説明

加熱調理器

【課題】簡単な構造で断熱効果が高く、より遠赤効果のあるオーブンレンジを提供する。
【解決手段】オーブンレンジ本体1の中に設けられ、調理物を収納して加熱調理するための加熱室2と、加熱室2の左右側面に形成された凹部4に空隙部6を形成して設けられたセラミック板5と、このセラミック板5の加熱室内に露出する面に設けられた凹凸と、加熱室2の底面外側に設置されたヒータ9とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーブンレンジ、電気オ−ブン等の加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱調理器は、加熱室内にヒータおよび回転皿が設けられ、その上下左右の内壁面にはセラミック板を組み合わせてなる断熱壁が取り付けられている。この断熱壁は、加熱室の最外部に設けられた金属製の枠体の内側に嵌合され、押さえ金具により固定されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−118158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の加熱調理器では、セラミック板の断熱壁を押さえ金具で固定しているため構造が複雑となり、しかも、押さえ金具が断熱壁(セラミック板)内に密着して露出し、その断熱壁が金属製の枠体に密着された状態になっているため、断熱効果が良いとはいえなかった。
【0005】
また、前記の加熱調理器を用いて、例えばヒータを複数の面に設けた場合、ヒータを有する面に対してセラミック板が存在するため、ヒータからの放射熱がセラミック板に吸収され易くなり加熱室内の温度立ち上がりが良くなかった。また、マグネトロンを用いた場合には、マグネトロンを有する面にセラミック板が存在すると、マイクロ波がセラミック板に吸収され、マイクロ波による加熱効率が良くなかった。
【0006】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、簡単な構造で断熱効果が高く、より遠赤効果のある加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る加熱調理器は、調理器本体と、調理器本体内に設けられ調理物を収納して加熱調理するための加熱室と、調理物を加熱する加熱手段と、加熱室の内壁の少なくとも2面に空隙部を形成して設けられたセラミック板と、セラミック板の加熱室内に露出する面に設けられた凹凸とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、セラミック板の加熱室内に露出する面に凹凸を設けたので、セラミック板の表面積が大きくなり、このため、遠赤外線の放射量が増加し、しかも、加熱室の内壁の少なくとも2面に設けられたセラミック板とで空隙部を形成しているので、加熱室内の温度を高温に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る加熱調理器のオーブンレンジを示す正面の断面図、図2はオーブンレンジの加熱室に設けられたセラミック板の形状を示す断面図、図3はセラミック板の拡大断面図である。
図1において、オーブンレンジ本体1の内部に、前面が開口された加熱室2が設けられている。この加熱室2は、天面、奥面、底面および左右側面がステンレス板等で形成された枠体3と、その枠体3の前面開口を開閉自在に覆うドア(図示せず)とで区画形成されている。枠体3の左右側面にはプレス成形により2段階に窪んだ凹部4が形成され、各凹部4にはセラミック板5がそれぞれ固着されている。加熱室2の底面外側には調理物を加熱するヒータ9が設置され、また、図示していないが、マイクロ波を加熱室2内に供給するマグネトロンが設けられている。
【0010】
前述したセラミック板5は、例えば、厚みが4mmで、平面形状が長方形あるいは正方形に形成され、金属製あるいはセラミック製の調理皿8を支持するための棚部7が形成されている。素材としては、ムライト、コーディライト系セラミックで、酸化ケイ素(SiO2 )、酸化アルミニウム(Al23)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO2 )等を主成分とするセラミック板5で構成されている。なお、これら素材に代えて、陶器、天然石、結晶化ガラス等などでも良い。
【0011】
このセラミック板5は、枠体3の左右側面に形成された凹部4の1段目の段部に嵌め込まれた状態になるように、外周縁部が枠体3の左右側面に接着剤10(例えばシリコン接着剤)で固着されている。このセラミック板5の設置により、凹部4の2段目の段部となる内側側面との間に、空気層が介在する空隙部6が形成されている。この空隙部6の寸法は、断熱層とするために2〜6mm以下になっている。空隙部6の寸法が大きいとセラミック板5の裏面と枠体3に形成された凹部4の内側側面との温度差により、密閉された空気層での垂直方向の自然対流が発生して熱移動となり断熱にならない。一般的に6mmを超えると熱対流が発生し、また、空隙部6の寸法が小さいと熱伝導となり断熱にならない。
【0012】
そこで、前述の如く空隙部6を2〜6mm以下とし、さらに、図2および図3に示すようにセラミック板5の加熱室内に露出する面(棚部7も含む)に0.5mm程度の微小の凹凸11を設けている。この凹凸11により、セラミック板5の空気と接触する面積は、表面が平滑に処理されたセラミック板よりも大きくなる。遠赤外線の放射量は面積に比例するため、セラミック板5から放射される遠赤外線量は多くなり、より大きな遠赤効果をもたらすことができ、また、表面積が大きいために断熱効果も大きくなる。
【0013】
実施の形態1によれば、微小の凹凸11が形成されたセラミック板5と空隙部6の断熱層による2重の断熱効果により、エネルギーロスが少なく省エネとなり、オーブンレンジ本体1からの放熱の温度が下がり、本体1を壁に接触させた状態での設置が可能になり、火傷傷害も防止できる。さらに、加熱室2の外側近傍に設けられた電気部品の周囲温度が下がるため、高温による電気部品の劣化を防止できオーブンレンジ本体1の長寿命化となる。また、空隙部6の断熱層により、セラミック板5に蓄熱された熱が冷め難くなり、加熱室2のオーブン温度を高温に保持することができる。
また、セラミック板5の表面に形成された凹凸11により表面積が大きくなっているので、ヒータ9の加熱によるセラミック板5からの遠赤外線の放射量が多くなり、しかも、空隙部6の断熱層により外部への放熱が抑えられるので、加熱室2内の調理物を包み込むような状態で均一に加熱調理できる。
【0014】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について図4を用いて説明する。図4は実施の形態2に係るオーブンレンジの加熱室に設けられたセラミック板の拡大断面図である。なお、本実施の形態のオーブンレンジは、セラミック板の構造を除いて、図1で説明した実施の形態1と同じである。
実施の形態2における加熱室2内のセラミック板5は、枠体3の左右側面に形成された凹部4の1段目の段部に嵌め込まれた状態になるように、外周縁部が枠体3の左右側面に接着剤10で固着され、凹部4の2段目の段部となる内側側面とで空隙部6を形成している。このセラミック板5の加熱室内に露出する面(棚部7も含む)には、0.5mm程度の微小の凹凸11が形成され、棚部7を除く表面には遠赤外線透過性を有するコーティング12が施されて平滑に仕上げられている。コーテイング12には主にリチア系等の釉薬や、抗菌塗装、親水性の強い防汚染塗装等が使用されている。
【0015】
セラミック板5の加熱室内に露出する面には微小の凹凸11が形成されているため、表面積が増し遠赤外線放射量は増大する。また、その表面がコーティング12されて平滑に仕上げられているので、セラミック板5に付着した汚れ等を拭き取り易くなり、加熱室2内の清掃性が向上する。
【0016】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について図5を用いて説明する。図5は実施の形態3に係るオーブンレンジの加熱室に設けられたセラミック板の拡大断面図である。なお、本実施の形態のオーブンレンジは、セラミック板の構造を除いて、図1で説明した実施の形態1と同じである。
実施の形態3における加熱室2内のセラミック板5は、前述したように、枠体3の左右側面に形成された凹部4の1段目の段部に固着され、凹部4の2段目の段部となる内側側面とで空隙部6を形成している。このセラミック板5の加熱室内に露出する面には0.5mm程度の微小の凹凸11が形成されている。また、セラミック板5に形成された棚部7は、表面にコーティング12が施され、平滑に仕上げられている。
【0017】
実施の形態3においては、セラミック板5の加熱室内に露出する面に形成された0.5mm程度の微小の凹凸11により、また、セラミック板5と凹部4の2段目の段部となる内側側面とで形成された空隙部6により、遠赤外線放射量が増加して加熱室2内の温度を高温に保てるという効果に加え、棚部12の表面に施されたコーティング12によって、調理皿出し入れ時に棚部7と調理皿8を傷つけることがなくなるという効果がある。
【0018】
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4について図6を用いて説明する。図6は実施の形態4に係る加熱調理器のオーブンレンジを示す正面の断面図である。なお、図1で説明した実施の形態1と同一又は相当部分には同じ符号を付し説明を省略する。
実施の形態4に係るオーブンレンジは、加熱室2内の底面と左右側面にセラミック板5が設置され、加熱室2の底面外側にヒータ9が設置されている。加熱室2内の底面に設置されたセラミック板5は、容器等が載置されるため、衝撃等に強い結晶化ガラス等の材料が用いられ、その厚さは約3mm程度である。左右側面に設置されたセラミック板5の厚さは約4mmで、底面側のセラミック板5より厚く構成されている。
【0019】
ヒータ9が設置された底面側のセラミック板5よりも、左右側面のセラミック板5が厚く形成されているため、底面側よりも左右側面側の断熱効果が高くなる。左右側面にはヒータ9等の熱源が存在しないため、ヒータ9が存在する底面側よりも温度の立ち上がりが遅く、温度降下も早いが、左右側面側のセラミック板5を厚く構成したことで断熱効果が他の面よりも大きく作用するため、他の面との温度差が小さくなって加熱室2内の温度分布が均一になり、良好な調理状態を実現することができる。
【0020】
また、ヒータ9を有する底面側のセラミック板5は薄く形成されているため、セラミック板5によるヒータ9からの放射熱の吸収が小さく、加熱室2内の温度立ち上がりを大きく悪化させることがない。
【0021】
以上のように実施の形態4によれば、加熱室2の左右側面のセラミック板5をヒータ9が設置された底面側のセラミック板5よりも厚く構成したので、底面側での熱損失が小さく、左右側面側での断熱効果が大きくなり、加熱庫2内の温度分布が均一となり良好な調理状態を実現することができる。
【0022】
実施の形態5.
次に、本発明の実施の形態5について図7を用いて説明する。図7は実施の形態5に係る加熱調理器のオーブンレンジを示す正面の断面図である。なお、図1で説明した実施の形態1と同一又は相当部分には同じ符号を付し説明を省略する。
実施の形態5に係るオーブンレンジは、加熱室2の底面外側に、マイクロ波を発生するマグネトロン13と、マイクロ波を加熱室2内に導く導波管13aと、ヒータ9とが設けられている。加熱室2内の底面に設置されたセラミック板5は、マイクロ波透過性の高い結晶化ガラス等の材料が用いられている。このセラミック板5は、マイクロ波を吸収する量が小さく、加熱の際の加熱効率を大きく悪化させることがないので、マイクロ波の給電口としても利用できる。
【0023】
加熱室2の左右側面に設置されたセラミック板5は、前述したように遠赤放射率の高い材料が用いられているため、ヒータ9での加熱の際には、左右側面のセラミック板5からの遠赤効果によって、調理物をムラ無く均一に加熱調理することができる。
【0024】
以上のように実施の形態5によれば、マイクロ波の給電口である底面側のセラミック板5にマイクロ波透過性の高い材料を用い、それ以外の左右側面のセラミック板5に遠赤外線放射性の高い材料を用いているので、マイクロ波加熱の加熱効率を大きく悪化させることなく、ヒータ加熱の際にはセラミック板5の遠赤効果で調理物をムラ無く均一に加熱調理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態1に係る加熱調理器のオーブンレンジを示す正面の断面図である。
【図2】オーブンレンジの加熱室に設けられたセラミック板の形状を示す断面図である。
【図3】セラミック板の拡大断面図である。
【図4】実施の形態2に係るオーブンレンジの加熱室に設けられたセラミック板の拡大断面図である。
【図5】実施の形態3に係るオーブンレンジの加熱室に設けられたセラミック板の拡大断面図である。
【図6】実施の形態4に係る加熱調理器のオーブンレンジを示す正面の断面図である。
【図7】実施の形態5に係るに加熱調理器のオーブンレンジを示す正面の断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 オーブンレンジ本体、2 加熱室、3 枠体、4 凹部、5 セラミック板、
6 空隙部、7 棚部、8 調理皿、9 ヒータ、10 接着剤、11 凹凸、12 コーティング、13 マグネトロン、13a 導波管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器本体と、
該調理器本体内に設けられ調理物を収納して加熱調理するための加熱室と、
調理物を加熱する加熱手段と、
前記加熱室の内壁の少なくとも2面に空隙部を形成して設けられたセラミック板と、
該セラミック板の加熱室内に露出する面に設けられた凹凸と
を備えたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記セラミック板は、前記凹凸がコーティングによって平滑に形成されていることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記セラミック板の加熱室内に露出する面に、前記凹凸が設けられた調理皿支持用の棚部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記セラミック板の加熱室内に露出する面に、前記凹凸が設けられた調理皿支持用の棚部が形成され、該棚部の表面のみがコーティングによって平滑に形成されていることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記加熱手段はヒータからなり、
前記セラミック板と空隙部を形成する前記加熱室の面を除く他の面であって、該加熱室の外側に前記ヒータが設置された内側の面に、前記セラミック板の厚さより薄いセラミック板を設置したことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記加熱手段はマイクロ波を発生するマグネトロンよりなり、
前記加熱室内にマイクロ波を導く面に、マイクロ波透過性の高いセラミック板が設置されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−275224(P2008−275224A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−117971(P2007−117971)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】