説明

加入者端末、光通信ネットワーク及び光通信ネットワークにおける光信号の強度調整方法

【課題】プレゼンス確認時に受信する光強度をダイナミックレンジ内に収める。
【解決手段】可変光減衰部370、光−電気変換部320、クロック抽出部390、クロック抽出判定手段362、受信レベル調整手段364及び減衰量変更手段366を備える。可変光減衰部は、受信する光信号に対して減衰を与える。光―電気変換部は、可変光減衰部を経て受け取る光信号を電気信号に変換する。クロック抽出部は、電気信号からクロック抽出を行い、クロックが安定に抽出されているか否かを示すクロック抽出情報信号を生成する。クロック抽出判定手段は、クロック抽出情報信号に基づいて、クロック抽出部がクロックを安定に抽出しているか否かを判定する。受信レベル調整手段は、可変光減衰部の減衰量を最小値以上かつ最大値以下の値に設定する。減衰量変更手段は、受信レベル調整手段が設定した減衰値に、可変光減衰部の減衰量を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、局側装置と複数の加入者端末との間の通信を行う受動型の光通信ネットワークで用いられる加入者端末、及び、この加入者端末を備える光通信ネットワーク、並びに、この光通信ネットワークにおける光信号の強度調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
局側装置と、複数の加入者端末との間での通信システムの代表例として、受動型光通信ネットワーク(PON:Passive Optical Network)システムが知られている。PONシステムは、1つの局側装置、複数の加入者端末及び光分岐器を備えて構成されていて、局側装置及び各加入者端末と、光分岐器とは、光ファイバで接続されている。
【0003】
ここで、PONシステムに、符号分割多重(CDM:Code Division Multiplexing)技術を採用できると、CDM技術が有する様々な利点を享受することができる。
【0004】
CDM技術を利用したネットワークシステムでは、送信側と受信側とで同一符号を用いるので、通信におけるセキュリティーが高い。また、CDM技術を利用したネットワークシステムは、同一のタイムスロットに複数の送信データを多重することを可能にする。このため、CDM技術を用いることで、タイムスロットなどの通信資源を節約しつつ、大容量のデータ通信を行うことができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−228134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PONシステムで用いられる光ファイバにおける減衰量は、0.5dB/km程度である。この場合、例えば1つの加入者端末と他の加入者端末の、光分波器までの距離が10km違うと、局側装置が送信する光信号を各加入者端末が受信する際の光強度が5dB程度違ってしまう。各加入者端末の受信可能範囲(ダイナミックレンジ又は受信レンジ)が5dB程度の場合、各加入者端末の、光分波器からの距離が10km以上異なると、受信する光信号がダイナミックレンジから外れてしまい、この結果、正常に光信号を受信することができない加入者端末が存在することが考えられる。
【0007】
特に、PONシステムに電源が投入されて、局側装置が加入者端末のプレゼンス確認を行う際に、加入者端末が局側装置から受信する、光信号の強度が大きすぎると、加入者端末が信号を正常に受信することができず、この結果、局側装置では加入者端末のプレゼンス確認ができない場合が考えられる。
【0008】
この発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、この発明の目的は、プレゼンス確認時に、加入者端末が受信する光強度をダイナミックレンジ内に収めることができる加入者端末、及び、この加入者端末を備える光通信ネットワーク、並びに、光通信ネットワークにおける光信号の強度調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、この発明の加入者端末は、1つの局側装置が、複数の加入者端末に接続されて構成される光通信ネットワークで用いられ、可変光減衰部と、光−電気変換部と、クロック抽出部と、加入者側制御部とを備える。
【0010】
可変光減衰部は、局側装置から受信する光信号に対して減衰を与える。光−電気変換部は、可変光減衰部を経て受け取る光信号を、電気信号に変換する。クロック抽出部は、電気信号からクロックを抽出するとともに、クロックが安定に抽出されているか否かを示すクロック抽出情報信号を生成する。
【0011】
加入者側制御部は、クロック抽出判定手段と、受信レベル調整手段と、減衰量変更手段とを備える。
【0012】
クロック抽出判定手段は、クロック抽出情報信号に基づいて、クロック抽出部がクロックを安定に抽出しているか否かを判定する。受信レベル調整手段は、減衰値を最小値以上かつ最大値以下の値に設定する。この最小値及び最大値は予め設定されている。減衰量変更手段は、可変光減衰部の減衰量を、減衰値に変更させる。
【0013】
また、この発明の光通信ネットワークは、上述の加入者端末を備えて構成される。
【0014】
また、この発明の、光通信ネットワークにおいて、加入者端末が受信する下り光信号の強度調整方法は、以下の過程を備えている。
【0015】
先ず、可変光減衰部の減衰量を予め設定された最小値に変更する。次に、加入者端末が備えるクロック抽出部が、クロックを安定して抽出しているかを判定する。
【0016】
判定の結果、クロック抽出が安定して行われていない場合は、減衰量が予め設定された最大値に等しいか否かを判定する。
【0017】
減衰量が最大値に等しい場合は、続いて減衰量を最小値に変更し、一方、減衰量が最大値と異なる場合は、続いて減衰量を1段階大きく変更した後、クロックを安定して抽出しているかを判定する。
【発明の効果】
【0018】
この発明の構成によれば、プレゼンス確認時に、加入者端末において、局側装置から受け取る光信号の減衰量を制御する。この結果、加入者端末が受信する光信号の強度がダイナミックレンジ内に収まり、確実に局側装置からのプレゼンス確認要求信号を受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】PONシステムの概略構成図である。
【図2】OLTの概略構成図である。
【図3】ONUの概略構成図である。
【図4】ONUでの処理フローを示す図である。
【図5】ONUでの強度調整を示す模式図(1)である。
【図6】ONUでの強度調整を示す模式図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0021】
(光通信ネットワークの構成)
図1を参照して、光通信ネットワークの一例としてのPONシステムについて説明する。図1はPONシステムの概略構成図である。
【0022】
PONシステム100では、1つの局側装置(OLT:Optical Line Terminal)200、複数の加入者端末(ONU:Optical Network Unit)300−1〜n(nは2以上の整数)及び光分岐器400を備えて構成されている。OLT200及び各ONU300−1〜nと光分岐器400とは、それぞれ光ファイバ410で接続されている。
【0023】
(OLTの構成)
図2を参照して、OLTについて説明する。図2はOLTの概略構成図である。
【0024】
OLT200は、送信部210、電気−光変換部220、光合分波部230、光−電気変換部240、受信部250及び局側制御部260を備えて構成される。
【0025】
送信部210は、例えば、エンコーダ及び加算多重器を備えて構成される。送信部210は、局側制御部260から受け取る送信データ(図中、矢印S261で示す。)から、符号分割多重(CDM)信号を生成する。PONシステム100が備えるONUの個数がnの場合、CDM信号はnチャネルの信号を多重したものとすることができる。送信部210は、生成したCDM信号(図中、矢印S211で示す。)を電気−光変換部220に送る。
【0026】
電気−光変換部220は、例えばレーザダイオード(LD)で構成される。電気−光変換部220は、電気信号であるCDM信号S211を光信号であるCDM光信号に変換する。電気−光変換部220は、CDM光信号(図中、矢印S221で示す。)を光合分波部230に送る。
【0027】
光合分波部230は、例えば、サーキュレータで構成される。光合分波部230は、電気−光変換部220から受け取ったCDM光信号S221を各ONU300へ送る(図中、矢印S231で示す)。また、光合分波部230は、各ONU300から受け取ったCDM光信号(図中、矢印S301で示す。)を光−電気変換部240に送る(図中、矢印S233で示す)。
【0028】
光−電気変換部240は、例えば、アバランシェ・フォトダイオード(APD)で構成される。光−電気変換部240は、光信号であるCDM光信号S233を、電気信号であるCDM信号に変換する。光−電気変換部240は、CDM信号(図中、矢印S241で示す。)を受信部250に送る。
【0029】
受信部250は、例えば、電荷結合素子(CCD:Charge Coupling Device)マッチドフィルタと、コンパレータを備えて構成される。CCDマッチドフィルタは、CDM信号S241と、CCDマッチドフィルタに割り当てられた符号との畳み込み演算を行う。コンパレータは、CCDマッチドフィルタでの畳み込み演算の結果得られた、相関信号から受信データ(図中、矢印S251で示す。)を得る。受信部250は、受信データS251を局側制御部260に送る。
【0030】
局側制御部260は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array) で構成される。局側制御部260は、送信データS261の生成、受信データS251のヘッダ解析、各ONUのプレゼンス確認など、PONシステムでの通信やCDM技術を用いた通信に必要な所望の機能を備える。
【0031】
(ONUの構成)
図3を参照して、ONUについて説明する。図3はONUの概略構成図である。
【0032】
ONU300は、送信部310、電気−光変換部320、光合分波部330、光−電気変換部340、受信部350、加入者側制御部360、可変光減衰部(VOA:Variable Optical Attenuator)370、クロック発生部380及びクロック抽出部390を備えて構成される。VOA370は、各ONU300がOLT200に向けて送る光信号(以下、上り光信号と称することもある。図中、矢印S371で示す。)と、各ONU300がOLT200から受け取る光信号(以下、下り光信号と称することもある。図中、矢印S201で示す。)に共通の大きさの減衰を与える。
【0033】
送信部310は、例えば、エンコーダを備えて構成される。送信部310は、加入者側制御部360から受け取る送信データ(図中、矢印S361で示す。)を、各ONUに割り当てられた符号で符号化した、符号拡散信号を生成する。送信部310は、生成した符号拡散信号(図中、矢印S311で示す。)を電気−光変換部320に送る。
【0034】
電気−光変換部320は、例えばレーザダイオード(LD)で構成される。電気−光変換部320は、電気信号である符号拡散信号を光信号である符号拡散光信号に変換する。電気−光変換部320は、符号拡散光信号(図中、矢印S321で示す。)を光合分波部330に送る。
【0035】
光合分波部330は、例えば、サーキュレータで構成される。光合分波部330は、電気−光変換部320から受け取った符号拡散光信号S321を、VOA370に送る(図中、矢印S333で示す。)。VOA370を経て、OLT200に向けて送られた符号拡散光信号S371は、光分岐器400で合成されてCDM光信号となる。OLT200は、各ONU300からの信号として、このCDM光信号を受け取る。
【0036】
また、光合分波部330は、OLT200からVOA370を経て受け取ったCDM光信号(図中、矢印S373で示す。)を光−電気変換部340に送る(図中、矢印S331で示す。)。
【0037】
光−電気変換部340は、例えば、アバランシェ・フォトダイオード(APD)で構成される。光−電気変換部340は、光信号であるCDM光信号S331を、電気信号であるCDM信号に変換する。CDM信号は2分岐され、一方(図中、矢印S341で示す。)は受信部350に送られ、他方(図中、矢印S343で示す。)はクロック抽出部390に送られる。
【0038】
クロック抽出部390は、CDM信号S343からクロック信号を抽出する。このクロック信号は2分岐され、一方(図中、矢印S391で示す。)は受信部350に送られ、他方(図中、矢印S393で示す。)は加入者側制御部360に送られる。
【0039】
また、クロック抽出部390は、クロックが安定して抽出されているか否かを示す、クロック抽出情報信号(図中、矢印S395で示す。)を生成する。このクロック抽出情報信号S395は、加入者側制御部360に送られる。クロック抽出部390は、例えば、CDR(クロックデータリカバリー)回路(アナログデバイス社製:ADN2812)を用いて構成される。このCDR回路は、クロック抽出情報信号としてロスオブロック(LOL:Loss of Lock)信号を出力する。LOL信号は、クロックが安定して抽出されている場合、「0」となり、クロック抽出が行われていない場合、「1」となる。
【0040】
受信部350は、例えば、CCDマッチドフィルタと、コンパレータを備えて構成される。CCDマッチドフィルタは、クロック抽出部390から受け取ったクロック信号S391を用いて、CDM信号S341と、CCDマッチドフィルタに割り当てられた符号との畳み込み演算を行う。コンパレータは、CCDマッチドフィルタでの畳み込み演算の結果得られた、相関信号から受信データを得る。受信部350は、受信データ(図中、矢印S351で示す。)を加入者側制御部360に送る。
【0041】
ONU300の送信部310及び受信部350では、OLT200から受け取った光信号から抽出されるクロックを用いて、符号化及び復号化の処理や、後述する強度調整を行う。ここで、プレゼンス確認時など、OLT200からのクロックを抽出できない場合は、クロック発生部380が生成したクロックが用いられる。クロック発生部380は、一般のPONシステムで用いられるのと同様のものを用いれば良い。なお、ここでは説明を省略したが、OLT200にも同様のクロック発生部が設けられる。
【0042】
加入者側制御部360は、例えば、FPGAで構成される。加入者側制御部360は、CDMフレームの生成、受信データのヘッダ解析など、PONシステムでの通信やCDM技術を用いた通信に必要な所望の機能を備える。
【0043】
本発明の構成では、強度調整を行うために、ONUの加入者側制御部360は、さらに、クロック抽出判定手段362、受信レベル調整手段364、減衰量変更手段366を、機能手段として備えている。これら機能手段は、FPGAに書き込まれたソフトウェアにより実現される。
【0044】
クロック抽出判定手段362は、クロック抽出情報信号に基づいて、クロック抽出部390が、クロックを安定して抽出しているか否かを判定する。受信レベル調整手段364は、VOA370での減衰量の設定値を調整する。以下の説明では、この減衰量の設定値を、減衰値あるいはVOA値と称することもある。減衰量変更手段366は、受信レベル調整手段364で設定された値に基づいて、VOA370へ減衰量の変更を指示する。
【0045】
(プレゼンス確認)
プレゼンス確認は、PONシステムの立ち上げ時など、OLT及び各ONUの電源がONになるときに行われる。各ONUは、当該ONUの電源がONになると、OLTからの信号の受信を待機する。一方、OLTは、当該OLTの電源がONになると、PONシステムを構成するONUのプレゼンス確認を開始する。
【0046】
OLTは、ヘッダとデータ信号とを含むフレームから、CDM光信号を生成して、各ONUに送る。ここで、プレゼンス確認を行う場合は、ヘッダにプレゼンス確認要求を含む。ONUは、受信したフレームのヘッダを解析し、受信した信号にプレゼンス確認要求が含まれているか否かを確認する。
【0047】
ONUは、プレゼンス確認要求を確認すると、OLTに対してプレゼンス確認要求受領信号を送信する。OLTが、プレゼンス確認要求受領信号を受信するか、あるいは、一定期間経過した後、プレゼンス確認過程は完了する。
【0048】
ここで、プレゼンス確認を行う際に、OLTとONUとの距離などによっては、ONUが受信する光信号の強度が、ONUでの受信可能レンジ(ダイナミックレンジ)外になる場合がある。この場合、ONUでは、OLTからのプレゼンス確認要求を受け取ることができない。
【0049】
そこで、この発明の構成では、ONUにおいて、プレゼンス確認過程において、受信強度の調整を行う。
【0050】
(ONUでの強度調整)
図4及び図5を参照して、ONUでの強度調整方法について説明する。図4は、ONUでの処理フローを示す図である。図5は、ONUでの強度調整方法を模式的に示す図である。図5は、1つのONUについて、ONU受信レベル調整過程が行われている間の、VOA値の変化を示している。図5では、横軸に時間(t)をとって示し、縦軸にVOAにおける減衰量の値(VOA値)を取って示している。
【0051】
以下の説明において、処理ステップをSで表す。
【0052】
先ず、S10において、受信レベル調整手段364は、減衰値を予め設定された最小値(MIN)に設定する。なお、この最小値(MIN)は、VOA370の仕様に応じて定まるものであり、ONUが備える記憶部(図示を省略する。)に読出し自在に格納されている。受信レベル調整手段364は、この記憶部から最小値を読み出して、減衰値を最小値に設定する(図5中、T0)。
【0053】
減衰量変更手段366は、受信レベル調整手段364が設定した減衰値の情報をVOA370に送る。VOA370は、受け取った減衰値に対応して減衰量を変更する。なお、VOA370は、ONUが受信する光信号だけでなく、ONUがOLTに向けて送信する光信号にも等しい減衰を与える。
【0054】
次に、S20において、クロック抽出判定手段362は、クロック抽出部390が、クロックを安定して抽出しているかを判定する。この判定は、クロック抽出部390が生成したクロック抽出情報信号を用いて行われる。クロック抽出情報信号がLOL信号である場合、LOL信号の「1」から「0」への“立下り”の検出が用いられる(図5中、T1)。
【0055】
なお、この立下りの検出のみで判定を行うと、ノイズ等により誤った判定がなされる恐れがある。そこで、一定期間LOL信号が立下りの状態を維持しているか否かで判断するのが良い。
【0056】
S20の判定の結果、クロック抽出が安定して行われている場合(Yes)は、受信強度の調整処理を終了する。その後、ONUは、受信した信号に含まれるフレームのヘッダを解析し、プレゼンス確認要求が含まれているか否かを確認した後、OLTに対してプレゼンス確認要求受領信号を送信する。
【0057】
S20の判定の結果、クロックが安定して抽出されていない場合(No)は、続いてS30の処理を行う。
【0058】
S30において、受信レベル調整手段364は、減衰量が予め設定された最大値(MAX)であるか否かを判定する。受信レベル調整手段364は、記憶部から最大値を読み出して、現在設定されている減衰値と比較する。この最大値(MAX)は、VOA370の仕様に応じて定まるものであり、ONUが備える記憶部に読出し自在に格納されている。
【0059】
S30の判定の結果、減衰値が最大値に等しい場合(Yes)は、続いてS10の処理を行う。すなわち、VOA370の減衰値を最小値に変更する(図5中、T1)。
【0060】
一方、S30の判定の結果、減衰値が最大値と異なる場合(No)は、続いてS40の処理を行う。S40において、受信レベル調整手段364は、減衰値を1段階大きくする。この減衰値を変化させる1段階の大きさは、VOA370の可変レンジなどに応じて任意好適に設定すれば良い。減衰値を1段階大きくした後、S20の処理を行う。
【0061】
この受信強度の調整は、クロック抽出判定手段362で、クロック抽出が安定して行われるまで繰り返し行われる。
【0062】
この減衰値を変化させる時間間隔Δt0は、例えば、VOA370の応答時間、S20の判定において立下りの状態を維持させる時間等に応じて定めれば良い。
【0063】
図6(A)及び(B)は、横軸に時間(t)を取って示し、縦軸に受光パワーを取って示している。図4を参照して説明した強度調整では、LOL信号を用いて、クロック抽出が行われているか判定し、それにより、強度を設定する。
【0064】
従って、受信パワーが適正レベルになるまでは、VOA370の応答時間等に応じて定められた時間間隔Δt0ごとにVOA値、すなわち、受光パワーが変更される。受光パワーが適正レベルになり、クロック抽出が安定して行われるようになると、その後、ヘッダ解析が行われ、プレゼンス確認要求信号の受信を確認する。
【0065】
このため、プレゼンス確認は、VOA370の応答時間に応じて定まる時間で、速やかに行われる(図6(A))。
【0066】
例えば、LOL信号を用いずに、受信信号のヘッダ解析により、プレゼンス確認要求信号の受信を確認しても良い。しかし、ヘッダ解析を行う場合は、VOA370の応答時間に加えて、ヘッダ解析に必要な時間に応じて定められる。従って、ヘッダ解析を行う場合の、減衰値を変化させる時間間隔Δt1は、LOL信号を用いる場合の時間間隔Δt0に比べて大きくなる。このため、プレゼンス確認に要する時間も長くなる(図6(B))。
【0067】
以上説明したように、この発明の構成によれば、プレゼンス確認時に、ONUにおいて、OLTから受け取る光信号の強度を制御する。この結果、ONUが受信する光信号の強度がダイナミックレンジ内に収まり、確実にOLTからのプレゼンス確認要求信号を受信することができる。
【0068】
また、減衰量の制御をCDR回路のLOL信号を用いて行うと、強度調整の間は、ヘッダ解析が不要である。この結果、ヘッダ解析に要する時間に比べて、LOL信号によるクロックの有無の判定に要する時間は短いので、短期間で強度調整を完了することができる。
【0069】
ここでは、減衰値を最小値から最大値まで順次に変化させながら、強度調整を行う例について説明したが、これに限定されない。減衰値を最大値から最小値まで順次に変化させながら強度調整を行っても良い。また、この構成は、CDM技術を用いた通信に限定されず、TDM(Time Division Multiplexing)やWDM(Wavelength Multiplexing)等、 PONシステムでの他の通信にも適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
100 PONシステム
200 局側装置(OLT)
210、310 送信部
220、320 電気−光変換部(LD)
230、330 光合分波部
240、340 光−電気変換部(APD)
250、350 受信部
260 局側制御部
300 加入者端末(ONU)
360 加入者側制御部
362 クロック抽出判定手段
364 受信レベル調整手段
366 減衰量変更手段
370 可変光減衰部(VOA)
380 クロック発生部
390 クロック抽出部
400 光分岐器
410 光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの局側装置が、複数の加入者端末に接続されて構成される光通信ネットワークで用いられる加入者端末であって、
前記局側装置から受信する光信号に対して減衰を与える可変光減衰部と、
前記可変光減衰部を経て受け取る光信号を、電気信号に変換する光―電気変換部と、
前記電気信号からクロックを抽出するとともに、クロックが安定に抽出されているか否かを示すクロック抽出情報信号を生成するクロック抽出部と、
加入者側制御部と
を備え、
前記加入者側制御部は、
前記クロック抽出情報信号に基づいて、前記クロック抽出部がクロックを安定に抽出しているか否かを判定するクロック抽出判定手段と、
減衰値を予め定められた最小値以上かつ最大値以下の値に設定する受信レベル調整手段と、
前記可変光減衰部の減衰量を、前記減衰値に変更させる減衰量変更手段と
を備えることを特徴とする加入者端末。
【請求項2】
前記クロック抽出部が、クロックデータリカバリー回路で構成され、
前記クロック抽出情報信号がロスオブロック信号である
ことを特徴とする請求項1に記載の加入者端末。
【請求項3】
1つの局側装置が、複数の加入者端末に接続されて構成される光通信ネットワークであって、
前記加入者端末は、
前記局側装置から受信する光信号に対して減衰を与える可変光減衰部と、
前記可変光減衰部を経て受け取る光信号を、電気信号に変換する光―電気変換部と、
前記電気信号からクロックを抽出するとともに、クロックが安定に抽出されているか否かを示すクロック抽出情報信号を生成するクロック抽出部と、
加入者側制御部と
を備え、
前記加入者側制御部は、
前記クロック抽出情報信号に基づいて、前記クロック抽出部がクロックを安定に抽出しているか否かを判定するクロック抽出判定手段と、
減衰値を予め定められた最小値以上かつ最大値以下の値に設定する受信レベル調整手段と、
前記可変光減衰部の減衰量を、前記減衰値に変更させる減衰量変更手段と
を備えることを特徴とする光通信ネットワーク。
【請求項4】
前記クロック抽出部が、クロックデータリカバリー回路で構成され、
前記クロック抽出情報信号がロスオブロック信号である
ことを特徴とする請求項3に記載の光通信ネットワーク。
【請求項5】
1つの局側装置が複数の加入者端末に接続されて構成される光通信ネットワークで用いられる、局側装置から受信する光信号に対して減衰を与える可変光減衰部と、前記可変光減衰部を経て受け取る光信号を電気信号に変換する光―電気変換部と、前記電気信号からクロックを抽出するとともに、クロックが安定に抽出されているか否かを示すクロック抽出情報信号を生成するクロック抽出部と、加入者側制御部とを備える加入者端末が行う、光信号の強度調整方法であって、
前記可変光減衰部の減衰量を予め設定された最小値に変更する過程と、
前記クロック抽出部が、クロックを安定して抽出しているかを判定する過程と
を備え、
判定の結果、クロック抽出が安定して行われていない場合は、前記減衰量が予め設定された最大値に等しいか否かを判定し、
前記減衰量が前記最大値に等しい場合は、続いて前記減衰量を前記最小値に変更し、一方、前記減衰量が前記最大値と異なる場合は、続いて前記減衰量を1段階大きく変更し、その後、クロックを安定して抽出しているかを判定する過程を行う
ことを特徴とする光通信ネットワークにおける光信号の強度調整方法。
【請求項6】
1つの局側装置が複数の加入者端末に接続されて構成される光通信ネットワークで用いられる、局側装置から受信する光信号に対して減衰を与える可変光減衰部と、前記可変光減衰部を経て受け取る光信号を電気信号に変換する光―電気変換部と、前記電気信号からクロックを抽出するとともに、クロックが安定に抽出されているか否かを示すクロック抽出情報信号を生成するクロック抽出部と、加入者側制御部とを備える加入者端末が行う、光信号の強度調整方法であって、
前記可変光減衰部の減衰量を予め設定された最大値に変更する過程と、
前記クロック抽出部が、クロックを安定して抽出しているかを判定する過程と
を備え、
判定の結果、クロック抽出が安定して行われていない場合は、前記減衰量が予め設定された最小値に等しいか否かを判定し、
前記減衰量が前記最小値に等しい場合は、続いて前記減衰量を前記最大値に変更し、一方、前記減衰量が前記最小値と異なる場合は、続いて前記減衰量を1段階小さく変更し、その後、クロックを安定して抽出しているかを判定する過程を行う
ことを特徴とする光通信ネットワークにおける光信号の強度調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−23793(P2011−23793A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164631(P2009−164631)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】