説明

医療用画像処理装置、及び電子内視鏡システム

【課題】ファイルが正常にクローズしなかった場合の撮影動画の喪失を抑えるのに好適な医療用画像処理装置を提供すること。
【解決手段】医療用画像処理装置を、動画像を所定のデジタル符号化方式で圧縮して圧縮動画データを生成する圧縮データ生成手段と、生成された圧縮動画データを所定の条件が満たされるごとに自動的にファイル化して所定の記録媒体に逐次保存するファイル保存手段と、から構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画像を所定のデジタル符号化方式で圧縮して記録媒体等に保存する医療用画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の体腔内を観察するためのシステムとして、電子内視鏡システムが一般に知られ、実用に供されている。この種の電子内視鏡システムには、電子スコープの先端に搭載された撮像素子で撮像された体腔内の画像をモニタ表示可能に処理する画像処理装置が備えられている。
【0003】
画像処理装置を備えた電子内視鏡システムの具体的構成例は、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の画像処理装置は、術後に随時かつ任意の場所で撮影画像(動画又は静止画)を確認できるように、撮影画像を所定のデジタル符号化方式で圧縮する。画像処理装置は、PC等の電子内視鏡システム以外の情報処理端末で撮影画像を再生可能とするため、ファイルシステムに適合した拡張子を圧縮動画データに付けてファイル化してメモリカード等の記録媒体に保存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4531416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1において、撮影画像の圧縮化又はファイル化の途中で記録媒体が画像処理装置から外れたり画像処理装置の電源が落ちたりした場合、ファイルが正常にクローズしない虞がある。特に、撮影画像が動画である場合は、それまでに撮影した、患者を診断するのに重要な資料となり得る体腔内の動的な情報が実質的に失われるため望ましくない。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ファイルが正常にクローズしなかった場合の撮影動画の喪失を抑えるのに好適な医療用画像処理装置、及び電子内視鏡システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る医療用画像処理装置は、動画像を所定のデジタル符号化方式で圧縮して圧縮動画データを生成する圧縮データ生成手段と、生成された圧縮動画データを所定の条件が満たされるごとに自動的にファイル化して所定の記録媒体に逐次保存するファイル保存手段とを有することを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、本来単一の圧縮動画ファイルが所定の条件を満たす単位の圧縮動画ファイルに自動的に区切られて逐次保存される。そのため、例えば撮影画像の圧縮化又はファイル化の途中でファイルが正常にクローズしない不具合が生じた場合であっても、ファイル化された保存済みの圧縮動画ファイルは利用可能であるため、撮影動画の喪失が有効に抑えられる。
【0009】
所定の条件としては、一定時間が経過したこと、又は圧縮動画データが一定データ量に達したこと、などが想定される。
【0010】
ファイル化後の圧縮動画ファイルの保存先である記録媒体は、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリやメモリカード、外付けHDD(Hard Disk Drive)等の外部ストレージである。
【0011】
本発明に係る医療用画像処理装置は、圧縮動画ファイルを記録媒体に保存する際に該記録媒体の残容量をチェックする容量チェック手段と、残容量が不足して圧縮動画ファイルを保存できない場合にその旨を通知する通知手段とを有する構成としてもよい。
【0012】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る電子内視鏡システムは、上記医療用画像処理装置と、動画像を撮像して医療用画像処理装置に出力する電子スコープとを有し、圧縮データ生成手段による動画像の圧縮、及びファイル保存手段による圧縮動画ファイルの保存の開始又は終了を指示するユーザインタフェースを電子スコープの手元操作部又は医療用画像処理装置の操作部の少なくとも一方に有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ファイルが正常にクローズしなかった場合の撮影動画の喪失を抑えるのに好適な医療用画像処理装置、及び電子内視鏡システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の電子内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態の電子スコープに設けられた録画ボタンを押したときに実行される録画処理のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の電子内視鏡システムについて説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の電子内視鏡システム1の構成を示すブロック図である。図1に示されるように、電子内視鏡システム1は、電子スコープ100、プロセッサ200、モニタ300を有している。電子スコープ100の基端は、プロセッサ200と接続されている。プロセッサ200は、電子スコープ100が出力する撮像信号を処理して画像を生成する画像処理装置と、自然光の届かない体腔内を電子スコープ100を介して照明する光源装置とを一体に備えた装置である。別の実施形態では、画像処理装置と光源装置とを別体で構成してもよい。また、画像処理装置(及び光源装置)は、本実施形態では医療用の電子内視鏡システムを構成するが、別の実施形態では超音波画像診断装置やX線透視診断装置など、別の形態の医療機器に組み込まれた構成としてもよい。
【0017】
図1に示されるように、プロセッサ200は、システムコントローラ202、タイミングコントローラ204を有している。システムコントローラ202は、電子内視鏡システム1を構成する各要素を制御する。タイミングコントローラ204は、信号の処理タイミングを調整するクロックパルスを電子内視鏡システム1内の各種回路に出力する。
【0018】
ランプ208は、ランプ電源イグナイタ206による始動後、白色光を放射する。ランプ208には、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプ等の高輝度ランプが適している。ランプ208から放射された照明光は、集光レンズ210によって集光されつつ絞り212を介して適正な光量に制限されて、LCB(Light Carrying Bundle)102の入射端に入射する。
【0019】
絞り212には、図示省略されたアームやギヤ等の伝達機構を介してモータ214が機械的に連結している。モータ214は例えばDCモータであり、ドライバ216のドライブ制御下で駆動する。絞り212は、モニタ300に表示される映像を適正な明るさにするため、モータ214によって動作して開度が変化して、ランプ208から放射された照明光の光量を開度に応じて制限する。適正とされる映像の明るさの基準は、術者によるフロントパネル218の輝度調節操作に応じて設定変更される。なお、ドライバ216を制御して輝度調整を行う調光回路は周知の回路であり、本明細書においては省略することとする。
【0020】
フロントパネル218の構成には種々の形態が想定される。フロントパネル218の具体的構成例には、プロセッサ200のフロント面に実装された機能ごとのハードウェアキーや、タッチパネル式GUI(Graphical User Interface)、ハードウェアキーとGUIとの組合せ等が想定される。
【0021】
LCB102の入射端に入射した照明光は、LCB102内を全反射を繰り返すことによって伝播する。LCB102内を伝播した照明光は、電子スコープ100の先端に配されたLCB102の射出端から射出する。LCB102の射出端から射出した照明光は、配光レンズ104を介して被写体を照明する。被写体からの反射光は、対物レンズ106を介して固体撮像素子108の受光面上の各画素で光学像を結ぶ。
【0022】
固体撮像素子108は、例えばベイヤ型画素配置を有する単板式カラーCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサであり、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して、R、G、Bの各色に応じた撮像信号に変換する。変換された撮像信号は、プリアンプ110による信号増幅後、ドライバ信号処理回路112を介して信号処理回路220に入力する。別の実施形態では、固体撮像素子108は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサであってもよい。
【0023】
タイミングコントローラ204は、システムコントローラ202によるタイミング制御に従って、ドライバ信号処理回路112にクロックパルスを供給する。ドライバ信号処理回路112は、タイミングコントローラ204から供給さるクロックパルスに従って、固体撮像素子108をプロセッサ200側で処理される映像のフレームレートに同期したタイミングで駆動制御する。
【0024】
信号処理回路220に入力した撮像信号は、クランプ、ニー、γ補正、補間処理、AGC(Auto Gain Control)、AD変換等の処理後、各色信号別にフレーム単位でR、G、Bの各色用のフレームメモリ(不図示)にバッファリングされる。バッファリングされた各色信号は、タイミングコントローラ204によって制御されたタイミングでフレームメモリから掃き出されて、NTSC(National Television System Committee)やPAL(Phase Alternating Line)等の所定の規格に準拠した映像信号に変換される。変換された映像信号がモニタ300に順次入力することにより、被写体の画像がモニタ300の表示画面上に表示される。
【0025】
電子スコープ100の手元操作部(不図示)には録画ボタン114が設けられている。なお図1中、図面を簡明化するため、録画ボタン114と他のブロックとの結線は省略している。図2は、録画ボタン114を押したときに実行される録画処理のフローチャートを示す。説明の便宜上、本明細書中の説明並びに図面において、処理ステップは「S」と省略して記す。
【0026】
S1の処理では、録画ボタン114が押されると、圧縮回路222が撮影動画の圧縮を開始する。具体的には、圧縮回路222は、録画ボタン114が押された直後に生成されるフレーム画像をフレームメモリから順次取り込み、所定のデジタル符号化方式で圧縮する。これにより、圧縮動画データが生成される。圧縮方式には、例えばMPEG(Moving Picture Experts Group)、H.264等が挙げられる。
【0027】
S2の処理では、録画ボタン114がもう一度押されたか否かを判定する。ここで、録画ボタン114は、電子スコープ100の手元操作部の限られたボタン配置スペースを効率的に利用するため、一つのボタンで録画の開始と終了の操作入力を受け付けるように構成されている。動画圧縮を行っていないときの録画ボタン114の操作は録画の開始操作であり、動画圧縮中の録画ボタン114の操作は録画の終了操作である。
【0028】
録画の終了操作が行われると(S2:YES)、S3の処理では、PC等の電子内視鏡システム1以外の情報処理端末で撮影動画を再生可能とするため、圧縮化されたそれまでの圧縮動画データに所定のファイルシステム(例えばFAT(File Allocation Tables)32)に適合した拡張子を付けてファイル化する。
【0029】
プロセッサ200は、USBポート224を有している。USBポート224には、USBメモリ400が差し込まれている。S4の処理では、所定のファイルフォーマットに変換された圧縮動画ファイルが圧縮回路222からUSBポート224に転送される。S5の処理では、転送された圧縮動画ファイルがUSBメモリ400に書き込まれる。S6の処理では、録画の終了操作が行われているため(S6:YES)、本フローチャートの処理が終了する。
【0030】
プロセッサ200は、圧縮動画ファイルの書込時にUSBメモリ400の残容量をチェックして、当該圧縮動画ファイルを容量不足で保存できない場合にモニタ300又はフロントパネル218を用いてその旨を通知する。
【0031】
S2の処理において録画の終了操作が行われていなければ(S2:NO)、録画の開始操作が行われてから、又は前回圧縮動画データをファイル化してから(より正確には、前回のファイル化対象の動画以降の動画の圧縮を開始してから)一定時間が経過しているかが判定される(S7)。一定時間が経過していない場合(S7:NO)、処理がS1に戻る。一定時間が経過している場合は(S7:YES)、S3〜S5の処理が実行される。S6の処理では、録画の終了操作が行われていないため(S6:NO)、処理がS1に戻る。
【0032】
すなわち、本実施形態によれば、図2に示される録画処理を実行開始してから録画の終了操作が行われない限り、圧縮動画データが一定時間ごとに自動的にファイル化されてUSBメモリ400に書き込まれる。例えば一定時間を5分間として体腔内を1時間録画し続けた場合、USBメモリ400には5分間の圧縮動画ファイルが合計で12個保存される。本来単一の圧縮動画ファイルを複数の短い時間の圧縮動画ファイルに区切って逐次保存することにより、例えば撮影画像の圧縮化又はファイル化の途中でUSBメモリ400がUSBポート224から脱落したりプロセッサ200の電源が落ちたりする等の不測の事態が生じたとしても、既にファイル化されて書き込まれた圧縮動画ファイルは利用可能であるため、撮影動画の喪失が有効に抑えられる。
【0033】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば動画を圧縮して保存するための録画ボタンは、電子スコープ100の手元操作部だけでなくフロントパネル218に設けられてもよい。また、録画ボタン114は必ずしもボタンでなくてもよく、例えば、スイッチ、タッチパネル等の入力指示が可能なユーザインタフェースであればよい。
【0034】
プロセッサ200は、USBメモリ400に保存されている圧縮動画ファイルをモニタ300で再生するため、圧縮動画ファイルを伸張して信号処理回路220に出力する伸張回路を有した構成としてもよい。
【0035】
圧縮動画ファイルの保存先である記録媒体は、USBメモリ400に限らず、メモリカードや外付けHDD等の別の形態の外部ストレージであってもよい。または、プロセッサ200に搭載された内蔵メモリ(不図示)を圧縮動画ファイルの保存先としてもよい。
【0036】
圧縮動画ファイルは、画像の内容(各フレーム間の観察対象の明暗差、彩度差、輝度差等)に依存する圧縮率の変化によりファイルサイズが増減する。ファイルサイズが大きいほどUSBメモリ400や外部ストレージへの圧縮動画ファイルの転送に時間がかかるため、撮像処理や圧縮処理に演算処理能力を十分に割り当てられない又は圧縮動画ファイルの転送速度が低下するなどの不具合が懸念される。別の実施形態においては、これらの不具合の発生を避けるため、図2のS7の「録画の開始操作が行われてから、又は前回圧縮動画データをファイル化してから(より正確には、前回のファイル化対象の動画以降の動画の圧縮を開始してから)一定時間が経過しているか否か」の判断を「録画の開始操作後に生成された圧縮動画データ量、又は前回のファイル化後に生成された圧縮動画データ量(より正確には、前回のファイル化対象の動画以降の動画を圧縮して生成した圧縮動画データ量)が一定のデータ量に達しているか否か」の判断に置き換えて録画処理を実行する構成としてもよい。別の実施形態によれば、圧縮動画ファイルのファイルサイズが画像の内容に拘わらず一定になるため、撮像処理、圧縮処理、転送処理の各処理の遅延を抑えるための設計が容易になる。
【符号の説明】
【0037】
1 電子内視鏡システム
100 電子スコープ
114 録画ボタン
200 プロセッサ
220 信号処理回路
222 圧縮回路
224 USBポート
300 モニタ
400 USBメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画像を所定のデジタル符号化方式で圧縮して圧縮動画データを生成する圧縮データ生成手段と、
前記生成された圧縮動画データを所定の条件が満たされるごとに自動的にファイル化して所定の記録媒体に逐次保存するファイル保存手段と、
を有することを特徴とする医療用画像処理装置。
【請求項2】
前記所定の条件は、一定時間が経過したこと、又は前記圧縮動画データが一定データ量に達したこと、であることを特徴とする、請求項1に記載の医療用画像処理装置。
【請求項3】
前記記録媒体は、外部ストレージであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の医療用画像処理装置。
【請求項4】
前記ファイル化後の圧縮動画ファイルを前記記録媒体に保存する際に該記録媒体の残容量をチェックする容量チェック手段と、
前記残容量が不足して前記圧縮動画ファイルを保存できない場合にその旨を通知する通知手段と、
を有することを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の医療用画像処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の医療用画像処理装置と、
前記動画像を撮像して前記医療用画像処理装置に出力する電子スコープと、
を有し、
前記圧縮データ生成手段による前記動画像の圧縮、及び前記ファイル保存手段による前記ファイル化後の圧縮動画ファイルの保存の開始又は終了を指示するユーザインタフェースを前記電子スコープの手元操作部又は前記医療用画像処理装置の操作部の少なくとも一方に有することを特徴とする電子内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−161541(P2012−161541A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25627(P2011−25627)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】