説明

動物プランクトンまたは他の微生物を採集するための装置および方法

水域(2)中の動物プランクトン(1)または他の微生物の採集装置。採集方法における新規かつ革新的であるのは、特に、前記水域(2)内に浸漬されて気泡(4)、好ましくは空気を前記水域内へ放出する気泡拡散装置(3)であって、前記気泡(4)を動物プランクトン(1)に付着させて、スキマーもしくはトロール網(5)によって収集するために、前記プランクトンを前記水域(2)の水面(21)へより近づけることができるように配置される気泡拡散装置(3)である。前記トロール網は、前記スキマーの後部から前記トロール網を牽引して同時に採集した動物プランクトンを処理する船への輸送チューブを備えるスキマーとしてさらに配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、水域中の動物プランクトンまたは他の微生物を採集するための装置に関する。より精密に規定すると、本出願は、採集するプロセスが気泡によって行われる、動物プランクトンをトロール網で採取する、またはスキミングするための方法に関する。
【0002】
淡水魚、昇河魚または海水魚の水揚げ(elevation)は、ノルウェーにおいても世界的に見ても大きく増加しつつある。この産業部門内の最大の課題の1つは、増加しつつある水揚げ量へ十分に大量の飼料を提供することである。飼料製造に伝統的に使用されている大多数の種の深海魚は、すでに同様に完全に課税されている。
【0003】
例えば動物プランクトン、植物プランクトンもしくは細菌のような海中の低栄養段階での採集は、飼料製造における原料の優れた代替物であると見なされている。しかしこれは、採集技術および採集装置に関して大きな挑戦課題を生じさせる。以下の「背景技術」を参照されたい。カラヌス(Calanus)は、夏の間に水深30〜40mで捕獲できる、1〜3mmのサイズを有する動物プランクトンである。カラヌスは、野生魚にとって重要な餌であり、2つの条件:第1に、経済的方法で採集することが可能かどうか、そして第2に、溶解および腐敗し始める前に保存できるように迅速な方法でそれを処理できるかどうか、という条件が満たされれば、例えばサケもしくはタラの水揚げにおいて大規模で使用できたであろう。
【背景技術】
【0004】
動物プランクトンを採集する伝統的方法は、極めて細かい網目のトロール網による水の濾過に基づいている。トロール網に関しては、大量の採集量を入手するためには極めて大きくなければならない。亜麻から製造された大きな、細かい網目のトロール網は、それが海の中に通して牽引されると極めて大きな流体抵抗を生じさせるので、トロール船の燃料の消費量が極めて高くなる。また別の短所は、トロール網が30〜40mの水深で牽引されなければならないことである。さらにまた動物プランクトンを採集するためには、採集ケージもしくはふるい分けケージを使用することも可能である。
【0005】
濾過もしくはスキミングを行う目的で粒子を水面へ近づけるために水の表面張力のおかげで粒子に付着するような粒径を備える気泡を放出できることは、水の微粒子精製から知られている技術である。
【0006】
本発明者らは、鯨が、多かれ少なかれ巾着網として形成されたカーテンの後方で群れを脅かして取り囲む気泡を放出することによって1群の魚の範囲を画定できることを知っている。
【0007】
以下の文書は、水中の気泡拡散装置について言及していることが見いだされている。
NO54817,「Device for leading fish,herring and the like during harvesting」(1932)
NO27776「Method for the lifting of a mass of fish in seines,nets and the like」.
WO9219100(PCT/N092/00082),「Method of leading and trapping fish in the sea,and equipment for use in carrying out the method.」(1991)
DE 100 28 313 「Fischfanggeraet」.
【0008】
上記より関連性は低いが、他の特許公開文献は、貝を収穫するためのトロール網より前方での海底をフラッシングする工程ならびにトロール網上の組み込みポンプについて記載している。このポンプは、本特許出願におけるポンピング装置に関連するが、本特許出願を予測はしていない。上記の特許公開はいずれも動物プランクトンが採集されることについて記載していない。上記の気泡拡散装置は、水の表面張力によって動物プランクトンへ付着する微細なミリメートルサイズの気泡を作製するために配置される拡散装置について記載していない。上述の特許公開は、微生物を静める気泡について記載しておらず、むしろそれらはかき集められる、または上向きに流動する圧倒的な量の気泡が混入する、したがって本出願において使用される機構よりはるかに粗野な機構について記載している。
【発明の開示】
【0009】
しかし本発明者らは、前記の深部で牽引されるトロール網の使用を却下して、水域内での動物プランクトンまたは他の微生物を採集する装置のアイデアを提案した。本発明の新規部分は、前記水域内に浸漬させられて、気泡、好ましくは空気を水域内へ放出するために配置される気泡拡散装置であって、その結果として前記気泡を動物プランクトンに付着させて前記動物プランクトンを収集のために前記水域の水面により近づかせて、所望のサイズ範囲内の小気泡を形成させるために配置される気泡拡散装置と、および気泡に付着させられて前記水面へ近づけられている動物プランクトンを収集するための細かい網目のスキマーもしくはトロール網であって、前記水域の前記水面の近くで使用され、船から延縄の後方で牽引される前記細かい網目のスキマーもしくはトロール網とである。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によると、気泡拡散装置は、所望のサイズ範囲内にある気泡を形成するための所与のサイズ範囲内の孔径を備える拡散装置を含む。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によると、前記気泡拡散装置は、水面上の船上の加圧空気源からの給気ホースを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
メスシリンダ内で動物プランクトンを用いた実験は、シリンダ内で任意に形成した気泡がカラヌスおよびオキアミ(krill)の個体へ付着できることを証明している。カラヌスは、動物プランクトンである。約2つの気泡が1つの個体に付着した場合は、気泡は水域内の個体に個体が上方移動に抵抗する程度の浮力を提供する。約3つ以上の気泡が個体に付着すると、上方移動に対する抵抗を提供できなくなり、気泡によって水面へ持ち上げられるという結果になる。前記カラヌスが水面に達すると、それは多かれ少なかれ受動的に約30秒間にわたって水面に存在したままになる。実験では、オキアミから気泡を振り落とすためには30〜60秒間を要することが明らかになる。気泡はしばらくすると減少し、前記カラヌスもしくはオキアミの正常な移動が増加するので、それらは水域内に再び下降し始める。また別の観察は、大きな気泡がカラヌスに衝撃を与えると、カラヌスは突然動いたりジャンプするので、気泡から離れる。そこで本発明者らが動物プランクトンの採集へ採用しなければならないと考えたのは、これらの気泡およびカラヌス/オキアミの特性である。本出願人らは、小気泡によって植物プランクトンおよび細菌を捕獲して水面へ追い立てることができるとさらに推定している。そこで本発明者らは、気泡が水域内で人工的に発生されれば、前記気泡が大量のカラヌス内もしくは下で放出され、カラヌスを容易に収集できる水面へ近づけることができ、この方法で有効な採集方法の原理が形成されるという考えに到着した。図5は、個体に付着している気泡によって獲得された水面位置に存在するオキアミを示している。そこで本出願人は、図4および6に示した拡散装置によって水中の人工的気泡形成を行う実験を開発した。この方法で、カラヌスの20〜40%が実験用ガラス容器内の水面に近づけられることが明らかになった。これを次に、図1、2および3に例示した、船の後方で牽引されるために配置されるトロール網様装置へ開発した。
【0013】
図1は、本発明による採集装置の側面図である。船(6)は、気泡拡散装置(3)と、浅い場所を、好ましくは水面において水域(2)へ短いスパンで進むトロール網(5)とを牽引する。そこで本発明は、水域(2)内に浸漬させるように配置される拡散装置(3)を備える、水域(2)内での動物プランクトン(1)もしくは他の微生物の採集装置を含む。気泡拡散装置は、気泡(4)が動物プランクトン(1)へ付着し、スキマーもしくはトロール網(5)による収集のためにそれらを前記水域(2)の水面(21)へ近づけるように、水域内で前記気泡(4)、好ましくは空気を放出するために配置される。
【0014】
そこで水面近くの動物プランクトンの濃度は水域内より有意に高くなり、トロール網ですくい取らなければならない水深30〜40mの水域の大きな断面とは対照的に水面に近い水域のより小さな断面をトロール網ですくい取る/スキミングすることができるので、そこで採集をより効果的に行うことができる。
【0015】
図2は、本発明による採集装置の平面図である。トロール網(5)は、好ましくは浅い場所を進み、したがって乱流である前記船(6)の航跡内で引っ張られるので、したがって水面近くに達している前記動物プランクトン(1)の多数から気泡(4)を引きはがしてしまうので、気泡拡散装置は少なくとも1つの反らせ板によって前記船の進路線の側方へ締め出されなければならない。同様に、前記トロール網(5)は、反らせ板もしくは開口板によって前記船の進路線の片側に締め出されなければならない。好ましい実施形態では、本採集装置は、進路線の両側へ広げられる気泡拡散装置(3)および同様に進路線の両側へ広げられるトロール網(5)、または図2に示したように前記進路線の両側に広がるように維持される分割式トロール網を含む。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によると、本採集装置は、動物プランクトン(1)を収集するための細かい網目のスキマーもしくはトロール網(5)を含む。このトロール網/スキマーは、図3aおよびbに示されている。トロール網は、前記水域(2)の水面(21)の近くで使用され、船(6)から延縄(54)の後方で牽引されるように配置される。トロール網がスキマー(5)として配置される場合は、水面(21)に沿って広がるための細長い(extended)浮きカラー(56)を有していてよく、頂点(57)が後方を指し、枝縄(brance)が反らせ板もしくは開口板(55)から前記延縄(54)によって牽引されるV形で配置される。スカート(58)は浮きカラー(56)から伸長し、沈子綱(58b)を装備していてよく、そして動物プランクトンを収集してスカート下から個体が逃げるのを防止する底網(59)を保持していてよい。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によると、本採集装置の気泡拡散装置(3)は、所望のサイズ範囲内にある気泡を形成するために、水中に拡散装置(31)を含む。または、所望の気泡サイズが拡散装置なしに入手されるように、空気および水がすでに甲板上のコンプレッサ内で混合されてもよい。本発明の好ましい実施形態によると、気泡拡散装置は、水面(21)の船(6)上の加圧空気源(61)からの給気ホース(33)を含む。
【0018】
前記気泡拡散装置(3)は、好ましい実施形態では、船(6)の後方でロープ(34)の後方で牽引されるために配置される。
【0019】
本発明の好ましい実施形態による採集装置は、気泡拡散装置(3)が少なくとも1つの反らせ板(35)によって前記船(6)の推進方向に対して両側に向かって広がるように配置される。本発明の好ましい実施形態による採集装置は、前記トロール網(5)が少なくとも1つのトロール網反らせ板(55)によって前記船(6)の推進方向に対して両側に向かって広がるように配置される。本発明の好ましい実施形態による採集装置は、さらに前記トロール網(5)に動物プランクトン(1)を収集するための輸送ホース(53)への吸引口(52)が備えられているように配置される。本発明の好ましい実施形態による採集装置は、輸送ホース(53)が前記トロール網(5)の後部にある吸引口(52)から前記船(6)へ伸長するように配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による採集装置の側面図である。船は、好ましくは水面において、および水域内へ短いスパンで、気泡拡散装置と浅い場所を進むトロール網とを牽引する。
【図2】本発明による採集装置の平面図である。トロール網は、好ましくは浅い場所を進み、したがって乱流である前記船のプロペラ航跡を追従し、そこで水面に近づいている動物プランクトンから気泡を引きはがしてしまうので、気泡拡散装置は少なくとも1つの反らせ板によって船の進路線から片側へ締め出されなければならない。同様に、トロール網は、反らせ板もしくは開口板によって前記船の進路線の片側に締め出されなければならない。
【図3】本発明によるトロール網もしくは水面スキマーの平面図、および図3aにおける線A−Aに沿った断面図である。
【図4】水を含むシリンダの底部近くでのバッチ式および連続式での気泡の放出についての実験を示した図である。
【図5】個体に付着した気泡により捕獲されて浮動し続けている、実験用シリンダ内の水面に存在するオキアミを示した図である。
【図6】実験用ガラス容器内の水面に収集されたカラヌスを示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水域(2)中の動物プランクトン(1)もしくは他の微生物の採集装置であって、
・前記水域(2)内に浸漬されるように配置された気泡拡散装置(3)であって、気泡(4)を動物プランクトン(1)に付着させて前記プランクトンを前記水域(2)の水面(21)へより近づけることができるように、気泡(4)、好ましくは空気を前記水域内へ放出するよう配置され、所望のサイズ範囲内の小気泡を形成するように配置された気泡拡散装置(3)と;
・前記気泡(4)に付着し前記水面(21)に近づけられた動物プランクトン(1)を収集するための細かい網目のスキマーまたはトロール網(5)であって、前記水域(2)の前記水面(21)の近くで使用するために配置され、船(6)から延縄(54)の後方で牽引される前記スキマーもしくはトロール網(5)と、
を特徴とする採集装置。
【請求項2】
前記気泡拡散装置(3)が、前記水面(21)上の前記船(6)上の加圧空気源(61)からの給気ホース(33)を含む、請求項1に記載の採集装置。
【請求項3】
前記気泡拡散装置(3)が、ロープ(34)によって前記船(6)の後方で牽引されるように配置される、請求項1に記載の採集装置。
【請求項4】
前記気泡拡散装置(3)が、少なくとも1つの反らせ板(35)によって前記船(6)の推進方向に対して側面に向かって広げられるよう配置されている、請求項3に記載の採集装置。
【請求項5】
前記トロール網(5)が、少なくとも1つのトロール網反らせ板(55)によって前記船(6)の推進方向に対して側面に向かって広げられるように配置されている、請求項1に記載の採集装置。
【請求項6】
前記トロール網(5)が、採集された動物プランクトン(1)のための輸送チューブ(53)への吸引口(52)を装備している、請求項1に記載の採集装置。
【請求項7】
前記輸送チューブ(53)が、前記トロール網(5)の後部にある吸引口(52)から前記船(6)へ伸長している、請求項7に記載の採集装置。
【請求項8】
水面(21)に沿って伸長する細長い浮きカラー(56)であって、尖端(57)が後方を指し、枝縄が前記反らせ板もしくは開口板(55)から前記延縄(54)によって牽引されるV形で配置される浮きカラーと、沈子綱(58b)を備える浮きカラー(56)から伸長するスカート(58)であって、前記動物プランクトンを収集して前記スカート下から個体が逃れ出るのを防止する底網(59)を保持するスカートとを備えるスキマー(5)を備える、請求項1に記載の採集装置。
【請求項9】
前記気泡拡散装置(3)が、所望のサイズ範囲内にある前記小気泡を形成するための拡散装置(31)を含む、請求項1に記載の採集装置。
【請求項10】
水域(2)中の動物プランクトン(1)もしくは他の微生物を採集するための方法であって、
1つまたは複数の前記気泡拡散装置(3)を、前記気泡拡散装置(3)が気泡(4)、好ましくは空気を前記水域へ放出したときに、前記気泡が動物プランクトン(1)に付着し、前記プランクトン(1)を前記水域(2)の水面(21)へより近づけるように、水域(2)内に浸漬させて配置するステップと、スキマーまたは細かい網目のトロール網(5)により水面(21)で前記動物プランクトン(1)を収集するステップとを特徴とする方法。
【請求項11】
前記スキマーまたは前記細かい網目のトロール網(5)を前記水面(21)において、またはその近くで牽引するステップであって、前記スキマーまたは前記トロール網が船(6)から延縄(54)によって牽引されるステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記気泡拡散装置(3)において拡散装置(31)を使用するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記船(6)の船上の加圧空気源(61)において圧縮空気を形成するステップと、前記気泡拡散装置(3)への給気ホース(33)を通して加圧空気を輸送するステップとを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記気泡拡散装置(3)が、ロープ(34)によって前記船(6)の後方で牽引される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記1つまたは複数の気泡拡散装置が、1つまたは複数の反らせ板(35)によって前記船の推進方向に対して側面へ向かって牽引される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記トロール網(5)が、少なくとも1つのトロール網反らせ板(55)によって前記船(6)の推進方向に対して側面向かって広げられる、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記トロール網またはスキマー(5)が、採集された動物プランクトン(1)を吸引するための輸送チューブ(53)を備える吸引装置(52)を使用する、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記輸送チューブ(53)が、前記トロール網もしくはスキマー(5)にある前記吸引装置(52)から前記船(6)へ伸長している、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−517622(P2008−517622A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538846(P2007−538846)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【国際出願番号】PCT/NO2005/000410
【国際公開番号】WO2006/054900
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(507142052)シンテフ・フィスケリ・オグ・ハヴブルク・アクティーゼルスカブ (1)
【Fターム(参考)】