説明

包装材用途のための触覚テキストおよびイメージを生成させるための紫外線硬化性ゲル化剤インク

【課題】可撓性の基材の上にイメージを形成させることまたは印刷する方法を提供する。
【解決手段】印刷方法は、任意選択の着色剤と、放射硬化性モノマーまたはプレポリマー、光開始剤、反応性ワックスおよびゲル化剤を含む相変化インクビヒクルと、を含む紫外線硬化性相変化インク組成物を可撓性の包装用基材の上に直接堆積させるか、または前記インクを中間転写部材の上に堆積させ、イメージ区域の中に触覚イメージ区域、または触覚イメージ区域と通常イメージとの組み合わせを形成させる工程と、前記触覚イメージ区域またはその一部の中の複数の位置に、前記インクの複数の層を堆積させることによって、前記触覚イメージを形成させる工程と、中間転写部材が用いられるとき、前記堆積されたインクを前記中間転写部材から前記可撓性の包装用基材へ転写する工程と、前記インクを硬化させる工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全体として、可撓性の基材の上にイメージを形成させるための方法に関する。特定の実施態様において、本開示は、硬化性相変化インクの使用によって、包装材用途および他の用途において用いられている基材のような可撓性の基材の上にイメージを形成させることまたは印刷することに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリント装置は、従来より知られており、一般に、連続流とドロップオンデマンドの2種類に分類される。
【0003】
特許文献1には、選択された領域に光硬化性のフォトポリマーを堆積させるようなインクジェット技術を用いた特別なプリント効果を発現させる方法が開示されている。一方、特許文献2には、室温では固体で、加温すると液体になるインクを用いたインクジェットプリント方法が記載されている。
【0004】
一方、可撓性を有する包装基材への印刷は、多様になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6644763号
【特許文献2】米国特許第4490731号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ブランドのオーナー、デザイナーおよび印刷業者は、自分たちの製品に価値が増した感じを抱かせる付加的な感覚上の特徴、例えば触覚効果を有する包装印刷法を求め始めている。そのような印刷法は、包装材に触覚効果を加えることによって、類似の他の製品から直ちに見分けられ、店頭(POP)広告ツールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書の紫外線硬化性相変化ゲル化剤インクは、ポリエステル、ポリプロピレンおよびアルミホイルを含む、複数の普通に用いられている包装用基材に高い親和力を有する。紫外線硬化性相変化ゲル化剤インクのゲル化する性質によって、固定する必要なく、非多孔質の可撓性の包装用基材の上の優れたドット構造体が可能になる。本明細書の紫外線硬化性相変化ゲル化剤インクの印刷時に、選ばれたイメージまたはテキストの堆積高さは、液滴を次々に堆積させることによって、手触りで特徴物が検出されることができるまで増加させることができる。印刷後、基材は紫外線に曝露されて堅牢なイメージおよび構造物を形成する。盛り上がった特徴物によって、包装に付加的な感覚上の特徴を組み込み、店頭広告ツールを提供する容易な方法が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】普通紙の上に印刷された本インクのカラー写真である。
【図2】光沢紙の上に印刷された本インクのカラー写真である。
【図3】ポリエステル基材の上に印刷された本インクのカラー写真である。
【図4】アルミホイル基材の上に印刷された本インクのカラー写真である。
【図5】ポリプロピレン基材の上に印刷された本インクのカラー写真である。
【図6】本発明によってデジタル的に発生させたインクドットのカラー写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
触覚イメージ、または触覚イメージと通常イメージ(通常イメージとは、高さが盛り上がっていないイメージまたは触覚によって認知可能でないイメージである)との組み合わせを可撓性の包装用基材の上に形成させるための方法が記載される。この方法は、任意選択の着色剤と、放射線硬化性モノマーまたはプレポリマー、光開始剤、反応性ワックスおよびゲル化剤を含む相変化インクビヒクルとを含む紫外線硬化性相変化インク組成物を、可撓性の包装用基材の上に直接堆積させるか、またはこのインクを中間転写部材の上に堆積させ、イメージ区域の中に触覚イメージ区域または触覚イメージ区域と通常イメージとの組み合わせを形成させる工程、触覚イメージ区域または触覚イメージ区域の一部の位置の中にインクの複数の層を堆積させることによって触覚イメージを形成させる工程、中間転写部材が用いられるとき、堆積されたインクを中間転写部材から可撓性の包装用基材へ転写する工程、およびインクを硬化させる工程を含む。
【0010】
上に配置された触覚イメージ、または触覚イメージと通常イメージとの組み合わせを有する包装用基材が記載される。触覚イメージ、または触覚イメージと通常イメージとの組み合わせは、紫外線硬化性相変化インクの1つ以上の硬化した層を含む包装用基材を含む。付加的な感覚上の特徴物を有する本明細書の包装印刷法は、さまざまな用途において用いることができる。触覚効果物は、製品に価値の増した感じを抱かせるために印刷し、用いることができる。本明細書に記載される触覚効果物を包装材に付加すると、他の類似物から直ちに見分けられるようになり、店頭広告ツールを提供することができる。
【0011】
触覚イメージおよび通常イメージは、基材の上に直接印刷してもよく、または中間転写部材に印刷した後、続いて最終基材へ転写してもよい。触覚によって認知可能なインク堆積高さを達成するために、複数の転写回数が必要であってもよい。
【0012】
触覚イメージおよび通常イメージは、通常のコンピュータネットワークを介してプリンタにつながれたハードウェアまたはソフトウェアを用いて選ぶことができる。
【0013】
触覚によって認知可能な触覚イメージ区域を形成するために、複数の印刷回数を用いることができる。少なくとも31ミクロンのマーク用材料堆積高さが触覚によって認知可能であるが、通常の固体インク印刷法または電子写真法は、10ミクロンを超えないマーク用材料堆積高さしか作り出さない。これは、触覚によって認知可能でない。
【0014】
盛り上がった触覚テキストまたはイメージは、触覚イメージ区域またはその一部分の上に触覚認知可能な高さが実現するまでインクを繰り返し堆積させることによって形成させることができる。触覚認知可能な高さとは、手触りによって容易に特定される高さである。触覚イメージ区域またはその一部分は、10マイクロメートルから6ミリメートル以上、または少なくとも31マイクロメートルの盛り上がったイメージ高さを有する。一実施態様では、触覚イメージ区域またはその一部分は、30マイクロメートルから1ミリメートル、50マイクロメートルから1ミリメートル、または50マイクロメートルから100マイクロメートルの盛り上がったイメージ高さを有する。包装用材料は、繰り返し取り扱われるが、本明細書における生成されたイメージは堅牢であり、繰り返しの取り扱いに耐え、無傷のままである。紫外線硬化性相変化ゲル化剤インク材料は、さらに、普通紙および塗工紙、ならび可撓性の記録用媒体を含む広い記録用媒体自由度を提供し、このことによって必要な任意の種類の可撓性の包装用材料の上に印刷することが可能になる。本明細書の包装用基材は、金属ホイル、プラスチックフィルム、紙およびそれらのラミネート物を含む。詳しくは、本明細書の包装用基材は、アルミホイル、ポリエステルフィルムまたはポリプロピレンフィルムを含む。
【0015】
本明細書の包装用基材と組み合わせて、普通紙、罫線付きノート紙、ボンド紙、シリカ塗工紙、光沢塗工紙、特殊紙、透明部材(OHPシート材料)、織物、布地製品、プラスチック、高分子フィルム、金属および木材などの無機記録用媒体を含む任意の適当な記録用媒体または記録用シートを使用することができる。
【0016】
本明細書の紫外線硬化性相変化ゲル化剤インクは、包装用基材の中へほとんどないしまったく進入せず、主として包装用基材の表面の上に存在し、それによって、凹凸のある構造の生成を促進する。室温におけるインクのゲルの性質は、印刷された液滴のにじみまたは泳動を防ぎ、盛り上がった触覚イメージまたはテキストの容易な形成を可能にする。同じインク材料を用いて同じ基材の上に通常印刷と、盛り上がった触覚印刷との両方を生成させることができる。
【0017】
イメージ区域は、プロセス内の任意の時点で硬化させることができる。インクの多重層を触覚イメージ区域に次々に堆積させるとき、多重層の最後のものの堆積が完成したときに層を硬化させてよい。あるいは、インクの各層を次の層の堆積の前に硬化させてもよい。
【0018】
本発明のインク材料および方法は、インクジェット印刷法、サーマルインクジェット印刷法、圧電インクジェット印刷法、音響インクジェット印刷法、熱転写印刷法、グラビア印刷法、静電写真印刷法など、イメージ状パターンのインクをイメージ受け側包装用基材に直接、または中間転写部材に、堆積させることに適する任意の所望の印刷システムとともに使用してよい。
【0019】
一実施態様では、少なくともインクジェット印刷ヘッドと、インクジェット印刷ヘッドからインクが噴射される相手の印刷領域表面とを含み、インクジェット印刷ヘッドと印刷領域表面との間の高さ距離は調節可能である、米国特許出願第11/683,011号明細書に記載されているインクジェット印刷デバイスを選ぶことができる。
【0020】
本明細書の実施態様において、インクは、任意選択の着色剤と、少なくとも1つの放射線硬化性モノマーまたはプレポリマー、光開始剤、反応性ワックスおよびゲル化剤を含む相変化インクビヒクルとを含む紫外線硬化性相変化インク組成物を含む。
【0021】
本明細書に開示されるインクビヒクルは、任意の適当な硬化性モノマーまたはプレポリマーを含むことができる。例は、アクリレートおよびメタクリレートモノマーなどのラジカル硬化性モノマー化合物を含む。比較的非極性のアクリレートおよびメタクリレートモノマーの例は、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、カプロラクトンアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ならびにそれらの混合物および組み合わせを含む。多官能アクリレートおよびメタクリレートモノマーおよびオリゴマーは、反応性希釈剤として、および硬化されたイメージの架橋密度を増加させ、それによって、硬化されたイメージの強靭性を増強することができる材料として、相変化インクキャリアの中に含まれることができる。例は、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、1,2−エチレングリコールジアクリレート、1,2−エチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,12−ドデカノールジアクリレート、1,12−ドデカノールジメタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、アミン修飾ポリエーテルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールプロポキシレートトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレートを含む。キャリアの1から80重量パーセントの反応性希釈剤が加えられる。
【0022】
インクビヒクルは、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレートなどの紫外線などの放射に曝露されたとき硬化性モノマーとして挙動する化合物のように、液体の中に溶解されたとき比較的狭い温度範囲で比較的鋭い粘度の増加を受けるという点で、ゲル状挙動を示すことができる少なくとも1つの化合物を含む。
【0023】
本明細書に開示されているいくつかの化合物は、少なくとも30℃、少なくとも10℃、少なくとも5℃の温度範囲で、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10センチポワズの粘度の変化を受ける。
【0024】
本明細書に開示される化合物の実施態様は、第1の温度で半固体ゲルを形成することができる。化合物が相変化インクの中に組み込まれたとき、この温度は、インクが噴射される特定の温度より低い。半固体ゲル相は、1つ以上の固体ゲル化剤分子と液体溶媒とを含む動的平衡として存在する物理的ゲルである。半固体ゲル相は、水素結合、ファンデルワールス相互作用、芳香族非結合性相互作用、イオンまたは配位結合、ロンドン(London)分散力などの非共有結合性相互作用によって一緒に保持された分子成分の動的ネットワーク化集合体である。この集合体は、温度、機械的撹拌などの物理的な力またはpH、イオン強度または類似物などの化学的な力による刺激を受けると、巨視的レベルで液体から半固体状態への可逆的な転移を受けることができる。ゲル化剤分子を含む溶液は、温度が溶液のゲル点より高い温度または低い温度に変化すると、半固体ゲル状態と液体状態との間の熱的に可逆的な転移を示す。半固体ゲル相と液体相との間の転移のこの可逆サイクルを溶液調合物の中で多数回繰り返させることができる。
【0025】
本明細書に開示されるインクビヒクルは、イルガキュア(Irgacure)(登録商標)127、イルガキュア(登録商標)379およびイルガキュア(登録商標)819などの任意の適当な光開始剤を含むことができる。さらに別の例は、ベンゾフェノン類、ベンゾフェノン誘導体、ベンジルケトン、α−アルコキシベンジルケトン、モノマー性ヒドロキシルケトン、重合体性ヒドロキシルケトン、α−アミノケトン、アルコキシケトン、アシルホスフィンオキシド、メタロセン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、アシルホスフィン光重合開始剤を含む。具体的な例は、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−(4−モルホリニル)フェニル)−1−ブタノン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ベンジル−ジメチルケタール、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスフィンオキシドおよび他のアシルホスフィン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノンおよび1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロプパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル)−フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イルフェニル)−ブタノン、チタノセン、イソプロピルチオキサントン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、ベンジル−ジメチルケタール、アリールスルホニウム塩、アリールヨードニウム塩を含む。
【0026】
相変化インクは、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシルなど、光開始剤に水素原子を供与し、それによって、重合を開始するラジカル化学種を形成することができ、フリーラジカル重合を抑制する溶存酸素を消費し、それによって重合の速度を増加させることもできる、補助開始剤であるアミン相乗効果剤も含むことができる。
【0027】
本明細書の開始剤は、200から560ナノメートルなどの任意の所望のまたは効果的な波長において放射を吸収することができる。
【0028】
任意選択として、光開始剤は、0.5から15重量パーセント存在する。
【0029】
本明細書に開示される相変化インクビヒクルのために、任意の適当な反応性ワックスを用いることができる。実施態様によっては、反応性ワックスは、他の成分と相溶性であり、硬化性モノマーと重合して重合体を形成することになる硬化性ワックス成分を含む。ワックスを含むと、インクが噴射用温度から冷えるときにインクの粘度の増加を促進する。
【0030】
ワックスの適当な例は、硬化性の基または重合性の基で官能化されたものを含む。硬化性の基は、アクリレート、メタクリレート、アルケン、アリルエーテル、エポキシドおよびオキセタンを含んでよい。これらのワックスは、カルボン酸またはヒドロキシルなどの変換可能な官能基を備えたワックスの反応によって合成することができる。
【0031】
実施態様によっては、反応性ワックスは、重合性の基で官能化されたヒドロキシル末端ポリエチレンワックスである。ヒドロキシル末端ポリエチレンワックスの適当な例は、構造CH−(CH−CHOH、ここで鎖長nの混合物があり、平均鎖長は16から50である、を有する炭素鎖と、同様な平均鎖長の線形低分子量ポリエチレンとの混合物を含む。そのようなワックスの適当な例は、375、460、550および700g/モルにほぼ等しいMnをそれぞれ有するユニリン(UNILIN)(登録商標)350、ユニリン(登録商標)425、ユニリン(登録商標)550およびユニリン(登録商標)700を含む。2,2−ジアルキル−1−エタノール類であることを特徴とするゲルベ(Guerbet)アルコールも、16から36の炭素のゲルベアルコールなど、適当な化合物である。実施態様によっては、下記式のプリポール(PRIPOL)(登録商標)2033が選ばれる。
【0032】
【化1】

【0033】
これらのアルコールは、UV硬化性部分を備えたカルボン酸と反応して反応性エステルを形成することができる。例は、アクリル酸およびメタクリル酸を含む。具体的な硬化性モノマーは、ユニリン(UNILIN)(登録商標)350、ユニリン(登録商標)425、ユニリン(登録商標)550およびユニリン(登録商標)700のアクリレートを含む。
【0034】
硬化性の基で官能化されていてよいカルボン酸末端ポリエチレンワックスの例は、構造CH−(CH−COOH、ここで鎖長nの混合物があり、平均鎖長は16から50である、を有する炭素鎖と、同様な平均鎖長の直鎖低分子量ポリエチレンとの混合物を含む。例は、約390、475、565および720g/モルにほぼ等しいMnをそれぞれ有するユニシド(UNICID)(登録商標)350、ユニシド(登録商標)425、ユニシド(登録商標)550およびユニシド(登録商標)700を含む。他の適当なワックスは、ヘキサデカン酸またはパルミチン酸など、構造CH−(CH−COOHを有し、n=14、n=15、n=16、n=18、n=20、n=22、n=24、n=25、n=26、n=28、n=30、n=31、n=32、n=33である。2,2−ジアルキルエタン酸類を特徴とするゲルベ(Guerbet)酸も適当な化合物である。下記式のプリポール(PRIPOL)(登録商標)1009も用いてよい。
【0035】
【化2】

【0036】
これらのカルボン酸は、UV硬化性部分を備えたアルコールと反応して反応性エステルを形成することができる。例は、2−アリルオキシエタノール、
【化3】


SR495B(登録商標)、
【化4】


CD572(登録商標)(R=H、n=10)およびSR604(R=Me、n=4)を含む。
【0037】
任意選択の硬化性ワックスは、インクの1から25重量%含まれる。
【0038】
硬化性モノマーまたはプレポリマーおよび硬化性ワックスは、一緒になって、インクの50重量%を超えるか、または少なくとも80重量%を形成してよい。
【0039】
インクビヒクルのために任意の適当なゲル化剤を用いてよい。米国特許出願第11/290,202号明細書に記載されているものなどの、下記式のゲル化剤を用いてよい。
【0040】
【化5】

【0041】
は、
(i)1から12の炭素原子を有するアルキレン基(アルキレン基は、直鎖および分岐、飽和および不飽和、環状および非環状、置換および非置換アルキレン基を含む二価脂肪族基またはアルキル基と定義され、アルキレン基の中に酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子が存在してよい)、
(ii)5から14の炭素原子を有するアリーレン基(アリーレン基は、置換および非置換アリーレン基を含む二価芳香族基またはアリール基と定義され、アリーレン基の中に酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子が存在してよい)、
(iii)6から32の炭素原子を有するアリールアルキレン基(アリールアルキレン基は、置換および非置換アリールアルキレン基を含む二価アリールアルキル基と定義され、アリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってよく、アリールアルキレン基のアリール部分またはアルキル部分のどちらにも酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子が存在してよい)、または、
(iv)6から32の炭素原子を有するアルキルアリーレン基(アルキルアリーレン基は、置換および非置換アルキルアリーレン基を含む二価アルキルアリール基と定義され、アルキルアリール基のアルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってよく、アルキルアリーレン基のアリール部分またはアルキル部分のどちらにも酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子が存在してよい)であり、置換アルキレン、置換アリーレン、置換アリールアルキレンおよび置換アルキルアリーレン基上の置換基は、ハロゲン原子であってもよく、またはシアノ、ピリジン、ピリジニウム、エーテル、アルデヒド、ケトン、エステル、アミド、カルボニル、チオカルボニル、スルフィド、ニトロ、ニトロソ、アシル、アゾ、ウレタン、ウレア、それらの混合物などの基であってもよい。2つ以上の置換基が一緒になって環を形成してもよい。
【0042】
およびR′は、それぞれ他方から独立に、
(i)1から54の炭素原子を有するアルキレン基(アルキレン基は、直鎖および分岐、飽和および不飽和、環状および非環状式、置換および非置換アルキレン基を含む二価脂肪族基またはアルキル基と定義され、アルキレン基の中に酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子が存在してよい)、
(ii)5から14の炭素原子、10を超えない炭素原子を有するアリーレン基(アリーレン基は、置換および非置換アリーレン基を含む二価芳香族基またはアリール基と定義され、アリーレン基の中に酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子が存在してよい)、
(iii)6から32の炭素原子、22を超えない炭素原子を有するアリールアルキレン基(アリールアルキレン基は、置換および非置換アリールアルキレン基を含む二価アリールアルキル基と定義され、アリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってよく、アリールアルキレン基のアリール部分またはアルキル部分のどちらにも酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子が存在してよい)、または、
(iv)6から32の炭素原子を有するアルキルアリーレン基(アルキルアリーレン基は、置換および非置換アルキルアリーレン基を含む二価アルキルアリール基と定義され、アルキルアリーレン基のアルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってよく、アルキルアリーレン基のアリール部分またはアルキル部分のどちらにも酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子が存在してよい)であり、置換アルキレン、置換アリーレン、置換アリールアルキレンおよび置換アルキルアリーレン基上の置換基は、Rの場合と同じであってよい。
【0043】
およびR′は、それぞれ他方から独立に、
(a)1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンから導かれる、下記式の基、
【化6】


1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンから導かれる、下記式の基、
【化7】


2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンから導かれる、下記式の基などの光開始基、
【化8】


N,N−ジメチルエタノールアミンまたはN,N−ジメチルエチレンジアミンから導かれる、下記式の基である。
【化9】

【0044】
あるいは、
(b)RおよびR′の少なくとも一方が光開始基であるとすれば、
(i)2から60の炭素原子を有するアルキル基(直鎖および分岐、飽和および不飽和、環状および非環状、置換および非置換アルキル基を含み、アルキル基の中に酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子が存在してよい)、
(ii)フェニルなど、5から100の炭素原子を有するアリール基(置換および非置換アリール基を含み、アリール基の中に酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子が存在してよい)、
(iii)ベンジルなど、6から100の炭素原子を有するアリールアルキル基(置換および非置換アリールアルキル基を含み、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってよく、アリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のどちらにも酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子が存在してよい)、または、
(iv)トリルなど、6から100の炭素原子を有するアルキルアリール基(置換および非置換アルキルアリール基を含み、アルキルアリール基のアルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってよく、アルキルアリール基のアリール部分またはアルキル部分のどちらにも酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素などのヘテロ原子が存在してよい)であり、置換アルキル、置換アリールアルキルおよび置換アルキルアリール基上の置換基は、RならびにRおよびR′の場合と同じであってよい基、のどちらかである。
【0045】
XおよびX′は、それぞれ他方から独立に、酸素原子であるか、または式−NR−の基である。Rは、
(i)水素原子;
(ii)直鎖および分岐、飽和および不飽和、環状および非環状、置換および非置換アルキル基を含むアルキル基であって、アルキル基の中にヘテロ原子が存在してよい、1から100の炭素原子を有するアルキル基、
(iii)置換および非置換アリール基を含むアリール基であって、アリール基の中にヘテロ原子が存在してよい、5から100の炭素原子を有するアリール基、
(iv)置換および非置換アリールアルキル基を含むアリールアルキル基であって、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってよく、アリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のどちらにもヘテロ原子が存在してよい、6から100の炭素原子を有するアリールアルキル基、または、
(v)置換および非置換アルキルアリール基を含むアルキルアリール基であって、アルキルアリール基のアルキル部分は直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってよく、アルキルアリール基のアリール部分またはアルキル部分のどちらにもヘテロ原子が存在してよい、6から100の炭素原子を有するが、炭素原子の数はこれらの範囲外であってもよいアルキルアリール基であり、置換アルキル、置換アリール、置換アリールアルキルおよび置換アルキルアリール基上の置換基は、R、R、R′、R、R′の場合と同じであってよい。
【0046】
一実施態様では、RおよびR′は、それぞれ、式−C3456+a−の基であり、不飽和基および環状基を含んでいてもよい分岐アルキレン基であり、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12であり、下記式の異性体を含む。
【0047】
【化10】

【0048】
一実施態様では、Rはエチレン(−CHCH−)基である。
【0049】
一実施態様では、RおよびR′は、両方が、
【化11】


である。
【0050】
一実施態様では、この化合物は、下記式の化合物であり、
【化12】


ここで、−C3456+a−は、不飽和基および環状基を含んでいてもよい分岐アルキレン基を表し、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12であり、下記式の異性体を含む。
【0051】
【化13】

【0052】
さらに別の例は、
【化14】


または、
【化15】


を含み、ここで、−C3456+a−は、不飽和基および環状基を含んでいてもよい分岐アルキレン基を表し、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12であり、mは、2であり、下記式の異性体を含む。
【0053】
【化16】

【0054】
別の例は、下記式の異性体を含み、
【化17】


ここで、−C3456+a−は、不飽和基および環状基を含んでいてもよい分岐アルキレン基を表し、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12であり、nは、2または5であり、下記式の異性体を含む。
【0055】
【化18】

【0056】
別の例は、下記式の異性体を含み、
【化19】


ここで、−C3456+a−は、不飽和基および環状基を含んでいてもよい分岐アルキレン基を表し、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12であり、pは、2または3であり、下記式の異性体を含む。
【0057】
【化20】

【0058】
別の例は、下記式の異性体を含み、
【化21】


ここで、−C3456+a−は、不飽和基および環状基を含んでいてもよい分岐アルキレン基を表し、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12であり、qは、2または3であり、下記式の異性体を含む。
【0059】
【化22】

【0060】
別の例は、下記式の異性体を含み、
【化23】


ここで、−C3456+a−は、不飽和基および環状基を含んでいてもよい分岐アルキレン基を表し、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12であり、rは、2または3であり、下記式の異性体を含む。
【0061】
【化24】

【0062】
実施態様によっては、ゲル化剤は、
【化25】



【化26】


および
【化27】


の混合物であり、
ここで、−C3456+a−は、任意選択として、不飽和基および環状基、置換および非置換アルキレン基を含んでいてもよい分岐アルキレン基を表し、アルキレン基の中にヘテロ原子が存在してよく、aは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12である。
【0063】
本明細書のゲル化剤は、下記式の化合物を含む、米国特許出願第11/290,121号明細書中に開示されている材料を含んでよい。
【0064】
【化28】

【0065】
およびR′は、それぞれ他方から独立に、少なくとも1つのエチレン不飽和部分を有するアルキル基、少なくとも1つのエチレン不飽和部分を有するアリールアルキル基、または少なくとも1つのエチレン不飽和部分を有するアルキルアリール基であり、R、R′およびRは、それぞれ他から独立に、アルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基、またはアルキルアリーレン基であり、nは、繰り返しアミド単位の数を表す整数であり、少なくとも1である。
【0066】
本明細書に開示されるゲル化剤化合物は、任意の所望のまたは効果的な方法によって調製してよい。
【0067】
ゲル化剤は、下記式の化合物を調製するためのプロセスを記載している米国特許第7,259,275号明細書中に記載されているように調製してよい。
【0068】
【化29】

【0069】
は、少なくとも1つのエチレン不飽和部分を有するアルキル基、少なくとも1つのエチレン不飽和部分を有するアリールアルキル基、または少なくとも1つのエチレン不飽和部分を有するアルキルアリール基であり、RおよびRは、それぞれ他方から独立に、アルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、nは、繰り返しアミド単位の数を表す整数であって、少なくとも1である。前記プロセスは、(a)下記式の二塩基酸を、
【化30】


下記式のジアミンと、
【化31】


反応混合物から水を除去しながら溶媒非存在下で反応させて酸−末端化オリゴアミド中間体を形成させること、および(b)酸−末端化オリゴアミド中間体を、下記式の1価アルコールと反応させて、
【化32】


カップリング剤および触媒の存在下で、生成物を形成させることを含む。
【0070】
米国特許第7,279,587号明細書は、下記式の化合物を調製するためのプロセスを記載している。
【0071】
【化33】

【0072】
米国特許第7,271,284号明細書は、下記式の化合物を調製するためのプロセスを記載している。
【0073】
【化34】

【0074】
置換基は明細書に定義されている。
【0075】
任意選択の着色剤は、インクの重量を基準として0.5から75%存在してよい。
【0076】
染料、顔料またはそれらの組み合わせを含む任意の適当な着色剤を用いてよい。例は、ビヒクルの中に分散されるかまたは溶解されることができる任意の染料または顔料を含む。
【0077】
本明細書の放射硬化性相変化インクは、任意選択として、酸化防止剤を含んでよい。適当な酸化防止剤安定剤の例は、ノーガード(NAUGARD)(登録商標)524、ノーガード(登録商標)635、ノーガード(登録商標)A、ノーガード(登録商標)I−403およびノーガード(登録商標)959、イルガノックス(IRGANOX)(登録商標)1010およびイルガスタブ(IRGASTAB)(登録商標)UV10、ジェノラッド(GENORAD)(登録商標)16およびジェノラッド(登録商標)40を含む。任意選択の酸化防止剤は、インクキャリアの0.01から20重量パーセント存在する。
【0078】
放射硬化性相変化インクは、消泡剤、滑剤およびレベリング剤、顔料分散剤、界面活性剤、または別のモノマーまたは重合体材料などの添加剤も含んでよい。
【0079】
インクの硬化は、200から480ナノメートルの化学線へのインクイメージの曝露によって実行することができる。化学線への曝露は、0.2から30秒など、任意の所望のまたは効果的な時間であってよい。硬化とは、インク中の硬化性化合物が化学線への曝露によって架橋、分子鎖延長などの分子量の増加を受けることを意味する。
【0080】
一般に、インク組成物は、50℃より低くない、または120℃より高くない噴射用温度において、一実施態様では、30センチポワズを超えない、または2センチポワズより低くない溶融粘度を有する。
【0081】
一実施態様では、インクは、100℃以下、40℃から100℃の温度で噴射されるが、噴射用温度はこれらの範囲外であってもよい。そのような低い噴射用温度において、噴射されたインクと、インクの中の急速な相変化を実現するためにインクが噴射される相手の記録用媒体との間の温度差の通常の使用は、効果的でないことがある。従って、記録用媒体上に噴射されたインクの中の急速な粘度の増加を実現するために、ゲル化剤を用いることができる。噴射されたインク液滴は、インクが液体状態からゲル状態(または半固体状態)への顕著な粘度変化を受ける相変化転移の作用によって、インクのインク噴射用温度より低い温度に維持されている紙またはOHPシート材料などの最終記録用媒体、または転写融解(トランスフューズ:transfuse)ドラムまたはベルトなどの中間転写部材のような、受け側記録用媒体上の位置に固定することができる。
【0082】
インクがゲル状態を形成する温度は、インクの噴射用温度より5℃以上低い任意の温度など、インクの噴射用温度より低い任意の温度である。一実施態様では、ゲル状態は、少なくとも25℃、少なくとも30℃、100℃を超えない、70℃を超えない、50℃を超えない温度で形成させることができるが、温度はこれらの範囲外であってもよい。インクが液体状態にある噴射用温度からインクがゲル状態にあるゲル温度に冷却されると、インク粘度の急速かつ大きな増加が起こる。一実施態様では、粘度増加は、少なくとも102.5倍の粘度の増加である。
【0083】
インクのための適当なゲル化剤は、インクビヒクル中のモノマー/オリゴマーを急速にかつ可逆的にゲル化させ、例えば、30℃から100℃、または30℃から70℃の温度範囲の狭い相変化転移を示すことになるが、転移範囲はこれらの温度範囲外であってもよい。一実施態様では、インクのゲル状態は、例えば30℃から70℃の転写温度において、噴射用温度における粘度と比較すると少なくとも102.5センチポワズ、または10センチポワズの粘度の増加を示す。一実施態様は、噴射用温度より5℃から10℃低い温度範囲内で粘度が急速に増加し、最終的に噴射用粘度の10倍、または噴射用粘度の10倍の粘度に達するが、粘度はこれらの範囲外であってもよいインクを含むゲル化剤を目的とする。
【0084】
インクがゲル状態にあるとき、インクの粘度は、少なくとも1,000センチポワズ、少なくとも10,000センチポワズ、または少なくとも100,000センチポワズであるが、粘度はこれらの範囲外であってもよい。ゲル状態にあるときの粘度の値は、少なくとも10センチポワズ、少なくとも104.5センチポワズであり、10センチポワズを超えない、または106.5センチポワズを超えないが、ゲル状態粘度はこれらの範囲外であってもよい。好ましいゲル相粘度は、印刷プロセスによって変化してよい。多孔質の紙に直接噴射させるときにはインクにじみおよびケバ立ちの効果を最小限にするために、最も高い粘度が好ましい。プラスチックなどの多孔性の低くなった記録用媒体は、個々のインク画素のドット利得および凝塊を調節するために、低くなったインク粘度が使用されるようになってよい。ゲル粘度は、インク調合および記録用媒体温度によって調節することができる。放射硬化性インクにとってのゲル状態の別の利点は、10から10センチポワズという高くなった粘度によってインクの中の酸素拡散を減らすことができ、それが今度はフリーラジカル開始における硬化の速度を速くすることができることである。
【0085】
インクが基材上に直接印刷される印刷用途の場合、一実施態様では、インクの粘度は、放射への曝露による硬化までインクが基材の中に滲み込まないようにするため、および/または基材への接着を促進するために、基材温度において10センチポワズ以上へ増加させる。一実施態様では、インクが印刷され、そこでインク粘度が10センチポワズ以上に増加する基材の温度は、50℃以下である。
【0086】
インク組成物は、任意の所望の方法または適当な方法によって調製してよい。例えば、インク成分を一緒に混合し、続いて80℃に、100℃に加熱し、均一なインク組成物が得られるまで撹拌し、続いてインクを常温に冷却してよい。
【0087】
インクは、直接印刷式インクジェットプロセス用の装置中で、および間接(オフセット)印刷式インクジェット用途で使用することができる。本明細書に開示される別の実施態様は、本明細書に開示されるインクをインクジェット印刷装置の中に組み込むこと、インクを溶融させること、および溶融したインクの液滴を記録用媒体上にイメージ状パターンで噴射させることを含むプロセスを目的とする。一実施態様では、印刷装置は、圧電振動素子の振動によってインクの液滴をイメージ状パターンで噴射させる圧電印刷プロセスを使用する。本明細書に開示されるインクは、ホットメルト音響インクインクジェット印刷、ホットメルトサーマルインクインクジェット印刷、ホットメルト連続流または偏向インクジェット印刷および類似法など、他のホットメルト印刷用プロセスにおいて使用することもできる。本明細書に開示される相変化インクは、ホットメルトインクジェット印刷プロセス以外の印刷プロセスにおいて用いることもできる。
【0088】
本明細書のインクは、インクジェット印刷ヘッドと、インクジェット印刷ヘッドからインクが噴射される相手の印刷領域表面とを含み、インクジェット印刷ヘッドと印刷領域表面との間の高さ距離は調節可能であり、インクジェット印刷ヘッドは、本明細書に記載されている組成物を噴射するインクジェット印刷デバイスの中で使用する。
【実施例】
【0089】
実施例1:
7.5重量パーセントの米国特許第7,279,587号明細書の実施例VIIIに記載されている硬化性アミドゲル化剤、5重量パーセントのユニリン(Unilin)350(登録商標)アクリレート、5重量パーセントのジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR399LV(登録商標))、52.8重量パーセントのプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(SR9003(登録商標))、3重量パーセントのイルガキュア(IRGACURE)(登録商標)379光開始剤、1重量パーセントのイルガキュア(登録商標)819光開始剤、3.5重量パーセントのイルガキュア(登録商標)127光開始剤、2重量パーセントのダロキュア(DAROCUR)(登録商標)ITX光開始剤、および0.2重量パーセントのUV安定剤(イルガスタブ(IRGASTAB)(登録商標)UV10)を含む紫外線硬化性相変化ゲル化剤インクを調製した。すべての成分を90℃で1時間一緒に撹拌した。15重量パーセントのシアン顔料、3重量パーセントの顔料分散剤および82重量パーセントのSR9003(登録商標)を含む20重量パーセントシアン顔料分散物を90℃で撹拌しながら、上記に記載された90℃の溶液を滴下してゆっくり加えた。添加が完了した後、すべての成分を90℃で2時間一緒に撹拌した。
【0090】
75℃に保たれたプリントヘッドによって21ナノグラムの液滴をインチあたり150ドット(クロスプロセス方向)かけるインチあたり200ドット(プロセス方向)で印刷する圧電インクジェットプリンタを用いて、シアンドットをデジタル的に発生させた。図1〜5は、以下の基材の上に印刷された硬化済みのドットを示している。図1:普通紙(ゼロックス(Xerox)(登録商標)カラーエクプレッションズ(Color Xpressions)(登録商標))、図2:光沢塗工紙(マッコイ(McCoy)テキストグロス(Text Gloss)塗工紙)、図3:12ミクロンポリエステル(メリネックス(Melinex)(登録商標)813)、図4:40ミクロンアルミホイル、図5:43ミクロンポリプロピレン(オッパライト(OPPalyte)(登録商標)ASW 250)。印刷後、「D」管球を使用するユービーフュージョンライトハマー(UV Fusion Light Hammer)6ウルトラバイオレットランプシステム(Ultraviolet Lamp System)を備えたユービーフュージョン(UV Fusion)LC−6Bベンチトップコンベア(Benchtop Conveyor)からの紫外線への曝露によってドットを最低1秒間硬化させた。
【0091】
実施例2:
7.5重量パーセントの米国特許第7,279,587号明細書の実施例VIIIに記載されている硬化性アミドゲル化剤、5重量パーセントの米国特許出願公開第2007/120925号明細書に記載されているように調製したユニリン(Unilin)350(商標)アクリレートワックス、5重量パーセントのジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR399LV(登録商標))、72.8重量パーセントのプロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート(SR9003(登録商標))、3重量パーセントのイルガキュア(IRGACURE)(登録商標)379光開始剤、1重量パーセントのイルガキュア(登録商標)819光開始剤、3.5重量パーセントのイルガキュア(登録商標)127光開始剤、2重量パーセントのダロキュア(DAROCUR)(登録商標)ITX光開始剤、および0.2重量パーセントのUV安定剤(イルガスタブ(IRGASTAB)(登録商標)UV10)を含む紫外線硬化性相変化ゲル化剤インクを調製した。これらの成分のすべてを90℃で1時間一緒に撹拌した。
【0092】
基材に対して水平に配向された印刷ヘッドを有するゼロックス(Xerox)フェーザ(Phaser)(登録商標)860圧電インクジェットプリンタを用いて、図6に示した1.7ミリメートルの高さを有する自立構造体を室温のマイラ(Mylar)(登録商標)基材上に噴射させた。ジェットを3回に1回発射させ、その結果、図6に示した2つの構造体の間に5.5ミリメートルの間隔を設けた。印刷後、「D」菅球を使用するUVフュージョンライトハマー6を備えたUVフュージョンLC−6Bベンチトップコンベア(Benchtop Conveyor)からの紫外線への曝露によって、構造体を少なくとも1秒間硬化させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触覚イメージ、または触覚イメージと通常イメージとの組み合わせを可撓性の包装用基材の上に形成させるための方法であって、
任意選択の着色剤と、放射硬化性モノマーまたはプレポリマー、光開始剤、反応性ワックスおよびゲル化剤を含む相変化インクビヒクルと、を含む紫外線硬化性相変化インク組成物を可撓性の包装用基材の上に直接堆積させるか、または前記インクを中間転写部材の上に堆積させ、イメージ区域の中に触覚イメージ区域、または触覚イメージ区域と通常イメージとの組み合わせを形成させる工程と、
前記触覚イメージ区域またはその一部の中の複数の位置に、前記インクの複数の層を堆積させることによって、前記触覚イメージを形成させる工程、
中間転写部材が用いられるとき、前記堆積されたインクを前記中間転写部材から前記可撓性の包装用基材へ転写する工程と、
前記インクを硬化させる工程と、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記ゲル化剤は、式:
【化1】


の化合物であり、
は、
(i)直鎖および分岐、飽和および不飽和、環状および非環状、置換および非置換アルキレン基を含むアルキレン基であって、前記アルキレン基の中にヘテロ原子が存在してよいアルキレン基、
(ii)置換および非置換アリーレン基を含むアリーレン基であって、前記アリーレン基の中にヘテロ原子が存在してよいアリーレン基、
(iii)置換および非置換アリールアルキレン基を含むアリールアルキレン基であって、前記アリールアルキレン基の前記アルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってよく、前記アリールアルキレン基の前記アリール部分または前記アルキル部分のどちらにもヘテロ原子が存在してよいアリールアルキレン基、または、
(iv)置換および非置換アルキルアリーレン基を含むアルキルアリーレン基であって、前記アルキルアリーレン基の前記アルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってよく、前記アルキルアリーレン基の前記アリール部分または前記アルキル部分のどちらにもヘテロ原子が存在してよいアルキルアリーレン基
であり、
およびR′は、それぞれ他方から独立に、
(i)直鎖および分岐、飽和および不飽和、環状および非環状、置換および非置換アルキレン基を含むアルキレン基であって、前記アルキレン基の中にヘテロ原子が存在してよいアルキレン基、
(ii)置換および非置換アリーレン基を含むアリーレン基であって、前記アリーレン基の中にヘテロ原子が存在してよいアリーレン基、
(iii)置換および非置換アリールアルキレン基を含むアリールアルキレン基であって、前記アリールアルキレン基の前記アルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってよく、前記アリールアルキレン基の前記アリール部分または前記アルキル部分のどちらにもヘテロ原子が存在してよいアリールアルキレン基、または、
(iv)置換および非置換アルキルアリーレン基を含むアルキルアリーレン基であって、前記アルキルアリーレン基の前記アルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってよく、前記アルキルアリーレン基の前記アリール部分または前記アルキル部分のどちらにもヘテロ原子が存在してよいアルキルアリーレン基
であり、
およびR′は、それぞれ他方から独立に、
(a)光開始基、あるいは、
(b)(i)直鎖および分岐、飽和および不飽和、環状および非環状、置換および非置換アルキル基を含むアルキル基であって、前記アルキル基の中にヘテロ原子が存在してよいアルキル基、
(ii)置換および非置換アリール基を含むアリール基であって、前記アリール基の中にヘテロ原子が存在してよいアリール基、
(iii)置換および非置換アリールアルキル基を含むアリールアルキル基であって、前記アリールアルキル基の前記アルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってよく、前記アリールアルキル基の前記アリール部分または前記アルキル部分のどちらにもヘテロ原子が存在してよいアリールアルキル基、または
(iv)置換および非置換アルキルアリール基を含むアルキルアリール基であって、前記アルキルアリール基の前記アルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってよく、前記アルキルアリール基の前記アリール部分または前記アルキル部分のどちらにもヘテロ原子が存在してよいアルキルアリール基
である基であり、
XおよびX′は、それぞれ他方から独立に、酸素原子または式−NR−の基であり、
は、
(i)水素原子、
(ii)直鎖および分岐、飽和および不飽和、環状および非環状、置換および非置換アルキル基を含むアルキル基であって、前記アルキル基の中にヘテロ原子が存在してよいアルキル基、
(iii)置換および非置換アリール基を含むアリール基であって、前記アリール基の中にヘテロ原子が存在してよいアリール基、
(iv)置換および非置換アリールアルキル基を含むアリールアルキル基であって、前記アリールアルキル基の前記アルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってよく、前記アリールアルキル基の前記アリール部分または前記アルキル部分のどちらにもヘテロ原子が存在してよいアリールアルキル基、または、
(v)置換および非置換アルキルアリール基を含むアルキルアリール基であって、前記アルキルアリール基の前記アルキル部分は、直鎖または分岐、飽和または不飽和、環状または非環状であってよく、前記アルキルアリール基の前記アリール部分または前記アルキル部分のどちらにもヘテロ原子が存在してよいアルキルアリール基
である方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記ゲル化剤は、
【化2】


【化3】


および
【化4】


の混合物であり、−C3456+a−は、不飽和基および環状基、置換および非置換アルキレン基を含んでも含んでいなくてもよい分岐アルキレン基を表し、前記アルキレン基の中にヘテロ原子が存在してよく、aは、0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,または12である方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記可撓性の包装用基材は、金属ホイル、プラスチックフィルム、紙またはそれらのラミネート体を含む方法。
【請求項5】
上に配置された触覚イメージ、または触覚イメージと通常イメージとの組み合わせを有する包装用基材であって、
前記触覚イメージ、または触覚イメージと通常イメージとの組み合わせは、紫外線硬化性相変化インク組成物の1つ以上の硬化された層を含み、前記インク組成物は、堆積された状態で任意選択の着色剤と、放射硬化性モノマーまたはプレポリマー、光開始剤、反応性ワックスおよびゲル化剤を含む相変化インクビヒクルとを含み、
前記可撓性の包装用基材は、金属ホイル、プラスチックフィルム、紙またはそれらのラミネート体を含む
包装用基材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−59424(P2010−59424A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203473(P2009−203473)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】