説明

切削工具

【課題】食い付き時の求心性を向上させて、加工不良を抑制することができる切削工具を提供すること。
【解決手段】切削工具1によれば、切れ刃4は、工具本体2の後端側へ凹となる曲線状に凹設される凹部4aを備え、その凹部4aの範囲内に軸心Oが位置するように構成されているので、切れ刃4が被加工物に食い付く際には、切れ刃4全域が被加工物に食い付いたり軸心O付近の切れ刃から被加工物に食い付いたりせず、工具本体2の外周側の切れ刃を被加工物に食い付かせることができる。よって、食い付き時の求心性を向上させることができる。その結果、工具の振れを抑制することができるので、亀裂の生じ易い脆性材料に穴あけ加工を行う場合であっても、ひびやクラック等を発生させ難く、加工不良を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亀裂の生じ易い被加工物に穴あけ加工を行う切削工具に関し、特に、食い付き時の求心性を向上させて、加工不良を抑制することができる切削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1には、脆性材料に穴あけ加工を行う工具として、工具本体の先端が互いに交差する2つの先端面により構成され、それら2つの先端面の交差稜線に切れ刃が形成される脆性材料用切削工具が開示されている。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、熱処理が施された焼入れ鋼に穴あけ加工を行う工具として、特許文献1における脆性材料用切削工具と同様に、工具本体の先端が互いに交差する2つの先端面により構成され、それら2つの先端面の交差稜線に切れ刃が形成される焼入れ鋼用穴明け工具が開示されている。
【0004】
かかる脆性材料用切削工具および焼入れ鋼用穴明け工具は、亀裂の生じ易い被加工物(脆性材料や焼入れ鋼)に穴あけ加工を行うものであるため、被加工物におけるひびやクラック等の発生を抑制するべく、切れ刃全体が工具本体の軸心と直交する直線状または工具本体の先端側へ凸となる曲線状に形成され、切れ刃が被加工物に食い付く際に、被加工物への負荷が一点に集中しないように構成されている。
【特許文献1】特開2002−355710号公報
【特許文献2】特開2002−292511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した脆性材料用切削工具および焼入れ鋼用穴明け工具では、切れ刃全体が工具本体の軸心と直交する直線状または工具本体の先端側へ凸となる曲線状に形成されているので、前者の場合には、切れ刃全域が被加工物に食い付くこととなり、また、後者の場合には、軸心付近の切れ刃から被加工物に食い付くこととなり、いずれの場合においても、食い付き時の求心性が十分に得られないという問題点があった。その結果、工具が振れ、亀裂の生じ易い被加工物(脆性材料や焼入れ鋼)であるが故にひびやクラック等が発生し易く、加工不良を招き易いという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、食い付き時の求心性を向上させて、加工不良を抑制することができる切削工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために請求項1記載の切削工具は、軸心回りに回転される工具本体と、その工具本体の先端に設けられ互いに交差する2つの先端面により構成される刃部と、前記2つの先端面の交差稜線に形成される切れ刃とを備え、少なくとも前記切れ刃がダイヤモンド皮膜または硬質皮膜により被覆され、脆性材料または焼入れ鋼に穴あけ加工を行うものであり、前記切れ刃は、前記工具本体後端側へ凹設される凹部を備え、その凹部の範囲内に前記軸心が位置するように構成され、前記凹部の深さは、前記刃部の直径Dに対して0.25D以下に設定されている。
【0008】
請求項2記載の切削工具は、請求項1記載の切削工具において、前記2つの先端面がなす角度は、110°以上かつ170°以下の範囲内に設定されている。
【0009】
請求項3記載の切削工具は、請求項1又は2に記載の切削工具において、前記2つの先端面は、前記工具本体後端側へ凹となる曲面状に形成されている。
【0010】
請求項4記載の切削工具は、請求項1から3のいずれかに記載の切削工具において、前記切れ刃は、前記凹部を挟んで両側にそれぞれ連設されると共に前記軸心と直交する直線状または前記工具本体外周へ向かうに従って前記工具本体後端側へ傾斜する直線状に形成される直線部を備えている。
【0011】
請求項5記載の切削工具は、請求項1から4のいずれかに記載の切削工具において、前記工具本体の外周面に凹設される4条の切りくず排出溝を備え、それら4条の切りくず排出溝の残部として前記工具本体の外周面において隣り合う切りくず排出溝の間にマージンが形成されている。
【0012】
請求項6記載の切削工具は、請求項5記載の切削工具において、前記4条の切りくず排出溝は前記軸心に対してねじれて構成され、前記マージンが前記軸心に対してねじれて形成されている。
【0013】
請求項7記載の切削工具は、請求項5又は6に記載の切削工具において、前記4条の切りくず排出溝の内の少なくとも1条の切りくず排出溝の溝幅は、残りの3条の切りくず排出溝の溝幅とは異なる大きさに構成されている。
【0014】
請求項8記載の切削工具は、請求項1から7のいずれかに記載の切削工具において、前記刃部の直径Dは2mm以下に設定されている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載のドリルによれば、互いに交差する2つの先端面により刃部が構成され、それら2つの先端面の交差稜線に切れ刃が形成されると共に、切れ刃は、工具本体後端側へ凹設される凹部を備え、その凹部の範囲内に軸心が位置するように構成されているので、切れ刃が被加工物(脆性材料または焼入れ鋼)に食い付く際には、切れ刃全域が被加工物に食い付いたり軸心付近の切れ刃から被加工物に食い付いたりせず、工具本体外周側の切れ刃を被加工物に食い付かせることができる。よって、切れ刃全体を軸心と直交する直線状または工具本体先端側へ凸となる曲線状に形成する場合と比較して、食い付き時の求心性を向上させることができるという効果がある。
【0016】
その結果、工具の振れを抑制することができるので、亀裂の生じ易い被加工物(脆性材料または焼入れ鋼)に穴あけ加工を行う場合であっても、ひびやクラック等を発生させ難く、加工不良を抑制することができるという効果がある。
【0017】
また、本発明によれば、切れ刃全域が被加工物に食い付いたり周速の遅い軸心付近の切れ刃から被加工物に食い付いたりしないので、食い付き時の切削抵抗を低減させて、被加工物への負荷を軽減することができる。これにより、亀裂の生じ易い被加工物に穴あけ加工を行う場合であっても、ひびやクラック等を発生させ難く、加工不良を抑制することができるという効果がある。
【0018】
更に、本発明によれば、凹部の深さは、刃部の直径Dに対して0.25D以下に設定されているので、かかる深さを0.25Dよりも大きくする場合と比較して、刃部の剛性を確保することができる。よって、切れ刃に凹部を設けることで食い付き時の求心性を向上させつつも、刃部の剛性を確保して、工具寿命の高寿命化を図ることができるという効果がある。
【0019】
請求項2記載の切削工具によれば、請求項1記載の切削工具の奏する効果に加え、刃部を構成する2つの先端面がなす角度は、110°以上かつ170°以下の範囲内に設定されている。よって、かかる角度を110°以上とすることにより、刃部の剛性を確保して、工具寿命の高寿命化を図ることができると共に、かかる角度を170°以下とすることにより、切れ刃にすくい角を設けて、切削性能を確保することができるという効果がある。
【0020】
更に、2つの先端面がなす角度を110°よりも小さくすると、切れ刃が被加工物に鋭く食い付くため、被加工物への負荷が部分的に集中し、亀裂の生じ易い被加工物に穴あけ加工を行う場合には、ひびやクラック等が発生し易くなるところ、本発明によれば、かかる角度を110°以上とすることにより、切れ刃の食い付きを鈍くして、被加工物への負荷を分散させることができるので、亀裂の生じ易い被加工物に穴あけ加工を行う場合であっても、ひびやクラック等を発生させ難く、加工不良を抑制することができるという効果がある。
【0021】
一方、2つの先端面がなす角度を170°よりも大きくすると、切れ刃の食い付きが鈍くなり過ぎて、食い付き時の求心性が十分に得られなくなるところ、本発明によれば、かかる角度を170°以下とすることにより、切れ刃を確実に食い付かせて、食い付き時の求心性を向上させることができるという効果がある。
【0022】
請求項3記載の切削工具によれば、請求項1又は2に記載の切削工具の奏する効果に加え、刃部を構成する2つの先端面は、工具本体後端側へ凹となる曲面状に形成されているので、かかる2つの先端面を平面状または工具本体先端側へ凸となる曲面状に形成する場合と比較して、切れ刃のすくい角を大きく確保することができ、切削性能の向上を図ることができるという効果がある。
【0023】
請求項4記載の切削工具によれば、請求項1から3のいずれかに記載の切削工具の奏する効果に加え、切れ刃は、凹部を挟んで両側にそれぞれ連設されると共に軸心と直交する直線状または工具本体外周へ向かうに従って工具本体後端側へ傾斜する直線状に形成される直線部を備えているので、直線部により被加工物を切り込むことができる。よって、切れ刃と被加工物との接触を線接触として、切削効率の向上を図ることができるという効果がある。
【0024】
請求項5記載の切削工具によれば、請求項1から4のいずれかに記載の切削工具の奏する効果に加え、工具本体の外周面に凹設される4条の切りくず排出溝を備え、それら4条の切りくず排出溝の残部として工具本体の外周面において隣り合う切りくず排出溝の間にマージンが形成されているので、マージンが加工穴の内壁面に接することで、工具の振れを抑制することができ、加工精度の向上を図ることができるという効果がある。
【0025】
また、例えば、切りくず排出溝を備えていない場合や切りくず排出溝を2条しか備えていない場合には、工具本体の外周面全域が加工穴の内壁面に接するので、工具本体と加工穴の内壁面との接触面積が大きくなり、切削抵抗の増加を招くところ、本発明によれば、4条の切りくず排出溝の残部であるマージンのみが加工穴の内壁面に接するので、加工穴の内壁面との接触面積を小さくして、切削抵抗の低減を図ることができるという効果がある。
【0026】
その結果、被加工物への負荷を軽減することができるので、亀裂の生じ易い被加工物に穴あけ加工を行う場合であっても、ひびやクラック等を発生させ難く、加工不良を抑制することができるという効果がある。
【0027】
請求項6記載の切削工具によれば、請求項5記載の切削工具の奏する効果に加え、切りくず排出溝は軸心に対してねじれて構成され、マージンが軸心に対してねじれて形成されているので、マージンを軸心と平行に形成する場合と比較して、加工穴の内壁面に接したマージンが工具本体の回転抵抗となり難く、切削抵抗の低減を図ることができるという効果がある。
【0028】
請求項7記載の切削工具によれば、請求項5又は6に記載の切削工具の奏する効果に加え、4条の切りくず排出溝の内の少なくとも1条の切りくず排出溝の溝幅は、残りの3条の切りくず排出溝の溝幅とは異なる大きさに構成されているので、工具本体の外周面においてマージンを不等間隔に配置することができる。これにより、加工穴の内壁面とその内壁面に接するマージンとの摩擦抵抗に起因して生じる振動が各マージン部において共振するのを防止することができるので、工具の振れを抑制することができ、加工精度の向上を図ることができるという効果がある。
【0029】
請求項8記載の切削工具によれば、請求項1から7のいずれかに記載の切削工具の奏する効果に加え、刃部の直径Dは2mm以下に設定されているので、工具剛性が低く振れの生じ易い比較的小径の工具に対して、食い付き時の求心性を向上させるという効果を発揮させることができる。その結果、工具剛性の低い比較的小径の工具であっても、工具の振れを抑制することができるので、折損や破損などを生じ難く、工具寿命の高寿命化を図ることができるという効果がある。
【0030】
ところで、従来、亀裂の生じ易い被加工物に小径の穴あけ加工を行う場合には、一般にレーザ加工が行われていた。しかしながら、レーザ加工は、装置自体のコストが高価であると共に加工コストも高価であるため、不経済であった。これに対し、本発明によれば、亀裂の生じ易い被加工物に小径の穴あけ加工を容易かつ経済的に行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における切削工具1の正面図である。まず、図1を参照して、切削工具1の全体構成について説明する。切削工具1は、マシニングセンタ等の加工機械(図示せず)から伝達される回転力によって脆性材料に穴あけ加工を行うための工具であり、タングステンカーバイト(WC)等を加圧焼結した超硬合金から構成され、図1に示すように、工具本体2と、その工具本体2の先端(図1左側)に設けられる刃部3とを主に備えている。なお、切削工具1は、超硬合金に限られず、高速度工具鋼などから構成しても良い。
【0032】
工具本体2は、その後端側(図1右側)に設けられ円柱状に形成されるシャンク部2aと、そのシャンク部2aよりも小径の円柱状に形成され工具本体2の先端側(図1左側)に設けられる小径部2bと、それらシャンク部2aと小径部2bとの間に設けられシャンク部2aから小径部2bに向かうに従って漸次縮径する円錐状に形成されるテーパ部2cとを備えて構成されている。
【0033】
切削工具1は、シャンク部2aがホルダ(図示せず)に保持され、ホルダを介して加工機械に取り付けられる。そして、かかるホルダを介して加工機械の回転力が工具本体2に伝達されることで、軸心O回りに回転しつつ被加工物(脆性材料)に穴あけ加工を行う。
【0034】
小径部2bの外周面には、切りくず排出溝5が軸心Oに対してねじれを伴う螺旋状に凹設されている。切りくず排出溝5は、被加工物への穴あけ加工時に生成される切りくずを収容および排出するためのものであり、2条の切りくず排出溝5a,5bが軸心Oを対称にそれぞれ刃部3に連設されている(図2(b)参照)。
【0035】
刃部3は、被加工物に穴あけ加工を行うための部位であり、直径D(本実施の形態ではD=1mm)に構成されている。ここで、図2を参照して、刃部3の詳細構成について説明する。図2(a)は、刃部3の拡大正面図であり、図2(b)は、図2(a)の矢印IIb方向視における刃部3の先端面図である。また、図2(c)は、図2(b)のIIc−IIc線における刃部3の断面図である。
【0036】
図2に示すように、刃部3は、軸心Oを対称に設けられ互いに交差する2つの先端面3a,3bにより構成され、それら先端面3a,3bの表面全域はダイヤモンド皮膜により被覆されている。切削工具1による被加工物への穴あけ加工は、かかるダイヤモンド皮膜のダイヤモンド粒子(図示せず)により被加工物を研削すると共に、後述する切れ刃4により被加工物を切削することにより行われる。
【0037】
2つの先端面3a,3bは、工具本体2の後端側(図2(a)右側)へ凹となる曲面状にそれぞれ形成され、それら2つの先端面3a,3bの交差稜線には切れ刃4が形成されている。このように、交差稜線に切れ刃4が形成される2つの先端面3a,3bを工具本体2の後端側へ凹となる曲面状に形成することで、平面状または工具本体2の先端側(図2(a)左側)へ凸となる曲面状に形成する場合と比較して、切れ刃4のすくい角を大きく確保することができ、切削性能の向上を図ることができる。
【0038】
また、2つの先端面3a,3bがなす角度θ、即ち、図2(c)に示す軸心Oを含む平面での断面において先端面3aの表面に接する仮想線L1(工具本体2の先端側の端部P1と後端側の端部P2とを結ぶ仮想線)と先端面3bの表面に接する仮想線L2(工具本体2の先端側の端部P1と後端側の端部P3とを結ぶ仮想線)とのなす角度は150°に設定されている。
【0039】
この角度θは、図2(c)に示す軸心Oを含む平面での断面における先端面3a,3bがなす角度に限定されるものではなく、軸心Oに平行な断面ではどの断面においても、先端面3a,3bのなす角度は角度θで一定に構成されている。
【0040】
切れ刃4は、加工機械から伝達される回転力によって被加工物を切削するためのものであり、刃部3の先端(図2(a)左側)に設けられ、図2(b)に示す刃部3の先端面視において軸心Oを通る直線状に形成されている。
【0041】
また、図2(a)に示すように、切れ刃4は、工具本体2の後端側へ凹となる曲線状に凹設される凹部4aを備え、その凹部4aの範囲内に軸心Oが位置するように構成されている。具体的には、本実施の形態では、切れ刃4全体が工具本体2の後端側へ凹となる曲線状に形成されることで切れ刃3の全域に凹部4aを備えると共に、その凹部4aが図2(a)に示す刃部3の正面視において軸心Oに対称な形状に形成され、凹部4aの最底部Bが軸心O上に位置するように構成されている。
【0042】
凹部4aの深さH、即ち、切れ刃3の最先端(図2(a)左側)から最底部Bまでの距離は、刃部3の直径Dに対して0.2D(本実施の形態では、H=0.2×1mm=0.2mm)に設定されている。
【0043】
上述したように構成される切削工具1によれば、互いに交差する2つの先端面3a,3bにより刃部3が構成され、それら2つの先端面3a,3bの交差稜線に切れ刃4が形成されると共に、切れ刃4は、工具本体2の後端側へ凹設される凹部4aを備え、その凹部4aの範囲内に軸心Oが位置するように構成されているので、切れ刃4が被加工物に食い付く際には、切れ刃4全域が被加工物に食い付いたり軸心O付近の切れ刃から被加工物に食い付いたりせず、工具本体2の外周側の切れ刃を被加工物に食い付かせることができる。よって、切れ刃4全体を軸心Oと直交する直線状または工具本体2の先端側へ凸となる曲線状に形成する場合と比較して、食い付き時の求心性を向上させることができる。
【0044】
その結果、工具の振れを抑制することができるので、亀裂の生じ易い脆性材料に穴あけ加工を行う場合であっても、ひびやクラック等を発生させ難く、加工不良を抑制することができる。
【0045】
また、切削工具1によれば、切れ刃4全域が被加工物に食い付いたり周速の遅い軸心O付近の切れ刃から被加工物に食い付いたりしないので、食い付き時の切削抵抗を低減させて、被加工物への負荷を軽減することができる。これにより、亀裂の生じ易い脆性材料に穴あけ加工を行う場合であっても、ひびやクラック等を発生させ難く、加工不良を抑制することができる。
【0046】
ここで、特に、切削工具1は、凹部4aが刃部3の正面視において軸心Oに対称な形状に形成されているので、軸心Oを対称として切れ刃を被加工物に食い付かせることができ、食い付き時の求心性をより向上させることができる。
【0047】
なお、本実施の形態では、凹部4aの深さHを刃部3の直径Dに対して0.2Dに設定したが、0.2Dに限られず、刃部3の直径Dに対して0.25D以下に設定することが望ましい。即ち、深さHを刃部3の直径Dに対して0.25D以下とすることにより、0.25Dよりも大きくする場合と比較して、刃部3の剛性を確保することができる。よって、切れ刃4に凹部4aを設けることで食い付き時の求心性を向上させつつも、刃部3の剛性を確保して、工具寿命の高寿命化を図ることができる。
【0048】
また、本実施の形態では、2つの先端面3a,3bがなす角度θを150°に設定したが、150°に限られず、110°以上かつ170°以下の範囲内に設定することが望ましい。即ち、角度θを110°以上とすることにより、刃部3の剛性を確保して、工具寿命の高寿命化を図ることができると共に、角度θを170°以下とすることにより、切れ刃4にすくい角を設けて、切削性能を確保することができる。
【0049】
更に、角度θを110°よりも小さくすると、切れ刃4が被加工物に鋭く食い付くため、被加工物への負荷が部分的に集中し、亀裂の生じ易い脆性材料に穴あけ加工を行う場合には、ひびやクラック等が発生し易くなるところ、角度θを110°以上とすることにより、切れ刃4の食い付きを鈍くして、被加工物への負荷を分散させることができるので、亀裂の生じ易い脆性材料に穴あけ加工を行う場合であっても、ひびやクラック等を発生させ難く、加工不良を抑制することができる。
【0050】
一方、角度θを170°よりも大きくすると、切れ刃4の食い付きが鈍くなり過ぎて、食い付き時の求心性が十分に得られなくなるところ、角度θを170°以下とすることにより、切れ刃4を確実に食い付かせて、食い付き時の求心性を向上させることができる。
【0051】
ところで、従来、亀裂の生じ易い脆性材料に小径の穴あけ加工を行う場合には、一般にレーザ加工が行われていた。しかしながら、レーザ加工は、装置自体のコストが高価であると共に加工コストも高価であるため、不経済であった。これに対し、切削工具1によれば、亀裂の生じ易い脆性材料に小径の穴あけ加工を容易かつ経済的に行うことができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、刃部3の直径Dを1mmに設定したが、1mmに限られず、2mm以下に設定することが望ましい。これにより、工具剛性が低く振れの生じ易い比較的小径の工具に対して、食い付き時の求心性を向上させるという効果を発揮させることができる。その結果、工具剛性の低い比較的小径の工具であっても、工具の振れを抑制することができるので、折損や破損などを生じ難く、工具寿命の高寿命化を図ることができる。
【0053】
次いで、図3及び図4を参照して、第2実施の形態における切削工具21について説明する。第1実施の形態における切削工具1では、切れ刃4の全域に凹部4aが設けられていたが、第2実施の形態における切削工具21では、切れ刃24の中央に凹部24aを備えると共に、その凹部24aを挟んで両側に直線部24bを備えている。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図3は、第2実施の形態における切削工具21の正面図である。切削工具21は、マシニングセンタ等の加工機械(図示せず)から伝達される回転力によって焼入れ鋼に穴あけ加工を行うための工具であり、図3に示すように、工具本体22と、その工具本体22の先端(図3左側)に設けられる刃部23とを主に備えている。
【0055】
工具本体22は、シャンク部2aと小径部22bとテーパ部2cとを備えて構成され、小径部22bの外周面には、切りくず排出溝25が軸心Oに対してねじれを伴う螺旋状に凹設されている。なお、切りくず排出溝25の詳細構成については、図4を参照して後述する。
【0056】
刃部23は、直径D(本実施の形態ではD=1mm)に構成されている。ここで、図4を参照して、刃部23の詳細構成について説明する。図4(a)は、刃部23の拡大正面図であり、図4(b)は、図4(a)の矢印IVb方向視における刃部23の先端面図である。また、図4(c)は、図4(b)のIVc−IVc線における刃部23の断面図である。
【0057】
図4に示すように、刃部23は、軸心Oを対称に設けられ互いに交差する2つの先端面23a,23bにより構成され、それら先端面23a,23bの表面全域は硬質皮膜(例えば、硬質チタン系皮膜やCBN皮膜など)により被覆されている。切削工具21による被加工物への穴あけ加工は、かかる硬質皮膜の皮膜粒子(図示せず)により被加工物を研削すると共に、後述する切れ刃24により被加工物を切削することにより行われる。
【0058】
2つの先端面23a,23bは、工具本体22の後端側(図4(a)右側)へ凹となる曲面状にそれぞれ形成され、それら2つの先端面23a,23bの交差稜線には切れ刃24が形成されている。2つの先端面23a,23bがなす角度θ、即ち、図4(c)に示す軸心Oを含む平面での断面において先端面23aの表面に接する仮想線L1(工具本体22の先端側の端部P1と後端側の端部P2とを結ぶ仮想線)と先端面23bの表面に接する仮想線L2(工具本体22の先端側の端部P1と後端側の端部P3とを結ぶ仮想線)とのなす角度θは150°に設定されている。
【0059】
この角度θは、図4(c)に示す軸心Oを含む平面での断面における先端面23a,23bがなす角度に限定されるものではなく、軸心Oに沿う断面ではどの断面においても、先端面23a,23bのなす角度は角度θで一定に構成されている。
【0060】
切れ刃24は、刃部23の先端(図4(a)左側)に設けられ、図4(b)に示す刃部23の先端面視において軸心Oを通る直線状に形成されている。また、図4(a)に示すように、切れ刃24は、工具本体22の後端側へ凹となる曲線状に凹設される凹部24aと、その凹部24aを挟んで両側にそれぞれ連設されると共に軸心Oと直交する直線状に形成される直線部24bとを備え、凹部24aの範囲内に軸心Oが位置するように構成されている。
【0061】
具体的には、本実施の形態では、凹部24a及び直線部24bが図4(a)に示す刃部23の正面視において軸心Oに対称な形状に形成され、凹部24aの最底部Bが軸心O上に位置するように構成されると共に、凹部24aの範囲が刃部23の直径Dに対して0.5Dに、直線部24bの範囲が刃部23の直径Dに対して0.25Dに、それぞれ設定されている。
【0062】
このように、凹部24aの範囲を刃部23の直径Dに対して0.5Dに設定すると共に直線部24bの範囲を刃部23の直径Dに対して0.25Dに設定することで、凹部24aの範囲が広くなり過ぎることに起因する刃部23の剛性低下を抑制して、工具寿命の高寿命化を図ることができると共に、凹部24aの範囲が狭くなり過ぎることを回避して、食い付き時の求心性を確実に得ることができる。
【0063】
また、凹部24aの深さH、即ち、切れ刃13の最先端(図4(a)左側)から最底部Bまでの距離は、刃部23の直径Dに対して0.2D(本実施の形態では、H=0.2×1mm=0.2mm)に設定されている。
【0064】
図4(b)に示すように、小径部22bの外周面には、4条の切りくず排出溝25a〜25dが凹設され、それら4条の切りくず排出溝25a〜25dの内の2条の切りくず排出溝25a,25bが先端面23aにそれぞれ連設されると共に残りの2条の切りくず排出溝25c,25dが先端面23bにそれぞれ連設されている。
【0065】
また、4条の切りくず排出溝25a〜25dの内の2条の切りくず排出溝25a,25cの溝幅W1は、残りの2条の切りくず排出溝25b,25dの溝幅W2とは異なる大きさに構成され、切りくず排出溝25a,25cの溝幅W1が切りくず排出溝25b,25dの溝幅W2よりも大きく設定されている(W1>W2)。
【0066】
このように、小径部22bの外周面に4条の切りくず排出溝25a〜25dが凹設されることで、それら切りくず排出溝25の残部として小径部22bの外周面において隣り合う切りくず排出溝25の間にマージン26が形成されている。
【0067】
マージン26は、4条の切りくず排出溝25a〜25dに対応して4条のマージン26a〜26dを備え、切りくず排出溝25が軸心Oに対してねじれを伴う螺旋状に構成されることで、マージン26も軸心Oに対してねじれを伴う螺旋状に形成されると共に(図3参照)、切りくず排出溝25a,25cの溝幅W1が切りくず排出溝25b,25dの溝幅W2とは異なる大きさに構成されることで、工具本体22の外周面においてマージン26が不等間隔に配置されている。
【0068】
上述したように構成される切削工具21によれば、切れ刃24は、凹部24aを挟んで両側にそれぞれ連設されると共に軸心Oと直交する直線状に形成される直線部24bを備えているので、直線部24bにより被加工物を切り込むことができる。よって、切れ刃24と被加工物との接触を線接触として、切削効率の向上を図ることができる。
【0069】
また、切削工具21によれば、工具本体22の外周面に凹設される4条の切りくず排出溝25a〜25dを備え、それら4条の切りくず排出溝25a〜25dの残部として工具本体22の外周面において隣り合う切りくず排出溝の間にマージン26が形成されているので、マージン26が加工穴の内壁面に接することで、工具の振れを抑制することができ、加工精度の向上を図ることができる。
【0070】
また、例えば、切りくず排出溝25を備えていない場合や切りくず排出溝25を2条しか備えていない場合には、工具本体22の外周面全域が加工穴の内壁面に接するので、工具本体22と加工穴の内壁面との接触面積が大きくなり、切削抵抗の増加を招くところ、4条の切りくず排出溝25a〜25dの残部であるマージン26のみが加工穴の内壁面に接するので、加工穴の内壁面との接触面積を小さくして、切削抵抗の低減を図ることができる。
【0071】
その結果、被加工物への負荷を軽減することができるので、亀裂の生じ易い焼入れ鋼に穴あけ加工を行う場合であっても、ひびやクラック等を発生させ難く、加工不良を抑制することができる。
【0072】
更に、切削工具21によれば、切りくず排出溝25は軸心Oに対してねじれて構成され、マージン26が軸心Oに対してねじれて形成されているので、マージン26を軸心Oと平行に形成する場合と比較して、加工穴の内壁面に接したマージン26が工具本体22の回転抵抗となり難く、切削抵抗の低減を図ることができる。
【0073】
なお、本実施の形態では、4条の切りくず排出溝25a〜25dの内の2条の切りくず排出溝25a,25cの溝幅W1を残りの2条の切りくず排出溝25b,25dの溝幅W2とは異なる大きさとしたが、少なくとも1条の切りくず排出溝の溝幅を残りの3条の切りくず排出溝の溝幅とは異なる大きさに構成すれば良い。これにより、いずれの場合においても、工具本体22の外周面においてマージン26を不等間隔に配置することができるので、加工穴の内壁面とその内壁面に接するマージン26との摩擦抵抗に起因して生じる振動が各マージン26a〜26d部において共振するのを防止することができるので、工具の振れを抑制することができ、加工精度の向上を図ることができる。
【0074】
次いで、図5を参照して、第3実施の形態における切削工具31について説明する。第2実施の形態における切削工具21では、切れ刃24の直線部24bが軸心Oと直交する直線状に形成されていたが、第3実施の形態における切削工具31では、切れ刃34の直線部34bの形状が第2実施の形態とは異なる。なお、第2実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0075】
図5(a)は、第3実施の形態における切削工具31の刃部33の拡大正面図であり、図5(b)は、図5(a)の矢印Vb方向視における刃部33の先端面図である。図5に示すように、刃部33は、軸心Oを対称に設けられ互いに交差する2つの先端面23a,23bにより構成され、それら2つの先端面23a,23bの交差稜線には切れ刃34が形成されている。
【0076】
切れ刃34は、刃部33の先端(図5(a)左側)に設けられ、図5(b)に示す刃部33の先端面視において軸心Oを通る直線状に形成されている。また、図5(a)に示すように、切れ刃34は、凹部24aと、その凹部24aを挟んで両側にそれぞれ連設されると共に工具本体22の外周へ向かうに従って工具本体22の後端側(図5(a)右側)へ傾斜する直線状に形成される直線部34bとを備え、凹部24aの範囲内に軸心Oが位置するように構成されている。
【0077】
具体的には、本実施の形態では、凹部24a及び直線部34bが図5(a)に示す刃部33の正面視において軸心Oに対称な形状に形成され、凹部24aの最底部Bが軸心O上に位置するように構成されると共に、凹部24aの範囲が刃部33の直径Dに対して0.5Dに、直線部34bの範囲が刃部33の直径Dに対して0.25Dに、それぞれ設定されている。
【0078】
上述したように構成される切削工具31によれば、切れ刃34は、凹部24aを挟んで両側にそれぞれ連設されると共に工具本体22の外周へ向かうに従って工具本体22の後端側へ傾斜する直線状に形成される直線部34bを備えているので、第2実施の形態の場合と同様に、直線部34bにより被加工物を切り込むことができる。よって、切れ刃34と被加工物との接触を線接触として、切削効率の向上を図ることができる。
【0079】
次いで、図6を参照して、第4実施の形態における切削工具41について説明する。第2実施の形態における切削工具21では、切れ刃24の凹部24aが工具本体22の後端側へ凹となる曲線状に凹設されていたが、第4実施の形態における切削工具41では、切れ刃44の凹部44aの形状が第2実施の形態とは異なる。なお、第2実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0080】
図6(a)は、第4実施の形態における切削工具41の刃部43の拡大正面図であり、図6(b)は、図6(a)の矢印VIb方向視における刃部43の先端面図である。また、図6(c)は、図6(b)のVIc−VIc線における刃部43の断面図である。
【0081】
図6に示すように、刃部43は、軸心Oを対称に設けられ互いに交差する2つの先端面43a,43bにより構成され、それら先端面43a,43bの表面全域は硬質皮膜(例えば、硬質チタン系皮膜やCBN皮膜など)により被覆されている。
【0082】
2つの先端面43a,43bは、平面状にそれぞれ形成され、それら2つの先端面43a,43bの交差稜線には切れ刃44が形成されている。また、2つの先端面43a,43bがなす角度θ、即ち、図6(c)に示す軸心Oを含む平面での断面において先端面43aの表面に接する仮想線L1と先端面43bの表面に接する仮想線L2とのなす角度は150°に設定されている。
【0083】
この角度θは、図6(c)に示す軸心Oを含む平面での断面における先端面43a,43bがなす角度に限定されるものではなく、軸心Oに平行な断面ではどの断面においても、先端面43a,43bのなす角度は角度θで一定に構成されている。
【0084】
切れ刃44は、刃部43の先端(図6(a)左側)に設けられ、図6(b)に示す刃部43の先端面視において軸心Oを通る直線状に形成されている。また、図6(a)に示すように、切れ刃44は、工具本体22の後端側へ凹となる略V字状に凹設される凹部44aと、その凹部44aを挟んで両側にそれぞれ連設されると共に軸心Oと直交する直線状に形成される直線部44bとを備え、凹部44aの範囲内に軸心Oが位置するように構成されている。
【0085】
具体的には、本実施の形態では、凹部44a及び直線部44bが図6(a)に示す刃部43の正面視において軸心Oに対称な形状に形成され、凹部44aの最底部Bが軸心O上に位置するように構成されている。凹部44aの深さH、即ち、切れ刃43の最先端(図6(a)左側)から最底部Bまでの距離は、刃部43の直径Dに対して0.2D(本実施の形態では、H=0.2×1mm=0.2mm)に設定されている。
【0086】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定される物ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0087】
例えば、上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。また、上記各実施の形態における構成の一部または全部を他の実施の形態における構成の一部または全部と組み合わせることは当然可能である。
【0088】
上記第1実施の形態では、先端面3a,3bがダイヤモンド皮膜により被覆される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、DLC皮膜などの他の硬質炭素皮膜により被覆しても良い。
【0089】
上記第1実施の形態では、先端面3a,3bの表面全域がダイヤモンド皮膜により被覆される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、切れ刃4の部分のみ又は先端面3a,3bの表面全域に加え小径部2bの表面を被覆しても良い。同様に、上記第2実施の形態では、先端面23a,23bの表面全域が硬質皮膜により被覆される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、切れ刃24の部分のみ又は先端面23a,23bの表面全域に加え小径部22bの表面を被覆しても良い。
【0090】
上記各実施の形態では、先端面3a,3b、23a,23b及び43a,43bが工具本体2,22の後端側へ凹となる曲面状または平面状に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、工具本体2,22の先端側へ凸となる曲面状に形成しても良い。
【0091】
上記第1及び第2実施の形態では、2つの先端面3a,3b及び23a,23bのなす角度θが軸心Oに平行な断面ではどの断面においても一定に構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、角度θが工具本体2,22の外周側から軸心O側へ向かうに従って漸次大きくなるように構成しても良い。
【0092】
ここで、角度θを一定に構成すると、工具制作時に、凹部4a,24aの形状に合わせて先端面3a,3b及び23a,23bの加工を行わなければならず、工具の製作が複雑化するところ、角度θを工具本体2,22の外周側から軸心O側へ向かうに従って漸次大きくすることで、凹部4a,24aの形状にとらわれることなく先端面3a,3b及び23a,23bの加工を行うことができるので、工具を容易に製作することができる。この場合、請求項2記載の2つの先端面がなす角度とは、工具本体2,22の最外周部における角度を意味する。
【0093】
上記各実施の形態では、凹部4a及び24aが工具本体2,22の後端側へ凹となる曲線状に凹設されると共に、凹部44aが工具本体22の後端側へ凹となる略V字状に凹設される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、工具本体2,22の後端側へ凹となる略矩形状に凹設しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1実施の形態における切削工具の正面図である。
【図2】(a)は、刃部の拡大正面図であり、(b)は、図2(a)の矢印IIb方向視における刃部の先端面図であり、(c)は、図2(b)のIIc−IIc線における刃部の断面図である。
【図3】第2実施の形態における切削工具の正面図である。
【図4】(a)は、刃部の拡大正面図であり、(b)は、図4(a)の矢印IVb方向視における刃部の先端面図であり、(c)は、図4(b)のIVc−IVc線における刃部の断面図である。
【図5】(a)は、第3実施の形態における切削工具の刃部の拡大正面図であり、(b)は、図5(a)の矢印Vb方向視における刃部の先端面図である。
【図6】(a)は、第4実施の形態における切削工具の刃部の拡大正面図であり、(b)は、図6(a)の矢印VIb方向視における刃部の先端面図であり、(c)は、図6(b)のVIc−VIc線における刃部の断面図である。
【符号の説明】
【0095】
1,21,31,41 切削工具
2,22 工具本体
3,23,33,43 刃部
3a,3b 先端面
23a,23b 先端面
43a,43b 先端面
4,24,34,44 切れ刃
4a,24a,44a 凹部
24b,34b,44b 直線部
5a,5b,25a〜25d 切りくず排出溝
6a〜6d マージン
D 刃部の直径
H 凹部の深さ
O 軸心
θ 2つの先端面がなす角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心回りに回転される工具本体と、その工具本体の先端に設けられ互いに交差する2つの先端面により構成される刃部と、前記2つの先端面の交差稜線に形成される切れ刃とを備え、少なくとも前記切れ刃がダイヤモンド皮膜または硬質皮膜により被覆され、脆性材料または焼入れ鋼に穴あけ加工を行う切削工具において、
前記切れ刃は、前記工具本体後端側へ凹設される凹部を備え、その凹部の範囲内に前記軸心が位置するように構成され、
前記凹部の深さは、前記刃部の直径Dに対して0.25D以下に設定されていることを特徴とする切削工具。
【請求項2】
前記2つの先端面がなす角度は、110°以上かつ170°以下の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1記載の切削工具。
【請求項3】
前記2つの先端面は、前記工具本体後端側へ凹となる曲面状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の切削工具。
【請求項4】
前記切れ刃は、前記凹部を挟んで両側にそれぞれ連設されると共に前記軸心と直交する直線状または前記工具本体外周へ向かうに従って前記工具本体後端側へ傾斜する直線状に形成される直線部を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の切削工具。
【請求項5】
前記工具本体の外周面に凹設される4条の切りくず排出溝を備え、
それら4条の切りくず排出溝の残部として前記工具本体の外周面において隣り合う切りくず排出溝の間にマージンが形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の切削工具。
【請求項6】
前記4条の切りくず排出溝は前記軸心に対してねじれて構成され、
前記マージンが前記軸心に対してねじれて形成されていることを特徴とする請求項5記載の切削工具。
【請求項7】
前記4条の切りくず排出溝の内の少なくとも1条の切りくず排出溝の溝幅は、残りの3条の切りくず排出溝の溝幅とは異なる大きさに構成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の切削工具。
【請求項8】
前記刃部の直径Dは2mm以下に設定されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の切削工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−136980(P2009−136980A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317528(P2007−317528)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000103367)オーエスジー株式会社 (180)
【Fターム(参考)】