説明

加熱調理器

【課題】トッププレート上の加熱口にてふきこぼれを検出した場合に、グリル庫等の他の加熱部に対するふきこぼれの影響を抑制することのできる加熱調理器を得る。
【解決手段】トッププレート2上における被加熱物からのふきこぼれの有無を検知するふきこぼれ検知手段11と、グリル部5内における加熱の進行状況を判定する進行状況判定手段(温度検出部15、制御部9)とを備え、ヒータ13による加熱中にふきこぼれ検知手段11によりふきこぼれの発生が検知された場合において、ヒータ13は、進行状況判定手段の判定結果に応じて、加熱動作を継続または停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱物が載置されるトッププレートと、内部に調理物を収容して加熱するグリル庫とを備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、「トッププレート上に被調理物が付着することにより前記電極に生じる静電容量の変化を検出する静電容量検出手段を有し、前記静電容量検出手段によって静電容量に変化があったことを検出すると、前記加熱制御部によって加熱電力を減少、あるいは停止させるように制御を行う誘導加熱装置」が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−182659号公報(第5頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の加熱調理器は、静電容量検出手段によって静電容量の変化を検出してふきこぼれと判定した場合に、当該加熱口における加熱電力を減少あるいは停止させて、当該加熱口においてふきこぼれによる被害拡大を抑制している。しかしながら、特許文献1に記載の加熱調理器では、ふきこぼれが発生したトッププレート上の当該加熱口の他に設けられた加熱部について考慮されていなかった。例えば、トッププレート上でふきこぼれが発生したときに、グリル庫などの他の加熱部において加熱動作中であった場合、使用者は、ふきこぼれへの対応(ふきこぼれた内容物の処理等)と他の加熱部での加熱状況の両方に気を配らなくてはならないが、一方に気をとられて他方が疎かになってしまう可能性もある。このため、トッププレート上でのふきこぼれに加えてグリル庫についても考慮された使い勝手のよい加熱調理器が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、トッププレート上でのふきこぼれに加えてグリル庫についても考慮された使い勝手のよい加熱調理器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る加熱調理器は、本体の上に設けられ、被加熱物が載置されるトッププレートと、前記トッププレートの下方の前記本体内に設けられ、前記トッププレートに載置された前記被加熱物を加熱する加熱手段と、前記トッププレート上における前記被加熱物からのふきこぼれの有無を検知するふきこぼれ検知手段と、前記本体内に設けられ、調理物を収容するグリル庫と、前記グリル庫内の前記調理物を加熱するグリル加熱手段と、前記グリル庫内における加熱の進行状況を判定する進行状況判定手段とを備え、前記グリル加熱手段による加熱中に前記ふきこぼれ検知手段によりふきこぼれの発生が検知された場合において、前記グリル加熱手段は、前記進行状況判定手段の判定結果に応じて、加熱動作を継続または停止するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、グリル加熱手段による加熱中にふきこぼれ検知手段によりふきこぼれの発生が検知された場合において、グリル加熱手段は、進行状況判定手段の判定結果に応じて、加熱動作を継続または停止するようにした。このため、例えばグリル庫での加熱が所定段階まで進行していない場合にはグリル庫での加熱を停止することで、使用者はふきこぼれに対する対応に集中でき、利便性を向上させることができる。また、例えばグリル庫での加熱が所定段階まで進行している場合にはグリル庫での加熱を継続することで、グリル庫における調理の不出来を防ぐことができる。このように、使い勝手のよい加熱調理器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の斜視図である。
【図2】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の内部構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1に係る誘導加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態2に係る誘導加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態3に係る誘導加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る加熱調理器の実施の形態について図面を参照して説明する。実施の形態では、トッププレート上で被加熱物を加熱する加熱手段として誘導加熱コイルを備えた誘導加熱調理器を例に説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態における誘導加熱調理器の斜視図である。本実施の形態1に係る誘導加熱調理器は、キッチンに形成された設置空間に組み込んで使用するビルトインタイプの誘導加熱調理器である。なお、図1及び後述の各図において、同一の符号を付したものは、同一のまたはこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。
【0011】
図1において、本実施の形態1に係る誘導加熱調理器は、天面が開口された箱状の本体1の上面に、耐熱性のガラスと金属の枠体とで構成するトッププレート2が取り付けられるように構成されている。このトッププレート2は、本体1の開口より大きく形成されている。
【0012】
トッププレート2の表面には、本体1内の加熱コイル8(後述する)が配設される位置に加熱領域を示す目的で円形の表示(以下、加熱口3a〜3cという。)が印刷されている。
なお、本実施の形態1では加熱口3a及び3bは比較的加熱出力を大きく設定した加熱口であり、加熱口3cは前述の2つの加熱口に対して比較的加熱出力を小さく設定した加熱口である。なお、以降の説明において、加熱口3a、3b、3cを加熱口3と総称する場合がある。
【0013】
トッププレート2上の加熱口3a、3b、3cに対応した位置には、調理物を入れて加熱するための鍋等の被加熱物4が載置される。
【0014】
本体1の内部の前面側には、グリル部5が設けられている。グリル部5は、ステンレスや鋼板等の金属板により左右、上下、及び背面側の壁面が形成され、前面が開口した箱形の調理庫12(グリル庫)を有している。グリル部5の調理庫12の前面開口は、グリル扉12aにより開閉自在に覆われており、グリル扉12aを開くことで調理庫12内に食材などの調理物を出し入れ可能である。
【0015】
トッププレート2の上部手前側には、入力操作や設定火力の状態などの情報を表示する表示部7と、加熱制御に関する操作の入力を行う操作部6とが、各加熱口3とグリル部5に対応してそれぞれ設けられている。表示部7は、例えば、液晶パネル(LCD)やLEDなどで構成される。操作部6は、例えば、透明性の導電性フィルムなどの電極で構成したタッチスイッチにより構成され、使用者の指などが電極の配置位置に接触する際における静電容量の変化により入力操作を検知する。尚、操作部6は、タッチスイッチに限らず、例えばメンブレンシートを用いた接点ボタンでもよいし、火力を調整するダイヤルや、各種調理設定の操作をするスイッチ等を設けるようにしてもよい。また、操作部6を本体1の前面側に配置してもよい。
【0016】
図2は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の内部構成を示すブロック図である。
図2に示すように、誘導加熱調理器は、トッププレート2上の被加熱物4を加熱するための加熱手段としての加熱コイル8と、加熱コイル8を駆動する駆動部10と、駆動部10を含め誘導加熱調理器の全体の動作を制御する制御部9と、ふきこぼれ検知手段11とを備える。
【0017】
加熱コイル8は、トッププレート2の下部であって本体1の内部に配置されている。加熱コイル8は、各加熱口3にそれぞれ設けられている。なお、1つの加熱口3に対して1つの加熱コイル8を設けてもよいし、1つの加熱口3に対して複数の加熱コイル8を設けてもよい。また、本実施の形態1では、加熱口3における加熱手段として加熱コイル8を設ける例を示すが、例えば輻射によって加熱するタイプの電気ヒータ(例えばニクロム線やハロゲンヒータ、ラジエントヒータ)等の誘導加熱以外により加熱する加熱手段を設けてもよく、加熱口3における加熱手段の具体的構成を限定するものではない。
【0018】
駆動部10は、制御部9により制御されて各加熱コイル8に高周波電力を供給するインバータ回路を備える。
【0019】
ふきこぼれ検知手段11は、加熱口3の周囲に対応するトッププレート2の下面に接触して配置された1または複数の電極11aと、静電容量測定回路11bと、ふきこぼれ判定部11cとを備える。
電極11aは、例えば、トッププレート2の下面に導電性塗料等で印刷形成することにより、あるいは導電体をトッププレート2の下面に接着あるいは押着(圧着)することにより、構成されている。1つの加熱口3に対して複数の電極11aを設けてもよいし、電極11aの形状や大きさも任意に設定することができる。
この電極11aは、被加熱物4や被調理物である食材や水、さらには人体などの誘電体が電極11a上のトッププレート2に触れることにより、その誘電体との間に発生する静電容量の変化を静電容量測定回路11bに入力する。
【0020】
静電容量測定回路11bは、この静電容量の変化を電圧に変換し、その検出電圧をふきこぼれ判定部11cに出力する。ふきこぼれ判定部11cは、静電容量測定回路11bからの出力値により得られる静電容量の変化量が所定値以上となった場合に、ふきこぼれと判定し、判定結果を制御部9に出力する。
【0021】
次に、グリル部5について説明する。
グリル部5の調理庫12内には、グリル部5の加熱源としてのヒータ13と、ヒータ13の加熱制御を行うグリル制御部14と、調理庫12内の温度を検知する温度検出部15とを備える。
【0022】
ヒータ13は、本実施の形態1では、調理庫12の上方と下方の両方に配置されており、調理庫12内に収容される被加熱物を上下から加熱する。ヒータ13の火力や加熱動作は、グリル制御部14によって制御される。なお、ヒータ13を調理庫12の上方または下方のいずれかにのみ設けてもよく、例えば調理庫12の側方に設けることも可能である。また、グリル制御部14を設けなくともよい。その場合には、グリル部5の動作に関する制御は、制御部9で行うように構成することができる。
【0023】
温度検出部15は、調理庫12内の温度を検知して、検知結果を制御部9に出力する温度センサである。なお、本実施の形態1では、温度検出部15を調理庫12の内部に配設して調理庫12内の温度を検知するようにしているが、温度検出部15の設置場所を特に限定するものではない。
【0024】
制御部9は、操作部6に設定された火力や加熱モード等に関する操作信号、及びふきこぼれ検知手段11の検知結果に基づいて、駆動部10を介して加熱コイル8による加熱動作を制御する。
【0025】
また、制御部9は、操作部6に設定された火力や加熱モード等に関する操作信号、温度検出部15の検知温度に基づいて、グリル制御部14を介してヒータ13による加熱動作を制御する。さらに、制御部9はこのグリル部5における加熱制御において、ふきこぼれ検知手段11の検知結果と、温度検出部15の検知温度に基づいて判定されるグリル部5での加熱の進行状況とに応じて、ヒータ13の加熱動作を制御する。なお、グリル部5における加熱動作の制御についての詳細は後述する。
また、制御部9は、操作部6により設定された情報や、各加熱口3やグリル部5での加熱状態やふきこぼれ検知手段11の検知結果などの情報を、表示部7に表示させる。
【0026】
なお、制御部9、グリル制御部14、ふきこぼれ判定部11cは、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、マイコンやCPUのような演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとにより構成することもできる。また、制御部9、グリル制御部14、ふきこぼれ判定部11c等の構成は、機能概念的に記載したものであり、必ずしも物理的に図2に記載のように構成されていることを要しない。すなわち、制御部9、グリル制御部14、ふきこぼれ判定部11cの機能を実現できるものであれば、具体的な装置の分散・統合に関する具体的形態は図示のものに限定されない。
【0027】
なお、「ヒータ13」は、本発明における「グリル加熱手段」に相当する。
また、本実施の形態1の「温度検出部15」及び「制御部9」は、本発明における「進行状況判定手段」に相当する。
【0028】
次に、本実施の形態1に係る誘導加熱調理器の動作を説明する。
図3は、実施の形態1に係る誘導加熱調理器の動作を示すフローチャートである。
【0029】
使用者により加熱口3に対応する操作部6に対して加熱開始の操作がなされると、加熱口3における加熱を開始する(S100)。具体的には、制御部9は、操作部6に設定された火力が得られるよう、駆動部10を介して加熱コイル8に高周波電力を供給し、これにより、加熱口3のトッププレート2上に載置された被加熱物4に渦電流が流れて被加熱物4が発熱する。
【0030】
加熱を開始すると、制御部9は、ふきこぼれ検知手段11から出力される電極11aの静電容量に基づいて、ふきこぼれが発生しているか否かを判断する(S101)。ふきこぼれ発生の判断は、例えば、所定周期で行うことができる。ふきこぼれが発生していない場合には(S101;No)、加熱口3における加熱を継続する。
【0031】
一方、加熱口3においてふきこぼれが発生していると判断した場合には(S101;Yes)、制御部9は、加熱口3の加熱を停止するか、若しくは操作部6にて設定された火力よりも火力を低下させるよう駆動部10を制御する(S102)。このように加熱停止または火力低下させることにより、加熱口3に載置された被加熱物4からのふきこぼれの発生を止めることができる。
【0032】
続いて制御部9は、グリル制御部14を介してグリル部5が加熱動作中か否かを確認する(S103)。グリル部5が加熱動作を行っていない場合は(S103;No)、前述のS102の動作で終了となる。
【0033】
一方、グリル部5が調理庫12内に配置されたヒータ13により加熱動作中である場合には(S103;Yes)、制御部9は、温度検出部15によって調理庫12内の温度Tを計測する。その計測した温度Tと、予めグリル制御部14に設定された所定値Tthとの大小比較判定を行う(S104)。ここで、所定値Tthは、グリル部5の調理庫12内における被加熱物の加熱状態を判断するための値である。グリル部5において加熱を開始すると、加熱時間の経過とともに調理庫12内の温度は上昇していくことから、調理庫12内の温度Tと所定値Tthとを比較することで、調理庫12内の被加熱物の加熱の進行状況を判定することができる。
【0034】
調理庫12内の温度Tが所定値Tth未満であれば(S104;No)、制御部9は、ヒータ13による加熱を停止するようグリル制御部14を制御して、グリル部5における加熱動作を停止させる(S105)。すなわち、調理庫12内の温度Tが所定値Tth未満である場合には、グリル部5における加熱開始からあまり時間が経過していない(加熱開始直後である)と判断し、グリル部5における加熱を停止するのである。このようにすることで、加熱口3でふきこぼれが発生した際に、使用者はグリル内の調理状態に気をとられることなく、ふきこぼれた内容物の処理に対応することができる。また、所定値Tthを、例えば調理物に含まれるタンパク質等の変性が起きると想定される温度(例えば50℃)としておけば、グリル部5内の調理物に変性が起きる前にグリル部5の加熱が停止されるので、調理途中での調理中断による調理の失敗を抑制することができる。
【0035】
一方、調理庫12内の温度Tが所定値Tth以上であれば(S104;Yes)、制御部9は、ヒータ13による加熱をそのまま継続するようグリル制御部14を制御して、グリル部5における加熱動作を継続させる(S106)。すなわち、調理庫12内の温度Tが所定値Tth以上である場合には、グリル部5における加熱開始からある程度時間が経過していると判断し、グリル部5における加熱を継続するのである。グリル部5の調理物の温度が上昇した状態で加熱口3でふきこぼれが発生した際には、グリル部5内での加熱調理を進めることを優先することで、グリル部5内における調理の不出来(失敗)を防ぐことが可能になる。
【0036】
このように、本実施の形態1の誘導加熱調理器においては、トッププレート2上の加熱口3に載置された被加熱物4の内容物がふきこぼれた場合に、トッププレート2上の加熱口3の加熱を停止させる(火力低下)ことに加え、グリル部5の動作状況に応じてグリル部5の加熱動作を停止または加熱継続するように動作する。
【0037】
以上のように、本実施の形態1では、トッププレート上の加熱口にてふきこぼれが発生した場合に、グリル部における加熱動作状況に応じてグリル部の加熱動作を停止するようにした。このため、使用者は、グリル部内の調理状態に気をとられることなく、トッププレート上のふきこぼれた内容物の処理(ふき取り等の掃除)を行うことができる。
【0038】
また、トッププレート上でふきこぼれが発生した場合に、グリル内の加熱状態を温度で検出し、所定値以上にグリル庫内の温度が上昇していた場合にはグリルの加熱動作を止めずに継続するようにした。このため、ある程度グリル部内での調理が進んだ状態でふきこぼれが発生した場合は、グリル部内で行われている調理を進めることを優先するように動作するので、グリル部内の調理の不出来(失敗)を防止することが可能になる。
【0039】
なお、本実施の形態1で説明した所定温度Tthは、適宜設定すればよいが、例えば室温よりも少し高い50℃に設定しておけば、グリルで調理開始後直ぐにふきこぼれが発生した場合はグリル停止し、例えば調理物に含まれるタンパク質等の変性が起きると想定される50℃以上に調理庫内温度に達している場合はそのままグリルでの調理を続行することとなる。このため、途中での調理中断による調理失敗を防ぐことが可能になる。
【0040】
また、本実施の形態1では、グリル部での加熱動作の停止または継続条件として、温度検知部で検出した温度(絶対値)を用いるものとして説明したが、グリル庫内での調理の進行状況が確認できるものであれば何れを用いてもよい。例えば、加熱開始時のグリル庫内温度からの上昇値や、グリルでの加熱開始からの時間などを用いてもよく、同様の効果を奏する。
【0041】
なお、本実施の形態1では、電極の静電容量によりふきこぼれの発生を検知するふきこぼれ検知手段11を例に説明したが、トッププレート2上でのふきこぼれの発生を検知するための具体的構成はこれに限定されない。ふきこぼれの発生を検知するための具体的構成にかかわらず、本実施の形態1で示した効果を奏することができるものである。このことは、後述する実施の形態においても同様である。
【0042】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、ふきこぼれ発生の際にグリルの庫内温度に応じてグリルの加熱動作を停止あるいは継続するようにしたものであった。本実施の形態2では、グリルの動作時間に応じてふきこぼれ発生時の加熱動作を停止あるいは継続するように構成した場合の実施の形態を示す。
図4は、実施の形態2に係る誘導加熱調理器の動作を示すフローチャートである。なお、本実施の形態2の誘導加熱調理器の構成は、実施の形態1で示した図1、図2と同様であり、本実施の形態2では実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0043】
図4を参照して本実施の形態2に係る誘導加熱調理器の動作を説明する。ここでは、加熱口3で既に加熱が開始されているものとして説明を行う。
【0044】
使用者によりグリル部5に対応する操作部6に対して加熱開始の操作がなされると、グリル部5における加熱動作を開始する(S200)。具体的には、制御部9は、操作部6に設定された火力が得られるよう、グリル制御部14を制御してヒータ13を発熱させる。また、制御部9は、図示しない計時装置(計時手段)を備えており、この計時装置を用いて、ヒータ13による加熱開始からの時間tの計時を開始する(S201)。
【0045】
制御部9は、実施の形態1と同様にふきこぼれ検知手段11からの出力に基づいて、トッププレート2上の加熱口3にてふきこぼれが発生しているか否かを判断している(S202)。ふきこぼれが発生していないと判断した場合は(S202;No)、引き続きグリル部5での加熱動作時間tの計時動作を行う。なお、このまま加熱口3でふきこぼれが発生しなければ、グリル部5では、操作部6にて加熱停止が指示されるまで(あるいは加熱停止タイマー機能を有する場合には設定時間が経過するまで、あるいはグリル内の調理物が指定の状態に加熱されたと判断されるまで)加熱を継続することとなる。
【0046】
一方、加熱口3においてふきこぼれが発生していると判断した場合には(S202;Yes)、実施の形態1で説明したのと同様に、制御部9は、加熱口3の加熱を停止するか若しくは、設定されている火力を低下させ、ふきこぼれの発生を止めるよう動作する(S203)。これにより制御部9によりトッププレート上の加熱口に対してはふきこぼれに対する対応がとられる。
【0047】
続いて制御部9は、グリル制御部14で計時していたグリルの加熱時間tを参照し、加熱時間tと、予め設定していた所定時間tthとの大小比較判定を行う(S204)。加熱時間tが所定時間tth未満(t<tth)の場合は(S204;No)、グリル部5での加熱時間が比較的短い、すなわち調理開始後間もない状態と判断し、グリル部5での加熱動作を停止する(S205)。
【0048】
一方、グリル部5での加熱時間tが所定時間tth以上(t≧tth)と判断した場合には(S204;Yes)、グリル部5での加熱時間が比較的長い、すなわちグリル部5での調理がある程度進行していると判断し、グリル部5での加熱を止めずそのまま継続する動作となる(S206)。
【0049】
すなわち、本実施の形態2では、グリル部5での加熱開始からの時間を計測する計時装置(図示せず)の計測時間に基づいて、グリル部5における加熱の進行状況を判定している。本実施の形態2において、「制御部9」及び「計時装置」(図示せず)は、本発明における「進行状況判定手段」に相当する。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態2では、グリル部での加熱動作時間に応じて、トッププレート上の加熱口にてふきこぼれが発生した場合のグリル部での加熱動作を決定するようにした。そして、グリル部での加熱時間が比較的短い場合には、グリル加熱を止めるようにしたので、使用者は、グリル部内の調理状態に気をとられることなく、トッププレート上のふきこぼれた内容物の処理(ふき取り等の掃除)を行うことができる。
【0051】
また、グリル部での加熱開始からの時間が比較的長い場合には、ある程度グリル部での調理が進んでいると判断し、グリル部での加熱を継続して調理を行うようにしているので、調理の不出来(失敗)を防止することが可能になる。
【0052】
また、グリル部の加熱動作の停止あるいは継続を、グリル部での加熱時間の長短によって判断するようにしているので、調理庫内の調理物の材質や量に左右されずに判断することが可能になり、調理の不出来(失敗)をより一層防止することが可能になる。
なお、本実施の形態2では、グリル部での加熱(調理)時間をいかにして決定するかについて特に説明していないが、グリル部では、加熱開始とともに調理物の量(熱容量)を推定し、調理終了までの時間を決定している。その推定方法は、例えば、加熱開始から所定時間における温度上昇によって、調理物の大小、多少を推定する方法である。本実施の形態2で説明した加熱時間の長短とは、上記のようにしてグリル部での調理開始から調理終了までの時間を確定した後における、加熱経過時間の長短の意である。
【0053】
実施の形態3.
前述の実施の形態1、2では、トッププレート2上でふきこぼれ発生した場合に、グリル部5の調理庫12内の庫内温度若しくは調理開始からの経過時間に応じてグリル部5での調理動作の停止・継続を決定するようにしたものであった。本実施の形態3では、ふきこぼれ発生後にグリル部5の加熱動作を停止した場合に、使用者への報知方法について説明する。
【0054】
図5は、実施の形態3に係る誘導加熱調理器の動作を示すフローチャートである。なお、図5は、実施の形態1で説明した図1と共通の処理を含んでいるため、同じ処理については同じステップ番号を付して説明を省略し、ここでは図1との相違点を中心に説明する。
【0055】
前述の実施の形態1で説明したように、ステップS104においてグリル部5の加熱庫内温度Tが所定値Tth未満で(S104;No)、グリル部5の加熱動作を停止した場合(S105)に、本実施の形態3では、表示部7にてグリル部5の加熱動作停止に関する表示を行う(S107)。
【0056】
ここで、図5のステップS107において、グリル部5の加熱動作を停止した場合に表示する内容について説明する。表示部7のLCD画面へ表示する内容の種類としては、第一に、グリル部5の加熱動作が停止した理由を表示する。例えば、『ふきこぼれを検知しましたので、加熱を停止しました。』のような表示を行う。この場合、トッププレート2上の加熱口3とグリル部5の両方を停止したことを知らせるような表示内容としてもよい。
【0057】
第二に、ふきこぼれに対する対応方法を知らせる表示を行う。例えば、『トッププレート上にふきこぼれている場合、よく拭き取ってください。(火傷注意)』という表示を行う。さらに、『グリル内の調理物を取り出す際には内部及び食品が熱くなっている場合があります』等の注意喚起を表示することができる。
【0058】
第三に、調理を再開する際の注意事項を知らせる表示を行う。例えば、『グリルの各種設定については再設定をお願いします』等を表示する。
【0059】
以上のように、本実施の形態3では、トッププレート上の加熱口でふきこぼれが発生してグリル部での加熱動作を停止させた場合に、グリル部の加熱停止理由、それに対する対応、及び調理再開に際する注意事項などを表示するようにした。このように本実施の形態3では、加熱動作停止後に、使用者が迷うことなく調理再開までの操作や処理を行うことができるようガイドするようにしているので、実施の形態1及び実施の形態2の効果に加え、より一層使い勝手を向上させることができるという効果を奏する。
【0060】
なお、本実施の形態3では、表示部7のLCD(液晶)画面に内容を順番に表示する方法として説明したが、表示方法を限定するものではない。例えば、上記の第一、第二、第三の表示内容を、一度に表示部7に表示してもよく、同様の効果を奏する。
【0061】
さらに、使用者に報知を行う報知装置として表示部7を設けて視覚的な報知を行うものとして説明したが、報知のための構成は表示部7のような視覚的な報知装置に限定しない。例えば、図示しないスピーカを用いて音声により使用者へ報知してもよいし、また、視覚的な報知と音声による報知とを併せて行うようにしてもよく、このようにすることでより一層報知効果を高めることが可能となる。
【0062】
また、本実施の形態3では、実施の形態1との組み合わせを例に説明したが、実施の形態3で説明した報知動作を、実施の形態2と組み合わせることもでき、同様の効果を奏する。この場合には、図4のステップS205の処理の後に、図5で示したステップS107に相当する処理を行うようにするとよい。
【0063】
なお、グリル部5での加熱の進行状況を判定する手段として、上記実施の形態1では温度検出部15の検知温度、実施の形態2ではグリル部5での加熱開始からの経過時間を用いることとして説明したが、他の構成を採用することもできる。例えば、グリル部5での加熱を、予め定められたシーケンスに従って複数段階を経て行う場合には、このシーケンスのどの段階まで進行しているかにより、グリル部5での加熱の進行状況を判定することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 本体、2 トッププレート、3 加熱口、4 被加熱物、5 グリル部、6 操作部、7 表示部、8 加熱コイル、9 制御部、10 駆動部、11 ふきこぼれ検知手段、11a 電極、11b 静電容量測定回路、11c ふきこぼれ判定部、12 調理庫、12a グリル扉、13 ヒータ、14 グリル制御部、15 温度検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の上に設けられ、被加熱物が載置されるトッププレートと、
前記トッププレートの下方の前記本体内に設けられ、前記トッププレートに載置された前記被加熱物を加熱する加熱手段と、
前記トッププレート上における前記被加熱物からのふきこぼれの有無を検知するふきこぼれ検知手段と、
前記本体内に設けられ、調理物を収容するグリル庫と、
前記グリル庫内の前記調理物を加熱するグリル加熱手段と、
前記グリル庫内における加熱の進行状況を判定する進行状況判定手段とを備え、
前記グリル加熱手段による加熱中に前記ふきこぼれ検知手段によりふきこぼれの発生が検知された場合において、
前記グリル加熱手段は、前記進行状況判定手段の判定結果に応じて、加熱動作を継続または停止する
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記進行状況判定手段は、前記グリル庫内の温度を検出する温度検出手段を有し、前記温度検出手段の検出温度に基づいて前記加熱の進行状況を判定するものであり、
前記グリル加熱手段による加熱中に前記ふきこぼれ検知手段によりふきこぼれの発生が検知された場合において、
前記グリル加熱手段は、前記温度検出手段による検出温度が所定温度以上であれば加熱動作を継続し、前記温度検出手段による検出温度が所定温度未満であれば加熱動作を停止する
ことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記進行状況判定手段は、前記グリル庫での加熱開始からの時間を計測する計時手段を有し、前記計時手段の計測時間に基づいて前記加熱の進行状況を判定するものであり、
前記グリル加熱手段による加熱中に前記ふきこぼれ検知手段によりふきこぼれの発生が検知された場合において、
前記グリル加熱手段は、前記計時手段による計測時間が所定時間以上であれば加熱動作を継続し、前記計時手段による計測時間が所定時間未満であれば加熱動作を停止する
ことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記ふきこぼれ検知手段によりふきこぼれの発生が検知され、前記グリル加熱手段が加熱動作を停止した場合に、ふきこぼれが検知されたために前記グリル加熱手段の加熱動作が停止した旨を報知する報知装置を備えた
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記報知装置は、前記グリル加熱手段による加熱動作を再開させるにあたっての注意事項、及び前記グリル加熱手段による加熱動作を再開させるための手順の少なくともいずれかを報知する
ことを特徴とする請求項4記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−62189(P2013−62189A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200944(P2011−200944)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【特許番号】特許第5127968号(P5127968)
【特許公報発行日】平成25年1月23日(2013.1.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】