説明

半導体可変容量素子

【課題】PN接合構造の可変容量素子は、逆電圧を印可するため、少なからぬリーク電流を生じる。リーク電流の小さい理想的な半導体可変容量素子を提供する。
【解決手段】P型半導体層1とN型半導体層2よりなる積層体と電極との間に絶縁層3を設けることにより、リーク電流の流れない半導体可変容量素子が可能となった。また、電極への逆方向バイアス電圧の印加により、低周波において、印加された逆方向バイアス電圧に比例する可変容量を生じる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【産業上の利用分野】
本発明は半導体を用いた可変容量素子に関するものである。
【背景技術】
半導体可変容量素子としてMOS構造のMOS VaractorとP−N接合構造のP−N接合ダイオードとがある。本発明は後者に関するものである。
P−N接合ダイオードは、P型半導体層とN型半導体層との積層体の両側に電極を設けてなるものであり、逆方向の電圧を印加して使用する。
このP−N接合ダイオードは印加電圧の値によって接合容量値が変化する。
容量は電圧の平方根に逆比例する。容量値が変化する理由はP−N接合の空乏層の広がりが印加電圧に支配される為である。
【発明が解決しようとする課題】
逆電圧を印加するので当然に少なからぬリーク電流を生じる。
本発明の目的はリーク電流が小さい理想的な半導体可変容量素子及びその容量設定方法の提供にある。
【課題を解決する為の手段】
第1発明に係わる半導体可変容量素子は、第1電極、P型半導体層,N型半導体層、絶縁膜及び第1電極に印加する電位より高電位を印加すべき第2電極をこの順に備えることを特徴とする。
第2発明に係わる半導体可変容量素子は、第1電極、N型半導体層、P型半導体層、絶縁膜及び第1電極に印加する電位より低電位を印加すべき第2電極をこの順に備えることを特徴とする。
【作用】
第2図に示すように、P型半導体層1を接地して電極4に正電圧に印加すると、このP−N接合は逆方向に電圧が印加される。この印加電圧は空乏層内で電子及び正孔を発生させる。この発生した電子及び正孔はリーク電流を形成する。本発明の半導体可変容量素子では電極4、5の間に絶縁膜が存在するのでリーク電流は一切流れない。
そして電子及び正孔は信号電圧の周波数の影響を受ける。
P−N接合内で発生した電子及び正孔は信号変化の早い高周波信号に追随することができず、むしろ信号変化の遅い低周波信号に追随して動きやすくなる。電子及び正孔の信号変化に対する追随が大きければ容量値は大きくなる。
従って低周波信号に対する容量値は高周波信号に対する容量値よりも大きくなる。又半導体と絶縁膜との界面には表面量子状態(通常、表面状態と称す)が存在する。
一つの表面状態は容量Csと抵抗Rsとの直列結合回路で示される.実際の半導体と絶縁膜との界面には多数の表面状態が存在する。第2図の場合、逆方向の印加電圧は電子を表面状態に移動させる。移動した電子は容量Csを与える。上記正電圧を更に大きくすると、P−N接合の空乏層が広がり、多数の電子が移動し容量Csは増加する。また第5図には、N型半導体層2を接地して、電極4に負電圧を印加する場合が示されている。
この場合もP−N接合に逆方向の電圧が印加される。印加電圧は正孔を表面状態に移動させる。移動した正孔は容量Csを与える。上記負電圧を更に大きくすると、P−N接合の空乏層が広がり、多数の正孔が移動し、容量Csは増加する。
第6図には、第2図および第5図の等価回路が示されている。第6図にはn個の表面状態が存在する場合が示されている。
表面状態の容量Csは絶縁膜の容量Ci及び逆方向電圧印加のP−N接合容量Cに比べて、充分に小さいので、第6図の等価回路は近似的に第7図のようになる。第7図はn個の表面状態が存在する場合が示されている。
第3図の容量値は第7図によって示される。
【実施例】
第1図は本発明の半導体可変容量素子の断面構造図である。P型半導体層1及びN型半導体層2の積層体と絶縁膜3とが積層されており、その両側に電極4,5が配されている。この半導体可変容量素子は第2図に示すように逆方向に電圧を印加する。逆方向に電圧を印加することにより、公知のように、空乏層内に電子が発生しN型半導体層2へ注入される。N型半導体層2へ注入された電子はN型半導体層2と絶縁膜3との界面に至る。
従ってこの電子、表面状態及び電極4からなるコンデンサができた状態になる。第3図に示すように容量は電圧の変化に対して増加する。
次にリーク電流については、電極4,5間に絶縁膜3が存在するからこの電極4,5に電流は表面状態へのチャージアップのための電流の外は一切流れない。
次にこのような半導体可変容量素子の製造方法について説明する。
厚さ100μm程度、比抵抗1〜6Ω・cm、望ましくは2〜8Ω・cmのシリコンP型半導体基板をP型半導体層とし、
これに比抵抗1〜6Ω・cm望ましくは1〜5Ω・cmのシリコンN型半導体を厚さ10μmに形成し、N型半導体層2とする。
次にこの上に厚さ2000ÅのSiO膜を熱酸化法によって形成し、絶縁膜3とする。この絶縁膜3の上面に電極4を蒸着形成し、一方P型半導体基板の表面に電極5を蒸着形成する。
第3図の特性は電極4,5の面積が0.25cmである場合の上記実施例の測定結果である。
第4図はP型半導体層1及びN型半導体層2の絶縁膜に対する関係を第1図の実施例と逆にした他の実施例を示す。即ち電極5、N型半導体層2、P型半導体層1、絶縁膜3及び電極4がこの順に積層されている。
この場合は第5図に示すように電極4側が−、電極5側が接地になるように電源を接続して逆方向の電圧を印加する。
このような絶縁膜3とP型半導体層1との界面には、P−N接合の空乏層から注入された正孔が集まり、これと電極4との間に表面状態6を挟んだコンデンサが形成されることになる。
特性は第1,2図の実施例の場合と全く同様であり、0に近いリーク電流が得られる。
【発明の効果】
以上にような本発明による場合はリーク電流の少ない素子が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1図は本発明に係わるP型半導体基板使用の可変容量素子を示す構成図、
【図2】第2図は、第1図の素子の使用方法を示す図、
【図3】第3図は第2図に基づく測定結果を示す図、
【図4】第4図は本発明に係わるN型半導体基板使用の可変容量素子を示す図、
【図5】第5図は第4図の素子使用方法を示す図、
【図6】第6図は第2図の等価回路を示す図、
【図7】第7図は第6図の近似的等価回路を示す図である。
【符号の説明】
1・・・P型半導体層 2・・・N型半導体層 3・・・絶縁膜
4,5・・・電極 6・・・表面状態に関する容量C
7・・・絶縁膜の容量C 8・・・逆電圧印加時のP−N接合容量C
9・・・表面状態に関する抵抗R

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極、P型半導体層,N型半導体層、絶縁膜及び第1電極に印加する電位より高電位を印加すべき第2電極をこの順に備えることを特徴とする半導体可変容量素子。
【請求項2】
第1電極、N型半導体層、P型半導体層、絶縁膜及び第1電極に印加する電位より低電位を印加すべき第2電極をこの順に備えることを特徴とする半導体可変容量素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−106023(P2013−106023A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260965(P2011−260965)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(511290019)
【Fターム(参考)】