説明

医療用粘着剤組成物

【課題】皮膚に対する粘着性が良好で、剥離時の痛みや皮膚刺激性が小さく、再貼付性が良く、要求される透湿性等の諸性能を満たす、アクリル系の医療用粘着剤組成物の提供。
【解決手段】(A)炭素原子数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜90質量%、(B)(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル2〜49質量%、(C)(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール1〜20質量%、(D)カルボキシル基もしくはアミド基含有接着性付与モノマー1〜15質量%、(E)官能基を有するモノマー0〜10質量%、及び(F)その他のビニルモノマー0〜20質量%を重合して得られる共重合体と、(G)前記共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部のイソシアネート系架橋剤を含有することを特徴とする医療用粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系感圧接着剤組成物に関し、所謂皮膚固定用途に適している医療用粘着組成物に関する。さらに詳しくは、所定時間の貼着が可能な高い貼付性を有し、使用後の剥離時の角質剥離等が少なく物理的刺激が低減され、強粘着性で繰返し貼付性(再貼付性)が良く、並びに、要求される透湿性及び粘着剤組成物による低皮膚刺激性等の諸性能を満たす、皮膚固定用途に適しているアクリル系の医療用粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の皮膚貼付用粘着テープが開発されているが、皮膚貼付用粘着テープに塗工される粘着剤組成物としては、下記のような特性を有する粘着剤組成物であることが望まれている。
(1)皮膚貼付用粘着テープは、所定時間、皮膚面から剥離することなく貼付状態が保持される必要があるため、粘着剤組成物には、皮膚面に対して比較的強力に接着し得る皮膚粘着性が求められる。
(2)一方、皮膚貼付用粘着テープは、皮膚への接着力が強すぎると、使用後の剥離時に物理的刺激により痛みを感じたり、体表面の毛がむしり取られたり、角質剥離を生じたり、あるいは皮膚面に粘着剤が残留したりする。従って、粘着剤組成物は、剥離時の物理的刺激が弱く、角質剥離や粘着剤残留が生じないことが求められる。
(3)皮膚貼付用粘着テープは、皮膚に対する刺激性が強いと、皮膚にかぶれを生じさせる。したがって、粘着剤組成物には、皮膚刺激性が小さいことが求められる。
(4)皮膚貼付用粘着テープを皮膚面に貼付すると、発汗により貼付面に汗が滞留して、粘着テープが剥れたり、あるいはかぶれを生じる。したがって、粘着剤組成物には、高い透湿性を有することが望まれている。
【0003】
而して斯かる課題を解決するための幾つかの報告がこれまでになされている。
特許文献1には、(A)炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜97重量%、(B)(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル2〜49重量%、(C)水酸基含有モノマー1〜15重量%、及び(D)共重合可能なその他のビニルモノマー0〜30重量%を共重合してなるアクリル系共重合体と、架橋剤とを含有することを特徴とする医療用粘着剤組成物が開示されている。この医療用粘着剤組成物により、所定時間の貼付性、使用後の剥離時の物理的刺激の低減、粘着剤組成物の皮膚刺激性の低減及び高い透湿性という目的が達成されると報告されている。
【0004】
特許文献2には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル40〜80重量%、アルコキシ基含有エチレン性不飽和単量体10〜60重量%、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体1〜10重量%を含む単量体混合物から得られるアクリル系共重合体100重量部と、室温で液状またはペースト状のカルボン酸エステル20〜120重量部を含有する粘着剤組成物であり、アクリル系共重合体の30〜80重量%が不溶化していることを特徴とする皮膚貼付用粘着剤組成物が開示されている。この皮膚貼付用粘着剤組成物により、発汗に対しても満足できる接着性を維持するという目的が達成されると報告されている。
【0005】
ところが、皮膚貼付用粘着テープは、包帯止め、ガーゼ止め、挿入管、挿入針、カテーテル等を皮膚に固定するために使用される場合がある。これらの固定においては、一度テープを皮膚表面に貼り付けた後、位置等の調整の為に一旦剥離し、再度皮膚等に貼り付けるということがよく行われている。このとき、接着性を維持するために、強粘着の粘着剤が好んで使用されるが、粘着力を強くすると剥離時に粘着剤が皮膚に残留することがあ
り、これを改善するために凝集力を高くすると、剥離時に角質剥離が生じて粘着剤に角質細胞が貼り付き、皮膚等に対する再貼付性が著しく低下するという問題があった。
【0006】
然るに、特許文献1及び特許文献2に記載の粘着剤組成物は、再貼付性が求められない皮膚用粘着テープに使用した場合は満足しうる結果が得られると考えられるものの、一方、再貼付性が求められる用途に使用した場合は、必ずしも上記の要求性能を満足し且つ上述の問題が十分に解決できるものとはいえなかった。
【特許文献1】特開平11−158621号公報
【特許文献2】特開2002−65841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、このような問題に鑑み、剥離時に角質剥離が少なく皮膚の痛みや皮膚刺激が少なく、粘着剤の残留もなく、高粘着力で再貼付性に優れた特性を有し、更に、要求される透湿性を有し発汗の滞留が起こりにくい、サージカルテープ等の再貼付性が要求される皮膚固定用途に適したアクリル系低皮膚刺激性粘着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記粘着剤組成物について鋭意研究した結果、アクリル系粘着剤組成物において、コモノマーとして(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールエステルを用いることで、角質剥離が少なく粘着剤の残留がなく、そのため再貼付性が良く、強粘着で固定用途に非常に有用である組成を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明によれば、(A)(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜90質量%、(B)(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル2〜49質量%、(C)(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール1〜20質量%、(D)カルボキシル基もしくはアミド基含有接着性付与モノマー1〜15質量%、(E)上記(C)(D)以外の水酸基含有モノマーまたはイソシアネートに対する官能基を有するモノマー0〜10質量%及び(F)共重合可能なその他のビニルモノマー0〜20質量%を含有するモノマー混合物を重合して得られる共重合体と、(G)前記共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部のイソシアネート系架橋剤を含有することを特徴とする医療用粘着剤組成物が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、皮膚に対する粘着性が良好であると共に、剥離時の角質剥離が少なく痛みや皮膚刺激性が小さく、粘着剤の残留もなく、そのため再貼付性が良く、更に要求される透湿性等の諸性能を満たすアクリル系の医療用粘着剤組成物が提供される。本発明の医療用粘着剤組成物は、再貼付性が要求される皮膚固定用テープの粘着剤として用いるのに特に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る医療用粘着剤組成物は、上記(A)〜(G)の各成分から構成されるが、より詳しくは(A)〜(D)及び(G)成分を必須成分とするアクリル系粘着剤組成物である。
(A)の成分として本発明で使用するアクリル系共重合体を形成するモノマーとしては、炭素原子数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分として使用する。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えば、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニ
ル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸デシル及びメタクリル酸ドデシルなどを挙げることができる。好ましい成分(A)としては、アクリル酸2−エチルヘキシル及びアクリル酸イソノニルなどが挙げられ、また、アクリル酸イソノニルが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0012】
(A)の成分は粘着剤としての機能を発揮する主成分であり、粘着剤である共重合体を構成するモノマー混合物(成分(A)〜(F))中、50〜90質量%の割合で配合される。配合量が50質量%未満では初期粘着力に富む粘着剤が得られなくなり、一方、90質量%を超えると、充分な凝集力がある粘着剤が得られなくなる。好ましい成分(A)の使用量としては前記モノマー混合物に基づいて60〜80質量%の範囲が挙げられ、また、69〜76質量%の範囲が挙げられる。
【0013】
(B)の成分として本発明で使用する(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステルは式(1)
【化3】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、R3は炭素原子
数1〜20のアルキル基であり、mは2〜12の整数である。)で表されるアルコキシ末端を有する(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステルである。式(1)中、好ましいR3としては、炭素原子数1〜4のアルキル基が挙げられ、特に、メ
チル基が挙げられる。好ましいmとしては、2〜10の整数が挙げられ、また、3及び9が挙げられる。
【0014】
式(1)で表されるモノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸メトキシジエチレングリコール(R1=H、R2=H、R3=CH3、m=2)、メタクリル酸メトキシジエチレングリコール(R1=CH3、R2=H、R3=CH3、m=2)、アクリル酸メトキシジ
プロピレングリコール(R1=H、R2=CH3、R3=CH3、m=2)、メタクリル酸メ
トキシジプロピレングリコール(R1=CH3、R2=CH3、R3=CH3、m=2)、アクリル酸エトキシジエチレングリコール(R1=H、R2=H、R3=C25、m=2)、メ
タクリル酸エトキシジエチレングリコール(R1=CH3、R2=H、R3=C25、m=2)、アクリル酸エトキシジプロピレングリコール(R1=H、R2=CH3、R3=C25、m=2)、メタクリル酸エトキシジプロピレングリコール(R1=CH3、R2=CH3、R3=C25、m=2)、アクリル酸メトキシトリエチレングリコール(R1=H、R2=H
、R3=CH3、m=3)、メタクリル酸メトキシトリエチレングリコール(R1=CH3、R2=H、R3=CH3、m=3)、アクリル酸メトキシトリプロピレングリコール(R1=H、R2=CH3、R3=CH3、m=3)、メタクリル酸メトキシトリプロピレングリコール(R1=CH3、R2=CH3、R3=CH3、m=3)、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール(R1=H、R2=H、R3=CH3、m=4〜10)、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール(R1=CH3、R2=H、R3=CH3、m=4〜10)、アクリル
酸メトキシポリプロピレングリコール(R1=H、R2=CH3、R3=CH3、m=4〜1
0)及びメタクリル酸メトキシポリプロピレングリコール(R1=CH3、R2=CH3、R3=CH3、m=4〜10)などが挙げられる。好ましい式(1)で表されるモノマーとしては、アクリル酸メトキシトリエチレングリコール(R1=H、R2=H、R3=CH3、m
=3)及びアクリル酸メトキシポリエチレングリコール(R1=H、R2=H、R3=CH3、m=4〜10)が挙げられ、また、アクリル酸メトキシトリエチレングリコール(R1
=H、R2=H、R3=CH3、m=3)及びアクリル酸メトキシポリエチレングリコール
(R1=H、R2=H、R3=CH3、m=9)が挙げられる。
【0015】
(B)の成分は、粘着剤である共重合体を構成するモノマー混合物中、2〜49質量%の割合で配合される。配合量が2質量%未満では、透湿性のある粘着剤が得られなくなり、一方、49質量%を超えると、重合安定性が低下し、ゲルが生成しやすくなり、初期接着性と凝集力のバランスが良い粘着剤が得られなくなる。好ましい成分(B)の配合量としては、前記モノマー混合物に基づいて2〜30質量%の範囲が挙げられ、また、5〜15質量%の範囲が挙げられる。
【0016】
(C)の成分として本発明で使用する(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールは、下式(2)
【化4】

(式中、R4は、水素原子又はメチル基で、nは、2〜10の整数である。)で示され、
1〜20質量%配合される。
【0017】
式(2)で表されるモノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸ジプロピレングリコール(R4=H、n=2)、メタクリル酸ジプロピレングリコール(R4=CH3、n=
2)、アクリル酸ポリプロピレングリコール(R4=H、n=3〜10)及びメタクリル
酸ポリプロピレングリコール(R4=CH3、n=3〜10)などが挙げられる。好ましい式(2)で表されるモノマーとしては、R4が水素原子で、n=5〜7のアクリル酸ポリ
プロピレングリコールが挙げられる。
【0018】
(C)の成分は、粘着剤である共重合体を構成するモノマー混合物中、1〜20質量%の割合で配合される。配合量が1質量%未満で高粘着を得るようにした場合、皮膚に対し、のり残りする傾向にある。一方、20質量%を超えると、重合安定性が低下して、ゲルを生成しやすくなり、ひいては粘着特性のバランスが悪化する。好適な配合量は前記モノマー混合物に基づいて1〜10質量%である。さらに好適な配合量は3〜7質量%である。
【0019】
(D)の成分として本発明で使用するカルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸β−カルボキシエチルなどを挙げることができ、本発明で使用するアミド基含有モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド及びヒドロキシエチルアクリルアミドなどを挙げることができる。好ましい成分(D)としては、アクリル酸、アクリル酸β−カルボキシエチル、アクリルアミド及びヒドロキシエチルアクリルアミドが挙げられる。
【0020】
(D)の成分は、粘着剤である共重合体を構成するモノマー混合物中、1〜15質量%の割合で配合される。配合量が1質量%未満では、粘着力の高い粘着剤が得られなくなり、一方、15質量%を超えると、初期粘着性と長期貼付時のバランスが悪くなり、さらには再剥離性の良い粘着剤が得られなくなる。好ましい成分(D)の配合量としては、前記
モノマー混合物に基づいて1〜10質量%の範囲が挙げられ、また、3〜8質量%の範囲が挙げられる。
【0021】
(E)の成分、即ち、上記(C)及び(D)以外の水酸基含有モノマーまたはイソシアネートに対する官能基を有するモノマーとしては(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを挙げることができ、その具体例としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル及びメタクリル酸4−ヒドロキシブチルなどを挙げることができる。好ましい成分(E)としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル及びメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルが挙げられ、このうち2級水酸基を有するアクリル酸2−ヒドロキシプロピル及びメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルが特に好ましい。
【0022】
(E)の成分は架橋点を形成し架橋による粘着剤の凝集力を高めるための任意成分であり、(C)、(D)成分がイソシアネートによる架橋点として不十分な場合に共重合成分とする。成分(E)を使用する場合は、粘着剤である共重合体を構成するモノマー混合物中、0.1〜20質量%配合される。配合量が0.1質量%未満では、十分な架橋がされず凝集力の高い粘着剤が得られなくなり、一方、20質量%を超えると、初期粘着性と長期貼付時のバランスが悪くなり、さらには再剥離性及び凝集力の良い粘着剤が得られなくなる。好適な配合量は前記モノマー混合物に基づいて、1〜10質量%である。
【0023】
(F)の成分、即ち、共重合可能なその他のビニルモノマーは必須ではないが、その例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸メトキシエチル、アクリル酸トリデシル及びメタクリル酸トリデシルなどの上記以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アクリル酸グリシジル及びメタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有モノマー;酢酸ビニルなどのビニルエステル;アクリロニトリル及びメタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル;スチレンなどのビニル芳香族化合物;などを挙げることができる。好ましい成分(F)としては、アクリル酸メトキシエチルが挙げられる。成分(F)の使用量としては、粘着剤である共重合体を構成するモノマー混合物中、0〜20質量%配合され、好ましくは、前記モノマー混合物に基づいて0〜15質量%の範囲、また、0〜1質量%の範囲が挙げられる。
【0024】
(G)の成分として本発明で使用する架橋剤としては、2官能以上のイソシアネート系架橋剤(ポリイソシアネート化合物)が好ましく用いられる。イソシアネート基を2個以上有する多官能イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、「コロネートEH」(日本ポリウレタン工業社製)等として知られるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物;「スミジュールL」(住友バイエルウレタン社製)等のアダクトポリイソシアネート化合物;「コロネートL」および「コロネートL−55E」(いずれも日本ポリウレタン工業社製)等のアダクトポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。これらは、単独で使用し得るほか、2種以上を併用することもできる。
【0025】
(G)の成分の架橋剤は、粘着剤である共重合体を架橋するための成分であるが、その配合割合は、アクリル系共重合体に含まれる官能基の量にもよるが、アクリル系共重合体
100質量部に対して、通常、0.01〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部の範囲が挙げられ、また、0.3質量部が挙げられる。架橋剤により架橋されることにより、皮膚粘着性が良好で、剥離時の刺激が小さく、粘着剤の残留のない粘着剤組成物を得ることができる。
【0026】
また、本発明の医療用粘着剤組成物におけるモノマー混合物(A)〜(F)の好ましい組み合わせとしては、(A)アクリル酸イソノニル、(B)R1が水素原子、R2が水素原子、R3がメチル基及びmが3又は9である式(1)で表される(メタ)アクリル酸アル
コキシポリアルキレングリコールエステル、(C)R4が水素原子及びnが5〜7である
式(2)で表される(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(D)アクリル酸、アクリル酸β−カルボキシエチル、アクリルアミド又はヒドロキシエチルアクリルアミド、任意の(E)メタクリル酸ヒドロキシエチル又はメタクリル酸ヒドロキシプロピル、及び、任意の
(F)アクリル酸メトキシエチルが挙げられる。
【0027】
また、本発明の医療用粘着剤組成物におけるモノマー混合物(A)〜(F)の好ましい配合量の組み合わせとしては、(A)69〜76質量%、(B)5〜15質量%、(C)3〜7質量%、(D)5〜8質量%、(E)0〜1質量%及び(F)0〜15質量%が挙げられる。
【0028】
本発明の粘着剤組成物には、所望によりアクリル系粘着剤にさらに汎用の各種添加剤を添加することができる。例えば、抗菌剤、保湿剤、ビタミン類、香料などを挙げることができる。これらは、必要に応じて有効量を配合する。
【0029】
本発明の粘着剤組成物を用いて皮膚貼付用粘着テープを作製するには、基材の片面に粘着剤組成物を塗工する。基材として固定用に適したものであれば特に限定されるものではないが、主な例を挙げると、レイヨン、綿、ポリエステル糸等の単体又はポリウレタン糸を挿入した織布、不織布、編布及び可塑化軟質ポリ塩化ビニル、無可塑化軟質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレンゴム、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコールなどの合成樹脂からなるフィルム又はシートが挙げられる。また、プラスチック発泡シート、セルロース、酢酸セルロースなどの可撓性のあるフィルムやシートを使用することができる。これらの基材には、必要に応じてコロナ放電処理などを行ってもよい。透湿性に優れた基材を用いると、本発明の粘着剤組成物の優れた透湿性を充分に発揮させることができる。上記のうち、固定用としては特に織布が好ましい。
【0030】
粘着剤組成物は、各成分を溶媒に溶解させるか、あるいは溶液重合終了後の反応溶液中に架橋剤を添加するなどして溶液状態とし、これを基材の片面に塗布し、乾燥させる。架橋反応に高温を要する場合は、乾燥時又は乾燥後に加熱する。また、剥離紙などの剥離ライナーに粘着剤組成物を塗工した後、基材に重ねる方法を採用することもできる。粘着テープに穿孔を設けると、通気性を向上させることができる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、以下の実施例及び比較例において、部及び%は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0032】
[実施例1]
攪拌機、温度計、及び冷却管を装着した1Lフラスコに、アクリル酸イソノニル72質量%、アクリル酸8質量%、及びアクリル酸メトキシポリエチレングリコール(R1=H
、R2=H、R3=CH3、m=9)15質量%、及びアクリル酸ポリプロピレングリコー
ル(R4=H、n=5〜7)5質量%を仕込み、モノマー全体が50%となるように溶媒
として酢酸エチルを加えた。重合は、ラジカル重合開始剤として全モノマー量の0.5質量%の過酸化ラウロイルを用い、窒素気流中にて20時間攪拌還流下にて行った。このようにして得られた共重合体に、2官能イソシアネート系架橋剤を、前記共重合体100質量部に対して0.3質量部を加えて粘着剤組成物を得た。
【0033】
[実施例2]
モノマー成分を、アクリル酸イソノニル74質量%、アクリルアミド5質量%、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル1質量%、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール(R1=H、R2=H、R3=CH3、m=9)15質量%、及びアクリル酸ポリプロピレングリコール(R4=H、n=5〜7)5質量%に代えたこと以外は、実施例1と同様にして
粘着剤組成物を得た。
【0034】
[実施例3]
モノマー成分を、アクリル酸イソノニル69質量%、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド6質量%、アクリル酸2−メトキシエチル15質量%、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール(R1=H、R2=H、R3=CH3、m=3)5質量%、及びアクリル酸ポリプロピレングリコール(R4=H、n=5〜7)5質量%に代えたこと以外は、実施例
1と同様にして粘着剤組成物を得た。
【0035】
[実施例4]
モノマー成分を、アクリル酸イソノニル76質量%、アクリル酸1質量%、アクリル酸β−カルボキシエチル5質量%、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール(R1=H
、R2=H、R3=CH3、m=3)15質量%、及びアクリル酸ポリプロピレングリコー
ル(R4=H、n=5〜7)3質量%に代えたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤
組成物を得た。
【0036】
[実施例5]
モノマー成分を、アクリル酸イソノニル72質量%、アクリルアミド5質量%、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1質量%、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール(R1=H、R2=H、R3=CH3、m=9)15質量%、及びアクリル酸ポリプロピレングリコール(R4=H、n=5〜7)7質量%に代えたこと以外は、実施例1と同様にして粘
着剤組成物を得た。
【0037】
[実施例6]
モノマー成分を、アクリル酸イソノニル74質量%、アクリル酸1質量%、アクリル酸β−カルボキシエチル5質量%、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール(R1=H
、R2=H、R3=CH3、m=9)15質量%、及びアクリル酸ポリプロピレングリコー
ル(R4=H、n=5〜7)5質量%に代えたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤
組成物を得た。
【0038】
[比較例1]
モノマー成分を、アクリル酸イソノニル74質量%、アクリル酸1質量%、アクリル酸β−カルボキシエチル5質量%、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール(R1=H
、R2=H、R3=CH3、m=9)15質量%、及びアクリル酸メトキシポリエチレング
リコール(R1=H、R2=H、R3=CH3、m=3)5質量%に代えたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。
【0039】
[比較例2]
モノマー成分を、アクリル酸イソノニル74質量%、アクリル酸1質量%、アクリル酸β−カルボキシエチル5質量%、アクリル酸2−メトキシエチル10質量%、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール(R1=H、R2=H、R3=CH3、m=9)5質量%、及びアクリル酸メトキシポリエチレングリコール(R1=H、R2=H、R3=CH3、m=3)5質量%に代えたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。
【0040】
[比較例3]
モノマー成分を、アクリル酸イソノニル68質量%、アクリル酸2質量%、アクリル酸2−メトキシエチル30質量%に代えたこと以外は、実施例1と同様にして粘着剤組成物を得た。
【0041】
(1)皮膚粘着力
シリコーン処理した剥離ライナー上に、各実施例及び比較例で得られた粘着剤組成物の溶液を乾燥後の厚さが50μmとなるように塗布し、乾燥して粘着剤層を形成した。次いで、縦方向に伸縮性を持つ布をラミネートし、粘着テープを得た。こうして得た各粘着テープから15×100mmの試験片を切り取り、上腕部内側に貼付して、30分後100mm/minの速度で引き剥がし粘着力を測定し、以下の基準で評価した。
○:1N/15mm以上
△:0.5N/15mm以上、1N/15mm未満
×:0.5N/15mm未満
【0042】
(2)糊残り(粘着剤の残留)
前記(1)の測定後、糊残りが観察されるか否かを試験し、以下の基準で評価した。
○:糊残りがない。
△:テープの端部にわずかに糊残りが認められる。
×:明らかな糊残りが認められる。
【0043】
(3)再貼付性(角質剥離性)
上記(1)の測定後、同じテープを同じ箇所に貼付し、30分後再び引き剥がし粘着力を測定し、初期値との比(%)より、以下の基準で評価した。
○:65%以上
△:40%以上、65%未満
×:40%未満、もしくは粘着力測定時の糊残りが△又は×のとき
【0044】
評価結果を表に示した。
尚、表中、A〜Fに記載の数字は質量%を表し、Gに記載の数字は質量部を表す。
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素原子数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜90質量%、
(B)下式(1)
【化1】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、R3は炭素原子
数1〜20のアルキル基であり、mは2〜12の整数である。)で表される(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル2〜49質量%、
(C)下式(2)
【化2】

(式中、R4は、水素原子又はメチル基で、nは、2〜10の整数である。)で表される
(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール1〜20質量%、
(D)カルボキシル基もしくはアミド基含有接着性付与モノマー1〜15質量%、
(E)上記(C)(D)以外の水酸基含有モノマーまたはイソシアネートに対する官能基を有するモノマー0〜10質量%、及び
(F)共重合可能なその他のビニルモノマー0〜20質量%
を含有するモノマー混合物を重合して得られる共重合体と、
(G)前記共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部のイソシアネート系架橋剤を含有することを特徴とする医療用粘着剤組成物。


【公開番号】特開2007−338(P2007−338A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−183362(P2005−183362)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000004020)ニチバン株式会社 (80)
【Fターム(参考)】