説明

半固形物の切り出し装置及び方法並びに切り出し計量設備

【課題】半固形物を精度良く所望の重量で切り出す。
【解決手段】裁断刃12は、第1回転軸20と、この第1回転軸20の軸方向に所定ピッチで取り付けられる縦組刃とから構成される。縦組刃は、第1回転軸20に直交する面内で90°ピッチで取り付けられた4枚の縦刃21から構成される。送り刃13は、第2回転軸25と、この第2回転軸25の軸方向に沿って、縦刃21の間に取り付けられる複数の横刃26とから構成される。縦刃21の間に横刃26が入るように第1回転軸20及び第2回転軸25を平行にして機枠11に取り付ける。裁断刃12を時計回りに、送り刃13を反時計回りに回転させて、縦刃21及び横刃26で半固形物をブロック状に切り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳剤、乳化物、ゼラチンなどの半固形物を微細ブロック状に切り出す半固形物の切り出し装置及び方法並びに切り出し計量設備に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にハロゲン化銀写真感光材料は、ポリマーフィルムなどの支持体上に感光性ハロゲン化銀乳剤層とその上側に保護層を有している。感光性ハロゲン化銀乳剤層は、支持体に対して写真用塗布溶液を塗布し乾燥することで形成される。写真用塗布溶液は、以下のようにして製造される。まず、原料となる液体状の乳化物を、冷却させて半固形物化させる。そして、その半固形物化した乳化物をカッターなどにより切り出して、切り出した乳化物をポットに投入する。その際、ポット内の乳化物の重量を計量し、一定の重量になったときに切り出しを停止する。そして、一定量の乳化物が入ったポットは写真用塗布溶液調製ラインに送られ、そのポット内の乳化物を用いて写真用塗布溶液の調製が行われる。
【0003】
これまで、乳化物などの原料を計量しながらポットへの送り込みを行う装置として、三角爪の付いた回転刃で、泥や砂などを計量しながらポットに送り込む装置が知られている(特許文献1参照)。また、回転軸にその軸方向で一定の間隔で取り付けられる掻き出し片により、原料を計量しながらポットに送り込む装置が知られている(特許文献2参照)。また、回転ドラムに一定容積のカップ部を複数設け、そのカップ部により液体を計量し、計量した液体を回転ドラムの下方の容器に注ぎ込む装置が知られている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平10−129846号公報
【特許文献2】実昭56−25376号公報
【特許文献3】特開平9−15017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1〜3のような従来の計量装置は、泥砂等の粒状物質や汚泥等の半固形物質、さらには液状物質を計量することは可能であるものの、半固形物を半固形物の状態のままで所定量だけ正確に切り出すことは困難であった。
【0005】
また、特許文献1では、回転刃により泥等の送り込みを行っているが、回転刃の刃の間隔が大きいため、所望の重量以上の泥等がポットに入ってしまうことがある。また、特許文献2では、掻き出し片の間には隙間があるため、掻き出し片で原料を掻き出さなくても、その隙間から原料がこぼれ落ちて、ポットに入ってしまうことがある。そのため、所望の重量をポットに投入できないことがある。
【0006】
本発明は、半固形物を精度良く且つ所望の重量で切り出す半固形物の切り出し装置及び方法並びに半固形物の切り出し計量設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の半固形物の切り出し装置は、第1回転軸、及びこの第1回転軸の軸方向に離して取り付けられる複数の縦刃を有する第1回転刃と、前記第1回転軸に平行に配置される第2回転軸、及びこの第2回転軸の軸方向に沿って、前記縦刃の間に取り付けられる複数の横刃を有する第2回転刃と、前記第1回転刃及び第2回転刃を回転自在に保持し、前記第1回転軸及び前記第2回転軸の間から半固形物を送り出すための機枠と、前記機枠に設けられ、前記縦刃及び横刃の隙間から前記半固形物の脱落を阻止する脱落阻止部材と、前記第1及び第2回転軸を回転する駆動部とを備えることを特徴とする。
【0008】
前記縦刃は、前記第1回転軸に直交する面内で一定ピッチで複数取り付けられて縦組刃とされ、且つ前記第1回転軸の軸方向において前記縦組刃の取り付け位置が隣り合うもの同士でずらされていることが好ましい。前記横刃は、前記第2回転軸に直交する面内で一定ピッチで複数取り付けられて横組刃とされていることが好ましい。
【0009】
前記第2回転刃は、前記第2回転軸に対し放射線方向で、且つ前記横組刃の前記横刃の間に取り付けられ、前記半固形物を突き刺して、前記半固形物の脱落を制御する脱落制御部材を有することが好ましい。前記横刃の先端部には、前記第2回転軸の回転方向に曲げられた屈曲部が形成されていることが好ましい。前記駆動部は、前記第1回転軸の回転速度を前記第2回転軸の回転速度よりも速くすることが好ましい。
【0010】
本発明の半固形物の切り出し計量設備は、上記記載の本発明の半固形物の切り出し装置を備え、前記半固形物を収納する収納容器に着脱自在に取り付けられる蓋部材と、前記収納容器を切り出し対象容器の上方に位置させる切り出し位置と、この切り出し位置から前記収納容器を退避して前記蓋部材を着脱する着脱位置との間で、前記収納容器の位置を変位させる変位機構と、前記切り出し対象容器の重量を計量する計量器と、前記駆動部を制御して前記第1及び第2回転刃を回転させ、前記計量器で計量した計量値に基づき切り出した半固形物が一定値に達したときに、前記第1及び第2回転刃の回転を停止する制御部とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の半固形物の切り出し方法は、第1回転軸、及びこの第1回転刃の軸方向に離して取り付けられる複数の縦刃を有する第1回転刃と、前記第1回転軸に平行に配置される第2回転刃、及びこの第2回転軸の軸方向に沿って、前記縦刃との間に取り付けられる複数の横刃を有する第2回転刃とを用い、前記第1回転刃及び第2回転刃を回転させて、前記第1回転軸及び第2回転軸の間から前記半固形物を前記縦刃及び横刃によりブロック状に切り出すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、半固形物を精度良く、且つ所望の重量で切り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に示すように、本発明の半固形物の切り出し装置10は、機枠11と、この機枠11に回転自在に取り付けられる裁断刃12(第1回転刃)と、裁断刃12に対して平行に回転自在に機枠11に取り付けられる送り刃13(第2回転刃)と、これら裁断刃12及び送り刃13を回転駆動する第1及び第2駆動部14,15と、半固形物の脱落阻止部材17,18とを備えている。この切り出し装置10上に半固形物の塊が載せられると、裁断刃12及び送り刃13が対向して回転することにより、裁断刃12及び送り刃13の間から、半固形物が熱等で溶解されること無く小さな略直方体状のブロックとなって切り出される。
【0014】
機枠11は矩形筒状に形成されており、この中に裁断刃12及び送り刃13が回転自在に保持されている。そして、機枠11の一方の側板11aには第1駆動部14が、他方の側板11bには第2駆動部15が取り付けられている。各駆動部14,15は減速機を有するモータから構成されており、コントローラ45(図5参照)により任意の回転速度で正逆回転が可能にされている。なお、第1駆動部のモータとしては、例えばハイポニックギアモータ(0.4KW 4P φ3 200V 50HZ 1/40(住友重機械工業(株)製))が、第2駆動部のモータとしては、例えばハイポニックギアモータ(0.4KW 4P φ3 200V 50HZ 1/150(住友重機械工業(株)製))が好ましい。
【0015】
図2(A)及び(B)に示すように、裁断刃12は、第1回転軸20と、この第1回転軸20の周面に取り付けられる縦刃21とを有する。縦刃21は、(A)に示すように、第1回転軸20に直交する面内で90°ピッチで放射線方向に4個取り付けられている。これら4個の縦刃により縦組刃23が構成される。縦組刃23は、第1回転軸20の軸方向にピッチP1で離されており、且つ隣接する縦組刃23の取り付け位置が互い違いになるように、45°だけ相互にずらして取り付けられている。また、図2(C)に示すように、縦刃21は矩形状に形成されており、先端辺と回転方向側の側辺とに刃本体21a,21bが形成されている。なお、図2では、図が複雑になるのを避けるために、縦刃21、縦組刃23の一部のみに符号を付している。また、ピッチP1は任意の距離で良いが、10〜60mmが好ましく、より好ましくは20〜50mmである。本実施形態では33mmである。また、側辺の刃本体21bの刃先角度θ1は任意角度で良いが、10°〜60°が好ましく、より好ましくは20°〜40°である。本実施形態では30°としている。
【0016】
図3(A)及び(B)に示すように、送り刃13は、第2回転軸25と、この第2回転軸25の周面に取り付けられる横刃26と、脱落制御ピン27とを有する。横刃26は、縦刃21と同様に、第2回転軸25に直交する面内で90°ピッチで放射線方向に4個取り付けられている。これら4個の横刃26により横組刃28が構成される。横刃26は、縦刃21の間に入り込むサイズで形成されており(図4参照)、第2回転軸25の軸方向に沿って、ピッチP2だけ離して配置されている。また、図3(C)に示すように、横刃26の先端には、回転方向に屈曲した屈曲部26aが形成されている。この屈曲部26aにより、送り刃13が回転して半固形物を切り出すときに、半固形物の切り出しと送り込みが確実に行われる。なお、図3では、図が複雑になるのを避けるために、横刃26、横組刃28の一部のみに符号を付している。また、ピッチP2は任意の距離で良いが、40mm〜80mmが好ましく、より好ましくは50〜70mmである。本実施形態では66mmである。
【0017】
脱落制御ピン27は、横刃26の間で、第2回転軸25に直交する面内で90°ピッチで、第2回転軸25に放射線方向で4個取り付けられている。脱落制御ピン27の先端は尖っており、切り出したブロック状の半固形物に突き刺さり、半固形物を送り刃13の周りで固定する作用を有する。そして、送り刃13が回転して、脱落制御ピン27が鉛直方向に位置すると、ブロック状の半固形物の保持機能が無くなり、その半固形物は自重により落下する。なお、脱落制御ピンが鉛直方向に位置するまでは、傾斜状態の脱落制御ピンによりブロック状の半固形物は脱落が阻止される。
【0018】
図4は、切り出し装置10を容器アタッチメント31(蓋部材)に組み込んだ状態を示している。機枠11には、縦刃21の隙間及び横刃26の隙間を塞ぐように、脱落阻止部材17,18が取り付けられいる。この脱落阻止部材17,18は、各刃12,13の隙間から半固形物が脱落することを阻止している。容器アタッチメント31は、ポット(収容容器)の開口に嵌着される蓋本体31aと、ホッパ31bとから構成される。
【0019】
また、機枠11には扉30が設けられており、図示しない開閉装置により開閉される。切り出し時には、扉30が二点鎖線で示す開放位置となり、切り出しが終了すると実線で示す閉じ位置となる。
【0020】
本発明の半固形物の切り出し装置10は、容器アタッチメント31を介して、ポット32に着脱自在に取り付けられる。なお、容器アタッチメント31にはポット32へのロック装置(図示省略)が設けられている。このロック装置により、ポット32を傾けた状態にしても、ポット32が容器アタッチメント31から外れることがないため、ポット32内の半固形物が確実に切り出し装置10へと送られる。
【0021】
次に、図5に示すように、本発明の半固形物の切り出し装置10を用いた半固形物の切り出し計量設備40について説明する。切り出し計量設備40は、ローラコンベア41と、半固形物の切り出し装置10を有する容器アタッチメント31と、投入装置43と、計量装置44と、コントローラ45と、洗浄装置46とを備える。
【0022】
ローラコンベア41は、切り出し対象の半固形物が入れられたポット32(以下「実ポット」という)を切り出し装置10に、半固形物を切り出して計量するための空のポット(以下「空ポット」という)33を計量装置44にそれぞれ搬送する。なお、本実施形態では、1本のローラコンベアを用いて、実ポット32及び空ポット33を1組として搬送しているが、搬送方法は特に限定されない。
【0023】
図6及び7に示すように、投入装置43は、実ポット装着ユニット50と、チルト機構51とを有する。実ポット装着ユニット50は、実ポット32に容器アタッチメント31を装着する。チルト機構51は、実ポット装着ユニット50を例えば140°回転させて、空ポット33に対して、切り出し装置10で切り出したブロック状の半固形物を投入する。ここで、チルト機構51が回転し、実ポット32内の半固形物が切り出し装置10に重力で滑り落ちる前に、予め半固形物と実ポット32の間の密着した部分を切り離したり、半固形物をおおまかに所定のサイズに破砕しておくことが望ましい。
【0024】
実ポット装着ユニット50は、保持フレーム53と、クランプ機構54、保持フレーム53に取り付けられるポット昇降機構55とを有する。保持フレーム53の上部には、切り出し装置10が取り付けられた容器アタッチメント31が固定されている。クランプ機構54は、切り出し装置10に位置する実ポット32を挟んで保持する。ポット昇降機構55は、クランプ機構54が取り付けられた昇降部材57と、昇降部材57を上下方向に移動させるシフト部58を備えている。シフト部58は、昇降部材57を移動させることにより、クランプ機構54にクランプされた実ポット32を容器アタッチメント31に着脱する着脱位置と、実ポット32をローラコンベア41上に退避させる退避位置との間で、実ポット32を変位させる。
【0025】
チルト機構51は、保持フレーム53が固定されたチルト軸56と、このチルト軸56を140°の範囲で回転させる駆動部59とを有する。駆動部59は、チルト軸56を介して保持フレーム53を回転させることにより、切り出し装置10で切り出したブロック状の半固形物を空ポット33に投入する切り出し位置と、この切り出し位置から退避して容器アタッチメント31を着脱する着脱位置との間で、実ポット32を変位させる。
【0026】
図5に示すように、計量装置44は、空ポット33が位置するローラコンベア41の下方に取り付けられており、計量器本体61と、ポット支持部62と、シフト部63を備える。シフト部63は、ローラコンベア41のローラの隙間からポット支持部62を突出して空ポット33を持ち上げる計量位置と、ポット支持部62をローラコンベア41のポット搬送面41aに退避させる退避位置との間で、ポット支持部62を変位させる。計量時には、シフト部63によりポット支持部62が空ポット33を計量位置にまで持ち上げて、空ポット33の重量を計量器本体61で計量する。計量器本体61は計量信号をコントローラ45に送信する。コントローラ45は、計量器本体61からの計量信号に基づき、空ポット33内の半固形物の重量が所定値に達したときに、切り出し装置10を停止させる。
【0027】
洗浄装置46は、容器アタッチメント31に嵌合する受け部材65と、この受け部材65内に配置された洗浄ノズル66と、シフト機構67とを備える。シフト機構67は、切り出しが終了し、実ポット32と空ポット33がローラコンベア41で送り出された後に、受け部材65を容器アタッチメント31にまで移動させる。受け部材65を容器アタッチメントに装着した後、洗浄ノズル66から水などが吹き出される。この水などの吹き付けにより、切り出し装置10内及び容器アタッチメント31内が洗浄される。
【0028】
次に、半固形物の切り出し計量設備の作用について、図8の工程図と図9のタイムチャートを参照しながら、説明する。なお、図8では、切り出し計量設備40の装置等のうち作用の説明に最低限必要なもののみを記載している。また、図9に示す「ポット到着」から「裁断」及び「洗浄」を経た後「ポット搬送」までの所要時間は約600秒である。
【0029】
まず、図8(A)に示すように、実ポット32と空ポット33の一組のポットをローラコンベア41により切り出し計量設備40(図5参照)に搬送し、実ポット32を容器アタッチメント31の位置に、空ポット33を計量装置44の位置にセットする。次に、空ポット33が計量装置44に載置されている状態で、計量装置44のカウントを「0」にリセットする。次に、図8(B)に示すように、実ポット32をクランプ機構54(図7参照)によりクランプし、その状態で実ポット32をポット昇降機構55(図7参照)により実線表示の退避位置から二点鎖線表示の着脱位置に移動させる。そして、着脱位置の実ポット32は、容器アタッチメント31に取り付けられる。次に、図8(C)に示すように、チルト機構51により実ポット32を反時計回りに回転させて、実ポット32を切り出し位置にセットする。
【0030】
次に、実ポット32が切り出し位置にセットされると、切り出し装置10の扉30を開く。そして、第1及び第2駆動部14,15が回転駆動を開始する。これにより、図4に示すように、縦刃21が第1回転軸20を中心に時計回りに、横刃26が第2回転軸25を中心に反時計回りに回転する。実ポット32内の半固形物は、容器アタッチメント31を介して、回転中の縦刃21と横刃26にまで自重により落下する。そして、半固形物は、回転中の縦刃21と横刃26によりブロック状の細片にカットされる。カットされた半固形物は、空ポット33へと落下する。
【0031】
切り出し装置10による半固形物の切り出しの際には、脱落制御ピン27が半固形物を突き刺し、その脱落制御ピン27により突き刺された状態で縦刃21と横刃26により切り出される。これにより、半固形物を確実に切り出すことができる。そして、切り出された半固形物は、脱落制御ピン27が鉛直下方向に位置するまでは半固形物の脱落が阻止され、鉛直下向きに位置したときに自重により脱落制御ピン27から抜け落ちる。横刃26の屈曲部26aは、落下してきた半固形物を係止することで、半固形物に対する保持力を向上させるとともに、掻き出し力をも向上させる。機枠11には脱落防止部材17,18が取り付けられているため、落下してきた半固形物は、縦刃21と横刃26により切り出されることなく、そのまま空ポット33へ落下することがない。
【0032】
また、裁断刃12及び送り刃13の回転速度(rpm(1分間当たりの回転速度))は、計量装置44で計量される空ポット33内の半固形物の重量(kg)が、予め設定された投入目標重量W0に到達するように制御される。図10に示すように、裁断刃12及び送り刃13の回転速度は、低速モードと高速モードの2種類がある。切り出し装置10の切り出しが開始すると、まず、裁断刃12及び送り刃13の回転速度を「0」から低速モードに徐々に上昇させる。そして、裁断刃12及び送り刃13の回転速度が低速モードに到達したときに、裁断刃12及び送り刃13の回転速度を低速モードで一定にする。そして、空ポット33の重量がW1になったときに、裁断刃12及び送り刃13の回転速度を低速モードから高速モードに徐々に上昇させる。そして、裁断刃12及び送り刃13の回転速度が高速モードに到達したときに、裁断刃12及び送り刃13の回転速度を高速モードで一定にする。
【0033】
そして、空ポット33の重量がW2になったときに、裁断刃12及び送り刃13の回転速度を高速モードから低速モードに徐々に下げる。そして、裁断刃12及び送り刃13の回転速度が低速モードに到達したときに、裁断刃12及び送り刃13の回転速度を低速モードで一定にする。そして、空ポット33の重量が投入目標重量W0に到達したときに、裁断刃12及び送り刃13の回転速度を下げ、裁断刃12及び送り刃13を停止する。さらに、裁断刃12及び送り刃13を停止直後に、扉30を閉めることにより、半固形物の過剰な落下を防ぐことで、計量の精度を上げている。
【0034】
なお、上記空ポットの重量のうち、投入目標重量W0を20kgとしたときに、W1は5kg、W2は(W0−3)kgであることが好ましい。投入目標重量W0が5kg未満のときは、低速モードのみで切り出しが行われる。
【0035】
また、低速モードでは、裁断刃12の回転速度は21.1rpm、送り刃13の回転速度は2.8rpm、及び裁断刃12と送り刃13の回転速度比(裁断刃の回転速度/送り刃の回転速度)は7.8/1であることが好ましい。また、高速モードでは、裁断刃12の回転速度は38.7rpm、送り刃13の回転速度は4.7rpm、及び裁断刃12と送り刃13の回転速度比(裁断刃の回転速度/送り刃の回転速度)は8.2/1であることが好ましい。裁断刃12と送り刃13の回転速度比については適宜変更してもよく、例えば、回転速度比は3/1〜12/1が好ましく、より好ましくは5/1〜10/1である。
【0036】
次に、図8(D)に示すように、空ポット33の重量が投入目標重量W0に到達し、裁断刃12及び送り刃13の回転が停止すると、チルト機構51は、実ポット32を切り出し位置から着脱位置に戻す。そして、着脱位置に戻った実ポット32から、容器アタッチメント31が取り外される。そして、実ポット32は、ポット昇降機構55によりローラコンベア41に載置される。ローラコンベア41に載置された実ポット32は、残った半固形物を再度実ポットに入れなおす返却ラインRLに送られる。一方、図8(E)に示すように、投入目標重量W0分の半固形物が投入された空ポット33は、空ポット33内の半固形物を原料として各種製品を製造する製造ラインPLに送られる。
【0037】
次に、洗浄装置46が容器アタッチメント31に装着される。そして、裁断刃12及び送り刃13が回転し、洗浄装置46から水とエアが切り出し装置10及び容器アタッチメント31内部全体に吹き付けられる。これにより、切り出し装置10及び容器アタッチメント31内の半固形物が除去される。一定時間洗浄が行われると、洗浄装置46が停止するとともに、裁断刃12及び送り刃13の回転が停止する。そして、洗浄装置46が容器アタッチメント31から取り外される。
【0038】
なお、本発明の切り出し装置の切り出し対象物は、乳剤、乳化物、ゼラチンなどの半固形物であればよく、特に限定されない。また、切り出し対象物のゼリー強度は、300g以上600g以下が好ましい。また、切り出し対象物は、例えば、厚みが3〜5cm、直径が60cm以下のバームクーヘン状(円筒状)にスライスされて、ポットに収納することが好ましい。
【0039】
また、本発明の切り出し装置では、1回の切り出し量は、裁断刃及び送り刃の軸間距離、縦組刃のピッチで決定される。軸間距離及び縦組刃のピッチを小さくすると、これに応じて、切り出すブロック片1個の重量を小さくすることができ、切り出し量の精度を上げることができる。
【0040】
また、本発明の切り出し装置の送り刃では、横刃及び脱落制御ピンを第2回転軸の周方向に90°ピッチで4個取り付け、脱落制御ピンが略鉛直下方向を向いたときに落下するようにしているので、投入目標重量に達したときに、送り刃のみを90°逆転させることで、切り出し途中のブロック片を容器アタッチメント側に戻すようにしてもよい。これにより、更に精度の良い切り出しが可能となる。
【0041】
上記実施形態では、裁断刃及び送り刃の回転速度を低速モード及び高速モードの2段階で制御しているが、速度切り替えは3段階以上であってもよい。例えば、最後の切り出しを微速で行い、切り出し精度を更に向上させてもよい。また、裁断刃を縦刃で、送り刃を横刃で構成したが、これらに限る必要はなく、例えば裁断刃及び送り刃をノコ刃や丸刃で構成してもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、半固形物の粘度やゼリー強度及び空ポット内の半固形物の重量の変化の割合に応じて、チルト機構の回転角度を調整してもよい。また、空ポット内の半固形物の重量が投入目標重量に到達した後には、チルト機構の回転角度を、実ポット内の半固形物が落下しない角度にしてもよい。また、切り出した対象を乳剤や乳化物とした場合には、かぶりや菌の繁殖が生ずることを防ぐために、切り出し計量設備内を遮光状態にすることが好ましい。
【実施例】
【0043】
実施例では、まず、本発明の切り出し装置の切り出し対象物である乳剤及び乳化物のゼリー強度を求め、その本発明の切り出し装置で切り出された乳剤及び乳化物の重量(g)を測定した。
【0044】
[ゼリー強度の測定]
乳剤及び乳化物のゼリー強度の測定に際しては、まず、固形上の乳剤及び乳化物を40℃で溶解した。そして、溶解した乳剤及び乳化物をそれぞれ6つのガラス容器に移し、10℃の冷水バスで17時間冷却して半固形物化した。これにより、半固形物化した乳剤のサンプル(120cc)を6つ、半固形物化した乳化物のサンプル(120cc)を6つ得ることができた。そして、それら乳剤及び乳化物のゼリー強度をゼリー強度測定器で測定した。
【0045】
ゼリー強度測定器としてはテクスチャー・アナライザー((株)ケツト科学研究所販売(スチーブンス社製造))を用いた。このテクスチャー・アナライザーは、乳剤及び乳化物の他に、寒天、バター、マーガリン、チーズ、肉、チョコレート、パンなどのゼリー強度を測定することができる。
【0046】
乳剤及び乳化物のゼリー強度の測定は、以下のようにして行った。図11に示すように、乳剤及び乳化物が入ったガラス容器100を測定台101に載せ、円筒型の測定プローブ102(直径12.7)を一定の速度(0.2mm/秒)で乳剤及び乳化物に4mm侵入させたときの応力数値(g)を読み取り、この応力数値(g)をゼリー強度とした。ここで、測定プローブ102は各サンプルについて3箇所侵入させ、それら3箇所でのゼリー強度を測定した。
【0047】
乳剤及び乳化物のサンプルの測定結果は、以下の表1のようになった。
【表1】

表1に示すように、乳剤のゼリー強度は310g〜330gの範囲であった。また、乳化物のゼリー強度は560g〜580gの範囲であった。
【0048】
[切り出された乳剤及び乳化物の重量の測定]
ゼリー強度が前記範囲の乳剤及び乳化物を本発明の切り出し装置で切り出しところ、80g〜120gの略直方体状のブロック片が得られた。本実施形態では、11の縦組刃を有していることから、80g以上120g以下のブロック片が12個が、切り出し装置の切り出し口から切り出される。したがって、送り刃が1/4回転して切り出す量は、960g〜1440gとなり、精度の良い切り出しを行うことができた。
【0049】
表2は上記のようなゼリー強度を有する半固形物を切り出したときの実績の一例を示す。目標投入量の5kgから117.4kgに対して、ポット到着からポット搬送(図9参照)まで、いずれも5分以内での計量が可能であった。ここで、目標投入量が5kgのときは、図10のグラフで低速のみで裁断が完了したため、投入量差異が0.0kgとなっている。一方、目標投入量が117.4kgのときは、図10のグラフで高速と低速の両方で裁断を行ったため、投入量差異が−0.6kgとなっている。
【0050】
このように、半固形物の切り出し速度(裁断刃及び送り刃の回転速度)と計量精度とはトレードオフの関係にあるため、図10のグラフが重要であるが、本実施例では、目標投入量が5kgから117.4kgの広いレンジで、しかも5分以内の計量に対応することができた。しかも、切り出し誤差は、0〜1.4kgの範囲内であり、精度の良い切り出しが可能になったことが分かる。また、精度が必要な場合は、図10の低速部分のみで計量された、表2の目標投入量が5kgの実施例の投入量差異のデータから分かるように、低速で計量すれば、精度0.1kg以内での計量が可能である。また、ポットの選択により更に大量の計量にも対応できるが、切り出し速度と計量精度の両立ができたことが本発明の効果である。
【0051】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】切り出し装置の機枠を回転軸の位置で切り欠いた状態を示す平面図である。
【図2】(A)は裁断刃の側面図を、(B)は裁断刃の正面図を、(C)は縦刃を拡大して示す正面図及び側面図を示している
【図3】(A)は送り刃の側面図を、(B)は送り刃の正面図を、(C)は横刃を拡大して示す側面図を示している。
【図4】切り出し装置を示す断面図である。
【図5】半固形物の切り出し計量設備の正面図である。
【図6】半固形物の切り出し計量設備の平面図である。
【図7】半固形物の切り出し計量設備の右側面図である。
【図8】半固形物の切り出し計量設備のフローを示す工程図である。
【図9】半固形物の切り出し計量設備のフローを示すタイムチャートである。
【図10】空ポット内の半固形物の重量と裁断刃及び送り刃の回転速度との関係を示すグラフである。
【図11】ゼリー強度の測定を行う装置を示す正面図である。
【符号の説明】
【0053】
10 切り出し装置
11 機枠
12 裁断刃
13 送り刃
14 第1駆動部
15 第2駆動部
17,18 脱落阻止部材
20,25 回転軸
21 縦刃
23 縦組刃
26 横刃
27 脱落制御ピン
28 横組刃
31 容器アタッチメント
32 実ポット
33 空ポット
40 切り出し計量設備
44 計量装置
45 コントローラ
51 チルト機構
54 クランプ機構
55 ポット昇降機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転軸、及びこの第1回転軸の軸方向に離して取り付けられる複数の縦刃を有する第1回転刃と、
前記第1回転軸に平行に配置される第2回転軸、及びこの第2回転軸の軸方向に沿って、前記縦刃の間に取り付けられる複数の横刃を有する第2回転刃と、
前記第1回転刃及び第2回転刃を回転自在に保持し、前記第1回転軸及び前記第2回転軸の間から半固形物を送り出すための機枠と、
前記機枠に設けられ、前記縦刃及び横刃の隙間から前記半固形物の脱落を阻止する脱落阻止部材と、
前記第1及び第2回転軸を回転する駆動部とを備えることを特徴とする半固形物の切り出し装置。
【請求項2】
前記縦刃は、前記第1回転軸に直交する面内で一定ピッチで複数取り付けられて縦組刃とされ、且つ前記第1回転軸の軸方向において前記縦組刃の取り付け位置が隣り合うもの同士でずらされていることを特徴とする請求項1記載の半固形物の切り出し装置。
【請求項3】
前記横刃は、前記第2回転軸に直交する面内で一定ピッチで複数取り付けられて横組刃とされていることを特徴とする請求項1または2記載の半固形物の切り出し装置。
【請求項4】
前記第2回転刃は、前記第2回転軸に対し放射線方向で、且つ前記横組刃の前記横刃の間に取り付けられ、前記半固形物を突き刺して、前記半固形物の脱落を制御する脱落制御部材を有することを特徴とする請求項3記載の半固形物の切り出し装置。
【請求項5】
前記横刃の先端部には、前記第2回転軸の回転方向に曲げられた屈曲部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載の半固形物の切り出し装置。
【請求項6】
前記駆動部は、前記第1回転軸の回転速度を前記第2回転軸の回転速度よりも速くすることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項記載の半固形物の切り出し装置。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか1項記載の半固形物の切り出し装置を備え、前記半固形物を収納する収納容器に着脱自在に取り付けられる蓋部材と、
前記収納容器を切り出し対象容器の上方に位置させる切り出し位置と、この切り出し位置から前記収納容器を退避して前記蓋部材を着脱する着脱位置との間で、前記収納容器の位置を変位させる変位機構と、
前記切り出し対象容器の重量を計量する計量器と、
前記駆動部を制御して前記第1及び第2回転刃を回転させ、前記計量器で計量した計量値に基づき切り出した半固形物が一定値に達したときに、前記第1及び第2回転刃の回転を停止する制御部とを備えることを特徴とする半固形物の切り出し計量設備。
【請求項8】
第1回転軸、及びこの第1回転刃の軸方向に離して取り付けられる複数の縦刃を有する第1回転刃と、前記第1回転軸に平行に配置される第2回転刃、及びこの第2回転軸の軸方向に沿って、前記縦刃との間に取り付けられる複数の横刃を有する第2回転刃とを用い、
前記第1回転刃及び第2回転刃を回転させて、前記第1回転軸及び第2回転軸の間から前記半固形物を前記縦刃及び横刃によりブロック状に切り出すことを特徴とする半固形物の切り出し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−240936(P2009−240936A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91065(P2008−91065)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】