説明

列車内サービスシステム

【課題】既存の設備を利用して列車内で乗務員を呼び出すシステムを構築する。
【解決手段】サーバ10からの音楽データはグリーン車200においてデジタル回線50を介して座席の端末装置12に供給される。また、普通車100においてFMトランスミッタ14でFM変調されて放送される。端末装置12に乗務員呼び出しのボタンを設け、デジタル回線50を介して乗務員の呼び出しデータをサーバ10に送信する。サーバ10は呼び出しデータをFMトランスミッタ14に供給し、呼び出しデータをFM放送して乗務員の携帯する端末装置16で受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は列車内サービスシステムに関し、特に列車内の乗客から乗務員を呼び出すサービスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、列車や旅客機等において乗務員を呼び出すシステムが知られている。例えば、下記に示す特許文献1では、各座席に専用サービス端末を設置するとともに、乗務員に乗務員用ハンディ端末を携帯させ、無線回線を介して専用サービス端末と乗務員ハンディ端末との間で通信を行うことにより、商品メニューの表示と受注及び検札を行えるようにするシステムが開示されている。また、特許文献2には、座席に設置されている表示器をみながら希望する注文を選択すると、通信回線を介してサービス乗務員が常駐する場所に設置されている表示器に注文情報と座席番号が表示されるようにするシステムが開示されている。さらに、特許文献3には、乗客が所有する携帯電話を用いて商品の注文を行うシステムが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−269964号公報
【特許文献2】特開2001−357102号公報
【特許文献3】特開2002−215914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術はいずれも新たな専用サービス端末や伝送路を設置する必要があり、コストアップを招く問題がある。
【0005】
本発明の目的は、既存の設備を有効に活用しつつ、乗客が任意のタイミングで乗務員を容易に呼び出すことができるシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、音楽再生機を含むサーバと、前記サーバからの音楽信号をFM変調して放送する放送手段と、前記サーバからの音楽信号をデジタル信号として伝送する伝送手段と、乗客の座席に設けられ、伝送されたデジタル信号を再生して出力する座席端末とを有する列車内サービスシステムであって、前記座席端末に、前記伝送手段を介して前記乗客から乗務員に対するリクエストデータを前記サーバに送信する送信手段を設け、前記サーバは、前記リクエストデータを前記放送手段に送信し、前記放送手段は、前記サーバからの前記リクエストデータをFM変調して放送することを特徴とする。
【0007】
本発明において、前記リクエストデータは、前記座席を特定するデータが含まれていてもよい。
【0008】
また、本発明において、前記座席端末は、予め設定された複数の受信チャンネルを有し、前記送信手段は、前記複数の受信チャネルのうち音楽信号を受信するチャンネル以外の残存チャンネルを用いて前記リクエストデータを前記サーバに送信することが好適である。
【0009】
また、本発明において、前記送信手段は、複数種類の乗務員が存在する場合に、乗務員の種類毎に前記残存チャンネル内の異なるチャンネルを用いて前記リクエストデータを前記サーバに送信し、前記放送手段は、乗務員の種類毎に異なる周波数で放送してもよい。
【0010】
本発明において、乗務員は、放送手段から放送されるリクエストデータを、受信周波数を変更可能な携帯型の受信手段で受信することが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、既存の設備を有効に活用しつつ、乗客が任意のタイミングで乗務員を容易に呼び出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について、新幹線を例にとり説明する。
【0013】
図1に、新幹線内のシステム構成図を示す。音楽再生機を含むサーバ10が所定の車両、具体的にはグリーン車200に設けられる。サーバ10は、音楽再生機から音楽データをデジタル信号としてデジタル回線50を介してグリーン車200の座席に設けられた端末装置(座席端末あるいはオーディオ端末)12に供給する。音楽データは複数チャンネルで端末装置12に供給され、現状では8チャンネルのうちの第1チャネル〜第5チャンネルがオーディオチャンネルとして割り当てられている。乗客は、イヤホンを端末装置12の出力端子に接続し、第1チャンネル〜第5チャンネルのいずれかのチャンネルを選択することで所望の音楽を楽しむことができる。
【0014】
一方、グリーン車以外の普通車100は、FMトランスミッタ14を有する。FMトランスミッタ14は、サーバ10の音楽再生機からの音楽データをFM変調して車両内に放送する。乗客は、FMラジオやFMラジオを受信できる携帯電話等でFM放送を受信し音楽を楽しむことができる。
【0015】
このように、現状のシステムは、サーバ10からの音楽データをデジタル回線50で伝送する経路と、FM変調して放送する経路の2つの経路を有しており、しかも、端末装置12に用意された8チャンネルのうち、第1チャンネル〜第5チャンネルのみをオーディオチャンネルに割り当て、残りの3つのチャンネルは使用されていない。本実施形態ではこれらの点に着目し、既存のサーバ10、デジタル回線50、端末装置12、FMトランスミッタ14を用いてグリーン車200にいる乗客から乗務員を呼び出すことができるシステムを構築するものである。
【0016】
すなわち、デジタル回線50を双方向通信回線とし、サーバ10から音楽データを端末装置12に送信するだけでなく、端末装置12から乗客のリクエストデータをサーバ10に送信する。端末装置12に乗務員呼び出し用のボタンを設け、乗員のボタン操作によりリクエストデータをデジタル信号としてサーバ10に送信する。リクエストデータは、使用されていない3チャンネルのうちのいずれかのチャンネルを使用すればよい。リクエストデータにはボタンが操作された座席を特定する番号を付加するのが望ましい。呼び出し操作を行った乗客の座席を特定するためである。また、未使用の3チャンネルをそれぞれ呼び出すべき乗務員に割り当てることもできる。例えば、未使用の3チャンネルを第6チャンネル〜第8チャンネルとすると、第6チャンネルを車掌呼び出し、第7チャンネルをアテンダント呼び出し、第8チャンネルをワゴンサービス等の販売員呼び出しに割り当てる等である。乗客は、例えば販売員を呼び出す場合、端末装置12を操作して第8チャンネルを選択し、乗務員呼び出しボタンを操作する。
【0017】
端末装置12からのリクエストデータ(座席番号を含む)はデジタル回線50を介してサーバ10に供給される。サーバ10は、リクエストデータをFMトランスミッタ14に供給する。FMトランスミッタ14は、音楽データの周波数と異なる周波数でリクエストデータをFM変調して放送する。FM放送されたリクエストデータは、乗務員が携帯する端末装置(FMレシーバ)16で受信される。端末装置16は、受信したリクエストデータを音声あるいは振動あるいは表示器への表示により出力する。リクエストデータには座席番号も含まれているから、表示器に表示する場合にはその座席番号も表示するのが望ましい。乗務員毎に受信できる周波数を割り当て、乗務員毎に異なる周波数でリクエストデータを変調して放送する場合、呼び出しを受けた乗務員のみがリクエストデータを受信することになる。
【0018】
以上の構成により、グリーン車200の乗客は、座席の端末装置12を操作するだけで、他の車両にいる乗務員を呼び出すことができる。乗客は、単に端末装置12を操作するだけで音声で乗務員を呼ぶ必要もないことから、特に車内アナウンス等が一切排除されるいわゆるサイレントカーの乗客にとり利点がある。また、本システムは既存のシステムに対して端末装置12に呼び出し用のボタン等の操作手段を付加し、乗務員に安価なFMレシーバを携帯させるだけですむことから、コストアップを抑制できる。
【0019】
図2に、端末装置(オーディオ端末)12の構成例を示す。音量スイッチ12a、チャンネル選択スイッチ12bに加え、乗務員呼び出しボタン12cが設けられる。乗客はチャンネル選択スイッチで呼び出すべき乗務員に対応するチャンネルを選択して乗務員呼び出しボタン12cを操作する。
【0020】
本実施形態では、座席番号を含むリクエストデータを送信しているが、リクエストデータにはリクエストの内容を含ませることもできる。例えば、予めリクエストの内容毎に番号あるいはコードを割り当てておき、乗客がチャンネルとともにこのリクエスト内容に応じた番号あるいはコードを選択して呼び出しボタン12cを操作する。乗務員の携帯するFMレシーバ16にはリクエストがあった旨、座席番号、及びリクエストの内容を示す番号あるいはコードが表示され、乗務員はリクエスト内容(例えば飲み物の要求など)を知ることができる。
【0021】
また、本実施形態では、乗客が乗務員を呼び出す場合について説明したが、図1に示すシステムを用いて乗務員同士の呼び出しを行うことも可能である。すなわち、サーバ10から呼び出すべき乗務員の周波数で放送して呼び出す等である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態のシステム構成図である。
【図2】端末装置の外観図である。
【符号の説明】
【0023】
10 サーバ、12 端末装置(オーディオ端末)、14 FMトランスミッタ、16 端末装置(携帯端末)、50 デジタル回線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音楽再生機を含むサーバと、
前記サーバからの音楽信号をFM変調して放送する放送手段と、
前記サーバからの音楽信号をデジタル信号として伝送する伝送手段と、
乗客の座席に設けられ、伝送されたデジタル信号を再生して出力する座席端末と、
を有する列車内サービスシステムであって、
前記座席端末に、前記伝送手段を介して前記乗客から乗務員に対するリクエストデータを前記サーバに送信する送信手段を設け、
前記サーバは、前記リクエストデータを前記放送手段に送信し、
前記放送手段は、前記サーバからの前記リクエストデータをFM変調して放送することを特徴とする列車内サービスシステム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記リクエストデータは、前記座席を特定するデータが含まれることを特徴とする列車内サービスシステム。
【請求項3】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記座席端末は、予め設定された複数の受信チャンネルを有し、
前記送信手段は、前記複数の受信チャネルのうち音楽信号を受信するチャンネル以外の残存チャンネルを用いて前記リクエストデータを前記サーバに送信する
ことを特徴とする列車内サービスシステム。
【請求項4】
請求項3記載のシステムにおいて、
前記送信手段は、複数種類の乗務員が存在する場合に、乗務員の種類毎に前記残存チャンネル内の異なるチャンネルを用いて前記リクエストデータを前記サーバに送信し、
前記放送手段は、乗務員の種類毎に異なる周波数で放送することを特徴とする列車内サービスシステム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のシステムにおいて、
前記乗務員は、前記放送手段から放送されるリクエストデータを、受信周波数を変更可能な携帯型の受信手段で受信することを特徴とする列車内サービスシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−118109(P2009−118109A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288073(P2007−288073)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】