剥離フィルムおよびグリーンシートの製造方法
【課題】帯電およびブロッキングを防止することのできる剥離フィルム、および剥離フィルムの帯電およびブロッキングを防止することのできるグリーンシートの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の剥離フィルムは、帯状の基材と、前記基材上に設けられ、主として剥離剤で構成された剥離層とを有する剥離フィルムであって、剥離フィルムの幅方向の少なくとも一方の端部付近に剥離フィルムの長手方向に沿って設けられた剥離フィルムを除電する除電層とを有することを特徴とする。
【解決手段】本発明の剥離フィルムは、帯状の基材と、前記基材上に設けられ、主として剥離剤で構成された剥離層とを有する剥離フィルムであって、剥離フィルムの幅方向の少なくとも一方の端部付近に剥離フィルムの長手方向に沿って設けられた剥離フィルムを除電する除電層とを有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は剥離フィルムおよびグリーンシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路基板の製造に用いられるセラミックグリーンシート(グリーンシート)は、一般に、剥離フィルム上に、セラミックス粒子とバインダー樹脂とが有機溶剤に分散、溶解したグリーンスラリーを塗工し、塗工物を乾燥することにより製造される。このような方法では、均一な厚みのグリーンシートを効率よく製造することができる。また、こうして製造されたグリーンシートは、剥離フィルムから剥離して、電子回路基板の製造に用いられる。
【0003】
上記のようなグリーンシートの製造方法において、剥離フィルムは、通常、帯状をなしている。このため、グリーンシート製造時においては、剥離シートおよびグリーンシートは、必要に応じて、適宜、ロール状に巻かれた巻きの状態で保管、輸送される。しかしながら、従来の剥離シートを用いたグリーンシートの製造方法では、以下のような問題があった。
【0004】
すなわち、剥離フィルムの巻きから剥離フィルムを繰り出す際に静電気が発生する。また、剥離フィルム上にグリーンスラリーを塗工し、グリーンシートを成形した後、剥離フィルムからグリーンシートを剥離する際に、静電気が発生する。このような場合、グリーンシートや剥離フィルムに埃が付着してしまう。この結果、製造されたグリーンシートに、この埃を基点とした欠点が生じてしまう。また、このような静電気が発生すると、巻きからの剥離フィルムの繰り出しが安定したものとならない問題があった。
【0005】
そこで、剥離フィルムとして、発生した静電気を除去するための帯電防止層を、基材の塗工面とは反対側の面に設けたものを用いる試みがある(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、帯電防止層に含まれる成分がグリーンシートに付着、浸透することによりグリーンシートが汚染される問題があった。また、このような帯電防止層は、基材の主面の全面に設けられているものである。また、従来の帯電防止層は、隣り合う層と比較的ブロッキングを起こしやすいものである。このため、グリーンシートが形成された剥離フィルムの巻きから剥離フィルムを繰り出す際において、剥離フィルムを安定して繰り出すことが難しくなる問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2003−203821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、帯電およびブロッキングを防止することのできる剥離フィルム、および剥離フィルムの帯電およびブロッキングを防止することのできるグリーンシートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(13)の本発明により達成される。
(1) 帯状の基材と、
前記基材上に設けられ、主として剥離剤で構成された剥離層とを有する剥離フィルムであって、
前記剥離フィルムの幅方向の少なくとも一方の端部付近に前記剥離フィルムの長手方向に沿って設けられた前記剥離フィルムを除電する除電層を有することを特徴とする剥離フィルム。
【0009】
(2) 剥離フィルムは、前記除電層と外部の除電手段とが接触することにより、除電されるものである上記(1)に記載の剥離フィルム。
【0010】
(3) 前記除電層は、前記基材の、剥離層と同じ面側に設けられているものである上記(1)または(2)に記載の剥離フィルム。
【0011】
(4) 剥離フィルムを平面視した場合における剥離フィルムの面積に対する除電層の面積の割合は、3〜30%である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の剥離フィルム。
【0012】
(5) 前記除電層は、導電性粒子を含むものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の剥離フィルム。
【0013】
(6) 前記導電性粒子は、カーボンナノファイバーである上記(5)に記載の剥離フィルム。
【0014】
(7) 前記除電層は、導電性高分子材料を含むものである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の剥離フィルム。
【0015】
(8)剥離フィルムは、グリーンシートと接合して用いられるものである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の剥離フィルム。
【0016】
(9) 前記除電層は、剥離層上に形成される前記グリーンシートと接触する領域に設けられている上記(8)に記載の剥離フィルム。
【0017】
(10) 剥離フィルム上に、セラミックス粒子とバインダーとを含むグリーンシート材料を付与し、グリーンシート前駆体を形成するグリーンシート材料付与工程と、
前記グリーンシート前駆体を固化する固化工程とを有し、
前記剥離フィルムは、帯状の基材と、前記基材上に設けられ、主として剥離剤で構成された剥離層と、前記剥離フィルムの幅方向の少なくとも一方の端部付近に前記剥離フィルムの長手方向に沿って設けられた前記剥離フィルムを除電する除電層とを有することを特徴とするグリーンシートの製造方法。
【0018】
(11) 前記除電層と外部の除電手段とが接触することにより、前記剥離フィルムを除電する上記(10)に記載のグリーンシートの製造方法。
【0019】
(12) 前記グリーンシート材料付与工程では、前記グリーンシート材料を前記剥離フィルムに付与する際に前記剥離フィルムの除電を行う上記(10)または(11)に記載のグリーンシートの製造方法。
【0020】
(13) 前記グリーンシート付与工程では、前記グリーンシート前駆体を、前記除電層と接するように形成する上記(10)ないし(12)のいずれかに記載のグリーンシートの製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、帯電およびブロッキングを防止することのできる剥離フィルム、および剥離フィルムの帯電およびブロッキングを防止することのできるグリーンシートの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明について説明する。
[第1実施形態]
≪剥離フィルム≫
剥離フィルムは、グリーンシートの製造に用いられるものであり、一般に、剥離フィルム上にグリーンシートの材料を含む塗工液(グリーンスラリー)を塗工し、固化させることでグリーンシートが形成される。
【0023】
図1は、本発明の第1実施形態に係る剥離フィルムの横断面図、図2には、図1に示す剥離フィルムの平面図である。図3は、図1に示す剥離フィルムをロール状に巻いた状態の巻きの一部を示す横断面図、図4は、図3の巻きから剥離フィルムを繰り出すときの縦断面図、図5は、グリーンシートが形成された図1に示す剥離フィルムをロール状に巻いた状態の巻きの一部を示す横断面図、図6は、図5の巻きから剥離フィルムを繰り出すときの縦断面図である。
【0024】
図1、図2に示すように、剥離フィルム1は、基材11と、基材11上に設けられた剥離層12と、剥離層12上に設けられ、剥離フィルム1の幅方向の両方の端部に剥離フィルム1の長手方向に沿って設けられた除電層13とを有している。また、後述するようなグリーンシートの製造方法において、グリーンシートの材料は、剥離層12上のグリーンシート形成領域14に付与され、グリーンシート20が剥離層12上に接合した状態で形成される。
【0025】
このように除電層を設けることにより、以下のような効果が得られる。
図3に示すように、剥離フィルム1をロール状に巻いた巻き30において、各剥離フィルム1は、基材11と隣り合う剥離フィルムの除電層13とが接するように積層されている。
【0026】
このため、図4に示すように、巻き30から剥離フィルム1を繰り出す際において、巻き30と剥離フィルム1とが分かれる部位(剥離する部位)に除電層13が存在することができ、当該部分に生じた電気(特に静電気)を好適に除電することができる。
【0027】
また、図5に示すように、グリーンシート20が形成された剥離フィルム1をロール状に巻いた巻き40において、グリーンシート20の中央部は、剥離層12および隣り合う剥離フィルム1の基材11と接触している。このため、グリーンシート20の大部分は除電層13と接触しないものとなり、除電層13とグリーンシート20が接触することによるグリーンシート20の汚染が防止される。また、図6に示すように巻き40から剥離フィルム1およびグリーンシート20を繰り出す際において、グリーンシート20と巻き40との間でブロッキングが起きることを防止することができる。
【0028】
一方で、剥離フィルム1上のグリーンシート20の端部は、除電層13と接している。このため、図6に示すように、剥離フィルム1からグリーンシート20を剥離する際に、グリーンシート20と剥離フィルム1とが分かれる部位(剥離する部位)に除電層13が存在することができ、当該部分に生じた電気(特に静電気)を好適に除電することができる。
【0029】
以下、本実施形態に係る剥離フィルム1を構成する各層について詳細に説明する。
<基材>
基材11は、帯状のシートであり、剥離フィルム1に、剛性、柔軟性等の物理的強度を付与する機能を有している。
【0030】
また、基材11は、いかなるもので構成されていてもよいが、主として樹脂材料によって構成されることが好ましい。これにより、基材11は、引裂きや破断に対する十分な耐性を有するとともに、十分な可撓性を有することができる。
【0031】
基材11に用いることのできる樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、フッ素樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィン樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
この中でも、樹脂材料として、ポリエステルを用いることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートを用いることが特に好ましい。
【0033】
この基材11の厚さは、特に限定されないが、10〜150μmであるのが好ましく、20〜120μmであるのがより好ましい。これにより、剥離フィルム1の柔軟性を適度なものとしつつ、剥離フィルムの引裂きや破断に対する耐性を特に優れたものとすることができる。
【0034】
<剥離層>
剥離層12は、基材11上に設けられている。
剥離層12は、剥離フィルム1の剥離性を向上させる機能を有する。
【0035】
また、後述するようなグリーンシートの製造方法において、グリーンシートは、剥離フィルム1の剥離層12上に設けられるものである。
【0036】
剥離層12は、主として剥離剤によって構成されている。
剥離層12に用いることのできる剥離剤としては、特には限定されないが、シリコーン樹脂で構成されたシリコーン系剥離剤;ポリビニルカーバメートや、アルキル尿素誘導体等の長鎖アルキル基を含有する化合物で構成された長鎖アルキル基含有化合物系剥離剤;不転化性アルキド樹脂、転化性アルキド樹脂等のアルキド樹脂で構成されたアルキド樹脂系剥離剤;高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低蜜度ポリエチレン等のポリエチレン、アイソタクチック構造又はシンジオタクチック構造を有するプロピレン単独重合体や、プロピレン−α−オレフィン共重合体等の結晶性ポリプロピレン樹脂等のオレフィン樹脂で構成されたオレフィン樹脂系剥離剤;天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、メチルメタクリレート−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどの合成ゴム等のゴムで構成されたゴム系剥離剤;(メタ)アクリル酸エステル系共重合体等のアクリル樹脂で構成されたアクリル樹脂系剥離剤等の各種剥離剤が挙げられ、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0037】
上述した中でも、剥離層12を構成する剥離剤としてシリコーン系剥離剤を用いた場合、グリーンシートの剥離層12からの剥離性を特に優れたものとすることがすることができる。このため、剥離層12からグリーンシートを剥離する際にブロッキングが起こることを確実に防止することができるとともに、剥離層12とグリーンシートとの間で静電気が発生しにくいものとなる。また、剥離フィルム1を複数枚積層した場合において、隣接する剥離フィルム1同士が特に容易に剥離できるものとなる。このため、剥離フィルム1の巻きから剥離フィルム1を繰り出す際に、ブロッキングが確実に防止されるものとなるとともに、静電気が発生しにくいものとなる。
【0038】
シリコーン系剥離剤は、シリコーン樹脂を主として含むシリコーン系剥離剤組成物を硬化させることにより得られる。
【0039】
シリコーン系剥離剤組成物に用いることのできるシリコーン樹脂は、剥離層12を形成することのできるものであればよく、例えば、付加反応型、縮合反応型のシリコーン樹脂を用いることができる。このようなシリコーン樹脂は、剥離層12の形成時において、熱、光等のエネルギーが加えられることにより、重合反応することができる。この結果、シリコーン系剥離剤組成物が好適に硬化して剥離層12が形成される。中でも、付加反応型のシリコーン樹脂を用いることが好ましい。
【0040】
付加反応型のシリコーン樹脂としては、シリコーン系剥離剤組成物の硬化時に付加反応することのできるシリコーン樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ビニル基を有するポリジメチルシロキサン、ヘキセニル基を有するポリジメチルシロキサン等のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンを用いることができる。
【0041】
また、シリコーン樹脂としては、上述したような付加反応型、縮合反応型のシリコーン樹脂に加え、重合反応に寄与しないシリコーン樹脂を含むものであってもよい。このようなシリコーン樹脂を含むことにより、剥離層12は特に剥離性に優れたものとなる。特に、このように重合反応に寄与するシリコーン樹脂と、寄与しないシリコーン樹脂とを同時に用いることにより、シリコーン樹脂の剥離層12からの流出を防止し、剥離層12の表面強度を特に優れたものとしつつ、剥離層12の剥離性を特に優れたものとすることができる。
【0042】
このような重合反応に寄与しないシリコーン樹脂としては、例えば、分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基及び水素原子を有しないポリオルガノシロキサン、具体的には、トリメチルシロキシ基末端封鎖ポリジメチルシロキサン、ジメチルフェニルシロキシ基末端封鎖ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン樹脂が挙げられる。
【0043】
また、シリコーン系剥離剤組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。このような架橋剤によってシリコーン樹脂が架橋されることにより、シリコーン樹脂が剥離層12からグリーンシートへ浸透することが防止され、グリーンシートが汚染されることが確実に防止される。また、剥離層12の表面強度を特に優れたものとすることができるとともに、基材11と剥離層12との密着性が特に優れたものとなる。
【0044】
架橋剤としては、例えば、単量体中にSi−H結合を有するポリオルガノシロキサン、具体的には、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、ポリ(ハイドロジェンシルセスキオキサン)等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
シリコーン系剥離剤組成物における架橋剤は、シリコーン樹脂:100重量部に対し、0.1〜100重量部含まれることが好ましく、0.3〜50重量部含まれることがより好ましい。
【0046】
また、シリコーン系剥離剤組成物は、上述したような成分に加え、他の成分を含んでいてもよい。例えば、シリコーン系剥離剤組成物は、密着向上剤、重合開始剤、安定剤、シリカ、染料、顔料等を含むものであってもよい。
【0047】
密着向上剤は、剥離層12と隣接する層(基材11、除電層13)との密着性を向上させる成分である。このような密着向上剤としては、例えば、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3 −グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0048】
安定剤は、シリコーン系剥離剤組成物の保管時における、シリコーン樹脂の重合反応(硬化)を防止するための成分である。このような安定剤としては、例えば、3,5−ジメチル−1−ヘキセン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、テトラビニルシロキサン環状体、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0049】
重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、α−ジケトン類、α−ジケトンジアルキルアセタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。
【0050】
この剥離層12の厚さは、特に限定されないが、0.01〜3μmであるのが好ましく、0.03〜1μmであるのがより好ましい。
【0051】
<除電層>
除電層13は、導電性を有し、剥離フィルム1に生じた電気を除去する機能を有する層である。
【0052】
本実施形態において、除電層13は、剥離層12上の剥離フィルム1の幅方向の両方の端部に設けられている。また、除電層13は、剥離フィルム1の長手方向に沿って設けられている。言い換えると、剥離フィルム1には、その幅方向の中央付近に剥離層12が露出するように除電層13が設けられている。また、その露出した剥離層12上は、グリーンシート20が形成されるグリーンシート形成領域14となっている。
【0053】
このように、除電層13を、剥離フィルム1の端部に設けることにより、剥離フィルム1上に設けられるグリーンシート20が、除電層13と接触する部分が十分に少ないものとなる。この結果、除電層13に含まれる導電性の成分等がグリーンシート20に付着することが防止される。
【0054】
また、除電層13は、剥離層12上に形成されるグリーンシート20と接触する領域に設けられている。このように、形成されたグリーンシート20と除電層13とが接触することにより、グリーンシート20に発生した電気をより確実に除去することができる。
【0055】
なお、グリーンシート20は、グリーンシート20の剥離フィルム1からの剥離後に、グリーンシート20の除電層13と接触した部分(端部)をグリーンシート20から切り取ってもよい。これにより、除電層13の成分がより確実に付着していないものとなる。
【0056】
特に、本実施形態では、除電層13は、剥離層12上に設けられている。このため、形成されたグリーンシート20と除電層13とは、グリーンシート20が剥離フィルム1から剥離されるまで、常に接触しているものとなる。これにより、グリーンシート20は、より帯電しにくいものとなり、グリーンシート20に埃等の汚れが付着することがより確実に防止される。
【0057】
剥離フィルム1を平面視した場合における剥離フィルム1の面積に対する除電層13の面積の割合は、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがより好ましい。これにより、剥離フィルム1に生じる電気をより確実に除去することができるとともに、比較的広い領域に、グリーンシート20を形成することができる。
【0058】
また、剥離フィルム1を平面視した場合における前記除電層13の幅は、3〜150mmであることが好ましく、10〜100mmであることがより好ましい。これにより、後述するような外部の除電手段50A、50Bがより容易に除電層13に接触できるものとなり、剥離フィルム1およびグリーンシート20に生じた電気をより効率よく除去することができる。
【0059】
また、除電層13の厚さは、0.01〜3.0μmであることが好ましく、0.03〜1.0μmであることがより好ましく、0.05〜0.30μmであることがさらに好ましい。このように、所定以上の厚さとすることで、除電層13の除電性能を高いものとすることができる。また、除電層13の厚さを上記のように比較的薄いものとすることにより、除電層13によって形成される凸部を目立たないものとすることができる。このため、巻き30に、しわやたるみが発生することが防止される。この結果、グリーンシート20製造時において、巻き30に存在するしわやたるみから、剥離フィルム1の繰り出しに不具合が生じたり、後述するような外部の除電手段50A、50Bと除電層13とが接触しにくいものとなることがより確実に防止される。
【0060】
除電層13の表面抵抗率は、1013Ω/□以下であることが好ましく、1010Ω/□以下であることがより好ましい。
【0061】
また、本実施形態において、除電層13は、硬化性樹脂と、硬化性樹脂中に分散した導電性を有する導電性粒子とによって構成される。このように導電性粒子を用いることにより、除電層13は、確実に高い導電性が付与される。また、後述するような製造方法において、このような材料を用いた場合、除電層13を、所望の形状で、効率よく形成することができる。
【0062】
除電層13に用いることのできる導電性粒子としては、特には限定されないが、例えば、金、銀、銅、ニッケル、チタン等の金属および金属酸化物等の金属系導電性粒子;グラファイトがプレート状に積層して繊維を形成したカーボンナノファイバー、グラファイトの1枚面を巻いて円筒状にした形状を有するカーボンナノチューブ等のカーボンナノファイバー、カーボンブラック、炭素繊維、黒鉛、フラーレン等のカーボン系導電性粒子等が挙げられ、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0063】
この中でも、導電性粒子として、カーボン系導電性粒子を用いることが好ましく、カーボンナノファイバーを用いることがより好ましく、カーボンナノチューブを用いることがさらに好ましい。カーボン系導電性粒子は、比較的少量であっても、優れた導電性を示すことができる。このため、このようなカーボン系導電性粒子を用いた場合、除電層13を比較的薄いものした場合であっても、除電層13は、好適に導電性を有することができる。また、このため、剥離フィルム1を巻きにした場合に、しわやたるみが発生することが防止される。
【0064】
特に、カーボンナノファイバーは、微小な粒子であると共に、導電性の特に高い粒子である。このため、カーボンナノファイバーを導電性粒子として用いた場合、上述したような効果をより顕著に得ることができる。また、特にカーボンナノファイバーの中でも、カーボンナノチューブは、引張り強度や、引裂き強度等の向上に寄与できる成分である。このため、導電性粒子として、カーボンナノチューブを用いた場合、除電層13は、ひび割れ、摩耗等が少ないものとなり、安定して優れた導電性を維持できるものとなる。また、除電層13の厚さを十分に薄いものとすることができる。
【0065】
上述したように、カーボンナノチューブは、グラファイトの層を巻いて円筒状にした形状を有している。また、カーボンナノチューブは、巨大な共役二重結合系を有しており、この共役二重結合系に中にあるπ電子によって導電性が生じる。また、炭素結合のみによって円筒状の繊維を形成しているため、物理的な強度に優れている。
【0066】
また、カーボンナノチューブとしては、1層のグラファイトの層が円筒を形成した構造を持つ単層カーボンナノチューブ、2層以上のグラファイトの層がそれぞれ円筒を形成しこれらの円筒が積層された構造を持つ多層カーボンナノチューブを用いることができるが、多層カーボンナノチューブを用いることが好ましい。外側にある層と内側にある層とでそれぞれ異なる機能を付与することにより、多層カーボンナノチューブは、導電性とともに、他の機能を有することができる。例えば、多層カーボンナノチューブの外側の層については表面処理して樹脂材料と親和性の優れたものとし、内側にある層についてはグラファイトの結晶配列を維持させて導電性を持たせることにより、カーボンナノチューブは、導電性を特に優れたものとしつつ、樹脂材料への分散性を特に優れたものとすることができる。
【0067】
また、カーボンナノチューブは、その末端が開口しているものであってもよく、閉口しているものであってもよいが、開口していることが好ましい。なお、カーボンナノチューブの末端が閉口している場合、硝酸等によって処理することにより末端を開口させることができる。
【0068】
また、カーボンナノチューブの末端形状は、特には限定されず、例えば、円筒状、円錐状等の各種形状をとることができる。
【0069】
また、カーボンナノチューブの平均外径は、0.5〜120nmであることが好ましく、1.0〜80nmであることがより好ましい。これにより、カーボンナノチューブは、除電層13中に均一に分散できるととともに、カーボンナノチューブ自体の導電性を十分に高いものとすることができる。また、このような平均外形のカーボンナノチューブを用いた場合、除電層13は、十分に平滑なものとなる。
【0070】
また、カーボンナノチューブの平均長さは、0.5〜20μmであることが好ましく、0.8〜15μmであることがより好ましい。これにより、カーボンナノチューブは、除電層13中に均一に分散できるととともに、カーボンナノチューブ自体の導電性を十分に高いものとすることができる。
【0071】
また、上述したようなカーボンナノチューブは、ゼオライトの細孔に鉄やコバルト系触媒を導入した触媒化学気相成長法(CCVD法)、気相成長法(CVD法)、レーザーアブレーション法、炭素棒・炭素繊維等を用いたアーク放電法等によって製造することができる。
【0072】
また、カーボンナノチューブ中の非晶質のカーボン粒子は、20wt%以下であることが好ましい。
【0073】
また、除電層13中における導電性粒子の含有量は、0.1〜30wt%であることが好ましく、0.3〜10wt%であることがより好ましい。これにより、除電層13の導電性は特に優れたものとなる。また、導電性粒子は、除電層13中に好適に分散することができ、除電層13の平滑性、表面強度を特に優れたものとすることができる。
【0074】
また、本実施形態において、除電層13は、硬化性樹脂を含む。
硬化性樹脂は、除電層13において、上述したような導電性粒子を分散するバインダーとして機能するとともに、除電層13の形状を維持して、除電層13に物理的な強度を付与するものである。
【0075】
除電層13に用いることのできる硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、光硬化性樹脂を用いることができる。
【0076】
光硬化性樹脂は、光反応性の各種単官能性モノマー、多官能性モノマー、多官能性オリゴマーおよびこれらの混合物を主として構成される光硬化性樹脂組成物を重合、硬化させることにより得ることができる。
【0077】
光硬化性樹脂組成物に含まれる多官能性モノマーとしては、特に限定されず、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能アクリレートが挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
一方、多官能性のオリゴマーとしては、特には限定されず、例えば、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系等のラジカル重合性オリゴマー、エポキシ、オキセタン樹脂、ビニルエーテル樹脂等のカチオン重合性オリゴマー等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
ここで、エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノール樹脂やノボラック樹脂などの多価フェノール類にエピクロルヒドリンなどでエポキシ化した化合物、直鎖状オレフィン化合物や環状オレフィン化合物を過酸化物などで酸化して得られた化合物等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
光反応性の単官能性モノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドンなどが挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
また、光硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤を含むものであってもよい。光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルメタノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステルなどが挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、カチオン重合性のモノマー、オリゴマーに対する光重合開始剤としては、例えば、芳香族スルホニウムイオン、芳香族オキソスルホニウムイオン、芳香族ヨードニウムイオンなどのオニウムと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネートなどの陰イオンとからなる化合物等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
また、光硬化性樹脂組成物中において、光重合開始剤は、光反応性の各種モノマー、オリゴマーの合計量:100重量部に対して、0.2〜10重量部含まれることが好ましい。
【0083】
また、除電層13は、導電性高分子材料を含んでいてもよい。除電層13が導電性高分子材料を含むことにより、除電層13は、導電性が特に優れたものとなる。また、導電性粒子が十分に分散されていない場合であっても、このような導電性高分子材料がこれらの導電性粒子の間に存在することにより、除電層13は、導電性を有することができる。
【0084】
導電性高分子材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリジアセチレンなどのポリアセチレン系;ポリ(p−フェニレン)やポリ(m−フェニレン)などのポリ(フェニレン)系;ポリチオフェン、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリ(3−チオフェン−β−エタンスルホン酸)、ポリアルキレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホネートとの混合物などのポリチオフェン系;ポリアニリン、ポリメチルアニリン、ポリメトキシアニリンなどのポリアニリン系;ポリピロール、ポリ3−メチルピロール、ポリ3−オクチルピロールなどのポリピロール系;ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(フェニレンビニレン)系;ポリ(ビニレンスルフィド)系;ポリ(p−フェニレンスルフィド)系;ポリ(チエニレンビニレン)系化合物などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
上述した中でも、ポリアセチレン系、ポリチオフェン系、ポリアニリン系、ポリピロール系及びポリ(フェニレンビニレン)系化合物を用いた場合、除電層13は、導電性が特に優れたものとなる。
【0086】
また、除電層13中における導電性高分子材料の含有量は、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましく、0.1〜3質量%であることがさらに好ましい。これにより、除電層13の導電性を特に優れたものとすることができるとともに、除電層13の物理的強度を十分に高いものとすることができる。
【0087】
≪剥離フィルムの製造方法≫
次に、上述したような剥離フィルムの製造方法について説明する。
【0088】
まず、基材11を準備する。
基材11には、各面に対し、酸化法や凹凸化法、プライマー処理等の表面処理がおこなわれるものであってもよい。このような場合、例えば、基材11と、形成される剥離層12との密着性を向上させることができる。
【0089】
また、酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられる。また、凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。
【0090】
次に、基材11の一方の面に剥離層12を形成する。
剥離層12は、上述したような剥離剤またはその前駆物質を含む剥離層用塗工液を調製し、これを基材11上に付与、硬化させることにより形成できる。
【0091】
剥離層用塗工液は、例えば、剥離剤としてシリコーン系の剥離剤を用いる場合、上述したようなシリコーン系剥離剤組成物を溶剤等に分散、溶解させることにより得ることができる。
【0092】
このような溶剤としては、水、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ヘプタン等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0093】
剥離層用塗工液は、基材11上に付与できるものであれば、よく、エマルションの状態であってもよいし、溶剤を含まないものであってもよい。
【0094】
また、シリコーン系の剥離剤が、重合等の反応により硬化するものである場合、触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば、白金族の触媒が用いられる。この白金族の触媒としては、例えば、微粒子状白金、炭素粉末担体上に吸着された微粒子状白金、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、パラジウム、ロジウム触媒等が挙げられる。触媒の使用量は、シリコーン樹脂および架橋剤の合計量に対し、1〜1000ppmであることが好ましい。
【0095】
このようにして得られた剥離層用塗工液を、基材11の一方の面に、付与する。剥離層用塗工液は、例えば、グラビアコート法、バーコート法、マルチロールコート法などにより基材11に付与(塗工)することができる。
【0096】
基材11に付与された剥離層用塗工液は、付与量(塗工量)は、固形分換算で、0.01〜3g/m2であるのが好ましく、0.03〜1g/m2であるのがより好ましい。
【0097】
基材11上に付与された剥離層用塗工液の硬化は、例えば、加熱処理や、紫外線照射処理等の光照射処理によって行うことができる。
【0098】
次に、除電層13を剥離層12上に形成する。
除電層13は、上述したような導電性粒子、硬化性樹脂組成物等を含む除電層用塗工液を剥離層12上に付与し、硬化することで形成される。
【0099】
除電層用塗工液は、溶剤に上述したような材料を溶解または分散させることにより得られる。
【0100】
除電層用塗工液に用いることのできる溶剤としては、例えばヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、エチルセロソルブなどのエーテル系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤などが挙げられる。
【0101】
このようにして得られた除電層用塗工液を、剥離層12上の必要な部分に付与する。除電層用塗工液は、例えば、グラビアコート法、ダイコート法、マルチロールコート法などにより剥離層12上の必要な部分に付与(パターンコート)することができる。
【0102】
剥離層12上に付与された除電層用塗工液は、硬化性樹脂が光硬化性樹脂である場合、例えば、紫外線、可視光線等の光線を照射することにより硬化し、除電層13が形成される。これにより、剥離フィルム1が得られる。
【0103】
除電層用塗工液に照射する光線は、例えば、紫外線の場合、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等を用いて照射することができる。
【0104】
また、除電層の硬化性樹脂が、熱硬化性樹脂である場合、加熱処理によって除電層用塗工液を硬化し、除電層13を形成するものであってもよい。
【0105】
≪グリーンシートの製造方法≫
次に、グリーンシートの製造方法について説明する。
【0106】
本実施形態のグリーンシートの製造方法は、上述したような剥離フィルム1を用いてグリーンシート20を製造するものである。
【0107】
本実施形態のグリーンシートの製造方法は、剥離フィルム1上に、セラミックス粒子とバインダーとを含むグリーンシート材料を付与してグリーンシート前駆体を形成するグリーンシート材料付与工程と、グリーンシート前駆体を固化する固化工程とを有する。
【0108】
<グリーンシート材料付与工程>
本工程では、セラミックス粒子とバインダーとを含むグリーンシート材料を剥離フィルム1上に付与し、グリーンシート前駆体を形成する。
【0109】
グリーンシート材料は、セラミックス粒子とバインダーが溶剤によって分散、溶解したスラリー(グリーンスラリー)の状態で剥離フィルム1に付与される。
【0110】
グリーンシート材料に用いることのできるセラミックス粒子としては、特に限定されず、グリーンシートの製造に用いられる公知のセラミックス粒子を用いることができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)が挙げられる。
【0111】
また、グリーンシート材料に用いることのできるバインダーとしては、特に限定されず、グリーンシートの製造に用いられる公知のバインダーを用いることができ、例えば、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、エチルセルロース等が挙げられる。
【0112】
また、グリーンスラリーに用いることのできる溶剤としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチル、キシレン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0113】
以上のようなグリーンスラリーを剥離フィルム1上に付与する。
グリーンスラリーの剥離フィルム1上への付与は、剥離フィルム1の巻きから剥離フィルム1を繰り出し、繰り出された剥離フィルム1上にグリーンスラリーを塗工することにより行うことができる。
【0114】
グリーンスラリーの塗工は、例えば、ドクターブレード法、リップコート法、ロールコート法、ダイコート法等既存の塗工方式によって行うことができる。
また、本工程では、剥離フィルム1にグリーンスラリーを付与する際に、剥離フィルム1の除電を行う。
【0115】
また、図4に示すように、剥離フィルム1の除電は、繰り出された剥離フィルム1の除電層13に対して外部の除電手段50Aを接触させることにより行う。除電手段50Aとしては、導電性を有し、接地(アース)されているものであればよく、本実施形態では、除電手段50Aは、接地されたローラである。
【0116】
このため、このように除電を行うことにより、除電層13は、生じた静電気を好適に除去することができ、繰り出された剥離フィルム1は、帯電が防止されたものとなる。この結果、剥離フィルム1は、巻きから安定して繰り出されることができる。また、剥離層12上が帯電することが防止されることにより、剥離層12上に埃が付着することが防止される。このため、塗工されたグリーンスラリーにピンホールや、ひび割れ、塗工むらが生じることが好適に防止される。
【0117】
また、グリーンスラリーは、除電層13と接するように付与されることが好ましい。すなわち、グリーンシート前駆体は、除電層13と接するように形成されることが好ましい。これにより、後述する工程において、形成されたグリーンシート20と除電層13とは、密着したものとなる。このため、形成されたグリーンシート20を剥離フィルム1から剥離する場合においても、グリーンシート20は、除電されつつ剥離される。このため、製造されるグリーンシート20に埃が付着することがより確実に防止される。
【0118】
<固化工程>
次に、剥離フィルム1上に付与されグリーンシート材料を固化させる。
これにより、グリーンシート20が得られる。
【0119】
グリーンシート材料の固化は、グリーンスラリーから溶剤を除去することにより行うことができる。
【0120】
グリーンスラリーからの溶剤の除去は、例えば、加熱、減圧乾燥によって行うことができる。
【0121】
このようにして得られたグリーンシート20は、通常、その表面にペースト状の内部電極が印刷され、剥離フィルム1から剥離され、所定の形状、大きさに裁断されることによって用いられる。
【0122】
グリーンシート20を剥離フィルム1から剥離する際には、図6に示すように、グリーンシート20が担持された剥離フィルム1の巻き40から、剥離フィルム1を繰り出した後、グリーンシート20が剥離フィルム1から剥離される。この際に、除電層13の少なくとも一部と、外部の除電手段50Bとが接触することが好ましい。これにより、剥離時に生じる電気を好適に除去することができ、グリーンシート20に埃等が付きにくいものとなる。
【0123】
また、グリーンシート20は、幅方向における端部を切断することにより、剥離フィルム1の除電層13による汚染が特に好適に防止されたものとなる。
【0124】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について図を参照して説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0125】
図7は、本発明の第2実施形態に係る剥離フィルムの横断面図、図8は、図7に示す剥離フィルムをロール状に巻いた状態の巻きの一部を示す横断面図、図9は、グリーンシートが形成された図7に示す剥離フィルムをロール状に巻いた状態の巻きの一部を示す横断面図である。
【0126】
剥離フィルム1Aは、基材11と、基材11の一方の面に設けられた剥離層12と、基材11の剥離層12とは反対側の面に設けられた除電層13aとを有している。また、グリーンシート20は、剥離層12上にあるグリーンシート形成領域14に設けられるものである。
【0127】
本実施形態では、除電層13aがグリーンシート形成領域14と反対側の面に設けられている。このため、グリーンシート製造時において、グリーンスラリーをグリーンシート形成領域14に付与してグリーンシート前駆体を形成した際に、グリーンシート前駆体と除電層13aが接触しない。このため、除電層13aの成分がグリーンシート前駆体に溶出することが確実に防止され、形成されるグリーンシート20は、除電層13aによる汚染がより確実に防止されたものとなる。
【0128】
また、図8に示すように、剥離フィルム1Aをロール状に巻いた巻き30Aにおいては、各剥離フィルム1Aは、隣り合う剥離フィルム1Aの除電層13aと接触している。このため、巻き30Aから剥離フィルム1Aを繰り出した際において、巻き30Aと剥離フィルム1Aとの剥離部分には、除電層13aが存在することができ、剥離時に発生する電気を好適に除去することができる。
【0129】
また、図9に示すように、グリーンシート20を形成した剥離フィルム1Aをロール状に巻いた巻き40Aにおいては、各グリーンシート20は、隣り合う剥離フィルム1Aの除電層13aと接触している。このため、巻き40Aから剥離フィルム1Aを繰り出した際において、巻き30Aとグリーンシート20との剥離部分には、除電層13aが存在することができ、剥離時に発生する電気を好適に除去することができる。
【0130】
以上、本発明を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0131】
例えば、図10に示すように、剥離フィルム1Bは、除電層13bが剥離層12aに埋設されているものであってもよい。このような場合、剥離フィルム1Bは、幅方向における凹凸が特に少ないものとなり、剥離フィルム1Bのシート送り、巻きからの繰り出しが特に容易なものとなる。
【0132】
また、例えば、図11に示すように、剥離フィルム1Cは、グリーンシート20が形成される面に設けられた剥離層12に加え、基材11の剥離層12とは反対側の面に、剥離層12bが設けられたものであってもよい。このような場合、グリーンシート20と、剥離フィルム1Cとの剥離が特に容易なものとなり、これらの剥離時における静電気の発生が特に抑制されたものとなる。また、特に剥離層12と剥離層12bとが同様の材料で構成されている場合、積層した剥離フィルム1C同士を剥離する際に、静電気が特に発生しにくいものとなる。
【0133】
また、例えば、図12に示すように、剥離フィルム1Dは、除電層13cが剥離フィルム1の長手方向に沿って間欠的にグリーンシート20と接触するように設けられたものであってもよい。これにより、グリーンシート20の除電層13cとの接触を特に少ないものとしつつ、剥離フィルム1、グリーンシート20の帯電を防止することができる。また、形成されるグリーンシート20をより広い面積にわたって効率よく、電子回路基板の製造に用いることができる。
【0134】
また、上述した実施形態では、除電層は、剥離フィルムの一方の面の幅方向の両端に設けられたものとして説明したが、これに限定されない。例えば、除電層は、幅方向の一方の端部のみに設けられていてもよい。また、例えば、除電層は、剥離フィルムの両面に設けられていてもよい。
【0135】
また、上述した実施形態では、除電層は、導電性粒子と硬化性樹脂とによって構成されているものとして説明したが、これに限定されない。例えば、除電層は、金属等の導電性を有する材料の薄膜によって構成されるものであってもよい。
【0136】
また、剥離フィルムの各層の間には、中間層が設けられていてもよい。
また、除電層はグリーンシートと接着され、グリーンシートを固定する機能を有していてもよい。これにより、搬送中のグリーンシートの浮き・剥がれを効果的に防止することができる。
【0137】
また、上述した実施形態では、除電手段として、ローラを用いたがこれに限定されない。除電層に接触することができ、接地されたものであれば特に限定されず、例えば、設置されたブレード等を用いることができる。また、巻きの軸が除電手段として機能するものであってもよい。
【実施例】
【0138】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
1.剥離フィルムの製造
(実施例1)
まず、剥離層用塗工液の調製を行った。
【0139】
剥離層用塗工液は、付加反応型シリコーン、信越化学社製、商品名「KS−847H」):100質量部、白金触媒、信越化学社製、商品名「CAT−PL−50T」):1重量部を溶剤としてのトルエン中に固形分が1.1質量%となるように溶解させることで調製した。
次に、この剥離層用塗工液を、基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm、幅:200mm、三菱化学ポリエステルフィルム社製、商品名「T−100」)の一方の面に、乾燥後の厚さが0.1μmとなるようにグラビアコート法にて均一に塗工し、130℃の乾燥機で1分間乾燥して剥離層を形成した。
【0140】
次に、除電層用塗工液の調製を行った。
光硬化性樹脂としてのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、N−ビニルピロリドンを重量比で45:20:10の割合で含むアクリル系モノマー:75質量部、および溶剤としての酢酸ブチル:20質量部、イソプロパノール:30質量部を含む硬化性樹脂溶液を準備した。
【0141】
また、導電性高分子材料としてのポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(PEDT/PSS)を1.3質量%含む導電性高分子水溶液を準備した。
【0142】
上述したような硬化性樹脂溶液:125質量部と、導電性高分子水溶液:15.5質量部と、光開始剤としての、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルメタノン:0.2質量部とを混合し、アクリル系モノマー及び導電性高分子材料の合計量が1質量%になるようにイソプロパノールで希釈して、混合液を得た。
【0143】
この混合液に、カーボンナノチューブの3.0質量%イソプロパノール分散液(平均直径:15nm、平均長さ:1μm、チューブ状、ジェムコ社製、商品名「CNF−T」)を、全固形分(除電層)中の含有量が1.0質量%になるように添加して、除電層用塗工液を調製した。
【0144】
次に、この除電層用塗工液を、PETフィルムの剥離層上における幅方向の両端部:10mmに、乾燥後の厚さが0.05μmとなるようにグラビアコート法にて均一に塗工した。次いで、55℃の乾燥機で1分間加熱し、直ちにフュージョンHバルブ:240W/cm、1灯取付けのコンベヤ式紫外線照射機により、コンベヤスピード:10m/分の条件で紫外線を照射して、塗工された除電層塗工液を硬化させ、除電層を形成した。
これにより、剥離フィルムが得られた。
【0145】
(実施例2〜4)
除電層に含まれる材料の種類、含有量、除電層の厚さ、幅を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを製造した。
【0146】
(実施例5)
除電層用塗工液の調製において、導電性高分子水溶液を用いず、カーボンナノチューブを、全固形分(除電層)中の含有量が5.0質量%になるように用いた以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを製造した。
【0147】
(実施例6)
ステアリル変性アルキド樹脂とメチル化メラミンとの混合物(日立化成ポリマー社製、商品名「テスファイン303」):100重量部及びp−トルエンスルホン酸:3重量部をトルエンに溶解させ、固形分濃度が2wt%の剥離層用塗工液を調製した。
【0148】
この剥離層用塗工液を剥離層の形成に用い、剥離層形成時の乾燥条件を140℃、1分間とした以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを製造した。
【0149】
(実施例7)
除電層を剥離層上には設けず、PETフィルムの剥離層が設けられた面とは反対側の面に、幅方向の両端部:10mmの除電層を設けた以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを製造した。
【0150】
(実施例8、9)
除電層に含まれる材料の種類、含有量、除電層の厚さ、幅を表1に示すように変更した以外は、前記実施例7と同様にして剥離フィルムを製造した。
【0151】
(比較例1)
除電層を形成しなかった以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを製造した。
【0152】
(比較例2)
除電層を、剥離層上には設けず、基材の剥離層とは反対側の面に全面に設けた以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを製造した。
【0153】
表1に、各実施例および各比較例の剥離フィルムについて、剥離層、除電層の構成を示す。なお、表中、「CNT」は、カーボンナノチューブ、「CNP」は、プレート状のカーボンが積層して形成されたカーボンナノファイバー(ジェムコ社製、商品名「CNF−P」)、「PEDT」は、ポリエチレンジオキシチオフェン、「PSS」は、ポリスチレンスルホネートをそれぞれ示す。
【0154】
【表1】
【0155】
2.剥離フィルムの評価
2.1 繰り出し時の帯電量
各実施例、各比較例で得られた剥離フィルムをロール状に巻き取った状態で、23℃、50%RHの条件で30日間保管後、スリッターにて100m/分で繰り出した際の剥離層上の帯電量を、静電気測定機(SIMCO社製:FMX−002)を用いて測定し、下記の評価基準に従って評価した。また、繰り出し時においては、接地したローラ(除電手段)を剥離フィルムの除電層に接触させることにより除電を行った。
【0156】
◎:帯電量が5.0kV未満。
○:帯電量が5.0kV以上、8.0kV未満。
△:帯電量が8.0kV以上、10.0kV未満。
×:帯電量が10.0kV以上。
【0157】
2.2 耐ブロッキング性評価
各実施例、各比較例で得られた剥離フィルムをロール状に巻き取った状態で、40℃条件で30日間保管後、ロール外観の目視確認および、巻き出し時の状態を確認し、下記の評価基準に従って評価した。
【0158】
◎:ブロッキングの発生が全く見られない。
○:ブロッキングがわずかに見られるが、実用上問題ない。
×:ブロッキングが顕著に見られ、剥離フィルムが正常に剥離できない。
【0159】
3.セラミックスグリーンシートの製造
チタン酸バリウム(BaTiO3)粉体:100重量部、ポリビニルブチラール:8重量部、ジオクチルフタレート:4重量部に、トルエンとエタノールとの混合液(重量比1:1):80重量部を加え、ボールミルにて混合、分散させて、グリーンスラリーを調製した。
【0160】
このスラリーを、上記各実施例および各比較例で得られた剥離フィルム上に乾燥後の厚みが5μmとなるようにドクターブレード法により均一に塗工し、グリーンシート前駆体(塗膜)を形成した。(グリーンシート材料付与工程)。このとき、巻きから繰り出される剥離フィルムについて、剥離フィルム上にスラリーが塗工される直前に、接地したローラ(除電手段)を剥離フィルムの除電層に接触させることにより除電を行った。
【0161】
この剥離フィルム上に形成されたグリーンシート前駆体を、乾燥処理して剥離フィルム上にグリーンシート(セラミックグリーンシート)を作製した(固化工程)。
【0162】
4.グリーンシートを担持した剥離フィルムの評価
4.1 繰り出し時の帯電量
グリーンシートが担持された各実施例、各比較例の剥離フィルムをロール状に巻き取った状態で、23℃、50%RHの条件で30日間保管後、スリッターにて100m/分で繰り出した際のグリーンシート上の帯電量を、静電気測定機(SIMCO社製:FMX−002)を用いて測定し、下記の評価基準に従って評価した。また、繰り出し時においては、接地したローラ(除電手段)を剥離フィルムの除電層に接触させることにより剥離フィルムの除電を行った。
【0163】
◎:帯電量が8.0kV未満。
○:帯電量が8.0kV以上、10.0kV未満。
△:帯電量が10.0kV以上、15.0kV未満。
×:帯電量が15.0kV以上。
【0164】
4.2 グリーンシート剥離時の帯電量
2.1で繰り出しを行った各実施例および各比較例のグリーンシートが担持された剥離フィルムについて、グリーンシート上に粘着テープ(日東電工(株)製、商品面「31Bテープ」)を貼り合わせた。この粘着テープ付きグリーンシートを23℃、湿度50%の条件下で24時間調湿後、60mm×70mmに裁断し、剥離帯電量測定用サンプルを作製した。引張り試験機を用いて、100m/分の速度で、180°方向に剥離フィルムを引っ張り、このときのグリーンシート面の帯電量を、静電気測定機(SIMCO社製:FMX−002)を用いて測定した。剥離フィルム面の剥離帯電量は上記と同様な条件でグリーンシート側を剥離し、剥離フィルム面の帯電量を測定し、下記の評価基準に従って評価した。また、剥離時においては、接地したローラ(除電手段)をグリーンシート剥離直後の剥離フィルムの除電層に接触させることにより剥離フィルムの除電を行った。
【0165】
◎:帯電量が8.0kV未満。
○:帯電量が8.0kV以上、10.0kV未満。
△:帯電量が10.0kV以上、15.0kV未満。
×:帯電量が15.0kV以上。
【0166】
4.3 耐ブロッキング性評価
グリーンシートが担持された各実施例、各比較例の剥離シートについて、幅方向に25mmの幅にカットして試験片を2枚作製した。2枚の試験片を一方の試験片のグリーンシート表面と、他方の試験片の剥離フィルムとが接触するように重ねた。次に、2枚重ね合わせた試験片に、1kg/cm2の荷重をかけ、40℃の環境下で24時間放置した。
【0167】
その後、2枚の試験片のうちの一方の試験片を剥離して目視にて確認し、下記の評価基準に従って評価した。
【0168】
◎:ブロッキングの発生が全く見られない。
○:ブロッキングがわずかに見られるが、実用上問題ない。
×:ブロッキングが顕著に見られ、グリーンシートが正常に剥離できない。
【0169】
【表2】
【0170】
表2から明らかなように、本発明の剥離フィルムは、繰り出し時における帯電、ブロッキングが防止されており、繰り出しが容易なものであった。また、本発明の剥離フィルムは、グリーンシートを剥離する際に帯電が発生しにくいものであった。これに対して、比較例では満足な結果が得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】本発明の第1実施形態に係る剥離フィルムの横断面図である。
【図2】図2には、図1に示す剥離フィルムの平面図である。
【図3】図3は、図1に示す剥離フィルムをロール状に巻いた状態の巻きの一部を示す横断面図である。
【図4】図4は、図3の巻きから剥離フィルムを繰り出すときの縦断面図である。
【図5】グリーンシートが形成された図1に示す剥離フィルムをロール状に巻いた状態の巻きの一部を示す横断面図である。
【図6】図5の巻きから剥離フィルムを繰り出すときの縦断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る剥離フィルムの横断面図である。
【図8】図7に示す剥離フィルムをロール状に巻いた状態の巻きの一部を示す横断面図である。
【図9】グリーンシートが形成された図7に示す剥離フィルムをロール状に巻いた状態の巻きの一部を示す横断面図である。
【図10】本発明の剥離フィルムのその他の実施形態を示す横断面図である。
【図11】本発明の剥離フィルムのその他の実施形態を示す横断面図である。
【図12】本発明の剥離フィルムのその他の実施形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0172】
1、1A、1B、1C、1D ・・・剥離フィルム
11 ・・・基材
12、12a、12b ・・・剥離層
13、13a、13b、13c ・・・除電層
14 ・・・グリーンシート形成領域
20 ・・・グリーンシート
30、30A、40、40A ・・・巻き
50A、50B ・・・除電手段
【技術分野】
【0001】
本発明は剥離フィルムおよびグリーンシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路基板の製造に用いられるセラミックグリーンシート(グリーンシート)は、一般に、剥離フィルム上に、セラミックス粒子とバインダー樹脂とが有機溶剤に分散、溶解したグリーンスラリーを塗工し、塗工物を乾燥することにより製造される。このような方法では、均一な厚みのグリーンシートを効率よく製造することができる。また、こうして製造されたグリーンシートは、剥離フィルムから剥離して、電子回路基板の製造に用いられる。
【0003】
上記のようなグリーンシートの製造方法において、剥離フィルムは、通常、帯状をなしている。このため、グリーンシート製造時においては、剥離シートおよびグリーンシートは、必要に応じて、適宜、ロール状に巻かれた巻きの状態で保管、輸送される。しかしながら、従来の剥離シートを用いたグリーンシートの製造方法では、以下のような問題があった。
【0004】
すなわち、剥離フィルムの巻きから剥離フィルムを繰り出す際に静電気が発生する。また、剥離フィルム上にグリーンスラリーを塗工し、グリーンシートを成形した後、剥離フィルムからグリーンシートを剥離する際に、静電気が発生する。このような場合、グリーンシートや剥離フィルムに埃が付着してしまう。この結果、製造されたグリーンシートに、この埃を基点とした欠点が生じてしまう。また、このような静電気が発生すると、巻きからの剥離フィルムの繰り出しが安定したものとならない問題があった。
【0005】
そこで、剥離フィルムとして、発生した静電気を除去するための帯電防止層を、基材の塗工面とは反対側の面に設けたものを用いる試みがある(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、帯電防止層に含まれる成分がグリーンシートに付着、浸透することによりグリーンシートが汚染される問題があった。また、このような帯電防止層は、基材の主面の全面に設けられているものである。また、従来の帯電防止層は、隣り合う層と比較的ブロッキングを起こしやすいものである。このため、グリーンシートが形成された剥離フィルムの巻きから剥離フィルムを繰り出す際において、剥離フィルムを安定して繰り出すことが難しくなる問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2003−203821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、帯電およびブロッキングを防止することのできる剥離フィルム、および剥離フィルムの帯電およびブロッキングを防止することのできるグリーンシートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(13)の本発明により達成される。
(1) 帯状の基材と、
前記基材上に設けられ、主として剥離剤で構成された剥離層とを有する剥離フィルムであって、
前記剥離フィルムの幅方向の少なくとも一方の端部付近に前記剥離フィルムの長手方向に沿って設けられた前記剥離フィルムを除電する除電層を有することを特徴とする剥離フィルム。
【0009】
(2) 剥離フィルムは、前記除電層と外部の除電手段とが接触することにより、除電されるものである上記(1)に記載の剥離フィルム。
【0010】
(3) 前記除電層は、前記基材の、剥離層と同じ面側に設けられているものである上記(1)または(2)に記載の剥離フィルム。
【0011】
(4) 剥離フィルムを平面視した場合における剥離フィルムの面積に対する除電層の面積の割合は、3〜30%である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の剥離フィルム。
【0012】
(5) 前記除電層は、導電性粒子を含むものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の剥離フィルム。
【0013】
(6) 前記導電性粒子は、カーボンナノファイバーである上記(5)に記載の剥離フィルム。
【0014】
(7) 前記除電層は、導電性高分子材料を含むものである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の剥離フィルム。
【0015】
(8)剥離フィルムは、グリーンシートと接合して用いられるものである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の剥離フィルム。
【0016】
(9) 前記除電層は、剥離層上に形成される前記グリーンシートと接触する領域に設けられている上記(8)に記載の剥離フィルム。
【0017】
(10) 剥離フィルム上に、セラミックス粒子とバインダーとを含むグリーンシート材料を付与し、グリーンシート前駆体を形成するグリーンシート材料付与工程と、
前記グリーンシート前駆体を固化する固化工程とを有し、
前記剥離フィルムは、帯状の基材と、前記基材上に設けられ、主として剥離剤で構成された剥離層と、前記剥離フィルムの幅方向の少なくとも一方の端部付近に前記剥離フィルムの長手方向に沿って設けられた前記剥離フィルムを除電する除電層とを有することを特徴とするグリーンシートの製造方法。
【0018】
(11) 前記除電層と外部の除電手段とが接触することにより、前記剥離フィルムを除電する上記(10)に記載のグリーンシートの製造方法。
【0019】
(12) 前記グリーンシート材料付与工程では、前記グリーンシート材料を前記剥離フィルムに付与する際に前記剥離フィルムの除電を行う上記(10)または(11)に記載のグリーンシートの製造方法。
【0020】
(13) 前記グリーンシート付与工程では、前記グリーンシート前駆体を、前記除電層と接するように形成する上記(10)ないし(12)のいずれかに記載のグリーンシートの製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、帯電およびブロッキングを防止することのできる剥離フィルム、および剥離フィルムの帯電およびブロッキングを防止することのできるグリーンシートの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明について説明する。
[第1実施形態]
≪剥離フィルム≫
剥離フィルムは、グリーンシートの製造に用いられるものであり、一般に、剥離フィルム上にグリーンシートの材料を含む塗工液(グリーンスラリー)を塗工し、固化させることでグリーンシートが形成される。
【0023】
図1は、本発明の第1実施形態に係る剥離フィルムの横断面図、図2には、図1に示す剥離フィルムの平面図である。図3は、図1に示す剥離フィルムをロール状に巻いた状態の巻きの一部を示す横断面図、図4は、図3の巻きから剥離フィルムを繰り出すときの縦断面図、図5は、グリーンシートが形成された図1に示す剥離フィルムをロール状に巻いた状態の巻きの一部を示す横断面図、図6は、図5の巻きから剥離フィルムを繰り出すときの縦断面図である。
【0024】
図1、図2に示すように、剥離フィルム1は、基材11と、基材11上に設けられた剥離層12と、剥離層12上に設けられ、剥離フィルム1の幅方向の両方の端部に剥離フィルム1の長手方向に沿って設けられた除電層13とを有している。また、後述するようなグリーンシートの製造方法において、グリーンシートの材料は、剥離層12上のグリーンシート形成領域14に付与され、グリーンシート20が剥離層12上に接合した状態で形成される。
【0025】
このように除電層を設けることにより、以下のような効果が得られる。
図3に示すように、剥離フィルム1をロール状に巻いた巻き30において、各剥離フィルム1は、基材11と隣り合う剥離フィルムの除電層13とが接するように積層されている。
【0026】
このため、図4に示すように、巻き30から剥離フィルム1を繰り出す際において、巻き30と剥離フィルム1とが分かれる部位(剥離する部位)に除電層13が存在することができ、当該部分に生じた電気(特に静電気)を好適に除電することができる。
【0027】
また、図5に示すように、グリーンシート20が形成された剥離フィルム1をロール状に巻いた巻き40において、グリーンシート20の中央部は、剥離層12および隣り合う剥離フィルム1の基材11と接触している。このため、グリーンシート20の大部分は除電層13と接触しないものとなり、除電層13とグリーンシート20が接触することによるグリーンシート20の汚染が防止される。また、図6に示すように巻き40から剥離フィルム1およびグリーンシート20を繰り出す際において、グリーンシート20と巻き40との間でブロッキングが起きることを防止することができる。
【0028】
一方で、剥離フィルム1上のグリーンシート20の端部は、除電層13と接している。このため、図6に示すように、剥離フィルム1からグリーンシート20を剥離する際に、グリーンシート20と剥離フィルム1とが分かれる部位(剥離する部位)に除電層13が存在することができ、当該部分に生じた電気(特に静電気)を好適に除電することができる。
【0029】
以下、本実施形態に係る剥離フィルム1を構成する各層について詳細に説明する。
<基材>
基材11は、帯状のシートであり、剥離フィルム1に、剛性、柔軟性等の物理的強度を付与する機能を有している。
【0030】
また、基材11は、いかなるもので構成されていてもよいが、主として樹脂材料によって構成されることが好ましい。これにより、基材11は、引裂きや破断に対する十分な耐性を有するとともに、十分な可撓性を有することができる。
【0031】
基材11に用いることのできる樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、フッ素樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂、ノルボルネン系樹脂、シクロオレフィン樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
この中でも、樹脂材料として、ポリエステルを用いることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートを用いることが特に好ましい。
【0033】
この基材11の厚さは、特に限定されないが、10〜150μmであるのが好ましく、20〜120μmであるのがより好ましい。これにより、剥離フィルム1の柔軟性を適度なものとしつつ、剥離フィルムの引裂きや破断に対する耐性を特に優れたものとすることができる。
【0034】
<剥離層>
剥離層12は、基材11上に設けられている。
剥離層12は、剥離フィルム1の剥離性を向上させる機能を有する。
【0035】
また、後述するようなグリーンシートの製造方法において、グリーンシートは、剥離フィルム1の剥離層12上に設けられるものである。
【0036】
剥離層12は、主として剥離剤によって構成されている。
剥離層12に用いることのできる剥離剤としては、特には限定されないが、シリコーン樹脂で構成されたシリコーン系剥離剤;ポリビニルカーバメートや、アルキル尿素誘導体等の長鎖アルキル基を含有する化合物で構成された長鎖アルキル基含有化合物系剥離剤;不転化性アルキド樹脂、転化性アルキド樹脂等のアルキド樹脂で構成されたアルキド樹脂系剥離剤;高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低蜜度ポリエチレン等のポリエチレン、アイソタクチック構造又はシンジオタクチック構造を有するプロピレン単独重合体や、プロピレン−α−オレフィン共重合体等の結晶性ポリプロピレン樹脂等のオレフィン樹脂で構成されたオレフィン樹脂系剥離剤;天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、メチルメタクリレート−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムなどの合成ゴム等のゴムで構成されたゴム系剥離剤;(メタ)アクリル酸エステル系共重合体等のアクリル樹脂で構成されたアクリル樹脂系剥離剤等の各種剥離剤が挙げられ、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0037】
上述した中でも、剥離層12を構成する剥離剤としてシリコーン系剥離剤を用いた場合、グリーンシートの剥離層12からの剥離性を特に優れたものとすることがすることができる。このため、剥離層12からグリーンシートを剥離する際にブロッキングが起こることを確実に防止することができるとともに、剥離層12とグリーンシートとの間で静電気が発生しにくいものとなる。また、剥離フィルム1を複数枚積層した場合において、隣接する剥離フィルム1同士が特に容易に剥離できるものとなる。このため、剥離フィルム1の巻きから剥離フィルム1を繰り出す際に、ブロッキングが確実に防止されるものとなるとともに、静電気が発生しにくいものとなる。
【0038】
シリコーン系剥離剤は、シリコーン樹脂を主として含むシリコーン系剥離剤組成物を硬化させることにより得られる。
【0039】
シリコーン系剥離剤組成物に用いることのできるシリコーン樹脂は、剥離層12を形成することのできるものであればよく、例えば、付加反応型、縮合反応型のシリコーン樹脂を用いることができる。このようなシリコーン樹脂は、剥離層12の形成時において、熱、光等のエネルギーが加えられることにより、重合反応することができる。この結果、シリコーン系剥離剤組成物が好適に硬化して剥離層12が形成される。中でも、付加反応型のシリコーン樹脂を用いることが好ましい。
【0040】
付加反応型のシリコーン樹脂としては、シリコーン系剥離剤組成物の硬化時に付加反応することのできるシリコーン樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ビニル基を有するポリジメチルシロキサン、ヘキセニル基を有するポリジメチルシロキサン等のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサンを用いることができる。
【0041】
また、シリコーン樹脂としては、上述したような付加反応型、縮合反応型のシリコーン樹脂に加え、重合反応に寄与しないシリコーン樹脂を含むものであってもよい。このようなシリコーン樹脂を含むことにより、剥離層12は特に剥離性に優れたものとなる。特に、このように重合反応に寄与するシリコーン樹脂と、寄与しないシリコーン樹脂とを同時に用いることにより、シリコーン樹脂の剥離層12からの流出を防止し、剥離層12の表面強度を特に優れたものとしつつ、剥離層12の剥離性を特に優れたものとすることができる。
【0042】
このような重合反応に寄与しないシリコーン樹脂としては、例えば、分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基及び水素原子を有しないポリオルガノシロキサン、具体的には、トリメチルシロキシ基末端封鎖ポリジメチルシロキサン、ジメチルフェニルシロキシ基末端封鎖ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン樹脂が挙げられる。
【0043】
また、シリコーン系剥離剤組成物は、架橋剤を含むことが好ましい。このような架橋剤によってシリコーン樹脂が架橋されることにより、シリコーン樹脂が剥離層12からグリーンシートへ浸透することが防止され、グリーンシートが汚染されることが確実に防止される。また、剥離層12の表面強度を特に優れたものとすることができるとともに、基材11と剥離層12との密着性が特に優れたものとなる。
【0044】
架橋剤としては、例えば、単量体中にSi−H結合を有するポリオルガノシロキサン、具体的には、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ポリ(メチルハイドロジェンシロキサン)、ポリ(ハイドロジェンシルセスキオキサン)等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
シリコーン系剥離剤組成物における架橋剤は、シリコーン樹脂:100重量部に対し、0.1〜100重量部含まれることが好ましく、0.3〜50重量部含まれることがより好ましい。
【0046】
また、シリコーン系剥離剤組成物は、上述したような成分に加え、他の成分を含んでいてもよい。例えば、シリコーン系剥離剤組成物は、密着向上剤、重合開始剤、安定剤、シリカ、染料、顔料等を含むものであってもよい。
【0047】
密着向上剤は、剥離層12と隣接する層(基材11、除電層13)との密着性を向上させる成分である。このような密着向上剤としては、例えば、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3 −グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0048】
安定剤は、シリコーン系剥離剤組成物の保管時における、シリコーン樹脂の重合反応(硬化)を防止するための成分である。このような安定剤としては、例えば、3,5−ジメチル−1−ヘキセン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、テトラビニルシロキサン環状体、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0049】
重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケトン類、α−ジケトン類、α−ジケトンジアルキルアセタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。
【0050】
この剥離層12の厚さは、特に限定されないが、0.01〜3μmであるのが好ましく、0.03〜1μmであるのがより好ましい。
【0051】
<除電層>
除電層13は、導電性を有し、剥離フィルム1に生じた電気を除去する機能を有する層である。
【0052】
本実施形態において、除電層13は、剥離層12上の剥離フィルム1の幅方向の両方の端部に設けられている。また、除電層13は、剥離フィルム1の長手方向に沿って設けられている。言い換えると、剥離フィルム1には、その幅方向の中央付近に剥離層12が露出するように除電層13が設けられている。また、その露出した剥離層12上は、グリーンシート20が形成されるグリーンシート形成領域14となっている。
【0053】
このように、除電層13を、剥離フィルム1の端部に設けることにより、剥離フィルム1上に設けられるグリーンシート20が、除電層13と接触する部分が十分に少ないものとなる。この結果、除電層13に含まれる導電性の成分等がグリーンシート20に付着することが防止される。
【0054】
また、除電層13は、剥離層12上に形成されるグリーンシート20と接触する領域に設けられている。このように、形成されたグリーンシート20と除電層13とが接触することにより、グリーンシート20に発生した電気をより確実に除去することができる。
【0055】
なお、グリーンシート20は、グリーンシート20の剥離フィルム1からの剥離後に、グリーンシート20の除電層13と接触した部分(端部)をグリーンシート20から切り取ってもよい。これにより、除電層13の成分がより確実に付着していないものとなる。
【0056】
特に、本実施形態では、除電層13は、剥離層12上に設けられている。このため、形成されたグリーンシート20と除電層13とは、グリーンシート20が剥離フィルム1から剥離されるまで、常に接触しているものとなる。これにより、グリーンシート20は、より帯電しにくいものとなり、グリーンシート20に埃等の汚れが付着することがより確実に防止される。
【0057】
剥離フィルム1を平面視した場合における剥離フィルム1の面積に対する除電層13の面積の割合は、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがより好ましい。これにより、剥離フィルム1に生じる電気をより確実に除去することができるとともに、比較的広い領域に、グリーンシート20を形成することができる。
【0058】
また、剥離フィルム1を平面視した場合における前記除電層13の幅は、3〜150mmであることが好ましく、10〜100mmであることがより好ましい。これにより、後述するような外部の除電手段50A、50Bがより容易に除電層13に接触できるものとなり、剥離フィルム1およびグリーンシート20に生じた電気をより効率よく除去することができる。
【0059】
また、除電層13の厚さは、0.01〜3.0μmであることが好ましく、0.03〜1.0μmであることがより好ましく、0.05〜0.30μmであることがさらに好ましい。このように、所定以上の厚さとすることで、除電層13の除電性能を高いものとすることができる。また、除電層13の厚さを上記のように比較的薄いものとすることにより、除電層13によって形成される凸部を目立たないものとすることができる。このため、巻き30に、しわやたるみが発生することが防止される。この結果、グリーンシート20製造時において、巻き30に存在するしわやたるみから、剥離フィルム1の繰り出しに不具合が生じたり、後述するような外部の除電手段50A、50Bと除電層13とが接触しにくいものとなることがより確実に防止される。
【0060】
除電層13の表面抵抗率は、1013Ω/□以下であることが好ましく、1010Ω/□以下であることがより好ましい。
【0061】
また、本実施形態において、除電層13は、硬化性樹脂と、硬化性樹脂中に分散した導電性を有する導電性粒子とによって構成される。このように導電性粒子を用いることにより、除電層13は、確実に高い導電性が付与される。また、後述するような製造方法において、このような材料を用いた場合、除電層13を、所望の形状で、効率よく形成することができる。
【0062】
除電層13に用いることのできる導電性粒子としては、特には限定されないが、例えば、金、銀、銅、ニッケル、チタン等の金属および金属酸化物等の金属系導電性粒子;グラファイトがプレート状に積層して繊維を形成したカーボンナノファイバー、グラファイトの1枚面を巻いて円筒状にした形状を有するカーボンナノチューブ等のカーボンナノファイバー、カーボンブラック、炭素繊維、黒鉛、フラーレン等のカーボン系導電性粒子等が挙げられ、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0063】
この中でも、導電性粒子として、カーボン系導電性粒子を用いることが好ましく、カーボンナノファイバーを用いることがより好ましく、カーボンナノチューブを用いることがさらに好ましい。カーボン系導電性粒子は、比較的少量であっても、優れた導電性を示すことができる。このため、このようなカーボン系導電性粒子を用いた場合、除電層13を比較的薄いものした場合であっても、除電層13は、好適に導電性を有することができる。また、このため、剥離フィルム1を巻きにした場合に、しわやたるみが発生することが防止される。
【0064】
特に、カーボンナノファイバーは、微小な粒子であると共に、導電性の特に高い粒子である。このため、カーボンナノファイバーを導電性粒子として用いた場合、上述したような効果をより顕著に得ることができる。また、特にカーボンナノファイバーの中でも、カーボンナノチューブは、引張り強度や、引裂き強度等の向上に寄与できる成分である。このため、導電性粒子として、カーボンナノチューブを用いた場合、除電層13は、ひび割れ、摩耗等が少ないものとなり、安定して優れた導電性を維持できるものとなる。また、除電層13の厚さを十分に薄いものとすることができる。
【0065】
上述したように、カーボンナノチューブは、グラファイトの層を巻いて円筒状にした形状を有している。また、カーボンナノチューブは、巨大な共役二重結合系を有しており、この共役二重結合系に中にあるπ電子によって導電性が生じる。また、炭素結合のみによって円筒状の繊維を形成しているため、物理的な強度に優れている。
【0066】
また、カーボンナノチューブとしては、1層のグラファイトの層が円筒を形成した構造を持つ単層カーボンナノチューブ、2層以上のグラファイトの層がそれぞれ円筒を形成しこれらの円筒が積層された構造を持つ多層カーボンナノチューブを用いることができるが、多層カーボンナノチューブを用いることが好ましい。外側にある層と内側にある層とでそれぞれ異なる機能を付与することにより、多層カーボンナノチューブは、導電性とともに、他の機能を有することができる。例えば、多層カーボンナノチューブの外側の層については表面処理して樹脂材料と親和性の優れたものとし、内側にある層についてはグラファイトの結晶配列を維持させて導電性を持たせることにより、カーボンナノチューブは、導電性を特に優れたものとしつつ、樹脂材料への分散性を特に優れたものとすることができる。
【0067】
また、カーボンナノチューブは、その末端が開口しているものであってもよく、閉口しているものであってもよいが、開口していることが好ましい。なお、カーボンナノチューブの末端が閉口している場合、硝酸等によって処理することにより末端を開口させることができる。
【0068】
また、カーボンナノチューブの末端形状は、特には限定されず、例えば、円筒状、円錐状等の各種形状をとることができる。
【0069】
また、カーボンナノチューブの平均外径は、0.5〜120nmであることが好ましく、1.0〜80nmであることがより好ましい。これにより、カーボンナノチューブは、除電層13中に均一に分散できるととともに、カーボンナノチューブ自体の導電性を十分に高いものとすることができる。また、このような平均外形のカーボンナノチューブを用いた場合、除電層13は、十分に平滑なものとなる。
【0070】
また、カーボンナノチューブの平均長さは、0.5〜20μmであることが好ましく、0.8〜15μmであることがより好ましい。これにより、カーボンナノチューブは、除電層13中に均一に分散できるととともに、カーボンナノチューブ自体の導電性を十分に高いものとすることができる。
【0071】
また、上述したようなカーボンナノチューブは、ゼオライトの細孔に鉄やコバルト系触媒を導入した触媒化学気相成長法(CCVD法)、気相成長法(CVD法)、レーザーアブレーション法、炭素棒・炭素繊維等を用いたアーク放電法等によって製造することができる。
【0072】
また、カーボンナノチューブ中の非晶質のカーボン粒子は、20wt%以下であることが好ましい。
【0073】
また、除電層13中における導電性粒子の含有量は、0.1〜30wt%であることが好ましく、0.3〜10wt%であることがより好ましい。これにより、除電層13の導電性は特に優れたものとなる。また、導電性粒子は、除電層13中に好適に分散することができ、除電層13の平滑性、表面強度を特に優れたものとすることができる。
【0074】
また、本実施形態において、除電層13は、硬化性樹脂を含む。
硬化性樹脂は、除電層13において、上述したような導電性粒子を分散するバインダーとして機能するとともに、除電層13の形状を維持して、除電層13に物理的な強度を付与するものである。
【0075】
除電層13に用いることのできる硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、光硬化性樹脂を用いることができる。
【0076】
光硬化性樹脂は、光反応性の各種単官能性モノマー、多官能性モノマー、多官能性オリゴマーおよびこれらの混合物を主として構成される光硬化性樹脂組成物を重合、硬化させることにより得ることができる。
【0077】
光硬化性樹脂組成物に含まれる多官能性モノマーとしては、特に限定されず、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能アクリレートが挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
一方、多官能性のオリゴマーとしては、特には限定されず、例えば、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系等のラジカル重合性オリゴマー、エポキシ、オキセタン樹脂、ビニルエーテル樹脂等のカチオン重合性オリゴマー等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
ここで、エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノール樹脂やノボラック樹脂などの多価フェノール類にエピクロルヒドリンなどでエポキシ化した化合物、直鎖状オレフィン化合物や環状オレフィン化合物を過酸化物などで酸化して得られた化合物等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
光反応性の単官能性モノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドンなどが挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
また、光硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤を含むものであってもよい。光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルメタノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステルなどが挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、カチオン重合性のモノマー、オリゴマーに対する光重合開始剤としては、例えば、芳香族スルホニウムイオン、芳香族オキソスルホニウムイオン、芳香族ヨードニウムイオンなどのオニウムと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネートなどの陰イオンとからなる化合物等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
また、光硬化性樹脂組成物中において、光重合開始剤は、光反応性の各種モノマー、オリゴマーの合計量:100重量部に対して、0.2〜10重量部含まれることが好ましい。
【0083】
また、除電層13は、導電性高分子材料を含んでいてもよい。除電層13が導電性高分子材料を含むことにより、除電層13は、導電性が特に優れたものとなる。また、導電性粒子が十分に分散されていない場合であっても、このような導電性高分子材料がこれらの導電性粒子の間に存在することにより、除電層13は、導電性を有することができる。
【0084】
導電性高分子材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリジアセチレンなどのポリアセチレン系;ポリ(p−フェニレン)やポリ(m−フェニレン)などのポリ(フェニレン)系;ポリチオフェン、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリ(3−チオフェン−β−エタンスルホン酸)、ポリアルキレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホネートとの混合物などのポリチオフェン系;ポリアニリン、ポリメチルアニリン、ポリメトキシアニリンなどのポリアニリン系;ポリピロール、ポリ3−メチルピロール、ポリ3−オクチルピロールなどのポリピロール系;ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(フェニレンビニレン)系;ポリ(ビニレンスルフィド)系;ポリ(p−フェニレンスルフィド)系;ポリ(チエニレンビニレン)系化合物などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
上述した中でも、ポリアセチレン系、ポリチオフェン系、ポリアニリン系、ポリピロール系及びポリ(フェニレンビニレン)系化合物を用いた場合、除電層13は、導電性が特に優れたものとなる。
【0086】
また、除電層13中における導電性高分子材料の含有量は、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましく、0.1〜3質量%であることがさらに好ましい。これにより、除電層13の導電性を特に優れたものとすることができるとともに、除電層13の物理的強度を十分に高いものとすることができる。
【0087】
≪剥離フィルムの製造方法≫
次に、上述したような剥離フィルムの製造方法について説明する。
【0088】
まず、基材11を準備する。
基材11には、各面に対し、酸化法や凹凸化法、プライマー処理等の表面処理がおこなわれるものであってもよい。このような場合、例えば、基材11と、形成される剥離層12との密着性を向上させることができる。
【0089】
また、酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられる。また、凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。
【0090】
次に、基材11の一方の面に剥離層12を形成する。
剥離層12は、上述したような剥離剤またはその前駆物質を含む剥離層用塗工液を調製し、これを基材11上に付与、硬化させることにより形成できる。
【0091】
剥離層用塗工液は、例えば、剥離剤としてシリコーン系の剥離剤を用いる場合、上述したようなシリコーン系剥離剤組成物を溶剤等に分散、溶解させることにより得ることができる。
【0092】
このような溶剤としては、水、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ヘプタン等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0093】
剥離層用塗工液は、基材11上に付与できるものであれば、よく、エマルションの状態であってもよいし、溶剤を含まないものであってもよい。
【0094】
また、シリコーン系の剥離剤が、重合等の反応により硬化するものである場合、触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば、白金族の触媒が用いられる。この白金族の触媒としては、例えば、微粒子状白金、炭素粉末担体上に吸着された微粒子状白金、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、パラジウム、ロジウム触媒等が挙げられる。触媒の使用量は、シリコーン樹脂および架橋剤の合計量に対し、1〜1000ppmであることが好ましい。
【0095】
このようにして得られた剥離層用塗工液を、基材11の一方の面に、付与する。剥離層用塗工液は、例えば、グラビアコート法、バーコート法、マルチロールコート法などにより基材11に付与(塗工)することができる。
【0096】
基材11に付与された剥離層用塗工液は、付与量(塗工量)は、固形分換算で、0.01〜3g/m2であるのが好ましく、0.03〜1g/m2であるのがより好ましい。
【0097】
基材11上に付与された剥離層用塗工液の硬化は、例えば、加熱処理や、紫外線照射処理等の光照射処理によって行うことができる。
【0098】
次に、除電層13を剥離層12上に形成する。
除電層13は、上述したような導電性粒子、硬化性樹脂組成物等を含む除電層用塗工液を剥離層12上に付与し、硬化することで形成される。
【0099】
除電層用塗工液は、溶剤に上述したような材料を溶解または分散させることにより得られる。
【0100】
除電層用塗工液に用いることのできる溶剤としては、例えばヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、エチルセロソルブなどのエーテル系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤などが挙げられる。
【0101】
このようにして得られた除電層用塗工液を、剥離層12上の必要な部分に付与する。除電層用塗工液は、例えば、グラビアコート法、ダイコート法、マルチロールコート法などにより剥離層12上の必要な部分に付与(パターンコート)することができる。
【0102】
剥離層12上に付与された除電層用塗工液は、硬化性樹脂が光硬化性樹脂である場合、例えば、紫外線、可視光線等の光線を照射することにより硬化し、除電層13が形成される。これにより、剥離フィルム1が得られる。
【0103】
除電層用塗工液に照射する光線は、例えば、紫外線の場合、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等を用いて照射することができる。
【0104】
また、除電層の硬化性樹脂が、熱硬化性樹脂である場合、加熱処理によって除電層用塗工液を硬化し、除電層13を形成するものであってもよい。
【0105】
≪グリーンシートの製造方法≫
次に、グリーンシートの製造方法について説明する。
【0106】
本実施形態のグリーンシートの製造方法は、上述したような剥離フィルム1を用いてグリーンシート20を製造するものである。
【0107】
本実施形態のグリーンシートの製造方法は、剥離フィルム1上に、セラミックス粒子とバインダーとを含むグリーンシート材料を付与してグリーンシート前駆体を形成するグリーンシート材料付与工程と、グリーンシート前駆体を固化する固化工程とを有する。
【0108】
<グリーンシート材料付与工程>
本工程では、セラミックス粒子とバインダーとを含むグリーンシート材料を剥離フィルム1上に付与し、グリーンシート前駆体を形成する。
【0109】
グリーンシート材料は、セラミックス粒子とバインダーが溶剤によって分散、溶解したスラリー(グリーンスラリー)の状態で剥離フィルム1に付与される。
【0110】
グリーンシート材料に用いることのできるセラミックス粒子としては、特に限定されず、グリーンシートの製造に用いられる公知のセラミックス粒子を用いることができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)が挙げられる。
【0111】
また、グリーンシート材料に用いることのできるバインダーとしては、特に限定されず、グリーンシートの製造に用いられる公知のバインダーを用いることができ、例えば、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、エチルセルロース等が挙げられる。
【0112】
また、グリーンスラリーに用いることのできる溶剤としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチル、キシレン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0113】
以上のようなグリーンスラリーを剥離フィルム1上に付与する。
グリーンスラリーの剥離フィルム1上への付与は、剥離フィルム1の巻きから剥離フィルム1を繰り出し、繰り出された剥離フィルム1上にグリーンスラリーを塗工することにより行うことができる。
【0114】
グリーンスラリーの塗工は、例えば、ドクターブレード法、リップコート法、ロールコート法、ダイコート法等既存の塗工方式によって行うことができる。
また、本工程では、剥離フィルム1にグリーンスラリーを付与する際に、剥離フィルム1の除電を行う。
【0115】
また、図4に示すように、剥離フィルム1の除電は、繰り出された剥離フィルム1の除電層13に対して外部の除電手段50Aを接触させることにより行う。除電手段50Aとしては、導電性を有し、接地(アース)されているものであればよく、本実施形態では、除電手段50Aは、接地されたローラである。
【0116】
このため、このように除電を行うことにより、除電層13は、生じた静電気を好適に除去することができ、繰り出された剥離フィルム1は、帯電が防止されたものとなる。この結果、剥離フィルム1は、巻きから安定して繰り出されることができる。また、剥離層12上が帯電することが防止されることにより、剥離層12上に埃が付着することが防止される。このため、塗工されたグリーンスラリーにピンホールや、ひび割れ、塗工むらが生じることが好適に防止される。
【0117】
また、グリーンスラリーは、除電層13と接するように付与されることが好ましい。すなわち、グリーンシート前駆体は、除電層13と接するように形成されることが好ましい。これにより、後述する工程において、形成されたグリーンシート20と除電層13とは、密着したものとなる。このため、形成されたグリーンシート20を剥離フィルム1から剥離する場合においても、グリーンシート20は、除電されつつ剥離される。このため、製造されるグリーンシート20に埃が付着することがより確実に防止される。
【0118】
<固化工程>
次に、剥離フィルム1上に付与されグリーンシート材料を固化させる。
これにより、グリーンシート20が得られる。
【0119】
グリーンシート材料の固化は、グリーンスラリーから溶剤を除去することにより行うことができる。
【0120】
グリーンスラリーからの溶剤の除去は、例えば、加熱、減圧乾燥によって行うことができる。
【0121】
このようにして得られたグリーンシート20は、通常、その表面にペースト状の内部電極が印刷され、剥離フィルム1から剥離され、所定の形状、大きさに裁断されることによって用いられる。
【0122】
グリーンシート20を剥離フィルム1から剥離する際には、図6に示すように、グリーンシート20が担持された剥離フィルム1の巻き40から、剥離フィルム1を繰り出した後、グリーンシート20が剥離フィルム1から剥離される。この際に、除電層13の少なくとも一部と、外部の除電手段50Bとが接触することが好ましい。これにより、剥離時に生じる電気を好適に除去することができ、グリーンシート20に埃等が付きにくいものとなる。
【0123】
また、グリーンシート20は、幅方向における端部を切断することにより、剥離フィルム1の除電層13による汚染が特に好適に防止されたものとなる。
【0124】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について図を参照して説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0125】
図7は、本発明の第2実施形態に係る剥離フィルムの横断面図、図8は、図7に示す剥離フィルムをロール状に巻いた状態の巻きの一部を示す横断面図、図9は、グリーンシートが形成された図7に示す剥離フィルムをロール状に巻いた状態の巻きの一部を示す横断面図である。
【0126】
剥離フィルム1Aは、基材11と、基材11の一方の面に設けられた剥離層12と、基材11の剥離層12とは反対側の面に設けられた除電層13aとを有している。また、グリーンシート20は、剥離層12上にあるグリーンシート形成領域14に設けられるものである。
【0127】
本実施形態では、除電層13aがグリーンシート形成領域14と反対側の面に設けられている。このため、グリーンシート製造時において、グリーンスラリーをグリーンシート形成領域14に付与してグリーンシート前駆体を形成した際に、グリーンシート前駆体と除電層13aが接触しない。このため、除電層13aの成分がグリーンシート前駆体に溶出することが確実に防止され、形成されるグリーンシート20は、除電層13aによる汚染がより確実に防止されたものとなる。
【0128】
また、図8に示すように、剥離フィルム1Aをロール状に巻いた巻き30Aにおいては、各剥離フィルム1Aは、隣り合う剥離フィルム1Aの除電層13aと接触している。このため、巻き30Aから剥離フィルム1Aを繰り出した際において、巻き30Aと剥離フィルム1Aとの剥離部分には、除電層13aが存在することができ、剥離時に発生する電気を好適に除去することができる。
【0129】
また、図9に示すように、グリーンシート20を形成した剥離フィルム1Aをロール状に巻いた巻き40Aにおいては、各グリーンシート20は、隣り合う剥離フィルム1Aの除電層13aと接触している。このため、巻き40Aから剥離フィルム1Aを繰り出した際において、巻き30Aとグリーンシート20との剥離部分には、除電層13aが存在することができ、剥離時に発生する電気を好適に除去することができる。
【0130】
以上、本発明を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0131】
例えば、図10に示すように、剥離フィルム1Bは、除電層13bが剥離層12aに埋設されているものであってもよい。このような場合、剥離フィルム1Bは、幅方向における凹凸が特に少ないものとなり、剥離フィルム1Bのシート送り、巻きからの繰り出しが特に容易なものとなる。
【0132】
また、例えば、図11に示すように、剥離フィルム1Cは、グリーンシート20が形成される面に設けられた剥離層12に加え、基材11の剥離層12とは反対側の面に、剥離層12bが設けられたものであってもよい。このような場合、グリーンシート20と、剥離フィルム1Cとの剥離が特に容易なものとなり、これらの剥離時における静電気の発生が特に抑制されたものとなる。また、特に剥離層12と剥離層12bとが同様の材料で構成されている場合、積層した剥離フィルム1C同士を剥離する際に、静電気が特に発生しにくいものとなる。
【0133】
また、例えば、図12に示すように、剥離フィルム1Dは、除電層13cが剥離フィルム1の長手方向に沿って間欠的にグリーンシート20と接触するように設けられたものであってもよい。これにより、グリーンシート20の除電層13cとの接触を特に少ないものとしつつ、剥離フィルム1、グリーンシート20の帯電を防止することができる。また、形成されるグリーンシート20をより広い面積にわたって効率よく、電子回路基板の製造に用いることができる。
【0134】
また、上述した実施形態では、除電層は、剥離フィルムの一方の面の幅方向の両端に設けられたものとして説明したが、これに限定されない。例えば、除電層は、幅方向の一方の端部のみに設けられていてもよい。また、例えば、除電層は、剥離フィルムの両面に設けられていてもよい。
【0135】
また、上述した実施形態では、除電層は、導電性粒子と硬化性樹脂とによって構成されているものとして説明したが、これに限定されない。例えば、除電層は、金属等の導電性を有する材料の薄膜によって構成されるものであってもよい。
【0136】
また、剥離フィルムの各層の間には、中間層が設けられていてもよい。
また、除電層はグリーンシートと接着され、グリーンシートを固定する機能を有していてもよい。これにより、搬送中のグリーンシートの浮き・剥がれを効果的に防止することができる。
【0137】
また、上述した実施形態では、除電手段として、ローラを用いたがこれに限定されない。除電層に接触することができ、接地されたものであれば特に限定されず、例えば、設置されたブレード等を用いることができる。また、巻きの軸が除電手段として機能するものであってもよい。
【実施例】
【0138】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
1.剥離フィルムの製造
(実施例1)
まず、剥離層用塗工液の調製を行った。
【0139】
剥離層用塗工液は、付加反応型シリコーン、信越化学社製、商品名「KS−847H」):100質量部、白金触媒、信越化学社製、商品名「CAT−PL−50T」):1重量部を溶剤としてのトルエン中に固形分が1.1質量%となるように溶解させることで調製した。
次に、この剥離層用塗工液を、基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm、幅:200mm、三菱化学ポリエステルフィルム社製、商品名「T−100」)の一方の面に、乾燥後の厚さが0.1μmとなるようにグラビアコート法にて均一に塗工し、130℃の乾燥機で1分間乾燥して剥離層を形成した。
【0140】
次に、除電層用塗工液の調製を行った。
光硬化性樹脂としてのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、N−ビニルピロリドンを重量比で45:20:10の割合で含むアクリル系モノマー:75質量部、および溶剤としての酢酸ブチル:20質量部、イソプロパノール:30質量部を含む硬化性樹脂溶液を準備した。
【0141】
また、導電性高分子材料としてのポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホネート(PEDT/PSS)を1.3質量%含む導電性高分子水溶液を準備した。
【0142】
上述したような硬化性樹脂溶液:125質量部と、導電性高分子水溶液:15.5質量部と、光開始剤としての、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルメタノン:0.2質量部とを混合し、アクリル系モノマー及び導電性高分子材料の合計量が1質量%になるようにイソプロパノールで希釈して、混合液を得た。
【0143】
この混合液に、カーボンナノチューブの3.0質量%イソプロパノール分散液(平均直径:15nm、平均長さ:1μm、チューブ状、ジェムコ社製、商品名「CNF−T」)を、全固形分(除電層)中の含有量が1.0質量%になるように添加して、除電層用塗工液を調製した。
【0144】
次に、この除電層用塗工液を、PETフィルムの剥離層上における幅方向の両端部:10mmに、乾燥後の厚さが0.05μmとなるようにグラビアコート法にて均一に塗工した。次いで、55℃の乾燥機で1分間加熱し、直ちにフュージョンHバルブ:240W/cm、1灯取付けのコンベヤ式紫外線照射機により、コンベヤスピード:10m/分の条件で紫外線を照射して、塗工された除電層塗工液を硬化させ、除電層を形成した。
これにより、剥離フィルムが得られた。
【0145】
(実施例2〜4)
除電層に含まれる材料の種類、含有量、除電層の厚さ、幅を表1に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを製造した。
【0146】
(実施例5)
除電層用塗工液の調製において、導電性高分子水溶液を用いず、カーボンナノチューブを、全固形分(除電層)中の含有量が5.0質量%になるように用いた以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを製造した。
【0147】
(実施例6)
ステアリル変性アルキド樹脂とメチル化メラミンとの混合物(日立化成ポリマー社製、商品名「テスファイン303」):100重量部及びp−トルエンスルホン酸:3重量部をトルエンに溶解させ、固形分濃度が2wt%の剥離層用塗工液を調製した。
【0148】
この剥離層用塗工液を剥離層の形成に用い、剥離層形成時の乾燥条件を140℃、1分間とした以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを製造した。
【0149】
(実施例7)
除電層を剥離層上には設けず、PETフィルムの剥離層が設けられた面とは反対側の面に、幅方向の両端部:10mmの除電層を設けた以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを製造した。
【0150】
(実施例8、9)
除電層に含まれる材料の種類、含有量、除電層の厚さ、幅を表1に示すように変更した以外は、前記実施例7と同様にして剥離フィルムを製造した。
【0151】
(比較例1)
除電層を形成しなかった以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを製造した。
【0152】
(比較例2)
除電層を、剥離層上には設けず、基材の剥離層とは反対側の面に全面に設けた以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを製造した。
【0153】
表1に、各実施例および各比較例の剥離フィルムについて、剥離層、除電層の構成を示す。なお、表中、「CNT」は、カーボンナノチューブ、「CNP」は、プレート状のカーボンが積層して形成されたカーボンナノファイバー(ジェムコ社製、商品名「CNF−P」)、「PEDT」は、ポリエチレンジオキシチオフェン、「PSS」は、ポリスチレンスルホネートをそれぞれ示す。
【0154】
【表1】
【0155】
2.剥離フィルムの評価
2.1 繰り出し時の帯電量
各実施例、各比較例で得られた剥離フィルムをロール状に巻き取った状態で、23℃、50%RHの条件で30日間保管後、スリッターにて100m/分で繰り出した際の剥離層上の帯電量を、静電気測定機(SIMCO社製:FMX−002)を用いて測定し、下記の評価基準に従って評価した。また、繰り出し時においては、接地したローラ(除電手段)を剥離フィルムの除電層に接触させることにより除電を行った。
【0156】
◎:帯電量が5.0kV未満。
○:帯電量が5.0kV以上、8.0kV未満。
△:帯電量が8.0kV以上、10.0kV未満。
×:帯電量が10.0kV以上。
【0157】
2.2 耐ブロッキング性評価
各実施例、各比較例で得られた剥離フィルムをロール状に巻き取った状態で、40℃条件で30日間保管後、ロール外観の目視確認および、巻き出し時の状態を確認し、下記の評価基準に従って評価した。
【0158】
◎:ブロッキングの発生が全く見られない。
○:ブロッキングがわずかに見られるが、実用上問題ない。
×:ブロッキングが顕著に見られ、剥離フィルムが正常に剥離できない。
【0159】
3.セラミックスグリーンシートの製造
チタン酸バリウム(BaTiO3)粉体:100重量部、ポリビニルブチラール:8重量部、ジオクチルフタレート:4重量部に、トルエンとエタノールとの混合液(重量比1:1):80重量部を加え、ボールミルにて混合、分散させて、グリーンスラリーを調製した。
【0160】
このスラリーを、上記各実施例および各比較例で得られた剥離フィルム上に乾燥後の厚みが5μmとなるようにドクターブレード法により均一に塗工し、グリーンシート前駆体(塗膜)を形成した。(グリーンシート材料付与工程)。このとき、巻きから繰り出される剥離フィルムについて、剥離フィルム上にスラリーが塗工される直前に、接地したローラ(除電手段)を剥離フィルムの除電層に接触させることにより除電を行った。
【0161】
この剥離フィルム上に形成されたグリーンシート前駆体を、乾燥処理して剥離フィルム上にグリーンシート(セラミックグリーンシート)を作製した(固化工程)。
【0162】
4.グリーンシートを担持した剥離フィルムの評価
4.1 繰り出し時の帯電量
グリーンシートが担持された各実施例、各比較例の剥離フィルムをロール状に巻き取った状態で、23℃、50%RHの条件で30日間保管後、スリッターにて100m/分で繰り出した際のグリーンシート上の帯電量を、静電気測定機(SIMCO社製:FMX−002)を用いて測定し、下記の評価基準に従って評価した。また、繰り出し時においては、接地したローラ(除電手段)を剥離フィルムの除電層に接触させることにより剥離フィルムの除電を行った。
【0163】
◎:帯電量が8.0kV未満。
○:帯電量が8.0kV以上、10.0kV未満。
△:帯電量が10.0kV以上、15.0kV未満。
×:帯電量が15.0kV以上。
【0164】
4.2 グリーンシート剥離時の帯電量
2.1で繰り出しを行った各実施例および各比較例のグリーンシートが担持された剥離フィルムについて、グリーンシート上に粘着テープ(日東電工(株)製、商品面「31Bテープ」)を貼り合わせた。この粘着テープ付きグリーンシートを23℃、湿度50%の条件下で24時間調湿後、60mm×70mmに裁断し、剥離帯電量測定用サンプルを作製した。引張り試験機を用いて、100m/分の速度で、180°方向に剥離フィルムを引っ張り、このときのグリーンシート面の帯電量を、静電気測定機(SIMCO社製:FMX−002)を用いて測定した。剥離フィルム面の剥離帯電量は上記と同様な条件でグリーンシート側を剥離し、剥離フィルム面の帯電量を測定し、下記の評価基準に従って評価した。また、剥離時においては、接地したローラ(除電手段)をグリーンシート剥離直後の剥離フィルムの除電層に接触させることにより剥離フィルムの除電を行った。
【0165】
◎:帯電量が8.0kV未満。
○:帯電量が8.0kV以上、10.0kV未満。
△:帯電量が10.0kV以上、15.0kV未満。
×:帯電量が15.0kV以上。
【0166】
4.3 耐ブロッキング性評価
グリーンシートが担持された各実施例、各比較例の剥離シートについて、幅方向に25mmの幅にカットして試験片を2枚作製した。2枚の試験片を一方の試験片のグリーンシート表面と、他方の試験片の剥離フィルムとが接触するように重ねた。次に、2枚重ね合わせた試験片に、1kg/cm2の荷重をかけ、40℃の環境下で24時間放置した。
【0167】
その後、2枚の試験片のうちの一方の試験片を剥離して目視にて確認し、下記の評価基準に従って評価した。
【0168】
◎:ブロッキングの発生が全く見られない。
○:ブロッキングがわずかに見られるが、実用上問題ない。
×:ブロッキングが顕著に見られ、グリーンシートが正常に剥離できない。
【0169】
【表2】
【0170】
表2から明らかなように、本発明の剥離フィルムは、繰り出し時における帯電、ブロッキングが防止されており、繰り出しが容易なものであった。また、本発明の剥離フィルムは、グリーンシートを剥離する際に帯電が発生しにくいものであった。これに対して、比較例では満足な結果が得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】本発明の第1実施形態に係る剥離フィルムの横断面図である。
【図2】図2には、図1に示す剥離フィルムの平面図である。
【図3】図3は、図1に示す剥離フィルムをロール状に巻いた状態の巻きの一部を示す横断面図である。
【図4】図4は、図3の巻きから剥離フィルムを繰り出すときの縦断面図である。
【図5】グリーンシートが形成された図1に示す剥離フィルムをロール状に巻いた状態の巻きの一部を示す横断面図である。
【図6】図5の巻きから剥離フィルムを繰り出すときの縦断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る剥離フィルムの横断面図である。
【図8】図7に示す剥離フィルムをロール状に巻いた状態の巻きの一部を示す横断面図である。
【図9】グリーンシートが形成された図7に示す剥離フィルムをロール状に巻いた状態の巻きの一部を示す横断面図である。
【図10】本発明の剥離フィルムのその他の実施形態を示す横断面図である。
【図11】本発明の剥離フィルムのその他の実施形態を示す横断面図である。
【図12】本発明の剥離フィルムのその他の実施形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0172】
1、1A、1B、1C、1D ・・・剥離フィルム
11 ・・・基材
12、12a、12b ・・・剥離層
13、13a、13b、13c ・・・除電層
14 ・・・グリーンシート形成領域
20 ・・・グリーンシート
30、30A、40、40A ・・・巻き
50A、50B ・・・除電手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の基材と、
前記基材上に設けられ、主として剥離剤で構成された剥離層とを有する剥離フィルムであって、
前記剥離フィルムの幅方向の少なくとも一方の端部付近に前記剥離フィルムの長手方向に沿って設けられた前記剥離フィルムを除電する除電層を有することを特徴とする剥離フィルム。
【請求項2】
剥離フィルムは、前記除電層と外部の除電手段とが接触することにより、除電されるものである請求項1に記載の剥離フィルム。
【請求項3】
前記除電層は、前記基材の、剥離層と同じ面側に設けられているものである請求項1または2に記載の剥離フィルム。
【請求項4】
剥離フィルムを平面視した場合における剥離フィルムの面積に対する除電層の面積の割合は、3〜30%である請求項1ないし3のいずれかに記載の剥離フィルム。
【請求項5】
前記除電層は、導電性粒子を含むものである請求項1ないし4のいずれかに記載の剥離フィルム。
【請求項6】
前記導電性粒子は、カーボンナノファイバーである請求項5に記載の剥離フィルム。
【請求項7】
前記除電層は、導電性高分子材料を含むものである請求項1ないし6のいずれかに記載の剥離フィルム。
【請求項8】
剥離フィルムは、グリーンシートと接合して用いられるものである請求項1ないし7のいずれかに記載の剥離フィルム。
【請求項9】
前記除電層は、剥離層上に形成される前記グリーンシートと接触する領域に設けられている請求項8に記載の剥離フィルム。
【請求項10】
剥離フィルム上に、セラミックス粒子とバインダーとを含むグリーンシート材料を付与し、グリーンシート前駆体を形成するグリーンシート材料付与工程と、
前記グリーンシート前駆体を固化する固化工程とを有し、
前記剥離フィルムは、帯状の基材と、前記基材上に設けられ、主として剥離剤で構成された剥離層と、前記剥離フィルムの幅方向の少なくとも一方の端部付近に前記剥離フィルムの長手方向に沿って設けられた前記剥離フィルムを除電する除電層とを有することを特徴とするグリーンシートの製造方法。
【請求項11】
前記除電層と外部の除電手段とが接触することにより、前記剥離フィルムを除電する請求項10に記載のグリーンシートの製造方法。
【請求項12】
前記グリーンシート材料付与工程では、前記グリーンシート材料を前記剥離フィルムに付与する際に前記剥離フィルムの除電を行う請求項10または11に記載のグリーンシートの製造方法。
【請求項13】
前記グリーンシート付与工程では、前記グリーンシート前駆体を、前記除電層と接するように形成する請求項10ないし12のいずれかに記載のグリーンシートの製造方法。
【請求項1】
帯状の基材と、
前記基材上に設けられ、主として剥離剤で構成された剥離層とを有する剥離フィルムであって、
前記剥離フィルムの幅方向の少なくとも一方の端部付近に前記剥離フィルムの長手方向に沿って設けられた前記剥離フィルムを除電する除電層を有することを特徴とする剥離フィルム。
【請求項2】
剥離フィルムは、前記除電層と外部の除電手段とが接触することにより、除電されるものである請求項1に記載の剥離フィルム。
【請求項3】
前記除電層は、前記基材の、剥離層と同じ面側に設けられているものである請求項1または2に記載の剥離フィルム。
【請求項4】
剥離フィルムを平面視した場合における剥離フィルムの面積に対する除電層の面積の割合は、3〜30%である請求項1ないし3のいずれかに記載の剥離フィルム。
【請求項5】
前記除電層は、導電性粒子を含むものである請求項1ないし4のいずれかに記載の剥離フィルム。
【請求項6】
前記導電性粒子は、カーボンナノファイバーである請求項5に記載の剥離フィルム。
【請求項7】
前記除電層は、導電性高分子材料を含むものである請求項1ないし6のいずれかに記載の剥離フィルム。
【請求項8】
剥離フィルムは、グリーンシートと接合して用いられるものである請求項1ないし7のいずれかに記載の剥離フィルム。
【請求項9】
前記除電層は、剥離層上に形成される前記グリーンシートと接触する領域に設けられている請求項8に記載の剥離フィルム。
【請求項10】
剥離フィルム上に、セラミックス粒子とバインダーとを含むグリーンシート材料を付与し、グリーンシート前駆体を形成するグリーンシート材料付与工程と、
前記グリーンシート前駆体を固化する固化工程とを有し、
前記剥離フィルムは、帯状の基材と、前記基材上に設けられ、主として剥離剤で構成された剥離層と、前記剥離フィルムの幅方向の少なくとも一方の端部付近に前記剥離フィルムの長手方向に沿って設けられた前記剥離フィルムを除電する除電層とを有することを特徴とするグリーンシートの製造方法。
【請求項11】
前記除電層と外部の除電手段とが接触することにより、前記剥離フィルムを除電する請求項10に記載のグリーンシートの製造方法。
【請求項12】
前記グリーンシート材料付与工程では、前記グリーンシート材料を前記剥離フィルムに付与する際に前記剥離フィルムの除電を行う請求項10または11に記載のグリーンシートの製造方法。
【請求項13】
前記グリーンシート付与工程では、前記グリーンシート前駆体を、前記除電層と接するように形成する請求項10ないし12のいずれかに記載のグリーンシートの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−226894(P2009−226894A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78509(P2008−78509)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】
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