説明

刈刃装置及び刈取装置

【課題】刈刃装置最内側に位置する従来の内端可動刃は他の単位可動刃に比べて、横幅が略半分しかなく、作業時に付随して生ずるコンバインの進行方向に対して前後方向の振動や耐久性等の問題があった。
【解決手段】左右方向に配置した固定刃部30上に重合させて、左右方向に摺動させる可動刃部31A・31Bを、機幅の略中央で分割し左右相反する方向に往復運動させるようにした刈刃装置22であって、前記可動刃部31A・31Bを複数の単位可動刃39と内端可動刃43により構成し、刈刃装置22最内側に位置する内端可動刃43を、二等辺三角形状刃50と直角三角形状刃51とを一体に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の穀稈を刈り取って脱穀するコンバインの刈刃装置及び刈取装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からコンバインによる刈取作業は、機体前部に刈取装置を配し、該刈取装置の前部に配設された引き起こしケースのタインにより穀稈を引き起こし、引き起こしケース後方の下部に配設された刈刃により、穀稈の株元を切断し、切断された穀稈を、刈取装置の後部に配置された搬送部により後上方へ搬送し、脱穀部のフィードチェーンへと引き渡すよう構成している。
【0003】
そして、前記刈刃は、固定刃部とその上に左右摺動可能に配置された可動刃部からなり、機体左右方向に配設された可動刃部は左右方向に往復動され、該可動刃部の下部には同じく機体左右方向に固定刃部が配設され、このバリカン状に配置され上下両方の刃で稲や麦等の株元を切断するように構成している。また該可動刃部の駆動力は、刈取フレーム内に左右方向に配置された刈取伝動軸から順に、刈取クランク、ロッド、刈取アーム、ナイフヘッドへと伝達する構成をとっており、該ナイフヘッドの往復運動によりナイフヘッドの下部に固設された可動刃部が往復運動するよう構成していた。
【0004】
例えば、特許文献1に示されるように、左右向きの一本の固定刃部の上面に左右一対の可動刃部を重合させると共にこれら左右一対の可動刃部を互いに相反する方向へ往復駆動させるものとした刈刃装置を具備しているコンバインの刈刃装置は存在している。
【特許文献1】特開2004−16203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の固定刃部や可動刃部は長尺であり、例えば六条刈取用コンバイン等に使用されるものは、その全長が特に長尺になることから、この長尺状態のままで使用すると、前記固定刃部に対する可動刃部の左右往復運動時に、該可動刃が大きく振動したり擦れたりして破損し易いのである。
【0006】
また、可動刃部のうち刃押さえが作用しない部分において可動刃部の浮き上がりにより固定刃部と可動刃部の間に隙間ができて、切れ味の劣化や茎稈の詰まりが生じるおそれがあり、又、ナイフバーが刃押さえとの摺接のために局部的に摩耗して、可動刃部のガタツキが生じるおそれがあり、切断性能及び耐久性の面から改良の余地があった。
【0007】
また、刈刃装置最内側に位置する従来の内端可動刃は他の単位可動刃に比べて、横幅が略半分しかなく、作業時に付随して生ずるコンバインの進行方向に対して前後方向の振動や耐久性等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、一本の固定刃部に重合させて可動させる可動刃部を機幅の略中央で分割し左右相反する方向に往復運動させるようにした農業機械用刈刃装置であって、刈刃装置最内側に位置する内端可動刃と、それに隣接する単位可動刃とを一体に形成したものである。
【0010】
請求項2においては、前記内端可動刃の内端側縁は、可動刃部の移動方向に対して直交するように形成したものである。
【0011】
請求項3においては、前記左右の内端可動刃の間に位置する単位中央固定刃が、掻込機構と分草板との間に配置されるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、内端可動刃とその隣に並設している単位可動刃とが一体に形成され、形成された内端可動刃の表面積が広くなったことで、その分可動刃部の内側部分の支持剛性を高め、安定よく支持することができる。よって、刈取作業時に固定刃部に対して可動刃部を左右往復運動させたときに発生する振動を低減し、耐久性を向上させることができる。
【0014】
請求項2においては、左右の内端可動刃が左右相反する方向に往復運動して中央単位固定刃上に位置した際、内端可動刃の内端側縁が可動刃部の移動方向に対して直交するように形成されていることで、左右の内端可動刃の内端側縁の切断部の間隔を従来よりも広げることができて、異物の噛み込みを減少し、穀稈の切断が行われない非切断領域をなくし、穀稈の刈り残しを有効になくすことができる。
【0015】
請求項3においては、圃場に植立した穀稈を分草板にて分草して取り込み、穀稈引起装置で引き起こし、分草された穀稈が掻込機構で掻き込まれて前記単位中央固定刃に運ばれて左右の可動刃部の往復運動によって穀稈の株元を刈り取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図、図2は同じく平面図、図3は刈取装置の側面図、図4は刈取装置の平面図、図5は刈取装置前部の拡大平面図、図6は刈取装置の駆動系統図、図7は刈刃装置の平面図、図8は図6におけるX−X線断面図、図9は本発明の内端可動刃の拡大平面図、図10は刈刃装置の中央部の平面図、図11は従来の内端可動刃とその隣の単位可動刃の拡大平面図である。
【0017】
本発明に係るコンバインの全体構成について、図1、図2により説明する。
図1において、コンバイン1は、クローラ式走行装置を備えた左右の走行装置2・2上に機体フレーム3を配置し、該機体フレーム3の前端部に刈取装置4が、油圧シリンダ5により刈取フレーム6を介して刈取支点軸7回りに昇降自在に配設されている。
刈取装置4における穀稈搬送機構8の直後方にフィードチェーン9を備えた脱穀部10が配設され、この脱穀部10の直下方位置に揺動選別部が配設され、脱穀部10の後部に排藁処理装置12が配設されている。該排藁処理装置12は排藁チェーン13終端を臨ませるカッター装置14等を内装している。
【0018】
前記機体フレーム3の前部であって進行方向右側には、操向用のステアリングホイールや変速レバー、作業レバー及び操向ハンドルなど運転操作部15及び運転席16を備える運転キャビン17が配設され、該運転キャビン17の直後方位置に、脱穀及び選別された後の穀粒を貯溜するグレンタンク18が配設されている。該グレンタンク18の後部には、その貯溜された穀粒を機体外部に搬出するための排出オーガ19が連設されている。また、運転キャビン17の下部に、動力源となるエンジン20等を収納したエンジンルームが配設されている。
【0019】
刈取装置4は、刈取フレーム6前端に配置した分草板21、この分草板21の後方に配設される刈刃装置22、分草板21の後上方に配設される穀稈引起装置等を備えている。
そして圃場に植立した穀稈を分草板21にて分草して取り込み、穀稈引起装置で引き起こして、穀稈の株元を刈刃装置22で刈り取る。その後、穀稈搬送機構8へ受け渡し、穀稈搬送装置8で挟持して後方へ搬送し、株元を脱穀部10のフィードチェーン9へ受け継ぐようにしている。
【0020】
脱穀部10は、扱室23及び処理室24を有し、扱室23には、機体の前後方向に軸支された扱胴25が内装され、扱胴25の下方には受網26が張架されている。処理室24には、扱室23の後側部に配置した排塵口を介して処理室24の前部と連通して、該処理室24内に処理胴27が前後方向に内装され、前記扱胴25で脱穀処理できなかった穀粒等を再処理するようにしている。該処理胴27の下方には処理網28が張架されている。
【0021】
扱室23を形成する脱穀上面カバーの側面部には、フィードチェーン9との間に穀稈の株元側を挟持する挟扼杆(不図示)が設けられている。そして、刈取装置4の穀稈搬送機構8から受け継いだ穀稈の株元側をフィードチェーン9と挟扼杆とで挟持して搬送しつつ、穀稈の穂先側を扱室23内に通過させ、扱胴25外周部に配置した複数の扱歯(不図示)で脱穀を行う。
【0022】
脱穀処理及び再処理された穀粒は受網26又は処理網28を通過して下方の揺動選別部へと至る一方、排藁は後方の排藁処理装置12へと搬送するようにしている。
【0023】
図3又は図4に示すように、機体フレーム3の前端からは脱穀部10の前面側に左右刈取装着フレーム55が立設され、各刈取装着フレーム55の上部に割パイプ継手56が設けられている。また、刈取装置4に刈取入力ケース58が設けられ、該刈取入力ケース58にエンジン20からの動力を伝達する刈取入力軸57を内挿されている。そして、該刈取入力ケース58がその両端部で割パイプ継手56を介して左右刈取装着フレーム55の上部に回転自在に、かつ着脱自在に保持されて、脱穀部10の直前にて機体左右方向に水平に横架支持されている。
【0024】
前記刈取入力ケース58の中間部からは前斜下方に向けて縦伝動ケース59が一体延設され、該縦伝動ケース59の先端に横伝動ケース60が中間部で一体連結されて機体左右方向に水平に横架支持されている。横伝動ケース60には横連結フレーム61によって一体連結された6条分7本一体の刈取フレーム6が後部で一体連結されて、該横伝動ケース60から機体前方に向けて平行に一体延設されている。
【0025】
こうして、刈取入力ケース58と、縦伝動ケース59と、横伝動ケース60と、刈取フレーム6とが一体とされて、刈取装置4のメインフレームとされ、該メインフレームに後述する刈取装置4の構成要素が組み付けられて刈取装置4が構成されている。刈取装置4は機体フレーム3と縦伝動ケース59との間に張架された油圧シリンダ5の伸縮によって刈取入力ケース58を中心に昇降するように構成されている。
【0026】
6条刈りの刈取装置4には、前処理機構と、掻込機構と、刈取機構と、穀稈株元搬送機構及び穀稈穂先搬送機構とからなる穀稈搬送機構8とが備えられている。前処理機構は、刈り取る穀稈と未刈穀稈との分離及び刈り取る穀稈の1条ごとの分離を行う6条分7つの分草板21と、分草後の未刈穀稈を起立させる引起タイン63を有する6条分6つの引起ケース64とから構成されている。
【0027】
掻込機構は、右側2つの引起ケース64の間から導入される引起後の右側2条分の穀稈62Rの株元部を1束に掻寄せて掻込む左右一対で一組の右掻込輪である右スターホイル65R及び左右一対で一組の右突起付ベルトである右掻込ベルト66Rと、左側2つの引起ケース64の間から導入される引起後の左側2条分の穀稈62Lの株元部を1束に掻寄せて掻込む左右一対で一組の左掻込輪である左スターホイル65L及び左右一対で一組の左突起付ベルトである左掻込ベルト66Lと、中央2つの引起ケース64の間から導入される引起後の中央2条分の穀稈62Cの株元部を1束に掻寄せて掻込む左右一対で一組の中央掻込輪である中央スターホイル65C及び左右一対で一組の中央突起付ベルトである中央掻込ベルト66Cとから構成されている。
【0028】
刈取機構は、掻込時に穀稈の株元を6条同時に切断するバリカン形の刈刃装置22から構成されている。
【0029】
穀稈搬送機構8のうち、穀稈株元搬送機構は、一組の右スターホイル65R及び右掻込ベルト66Rによって掻込まれた右側2条分の刈取穀稈62Rの株元部を左斜後上方に挟持搬送する右株元合流搬送チェン67Rと、一組の左スターホイル65L及び左掻込ベルト66Lによって掻込まれた左側2条分の刈取穀稈62Lの株元部を右斜後上方に挟持搬送して前記右株元合流搬送チェン67Rの搬送終端部に合流させる左株元合流搬送チェン67Lと、一組の右スターホイル65R及び右掻込ベルト66Rと一組の左スターホイル65L及び左掻込ベルト66Lとの間に配設される一組の中央スターホイル65C及び中央掻込ベルト66Cによって掻込まれた中央2条分の刈取穀稈62Cの株元部を、左右の株元合流搬送チェン67L・67Rの間に位置して右斜後上方に挟持搬送し、右株元合流搬送チェン67Rの左側2条分の刈取穀稈62Lの株元部との合流部の手前に合流させる中央株元合流搬送チェン67Cと、左右及び中央の株元合流搬送チェン67R・67L・67Cによって合流された6条分の刈取穀稈62L・62R・62Cの株元部を右株元合流搬送チェン67Rの搬送終端部から受継いで左斜後上方に挟持搬送して脱穀部10のフィードチェン9の搬送始端部に受継搬送する縦搬送チェンである株元搬送チェン68と、株元搬送チェン68の搬送終端部からフィードチェン6の搬送始端部に6条分の刈取穀稈62L・62R・62Cの株元部を適正姿勢で搬送受継ぎする補助株元搬送チェン69a・69aとから構成されている。
【0030】
一方、穀稈穂先搬送機構は、右株元合流搬送チェン67Rによって株元部を挟持搬送している右側2条分の刈取穀稈62Rの穂先部を係止搬送する右穂先搬送装置70Rと、左株元合流搬送チェン67Lによって株元部を挟持搬送する左側2条分の刈取穀稈62Lの穂先部を係止搬送する左穂先搬送装置70Lと、中央株元合流搬送チェン67Cによって株元部を挟持搬送している中央2条分の刈取穀稈62Cの穂先部を係止搬送する中央穂先搬送装置70Cと、株元搬送チェン68及び補助株元搬送チェン69a・69bによって株元部を挟持搬送される6条分の刈取穀稈62L・62R・62Cの穂先部を係止搬送する後穂先搬送装置71と、さらに右側2つの引起ケース64の間から導入される引起後の右側2条分の穀稈62Rの穂先部を、右穂先搬送装置70Rの搬送始端部のさらに上方で、右穂先搬送装置70Rの反対側で係止搬送する右上部穂先搬送装置72Rと、左側2つの引起ケース64の間から導入される引起後の左側2条分の穀稈62Lの穂先を、左穂先搬送装置70Lの搬送始端部のさらに上方で、左穂先搬送装置70Lの反対側で係止搬送する左上部穂先搬送装置72Lと、中央2つの引起ケース64の間から導入される引起後の中央2条分の穀稈62Cの穂先を、中央穂先搬送装置70Cの搬送始端部のさらに上方で、中央穂先搬送装置70Cの反対側で係止搬送する中央上部穂先搬送装置72Cとから構成されている。
【0031】
図5にも示すように、左右及び中央の各組の左右のスターホイル65L・65R・65Cは、それぞれ平行な二軸である左右の回転軸108a・108bの下端に一体に取り付けられ、同じ組の左右のスターホイル65L・65R・65C同士が噛合されて回転可能とされている。また、左右及び中央の各組の左右の掻込ベルト66L・66R・66Cの搬送終端部が左右の回転軸108a・108bの上端に一体に取り付けられた大径プーリ109に巻回支持されるとともに、搬送始端部が大径プーリ109の前方に軸支された小径プーリ110に巻回支持されて、同じ組の左右の掻込ベルト66L・66R・66Cが前方に向けて大きく開く「ハ」字形に張設されている。
【0032】
そして、左右の回転軸108a・108bのうちの一方の回転軸108a又は108bに動力が伝達されて、回転軸108a又は108bが駆動回転することで、該回転軸108a又は108bに取り付けられたスターホイル65L・65R・65C及び掻込ベルト66L・66R・66Cが駆動回転され、他方の回転軸108a又は108bに取り付けられたスターホイル65L・65R・65C及び掻込ベルト66L・66R・66Cが従動回転されて、同じ組の左側のスターホイル65L・65R・65C及び掻込ベルト66L・66R・66Cと右側のスターホイル65L・65R・65C及び掻込ベルト66L・66R・66Cとが逆方向に回転され、穀稈62L・62R・62Cの掻込みが行われるように構成されている。
【0033】
また、左右一対で一組の右スターホイル65R及び右掻込ベルト66Rのうち、右側のスターホイル65R及び右掻込ベルト66Rを取り付ける右の回転軸108bの中間部に、従動スプロケット111Rが係合軸支され、該従動スプロケット111Rに右株元合流搬送チェン67Rの搬送始端部が巻回支持されている。右株元合流搬送チェン67Rは、左右一対で一組の右スターホイル65R及び右掻込ベルト66Rのうち、右側のスターホイル65R及び掻込ベルト66Rの間から縦伝動ケース59と横伝動ケース60との接続部の略上方位置まで張設されている。
【0034】
左右一対で一組の左スターホイル65L及び左掻込ベルト66Lのうち、左側のスターホイル65L及び左掻込ベルト66Lを取り付ける左の回転軸108aの中間部に、従動スプロケット111Lが係合軸支され、該従動スプロケット111Lに左株元合流搬送チェン67Lの搬送始端部が巻回支持されている。左株元合流搬送チェン67Lは、左右一対で一組の左スターホイル65L及び左掻込ベルト66Lのうち、左側のスターホイル65L及び掻込ベルト66Lの間から縦伝動ケース59と横伝動ケース60との接続部の略上方位置の右株元合流搬送チェン67Rの搬送終端部の直前まで張設されている。
【0035】
左右一対で一組の中央スターホイル65C及び中央掻込ベルト66Cのうち、左側のスターホイル65C及び左掻込ベルト66Cを取り付ける左の回転軸108aの中間部に、従動スプロケット111Cが係合軸支され、該従動スプロケット111Cに中央株元合流搬送チェン67Cの搬送始端部が巻回支持されている。中央株元合流搬送チェン67Cは、左右一対で一組の中央スターホイル65C及び中央掻込ベルト66Cのうち、左側のスターホイル65C及び掻込ベルト66Cの間から縦伝動ケース59と横伝動ケース60との接続部の略上方位置で、右株元合流搬送チェン67Rの左側2条分の刈取穀稈Lの株元部との合流部の手前の左株元合流搬送チェン67Lの搬送終端部の直前まで張設されている。
【0036】
こうして、左右及び中央の株元合流搬送チェン67L・67R・67Cの回転によって左右及び中央のスターホイル65L・65R・65C及び掻込ベルト66L・66R・66Cが回転するように構成されている。なお、中央のスターホイル65C及び掻込ベルト66Cは、左右のスターホイル65L・65R及び掻込ベルト66L・66Rに対して一段高い位置に位置ずれした状態に配置されて、左右のスターホイル65L・65R及び掻込ベルト66L・66Rと干渉しないように構成されている。
【0037】
図6にも示すように、縦伝動ケース59には縦伝動軸75が内挿され、横伝動ケース60には横伝動軸76が内挿されて、該横伝動軸76の中間部に縦伝動軸75の下端がベベルギアを介して連動連結されている。そして、縦伝動軸75の上端が刈取入力軸57にベベルギアを介して連動連結されて、該縦伝動軸75及び横伝動軸76から刈取装置4の各構成要素のうち、駆動するものに動力が取り出されるように構成されている。
【0038】
前記横伝動ケース60の左側端部からは引起縦伝動ケース77が側面視で引起ケース64の上方位置に向けて前傾姿勢で立設され、該引起縦伝動ケース77の上端部から右方向に水平に引起横伝動ケース78が延設されて、該引起横伝動ケース78から下方向に各引起ケース64ごとに引起駆動ケース79が延設されている。各引起駆動ケース79の下部は各引起ケース64の上部背面側に配置されて、各引起駆動ケース79の下端部から各引起ケース64の内側上部に引起タイン駆動軸80が突出されている。引起タイン駆動軸80の突出部には引起タイン駆動スプロケット81が設けられ、該引起タイン駆動スプロケット81にタインチェンの上部が巻回支持されている。
【0039】
引起縦伝動ケース77には引起縦伝動軸82が内挿され、引起横伝動ケース78には引起横伝動軸83が内挿されて、該引起横伝動軸83の左端に引起縦伝動軸82の上端がベベルギアを介して連動連結されている。また、引起駆動ケース79に引起駆動軸84が内挿され、該引起駆動軸84の上端が引起横伝動軸83にそれぞれベベルギアを介して連動連結され、下部が引起タイン駆動軸80にベベルギアを介して連動連結されている。そして、前記引起縦伝動軸82の下端が横伝動軸76の左端にベベルギアを介して連結されて、該横伝動軸76から各引起ケース64の引起タイン駆動スプロケット81に動力が伝達されるように構成され、タインチェンに取り付けられた引起タイン63が駆動可能とされている。
【0040】
前記引起縦伝動ケース77の上部には引起変速機構85を内装する引起変速ケース86が設けられて、引起縦伝動軸82の途中に引起変速機構85が組み込まれ、各引起ケース64の引起タイン63の駆動速度が高速・中速・低速に変速可能とされている。
【0041】
また、刈刃装置22は、後述するように、可動刃部31を刈幅の中央部で二つに分割し、左右の可動刃部31A・31Bを相反する方向に往復運動させるように構成されており、該刈刃装置22の左側の刈刃駆動軸であるクランク軸74aが横伝動軸76の左端部よりも少し内側からベベルギアを介して上向きに立ち上げられ、横伝動軸76の右端部からベベルギアを介して上向きに立ち上げられて、左右のクランク軸74a・74bが横伝動ケース60から上方に突出されている。このようにして、横伝動軸76から左右の可動刃部31A・31Bに動力が伝達されるように構成されて、刈刃装置22が駆動可能とされている。
【0042】
また、縦伝動ケース59の上部から左向きに後搬送駆動ケース87が延設され、後搬送駆動ケース87に後搬送駆動軸88が内挿されている。後搬送駆動軸88の左端には駆動スプロケット軸91の下端が連動連結され、該駆動スプロケット軸91に補助株元搬送チェン69bの駆動スプロケット89と、後穂先搬送装置71のタインを等間隔に取り付けるチェンの搬送終端部を巻回支持する後穂先搬送装置駆動スプロケット90とが設けられている。そして、後搬送駆動軸88の右端が縦伝動軸75の上部にベベルギアを介して連動連結されて、縦伝動軸75の上部から一方の補助株元搬送チェン69bの駆動スプロケット89と後穂先搬送装置駆動スプロケット90に動力が伝達されるように構成され、補助株元搬送チェン69bと後穂先搬送装置71とが駆動可能とされている。
【0043】
さらに、一方の補助株元搬送チェン69bの従動スプロケット軸92上には他方の補助株元搬送チェン69aの駆動スプロケット93が設けられている。こうして、駆動スプロケット93にも縦伝動軸75の上部から動力が伝達されるように構成されて、補助株元搬送チェン69aが駆動可能とされている。
【0044】
また、縦伝動ケース59の中間部から右株元合流搬送チェン67Rの回動平面に対して直角に右搬送駆動ケース94が立設されるとともに、右搬送駆動ケース94の下部から左斜上方に向けて縦搬送駆動ケース95が延設されている。右搬送駆動ケース94には右搬送駆動軸96が内挿され、縦搬送駆動ケース95には縦搬送伝動軸97が内挿されて、該縦搬送伝動軸97の下端が右搬送駆動軸96の下部にベベルギアを介して連動連結されている。
【0045】
右搬送駆動軸96上には右株元合流搬送チェン駆動スプロケット98が設けられ、右株元合流搬送チェン駆動スプロケット98に右株元合流搬送チェン67Rの搬送終端部が巻回支持されている。また、縦搬送伝動軸97にはベベルギアを介して縦搬送駆動軸99の下端が連動連結されている。該縦搬送駆動軸99上には株元搬送チェン駆動スプロケット100が設けられ、該株元搬送チェン駆動スプロケット100に株元搬送チェン68の搬送始端部が巻回支持されている。
【0046】
そして、該右搬送駆動軸96の下端が縦伝動軸75の中間部にベベルギアを介して連動連結されて、縦伝動軸75の中間部から右株元合流搬送チェン駆動スプロケット98と株元搬送チェン駆動スプロケット100に動力が伝達されるように構成され、右株元合流搬送チェン67R及び株元搬送チェン68が駆動可能とされている。
【0047】
また、引起縦伝動ケース77の中間部から右方向に、かつ左株元合流搬送チェン67Lの回動平面と平行に左搬送駆動ケース101が延設されている。左搬送駆動ケース101には左搬送駆動軸102が内挿され、該左搬送駆動軸102の右端が駆動スプロケット軸105の中間部にベベルギアを介して連動連結されている。
【0048】
駆動スプロケット軸105には左株元合流搬送チェン駆動スプロケット103が設けられ、左株元合流搬送チェン駆動スプロケット103に左株元合流搬送チェン67Lの非搬送作用側中間部が巻回支持されている。さらに、駆動スプロケット軸105には左穂先搬送装置駆動スプロケット104が設けられ、該左穂先搬送装置駆動スプロケット104に左穂先搬送装置70Lのタインを等間隔に取り付けるチェンの非搬送作用側中間部が巻回支持されている。
【0049】
そして、左搬送駆動軸102の左端が引起縦伝動軸82の中間部にベベルギアを介して連動連結されて、横伝動軸76の左端部から引起縦伝動軸82を経て左株元合流搬送チェン駆動スプロケット103と左穂先搬送装置駆動スプロケット104に動力が伝達されるように構成され、左株元合流搬送チェン67L及び左穂先搬送装置70Lとが駆動可能とされている。
【0050】
また、後述する駆動構造によって横伝動軸76の中間部から中央株元合流搬送チェン67Cの搬送終端部を巻回支持する中央株元合流搬送チェン駆動スプロケット106に動力が伝達されるように構成されて、中央株元合流搬送チェン67Cが駆動可能とされている。
【0051】
このように、右株元合流搬送チェン67R及び右穂先搬送装置70Rと、左株元合流搬送チェン67L及び左穂先搬送装置70Lと、中央株元合流搬送チェン67C及び中央穂先搬送装置70Cとに、それぞれ動力を伝達してこれらを独立駆動するとともに、右株元合流搬送チェン67R及び右穂先搬送装置70Rと左株元合流搬送チェン67L及び左穂先搬送装置70Lに対して中央株元合流搬送チェン67C及び中央穂先搬送装置70Cを独立駆動し、また右スターホイル65R及び右掻込ベルト66Rと、左スターホイル65L及び左掻込ベルト66Lと、中央スターホイル65C及び中央掻込ベルト66Cを独立駆動することで、左右及び中央のスターホイル65L・65R・65Cを相互に噛合わせるスターホイル連装による中央スターホイル65C及び中央掻込ベルト66C及び中央株元合流搬送チェン67C及び中央穂先搬送装置70Cの駆動構造省略化により発生していた過大負荷による各スターホイル65L・65R・65Cの破損などのトラブルの防止が図られている。
【0052】
次に刈刃装置22の構成について、図7、図8あるいは図10に基づいて説明する。
前記刈刃装置22は、刈幅のほぼ全幅に相当する長さの、六条分の刈幅を有する固定刃部30と、該固定刃部30の上に重ね合わせるように位置され固定刃部30の幅の長さの半分よりも特定長さ(各可動刃部31A・31Bの左右往復運動のストロークと略同一長さ)だけ短くなされ略三条分の刈幅を有するものとなされた左右一対の可動刃部31A・31Bからなる。
【0053】
また、前記刈刃装置22は、受刃台32にボルト33及びナット44等で調整板34と共に締め付け固定する複数の刃押さえ35によって、左右の可動刃部31A・31Bを固定刃部30の上面にコンバイン1の進行方向に対して左右相反する方向にのみ往復運動自在に重合支持している。往復運動させることによって、穀稈の刈取作業を行うようにしている。
【0054】
前記固定刃部30は、多数の単位固定刃37・37・・・を受刃台32に一定間隔で並設して構成され、各単位固定刃37は前記受刃台32にリベット36・36により固定されている。
【0055】
左右の可動刃部31A・31Bは、受刃台32の略半分の横幅を有する左右ナイフバー38A・38Bと、該ナイフバー38A・38Bの端から端に単位固定刃37と同じ一定間隔でリベット36止めする多数の単位可動刃39・39・・・と、数枚の単位可動刃39と共に左右ナイフバー38A、38Bにリベット36止めする左右ナイフヘッド40・40から構成される。尚、単位可動刃39と受刃台32の間に調整板34が挟まれ、該調整板34は受刃台32に後述するようにボルト33とナット44により固定されている。
【0056】
単位固定刃37は平面視略鋭角三角形状に形成され、単位可動刃39も平面視略鋭角三角形状に形成される。単位固定刃37と単位可動刃39は共に、その左右斜辺を尖らせて切断部42を形成し、単位固定刃37・37・・・を左右方向に連設した固定刃部30及び単位可動刃39・39・・・を左右方向に連設した可動刃部31A・31Bの切断部42は鋸歯状に形成される。また、単位固定刃37と単位可動刃39が摺動しあう面は共に略平面で摺動し易く、その間にゴミ等が挟まらない構成になっている。
【0057】
図8に示すごとく、二つのナイフバーガイド41A・41Bが単位可動刃39をリベット36止めしたナイフバー38を前後から挟んでおり、一方のナイフバーガイド41Aは刃押さえ35の一端(前端)にリベット47により固定され、他方のナイフバーガイド41Bは、刃押さえ35の他端(後端)と、単位固定刃37をリベット36止めした受刃台32との間で、調整板34と共にボルト33により締め付け固定されている。
【0058】
また、固定刃部30の左右中央に固定された単位固定刃(以下、「中央単位固定刃」と記載する)37aは左右の可動刃部31A・31Bの左右往復移動を確保するため、これ以外の単位固定刃37に比べて底辺の長い三角形となされると共に、該中央単位固定刃37aの左右各側縁の切断部a1・a2の、左右方向に対する傾斜角度は、他の単位固定刃37の左右各側縁の切断部42の同傾斜角度よりも小さくなされている。
【0059】
図9、図11に基づいて、本発明の内端可動刃43について説明する。
従来の刈刃装置22の最内側に位置する可動刃部31A・31Bは、図11に示すごとく、二等辺三角形状の単位可動刃39に隣接して略直角三角形状の内端可動刃49が配置され、該内端可動刃49は他の単位可動刃39に比べて、横幅が略半分の長さに構成されていたため、ナイフバー38に対する固定面積も小さく、作業時においてコンバイン1の進行方向に向かって左右方向の振動や上下方向の押圧力等に対して弱く耐久性等に問題があった。
これに対して本発明の刈刃装置22の最内側に位置する可動刃部31A・31Bは、図9に示すように、内端可動刃43を、二等辺三角形状刃50と直角三角形状刃51より構成し、従来の内端可動刃49とその隣の単位可動刃39を一体とした形状と略同じ形状に形成してなるものである。具体的には、従来の内端可動刃49の切断部49aとその隣の単位可動刃39の切断部42を一体として切断部43bとし、内端可動刃49の取付基部49cと単位可動刃39の取付基部39aを一体的に構成して取付基部43dとしている。こうすることで二等辺三角形状刃50と直角三角形状刃51が一体となって内端可動刃43が形成され、取付基部49dの面積が広くなり、剛性がアップして、安定よく支持しすることが可能となり、固定刃部30に対する可動刃部31A・31Bの左右往復運動時に発生する振動を抑え、二等辺三角形状刃50と直角三角形状刃51の切断部43bが連続的に形成されて摩耗を減少して耐久性を向上させることができる。
【0060】
また、本発明の内端可動刃43の直角三角形状刃51の内端側縁に形成した切断部43cは、可動刃部31A・31Bの左右往復運動方向に対して直交するように形成し、つまり、切断部43cは前後方向を向くように構成される。従来の内端可動刃49の内側の切断部49bは若干外側に傾斜させていたので、幅が広くなり、左右の可動刃部31A・31Bを最も中央側に接近したときには隙間が小さく駆動部の誤差及びその許容範囲を小さくする必要があったが、本発明の内端可動刃43の直角三角形状刃51の内端側縁の切断部43cは取付基部43dの後辺に対して略直角の関係になるように構成されている。
このように構成することで、左右の内端可動刃43・43が左右相反する方向に往復運動して中央単位固定刃37a上で互いに接近するように摺動した際、内端可動刃43の内端側縁の切断部43cと切断部43cの間の距離は従来よりも長く構成することができて、異物等を挟むことが減少し、穀稈の切断が行われない非切断領域をなくし、穀稈の刈り残しをなくすことができる。
【0061】
また、取付基部43dの後辺と切断部43cの後部が交わる隅部には傾斜辺43eが形成され、異物を噛み込むようなときでも逃げられるようにしている。更に、取付基部43dにはリベット48によりナイフバー38に固定するための取付孔43fは左右方向に所定間隔を開けて3つ開口され、従来よりも一つ減少することができ、組み付け工程を減少できる。
【0062】
前記左右の内端可動刃43・43の間に位置する前記単位中央固定刃37aは、図5、図10に示すように、平面視で掻込機構と分草板21との間に配置され、機体左右中央に対して偏心して配置されている。さらに具体的には、進行方向右側の掻き込みベルト66Cと機体左右中央の分草板21の取付基部との間に単位中央固定刃37aが配置される構成としている。このように配置することにより、圃場に植立した穀稈を分草板21にて分草して取り込み、穀稈引起装置で引き起こし、分草された穀稈が掻込機構で掻き込まれて前記単位中央固定刃37aに運ばれて左右の可動刃部31A・31Bの往復運動によって穀稈の株元を刈り取ることができる。そして、刈取時に左右の内端可動刃43・43が中央に近寄った時に、刈り取られる穀稈の株が左右中央の分草板側に寄ることなく穀稈の搬送通路である掻込機構と分草板21との間に寄せられることになり、搬送乱れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施例に係るコンバインの全体的な構成を示した側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】刈取装置の側面図。
【図4】刈取装置の平面図。
【図5】刈取装置前部の拡大平面図。
【図6】刈取装置の駆動系統図。
【図7】刈刃装置の平面図。
【図8】図6におけるX−X線断面図。
【図9】本発明の内端可動刃の拡大平面図。
【図10】刈刃装置の中央部の平面図。
【図11】従来の内端可動刃とその隣の単位可動刃の拡大平面図。
【符号の説明】
【0064】
1 コンバイン
4 刈取装置
22 刈刃装置
30 固定刃部
31A・31B 可動刃部
37 単位固定刃
39 単位可動刃
37a 中央単位固定刃
43 内端可動刃
49 従来の内端可動刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に配置した固定刃部上に重合させて、左右方向に摺動させる可動刃部を、機幅の略中央で分割し左右相反する方向に往復運動させるようにした刈刃装置であって、前記可動刃部を複数の単位可動刃と内端可動刃により構成し、刈刃装置最内側に位置する内端可動刃を、二等辺三角形状刃と直角三角形状刃とを一体に形成したことを特徴とする刈刃装置。
【請求項2】
前記直角三角形状刃の内端側縁は、可動刃部の移動方向に対して直交するように形成したことを特徴とする請求項1に記載の刈刃装置。
【請求項3】
前記左右の内端可動刃の間に位置する単位中央固定刃が、掻込機構と分草板との間に配置されることを特徴とする刈取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−254850(P2006−254850A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79397(P2005−79397)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【出願人】(000005164)セイレイ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】