説明

力測定部

【課題】 計量時の可動部の振動を速やかに減衰させて、高速かつ高精度の力測定を行う。
【解決手段】 ロバーバル機構と平行に電気良導体である板体部材12が固定され、板体部材12の両側にはホルダ14により支持された円形のマグネット板16が近接対向して配置されている。これらのマグネット板16はねじ軸17を介してホルダ14に取り付けられ、ねじ軸17を回転することによりマグネット板16の板体部材12に対する距離が可変とされている。測定に際して、測定対象からの力による振動は板体部材12に伝達され、板体部材12とマグネット板16との磁気回路による電磁誘導作用により制振がなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振作用を有する力測定部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば被計量物を計量する場合に、被計量物による負荷を検出するために、ロバーバル機構を含む荷重検出器を組み込んだはかり装置が多く使用されている。この荷重検出器はロバーバル機構の可動部の変位を歪ゲージにより検出し、被計量物の重量に対応した電気信号に変換するロードセルが用いられていることが多い。
【0003】
ロバーバル機構は金属弾性体であるために、可動部に荷重が加わった衝撃により負荷方向に振動が発生し、空気抵抗又は機械摩擦によりエネルギがなくなるまで振動は止まらない。
【0004】
自然減衰を待って計測すると長い時間を要し、高速計量が不可能となるため、ロードセルからの出力信号に対しローパスフィルタを設けて、電気的に制振して応答性を高めることもある。ローパスフィルタは遮断周波数を低くすると、応答性が悪くなるという問題があり、これに対してロードセルの固有振動数を上げてローパスフィルタの遮断周波数を上げ、測定時の制振時定数を短くすることが考えられる。しかし、微小荷重(30〜100g)のロードセルの場合には、ばね定数が小さいために固有振動数が低く、ローパスフィルタの遮断周波数を上げることができず、高速かつ高精度のはかり装置が得られないという問題がある。
【0005】
また、流体を用いたダンピング装置を用いて、振動を強制的に減衰させる手法も知られているが、微小荷重の場合には調整も難しいという問題がある。搬送、移動時に流体が流出しないよう密閉構造にしようとすると、密閉構造の計測側部材に本来の計測しようとする力、荷重の一部がバイパスし、正確な計測ができなくなる。バイパスが生じないように開放形にすると、搬送、移動に際して流体を抜き取ったり再注入したりする必要がある。また、流体の浮力の影響で零点が変動してしまう等の問題もある。
【0006】
一方、制振のためにフォースコイルを用いる電磁平衡式はかりも知られている。また、このはかり装置は検出器で検出された偏位信号を微分して電磁石コイルに加えるため、強力な制振機能を持たせることができる。
【0007】
この電磁平衡式はかりの場合には重量を零位法で検出するため、電磁石コイルに変位に比例した電流を流すと発熱してコイルの抵抗値が増加し、更にマグネットに伝熱して、マグネットの温度が上昇し磁束密度が下がるために、電磁力が減少する問題がある。
【0008】
更には、本発明のように永久磁石による磁気回路を用いた制振手段を備えたはかり装置が特許文献1に記載されている。この制振手段は電気良導体から成る円筒状部を永久磁石との磁気回路に上下に出し入れして制振するように構成されている。
【0009】
【特許文献1】特開平10−142040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1のように円筒状部を用いた磁気回路による制振装置は、円形磁石と他の円形部材で構成されるヨークの円筒状部材の間隙に、円筒状の電気良導体を配して組み立てるため、構成部材が複雑である。また、円形磁石と円筒状ヨーク、円筒状の電気良導体相互間を一様な間隙で組み立てる必要があり、組み立て後の制振効果の調整もできず、取付方向にも種々の制約があって、制振装置の配置が自由とならない問題点がある。
【0011】
本発明の目的は、上述の課題を解決して、制振効果の調整が可能で、計量時の可動部の振動を速やかに減衰させ、高速かつ高精度の計量を行い得る力測定部を提供することにある。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る力測定部によれば、負荷を加えたときに生ずるロバーバル機構の振動を磁気的手段による制振によって速やかに収束し、高速及び高精度の計量を可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明の技術的特徴は、基台に対しロバーバル機構を設け、該ロバーバル機構の可動部に加わる負荷を検出する検出器と、前記可動部に取り付けた電気良導体から成る板体部材と、該板体部材に近接して両側に配置した永久磁石と、前記板体部材と前記永久磁石の間隔を調整する調整手段とを備え、前記板体部材に対する前記永久磁石の磁束の作用により前記可動部を制振することを備えたことを特徴とする力測定部である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は実施例1のはかり装置の平面図、図2は正面図を示し、基台1に金属製のロバーバル機構2の固定部3がねじ4、4により固定されている。ロバーバル機構2は両側の上下方向の固定部3、可動部5をそれぞれ2個のフレクシャ6を有する上ビーム7と下ビーム8により連結して平行四辺形とされている。そして、可動部5上に軸部9を介して秤量皿10が設けられている。
【0016】
ロバーバル機構2の一部には、例えば歪ゲージ11が貼り付けられ、図示しないリード線により外部に信号を出力するようにされている。また、ロバーバル機構2の面と平行に、可動部5から前方に向けて電気良導体である銅又はアルミニウムから成る角形の板体部材12が配置され、可動部5にねじ13、13により固定されている。
【0017】
基台1上には、断面略U字形のホルダ14が板体部材12を挟むようにしてねじ15により固定され、ホルダ14の内側つまり板体部材12の両側に近接対向して、それぞれの円形のマグネット板16が配置されている。
【0018】
図3の側面図に示すように、ねじ軸17がホルダ14に対し螺合され、ホルダ14の内側のねじ軸17の端部にはマグネット板16が固定され、外側の端部につまみ18が取り付けられている。つまみ18を回転することにより、マグネット板16の板体部材12に対する距離が可変となるようにされている。
【0019】
計量に際して、秤量皿10上に被計量物を載せると、可動部5が沈下してその変位は歪ゲージ11で検出され、被計量物の荷重を測定できる。この過程において、ロバーバル機構2の可動部5には被計量物の秤量皿10上への投下加速度によって振動が発生し、歪ゲージ11により検出されるが、振動が加わった荷重信号が得られる。同時に、この振動は板体部材12に伝達され、板体部材12はマグネット板16との磁気回路により制振がなされる。
【0020】
板体部材12を動かす振動エネルギは、板体部材12で渦電流に変換され熱エネルギとして消散することにより、制振効果が発揮される。つまり、振動が生ずると、2個のマグネット板16と板体部材12の間に相対運動が発生し、これによってマグネット板16からの磁束による電磁誘導現象が板体部材12に渦電流を励起させる。この渦電流の発生により、マグネット板16と板体部材12との相対運動を妨げる向きに抵抗力が生じ、この抵抗力が振動の減衰力となる。
【0021】
図4は制振動作を行わない場合の歪ゲージ11の出力特性を示し、約1.6gの重りを高さ5mmから秤量皿上に落下させた場合に振動の減衰が約1秒以上継続している。これに対し、本実施例では同様の条件で、図5に示すように0.2秒で振動が減衰している。
【0022】
なお、この減衰力は板体部材12の厚さやマグネット板16の表面積などを調整して、任意の値に設計できる。特に、マグネット板16の位置調整による板体部材12との間隔を容易に変えることができるので、簡便に制振特性を調整することが可能である。
【0023】
また、制振装置を構成する板体部材12、ホルダ14、マグネット板16の配置には自由度があるので、他の個所例えばロバーバル機構の上方に制振装置を配置することもでき、装置空間の制約を受け難い。
【0024】
更に、2枚のマグネット板16の代りに、一体としたU字状(馬蹄型)を採用することもできる。
【実施例2】
【0025】
図6は実施例2の正面図、図7は側面図である。なお、実施例1と同じ符号は同じ部材を示している。
【0026】
板体部材12’はロバーバル機構2の可動部5に、ロバーバル機構2の面に対し直交するように配置され、ねじ13’、13’により固定されている。そして、板体部材12’に対するマグネット板16の構成は向きが異なるものの、実施例1と同様である。
【0027】
また、作用効果についても実施例1の方が、可動部5に対する制振力のモーメントが大きいため、制振効果が大きいという利点はあるが、実施例2においても殆ど遜色はない。
【産業上の利用可能性】
【0028】
実施例においてははかり装置として説明したが、測定は荷重のみならず、一般的な力を対象とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例1の平面図である。
【図2】正面図である。
【図3】側面図である。
【図4】制振機構を使用しない場合の特性のグラフ図である。
【図5】制振機構を使用した場合の特性のグラフ図である。
【図6】実施例2の正面図である。
【図7】側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 基台
2 ロバーバル機構
3 固定部
5 可動部
10 秤量皿
11 歪ゲージ
12、12’ 板体部材
14 ホルダ
16 マグネット板
17 ねじ軸
18 つまみ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に対しロバーバル機構を設け、該ロバーバル機構の可動部に加わる負荷を検出する検出器と、前記可動部に取り付けた電気良導体から成る板体部材と、該板体部材に近接して両側に配置した永久磁石と、前記板体部材と前記永久磁石の間隔を調整する調整手段とを備え、前記板体部材に対する前記永久磁石の磁束の作用により前記可動部を制振することを特徴とする力測定部。
【請求項2】
前記永久磁石は前記板体部材と平行に対向するように配置した請求項1に記載の力測定部。
【請求項3】
前記調整手段は、ねじ軸に前記永久磁石を固定し、前記ねじ軸をホルダに対し回転することにより前記永久磁石を移動し、前記永久磁石と前記板体部材との間隔を調整するようにした請求項1に記載の力測定部。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate