説明

刈取装置

【課題】穀稈を分草する分草ガイドから引起装置に穀稈を受継ぐ際の脱粒を防止する。
【解決手段】穀稈引起装置(8)の上部に、穀稈引起装置(8)の傾斜角度よりも緩やかに後上がり傾斜する上部傾斜面(12u)を形成し、分草体(7)から上方に向けて延出した分草ガイド(74,75)を設け、該分草ガイド(74,75)の上部には、上部傾斜面(12u)の下端部(12c)に向けて、上部傾斜面(12u)と連続する上側分草部(74s,75s)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された従来技術では、分草体と穀稈引起装置とを備えるコンバインの刈取装置において、分草体から上方に向かって延出された分草ガイドを備えている。分草ガイドを設けることによって、穀稈の株元側を分草体によって分草し、分草ガイドによって穂先側を分草して、穀稈を穀稈引起装置の引起し経路内に円滑に案内することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008―182990号公報
【特許文献2】特開2002−176825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の分草ガイドは、その上端部が側面視において穀稈引起装置に対して略直交して連結されていたために、分草ガイドによって案内された穀稈の穂先側の部分が分草ガイド上端部に引掛かり、穀稈から水滴や泥土が飛散したり、穀粒の脱粒が発生したり、稈切れが発生したりする問題があった。また、穀粒等の飛散を防止するため、特許文献2には穀稈引起装置の上部にカバー体が設けられているが、このカバー体の姿勢が変化しないために、穀粒の飛散状況が変化した場合には、飛散物を効果的に遮断できないという問題があり、飛散した穀粒等が刈取装置の各部に堆積することによって、穀稈の搬送が円滑に行えなくなったり、飛散した水滴が伝動部に付着することにより刈取装置の耐久性が低下することがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
【0006】
すなわち、請求項1記載の発明は、植立穀稈を分草する分草体(7)と、分草体(7)によって分草された穀稈を引起す後上がり傾斜姿勢の穀稈引起装置(8)とを備える刈取装置において、該穀稈引起装置(8)の上部には、穀稈引起装置(8)の傾斜角度よりも緩やかに後上がり傾斜する上部傾斜面(12u)を形成し、前記分草体(7)から上方に向けて延出した分草ガイド(74,75)を設け、該分草ガイド(74,75)の上部には、前記上部傾斜面(12u)の下端部(12c)に向けて、上部傾斜面(12u)と連続する上側分草部(74s,75s)を形成したことを特徴とする刈取装置である。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記穀稈引起装置(8)の上方に、該穀稈引起装置(8)の引起し経路(K)の上方を覆うカバー体(15)を設け、該カバー体(15)は、前記上部傾斜面(12u)の傾斜に沿う閉状態と、この閉状態よりも上方に回動した姿勢の開状態とに切換自在に構成した請求項1記載の刈取装置である。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記カバー体(15)は、左右両端部の穀稈引起装置(8)の上部に左右方向のカバー体支軸(16)まわりに回動自在に支持し、前記分草ガイド(74)は、前記引起しラグ(14)が突出しない非引起し作用側を対向させて配置した2つの中間引起装置(8c)の間に設け、前記カバー体(15)を開状態に変更した場合に、中間引起装置(8c)の上端部と前記カバー体(15)との間に穀稈通過空間(15s)が形成される構成とした請求項2記載の刈取装置である。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記カバー体(15)は、左右両端部の穀稈引起装置(8)の上部に左右方向のカバー体支軸(16)まわりに回動自在に支持し、前記分草ガイド(74)は、前記引起しラグ(14)が突出しない非引起し作用側を対向させて配置した2つの中間引起装置(8c)の間に設け、分草ガイド(75)の上側分草部(75s)を中央引起装置(8c)の上端部よりも上方に延伸させ、該上側分草部(75s)の上端部に前記カバー体支軸(16)を回動自在に支持した請求項2記載の刈取装置である。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記カバー体(15)の前端部に左右方向の支軸(51)まわりに回動自在に支持した調節体(50)を設けた請求項2又は請求項3又は請求項4記載の刈取装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、分草ガイド(74,75)の上部に、前記上部傾斜面(12u)の下端部(12c)に向けて上部傾斜面(12u)と連続する上側分草部(74s,75s)を形成したことで、後上がり傾斜の上側分草部(74s,75s)によって案内された穀稈を、この上側分草部(74s,75s)と連続した傾斜に形成された上部傾斜面(12u)に円滑に受継ぐことができる。
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明による効果に加えて、分草ガイド(74,75)または、穀稈引起装置(8)の上側傾斜面(12u)に案内されている状態の穀稈から穀粒や水滴等が上方に向かって飛散したとしても、飛散状態に応じてカバー体(15)を回動させて調節することで、飛散物を効果的に遮断することができる。
請求項3記載の発明によれば、上記請求項2記載の発明による効果に加えて、前記カバー体(15)を開状態に変更した場合に、カバー体(15)と中間引起装置(8)との間に穀稈通過空間(15s)が形成されることで、中間引起装置(8)の上端部よりも高い位置まで穂先部が存在するような長稈においても、穀稈とカバー体(15)又は中間引起装置(8)とが干渉することによる脱粒を防止することができる。
請求項4記載の発明によれば、上記請求項2記載の発明による効果に加えて、カバー体(15)を左右両端部の穀稈引起し装置(8)と分草ガイド(75)とに支持しているので、カバー体(15)の支持剛性を高めることができる。
請求項5記載の発明によれば、上記請求項2又は請求項3又は請求項4記載の発明による効果に加えて、調節体(50)を左右方向の支軸(51)まわりに回動させることで、穀稈引起装置(8)の上部への穀粒等の飛散を更に効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバイン要部の正面図である。
【図3】コンバイン要部の平面図である。
【図4】穀稈引起装置の要部の側面図である。
【図5】コンバインの側面図である。
【図6】コンバイン要部の正面図である。
【図7】コンバイン要部の平面図である。
【図8】穀稈引起装置の要部の側面図である。
【図9】コンバインの側面図である。
【図10】コンバイン要部の正面図である。
【図11】コンバイン要部の平面図である。
【図12】穀稈引起装置の要部の側面図である。
【図13】コンバインの要部側面図である。
【図14】穀稈引起装置及び補助引起装置の要部の正面図である。
【図15】穀稈引起装置及び補助引起装置の要部の側面図である。
【図16】刈取装置の側面図である。
【図17】刈取装置の正面図である。
【図18】刈取装置の側面図である。
【図19】刈取装置の正面図である。
【図20】刈取装置の要部の平面図である。
【図21】刈取装置の要部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照しつつ詳説する。
【0014】
図1〜図4、図5〜図8及び図9〜図12はそれぞれ異なる状態のコンバインを示すものである。このコンバインは走行車体1に左右一対の走行クローラ2,2を備え、後部に搭載した脱穀装置3の前方部に刈取装置4を設置し、刈取装置4の横側部には運転席5や操作ボックス6等の運転操作部を備え、更に、その運転操作部の後方には脱穀粒を一時的に貯留するグレンタンクGを装備している。
【0015】
刈取装置4は、圃場に植立する穀稈を左右に分草する分草体7,7…と、分草後の穀稈を引起し経路Kに沿って引き起す4条の殻稈穀稈引起装置8,8,8,8と、引起し後の穀稈の株元近くを切断して穀稈を刈り取る刈刃装置9と、分草後の穀稈の株元側を掻き込んで刈刃装置9を経て後方へ搬送する掻込搬送装置10と、掻込搬送後の穀稈を引き継いで揚上搬送しながら姿勢変更して脱穀装置3に受け渡し供給する揚上搬送供給装置11等を有するものである。
【0016】
刈取装置4は、刈取メインフレーム21により走行車体1に対し上下に昇降可能に装備されているものである。より詳細には、刈取メインフレーム21は、刈取懸架台22に袈設された刈取入力軸23を支点として上下に回動する構成であり、刈取昇降シリンダ24の伸縮作動により刈取装置4が昇降するようになっている。
【0017】
刈取メインフレーム21の先端には、刈取装置4の下部において左右方向に沿わせた伝動フレーム72を固定している。この伝動フレーム72から前方に向けて延出した複数の分草フレーム73の先端部(前端部)に、夫々前記分草体7,7…を取り付けている。
【0018】
穀稈引起装置8は、前後に分割可能な前後の引起しケース12,13と、この引起しケース12,13に内装された、図示しない伝動スプロケット及び張設輪に巻回されて駆動される無端の引起チェンと、この引起チェンに所定の間隔で取り付けられた引起しラグ14とを有している。引起しラグ14は、引起しチェンに伴って後斜め上方に上昇移動する際、引起しケース12,13から引起し経路K側の側方に突出して穀稈を引き起すものである。前側引起しケース12は、後側引起しケース13に対し着脱自在に取り付けできる構成としてあり、上方に引き上げると係止ロック状態が解除され前側に取り出しできるようになっている。各前側引起しケース12,12,…の前面は、上部傾斜面12uがその下側よりも傾斜の緩い(垂直面に対する上部傾斜面12u前面の傾斜角が下端側より大きく)後方傾斜姿勢となるよう屈曲形成されていて、図9に二点鎖線でオペレータの視線を示すように、着座姿勢での作業における分草位置近傍の視界が良好となり、起立姿勢での作業においては分草位置が良く見えるように構成している。符号12cはこの屈曲位置(上部傾斜面12uの下端部)を示している。
【0019】
刈刃装置9はバリカン型のものであり、刈取装置4を支持する刈取メインフレーム21の下端部から前方に突出する分草フレーム73に配設され、穀稈引起装置8で穂先側が引き起こし作用を受け、株元側が掻込搬送装置10による掻き込み作用を受けている状態の植立穀稈の株元近くを切断するように構成されている。
【0020】
刈取後の穀稈は、掻込搬送装置10により後方へ搬送されて揚上搬送供給装置11に引き渡され、揚上搬送供給装置11による揚上搬送過程で姿勢変更された後、フィードチェン3Fに引き渡され脱穀装置3に供給される。揚上搬送供給装置11としては株元側をチェンと挟持杆とで挟持し、穂先側を搬送ラグで掻き上げて搬送する公知の構成を採用することができる。
【0021】
(刈取平衡スプリング)
刈取メインフレーム21と走行車体1の間には、刈取装置4を上昇付勢する刈取平衡スプリング90を備えている。刈取装置4が圃場面の凹凸等により突上げ力を受けると、刈取平衡スプリング90の付勢力で容易に上昇する。従って、圃場面の凹凸に沿って、刈取部が昇降しながら刈取走行することが可能となる。
この平衡スプリング90の走行車体1側の端部は、走行車体1の脱穀装置側の前端部に相当する左右方向のフレーム部1fに取り付けられている。
【0022】
(掻込搬送装置)
図20及び図21には掻込搬送装置10を示している。上述の掻込搬送装置10は、引起し後の穀稈を掻込む掻込装置10aと、この掻込装置10aから穀稈を引継いで前記揚上搬送供給装置11に受け渡す中間搬送装置10bを備える。
【0023】
掻込装置10aは、前端部を穀稈引起装置8の背面側に近接させ、前端部の従動輪と後方の駆動輪とにラグベルトが掛けまわされた掻込ラグ装置80と、該掻込ラグ装置80の駆動輪と同軸で駆動される複数の掻込スターホイル82とを備え、掻込スターホイル82は、前記刈刃装置9の上方に臨んでいる。
【0024】
中間搬送装置10bの株元側の搬送装置は、切断されて掻込スターホイル82により後方に送り出された穀稈を挟持して搬送する。なお、4条刈りの刈取装置4においては、右搬送装置81Rと左搬送装置81Lとは、夫々2条分の穀稈を搬送する。
前記掻込スターホイル82のうち、左側2条分の穀稈を掻込む2つと、最も右側に位置する1つは大径に形成された大径スターホイル82bであり、最も右側に位置する大径スターホイル82bと噛合う1つは大径スターホイル82bよりも小径に形成された小径スターホイル82sである。この小径スターホイル82sは前記右搬送装置81Rの搬送経路に近接して配置されるため、右搬送装置81Rの搬送通路を確保するために小径とされている。
そして、最も右側の大径スターホイル82bと小径スターホイル82sの下面側(刈刃装置9側)には、刈刃装置9の上面に堆積する藁屑等を除去するためのスクレーパ83が設けられている。スクレーパ83の下部はゴム板83aが取り付けられており、刈刃装置9の上面の凹凸によって変形するため、凹部等、藁屑を除去しにくい部位にも作用し、効果的に除去することができる。
また、何れかのスクレーパ83(図示例では小径スターホイル82s側)をスターホイルの回転中心から偏倚させることで、スクレーパ83間への穀稈の挟み込みを防止することができる。
【0025】
(カバー体)
各穀稈引起装置8の上部は、左右横方向に長く構成されたカバー体15によって被覆される構造になっている。カバー体15は金属板により形成する他、ポリカーボネート等の樹脂により形成することも可能であり、その場合透明又は半透明にしてカバー体15越しの視認性を確保するのも好ましい。
【0026】
カバー体15は、穀稈引起装置8の引き起し経路Kに沿って上昇する引起しラグ14の上昇軌跡の上方延長線上に配置し、側面視において、前側引起しケース12の上部傾斜面12uの傾斜姿勢に沿う状態と、上昇移行する引起しラグ14における引起し経路Kの上方をカバーする状態とに、前後方向の傾斜姿勢を変更自在に構成されている。そして、このカバー体15の姿勢変更手段として、前後上下のスライド構成とすることもできるが、本実施例では図9〜図12に示されるように、左端及び右端の穀稈引起装置8の背部側に支持ステー8s,8sがそれぞれ立設されるとともに、これら支持ステー8s,8s間に左右横方向に延在するカバー体支軸16が架設され、カバー体15はこのカバー体支軸16を回動支点として上下に揺動開閉するよう揺動開閉自在に構成されている。カバー体15の上方への開側が引起し経路Kの上方をカバーする姿勢変更状態(開姿勢)であり、下方への閉側が前側引起しケース12の上部傾斜面12u前面をカバーする姿勢変更状態(閉姿勢)となる。カバー体15の開閉は、回動支点付近に設けた引張スプリング17により、カバー体支軸16の支点に対してスプリング張力方向を閉側と開側とに切り替え可能な構成になっていて、ワンタッチで揺動開閉することができる。
【0027】
分草後の穀稈は、穀稈引起装置8の引起しケース12,13から引起し経路K内に突出して上昇する引起しラグ14が株元側から穂先側にかけて作用することで引き起こされる際、引起し作用によって穀粒等が運転席5のオペレータに向かって飛散することがあるが、カバー体15を例えば穀粒等の飛散方向と交差する開姿勢に姿勢変更することにより、引起しラグ14により飛び散る穀粒等をカバー体15によって効果的に遮ることができる。
【0028】
カバー体15は、平板状のもの等、適宜の形状とすることができるが、本実施形態のように、上面カバー部15aと後面カバー部15bとからなるように側面視で略への宇型に形成されていると、上面カバー部15aの下面部で穀粒等の上方への飛散を阻止し、後面カバー部15bの下面部で穀粒等の後方上方への飛散を阻止することができ、従って、運転席5への穀粒等の飛散を確実に防止することができるようになるため好ましい。
【0029】
カバー体15は、開状態において上面カバー部15aが引起しラグ14の上昇軌跡の上方延長線と交差する配置が好ましいが、後面カバー部15bが引起しラグ14の上昇軌跡の上方延長線と交差する配置とすることも可能である。また、カバー体15を引起しラグ14の上昇軌跡の上方延長線から後方側にずらし、後述する調節体50をそのカバー範囲の前方拡大により引起しラグ14の上昇軌跡の上方延長線上に位置させる構造とすることも可能である。
【0030】
本実施形態の多条刈りコンバインのように、左右方向中間の引起装置の左右両側に引起し経路をそれぞれ有する場合、当該引起装置の下部前方の分草体により隣接条の穀稈は分離されて左右の各引起し経路に導入される。しかし、穀稈が長稈の場合等においては、隣接条の穀稈の穂先が絡んで分離されずに当該引起装置を跨いでクロスしたまま刈刃装置9により刈り取られ、後方に搬送されることがある。この際、当該引起装置の上端とカバー体15とが接触していると、当該引起装置を跨ぐクロス部分がこの接触部分に引っ掛かり後方に通過できずに詰まってしまう。また、穀稈の搬送力により穂先の絡みが無理に解けたとしても、穂先相互のしごき作用又はカバー体15と引起しケース12,13との隅部によるしごき作用により穂先の穀粒が脱粒することは避け難い。よって、左右方向中間の穀稈引起装置8(中間引起装置8c)の左右両側に引起し経路をそれぞれ有する場合、少なくとも当該穀稈引起装置8の上端とカバー体15との間に穀稈通過空間15sが確保される構造とし、この穀稈通過空間15sにより左右両側の引起し経路を繋ぐことにより、穀稈の穂先部分がクロスしていてもそのまま後方に通過する構造とするのが好ましい。
【0031】
このような穀稈通過空間15sは、カバー体15の姿勢如何によらず形成される構造とすることも可能である。その場合、カバー体15の閉状態において、カバー体15と穀稈引起装置8の隙間を形成しつつも、カバー体15の下端と穀稈引起装置8の上端部とが正面視において重合するような配置とすることが望ましい。
【0032】
また、穀稈引起装置8の上部に左右方向で複数の穀稈引起装置8にわたる引起伝動軸を設け、この引起伝動軸から各穀稈引起装置8に向けて駆動軸を分岐させて駆動するような形態においては、カバー体15の支持ステー8sは、この引起伝動軸の上部に固定する。
これによりカバー体15の支持剛性を高めることができる。
【0033】
本実施例では、各穀稈引起し装置8の左右両サイドに配置された刈取サイドカバー18,18は、上部サイドカバー18aと下部サイドカバー18bとに分割され、上部サイドカバー18aは、下部サイドカバー18bに対して上側面及び外側面上に重合し、前記カバー体15と連結により一体化され、該カバー体15と共に上下に揺動開閉可能に構成されている。刈取サイドカバー18,18と上部サイドカバー18aとは単一のカバー部材として形成しても良い。これにより、上部サイドカバー18aをハンドル代わりにして、上部サイドカバー18aとともにカバー体15を揺動させることができため、専用のハンドルを設けなくてもカバー体15の姿勢変更操作を容易に行うことができるようになる。また、本実施例では、カバー体15及び上部サイドカバー18aを上方に回動させないと、前側引起しケース12及び下部サイドカバー18bの取り外しができなくなっているため、カバー体15及び上部サイドカバー18aは、その下方への閉動によって前側引起しケース12及び下部サイドカバー18bをロックするロック機構の役目を果たす構造になっている。よって、上部サイドカバー18aの下部に重合した下部サイドカバー18bの着脱が簡単に行え、刈取部のメンテナンスも容易である。
【0034】
(調節体)
カバー体15の前端部に支軸51によって回動自在に取付けられた調節体50は、回動させて前方に張出させることによってオペレータへの穀粒等の飛散を効果的に防止できる。特に、カバー体15を穀稈引起装置8の上部穀粒等の飛散方向と交差する開姿勢に姿勢変更した状態で、調節体50をさらに前方に張出させると、飛散防止効果が高まる。
そして、この調節体50は、カバー体15の背面側に格納することが可能であり、調節体50を格納した状態でカバー体15を閉状態とすれば、調節体50が穀稈に干渉することを防止できる。
また、調節体50は先端側に折部を形成しており、この折部によって調節体50の剛性を高めることができ、折部は下方に向けて折り曲げているので、藁屑の堆積を防止できる。
【0035】
(分草ガイド)
図16から図19には、穀稈が倒伏状態で絡みあうような圃場状態で効果的に引起しを行うために、中央2条分の穀稈引起装置8の間に分草ガイド74を設けた刈取装置4の要部を示す。図16及び図17に示す分草ガイド74は、中空又は中実の断面円形の棒状部材であり、分草フレーム73における穀稈引起装置8の前側部位、又は分草体7に下端部が連結されており、上部が穀稈引起装置8の上部に固定されている。
そして、分草ガイド74は、側面視において分草フレーム73に下部連結部74bで連結された下端部から穀稈引起装置8の前面との間隔が上方へ行くに従い増加する傾斜をもって上方へ向かい(下側分草部74v)、穀稈引起装置8の高さ方向における中央部に対応する位置で屈曲し(屈曲部74c)、前述した前側引起しケース12の上部傾斜面12uの傾斜面と略同一の傾斜角度で後上がり傾斜して(上側分草部74s)、この上部傾斜面12uの屈曲位置12c近傍において、後方に向けて屈曲させ、この分草ガイド74の上端部である取付部74uが、穀稈引起装置8の上部に取付られている。なお、上記の上側分草部74sの傾斜角度は、側面視において閉状態のカバー体15とも略同一の角度である。
このように、分草ガイド74の上側分草部74sの傾斜角度を引起しケース12の上部傾斜面12uと略同一の角度に設定し、上側分草部74sと上部傾斜面12uとを連続的な傾斜に形成することで、分草ガイド74と引起しケース12の前面の交差する点において引っ掛かる虞がなく、引起しラグ14の引起し作用によって起立してくる穀稈の穂先を引起し経路内にスムーズに取り込めるため、穂先の扱きによる脱粒や稈切れを抑制することができる。また、カバー体15を開状態としている場合、引起し経路を跨いでクロスした穀稈の穂先が分草ガイド74によって分草され、クロスした穂先が上部傾斜面12uにスムーズに案内され、穀稈引起装置8とカバー体15との間を通り抜けて後方に搬送することができる。
また、図18及び図19に示すのは、異なる形態の分草ガイドを備える刈取装置4である。
この分草ガイド75は、穀稈引起装置8の上端部よりも更に上方まで延伸されている点と、延伸した上端部でカバー体15の中間部を回動自在に支持している点で前述のものと相違する。
すなわち、分草ガイド75は、側面視において分草フレーム73に下部連結部75bで連結された下端部から穀稈引起装置8の前面との間隔が上方へ行くに従い増加する傾斜をもって上方へ向かい(下側分草部75v)、穀稈引起装置8の高さ方向における中央部に対応する位置で屈曲し(屈曲部75c)、前述した前側引起しケース12の上部傾斜面12uの傾斜面と略同一の傾斜角度で後上がり傾斜して(上側分草部75s)、穀稈引起装置8のよりも後側かつ上方に至り、上側分草部75sの上端部のカバー体支持部75seにてカバー体15のカバー体支軸16を回動自在に支持している。なお、上側分草部75sにおける穀稈引起装置8の上端部近傍の部位には取付部75uを設けており、この取付部75uで穀稈引起装置8に固定される。
このように、分草ガイド75の上側分草部75sを穀稈引起装置8の上方までにわたり設けたことで、稈長が非常に長く、穀稈引起装置8の上端部よりも高い位置まで穂先部を有する穀稈の分草において、引起し経路を跨いでクロスする穀稈を確実に左右に分草し、後方の搬送装置へ移送することができる。穀稈がクロスしたまま脱穀装置3へ搬送されると、脱穀負荷が増大し、作業効率が低下したり脱穀装置内からの騒音が増大する虞があるが、絡み合った穀稈を分離することでこの問題点を解消できる。また、上側分草部75sのカバー体支持部75seでカバー体15の中間部を支持する形態を採用することでカバー体15の剛性が高まり、穀稈引起装置8の上方を通過する穀稈がこのカバー体15に干渉しても変形しにくくなるという利点もある。
【0036】
(補助引起装置)
図14から図15には、穀稈が倒伏状態で絡みあうような圃場状態で効果的に引起しを行うために、穀稈引起装置8の前方位置に補助引起装置60を設けた刈取装置4の要部を示している。この補助引起装置60は、補助引起しラグ62を前方に突出させながら倒伏状態で絡みあう穀稈に対して左右に分割しながら引起し回動するものであり、補助引起しケース61と、この補助引起しケース61に内装された、駆動スプロケット64B及び張設輪65に巻回されて駆動される無端の補助引起チェン66と、この補助引起チェン66に所定の間隔で取り付けられた補助引起しラグ62とを有している。
そして、補助引起装置60は、上下中間部位を駆動ケース63によって穀稈引起装置8と連結され、下部は分草フレーム73に連結されて固定されている。
この駆動ケース63には図示せぬ穀稈引起装置8を駆動する引起駆動軸70と一体回転する伝達軸を備えており、この伝達軸の補助引起装置60側端部のベベルギアと、機体左右方向に沿う中間軸63Aのベベルギア63Bとが噛合わされている。中間軸63Aのベベルギア63Bとは反対側の端部には中間スプロケット63Cを有する。なお、中間スプロケット63Cは、補助引起しケース61における駆動ケース63とは反対側に膨出した膨出部61Aの内側に臨んでいる。そして中間スプロケット63Cと、補助引起装置60の上部に位置する従動スプロケット64Aとに掛け回されたチェンによって、中間軸63Aに入力された駆動力を、前述の駆動スプロケット64Bを有するデバイダ駆動軸64へ伝達する。なお、補助引起装置60の下部の張設輪65は、常時補助引起しチェン66に張力を与えるように、下方に向けて付勢されている。
そして、補助引起装置60の補助引起チェン66の移動速度は、穀稈引起装置8の引起しチェンの移動速度よりも高速に設定している。
このように、補助引起装置60は穀稈引起装置8の引起駆動軸70よりも上方であって引起装置8の上端部よりも上方に配置した駆動スプロケット64Bに補助引起しチェン66が巻き掛けられており、これに取り付けられた補助引起しラグ62も駆動スプロケット64Bの高さまで上昇しながら分草する。従って、従来の補助引起装置は、補助引起しラグの作用域の上端部が穀稈引起装置の駆動スプロケットと略同等の高さであったために、稈長の長い穀稈の分草性が低く、穂先が絡まったまま後方に搬送されて脱穀装置の処理効率が低下する問題があったが、上記構成によって分草性能が向上し、長稈の倒伏圃場等、穀稈の分草が困難な場合でも確実に分草することができ、穀稈引起装置や搬送装置における詰まりを防止し、脱穀効率を向上させることができる。
また、補助引起装置60の補助引起チェン66の移動速度は、穀稈引起装置8の引起しチェンの移動速度よりも高速に設定しているため、倒伏した穀稈を効率的に引起すことができる。
【符号の説明】
【0037】
7 分草体
8 穀稈引起装置
8c 中間引起装置
12c 下端部(屈曲位置)
12u 上部傾斜面
14 引起しラグ
15 カバー体
15s 穀稈通過空間
16 カバー体支軸
50 調節体
51 支軸
74 分草ガイド
74s 上側分草部
75 分草ガイド
75s 上側分草部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植立穀稈を分草する分草体(7)と、分草体(7)によって分草された穀稈を引起す後上がり傾斜姿勢の穀稈引起装置(8)とを備える刈取装置において、
該穀稈引起装置(8)の上部には、穀稈引起装置(8)の傾斜角度よりも緩やかに後上がり傾斜する上部傾斜面(12u)を形成し、
前記分草体(7)から上方に向けて延出した分草ガイド(74,75)を設け、該分草ガイド(74,75)の上部には、前記上部傾斜面(12u)の下端部(12c)に向けて、上部傾斜面(12u)と連続する上側分草部(74s,75s)を形成したことを特徴とする刈取装置。
【請求項2】
前記穀稈引起装置(8)の上方に、該穀稈引起装置(8)の引起し経路(K)の上方を覆うカバー体(15)を設け、該カバー体(15)は、前記上部傾斜面(12u)の傾斜に沿う閉状態と、この閉状態よりも上方に回動した姿勢の開状態とに切換自在に構成した請求項1記載の刈取装置。
【請求項3】
前記カバー体(15)は、左右両端部の穀稈引起装置(8)の上部に左右方向のカバー体支軸(16)まわりに回動自在に支持し、
前記分草ガイド(74)は、前記引起しラグ(14)が突出しない非引起し作用側を対向させて配置した2つの中間引起装置(8c)の間に設け、
前記カバー体(15)を開状態に変更した場合に、中間引起装置(8c)の上端部と前記カバー体(15)との間に穀稈通過空間(15s)が形成される構成とした請求項2記載の刈取装置。
【請求項4】
前記カバー体(15)は、左右両端部の穀稈引起装置(8)の上部に左右方向のカバー体支軸(16)まわりに回動自在に支持し、
前記分草ガイド(74)は、前記引起しラグ(14)が突出しない非引起し作用側を対向させて配置した2つの中間引起装置(8c)の間に設け、
分草ガイド(75)の上側分草部(75s)を中央引起装置(8c)の上端部よりも上方に延伸させ、該上側分草部(75s)の上端部に前記カバー体支軸(16)を回動自在に支持した請求項2記載の刈取装置。
【請求項5】
前記カバー体(15)の前端部に左右方向の支軸(51)まわりに回動自在に支持した調節体(50)を設けた請求項2又は請求項3又は請求項4記載の刈取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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