説明

半導体装置の検査方法及び検査装置

【課題】密閉空間内の制御された雰囲気下でデバイス特性を安定且つ再現性良く検査する。
【解決手段】密閉空間内の制御された雰囲気下に配置された半導体装置の複数の電極パッドに複数の接続端子をそれぞれ同時に接触させ、密閉空間外と接続され且つ密閉空間内に配置された複数の信号配線及び複数の接続端子を介して複数の電極パッドに対して電気信号の授受を行うことで半導体装置を検査する。ここで、複数の接続端子のうち複数の信号配線がそれぞれ接続される複数の接続端子を密閉空間内において順次切り替えることにより、半導体装置の複数の電極パッドのうち電気信号の授受が行われる複数の電極パッドを順次切り替えて、半導体装置を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置の検査方法及び検査装置に関する。特に、制御された雰囲気の中で検査を行わなければならない半導体装置の検査方法及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の微細加工技術やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術の進展に伴い、新たな機能デバイスの開発が進んでいる。その様な機能デバイスの中には、特定の環境下でないと動作しない、或いは有効に機能しないデバイス(素子)も多い。例えば、先端を鋭い形状に加工したコーン形状やタワー形状の微細な複数のエミッタを配列した冷陰極電子源素子は、エミッタ先端に印加した電界により電子を放出させるためには真空環境が必要であるので、内部を真空排気して密封(真空封止)したガラス管やガラスプレート内に実装して用いられる。また、近赤外線検出素子、イメージセンサ、或いはX線検出素子などは、良好な感度を得るためには0℃〜−100℃に、更には液体窒素温度(77K)や超伝導温度(〜4K以下)にまで冷却する必要がある。通常、冷却する必要のあるデバイスは、結露を防止するために気密封止して用いられる。
【0003】
この様な特定の環境下でないと動作しない、或いは有効に機能しないデバイスの検査は、デバイスを真空封止或いは気密封止した後に行なわれるのが一般的である。しかし、デバイスの製造工程である実装工程や封止工程が得られるデバイスの特性に影響を及ぼす場合があるため、ウエハプロセス終了後の素子完成段階、例えば冷陰極電子源素子であればSiウエハ上に形成された状態で、近赤外線検出素子であればInGaAsウエハ上に形成された状態で検査すると、デバイス本来の性能が評価できる。また製造工程を考えると、ウエハプロセス終了後に検査して不良デバイスを選別できれば、その後の実装・封止工程でのロスを減らし歩留りの向上と製造コストの低減に非常に有効である。
【0004】
ウエハプロセス終了後のデバイスを特定の環境下で検査するための方法として、内部を所定の環境に制御できるチャンバ(密閉容器)に、外部から操作が可能な複数のマニピュレータを取り付け、マニピュレータの先端に取り付けた複数のプローブピンを、チャンバ内のステージ上に載置されたウエハ上の被検査デバイスの電極パッド(信号入出力端子、即ち実装端子)に接触させて検査を行う方法がある。各々のプローブピンはチャンバの壁に取り付けられた信号導入端子を介してチャンバ外の計測器と接続されており、これにより被検査デバイスへの電圧印加や、被検査デバイスからの検出電流の計測器への取り込み等の操作が可能である。チャンバ内の空間は被検査デバイスの動作に必要な環境に制御可能で、例えば冷陰極電子源素子であれば1×10-3Pa以下の圧力に制御され、また近赤外線検出素子であれば1×10-1Pa以下の圧力で且つステージを0℃以下の所定の温度に制御される。このようにして、ウエハプロセス終了段階で各々のデバイスの本来の性能を評価することができる。
【0005】
一方、近年フラットパネルディスプレイ分野で注目されているFED(Field Emission Display)や近赤外領域まで検出可能な高感度CCD(電荷結合型撮像素子)カメラなどの場合、基本セル(単位素子)、例えばFEDであれば冷陰極電子源、また高感度CCDカメラであれば近赤外線検出素子がマトリックス状に配置されているため、一つの単位素子を制御するための電極パッドが非常に多い。例えば30万画素のFEDやカメラであれば、縦256本、横320本のライン状電極があり、駆動用ドライバが混載されていなければ、デバイス上には少なくとも576本(256本+320本)の電極パッドが必要である。従って、このようなデバイスを検査する場合、上記のプローブピンを必要な数だけ備えたマニピュレータをチャンバに取り付けることは実質的に不可能である。
【0006】
多数の電極パッドを有するデバイス、例えばLSIなどを検査するには、通常、図8に示す様なプローブカード301が用いられる。プローブカード301は、中央に先端の尖った複数のプローブピン302が取り付けられている。複数のプローブピン302は、その先端が同一平面に位置するように高さが揃えられ、且つ、それぞれが被検査デバイス309の複数の電極パッドの位置に合うように配置されている。複数のプローブピン302は、プローブカード301上に形成された複数の接続配線303を介してプローブカード301上に配置された信号入出力用の複数のピン受け304と電気的に接続されている。これにより、複数のプローブピン302が被検査デバイス309の複数の電極パッドと接触すると、複数の電極パッドは複数のピン受け304とそれぞれ電気的に接続される。
【0007】
図9は従来の半導体装置の検査装置の主要部の断面図である。サンプルステージ308上に保持された被検査デバイス309の検査は以下のようにして行われる。コネクタボード305がプローブカード301の上方に昇降可能に設けられている。コネクタボード305には、導電性スプリング306aをそれぞれ備えた複数のコネクタピン306が設けられている。コネクタボード305が下降されると、コネクタピン306の導電性スプリング306aがピン受け304と弾性的に接触する。複数のコネクタピン306は複数の信号配線307及びチャンバに設けられた複数の信号導入端子を介してチャンバ外に設置された計測器等(図示せず)に接続されている。以上により、チャンバ外の計測器等からの信号がプローブピン302を介して被検査デバイス309の電極パッドに供給され、また被検査デバイス309からの電流や信号等はプローブピン302を介してチャンバ外の計測器等に検出される。
【0008】
以上のように、プローブカード301を用い、被検査デバイス309の複数の電極パッドと複数の信号配線307とを一対一で接続することで、被検査デバイス309の検査を行うことができる。通常は、複数のコネクタピン306及び複数のピン受け304の配置はできるだけ共通化され、複数のプローブピン302の配置のみが被検査デバイス309に応じて異なる複数のプローブカード301が予め作製される。そして、被検査デバイス309に応じてプローブカード301を交換することで、異なる種類のデバイスの検査が行われる。
【0009】
プローブカード301に設けられるプローブピン302の数は、通常は数十本程度から多いものでは数百本の程度であるが、近年では千本を越える場合もある。
【特許文献1】特開平11−231022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の従来の半導体装置の検査方法及び検査装置では、基本的には被検査デバイス309の電極パッドの数と同数の信号配線307がコネクタボード305に接続されており、信号配線307と同数の信号導入端子がチャンバに設けられている。被検査デバイス309が、一般的な環境下で評価可能なデバイスであれば何ら問題なく検査を行うことができる。しかしながら、前述したような真空中でなければ評価できないデバイスのように閉じた空間内に形成した特殊な環境下で検査を行う必要があるデバイスであって、且つ画素がマトリックス状に配置されたデバイスのように必要なプローブピンの数が非常に多いデバイスを検査する場合には以下のような問題が生じる。
【0011】
第一に、信号配線の数が数百本から千本を越えるような場合、チャンバの内外を電気的に接続する信号導入端子を信号配線の数と同数だけ設けるためにチャンバ上に広い面積が必要であり、更に、信号配線を収納するためにチャンバ内に大きな空間が必要である。従って、大容量のチャンバが必要となり、また、チャンバ内を真空に維持するために高い能力を備えた排気系が必要となる。よって、全体として検査装置が巨大化し、検査装置のコストが上昇する。更に、検査装置を設置するための建屋を補強等する必要が生じ、更にコストが必要である。これらの結果、検査コストが上昇してしまう。
【0012】
第二に、仮にコストを度外視して千本を超える信号配線をチャンバ内に収納した場合、信号配線の全表面からのガス放出は無視できない程になる。信号配線同士を互いに電気的に絶縁する必要があるため、多数の信号配線を取り扱う場合には一般的に樹脂で被覆された信号配線が用いられる。しかし、樹脂からは大量の水分が放出されるため十分な真空度を実現するのは非常に困難である。信号配線同士を絶縁する方法としては、樹脂で被覆する方法以外に、個々の信号配線をセラミックチューブに通す方法や、セラミックで被覆した信号配線を用いる方法もあるが、これらの方法を採った場合にも、信号配線数が膨大になるとその表面に吸着された水分の脱離量は無視できず、冷陰極電子源素子のようなデバイスでは特性劣化やデバイスの破壊等の悪影響を与える。また排気能力が低下することにより検査のスループットが低下し、検査コストの上昇につながる。
【0013】
本発明は、上記の従来の問題を解決し、閉じた空間内の良好な環境を維持することができ、検査のスループットが低下することなく、更にデバイス特性を安定且つ再現性良く評価することができる半導体装置の検査方法及び検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の半導体装置の第1の検査方法では、密閉空間内の制御された雰囲気下に配置された半導体装置の複数の電極パッドに複数の接続端子をそれぞれ同時に接触させ、前記密閉空間外と接続され且つ前記密閉空間内に配置された複数の信号配線及び前記複数の接続端子を介して前記複数の電極パッドに対して電気信号の授受を行うことで前記半導体装置を検査する。
【0015】
そして、前記複数の接続端子のうち前記複数の信号配線がそれぞれ接続される複数の接続端子を前記密閉空間内において順次切り替えることにより、前記半導体装置の前記複数の電極パッドのうち電気信号の授受が行われる複数の電極パッドを順次切り替えて、前記半導体装置を検査する。
【0016】
本発明の半導体装置の第2の検査方法では、密閉空間内の制御された雰囲気下に配置された半導体装置の複数の電極パッドに複数の接続端子をそれぞれ同時に接触させ、前記密閉空間外と接続され且つ前記密閉空間内に配置された複数の信号配線及び前記複数の接続端子を介して前記複数の電極パッドに対して電気信号の授受を行うことで前記半導体装置を検査する。
【0017】
ここで、前記半導体装置は、互いに平行な複数の第1ライン状電極と、前記複数の第1ライン状電極に対して交差して配置された互いに平行な複数の第2ライン状電極と、前記複数の第1ライン状電極及び前記複数の第2ライン状電極が交差する各位置にマトリックス状に配置された複数の単位素子とを備える。また、前記電極パッドが、前記複数の第1ライン状電極及び前記複数の第2ライン状電極のそれぞれに設けられている。
【0018】
そして、前記複数の接続端子のうち前記複数の信号配線がそれぞれ接続される複数の接続端子を前記密閉空間内において順次切り替えることにより、前記複数の第1ライン状電極にそれぞれ設けられた複数の前記電極パッドのうち電気信号の授受が行われる電極パッドを順次切り替え、且つ、前記複数の第2ライン状電極にそれぞれ設けられた複数の前記電極パッドのうち電気信号の授受が行われる電極パッドを順次切り替えて、前記複数の単位素子を順次検査する。
【0019】
本発明の半導体装置の第3の検査方法では、密閉空間内の制御された雰囲気下に配置された半導体装置の複数の電極パッドに複数の接続端子をそれぞれ同時に接触させ、前記密閉空間外と接続され且つ前記密閉空間内に配置された複数の信号配線及び前記複数の接続端子を介して前記複数の電極パッドに対して電気信号の授受を行うことで前記半導体装置を検査する。
【0020】
ここで、前記半導体装置は、第1ライン状電極と、前記第1ライン状電極に対して交差して配置された複数の第2電極と、前記第1ライン状電極及び前記複数の第2電極が交差する各位置に一直線状に配置された複数の単位素子とを備える。また、前記電極パッドが、前記第1ライン状電極及び前記複数の第2電極のそれぞれに設けられている。
【0021】
そして、前記複数の接続端子のうち前記複数の信号配線がそれぞれ接続される複数の接続端子を前記密閉空間内において順次切り替えることにより、前記複数の第2電極にそれぞれ設けられた複数の前記電極パッドのうち電気信号の授受が行われる電極パッドを順次切り替えて、前記複数の単位素子を順次検査する。
【0022】
本発明の半導体装置の第4の検査方法では、密閉空間内の制御された雰囲気下に配置されたウエハ上に形成された複数の半導体装置に設けられた複数の電極パッドに複数の接続端子を同時に接触させ、前記密閉空間外と接続され且つ前記密閉空間内に配置された複数の信号配線及び前記複数の接続端子を介して前記複数の電極パッドに対して電気信号の授受を行うことで前記半導体装置を検査する。
【0023】
そして、前記複数の接続端子のうち前記複数の信号配線がそれぞれ接続される複数の接続端子を前記密閉空間内において順次切り替えることにより、前記複数の半導体装置を順次検査する。
【0024】
本発明の半導体装置の検査装置は、密閉空間を形成し、前記密閉空間内を所定の雰囲気に制御するチャンバと、前記チャンバの外内間の電気信号の授受を行うために前記チャンバに設けられた複数の信号導入端子と、前記チャンバ内に配置され、前記複数の信号導入端子にそれぞれ接続された複数の信号配線と、検査対象である半導体装置の複数の電極パッドにそれぞれ同時に接触される複数の接続端子とを備える。
【0025】
そして、半導体装置の検査装置は、更に、前記複数の接続端子のうち前記複数の信号配線がそれぞれ接続される複数の接続端子を順次切り替えるスイッチング素子を前記チャンバ内に備える。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、多数の検査電極パッドを有するデバイスを制御された密閉空間内で検査する場合において、密閉空間内の信号配線の数を少なくすることができるので、密閉空間内の雰囲気を著しく汚染・劣化させることなく、信頼性の高い検査を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の半導体装置の第1の検査方法では、密閉空間内の制御された雰囲気下に配置された半導体装置の複数の電極パッドに複数の接続端子をそれぞれ同時に接触させ、前記密閉空間外と接続され且つ前記密閉空間内に配置された複数の信号配線及び前記複数の接続端子を介して前記複数の電極パッドに対して電気信号の授受を行うことで前記半導体装置を検査する。
【0028】
そして、前記複数の接続端子のうち前記複数の信号配線がそれぞれ接続される複数の接続端子を前記密閉空間内において順次切り替えることにより、前記半導体装置の前記複数の電極パッドのうち電気信号の授受が行われる複数の電極パッドを順次切り替えて、前記半導体装置を検査する。
【0029】
本発明の第1の検査方法によれば、被検査デバイスである半導体装置に備えられた電極パッドの数に対して、密閉空間内の信号配線の数を少なくすることができる。従って、検査装置を小型化することができ、信号配線から放出されるガス量を低減することができるので、密閉空間内の雰囲気の制御が容易になる。その結果、大気中では評価できないような半導体装置でも、ウエハプロセス終了段階でその本来の特性を評価することが可能となる。
【0030】
本発明の半導体装置の第2の検査方法では、密閉空間内の制御された雰囲気下に配置された半導体装置の複数の電極パッドに複数の接続端子をそれぞれ同時に接触させ、前記密閉空間外と接続され且つ前記密閉空間内に配置された複数の信号配線及び前記複数の接続端子を介して前記複数の電極パッドに対して電気信号の授受を行うことで前記半導体装置を検査する。
【0031】
ここで、前記半導体装置は、互いに平行な複数の第1ライン状電極と、前記複数の第1ライン状電極に対して交差して配置された互いに平行な複数の第2ライン状電極と、前記複数の第1ライン状電極及び前記複数の第2ライン状電極が交差する各位置にマトリックス状に配置された複数の単位素子とを備える。また、前記電極パッドが、前記複数の第1ライン状電極及び前記複数の第2ライン状電極のそれぞれに設けられている。
【0032】
そして、前記複数の接続端子のうち前記複数の信号配線がそれぞれ接続される複数の接続端子を前記密閉空間内において順次切り替えることにより、前記複数の第1ライン状電極にそれぞれ設けられた複数の前記電極パッドのうち電気信号の授受が行われる電極パッドを順次切り替え、且つ、前記複数の第2ライン状電極にそれぞれ設けられた複数の前記電極パッドのうち電気信号の授受が行われる電極パッドを順次切り替えて、前記複数の単位素子を順次検査する。
【0033】
本発明の第2の検査方法によれば、例えば、冷陰極電子源素子を用いたFEDや近赤外線検出CCDのように、マトリックス状に配置された複数の単位素子を備え、大気中或いは室温では動作できない半導体装置の単位素子を、真空中において、破壊及び劣化させることなく、簡便且つ効率よく検査することが可能となる。その結果、検査コストを低減でき、また、早い段階で不良素子を排除することで製造コストも低減できる。
【0034】
本発明の半導体装置の第3の検査方法では、密閉空間内の制御された雰囲気下に配置された半導体装置の複数の電極パッドに複数の接続端子をそれぞれ同時に接触させ、前記密閉空間外と接続され且つ前記密閉空間内に配置された複数の信号配線及び前記複数の接続端子を介して前記複数の電極パッドに対して電気信号の授受を行うことで前記半導体装置を検査する。
【0035】
ここで、前記半導体装置は、第1ライン状電極と、前記第1ライン状電極に対して交差して配置された複数の第2電極と、前記第1ライン状電極及び前記複数の第2電極が交差する各位置に一直線状に配置された複数の単位素子とを備える。また、前記電極パッドが、前記第1ライン状電極及び前記複数の第2電極のそれぞれに設けられている。
【0036】
そして、前記複数の接続端子のうち前記複数の信号配線がそれぞれ接続される複数の接続端子を前記密閉空間内において順次切り替えることにより、前記複数の第2電極にそれぞれ設けられた複数の前記電極パッドのうち電気信号の授受が行われる電極パッドを順次切り替えて、前記複数の単位素子を順次検査する。
【0037】
本発明の第3の検査方法によれば、一直線状に配列された複数の単位素子を備えた、所謂ラインセンサと呼ばれるような半導体装置の単位素子を、真空中において、破壊及び劣化させることなく、簡便且つ効率よく検査することが可能となる。その結果、検査コストを低減でき、また、早い段階で不良素子を排除することで製造コストも低減できる。
【0038】
本発明の半導体装置の第4の検査方法では、密閉空間内の制御された雰囲気下に配置されたウエハ上に形成された複数の半導体装置に設けられた複数の電極パッドに複数の接続端子を同時に接触させ、前記密閉空間外と接続され且つ前記密閉空間内に配置された複数の信号配線及び前記複数の接続端子を介して前記複数の電極パッドに対して電気信号の授受を行うことで前記半導体装置を検査する。
【0039】
そして、前記複数の接続端子のうち前記複数の信号配線がそれぞれ接続される複数の接続端子を前記密閉空間内において順次切り替えることにより、前記複数の半導体装置を順次検査する。
【0040】
本発明の第4の検査方法によれば、ウエハ上に同一の複数の半導体装置を形成した場合において、制御された密閉空間内で、複数の半導体装置に複数の接続端子を同時に接触させた状態で、個々の半導体装置を順に検査することが可能になる。このとき、信号配線としては、1つの半導体装置を検査するのに必要な信号配線のみで足りる。例えばCRT等に用いる冷陰極電子源素子を複数作製したウエハの検査を真空中において行なう場合、一度の接続端子の接続のみで複数の冷陰極電子源素子を順次検査することが可能となり、電極パッドに対する接続端子の位置合わせに要する時間を削減して検査効率を向上させることができる。
【0041】
本発明の半導体装置の検査装置は、密閉空間を形成し、前記密閉空間内を所定の雰囲気に制御するチャンバと、前記チャンバの外内間の電気信号の授受を行うために前記チャンバに設けられた複数の信号導入端子と、前記チャンバ内に配置され、前記複数の信号導入端子にそれぞれ接続された複数の信号配線と、検査対象である半導体装置の複数の電極パッドにそれぞれ同時に接触される複数の接続端子とを備える。
【0042】
そして、半導体装置の検査装置は、更に、前記複数の接続端子のうち前記複数の信号配線がそれぞれ接続される複数の接続端子を順次切り替えるスイッチング素子を前記チャンバ内に備える。
【0043】
本発明の半導体装置の検査装置によれば、被検査デバイスである半導体装置に備えられた電極パッドの数に対して、密閉空間内の信号配線の数を少なくすることができる。従って、検査装置を小型化することができ、信号配線から放出されるガス量を低減することができるので、密閉空間内の雰囲気の制御が容易になる。その結果、大気中では評価できないような半導体装置でも、ウエハプロセス終了段階でその本来の特性を評価することが可能となる。
【0044】
上記の本発明の半導体装置の検査装置において、前記スイッチング素子は、機械的に接点を切り替えるロータリースイッチ又はスライドスイッチであることが好ましい。
【0045】
これにより、チャンバ内の雰囲気に影響を与えずに、且つ安価に、複数の信号配線が接続される複数の接続端子を順次切り替えることができる。また、接点の切り替えが機械的操作により行われるので、入出力される信号の電圧が高い場合でも何ら問題はなく、高電圧の半導体装置であっても安定且つ再現性良く検査することができる。
【0046】
上記において、前記接点の切り替えは前記チャンバ外からの電気信号に基づいて行われることが好ましい。
【0047】
これにより、スイッチング素子を小型化することができる。
【0048】
上記の本発明の半導体装置の検査装置において、前記スイッチング素子は、複数ビットの電気信号に応じて、1つの入力端子に入力された信号が出力される1つの出力端子を複数の出力端子の中から選択する半導体素子(例えばデマルチプレクサ)であることが好ましい。
【0049】
これにより、1つのスイッチング素子の出力端子数を非常に多くすることができるので、信号配線の数を劇的に少なくすることが可能となる。従って、検査装置を小型化することができ、また信号配線から放出されるガス量を低減することができるので、チャンバ内の雰囲気の制御が容易になり、環境が向上する。更に、信号配線の接続点が減ることにより検査装置の信頼性が向上する。
【0050】
上記の本発明の半導体装置の検査装置において、前記複数の信号配線の総数は前記複数の接続端子の総数の75%以下であることが好ましい。
【0051】
これにより、信号配線の数が劇的に少なくなるので、チャンバ内の雰囲気の制御が容易になり、環境が向上し、更に、信号配線の接続点が減ることによる検査装置の信頼性が向上する。
【0052】
以下、本発明を具体的な実施形態を示しながら説明する。但し、以下の実施形態や数値例は一例に過ぎず、本発明はこれらに限定されない。
【0053】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の検査装置、及びこの検査装置を用いた半導体装置の検査方法を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の検査装置の概略を示した切り欠き斜視図、図2は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の検査装置の概略を示した配線図である。
【0054】
本実施形態の半導体装置の検査装置は、密閉空間を形成するチャンバ101を備え、チャンバ101内に、コネクタボード108、プローブカード112、及び被検査デバイス116を載置するステージ115を備える。チャンバ101は、チャンバ101内を真空に維持するための真空ポンプなどが接続される排気口102と、チャンバ101内を所定のガス雰囲気に制御するためのガス導入口103と、チャンバ101の内部空間に全く影響を与えることなくチャンバ101の内外間で電気信号のやりとりをするための、相互に電気的に絶縁された複数の信号導入端子104と、チャンバ101内の様子を観察するための覗き窓105とを備えている。複数の信号導入端子104のチャンバ101外に露出した一端には、チャンバ101外に設置された計測器や制御電源等(図示せず)に接続された外部入出力用信号配線106(106a〜106d)が接続され、複数の信号導入端子104のチャンバ101内に露出した他端には、コネクタボード108上の複数の端子にそれぞれ接続された複数の信号配線107がそれぞれ接続されている。
【0055】
コネクタボード108には4つのスイッチング素子109(109a〜109d)が設けられている。図2に示すように、スイッチング素子109a,109bの一次側は信号配線107、信号導入端子104及び外部入出力用信号配線106bを介してチャンバ101外に設置された計測器等(図示せず)に接続されており、二次側はコネクタボード108上に形成された複数の切り替え出力配線110a,110bに接続されている。同様に、スイッチング素子109c,109dの一次側は信号配線107、信号導入端子104及び外部入出力用信号配線106dを介してチャンバ101外に設置された計測器等(図示せず)に接続されており、二次側はコネクタボード108上に形成された複数の切り替え出力配線110c,110dに接続されている。また、スイッチング素子109a,109bは信号配線107、信号導入端子104及び外部入出力用信号配線106aを介してチャンバ101外に設置された制御電源(図示せず)に接続されており、制御電源からの制御用信号に応じてスイッチング素子109a,109bは、その二次側に接続された複数の切り替え出力配線110a,110bのうちの1つを選択して一次側と接続する。同様に、スイッチング素子109c,109dは信号配線107、信号導入端子104及び外部入出力用信号配線106cを介してチャンバ101外に設置された制御電源(図示せず)に接続されており、制御電源からの制御用信号に応じてスイッチング素子109c,109dは、その二次側に接続された複数の切り替え出力配線110c,110dのうちの1つのを選択して一次側と接続する。外部入出力用信号配線106a〜106dのうち、計測器等に接続された外部入出力用信号配線106b,106dをデバイス検査用信号配線とも呼び、制御電源に接続された外部入出力用信号配線106a,106cをスイッチング素子駆動用信号配線とも呼ぶ。
【0056】
複数のオスコネクタピン111aがコネクタボード108を上下に貫通している。複数のオスコネクタピン111aの上端に複数の切り替え出力配線110a〜110dが接続されている。複数のオスコネクタピン111aの下端はコネクタボード108の下面より突出している。
【0057】
コネクタボード108の下方にはプローブカード112が配置されている。プローブカード112の中心には開口が形成されている。この開口内から下方に向かって突出するように、複数のプローブピン(接続端子)114が取り付けられている。複数のプローブピン114の先端の位置は、被検査デバイス116の検査用電極パッドの位置に一致する。複数のプローブピン114は、プローブカード112上に突き出すように形成された複数のプローブピン接続配線113を介してプローブカード112上に配置された複数のメスコネクタピン111bに接続されている。
【0058】
複数のオスコネクタピン111aと複数のメスコネクタピン111bとは一対一に対応しており、コネクタボード108とプローブカード112とを上下に重ね合わせることにより、各オスコネクタピン111aは対応するメスコネクタピン111bと電気的に接続される。更に、複数のプローブピン114は、ステージ115上に載置された被検査デバイス116の複数の検査用電極パッドにそれぞれ所定の圧力で押し付けられて電気的に接続される。この状態において、スイッチング素子109a〜109dは、被検査デバイス116の複数の電極パッドのうち、デバイス検査用信号配線106b,106dと電気的に接続される電極パッドを順次切り替える。
【0059】
図2に示す例では、被検査デバイス116は、X軸方向に延びる22本のエミッタ電極がY軸方向に等間隔で配置され、且つ、Y軸方向に延びる22本のゲート電極がX軸方向に等間隔で配置された冷陰極電子源素子である。ここで、X軸及びY軸は、水平面内に含まれ、互いに直交する。
【0060】
スイッチング素子109a〜109dのそれぞれの二次側には12の電極端子が設けられている。被検査デバイス116の22本のエミッタ電極のそれぞれの一端に設けられた電極パッド116yはプローブピン114等を介してスイッチング素子109a,109bの二次側と接続されている。また、被検査デバイス116の22本のゲート電極のそれぞれの一端に設けられた電極パッド116xはプローブピン114等を介してスイッチング素子109c,109dの二次側と接続されている。スイッチング素子109a〜109dのそれぞれの二次側の12の電極端子のうちの1つには何も接続されていない(即ち、オープン状態である)。
【0061】
スイッチング素子109a,109bのそれぞれの一次側は共通するデバイス検査用信号配線106bに接続されており、制御電源に接続された4本のスイッチング素子駆動用信号配線106aから入力される制御用信号に応じてスイッチング素子109a,109bが独立して制御されることにより、デバイス検査用信号配線106bからの信号が任意のエミッタ電極に供給される。同様に、スイッチング素子109c,109dのそれぞれの一次側は共通するデバイス検査用信号配線106dに接続されており、制御電源に接続された4本のスイッチング素子駆動用信号配線106cから入力される制御用信号に応じてスイッチング素子109c,109dが独立して制御されることにより、デバイス検査用信号配線106dからの信号が任意のエミッタ電極に供給される。
【0062】
即ち、図2の例では、合計44個の検査用電極パッド116x,116yを有する被検査デバイス116を、合計10本の信号配線107で検査することができる。被検査デバイスの検査用電極パッドの数(即ち、プローブピンの数)と同数の信号配線が必要であった従来の検査装置に比べると、図2の例では信号配線の数を約23%に削減することができる。
【0063】
本実施形態では、スイッチング素子109a〜109dはパルスモーターで駆動されるロータリースイッチであるが、スイッチング素子はこれに限定されず、例えばリニアモーターで駆動されるスライドスイッチであっても良く、その場合も上記と同様の効果を得ることができる。
【0064】
また、本実施形態では、スイッチング素子109a〜109dの操作は、パルスモーターをチャンバ外からの電気信号に基づいて駆動することで行われるが、本発明はこれに限定されない。例えば、チャンバ外からの電気信号に基づいて駆動されるアクチュエータを使用せずに、機械的な駆動機構でスイッチング素子を操作しても良い。
【0065】
また、コネクタボード108として円形の例を示したが、コネクタボードの形状は円形に限定されず、例えばスイッチング素子としてリニアモーターで駆動されるスライドスイッチを用いる場合には、長方形のコネクタボードを用いると利便性が高い。
【0066】
次に、図1及び図2に示した検査装置を用いた、マトリックス型の半導体装置である冷陰極電子源素子116の検査方法を示す。なお、図1には記載していないが、冷陰極電子源素子を検査する場合には電界放出された電子を捕捉するために、コネクタボード108及びプローブカード112中央の開口部を利用して冷陰極電子源素子116の上方にアノード電極が設けられる。
【0067】
被検査デバイス116である冷陰極電子源素子において、互いに略直交する22本のエミッタ電極と22本のゲート電極が交差する各位置に合計484個(=22×22)の冷陰極電子源(単位素子)が配置されている。22本のエミッタ電極のうちスイッチング素子109a,109bにより選択されたエミッタ電極に外部入出力用信号配線106bを介して電圧が印加され、22本のゲート電極のうちスイッチング素子109c,109dにより選択されたゲート電極に外部入出力用信号配線106dを介して電圧が印加される。これにより、それぞれ電圧が印加されたエミッタ電極とゲート電極とが交差する位置にある冷陰極電子源を動作させることができる。例えば、X軸方向に延びる22本のエミッタ電極のうちm番目のエミッタ電極をXm、Y軸方向に延びる22本のゲート電極のうちn番目のゲート電極をYnとする。
【0068】
冷陰極電子源が電子放出するための閾値電圧が30Vであり、エミッタ電極とゲート電極との間に60Vの電界を印加した時のエミッション電流を検査する場合を説明する。まず、スイッチング素子駆動用信号配線106aに接続された制御電源によりスイッチング素子109a,109bを操作してエミッタ電極Xm及びこれに接続された切り替え出力配線110a(又は110b)を選択し、且つ、スイッチング素子駆動用信号配線106cに接続された制御電源によりスイッチング素子109c,109dを操作してゲート電極Yn及びこれに接続された切り替え出力配線110c(又は110d)を選択する。次に、アノード電極(図示せず)に500V〜1kV程度の電圧を印加する。次に、チャンバ101外に設置されたソースメジャーユニット(SMU)によりデバイス検査用信号配線106bに−30Vの電圧を、同じくチャンバ101外に設置されたSMUによりデバイス検査用信号配線106dに+30Vの電圧を印加する。これにより、スイッチング素子109a,109bにより選択されたエミッタ電極Xmに−30Vの電圧が印加され、且つ、スイッチング素子109c,109dにより選択されたゲート電極Ynに+30Vの電圧が印加され、エミッタ電極Xm及びゲート電極Ynの交点に位置する冷陰極電子源のエミッタ電極上のエミッタとゲート電極との間に60Vの電界が生じ、エミッタから電子ビームがアノード電極に向かって放出される。この電子ビームの電流値(即ち、エミッション電流)は、デバイス検査用信号配線106bに接続されたSMUの電流計、及びアノード電極に接続された電流計により測定できる。このとき、エミッタ電極Xm以外のエミッタ電極及びゲート電極Yn以外のゲート電極には電圧が印加されないため、エミッタ電極Xmとゲート電極Ynとの交点に位置する冷陰極電子源以外の冷陰極電子源のエミッタ電極とゲート電極との間には電界が生じないから電子ビームは放出されず、エミッション電流は流れない。スイッチング素子109a,109b及びスイッチング素子109c,109dを操作してエミッタ電極及びゲート電極を任意に選択することで、マトリックス状に配置された484個の冷陰極電子源のうちの所望する1つについてエミッション特性等の検査を行なうことが可能となる。
【0069】
以上のように、従来ならプローブピン114と同数の44本の信号配線107が必要な上記マトリックス型の冷陰極電子源素子の検査において、本実施形態では信号配線107の数を10本に削減することができる。本実施形態では、図面及び説明の分かり易さを考慮してマトリックス型半導体装置の単位素子の配置を22行×22列としたが、実際のデバイスでは単位素子の数は比較にならない程多い。例えばビデオカメラに用いられている様な電荷結合型撮像素子(CCD)などでは、640行×480列にライン状電極が配置され、約30万個の単位素子(画素)がマトリックス状に配列されている。更に、例えば赤外線検出用のCCDである場合には、結露を防止する為に真空中で冷却しながら検査を行なわなければならない。1120本(640本+480本)もの信号配線107をチャンバ101内に収納すると、信号配線の総表面積が著しく増大し、これから水分を主とした大量のガス成分が放出されることにより、チャンバ101内の真空環境が著しく劣化する。また、信号配線107と同数、即ち1120個の信号導入端子104をチャンバ101に設置するためには膨大な領域が必要となり、チャンバの容積が巨大になる。これらの結果、真空排気用ポンプを含めた装置の制作費が非常に高価になり、また、真空環境の劣化により被検査デバイスに特性劣化や破壊などの悪影響が生じる。しかしながら、本実施形態の検査装置を用いた場合には、640行のライン状電極に対して59個、480列のライン状電極に対して44個のスイッチング素子を用いることで、マトリックス状に配置された約30万個の単位素子の中から任意の1つの単位素子を選択して検査することが可能である。この場合、必要な外部入出力用信号配線106の数は、640行のライン状電極に対してスイッチング素子駆動用信号配線として118本、デバイス検査用信号配線として1本、480列のライン状電極に対してスイッチング素子駆動用信号配線として88本、デバイス検査用信号配線として1本の合計208本で済み、信号配線107の数もこれと同数でよいから、信号配線107の数は従来の約19%に削減される。その結果、検査装置を小型化でき、検査装置の制作費が安価になる。更に、信号配線の数が激減することによりチャンバ内の真空環境を良好に維持することができるので、被検査デバイスに悪影響を与えることなく、デバイス本来の特性を検査することが可能となる。
【0070】
図3は、代表的なマトリックス型半導体装置を検査する場合における、本実施形態に係る検査装置の効果を示した図である。図3において、「切り替え端子数」は1つのスイッチング素子が有する二次側の端子数である。「H」はマトリックス型半導体装置のX軸方向に延びるライン状電極の数、「V」はY軸方向に延びるライン状電極の数である。「プローブピン総数」はX軸方向及びY軸方向に延びるライン状電極の総数と一致し、更に従来の検査装置において必要な信号配線の数に一致する。「スイッチング素子数」は、検査装置に備えられるスイッチング素子の総数である。「信号配線数」は本実施形態に係る検査装置に必要な信号配線の総数である。「削減度合い」は、本実施形態に係る検査装置における、プローブピン114の総数に対する信号配線107の総数の割合(%)である。図3より、切り替え端子数が多いほど、削減度合いが小さくなり、従来に比べて信号配線の数の削減効果が大きくなる。
【0071】
本実施形態では、被検査デバイスが単位素子(冷陰極電子源)がマトリックス状に配置されたマトリックス型半導体装置である場合を例に説明したが、本発明において被検査デバイスはこれに限定されず、如何なる半導体装置であっても良い。例えば、所謂ラインセンサと呼ばれるような複数の単位素子が一直線状に配列された半導体装置であっても良い。
【0072】
また、本実施形態では、ステージ上に単一の半導体装置を載置して検査する例(即ち、チップ状態での検査)を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ウエハ上に複数の半導体装置を形成した直後の状態、即ち、個々の半導体装置(チップ)に切断する前の状態にて検査することもできる(即ち、ウエハ状態での検査)。この場合、全ての半導体装置の電極パッドにプローブピンをそれぞれ接触させた状態で、個々の半導体装置を順に検査していくことができる。これにより、プローブカードを下降させて全ての半導体装置の電極パッドにプローブピンをそれぞれ接触させた後は、全ての半導体装置の検査が終了するまでプローブカードを上昇させることなく、検査しようとする半導体装置に応じてスイッチング素子を操作するだけで、全ての半導体装置を順に効率よく検査することができる。
【0073】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の検査装置の概略を示した配線図である。本実施形態の検査装置は、スイッチング素子120として半導体素子を備えたデマルチプレクサ121を用いた点で、ロータリースイッチやスライドスイッチのように機械的に接点を切り替えるスイッチング素子109a〜109dを用いた第1の実施形態の検査装置と異なり、その他の基本的構成は第1の実施形態の検査装置と同じである。第1の実施形態の検査装置と同一の部材には同一の符号を付して,それらについての説明を省略する。図4において、102aは排気口102に設けられたバルブ、103aはガス導入口103に設けられたバルブである。
【0074】
デマルチプレクサ121単体の制御方法を図5(A)及び図5(B)を用いて説明する。このデマルチプレクサ121は、3ビットのアドレス端子A0,A1,A2の電位を低電位(L)もしくは高電位(H)に設定することで8つの出力端子Y0〜Y7のうちのいずれか1つを選択し、入力端子X3に入力された基準電圧Vccを選択された1つの出力端子から出力することができる(8ビット出力)。デマルチプレクサ121を単体で動作させる場合には、入力端子X1、X2を0V(接地電位)、入力端子X3を基準電圧Vccとし、入力端子X3に入力される基準電圧Vccを出力端子Y0〜Y7のいずれかに出力させる。この8ビット出力デマルチプレクサを用いた場合は、一次側にA0〜A2及びX3(X1、X2はチャンバ内で接地)の4端子を備え、二次側にプローブピン114にそれぞれ接続されるY0〜Y7の8端子を備える。検査装置がより多くのプローブピンを備える場合には、デマルチプレクサ121を複数並べて、第1の実施形態と同様に入力端子X3を共通する外部入出力用信号配線に接続すれば良い。
【0075】
図6(A)は図5(A)に示したデマルチプレクサ121を4つ並列に備えた32ビット出力のデマルチプレクサの回路図、図6(B)はその真理値表である。このデマルチプレクサは、一次側に3ビットのアドレス端子A0〜A2と3つの入力端子A3〜A5と基準電位Vccが与えられる端子Vccの合計7端子を備え、二次側にプローブピン114にそれぞれ接続されるY0〜Y31の32端子を備える。
【0076】
図7は、代表的なマトリックス型半導体装置を検査する場合における、本実施形態に係る検査装置の効果を示した図である。図7において、「H」はマトリックス型半導体装置のX軸方向に延びるライン状電極の数、「V」はY軸方向に延びるライン状電極の数である。「ビット数」とはスイッチング素子としてのデマルチプレクサのアドレス端子数、「入力端子数」とはスイッチング素子としてのデマルチプレクサのアドレス端子を含む一次側端子の総数、「出力端子数」とはスイッチング素子としてのデマルチプレクサの二次側端子の総数である。「スイッチング素子数」は、検査装置に備えられるデマルチプレクサの総数である。「削減度合い」は、本実施形態に係る検査装置における、プローブピン114の総数に対する信号配線107の総数の割合(%)である。
【0077】
本実施形態も、第1の実施形態と同様に、信号配線107の数を従来に比べて削減することができる。その結果、検査装置が小型化でき、検査装置の制作費が安価になる。更に、信号配線の数が激減することによりチャンバ内の真空環境を良好に維持することができるので、被検査デバイスに悪影響を与えることなく、デバイス本来の特性を検査することが可能となる。
【0078】
また、本実施形態では、スイッチング素子としてデマルチプレクサとして機能する半導体素子を用いるので、スイッチング素子を小型にすることができ、これにより検査装置の更なる小型化が可能である。特に、多くのプローブピンを必要とするデバイスを検査する検査装置においてその効果は顕著である。
【0079】
以上の第1及び第2の実施形態では、スイッチング素子をコネクタボード108上に設置しているが、本発明はこれに限定されない。特に第2の実施形態のようにスイッチング素子としてデマルチプレクサとして機能する半導体素子を用いる場合にはスイッチング素子をプローブカード112上に設置してもよい。本発明においてスイッチング素子は、雰囲気を制御された密閉空間内に設置された被検査デバイスを検査する際に電極パッド(プローブピン)の数に比べて必要な信号配線の数を大幅に少なくするために設けられており、雰囲気を制御された密閉空間内であれば、その配置位置は特に限定されない。
【0080】
また、以上の第1及び第2の実施形態では、被検査デバイスの電極パッドに対して電気信号の授受を行うために、プローブカードに備え付けられた針状のプローブピンを電極パッドに接触させる方法を用いたが、本発明はこれに限定されず、例えばバンプ技術を用いてフレキシブルフィルム上に形成されたバンプ状接続端子を電極パッドに押し当てる方法を用いても何ら問題ない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の利用分野は特に制限はないが、例えば、真空中での電子放出特性を評価する必要がある冷陰極電子源素子や、冷却した状態で評価する必要がある高感度赤外線検出素子などのように、特殊な環境下で検査する必要がある半導体装置の検査方法及び検査装置として好ましく利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の検査装置の概略を示した切り欠き斜視図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の検査装置の概略を示した配線図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の検査装置の効果を示す図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の検査装置の概略を示した配線図である。
【図5】図5(A)は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の検査装置で用いられるデマルチプレクサ単体の回路図、図5(B)はその真理値表である。
【図6】図6(A)は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の検査装置で用いられるデマルチプレクサの回路図、図6(B)はその真理値表である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の検査装置の効果を示す図である。
【図8】従来の半導体装置の検査装置のプローブカードの平面図である。
【図9】従来の半導体装置の検査装置の主要部の断面図である。
【符号の説明】
【0083】
101 チャンバ
102 排気口
102a バルブ
103 ガス導入口
103a バルブ
104 信号導入端子
105 覗き窓
106a〜106d 外部入出力用信号配線
107 信号配線
108 コネクタボード
109a〜109d スイッチング素子
110a〜110d 切り替え出力配線
111a オスコネクタピン
111b メスコネクタピン
112 プローブカード
113 プローブピン接続配線
114 プローブピン
115 ステージ
116 被検査デバイス
120 スイッチング素子
121 デマルチプレクサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉空間内の制御された雰囲気下に配置された半導体装置の複数の電極パッドに複数の接続端子をそれぞれ同時に接触させ、前記密閉空間外と接続され且つ前記密閉空間内に配置された複数の信号配線及び前記複数の接続端子を介して前記複数の電極パッドに対して電気信号の授受を行うことで前記半導体装置を検査する半導体装置の検査方法であって、
前記複数の接続端子のうち前記複数の信号配線がそれぞれ接続される複数の接続端子を前記密閉空間内において順次切り替えることにより、前記半導体装置の前記複数の電極パッドのうち電気信号の授受が行われる複数の電極パッドを順次切り替えて、前記半導体装置を検査することを特徴とする半導体装置の検査方法。
【請求項2】
密閉空間内の制御された雰囲気下に配置された半導体装置の複数の電極パッドに複数の接続端子をそれぞれ同時に接触させ、前記密閉空間外と接続され且つ前記密閉空間内に配置された複数の信号配線及び前記複数の接続端子を介して前記複数の電極パッドに対して電気信号の授受を行うことで前記半導体装置を検査する半導体装置の検査方法であって、
前記半導体装置は、互いに平行な複数の第1ライン状電極と、前記複数の第1ライン状電極に対して交差して配置された互いに平行な複数の第2ライン状電極と、前記複数の第1ライン状電極及び前記複数の第2ライン状電極が交差する各位置にマトリックス状に配置された複数の単位素子とを備え、
前記電極パッドが、前記複数の第1ライン状電極及び前記複数の第2ライン状電極のそれぞれに設けられており、
前記複数の接続端子のうち前記複数の信号配線がそれぞれ接続される複数の接続端子を前記密閉空間内において順次切り替えることにより、前記複数の第1ライン状電極にそれぞれ設けられた複数の前記電極パッドのうち電気信号の授受が行われる電極パッドを順次切り替え、且つ、前記複数の第2ライン状電極にそれぞれ設けられた複数の前記電極パッドのうち電気信号の授受が行われる電極パッドを順次切り替えて、前記複数の単位素子を順次検査することを特徴とする半導体装置の検査方法。
【請求項3】
密閉空間内の制御された雰囲気下に配置された半導体装置の複数の電極パッドに複数の接続端子をそれぞれ同時に接触させ、前記密閉空間外と接続され且つ前記密閉空間内に配置された複数の信号配線及び前記複数の接続端子を介して前記複数の電極パッドに対して電気信号の授受を行うことで前記半導体装置を検査する半導体装置の検査方法であって、
前記半導体装置は、第1ライン状電極と、前記第1ライン状電極に対して交差して配置された複数の第2電極と、前記第1ライン状電極及び前記複数の第2電極が交差する各位置に一直線状に配置された複数の単位素子とを備え、
前記電極パッドが、前記第1ライン状電極及び前記複数の第2電極のそれぞれに設けられており、
前記複数の接続端子のうち前記複数の信号配線がそれぞれ接続される複数の接続端子を前記密閉空間内において順次切り替えることにより、前記複数の第2電極にそれぞれ設けられた複数の前記電極パッドのうち電気信号の授受が行われる電極パッドを順次切り替えて、前記複数の単位素子を順次検査することを特徴とする半導体装置の検査方法。
【請求項4】
密閉空間内の制御された雰囲気下に配置されたウエハ上に形成された複数の半導体装置に設けられた複数の電極パッドに複数の接続端子を同時に接触させ、前記密閉空間外と接続され且つ前記密閉空間内に配置された複数の信号配線及び前記複数の接続端子を介して前記複数の電極パッドに対して電気信号の授受を行うことで前記半導体装置を検査する半導体装置の検査方法であって、
前記複数の接続端子のうち前記複数の信号配線がそれぞれ接続される複数の接続端子を前記密閉空間内において順次切り替えることにより、前記複数の半導体装置を順次検査することを特徴とする半導体装置の検査方法。
【請求項5】
密閉空間を形成し、前記密閉空間内を所定の雰囲気に制御するチャンバと、
前記チャンバの外内間の電気信号の授受を行うために前記チャンバに設けられた複数の信号導入端子と、
前記チャンバ内に配置され、前記複数の信号導入端子にそれぞれ接続された複数の信号配線と、
検査対象である半導体装置の複数の電極パッドにそれぞれ同時に接触される複数の接続端子と
を備えた半導体装置の検査装置であって、
更に、前記複数の接続端子のうち前記複数の信号配線がそれぞれ接続される複数の接続端子を順次切り替えるスイッチング素子を前記チャンバ内に備えることを特徴とする半導体装置の検査装置。
【請求項6】
前記スイッチング素子は、機械的に接点を切り替えるロータリースイッチ又はスライドスイッチである請求項5に記載の半導体装置の検査装置。
【請求項7】
前記接点の切り替えは前記チャンバ外からの電気信号に基づいて行われる請求項6に記載の半導体装置の検査装置。
【請求項8】
前記スイッチング素子は、複数ビットの電気信号に応じて、1つの入力端子に入力された信号が出力される1つの出力端子を複数の出力端子の中から選択する半導体素子である請求項5に記載の半導体装置の検査装置。
【請求項9】
前記複数の信号配線の総数は前記複数の接続端子の総数の75%以下である請求項5に記載の半導体装置の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−305879(P2007−305879A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134336(P2006−134336)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(503217783)MT映像ディスプレイ株式会社 (176)
【Fターム(参考)】