説明

分散電源用発電装置の整流回路

【課題】風力または水力より、風車または水車の最大出力を得るために多種類の巻線を有する永久磁石型発電機とリアクトルで構成する直流出力回路においては、永久磁石型発電機内に広い巻線スペースが必要となるので発電機が高価になるという問題がある。
【解決手段】風車または水車より流速変動時も概略の最大出力を得るために、永久磁石型発電機内の巻線の種類を1種類とし、この巻線の出力端子から第1のコンデンサを経て第1の整流器に接続し、前記第1のコンデンサに並列に第1のリアクトルを接続し、前記第1のリアクトルに直列に2倍圧整流回路を接続し、前記第1の整流器の出力と前記2倍圧整流回路の出力を加算して直流電源に出力する分散電源用発電装置の整流回路である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車または水車により駆動される永久磁石型発電機から、風または水の流速に関わらず、制御回路を用いずに風または水より得られる概略の最大出力を取り出すための分散電源用発電装置の整流回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
風車または水車に接続された永久磁石型発電機より、異なる流速から概略の最大出力を取り出すために、永久磁石型発電機の異なる大きさの誘起電圧を発生する絶縁された複数の巻線の出力端子にリアクトルを経て直列に整流器を接続し、この整流器の直流出力を並列接続して外部に出力する分散電源用発電装置の整流回路がある(例えば、後述する特許文献1の図1参照)。
【0003】
このような第1の従来例を、図9の風車に接続された分散電源用発電装置の整流回路を示す主回路単線結線図を参照して詳述する。
【0004】
図9において、21は風車、1は永久磁石型発電機、11および12は従来の第1および第2のリアクトル、7および8は第1および第4の整流器、10は上記従来例の分散電源用発電装置の整流回路、13は正側出力端子、14は負側出力端子、22はバッテリである。上記第1の従来例の分散電源用発電装置の整流回路は、永久磁石型発電機1、従来の第1および第2のリアクトル11および12、第1および第4の整流器7および8、正側出力端子13および負側出力端子14で構成される。
【0005】
図9において、永久磁石型発電機1の固定子は異なる大きさの誘起電圧を出力する相互に絶縁された第1の巻線W1および第2の巻線W2の2種類の巻線を内蔵する。前記永久磁石型発電機1の巻数が少なくて低い誘起電圧を出力する第1の巻線W1の交流出力は、従来の第1のリアクトル11に接続され、さらに直列に第1の整流器7に接続される。
【0006】
巻数が多くて大きい誘起電圧を出力する第2の巻線W2の交流出力は、従来の第2のリアクトル12に接続され、さらに直列に第4の整流器8に接続される。
【0007】
前記第1、第4の整流器7、8の各々の直流側は、正側出力端子13及び負側出力端子14に並列接続され、各巻線の合計出力がバッテリ22に充電される。
【0008】
このように構成される分散電源用発電機の直流出力回路10より、概略の風車最大出力を得られる方法を以下に示す。
【0009】
図8は、風速をパラメータとした時の、風車回転数対風車出力特性の概要を説明した図である。
【0010】
風車は、風車の形状及び風速Vが決まると、風車回転数Nに対する風車出力Pが一義的に定まる。例えば、風速Vx及びVyに対する風車出力Pは、それぞれ図8のように示される。そして、種々の風速に対する風車出力Pのピークは、図8に示す風車最大出力曲線Ptのような風車回転数Nに対して3乗特性となる。
【0011】
すなわち、図8の風車最大出力曲線の見方を変えると、風から最大出力を得るためには、風車回転数Nが定まると、その時の永久磁石型発電機1の入力Pを一義的に、風車最大出力曲線Pt上の値に定めれば良いことを表している。
【0012】
図7は、前記従来例が対象とする分散電源用発電装置の整流回路の直流出力をバッテリ等の定電圧源に接続した場合の説明図である。以下では、ギア等の損失を考慮せずに、風車出力と永久磁石型発電機1の入力が等しいとして説明する。
【0013】
永久磁石型発電機1の第1および第2の巻線W1およびW2の直流出力P1およびP2は、W1およびW2巻線の誘起電圧の小と大およびT1、T2出力端子に接続される従来の第1、第2のリアクトル11、12のインダクタンス値の小と大により、図6の風車回転数対出力特性に示すようになる。すなわち、誘起電圧の大きいW2巻線の出力は風車回転数N2から発電を開始し、その直流出力P1に比べて小さな出力値は従来の第2のリアクトル12の大きなインダクタンス値により抑えられ、直流出力P2のようになる。
【0014】
また、誘起電圧の小さいW1巻線の出力は風車回転数N1から発電を開始し、その直流出力P2に比べて大きな出力値は従来の第1のリアクトル11の小さなインダクタンス値により定まり、直流出力P1のようになる。このようにして、分散電源用発電装置の整流回路はバッテリ22に直流電流を供給する、いわゆる電流源として作用する。
そして、第1および第2の巻線W1およびW2の出力P1およびP2を加算して得られる合計直流出力は、近似発電機出力曲線Psとなり風車より概略の最大出力を得ることができる。
【0015】
また第2の従来例として、多相交流電源に基づいて3倍電圧または2倍電圧を得ることができる整流回路が知られている(例えば、後述する特許文献2の図1参照)。
【0016】
このような第2の従来例を、図10の2倍圧整流回路の回路図で示す。図10において、31は直流コンデンサ、32は第2の整流器、33は第3の整流器であり、この直流コンデンサ31、第2の整流器32、第3の整流器33で2倍圧整流回路30を構成する。
【0017】
図10において、多相交流電源端子Trの出力には第3の整流器33の入力側が接続され、この第3の整流器33と並列に直流コンデンサ31が多相交流電源端子Trに接続される。この直流コンデンサ31の反多相交流電源端子Tr側に第2の整流器32の入力側が接続され、第3の整流器33の正側直流出力端子は第2の整流器32の負側出力端子と接続される。このように接続される多相交流電源の2倍圧整流回路30は、直流コンデンサ31には多相交流電源端子Trから第2の整流器32の方向に、第3の整流器33の他の相を通って多相交流電源のピーク電圧が充電されるために、第2の整流器32の正側出力端子34と第3の整流器33の負側出力端子35の間には、直流電圧として多相交流電源のピーク電圧の2倍の電圧が得られる、いわゆる電圧源となる。
【0018】
この従来例には、多相交流電源端子Trに直列に平滑リアクトルLを接続し、3相3倍圧整流回路を構成する実施例が記載されている(例えば、特許文献2の図8参照)。この平滑リアクトルLとコンデンサC1〜C6によって、多相交流電源の電源周波数において直列共振を起こすように設定され、一定周波数を有する多相交流電源の入力電流の波形改善を図るために接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2004−64928号公報
【特許文献2】特開昭56−139083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかし、上記のように構成される第1の従来例の分散電源用発電装置の整流回路10においては、永久磁石型発電機1は2種類以上の巻線で構成されるために、永久磁石型発電機1内のスロットに広い巻線スペースが必要となるとともに、2種類以上の巻線間の絶縁が必要となる。そのために発電機が大きくなり、かつ製作工数も多くなるので高価になるという問題があった。
【0021】
また、永久磁石型発電機1の2種類の巻線の交流端子には、リアクトルが接続されるために、遅れ電流による発電機巻線との鎖交磁束ひいては発電機誘起電圧が減少するという問題点の他に、2種類の巻線に流れる電流の力率が悪いために巻線の断面積を増やさなければならないという問題があった。
【0022】
さらに、発電機が複数の巻線を有するために、発電機出力端子とリアクトルとの接続が複数箇所になり、発電機とリアクトル等の直流出力回路の接地場所が異なる場合、例えば、風車を例にすれば、発電機をナセル上に、リアクトルを地上に設置というように離して配置する必要がある場合には配線作業が煩雑になるという問題があった。
【0023】
第2の従来例においては、多相交流電源端子Trと2倍圧整流回路30との間にインピーダンスが接続されていない例が示されている。このような整流回路を分散電源用発電装置の整流回路に用いた場合には、永久磁石型発電機1の電源電圧ピーク値がバッテリ電圧を超えると出力が開始するが、変動する風速から常に風車最大出力を得ることができないばかりでなく、電流を抑制するものがないために、高風速における回転数の上昇とともに過大な出力になり装置を破壊する。すなわち、永久磁石型発電機1が過変速されて出力電圧が変化する場合には、このような電圧源回路では、制御回路を用いずに風または水より得られる概略の最大出力を取り出すことはできないという問題があった。
【0024】
また、風力発電のような変動風速から風車最大出力を得るための永久磁石型発電機1を用いた分散電源用発電装置においては、永久磁石型発電機1が可変速されて電源周波数と電源電圧が変化する。したがって、第2の従来例における3相3倍圧整流回路を構成する実施例(例えば、特許文献2の図8参照)においては、特定の周波数以外ではコンデンサC1〜C6または平滑リアクトルLの電圧降下が大きくなり、大きな整流出力が取り出せないという問題があった。
【0025】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、インバータ等の制御回路無しで風力等より最大出力を得るために多種類の巻線を有する永久磁石型発電機においては、発電機内に広い巻線スペースが必要となるので発電機が大きくなり、かつ製作工数が多くなるのに対し、その点を改善するために従来から製作されている1種類の巻線を有する永久磁石型発電機を用いることで、発電機を小型化し、且つ製作工数も少なくして提供できるものとせんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
そのため本発明の構成は、風車または水車により駆動される永久磁石型発電機から、風または水の流速に関わらず、制御回路を用いずに風車または水車の概略の最大出力を得る分散電源用発電装置の整流回路において、前記永久磁石型発電機の交流出力端子に第1のコンデンサを経て第1の整流器を接続し、前記第1のコンデンサに並列に第1のリアクトルを接続し、前記第1のリアクトルに直列に2倍圧整流回路を接続し、前記第1の整流器の出力と前記2倍圧整流回路の出力を加算して直流電源に出力することを特徴とする分散電源用発電装置の整流回路である。
【0027】
請求項1の発明によれば、風車または水車により駆動される永久磁石型発電機から、風または水の流速に関わらず、制御回路を用いずに風車または水車の概略の最大出力を得る分散電源用発電装置の整流回路において、該永久磁石型発電機の交流出力端子に第1のコンデンサを経て第1の整流器を接続し、該第1のコンデンサに並列に第1のリアクトルを接続し、該第1のリアクトルに直列に第3の整流器を接続し、該第3の整流器に並列に直流コンデンサを接続し、該直流コンデンサに直列に第2の整流器を接続し、該第2の整流器の負側出力端子と前記第3の整流器の正側出力端子を接続し、前記直流コンデンサと前記第2の整流器と前記第3の整流器とにより2倍圧整流回路を構成し、該第1の整流器の出力と該2倍圧整流回路の出力を加算して直流電源に出力することを特徴とする分散電源用発電装置の整流回路。
【0028】
請求項2の発明によれば、前記請求項1記載の分散電源用発電装置の整流回路において、前記永久磁石型発電機の内部インダクタンスと前記第1のコンデンサの容量との直列回路を定格回転数において容量性リアクタンスとなし、前記永久磁石型発電機の定格回転数において該容量性リアクタンスと、前記永久磁石型発電機の内部インダクタンスと前記第1のリアクトルのインダクタンスとの直列回路の誘導性リアクタンスとの和をほぼ零となして発電機電流の力率をほぼ1となすことを特徴とする分散電源用発電装置の整流回路。
【0029】
請求項3の発明によれば、前記請求項1記載の分散電源用発電装置の整流回路において、該永久磁石型発電機の交流出力端子に第2のリアクトルを経て第1の整流器を接続し、該第2のリアクトルに並列に第2のコンデンサを接続し、該第2のコンデンサに直列に2倍圧整流回路を接続し、前記第1の整流器の出力と前記2倍圧整流回路の出力を加算して直流電源に出力することを特徴とする分散電源用発電装置の整流回路。
【0030】
請求項4の発明によれば、前記請求項3記載の分散電源用発電装置の整流回路において、前記永久磁石型発電機の内部インダクタンスと前記第2のコンデンサの容量との直列回路を定格回転数において容量性リアクタンスとなし、前記永久磁石型発電機の定格回転数において該容量性リアクタンスと、前記永久磁石型発電機の内部インダクタンスと前記第2のリアクトルのインダクタンスとの直列回路の誘導性リアクタンスとの和をほぼ零となして発電機電流の力率をほぼ1となすことを特徴とする分散電源用発電装置の整流回路。
【発明の効果】
【0031】
本発明の風車または水車の概略の最大出力を得る分散電源用発電機の直流出力回路は、永久磁石型発電機内の巻線が1種類で構成されるために永久磁石型発電機が小さくなるので重量が軽くなり、かつ製作工数も少なくなるという優れた効果がある。また、直流出力回路を構成する2倍圧整流回路はリアクトル、コンデンサおよび整流器で構成されるので直流出力回路を安価に製作できるという優れた効果がある。さらに、発電機が1種類の巻線を有するために、発電機出力端子と直流出力回路との接続箇所が減少するので、配線作業が容易になるという効果がある。また、直流出力回路に用いるコンデンサおよびリアクトルの値を最適に選ぶことにより発電機電流の力率をほぼ1にでき、永久磁石型発電機1の体格を最小にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施例に係る分散電源用発電装置の整流回路を説明するための主回路単線結線図である。
【図2】本発明の第3の実施例に係る分散電源用発電装置の整流回路を説明するための主回路単線結線図である。
【図3】本発明の第2、第4の実施例に係る電気角周波数に対する、発電機と発電機に接続されるリアクタンスの直列リアクタンス特性の概要を示す説明図である。
【図4】本発明の第2、第4の実施例に係る電気角周波数に対する、発電機電流の力率を説明するための説明図である。
【図5】本発明の第1〜第4の実施例に係る風車回転数対風車最大出力および分散電源用発電装置の整流回路の近似出力特性の概要を示す説明図である。
【図6】本発明の第1〜第4の実施例が対象とする風車回転数対風車出力特性および分散電源用発電装置の整流回路の各整流器の出力特性の概要を示す説明図である。
【図7】第1の従来例に係る風車回転数対風車最大出力および分散電源用発電装置の整流回路の近似出力特性の概要を示す説明図である。
【図8】本発明および第1の従来例に係る風速をパラメータとした時の、風車回転数対風車出力特性の概要を説明する図である。
【図9】第1の従来例の分散電源用発電装置の整流回路の主回路単線結線図である。
【図10】第2の従来例の多相交流電源に基づいて2倍電圧を得ることができる整流回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
風車または水車により駆動される永久磁石型発電機から、風または水の流速に関わらず、制御回路を用いずに風車または水車の概略の最大出力を得る分散電源用発電機の直流出力回路において、前記永久磁石型発電機の交流出力端子は第1のコンデンサを経て第1の整流器に接続し、前記第1のコンデンサに並列に第1のリアクトルを接続し、前記第1のリアクトルに直列に第3の整流器を接続し、前記第3の整流器に並列に直流コンデンサを接続し、前記直流コンデンサに直列に第2の整流器を接続し、前記第2の整流器の負側出力端子と前記第3の整流器の正側出力端子を接続し、前記直流コンデンサ、前記第2の整流器、前記第3の整流器にて2倍圧整流回路を構成し、前記第1の整流器の出力と前記第2の整流器の出力を加算して直流電源に出力することを特徴とする分散電源用発電装置の整流回路である。
【実施例1】
【0034】
図1は、本発明を風車に適用した場合であり、風車により駆動される分散電源用発電装置の整流回路を説明する主回路単線結線図である。
【0035】
同図において、4は第1のコンデンサ、2は第1のリアクトル、31は直流コンデンサ、32は第2の整流器、33は第3の整流器であり、図9と同一番号は同一構成部品を表す。直流コンデンサ31、第2の整流器32および第3の整流器33により2倍圧整流回路30を構成する。本発明の分散電源用発電装置の整流回路10は、永久磁石型発電機1、第1のコンデンサ4、第1のリアクトル2、第1の整流器7および2倍圧整流回路30、正側出力端子13、負側出力端子14で構成される。
【0036】
以下、図1について説明する。永久磁石型発電機1は、第1の従来例と異なり1種類の巻線で構成される。永久磁石型発電機1の交流出力端子Tは、第1のコンデンサ4を経て第1の整流器7に接続される。
【0037】
また、前記永久磁石型発電機1の交流出力端子Tには前記第1のコンデンサ4に並列に第1のリアクトル2が接続され、この第1のリアクトル2の反交流出力端子T側には2倍圧整流回路30が接続される。第1の整流器7および2倍圧整流回路30の合計出力が正側出力端子13、負側出力端子14を経てバッテリ22に出力される。
【0038】
永久磁石型発電機1の交流出力端子Tに、第1のリアクトル2を経て接続される2倍圧整流回路30は、以下のようにして永久磁石型発電機1の出力電圧のピーク電圧の2倍の直流電圧が得られる。すなわち、図1の直流コンデンサ31の付近に+−の記号で示すように、直流コンデンサ31には前記第1のリアクトル2から第2の整流器32の方向に、第1のリアクトル2および第3の整流器33の他の相を通って永久磁石型発電機1のピーク電圧が充電される。したがって、第2の整流器32の正側出力端子34と第3の整流器33の負側出力端子35の間には、永久磁石型発電機1のピーク電圧の2倍の直流電圧が得られる。
【0039】
このように構成される分散電源用発電装置の整流回路10において、第1のリアクトル2および2倍圧整流回路30で構成される回路の直流電圧がバッテリ22の直流電圧より高くなると、図6の風車回転数N2付近から出力P2に見られるように出力を開始する。
【0040】
したがって、この2倍圧整流回路30によって、図9に示す第1の従来例における永久磁石型発電機1内のW2巻線、従来の第2のリアクトル12および第4の整流器8で構成される回路と同一作用を行わせることができる。
すなわち、第1の従来例においては永久磁石型発電機1内において、W2巻線はW1巻線よりも電圧が高くなるように相互に絶縁して構成されていた。その高い電圧を発生させる作用を2倍圧整流回路30で行うものである。
【0041】
本願の設計方法としては、先ず図6の風車回転数N1を定格風車回転数Nrの2/3程度に決め、図6の発電機出力P1を開始する風車回転数N1において、永久磁石型発電機1の誘起電圧がバッテリ22の直流電圧よりも高くなるように永久磁石型発電機1を設計する。そして、2倍圧整流回路30の2倍昇圧整流作用によって、風車回転数N1の半分の風車回転数N2から、図6の発電機出力P2を開始する。そして、第1のリアクトル2の値を適切に選ぶことにより直流出力P2の大きさが決まり、その直流出力P2がバッテリ22に出力される。
【0042】
また、風車回転数が高くなると第1のコンデンサ4および第1の整流器7で構成される回路により直流出力P1がバッテリ22に出力され、上記の直流出力P2と合計した直流出力は図5の近似発電機出力Psとほぼ同一となり、異なる流速においても概略の風車または水車最大出力を得ることができる。
【0043】
このように、大きな出力は直接に第1のコンデンサ4を経由して整流出力し、一方の小さな出力は第1のリアクトル2と2倍圧整流回路30を経由して整流出力し、その合計出力をバッテリ22に出力できる分散電源用発電装置の整流回路を構成できる。永久磁石型発電機1は、1巻線で構成されるために、第1の従来例で用いられる永久磁石型発電機よりも安価に構成できる。
【実施例2】
【0044】
図3に、前記永久磁石型発電機1の内部インダクタンス値をLとし、前記第1のコンデンサ4の容量値をCとした時のインダクタンスLと容量Cのリアクタンス特性を示す。
図に示すωL−1/(ωC)が、インダクタンスと容量の直列リアクタンス特性であり、風車回転数Nの上昇すなわち永久磁石型発電機1の電気角周波数ωの上昇とともに、リアクタンスXが容量性から誘導性に変化する特性となる。
【0045】
永久磁石型発電機1、第1のコンデンサ4、第1の整流器7、バッテリ22で構成される回路には、永久磁石型発電機1の誘起電圧、図3の如きリアクタンス特性およびバッテリ22の直流電圧値により決まる電流が流れる。ここで、風車回転数Nが上昇して、図3に示す電気角周波数ωがインダクタンスLと容量Cの直列共振角周波数ωと一致すると、共振状態となり過大な電流が流れて装置が破壊される。
【0046】
したがって、本発明の第2の実施例は、風車21により駆動される永久磁石型発電機1の定格電気角周波数ωが、図3に示す直列共振角周波数ωよりも低い値となるように設定することを特徴とする。すなわち、図5に示す近似出力曲線Psを最大出力曲線Ptに近づけるには、永久磁石型発電機1、第1のコンデンサ4で構成される直列回路のリアクタンスを、風車定格回転数Nr内で容量性とすることにより達成される。したがって、永久磁石型発電機1の内部インダクタンス値および第1のコンデンサ4の容量を正確に把握し、永久磁石型発電機1の定格電気角周波数ωの値を直列共振角周波数ωの80〜90%にすることが必要である。
【0047】
前記直列回路のリアクタンスを容量性とすることで、永久磁石型発電機1内の巻線には進相電流が流れる。したがって、リアクトルのみを通って電流が流れる場合には、巻線との鎖交磁束が減少するが、この直列回路の容量性リアクタンスによって巻線との鎖交磁束の減少が抑制される。そして、永久磁石型発電機の無負荷誘起電圧の減少が抑制される。したがって、図7の定格回転数Nr付近の近似出力曲線Psに見られるような飽和曲線とはならず、本願においては図5の近似出力曲線Psのように上昇して最大出力曲線Ptに近づけることができる。
【0048】
また、図1に示す永久磁石型発電機1に流れる電流Iは、第1のリアクトル2を流れる遅相電流と、第1のコンデンサ4を流れる進相電流のベクトル和である。したがって、風車定格回転数Nr付近で、永久磁石型発電機1の内部インダクタンスと第1のコンデンサ4の直列回路のリアクタンスを容量性となし、永久磁石型発電機1の内部インダクタンスおよび第2のリアクトル3の直列回路のリアクタンスを誘導性となし、該容量性リアクタンスと該誘導性リアクタンスの和をほぼ零となして永久磁石型発電機電流の力率をほぼ1にでき、永久磁石型発電機1の体格を最小にすることができる。
【0049】
図4は、永久磁石型発電機1に流れる電流Iの力率を1にする方法を説明するための図である。図において、永久磁石型発電機1の内部インダクタンスおよび第1のリアクトル2の直列回路のリアクタンスはX1、永久磁石型発電機1の内部インダクタンスおよび第1のコンデンサ4の直列回路のリアクタンスをX2として示す。風車定格回転数Nr付近で、リアクタンスX1とX2の絶対値をほぼ等しくすると、永久磁石型発電機1には有効分電流だけ流れて、電流Iの力率はほぼ1となる。
【実施例3】
【0050】
図2に示す本発明の第3の実施例は、本発明の第1の実施例で説明した第1のリアクトル2をコンデンサに置き換え、第1のコンデンサ4をリアクトルに置き換えて、近似出力曲線Psを最大出力曲線Ptに近似する方法である。
【0051】
図2において、3は第2のリアクトル、5は第2のコンデンサであり、図1と同一番号は同一構成部品を表す。本発明の第2の実施例の分散電源用発電装置の整流回路10は、永久磁石型発電機1、第2のリアクトル3、第2のコンデンサ5、第1の整流器7、2倍圧整流回路30および正側および負側出力端子13および14で構成される。
【0052】
永久磁石型発電機1は、1種類の巻線で構成される。永久磁石型発電機1の交流出力端子Tは、第2のリアクトル3を経て第1の整流器7に接続される。
また、前記永久磁石型発電機1の交流出力端子Tには前記第2のリアクトル3に並列に第2のコンデンサ5が接続され、この第2のコンデンサ5の反交流出力端子T側には2倍圧整流回路30が接続される。第1の整流器7および2倍圧整流回路11の合計出力が正側出力端子13、負側出力端子14を経てバッテリ22に出力される
【0053】
このように構成される回路においては、図6に示す風車回転数N2より出力を開始する。そして、風車回転数の上昇とともに、第2のコンデンサ5によって電流を押さえられ、図6に示す直流出力P2のごとき出力がバッテリ22に流れる。
さらに風車回転数Nが上昇することにより、図2の第2のリアクトル3および第1の整流回路7を経て、図6の直流出力P1がバッテリ22に流れ、合計した出力は図5の近似出力曲線Psが如くなる。
【0054】
本発明の第4の実施例は、風車21により駆動される永久磁石型発電機1の定格電気角周波数ωが、図3に示す直列共振角周波数ωよりも低い値となるように設定することを特徴とする。すなわち、図5に示す近似出力曲線Psを最大出力曲線Ptに近づけるには、永久磁石型発電機1、第2のコンデンサ5で構成される直列回路のリアクタンスを、風車定格回転数Nrで容量性とすることにより達成される。すなわち、永久磁石型発電機1の内部インダクタンス値および第1のコンデンサ4の容量を正確に把握し、永久磁石型発電機1の定格電気角周波数ωの値を直列共振角周波数ωの80〜90%にすることが必要である。
【0055】
前記直列回路のリアクタンスを容量性とすることで、永久磁石型発電機1内の巻線には進相電流が流れる。したがって、リアクトルのみを通って電流が流れる場合には、巻線との鎖交磁束が減少するが、この直列回路の容量性リアクタンスによって巻線との鎖交磁束の減少が抑制される。そして、永久磁石型発電機の無負荷誘起電圧の減少が抑制される。したがって、図7の定格回転数Nr付近の近似出力曲線Psに見られるような飽和曲線とはならず、本願においては図5の近似出力曲線Psのように上昇して最大出力曲線Ptに近づけることができる。
【0056】
また、図1に示す永久磁石型発電機1に流れる電流Iは、第2のリアクトル3を流れる遅相電流と、第1のコンデンサ4を流れる進相電流のベクトル和である。したがって、風車定格回転数Nr付近で、永久磁石型発電機1の内部インダクタンスと第1のコンデンサ4の直列回路のリアクタンスを容量性となし、永久磁石型発電機1の内部インダクタンスおよび第2のリアクトル3の直列回路のリアクタンスを誘導性となし、該容量性リアクタンスと該誘導性リアクタンスの和をほぼ零となして永久磁石型発電機電流の力率をほぼ1にでき、永久磁石型発電機1の体格を最小にすることができる。
【0057】
図4は、永久磁石型発電機1に流れる電流Iの力率を1にする方法を説明するための図である。図において、永久磁石型発電機1の内部インダクタンスおよび第2のリアクトル3の直列回路のリアクタンスはX1、永久磁石型発電機1の内部インダクタンスおよび第2のコンデンサ5の直列回路のリアクタンスをX2として示す。風車定格回転数Nr付近では、リアクタンスX1とX2の絶対値がほぼ等しくなり、永久磁石型発電機1には有効分電流だけ流れて、電流Iの力率はほぼ1となる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、インバータ等の制御回路を用いることなく、風車または水車より流速変動時も概略の風車または水車最大直流出力を得ることができる分散電源用発電機の直流出力回路においては、永久磁石型発電機内の巻線の種類を1種類とすることができるので発電機の体格を小さくすることができる。また、3相に限らず単相やその他の相数を有する永久磁石型発電機に適用できることは言うまでもない。さらに、永久磁石型発電機内には内部インダクタンスが存在するために、本願請求項3における第2のリアクトル3を省略できるように設計しても、安価な分散電源用発電機の直流出力回路を構成することができる。また、さらに、永久磁石型発電機1を3相で構成し、2倍圧整流回路が接続される回路は、流れる電流が少ないために単相で構成しても良い。さらに、リアクトルとコンデンサの値を適切に選ぶことにより、永久磁石型発電機に流れる電流の力率を1にすることができるので、永久磁石型発電機の体格がさらに小さくなり極めて有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 永久磁石型発電機
2 第1のリアクトル
3 第2のリアクトル
4 第1のコンデンサ
5 第2のコンデンサ
7 第1の整流器
8 第4の整流器
10 分散電源用発電装置の整流回路
11 従来の第1のリアクトル
12 従来の第2のリアクトル
13 正側出力端子
14 負側出力端子
21 風車
22 バッテリ
30 2倍圧整流回路
31 直流コンデンサ
32 第2の整流器
33 第3の整流器
34 2倍圧整流回路の正側出力端子
35 2倍圧整流回路の負側出力端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車または水車により駆動される永久磁石型発電機から、風または水の流速に関わらず、制御回路を用いずに風車または水車の概略の最大出力を得る分散電源用発電装置の整流回路において、該永久磁石型発電機の交流出力端子に第1のコンデンサを経て第1の整流器を接続し、該第1のコンデンサに並列に第1のリアクトルを接続し、該第1のリアクトルに直列に第3の整流器を接続し、該第3の整流器に並列に直流コンデンサを接続し、該直流コンデンサに直列に第2の整流器を接続し、該第2の整流器の負側出力端子と前記第3の整流器の正側出力端子を接続し、前記直流コンデンサと前記第2の整流器と前記第3の整流器で2倍圧整流回路を構成し、該第1の整流器の出力と該2倍圧整流回路の出力を加算して直流電源に出力することを特徴とする分散電源用発電装置の整流回路。
【請求項2】
前記請求項1記載の分散電源用発電装置の整流回路において、前記永久磁石型発電機の内部インダクタンスと前記第1のコンデンサの容量との直列回路を定格回転数内において容量性リアクタンスとなし、前記永久磁石型発電機の定格回転数において該容量性リアクタンスと、前記永久磁石型発電機の内部インダクタンスと前記第1のリアクトルのインダクタンスとの直列回路により構成される誘導性リアクタンスとの和をほぼ零となして発電機電流の力率をほぼ1となすことを特徴とする分散電源用発電装置の整流回路。
【請求項3】
前記請求項1記載の分散電源用発電装置の整流回路において、該永久磁石型発電機の交流出力端子に第2のリアクトルを経て第1の整流器を接続し、該第2のリアクトルに並列に第2のコンデンサを接続し、該第2のコンデンサに直列に2倍圧整流回路を接続し、前記第1の整流器の出力と前記2倍圧整流回路の出力を加算して直流電源に出力することを特徴とする分散電源用発電装置の整流回路。
【請求項4】
前記請求項3記載の分散電源用発電装置の整流回路において、前記永久磁石型発電機の内部インダクタンスと前記第2のコンデンサの容量との直列回路を定格回転数において容量性リアクタンスとなし、前記永久磁石型発電機の定格回転数において該容量性リアクタンスと、前記永久磁石型発電機の内部インダクタンスと前記第2のリアクトルのインダクタンスとの直列回路により構成される誘導性リアクタンスとの和をほぼ零となして発電機電流の力率をほぼ1となすことを特徴とする分散電源用発電装置の整流回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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