説明

動物型糖鎖をもつ糖タンパク質の生産方法

【課題】動物型糖鎖をもつ糖タンパク質を生産する植物を提供する。
【解決手段】糖タンパク質の糖鎖の非還元末端にシアル酸を付加し得る糖付加機構を備えた植物細胞であって、シアル酸合成酵素、CMP−シアル酸合成酵素(CSS)、およびCMP−シアル酸トランスポーター(CST)からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質をコ−ドする遺伝子で形質転換された、植物細胞。上記動物型糖鎖をもつ糖タンパク質は、代表的には、異種糖タンパク質であって、その糖鎖はコア糖鎖および外部糖鎖を含み、上記コア糖鎖は複数のマンノースおよびアセチルグルコサミンから本質的になり、上記外部糖鎖は非還元末端ガラクトースを含む末端糖鎖部分を含む。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、動物型糖鎖糖鎖をもつ糖タンパク質の生産方法に関する。本発明はまた、動物型糖鎖付加機能をもつ植物細胞および植物、より詳細には、糖タンパク質の末端糖鎖部分にシアル酸を付加し得る糖付加機構をもつ植物細胞および植物に関する。
【0002】
【従来の技術】
遺伝子組換え植物細胞を利用したバイオ医薬品などの有用タンパク質生産が注目を浴びて来ている。外来タンパク質を生産する宿主として植物細胞を利用する利点は、遺伝子操作が比較的容易であること、動物病原の汚染を回避出来ること、スケ−ルアップに関して低コスト化が見込めること、真核生物翻訳後修飾機構を有することなどである。
【0003】
翻訳後修飾のなかで、N−結合型糖タンパク質糖鎖の合成および付加は、生物にとって重要な反応の一つである。生物における糖鎖の役割として、タンパク質の血中クリアランスからの保護、細胞間接着への関与、タンパク質のフォ−ルディング、タンパク質生理活性への関与などが挙げられる。植物細胞を利用した動物由来タンパク質の生産を考えた場合、目的タンパク質には植物型糖鎖が付加されてしまうため、本来有する生理活性を示さない場合がほとんどである。そこで、植物細胞のN−結合型糖鎖合成経路を改変し、オリジナルの動物由来タンパク質がもつ糖鎖の構造と類似の構造の糖鎖を有するタンパク質を生産させることは有効な手段の一つである。植物細胞と動物細胞ではN−結合型糖鎖合成機構は類似する部分もあるが、細部は異なっている。すなわち、植物および動物両細胞においてGNという糖鎖コア構造(GNはアセチルグルコサミン、およびMはマンノ−スをそれぞれ表す)が合成されるが、その後、動物細胞では糖鎖の非還元末端にガラクト−スおよびシアル酸が付加することにより糖鎖はさらに伸長する。これに対し、植物細胞では、還元末端N−アセチルグルコサミンへのα1,3−フコ−ス結合あるいはコアマンノ−スへのβ1,2−キシロ−ス結合が起こる。また、植物型糖鎖に見られるこれらの結合様式を示す糖が、生体内において免疫原性を示す報告もある。
【0004】
動物型糖鎖において付加されるシアル酸(NeuAc)は、糖タンパク質の機能にとって重要である。シアル酸は、インビボにおける糖タンパク質の分解を防ぐことが知られている。例えば、エリスロポエチンのような糖タンパク質の糖鎖から、シアル酸が除去されてガラクト−ス残基が露出すると、この糖タンパク質は、血中のクリアランス機構に探知され、肝臓において速やかに分解されてしまう。また、動物型糖鎖において付加されるシアル酸は、セレクチンなどの関与する白血球ホ−ミングもしくはその他の細胞間接着、ウイルスなどの病原の感染とも深く関わっていることが知られている。
【0005】
しかし、植物細胞には、糖タンパク質糖鎖へのシアル酸付加機能はないと考えられている。さらに、植物細胞は、シアル酸を合成する機能さえも備えていないといわれている。したがって、植物細胞を利用した有用糖タンパク質の生産を考えた場合、宿主が目的タンパク質糖鎖へのシアル酸付加機能を有することが望まれる。植物細胞がその糖タンパク質糖鎖へシアル酸を付加するためには、少なくとも、シアル酸合成酵素、CMP−シアル酸合成酵素(CMPは5’−シチジル酸を表す)、CMP−シアル酸トランスポーターおよびシアル酸転移酵素が必要である。また、動物と微生物は、それぞれ異なるシアル酸生合成経路をもつことが知られている(図1)。図1の左に示されるのが動物におけるシアル酸生合成経路である。図示されるように、動物においては、N−アセチルマンノサミンから、N−アセチルマンノサミンキナーゼ、N−アセチルノイラミン酸−9−ホスフェートシンターゼ、N−アセチルノイラミン酸ホスファターゼによってN−アセチルノイラミン酸(シアル酸)が生成される。これに対し、大腸菌では、N−アセチルマンノサミンから、N−アセチルノイラミン酸シンターゼ(neuB)によってシアル酸が生成される。
【0006】
一般に、以下の文献に示されるように、遺伝子組換え植物細胞を得るための手法は、マイクロインジョクション(Crosswayら)、エレクトロポ−レ−ション(Riggsら)、アグロバクテリウム媒介形質転換(Hincheeら、Ishidaら(トウモロコシ))、直接遺伝子移入(Paszkowskiら(イネ)、Agracetus,Inc.,Madison,Wis.およびDupont,Inc.,Wilmington,Del.社製のデバイスを用いた衝撃粒子加速(Sanfordら)などが知られているが、シアル酸合成酵素、CMP−シアル酸合成酵素、およびCMP−シアル酸トランスポーターを導入した植物細胞は知られていない。
【0007】
【非特許文献1】
Crossway et al.,BioTechniques 4:320−334(1986)。
【0008】
【非特許文献2】
Riggs et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83:5602−5606(1986)
【0009】
【非特許文献3】
Hinchee et al.,Biotechnology 6:915−921(1988)
【0010】
【非特許文献4】
Ishida et al.,Nature Biotechnology 14:745−750(June 1996)
【0011】
【非特許文献5】
Paszkowski et al.,EMBO J.3:2717−2722(1984)
【0012】
【非特許文献6】
Hayashimoto et al.,Plant Physiol 93:857−863(1990)(イネ))、
【0013】
【特許文献1】
Sanfordら、米国特許第4,945,050号
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の課題を解決し、動物型糖鎖構造をもつ糖タンパク質を生産するために、糖タンパク質の糖鎖の非還元末端にシアル酸を付加し、動物型糖鎖構造をもつ糖タンパク質を産生し得る植物細胞を提供する。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、シアル酸合成酵素、そしてCTPおよびN−アセチルノイラミン酸から、シアル酸転移酵素の基質であるCMP−シアル酸を合成するCMP−シアル酸合成酵素(CSS)、および糖鎖合成の場であるゴルジ体内へCMP−シアル酸を細胞質側から輸送する役割を担うCMP−シアル酸トランスポーター(CST)に注目した。シアル酸合成酵素およびCMP−シアル酸合成酵素(CSS)を生産する植物培養細胞を構築することが出来れば、培養液中にシアル酸合成酵素(CSS)の基質(前駆体)を添加することで植物細胞内においてシアル酸およびCMP−シアル酸が合成され、さらには、CMP−シアル酸トランスポーター(CST)生産能を有する植物細胞において、CMP−シアル酸がゴルジ体内へ取り込まれることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明は、シアル酸合成酵素、CMP−シアル酸合成酵素(CSS)、およびCMP−シアル酸トランスポーター(CST)からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質をコ−ドする遺伝子を植物に導入し、植物内の糖鎖付加経路を改変し、植物内で動物型糖鎖構造を発現する方法、それによって得られる植物細胞および植物を提供する。
【0017】
本発明は、動物型糖鎖をもつ糖タンパク質の生産方法に関し、この方法は、糖鎖の非還元末端にシアル酸を付加し得る酵素の遺伝子、および異種糖タンパク質の遺伝子を導入して形質転換された植物細胞を得る工程、該植物細胞を培養する工程、および 該植物細胞の培養液を回収する工程を包含する。
【0018】
上記動物型糖鎖をもつ糖タンパク質は、コア糖鎖および外部糖鎖を含み、該コア糖鎖が複数のマンノースおよびアセチルグルコサミンから本質的になり、該外部糖鎖が非還元末端ガラクトースを含む末端糖鎖部分を含み得る。
【0019】
上記外部糖鎖は直鎖状構造を備え得る。
【0020】
上記外部糖鎖は分岐状構造を備え得る。
【0021】
上記分岐糖鎖部分は、モノ、バイ、トリ、またはテトラ構造を備え得る。
【0022】
本発明はまた、糖タンパク質の糖鎖の非還元末端にシアル酸を付加し得る糖付加機構を備えた植物細胞に関し、この植物細胞は、シアル酸合成酵素、CMP−シアル酸合成酵素(CSS)、およびCMP−シアル酸トランスポーター(CST)からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質をコ−ドする遺伝子で形質転換されている。
【0023】
本発明はまた、シアル酸の前駆体を取り込み得る植物細胞に関し、この植物細胞は、シアル酸合成酵素、CMP−シアル酸合成酵素(CSS)、およびCMP−シアル酸トランスポーター(CST)からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質をコ−ドする遺伝子で形質転換されている。
【0024】
本発明はまた、シアル酸を取り込み得る植物細胞に関し、この植物細胞は、シアル酸合成酵素、CMP−シアル酸合成酵素(CSS)、およびCMP−シアル酸トランスポーター(CST)からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質をコ−ドする遺伝子で形質転換されている。
【0025】
本発明はまた、シアル酸を取り込み得るベシクルを有する植物細胞に関し、この植物細胞は、シアル酸合成酵素、CMP−シアル酸合成酵素(CSS)、およびCMP−シアル酸トランスポーター(CST)からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質をコ−ドする遺伝子で形質転換されている。
【0026】
本発明はまた、上記植物細胞から再生された植物に関し、この植物は、動物型糖鎖付加機能をもち、より詳細には、糖タンパク質の末端糖鎖部分にシアル酸を付加し得る糖付加機構をもつ。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0028】
本発明では、当該分野で公知の遺伝子工学的手法、生化学的手法、免疫学的手法などを用い得る。これらの手法は、市販のキット、抗体、標識物質などを使用して行い得る。
【0029】
本発明の方法は、動物型糖鎖付加機能をもつ植物細胞に関する。本明細書で用いる用語「動物型糖鎖」は、シアル酸を含む糖鎖を意味する。好ましくは、動物型糖鎖は分岐構造を有する。
【0030】
植物細胞は、任意の植物細胞であり得る。植物細胞は、培養細胞、培養組織、培養器官、または植物体のいずれの形態であってもよい。好ましくは、培養細胞、培養組織、または培養器官であり、より好ましくは培養細胞である。本発明の生産方法に使用され得る植物種は、遺伝子導入を行い得る任意の植物種であり得る。 本発明の生産方法に使用され得る植物種の例としては、ナス科、イネ科、アブラナ科、バラ科、マメ科、ウリ科、シソ科、ユリ科、アカザ科、セリ科の植物が挙げられる。
【0031】
ナス科の植物の例としては、Nicotiana、Solanum、Datura、Lycopersion、またはPetuniaに属する植物が挙げられ、例えば、タバコ、ナス、ジャガイモ、トマト、トウガラシ、ペチュニアなどを含む。
【0032】
イネ科の植物の例としては、Oryza、Hordenum、Secale、Scccharum、Echinochloa、またはZeaに属する植物が挙げられ、例えば、イネ、オオムギ、ライムギ、ヒエ、モロコシ、トウモロコシなどを含む。
【0033】
アブラナ科の植物の例としては、Raphanus、Brassica、Arabidopsis、Wasabia、またはCapsellaに属する植物が挙げられ、例えば、大根、アブラナ、シロイヌナズナ、ワサビ、ナズナなどを含む。
【0034】
バラ科の植物の例としては、Orunus、Malus、Pynus、Fragaria、またはRosaに属する植物が挙げられ、例えば、ウメ、モモ、リンゴ、ナシ、オランダイチゴ、バラなどを含む。
【0035】
マメ科の植物の例としては、Glycine、Vigna、Phaseolus、Pisum、Vicia、Arachis、Trifolium、Alphalfa、またはMedicagoに属する植物が挙げられ、例えば、ダイズ、アズキ、インゲンマメ、エンドウ、ソラマメ、ラッカセイ、クロ−バ、ウマゴヤシなどを含む。
【0036】
ウリ科の植物の例としては、Luffa、Cucurbita、またはCucumisに属する植物が挙げられ、例えば、ヘチマ、カボチャ、キュウリ、メロンなどを含む。
【0037】
シソ科の植物の例としては、Lavandula、Mentha、またはPerillaに属する植物が挙げられ、例えば、ラベンダ−、ハッカ、シソなどを含む。
【0038】
ユリ科に属する植物の例としては、Allium、Lilium、またはTulipaに属する植物が挙げられ、例えば、ネギ、ニンニク、ユリ、チュ−リップなどを含む。
【0039】
アカザ科の植物の例としては、Spinaciaに属する植物が挙げられ、例えば、ホウレンソウを含む。
【0040】
セリ科の植物の例としては、Angelica、Daucus、Cryptotaenia、またはApitumに属する植物が挙げられ、例えば、シシウド、ニンジン、ミツバ、セロリなどを含む。
【0041】
本発明の生産方法に用いられる植物は、好ましくはタバコ、トマト、ジャガイモ、イネ、トウモロコシ、ダイコン、ダイズ、エンドウ、ウマゴヤシ、およびホウレンソウであり、より好ましくは、タバコ、トマト、ジャガイモ、トウモロコシ、およびダイズである。
【0042】
本発明で用いられる用語「シアル酸合成酵素をコードする遺伝子」は、N−アセチルマンノサミンからN−アセチルムラミル酸(シアル酸)を生成し得る任意の酵素をコードする遺伝子を意味する。このような酵素をコードする遺伝子は任意の生物に由来し得る。このような酵素は、大腸菌(GenBank受託番号U05248.1およびAF361371.1)、Streptococcus agalactiae、Neisseria meningitides(GenBank受託番号AE002366、NMM95053、およびNMU40740)、Aeromonas caviae(GenBank受託番号AF126256)、Campylobacter jejuni(GenBank受託番号AY034084およびAF215659)、Pseudomonas aeruginosa(GenBank受託番号AF498419.1)、Desulfovibrio desulfuricans(GenBank受託番号NZ_AABI01000040)、Bacillus subtilis(GenBank受託番号BSUB0020)、Rhodobacter capsulatus(GenBank受託番号RCU57682)、Cytophaga hutchinsonii(GenBank受託番号NZ_AABE01000064.1)、Chlorobium tepidum(GenBank受託番号AE012850.1)、Leptospira interrogans(GenBank受託番号AE011425.1)、Streptomyces coelicolor(GenBank受託番号A3(2)およびAL939121)、Helicobacter pylori(GenBank受託番号HPY418352およびHPY418354)、Zymomonas mobilis(GenBank受託番号AY083905.1)、Rhodospirillum rubrum(GenBank受託番号NZ_AAAG01000017.1)などに存在することが知られている。これらアミノ酸配列はそれぞれ約33%以上の相同性を有している。その他に、N−アセチルマンノサミンからN−アセチルムラミル酸(シアル酸)を生成し得る酵素については、例えば、Glycobiology 1997 Jul.7(5):697−701頁、Purification and characterization of the Escherichia coli K1 neuB geneproduct N−acetylneuraminic acid synthetase.、Vann WF,Tavarez JJ,Crowley J,Vimr E,Silver RP.を参照のこと。なお、「シアル酸合成酵素をコードする遺伝子」は、市販のものを購入してもよいし、これら植物での発現に適切なように改変して用いてもよい。このような方法は当業者に周知である。
【0043】
本発明で用いられる「CMP−シアル酸合成酵素(CSS)をコードする遺伝子」もまた同様に、CTPとN−アセチルノイラミン酸とからCMP−シアル酸を生成し得る任意の酵素をコードする遺伝子を意味する。このような酵素は、Mus musculus(GenBank受託番号NM_009908)、Drosophila melanogaster(GenBank受託番号NM_168828)、Leptospira interrogans(GenBank受託番号AE011339.1およびAE011338.1)、Oncorhynchus mykiss(GenBank受託番号AB027414.1)、Streptococcus agalactiae(GenBank受託番号AB028896.2)、Escherichia coli(GenBank受託番号J05023)、Campylobacter jejuni(GenBank受託番号AF215659.1およびAF167344.1、AF130984)、Neisseria meningitides(GenBank受託番号U60146)、Methanosarcina acetivorans str.(GenBank受託番号C2A AE011088)に存在することが知られている。本発明で用いるCMP−シアル酸合成酵素(CSS)をコードする遺伝子もまた、任意の動物種に由来し得、哺乳動物に由来することが好ましく、ヒトに由来することがより好ましい。CSSをコードする遺伝子は、この酵素をコ−ドすることが知られているヌクレオチド配列を用いて任意の動物細胞から単離してもよいし、市販のものを購入してもよいし、これらを植物での発現に適切なように改変して用いてもよい。このような方法は当業者に周知である。
【0044】
本発明で用いられる用語「CMP−シアル酸トランスポーター(CST)をコードする遺伝子」もまた同様に、植物細胞の細胞質からコルジ体中にCM−シアル酸を輸送し得る任意のタンパク質をコードする遺伝子を意味する。このような酵素は、Cricetulus griseus(GenBank受託番号Y12074)、Mus musculus(GenBank受託番号Z71268)、マウス(GenBank受託番号BC012252.1およびNM_011895.1)、Caenorhabditis elegans(GenBank受託番号NM_070047.1およびNM_070046.1)、Oryzias latipes(GenBank受託番号AJ510197.4)、Canis familiaris(GenBank受託番号BM427609.1およびAY064407.1)、Drosophila melanogaster(GenBank受託番号BI371925、1、BI635065.1、およびBI640101.1)、Gallus gallus(GenBank受託番号BG713468.1、BM427609、およびBQ126114.1)、Zebrafish(GenBank受託番号BE557523.1)、Physcomitrella patens(GenBank受託番号AW738991)、ラット(GenBank受託番号AW141112およびAA925611.1)、Pseudopleuronectes americanus(GenBank受託番号AW013208.1)に存在することが知られている。CSTをコードする遺伝子もまた、この酵素をコ−ドすることが知られているヌクレオチド配列を用いて任意の動物細胞から単離してもよいし、市販のものを購入してもよいし、これらを植物での発現に適切なように改変して用いてもよい。このような方法は当業者に周知である。
【0045】
本明細書で用いる用語「遺伝子」は、通常、構造遺伝子部分を意味する。遺伝子には、植物での発現に適切なように、プロモ−タ−、オペレ−タ−、およびタ−ミネ−タ−などの制御配列が連結され得る。
【0046】
本明細書で用いる用語「異種糖タンパク質」は、本発明に用いられる植物において本来発現されない糖タンパク質を意味する。
【0047】
異種糖タンパク質の例としては、酵素、ホルモン、サイトカイン、抗体、ワクチン、レセプタ−、血清タンパク質などが挙げられる。酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダ−ゼ、キナ−ゼ、グルコセレブロシダ−ゼ(glucocerebrosidase)、アルファ−ガラクトシダ−ゼ、フィタ−ゼ、TPA(tissue−type plasminogen activator)、HMG−CoAレダクタ−ゼ(HMG−CoA reductase)などが挙げられる。ホルモンおよびサイトカインの例としては、エンケファリン、インタ−フェロンα、β、γ、GM−CSF、G−CSF、絨毛性性腺刺激ホルモン、インタ−ロイキン−2、4、6、12、インタ−フェロン−ベ−タ、インタ−フェロン−ガンマ、エリスロポイエチン、血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)、黄体形成ホルモン(LH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、プロラクチン、卵胞刺激ホルモンなどが挙げられる。抗体の例としては、IgG、scFvなどが挙げられる。ワクチンの例としては、B型肝炎表面抗原、ロタウイルス抗原、大腸菌エンテロトキシン、マラリア抗原、狂犬病ウイルスrabies virusのGタンパク質、HIVウイルス糖タンパク質(例えば、gp120)などが挙げられる。レセプタ−およびマトリックスタンパク質の例としては、EGFレセプタ−、フィブロネクチン、α1−アンチトリプシン、凝固因子VIIIなどが挙げられる。血清タンパク質の例としては、アルブミン、補体系タンパク質、プラスミノ−ゲン、コルチコステロイド結合グロブリン(corticosteroid−binding globulin)、スロキシン結合グロブリン(Throxine−binding globulin)、プロテインC(protein C)などが挙げられる。
【0048】
「異種糖タンパク質の遺伝子」は、目的の異種糖タンパク質をコ−ドすることが知られているヌクレオチド配列を用いて任意の細胞から単離してもよいし、市販のものを購入してもよいし、これらを植物での発現に適切なように改変して用いてもよい。
【0049】
シアル酸合成酵素、CSSおよびCSTをコ−ドする遺伝子、ならびに異種糖タンパク質の遺伝子は、当該分野で公知の方法により、植物細胞へ導入される。これらの遺伝子は、別々に導入してもよいし、同時に導入してもよい。前述の文献に加え、以下の文献が、種々の植物に遺伝子を導入する方法を開示している。
【0050】
Weissinger et al.,Annual Rev.Genet.22:421−477(1988);Sanford et al.,Particulate Science and Technology 5.27−37 91987)(タマネギ); Svab et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:8526−8530(1990) (タバコクロロプラスト);Christou et al.,Plant Physiol.87:671−674(1988)(ダイズ);McCabe et al.,Bio/Technology 6.923−926(1988)(ダイズ);Klein et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:4305−4309(1988)(トウモロコシ);Klein et al.,Bio/Technology 6:559−563(1988)(トウモロコシ);Klein et al.,Plant Physiol.91:440−444(1988)(トウモロコシ);Fromm et al.,Bio/Technology 8:833−839(1990);およびGordon−Kamm et al.,Plant Cell 2:603−618(1990)(トウモロコシ);Koziel et al.,Biotechnology 11:194−200(1993)(トウモロコシ);Shimamoto et al.,Nature 338:274−277(1989)(イネ);Christou et al.,Biotechnology 9:957−962(1991)(イネ);Datta et al.,Biol/Technology 3:736−740(1990)(イネ);European Patent Application EP 0 332 581(カモガヤなどのイネ科の植物);Vasil et al.,Biotechnology 11:1553−1558(1993)(コムギ);Weeks etal.,Plant Physiol.102:1077−1084(1993)(コムギ);Wan et al.,Plant Physiol.104:37−48(1994)(オオムギ);Jahne et al.,Theor.Appl.Genet.89:525−533(1994)(オオムギ);Umbeck et al.,Bio/Technology 5:263−266(1987)(コットン);Casas et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:11212−11216(December 1993)(ソルガム);Somers et al.,Bio/Technology 10:1589−1594(December 1992)(オ−トムギ);Torbert et al.,Plant Cell Reports 14:635−640(1995)(オ−トムギ);Weeks et al.,Plant Physiol.102:1077−1084(1993)(コムギ);Chang et al.,WO94/13822(コムギ)およびNehra et al.,The Plant Journal 5:285−297(1994)(コムギ)。
【0051】
微粒子銃によって、トウモロコシ中に組換えDNA分子を導入するために特に好適な実施形態は、Koziel et al.,Biotechnology11:194−200(1993),Hill et al.,Euphytica 85:119−123(1995)およびKoziel et al.,Annals of the New York Academy of Sciences 792:164−171(1996)に記載されている。トウモロコシについて別の好適な実施形態であるプロトプラスト形質転換法は、EP0 292 435に記載されている。植物の形質転換は、単一のDNA種または複数のDNA種(すなわち同時形質転換)を用いて行うことができる。
【0052】
遺伝子が導入された植物においては、当該分野で公知の方法により、導入された遺伝子の発現が確認され得る。このような方法として、銀染色、ウェスタンブロッティング、ノザンハイブリダイゼ−ション、酵素活性の検出などが挙げられる。導入された遺伝子を発現する細胞は、形質転換細胞である。
【0053】
得られた形質転換植物細胞は、培養細胞の状態で維持されてもよいし、特定の組織または器官へと分化させてもよいし、完全な植物体に再生させてもよい。あるいは、完全な植物体から得られる、種子、果実、葉、根、茎、花などの部分であってもよい。
【0054】
形質転換植物細胞の培養、分化および再生のためには、当該分野で公知の手法および培地が用いられる。このような培地には、例えば、Murashige−Skoog(MS)培地、GaMborg B5(B)培地、White培地、Nitsch&Nitsch(Nitsch)培地などが含まれるが、これらに限定されるわけではない。これらの培地は、通常、植物生長調節物質(植物ホルモン)などが適当量添加されて用いられる。
【0055】
また、動物型糖鎖を持つ糖タンパク質の生産のためには、形質転換植物細胞が増殖し、そして所望の遺伝子産物を生産する限り、基本的には、炭素源、窒素源、およびビタミン類、塩類のような植物細胞の生育に必要な微量栄養素を含む任意の組成の培養培地を用いることができる。生産された異種タンパク質の安定化、および異種タンパク質を効率良く分泌するために、ポリビニルピロリドン、タンパク質分解酵素阻害剤などを添加してもよい。
【0056】
形質転換植物細胞により生産された植物型の糖鎖をもつ糖タンパク質は、培養された植物細胞、植物体、または植物細胞の培養液から単離され得る。
【0057】
植物細胞の培養液からの糖タンパク質の単離は、当業者に周知の方法を用いて実施され得る。例えば、塩析(硫酸アンモニウム沈殿、リン酸ナトリウム沈殿など)、溶媒沈殿(アセトンまたはエタノ−ルなどによるタンパク質分画沈殿法)、透析、ゲル濾過、イオン交換、逆相等のカラムクロマトグラフィ−、限外濾過、高速液体クロマトグラフィ−(HPLC)等の手法を単独で、または組み合わせて用いて、培養液から糖タンパク質を精製して単離し得る。
【0058】
あるいは、本発明の糖タンパク質は、植物細胞または植物体から単離または抽出されてもよい。植物細胞または植物体から単離または抽出する方法は、当該分野で周知である。
【0059】
さらには、本発明の糖タンパク質は、形質転換細胞中に含まれたままの状態で食用に供され得る。本発明の糖タンパク質は、動物型の糖鎖構造を有するので、抗原性を有さず、それゆえ、ヒトを含む動物への投与に適している。
【0060】
以下に、本発明の植物細胞を得るための代表的な手法を例示する。
【0061】
1.シアル酸合成酵素をコードする遺伝子を植物に導入する植物感染用ベクターの構築
【0062】
本発明の植物細胞を得るために、まず、シアル酸合成酵素を植物細胞にクローニングする。シアル酸合成酵素をコードする遺伝子として、当業者に公知である大腸菌由来のシアル酸合成酵素、例えば、Escherichia coli K1株のneuB遺伝子を用いることができる。neuB遺伝子を、例えば、植物発現用プロモーターであるカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの制御下に配置することにより構築した植物外来遺伝子発現用カセットを、既存のベクターpBI121に導入し、植物感染用ベクターpBI121−CNを得る。なお、本明細書で用いる用語「既存」は、Clontech、CAなどの製造会社から市販されているか、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)などの寄託機関などから入手可能であることを意味する。本明細書で用いる用語「既存」はまた、これら既存のものから、当業者に公知の方法を用いて改変されたものをも包含する意味で用いられる。
【0063】
2.CSSをコードする遺伝子、およびCSTをコードする遺伝子を植物に導入する植物感染用ベクターの構築
【0064】
次いで、CSSおよびCSTをコードする遺伝子を植物細胞に導入する。CSSおよびCSTをコードする遺伝子として、例えば、公知であるヒト腎臓由来CSS(以下hCSSと称する)遺伝子およびヒト腎臓由来CST(以下hCSTと称する)遺伝子を用いることができる。これら遺伝子を、それぞれ、植物発現用プロモーターであるカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの制御下に配置し、抗生物質ハイグロマイシン耐性遺伝子を保持する既存のプラスミドpGPTV−HPTにそれぞれ導入し、プラスミドpGPTV−HPT−hCSSおよびpGPTV−HPT−hCSTを得る。
【0065】
3.シアル酸合成系遺伝子群を保持するベクターの構築
【0066】
a2,6−シアル酸合成酵素(ST)遺伝子(例えばヒト由来ST)を、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの制御下に配置した既存のカセットを、上記のヒト由来hCSS遺伝子を導入した植物感染用ベクターに挿入し、植物発現用ベクターpGPTV−HPT−hCSS−hSTを構築する。次いで、このpGPTV−HPT−hCSS−hSTから、上記の大腸菌由来neuB遺伝子の植物感染用ベクターpBI121−CN、および上記のhCST遺伝子植物感染用ベクターpGPTV−HPT−hCST−CNを用い、pGPTV−HPT−hCSS−hST−CNまたはpGPTV−HPT−hCSS−hST−CN−hCSTを構築する。なお、ここで、HPT、hCSS、hST、CN、hCSTは、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒト由来CMP−シアル酸合成酵素遺伝子、ヒト由来α2,6−シアル酸合成酵素遺伝子、シアル酸合成酵素遺伝子、ヒト由来CMT−シアル酸トランスポーター遺伝子をそれぞれ表し、記載の順序に従って、植物感染用ベクター中に導入されている。
【0067】
4.シアル酸合成系遺伝子群を発現する植物体の構築
【0068】
上記の植物感染用ベクターpGPTV−HPT−hCSS−hST−CNまたはpGPTV−HPT−hCSS−hST−CN−hCSTを、Agrobacterium tumefaciens LBA4404株に導入し、植物感染用アグロバクテリウムLBA4404−HPT−hCSS−hST−CNあるいはLBA4404−HPT−hCSS−hST−CN−hCSTを得る。
【0069】
次いで、これらの植物感染用アグロバクテリウムを用い、タバコ植物(Nicotiana tabacum cv SR1)またはb1,4−ガラクトース転移酵素(以下hGT)遺伝子を導入し糖鎖構造が改変していることが確認されている既存のこのタバコ植物の形質転換体Nicotiana tabacumcv SR1−hGTをさらに形質転換する。
【0070】
すなわち、100mg/lのリファンピシン、50mg/lのストレプトマイシンおよび50mg/lのカナマイシンを含むLB液体培地を用いて培養した上記感染用アグロバクテリウムを、上記タバコ植物の葉の切片と混合し、25℃明所にて3日間、改変MS(0.1mg/lナフタレン酢酸、0.1mg/lベンジルアデニン、10mg/lチアミン塩酸塩、1mg/lニコチン酸、1mg/l塩酸ピリドキシン、10mg/lミオイノシトールを含むムラシゲ スクーグ培地用混合塩類(和光純薬))寒天培地上で共存培養する。
【0071】
次いで、得られた感染葉を滅菌水で洗浄し、250mg/lのカルベニシリンを含む改変MS寒天培地上に静置し、25℃明所にて1週間除菌培養を行う。次いで、この感染葉を、250mg/lのカルベニシリンおよび50mg/lのハイグロマイシンを含む改変MS寒天培地に移して静置し、25℃明所にて茎葉の誘導を行う。
【0072】
得られた茎葉を切り取り、250mg/lのカルベニシリンおよび50mg/lのハイグロマイシンを含むMS寒天培地(10mg/lチアミン塩酸塩、1mg/lニコチン酸、1mg/l塩酸ピリドキシン、10mg/lミオイノシトールを含むムラシゲ・スクーグ培地用混合塩類(和光純薬))に継代し、25℃明所にて発根させる。
【0073】
発根の確認された形質転換植物体から、ゲノムDNAおよびmRNAを調製し、PCRおよびRT−PCR法を用いることで目的遺伝子の導入および発現の確認を行う。
【0074】
次いで、mRNAの産生が確認されたクローンについて鉢上げし、植物体の再生を行う。得られた形質転換植物は、Nicotiana tabacum cv SR1−hCSS−hST−CN、SR1−hCSS−hST−CN−hCST、またはNicotiana tabacum cv SR1−hGT−hCSS−hST−CN、SR1−hGT−hCSS−hST−CN−hCSTである。
【0075】
5.糖鎖へのシアル酸付加の確認
【0076】
hGTで形質転換した植物体における、糖タンパク質にシアル酸が付加していることの確認を、この植物体の細胞を破砕した後、細胞内糖タンパク質の調製を行い、得られた細胞内糖タンパク質からヒドラジン分解法を利用し糖鎖を切り出すことにより行う。すなわち、まず、植物体の破砕物をTSKゲルカラムにかけ、糖鎖を精製する。精製された糖鎖を、2-アミノピリジン(PA)と反応させることによって糖鎖の還元末端をPA化標識する。得られたPA化糖鎖を逆相(RP−)HPLCおよびサイズ分画(SF−)HPLCを用いて精製し、既知糖鎖との比較、シアリダーゼ(例えばClostridium perfringens由来、Calbiochem社)消化およびβ1,4−ガラクトシダーゼ(例えばDiplococcus neumoniae由来、Roche Diagnostics社)消化と、マススペクトル分析とを組み合わせ、糖鎖の構造を決定する。シアリダーゼ消化によって、非還元末端にシアル酸残基を有するPA化糖鎖の存在が確認されたならば、これらの糖鎖をマススペクトルで分析する。
【0077】
マススペクトルは、例えば、Voyager−DETM RP BiospectrometryTM Workstation (PerSeptive Biosystems)を用いて実施することができる。
【0078】
上記シアリダーゼ消化およびβ1,4−ガラクトシダーゼ消化の反応生成物は、蛍光検出器を備えたHITACHI HPLC system(日立)を用いる逆相(RP)−HPLCで分析され得る。RP−HPLCにおいては、励起および蛍光波長をそれぞれ310nmおよび380nmとして蛍光強度を測定する。分析カラムとしては、Cosmosil 5C18−AR column(6×250mm、ナカライテスク)が用いられ、通常、流速1.2ml/分の下で、0.02%TFA水溶液中のアセトニトリル濃度を40分間で0%から6%に増加させることでPA化糖鎖を溶出することができる。
【0079】
6.外来タンパク質の糖鎖へのシアル酸付加の確認
【0080】
外来タンパク質の例として、マウスモノクローナル抗体タンパク質を構成するH鎖およびL鎖を植物細胞で発現させる。この目的のために、H鎖およびL鎖をそれぞれコードする遺伝子を、植物感染用プロモーターであるカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの制御下に配置し、抗生物質ハイグロマイシン耐性遺伝子を保持するプラスミドpGPTV−HPTにそれぞれ導入し、発現カセットを作成する。本発明者らは、これら2つの遺伝子の発現カセットを同一ベクター上にもつプラスミドpGPTV−HPT−IgGを既に得ている。このプラスミドpGPTV−HPT−IgGから、H鎖およびL鎖発現用カセットを切り出し、抗生物質ビアラホス耐性遺伝子とを保持する既存のプラスミドpGPTV−BARに導入し、ベクターpGPTV−BAR−IgGを構築する。これを用い、タバコ植物(Nicotiana tabacum cv SR1)、またはb1,4−ガラクトース転移酵素(hGT)遺伝子が導入され糖鎖構造が改変されていることが確認された形質転換体Nicotiana tabacumcv SR1−hGTをさらに形質転換する。100mg/lのリファンピシン、50mg/lのストレプトマイシンおよび50mg/lカナマイシンを含む2×YT液体培地中で培養した感染用アグロバクテリウムを、タバコの葉の切片と混合し、25℃明所にて3日間、改変MS寒天培地上で共存培養する。この感染葉を滅菌水で洗浄した後、250mg/lのカルベニシリンを含む改変MS寒天培地上に移して静置し、さらに25℃明所にて1週間除菌培養を行う。次いで、得られた感染葉を、250mg/lのカルベニシリンおよび10mg/lのビアラホス(明治製菓)を含む改変LS寒天培地に移して静置し、25℃明所にて茎葉の誘導を行う。
【0081】
得られた茎葉を切り取り、250mg/lのカルベニシリンおよび10mg/lのビアラホスを含むMS寒天培地に継代し、25℃明所にて発根させる。この結果、発根の確認された形質転換植物体よりゲノムDNAおよびmRNAを調製し、PCRおよびRT−PCR法を用いることで目的遺伝子の導入および発現の確認を行う。mRNAの産生が確認されたクローンに関して、鉢上げし植物体の再生を行う。
【0082】
得られた植物体Nicotiana tabacum cv SR1− IgGあるいはNicotiana tabacum cv SR1−hGT−IgGについて、抗体タンパク質の発現を、抗マウス二次抗体を用いて確認し、プロテインA(アマシャム)あるいはプロテインG(アマシャム)カラムを用いて精製し、糖鎖構造を確認する。
【0083】
鎖構造解析は、以下の方法で行う。精製した目的糖タンパク質よりヒドラジン分解法を利用し糖鎖を切り出す。TSKゲルカラムにて糖鎖を精製し、2−アミノピリジン(PA)と反応させることで糖鎖の還元末端をPA化標識する。得られたPA化糖鎖を逆相(RP−)HPLCとサイズ分画(SF−)HPLCで精製し、既知糖鎖との比較、β1,4−ガラクトシダーゼ消化、マススペクトル分析を行い糖鎖の構造を決定する。β1,4−ガラクトシダーゼ消化の結果、非還元末端にガラクトース残基を有するPA化糖鎖の存在を確認し、さらに、これらの糖鎖をマススペクトルで分析する。
【0084】
7.シアル酸が付加された外来タンパク質を発現する植物体の構築
【0085】
上記で得られた形質転換植物Nicotiana tabacum cv SR1−hGT−IgGと、Nicotiana tabacum cv SR1−hCSS−hST−CNまたはSR1−hCSS−hST−CN−hCSTとを交配する。あるいはNicotiana tabacum cv SR1−IgGとNicotiana tabacum cv SR1−hGT−hCSS−hST−CNまたはSR1−hGT−hCSS−hST−CN−hCSTとを交配する。
【0086】
交配することにより得られた多重形質転換体は、hGT遺伝子、hCSS遺伝子、hST遺伝子、CN遺伝子、IgG遺伝子および、hGT遺伝子、hCSS遺伝子、hST遺伝子、CN遺伝子、hCST遺伝子、IgG遺伝子をもつ植物体である。この多重形質転換体について、先と同様に、IgG抗体タンパク質の発現を、抗マウス二次抗体を用いて確認する。発現した抗体を、プロテインAまたはプロテインGカラムを用いて精製した後、その糖鎖構造を確認する。このために、精製抗体をヒドラジン分解し、得られた分解液から、TSKゲルカラムを用いて糖鎖を精製する。得られた糖鎖を2-アミノピリジン(PA)と反応させ糖鎖の還元末端をPA化標識する。得られたPA化糖鎖を、逆相(RP−)HPLCとサイズ分画(SF−)HPLCで精製し、既知糖鎖との比較、シアリダーゼ消化、およびマススペクトル分析によって糖鎖構造を決定する。シアリダーゼ消化によって、非還元末端にシアル酸残基を有するPA化糖鎖の存在が確認され、これらの糖鎖構造がマススペクトルによって分析される。
【0087】
以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明する。以下の実施例は本発明の例示であって、本発明を制限するものではない。
【0088】
【実施例】
本実施例を要約すると、本実施例は、モデル植物細胞であるタバコ培養細胞BY2株において、Escherichia coli K1株由来のシアル酸合成酵素(neuB)遺伝子を、タバコN−アセチルグルコサミン転移酵素I(GnT−I)のCTS(cytoplasmic transmembrane stem)領域との融合タンパク質(CTS−neuB)として発現させ、さらに、ヒト由来hCSS遺伝子およびヒト由来hCST遺伝子をタバコ培養細胞BY2株に各々導入して発現させ、各タンパク質が植物細胞内において活性をもつことを示したものである。
【0089】
本実施例では、本発明に用いる宿主の代表例としてタバコ培養細胞BY2株を用いた。BY2株(Nicotiana tabacum L.cv.Bright Yellow 2)は、理化学研究所ライフサイエンス筑波研究センタ−、ジ−ンバンク室植物細胞開発銀行のカタログ番号RPC1から細胞株名BY2として入手可能である。
【0090】
方法
1.CTS−neuB遺伝子の取得および植物感染用ベクターの構築。
【0091】
neuB遺伝子はEscherichia coli K1株よりPCR法を用いて増幅した。用いたプライマーは以下の通りである:
Forward primer配列;neuB5’(5’−TTTAGCTCGAGACAATGAGTAATATATATAT−3’)(配列番号7);
Reverse primer配列はneuB3’(5’−TTTTTCTCGAGTTATTATTCCCCCTGATTTTTAAATTC−3’)(配列番号8)。なお、下線部はXhoI制限部位を示す。
【0092】
一方、CTS領域のPCR増幅には、Nicotiana tabacum cv. SR1株のcDNAを鋳型とし以下のプライマーを用いて行った:
Forward primer配列;CTS−5SalI(5’−TTTAAGTCGACACGATGAGAGG−3’)(配列番号9);
Reverse primer配列;CTS−3SalI(5’−AATCGTCGACCCTTAACTGTC−3’)(配列番号10)。なお、下線部はSalIサイトを示す。
【0093】
得られたneuB(配列番号1)およびCTS遺伝子を、XhoIおよびSalI部位で連結し、目的とするCTS−neuB遺伝子を取得した。得られた遺伝子をプラスミドpBI221(Clontech、CA)に導入し、植物発現用プロモーターであるカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの制御下に置いた。構築した植物外来遺伝子発現用カセットをpBI121に導入し、植物感染用ベクターpBI121−CNを得た。pBI121−CNを、Agrobacterium tumefaciens LBA4404株に導入し、植物感染用アグロバクテリウムLBA4404−CNを構築した。
【0094】
2.ヒト由来CMP−シアル酸合成酵素(hCSS)遺伝子、CMP−シアル酸トランスポーター(hCST)遺伝子のクローニングおよび植物感染用ベクターの構築。
【0095】
ヒト腎臓由来cDNAを鋳型として、PCR法を用いて目的遺伝子の増幅を試みた。用いたプライマー配列は以下の通りである。
【0096】
hCSS遺伝子関して:GenBank受託番号AF271388 Bouquin,T.and Mundy,J.を参考にした。
Forward primer配列;hCSS−1(5’−GTTACTAGTATGGACTCGGTGGAGAAGGGGGCCG CCACCTCCGTCTCCAACCCGCGGGGGCGACCGTCCC−3’)(配列番号11);
Reverse primer配列;hCSS−2(5’−TGGGAGCTCCTATTTTTGGCATGAATTATT−3’)(配列番号12)。
【0097】
hCST遺伝子に関して:Ishia、N.ら、J.Biochem.120、1074−1078(1996を参考にした。
Forward primer配列;hCST−1(5’−GTTAGATCTATGGCTGCCCCGAGAGACAAT−3’)(配列番号13);
Reverse primer配列;hCST−2(5’−TTGGAGCTCTCACACACCAATAACT CTCTC−3’)(配列番号14)。
【0098】
各々得られたPCR産物(hCSS:配列番号2およびhCST:配列番号3)をプラスミドpBI221に導入し、植物発現用プロモーターであるカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターの制御下に置いた。構築した植物外来遺伝子発現用カセットを、抗生物質ハイグロマイシン耐性遺伝子を保持するプラスミドpGPTV−HPT(ATCC 77388)に導入した。この結果得られたプラスミドpGPTV−HPT−hCSSおよびpGPTV−HPT−hCSTを、それぞれ、Agrobacterium tumefaciens LBA4404株に導入し、植物感染用アグロバクテリウムLBA4404−HPT−hCSSおよびLBA4404−HPT−hCSTを構築した。
【0099】
3.形質転換タバコ培養細胞の調製。
【0100】
改変LS液体培地中で4日目培養したタバコBY2細胞の培養液4mlに対し、100mg/lのリファンピシン、50mg/lのストレプトマイシンおよび50mg/lのカナマイシンを含む2×YT液体培地で2日目培養した上記感染用アグロバクテリウムの培養液を100μl加えて混合し、3日間共存培養した。
【0101】
次いで、感染細胞を、250mg/lのカルベニシリンおよび30%のスクロースを含む改変LS液体培地で洗浄した後、アグロバクテリウムLBA4404−CNによる感染細胞は、250mg/lのカルベニシリンおよび100mg/lのカナマイシンを含む改変LS寒天培地に、そしてアグロバクテリウムLBA4404−HPT−hCSSおよびhCSTによる感染細胞は、250mg/lのカルベニシリンおよび50mg/lのハイグロマイシンを含む改変LS寒天培地にそれぞれ播種し、カルス形成の誘導を行った。この結果、得られたカルスから、ゲノムDNAおよびmRNAを調製し、PCRおよびRT−PCR法を用いることで目的遺伝子の導入および発現の確認を行った。
【0102】
次いで、mRNAの産生が確認されたクローンについて、250mg/lのカルベニシリン、50mg/lのハイグロマイシンまたは100mg/lのカナマイシンおよび30%のスクロースを含む改変LS液体培地で培養を行った。
【0103】
4.neuB活性の測定。
【0104】
4.1.粗酵素液の調製。
【0105】
培養7日目の細胞培養液を、2,000rpmで10分間遠心分離することによって培養液から細胞を分離した。回収した細胞に、2分の1容量の0.25Mスクロース、1mM塩化マンガン、50mM塩化カリウムを含む、20mMビシン緩衝液pH8.5を加え、手動ホモジナイザーを用いて破砕した。
【0106】
次いで、得られた溶液を、4℃、12,000rpmで10分間遠心分離することによって細胞抽出液を調製した。得られた細胞抽出液を、4℃、100,000rpmで1時間超遠心分離し、ミクロソーム画分を得た。
【0107】
得られたミクロソーム画分を、10mM塩化マンガン、1M塩化ナトリウム、1%のTritonX−100を含む、20mMビシン緩衝液pH8.5に懸濁し、粗酵素液とした。
【0108】
4.2.酵素反応。
【0109】
得られた粗酵素液に、10mM塩化マンガン、10mMN−アセチルマンノサミン一水和物、10mMホスホエノールピルビン酸三水和物を含む、20mMビシン緩衝液pH8.5となる様に反応液を加え、37℃で24時間反応させた。酵素反応は20Nのリン酸を加え停止させた。
【0110】
4.3.シアル酸のDMB(1,2−diamino−4,5−methylenedioxybenzene)蛍光標識。
【0111】
上記酵素反応液に、終濃度が7mMDMB、1.4M2−メルカプトエタノール、1.4M酢酸、18mMハイドロサルファイトナトリウムとなる様に蛍光標識試薬を混合し、50℃で、2.5時間反応させた。反応は氷冷することで停止させた。
【0112】
4.4.HPLC分析。
【0113】
シアル酸の蛍光標識産物は、蛍光検出器を有するHITACHI HPLC system(日立)を用いるRP−HPLC法で分析した。蛍光強度は、励起波長373nmおよび蛍光波長448nmで測定した。RP−HPLC法では、分析カラムとしてCosmosil 5C18−AR column(6×250mm;ナカライテスク)を用い、流速1.2ml/分の下で、溶液A(アセトニトリル:メタノール:水=4:7:89)および溶液B(アセトニトリル:メタノール:水=20:35:45)について、1サイクル80分間として溶液Bを50分間から65分間の間100%流すことによりDMB化されたシアル酸の溶出を行った。
【0114】
4.5.MALDI−TOF MS (Matrix−assisted Laser Desorption/ Ionization Time−of−Flight Mass Spectrometry)分析。
【0115】
MALDI−TOF MS分析は、Voyager−DETM RP BiospectrometryTM Workstation(PerSeptive Biosystems)を用いて行った。
【0116】
5.hCSS活性測定。
【0117】
5.1.形質転換体からのhCSS粗酵素液の調製。
【0118】
培養7日目の形質転換培養細胞培養液から、室温で3,000rpmで10分間遠心分離することによって、形質転換細胞を回収した。得られた形質転換細胞に、等量の、20mMMgClを含む20mMTris−HCl緩衝液(pH8.5)を加えてホモジナイザーで細胞を粉砕した。得られた細胞破砕物を、4℃、8,000rpmで15分間遠心分離し、得られた上清を粗酵素液とした。
【0119】
5.2.CMP−シアル酸の合成。
【0120】
酵素反応は、40μlの粗酵素液、20mMMgCl、5mMNeuAc、5mMCTP、Proteinase inhibitor(Roche Diagnosis K.K.)を含む、20mMTris−HClbuffer(pH8.5)50μl中、37℃で5時間反応させて行った。
【0121】
また、ドナー基質としてNeuAcの代わりに2−keto−3−deoxy−D−glycero−D−galacto−nononic acid(KDN)および2−keto−3−deoxyoctonate(KDO)もまた用いた。を用いて同様の反応を行った。
【0122】
5.3.インビトロシアル酸転移反応。
【0123】
CMP−シアル酸合成反応後、上記反応液に100pmol/mlのPA化糖鎖(Takara shuzo)、10mU/mlのヒト由来α2,6−シアル酸転移酵素、および、終濃度が100mMとなるようにHEPESbuffer(pH7.5)を加え、37℃で16時間インキュベートした。
【0124】
5.4.HPLC分析。
【0125】
酵素反応産物を蛍光検出器を有するHITACHI HPLC system(日立)を用いて、RP−HPLC分析を行った。励起および蛍光波長は310nm、380nmとし、蛍光強度を測定した。分析カラムにはCosmosil 5C18−AR column(6×250mm;ナカライテスク)を用い、流速1.2ml/分の下で0.02%TFA水溶液中のアセトニトリル濃度を40分間で0%から6%に増加させることでPA化糖鎖を溶出させた。
【0126】
5.5.TLC(薄層クロマトグラフィー)を利用したCMP−シアル酸合成酵素活性測定。
【0127】
酵素反応は、16μlの粗酵素液、20mMMgCl、90μM〔14C〕NeuAc、5mMCTP、Proteinase inhibitor (Roche Diagnosis K.K.)を含む20mMTris−HCl buffer(pH8.5)20μlで、37℃で3時間反応を行った。反応液0.5μlを、TLCアルミニウムプレートsilica gel 60(MERCK)にスポットし、展開溶媒液(エタノール:1M酢酸アンモニウムpH7.5=7:3)で10時間展開した。展開後のプレートを1cm間隔に切断し、各断片の放射能活性を、シンチレーションカウンターを用いて測定した。
【0128】
5.6.糖タンパク質糖鎖へのインビトロシアル酸転移酵素反応。
【0129】
16μlの植物細胞抽出粗酵素液、20mMMgCl、90μM〔14C〕NeuAc、5mMCTP、Proteinase inhibitor (Roche Diagnosis K.K.)を含む20mMTris−HCl buffer(pH8.5)20μlの反応系で37℃で3時間反応を行った後、25μlの100mM HEPES buffer、pH7.4、1μlの1mUヒト由来α2,6−シアル酸転移酵素、そして5μlの10mg/mlアシアロフェツインを添加し、37℃で16時間インキュベートした。その後、反応液に1mlのcold−waterを加え反応を停止させた。得られたサンプルをAdvantec Toyo A045A025Aニトロセルロースフィルターに通し、さらに1mlのcold−waterでフィルターを3回洗浄した。洗浄後のフィルターを乾燥し、フィルター上の残存14C放射能活性値を測定した。
【0130】
6.hCST活性測定。
【0131】
6.1.ミクロソーム画分の調製。
【0132】
培養7日目の細胞培養液を2,000rpmで10分間遠心することで、培地より細胞を分離した。回収した細胞に2分の1量の10mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.1を加え、手動ホモジナイザーを用いて破砕し4℃、12,000rpmで20分間遠心することで細胞抽出液を調製した。得られた細胞抽出液を4℃、100,000rpmで1時間超遠心し、ミクロソーム画分の調製を行った。ミクロソーム画分は終濃度が10mg/mlとなる様に、0.5%のTriton X−100を含む10mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.1に懸濁した。
【0133】
6.2.抗ヒト由来CMP−シアル酸トランスポーター抗体の作成。
【0134】
抗体作成に利用したアミノ酸配列はCTSIQQGETASKERVIGVである。この内、C末端側より17アミノ酸残基はヒト由来CMP−シアル酸トランスポーターC末端からの17アミノ酸残基に一致する。抗体作成はシグマジェノシスジャパンに依頼し、抗体(anti CMP−Sia)はウサギを免疫化することで得た。
【0135】
6.3.ウエスタンブロッティング解析。
【0136】
ミクロソーム画分を、12.5%ポリアクリルアミドゲルを用いて120Vで2時間SDS−PAGEを行った後、1mA/cmの定電流下で45分間ニトロセルロース膜への転移を行った。イムノブロッティングでは、一次抗体としてRabbit anti CMP−Sia、二次抗体としてhorse radish peroxidase conjugated anti rabbit IgGを用い、染色にはPODイムノステインキット(Wako)を利用した。
【0137】
6.4.植物培養細胞由来ベシクルの調製。
【0138】
培養7日目の植物細胞培養液を2,000rpmで10分間遠心し、細胞と培地を分離した。回収した培養細胞を250mMスクロース、1mMEDTAを含む10mMHEPES−Tris buffer(pH7.4)で1回洗浄し、2,000rpmで10分間遠心した後、再度細胞を回収した。洗浄後の細胞に対し3倍量のlysis buffer(250mMスクロース、1mMEDTA、1tablet/50mlCompleteプロテアーゼインヒビター(Roche Diagnostics)を含む10mMHEPES−Tris buffer(pH7.4))を加え、手動ホモジナイザーを用いて細胞を破砕した。4℃、8,000rpmで15分間遠心分離を行い、得られた上清を細胞抽出液とした。細胞抽出液を4℃、100,000rpmで1時間超遠心分離し、得られたペレットをベシクルとした。ベシクルは10mg/mlとなる様に250mMスクロース、1mMMgCl、0.5mMジメルカプトプロパノールを含む10mMTris−HCl buffder(pH7.0)に懸濁した。
【0139】
6.5..ヒト由来CMP−シアル酸トランスポーター活性の測定。
【0140】
先に調製したベシクル溶液50μlに対し、反応基質溶液(250mMスクロース、1mMMgCl、0.5mMジメルカプトプロパノール、1tablet/50mlCompleteプロテアーゼインヒビターおよび1μMCMP−[H]シアル酸(33,600Ci/mol)を含む10mMTris−HCl buffer(pH7.0))を50μl加えることで反応を開始した。CMP−シアル酸取り込み反応は30℃で3分間行った。ただし、negative controlの反応は0℃で0分間のものである。反応液中にcold stop solution(250mMスクロース、1mMMgCl、0.5mMジメルカプトプロパノールおよび1μMCMP−シアル酸を含む10mMTris−HCl buffer(pH7.0))を1ml加えることで反応を停止した。得られたサンプルをAdvantec Toyo A045A025Aニトロセルロースフィルターに通し、さらに1mlのcold stop solutionでフィルターを3回洗浄した。洗浄後のフィルターを乾燥し、フィルター上の残存H放射能活性値を測定した。
【0141】
また、0.1%Triton X−100、250mMスクロース、1mMMgCl、0.5mMジメルカプトプロパノールを含む10mMTris−HCl buffder(pH7.0)に懸濁し、4℃で1時間インキュベートした10mg/mlベシクル溶液についても、同様にトランスポーター活性の測定を行った。
【0142】
次に、植物細胞のUDP−ガラクトーストランスポーター活性を測定した。先に調製したベシクル溶液50μlに対し、反応基質溶液(250mMスクロース、1mMMgCl、0.5mMジメルカプトプロパノール、1tablet/50mlCompleteプロテアーゼインヒビター(Roche)および1μMUDP−[14C]ガラクトース(305Ci/mol)を含む10mMTris−HCl buffer(pH7.0))を50μl加えることで反応を開始した。UDP−ガラクトース取り込み反応は30℃で3分間行った。ただし、negative controlの反応は0℃で0分間のものである。反応液中にcold stop solution(250mMスクロース、1mMMgCl、0.5mMジメルカプトプロパノールおよび1μMUDP−ガラクトースを含む10mM Tris−HCl buffer(pH7.0))を1ml加えることで反応を停止した。得られたサンプルをAdvantec Toyo A045A025Aニトロセルロースフィルターに通し、さらに1mlのcold stop solutionでフィルターを3回洗浄した。洗浄後のフィルターを乾燥し、フィルター上の残存14C放射能活性値を測定した。
【0143】
結果
1.neuBを生産するタバコ培養細胞の解析
【0144】
neuB遺伝子の発現が確認された形質転換体の1つであるCN−L株、および野生型BY2株の培養細胞から調製した粗酵素溶液について、上記4.1〜4.3の記載方法に従って、各々シアル酸合成反応を行った後DMB化し、上記4.4の記載の方法に従ってHPLCによる解析を行った。図2にHPLC分析結果を示す。
【0145】
図2に見られるように、CN−L株については、標準のDMB−NeuAc(シアル酸)と同様の溶出位置に期待されるピークが得られた(図2の真中のチャート)。しかしながら、一方でnegative controlのBY2株についても極微量ではあるが同様のピークが得られた(図2の一番下のチャート)。なお、図2の一番上のチャートが標準のDMB−NeuAcのHPLC溶出位置である。
【0146】
また、これらのピークを回収しマススペクトル分析を行ったところ、図3に示すように、CN−L株由来のピークの分子量425.43(図3の真中)およびBY2株由来のピークの分子量425.51(図3の右)はともに、計算されたDMB−NeuAcの分子量(図3の左)に一致した。
【0147】
2.ヒト由来hCSSを生産するタバコ培養細胞の解析
【0148】
2.1.In vitroシアル酸転移酵素反応。
【0149】
タバコBY2株、およびhCSS遺伝子が導入された形質転換体の1つhCSS15株の培養細胞から上記5.1.に記載のように調製した細胞抽出液を粗酵素液として、上記5.2.〜5.3.に記載のように、in vitroにおけるCMP−シアル酸合成反応を行った後、得られた酵素反応産物を基質としてPA化糖鎖へのシアル酸転移酵素反応を行った。その結果、hCSS15株の抽出物を用いた反応系において、PA化糖鎖へのシアル酸転移が認められた(図4AのIIIに示されるようにSiaGal2GN2M3−PAが検出された)。図4のAはシアル酸転移酵素反応後の反応液の、そして図4のBはシアル酸転移酵素反応前の反応液のHPLC分析結果である。このようにして得られたPA化糖鎖(SiaGal2GN2M3−PA)を回収し、マススペクトル解析を行った結果、得られた分子量2011.25は、推定される計算値の分子量(図5)と一致した。さらに、これを、Nアセチルノイラミニダーゼで消化しHPLC分析を行うと、Gal2GN2M3−PAが得られた(データは示さず)。これらの結果は、CMP−シアル酸合成酵素反応においてCTPおよびシアル酸から、目的とするCMP−シアル酸が合成されたことを示している。これは、hCSS15株において、CMP−シアル酸合成酵素が生産され、かつ活性を有していたことを示す。
【0150】
その一方、KDNおよびKDOを基質として同様のCMP−シアル酸合成酵素反応およびシアル酸転移酵素反応を試みたが、PA化糖鎖へのシアル酸の転移は確認できなかった(図4のAのIIおよびIV)。
【0151】
3.TLC分析
【0152】
hCSS15株およびBY2株の抽出物を用いたin vitro CMP−シアル酸合成酵素反応産物を、さらに、上記5.5.に記載のようにTLCを用いて解析した。図6に結果を示す。hCSS15株の抽出物を粗酵素液として用いた反応産物中には、コントロールCMP−〔H〕NeuAc(図6のA)と同じ展開位置(Fraction12)に、CMP−〔14C〕NeuAcのピークが存在した(図6のC)。一方、このピークはBY2株の抽出物を粗酵素液として用いた反応産物中には存在しなかった(図6のBおよびD)。これは、hCSS15株においてCMP−シアル酸合成酵素が生産され、かつ活性を有していたことを示す。
【0153】
4.アシアロフェツインへのin vitroシアル酸転移酵素反応
【0154】
上記5.6.に記載の方法に従って、ニトロセルロース膜を用いて洗浄濾過した酵素反応産物の残存放射能活性を測定したところ、hCSS15株の抽出物を粗酵素液として用いた反応産物中に、反応時間の増加とともに、アクセプター基質であるアシアロフェツインへ〔14C〕NeuAcが転移したことが示された(図7)。
【0155】
5.hCSTを生産するタバコ培養細胞の解析(ウエスタンブロッティング解析)
【0156】
mRNAの生産が確認された(データは示さず)5つの形質転換体(B19、B20、B21、B26およびB28)の培養細胞から、上記6.1.に記載の方法に従ってミクロソーム画分を調製し、上記6.3.に記載のように抗hCST抗体を用いてウエスタンブロッティング解析を行った。結果を図8に示す。図8に示されるように、これらの形質転換体のミクロソーム画分に、約24.2kDaのバンドが確認された(B19〜28)。その一方、野生型BY2株の細胞のミクロソーム画分では、このバンドは存在しなかった。この結果は、これら形質転換体でhCSTが生産されたことを示す。
【0157】
6.トランスポーター活性の測定
【0158】
上記の形質転換体B21、B26およびB28株について、上記6.4.に記載の手順に従ってベシクルを調製し、上記6.5.に記載の方法によってそれらのトランスポーター活性を測定した。結果を図9のAに示す。図9のAに示されるように、negative controlとして用いた野生型BY2株では、0℃、0分と30℃、3分のデータを比較してもトランスポート活性は見られなかったが、形質転換体では、B21およびB26株において、3分間で約20fmol−CMP−[H]シアル酸/mg−ベシクル、B28株では約10fmol−CMP−[H]シアル酸/mg−ベシクルのトランスポート活性が確認された。なお、図9のAにおいて、横軸は各形質転換体を示し、各形質転換体のトランスポーター活性は、棒グラフと隣接する矩形領域で表され、棒グラフは、30℃、3分の活性を、そして矩形領域は0℃、0分の活性を示している。これらの結果は、形質転換体B21、B26およびB28株で発現したhCSTが活性を保持していることを示す。
【0159】
hCSTは、本来、膜タンパク質である。そこで、形質転換体B21、B26およびB28株で発現したhCSTが、実際に膜に局在しているかどうかを調べた。このため、これら形質転換体から得られたベシクル溶液を、界面活性剤Triton X−100で処理し、上記と同様にトランスポーター活性を測定した。この結果、各形質転換体の処理試料では、いずれもトランスポーター活性は認められなかった。従って、これら形質転換体で発現したhCSTは、いずれも膜タンパク質として存在し、界面活性剤処理によりベシクルから除去されたと考えられる。
【0160】
その一方で、各株から調製されたベシクル試料が活性を損なうことなく調製されていることを示すpositive control実験として、各株のベシクル試料について、上記6.5.に示す手順に従って、UDP−ガラクトーストランスポーター活性を測定した。基質は、UDP−[14C]ガラクトースである。図9のBに結果を示す。図9のBに示されるように、野生型のBY2株では、3分間で約85fmolのUDP−[14C]ガラクトースの取り込みが確認されたのに対し、形質転換体B21株で約400fmol、B26株で約240fmol、そしてB28株では約200fmolの取り込み活性が確認された。
【0161】
まとめ
本実施例において、本発明者らは、シアル酸合成能をもつ植物細胞を構築するために、タバコ培養細胞BY2株において、大腸菌由来のシアル酸合成酵素、ヒト由来CMP−シアル酸合成酵素、そしてヒト由来CMP−シアル酸トランスポーターを発現させた。
【0162】
1.CTB−neuB融合タンパク質を植物細胞で発現させた結果、その形質転換体CN−L株は、シアル酸(N−アセチルノイラミン酸)を合成する能力をもつに至った。ところが、興味深いことに、negative controlの野生型BY2株においても、その抽出物を粗酵素溶液としてシアル酸合成反応を行ったところ、シアル酸を合成する能力をもっている可能性が示唆された(図2および3)。植物細胞は、一般に、シアル酸を合成する機能はないと考えられているので、植物においても、シアル酸合成酵素に類似の酵素群が存在する可能性がある。その遺伝子クローニングまたはタンパク質機能の解明が待たれる。
【0163】
2.CMP−シアル酸合成酵素は、糖タンパク質の糖鎖にシアル酸を転移するシアル酸転移酵素の基質であるCMP−シアル酸を、CTPとシアル酸とから合成する酵素である。本発明者らは、タバコ培養細胞BY2株において生産させたCMP−シアル酸合成酵素を用いてCMP−NeuAcを合成した。図4Aおよび図5の結果から、この様にして生産されたCMP−NeuAcが、実際に、シアル酸含有動物型糖鎖の合成に利用されたこと、すなわち、動物由来のシアル酸転移酵素の基質となることが示された。
【0164】
その一方、NeuAcのアナログであるKDNあるいはKDOは、ニジマス精子由来のCMP−シアル酸合成酵素の基質となるが、動物由来のCMP−シアル酸合成酵素の基質として利用されにくいという報告がある(Terada etal)。また、ラット由来のα2,6−シアル酸転移酵素は、糖鎖非還元末端β1,4−ガラクトース結合にKDNをシアル酸転移することが知られている(Angata et al)。そこで、本発明者らはこれらシアル酸のアナログを基質として、同様に、糖鎖への付加を試みが、シアル酸の付加を確認することはできなかった(図4B)。このことは、KDNおよびKDOが、植物細胞において生産されたヒト由来CMP−シアル酸合成酵素の基質とはならなかったことを示す。さらに、TLCにおいて、形質転換体が、CTPおよび[14C]NeuAcからCMP−[14C]NeuAcを合成する能力を有することを確認した後、本発明者らは、実際に、CMP−[14C]NeuAcが糖タンパク質上に存在するアシアロ糖鎖に付加されることを証明した。これは、β1,4−ガラクトース転移酵素を発現する植物細胞GT6株の様なモデル植物細胞に、CMP−シアル酸合成酵素を導入すれば、植物細胞内で糖タンパク質糖鎖にシアル酸を付加し得る有用植物細胞の構築が可能であるということを示す。
【0165】
3.また、本発明者らは、植物細胞におけるヒト由来CMP−シアル酸トランスポーターの発現も試みた。糖ヌクレオチドトランスポーターは、糖鎖修飾の場であるゴルジ体内に存在する糖転移酵素の基質である糖ヌクレオチドを、細胞質側からゴルジ体内へ輸送するために必要とされるタンパク質である。抗CMP−シアル酸トランスポーター抗体を用いたウエスタンブロッティング解析の結果を考慮して、形質転換体B21、B26およびB28株におけるトランスポーター活性を測定した。その結果、ベシクル1mgあたりB21およびB26株では、酵素反応時間3分間の間に約20fmolの、そしてB28では約10fmolのCMP−シアル酸取り込み活性を有することが示された。
【0166】
さらに、ベシクルを界面活性剤Triton X−100で処理し、同様のトランスポート活性を測定すると、見かけ上の活性は確認されなかった。このことは、発現させたCMP−シアル酸トランスポーターが、ベシクル膜に存在することを示している。
【0167】
また、本発明者らが、先に、植物細胞での糖鎖合成経路改変を期待して、タバコBY2株に、ヒト由来β1,4−ガラクトース転移酵素を導入した際、UDP−ガラクトーストランスポーターを発現させなくとも、糖鎖にガラクトースが付加された。また、BY2株を含むいくつかの植物において、β1,3−ガラクトース結合を含むいわゆるルイスA構造をもつ糖鎖が存在することが報告されていることから、少なくともBY2株にはUDP−ガラクトーストランスポーターが存在していると考えられた。これは、今回のCMP−シアル酸トランスポーター活性測定条件の指標として利用できる。そこで、我々は、UDP−ガラクトーストランスポーター活性の測定を行った。野生型BY2株おいて、UDP−ガラクトースのトランスポート活性3分間の反応において、ベシクル1mgあたり約85fmolの取り込み活性が確認された。その一方、形質転換体についても、同様に、UDP−ガラクトーストランスポート活性を有することが示された。
【0168】
4.本発明者らは、植物に、シアル酸およびCMP−シアル酸合成能を付加させることができた。植物を利用した動物由来糖タンパク質の生産が盛んに行われている現在、より本物に近いタンパク質の生産へ向けて、糖鎖へのシアル酸付加機能を有する植物細胞の構築は、有用物質生産への有効な手段を提供する。
【0169】
【発明の効果】
動物型糖鎖付加機能をもつ植物細胞が提供される。シアル酸を取り込み、糖タンパク質に含まれる糖鎖のガラクト−ス残基にシアル酸を付加し得る植物細胞およびそれを用いる方法が提供される。本発明の植物細胞により産生される糖タンパク質は、動物型の糖鎖を有するので、動物特にヒトに対して抗原性を有さず、それゆえ、ヒトを含む動物への投与に適する糖タンパク質が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】動物と微生物におけるシアル酸生合成経路を示す図である。
【図2】本発明のシアル酸合成酵素が導入された植物において合成されたシアル酸を示す図である。
【図3】本発明のシアル酸合成酵素が導入された植物において合成されたシアル酸を示す図である。
【図4A】本発明のCMP−シアル酸合成酵素(CSS)が導入された植物におけるCMP−シアル酸の合成を示す図である。
【図4B】図4Aと組み合わせて、本発明のCMP−シアル酸合成酵素(CSS)が導入された植物におけるCMP−シアル酸の合成を示す図である。
【図5】本発明のCMP−シアル酸合成酵素(CSS)が導入された植物におけるCMP−シアル酸の合成を示す図である。
【図6】本発明のCMP−シアル酸合成酵素(CSS)が導入された植物におけるCMP−シアル酸の合成を示す図である。
【図7】本発明のCMP−シアル酸合成酵素が導入された植物における、糖タンパク質へのシアル酸の転移を示す図である。同位体標識したシアル酸を基質として合成されたCMP−シアル酸を、市販のヒト由来シアル酸転移酵素を用いてアシアロフェツインに転移させた。
【図8】本発明のCMP−シアル酸トランスポーター(CST)が導入された植物における、CSTの発現を示す図である。
【図9】本発明のCMP−シアル酸トランスポーター(CST)が導入された植物における、トランスポーターの発現を示す図である。Aは、CSTの発現を、そしてBは、UDP−ガラクトーストランスポーターの発現をそれぞれ示す。
【配列表】























【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物型糖鎖をもつ糖タンパク質の生産方法であって、
糖鎖の非還元末端にシアル酸を付加し得る酵素の遺伝子、および異種糖タンパク質の遺伝子を導入して形質転換された植物細胞を得る工程、
該植物細胞を培養する工程、および
該植物細胞の培養液を回収する工程、を包含する、方法。
【請求項2】
前記動物型糖鎖をもつ糖タンパク質が、コア糖鎖および外部糖鎖を含み、該コア糖鎖が複数のマンノースおよびアセチルグルコサミンから本質的になり、該外部糖鎖が非還元末端ガラクトースを含む末端糖鎖部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記外部糖鎖が直鎖状構造をもつ、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記外部糖鎖が分岐状構造をもつ、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記分岐糖鎖部分が、モノ、バイ、トリ、またはテトラ構造である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
糖タンパク質の糖鎖の非還元末端にシアル酸を付加し得る糖付加機構を備えた植物細胞であって、
シアル酸合成酵素、CMP−シアル酸合成酵素(CSS)、およびCMP−シアル酸トランスポーター(CST)からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質をコ−ドする遺伝子で形質転換された、植物細胞。
【請求項7】
シアル酸の前駆体を取り込み得る植物細胞であって、
シアル酸合成酵素、CMP−シアル酸合成酵素(CSS)、およびCMP−シアル酸トランスポーター(CST)からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質をコ−ドする遺伝子で形質転換された、植物細胞。
【請求項8】
シアル酸を取り込み得る植物細胞であって、
シアル酸合成酵素、CMP−シアル酸合成酵素(CSS)、およびCMP−シアル酸トランスポーター(CST)からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質をコ−ドする遺伝子で形質転換された、植物細胞。
【請求項9】
シアル酸を取り込み得るベシクルを有する植物細胞であって、
シアル酸合成酵素、CMP−シアル酸合成酵素(CSS)、およびCMP−シアル酸トランスポーター(CST)からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質をコ−ドする遺伝子で形質転換された、植物細胞。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれかに記載の植物細胞から再生された植物体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−333701(P2006−333701A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−7687(P2003−7687)
【出願日】平成15年1月15日(2003.1.15)
【出願人】(598169697)
【出願人】(598169686)
【Fターム(参考)】