説明

化粧目地付き化粧板及び化粧目地加工方法。

【課題】 建具扉、家具扉、内装材に用いられる表面化粧板において、複雑な目地デザインであっても、高価な専用機械を用いなくても、また、熟練工でなくても、加工精度良く、安価に作業性よく目地の形成と目地着色を可能とし、合わせて、精度、作業性が良好で安価な目地加工方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 基材とその表面又は表裏面両面に張り付けられる表面材からなり、該表面材に化粧目地を設けてなる化粧板において、前記表面材が複数個の化粧ユニットからなり、該複数個の化粧ユニット間に、所定の断面形状と断面寸法を有するスペ−サ−を端面どうしを互いに当接させて介在させ、前記化粧ユニットを基材に固定後、スペ−サ−を取り除き、凹条部を形成し、該凹条部によって化粧目地が形成されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は開戸、引き戸、折れ戸等の建具扉の表面化粧板、収納家具、厨房家具等の扉に用いられる表面化粧板、又は、住宅の内装材に使用される表面化粧板等で、化粧板表面に目地や溝等が施されている化粧目地付き化粧板及びその加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開戸、引き戸、折れ戸等の建具表面に用いられる化粧板や、収納家具、厨房家具等の表面に用いられる化粧板や、住宅の内装材の表面に用いられる化粧板において、化粧板の表面に目地を加工するには、基材の表面に化粧シ−ト等を貼着し、該化粧シ−トの継ぎ目にル−タ−等の溝加工用の木工機械を用いて、所定形状の溝や目地を加工し、加工された溝や目地内部に塗料を塗工したり、又は、溝や目地に化粧モ−ルを嵌込み固着することが開示されている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−182146号公報(第2−5頁、第1−7図)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、加工しようとする目地や溝そのものの幅が狭く、しかも目地の幅に対して目地の長さが長いのが一般的である。従って、先ず第1に、所定の目地位置に対して目地の位置そのもののズレが生じたり、目地が蛇行、湾曲、することもあり、また、1本の目地においても、目地幅そののものが一定でなく不均一に仕上がったり、また、複数本の目地を加工する場合においても、目地幅の不揃い等が生じ易く、目地加工の精度、仕上がりに多々問題があった。
【0005】
従って、加工精度、仕上がり良く、目地加工を行うには、それなりの高価な高精度の目地加工機械と熟練工が必ず必要となり、高価なものにつくという問題点があった。
【0006】
また、加工した目地溝内部に塗工することは、専用の溝着色機を必要とし、そうでない場合は、着色剤が目地から溢れたり、均一に着色出来ない箇所が生じたり、ひどい場合は着色されない箇所が部分的に生じたりして、精度仕上がり良く目地着色することが大変困難であり、コスト的にも高価につくといった問題があった。精度、仕上がり良く、目地内部に着色等を施すには、極めて精度の高い溝着色用の専用機とそれを使いこなす熟練工を必ず必要としていた。そのための設備投資の負担も大きくなり、大きな問題となっていた。
【0007】
また、目地が直交したり、斜行したり、T字状デザインの目地溝の場合、横目地に対して縦目地が交差するように、上方又は下方へ突き抜けることも多く、高価で高精度の木工機械と熟練工無しでは、精度仕上がりの良い目地加工を施すことは、至難の業であった。従って、高精度のNCル−タ−、テノ−ナ−、グル−バ−等の高価な木工加工機械装置を必ず必要とし、そのための熟練工も必要となり、それらの設備投資の負担も大きくなり、大きな問題となっていた。
【0008】
また、基材上に接着剤を塗布してから、基材上で、複雑な目地デザインを考慮して、しかも接着剤のポットライフオ−バ−に気を付けながら、化粧ユニットを精度、仕上がり良く、仕組みながら、基材表面に張り付けることは熟練工でなければ不可能であり、結果として高価なものとなっていた。接着剤のポットライフに注意して短時間に仕組み構成を完了させ、表面材を基材表面に張り付け完了させないと、乾燥接着が原因の接着不良が生じることが多々あった。
【0009】
本発明の目的は建具扉、家具扉、内装材に用いられる表面化粧板において、複雑な目地デザインであっても、高価で高精度の専用機械を用いなくても、また、熟練工でなくても、加工精度仕上がり良く、安価にしかも作業性よく目地の形成と目地内部の着色を可能とする化粧目地付き化粧板及び化粧目地加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の請求項1に記載の化粧目地付き化粧板は、基材とその表面又は表裏面両面に張り付けられる表面材からなり、該表面材に化粧目地を設けてなる化粧板において、前記表面材が複数個の化粧ユニットと該化粧ユニット間に設けられた所定の形状と寸法を有する化粧目地からなり、前記複数個の化粧ユニットの側端面間に、所定の断面形状と断面寸法を有するスペ−サ−を、前記化粧ユニットの側端面とスペ−サ−の側端面とを互いに当接させて介在させ、前記化粧ユニット及びスペ−サ−を基材に張り付けた後、前記スペ−サ−を取り除いて凹条部を形成し、該凹条部によって化粧目地が形成されていることを特徴としている。
【0011】
このような構成を有する本発明によれば、建具扉、家具扉、内装材等に用いられる表面化粧板において、化粧ユニットとスペ−サ−の側端面どうしを互いに当接させて、スペ−サ−を化粧ユニット間に介在させた後、スペ−サ−を取り除いて凹条部を形成するので、高価で高精度の専用機械等を使用しなくても、また、熟練工がいなくても、前記スペ−サ−の働きで、複雑な形状の凹条部を形成することが可能となり、該凹条部によって、蛇行、湾曲、幅不揃い等のない精度仕上がりの良好な化粧目地を有する化粧板が、極めて簡単に作業性良くしかも安価に作製可能となる。
【0012】
本発明の請求項2の発明は、請求項1に記載の化粧目地付き化粧板において、前記スペ−サ−が合成樹脂発泡体からなり、該スペ−サ−に着色剤を付着又は吸収させた状態で、前記スペ−サ−を前記表面化粧ユニット間に、互いに側端面どうしを当接させて介在させ、前記化粧ユニットとスペ−サ−を基材に張り付けて、スペ−サ−に付着又は吸収されている前記着色剤を化粧ユニット側端面及び基材表面に接触付着させ、その後、前記スペ−サ−を取り除くことによって、前記化粧目地内が着色されることを特徴としている。
【0013】
このような構成を有する本発明によれば、合成樹脂発泡体からなるスペ−サ−に、着色剤が付着又は吸収されており、化粧ユニット間に前記着色剤付きスペ−サ−を互いの側端面当接状態で介在させ、スペ−サ−に付着又は吸収されている前記着色剤を化粧ユニット側端面及び基材表面に接触付着させ、その後、前記スペ−サ−を取り除くことによって、スペ−サ−の側端面と化粧ユニットの側端面、及び、スペ−サ−の底部と基材表面とが接触したり、摩擦によって擦れ合い、このことによって、高価で高精度の溝着色機がなくても、また、熟練工がいなくても、極めて簡単に精度良く目地内部の着色が可能となる。
【0014】
本発明の請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の化粧目地付き化粧板において、前記スペ−サ−が基材と接する基材表面上の位置に、あらかじめ所定の色調に着色された剥離手段を設けておくことを特徴としている。
【0015】
このような構成を有する本発明によれば、基材表面上に接着剤等の固定手段を塗布した後、化粧ユニット及びスペ−サ−を所定の目地デザインに従って、配置構成し、基材表面上に張り付けた後、前記スペ−サ−を取り除いて化粧目地を形成する際、スペ−サ−が、前記剥離手段の働きで、接着剤で固着されてしまわないので、接着剤が固化するまでの時間内にスペ−サ−を取り除かなければならないといった制限がなくなり、極めて簡単に作業性良くスペ−サ−を取り除くことが可能となり、従って、前記凹条部の形成が簡単となり、化粧目地形成が極めて容易になる。しかも、前記剥離手段が所定の色調に着色されているので、スペ−サ−に付着又は吸収させる着色剤はスペ−サ−の左右側端面のみでよく、スペ−サ−の底部には着色剤を付着又は吸収させておく必要がなく、着色剤の使用量の節約にもなる。
【0016】
また、前記剥離手段に設ける着色の色調と、スペ−サ−側端面に付着又は吸収させる着色剤の色調をデザインを意識して変えることも極めて簡単にできる。従って、化粧目地内の側面と底部において、異なる色調に仕上げられた化粧目地付き化粧板が極めて簡単に作製可能となる。
【0017】
本発明の請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の化粧目地付き化粧板において、前記表面材が、前記複数個の化粧ユニット及びその間に側端面当接状態で介在させる前記スペ−サ−とによって、あらかじめ所定のデザインに仕組み構成されていることを特徴としている。
【0018】
このような構成を有する本発明によれば、化粧ユニットとスペ−サ−とが、所定デザインにあらかじめ仕組み構成されているので、基材上で、デザインを考慮しつつ仕組むために生じる作業性低下が防止でき、例えば、木目柄の場合、木目柄が直交したり、斜行したりするデザイン、すなわち、化粧目地が直交したり斜行したり、場合によっては、T字状目地等の複雑な目地デザインであっても、化粧目地付き化粧板を精度良く、作業性良く、短時間で安価に作製可能となる。
【0019】
すなわち、T字状デザインや例えば木目方向が直交したり、斜行したりする複雑なデザインの場合、接着剤を塗布した基材の上で、所定デザインに仕組むことは仕組み時間がかかり、接着剤のポットライフをオ−バ−し、乾燥接着が原因の接着不良が生じてしまう恐れがあるばかりでなく、作業性に劣り、製造コスト的にも高価なものについていたが、こういった問題点解消にとって好適である。
【0020】
本発明の請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の化粧目地付き化粧板の化粧目地を加工するに際し、
1.所定の寸法及び形状の基材を用意し、
2.表面材として、所定の寸法及び形状の化粧ユニット及びスペ−サ−を必要個数だけ用意し、
3.前記基材表面に表面材固定手段を設け、
4.スペ−サ−底部位置の基材上に剥離手段をあらかじめ設けておき、
5.前記化粧ユニット間に前記スペ−サ−をそれぞれの側端面を当接させて介在させ、化粧ユニット及びスペ−サ−を基材表面の前記固定手段を利用して所定のデザインに配置し張り付け、
6.前記スペ−サ−を取り除き、凹条部を形成し、
7.前記凹条部によって所定の寸法、形状の化粧目地を形成させる。
以上の手順で加工されることを特徴としている。
【0021】
このような目地加工手順に従えば、化粧目地付き化粧板の化粧目地加工が、高価で高精度の木工機械など用いなくても、また、熟練工がいなくても、精度仕上がり良く、作業性良く、しかも安価に加工可能となる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、建具扉、家具扉、内装材等に用いられる表面化粧板において、スペ−サ−と化粧ユニットの側端面どうしを互いに当接させて、化粧ユニット間にスペ−サ−を介在させた後、スペ−サ−を取り除いて凹条部を形成するので、高価で高精度の木工機械など導入しなくても、また、熟練工がいなくても、前記スペ−サ−によって、凹条部が極めて簡単に精度仕上がり良く形成可能で、該凹条部によって精度仕上がりの良い化粧目地を有する化粧板を、簡単にしかも安価に作製することが可能となる。
【0023】
請求項2の発明によれば、合成樹脂発泡体からなるスペ−サ−に、着色剤が付着又は吸収されており、化粧ユニット間に前記着色剤付きスペ−サ−を互いに側端面を当接させた状態で介在させ、前記スペ−サ−を取り除くことによって、スペ−サ−の側端面と化粧ユニットの側端面、及び、スペ−サ−の底部と基材表面とが接触したり、摩擦によって擦れ合い、このことによって、高価で高精度の溝着色機がなくても、また、熟練工がいなくても、極めて簡単に精度良く目地内部の着色が可能となる。
【0024】
請求項3の発明によれば、前記スペ−サ−が基材と接する基材表面上の位置に、あらかじめ所定の色調に着色された剥離手段を設けておくようにしたので、基材表面上に接着剤等の固定手段を塗布した後、化粧ユニット及びスペ−サ−を所定の目地デザインに従って、配置構成し、基材表面上に張り付けた後、前記スペ−サ−を取り除いて化粧目地を形成する際、スペ−サ−が、前記剥離手段の働きで、接着剤で固着されてしまわないので、接着剤が固化するまでの時間内にスペ−サ−を取り除かなければならないといった制限がなくなり、極めて簡単に作業性良くスペ−サ−を取り除くことが可能となり、従って、前記凹条部の形成が簡単となり、化粧目地形成が極めて容易になる。しかも、前記剥離手段が所定の色調に着色されているので、スペ−サ−に付着又は吸収させる着色剤はスペ−サ−の左右側端面のみでよく、スペ−サ−の底部には着色剤を付着又は吸収させておく必要がなく、着色剤の使用量の節約にもなる。
【0025】
また、前記剥離手段に設ける着色の色調と、スペ−サ−側端面に付着又は吸収させる着色剤の色調をデザインを意識して変えることも極めて簡単にできる。従って、化粧目地内部の側面と底部において、異なる色調に仕上げられた化粧目地付き化粧板が極めて簡単に作製可能となる。
【0026】
請求項4の発明によれば、前記表面材が、前記複数個の化粧ユニット及びその間に側端面当接状態で介在させる前記スペ−サ−とによって、あらかじめ所定のデザインに仕組み構成されているようにしたので、化粧ユニットとスペ−サ−とが、所定デザインにあらかじめ仕組み構成されているので、基材上で、デザインを考慮しつつ仕組むために生じる作業性低下が防止でき、例えば、木目柄の場合、木目柄が直交したり、斜行したりするデザイン、すなわち、化粧目地が直交したり斜行したり、場合によっては、T字状目地等の複雑な目地デザインであっても、化粧目地付き化粧板を精度良く、作業性良く、短時間で安価に作製可能となる。
【0027】
すなわち、T字状デザインや例えば木目方向が直交したり、斜行したりする複雑なデザインの場合、接着剤を塗布した基材の上で、所定デザインに仕組むことは仕組み時間がかかり、接着剤のポットライフをオ−バ−し、乾燥接着が原因の接着不良が生じてしまう恐れがあるばかりでなく、作業性に劣り、製造コスト的にも高価なものについていたが、こういった問題点解消にとって好適である。
【0028】
請求項5の発明に記載の化粧目地加工手順に従えば、化粧目地付き化粧板の化粧目地加工が、高価で高精度の木工機械など用いなくても、また、熟練工がいなくても、精度仕上がり良く、作業性良く、しかも安価に加工可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の実施形態の一例を図面に従って詳細に説明する。図1は、本発明の化粧目地付き化粧板の正面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図2の要部拡大断面図、図4はあらかじめ仕組み構成された本発明の表面材を基材に張り付ける場合を示す斜視図、図5は本発明の化粧目地の断面形状の例を示し、(イ)はV型化粧目地、(ロ)は角型化粧目地、(ハ)はU型化粧目地、(ニ)は逆台形型化粧目地の例を示す。また、図6は本発明のスペ−サ−と化粧ユニットの当接関係を示す説明図であり、(イ)は当接前の状態を示し、(ロ)は当接後の状態を示す。図7は基材上に本発明の剥離手段を設けた状態を示す説明図である。図4〜図7においては、裏面側を省略して図示している。
【0030】
図1〜図7において、本発明の化粧目地付き化粧板1の一実施形態を示す。本発明の化粧目地付き化粧板1は、本例では、基材4の表裏面両面に表面材2が固定手段Fによって張り付け固定されている。もちろん、表裏面いずれか片面であっても良いものとする。前記表面材2は、複数個の化粧ユニットKの間にスペ−サ−Sを介在させて、しかも、化粧ユニットKの側端面KSとスペ−サ−Sの側端面SSを互いに当接させた状態で、当接面Gを形成し、該当接面を形成した後、スペ−サ−Sを取り除いて、凹条部Uを形成し、該凹条部Uによって、本発明の化粧目地3が形成されている。
【0031】
また、表面材2の長手方向、すなわち、スペ−サ−Sの長手方向と化粧板1の長手方向とが、本例で示すように、直交していてもよく、また、平行であっても、また、斜行していてもよいものとする。
【0032】
本願発明のスペ−サ−Sとそれを取り除くことによって形成される化粧目地3の形状は、断面視、図5に示すように、さまざまなパタ−ンがあり、スペ−サ−Sは、細長い棒状形態を有している。図5の(イ)において示すように、断面視三角形型のスペ−サ−Sを用いると、断面形状でV型の凹条部Uが形成され、V型化粧目地3が形成される。また、(ロ)に示すように、断面視矩形のスペ−サ−Sを用いると、断面形状で、角型の凹条部Uが形成され、角型化粧目地3が形成される。また、(ハ)に示すように、断面視半円形又は半楕円形のスペ−サ−Sを用いると、断面形状で、U型の凹条部Uが形成され、U型化粧目地3が形成される。また、(ニ)に示すように、断面視逆台形状のスペ−サ−Sを用いると、断面形状で、逆台形型の凹条部Uが形成され、目地表面の目地幅が目地底の目地幅よりも小さい逆台形型化粧目地3が形成される。これら以外の断面形状のスペ−サ−Sを用いても、スペ−サ−Sの断面形状に見合った断面形状の化粧目地3が形成される。
【0033】
スペ−サ−Sの材質は、例えば、アルミ、ステンレス、真鍮、亜鉛引き鋼板等の金属製からなるもの、アクリル樹脂、塩ビ樹脂、ABS樹脂、ポリカ−ボネ−ト樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂成型体からなるもの、ガラス体、窯業系材料等の無機材料からなるもの等が好適なものとして例示できる。これら以外に、スペ−サ−を比較的硬質のウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂発泡体で構成することもできる。しかし、これらの材料に限定されるものではない。
【0034】
また、本願発明の化粧ユニットKは、形状として、正方形、長方形等の矩形、三角形、平行四辺形、円形、楕円系等、又はそれらを組み合わせたものが例示できる。材質としては、木質化粧材の例としては、約2.5〜6.0mm程度の比較的厚みの薄い合板、中比重繊維板、パ−ティクルボ−ド等の表面に、オレフィン樹脂シ−ト、塩ビシ−ト、薄葉紙等の表面に木目柄、抽象柄等の印刷を施した化粧シ−トの他、ナラ、ケヤキ、杉、チ−ク、カリン、紫檀、黒檀等の銘木の突板又は単板を貼着したものが例示できる。この他、透明又は半透明で、無色又は着色されたアクリル樹脂、ABS樹脂、ポリカ−ボネ−ト樹脂等の合成樹脂製のもの、アルミ、ステンレス、亜鉛引き鋼板等の金属製のもの等が好適なものとして例示できる。もちろん、これら以外であってもよいものとする。
【0035】
基材4としては、本例では、図4に示すようなフラッシュの芯組構造を用いているが、フラッシュ構造でなく、ベタ芯による密実構造であってもよいものとする。また、フラッシュの芯組構造の場合も、本例に示す芯組構造に限定されるものではない。ただ、スペ−サ−Sの位置する箇所に基材4を構成する芯材Sが位置するようにした方が、化粧板1の仕上がり精度、強度、耐久性にとって好適である。また、基材4の材質としては、合板、平行合板、中比重繊維板、パ−ティクルボ−ド、集成材、木材無垢、等が好適なものとして例示できる。これらの木質基材以外に、熱や炎に強いケイカル板、パルプセメント板、石膏ボ−ド等非木質系の無機系基材、アルミ、ステンレス、亜鉛引き鋼板等の金属製基材等が好適なものとして例示できる。もちろん、これら以外であってもよいものとする。
【0036】
また、本発明のスペ−サ−Sを前記したように、半硬質のウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂発泡体で構成することもできる。また、これらの合成樹脂発泡体のうち、発泡倍率が5〜10倍程度で連続気泡を有する合成樹脂発泡体が好適である。このようなスペ−サ−Sの左右両側端面SS及び断面視矩形のスペ−サ−Sにおいては、スペ−サ−Sの底部にも、化粧目地3の仕上がり意匠等を考慮して、所定の色調の着色剤Cを付着又は吸収せしめ、これをスペ−サ−Sとして用いれば、スペ−サ−Sを化粧板1の上方向又は側面方向(スペ−サ−Sの長手方向)へ引き抜く際、スペ−サ−Sに付着又は吸収されている着色剤Cが化粧ユニットKの側端面KS及び基材4の表面に接触し、又はスペ−サ−Sを引き抜く際の摩擦によって、凹条部Uの内部が所定の色調に均一に着色される。このようにして、化粧目地3の左右側面(角型目地においては左右側面及び底部)が所定の色調に着色可能となる。
【0037】
また、表面材2を基材4の表面に張り付けた後、スペ−サ−Sを引き抜くまでの時間が経過し過ぎると、化粧材2の固定手段Fとしての接着剤の固化が始まり、スペ−サ−Sが引き抜きにくくなる恐れが生じる。それを解消するために、前記スペ−サ−Sが基材4と接する基材表面の位置に、あらかじめ所定の色調に着色された剥離手段Hを設けておくとよい。前記剥離手段Hとしては、例えば、クラフト紙表面にシリコン樹脂、フッソ樹脂又はそれらの混合樹脂等がコ−ティングされた剥離紙を用いればよい。もちろん、剥離紙としては、これらに限定されるものではない。
【0038】
本発明の化粧目地付き化粧板1を作製するには、先ず、所定の形状、デザイン、材質からなる化粧ユニットKを必要個数だけ用意し、それらの化粧ユニットK間にスペ−サ−Sを介在させる。この時、化粧ユニットKの側端面KSとスペ−サ−Sの側端面SSとを相見合う形状寸法にしておくことが大切である。本例で示すように、化粧ユニットKの側端面KSとスペ−サ−Sの側端面SSとが互いに平行な平担面どうしであってもよいし、また、互いに相見合う形状の曲面であってもよいし、また、平担面と曲面との組み合わせであってもよい。必要なことは、化粧ユニットKの側端面KSとスペ−サ−Sの側端面SSとが互いに隙間なく当接し合う形状であることである。このようにして、化粧ユニットKと化粧ユニットKの間に、スペ−サ−Sをそれらの側端面どうしを互いに当接させ、配設して仕組み、所定デザインの化粧材2を作製する。
【0039】
例えば、接着剤等からなる固定手段Fを基材4の表面に施してから、その上で前記仕組み作業を行ってもよいし、また、あらかじめ前記仕組み作業を行って、仕組み構成済みの表面材2を基材4の表面に固定手段Fを利用して、張り付けてもよい。
【0040】
この時、前記固定手段Fとしては、例えば、ウレタン樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ユリア樹脂系接着剤、ユリア、メラミン共縮合樹脂系接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤等の、木工用の接着剤が好適なものとして例示できる。
【0041】
このようにして、基材4上に表面材2の張り付けが完了すれば、接着剤が固化するまでに、前記スペ−サ−Sを化粧板1の上方又は側面方向(スペ−サ−Sの長手方向)へ引き抜いて除去し、凹条部Uを形成する。また、図5の(ニ)に示すような断面逆台形型の化粧目地3を形成する場合は、前記したように、スペ−サ−Sは上方へは引き抜けないので、スペ−サ−Sをその長手方向へ引き抜くことで凹条部Uの形成が可能となる。
【0042】
このように、図5の(ニ)に示すように、断面逆台形型形状の化粧目地3の場合、断面で見て、表面開口部の目地幅寸法よりも、目地内部の目地幅寸法の方が大きいので、木工機械で精度仕上がりよく、目地を加工することは、至難の業である。しかし、本発明のスペ−サ−Sを利用すれば、極めて簡単に、しかも精度仕上がり良く化粧目地3の形成が可能となる。このように、化粧目地3の断面形状として、従来からある木工切削機械を用いて表面材2の上に目地溝加工が作業性良く行うことが困難な断面形状の化粧目地3を形成する必要がある場合、本願発明のスペ−サ−方式が、作業性、仕上がり精度、品質、コスト等を考えると、極めて好適な方法であるといえる。
【0043】
また、前記したように、図4に示すように、化粧ユニットKを、あらかじめ、所定の配置、デザインに仕組み構成しておいて、表面材2を作製し、仕組み構成済みの表面材2を基材4の表面に固定手段Fを利用して張り付けるようにすれば、複雑な化粧目地デザインであっても、精度、作業性良く、安価に化粧目地3の形成が可能となる。
【0044】
すなわち、化粧ユニットKとスペ−サ−Sとが、所定デザインで、あらかじめ仕組み構成されていると、接着剤を塗布した基材表面上で、デザインを考慮しつつ仕組むために生じる作業性の低下が有効に防止でき、接着剤のポットライフをオ−バ−する危険もなく、短時間で、安価に化粧目地3の作製が可能となる。また、例えば、T字状デザインの目地や木目方向が直交したり、斜行したりする、複雑な目地デザインであっても、接着剤を塗布した基材の上で、所定デザインに仕組むための仕組み時間が、短縮でき、接着剤のポットライフをオ−バ−する危険がなく、乾燥接着が原因の接着不良が生じてしまう恐れが解消するばかりでなく、作業性に優れた化粧目地付き化粧板1を精度仕上がり良く、作業性良く、製造コスト的にも安価に作製可能となる。
【0045】
前記化粧ユニットKをあらかじめ、所定の配置、デザインに仕組み構成する方法としては、一例として、化粧ユニットKを所定のデザインに配置し、その間にスペ−サ−Sを介在させ、互いにその側端面KSとSSどうしを隙間なく当接させ、当接面Gを形成し、所定のデザインに仕組み構成された表面材2を作製し、その表裏両面、又は、表面若しくは裏面のいずれか片面に、仕組みテ−プTを貼着し、仮固定する。仕組みテ−プTとして、例えば、クラフト紙の裏面に、アクリル樹脂系粘着材(商品名:DF370、日東電工株式会社製)を塗布して作製されたものが、作業性、接着性、品質上、好適なものとして例示できる。
【0046】
しかしながら、表面材2の仕組み構成方法は、上記の材料、方法に限定されるものではない。
【0047】
また、本願発明の化粧目地付き化粧板1の化粧目地3を加工する手順は下記のとおりである。すなわち、
1.所定の寸法及び形状の基材4を用意し、
2.表面材2として、所定の寸法及び形状の化粧ユニットK及びスペ−サ−Sを必要個数だけ用意し、
3.前記基材4の表面に表面材固定手段Fを設け、
4.スペ−サ−Sの底部位置の基材4上に剥離手段Hをあらかじめ設けておき、
5.前記化粧ユニットK間に前記スペ−サ−Sをそれぞれの側端面KSとSSを当接させて介在させ、化粧ユニットK及びスペ−サ−Sを基材4表面の前記固定手段Fを利用して所定のデザインに配置し張り付け、
6.前記スペ−サ−Sを取り除き、凹条部Uを形成し、
7.前記凹条部Uによって所定の寸法、形状の化粧目地3を形成させる。
以上の手順で加工される。このような目地加工手順に従えば、化粧目地付き化粧板1が、高価で高精度の木工機械など用いなくても、また、熟練工がいなくても、精度仕上がり良く、作業性良く、しかも安価に加工可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の化粧目地付き化粧板の正面図。
【図2】図1におけるA−A線断面図。
【図3】図2の要部拡大断面図。
【図4】あらかじめ仕組み構成した表面材の基材上への張り付け状態を示す斜視図。
【図5】本発明の化粧目地の断面形状。
【図6】本発明のスペ−サ−と化粧ユニットの当接関係を示す説明図。(イ)は当接前の状態を示し、(ロ)は当接後の状態を示す。
【図7】基材上に本発明の剥離手段を設けた状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0049】
1 化粧板
2 表面材
3 化粧目地
4 基材
D 芯材
S スペ−サ−
SS 側端面
U 凹条部
K 化粧ユニット
KS 側端面
G 当接面
F 固定手段
T 仕組みテ−プ
H 剥離手段
C 着色剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とその表面又は表裏面両面に張り付けられる表面材からなり、該表面材に化粧目地を設けてなる化粧板において、前記表面材が複数個の化粧ユニットと該化粧ユニット間に設けられた所定の形状と寸法を有する化粧目地からなり、前記複数個の化粧ユニットの側端面間に、所定の断面形状と断面寸法を有するスペ−サ−を、前記化粧ユニットの側端面とスペ−サ−の側端面とを互いに当接させて介在させ、前記化粧ユニット及びスペ−サ−を基材に張り付けた後、前記スペ−サ−を取り除いて凹条部を形成し、該凹条部によって化粧目地が形成されていることを特徴とする化粧目地付き化粧板。
【請求項2】
前記スペ−サ−が合成樹脂発泡体からなり、前記スペ−サ−に着色剤を付着又は吸収させた状態で、前記スペ−サ−を前記化粧ユニット間に、互いに側端面どうしを当接させて介在させ、前記化粧ユニットとスペ−サ−を基材に張り付けて、スペ−サ−に付着又は吸収されている前記着色剤を化粧ユニット側端面及び基材表面に接触付着させ、その後、前記スペ−サ−を取り除くことによって、前記化粧目地内が着色されていることを特徴とする請求項1に記載の化粧目地付き化粧板。
【請求項3】
前記スペ−サ−が基材と接する基材表面上の位置に、あらかじめ所定の色調に着色された剥離手段を設けておくことを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧目地付き化粧板。
【請求項4】
前記表面材が、前記複数個の化粧ユニット及びその間に側端面当接状態で介在している前記スペ−サ−とによって、あらかじめ所定のデザインに仕組み構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の化粧目地付き化粧板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の化粧目地付き化粧板の化粧目地を加工するに際し、
1.所定の寸法及び形状の基材を用意し、
2.表面材として、所定の寸法及び形状の化粧ユニット及びスペ−サ−を必要個数だけ用意し、
3.前記基材表面に表面材固定手段を設け、
4.スペ−サ−底部位置の基材上に剥離手段をあらかじめ設けておき、
5.前記化粧ユニット間に前記スペ−サ−をそれぞれの側端面を当接させて介在させ、化粧ユニット及びスペ−サ−を基材表面の前記固定手段を利用して所定のデザインに配置し張り付け、
6.前記スペ−サ−を取り除き、凹条部を形成し、
7.前記凹条部によって所定の寸法、形状の化粧目地を形成させる。
以上の手順で加工することを特徴とする化粧目地付き化粧板の化粧目地の加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−9494(P2007−9494A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190517(P2005−190517)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(398051497)株式会社パル (65)
【Fターム(参考)】