説明

動電型スピーカー

【課題】 軽量で、音声再生能力に優れ、自動車等の車両に取り付けるのに適するスピーカー用フレームおよびこれを用いる動電型スピーカーを提供する。
【解決手段】 動電型スピーカーは、樹脂発泡体からなる芯材と、熱硬化性樹脂を含んで芯材の表面を被覆する表面材層と、を有する基体で構成されるスピーカー用フレームの基体が、基体を前後方向に貫通し、かつ、その内表面が表面材層で被覆される貫通孔と、貫通孔を含んでサブフレームを固定するサブフレーム固定部を備え、連結部材が、サブフレーム固定部の貫通孔を貫通するネジと、ネジと螺合するナットと、を含み、サブフレーム固定部の前面側に配置されるナットと、サブフレーム固定部の後面側に配置されるサブフレームと、がネジにより相互に接近し、スピーカー用フレームのサブフレーム固定部を狭持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
樹脂材料からなるフレームを備える動電型スピーカーに関し、特に、軽量で剛性を有し、自動車等の車両に取り付けるのに適する動電型スピーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に取り付けるスピーカーにおいては、省エネルギーの観点から、音声を再生するスピーカーを小型化し、かつ、軽量化することが要望されている。特に、磁気回路を有する動電型スピーカーでは、磁気回路の小型化・軽量化を図るともに、磁気回路に取り付けられるフレームを軽量化する場合がある。スピーカー用フレームは、スピーカー振動板を振動可能に支持し、車両等の他の機器への取付部を形成するとともに、スピーカー振動板に駆動力を与えるボイスコイルが配置される磁気空隙を有する磁気回路を固定する。車両に取り付けるスピーカーでは、ABS等の樹脂を射出成形する樹脂フレームに、磁気回路を固定するアルミカバーまたはサブフレームを備えるものがある。
【0003】
スピーカーの樹脂フレームは、軽量化を図ってその骨格を薄く、または、細くすると、重量を有する磁気回路の取り付けに必要な剛性が不足して不要な振動が発生する、あるいは、その剛性不足のために動電型スピーカーの車両への取り付け作業時に、あるいは、車両に大きな衝撃が加わった時に動電型スピーカーが破損する、という問題を生じる場合がある。また、動電型スピーカーのボイスコイルが発熱して、磁気回路が高い温度になる場合には、耐熱温度の低い樹脂で形成される樹脂フレームに悪影響を与える恐れがある。したがって、従来には、これらの問題を解決するために様々なフレーム、および、これを用いた動電型スピーカーが提案されている。
【0004】
従来には、磁気ギャップを形成した磁気回路と、この磁気回路との結合部の表面が金属となるように金属部品を一体にインサート成型した樹脂フレームと、上記磁気ギャップにはまり込むボイスコイルを中心に結合し外周を上記樹脂フレームに結合した振動板とで構成されたスピーカーがある(特許文献1)。
【0005】
また、従来には、ボビンに巻装されたボイスコイルと、このボイスコイルが配置されるギャップを有する磁気回路と、内周部が前記ボビンに接合され前記ボイスコイルへの通電時に駆動される振動板と、この振動板の内周部を振動を許容しつつ支持するダンパーと、前記磁気回路を保持する非磁性金属材からなる第1のフレームと、前記振動板の外周部を保持する合成樹脂製の第2のフレームとを備えたスピーカーにおいて、前記第1のフレームに前記磁気回路を格納する凹所を形成すると共に、この凹所の開口端の周囲に鍔部を形成し、前記第2のフレームの底部と前記ダンパーの外周部とを前記鍔部に取り付けて固定したことを特徴とするスピーカーがある(特許文献2)。
【0006】
また、従来には、フレーム内に、振動板と、振動板に振動を与えるコイルと、コイルに磁場を与える磁気回路とが設けられているスピーカーにおいて、前記フレームは合成樹脂材料により形成され、フレームの基部内面には非磁性金属材料の放熱板が取り付けられ、磁気回路を構成する部材がこの放熱板に取り付けられていることを特徴とするスピーカーがある(特許文献3)。
【0007】
また、従来には、中心部に有底円筒状の磁気回路保持部を一体的に形成したプラスチックフレームを使用し、該プラスチックフレームの磁気回路保持部の底面上に形成した位置決め用突起に、裏面の中央部に形成した係合用凹部を嵌合させてセンターポールを有するボトムプレートを同軸上に固定し、該ボトムプレートの上面部に設けたマグネットガイドを利用してリング状のマグネットをボトムプレート上に接合すると共に、該マグネット上にトッププレートを接合し、該トッププレートの外周縁部に所定の間隔を存して形成した複数の係合部の上面部を、前記磁気回路保持部の上端部の内周面に突設した複数の係合片の裏面部と接合させたのち、トッププレートを各係合片の裏面部に形成した一方から他方に底面方向に傾斜する傾斜面に沿って回動させ、磁気回路を磁気回路保持部にバヨネット結合させて取付け、しかるのち該磁気回路の磁気ギャップ内にボイスコイルボビンを装着し、該ボイスコイルボビンに内周縁部を固定する振動板およびダンパーの外周縁部をそれぞれ超音波を用いてプラスチックフレームに固定することを特徴とするスピーカーの製造方法がある(特許文献4)。
【0008】
また、従来には、スピーカーのフレームと磁気回路のプレートとの間、またはスピーカーのフレームとこのフレームが取り付けられる部材との間に断熱材を設けたことを特徴とする高温用スピーカーユニットがある(特許文献5)。
【0009】
また、従来には、フレームに、振動板と、振動板に接続されたボビンと、このボビンに巻かれたコイルと、前記コイルが介入する磁気ギャップを形成する磁気発生部材と、電流が供給されるターミナル部とが設けられたスピーカーにおいて、前記ターミナル部の近傍にて、その保持面がフレーム内面との間に隙間を形成するフックを有し、前記コイルに導通されるリード線が、前記隙間においてフックの保持面とフレーム内面とで挟持され、ターミナル部に接続されるものであり、前記保持面は、ボビン及び振動板の駆動方向と直交することを特徴とするスピーカーがある(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3911827号公報
【特許文献2】特許第3658499号公報
【特許文献3】特許第3161679号公報
【特許文献4】特開平6−335088号公報
【特許文献5】実開平6−34396号公報
【特許文献6】特許第3197786号公報
【0011】
しかしながら、スピーカーのフレームは、さらに軽量化することが要望されている。スピーカーを軽量化するために樹脂フレームを用いる場合には、フレームの車両への取付部を樹脂で成形すると、薄肉に成形された取付部に規定される取付孔の周辺部に取付ネジ等により高い圧力が加わり、その結果、取付部が破断するなどの問題を生じる場合がある。一方で、フレームを厚肉にして剛性を高めると、軽量化が十分でなくなる場合がある、という問題がある。高温になりえる磁気回路と樹脂フレームとを固定する部分を含めて、動電型スピーカー全体としての剛性が不足すると、結果的に、音声再生能力に劣る動電型スピーカーになる、という問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の従来技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、樹脂材料からなるフレームと、これを備える動電型スピーカーに関し、軽量で、音声再生能力に優れ、自動車等の車両に取り付けるのに適するスピーカー用フレームおよびこれを用いる動電型スピーカーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の動電型スピーカーは、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、および生分解性プラスチックからなる群より選択される少なくとも一つの樹脂を含む樹脂発泡体からなる芯材と、熱硬化性樹脂を含んで芯材の表面を被覆する表面材層と、を有する基体で構成されるスピーカー用フレームと、磁気回路と、スピーカー用フレームに磁気回路を連結するサブフレームと、スピーカー用フレームとサブフレームとを連結する連結部材と、を少なくとも含む動電型スピーカーであって、スピーカー用フレームの基体が、基体を前後方向に貫通し、かつ、その内表面が表面材層で被覆される貫通孔と、貫通孔を含んでサブフレームを固定するサブフレーム固定部を備え、連結部材が、サブフレーム固定部の貫通孔を貫通するネジと、ネジと螺合するナットと、を含み、サブフレーム固定部の前面側に配置されるナットと、サブフレーム固定部の後面側に配置されるサブフレームと、がネジにより相互に接近し、スピーカー用フレームのサブフレーム固定部を狭持する。
【0014】
また、本発明の動電型スピーカーは、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、および生分解性プラスチックからなる群より選択される少なくとも一つの樹脂を含む樹脂発泡体からなる芯材と、熱硬化性樹脂を含んで芯材の表面を被覆する表面材層と、を有する基体で構成されるスピーカー用フレームと、磁気回路と、スピーカー用フレームに磁気回路を連結するサブフレームと、スピーカー用フレームとサブフレームとを連結する連結部材と、を少なくとも含む動電型スピーカーであって、スピーカー用フレームの基体が、基体を前後方向に貫通し、かつ、その内表面が表面材層で被覆される貫通孔と、貫通孔を含んでサブフレームを固定するサブフレーム固定部を備え、連結部材が、サブフレーム固定部の貫通孔を貫通するネジと、ネジと螺合する環状のリング状部材と、を含み、サブフレーム固定部の前面側に配置されるリング状部材と、サブフレーム固定部の後面側に配置されるサブフレームと、がネジにより相互に接近し、スピーカー用フレームのサブフレーム固定部を狭持する。
【0015】
また、本発明の動電型スピーカーは、磁気回路の磁気空隙に配置されるコイルを有するボイスコイルと、ボイスコイルに連結するスピーカー振動板と、ボイスコイルおよびリング状部材に連結するダンパーと、スピーカー振動板の外周端側およびスピーカー用フレームのエッジ固定部に連結するエッジと、をさらに備える。
【0016】
また、本発明の動電型スピーカーは、サブフレームが、アルミニウム、銅、チタン、マグネシウムの何れかから選択される非磁性の金属を含む合金、あるいは、ABS、PP、PC、POM、PPS、PEEK、PEIの何れかから選択される耐熱性の樹脂、から形成される。
【0017】
また、本発明の動電型スピーカーは、磁気回路と、スピーカー用フレームおよび/またはサブフレームと、が、断熱繊維を含む軟質断熱材、または、硬質断熱材、の何れかから選択される断熱材を介して連結する。
【0018】
また、本発明の動電型スピーカーは、磁気回路と、サブフレームと、リング状部材と、の何れかが、ボイスコイルに接続する接続端子を固定する接続端子固定部を備える。
【0019】
以下、本発明の作用について説明する。
【0020】
本発明のスピーカー用フレームは、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、および生分解性プラスチックからなる群より選択される少なくとも一つの樹脂を含む樹脂発泡体からなる芯材と、熱硬化性樹脂を含んで芯材の表面を被覆する表面材層と、を有する基体で構成されるスピーカー用フレームである。本発明のスピーカー用フレームは、極めて軽量な樹脂発泡体を芯材とし、その表面が十分な剛性を有する熱硬化性樹脂層である表面材層で覆われている基体で形成されるので、動電型スピーカーのフレームとして十分な剛性を有しつつ、樹脂で形成される従来のスピーカー用フレームよりも大幅に軽量化される。
【0021】
したがって、本発明のスピーカー用フレームを用いる動電型スピーカーは、従来の動電型スピーカーよりも大幅に軽量化できるので、自動車等の車両に取り付けるのに適した動電型スピーカーとなる。本発明の動電型スピーカーは、本発明のスピーカー用フレームと、磁気回路と、スピーカー用フレームに磁気回路を連結するサブフレームと、スピーカー用フレームとサブフレームとを連結する連結部材と、ボイスコイルと、スピーカー振動板と、エッジと、場合によってはダンパーをさらに備える。また、磁気回路と、サブフレームと、リング状部材と、の何れかが、ボイスコイルに接続する接続端子を固定する接続端子固定部を備えていてもよい。
【0022】
本発明のスピーカー用フレームの基体は、スピーカー用フレームを他の機器に取り付けるフレーム取付部を含む第1環状部を備える。第1環状部は、略バスケット形状のスピーカー用フレームの前面側の環状部分であって、エッジの外周端側を固定するエッジ固定部を含んでいてもよい。また、スピーカー用フレームの基体は、略バスケット形状のスピーカー用フレームの後面側の環状部分であって、磁気回路を連結するサブフレームを固定するサブフレーム固定部を含む第2環状部を備える。第2環状部は、ダンパーの外周端側を固定するダンパー固定部を含んでいてもよい。第1環状部と第2環状部とは、複数の柱状の連結部により連結し、貫通孔である窓部を規定する。
【0023】
スピーカー用フレームの基体は、基体を前後方向に貫通し、かつ、その内表面が表面材層で被覆される貫通孔と、貫通孔を含んでサブフレームを固定するサブフレーム固定部を備える。サブフレームをスピーカー用フレームの基体に固定する連結部材は、サブフレーム固定部の貫通孔を貫通するネジと、ネジと螺合するナットと、を含む。連結部材を構成するナットは、サブフレーム固定部の前面側に配置されて、このナットとサブフレーム固定部の後面側に配置されるサブフレームとがネジにより相互に接近することで、スピーカー用フレームのサブフレーム固定部を狭持する。その結果、サブフレームがスピーカー用フレームの基体に固定される。
【0024】
あるいは、サブフレームをスピーカー用フレームの基体に固定する連結部材は、サブフレーム固定部の貫通孔を貫通するネジと、ネジと螺合する環状のリング状部材と、を含む。連結部材を構成するリング状部材は、サブフレーム固定部の前面側に配置されて、このリング状部材とサブフレーム固定部の後面側に配置されるサブフレームとがネジにより相互に接近することで、スピーカー用フレームのサブフレーム固定部を狭持する。その結果、サブフレームがスピーカー用フレームの基体に固定される。
【0025】
サブフレームは、アルミニウム、銅、チタン、マグネシウムの何れかから選択される非磁性の金属を含む合金、あるいは、ABS、PP、PC、POM、PPS、PEEK、PEIのいずれかから選択される耐熱性の樹脂、から形成される。また、本発明の動電型スピーカーでは、磁気回路と、スピーカー用フレームおよび/またはサブフレームと、が、断熱繊維を含む軟質断熱材、または、硬質断熱材、の何れかから選択される断熱材を介して連結する。つまり、本発明の動電型スピーカーは、発熱する磁気回路をスピーカー用フレームの基体に固定するのに、放熱に優れる非磁性の金属、または、耐熱性の樹脂、から形成されるサブフレームを用い、あるいは、磁気回路およびスピーカー用フレームが断熱材を介して連結する。したがって、本発明のスピーカー用フレームの基体を構成する芯材の樹脂発泡体の融点が低く、耐熱温度の低い樹脂で形成されて芯材が熱に弱い場合であっても、スピーカー用フレームに悪影響を与えずに、動電型スピーカー全体としての剛性を保って、音声再生能力に優れる動電型スピーカーを実現できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のスピーカー用フレームの基体を構成する樹脂発泡体からなる芯材の融点が低く、耐熱温度の低い樹脂で形成されて熱に弱い場合であっても、スピーカー用フレームに悪影響を与えずに、動電型スピーカー全体としての剛性を保って、音声再生能力に優れ、自動車等の車両に取り付けるのに適する動電型スピーカーを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1aを説明する断面図である。(実施例1)
【図2】本発明の好ましい実施形態によるスピーカー用フレーム20aの構成を説明する一部拡大平面図、および、一部拡大断面図である。(実施例1)
【図3】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1bを説明する断面図である。(実施例2)
【図4】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1cを説明する断面図である。(実施例3)
【図5】本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1dを説明する断面図である。(実施例4)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカーについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【実施例1】
【0029】
図1は、本発明の好ましい実施形態による動電型スピーカー1aを説明する図である。また、図2は、動電型スピーカー1aを構成するスピーカー用フレーム20aの構成を説明する図である。具体的には、図1は、(図示しない)中心点Oを通過するA−O−B断面に相当する動電型スピーカー1aの断面図であり、図2は、スピーカー用フレーム20aの第2環状部22の一部拡大平面図、および、一部拡大断面である。なお、後述するように、動電型スピーカー1aおよびスピーカー用フレーム20aの一部の構造や、内部構造等は、省略している。
【0030】
本実施例の動電型スピーカー1aは、口径が約16cmの円形のスピーカー振動板2を有する動電型スピーカーであり、(図示しない)車両の車体に取り付けるように軽量化を図った車両用のスピーカーである。コーン形状のスピーカー振動板2は、エッジ3によってその外周端を振動可能に支持されている。本実施例のスピーカー振動板2は、抄紙される紙材であるが、他の材料で構成するものであってもよい。ロール形状のエッジ3の外周端は、スピーカー用フレーム20aに固定されており、その前側にはガスケット7が取り付けられている。エッジ3の内周端は、スピーカー振動板2の外周端に連結している。また、スピーカー振動板2の中央部の内径端には、ボイスコイル4が連結しており、ボイスコイル4は、そのコイルボビンがダンパー5により振動可能に支持されている。ダンパー5は、柔軟性を有する繊維の織布を基材としてフェノール樹脂を含浸して成形するコルゲーションダンパーであり、その外周端がフレーム20aに固定されている。
【0031】
ボイスコイル4は、円筒形のコイルボビンの一端側に巻回されたコイルを有し、このコイルは、フレーム20aにサブフレーム8aおよびネジ9を介して固定される磁気回路10の磁気空隙に配置される。本実施例のサブフレーム8aは、耐熱性および放熱性に優れるアルミニウム合金から形成される。ボイスコイル4に接続する錦糸線15は、ターミナル17の端子18と、コイル4の引出線とを、ハンダづけして導通させるので、ボイスコイル4に音声電流を供給することができる。ターミナル17は、フレーム20aに固定されるサブフレーム8aから一部が延設されて90度折り曲げられてダンパー5の上側に配置された接続端子固定部16に固定される。
【0032】
なお、接続端子固定部16は、サブフレーム8a以外に設けてもよく、磁気回路10の何れかの構成部品、あるいは、後述するリング状部材等に設けても良い。また、錦糸線15は、スピーカー振動板2に金属ハトメを設けてターミナルまで導通させるようにしてもよい。スピーカー振動板2の中央側において、ボイスコイル4のコイルボビンの端部には、ダストキャップ6が接着剤で取り付けられて閉塞されているので、磁気回路10の磁気空隙には、鉄粉等の粉塵が入り込まない。
【0033】
本実施例の磁気回路10は、段付きの壺状のヨーク11と、ヨーク11の内部に固定される円盤状のマグネット12と、マグネット12の上面側に固定される円盤状のトッププレート13と、トッププレート13の上面側に固定される円盤状の反発マグネット14と、からなる内磁反発型磁気回路であって、ヨーク11の底面部分及び側面部分が、サブフレーム8aの中央凹部に固定されている。サブフレーム8aは、アルミニウム合金からなり、中央凹部の周囲に形成されるフランジ部分がネジ9を介してフレーム20aに固定されて連結されている。磁気回路10は、ヨーク11の内周端部とトッププレート13との間に規定される円環状の磁気空隙に、高い磁束密度の直流磁界を形成する。したがって、この磁気空隙に配置されるボイスコイル4のコイルに音声電流が供給されると、ボイスコイル4に駆動力が作用して、スピーカー振動板2を振動させる。したがって、動電型スピーカー1は、音声信号電流を音波に変換することができる。
【0034】
図2に断面を拡大して図示するように、本実施例のフレーム20aは、生分解性プラスチックであるポリ乳酸樹脂を含む樹脂発泡体からなる芯材20xと、熱硬化性樹脂であるエポキシアクリレート樹脂を含んで芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体で構成されるスピーカー用フレームである。フレーム20aは、密度の低い樹脂発泡体からなる芯材が基体の大部分を占めるので、樹脂材料から形成される口径16cmのスピーカー用フレームとしては、極めて軽量である。フレーム20aは、前面外周側に形成される第1環状部21と、第1環状部21よりも背面内周側に形成される第2環状部22と、第1環状部21と第2環状部22とを連結する複数の連結部23と、を備える略バスケット状のスピーカー用フレームである。
【0035】
なお、芯材20xの樹脂発泡体を形成する樹脂としては、任意の適切な樹脂が採用され得る。例えば、蒸気加熱発泡法により発泡可能なTgを有する熱可塑性樹脂や、発泡成形性が高く、かつ、適度な剛性を有する熱硬化性樹脂が採用され得る。このような樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、および、これらのブレンド物またはアロイ化物が好ましく例示される。軽量、かつ、表面材層との接着性に優れた樹脂発泡体を形成し得るからである。ウレタン系樹脂は、さらに常温で発泡性を有するという利点も有する。また、環境適応の観点から、本実施例の場合のポリ乳酸等の生分解性プラスチックを用いてもよい。好ましくは、ポリ乳酸は、トウモロコシのような農作物またはバイオマス原料から製造される。
【0036】
芯材20xには、必要に応じて、プラズマ処理、コロナ処理等の表面処理が施され得る。表面処理を施すことにより、表面材層との接着性が向上し得る。表面処理条件は、上記樹脂の種類等に応じて適切に設定され得る。芯材20xの形成方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。芯材20xは、例えば、炭化水素ガス等の発泡剤を含む樹脂粒子を発泡させて形成される。
【0037】
一方、表面材層20yは、熱硬化性樹脂を含み、芯材20xの表面のほぼ全体を被覆する。表面材層20yの厚みは、所望される剛性等に応じて、適切に設定され得る。表面材層20yの厚みは、好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.45mm以上である。表面材層20yの厚みがこのような範囲内であれば、軽量でありながら剛性に優れたスピーカーフレームが得られ得る。好ましい実施形態においては、芯材20xの厚みに対する表面材層20yの厚みの合計(放射面側の表面材層とその反対側の表面材層との厚みの合計)の割合は、0.1%〜20%、さらに好ましくは0.5%〜10%である。
【0038】
表面材層20yに含まれる熱硬化性樹脂としては、任意の適切な熱硬化性樹脂が採用され得る。好ましくは、表面硬度およびヤング率が高く、芯材20xとの接着性に優れた熱硬化性樹脂が採用され得る。また、操作性の観点から、硬化前は流動性が高く、液状を呈することが好ましい。表面材層20yに含まれる熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシアクリレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニルエステル系樹脂が挙げられる。なかでも、エポキシアクリレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、およびウレタン系樹脂が好ましい。
【0039】
表面材層20yは、好ましくは上記樹脂に加えて強化材をさらに含んでいてもよい。強化材を含むことにより、さらに剛性に優れたスピーカーフレームが得られ得る。強化材としては、繊維状・粒子状・鱗片状等の任意の適切な材料が用いられ得る。なかでも、繊維状の強化材は、剛性の向上効果が高く、好ましい。
【0040】
フレーム20aの第1環状部21からは、一周に渡ってフランジ24が径方向の外側へ突出するように形成されている。この第1環状部21と一体に形成されているフランジ24には、車両の車体に取り付ける図示するような取付孔25hを規定する複数のフレーム取付部25が、周方向に約120度の間隔で3箇所形成されている。また、フレーム20aの第1環状部21は、その前側にスピーカー振動板2並びにエッジ3を含むスピーカー振動系を保護するガスケット7が取り付けられる。第1環状部21は、スピーカー振動板2が連結するエッジ3の外周端側を固定するエッジ固定部を有する。エッジ固定部は、エッジ3を接着する円環状の平面部分である。
【0041】
フレーム20aの第2環状部22は、サブフレーム8aを介して磁気回路10を固定するサブフレーム固定部26を含み、磁気回路10の磁気空隙に連通する中心孔と、ダンパー5の外周部を固定するダンパー固定部とを有する。サブフレーム8aは、サブフレーム固定部26にその後面側から、ネジ9を用いて固定される。サブフレーム固定部26は、周方向に約120度の間隔で3箇所形成されている。サブフレーム8aは、フランジ部分にネジ9が貫通する貫通孔を複数有している。サブフレーム8aは、アルミニウム合金以外でも、銅、チタン、マグネシウムの何れかから選択される非磁性の金属を含む合金から形成されればよい。また、第2環状部22が有するダンパー固定部は、ダンパー5を接着する円環状の平面部分である。
【0042】
なお、本実施例の場合には、複数の連結部23は、第1環状部21と第2環状部22とを連結する柱状の部分であって、中心点Oを中心にして周方向に約120度の間隔で3つ設けられている。第2環状部22から見ると第1環状部21がフレーム20aの前方側に配置されているので、第1環状部21は、第2環状部22から前方側の第1環状部21へ向かうように延設されている構造になる。第1環状部21と第2環状部22と、これらを連結する複数の連結部23は、貫通孔である窓部を規定する。
【0043】
フレーム20aの第1環状部21に設けられるフレーム取付部25は、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体に、取付孔25hを形成する金属からなる取付孔形成部材25aを有する。つまり、取付孔形成部材25aは、第1環状部21のフレーム取付部25において、取付孔25hが露出するように芯材20xにインサート成形される金属筒部材であって、円筒の一端に径方向に突出するように延設されるフランジ部を備え、芯材20xに係止して容易に抜け落ちない部材である。
【0044】
取付孔形成部材25aは、フレーム20aの芯材20xが成型される段階でインサート成形され、その後に熱硬化性樹脂により芯材20xの表面を被覆する表面材層20yが形成されるので、取付孔形成部材25aは、少なくともその一部の表面に表面材層20yが形成される。本実施例の取付孔形成部材25aでは、表面に露出し得る表面の全部が表面材層20yにより被覆されている。取付孔形成部材25aは、基体の芯材20xに連結部材であるネジ等の圧力が直接に加わらないようにして、フレーム20aを用いる動電型スピーカーにおいて、フレーム取付部25を含む第1環状部21のフランジ24を必要以上に厚肉にしなくても、破断、または、変形を防止することができる。なお、取付孔形成部材25aの取付孔25hには、ネジが螺合するネジ溝が形成されていてもよい。
【0045】
一方で、フレーム20aの第2環状部22に設けられるサブフレーム固定部26は、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体を貫通し、かつ、その内側表面が表面材層20yで被覆される貫通孔20zを有し、上記のフレーム取付部25における取付孔形成部材25aのような金属部品をインサート成形されていない。その代わりに、動電型スピーカー1aでは、サブフレーム固定部26の貫通孔20zを貫通するネジ9と、ネジ9と螺合するナット31と、2つのワッシャー部材32が、連結部材を構成する。
【0046】
一方のワッシャー部材32は、サブフレーム8aと第2環状部22の後面側であるサブフレーム固定部26との間に狭持され、他方のワッシャー部材32は、第2環状部22の前面側とナット31との間に狭持される。サブフレーム8aは、アルミニウム合金を含む金属であり、ネジ9に対応する複数のネジ穴を有している。したがって、ネジ9のネジ頭とサブフレーム8aとの間にサブフレーム8aおよびフレーム20aの第2環状部22のサブフレーム固定部26が狭持されて、フレーム20aとサブフレーム8aおよび磁気回路10とが連結される。
【0047】
このように本実施例のフレーム20aを用いる動電型スピーカー1aでは、第2環状部22のサブフレーム取付部26が、金属からなる取付孔形成部材を有しておらず、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体で形成されるフレーム20aであっても、貫通孔20zを通過して磁気回路10を固定しようとするネジ9により高い圧力が加わる場合にも、サブフレーム取付部26が破断するなどの問題を生じにくくすることができる。また、ナット31およびワッシャー部材32は、より広い面積でネジ9の圧力を受けるので、基体の芯材20xに連結部材であるネジ9の圧力が直接に加わらないようにして、サブフレーム取付部26を含む第2環状部22を必要以上に厚肉にしなくても、破断、または、変形を防止することができる。
【0048】
さらに、本実施例のフレーム20aは、連結部材が厚みのあるワッシャー部材32を含むので、図示するように、このワッシャー部材32がサブフレーム取付部26と磁気回路10を連結するサブフレーム8aとに狭持される。したがって、ワッシャー部材32の厚みの分だけ、サブフレーム取付部26とサブフレーム8aとが離隔する。その結果、発熱する磁気回路10を連結するサブフレーム8aが高温になっても、直接にフレーム20aを構成する表面材層20yと芯材20xとに触れることがないので、フレーム20aの基材の熱による変形を防止することが出来る。
【実施例2】
【0049】
図3は、本発明の他の好ましい実施形態による動電型スピーカー1bを説明する図である。具体的には、図3は、図1と同様に(図示しない)中心点Oを通過するA−O−A断面に相当する動電型スピーカー1bの断面図である。本実施例の動電型スピーカー1bは、スピーカー用フレーム20bと、先の実施例におけるサブフレーム8aに代わる耐熱樹脂製のサブフレーム8bと、ナット31およびワッシャー部材32に代わる環状のリング状部材33bと、を備える点で、先の実施例の動電型スピーカー1aと相違する。
【0050】
スピーカー用フレーム20bは、先の実施例におけるフレーム20aの第1環状部21のフレーム取付部25の構成が異なることを除いて、共通する構成を有するフレームである。つまり、本実施例のフレーム20bも、生分解性プラスチックであるポリ乳酸樹脂を含む樹脂発泡体からなる芯材20xと、熱硬化性樹脂であるエポキシアクリレート樹脂を含んで芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体で構成されるスピーカー用フレームである。したがって、共通する部分には共通する符号を付して、説明を省略する。
【0051】
フレーム20bの第1環状部21に設けられるフレーム取付部25は、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体に、取付孔25hを形成する金属からなる取付孔形成部材25bを有する。つまり、取付孔形成部材25bは、第1環状部21のフレーム取付部25において、取付孔25hが露出するように芯材20xにインサート成形されるワッシャー状の金属部材であって、内側表面が表面材層20yで被覆される貫通孔20zの一部に、取付孔25hが露出するように外周側が芯材20xにくい込んで、容易に抜け落ちないように固定される部材である。
【0052】
取付孔形成部材25bは、フレーム20bの芯材20xが成型される段階でインサート成形され、その後に熱硬化性樹脂により芯材20xの表面を被覆する表面材層20yが形成されるので、取付孔形成部材25bは、少なくともその一部の表面に表面材層20yが形成される。本実施例の取付孔形成部材25bでは、表面に露出し得る表面のうち、ワッシャーのリング状部分の少なくとも所定の面積が表面材層20yにより被覆されている。
【0053】
このように本実施例のフレーム20bを用いる動電型スピーカー1bでは、第1環状部21のフレーム取付部25が、金属からなる取付孔形成部材25bにより取付孔25hを設けられるので、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体で形成されるフレーム20bであっても、取付孔25hを通過して車両等に固定しようとするネジ等により高い圧力が加わる場合にも、フレーム取付部25が破断するなどの問題を生じにくくすることができる。取付孔25hが露出するように芯材20xにインサート成形され、少なくともその一部の表面に剛性を高める表面材層20yが形成されるからである。また、フランジ部をさらに有する取付孔形成部材25bは、より広い面積でネジ頭部の圧力を受けるので、基体の芯材20xに連結部材であるネジ等の圧力が直接に加わらないようにして、フレーム取付部25を含む第1環状部21のフランジ24を必要以上に厚肉にしなくても、破断、または、変形を防止することができる。
【0054】
一方で、フレーム20bの第2環状部22に設けられるサブフレーム固定部26は、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体を貫通し、かつ、その内側表面が表面材層20yで被覆される貫通孔20zを有し、先の他の実施例のような取付孔形成部材を有しない。その代わりに、動電型スピーカー1bでは、サブフレーム固定部26の貫通孔20zを貫通するネジ9と、ネジ9と螺合する環状のリング状部材33bと、が、連結部材を構成する。リング状部材33bは、断面が略矩形のアルミニウム合金を含む金属材であり、ネジ9に対応する複数のネジ穴を有している。したがって、ネジ9のネジ頭とリング状部材33bとの間にサブフレーム8およびフレーム20bの第2環状部22のサブフレーム固定部26が狭持されて、フレーム20bとサブフレーム8および磁気回路10とが連結される。
【0055】
このように本実施例のフレーム20bを用いる動電型スピーカー1bでは、第2環状部22のサブフレーム取付部26が、金属からなる取付孔形成部材を有しておらず、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体で形成されるフレーム20bであっても、貫通孔20zを通過して磁気回路10を固定しようとするネジ9により高い圧力が加わる場合にも、サブフレーム取付部26が破断するなどの問題を生じにくくすることができる。また、リング状部材33bは、より広い面積でネジ9の圧力を受けるので、基体の芯材20xに連結部材であるネジ9の圧力が直接に加わらないようにして、サブフレーム取付部26を含む第2環状部22を必要以上に厚肉にしなくても、破断、または、変形を防止することができる。
【0056】
さらに、本実施例のフレーム20bに連結するサブフレーム8bは、耐熱性の樹脂であるABS樹脂から形成されており、中央凹部の周囲に形成されるフランジ部分がネジ9を介してフレーム20bのサブフレーム取付部26に固定されて連結されている。ABS樹脂は、ガラス繊維を含む等により耐熱温度を高くすることが出来る。なお、サブフレーム8bは、ABS樹脂以外でも、PP、PC、POM、PPS、PEEK、PEIの何れかから選択される耐熱性の樹脂から形成されればよい。
【0057】
その結果、発熱する磁気回路10が高温になっても、連結する、耐熱性の樹脂から形成されたサブフレーム8が間に存在し、直接にフレーム20bを構成する表面材層20yと芯材20xとに触れることがない。したがって、フレーム20bの基材の熱による変形を防止することが出来て、動電型スピーカー全体としての剛性を保って、音声再生能力に優れる動電型スピーカー1bを実現できる。
【実施例3】
【0058】
図4は、本発明の他の好ましい実施形態による動電型スピーカー1cを説明する図である。具体的には、図4は、図1または図3と同様に(図示しない)中心点Oを通過するA−O−A断面に相当する動電型スピーカー1cの断面図である。本実施例の動電型スピーカー1cは、先の実施例における動電型スピーカー1bと、ダンパー5に代わるダンパー5c、および、リング状部材33bに代わるリング状部材33c、を備える点で相違することを除いて、共通する構成を有する。したがって、共通する部分には共通する符号を付して、説明を省略する。
【0059】
ダンパー5cは、先の実施例におけるダンパー5に比較して、外径寸法が小さい立ち上がりダンパーであり、その外周端側が、フレーム20bの第2環状部22に固定されずに、リング状部材33cの上面側の平面部に接着剤で固定されている。リング状部材33cは、先のリング状部材33bと同様に、断面が略矩形のアルミニウム合金を含む金属材であり、ネジ9に対応する複数のネジ穴を有している。ネジ9のネジ頭とリング状部材33cとの間にサブフレーム8およびフレーム20bの第2環状部22のサブフレーム固定部26が狭持されて、フレーム20bとサブフレーム8および磁気回路10とが連結される。
【0060】
リング状部材33cは、先のリング状部材33bよりも内径寸法が小さく外形寸法が大きく、上面側の平面がより広い面積を有している。したがって、ダンパー5cの外周端側をリング状部材33cに連結するようにすると、外径寸法が異なるダンパーを用いる場合であっても、共通して同じフレーム20bを用いて、異なる動電型スピーカー1cを実現することができる。つまり、外形寸法の異なるダンパー5に対応する場合には、それぞれに対応するリング状部材33を用意すればよい。また、共通してフレーム20bを用いるように対応するには、その第2環状部22に設ける貫通孔20zを、ネジ9が貫通できるようにスリット状の長孔にしてもよい。
【0061】
また、リング状部材33bは、より広い面積でネジ9の圧力を受けるので、基体の芯材20xに連結部材であるネジ9の圧力が直接に加わらないようにして、サブフレーム取付部26を含む第2環状部22を必要以上に厚肉にしなくても、破断、または、変形を防止することができる。
【実施例4】
【0062】
図5は、本発明の他の好ましい実施形態による動電型スピーカー1dを説明する図である。具体的には、図5は、図3または図4と同様に(図示しない)中心点Oを通過するA−O−A断面に相当する動電型スピーカー1dの断面図である。本実施例の動電型スピーカー1dは、先の実施例における動電型スピーカー1aと、ワッシャー部材32に代わる断熱材34を備える点で相違することを除いて、共通する構成を有する。したがって、共通する部分には共通する符号を付して、説明を省略する。
【0063】
フレーム20aの第2環状部22に設けられるサブフレーム固定部26は、樹脂発泡体からなる芯材20xと、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yと、を有する基体を貫通し、かつ、その内側表面が表面材層20yで被覆される貫通孔20zを有する。したがって、動電型スピーカー1dでは、サブフレーム固定部26の貫通孔20zを貫通するネジ9と、ネジ9と螺合するナット31と、断熱材34が、連結部材を構成する。
【0064】
断熱材34は、サブフレーム8aと第2環状部22の後面側であるサブフレーム固定部26との間に狭持される。断熱材34は、断熱繊維を所定の厚みを有するように成形したシート状の軟質断熱材であり、強度は無くても断熱効果に優れる断熱材である。したがって、ネジ9のネジ頭と、ネジ9に螺合するナット31との間に、サブフレーム8a、断熱材34、および、フレーム20aの第2環状部22のサブフレーム固定部26が狭持されて、フレーム20aとサブフレーム8aおよび磁気回路10とが連結される。
【0065】
その結果、断熱材34の厚みの分だけ、サブフレーム取付部26とサブフレーム8aとが離隔する。断熱繊維を所定の厚みを有するように成形した断熱材34は、磁気回路10で発生する熱により連結するサブフレーム8aが高温になっても、サブフレーム8aが直接にフレーム20aを構成する表面材層20yと芯材20xとに触れることがないようにするとともに、断熱性に優れるので、フレーム20aの基材の熱による変形を防止することが出来る。もちろん、断熱材34は、断熱繊維をシート、もしくは、スポンジのような柔らかい状態にした軟質断熱材でもよく、また、セラミック、あるいは、陶器、磁器などの硬質断熱材であってもよく、耐熱樹脂のような硬い状態の部材であってもよい。
【0066】
なお、本実施例のフレーム20a〜20bでは、それぞれ3箇所の第1環状部21のフレーム取付部25と、第2環状部22のサブフレーム取付部26と、を周方向に約120度の間隔で設けているが、上記の実施例に限定されない。フレーム取付部25およびサブフレーム取付部26は、少なくとも2つ以上であればよく、それぞれ4つでも、5つでもよく、同じ数の場合に限られない。フレーム取付部25およびサブフレーム取付部26が配置される間隔も、周方向に略均等な角度に配置される場合に限られない。
【0067】
また、本実施例のフレーム20a〜20bでは、芯材20xを生分解性プラスチックであるポリ乳酸樹脂を含む樹脂発泡体とし、芯材20xの表面を被覆する表面材層20yを熱硬化性樹脂であるエポキシアクリレート樹脂としているが、上記の実施例に限定されない。上述するように、芯材20xは、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、および生分解性プラスチックからなる群より選択される少なくとも一つの樹脂を含む樹脂発泡体からなればよく、また、表面材層20yは、芯材の表面を被覆する他の熱硬化性樹脂であればよい。
【0068】
また、本実施例のフレーム20a〜20bを用いる動電型スピーカー1a〜1dは、円形のスピーカー振動板2を有する車両用の動電型スピーカーであるが、外径が長円形、あるいは、矩形のスピーカー振動板2に適する長円形、もしくは、矩形の環状部を有するフレームであっても、ドレインカバーを備える樹脂フレームであってもよい。ドレインカバーを備えていても、必要な剛性を保って車両の軽量化に貢献できる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のスピーカー用フレームおよびこれを用いる動電型スピーカーは、ドレインカバーが必要な車両に取り付ける動電型スピーカーのみならず、ディスプレイ等の映像・音響機器に内蔵するスピーカー、または、音声を再生するスピーカーを内蔵するキャビネットを有するゲーム機、スロットマシン等の遊戯機にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1a〜1d 動電型スピーカー
2 スピーカー振動板
3 エッジ
4 ボイスコイル
5、5c ダンパー
6 ダストキャップ
7 ガスケット
8a、8b サブフレーム
9 ネジ
10 磁気回路
11 ヨーク
12 マグネット
13 トッププレート
14 反発マグネット
20a〜20b フレーム
20x 芯材
20y 表面材層
20z 貫通孔
21 第1環状部
22 第2環状部
23 連結部
24 フランジ
25 フレーム取付部
25a〜25d 取付孔形成部材
25h 取付孔
26 サブフレーム固定部
31 ナット
32 ワッシャー部材
33b、33c リング状部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、および生分解性プラスチックからなる群より選択される少なくとも一つの樹脂を含む樹脂発泡体からなる芯材と、熱硬化性樹脂を含んで該芯材の表面を被覆する表面材層と、を有する基体で構成されるスピーカー用フレームと、磁気回路と、該スピーカー用フレームに該磁気回路を連結するサブフレームと、該スピーカー用フレームと該サブフレームとを連結する連結部材と、
を少なくとも含む動電型スピーカーであって、
該スピーカー用フレームの該基体が、該基体を前後方向に貫通し、かつ、その内表面が該表面材層で被覆される貫通孔と、該貫通孔を含んで該サブフレームを固定するサブフレーム固定部を備え、
該連結部材が、該サブフレーム固定部の該貫通孔を貫通するネジと、該ネジと螺合するナットと、を含み、
該サブフレーム固定部の前面側に配置される該ナットと、該サブフレーム固定部の後面側に配置される該サブフレームと、が該ネジにより相互に接近し、該スピーカー用フレームの該サブフレーム固定部を狭持する、
動電型スピーカー。
【請求項2】
ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、および生分解性プラスチックからなる群より選択される少なくとも一つの樹脂を含む樹脂発泡体からなる芯材と、熱硬化性樹脂を含んで該芯材の表面を被覆する表面材層と、を有する基体で構成されるスピーカー用フレームと、磁気回路と、該スピーカー用フレームに該磁気回路を連結するサブフレームと、該スピーカー用フレームと該サブフレームとを連結する連結部材と、
を少なくとも含む動電型スピーカーであって、
該スピーカー用フレームの該基体が、該基体を前後方向に貫通し、かつ、その内表面が該表面材層で被覆される貫通孔と、該貫通孔を含んで該サブフレームを固定するサブフレーム固定部を備え、
該連結部材が、該サブフレーム固定部の該貫通孔を貫通するネジと、該ネジと螺合する環状のリング状部材と、を含み、
該サブフレーム固定部の前面側に配置される該リング状部材と、該サブフレーム固定部の後面側に配置される該サブフレームと、が該ネジにより相互に接近し、該スピーカー用フレームの該サブフレーム固定部を狭持する、
動電型スピーカー。
【請求項3】
前記磁気回路の磁気空隙に配置されるコイルを有するボイスコイルと、
該ボイスコイルに連結するスピーカー振動板と、
該ボイスコイルおよび前記リング状部材に連結するダンパーと、
該スピーカー振動板の外周端側およびスピーカー用フレームのエッジ固定部に連結するエッジと、
をさらに備える、
請求項2に記載の動電型スピーカー。
【請求項4】
前記サブフレームが、アルミニウム、銅、チタン、マグネシウムの何れかから選択される非磁性の金属を含む合金、あるいは、ABS、PP、PC、POM、PPS、PEEK、PEIの何れかから選択される耐熱性の樹脂、から形成される、
請求項1から3のいずれかに記載の動電型スピーカー。
【請求項5】
前記磁気回路と、前記スピーカー用フレームおよび/または前記サブフレームと、が、断熱繊維を含む軟質断熱材、または、硬質断熱材、の何れかから選択される断熱材を介して連結する、
請求項1から4のいずれかに記載の動電型スピーカー。
【請求項6】
前記磁気回路と、前記サブフレームと、前記前記リング状部材と、の何れかが、ボイスコイルに接続する接続端子を固定する接続端子固定部を備える、
請求項1から5のいずれかに記載の動電型スピーカー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−34318(P2012−34318A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174353(P2010−174353)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(710014351)オンキヨー株式会社 (226)
【Fターム(参考)】