説明

分散電源用制御装置および集中型電圧制御システム

【課題】本発明は、分散電源の発電電力を有効に活用しかつ電力系統の電圧を安定化させるために、分散電源の無効電力を適切に制御することが可能な分散電源用制御装置および集中型電圧制御システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明による分散電源用制御装置は、所定時間前までにおける太陽光発電装置3の最大発電電力および最小発電電力と前回発電電力とに基づき最大増加幅および最大減少幅を算出し、過去の所定期間分の最大増加幅および最大減少幅に基づき最大変化幅の平均値および標準偏差を統計処理によって算出する発電電力統計処理部102と、現在の発電電力と平均値および標準偏差とに基づいて所定時間後までにおける太陽光発電装置3の最大発電電力を予想する最大発電電力予想部103と、最大発電電力とインバータ302容量とに基づいて所定時間後までに制御可能な最大無効電力を予想する無効電力制御可能量予想部104とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータを備える分散電源が連系する電力系統の電圧を安定化させる分散電源用制御装置および集中型電圧制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電や小型ガスエンジン発電など、直流で発電した電力をパワーコンディショナーなどのインバータを介して交流に変換して電力系統に接続(連系)されるインバータ型の分散電源が増加している。
【0003】
特に、太陽光発電のように、天気に依存して出力電力が大きく変動する分散電源が増えてくると、そのような分散電源が接続される電力系統に流れる電流が変動し、オームの法則に従って電圧も比例して変動する。そして、電力系統に流れる電圧の変動(以下、電圧変動とも称する)が大きくなると、電気事業法で定められている100V系統における101±6Vの範囲内、あるいは200V系統における202±20Vの範囲内での需要家への電力供給義務が果たせなくなるという問題が生じる。
【0004】
上記の問題の対策として、従来では、分散電源に無効電力制御機能を付与し、自電源の発電電力(すなわち、有効電力)の変動に起因する電力系統の電圧変動を抑制するように、無効電力の出力(供給あるいは消費)を決定し制御する方式がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、発電出力(有効電力)P(W)と無効電力Q(Var)とのベクトル和である皮相電力がインバータ容量S(VA)を超過しそうか否かを判定し、インバータ容量を超過しそうな場合は発電出力を絞り(減らし)、無効電力の出力可能範囲を増やす方式がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−78896号公報
【特許文献2】特開2007−288847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、無効電力を静止型無効電力発生装置などの他の装置で発生させる場合は問題ないが、無効電力をインバータで発生させる場合は、発電電力(有効電力)P(W)と無効電力Q(Var)とのベクトル和である皮相電力が、インバータ容量S(VA)を超えない範囲内でしか無効電力を発生させることができない。
【0008】
また、特許文献2に記載の方式を太陽光発電などの分散電源に適用した場合において、絞った(減らした)発電電力分は破棄することになり、発電電力を有効に活用できない。
【0009】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、分散電源の発電電力を有効に活用し、かつ、電力系統の電圧を安定化させるために、分散電源の無効電力を適切に制御することが可能な分散電源用制御装置および集中型電圧制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明による分散電源用制御装置は、インバータを介して電力系統に発電電力を供給する分散電源の制御を行う分散電源用制御装置であって、現在時刻から所定時間前までにおける分散電源の最大発電電力および最小発電電力と、所定時間前の発電電力である前回発電電力とに基づき、前回発電電力と最大発電電力との差分である最大増加幅、および前回発電電力と最小発電電力との差分である最大減少幅を算出し、過去の所定期間分の最大増加幅および最大減少幅に基づき、最大増加幅および最大減少幅の最大変化幅の平均値および標準偏差を統計処理によって算出する発電電力統計処理手段と、現在時刻の発電電力と、発電電力統計処理手段にて算出された平均値および標準偏差とに基づいて、現在時刻から所定時間後までにおける分散電源の最大発電電力を予想する最大発電電力予想手段と、最大発電電力予想手段にて予想された最大発電電力と、インバータの定格容量とに基づいて、現在時刻から所定時間後までに制御可能な最大無効電力を予想する無効電力制御可能量予想手段と、無効電力制御可能量予想手段にて予想された最大無効電力を制御可能量として外部に出力する制御可能量送信手段とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、現在時刻から所定時間前までにおける分散電源の最大発電電力および最小発電電力と、所定時間前の発電電力である前回発電電力とに基づき、前回発電電力と最大発電電力との差分である最大増加幅、および前回発電電力と最小発電電力との差分である最大減少幅を算出し、過去の所定期間分の最大増加幅および最大減少幅に基づき、最大増加幅および最大減少幅の最大変化幅の平均値および標準偏差を統計処理によって算出する発電電力統計処理手段と、現在時刻の発電電力と、発電電力統計処理手段にて算出された平均値および標準偏差とに基づいて、現在時刻から所定時間後までにおける分散電源の最大発電電力を予想する最大発電電力予想手段と、最大発電電力予想手段にて予想された最大発電電力と、インバータの定格容量とに基づいて、現在時刻から所定時間後までに制御可能な最大無効電力を予想する無効電力制御可能量予想手段と、無効電力制御可能量予想手段にて予想された最大無効電力を制御可能量として外部に出力する制御可能量送信手段とを備えるため、外部に出力された制御可能量を指標として制御を実行することにより、分散電源の発電電力を有効に活用し、かつ、電力系統の電圧を安定化させるために、分散電源の無効電力を適切に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態による集中型電圧制御システムの構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態による発電電力統計処理部における処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態による発電電力の時系列データの一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態による発電電力統計処理部での処理によって得られた発電電力の最大増減幅の度数分布の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態による最大発電電力予想部における次回制御周期までの最大発電電力の予想の一例を示す図である。
【図6】インバータ容量と出力可能な有効電力および無効電力との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、図面に基づいて以下に説明する。
まず、本発明の前提となる技術(前提技術)について説明する。
【0014】
〈前提技術〉
太陽光発電のような出力の変動が激しい分散電源に起因する電力系統の電圧変動について、分散電源のインバータのみで安定化を図る場合は、図6に示すように、発電電力(有効電力)P(W)と無効電力Q(Var)とのベクトル和である皮相電力が、インバータ容量S(VA)を超えない範囲内でしか無効電力を発生させることができない。そのため、必要とされるインバータ容量が大きくなってしまうという問題がある。
【0015】
このような問題の対策として、分散電源のインバータによる無効電力制御と、SVR(Step Voltage Regulator)など電力系統に既設のタップ型電圧調整器とを組み合わせた集中型電圧制御によって、電力系統の電圧安定化を図ることが望ましい。しかし、集中型電圧制御は、電力系統に設けられた各設備と通信可能に接続された中央制御装置にて行われるため、各設備との通信や中央制御装置での演算処理に時間を要し、各設備に対しリアルタイムで秒レベルの高速制御は難しい。
【0016】
本発明は、集中型電圧制御であってもインバータを備える分散電源の発電電力を有効に活用し、かつ、電力系統の電圧を安定化させるために、分散電源の無効電力を適切に制御することが可能な分散電源用制御装置を提供することを目的としており、以下に詳細に説明する。
【0017】
〈実施形態〉
図1は、本発明の実施形態による集中型電圧制御システムの構成の一例を示す図である。図1に示すように、本実施形態による集中型電圧制御システムは、INV(インバータ)302を介して電力系統5に発電電力を供給する太陽光発電装置3(分散電源)と、太陽光発電装置3の制御を行う分散電源用無効電力制御装置1(分散電源用制御装置)と、電力系統5に接続して設けられたタップ型電圧調整器6(電圧調整器)と、分散電源用無効電力制御装置1およびタップ型電圧調整器6と通信網4を介して通信可能に接続された中央制御装置2とを備えている。また、太陽光発電装置3と電力系統5との間には、太陽光発電装置3の出力を計測するためにPT(電圧センサー)303およびCT(電流センサー)304が備えられ、電力系統5には配電用変電所7が設けられている。
【0018】
太陽光発電装置3の太陽電池301によって発電した直流電力は、INV302にて交流の有効電力に変換されて電力系統5に給電される。太陽電池301は、日射などの気象条件によって発電電力が秒単位で変化するため、電力系統5への供給電力が変化し、電力系統5から配電用変電所7に流れる電力も変化する。その結果、電力系統5で電圧変動が生じる。
【0019】
次に、分散電源用無効電力制御装置1の構成について説明する。
【0020】
発電電力計測部101は、太陽光発電装置3から出力された発電電力をPT303およびCT304を介して計測する。計測結果は、時系列で発電電力実績データベース109に記憶される。
【0021】
発電電力統計処理部102(発電電力統計処理手段)は、現在時刻から所定時間前まで(集中電圧制御周期T(分)間)における分散電源の最大発電電力および最小発電電力と、所定時間前の発電電力である前回発電電力とに基づき、前回発電電力と最大発電電力との差分である最大増加幅、および前回発電電力と最小発電電力との差分である最大減少幅を算出し、過去の所定期間分の最大増加幅および最大減少幅に基づき、最大増加幅および最大減少幅の最大変化幅の平均値Pμおよび標準偏差ΔPσを統計処理によって算出する。平均値Pμおよび標準偏差ΔPσは、時間帯、初期出力値、天候ごとに算出され、発電電力実績データベース109に記憶される。
【0022】
なお、上記の時間帯は、例えば1日を1時間単位で24時間帯に分ける、あるいは曜日を考慮して24×2(平日、休日)の48時間帯に分けるようにしてもよい。また、上記の初期出力値は、発電設備容量を100%として10%単位で10段階に分けるようにしてもよい。また、上記の天候は、晴天、雲天、雨天などに分けるようにしてもよい。
【0023】
最大発電電力予想部103(最大発電電力予想手段)は、現在時刻の発電電力と、発電電力統計処理部102にて算出された平均値Pμおよび標準偏差ΔPσとに基づいて、現在時刻から所定時間後(制御周期T後)までにおける太陽光発電装置3の最大発電電力を予想する。
【0024】
無効電力制御可能量予想部104(無効電力制御可能量予想手段)は、最大発電電力予想部103にて予想された最大発電電力と、インバータ302の定格容量とに基づいて、現在時刻から所定時間後(制御周期T後)までに制御可能な最大無効電力を予想する。
【0025】
制御可能量送信部105(制御可能量送信手段)は、無効電力制御可能量予想部104にて予想された最大無効電力を制御可能量として中央制御装置2(外部)に出力する。
【0026】
また、目標電圧受信部106は、中央装置から送信された太陽光発電装置3の連系点(インバータ302と電力系統5との接続点)の目標電圧(後述する)を受信する。
【0027】
無効電力制御量決定部107は、連系点の電圧が受信した目標電圧と一致するように無効電力の出力(供給)あるいは吸収(消費)量を決定する。
【0028】
無効電力指令部108は、無効電力制御量決定部107にて決定された無効電力の制御量をインバータ302に指令(伝達)する。
【0029】
次に、中央制御装置2の構成について説明する。
【0030】
目標電圧決定部201(目標電圧決定手段)は、電力系統5に接続される需要家の接続点の電圧が電気事業法で定められている範囲内となるように、太陽光発電装置3の連系点の目標電圧を決定する。
【0031】
制御可能量受信部202は、分散電源用無効電力制御装置1から送信された無効電力の制御可能量を受信する。
【0032】
制御量配分決定部203(制御量配分決定手段)は、分散電源用無効電力制御装置1から受信した無効電力の制御可能量と、電力系統の電圧(図示せず)とに基づき、分散電源用無効電力制御装置1に付与する目標電圧の最終値(最終目標電圧値)と、タップ型電圧調整器6に付与する当該タップ型電圧調整器6を制御するためのタップ制御量との配分を決定する。
【0033】
タップ制御送信部204(制御量送信手段)は、タップ制御量をタップ型電圧調整器6に送信する。
【0034】
目標電圧送信部205(目標電圧送信手段)は、目標電圧の最終値(最終目標電圧値)を分散電源用無効電力制御装置1に送信する。
【0035】
次に、分散電源用無効電力制御装置1および中央制御装置2の動作について説明する。
【0036】
図2は、本実施形態による発電電力統計処理部102における処理を示すフローチャートである。また、図3は、本実施形態による発電電力の時系列データの一例を示す図である。また、図4は、本実施形態による発電電力統計処理部102での処理によって得られた発電電力の最大増減幅の度数分布の一例を示す図である。
【0037】
なお、図3,4において、現在時刻をt、中央制御装置2による制御周期をT(分)とする。また、分散電源用無効電力制御装置1および中央制御装置2における動作処理は、T(分)ごとに行われる(図2のステップS201)ものとする。
【0038】
図2に示すように、発電電力実績データベース109から、図3に示すような現在時刻tからT(分)前までの発電電力の実績を取得する(ステップS202)。すなわち、現在時刻tから前回制御が行われた時刻(t−T)までの間(T分間)における発電電力の実績を取得する。
【0039】
そして、取得した発電電力から最大発電電力(Pmax)および最小発電電力(Pmin)を探索し(ステップS203)、前回制御が行われた時刻での発電電力(Ps)との差分を算出する(ステップS204)。すなわち、Pmax−Ps(正値)を最大増加幅とし、Pmin−Ps(負値)を最大減少幅として算出する。最大増加幅および最大減少幅は、T(分)ごとに算出され、発電電力実績データベース109に順次記憶(登録)される(ステップS205)。
【0040】
次に、発電電力統計処理部102は、過去の所定期間(例えば、過去1年間)分の最大増加幅および最大減少幅を発電電力実績データベース109から取得して(ステップS206)、図4に示すような度数分布を作成し、最大増加幅および最大減少幅の最大変化幅の平均値Pμおよび標準偏差ΔPσを算出する(ステップS207)。算出した平均値Pμおよび標準偏差ΔPσは、発電電力実績データベース109に記憶される(ステップS208)。
【0041】
次に、最大発電電力予想部103は、図5に示すように、現在時刻tから制御周期T分後まで(すなわち、現在時刻tから次回制御が行われる時刻t+Tまで)における最大発電電力P(t+T)maxを下記の式(1)を用いて予想する。なお、式(1)におけるP(t)は、現在時刻tにおける発電電力を示している。
【0042】
【数1】

【0043】
上記の式(1)について、図4に示すような度数分布が正規分布に従っていると仮定した場合において、平均±2σの範囲内になる確率は95%であるため、実際に最大発電電力がP(t)+Pμ+2×ΔPσ以上になる確率は2.5%と評価される。従って、本実施形態では式(1)によって算出される電力を最大発電電力P(t+T)maxとしている。なお、本実施形態では最大発電電力P(t+T)maxは式(1)によって算出されるとしたが、P(t+T)max=P(t)+Pμ+α×ΔPσ(αは任意の係数)としてもよい。
【0044】
次に、無効電力制御可能量予想部104は、上記の式(1)によって算出された最大発電電力P(t+T)maxと、インバータ302の容量(定格容量)Sとに基づいて、現在時刻tから制御周期T分後までにおいて実際に発電電力がP(t+T)maxとなった場合に出力可能(制御可能)な無効電力の最大値Q(t+T)maxを下記の式(2)を用いて予想する。
【0045】
【数2】

【0046】
ここで、吸収(消費)可能な無効電力の最大値は、出力(供給)可能な無効電力の最大値と同じ大きさである。
【0047】
無効電力制御可能量予想部104にて算出された無効電力の最大値は、制御可能量として制御可能量送信部105から中央制御装置2に送信される。
【0048】
中央制御装置2において、制御可能量受信部202は、分散電源用無効電力制御装置1の制御可能量送信部105から送信された制御可能量を受信する。
【0049】
また、目標電圧決定部201は、電力系統5の電圧を適正に維持するために、太陽光発電装置3の連系点での目標電圧を想定する。なお、目標電圧は、1値指定でもよく、範囲指定であってもよい。
【0050】
目標電圧は、通常、前述の電気事業法で定められている100V系統において101±6V、200V系統において202±20Vの範囲内となるように、受電家の受電点までの電圧降下分を考慮して設定される。例えば、高圧系統の場合は、柱上変圧器や低圧配電系統でも低圧換算で数Vの電圧降下が発生する。最大の電圧降下分をΔV(低圧換算)とすると、高圧系統側の低圧換算での許容範囲は(95+ΔV)〜107Vとなる。当該許容範囲に柱上変圧器の変圧比の逆数を乗じると高圧系統側の電圧許容範囲となるため、単純にはこの許容範囲内の電圧を目標電圧とすればよい。
【0051】
制御量配分決定部203は、太陽光発電装置3によって制御可能な無効電力のみで目標電圧の達成が可能な否かを、潮流計算あるいは電圧降下計算などを用いて判定する。
【0052】
例えば、電圧降下計算では、配電用変電所7から太陽光発電装置3までの線路リアクタンス分をXとすると、無効電力Q(t+T)maxによって調整可能な電圧幅ΔVQmaxは、以下の式(3)で与えられる。
【0053】
【数3】

【0054】
上記の式(3)において、無効電力制御がない(実施しない)場合における電力系統5の電圧と目標電圧との差分がΔVQmaxよりも小さければ、太陽光発電装置3の無効電力制御によって目標電圧が達成できると判断される。一方、太陽光発電装置3の無効電力制御のみでは目標電圧が達成できないと判断された場合は、太陽光発電装置3よりも配電用変電所7側に設けられているタップ型電圧調整器6を電力系統5の電圧が目標電圧に近づくように制御し、それでも目標電圧に達しない分の電圧差を太陽光発電装置3の無効電力制御に担当させるようにすればよい。また、タップ型電圧調整器6に対する制御はタップ制御送信部204から通信網4を介して送信し、太陽光発電装置3に対する制御は目標電圧送信部2から通信網4を介して分散電源用無効電力制御装置1に送信することによって行う。
【0055】
なお、タップ型電圧調整器6による電圧制御と太陽光発電装置の無効電力制御とを併用しても目標電圧が達成できない場合は、目標電圧を多少緩和するなどの対策が考えられる。
【0056】
分散電源用無効電力制御装置1の目標電圧受信部106が、中央制御装置2の目標電圧送信部205から送信された目標電圧(最終目標電圧)を受信すると、無効電力制御量決定部107は、時々刻々と変化する電力系統5の電圧が目標電圧に近づくように、随時、無効電力制御量を決定する。そして、無効電力指令部108は、無効電力制御量決定部107にて決定された無効電力制御量でインバータ302を動作させるようインバータ302に指令する(インバータ302を制御する)。
【0057】
なお、無効電力制御量決定部107は、一般的なP制御(比例制御)によって無効電力制御量を決定してもよい。P制御では、入力は電力系統5の電圧と目標電圧との偏差であり、当該偏差縮小するように偏差に係数(ゲイン)を乗じた値を無効電力制御量として出力する。また、制御性を高めるために、PI制御(比例・積分制御)を用いて無効電力制御量を決定してもよい。
【0058】
以上のことから、集中型電圧制御において、現在から次回の制御までの間に、分散電源(太陽光発電装置)がどの程度の無効電力を出力可能であるかを確率的に求めて予想し、当該予想に従って分散電源と他の電圧調整器とを協調制御することができるため、分散電源の発電電力を有効に活用し、かつ、電力系統の電圧を安定化させるために、分散電源の無効電力を適切に制御することが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1 分散電源用無効電力制御装置、2 中央制御装置、3 太陽光発電装置、4 通信網、5 電力系統、6 タップ型電圧調整器、7 配電用変電所、101 発電電力計測部、102 発電電力統計処理部、103 最大発電電力予想部、104 無効電力制御可能量予想部、105 制御可能量送信部、106 目標電圧受信部、107 無効電力制御量決定部、108 無効電力指令部、109 発電電力実績データベース、201 目標電圧決定部、202 制御可能量受信部、203 制御量配分決定部、204 タップ制御送信部、205 目標電圧送信部、301 太陽電池、302 インバータ、303 電圧センサー、304 電流センサー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータを介して電力系統に発電電力を供給する分散電源の制御を行う分散電源用制御装置であって、
現在時刻から所定時間前までにおける前記分散電源の最大発電電力および最小発電電力と、前記所定時間前の前記発電電力である前回発電電力とに基づき、前記前回発電電力と前記最大発電電力との差分である最大増加幅、および前記前回発電電力と前記最小発電電力との差分である最大減少幅を算出し、過去の所定期間分の前記最大増加幅および前記最大減少幅に基づき、前記最大増加幅および前記最大減少幅の最大変化幅の平均値および標準偏差を統計処理によって算出する発電電力統計処理手段と、
前記現在時刻の前記発電電力と、前記電力統計処理手段にて算出された前記平均値および前記標準偏差とに基づいて、前記現在時刻から前記所定時間後までにおける前記分散電源の最大発電電力を予想する最大発電電力予想手段と、
前記最大発電電力予想手段にて予想された前記最大発電電力と、前記インバータの定格容量とに基づいて、前記現在時刻から前記所定時間後までに制御可能な最大無効電力を予想する無効電力制御可能量予想手段と、
前記無効電力制御可能量予想手段にて予想された前記最大無効電力を制御可能量として外部に出力する制御可能量送信手段と、
を備える、分散電源用制御装置。
【請求項2】
前記最大発電電力予想手段は、前記平均値Pμ、前記標準偏差ΔPσ、前記現在時刻tの前記発電電力P(t)、係数αとすると、前記現在時刻tから前記所定時間T後までにおける前記分散電源の最大発電電力P(t+T)maxを、
P(t+T)max=P(t)+Pμ+α×ΔPσ
として予想することを特徴とする、請求項1に記載の分散電源用制御装置。
【請求項3】
前記発電電力統計処理手段は、前記平均値および前記標準偏差を、時間帯、初期出力値、および天候ごとに算出することを特徴とする、請求項1または2に記載の分散電源用制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の分散電源用制御装置と、
前記電力系統に接続して設けられた電圧調整器と、
前記分散電源用制御装置および前記電圧調整器と通信網を介して通信可能に接続された中央制御装置と、
を備える集中型電圧制御システムであって、
前記中央制御装置は、
前記分散電源用制御装置から受信した前記制御可能量に基づいて、前記インバータと前記電力系統との接続点が所定の電圧となるよう前記分散電源用制御装置および前記電圧調整器の各々を制御することを特徴とする、集中型電圧制御システム。
【請求項5】
前記中央制御装置は、
前記所定の電圧を目標電圧として決定する目標電圧決定手段と、
前記分散電源用制御装置から受信した前記制御可能量と、前記電力系統の電圧とに基づき、前記分散電源用制御装置に付与する前記目標電圧の最終値である最終目標電圧値と、前記電圧調整器に付与する当該電圧調整器を制御するための制御量との配分を決定する制御量配分決定手段と、
前記最終目標電圧値を前記分散電源用制御装置に送信する目標電圧送信手段と、
前記制御量を前記電圧調整器に送信する制御量送信手段と、
を備え、
前記分散電源用制御装置は、前記中央制御装置から受信した前記最終目標電圧値に基づいて無効電力制御量を決定し、当該無効電力制御量で前記インバータを動作させるよう制御することを特徴とする、請求項4に記載の集中型電圧制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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