説明

加熱調理器

【課題】加熱室内からの熱リークを極力防止することができると共に、加熱効率の向上を図ることができる加熱調理器を提供する。
【解決手段】金属板製の加熱室4の内面を、蓄熱性及び耐熱性を有する非金属で板状のセラミックス部材5及びセラミックス板20で覆う構成とする。熱風供給装置13が生成する熱風は、加熱室4を形成する金属板製の上壁板4aや底壁板4eに接触することなく加熱室4内に供給され循環する。熱風供給装置13が生成する熱風が、加熱室4内に供給され循環する構成としたので、加熱室4内の熱がセラミックス部材5やセラミックス板20に吸収され難い状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱室が金属板で構成されている加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子レンジなどの加熱調理器は、マグネトロンによるマイクロ波加熱と、ヒータによる加熱調理や熱風調理を行うことができるようになっているものが多い。そして、この種の加熱調理器の加熱室は、金属板で構成されていることが一般的である。そのため、加熱室内の熱が加熱室を形成する金属板に吸収され、当該加熱室内からの熱漏れ(熱リーク)が発生するという問題がある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に記載されているように、加熱室の外面を断熱成型体で覆う構成のものや、特許文献2に記載されているように、加熱室内にヒータを設けた加熱調理器において、加熱室の内面をセラミックスで覆う構成のものが考えられている。
【特許文献1】実開平5−79305号公報
【特許文献2】特開平11−118158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の加熱調理器では、加熱室の外面が断熱成型体で覆われていることから、発熱体(ヒータ)による熱が金属板に吸収され易くなっている。そのため、加熱室の外面からの熱リークを防止することができたとしても、加熱室内の熱が金属板に吸収されることを防止することができず、結果として、加熱室内からの熱リークを防止することができない可能性がある。また、この種の加熱調理器において、加熱室内に熱風を循環させる構成とした場合、調理物の加熱効率を良くするため、熱風の風速を速くすることがある。しかしながら、熱風の風速を速くすると、熱風が加熱室を形成する金属板に接触する頻度が大きくなり、その分、金属板に吸収されてしまう加熱室内の熱の量、つまり、加熱室内からの熱リークの量も大きくなるという問題がある。
【0005】
一方で、上記した特許文献2の加熱調理器では、加熱室の内面がセラミックスで覆われていることから、加熱室内においてヒータからの輻射熱が加熱室を形成する金属板に直接接触することがなく、従って、加熱室内からの熱リークを抑えることができる。しかしながら、ヒータからの輻射熱の一部が加熱室内に拡散する前にセラミックスに吸収されてしまい、結果として、加熱効率が悪くなる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加熱室内からの熱リークを極力防止することができると共に、加熱効率の向上を図ることができる加熱調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の加熱調理器は、キャビネット内に設けられ、前面に開口部を有すると共に内部に調理物が収容される金属板製の加熱室と、この加熱室の前面開口部を開閉する扉と、発熱手段及び熱風用ファンを有し、熱風を生成すると共に、その熱風を前記加熱室内に供給して循環させる熱風調理用の熱風供給装置とを備え、前記加熱室の内面を、セラミックスなどからなり蓄熱性及び耐熱性を有する非金属で板状の無機材で覆ったことに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の加熱調理器によれば、金属板製の加熱室の内面を、セラミックスなどからなり蓄熱性及び耐熱性を有する非金属で板状の無機材で覆ったので、熱風供給装置が生成する熱風を、加熱室を形成する金属板に接触させることなく加熱室内に供給して循環させることができ、加熱室内からの熱リークを極力防止することができる。また、ヒータからの輻射熱を加熱室内に拡散させるのではなく、熱風供給装置が生成する熱風を加熱室内に供給して循環させる構成としたので、加熱室内の熱が非金属で板状の無機材に吸収され難い状態を実現でき、加熱効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1及び図2に示すように、加熱調理器1の外郭を構成する金属製の矩形状のキャビネット2内には、前面に開口部3を有する金属板製(例えばステンレス鋼製)の矩形状の加熱室4が設けられている。加熱室4の上壁板4aの内面(加熱室4の内面上部)及び加熱室4の左右の両側壁板4b,4cの内面(加熱室4の内面両側部)は、例えばアルミナを主体とするいわゆるセラミックスにより構成され蓄熱性及び耐熱性を有するセラミックス部材5(非金属で板状の無機材に相当)で覆われている。このセラミックス部材5の構成については後述する。
【0010】
加熱室4(キャビネット2)の前部には、加熱室4の開口部3を開閉するための扉6が上下方向に回動可能に枢設されている。この扉6の内面は、複数の孔7を有する金属板8で構成されていて、更に、この金属板8の内面(扉6の内面)は、透明な板状の耐熱ガラス9で覆われている。この耐熱ガラス9は、セラミックス部材5と同様に蓄熱性及び耐熱性を有するものであり、非金属で板状の無機材としての機能も担うものである。
【0011】
加熱室4における後壁板4dの背部には、空気を加熱する発熱ヒータ10(発熱手段に相当)及びモータ11により回転する熱風用ファン12を備えた熱風供給装置13が設けられている。熱風供給装置13は、発熱ヒータ10によって加熱した空気を熱風用ファン12によって送風することにより熱風を生成する。一方、加熱室4の後壁板4dの上段部及び下段部(発熱ヒータ10に対向する部分)には複数の熱風吹き出し孔14が設けられている。また、加熱室4の後壁板4dの中段部(熱風用ファン12の中央部に対向する部分)には複数の熱風吸い込み孔15が設けられている。そして、熱風供給装置13は、生成した熱風を、熱風吹き出し孔14を通して加熱室4内に吹き出し、熱風吸い込み孔15を通して吸い込むことにより、加熱室4内で循環させるようになっている(図1に示す白抜き矢印参照)。尚、この熱風供給装置13の後部の外郭を構成するカバー16も、セラミックス部材5と同様に蓄熱性及び耐熱性を有する無機材で構成されている。
【0012】
加熱室4の底壁板4eには励振口17が形成されており、この励振口17は、加熱室4の下方に配設された導波管18を介して、加熱室4の後方に設けられたマグネトロン19(マイクロ波供給手段に相当)に連通されている。また、加熱室4の底壁板4eの内面(加熱室4の内面下部)には、励振口17を閉塞するようにしてセラミックス板20が設けられている。このセラミックス板20はマイクロ波を透過可能に構成されている。そして、マグネトロン19から発生するマイクロ波が、導波管18内で反射されながら励振口17からセラミックス板20を透過して加熱室4内に供給されるようになっている。尚、このセラミックス板20も、セラミックス部材5と同様に蓄熱性及び耐熱性を有するものであり、非金属で板状の無機材としての機能も担うものである。
【0013】
次に、上記したセラミックス部材5について図3を参照して説明する。
セラミックス部材5は、加熱室4の内面上部(上壁板4aの内面)を覆う上板5a及び加熱室4の内面両側部(両側壁板4b,4cの内面)を覆う両側板5b,5cが一体的に形成され、正面視にて下側が開口した略コの字状の形状をなしている。上板5a及び両側板5b,5cの外面には、セラミックス部材5(加熱室4)の前後方向に延びる凸状の複数の仕切り部21が設けられている。また、両側板5b,5cの内面には、セラミックス部材5の前後方向に延びる一対の支え部22a,22bが設けられている。この一対の支え部22a,22bは、調理物23を載せる棚板24(図1及び図2参照)を支えるためのものである。
【0014】
上記した加熱室4の上壁板4aの一部には凹部25aが設けられ、加熱室4の両側壁板4b,4cの一部には凹部25b,25cが設けられている。そして、加熱室4内にセラミックス部材5を取り付けた状態では、加熱室4の上壁板4aの内面とセラミックス部材5の上板5aの上面との間に空間部26aが形成され、加熱室4の両側壁板4b,4cの内面とセラミックス部材5の両側板5b,5cの外面との間に空間部26b,26cが形成される。これらの空間部26a,26b,26cは、セラミックス部材5の仕切り部21によって複数の空間に仕切られることとなる。尚、加熱室4の上壁板4a(凹部25a)及び両側壁板4b,4c(凹部25b,25c)には複数の孔27が設けられている。この複数の孔27の構成については後述する。
【0015】
次に、加熱室4の内面をセラミックス部材5で覆うことにより得られる蓄熱効果について説明する。
上記した構成の加熱調理器1において扉6を閉めると、加熱室4の内面上部(上壁板4aの内面)、内面両側部(両側壁板4b,4cの内面)、内面下部(底壁板4eの内面)及び内面前部(扉6の内面)の5面が、蓄熱性及び耐熱性を有する非金属で板状の無機材(セラミックス部材5、耐熱ガラス9或いはセラミックス板20)で覆われた状態となる。
【0016】
ここで、例えば無機材5,9,20の板厚を0.5[cm]、各面の一辺の長さを25[cm]、比重を1.9、比熱を0.844[J/g・K]で設計したとすると、無機材5,9,20全体の重量Wは、
W=25[cm]×25[cm]×0.5[cm]×1.9×5[面]
≒3000[g]
と算出される。
【0017】
この3000[g]の無機材5,9,20を室温より100[K]高い温度まで加熱した場合に、当該無機材5,9,20に蓄熱される熱量qは、
q=3000[g]×0.844[J/g・K]×100[K]
≒250[kJ](≒60[kcal])
と算出される。そして、この250[kJ]の熱量を、例えば5分間で無機材5,9,20に蓄熱するために必要なマイクロ波の電力Pwは、
Pw=250[kJ]/(5[分]×60[秒])
≒830[W]
と算出される。
【0018】
つまり、830[W]の電力で5分間、加熱室4内にマイクロ波を供給することにより、無機材5,9,20が室温より100[K]高い温度まで加熱され、これによって、250[kJ]の熱量(1000[cc]の水を70[K]上昇させる熱量に相当)を、当該無機材5,9,20に蓄熱することができる。
【0019】
次に、加熱室4の上壁板4a及び両側壁板4b,4cに設けられた複数の孔27の構成と、この複数の孔27を設けることにより得られるマイクロ波の損失改善効果について説明する。
図4に示すように、複数の孔27は、それぞれ直径Dの丸孔状に形成されている。また、複数の孔27は、各孔27間のピッチPが等しくなるように(一辺の長さがPの三角形を形成するように)配列されている。この場合、上壁板4a及び両側壁板4b,4cの板厚をT、マイクロ波の波長をλ、各孔27の列間距離をQとすると、マイクロ波電界減衰量Sは、近似的に、式(1)により算出される。
【0020】
【数1】

ここで、例えば、直径D=5[mm]、ピッチP=6[mm]、板厚T=0.5[mm]に設定した場合のマイクロ波電界減衰量Sを算出してみる。
この場合、列間距離Qは、式(2)により、
【0021】
【数2】

と算出される。また、マグネトロン19が発生するマイクロ波の周波数は通常2.45[GHz]であるので、その波長λは120[mm]となる。従って、これらの数値を(1)式に代入するとマイクロ波電界減衰量Sは26[dB]と算出される。これは、マイクロ波電力で1/400の減衰となり妥当な数値である。
【0022】
即ち、加熱室4を形成する金属板製の壁板(上壁板4a及び両側壁板4b,4c)に、複数の孔27を設けることによって当該壁板4a,4b,4cの面積が少なくなり、これにより、加熱室4の壁板4a,4b,4cでのマイクロ波の損失(壁板4a,4b,4cに吸収されるマイクロ波の量)を十分に抑えることができる。
【0023】
次に、上記した構成の作用について説明する。ここでは、
(1)予熱動作を行う場合
(2)熱風調理動作を行う場合
(3)マイクロ波調理動作を行う場合
に場合分けをして順次説明する。
【0024】
(1)予熱動作を行う場合
加熱調理器1は、熱風供給装置13による熱風調理の開始前において加熱室4内を加熱するために予熱動作を行う。尚、この予熱動作は加熱室4内に調理物を収容しない状態で行う。この予熱動作時において、加熱調理器1は、熱風供給装置13によって加熱室4内に熱風を供給すると共に、マグネトロン19によって加熱室4内にマイクロ波を供給する。
【0025】
この場合、金属板製の加熱室4の内面(上壁板4aの内面、両側壁板4b,4cの内面及び底壁板4eの内面)を無機材(セラミックス部材5及びセラミックス板20)で覆うと共に、扉6の内面(金属板8の内面)を無機材(耐熱ガラス9)で覆ったので、熱風供給装置13が加熱室4内に供給した熱風は、加熱室4を形成する金属板製の壁板(上壁板4a、両側壁板4b,4c、底壁板4e)や扉6の金属板8に接触することなく加熱室4内を循環する。また、加熱室4内に供給されたマイクロ波によって、加熱室4の内面や扉6の内面を覆う無機材5,9,20が加熱され、発生した熱が当該無機材5,9,20に蓄熱される。
【0026】
これにより、熱風供給装置13からの熱風によって加熱室4内が加熱されるのみならず、無機材5,9,20に蓄熱された熱によっても加熱室4内が加熱されることとなる。また、無機材5,9,20が加熱室4の内面や扉6の内面を覆っていることから、加熱室4内の熱が壁板4a,4b,4c,4eや扉6の金属板8に吸収され難くなり、加熱室4内の温度が上昇し易くなる。
【0027】
ここで、予熱動作時の加熱室4内の温度の変化ついて、図5及び図6に基づいて説明する。図5中aは、加熱室4の内面や扉6の内面を無機材5,9,20で覆った場合を示し、図5中bは、加熱室4の内面や扉6の内面を無機材5,9,20で覆わない場合を示す。また、図6は、図5において加熱室4内の温度が所定の温度(200[℃]、250[℃]及び300[℃])に到達するまでに要した時間(到達時間)と、到達時間の比(内面を無機材で覆った場合の到達時間/内面を無機材で覆わない場合の到達時間)とを示す。
【0028】
例えば、加熱室4内の温度が200[℃]に到達するまでの到達時間(200[℃]到達時間)は、加熱室4の内面を無機材5,9,20で覆わない場合では6[分]であり、これに対して、加熱室4の内面を無機材5,9,20で覆った場合では4[分]である。この場合、到達時間の比は、
到達時間の比=4[分]/6[分]
≒0.67
と算出される。これは、加熱室4の内面を無機材5,9,20で覆った場合の200[℃]到達時間(4[分])が、無機材5,9,20で覆わない場合の200[℃]到達時間(6[分])の約67[パーセント]の時間であること(加熱室4の内面を無機材5,9,20で覆った場合の200[℃]到達時間(4[分])が、無機材5,9,20で覆わない場合の200[℃]到達時間(6[分])に比べ、約33[パーセント]短くなっていること)を示している。つまり、加熱室4の内面や扉6の内面を無機材5,9,20で覆ったことによって加熱室4内の温度が上昇し易くなり、これにより、加熱室4の内面や扉6の内面を無機材5,9,20で覆わない場合に比べ、加熱室4内の温度を短時間で所定の温度に到達させることができる。
【0029】
(2)熱風調理動作を行う場合
加熱調理器1は、熱風供給装置13によって熱風を加熱室4内に供給して循環させることにより、調理物23の熱風調理を行う。この場合、熱風供給装置13が加熱室4内に供給した熱風は、上記した予熱動作時と同様に、加熱室4の内面や扉6の内面を覆う無機材5,9,20によって、加熱室4を形成する金属板製の壁板4a、4b,4c,4eや扉6の金属板8に接触することなく加熱室4内を循環する。また、加熱室4の内面や扉6の内面を覆う無機材5,9,20によって、加熱室4内の熱風の熱が壁板4a、4b,4c,4eや扉6の金属板8に吸収され難くなっている。従って、調理物23に高温の熱風を供給することができ、調理物23の温度が上昇し易くなる。この場合、熱風の風速を速くしたとしても、熱風が壁板4a、4b,4c,4eや扉6の金属板8に接触することはない。従って、熱風の風速を速くすることにより、更に調理物23の温度が上昇し易くなる。
【0030】
ここで、熱風調理動作時の調理物23の温度の変化について、図7に基づいて説明する。図7中cは、加熱室4の内面や扉6の内面を無機材5,9,20で覆った場合を示し、図7中dは、加熱室4の内面や扉6の内面を無機材5,9,20で覆わない場合を示す。尚、この場合、調理物23としては500[g]のアルミブロックを擬似的に用いている。
【0031】
図7において、例えば加熱時間が15[分]のときの調理物23の温度は、加熱室4の内面を無機材5,9,20で覆わない場合では62[℃]であり、これに対して、加熱室4の内面を無機材5,9,20で覆った場合では70[℃]である。つまり、加熱室4の内面や扉6の内面を無機材5,9,20で覆ったことによって調理物23の温度が上昇し易くなり、これにより、調理物23を高温で調理することができる。
【0032】
(3)マイクロ波調理動作を行う場合
加熱調理器1は、マグネトロン19からマイクロ波を加熱室4内に供給することにより、調理物23のマイクロ波調理を行う。この場合、加熱室4内に供給されたマイクロ波によって加熱室4内の調理物23が加熱され、当該調理物23から水蒸気が発生することとなる。このマイクロ波調理動作時に、加熱調理器1は、熱風供給装置13の熱風用ファン12を駆動することにより加熱室4内に風を供給する。加熱室4に風が供給されると、加熱室4内の空気が流動する。これにより、調理物23から発生した水蒸気も加熱室4内の空気と共に流動(循環)することとなり、当該水蒸気が耐熱ガラス9の内面に結露し難くなる。
【0033】
以上に説明したように本実施形態によれば、金属板製の加熱室4の内面を、蓄熱性及び耐熱性を有する非金属で板状のセラミックス部材5及びセラミックス板20で覆ったので、熱風供給装置13が生成する熱風を、加熱室4を形成する金属板製の壁板4a,4b,4c,4eに接触させることなく加熱室4内に供給して循環させることができ、加熱室4内からの熱リークを極力防止することができる。また、従来のようにヒータからの輻射熱を加熱室4内に拡散させるのではなく、熱風供給装置13が生成する熱風を加熱室4内に供給して循環させる構成としたので、加熱室4内の熱がセラミックス部材5やセラミックス板20に吸収され難い状態を実現でき、加熱効率の向上を図ることができる。
【0034】
また、熱風供給装置13の外郭を構成するカバー16も、セラミックス部材5と同様に蓄熱性及び耐熱性を有する無機材で構成したので、熱風供給装置13内からの熱リークも極力防止することができる。
マグネトロン19が加熱室4内にマイクロ波を供給するときに、熱風供給装置13の熱風用ファン12を駆動して加熱室4内に風を供給することにより、調理物23から発生する水蒸気を加熱室4内の空気と共に流動させることができる。これにより、調理物23から発生する水蒸気が扉6の内面を覆う耐熱ガラス9に結露することを極力防止することができるから、扉6の外側からその耐熱ガラス9を通して加熱室4内の調理物23の状態を容易に視認することができる。
【0035】
セラミックス部材5の加熱室4の内面上部(上壁板4aの内面)を覆う上板5a及び加熱室4の内面両側部(両側壁板4b,4cの内面)を覆う両側板5b,5cを一体的に形成したので、加熱室4の内面上部及び内面両側部の部分に、蓄熱性及び耐熱性を有する無機材を一度に配置することができ、加熱調理器1の組立てを効率良く行うことができる。
予熱動作時に、マグネトロン19によって加熱室4内にマイクロ波を供給することにより、無機材5,9,20を発熱させることができる。そして、この無機材5,9,20に発生した熱を予熱動作時に利用することによって、予熱動作を効率良く行うことができる。
加熱室4の内面とセラミックス部材5との間に空間部26a,26b,26cを設けたので、空間部26a,26b,26c内の空気による断熱作用が期待でき、加熱室4内からの熱リークをより一層防止することができる。
【0036】
また、空間部26a,26b,26cを仕切る仕切り部21を設けたので、空間部26a,26b,26c内で空気の対流が起こり難くなる。これにより、空間部26a,26b,26c内の空気による断熱作用が更に期待でき、加熱室4内からの熱リークをより一層防止することができる。また、仕切り部21によって加熱室4やセラミックス部材5を支えることができ、加熱室4やセラミックス部材5を補強することができる。
【0037】
加熱室4の内面を覆うセラミックス部材5やセラミックス板20を加熱することにより、このセラミックス部材5やセラミックス板20から遠赤外線を発生させることができ、この遠赤外線を利用して調理物23の加熱調理を行うことができる。この場合、セラミックス部材5やセラミックス板20の表面を釉薬で処理することも可能であり、この釉薬の種類を選択することにより、遠赤外線の発生効率(輻射効率)を高めることができる。
【0038】
尚、本発明は上記した一実施形態に限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。
無機材5,9,20の板厚Tや形状などは、加熱室4の形状や材質などに合わせて適宜変更することができる。また、後壁板4dの内面のうち、熱風吹き出し孔14及び熱風吸い込み孔15以外の部分を覆う無機材を設けても良い。無機材としては、いわゆるセラミックスの他、例えば結晶化ガラスで構成しても良い。
【0039】
扉6(金属板8)の孔7、熱風吹き出し孔14及び熱風吸い込み孔15を、図4に示すように、複数の孔27と同様の配列で構成しても良い。また、複数の孔27の配列は、図4に示す配列に限られるものではなく、壁板4a,4b,4cの板厚Tなどに合わせて適宜設計を変更しても良い。
【0040】
仕切り部21は、セラミックス部材5の上板5aにおいて、左右方向に沿って延びるように設けても良いし、前後方向及び左右方向に格子状に延びるように設けても良い。また、仕切り部21は、セラミックス部材5の両側板5b,5cおいて上下方向に沿って延びるように設けても良いし、前後方向及び上下方向に格子状に延びるように設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態を示すものであり、加熱調理器の内部構成を破断にして示す側面図
【図2】扉を開けた状態の加熱調理器を一部破断にして示す正面図
【図3】セラミックス部材の構成を示す斜視図
【図4】複数の孔の構成を示す図
【図5】予熱動作時の加熱時間と加熱室内の温度との関係を示す図
【図6】加熱室内の温度と到達時間の関係を示す図
【図7】熱風調理時の加熱時間と調理物の温度との関係を示す図
【符号の説明】
【0042】
図面中、1は加熱調理器、2はキャビネット、3は開口部、4は加熱室、5はセラミックス部材(無機材)、6は扉、9は耐熱ガラス(無機材)、10は発熱ヒータ(発熱手段)、12は熱風用ファン、13は熱風供給装置、19はマグネトロン(マイクロ波供給手段)、20はセラミックス板(無機材)、21は仕切り部、23は調理物、26a,26b,26cは空間部、27は孔を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネット内に設けられ、前面に開口部を有すると共に内部に調理物が収容される金属板製の加熱室と、
この加熱室の前面開口部を開閉する扉と、
発熱手段及び熱風用ファンを有し、熱風を生成すると共に、その熱風を前記加熱室内に供給して循環させる熱風調理用の熱風供給装置とを備え、
前記加熱室の内面を、セラミックスなどからなり蓄熱性及び耐熱性を有する非金属で板状の無機材で覆ったことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記加熱室内にマイクロ波を供給するマイクロ波供給手段を備えると共に、
前記扉の内面を透明な板状の耐熱ガラスで覆う構成とし、
前記マイクロ波供給手段が前記加熱室内にマイクロ波を供給するときに、前記熱風供給装置の前記熱風用ファンを駆動することを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記無機材のうち前記加熱室の内面上部及び内面両側部を覆う部分は、一体的に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記熱風供給装置による熱風調理の開始前において前記加熱室内に調理物を収容しない状態で前記加熱室内を加熱するために行う予熱動作時に、
前記マイクロ波供給手段によって前記加熱室内にマイクロ波を供給することを特徴とする請求項2に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記加熱室の内面と前記無機材との間に空間部を設けたことを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記空間部を仕切る仕切り部を設けたことを特徴とする請求項5に記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記加熱室内にマイクロ波を供給するマイクロ波供給手段を備えると共に、前記加熱室の壁部に複数の孔を設けたことを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−315697(P2007−315697A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146690(P2006−146690)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューママーケティング株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝家電製造株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】