説明

化粧板及び建具

【課題】建具を製造したときに違和感がなく、しかも、低コストで効率よく建具を製造することができる化粧板及びその化粧板を用いた建具を提供する。
【解決手段】木目方向が左上がり斜め45度の木目模様の左側領域と、木目方向が右上がり斜め45度の木目模様の右側領域とを有する開き戸の本体部を製造する際に使用される表面材21を形成するための化粧板1を示しており、この化粧板1は、中質繊維板(MDF)によって形成された厚さ2.5mmの木質基材と、この木質基材の片面に公知の接着剤によって貼着された化粧シート12とから構成されている。化粧シート12は、樹脂含浸紙(強化紙)の間にポリエチレンフィルムを挟み込んだ防湿シートによって形成されており、その表面は、木目方向が左上がり斜め45度の木目模様が印刷された左側領域12aと、木目方向が右上がり斜め45度の木目模様が印刷された右側領域12bとに区画されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、木質基材の表面に化粧シートを貼着した化粧板及びそういった化粧板を用いて形成された建具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図8に示すように、木目方向が左上がり斜め45度の木目模様の左側領域と、木目方向が右上がり斜め45度の木目模様の右側領域とを有する開き戸を製造する場合は、木質基材に木目模様の化粧シートを貼着した化粧板からなる、左側領域を形成する表面材50Aと右側領域を形成する表面材50Bとを、両者の間に目地材60を挟み込んだ状態で、フラッシュ構造の心材に貼り付けることになる。
【0003】
ところで、木目模様が印刷された化粧シートは、通常、木目方向がシートの長手方向を向いているため、木目方向が左上がり斜め45度の木目模様の表面材50Aと、木目方向が右上がり斜め45度の木目模様の表面材50Bを製造する場合は、まず、図9に示すように、化粧シート52の長手方向、即ち、木目方向と、木質基材51の長手方向とが一致するように、木質基材51の表面に化粧シート52を貼着した化粧板50を製造し、この化粧板50から、図10(a)、(b)に示すように、木目方向が左上がり斜め45度及び右上がり斜め45度になるように、それぞれの表面材50A、50Bを切り出さなければならない。
【0004】
【特許文献1】特開平6−155663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、木目方向が長手方向を向いた化粧板50から、木目方向の異なる斜め45度の木目模様を有する左右の表面材50A、50Bを切り出す場合は、同図(a)、(b)に示すように、表面材50A、50Bをそれぞれ別の化粧板50、50から切り出すようにしておくと、無駄が少なく、化粧板50から効率よく表面材50A、50Bを切り出すことができる。
【0006】
しかしながら、木質基材51に化粧シート52を貼着する際、常に、同じ状態で貼着することは難しく、木質基材51に対して化粧シート52が位置ずれする場合があるので、異なる化粧板50、50からそれぞれ切り出した表面材50A、50Bを心材に貼り付けて開き戸を製造すると、左右の表面材50A、50Bの木目方向の傾斜角度が微妙にずれて、違和感を生ずる場合がある。
【0007】
また、木目方向が異なる領域毎に、その部分に対応する表面材を化粧板から切り出さなければならないので、材料の無駄が多く、しかも、表面材の切り出しに手間と時間を要することになり、上述した開き戸のように、表面材の木目方向が異なる複数の領域を有するデザインの建具を低コストで効率よく製造することができないといった問題もある。
【0008】
そこで、この発明の課題は、建具を製造したときに違和感がなく、しかも、低コストで効率よく建具を製造することができる化粧板及びその化粧板を用いた建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項1にかかる発明は、木質基材の表面に化粧シートを貼着した化粧板において、前記化粧シートの表面は、斜めの縞模様が印刷された複数の縞模様領域に区画されており、隣接する縞模様領域の縞模様は、略同一の傾斜角度で逆方向に傾斜していることを特徴とする化粧板を提供するものである。
【0010】
また、請求項2にかかる発明は、請求項1にかかる発明の化粧板において、前記化粧シートの表面に印刷された縞模様が木目模様であることを特徴としている。
【0011】
また、上記の課題を解決するため、請求項3にかかる発明は、請求項1または2に記載の化粧板から、隣接する複数の縞模様領域を含むように切り出した表面材を用いて形成された建具を提供するものである。
【0012】
また、請求項4にかかる発明は、請求項3にかかる発明の建具において、前記表面材における前記縞模様領域の境界部分に目地材を埋設したのである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、請求項1にかかる発明の化粧板は、木質基材に貼着されている化粧シート自体が、斜めの縞模様を印刷した複数の縞模様領域に区画されており、隣接する縞模様領域の縞模様が、略同一の傾斜角度で逆方向に傾斜しているので、隣接した縞模様領域の斜めの縞模様が、相互に逆方向に傾斜しているような表面デザインを有する建具を製造する場合は、請求項3にかかる発明のように、建具を形成する表面材を、一枚の化粧板から、隣接する複数の縞模様領域を含むように切り出せばよいので、異なる化粧板から切り出した表面材を組み合わせる場合のように、隣接する縞模様領域の縞模様の傾斜角度が微妙にずれて違和感を生じることがなく、しかも、材料の無駄も最小限に抑えることができる。
【0014】
特に、請求項2にかかる発明の化粧板は、化粧シートの表面に印刷された縞模様が木目模様であるので、木目を生かした表面デザインの建具を製造する場合に適している。
【0015】
また、請求項4にかかる発明の建具では、縞模様領域の境界部分に目地材が埋設されているので、あたかも、2枚の表面材を突き合わせたかのようなイメージを与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。図1及び図2は、図3に示すように、木目方向が左上がり斜め45度の木目模様の左側領域と、木目方向が右上がり斜め45度の木目模様の右側領域とを有する開き戸2の本体部を製造する際に使用される表面材を形成するための化粧板1を示しており、この化粧板1は、図2に示すように、中質繊維板(MDF)によって形成された厚さ2.5mmの木質基材11と、この木質基材11の片面に公知の接着剤によって貼着された化粧シート12とから構成されている。なお、木質基材11は、上述した中質繊維板(MDF)以外に、パーティクルボード(PB)、合板、集成材(LVL)やこれらを組み合わせた木質板によって形成することも可能である。
【0017】
前記化粧シート12は、樹脂含浸紙(強化紙)の間にポリエチレンフィルムを挟み込んだ防湿シートによって形成されており、その表面は、図1に示すように、木目方向が左上がり斜め45度の木目模様が印刷された左側領域12aと、木目方向が右上がり斜め45度の木目模様が印刷された右側領域12bとに区画されている。
【0018】
以上のように構成された化粧板1を用いて、図3に示す開き戸2を製造する方法について、以下に説明する。まず、図1に一点鎖線で示すように、左側領域12aと右側領域12bとの境界が幅方向の中心となるように、表面材21を切り出す。続いて、図4(a)に示すように、フラッシュ構造の心材22を2枚の表面材21、21で挟み込んでプレスすることにより、2枚の表面材21、21を心材22に貼り付け、これを、開き戸2の寸法に合わせて、正寸カットする。
【0019】
続いて、同図(b)に示すように、それぞれの表面材21、21における左側領域12aと右側領域12bとの境界部分に目地溝2aを形成し、同図(c)に示すように、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)の押出成形品である目地材23を目地溝2aに装着した後、木口貼りし、取手24等の金具を取り付けると、開き戸2の本体部が出来上がる。
【0020】
以上のように、この化粧板1は、木質基材11に貼着されている化粧シート12自体が、斜めの木目模様を印刷した左側領域と右側領域とに区画されており、左側領域の木目模様と右側領域の木目模様とが、略同一の傾斜角度(45度)で逆方向に傾斜しているので、木目方向が左上がり斜め45度の木目模様の左側領域と、木目方向が右上がり斜め45度の木目模様の右側領域とを有する開き戸2の本体部を製造する場合でも、心材に貼り付ける表面材を、左側領域及び右側領域に対して個別に形成する必要がなく、隣接する左側領域12a及び右側領域12bの双方の領域を含むように表面材を切り出せばよいので、異なる化粧板から切り出した表面材を組み合わせる場合のように、隣接する領域の木目模様の傾斜角度が微妙にずれて違和感を生じることがなく、しかも、材料の無駄も最小限に抑えることができる。
【0021】
また、上述した開き戸2では、表面材21における左側領域12aと右側領域12bとの境界部分に目地溝2aを形成し、この目地溝2aに樹脂製の目地材23を装着しているので、あたかも、2枚の表面材を突き合わせたかのようなイメージを与えることができる。
【0022】
なお、上述した実施形態では、化粧シート12に印刷された木目模様の傾斜角度が45度の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、隣接する領域の木目模様の傾斜角度が同じであればよく、木目模様の傾斜角度は任意に設定することができる。
【0023】
また、上述した実施形態では、左側領域と右側領域との2つの領域に区画された場合について説明したが、これに限定されるものではなく、隣接する領域の木目模様が略同一の傾斜角度で逆方向に傾斜しているのであれば、3以上の領域に区画することも可能である。
【0024】
また、上述した実施形態では、木目方向が左上がり斜め45度の木目模様の左側領域と、木目方向が右上がり斜め45度の木目模様の右側領域とを有する開き戸2の本体部を製造する場合について説明したが、図5に示すように、木目方向が右上がり斜め45度の木目模様の左上側領域、木目方向が左上がり斜め45度の木目模様の右上側領域、木目方向が左上がり斜め45度の木目模様の左下側領域及び木目方向が右上がり斜め45度の木目模様の右下側領域の4つの領域を有する開き戸3の本体部を製造する場合も、上述した化粧板1を使用することができる。具体的には、図6(a)に二点鎖線で示すように、左側領域12aと右側領域12bとの境界が幅方向の中心となるように、化粧板1から表面材21を切り出した後、同図(b)に示すように、この表面材21を長手方向の所定位置で切断することによって、同図(c)に示すように、上側表面材21Aと下側表面材21Bとに分断し、上側表面材21Aを180度回転させることによって、同図(d)に示すように、上側表面材21Aの上下を逆にすればよい。なお、この場合は、上側表面材21Aと下側表面材21Bとの間に所定の隙間を開けた状態で、上側表面材21Aと下側表面材21Bとを心材に貼り付け、上側表面材21Aと下側表面材21Bとの間の隙間に目地材25を装着しておくことが望ましい。
【0025】
また、上述した各実施形態では、全面が表面材21、表面材21A、21Bによって覆われた開き戸2、3について説明したが、これに限定されるものではなく、図7に示す開き戸4のように、透光性を有する樹脂板やガラス板等が嵌め込まれた小窓26を設けることも可能である。
【0026】
また、上述した実施形態では、木質基材11に貼着された化粧シート12の表面に斜めの木目模様が印刷された化粧板1について説明したが、化粧シートの表面に印刷される模様は、木目模様に限定されるものではなく、斜めのストライプ柄等を含む広い意味での縞模様であればよい。
【0027】
また、上述した実施形態では、内装用の開き戸の表面材として用いられる化粧板について説明したが、これに限定されるものではなく、本発明の化粧板は、収納家具の扉等、各種建具の表面材や壁面材として使用することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明にかかる化粧板の一実施形態を示す平面図である。
【図2】同上の化粧板を示す断面図である。
【図3】同上の化粧板から切り出した表面材を用いて製造された開き戸を示す正面図である。
【図4】(a)〜(c)は同上の開き戸の製造方法を説明するための説明図である。
【図5】同上の化粧板から切り出した表面材を用いて製造された他の開き戸を示す正面図である。
【図6】(a)〜(d)は同上の開き戸の製造方法を説明するための説明図である。
【図7】同上の化粧板から切り出した表面材を用いて製造された他の開き戸を示す正面図である。
【図8】開き戸の一例を示す正面図である。
【図9】同上の開き戸の表面材を形成するための従来の化粧板を示す分解斜視図である。
【図10】(a)、(b)は同上の化粧板から同上の表面材を切り出す際の問題点を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 化粧板
2、3、4 開き戸(建具)
2a 目地溝
11 木質基材
12 化粧シート
12a 左側領域(縞模様領域)
12b 右側領域(縞模様領域)
21 表面材
22 心材
23 目地材
24 取手
25 目地材
26 小窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材の表面に化粧シートを貼着した化粧板において、
前記化粧シートの表面は、斜めの縞模様が印刷された複数の縞模様領域に区画されており、
隣接する縞模様領域の縞模様は、略同一の傾斜角度で逆方向に傾斜していることを特徴とする化粧板。
【請求項2】
前記化粧シートの表面に印刷された縞模様が木目模様である請求項1に記載の化粧板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化粧板から、隣接する複数の縞模様領域を含むように切り出した表面材を用いて形成された建具。
【請求項4】
前記表面材における前記縞模様領域の境界部分には、目地材が埋設されている請求項3に記載の建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−237703(P2007−237703A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67025(P2006−67025)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】