説明

刈取搬送装置における引起装置の取付構造

【課題】引起装置を容易に着脱できるようにする。
【解決手段】刈取搬送装置前部における上部支持部4Dに引起装置に対して駆動力を出力する主動軸4xを設け、引起装置8の上部取付部8Dに主動軸4xの駆動力が入力される駆動軸8xを設けると共に、主動軸4xと駆動軸8xとは上部取付部8Dを上部支持部4Dに取り付けた状態で相互に伝動可能な係合状態となり、かつ上部取付部8Dを上部支持部4Dから前方に離間した状態で伝動が切れた分離状態となる伝動接続構成とし、引起装置8は上部取付部8Dを上部支持部4Dから取り外した状態で刈取搬送装置前部における下部支持軸4Eを支えとして下部支持部4Eよりも上方側の部分が前後揺動可能であるとともに、その前方揺動により主動軸4x及び駆動軸8xが分離状態となり、かつその後方揺動により上部取付部8Dが上部支持部4Dに対する取付け位置に位置決めされる下部支持構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等の刈取搬送装置前部に取り付けられる引起装置の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバインにおいては、圃場に植立する穀稈を引起すための引起装置を刈取搬送装置前部に備えている。かかる引起装置は、製造又は刈取搬送装置内に生じた刈取穀稈の詰まりを取り除くメンテナンス等の際に組み付ける又は取り外す必要がある。この引起装置の着脱を容易にするための手段として、引起装置の背面(裏面)上部及び下部をボルト等の締結具により刈取搬送装置前部の上部支持部及び下部支持部にそれぞれ着脱可能に取り付ける技術が知られている(特許文献1参照)。この場合における、引起装置への伝動手段は、引起装置の背面上部から突出する引起装置駆動用のスプライン軸と、刈取搬送装置前部の上部支持部に設けられたスプライン孔とのスプライン嵌合により構成される。
引起装置を刈取搬送装置に取り付ける際には、引起装置側のスプライン軸を、刈取搬送装置前部における上部支持部のスプライン孔に差し込んだ後、引起装置の背面上部と刈取搬送装置前部の上部支持部とを締結具で締結するとともに、穀稈引起ケースの背面下部と刈取搬送装置前部の下部支持部とを締結具で締結する。逆に、引起装置を取り外すに際しては、引起装置背面の上部及び下部と刈取搬送装置前部の上部支持部及び下部支持部とをそれぞれ締結する締結具を緩めて、穀稈引起装置と刈取搬送装置前部との連結を解除した後、引起装置を前方に引っ張って、引起装置のスプライン軸を刈取搬送装置前部における上部支持部のスプライン孔から引き抜くようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−75031号公報
【特許文献2】特開2007−60951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この先行例における引起装置の着脱構造は、取り付けの際に何の支えもなしに引起装置の背面のスプライン軸を刈取搬送装置前部のスプライン孔に挿入する必要があり、その作業が容易でないといった問題点や、引起装置の背面上部及び下部を締結具で刈取搬送装置前部に締結していない状態では、穀稈引起装置を別途支持しない限り、スプライン嵌合のみで引起装置を支えることになり、スプライン軸やスプライン孔等の伝動機構に過度の負荷が加わるおそれがあるといった問題点があった。
そこで、本発明の主たる課題は、かかる問題点を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、穀稈を刈り取る刈取搬送装置(4)の前部に、引起装置(8)の上部及び下部を着脱可能に取り付ける上部支持部(4D)及び下部支持部(4E)をそれぞれ設け、
引起装置(8)の上部及び下部に、前記上部支持部(4D)及び下部支持部(4E)に着脱可能に取り付ける上部取付部(8D)及び下部取付部(8E)をそれぞれ設け、
前記上部支持部(4D)又はその近傍に、引起装置(8)に対して駆動力を出力する主動部(4x)を設け、前記上部取付部(8D)又はその近傍に、主動部(4x)の駆動力が入力される従動部(8x)を設けるとともに、これら主動部(4x)と従動部(8x)とは、前記上部取付部(8D)を前記上部支持部(4D)に取り付けた状態で相互に伝動可能な係合状態となり、かつ前記上部取付部(8D)を前記上部支持部(4D)から前方に離間した状態で伝動が切れた分離状態となる伝動接続構成とし、
前記引起装置(8)は、前記上部取付部(8D)を前記上部支持部(4D)から取り外した状態で、下部支持部(4E)を支えとして該下部支持部(4E)よりも上方側の部分が前後揺動可能であるとともに、その前方揺動により前記主動部(4x)及び従動部(8x)が前記分離状態となり、かつその後方揺動により前記上部取付部(8D)が前記上部支持部(4D)に対する取り付け位置に位置決めされる下部支持構成としたことを特徴とする刈取搬送装置における引起装置の取付構造である。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記下部支持部(4E)を左右方向に延びる下部支持軸(4E)となし、前記下部取付部(8E)を、前記下部支持軸(4E)を上方から掴んで回動可能に支持すること及び前記下部支持軸(4E)を離して下方に抜き出すことが可能な握持部(8E)とし、この握持部(8E)の握持を操作する操作部(8v,8L)を設けたことを特徴とする請求項1記載の刈取搬送装置における引起装置の取付構造である。
【0007】
請求項3記載の発明は、前記上部支持部(4D)と下部支持部(4E)とを、前記引起装置(8)の背後で縦方向に延びる連結フレーム(40)により連結したことを特徴とする請求項1又は2記載の刈取搬送装置における引起装置の取付構造である。
【0008】
請求項4記載の発明は、前記引起装置(8)による引起経路を通過する穀稈を検出する穀稈センサ(25)、前記引起装置(8)の背後で穀稈の穂先を案内する穂先側ガイド(26)、前記引起装置(8)の背後で穀稈の株元を案内する株元側ガイド(27)、及び前記引起装置(8)に注油する注油具のうちの少なくとも一つを前記連結フレーム(40)に取り付けたことを特徴とする請求項3記載の刈取搬送装置における引起装置の取付構造である。
【0009】
請求項5記載の発明は、前記引起装置(8)を左右方向に間隔を空けて4基以上配置するとともに、少なくとも、左端の引起装置(8)と右端の引起装置(8)との間に位置する中間の引起装置(8)の一部又は全てを、前記伝動接続構成及び前記下部支持構成としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の刈取搬送装置における引起装置の取付構造である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明では、引起装置(8)を取り付ける際は、引起装置(8)を刈取搬送装置(4)前部の下部支持部(4E)で支えた状態で、引起装置(8)の下部取付部(8E)を下部支持部(4E)に取り付ける作業、引起装置(8)を後方に揺動し、上部取付部(8D)を上部支持部(4D)に対する取り付け位置に持ち込んで取り付け、主動部(4x)と従動部(8x)とを伝動可能な係合状態にする作業によって、この引起装置(8)を刈取搬送装置(4)側に取り付けることができる。また、引起装置(8)の取り外しに際しては、引起装置(8)を刈取搬送装置(4)前部の下部支持部(4E)で支えた状態で、引起装置(8)の上部取付部(8D)を上部支持部(4D)から取り外して引起装置(8)を前方に揺動し、上部取付部(8D)を上部支持部(4D)から前方に離間させて主動部(4x)及び従動部(8x)を分離状態にする作業、及び引起装置(8)の下部取付部(8E)を下部支持部(4E)から取り外す作業によって、この引起装置(8)を刈取搬送装置(4)側から取り外すことができる。よって、刈取搬送装置(4)前部の下部支持部(4E)を支えとして引起装置(8)を容易に着脱することができ、刈取搬送装置(4)内に刈取穀稈の詰まりを生じた場合でも、引起装置(8)を取り外すことで、この刈取穀稈を容易に取り除くことができ、刈取作業の能率を高めることができる。さらにこの刈取搬送装置(4)のメンテナンスの際に伝動機構に過度の負荷が加わるおそれもなくなり、この伝動機構の破損を防止することができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果を奏するうえに、下部取付部(8E)と下部支持部(4E)との取付構造、及び下部支持部(4E)を支えとした引起装置(8)の揺動機構を簡素な機構で実現することができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1又は2記載の発明の効果を奏するうえに、刈取搬送装置(4)前部の上部支持部(4D)と下部支持部(4E)とを引起装置(8)の背後で縦方向に延びる連結フレーム(40)により連結したことにより、引起装置(8)を取り付けた状態では連結フレーム(40)の補強作用により引起装置(8)が強固に支持されるようになり、また引起装置(8)の着脱途中においては上部支持部(4D)及び下部支持部(4E)の位置がブレ難くなり、着脱の作業性が向上する。また、連結フレーム(40)は引起装置(8)の背後に位置しているため、穀稈の移送の邪魔となりにくく、穀稈の移送を円滑に維持できる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、上記請求項3記載の発明の効果を奏するうえに、穀稈センサ(25)、穂先側ガイド(26)、注油具等を連結フレーム(40)に設けることにより、引起装置(8)を取り外す際に、これらの器具又はその付属チューブやケーブルを取り外さなくても良くなるため、引起装置(8)の着脱作業が更に容易となる。
【0014】
他方、引起装置(8)を左右方向に間隔を空けて4基以上配置した刈取搬送装置では、左端の引起装置(8)及び右端の引起装置(8)よりもそれらの間に位置する中間の引起装置(8)の背後で穀稈の詰まりが発生し易い。また、左端の引起装置(8)及び右端の引起装置(8)は比較的容易に側方から手を入れてメンテナンスを行うことができるが、中間の引起装置(8)の背後はそのようなことが行い難い。これに対して、請求項5記載の発明によれば、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の発明の効果を奏するうえに、少なくとも中間の引起装置(8)については前述の本発明の伝動接続構成及び下部支持構成とし、刈取搬送装置(4)からの着脱を容易にしたため、詰まりが発生し易く且つ手を入れるのが困難な部位のメンテナンス作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの正面図である。
【図3】コンバインの背面図である。
【図4】コンバインの平面図である。
【図5】刈取搬送装置の要部の側面図である。
【図6】刈取搬送装置の要部の正面図である。
【図7】刈取搬送装置の要部の平面図である。
【図8】引起装置の側面図である。
【図9】引起装置の要部の背面図である。
【図10】刈取搬送装置の要部の正面図である。
【図11】刈取搬送装置の要部の側面図である。
【図12】引起装置近傍の要部の側面図である。
【図13】主動軸及び駆動軸の着脱構造を示す縦断面図である。
【図14】引起装置近傍の要部の側面図である。
【図15】刈取搬送装置の要部の側面図である。
【図16】引起装置の要部の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照しつつ詳説する。
図1〜図4は本実施形態に係るコンバインを示しており、図5〜図16はその各部を示している。このコンバインは、左右一対の走行クローラ2,2を備えた走行車体1上の左右いずれか一方側に脱穀装置3を搭載し、この脱穀装置3の前側に、穀稈を刈り取って脱穀装置3に搬送する刈取搬送装置4を配置し、刈取搬送装置4の横側には運転席5や操作ボックス6等の運転操作部を備え、更に、その運転操作部の後方には脱穀粒を一時的に貯留するグレンタンクGを装備しているものである。
【0017】
刈取搬送装置4は、圃場に植立する穀稈を左右に分草する分草体7,7…と、分草後の穀稈を引起経路Kに沿って引き起す4条の穀稈引起装置8,8…と、引起し後の穀稈の株元近くを切断して穀稈を刈り取る公知のバリカン型刈刃装置9と、引起し時の穀稈を刈刃装置9側に誘導し、刈取後の穀稈を後方に掻き込む掻込装置10と、掻込装置10で掻込まれた掻込み穀稈の株元と穂先側とを脱穀装置3に向けて搬送する上下2段の穀稈搬送装置12L,12R、13L,13R、14、19等を有するものである。
【0018】
図5〜図7に示されるように、本実施形態の掻込装置10は、刈刃装置9のすぐ上側に設けられた掻込スターホイール11と、それより前側であって引起装置8の後側に設けられた掻込ラグ10rを有する無端状の掻込ベルト10bとで構成されている。掻込スターホイール11及び掻込ベルト10bはそれぞれ各引起経路Kに対して左右一対設けられており、引起し時の穀稈は一対の掻込ベルト10bの間を通して掻込スターホイール11側に誘導された後、一対の掻込スターホイール11で挟持されて後方の穀稈搬送装置12L,12R、13L,13R、14、19に向けて掻き込まれる。
【0019】
本実施形態における穀稈搬送装置12L,12R、13L,13R、14、19は、上下2段に配置された穂先側搬送装置13L,13R,19及び株元側搬送装置12L,12R,14から構成されている。このうち、穂先側搬送装置13L,13R,19は、右端の掻込ベルト10b後端部のすぐ上側の位置から穀稈合流部J上方を通り脱穀装置3の供給部に向かって穀稈の穂先側を搬送する右穂先搬送装置13Rと、左端の掻込ベルト10b後端部のすぐ上側の位置から穀稈合流部J上方まで穀稈の穂先側を搬送する左穂先搬送装置13Lと、右穂先搬送装置13Rの終端部から脱穀装置3の供給部に合流穀稈の穂先側を送り込む供給搬送装置19とで構成されている。これら搬送装置13L,13R,19は、図示しない駆動スプロケット及び従動輪に巻き掛けられて駆動される無端チェンと、この無端チェンに所定の間隔で取り付けられた搬送ラグと、チェンにおける搬送側に沿って設けられた図示しないガイドとを有し、無端チェンとガイドとの間に位置する穀稈をラグにより押して搬送する公知のものを採用することができる。
【0020】
また、株元側搬送装置12L,12R,14は、右端の掻込スターホイール11のすぐ上側の位置から左後斜め上方の幅方向中央近傍の穀稈合流部Jに向かって穀稈の株元側を挟持して搬送する右株元搬送装置12Rと、左端の掻込スターホイール11のすぐ上側の位置から右後斜め上方の幅方向中央近傍の穀稈合流部Jに向かって穀稈の株元側を挟持して搬送する左株元搬送装置12Lと、穀稈合流部Jから脱穀装置3のフィードチェン3Fへの引継ぎ部まで合流穀稈の株元側を挟持して搬送する調節搬送装置14とで構成されている。これら各株元搬送装置12L,12R,14は、図示しない駆動スプロケット及び従動輪に巻き掛けられて駆動される無端の搬送チェンと、この搬送チェンにおける搬送側に沿って設けられた図示しない挟持杆との間に穀稈を挟持して搬送する公知のものを採用することができる。
【0021】
掻込装置10で掻込まれ、刈取搬送装置4で刈り取られた穀稈は、穀稈搬送装置12L,12R、13L,13R、14、19により後方へ搬送され、且つその搬送過程で合流及び、姿勢・位置調整がなされた後、脱穀装置3のフィードチェン3Fに引き渡され、脱穀装置3において脱穀される。脱穀装置3は公知の構成を採用することができる。
【0022】
刈取搬送装置4について更に詳細に説明する。刈取搬送装置4は、走行車体1前部の図示しない刈取懸架台に袈設された刈取支持軸23を支点として上下に回動する刈取支持フレーム21により支持され、図示しない刈取昇降シリンダの伸縮作動により昇降するようになっている。刈取支持フレーム21は、刈取支持軸23から前斜め下向きに突出するメインフレーム21Mと、このメインフレーム21Mの先端部から左右両側に延在する下部横フレーム21Hとで構成される略T字型の部分と、下部横フレーム21Hの両端部から引起装置8の左右両側上方までそれぞれ延在する左右の引起支持フレーム21V,21Vと、これら引起支持フレーム21V,21Vの上端部間を連結する上部横フレーム21Lと、左端及び右端の各引起装置8の背後並びに中間に位置する一対の引起装置8,8の背後において上部横フレーム21Lから引起装置8の上部取付部まで吊り下がるように延在する引起上部取付フレーム21Dと、下部横フレーム21Hの前側に設けられた刈刃支持フレーム21Pと、刈刃支持フレーム21Pの前側に設けられた引起下部取付フレーム21Uとを有している。
【0023】
そして、刈刃支持フレーム21Pには刈刃装置9が取り付けられており、また、引起下部取付フレーム21Uからは各分草体7,7…を支持する分草支持杆7sが前方に突出している。
【0024】
メインフレーム21M、下部横フレーム21H、左右いずれか一方の引起支持フレーム21V、上部横フレーム21L、及び引起上部取付フレーム21Dには、メイン伝動軸24M、下部横伝動軸24H、引起支持伝動軸24V、上部横伝動軸24L、及び引起上部取付伝動軸24Dがそれぞれ内装されており、刈取支持軸23に入力される動力は、図示しないギヤにより連動する各伝動軸24M,24H,24V,24L,24Dを介して各引起装置8に伝動される。また、下部横伝動軸24Hの両端部からは図示しないギヤを介して刈刃装置9に伝動される。また、左側の引起支持伝動軸24Vからは図示しないギヤを介して刈取搬送装置4の左側構成機器(左穂先搬送装置13L、左株元搬送装置12L)及び掻込装置10の左側構成機器(左側の一対の掻込ベルト10b、左側の一対の掻込スターホイール11)に伝動され、メイン伝動軸24Mからは図示しないギヤを介して刈取搬送装置4の右株元搬送装置12R及び調節搬送装置14、並びに掻込装置10の右側構成機器(右側の一対の掻込ベルト10b、右側の一対の掻込スターホイール11)に伝動されるようになっている。さらに、刈取支持軸23の左側延長部分からは、図示しないギヤを介して刈取搬送装置4の右穂先搬送装置13R及び供給搬送装置19に伝動されるようになっている。
【0025】
引起装置8は、本実施形態では4条刈コンバインであるから、引起しラグ8rが対向する左右一対を一組として三組が配置されている。図8及び図9に詳細に示されるように、各引起装置8は、引起ケース8Bと、その前面に着脱可能に支持された引起カバー8Aと、引起ケース8B前面における上端部及び下端部にそれぞれ設けられた引起駆動スプロケット8s及び引起従動輪8wと、引起駆動スプロケットの側方に上下動自在に並設されたテンション調節スプロケット8tと、これらに巻き掛けられて駆動される無端の引起チェン8cと、この引起チェンに所定の間隔で取り付けられた引起ラグ8rと、一端が引起ケース8Bの上端部に連結され、他端がテンション調節スプロケット8tの支持部に対して連結されたテンションスプリング8nとを有している。引起ラグ8rは、引起しチェン8cの駆動に伴って後斜め上方に上昇移動する際、引起装置8から引起経路K側の側方に突出して穀稈を引き起すものである。これら引起装置8の構成部品は引起ケース8Bにより支持されており、後述する引起装置8の着脱の際、アセンブリ状態で着脱することができる。
【0026】
引起装置8は、図12に示されるように、その裏面における上部及び下部にそれぞれ設けられた上部取付部8D及び下部取付部8Eにおいて、刈取搬送装置4の前部に設けられた上部支持部4D及び下部支持部4Eにそれぞれ着脱可能に取り付けられる。
【0027】
より詳細には、図8及び図13に示されるように、引起上部取付フレーム21Dの下端部(上部支持部)4Dに、引起装置8に対して駆動力を出力する主動軸(主動部)4xが軸支され、この主動軸4xが引起装置8側に突出するとともに、その先端部が角軸4pとされる一方、引起ケース8Bの裏面における上部(上部取付部)に、引起駆動スプロケット8sの駆動軸(従動部)8xが軸支されるとともに、引起上部取付フレーム21D側に露出しており、この駆動軸8xの先端部に、主動軸4xの先端部4pが同心状に嵌合する角孔8pが形成されている。
【0028】
また、引起下部取付フレーム21Uの上部には、左右方向に延びる下部支持軸(下部支持部)4Eが設けられ、この下部支持軸4Eと引起上部取付フレーム21Dの下端部4Dとが、引起装置8の背後で縦方向に延びる連結フレーム40により連結されている。さらに、図示形態では引起装置8を取付状態に固定するための引起固定手段30として、連結フレーム40の上端部に揺動自在に取り付けられたレバー部材31と、このレバー部材31に枢着された環状部材32と、引起ケース8Bの裏面における駆動軸8xの下側近傍に固定されたフック状部材33とからなり、レバー部材31をフック状部材33側に揺動させて環状部材32をフック状部材33に係合した後にレバー部材31をフック状部材33と反対側に倒すことにより、トグル作用により環状部材32を引き寄せて掛け止めるフック式固定具(いわゆるパッチン錠)を採用している。
【0029】
この引起固定手段30としては、図示しないが、引起装置8と、刈取搬送装置4の前部(例えば連結フレーム40や、引起上部取付フレーム21D、引起下部取付フレーム21U等)との対向部分のうち、いずれか一方に雌ネジ孔を設け、他方にボルト挿通孔を設け、ノブ付きボルトをこのボルト挿通孔を介して雌ネジ孔に螺合させる固定構造や、対向部分の両者にピン挿通孔を設けてベータピン等の固定ピンにより固定する構造等、公知の固定手段を採用することができる。
【0030】
引起ケース8Bの裏面における下部には、下部支持軸4Eを上方から掴んで回動可能に支持すること及び下部支持軸4Eを離して下方に抜き出すことが可能な握持部8Eが下部取付部として設けられている。図示例では、この握持部8Eは、下方から下部支持軸4Eが挿入可能な凹欠部8uを有し、引起ケース8Bの裏面に固定された固定部材8fと、この固定部材8fの凹欠部8uの入口を開閉可能である開閉部材8mとを有するものである。開閉部材8mは、固定部材8fにおける凹欠部8uの上側に設けられた左右方向に沿う回動軸8qを中心として回動可能に取り付けられるとともに、図8及び図9に示すように回動軸8qよりも後方側の部位が連結ワイヤー8Lを介して引起装置8の裏面上部の操作レバー8vに連結されており、操作レバー8vは、引起ケース8B裏面から突出する揺動軸8iを中心として揺動可能とされている。
【0031】
操作レバー8vを揺動させると、これに伴い開閉部材8mが固定部材8fにおける凹欠部8uの入口を閉じる位置と、開放する位置との間で回動するとともに、閉状態では固定部材8fと開閉部材8mとで下部支持軸4Eを上方から掴んで回動可能に支持することができ、また開状態では固定部材8fにおける凹欠部8uの入口の下方から下部支持軸4Eを出し入れすることができる。また、開閉部材8mは、固定部材8fの凹欠部8uの入口を閉じる部分の下縁が、後斜下向きに傾斜した傾斜縁とされており、固定部材8fの凹欠部8uの入口を塞いだ状態で下部支持軸4Eの上に載せると、その傾斜縁によって開閉部材8mが開方向に押し出され、開閉部材8mの操作をせずとも下部支持軸4Eを固定部材8fの凹欠部8u内に押し入れることができる。
【0032】
なお、図示例では、握持部8Eを引起装置8側に設け、下部支持軸4Eを刈取支持フレーム21側に設けているが、反対に下部支持軸4Eを引起装置8側に設け、握持部8Eを刈取支持フレーム21側に設けることもでき、その場合には下部支持軸4Eが引起装置8の下部取付部となり、握持部8Eが下部支持部となる。
【0033】
そして、以上のような装置構成を採用することにより、例えば次のように引起装置8の着脱を行うことができる。すなわち、引起装置8を取り付ける際は、先ず操作レバー8vを上昇させて固定部材8fの凹欠部8uの入口を開放した状態で、その入口に下方から刈取支持フレーム21前部の下部支持軸4Eが入るように、引起装置8を下降させてその握持部8Eを下部支持軸4E上に載せる。また、図示形態のように開閉部材8mの下縁が傾斜縁とされている場合は、操作レバー8vを上昇させずに、下部支持軸4Eを固定部材8fの凹欠部8u内に押し入れれば良い。そして、図14及び図15に示すように引起装置8の下部を引起下部取付フレーム21Uで支えた状態にしたならば、次いで操作レバー8vを下降させて固定部材8fと開閉部材8mとで下部支持軸4Eを上方から掴んで回動可能に支持することにより、引起装置8を握持部8Eにより下部支持軸4Eに取り付ける作業が完了する。この後、引起装置8を下部支持軸4Eを中心として後方に揺動し、引起装置8の上部取付部8Dを引起上部取付フレーム21Dの下端部4Dに対する取り付け位置に持ち込み、図13(a)に示すように引起装置8裏面の駆動軸8xの角孔8pに、引起上部取付フレーム21Dの下端部4Dから突出する主動軸4xの角軸先端部4pを嵌合して伝動可能に連結するとともに、引起固定手段30により引起装置8と刈取支持フレーム21とを固定することにより図12に示す状態となり、上部取付作業が完了する。
【0034】
引起装置8の取外しは取り付けとは反対の作業となる。すなわち、取付状態から、引起装置8の下部を引起下部取付フレーム21Uで支えた状態で、引起固定手段30による引起装置8と刈取支持フレーム21との固定を解除し、引起装置8を下部支持軸4Eを中心として前方に揺動し、上部取付部8Dを引起上部取付フレーム21Dの下端部4Dから前方に離間させて、図13(b)に示すように引起装置8裏面の駆動軸8xの角孔8pから主動軸4xの角軸先端部4pを抜いて伝動を分離するとともに、図14及び図15に示すように、操作レバー8vを上昇させて固定部材8fにおける凹欠部8uの入口を開放する。しかる後、固定部材8fにおける凹欠部8uの入口から下部支持軸4Eを下方に出すように引起装置8を持上げて引起装置8を刈取支持フレーム21から完全に分離することで取り外し作業が完了する。
【0035】
このように作業することで、刈取搬送装置4前部の下部支持軸4Eを支えとして引起装置8を容易に着脱することができ、さらにその作業の際に伝動機構に過度の負荷が加わるおそれもないのである。しかも、図示形態ではこのような機構を簡素に実現している。また、引起上部取付フレーム21Dの下端部4Dと下部支持軸4Eとを引起装置8の背後で縦方向に延びる連結フレーム40により連結したことにより、引起装置8を取り付けた状態では連結フレーム40の補強作用により引起装置8が強固に支持されるようになり、また引起装置8の着脱途中においては引起上部取付フレーム21Dの下端部4Dと下部支持軸4Eの位置がブレ難くなり、着脱の作業性が向上する。また、連結フレーム40は引起装置8の背後に位置しているため、穀稈の移送の邪魔となることもない。
【0036】
さらに、このような連結フレーム40を設ける場合、従来は引起装置8側に設けられていた機器、具体的には引起装置8による引起経路Kを通過する穀稈を検出する穀稈センサ25や、引起装置8の背後で右穂先搬送装置13R及び左穂先搬送装置13Lより上側に突出する穀稈の穂先側部分を穀稈合流部Jへ向けて案内する穂先側ガイド26、引起装置8の背後で右穂先搬送装置13R及び左穂先搬送装置13Lと右株元搬送装置12R及び左株元搬送装置12Lとの間に位置する穀稈の株元側部分を穀稈合流部Jへ案内する株元側ガイド27、引起装置8の引起チェン8c等に注油する注油ノズル、注油ホース等の注油具(図示略)等を連結フレーム40に取り付けると、引起装置を取り外す際に、これらの器具又はその付属チューブやケーブルを取り外さなくても良くなり、引起装置の着脱作業が更に容易となるため好ましい。図示例では、穀稈センサ25の取付台座25s、穂先側ガイド26の取付台座26s、株元側ガイド27の取付台座27s、引起装置8に注油する注油ノズルの取付台座28sを連結フレーム40にそれぞれ設けている。このような取付形態においては、穀稈センサのハーネス及び注油ホースを連結フレーム40に沿わせて取り付けるのが好ましい。また、図示例では穂先側ガイド26及び株元側ガイド27は棒材により形成しているが、板材により形成することもできる。
【0037】
他方、上述のような引起装置8の伝動接続構成及び下部支持構成は、全ての引起装置8に適用するとメンテナンス性が向上するため好ましいが、一部の引起装置8のみに適用し、他の引起装置8については従来の取付構造を適用することもできる。特に、引起装置8を左右方向に間隔を空けて4基以上配置したコンバインでは、左端の引起装置8及び右端の引起装置8よりもそれらの間に位置する中間の引起装置8の背後の穀稈合流部Jで穀稈の詰まりが発生し易い。また、左端の引起装置8及び右端の引起装置8は比較的容易に側方から手を入れてメンテナンスを行うことができるが、中間の引起装置8の背後はそのようなことが行い難い。そこで、少なくとも中間の引起装置(穀稈合流部J前方を覆う引起装置)8,8については前述の伝動接続構成及び下部支持構成とし、刈取搬送装置4からの着脱を容易にすることで、詰まりが発生し易く且つ手を入れるのが困難な部位のメンテナンス作業を容易にするのが好ましい。
【0038】
また、複数の引起装置8を着脱可能とした場合、各条の引起装置8を個別に着脱可能とすると、作業時の重量負荷が軽減される利点があるが、複数又は全ての引起装置8を一体化しておき、一度の作業で複数又は全ての引起装置8を着脱可能とするのも好ましい。特に、図16に示すように、左右方向中間等の隣接する二条の引起装置8,8を左右方向に延在する連結部材8Yにより連結しておき、一体的に着脱するのは好ましい形態である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、刈取搬送装置4前部に引起装置8を備えるコンバイン等に利用できるものである。
【符号の説明】
【0040】
1 走行車体
3 脱穀装置
4 刈取搬送装置
4D 上部支持部
4E 下部支持軸(下部支持部)
4p 先端部(角軸)
5 運転席
6 操作ボックス
7s 分草支持杆
8 引起装置
8A 引起カバー
8B 引起ケース
8c 引起チェン
8D 上部取付部
8E 握持部(下部取付部)
8f 固定部材
8i 揺動軸
8L 連結ワイヤー
8m 開閉部材
8n テンションスプリング
8p 角孔
8q 回動軸
8r 引起ラグ
8s 引起駆動スプロケット
8t テンション調節スプロケット
8u 凹欠部
8v 操作レバー
8w 引起従動輪
8x 駆動軸
8Y 連結部材
9 刈刃装置
10 掻込装置
10b 掻込ベルト
10r 掻込ラグ
11 掻込スターホイール
12L 左株元搬送装置
12R 右株元搬送装置
13L 左穂先搬送装置
13R 右穂先搬送装置
14 調節搬送装置
19 供給搬送装置
21 刈取支持フレーム
21D 引起上部取付フレーム
21D 取付フレーム
21H 下部横フレーム
21L 上部横フレーム
21M メインフレーム
21P 刈刃支持フレーム
21U 引起下部取付フレーム
21V 引起支持フレーム
23 刈取支持軸
24D 引起上部取付伝動軸
24H 下部横伝動軸
24L 上部横伝動軸
24M メイン伝動軸
24V 引起支持伝動軸
25 穀稈センサ
25s 穀稈センサ取付台座
26 穂先側ガイド
26s 穂先側ガイド取付台座
27 株元側ガイド
27s 株元側ガイド取付台座
28s 注油ノズル取付台座
30 引起固定手段
31 レバー部材
32 環状部材
3F フィードチェン
40 連結フレーム
G グレンタンク
J 穀稈合流部
K 引起経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を刈り取る刈取搬送装置(4)の前部に、引起装置(8)の上部及び下部を着脱可能に取り付ける上部支持部(4D)及び下部支持部(4E)をそれぞれ設け、
引起装置(8)の上部及び下部に、前記上部支持部(4D)及び下部支持部(4E)に着脱可能に取り付ける上部取付部(8D)及び下部取付部(8E)をそれぞれ設け、
前記上部支持部(4D)又はその近傍に、引起装置(8)に対して駆動力を出力する主動部(4x)を設け、前記上部取付部(8D)又はその近傍に、主動部(4x)の駆動力が入力される従動部(8x)を設けるとともに、これら主動部(4x)と従動部(8x)とは、前記上部取付部(8D)を前記上部支持部(4D)に取り付けた状態で相互に伝動可能な係合状態となり、かつ前記上部取付部(8D)を前記上部支持部(4D)から前方に離間した状態で伝動が切れた分離状態となる伝動接続構成とし、
前記引起装置(8)は、前記上部取付部(8D)を前記上部支持部(4D)から取り外した状態で、下部支持部(4E)を支えとして該下部支持部(4E)よりも上方側の部分が前後揺動可能であるとともに、その前方揺動により前記主動部(4x)及び従動部(8x)が前記分離状態となり、かつその後方揺動により前記上部取付部(8D)が前記上部支持部(4D)に対する取り付け位置に位置決めされる下部支持構成としたことを特徴とする刈取搬送装置における引起装置の取付構造。
【請求項2】
前記下部支持部(4E)を左右方向に延びる下部支持軸(4E)となし、前記下部取付部(8E)を、前記下部支持軸(4E)を上方から掴んで回動可能に支持すること及び前記下部支持軸(4E)を離して下方に抜き出すことが可能な握持部(8E)とし、この握持部(8E)の握持を操作する操作部(8v,8L)を設けたことを特徴とする請求項1記載の刈取搬送装置における引起装置の取付構造。
【請求項3】
前記上部支持部(4D)と下部支持部(4E)とを、前記引起装置(8)の背後で縦方向に延びる連結フレーム(40)により連結したことを特徴とする請求項1又は2記載の刈取搬送装置における引起装置の取付構造。
【請求項4】
前記引起装置(8)による引起経路を通過する穀稈を検出する穀稈センサ(25)、前記引起装置(8)の背後で穀稈の穂先を案内する穂先側ガイド(26)、前記引起装置(8)の背後で穀稈の株元を案内する株元側ガイド(27)、及び前記引起装置(8)に注油する注油具のうちの少なくとも一つを前記連結フレーム(40)に取り付けたことを特徴とする請求項3記載の刈取搬送装置における引起装置の取付構造。
【請求項5】
前記引起装置(8)を左右方向に間隔を空けて4基以上配置するとともに、少なくとも、左端の引起装置(8)と右端の引起装置(8)との間に位置する中間の引起装置(8)の一部又は全てを、前記伝動接続構成及び前記下部支持構成としたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の刈取搬送装置における引起装置の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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