コンデンサC1,C2と、各直流用コンデンサC1,C2に並列接続された一対のダイオードD1,D2とを備えている。
【0015】
直流用コンデンサC1,C2は、例えば電解コンデンサや電気二重層などの直流用のコンデンサであり、直流用コンデンサC1の陰極となるマイナス端子と直流用コンデンサC2の陰極となるマイナス端子とが接続され、直流用コンデンサC1の陽極となるプラス端子が連系リアクトル11の一端(電力系統側)に接続され、直流用コンデンサC2の陽極となるプラス端子が連系リアクトル11の他端(負荷12側)に接続されている。
【0016】
そして、ダイオードD1のカソードが直流用コンデンサC1のプラス端子に接続され、ダイオードD1のアノードが直流用コンデンサC1のマイナス端子に接続されている。同様に、ダイオードD2のカソードが直流用コンデンサC2のプラス端子に接続され、ダイオードD2のアノードが直流用コンデンサC2のマイナス端子に接続されている。
【0017】
直流用コンデンサC1,C2の容量は、このコンデンサC1,C2を直列接続した場合の容量が商用周波数の偶数倍付近の周波数で連系リアクトル11とで共振するように設定されている。
[動 作]
次に、上記のように構成される分散型電源系統連系装置10の動作について説明する。
【0018】
分散型電源14で発電が行われると、この分散型電源14から一般負荷12に電力が供給される。この分散型電源14から供給される電力が負荷12で消費される電力より小さい場合、つまり電圧検出器13が検出する電圧が所定の範囲であれば、制御回路15は開閉スイッチSを閉成しているが、負荷12で消費される電力に比べて分散型電源14から供給される電力が大きく、余った電力が分散型電源側Bから電力系統側Aへ流れることで、電力系統側Aのインピーダンス(図示せず)により電力系統から供給される電圧が上昇し、電圧検出器13が検出する電圧が所定範囲より大きくなると、制御回路15は分散電源14に電圧上昇抑制のための遅相無効電力の消費運転(進相運転)を行わすとともに開閉スイッチSを開成し、分散電源14の電圧上昇抑制の効果を高める。
【0019】
この状態のとき、負荷12から高調波電流が発生すると、この高調波電流はバイパス回路20および連系リアクトル11を分流して電力系統A側へ流れていく。
【0020】
バイパス回路20と連系リアクトル11との並列回路のインピーダンスは、図3のグラフG1,G2に示すような特性となっている。
【0021】
すなわち、高調波の次数が3倍以上の場合には、インピーダンス特性がグラフG2に示すようになっていることにより、インピーダンスは高調波の次数が高くなっても低く抑えられている。しかし、バイパス回路20がない場合、つまり連系リアクトル11だけの場合には、連系リアクトル11のインピーダンス特性はグラフG3で示すようになり、周波数が高くなればなるほどインピーダンスが増加していく。
【0022】
このため、連系リアクトル11だけの場合には、高調波電流による連系リアクトル11での電圧降下が大きく、負荷12の電圧の波形の歪みが大きくなってしまう。しかし、バイパス回路20があることにより、高調波電流の周波数が高くなってもグラフG2に示すようにインピーダンスが低く抑えられていることにより、高調波電流による電圧降下が小さいものとなる。このため、負荷12に供給される商用電圧の波形の歪みを小さく抑えることができる。
【0023】
また、この実施例では、連系リアクトル11と直流用コンデンサC1,C2を直列接続した場合の静電容量とによる共振周波数を商用周波数の2倍に設定しているので、図3のグラフG1に示すように、商用周波数ではバイパス回路20を設けてもバイパス回路20を設けない場合の目標インピーダンスに近づけることができる。
【0024】
なお、図3の縦軸は電圧低下の割合を示す。また、グラフG4は連系リアクトルを使用していない場合の系統インピーダンス特性を示す。
【0025】
また、バイパス回路20に直流用コンデンサC1,C2を使用しているので、一般の交流用コンデンサを使用するよりも小型化を図ることができる。すなわち、一個の一般の交流用コンデンサで高調波バイパス回路を構成するよりも、2つの直流用コンデンサC1,C2と2つのダイオードD1,D2とで高調波バイパス回路を構成した方が小型化を図ることができる。
【0026】
ところで、バイパス回路20は、図2に示すように構成されているので、直流用コンデンサC1やC2の正極の電圧が負極の電圧より高くなっている(順方向)場合には、それぞれの直流用コンデンサC1,C2に並列接続されているダイオードD1,D2には逆方向の電圧が印加されるため導通せず、コンデンサC1,C2が直列接続の状態で充電されるが、直流用コンデンサC1またはC2の電圧極性が反転するようになると、電圧極性が反転する直流用コンデンサC1またはC2に並列接続されているダイオードD1またはD2に順方向の電圧が印加され、そのダイオードD1またはD2が導通し、IaまたはIbに示すように電流が流れ、直流用コンデンサC1,C2の極性が反転することを防止するとともに、極性が反転しないようにコンデンサC1,C2は直流電圧で充電される。
【0027】
その結果、図4に示すように、バイパス回路20に印加される電圧がV0のとき、直流用コンデンサC1,C2に印加される電圧はV1,V2となるが、それぞれの直流用コンデンサC1,C2の電圧V1,V2は、バイパス回路20に印加される交流電圧の波高値の1/2の直流電圧に、バイパス回路20に印加される交流電圧の1/2の電圧が重畳された電圧になるが、極性が逆転することはない。
[第2実施例]
図8は、第2実施例の高調波バイパス回路120を示す。この高調波バイパス回路120は、二つの直流用コンデンサC1,C2と、変圧器(トランス)Trとを有する。二つの直流用コンデンサC1,C2は、極性を逆にし例えば陰極と陰極とを接続した直列回路を形成し、変圧器Trの一次巻線Taの一端が直流用コンデンサC1の陽極に接続され、一次巻線Taの他端が直流用コンデンサC2の陽極に接続されている。
【0028】
変圧器Trの二次巻線Tbは、中性点を引き出した3端子Tb1,Tbn,Tb2を有している。二次巻線Tbの中性端子Tbnは直流コンデンサC1,C2の陰極に接続され、二次巻線Tbの一方の端子Tb1はダイオードD1のアノードに接続され、二次巻線Tbの他方の端子Tb2はダイオードD2のアノードに接続されている。ダイオードD1のカソードは直流コンデンサC1の陽極に接続され、ダイオードD2のカソードは直流コンデンサC2の陽極に接続されている。
【0029】
そして、直流用コンデンサC1の陽極の電圧が直流用コンデンサC2の陽極より高くなる方向の電圧が変圧器Trの一次巻線Taの両端に印加されると、変圧器Trの二次巻線Tbの端子Tb1の電圧が中性端子Tbnの電圧より低く、二次巻線Tbの端子Tb2の電圧が中性端子Tbnの電圧より高い電圧が誘起されるように、直流コンデンサC1,C2およぼダイオードD1,D2が変圧器Trに接続されている。
[動 作]
次に、第2実施例の高調波バイパス回路120の動作について説明する。
【0030】
直流用コンデンサC1の陽極の電圧が直流コンデンサC2の陽極の電圧に対して増加(V0の電圧が増加)していくとき、直流用コンデンサC1は順方向に充電され、直流用コンデンサC1の陽極の電圧が上昇し、逆に、直流コンデンサC2は逆方向に充電され、直流用コンデンサC2の陽極の電圧が下がっていく。
【0031】
電圧V0が波高値近くになると、直流用コンデンサC2の電圧(−V2)はゼロ近くに下がるが、電圧V0に比例して変圧器Trの二次巻線Tbの端子Tb2に誘起される電圧はダイオードD2を導通させる方向に増加していき、二次巻線Tbの端子Tb2の電圧が直流用コンデンサC2の陽極電圧より大きくなると、ダイオードD2が導通する。直流用コンデンサC1の充電電流は直流用コンデンサC2をバイパスし、変圧器Trの二次巻線Tbの端子Tb2およびダイオードD2を通って流れ、直流コンデンサC2が逆方向に充電されて極性が反転することを防止する。
【0032】
このとき、二次巻線Tbの端子Tb1の電圧も負の方向に大きくなるが、ダイオードD1の導通方向と逆方向の電圧のためダイオードD1で通電が阻止される。
【0033】
次に、電圧V0が下がっていく場合、これまでとは逆に、直流用コンデンサC2は順方向に充電されて陽極の電圧が上昇し、逆に直流用コンデンサC1は逆方向に充電されて陽極の電圧が下がっていく。
【0034】
電圧V0がマイナスの波高値近くになると、直流用コンデンサC1の電圧(V1)はゼロボルト近くに下がるが、電圧V0に比例してトランスTrの二次巻線Tbの端子Tb1に誘起される電圧もダイオードD1を導通させる方向に増加していき、直流用コンデンサC1の陽極の電圧より大きくなるとダイオードD1が動通し、直流用コンデンサC2の充電電流は直流用コンデンサC1をバイパスし、トランスTrの二次巻線Tbの端子Tb1およびダイオードD1を通って流れ、直流用コンデンサC1が逆方向に充電されて極性が反転することを防止する。このとき、トランスTrの二次巻線Tbの端子Tb2の電圧も負の方向に大きくなるが、ダイオードD2の導通方向と逆方向の電圧のためダイオードD2で通電が阻止される。
【0035】
高調波バイパス回路120によれば、直流用コンデンサC1,C2の最低電圧をトランスTrの変圧比で決まる一定値以上に維持することが可能となり、直流用コンデンサC1,C2電圧が逆転してしまうことを確実に防止することができる。
【0036】
なお、直流用コンデンサC1,C2の電圧逆転を防止するために、直流用コンデンサC1,C2をダイオードD1,D2の回路でバイアスするのは、電圧V0が波高値近くになったときだけで、それ以外ではダイオードD1,D2の通電が阻止されるため、2つの直流用コンデンサC1,C2は、直流用コンデンサC1と直流用コンデンサC2とが直列接続された回路と等価な回路となり、所定の高調波バイパス回路の静電容量を維持することができる。
【0037】
この発明は、上記実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【符号の説明】
【0038】
11 連系リアクトル
14 分散型電源
20 高調波バイパス回路(バイパス回路)
A 電力系統
S 開閉スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型電源と電力系統とを連系リアクトルを介して接続し、前記連系リアクトルに並列接続された開閉スイッチを備えた分散型電源系統連系装置であって、
前記連系リアクトルに高調波電流用のバイパス回路を並列接続したことを特徴とする分散型電源系統連系装置。
【請求項2】
前記バイパス回路は、極性を逆にして直列接続した一対の直流用コンデンサと、各直流用コンデンサに極性を合わせてそれぞれ並列接続された一対のダイオードとを備えていることを特徴とする分散型電源系統連系装置。
【請求項3】
前記バイパス回路は、極性を逆にして直列接続した一対の直流用コンデンサと、各直流用コンデンサが逆充電の際に極性が反転することを防止するための一対のダイオードと、印加された電圧を利用して前記各ダイオードに順方向の電圧を印加する変圧器とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の分散型電源系統連系装置。



【図1】
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【図2A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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