説明

加工装置

【課題】ファンに加工屑等の異物が付着する恐れを低減してファンの吸引力の低下を防止可能な加工装置を提供する。
【解決手段】チャックテーブルと、加工手段24と、加工液供給手段と、加工室31と、一端が該加工室31に連通すると共に他端がファン45に連通して該加工室31内の雰囲気を排気する排気路44とを備えた加工装置であって、該加工室31から該排気路44に流入した排気に含まれる廃液を気体から分離する分離手段48を更に具備し、該分離手段48は、一端に該加工室31に連通する吸気口54を有する底部50aと、上端部に該ファン45に連通する気体排出口56を有する立ち上がり部50bと、該底部50aと該立ち上がり部50bとを連結する屈曲部50cとから構成される筒状本体50と、該筒状本体50の該底部50aに形成された廃液を排出する廃液排出口58と、該廃液排出口58に連通する廃液排出路60と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物を加工する加工装置に関し、特に、加工室内の雰囲気を排気するファンと排気路とを備えた加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造プロセスでは、シリコンやガリウム砒素等の半導体材料からなるウエーハの表面に格子状の分割予定ラインが設定され、分割予定ラインで区画された各領域にIC、LSI等のデバイスが形成される。
【0003】
このようなウエーハは、裏面が研削されて所定の厚みに薄化された後、分割予定ラインに沿って切断することにより、多数のデバイスチップに分割される。このようにして得られたデバイスチップは、樹脂やセラミックスでパッケージングされ、各種電気機器に実装される。
【0004】
ウエーハを分割する装置としては、回転する切削ブレードを分割予定ラインに沿ってウエーハに切り込ませて切削する切削装置が一般的であり、ウエーハの裏面研削には、ウエーハの裏面に回転する砥石を押し付けて研削する研削装置が用いられる。
【0005】
この種の切削装置や研削装置といった加工装置においては、密閉された加工室内においてチャックテーブルで保持した被加工物を切削ブレードや研削砥石等の加工手段で加工する構成が一般的である。
【0006】
そして加工の際には、加工手段が被加工物に接する加工点に加工液を供給しながら加工が遂行される。加工液は、加工によって生じる加工屑を被加工物から除去したり加工点を冷却したりする目的で供給され、加工屑が混入した加工液は廃液として加工装置外に排出される。
【0007】
一方、加工室内の雰囲気はダクト(排気路)を通じて装置外に排気され、ダクトの途中には、加工室内の雰囲気をダクト内に吸入して排気口に送り込むファンが設けられている。加工装置の中には、ダクト及びファンが内蔵されているタイプのものもある(例えば、特開2000−124165号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−124165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、このような構成の加工装置では、加工室からの排気中に加工屑が混じった加工液(廃液)が混入すると、ファンに加工屑が付着し、ファンの回転が低下したり振動が発生して吸引力が低下する恐れがある。
【0010】
また、加工液の循環路(循環ライン)を設けて加工液を循環して使用している加工装置の場合には、加工室からの排気中に加工液が混入すると加工液が循環ラインから排出されてしまうため、頻繁に加工液を補充しなければならないという問題がある。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、加工室からの排気中に混じった加工液(廃液)を排気から分離することでファンに異物が付着する恐れを低減し、ファンの吸引力低下を防止するとともに加工液を循環して使用している場合には、加工液の消失を低減可能な加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された被加工物を加工する加工手段と、該加工手段と被加工物とに加工液を供給する加工液供給手段と、該チャックテーブルと該加工手段と該加工液供給手段とを囲繞する加工室と、一端が該加工室に連通すると共に他端がファンに連通して該加工室内の雰囲気を排気する排気路とを備えた加工装置であって、該加工室と該ファンとの間の該排気路中に配設され、該加工室から該排気路に流入した排気に含まれる廃液を気体から分離する分離手段を更に具備し、該分離手段は、一端に該加工室に連通する吸気口を有する底部と、上端部に該ファンに連通する気体排出口を有する立ち上がり部と、該底部と該立ち上がり部とを連結する屈曲部とから構成される筒状本体と、該筒状本体の該底部に形成された廃液を排出する廃液排出口と、該廃液排出口に連通する廃液排出路と、を含むことを特徴とする加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の加工装置は、排気中に含まれる廃液を気体から分離する分離手段を排気路中に備えているため、ファンに加工屑が付着する恐れを低減できるとともにファンの吸引力低下を防止でき、加工液を循環して使用している場合には、加工液の消失を低減することができる。
【0014】
本発明の分離手段は底部、立ち上がり部及び底部と立ち上がり部を連結する屈曲部とを有する筒状本体から構成されるため、構造がシンプルであり比較的容易且つ安価に製造できる。
【0015】
吸気口から流入した排気が屈曲部を介して立ち上がり部に流動するが、屈曲部を通過する際の内周側と内周側の速度の違いによって圧力差が生じるため、筒状本体内部には回転上昇気流が発生する。この回転上昇気流によって排気は気体排出口に排出され、排気中に含まれる廃液が重力によって排気中から効率に分離され、廃液排出口から排出される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】切削装置の外観斜視図である。
【図2】切削装置の要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、加工装置の一種である本発明実施形態に係る切削装置(ダイシング装置)2の外観斜視図が示されている。切削装置2の前面側には、オペレータが加工条件等の装置に対する指示を入力するための操作パネル4が設けられている。
【0018】
切削対象のウエーハWは粘着テープであるダイシングテープTに貼着され、ダイシングテープTの外周縁部は環状フレームFに貼着される。これにより、ウエーハWはダイシングテープTを介して環状フレームFに支持された状態となり、ウエーハカセット6中にウエーハが複数枚(例えば25枚)収容される。ウエーハカセット6は上下動可能なカセットエレベータ8上に載置される。
【0019】
ウエーハカセット6の後方には、ウエーハカセット6から切削前のウエーハWを搬出するとともに、切削後のウエーハをウエーハカセット6に搬入する搬出入手段10が配設されている。ウエーハカセット8と搬出入手段10との間には、搬出入対象のウエーハが一時的に載置される領域である仮置き領域12が設けられており、仮置き領域12には、ウエーハWを一定の位置に位置合わせする位置合わせ手段14が配設されている。
【0020】
仮置き領域12の近傍には、ウエーハWと一体となったフレームFを吸着して搬送する旋回アームを有する搬送手段16が配設されており、仮置き領域12に搬出されたウエーハWは、搬送手段16により吸着されてチャックテーブル18上に搬送され、このチャックテーブル18に吸引されるとともに、複数のクランプ19によりフレームFが固定されることでチャックテーブル18上に保持される。
【0021】
チャックテーブル18は、回転可能且つX軸方向に往復動可能に構成されており、チャックテーブル18のX軸方向の移動経路の上方には、ウエーハWの切削すべきストリートを検出するアライメントユニット20が配設されている。
【0022】
アライメントユニット20は、ウエーハWの表面を撮像する撮像ユニット22を備えており、撮像により取得した画像に基づき、パターンマッチング等の処理によって切削すべきストリートを検出することができる。撮像ユニット22によって取得された画像は、図示を省略した表示モニタに表示される。
【0023】
アライメントユニット20の左側には、チャックテーブル18に保持されたウエーハWに対して切削加工を施す切削ユニット24が配設されている。切削ユニット24はアライメントユニット20と一体的に構成されており、両者が連動してY軸方向及びZ軸方向に移動する。
【0024】
切削ユニット24は、回転可能なスピンドル26の先端に切削ブレード28が装着されて構成され、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能となっている。切削ブレード28は撮像ユニット22のX軸方向の延長線上に位置している。
【0025】
切削加工の終了したウエーハWは搬送手段25によりスピンナ洗浄装置27まで搬送され、スピンナ洗浄装置27で洗浄されるとともにスピン乾燥される。
【0026】
切削装置2の上述したような機構部分は筐体30内に収容されている。筐体30はフレーム32と、フレーム32に装着されたアクリル樹脂等から形成された透明プレート34から構成される。
【0027】
オペレータは、取っ手36を掴んでカバー37を開閉することによりチャックテーブル18にアクセスすることができ、取っ手38を掴んでカバー39を開閉することにより切削ユニット24にアクセスすることができる。
【0028】
更に、取っ手40を掴んでカバー41を開閉することによりカセットエレベータ8上にウエーハカセット6を載置したり、ウエーハカセット6をカセットエレベータ8上から取り出すことができる。
【0029】
図2を参照すると、本発明実施形態に係る切削装置2の要部断面図が示されている。切削装置2の筐体30内には加工室31が画成されている。加工室31内には、チャックテーブル18に保持されたウエーハWと、切削ユニット24が収容されている。切削ユニット24の切削ブレード28の両側には切削液供給ノズル29が配設されている。
【0030】
加工室31の後側(図2で左側)には隔壁42が設けられており、この隔壁42には排気口43が形成されている。排気口43には排気路(ダクト)44の一端が連通されている。排気路44の他端は切削装置2内に設置されたファン45に連通しており、排気路44の他端側には切削装置2の外部まで伸びる排気管46が接続されている。
【0031】
排気路44の途中の加工室31とファン45との間には、排気を気体と液体とに分離する分離手段(分離ユニット)48が配設されている。ここで、排気路44を加工室31と分離手段48との間と、分離手段48とファン45との間の二つに分け、前者を上流側排気路44A、後者を下流側排気路44Bとする。排気管46は、下流側排気路44Bの末端に接続されている。
【0032】
分離手段48は底部50aと、立ち上がり部50bと、底部50aと立ち上がり部50bとを連結する屈曲部50cとを有するJ形状筒状本体50を含んでいる。J形状筒状本体50は底部50aの一端で上流側排気路44Aと接続されている。52はシール機能を有する環状接続部材である。
【0033】
J形状筒状本体50は、底部50aの一端で上流側排気路44Aを介して加工室31に連通する吸気口54を構成し、立ち上がり部50bの上端部でファン45に連通する気体排出口56を構成する。底部50aには廃液を排出する廃液排出口54が形成されており、廃液排出口54には廃液排出路60が接続されている。
【0034】
本実施形態の切削装置2では、ファン45を駆動すると、加工室31内の雰囲気が排気口43を介して上流側排気路44A内に吸入されて、分離ユニット48を構成するJ形状筒状本体50の吸気口54からJ形状筒状本体50内に導入される。
【0035】
そして、J形状筒状本体50の屈曲部50c及び立ち上がり部50bを通って気体排出口56を介して下流側排気路44Bに排出され、排気管46を経て切削装置2の外部に排気される。
【0036】
このようにして、加工室31内の雰囲気が排気されることにより、加工室31内は清浄な雰囲気に維持される。排気が通過する分離ユニット48においては、排気がJ形状筒状本体50の屈曲部50cを通過する際に屈曲部50cの内周側と外周側での速度の違いによって圧力差が生じ、J形状筒状本体50内には回転上昇気流が発生する。即ち、J形状筒状本体50内では、排気が渦巻状に回転してから上方の気体排出口56を介して下流側排気路44Bに排出されていく。
【0037】
ウエーハWの切削加工時には、切削液供給ノズル29から切削液を供給しながら切削ブレード28による切削加工が実施されており、切削液は回転する切削ブレード28により跳ね上げられてミスト状に飛散する。
【0038】
このミスト状となった切削液は廃液であって、その中には加工屑等の異物が混じっている場合が多く、排気に混入した状態で排気口43から上流側排気路44Aを経て分離ユニット48の吸気口54を介してJ形状筒状本体50内に導入される。
【0039】
J形状筒状本体50内に導入された廃液を含む排気は、屈曲部50cを通過する際の速度の相違によって圧力差が生じ、この圧力差によって渦巻き上昇気流が発生する。排気中に含まれる廃液は重力によって排気から効率的に分離され、廃液排出口58から廃液排出路60に排出される。一方、廃液が分離された排気は渦巻き上昇気流に乗って気体排出口56から下流側排気路44Bに排出される。
【0040】
このように、ミスト状の廃液を含む加工室31内の雰囲気を排気しても、その排気が分離ユニット48を通過することによって気体と液体とに分離され、気体のみが気体排出口56から排出され、異物を含む廃液は廃液排出口58から排出される。
【0041】
従って、ミスト状の廃液がファン45を通ることがなく、このため廃液に含まれる加工屑等の異物がファン45に付着する恐れが低減される。その結果、ファン45の吸引力の低下が防止される。
【0042】
加工装置2が加工液の循環ラインを設けて加工液を循環して使用している場合には、J形状筒状本体50の廃液排出口58を濾過装置を介して循環ラインに接続することにより、加工液の消失を低減することができる。
【0043】
上述した実施形態では、加工装置2内にファン45及び分離手段48を配設した例について説明したが、加工室内の雰囲気を排気するファンを有する排気設備が加工装置が設置された工場内に設けられている場合には、排気設備に分離手段48を設けるようにしてもよい。
【0044】
尚、上述した実施形態は本発明を切削装置に適用した例について説明したが、本発明は切削装置に限らず、研削装置、研磨装置、バイト切削装置等の各種加工装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
2 切削装置
24 切削ユニット
28 切削ブレード
30 筐体
31 加工室
44 排気路
45 ファン
46 排気管
48 分離手段
50 J形状筒状本体
50a 底部
50b 立ち上がり部
50c 屈曲部
54 吸気口
56 気体排出口
58 廃液排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された被加工物を加工する加工手段と、該加工手段と被加工物とに加工液を供給する加工液供給手段と、該チャックテーブルと該加工手段と該加工液供給手段とを囲繞する加工室と、一端が該加工室に連通すると共に他端がファンに連通して該加工室内の雰囲気を排気する排気路とを備えた加工装置であって、
該加工室と該ファンとの間の該排気路中に配設され、該加工室から該排気路に流入した排気に含まれる廃液を気体から分離する分離手段を更に具備し、
該分離手段は、一端に該加工室に連通する吸気口を有する底部と、上端部に該ファンに連通する気体排出口を有する立ち上がり部と、該底部と該立ち上がり部とを連結する屈曲部とから構成される筒状本体と、
該筒状本体の該底部に形成された廃液を排出する廃液排出口と、
該廃液排出口に連通する廃液排出路と、
を含むことを特徴とする加工装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−86201(P2013−86201A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227656(P2011−227656)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】