動力工具
【課題】 運動している工具を短時間で緊急停止することができる技術を提供する。
【解決手段】 動力工具は、本体に対して運動可能に支持されている工具と、工具を駆動する駆動源と、本体に対して運動可能に支持されている第1衝突部材と、本体側に支持されている第2衝突部材と、第1衝突部材が第2衝突部材に衝突しない通常状態から、第1衝突部材が運動している工具に接続されて第2衝突部材に衝突する緊急停止状態へと切換える切換手段とを備えている。そして、前記第1衝突部材と前記第2衝突部材の少なくとも一方は、衝突したときに破断する破断部材を備えていることを特徴とする。
【解決手段】 動力工具は、本体に対して運動可能に支持されている工具と、工具を駆動する駆動源と、本体に対して運動可能に支持されている第1衝突部材と、本体側に支持されている第2衝突部材と、第1衝突部材が第2衝突部材に衝突しない通常状態から、第1衝突部材が運動している工具に接続されて第2衝突部材に衝突する緊急停止状態へと切換える切換手段とを備えている。そして、前記第1衝突部材と前記第2衝突部材の少なくとも一方は、衝突したときに破断する破断部材を備えていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動力工具に関する。特に、運動している工具を緊急停止するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業者の手が運動(回転運動)している工具に接触したときに、運動している工具を緊急停止する動力工具が開示されている。
特許文献1の技術では、運動している工具を緊急停止する際に、工具の刃先に制動部材を押し付けて、工具を停止するようにしている。
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/17336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
運動している工具を緊急停止する際には、工具に大きな制動力を加えて、一刻も早く工具を停止させる必要がある。一方において、工具に過大な制動力を加えてしまうと、工具を支持する機構等に過大な反力が加わってしまい、その反力によって作業者に二次的な被害を与えてしまう可能性がある。運動している工具を緊急停止する際には、動力工具が許容する限度内において、可能な限り大きな制動力を工具に加えることが必要となる。
特許文献1の技術のように、工具の刃先に制動部材を押し付けると、工具の刃先が制動部材に食い込むこととなり、工具に大きな制動力を加えることができる。しかしながら、工具に加えられる制動力は、工具の刃先の状態によって変化してしまう。例えば新品の工具のように刃先が鋭利な状態であれば、工具に加えられる制動力は小さくなる。一方において、長期に亘って使用された工具のように刃先の磨耗が進んでいると、工具に加えられる制動力は大きくなる。即ち、工具の刃先が鋭利であれば緊急停止に要する時間が長くなってしまい、工具の刃先が磨耗していれば動力工具に過大な反力が加わってしまう。
工具の刃先の状態等に関わらず、運動している工具を可能な限り短時間で緊急停止するための技術が必要とされている。
本発明は、上記の課題を解決する。本発明は、工具の刃先の状態等に関わらず、運動している工具を可能な限り短時間で緊急停止することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明が提供する動力工具は、本体に対して運動可能に支持されている工具と、工具を駆動する駆動源と、本体に対して運動可能に支持されている第1衝突部材と、本体側に支持されている第2衝突部材と、第1衝突部材が第2衝突部材に衝突しない通常状態から、第1衝突部材が運動している工具に接続されて第2衝突部材に衝突する緊急停止状態へと切換える切換手段とを備える。そして、前記第1衝突部材と前記第2衝突部材の少なくとも一方は、衝突したときに破断する破断部材を備えていることを特徴とする。
【0005】
この動力工具では、運動している工具を緊急停止する必要が生じたときに、第1衝突部材を運動している工具に接続した状態で、第1衝突部材と第2衝突部材を衝突させる。第1衝突部材と第2衝突部材を衝突させることによって、工具に強い制動力を加えることができる。第1衝突部材と第2衝突部材には、工具の刃先のような状態変化が実質的に生じないことから、工具に想定されている制動力が加えられる。
第1衝突部材と第2衝突部材の少なくとも一方は、衝突したときに破断する破断部材を備えている。よく知られているように、物体を破断するのに要するエネルギは比較的大きい。工具の運転エネルギを、破断部材を破断するエネルギに変換することで、工具を速やかに停止することが可能となる。
この動力工具によると、工具の刃先の状態等に関わらず、速やかに工具を緊急停止することが可能となる。工具を緊急停止する際には、駆動源から工具への駆動力供給を中止することが有利であるが、不可欠ではない。第1衝突部材と第2衝突部材が衝突し、工具の運動エネルギが大きく減少すれば、駆動源から工具へ駆動力が伝達されていても、工具を停止することは可能である。
【0006】
上記の動力工具において、第1衝突部材と第2衝突部材の少なくとも一方は、複数の破断部材を備えていることが好ましい。
工具の運動速度は、様々に変化する。例えば空運転しているときに比較して、ワーク等を加工しているときには工具の速度が低下する。あるいは動力工具が、工具の運転速度を調節する機能を備えていることもある。工具の運動速度が変化すれば、工具の運動エネルギも変化する。
複数の破断部材を用いると、各破断部材を破断するのに要するエネルギを低く設定しておき、工具の運動エネルギに応じた数だけ破断部材を破断させて、工具を停止させることが可能となる。工具が低速で運動している場合でも、少なくとも1本の破断部材を破断させて、工具の運動エネルギを確実に減少させることができる。緊急停止後の復旧作業においても、破断した破断部材のみを交換すればよい。
【0007】
破断部材には、破断する位置を規定するための切欠が設けられていることが好ましい。
それにより、破断部材が破断する際に、予定している位置で破断させることができる。破断部材は、予定した力が加えられたときに破断し、予定したエネルギ量だけ工具の運動エネルギを減少することができる。動力工具に予定外の反力が加わることを防止することができる。
【0008】
上記の動力工具では、第2衝突部材のみが破断部材を備えていることが好ましい。
第2衝突部材は動力工具の本体に対して略停止している。第2衝突部材のみが破断部材を備えていると、破断部材が破断したときに、破断片が飛散することを抑えることが可能となる。
【0009】
切換手段は、通常状態から緊急停止状態へと切換える際に、工具が駆動源に接続されている状態から、工具が駆動源から接続解除されている状態へと切換えることが好ましい。
それにより、工具を緊急停止する際に、大きな回転エネルギを持つ動力源を停止する必要がないことから、工具をより短時間で停止することができる。
【0010】
切換手段は、第1位置にあるときには工具と駆動源を接続するとともに工具と第1衝突部材を接続解除し、第2位置にあるときには工具と駆動源を接続解除するとともに工具と第1衝突部材を接続する切換部材を備えていることが好ましい。
あるいは切換手段が、第1位置にあるときには工具と駆動源を接続するとともに第1衝突部材と第2衝突部材を衝突しない位置関係に維持し、第2位置にあるときには工具と駆動源を接続解除するとともに第1衝突部材と第2衝突部材を衝突する位置関係に維持する切換部材を備えていることが好ましい。
それにより、切換部材を第1位置から第2位置に移動させることによって、通常状態から緊急停止状態へと切換えることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、動力工具の状態等に関わらず、運動している工具を短時間で緊急停止することが可能となり、作業者の安全をより確実にすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
最初に、以下に説明する実施例の主要な特徴を列記する。
(形態1) 動力工具は、工具の近傍領域を看視するレーダを備えている。
(形態2) 動力工具は、工具の近傍領域に存在する電波反射体の位置と速度に基づいて、運動している工具を緊急停止させるのか否かを判断する。
【実施例】
【0013】
(実施例1)
図1に、実施例1のテーブルソー10を示す。テーブルソー10は、木質系のワークを切断する動力工具である。テーブルソー10は、本体24と、本体24の上側に設けられているテーブル20と、テーブル20から突出している丸鋸18と、丸鋸18の上方および側方を覆っている安全カバー11を備えている。本体24には、操作部22が設けられている。操作部22は、丸鋸18の回転/停止を操作するスイッチや、丸鋸18の回転速度を調節(低速、中速、高速)するためのスイッチや、丸鋸18を緊急停止させるためのスイッチ等を備えている。テーブルソー10を利用する作業者は、テーブル20上でワークを把持し、回転している丸鋸18に向けてワークを送り出していく。安全カバー11は、テーブル20上に回動可能に取り付けられており、ワークWによって押し開かれるようになっている。
【0014】
テーブルソー10は、丸鋸18の近傍領域を看視するレーダ12を備えている。レーダ12は、テーブルソー10の反作業者側(後方側)に設けられている。レーダ12は、本体12から伸びているアーム12aによって支持されている。
レーダ12は、丸鋸18の近傍領域に向けて電波を送信するとともに、丸鋸18の近傍領域に存在する電波反射体によって反射された反射波を受信して、その電波反射体の位置と速度を検出する。レーダ12は、丸鋸18の後方側から作業者側に向けて、ワークの送り方向に沿って電波を送信し、ワーク送り方向における電波反射体の位置と速度を検出する。レーダ12が電波反射体の位置と速度を検出する方法については、後段において詳細に説明する。
テーブルソー10の本体24の内部には、丸鋸18を駆動するモータ28と、モータ28の動力を丸鋸18に伝達する動力伝達機構14と、丸鋸18を緊急停止するときに動作する衝突ブレーキ対26を備えている。また、本体24の内部には、テーブルソー10の動作を制御するための制御部100が設けられている。
【0015】
図2、図3は、動力伝達機構14と衝突ブレーキ対26の構成を示している。図2は通常時の動作状態を示しており、図3は緊急停止時の動作状態を示している。動力伝達機構14は、第1ギヤ56と、第2ギヤ58と、クラッチ部材46と、工具軸16等を備えている。衝突ブレーキ対26は、工具軸16によって支持されているハンマー部材52と、本体24側に固定されている破断バー群54を備えている。ハンマー部材52は工具軸16回りに回転可能であって、その回転経路上に破断バー群54が設けられている。
第1ギヤ56は、図示しない軸受等によって、本体24に対して軸56aの回りに回転可能に軸支されているとともに、モータ28の出力軸28aのギヤ部と噛合している。
第2ギヤ58は、第1ギヤ56と噛合しているとともに、工具軸16によって軸支されている。第2ギヤ58には貫通孔58bが形成されており、その貫通孔58bを工具軸16が貫通している。貫通孔58bと工具軸16の間には、クリアランスが設けられており(図示省略)、両者の嵌め合いは「すきまばめ」の関係となっている。第2ギヤ58と工具軸16は相対回転可能となっており、実質的な動力が両者の間で直接的に伝達されないようになっている。
【0016】
工具軸16は、円筒形状をしており、軸受48によって本体24に対して回転可能に軸支されている。工具軸16には、締結部材50によって丸鋸18が脱着可能に取付けられている。工具軸16には、軸方向の一部16bにおいて、軸方向に伸びる複数の溝(あるいは複数の突起ともいえる)が形成されている。以下、この工具軸16の一部16bを、スプライン部16bということがある。図5は、図2中のV−V線断面図であり、スプライン部16の断面形状がよく示されている。
クラッチ部材46は、工具軸16によって軸支されている。クラッチ部材46には、貫通孔46bが設けられており、その貫通孔46bを工具軸16のスプライン部16bが貫通している。貫通孔46bの周面には、スプライン部16bの形状を転写した形状が形成されており、クラッチ部材46と工具軸16は相対回転不能となっている。一方において、貫通孔46bの周面と工具軸16のスプライン部16bとの間には微小なクリアランスが設けられており、クラッチ部材46は工具軸16に対して軸方向に相対移動可能となっている。図2に示すように、通常時の動作状態では、クラッチ部材46が第2回転ギヤ58側に位置している。図3に示すように、緊急停止時の動作状態では、クラッチ部材46がハンマー部材52側に位置することとなる。
【0017】
ハンマー部材52は、工具軸16によって回転可能に支持されている。ハンマー部材52には貫通孔52bが形成されており、その貫通孔52bを工具軸16が貫通している。貫通孔52bと工具軸16の間には、クリアランスが設けられており(図示省略)、両者の嵌め合いは「すきまばめ」の関係となっている。ハンマー部材52と工具軸16は相対回転可能となっており、実質的な動力が両者の間で直接的に伝達されないようになっている。
図4(a)は、図2のIV−IV線断面図を示している。図4(b)は、図4(a)のB矢視図を示している。図4(a)に示すように、ハンマー部材52は工具軸16からレバー状に伸びており、衝突部52aが形成されている。衝突部52aは、破断バー群54に対向する位置に形成されている。図4(b)に示すように、衝突部52aはくさび形状をしている。
破断バー群54は、複数の破断バー54a、54b、54cを備えている。各破断バー54a、54b、54cの両端は、テーブルソー本体24側に脱着可能に固定されている。各破断バー54a、54b、54cは、テーブルソー本体24に対して交換可能となっている。破断バー群54は、ハンマー部材52が工具軸16回りに回転したときに、ハンマー部材52によって破断される。図4(b)に示すように、破断バー54aには、反ハンマー部材52側に切欠55aが設けられている。同様の切欠は、他の破断バー54b、54cにも設けられている。
【0018】
図2、図3に示すように、クラッチ部材46の第2ギヤ58側に位置する端面46dと、第2ギヤ58のクラッチ部材46側に位置する端面58cは、互いに嵌合可能な形状に形成されている。また、クラッチ部材46のハンマー部材52側に位置する端面46cと、ハンマー部材52のクラッチ部材46側に位置する端面52dは、互いに嵌合可能な形状に形成されている。
図2に示すように、通常時の動作状態では、クラッチ部材46が第2ギヤ58側(第1位置)に位置しており、クラッチ部材46の第2ギヤ58側に位置する端面46dと、第2ギヤ58のクラッチ部材46側に位置する端面58cが嵌合している。この状態では、クラッチ部材46が第2ギヤ58とともに一体となって回転する。それにより、モータ28から丸鋸18まで、第1ギヤ56と第2ギヤ58とクラッチ部材46と工具軸16によって動力伝達経路が構成される。即ち、モータ28によって丸鋸18が駆動される状態であり、ワークの加工作業を行うことができる状態である。このとき、ハンマー部材52には動力が伝達されず、ハンマー部材52は略静止している。ハンマー部材52は、破断バー54aと当接しているが、相対的に移動しないことから衝突しない。
図3に示すように、緊急停止時の動作状態では、クラッチ部材46がハンマー部材52側(第2位置)に位置しており、クラッチ部材46のハンマー部材52側に位置する端面46cと、ハンマー部材52のクラッチ部材46側に位置する端面52dが嵌合している。この状態では、ハンマー部材52がクラッチ部材46と一体となり、丸鋸18からハンマー部材52まで、工具軸16とクラッチ部材46によって動力伝達経路が形成される。このとき、丸鋸18が通常時(加工時)の方向に回転すると、ハンマー部材52は破断バー群54に衝突する方向に回転する。一方において、クラッチ部材46が第2ギヤ58から離反しているので、第2ギヤ58とクラッチ部材46との間では動力が伝達されない状態となっている。それにより、第1ギヤ56や第2ギヤ58やモータ28は、丸鋸18やハンマー部材52に動力を伝達しない状態となっている。
【0019】
図2、図3に示すように、テーブルソー10は、クラッチ部材46に係止されている係止部材42と、係止部材42を工具軸16の軸方向に沿ってハンマー部材52側に付勢しているばね部材40と、ソレノイド44等を備えている。
係止部材42は、クラッチ部材46の外周面に形成されている溝46aに係止されている。溝46aはクラッチ部材46の外周面を一周するように形成されている。係止部材42は、クラッチ部材46の回転運動を許容しながら、クラッチ部材46の工具軸16の軸方向の移動を規制する。係止部材42には、ソレノイド44の可動子44aが嵌合する孔42aが形成されている。
図2に示すように、通常時の運転状態では、ソレノイド44の可動子44aが係止部材42の孔42aに遊嵌しており、クラッチ部材46が第2ギヤ58側(第1位置)に拘束されている。この状態からソレノイド44に通電すると、可動子44aがソレノイド44内へ引き込まれ、可動子44aが係止部材42の孔42aから離脱する。ばね部材40の付勢力によって、係止部材42はクラッチ部材46とともにハンマー部材52側(第2位置)へ移動する。即ち、図3に示す緊急停止時の状態となる。なお、詳しくは後述するが、ソレノイド44の動作タイミングは制御部100によって制御される。
【0020】
図3に示す緊急停止時の状態では、丸鋸18や工具軸16やクラッチ部材46の慣性力によって、ハンマー部材52が工具軸16とともに回転する。ハンマー部材52の衝突部54aは、破断バー群54に衝突することとなり、破断バー群54が破断する。丸鋸18や工具軸16やクラッチ部材46の回転エネルギは、ハンマー部材52が破断バー群54を破断することで急激に減少し、丸鋸18は短時間で停止する。このとき、第1ギヤ56や第2ギヤ58やモータ28は、丸鋸18への動力伝達経路が絶たれているので、第1ギヤ56や第2ギヤ58やモータ28等を停止する必要はない。慣性モーメントの大きいモータ28を停止する必要がないことから、丸鋸18を短時間で停止することができる。
【0021】
破断バー54群の各破断バー54a、54b、54cを破断するのに要するエネルギは、通常運転時の回転速度で回転しているときの丸鋸18や工具軸16やクラッチ部材46の回転エネルギに基づいて設定されている。例えば破断バー54aを破断するのに要するエネルギは、低速運転時の回転速度で回転しているときの丸鋸18や工具軸16やクラッチ部材46の回転エネルギと略等しく設定されている。即ち、テーブルソー10が低速運転している最中に緊急停止が実施された場合、ハンマー部材52が破断バー54aを破断した時点で、丸鋸18は静止する。また、破断バー54aと破断バー54bの両者を破断するのに要するエネルギは、中速運転時の回転速度で回転しているときの丸鋸18や工具軸16やクラッチ部材46の回転エネルギと略等しく設定されている。即ち、テーブルソー10が中速運転している最中に緊急停止が実施された場合、ハンマー部材52が破断バー54aに続いて破断バー54bを破断した時点で、丸鋸18は静止する。また、破断バー54aと破断バー54bと破断バー54cの三者を破断するのに要するエネルギは、高速運転時の回転速度で回転しているときの丸鋸18や工具軸16やクラッチ部材46の回転エネルギと略等しく設定されている。即ち、テーブルソー10が高速運転している最中に緊急停止が実施された場合、ハンマー部材52が破断バー54a、54bに続いて破断バー54cを破断した時点で、丸鋸18は静止する。
【0022】
本実施例のテーブルソー10では、運転速度が高速であるときほど、破断バー54a、54b、54cをより多く破断することによって、丸鋸18を静止するようにしている。これは、ハンマー部材52が破断バー群54を破断する際に、ハンマー部材52が受ける反力が過大とならないようにするためである。ハンマー部材52に過大な反力が加わると、工具軸16等にも過大な力が加わることとなり、テーブルソー10が損傷してしまうこともある。テーブルソー10が損傷すれば、作業者に二次的な被害を与えてしまうこともある。本実施例のテーブルソー10では、複数の破断バー54a、54b、54cを時間差をもって破断することによって、緊急停止時に二次的な被害が発生することを防ぐようにしている。
図4(b)に示したように、各破断バー54a、54b、54cには切欠(例えば切欠55a)が設けられているので、各破断バー54a、54b、54cは、想定されている力と変位が加えられたときに、想定されている位置(切欠)から破断する。それにより、各破断バー54a、54b、54cが破断する際には、想定されているエネルギが消散されるとともに、想定されている反力を超える反力が工具軸16等に作用することがない。
【0023】
図6は、テーブルソー10の電気構成を示している。図6に示すように、テーブルソー10の制御部100は、マイクロコンピュータ(以下、単にマイコンということがある)102や、モータコントローラ104や、ソレノイドコントローラ106等を備えている。マイコン102には、操作部22やモータコントローラ104やレーダ12やソレノイドコントローラ106等が接続されている。モータコントローラ104には、モータ28が接続されている。ソレノイドコントローラ106には、ソレノイド44が接続されている。
操作部22は、作業者の操作に対応する信号をマイコン102へと出力する。マイコン102は、操作部22から入力する信号に基づいて、モータコントローラ104に指令を与える。モータコントローラ104は、マイコン102の指令に基づいて、モータの駆動/停止や回転速度等を制御する。これが通常時の動作状態であり、丸鋸18が所定の回転速度(低速、中速、高速)で回転する。
マイコン102には、レーダ12が検出する電波反射体の位置と速度が入力される。マイコン102は、入力した電波反射体の位置と速度に基づいて、電波反射体が丸鋸18に接触する危険性を判断し、ソレノイドコントローラ106に動作指令を出力する。即ち、丸鋸18を緊急停止させる。例えば、電波反射体が丸鋸18に所定距離以下にまで接近しているときには、電波反射体が丸鋸18に接触する危険性が高いと判断することができる。あるいは、電波反射体が丸鋸18に所定速度を越える速度で接近しているときにも、電波反射体が丸鋸18に接触する可能性が高いと判断することができる。また、電波反射体と丸鋸18との間の所定距離と、電波反射体が丸鋸18に接近している接近速度から、電波反射体が丸鋸18に接触するまでの猶予時間を計算し、その猶予時間と丸鋸18を緊急停止させるのに要する時間とを比較して、丸鋸18を緊急停止させるのか否かを判断することができる。
ソレノイドコントローラ106は、マイコン102から動作指令を受けると、ソレノイド44に通電する。ソレノイド44が動作することによって、図3に示す緊急停止時の動作状態となり、丸鋸18は緊急停止する。
なお、作業者が操作部22の緊急停止スイッチを操作した場合にも、マイコン102はソレノイドコントローラ104に動作指令を出力し、丸鋸18は緊急停止される。
【0024】
図7を参照して、レーダ12について詳細に説明する。図7に示すように、レーダ12は、電波を送受信するための送受信アンテナ74を備えている。送受信アンテナ74は、丸鋸18の近傍領域に向けて電波を送信するとともに、丸鋸18の近傍領域に存在する電波反射体によって反射された反射波を受信する。
送受信アンテナ74には、発振回路72が接続されており、発振回路72にはクロック発生回路70が接続されている。発振回路72は、正弦波信号を出力する。クロック発生回路70は、所定の周期でパルス信号を出力する。発振回路72は、クロック発生回路70から入力するパルス信号に同期して、正弦波信号の周波数を2段階に切換える。それにより、図8に示すように、発振回路72が出力する正弦波信号の周波数は、高周波数Hと低周波数Lの間で周期的に切換わる。図8中の期間tsは、クロック発生回路70が出力するパルス信号の周期である。即ち、送受信アンテナ74が送信する電波は、周波数が周期的に2段階に切換わる。
【0025】
レーダ12は、ダイオードミクサ76を備えている。ダイオードミクサ76は、送受信アンテナ74から送信する送信波と、電波反射体で反射された反射波を検波して、その検波信号を出力する検波回路である。ダイオードミクサ76が出力する検波信号は、いわゆるドップラー効果によって、電波反射体の移動速度に応じて変化する。即ち、電波反射体が静止している場合では、送信波の周波数と受信波の周波数が一致し、検波信号にうなりは生じない。検波信号は、電波反射体までの距離に応じた所定値を維持する。一方、電波反射体が移動している場合では、送信波の周波数と受信波の周波数が相違することから、2つの正弦波信号が干渉し、検波信号が周期的に変化する。即ち、検波信号にうなりが生じる。このうなりの周波数は電波反射体の移動速度に応じて変化することから、検波信号の周波数に基づいて、電波反射体の移動速度を計測することができる。
一方、ダイオードミクサ76が出力する検波信号は、送受信アンテナ74が送信する電波の周波数と、電波反射体までの距離との比に応じて変化する。そのことから、高周波数Hの電波による検波信号と低周波数Lの電波による検波信号との位相差に基づいて、電波反射体の位置(アンテナ74からの距離)を計測することができる。
【0026】
図7に示すように、ダイオードミクサ76には、切替スイッチ78を介して、2つの回路群と接続されている。一方の回路群は、増幅回路80aとフィルタ回路82aと波形整形回路84aで構成されている。他方の回路群は、増幅回路80bとフィルタ回路82bと波形整形回路84bで構成されている。レーダ12は、一方の回路群80a、82a、84aの出力信号に基づいて電波反射体の速度を計測する速度計測回路86を備えている。またレーダ12は、一方の回路群80a、82a、84aと他方の回路群80b、82b、84bの両方の出力信号に基づいて、電波反射体の位置を計測する位相差計測回路88を備えている。
切替スイッチ78には、クロック発生回路70が接続されている。切替スイッチ78は、クロック発生回路70から入力するパルス信号に同期して、ダイオードミクサ76が一方の回路群80a、82a、84aに接続する状態と、ダイオードミクサ76が他方の回路群80b、82b、84bに接続する状態とを切換える。即ち、一方の回路群80a、82a、84aには、一方の周波数(例えば高周波数H)の電波による検波信号が入力され、他方の回路群80b、82b、84bには、他方の周波数(例えば低周波数L)の電波による検波信号が入力される。
【0027】
一方の回路群80a、82a、84aに入力された検波信号は、増幅回路80aで増幅され、フィルタ回路82aでノイズが除去され、波形整形回路84aで波形整形されて、速度計測回路86と位相差計測回路88に入力される。他方の回路群80b、82b、84bに入力された検波信号は、増幅回路80bで増幅され、フィルタ回路82bでノイズが除去され、波形整形回路84bで波形整形されて、位相差計測回路88に入力される
速度計測回路86は、一方の回路群80a、82a、84aから、一方の周波数(例えば高周波数H)の電波を用いたときの検波信号を入力し、そのうなりの周波数に基づいて電波反射体の速度を計測する。位相差計測回路88は、一方の周波数(例えば高周波数H)の電波を用いたときの検波信号と、他方の周波数(例えば低周波数L)の電波を用いたときの検波信号とを入力し、両者のうなりの位相差に基づいて電波反射体の位置を計測する。位相差計測回路88が計測した電波反射体の位置と、速度計測回路86が計測した電波反射体の速度は、制御部100のマイコン102へと入力される。
【0028】
ここで、レーダ12は、1G〜30GHzの電波を用いることが好ましい。この周波数帯の電波に対して、含水率の低い木材等は電波の反射率が低くなり、電波の透過率が高くなる。一方、含水率の高い物体(作業者の手等)や金属等は電波の反射率が高くなる。この周波数帯の電波を用いることによって、木質系のワークについては看過しながら、作業者の手や金属等の電波反射体を看視することができる。例えばワークの陰に隠れる作業者の手や、ワークに埋もれている釘等を検出することもできるようになる。なお本実施例では、24.2GHzのマイクロ波を用いている。周波数の高い電波を用いることによって、電波の指向性を高めることができ、丸鋸18の近傍領域を精度よく看視することができる。
以上、レーダ12について詳細に説明したが、上記したレーダ12の構成等は一例であり、他の形態のレーダを用いてもよい。また、電波を用いるレーダ12に換えて、超音波等を用いる探知機を用いてもよいし、カメラやフォトセンサ等による光学的な探知機を用いてもよい。
【0029】
本実施例のテーブルソー10によると、例えば危険な状況等が発生した場合に、回転している丸鋸18を速やかに停止することができる。このとき停止に要する時間は、想定されている時間に対して大きく変動することがない。また、停止時において工具軸16等に加わる反力も、想定されている反力に対して大きく変動することがない。また、ワーク以外の物体(電波反射体)が丸鋸18に接触する危険性に基づいて、丸鋸18を緊急停止することができるので、ワーク以外の物体が回転している丸鋸18に接触することを未然に防ぐことが可能となる。
【0030】
(実施例2)
図9に、実施例2のテーブルソー210を示す。実施例2のテーブルソー210は、実施例1のテーブルソー10と比較して、異なる形態の衝突ブレーキ対を採用したものである。以下、実施例2のテーブルソー210について詳細に説明するが、実施例1のテーブルソー10と同様の構成については同一の符号を付し、重複して説明することは避けるように努める。
図9に示すように、実施例2のテーブルソー210は、本体24と、テーブル20と、丸鋸18と、レーダ12等を備えている。また本体24の内部には、丸鋸18を駆動するモータ28と、モータ28の動力を丸鋸18に伝達する動力伝達機構214と、丸鋸18を緊急停止するときに動作する衝突ブレーキ対226を備えている。
【0031】
図10、図11は、実施例2の動力伝達機構214と衝突ブレーキ対226の構成を示している。図10は通常時の動作状態を示しており、図11は緊急停止時の動作状態を示している。動力伝達機構214は、第1ギヤ56と、第2ギヤ58と、クラッチ部材246と、工具軸216等を備えている。衝突ブレーキ対226は、クラッチ部材246に設けられている複数のハンマー部253と、ハンマー部253が衝突することによって破断する複数の破断棒材254を備えている。
工具軸216には、丸鋸18が脱着可能に取付けられている。工具軸216には、軸方向の一部216bにおいて、軸方向に伸びる複数の溝(あるいは複数の突起ともいえる)が形成されている。以下、この工具軸216の一部216bを、スプライン部216bということがある。
クラッチ部材246は、工具軸216のスプライン部216bにおいて軸支されている。クラッチ部材246は、工具軸216に対して、相対回転不能であるとともに、軸方向には相対移動可能となっている。図10に示すように、通常時の動作状態では、クラッチ部材246が第2回転ギヤ58側に位置している。このとき、第2ギヤ58のクラッチ部材246側に位置する端面58cと、クラッチ部材246の第2ギヤ58側に位置する端面246dは、摺動不能に嵌合している。図11に示すように、緊急停止時の動作状態では、クラッチ部材246が破断棒材254群側に位置することとなる。このとき、クラッチ部材246に設けられているハンマー部253群が、破断棒材254群に当接することとなる。
【0032】
図10、11に示すように、破断棒材254群は、基台257によって支持されている。破断棒材254群は、基台257に対して進退可能に支持されている。また各破断棒材254は、各ばね材256によって、クラッチ部材246のハンマー部253群に向けて付勢されている。図10は、各破断棒材254がハンマー部253群に向けてもっとも伸びている状態を示しており、各破断棒材254はストッパによってそれ以上は伸びないようになっている。破断棒材254群を支持している基台257は、本体24側に固定されている。各破断棒材254には、切欠255が形成されている。破断棒材254は、本体24に対して交換可能に取付けられている。
図12は、クラッチ部材246と破断棒材254群の構成を模式的に示すものである。図12に示すように、クラッチ部材246には、複数のハンマー部253が形成されている。詳しくは、6箇所のハンマー部253が、周方向に等間隔で形成されている。図13には、6箇所のハンマー部253が配置されている様子が記載されている。破断棒材254群は、クラッチ部材246の軸方向に伸びて配置されている。詳しくは、7本の破断棒材254が、周方向に並んで配置されている。図13には、7本の破断棒材254が配置されている様子が記載されている。
【0033】
図10に示すように、通常時の動作状態では、クラッチ部材246が第2ギヤ58側(第1位置)に位置しており、クラッチ部材246の第2ギヤ58側に位置する端面246dと、第2ギヤ58のクラッチ部材46側に位置する端面58cが嵌合している。この状態では、モータ28から丸鋸18まで、第1ギヤ56と第2ギヤ58とクラッチ部材246と工具軸216によって動力伝達経路が構成されている。即ち、モータ28によって丸鋸18が駆動される状態であり、ワークの加工作業を行うことができる状態である。このとき、クラッチ部材246のハンマー部253群と破断棒材254群は、相対的に移動しているが離れているので衝突しない。
【0034】
図10、図11に示すように、クラッチ部材246の移動は、実施例1と同様に、ソレノイド244によって行われる。クラッチ部材246には、外周面を一周するように溝246aが形成されており、その溝246aにソレノイド244の可動子244aが係止している。可動子244aは、ばね部材240によって第2ギヤ58側に付勢されている。図10の状態では、ソレノイド244は通電されておらず、クラッチ部材246がばね材246の付勢力によって、第2ギヤ側(第1位置)に拘束されている。図10の状態からソレノイド244に通電すると、ソレノイド244は可動子244aを押し出して、クラッチ部材246を破断棒材254群側(第2位置)に移動させる。即ち、図11に示す緊急停止時の動作状態となる。なお、ソレノイド244の動作は、実施例1と同様に、マイコン102によって制御することができる。
【0035】
図11に示すように、緊急停止時の動作状態では、クラッチ部材246が破断棒材254群側(第2位置)に位置しており、クラッチ部材246のハンマー部253が破断棒材254群と当接する。このとき同時に、クラッチ部材246と第2ギヤ58の嵌合が解除され、モータ22側の動力が工具軸216等に伝達されない状態となる。クラッチ部材246が破断棒材254群側(第2位置)に移動すると、一部の破断棒材254は隣接する2つのハンマー部253の間に侵入し、その他の破断棒材254はハンマー部253によって基台257内へと押し込まれる。クラッチ部材246が回転することによって、隣接する2つのハンマー部253の間に侵入した破断棒材254は、ハンマー部253によって破断される。また、クラッチ部材246が回転することによって、別の破断棒材254が隣接する2つのハンマー部253の間に侵入する。ハンマー部253は、破断棒材254群を順次破断していくこととなる。
図13(a)〜(d)は、クラッチ部材246のハンマー部253群が、破断棒材254群を順次破断していく様子を示している。図13(a)〜(d)が示すように、クラッチ部材246がR方向に回転するにつれて、1本の破断棒材254がハンマー部253の衝突部253aに順次衝突し、破断棒材254群が一本ずつ(図中A、B、C、Dの順に)順次破断されていく。丸鋸18や工具軸16やクラッチ部材46の回転エネルギは、ハンマー部253群が破断棒材254群を破断していくことで急激に減少し、丸鋸18は短時間で停止する。慣性モーメントの大きいモータ28を停止する必要がないことから、丸鋸18を短時間で停止することができる。
【0036】
破断棒材254群を破断するのに要するエネルギは、実施例1と同様に、通常運転時の回転速度で回転しているときの丸鋸18や工具軸216やクラッチ部材246の回転エネルギに基づいて設定されている。即ち、丸鋸18の回転速度が速いときほど、より多くの破断棒材254が破断される。そして、高速運転時において緊急停止した場合に、すべての破断棒材254を次々に破断して、丸鋸18が停止するように設定されている。複数の破断棒材254を時間差をもって破断することから、各破断棒材254を破断する際に生じる反力は低く抑えられている。
【0037】
実施例2のテーブルソー210によっても、実施例1のテーブルソー210と同様に、例えば危険な状況等が発生した場合に、回転している丸鋸18を速やかに停止することができる。このとき停止に要する時間は、想定されている時間に対して大きく変動することがない。また、停止時において工具軸16等に加わる反力も、想定されている反力に対して大きく変動することがない。
【0038】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本実施例では、本発明の技術をテーブルソーに採用した例を説明したが、本発明の技術は他の動力工具にも同様に採用することができる。
衝突ブレーキ対は、実施例で説明したように一方が他方を破断する構成としてもよいし、あるいは両者が互いに破断し合う構成としてもよい。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例1のテーブルソーの構成を示す図。
【図2】実施例1のテーブルソーの要部の構成を示す図(通常動作時)。
【図3】実施例1のテーブルソーの要部の構成を示す図(緊急停止時)。
【図4】図2のIV−IV線断面図。
【図5】図2のV−V線断面図。
【図6】テーブルソーの電気構成を示す図。
【図7】レーダの構成を示す図。
【図8】レーダが送信する電波の周波数の経時的変化を示す図。
【図9】実施例2のテーブルソーの構成を示す図。
【図10】実施例2のテーブルソーの要部の構成を示す図(通常動作時)。
【図11】実施例2のテーブルソーの要部の構成を示す図(緊急停止時)。
【図12】実施例2における衝突ブレーキ対の構成を模式的に示す図。
【図13】破断棒材群が順次破断されていく様子を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
10、210・・テーブルソー
11・・安全カバー
12・・レーダ
14、214・・動力伝達部
16、216・・工具軸
18・・丸鋸(工具)
26、226・・衝突ブレーキ対
46、246・・クラッチ部材
52・・ハンマー部材
54・・破断バー群
253・・ハンマー部
254・・破断棒材
【技術分野】
【0001】
本発明は動力工具に関する。特に、運動している工具を緊急停止するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業者の手が運動(回転運動)している工具に接触したときに、運動している工具を緊急停止する動力工具が開示されている。
特許文献1の技術では、運動している工具を緊急停止する際に、工具の刃先に制動部材を押し付けて、工具を停止するようにしている。
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/17336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
運動している工具を緊急停止する際には、工具に大きな制動力を加えて、一刻も早く工具を停止させる必要がある。一方において、工具に過大な制動力を加えてしまうと、工具を支持する機構等に過大な反力が加わってしまい、その反力によって作業者に二次的な被害を与えてしまう可能性がある。運動している工具を緊急停止する際には、動力工具が許容する限度内において、可能な限り大きな制動力を工具に加えることが必要となる。
特許文献1の技術のように、工具の刃先に制動部材を押し付けると、工具の刃先が制動部材に食い込むこととなり、工具に大きな制動力を加えることができる。しかしながら、工具に加えられる制動力は、工具の刃先の状態によって変化してしまう。例えば新品の工具のように刃先が鋭利な状態であれば、工具に加えられる制動力は小さくなる。一方において、長期に亘って使用された工具のように刃先の磨耗が進んでいると、工具に加えられる制動力は大きくなる。即ち、工具の刃先が鋭利であれば緊急停止に要する時間が長くなってしまい、工具の刃先が磨耗していれば動力工具に過大な反力が加わってしまう。
工具の刃先の状態等に関わらず、運動している工具を可能な限り短時間で緊急停止するための技術が必要とされている。
本発明は、上記の課題を解決する。本発明は、工具の刃先の状態等に関わらず、運動している工具を可能な限り短時間で緊急停止することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明が提供する動力工具は、本体に対して運動可能に支持されている工具と、工具を駆動する駆動源と、本体に対して運動可能に支持されている第1衝突部材と、本体側に支持されている第2衝突部材と、第1衝突部材が第2衝突部材に衝突しない通常状態から、第1衝突部材が運動している工具に接続されて第2衝突部材に衝突する緊急停止状態へと切換える切換手段とを備える。そして、前記第1衝突部材と前記第2衝突部材の少なくとも一方は、衝突したときに破断する破断部材を備えていることを特徴とする。
【0005】
この動力工具では、運動している工具を緊急停止する必要が生じたときに、第1衝突部材を運動している工具に接続した状態で、第1衝突部材と第2衝突部材を衝突させる。第1衝突部材と第2衝突部材を衝突させることによって、工具に強い制動力を加えることができる。第1衝突部材と第2衝突部材には、工具の刃先のような状態変化が実質的に生じないことから、工具に想定されている制動力が加えられる。
第1衝突部材と第2衝突部材の少なくとも一方は、衝突したときに破断する破断部材を備えている。よく知られているように、物体を破断するのに要するエネルギは比較的大きい。工具の運転エネルギを、破断部材を破断するエネルギに変換することで、工具を速やかに停止することが可能となる。
この動力工具によると、工具の刃先の状態等に関わらず、速やかに工具を緊急停止することが可能となる。工具を緊急停止する際には、駆動源から工具への駆動力供給を中止することが有利であるが、不可欠ではない。第1衝突部材と第2衝突部材が衝突し、工具の運動エネルギが大きく減少すれば、駆動源から工具へ駆動力が伝達されていても、工具を停止することは可能である。
【0006】
上記の動力工具において、第1衝突部材と第2衝突部材の少なくとも一方は、複数の破断部材を備えていることが好ましい。
工具の運動速度は、様々に変化する。例えば空運転しているときに比較して、ワーク等を加工しているときには工具の速度が低下する。あるいは動力工具が、工具の運転速度を調節する機能を備えていることもある。工具の運動速度が変化すれば、工具の運動エネルギも変化する。
複数の破断部材を用いると、各破断部材を破断するのに要するエネルギを低く設定しておき、工具の運動エネルギに応じた数だけ破断部材を破断させて、工具を停止させることが可能となる。工具が低速で運動している場合でも、少なくとも1本の破断部材を破断させて、工具の運動エネルギを確実に減少させることができる。緊急停止後の復旧作業においても、破断した破断部材のみを交換すればよい。
【0007】
破断部材には、破断する位置を規定するための切欠が設けられていることが好ましい。
それにより、破断部材が破断する際に、予定している位置で破断させることができる。破断部材は、予定した力が加えられたときに破断し、予定したエネルギ量だけ工具の運動エネルギを減少することができる。動力工具に予定外の反力が加わることを防止することができる。
【0008】
上記の動力工具では、第2衝突部材のみが破断部材を備えていることが好ましい。
第2衝突部材は動力工具の本体に対して略停止している。第2衝突部材のみが破断部材を備えていると、破断部材が破断したときに、破断片が飛散することを抑えることが可能となる。
【0009】
切換手段は、通常状態から緊急停止状態へと切換える際に、工具が駆動源に接続されている状態から、工具が駆動源から接続解除されている状態へと切換えることが好ましい。
それにより、工具を緊急停止する際に、大きな回転エネルギを持つ動力源を停止する必要がないことから、工具をより短時間で停止することができる。
【0010】
切換手段は、第1位置にあるときには工具と駆動源を接続するとともに工具と第1衝突部材を接続解除し、第2位置にあるときには工具と駆動源を接続解除するとともに工具と第1衝突部材を接続する切換部材を備えていることが好ましい。
あるいは切換手段が、第1位置にあるときには工具と駆動源を接続するとともに第1衝突部材と第2衝突部材を衝突しない位置関係に維持し、第2位置にあるときには工具と駆動源を接続解除するとともに第1衝突部材と第2衝突部材を衝突する位置関係に維持する切換部材を備えていることが好ましい。
それにより、切換部材を第1位置から第2位置に移動させることによって、通常状態から緊急停止状態へと切換えることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、動力工具の状態等に関わらず、運動している工具を短時間で緊急停止することが可能となり、作業者の安全をより確実にすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
最初に、以下に説明する実施例の主要な特徴を列記する。
(形態1) 動力工具は、工具の近傍領域を看視するレーダを備えている。
(形態2) 動力工具は、工具の近傍領域に存在する電波反射体の位置と速度に基づいて、運動している工具を緊急停止させるのか否かを判断する。
【実施例】
【0013】
(実施例1)
図1に、実施例1のテーブルソー10を示す。テーブルソー10は、木質系のワークを切断する動力工具である。テーブルソー10は、本体24と、本体24の上側に設けられているテーブル20と、テーブル20から突出している丸鋸18と、丸鋸18の上方および側方を覆っている安全カバー11を備えている。本体24には、操作部22が設けられている。操作部22は、丸鋸18の回転/停止を操作するスイッチや、丸鋸18の回転速度を調節(低速、中速、高速)するためのスイッチや、丸鋸18を緊急停止させるためのスイッチ等を備えている。テーブルソー10を利用する作業者は、テーブル20上でワークを把持し、回転している丸鋸18に向けてワークを送り出していく。安全カバー11は、テーブル20上に回動可能に取り付けられており、ワークWによって押し開かれるようになっている。
【0014】
テーブルソー10は、丸鋸18の近傍領域を看視するレーダ12を備えている。レーダ12は、テーブルソー10の反作業者側(後方側)に設けられている。レーダ12は、本体12から伸びているアーム12aによって支持されている。
レーダ12は、丸鋸18の近傍領域に向けて電波を送信するとともに、丸鋸18の近傍領域に存在する電波反射体によって反射された反射波を受信して、その電波反射体の位置と速度を検出する。レーダ12は、丸鋸18の後方側から作業者側に向けて、ワークの送り方向に沿って電波を送信し、ワーク送り方向における電波反射体の位置と速度を検出する。レーダ12が電波反射体の位置と速度を検出する方法については、後段において詳細に説明する。
テーブルソー10の本体24の内部には、丸鋸18を駆動するモータ28と、モータ28の動力を丸鋸18に伝達する動力伝達機構14と、丸鋸18を緊急停止するときに動作する衝突ブレーキ対26を備えている。また、本体24の内部には、テーブルソー10の動作を制御するための制御部100が設けられている。
【0015】
図2、図3は、動力伝達機構14と衝突ブレーキ対26の構成を示している。図2は通常時の動作状態を示しており、図3は緊急停止時の動作状態を示している。動力伝達機構14は、第1ギヤ56と、第2ギヤ58と、クラッチ部材46と、工具軸16等を備えている。衝突ブレーキ対26は、工具軸16によって支持されているハンマー部材52と、本体24側に固定されている破断バー群54を備えている。ハンマー部材52は工具軸16回りに回転可能であって、その回転経路上に破断バー群54が設けられている。
第1ギヤ56は、図示しない軸受等によって、本体24に対して軸56aの回りに回転可能に軸支されているとともに、モータ28の出力軸28aのギヤ部と噛合している。
第2ギヤ58は、第1ギヤ56と噛合しているとともに、工具軸16によって軸支されている。第2ギヤ58には貫通孔58bが形成されており、その貫通孔58bを工具軸16が貫通している。貫通孔58bと工具軸16の間には、クリアランスが設けられており(図示省略)、両者の嵌め合いは「すきまばめ」の関係となっている。第2ギヤ58と工具軸16は相対回転可能となっており、実質的な動力が両者の間で直接的に伝達されないようになっている。
【0016】
工具軸16は、円筒形状をしており、軸受48によって本体24に対して回転可能に軸支されている。工具軸16には、締結部材50によって丸鋸18が脱着可能に取付けられている。工具軸16には、軸方向の一部16bにおいて、軸方向に伸びる複数の溝(あるいは複数の突起ともいえる)が形成されている。以下、この工具軸16の一部16bを、スプライン部16bということがある。図5は、図2中のV−V線断面図であり、スプライン部16の断面形状がよく示されている。
クラッチ部材46は、工具軸16によって軸支されている。クラッチ部材46には、貫通孔46bが設けられており、その貫通孔46bを工具軸16のスプライン部16bが貫通している。貫通孔46bの周面には、スプライン部16bの形状を転写した形状が形成されており、クラッチ部材46と工具軸16は相対回転不能となっている。一方において、貫通孔46bの周面と工具軸16のスプライン部16bとの間には微小なクリアランスが設けられており、クラッチ部材46は工具軸16に対して軸方向に相対移動可能となっている。図2に示すように、通常時の動作状態では、クラッチ部材46が第2回転ギヤ58側に位置している。図3に示すように、緊急停止時の動作状態では、クラッチ部材46がハンマー部材52側に位置することとなる。
【0017】
ハンマー部材52は、工具軸16によって回転可能に支持されている。ハンマー部材52には貫通孔52bが形成されており、その貫通孔52bを工具軸16が貫通している。貫通孔52bと工具軸16の間には、クリアランスが設けられており(図示省略)、両者の嵌め合いは「すきまばめ」の関係となっている。ハンマー部材52と工具軸16は相対回転可能となっており、実質的な動力が両者の間で直接的に伝達されないようになっている。
図4(a)は、図2のIV−IV線断面図を示している。図4(b)は、図4(a)のB矢視図を示している。図4(a)に示すように、ハンマー部材52は工具軸16からレバー状に伸びており、衝突部52aが形成されている。衝突部52aは、破断バー群54に対向する位置に形成されている。図4(b)に示すように、衝突部52aはくさび形状をしている。
破断バー群54は、複数の破断バー54a、54b、54cを備えている。各破断バー54a、54b、54cの両端は、テーブルソー本体24側に脱着可能に固定されている。各破断バー54a、54b、54cは、テーブルソー本体24に対して交換可能となっている。破断バー群54は、ハンマー部材52が工具軸16回りに回転したときに、ハンマー部材52によって破断される。図4(b)に示すように、破断バー54aには、反ハンマー部材52側に切欠55aが設けられている。同様の切欠は、他の破断バー54b、54cにも設けられている。
【0018】
図2、図3に示すように、クラッチ部材46の第2ギヤ58側に位置する端面46dと、第2ギヤ58のクラッチ部材46側に位置する端面58cは、互いに嵌合可能な形状に形成されている。また、クラッチ部材46のハンマー部材52側に位置する端面46cと、ハンマー部材52のクラッチ部材46側に位置する端面52dは、互いに嵌合可能な形状に形成されている。
図2に示すように、通常時の動作状態では、クラッチ部材46が第2ギヤ58側(第1位置)に位置しており、クラッチ部材46の第2ギヤ58側に位置する端面46dと、第2ギヤ58のクラッチ部材46側に位置する端面58cが嵌合している。この状態では、クラッチ部材46が第2ギヤ58とともに一体となって回転する。それにより、モータ28から丸鋸18まで、第1ギヤ56と第2ギヤ58とクラッチ部材46と工具軸16によって動力伝達経路が構成される。即ち、モータ28によって丸鋸18が駆動される状態であり、ワークの加工作業を行うことができる状態である。このとき、ハンマー部材52には動力が伝達されず、ハンマー部材52は略静止している。ハンマー部材52は、破断バー54aと当接しているが、相対的に移動しないことから衝突しない。
図3に示すように、緊急停止時の動作状態では、クラッチ部材46がハンマー部材52側(第2位置)に位置しており、クラッチ部材46のハンマー部材52側に位置する端面46cと、ハンマー部材52のクラッチ部材46側に位置する端面52dが嵌合している。この状態では、ハンマー部材52がクラッチ部材46と一体となり、丸鋸18からハンマー部材52まで、工具軸16とクラッチ部材46によって動力伝達経路が形成される。このとき、丸鋸18が通常時(加工時)の方向に回転すると、ハンマー部材52は破断バー群54に衝突する方向に回転する。一方において、クラッチ部材46が第2ギヤ58から離反しているので、第2ギヤ58とクラッチ部材46との間では動力が伝達されない状態となっている。それにより、第1ギヤ56や第2ギヤ58やモータ28は、丸鋸18やハンマー部材52に動力を伝達しない状態となっている。
【0019】
図2、図3に示すように、テーブルソー10は、クラッチ部材46に係止されている係止部材42と、係止部材42を工具軸16の軸方向に沿ってハンマー部材52側に付勢しているばね部材40と、ソレノイド44等を備えている。
係止部材42は、クラッチ部材46の外周面に形成されている溝46aに係止されている。溝46aはクラッチ部材46の外周面を一周するように形成されている。係止部材42は、クラッチ部材46の回転運動を許容しながら、クラッチ部材46の工具軸16の軸方向の移動を規制する。係止部材42には、ソレノイド44の可動子44aが嵌合する孔42aが形成されている。
図2に示すように、通常時の運転状態では、ソレノイド44の可動子44aが係止部材42の孔42aに遊嵌しており、クラッチ部材46が第2ギヤ58側(第1位置)に拘束されている。この状態からソレノイド44に通電すると、可動子44aがソレノイド44内へ引き込まれ、可動子44aが係止部材42の孔42aから離脱する。ばね部材40の付勢力によって、係止部材42はクラッチ部材46とともにハンマー部材52側(第2位置)へ移動する。即ち、図3に示す緊急停止時の状態となる。なお、詳しくは後述するが、ソレノイド44の動作タイミングは制御部100によって制御される。
【0020】
図3に示す緊急停止時の状態では、丸鋸18や工具軸16やクラッチ部材46の慣性力によって、ハンマー部材52が工具軸16とともに回転する。ハンマー部材52の衝突部54aは、破断バー群54に衝突することとなり、破断バー群54が破断する。丸鋸18や工具軸16やクラッチ部材46の回転エネルギは、ハンマー部材52が破断バー群54を破断することで急激に減少し、丸鋸18は短時間で停止する。このとき、第1ギヤ56や第2ギヤ58やモータ28は、丸鋸18への動力伝達経路が絶たれているので、第1ギヤ56や第2ギヤ58やモータ28等を停止する必要はない。慣性モーメントの大きいモータ28を停止する必要がないことから、丸鋸18を短時間で停止することができる。
【0021】
破断バー54群の各破断バー54a、54b、54cを破断するのに要するエネルギは、通常運転時の回転速度で回転しているときの丸鋸18や工具軸16やクラッチ部材46の回転エネルギに基づいて設定されている。例えば破断バー54aを破断するのに要するエネルギは、低速運転時の回転速度で回転しているときの丸鋸18や工具軸16やクラッチ部材46の回転エネルギと略等しく設定されている。即ち、テーブルソー10が低速運転している最中に緊急停止が実施された場合、ハンマー部材52が破断バー54aを破断した時点で、丸鋸18は静止する。また、破断バー54aと破断バー54bの両者を破断するのに要するエネルギは、中速運転時の回転速度で回転しているときの丸鋸18や工具軸16やクラッチ部材46の回転エネルギと略等しく設定されている。即ち、テーブルソー10が中速運転している最中に緊急停止が実施された場合、ハンマー部材52が破断バー54aに続いて破断バー54bを破断した時点で、丸鋸18は静止する。また、破断バー54aと破断バー54bと破断バー54cの三者を破断するのに要するエネルギは、高速運転時の回転速度で回転しているときの丸鋸18や工具軸16やクラッチ部材46の回転エネルギと略等しく設定されている。即ち、テーブルソー10が高速運転している最中に緊急停止が実施された場合、ハンマー部材52が破断バー54a、54bに続いて破断バー54cを破断した時点で、丸鋸18は静止する。
【0022】
本実施例のテーブルソー10では、運転速度が高速であるときほど、破断バー54a、54b、54cをより多く破断することによって、丸鋸18を静止するようにしている。これは、ハンマー部材52が破断バー群54を破断する際に、ハンマー部材52が受ける反力が過大とならないようにするためである。ハンマー部材52に過大な反力が加わると、工具軸16等にも過大な力が加わることとなり、テーブルソー10が損傷してしまうこともある。テーブルソー10が損傷すれば、作業者に二次的な被害を与えてしまうこともある。本実施例のテーブルソー10では、複数の破断バー54a、54b、54cを時間差をもって破断することによって、緊急停止時に二次的な被害が発生することを防ぐようにしている。
図4(b)に示したように、各破断バー54a、54b、54cには切欠(例えば切欠55a)が設けられているので、各破断バー54a、54b、54cは、想定されている力と変位が加えられたときに、想定されている位置(切欠)から破断する。それにより、各破断バー54a、54b、54cが破断する際には、想定されているエネルギが消散されるとともに、想定されている反力を超える反力が工具軸16等に作用することがない。
【0023】
図6は、テーブルソー10の電気構成を示している。図6に示すように、テーブルソー10の制御部100は、マイクロコンピュータ(以下、単にマイコンということがある)102や、モータコントローラ104や、ソレノイドコントローラ106等を備えている。マイコン102には、操作部22やモータコントローラ104やレーダ12やソレノイドコントローラ106等が接続されている。モータコントローラ104には、モータ28が接続されている。ソレノイドコントローラ106には、ソレノイド44が接続されている。
操作部22は、作業者の操作に対応する信号をマイコン102へと出力する。マイコン102は、操作部22から入力する信号に基づいて、モータコントローラ104に指令を与える。モータコントローラ104は、マイコン102の指令に基づいて、モータの駆動/停止や回転速度等を制御する。これが通常時の動作状態であり、丸鋸18が所定の回転速度(低速、中速、高速)で回転する。
マイコン102には、レーダ12が検出する電波反射体の位置と速度が入力される。マイコン102は、入力した電波反射体の位置と速度に基づいて、電波反射体が丸鋸18に接触する危険性を判断し、ソレノイドコントローラ106に動作指令を出力する。即ち、丸鋸18を緊急停止させる。例えば、電波反射体が丸鋸18に所定距離以下にまで接近しているときには、電波反射体が丸鋸18に接触する危険性が高いと判断することができる。あるいは、電波反射体が丸鋸18に所定速度を越える速度で接近しているときにも、電波反射体が丸鋸18に接触する可能性が高いと判断することができる。また、電波反射体と丸鋸18との間の所定距離と、電波反射体が丸鋸18に接近している接近速度から、電波反射体が丸鋸18に接触するまでの猶予時間を計算し、その猶予時間と丸鋸18を緊急停止させるのに要する時間とを比較して、丸鋸18を緊急停止させるのか否かを判断することができる。
ソレノイドコントローラ106は、マイコン102から動作指令を受けると、ソレノイド44に通電する。ソレノイド44が動作することによって、図3に示す緊急停止時の動作状態となり、丸鋸18は緊急停止する。
なお、作業者が操作部22の緊急停止スイッチを操作した場合にも、マイコン102はソレノイドコントローラ104に動作指令を出力し、丸鋸18は緊急停止される。
【0024】
図7を参照して、レーダ12について詳細に説明する。図7に示すように、レーダ12は、電波を送受信するための送受信アンテナ74を備えている。送受信アンテナ74は、丸鋸18の近傍領域に向けて電波を送信するとともに、丸鋸18の近傍領域に存在する電波反射体によって反射された反射波を受信する。
送受信アンテナ74には、発振回路72が接続されており、発振回路72にはクロック発生回路70が接続されている。発振回路72は、正弦波信号を出力する。クロック発生回路70は、所定の周期でパルス信号を出力する。発振回路72は、クロック発生回路70から入力するパルス信号に同期して、正弦波信号の周波数を2段階に切換える。それにより、図8に示すように、発振回路72が出力する正弦波信号の周波数は、高周波数Hと低周波数Lの間で周期的に切換わる。図8中の期間tsは、クロック発生回路70が出力するパルス信号の周期である。即ち、送受信アンテナ74が送信する電波は、周波数が周期的に2段階に切換わる。
【0025】
レーダ12は、ダイオードミクサ76を備えている。ダイオードミクサ76は、送受信アンテナ74から送信する送信波と、電波反射体で反射された反射波を検波して、その検波信号を出力する検波回路である。ダイオードミクサ76が出力する検波信号は、いわゆるドップラー効果によって、電波反射体の移動速度に応じて変化する。即ち、電波反射体が静止している場合では、送信波の周波数と受信波の周波数が一致し、検波信号にうなりは生じない。検波信号は、電波反射体までの距離に応じた所定値を維持する。一方、電波反射体が移動している場合では、送信波の周波数と受信波の周波数が相違することから、2つの正弦波信号が干渉し、検波信号が周期的に変化する。即ち、検波信号にうなりが生じる。このうなりの周波数は電波反射体の移動速度に応じて変化することから、検波信号の周波数に基づいて、電波反射体の移動速度を計測することができる。
一方、ダイオードミクサ76が出力する検波信号は、送受信アンテナ74が送信する電波の周波数と、電波反射体までの距離との比に応じて変化する。そのことから、高周波数Hの電波による検波信号と低周波数Lの電波による検波信号との位相差に基づいて、電波反射体の位置(アンテナ74からの距離)を計測することができる。
【0026】
図7に示すように、ダイオードミクサ76には、切替スイッチ78を介して、2つの回路群と接続されている。一方の回路群は、増幅回路80aとフィルタ回路82aと波形整形回路84aで構成されている。他方の回路群は、増幅回路80bとフィルタ回路82bと波形整形回路84bで構成されている。レーダ12は、一方の回路群80a、82a、84aの出力信号に基づいて電波反射体の速度を計測する速度計測回路86を備えている。またレーダ12は、一方の回路群80a、82a、84aと他方の回路群80b、82b、84bの両方の出力信号に基づいて、電波反射体の位置を計測する位相差計測回路88を備えている。
切替スイッチ78には、クロック発生回路70が接続されている。切替スイッチ78は、クロック発生回路70から入力するパルス信号に同期して、ダイオードミクサ76が一方の回路群80a、82a、84aに接続する状態と、ダイオードミクサ76が他方の回路群80b、82b、84bに接続する状態とを切換える。即ち、一方の回路群80a、82a、84aには、一方の周波数(例えば高周波数H)の電波による検波信号が入力され、他方の回路群80b、82b、84bには、他方の周波数(例えば低周波数L)の電波による検波信号が入力される。
【0027】
一方の回路群80a、82a、84aに入力された検波信号は、増幅回路80aで増幅され、フィルタ回路82aでノイズが除去され、波形整形回路84aで波形整形されて、速度計測回路86と位相差計測回路88に入力される。他方の回路群80b、82b、84bに入力された検波信号は、増幅回路80bで増幅され、フィルタ回路82bでノイズが除去され、波形整形回路84bで波形整形されて、位相差計測回路88に入力される
速度計測回路86は、一方の回路群80a、82a、84aから、一方の周波数(例えば高周波数H)の電波を用いたときの検波信号を入力し、そのうなりの周波数に基づいて電波反射体の速度を計測する。位相差計測回路88は、一方の周波数(例えば高周波数H)の電波を用いたときの検波信号と、他方の周波数(例えば低周波数L)の電波を用いたときの検波信号とを入力し、両者のうなりの位相差に基づいて電波反射体の位置を計測する。位相差計測回路88が計測した電波反射体の位置と、速度計測回路86が計測した電波反射体の速度は、制御部100のマイコン102へと入力される。
【0028】
ここで、レーダ12は、1G〜30GHzの電波を用いることが好ましい。この周波数帯の電波に対して、含水率の低い木材等は電波の反射率が低くなり、電波の透過率が高くなる。一方、含水率の高い物体(作業者の手等)や金属等は電波の反射率が高くなる。この周波数帯の電波を用いることによって、木質系のワークについては看過しながら、作業者の手や金属等の電波反射体を看視することができる。例えばワークの陰に隠れる作業者の手や、ワークに埋もれている釘等を検出することもできるようになる。なお本実施例では、24.2GHzのマイクロ波を用いている。周波数の高い電波を用いることによって、電波の指向性を高めることができ、丸鋸18の近傍領域を精度よく看視することができる。
以上、レーダ12について詳細に説明したが、上記したレーダ12の構成等は一例であり、他の形態のレーダを用いてもよい。また、電波を用いるレーダ12に換えて、超音波等を用いる探知機を用いてもよいし、カメラやフォトセンサ等による光学的な探知機を用いてもよい。
【0029】
本実施例のテーブルソー10によると、例えば危険な状況等が発生した場合に、回転している丸鋸18を速やかに停止することができる。このとき停止に要する時間は、想定されている時間に対して大きく変動することがない。また、停止時において工具軸16等に加わる反力も、想定されている反力に対して大きく変動することがない。また、ワーク以外の物体(電波反射体)が丸鋸18に接触する危険性に基づいて、丸鋸18を緊急停止することができるので、ワーク以外の物体が回転している丸鋸18に接触することを未然に防ぐことが可能となる。
【0030】
(実施例2)
図9に、実施例2のテーブルソー210を示す。実施例2のテーブルソー210は、実施例1のテーブルソー10と比較して、異なる形態の衝突ブレーキ対を採用したものである。以下、実施例2のテーブルソー210について詳細に説明するが、実施例1のテーブルソー10と同様の構成については同一の符号を付し、重複して説明することは避けるように努める。
図9に示すように、実施例2のテーブルソー210は、本体24と、テーブル20と、丸鋸18と、レーダ12等を備えている。また本体24の内部には、丸鋸18を駆動するモータ28と、モータ28の動力を丸鋸18に伝達する動力伝達機構214と、丸鋸18を緊急停止するときに動作する衝突ブレーキ対226を備えている。
【0031】
図10、図11は、実施例2の動力伝達機構214と衝突ブレーキ対226の構成を示している。図10は通常時の動作状態を示しており、図11は緊急停止時の動作状態を示している。動力伝達機構214は、第1ギヤ56と、第2ギヤ58と、クラッチ部材246と、工具軸216等を備えている。衝突ブレーキ対226は、クラッチ部材246に設けられている複数のハンマー部253と、ハンマー部253が衝突することによって破断する複数の破断棒材254を備えている。
工具軸216には、丸鋸18が脱着可能に取付けられている。工具軸216には、軸方向の一部216bにおいて、軸方向に伸びる複数の溝(あるいは複数の突起ともいえる)が形成されている。以下、この工具軸216の一部216bを、スプライン部216bということがある。
クラッチ部材246は、工具軸216のスプライン部216bにおいて軸支されている。クラッチ部材246は、工具軸216に対して、相対回転不能であるとともに、軸方向には相対移動可能となっている。図10に示すように、通常時の動作状態では、クラッチ部材246が第2回転ギヤ58側に位置している。このとき、第2ギヤ58のクラッチ部材246側に位置する端面58cと、クラッチ部材246の第2ギヤ58側に位置する端面246dは、摺動不能に嵌合している。図11に示すように、緊急停止時の動作状態では、クラッチ部材246が破断棒材254群側に位置することとなる。このとき、クラッチ部材246に設けられているハンマー部253群が、破断棒材254群に当接することとなる。
【0032】
図10、11に示すように、破断棒材254群は、基台257によって支持されている。破断棒材254群は、基台257に対して進退可能に支持されている。また各破断棒材254は、各ばね材256によって、クラッチ部材246のハンマー部253群に向けて付勢されている。図10は、各破断棒材254がハンマー部253群に向けてもっとも伸びている状態を示しており、各破断棒材254はストッパによってそれ以上は伸びないようになっている。破断棒材254群を支持している基台257は、本体24側に固定されている。各破断棒材254には、切欠255が形成されている。破断棒材254は、本体24に対して交換可能に取付けられている。
図12は、クラッチ部材246と破断棒材254群の構成を模式的に示すものである。図12に示すように、クラッチ部材246には、複数のハンマー部253が形成されている。詳しくは、6箇所のハンマー部253が、周方向に等間隔で形成されている。図13には、6箇所のハンマー部253が配置されている様子が記載されている。破断棒材254群は、クラッチ部材246の軸方向に伸びて配置されている。詳しくは、7本の破断棒材254が、周方向に並んで配置されている。図13には、7本の破断棒材254が配置されている様子が記載されている。
【0033】
図10に示すように、通常時の動作状態では、クラッチ部材246が第2ギヤ58側(第1位置)に位置しており、クラッチ部材246の第2ギヤ58側に位置する端面246dと、第2ギヤ58のクラッチ部材46側に位置する端面58cが嵌合している。この状態では、モータ28から丸鋸18まで、第1ギヤ56と第2ギヤ58とクラッチ部材246と工具軸216によって動力伝達経路が構成されている。即ち、モータ28によって丸鋸18が駆動される状態であり、ワークの加工作業を行うことができる状態である。このとき、クラッチ部材246のハンマー部253群と破断棒材254群は、相対的に移動しているが離れているので衝突しない。
【0034】
図10、図11に示すように、クラッチ部材246の移動は、実施例1と同様に、ソレノイド244によって行われる。クラッチ部材246には、外周面を一周するように溝246aが形成されており、その溝246aにソレノイド244の可動子244aが係止している。可動子244aは、ばね部材240によって第2ギヤ58側に付勢されている。図10の状態では、ソレノイド244は通電されておらず、クラッチ部材246がばね材246の付勢力によって、第2ギヤ側(第1位置)に拘束されている。図10の状態からソレノイド244に通電すると、ソレノイド244は可動子244aを押し出して、クラッチ部材246を破断棒材254群側(第2位置)に移動させる。即ち、図11に示す緊急停止時の動作状態となる。なお、ソレノイド244の動作は、実施例1と同様に、マイコン102によって制御することができる。
【0035】
図11に示すように、緊急停止時の動作状態では、クラッチ部材246が破断棒材254群側(第2位置)に位置しており、クラッチ部材246のハンマー部253が破断棒材254群と当接する。このとき同時に、クラッチ部材246と第2ギヤ58の嵌合が解除され、モータ22側の動力が工具軸216等に伝達されない状態となる。クラッチ部材246が破断棒材254群側(第2位置)に移動すると、一部の破断棒材254は隣接する2つのハンマー部253の間に侵入し、その他の破断棒材254はハンマー部253によって基台257内へと押し込まれる。クラッチ部材246が回転することによって、隣接する2つのハンマー部253の間に侵入した破断棒材254は、ハンマー部253によって破断される。また、クラッチ部材246が回転することによって、別の破断棒材254が隣接する2つのハンマー部253の間に侵入する。ハンマー部253は、破断棒材254群を順次破断していくこととなる。
図13(a)〜(d)は、クラッチ部材246のハンマー部253群が、破断棒材254群を順次破断していく様子を示している。図13(a)〜(d)が示すように、クラッチ部材246がR方向に回転するにつれて、1本の破断棒材254がハンマー部253の衝突部253aに順次衝突し、破断棒材254群が一本ずつ(図中A、B、C、Dの順に)順次破断されていく。丸鋸18や工具軸16やクラッチ部材46の回転エネルギは、ハンマー部253群が破断棒材254群を破断していくことで急激に減少し、丸鋸18は短時間で停止する。慣性モーメントの大きいモータ28を停止する必要がないことから、丸鋸18を短時間で停止することができる。
【0036】
破断棒材254群を破断するのに要するエネルギは、実施例1と同様に、通常運転時の回転速度で回転しているときの丸鋸18や工具軸216やクラッチ部材246の回転エネルギに基づいて設定されている。即ち、丸鋸18の回転速度が速いときほど、より多くの破断棒材254が破断される。そして、高速運転時において緊急停止した場合に、すべての破断棒材254を次々に破断して、丸鋸18が停止するように設定されている。複数の破断棒材254を時間差をもって破断することから、各破断棒材254を破断する際に生じる反力は低く抑えられている。
【0037】
実施例2のテーブルソー210によっても、実施例1のテーブルソー210と同様に、例えば危険な状況等が発生した場合に、回転している丸鋸18を速やかに停止することができる。このとき停止に要する時間は、想定されている時間に対して大きく変動することがない。また、停止時において工具軸16等に加わる反力も、想定されている反力に対して大きく変動することがない。
【0038】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本実施例では、本発明の技術をテーブルソーに採用した例を説明したが、本発明の技術は他の動力工具にも同様に採用することができる。
衝突ブレーキ対は、実施例で説明したように一方が他方を破断する構成としてもよいし、あるいは両者が互いに破断し合う構成としてもよい。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例1のテーブルソーの構成を示す図。
【図2】実施例1のテーブルソーの要部の構成を示す図(通常動作時)。
【図3】実施例1のテーブルソーの要部の構成を示す図(緊急停止時)。
【図4】図2のIV−IV線断面図。
【図5】図2のV−V線断面図。
【図6】テーブルソーの電気構成を示す図。
【図7】レーダの構成を示す図。
【図8】レーダが送信する電波の周波数の経時的変化を示す図。
【図9】実施例2のテーブルソーの構成を示す図。
【図10】実施例2のテーブルソーの要部の構成を示す図(通常動作時)。
【図11】実施例2のテーブルソーの要部の構成を示す図(緊急停止時)。
【図12】実施例2における衝突ブレーキ対の構成を模式的に示す図。
【図13】破断棒材群が順次破断されていく様子を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
10、210・・テーブルソー
11・・安全カバー
12・・レーダ
14、214・・動力伝達部
16、216・・工具軸
18・・丸鋸(工具)
26、226・・衝突ブレーキ対
46、246・・クラッチ部材
52・・ハンマー部材
54・・破断バー群
253・・ハンマー部
254・・破断棒材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に対して運動可能に支持されている工具と、
工具を駆動する駆動源と、
本体に対して運動可能に支持されている第1衝突部材と、
本体側に支持されている第2衝突部材と、
第1衝突部材が第2衝突部材に衝突しない通常状態から、第1衝突部材が運動している工具に接続されて第2衝突部材に衝突する緊急停止状態へと切換える切換手段とを備え、
前記第1衝突部材と前記第2衝突部材の少なくとも一方は、衝突したときに破断する破断部材を備えていることを特徴とする動力工具。
【請求項2】
前記第1衝突部材と第2衝突部材の少なくとも一方は、複数の破断部材を備えていることを特徴とする請求項1の動力工具。
【請求項3】
前記破断部材には、破断する位置を規定するための切欠が設けられていることを特徴とする請求項1又は2の動力工具。
【請求項4】
前記第2衝突部材のみが破断部材を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかの動力工具。
【請求項5】
前記切換手段は、前記通常状態から前記緊急停止状態へと切換える際に、工具と駆動源が接続されている状態から、工具と駆動源が接続解除されている状態へと切換えることを特徴とする請求項1から4のいずれかの動力工具。
【請求項6】
前記切換手段は、第1位置にあるときには工具と駆動源を接続するとともに工具と第1衝突部材を接続解除し、第2位置にあるときには工具と駆動源を接続解除するとともに工具と第1衝突部材を接続する切換部材を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかの動力工具。
【請求項7】
前記切換手段は、第1位置にあるときには工具と駆動源を接続するとともに第1衝突部材と第2衝突部材が衝突しない位置関係に維持し、第2位置にあるときには工具と駆動源を接続解除するとともに第1衝突部材と第2衝突部材が衝突する位置関係に維持する切換部材を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかの動力工具。
【請求項1】
本体に対して運動可能に支持されている工具と、
工具を駆動する駆動源と、
本体に対して運動可能に支持されている第1衝突部材と、
本体側に支持されている第2衝突部材と、
第1衝突部材が第2衝突部材に衝突しない通常状態から、第1衝突部材が運動している工具に接続されて第2衝突部材に衝突する緊急停止状態へと切換える切換手段とを備え、
前記第1衝突部材と前記第2衝突部材の少なくとも一方は、衝突したときに破断する破断部材を備えていることを特徴とする動力工具。
【請求項2】
前記第1衝突部材と第2衝突部材の少なくとも一方は、複数の破断部材を備えていることを特徴とする請求項1の動力工具。
【請求項3】
前記破断部材には、破断する位置を規定するための切欠が設けられていることを特徴とする請求項1又は2の動力工具。
【請求項4】
前記第2衝突部材のみが破断部材を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかの動力工具。
【請求項5】
前記切換手段は、前記通常状態から前記緊急停止状態へと切換える際に、工具と駆動源が接続されている状態から、工具と駆動源が接続解除されている状態へと切換えることを特徴とする請求項1から4のいずれかの動力工具。
【請求項6】
前記切換手段は、第1位置にあるときには工具と駆動源を接続するとともに工具と第1衝突部材を接続解除し、第2位置にあるときには工具と駆動源を接続解除するとともに工具と第1衝突部材を接続する切換部材を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかの動力工具。
【請求項7】
前記切換手段は、第1位置にあるときには工具と駆動源を接続するとともに第1衝突部材と第2衝突部材が衝突しない位置関係に維持し、第2位置にあるときには工具と駆動源を接続解除するとともに第1衝突部材と第2衝突部材が衝突する位置関係に維持する切換部材を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかの動力工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−297674(P2006−297674A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120137(P2005−120137)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】
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