半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置
【課題】高品質な状態で半導体チップを粘着シートから剥離し取り上げることができる半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置を提供する。
【解決手段】ピックアップ装置の保持ステージ10は、粘着シート2を介して半導体チップ1aが載置される第1ステージ11と、第1ステージ11を支持する第2ステージ12と、真空引き用の配管13と、を備える。第1ステージ11には、複数の溝21と、隣り合う溝21の側壁で構成された突起部22と、溝21に連結された通気孔14と、が設けられている。このピックアップ装置において、半導体チップ1aの端部全体が溝21上に位置しないように第1ステージ11に半導体チップ1aを載置する。そして、減圧手段によって粘着シート2、第1,2ステージ11,12で囲まれた閉空間23を減圧し、突起部22に半導体チップ1aを保持する。その後、コレットによって半導体チップ1aをピックアップする。
【解決手段】ピックアップ装置の保持ステージ10は、粘着シート2を介して半導体チップ1aが載置される第1ステージ11と、第1ステージ11を支持する第2ステージ12と、真空引き用の配管13と、を備える。第1ステージ11には、複数の溝21と、隣り合う溝21の側壁で構成された突起部22と、溝21に連結された通気孔14と、が設けられている。このピックアップ装置において、半導体チップ1aの端部全体が溝21上に位置しないように第1ステージ11に半導体チップ1aを載置する。そして、減圧手段によって粘着シート2、第1,2ステージ11,12で囲まれた閉空間23を減圧し、突起部22に半導体チップ1aを保持する。その後、コレットによって半導体チップ1aをピックアップする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)は、高性能化および低コスト化のために、半導体ウエハの薄化が進められている。例えば、IGBTの高性能化および低コスト化のために、半導体ウエハの厚さを50μm〜100μm程度、またはそれ以下の厚さになるまで薄くする必要がある。
【0003】
デバイス厚の薄い半導体装置の製造方法として、次の方法が提案されている。半導体ウエハのおもて面にデバイス構造を形成した後、所定の厚さになるまで、半導体ウエハ裏面のバックグラインドやシリコンエッチングを行う。そして、半導体ウエハのおもて面に形成されたデバイス構造ごとにダイシングを行い、半導体ウエハを個々の半導体チップに切断する。
【0004】
また、デバイス厚の薄い半導体装置の別の製造方法として、次の方法が提案されている。半導体ウエハのおもて面にデバイス構造を形成した後、ダイシングラインに沿って、半導体ウエハのおもて面に例えば半導体装置の完成後の所定の厚さよりも深い溝を形成する。そして、半導体ウエハ裏面のバックグラインドやシリコンエッチングを行い、半導体ウエハを所定の厚さになるまで薄くすることで、おもて面に形成された溝によって半導体ウエハは個々の半導体チップに切断される。
【0005】
デバイス厚の薄い半導体装置を製造する別の方法として、さらに、次の方法が提案されている。半導体ウエハのおもて面にデバイス構造を形成した後、半導体ウエハ裏面のバックグラインドやシリコンエッチングを行い、半導体ウエハの直径よりも狭い範囲で半導体ウエハの中央部のみを薄くして、半導体ウエハの外周部(以下、リブ部とする)を残す。そして、半導体ウエハのリブ部を残したまま、またはリブ部を除去した後にダイシングを行い、半導体ウエハを個々の半導体チップに切断する。
【0006】
このように半導体ウエハをダイシングする際に、ダイシングによって分離された半導体チップが飛び散るなどの問題を回避するために、例えば、半導体ウエハの裏面にダイシングシートなどの粘着シートを貼り付けてダイシングを行う方法が公知である。半導体ウエハの裏面に粘着シートを貼り付けてダイシングを行った後、半導体チップをピックアップするためのピックアップ装置に、粘着シートに貼り付いて固定された状態の半導体チップを投入し、粘着シートからピックアップして個々の半導体チップに分離する。
【0007】
粘着シートから半導体チップをピックアップする方法として、次の方法が提案されている。粘着シートが貼り付けられた裏面側から半導体チップを例えばニードルによって上方に突き上げ、半導体チップと粘着シートとの接触面積を低減させる。そして、ニードルによって上方に突き上げた半導体チップをコレットなどによって吸引し、粘着シートから半導体チップをピックアップする。しかしながら、このようなピックアップ方法を薄化された半導体チップに適用した場合、半導体チップをニードルで突き上げることによって、半導体チップの裏面に傷がついたり、半導体チップが破損する虞がある。
【0008】
このような問題を解決するために、ニードルによる突き上げを行わずに半導体チップと粘着シートとの接触面積を低減させる方法として、次の方法が提案されている。固定ジグは、片面に複数の突起物と側壁を有するジグ基台と、ジグ基台の突起物を有する面上に積層され側壁の上面に接着された密着層とからなる。ジグ基台の突起物を有する面には、密着層、突起物および側壁により区画空間が形成され、貫通孔によって真空源に接続されている。貫通孔を通して区画空間内の空気を吸引して密着層を変形させるとともに、チップの上面側から吸着コレットがチップを吸引して、チップを密着層からピックアップする(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0009】
また、別の方法として、チップ状部品と対向する領域をカバーするように分布する複数の吸引溝と、これら吸引溝間であって各チップ状部品に対して少なくとも2箇所において部分的に対向するように位置する突起とを有する、載置台上に保持シートを載置し、吸引溝に負圧を付与することによって、保持シートを突起に沿うように変形させてチップ状部品から剥がそうとするとき、まず、チップ状部品の周縁部に対向する吸引溝に付与される負圧をより強くし、チップ状部品の周縁部から保持シートが剥がれるようにする方法が提案されている(例えば、下記特許文献2参照。)。
【0010】
さらに、別の方法として、次の方法が提案されている。吸着駒のダイシング用テープを介して半導体チップの裏面側を載置する面には、上に凹状かつ略半球形状で、同一の高さの複数の突起がそれぞれ垂直に立ち上がるように設けられた吸着面と、吸着面の外周部の全周囲にわたって幅が0.4mm以下、かつ高さが突起の高さと同じか突起の高さとの差が1mm未満である側壁と、が設けられている。そして、突起同士の間の谷もしくは突起の側面またはその両方の少なくとも一つ以上に設けられた吸着穴からダイシング用テープを吸着して、突起に吸い寄せ、半導体チップのおもて面側からコレットによって半導体チップをピックアップする。吸着穴からダイシング用テープを吸着する際には、ダイシング用テープの弾力性の範囲内で吸着駒の側壁と吸着面との間にダイシング用テープがわずかに沈み込むようにする(例えば、下記特許文献3参照。)。
【0011】
また、半導体チップに傷がつくことなどを回避するピックアップ装置として、次の装置が提案されている。ウエハ載置台は、頂部で粘着シートを介してICチップの下面を保持する複数の突起と、複数の突起の谷部に形成された吸引溝と、この吸引溝に接続管を介して接続され、吸引溝に吸引力を発生させることで、粘着シ−トをICチップから剥離して突起の谷部に吸着する真空装置を具備する(例えば、下記特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−103493号公報
【特許文献2】特開平11−54594号公報
【特許文献3】特開2010−123750号公報
【特許文献4】特開平5−335405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した各特許文献に示す技術では、次のような問題が生じる。図16は、従来の半導体装置の製造装置の保持ステージに保持された状態の半導体チップを示す断面図である。図16には、複数の半導体チップ101aを固定する粘着シート102を保持ステージ111の突起部111aに沿うように変形させた状態を示す。図16に示すように粘着シート102を変形させたときに、1つの半導体チップ101a−1の面内で粘着シート102が剥離されるタイミングが異なる場合、コレットによって半導体チップ101a−1を吸引するときに、半導体チップ101a−1が保持ステージ111に対して傾いた状態となってしまう。
【0014】
半導体チップ101a−1が保持ステージ111に対して傾いた状態となった場合、半導体チップ101a−1の端部が隣り合う半導体チップ101a−2に接触し、半導体チップ101a−1,101a−2に欠けが生じる虞がある。また、半導体チップ101a−1が保持ステージ111に対して傾いた状態となった場合、半導体チップ101a−1の浮き上がった側の端部がコレット(不図示)に衝突し、半導体チップ101a−1に傷がつく虞がある。
【0015】
また、半導体チップ101aの裏面の表面粗さや金属膜の有無によって半導体チップ101aと粘着シート102との密着力が異なること、粘着シート102を構成する基材および粘着層の材質などによって粘着力や剛性が変わることなどの要因によって、突起部111aへの粘着シート102の変形しやすさが異なる。このため、突起部111aへの粘着シート102の変形を一定に制御することは難しい。したがって、上述した各特許文献に示す技術では、上述したように半導体チップ101a−1が保持ステージ111に対して傾いた状態となってしまうことを防止することができない。
【0016】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、高品質な状態で半導体チップを粘着シートから剥離し取り上げることができる半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、ダイシングによって切断された半導体チップを粘着シートから取り上げる、半導体装置の製造方法であって、前記半導体チップが載置されるステージに設けられた溝の長手方向の端部に対して前記半導体チップの端部が所定の角度をなすように、前記粘着シートが貼り付けられた側の面を前記ステージ側にして前記ステージに前記半導体チップを載置する載置工程と、前記ステージに接する前記粘着シートおよび前記ステージに設けられた前記溝で囲まれた空間を減圧し、前記溝の開口部側の端部によって形成された頂点部に前記粘着シートを介して前記半導体チップを保持する保持工程と、前記頂点部に保持された前記半導体チップを吸引して取り上げる吸引工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記載置工程では、前記半導体チップの前記ステージ側の面において、前記半導体チップの端部の少なくとも1辺に前記頂点部が接触するように、前記ステージに前記半導体チップを載置することを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記保持工程では、前記空間を減圧し、前記半導体チップに貼り付けられた前記粘着シートを前記溝の内壁に沿うように変形させることで、前記頂点部に前記半導体チップを保持することを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記保持工程では、前記半導体チップと前記粘着シートとの接触部分が前記頂点部に対応する部分のみになるまで前記空間を減圧し、前記頂点部に前記半導体チップを保持することを特徴とする。
【0021】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造装置は、ダイシングによって切断された半導体チップを粘着シートから取り上げる半導体装置の製造装置であって、前記半導体チップが載置されるステージと、前記ステージの前記半導体チップが載置される面に所定の間隔で設けられた複数の溝と、前記溝の開口部側の端部によって形成され、前記粘着シートを介して前記半導体チップを保持する頂点部と、前記ステージに設けられ、前記溝に連結された少なくとも1つの通気孔と、前記ステージに載置された前記半導体チップの、前記ステージ側の面に貼り付いている前記粘着シート、および前記ステージに設けられた前記溝で囲まれた空間を、前記通気孔を介して減圧する減圧手段と、前記減圧手段によって前記空間が減圧されることで前記頂点部に保持された前記半導体チップを吸引して取り上げる吸引手段と、を備え、前記半導体チップの端部が前記溝の長手方向の端部に対して所定の角度をなすように、前記粘着シートが貼り付けられた側の面を前記ステージ側にして前記ステージに前記半導体チップが載置されることを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる半導体装置の製造装置は、上述した発明において、前記半導体チップの前記ステージ側の面において、前記半導体チップの端部の少なくとも1辺に前記頂点部が接触するように、前記ステージに前記半導体チップが載置されることを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる半導体装置の製造装置は、上述した発明において、前記頂点部に前記半導体チップに面接触する平面を設けたことを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる半導体装置の製造装置は、上述した発明において、前記減圧手段は、前記半導体チップに貼り付けられた前記粘着シートを前記溝の内壁に沿うように変形させることを特徴とする。
【0025】
また、この発明にかかる半導体装置の製造装置は、上述した発明において、前記減圧手段は、前記半導体チップと前記粘着シートとの接触部分が前記頂点部に対応する部分のみになるまで前記空間を減圧することを特徴とする。
【0026】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造装置は、ダイシングによって切断された半導体チップを粘着シートから取り上げる半導体装置の製造装置であって、前記半導体チップが載置されるステージと、前記ステージの前記半導体チップが載置される面に所定の間隔で設けられた複数の溝と、前記溝の開口部側の端部によって形成され、前記粘着シートを介して前記半導体チップを保持する頂点部と、前記ステージに設けられ、前記溝に連結された少なくとも1つの通気孔と、前記ステージに載置された前記半導体チップの、前記ステージ側の面に貼り付いている前記粘着シート、および前記ステージに設けられた前記溝で囲まれた空間を、前記通気孔を介して減圧する減圧手段と、前記減圧手段によって前記空間が減圧されることで前記頂点部に保持された前記半導体チップを吸引して取り上げる吸引手段と、前記半導体チップを前記ステージに載置する際に、前記半導体チップの端部が前記溝の長手方向の端部に対して所定の角度をなすように前記ステージまたは前記半導体チップを回転させる駆動手段と、を備えることを特徴とする。
【0027】
上述した発明によれば、矩形状の平面形状を有する半導体チップのステージ側の面において、半導体チップの1辺にあたる端部の少なくとも一の端部に粘着シートを介して少なくとも1つの頂点部が接触する。このため、減圧手段によって粘着シートおよび溝で囲まれた空間(閉空間)が減圧され、粘着シートの溝に対向する部分が半導体チップから剥離されたときに、半導体チップのステージ側の面において、半導体チップの端部には、粘着シートに密着している部分と密着していない部分とが生じる。したがって、吸引手段によって半導体チップを吸引するときに、半導体チップの端部をステージ側に引っ張る粘着シートによる引っ張り力が分散される。このため、吸引手段によって半導体チップを吸引するときに、半導体チップがステージに対して傾いた状態となることはないので、半導体チップがステージに対して傾くことにより生じる半導体チップの欠けや傷を防止することができる。
【0028】
また、上述した発明によれば、減圧手段によって粘着シートの溝に対向する部分が半導体チップから剥離され、半導体チップが粘着シートを介して複数の頂点部のみに保持されるので、半導体チップと粘着シートとの密着力を吸引手段の吸引力のみで半導体チップをピックアップ可能な程度まで低下させることができる。これにより、吸引手段によって半導体チップをピックアップするときに、従来のようにニードルなどを用いて半導体チップを突き上げる処理を行う必要がない。したがって、半導体チップの表面にニードルなどによって傷が生じることを防止することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明にかかる半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置によれば、高品質な状態で半導体チップを粘着シートから剥離し取り上げることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置で処理される半導体ウエハを示す平面図である。
【図2】図1に示す半導体ウエハのダイシング後の状態を示す平面図である。
【図3】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す斜視図である。
【図4】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す断面図である。
【図5】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す鳥瞰図である。
【図6】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の保持ステージに載置された状態の半導体チップを示す平面図である。
【図7】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の保持ステージに載置された状態の半導体チップを示す断面図である。
【図8】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の動作について順に示す断面図である。
【図9】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の動作について順に示す断面図である。
【図10】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の動作について順に示す断面図である。
【図11】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の動作について順に示す断面図である。
【図12】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置のピックアップ部を模式的に示す斜視図である。
【図13】図12に示す半導体装置の製造装置のピックアップ部の動作を示す平面図である。
【図14】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の別の一例のピックアップ部を模式的に示す平面図である。
【図15】図14に示す半導体装置の製造装置のピックアップ部の動作を示す平面図である。
【図16】従来の半導体装置の製造装置の保持ステージに保持された状態の半導体チップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0032】
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置で処理される半導体ウエハを示す平面図である。また、図2は、図1に示す半導体ウエハのダイシング後の状態を示す平面図である。実施の形態にかかる半導体装置の製造装置で処理される前の半導体ウエハ1について説明する。図1,2に示すように、半導体ウエハ1は、粘着シート(ダイシングシート)2を貼り付けられた状態でダイシングされ、デバイスの表面構造(電子回路)が形成された個々の半導体チップ1aに切断される。
【0033】
具体的には、例えば、次のように半導体ウエハ1をダイシングして個々の半導体チップ1aに切断する。まず、図1に示すように、半導体チップの形成領域1bごとに、半導体ウエハ1のおもて面側にデバイスの表面構造を形成する。半導体チップの形成領域1bは、例えば等間隔に島状に配置されている。隣り合う半導体チップの形成領域1bの間には、ダイシングライン1c等の目印が形成されている。
【0034】
つぎに、半導体ウエハ1裏面のバックグラインドやシリコンエッチングを行い、半導体ウエハ1を所定の厚さになるまで薄化する。このとき、半導体ウエハ1は、裏面が平坦なウエハであってもよいし、裏面側の外周部(リブ部)を残したリブウエハとしてもよい。つぎに、薄化された半導体ウエハ1の裏面側に粘着シート2を貼り付ける。粘着シート2は、例えば、ダイシングによって分離された半導体チップが飛び散ることを防止するために用いられる。
【0035】
つぎに、粘着シート2の半導体ウエハ1側の面にダイシングフレーム3を貼り付け、ダイシングフレーム3に半導体ウエハ1を固定する。つぎに、ダイシングライン1cに沿って、半導体ウエハ1のおもて面側から半導体ウエハ1をダイシングする。このとき、ダイシングによる切れ込みが粘着シート2を貫通しないようにダイシングを行う。これにより、図2に示すように、半導体ウエハ1は、個々の半導体チップ1aに切断される。
【0036】
粘着シート2の厚さは、例えば20μm以上200μm以下であるのが望ましい。その理由は、粘着シート2の厚さが200μmを超えると、粘着シート2の剛性が高くなり、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置によって粘着シート2から半導体チップ1aを取り上げる(ピックアップする)際に、後述するように保持ステージに設けられた溝に沿って粘着シート2が変形しにくく、半導体チップ1aから粘着シート2を剥離することができなくなるからである。
【0037】
半導体チップ1aは、粘着シート2に貼り付いていた状態であるため、後述する実施の形態にかかる半導体装置の製造装置によって粘着シート2からピックアップされ個々の半導体チップ1aに分離される。すなわち、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置は、粘着シート2に貼り付いた半導体チップ1aを粘着シート2からピックアップするピックアップ装置である。
【0038】
つぎに、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置(以下、ピックアップ装置とする)の構成について説明する。図3は、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す斜視図である。また、図4は、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す断面図である。図3,4に示すように、ピックアップ装置の保持ステージ10は、粘着シート2を介して半導体チップ1aが載置される第1ステージ11と、第1ステージ11を支持する第2ステージ12と、保持ステージ10の真空引きを行うための真空引き用の配管13と、を備える。
【0039】
第1ステージ11の半導体チップが載置される側の面(以下、上面とする)には、複数の溝21と、隣り合う溝21の側壁で構成された突起部22と、溝21に連結された通気孔14と、が設けられている。第1ステージ11は、例えば、円形状の平面形状を有する。そして、第1ステージ11は、例えば片側(以下、底面とする)12aが塞がれた筒形状の側壁12bを有する第2ステージ12の開口部12cを塞ぐように、第2ステージ12の側壁12bに支持されている。
【0040】
第1ステージ11は、第1ステージ11の上面に対して反対側の面(以下、下面とする)が、第2ステージ12の底面12aから離れた状態で、第2ステージ12の側壁12bに支持されている。また、第1ステージ11の側面は、第2ステージ12の側壁12bとの間に隙間ができないように接触している。これにより、保持ステージ10内には、第1ステージ11と第2ステージ12とに囲まれた真空引き用の空間15が形成される。
【0041】
この真空引き用の空間15は、第1ステージ11に設けられた通気孔14と、第2ステージ12に設けられた配管13とをつなぐように形成されている。通気孔14は、第1ステージ11の上面に形成された溝21の底部から第1ステージ11を貫通し、溝21と真空引き用の空間15とをつなぐように形成されている。また、通気孔14は、第1ステージ11に少なくとも1つ以上設けられている。
【0042】
配管13は、例えば、第2ステージ12の側壁12bを貫通し、第2ステージ12の外側に露出する。配管13の、第2ステージ12の外側に露出した部分は、図示省略するバルブを介して減圧手段に連結されている。減圧手段によって真空引きが行われることにより、通気孔14、真空引き用の空間15および配管13を通る空気の流れ(実線矢印)16が形成され、第1ステージ11の上面側の空気が吸引される。
【0043】
後述するように、第1ステージ11の上面には、半導体チップ1aの粘着シート2が貼り付けられた面を下側(第1ステージ11側)にして半導体チップ1aが載置される。このため、減圧手段によって真空引きが行われることにより、粘着シート2、第1ステージ11の溝21および第2ステージ12で囲まれた空間(以下、閉空間とする)が減圧される。これにより、粘着シート2が溝21の側壁に沿って変形し、粘着シート2の溝21に対向する部分が半導体チップ1aから剥離される。
【0044】
第2ステージ12は、図4(a)に示すように、その上面が第1ステージ11の上面と同じ高さとなるように設けられている。すなわち、第2ステージ12は、第2ステージ12の上面から第1ステージ11の上面にわたって平坦になるように設けられている。あるいは、図4(b)に示すように、リブウエハ(不図示)に対応して、リブ部の厚さの分だけ第2ステージ12の上面を第1ステージ11の上面よりも低くしてもよい。第2ステージ12の上面には、溝21は設けられていない。これにより、第1ステージ11に粘着シート2を介して半導体チップ1aが載置されたときに、粘着シート2、第1ステージ11の溝21および第2ステージ12で囲まれた閉空間が形成される。
【0045】
減圧手段は、第1ステージ11の上面に粘着シート2を介して半導体チップ1aが載置されたときに形成される粘着シート2、第1ステージ11の溝21および第2ステージ12で囲まれた閉空間を減圧する。そして、減圧手段は、半導体チップ1aに貼り付けられた粘着シート2を溝21の内壁に沿うように変形させる。具体的には、減圧手段は、半導体チップ1aと粘着シート2との接触部分が突起部22の半導体チップ1a側の端部(以下、頂点部とする)に対応する部分のみになるまで当該閉空間を減圧する。
【0046】
また、ピックアップ装置の保持ステージ10の上方には、半導体チップ1aをピックアップするコレット(不図示)が設けられている。コレットは、減圧手段によって粘着シート2、第1ステージ11の溝21および第2ステージ12で囲まれた閉空間が減圧された後に、半導体チップ1aを吸引して吸着し、第1ステージ11から半導体チップ1aをピックアップする。
【0047】
具体的には、コレットは、半導体チップ1aと粘着シート2との接触部分が突起部22に対応する部分のみになるまで粘着シート2が変形された後に、半導体チップ1aを吸引してピックアップする。コレットは、第1ステージ11の突起部22に粘着シート2を介して保持された半導体チップ1aと予め定めた間隔をあけて配置される。その理由は、コレットを半導体チップ1aに押し付けずに半導体チップ1aをピックアップすることができ、半導体チップ1aの表面に形成された素子構造などに傷がつくことを防止することができるからである。
【0048】
さらに、ピックアップ装置は、粘着シート2を加熱する加熱手段(不図示)を備えていてもよい。加熱手段によって粘着シート2を加熱することにより、粘着シート2が変形しやすくなる。具体的には、加熱手段は、例えば、粘着シート2、第1ステージ11の溝21および第2ステージ12で囲まれた閉空間を加熱するヒーターであってもよい。
【0049】
ピックアップ装置を構成する保持ステージ10、減圧手段、コレット、加熱手段、および後述する駆動部や検出部、画像処理部の制御は、例えば、ピックアップ装置におけるROM、RAM、磁気ディスク、光ディスクなどに記録されたプログラムやデータを用いて、CPUが所定のプログラムを実行することによって行われる。
【0050】
つぎに、第1ステージ11の溝21および突起部22について詳細に説明する。図5は、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す鳥瞰図である。図5には、図3に示す第1ステージ11の一部分11aの拡大図を示す。図5に示すように、溝21は、所定の間隔で設けられた複数の第1溝部21aと、第1溝部21aに直交し、かつ所定の間隔で設けられた第2溝部21bと、からなる。第1,2溝部21a,21bは、例えば、第1ステージ11の上面から第1ステージ11の下面に達しない深さで設けられている。
【0051】
隣り合う第1溝部21a間、および隣り合う第2溝部21b間の間隔は、矩形状の半導体チップ1aの短辺の長さ以下であるのが望ましい。その理由は、半導体チップ1aの短辺を少なくとも2つの突起部22で保持することができるからである。第1,2溝部21a,21bの断面形状は、第1ステージ11の深さ方向に向かって徐々に幅が狭くなる逆三角形状や、第1ステージ11の深さ方向に向かって幅がほぼ等しい矩形形状であるのが好ましい。その理由は、第1ステージ11の上面に第1,2溝部21a,21bを形成する際に、加工しやすいからである。
【0052】
突起部22は、複数の第1,2溝部21a,21bによって、第1ステージ11の上面に複数設けられ、粘着シート2を介して半導体チップ1aを保持する。突起部22は、角錐台状をなす。そして、突起部22の半導体チップ1a側の端部(頂点部)22aには、半導体チップ1aが面接触する平面が設けられている。突起部22の頂点部22aは、第1ステージ11の上面に保持される半導体チップ1aの例えば裏面に平行な平坦面となっており、半導体チップ1aの第1ステージ11側の面に面接触する。
【0053】
突起部22は、半導体チップ1aを吸引してピックアップするコレット(不図示)によって、突起部22上の半導体チップ1aを傾けることなくピックアップすることができる形状であればよい。具体的には、突起部22の形状は、角錐台状に限らず、例えば角錐状や立方体状であってもよい。突起部22の形状が角錐状である場合、突起部22の頂点部22aは、半導体チップ1aに点接触する。各突起部22は、各頂点部22aが同一面内に位置するように、それぞれ同じ高さで設けられている。
【0054】
突起部22の頂点部22aの表面積は、例えば、突起部22の頂点部22aに粘着シート2を介して保持される半導体チップ1aをピックアップするコレットの吸引力によって決定される。具体的には、半導体チップ1aと突起部22の頂点部22aとの間にある粘着シート2のみが半導体チップ1aに貼り付いている状態のときに、半導体チップ1aと粘着シート2との密着力が、コレットによって半導体チップ1aをピックアップすることができる程度の密着力となるように、突起部22の頂点部22aの表面積を決定する。
【0055】
つぎに、第1ステージ11の第1,2溝部21a,21bおよび突起部22と、半導体チップ1aとの位置関係について説明する。図6は、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の保持ステージに載置された状態の半導体チップを示す平面図である。また、図7は、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の保持ステージに載置された状態の半導体チップを示す断面図である。図6では、図示を省略するが、半導体チップ1aは、粘着シートを介して第1ステージ11上に載置されている。
【0056】
図6に示すように、半導体チップ1aは、半導体チップ1aの一辺にあたる第1端部1d−1全体が第1溝部21aおよび第2溝部21b上に位置しないように第1ステージ11に載置される。具体的には、半導体チップ1aの第1端部1d−1が第1溝部21a(または第2溝部21b)の長手方向の端部に対して所定の角度θをなすように、第1ステージ11上に半導体チップ1aが載置される。これにより、半導体チップ1aの第1ステージ11側の面において、半導体チップ1aの第1端部1d−1に少なくとも1つの突起部22の頂点部22aが接触する。
【0057】
図6には、半導体チップ1aの第1端部1d−1と第1溝部21aの長手方向の端部とが所定の角度θをなしている状態を示し、以降、半導体チップ1aの第1端部1d−1と第1溝部21aの長手方向の端部とが所定の角度θをなすこととして説明する。また、図6では、半導体チップ1aが載置されている突起部22を点線で示す。
【0058】
このように半導体チップ1aの第1端部1d−1と第1溝部21aの長手方向の端部との位置を設定することで、減圧手段による負圧によって粘着シートの第1,2溝部21a,21bに対向する部分が半導体チップ1aから剥離され、突起部22の頂点部22aのみで半導体チップ1aが保持されたときに、粘着シートによって半導体チップ1aの第1端部1d−1を下向き(第1ステージ11側)に引っ張る力が分散される。
【0059】
具体的には、突起部22の頂点部22aのみで半導体チップ1aが保持されたとき、突起部22の頂点部22aに対応する部分でのみ半導体チップ1aと粘着シートとが密着した状態となる。このため、半導体チップ1aの第1ステージ11側の面において、半導体チップ1aの第1端部1d−1に少なくとも1つの突起部22の頂点部22aが接触していることで、半導体チップ1aの第1端部1d−1に、粘着シートによる引っ張り力が発生する部分と発生しない部分とを生じさせることができる。
【0060】
また、半導体チップ1aの他の一辺にあたる第2〜4端部1d−2〜1d−4についても、半導体チップ1aの第1端部1d−1と同様に、それぞれ第1溝部21aまたは第2溝部21bの長手方向の端部と角度θをなすように、第1ステージ11上に半導体チップ1aが載置される。具体的には、半導体チップ1aの第1端部1d−1と第1溝部21aの長手方向の端部とが角度θをなす場合、第2,4端部1d−2,1d−4が第2溝部21bの長手方向の端部と角度θをなし、第3端部1d−3が第1溝部21aの長手方向の端部と角度θをなすように、第1ステージ11上に半導体チップ1aが載置される。
【0061】
このように半導体チップ1aの第2〜4端部1d−2〜1d−4と第1,2溝部21a,21bの長手方向の端部との位置を設定することで、半導体チップ1aの第1ステージ11側の面において、半導体チップ1aの第2〜4端部1d−2〜1d−4には、それぞれ少なくとも1つの突起部22の頂点部22aが接触する。このため、上述した半導体チップ1aの第1端部1d−1と同様に、半導体チップ1aの第2〜4端部1d−2〜1d−4の、それぞれ突起部22の頂点部22aに接触する部分にのみ粘着シートによる引っ張り力が生じる。
【0062】
半導体チップ1aの第1〜4端部1d−1〜1d−4のそれぞれにおいて粘着シートによる引っ張り力が分散されるので、半導体チップ1aと粘着シートの密着力が一の端部で局所的に強くなることを回避することができる。このため、コレットによって半導体チップ1aをピックアップするときに、第1,2溝部21a,21bに対向する部分から粘着シートが剥離された半導体チップ1aが第1ステージ11の上面に対して傾いてしまうことを防止することができる。
【0063】
半導体チップ1aの第1〜4端部1d−1〜1d−4と第1ステージ11の第1,2溝部21a,21bの長手方向の端部とがそれぞれ所定の角度θをなすように、半導体チップ1aと第1ステージ11との位置を調整するには、例えば、第1ステージ11上に載置された半導体チップ1aに合わせて第1ステージ11を回転させればよい。この場合、ピックアップ装置は、例えば、第1ステージ11に載置される前の半導体チップ1aの第1〜4端部1d−1〜1d−4の位置や第1,2溝部21a,21bの長手方向の端部に対する角度などを検出する検出部、および第1ステージ11の中心軸周りに第1ステージ11を回転させる駆動機構を備えていてもよい。
【0064】
また、粘着シートを支持するダイシングフレームを回転させることで、第1ステージ11の第1,2溝部21a,21bの長手方向の端部に対する半導体チップ1aの第1〜4端部1d−1〜1d−4の角度θを調整してもよい。この場合、ピックアップ装置の備える駆動機構によって、例えば、第1ステージ11上に半導体チップ1aが載置された後に半導体ウエハ1(ダイシング前の半導体チップ1a)の中心軸周りにダイシングフレームを回転させてもよい。
【0065】
また、ピックアップ装置の保持ステージ10に半導体チップ1aを搬送する搬送手段によって、第1ステージ11上に半導体チップ1aが載置される前に、半導体ウエハ1の中心軸周りにダイシングフレームを回転させることで、第1ステージ11の第1,2溝部21a,21bの長手方向の端部に対する半導体チップ1aの第1〜4端部1d−1〜1d−4の角度θを調整してもよい。
【0066】
図6では、第1ステージ11上に載置された1つの半導体チップ1aについて説明したが、この半導体チップ1aに隣り合う図示省略する他の半導体チップにおいても、半導体チップ1aと同様に、第1,2溝部21a,21bと角度θをなすように第1ステージ11上に載置される。図6に示すように半導体チップ1aの第1〜4端部1d−1〜1d−4と第1ステージ11の第1,2溝部21a,21bとのなす角度θを調整して、半導体チップ1aが第1ステージ11上に載置された状態を図7(a)に示す。
【0067】
図7(a)には、例えば、第1ステージ11上に載置された半導体チップ1aの第1端部1d−1に平行な切断線で保持ステージ10を切断したときの断面構成を示している。図7(a)に示すように、第1ステージ11上に粘着シート2を介して半導体チップ1aが載置されることで、半導体チップ1aは、粘着シート2を介して複数の突起部22の頂点部22aに接する。これにより、粘着シート2、第1ステージ11の第1,2溝部21a,21bおよび第2ステージ12で囲まれた閉空間23が形成される。図7(b)は、リブウエハのリブ部が残った状態を示す図である。図7(b)に示すように、リブウエハに対応して、リブ部の厚さの分だけ第2ステージ12の上面を第1ステージ11の上面よりも低くしておくことで、リブウエハにおいても図7(a)に示す平坦な半導体ウエハと同様に、粘着シート2、第1ステージ11の第1,2溝部21a,21bおよび第2ステージ12で囲まれた閉空間23が形成される。
【0068】
つぎに、実施の形態にかかるピックアップ装置による半導体チップ1aのピックアップ方法について説明する。図8〜11は、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の動作について順に示す断面図である。図8〜11は、図7に示すように保持ステージ10の第1ステージ11の上面に載置された1つの半導体チップ1aについて示す。まず、図8に示すように、第1ステージ11の上面に、ダイシングフレーム3に固定された半導体チップ1aを、粘着シート2が貼り付けられた側の面を下にして載置する。
【0069】
これにより、半導体チップ1aは、粘着シート2を介して複数の突起部22の頂点部22aに接触した状態となる。そして、粘着シート2、第1ステージ11の溝21(第1,2溝部21a,21b)および第2ステージ12で囲まれた閉空間23が形成される。このとき、上述したように、半導体チップ1aの各端部には、少なくとも1つの突起部22の頂点部22aが接触している。
【0070】
つぎに、減圧手段(不図示)によって、通気孔14を介して閉空間23を減圧する。これにより、半導体チップ1aに貼り付けられた粘着シート2の、溝21に対向する部分に負圧が生じ、粘着シート2のみが溝21の内壁に沿って変形する。このようにして、図9に示すように、粘着シート2の、溝21に対向する部分が半導体チップ1aから剥離され、半導体チップ1aと粘着シート2とは、突起部22の頂点部22aに対応する部分のみで密着した状態となる。このため、半導体チップ1aから粘着シート2がほぼ剥離された状態となり、半導体チップ1aと粘着シート2との密着をコレットの吸引力のみで吸引可能な程度に低くすることができる。
【0071】
つぎに、図10に示すように、突起部22の頂点部22aに保持された半導体チップ1aから予め定めた間隔hをあけて半導体チップ1aの上方に配置されたコレット31によって、半導体チップ1aを吸引して吸着する。上述したように、半導体チップ1aの各端部は、少なくとも1つの突起部22の頂点部22aに接触しているため、コレット31によって半導体チップ1aを吸引したときに、半導体チップ1aが第1ステージ11の上面に対して傾くことはない。
【0072】
半導体チップ1aと粘着シート2との密着力は十分に低くなっているので、コレット31と半導体チップ1aとの間隔hを例えば1mm以下とすることができる。これにより、コレット31の吸引力のみで半導体チップ1aをピックアップすることができる。また、コレット31を半導体チップ1aに押し付けずに、半導体チップ1aをピックアップすることが好ましい。このため、コレット31と半導体チップ1aとの間隔hは、コレット31が半導体チップ1aに押し付けられない間隔であればよく、コレット31と半導体チップ1aとが接触していてもよい。すなわち、コレット31と半導体チップ1aとの間隔hは0mm以上であるのが好ましい。コレット31と半導体チップ1aとの間隔hを0mm以上とすることで、半導体チップ1aの表面に形成された素子構造などに傷がつくことを防止することができる。
【0073】
また、コレット31によって半導体チップ1aを吸引している間、減圧手段によって閉空間23を減圧しつづける。これにより、半導体チップ1aから剥離された粘着シート2は、溝21の内壁に接した状態で維持されるので、コレット31によって半導体チップ1aを吸引するときに粘着シート2がコレット31に貼り付くことはない。このようにして、図11に示すように、第1ステージ11から半導体チップ1aがピックアップされる。
【0074】
ピックアップ装置が加熱手段を備えている場合、加熱手段によって粘着シート2を加熱しながら、減圧手段によって閉空間23を減圧してもよい。加熱手段によって粘着シート2を加熱することで、粘着シート2は変形しやすくなる。このため、粘着シート2は、第1ステージ11の溝21の内壁に沿って容易に変形し、半導体チップ1aから剥離される。
【0075】
つぎに、半導体チップ1aの端部が第1ステージ11の溝21の長手方向の端部に対して所定の角度θをなすように、保持ステージ10に半導体チップ1aを載置するための構成(駆動手段、以下、半導体チップ1aと第1ステージ11との位置合わせのための構成とする)について説明する。ピックアップ装置は、第2ステージ12に対し同心に第1ステージ11が回転する構成としてもよい。
【0076】
まず、第1ステージ11上に半導体チップ1aが載置される前に、予め、第1ステージ11の中心軸周りに第1ステージ11を機械的に回転させる。一般的な搬送処理によって搬送されてくる半導体チップ1aの端部の位置は第1ステージ11に対して常に同じ位置となるので、第1ステージ11に半導体チップ1aを載置する前に、予め、半導体チップ1aの端部の予定位置に合わせて第1ステージ11を回転させる。
【0077】
一方、半導体ウエハ1には、一般的な貼付処理によって、精度よく(例えば、誤差±3度など)粘着シート2を貼り付ける。そして、半導体ウエハ1は、個々の半導体チップ1aに切断された後、一般的な搬送処理によって、粘着シート2に貼り付いた状態で第1ステージ11上に搬送される。上述したように、第1ステージ11は、予め、半導体チップ1aの端部の予定位置に合わせて回転されている。
【0078】
このため、一般的な搬送処理によって半導体チップ1aを第1ステージ11上に載置するだけで、半導体チップ1aの端部が第1ステージ11の溝21の長手方向の端部に対して所定の角度をなすように、第1ステージ11上に半導体チップ1aが載置される。したがって、特殊な検出機構などを用いずに、半導体チップ1aと第1ステージ11との位置合わせを行うことができる。
【0079】
第1ステージ11を回転させる方法について具体的に説明する。図12は、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置のピックアップ部を模式的に示す斜視図である。図13は、図12に示す半導体装置の製造装置のピックアップ部の動作を示す平面図である。図12,13には、ピックアップ装置の保持ステージ10を示す。ピックアップ装置は、第1ステージ11の中心軸周りに第1ステージ11のみを回転させるために、第1ステージ11を回転させるモータ(不図示)や、このモータの回転量を制御する制御回路(不図示)などを備えていてもよい。第1ステージ11と第2ステージ12とは、第1ステージ11のみが回転可能な状態で組み立てられている。
【0080】
図12に示すように、第2ステージ12の上面には、第1ステージ11の回転角度を計測するメモリ17が設けられている。このため、図13に示すように、第1ステージ11の溝21の長手方向を基準にして、第1ステージ11の中心軸周り(白抜き矢印で図示)42に第1ステージ11を回転させ、半導体チップ1aの端部の予定位置41をメモリ17の所定のメモリに合わせる。これにより、半導体チップ1aと第1ステージ11との位置合わせを行うことができる。半導体チップ1aの端部の予定位置41とメモリ17との位置は、例えば、第1ステージ11の上方に備えられたカメラ(不図示)などでおこなってもよい。
【0081】
つぎに、半導体チップ1aと第1ステージ11との位置合わせのための構成の別の一例について説明する。通常、ピックアップ装置には、半導体チップ1aおよび保持ステージ10の画像情報を取得する画像処理部を備える。このため、画像処理部によって取得された画像に基づいて、半導体チップ1aと第1ステージ11との位置合わせを行ってもよい。この場合、画像処理部は、例えば、保持ステージ10の上方から、半導体チップ1aおよび保持ステージ10を撮影する。
【0082】
具体的には、次のように半導体チップ1aと第1ステージ11との位置合わせを行う。図14は、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の別の一例のピックアップ部を模式的に示す平面図である。図15は、図14に示す半導体装置の製造装置のピックアップ部の動作を示す平面図である。図14に示すように、ピックアップ装置は、例えば、半導体チップ1aを搬送する一般的な搬送手段50と、画像処理部(不図示)と、さらに備える。搬送手段50は、例えば、半導体チップ1aを保持する保持部51と、保持部51の位置を変化させるアーム52とを備える。半導体ウエハ1は、粘着シート2に貼り付いた状態でダイシングフレーム3に固定されている。
【0083】
まず、搬送手段50の保持部51によって、粘着シート2に貼り付いた状態で個々の半導体チップ1aに切断された半導体ウエハ1を保持した後、保持部51に連結されたアーム52を動かし、半導体チップ1aを第1ステージ11の上方に搬送する。つぎに、画像処理部によって、保持ステージ10の上方から、半導体チップ1aおよび第1ステージ11の画像を取得する。画像処理部によって取得された画像は、半導体チップ1aの端部の位置、第1ステージ11の溝21の長手方向の端部の位置などを確認可能な画像であればよい。例えば、画像処理部によって撮影される画像を図15に模式的に示す。
【0084】
つぎに、画像処理部によって取得された画像に基づいて、半導体チップ1aの端部の位置、および、第1ステージ11の溝21の長手方向の端部の位置情報を取得する。つぎに、図15に示すように、取得した位置情報に基づいて、半導体チップ1aの端部と第1ステージ11の溝21の長手方向の端部との所定の角度θからのずれαを補正する。具体的には、搬送手段50によって、半導体チップ1aの中心軸周り(白抜き矢印で図示)53に半導体チップ1aを回転させることで、ずれαを補正する。
【0085】
その後、搬送手段50によって、固定された第1ステージ11上に半導体ウエハ1を載置する。これにより、半導体チップ1aは、その端部と第1ステージ11の長手方向の端部とが所定の角度θとなるように載置される。画像処理部によって取得された画像に基づいて半導体チップ1aと第1ステージ11との位置合わせを行うピックアップ装置においては、半導体チップ1aを回転させずに、予め、第1ステージ11を回転させておいてもよい。この場合、一般的な搬送処理によって、半導体チップ1aと第1ステージ11との位置合わせを行うことができる。
【0086】
また、上述した半導体チップ1aと第1ステージ11との位置合わせのための構成例の他に、例えば、一般的な搬送処理において、ダイシングフレーム3は、第1ステージ11に対して常に同じ位置に設置される。このため、半導体チップ1aの端部と第1ステージ11の長手方向の端部とが所定の角度θとなるように、粘着シート2やダイシングフレーム3に半導体チップ1aを貼り付けた後、一般的な搬送処理によって、第1ステージ11に半導体チップ1aを載置してもよい。この場合においても、一般的な搬送処理のみで、半導体チップ1aと第1ステージ11との位置合わせを行うことができる。
【0087】
以上、説明したように、実施の形態によれば、半導体チップ1aの第1〜4端部1d−1〜1d−4と第1,2溝部21a,21bの長手方向の端部とが所定の角度θをなすように半導体チップ1aを第1ステージ11上に載置する。これにより、矩形状の平面形状を有する半導体チップ1aの第1ステージ11側の面において、半導体チップ1aの第1〜4端部1d−1〜1d−4の少なくとも一の端部に粘着シート2を介して少なくとも1つの頂点部22aが接触する。このため、減圧手段によって粘着シート2および溝21で囲まれた閉空間23が減圧され、粘着シート2の溝21に対向する部分が半導体チップ1aから剥離されたときに、半導体チップ1aの第1ステージ11側において、半導体チップ1aの第1〜4端部1d−1〜1d−4には、粘着シート2に密着している部分と密着していない部分とが生じる。したがって、吸引手段によって半導体チップ1aを吸引するときに、半導体チップ1aの第1〜4端部1d−1〜1d−4を第1ステージ11側に引っ張る粘着シート2による引っ張り力が分散される。このため、吸引手段によって半導体チップ1aを吸引するときに、半導体チップ1aがステージに対して傾いた状態となることはないので、半導体チップ1aがステージに対して傾くことにより生じる半導体チップの欠けや傷を防止することができる。したがって、高品質な状態で半導体チップ1aを粘着シート2から剥離しピックアップすることができる。
【0088】
また、上述した発明によれば、減圧手段によって粘着シート2、第1ステージ11の溝21および第2ステージ12で囲まれた閉空間23が減圧されることで、粘着シート2の溝21に対向する部分が半導体チップ1aから剥離され、半導体チップ1aは粘着シート2を介して複数の頂点部22aのみに保持される。このため、半導体チップ1aと粘着シート2との密着力を吸引手段の吸引力のみで半導体チップ1aをピックアップ可能な程度まで低下させることができる。これにより、半導体チップ1aを粘着シート2から確実に剥離しピックアップすることができる。また、半導体チップ1aと粘着シート2との密着力を吸引手段の吸引力のみで半導体チップ1aをピックアップ可能な程度まで低下させることができるので、吸引手段によって半導体チップ1aをピックアップするときに、従来のようにニードルなどを用いて半導体チップ1aを突き上げる処理を行う必要がない。したがって、半導体チップ1aの表面にニードルなどによって傷が生じることを防止することができる。これにより、高品質な状態で半導体チップ1aを粘着シート2から剥離しピックアップすることができる。
【0089】
さらに、上述した発明によれば、半導体チップ1aと粘着シート2との密着力を吸引手段の吸引力のみで半導体チップ1aをピックアップ可能な程度まで低下させることができるので、コレット31を半導体チップ1aに押し付けることなく、コレット31の吸引力によって半導体チップ1aを確実にピックアップすることができる。
【0090】
このように、半導体チップ1aを第1ステージ11に対して傾かせることなく、かつ半導体チップ1aに欠けや割れを生じさせることなく第1ステージ11上の半導体チップ1aをピックアップすることができる。このため、実施の形態にかかるピックアップ装置により、薄化された半導体チップ1aをピックアップすることが可能であり、薄化された半導体チップ1aを安全に搬送することができる。
【0091】
以上において本発明では、第1ステージに格子状に第1,2溝部を設けた構成を例に説明しているが、上述した実施の形態に限らず、半導体チップの端部と溝の長手方向の端部とが所定の角度をなすように第1ステージに半導体チップを載置することができればよく、例えばストライプ状に第1溝部のみを設けた構成としてもよい。また、本発明は、薄化された半導体ウエハの裏面に粘着シートを貼り付ける前に、半導体ウエハの裏面側に裏面電極などを形成した場合においても同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上のように、本発明にかかる半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置は、ダイシングカットされた半導体チップを粘着シートからピックアップして個々の半導体チップに分離する際に有用である。
【符号の説明】
【0093】
1 半導体ウエハ
1a 半導体チップ
2 粘着シート
3 ダイシングフレーム
10 保持ステージ
11,12 保持ステージを構成するステージ(第1,2)
13 真空引き用の配管
14 通気孔
15 真空引き用の空間
16 空気の流れ
21 溝
21a,21b 溝部(第1,2)
22 突起部
22a 突起部の頂点部
23 閉空間
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)は、高性能化および低コスト化のために、半導体ウエハの薄化が進められている。例えば、IGBTの高性能化および低コスト化のために、半導体ウエハの厚さを50μm〜100μm程度、またはそれ以下の厚さになるまで薄くする必要がある。
【0003】
デバイス厚の薄い半導体装置の製造方法として、次の方法が提案されている。半導体ウエハのおもて面にデバイス構造を形成した後、所定の厚さになるまで、半導体ウエハ裏面のバックグラインドやシリコンエッチングを行う。そして、半導体ウエハのおもて面に形成されたデバイス構造ごとにダイシングを行い、半導体ウエハを個々の半導体チップに切断する。
【0004】
また、デバイス厚の薄い半導体装置の別の製造方法として、次の方法が提案されている。半導体ウエハのおもて面にデバイス構造を形成した後、ダイシングラインに沿って、半導体ウエハのおもて面に例えば半導体装置の完成後の所定の厚さよりも深い溝を形成する。そして、半導体ウエハ裏面のバックグラインドやシリコンエッチングを行い、半導体ウエハを所定の厚さになるまで薄くすることで、おもて面に形成された溝によって半導体ウエハは個々の半導体チップに切断される。
【0005】
デバイス厚の薄い半導体装置を製造する別の方法として、さらに、次の方法が提案されている。半導体ウエハのおもて面にデバイス構造を形成した後、半導体ウエハ裏面のバックグラインドやシリコンエッチングを行い、半導体ウエハの直径よりも狭い範囲で半導体ウエハの中央部のみを薄くして、半導体ウエハの外周部(以下、リブ部とする)を残す。そして、半導体ウエハのリブ部を残したまま、またはリブ部を除去した後にダイシングを行い、半導体ウエハを個々の半導体チップに切断する。
【0006】
このように半導体ウエハをダイシングする際に、ダイシングによって分離された半導体チップが飛び散るなどの問題を回避するために、例えば、半導体ウエハの裏面にダイシングシートなどの粘着シートを貼り付けてダイシングを行う方法が公知である。半導体ウエハの裏面に粘着シートを貼り付けてダイシングを行った後、半導体チップをピックアップするためのピックアップ装置に、粘着シートに貼り付いて固定された状態の半導体チップを投入し、粘着シートからピックアップして個々の半導体チップに分離する。
【0007】
粘着シートから半導体チップをピックアップする方法として、次の方法が提案されている。粘着シートが貼り付けられた裏面側から半導体チップを例えばニードルによって上方に突き上げ、半導体チップと粘着シートとの接触面積を低減させる。そして、ニードルによって上方に突き上げた半導体チップをコレットなどによって吸引し、粘着シートから半導体チップをピックアップする。しかしながら、このようなピックアップ方法を薄化された半導体チップに適用した場合、半導体チップをニードルで突き上げることによって、半導体チップの裏面に傷がついたり、半導体チップが破損する虞がある。
【0008】
このような問題を解決するために、ニードルによる突き上げを行わずに半導体チップと粘着シートとの接触面積を低減させる方法として、次の方法が提案されている。固定ジグは、片面に複数の突起物と側壁を有するジグ基台と、ジグ基台の突起物を有する面上に積層され側壁の上面に接着された密着層とからなる。ジグ基台の突起物を有する面には、密着層、突起物および側壁により区画空間が形成され、貫通孔によって真空源に接続されている。貫通孔を通して区画空間内の空気を吸引して密着層を変形させるとともに、チップの上面側から吸着コレットがチップを吸引して、チップを密着層からピックアップする(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0009】
また、別の方法として、チップ状部品と対向する領域をカバーするように分布する複数の吸引溝と、これら吸引溝間であって各チップ状部品に対して少なくとも2箇所において部分的に対向するように位置する突起とを有する、載置台上に保持シートを載置し、吸引溝に負圧を付与することによって、保持シートを突起に沿うように変形させてチップ状部品から剥がそうとするとき、まず、チップ状部品の周縁部に対向する吸引溝に付与される負圧をより強くし、チップ状部品の周縁部から保持シートが剥がれるようにする方法が提案されている(例えば、下記特許文献2参照。)。
【0010】
さらに、別の方法として、次の方法が提案されている。吸着駒のダイシング用テープを介して半導体チップの裏面側を載置する面には、上に凹状かつ略半球形状で、同一の高さの複数の突起がそれぞれ垂直に立ち上がるように設けられた吸着面と、吸着面の外周部の全周囲にわたって幅が0.4mm以下、かつ高さが突起の高さと同じか突起の高さとの差が1mm未満である側壁と、が設けられている。そして、突起同士の間の谷もしくは突起の側面またはその両方の少なくとも一つ以上に設けられた吸着穴からダイシング用テープを吸着して、突起に吸い寄せ、半導体チップのおもて面側からコレットによって半導体チップをピックアップする。吸着穴からダイシング用テープを吸着する際には、ダイシング用テープの弾力性の範囲内で吸着駒の側壁と吸着面との間にダイシング用テープがわずかに沈み込むようにする(例えば、下記特許文献3参照。)。
【0011】
また、半導体チップに傷がつくことなどを回避するピックアップ装置として、次の装置が提案されている。ウエハ載置台は、頂部で粘着シートを介してICチップの下面を保持する複数の突起と、複数の突起の谷部に形成された吸引溝と、この吸引溝に接続管を介して接続され、吸引溝に吸引力を発生させることで、粘着シ−トをICチップから剥離して突起の谷部に吸着する真空装置を具備する(例えば、下記特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−103493号公報
【特許文献2】特開平11−54594号公報
【特許文献3】特開2010−123750号公報
【特許文献4】特開平5−335405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した各特許文献に示す技術では、次のような問題が生じる。図16は、従来の半導体装置の製造装置の保持ステージに保持された状態の半導体チップを示す断面図である。図16には、複数の半導体チップ101aを固定する粘着シート102を保持ステージ111の突起部111aに沿うように変形させた状態を示す。図16に示すように粘着シート102を変形させたときに、1つの半導体チップ101a−1の面内で粘着シート102が剥離されるタイミングが異なる場合、コレットによって半導体チップ101a−1を吸引するときに、半導体チップ101a−1が保持ステージ111に対して傾いた状態となってしまう。
【0014】
半導体チップ101a−1が保持ステージ111に対して傾いた状態となった場合、半導体チップ101a−1の端部が隣り合う半導体チップ101a−2に接触し、半導体チップ101a−1,101a−2に欠けが生じる虞がある。また、半導体チップ101a−1が保持ステージ111に対して傾いた状態となった場合、半導体チップ101a−1の浮き上がった側の端部がコレット(不図示)に衝突し、半導体チップ101a−1に傷がつく虞がある。
【0015】
また、半導体チップ101aの裏面の表面粗さや金属膜の有無によって半導体チップ101aと粘着シート102との密着力が異なること、粘着シート102を構成する基材および粘着層の材質などによって粘着力や剛性が変わることなどの要因によって、突起部111aへの粘着シート102の変形しやすさが異なる。このため、突起部111aへの粘着シート102の変形を一定に制御することは難しい。したがって、上述した各特許文献に示す技術では、上述したように半導体チップ101a−1が保持ステージ111に対して傾いた状態となってしまうことを防止することができない。
【0016】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、高品質な状態で半導体チップを粘着シートから剥離し取り上げることができる半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、ダイシングによって切断された半導体チップを粘着シートから取り上げる、半導体装置の製造方法であって、前記半導体チップが載置されるステージに設けられた溝の長手方向の端部に対して前記半導体チップの端部が所定の角度をなすように、前記粘着シートが貼り付けられた側の面を前記ステージ側にして前記ステージに前記半導体チップを載置する載置工程と、前記ステージに接する前記粘着シートおよび前記ステージに設けられた前記溝で囲まれた空間を減圧し、前記溝の開口部側の端部によって形成された頂点部に前記粘着シートを介して前記半導体チップを保持する保持工程と、前記頂点部に保持された前記半導体チップを吸引して取り上げる吸引工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記載置工程では、前記半導体チップの前記ステージ側の面において、前記半導体チップの端部の少なくとも1辺に前記頂点部が接触するように、前記ステージに前記半導体チップを載置することを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記保持工程では、前記空間を減圧し、前記半導体チップに貼り付けられた前記粘着シートを前記溝の内壁に沿うように変形させることで、前記頂点部に前記半導体チップを保持することを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記保持工程では、前記半導体チップと前記粘着シートとの接触部分が前記頂点部に対応する部分のみになるまで前記空間を減圧し、前記頂点部に前記半導体チップを保持することを特徴とする。
【0021】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造装置は、ダイシングによって切断された半導体チップを粘着シートから取り上げる半導体装置の製造装置であって、前記半導体チップが載置されるステージと、前記ステージの前記半導体チップが載置される面に所定の間隔で設けられた複数の溝と、前記溝の開口部側の端部によって形成され、前記粘着シートを介して前記半導体チップを保持する頂点部と、前記ステージに設けられ、前記溝に連結された少なくとも1つの通気孔と、前記ステージに載置された前記半導体チップの、前記ステージ側の面に貼り付いている前記粘着シート、および前記ステージに設けられた前記溝で囲まれた空間を、前記通気孔を介して減圧する減圧手段と、前記減圧手段によって前記空間が減圧されることで前記頂点部に保持された前記半導体チップを吸引して取り上げる吸引手段と、を備え、前記半導体チップの端部が前記溝の長手方向の端部に対して所定の角度をなすように、前記粘着シートが貼り付けられた側の面を前記ステージ側にして前記ステージに前記半導体チップが載置されることを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる半導体装置の製造装置は、上述した発明において、前記半導体チップの前記ステージ側の面において、前記半導体チップの端部の少なくとも1辺に前記頂点部が接触するように、前記ステージに前記半導体チップが載置されることを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる半導体装置の製造装置は、上述した発明において、前記頂点部に前記半導体チップに面接触する平面を設けたことを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる半導体装置の製造装置は、上述した発明において、前記減圧手段は、前記半導体チップに貼り付けられた前記粘着シートを前記溝の内壁に沿うように変形させることを特徴とする。
【0025】
また、この発明にかかる半導体装置の製造装置は、上述した発明において、前記減圧手段は、前記半導体チップと前記粘着シートとの接触部分が前記頂点部に対応する部分のみになるまで前記空間を減圧することを特徴とする。
【0026】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造装置は、ダイシングによって切断された半導体チップを粘着シートから取り上げる半導体装置の製造装置であって、前記半導体チップが載置されるステージと、前記ステージの前記半導体チップが載置される面に所定の間隔で設けられた複数の溝と、前記溝の開口部側の端部によって形成され、前記粘着シートを介して前記半導体チップを保持する頂点部と、前記ステージに設けられ、前記溝に連結された少なくとも1つの通気孔と、前記ステージに載置された前記半導体チップの、前記ステージ側の面に貼り付いている前記粘着シート、および前記ステージに設けられた前記溝で囲まれた空間を、前記通気孔を介して減圧する減圧手段と、前記減圧手段によって前記空間が減圧されることで前記頂点部に保持された前記半導体チップを吸引して取り上げる吸引手段と、前記半導体チップを前記ステージに載置する際に、前記半導体チップの端部が前記溝の長手方向の端部に対して所定の角度をなすように前記ステージまたは前記半導体チップを回転させる駆動手段と、を備えることを特徴とする。
【0027】
上述した発明によれば、矩形状の平面形状を有する半導体チップのステージ側の面において、半導体チップの1辺にあたる端部の少なくとも一の端部に粘着シートを介して少なくとも1つの頂点部が接触する。このため、減圧手段によって粘着シートおよび溝で囲まれた空間(閉空間)が減圧され、粘着シートの溝に対向する部分が半導体チップから剥離されたときに、半導体チップのステージ側の面において、半導体チップの端部には、粘着シートに密着している部分と密着していない部分とが生じる。したがって、吸引手段によって半導体チップを吸引するときに、半導体チップの端部をステージ側に引っ張る粘着シートによる引っ張り力が分散される。このため、吸引手段によって半導体チップを吸引するときに、半導体チップがステージに対して傾いた状態となることはないので、半導体チップがステージに対して傾くことにより生じる半導体チップの欠けや傷を防止することができる。
【0028】
また、上述した発明によれば、減圧手段によって粘着シートの溝に対向する部分が半導体チップから剥離され、半導体チップが粘着シートを介して複数の頂点部のみに保持されるので、半導体チップと粘着シートとの密着力を吸引手段の吸引力のみで半導体チップをピックアップ可能な程度まで低下させることができる。これにより、吸引手段によって半導体チップをピックアップするときに、従来のようにニードルなどを用いて半導体チップを突き上げる処理を行う必要がない。したがって、半導体チップの表面にニードルなどによって傷が生じることを防止することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明にかかる半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置によれば、高品質な状態で半導体チップを粘着シートから剥離し取り上げることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置で処理される半導体ウエハを示す平面図である。
【図2】図1に示す半導体ウエハのダイシング後の状態を示す平面図である。
【図3】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す斜視図である。
【図4】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す断面図である。
【図5】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す鳥瞰図である。
【図6】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の保持ステージに載置された状態の半導体チップを示す平面図である。
【図7】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の保持ステージに載置された状態の半導体チップを示す断面図である。
【図8】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の動作について順に示す断面図である。
【図9】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の動作について順に示す断面図である。
【図10】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の動作について順に示す断面図である。
【図11】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の動作について順に示す断面図である。
【図12】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置のピックアップ部を模式的に示す斜視図である。
【図13】図12に示す半導体装置の製造装置のピックアップ部の動作を示す平面図である。
【図14】実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の別の一例のピックアップ部を模式的に示す平面図である。
【図15】図14に示す半導体装置の製造装置のピックアップ部の動作を示す平面図である。
【図16】従来の半導体装置の製造装置の保持ステージに保持された状態の半導体チップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0032】
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置で処理される半導体ウエハを示す平面図である。また、図2は、図1に示す半導体ウエハのダイシング後の状態を示す平面図である。実施の形態にかかる半導体装置の製造装置で処理される前の半導体ウエハ1について説明する。図1,2に示すように、半導体ウエハ1は、粘着シート(ダイシングシート)2を貼り付けられた状態でダイシングされ、デバイスの表面構造(電子回路)が形成された個々の半導体チップ1aに切断される。
【0033】
具体的には、例えば、次のように半導体ウエハ1をダイシングして個々の半導体チップ1aに切断する。まず、図1に示すように、半導体チップの形成領域1bごとに、半導体ウエハ1のおもて面側にデバイスの表面構造を形成する。半導体チップの形成領域1bは、例えば等間隔に島状に配置されている。隣り合う半導体チップの形成領域1bの間には、ダイシングライン1c等の目印が形成されている。
【0034】
つぎに、半導体ウエハ1裏面のバックグラインドやシリコンエッチングを行い、半導体ウエハ1を所定の厚さになるまで薄化する。このとき、半導体ウエハ1は、裏面が平坦なウエハであってもよいし、裏面側の外周部(リブ部)を残したリブウエハとしてもよい。つぎに、薄化された半導体ウエハ1の裏面側に粘着シート2を貼り付ける。粘着シート2は、例えば、ダイシングによって分離された半導体チップが飛び散ることを防止するために用いられる。
【0035】
つぎに、粘着シート2の半導体ウエハ1側の面にダイシングフレーム3を貼り付け、ダイシングフレーム3に半導体ウエハ1を固定する。つぎに、ダイシングライン1cに沿って、半導体ウエハ1のおもて面側から半導体ウエハ1をダイシングする。このとき、ダイシングによる切れ込みが粘着シート2を貫通しないようにダイシングを行う。これにより、図2に示すように、半導体ウエハ1は、個々の半導体チップ1aに切断される。
【0036】
粘着シート2の厚さは、例えば20μm以上200μm以下であるのが望ましい。その理由は、粘着シート2の厚さが200μmを超えると、粘着シート2の剛性が高くなり、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置によって粘着シート2から半導体チップ1aを取り上げる(ピックアップする)際に、後述するように保持ステージに設けられた溝に沿って粘着シート2が変形しにくく、半導体チップ1aから粘着シート2を剥離することができなくなるからである。
【0037】
半導体チップ1aは、粘着シート2に貼り付いていた状態であるため、後述する実施の形態にかかる半導体装置の製造装置によって粘着シート2からピックアップされ個々の半導体チップ1aに分離される。すなわち、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置は、粘着シート2に貼り付いた半導体チップ1aを粘着シート2からピックアップするピックアップ装置である。
【0038】
つぎに、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置(以下、ピックアップ装置とする)の構成について説明する。図3は、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す斜視図である。また、図4は、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す断面図である。図3,4に示すように、ピックアップ装置の保持ステージ10は、粘着シート2を介して半導体チップ1aが載置される第1ステージ11と、第1ステージ11を支持する第2ステージ12と、保持ステージ10の真空引きを行うための真空引き用の配管13と、を備える。
【0039】
第1ステージ11の半導体チップが載置される側の面(以下、上面とする)には、複数の溝21と、隣り合う溝21の側壁で構成された突起部22と、溝21に連結された通気孔14と、が設けられている。第1ステージ11は、例えば、円形状の平面形状を有する。そして、第1ステージ11は、例えば片側(以下、底面とする)12aが塞がれた筒形状の側壁12bを有する第2ステージ12の開口部12cを塞ぐように、第2ステージ12の側壁12bに支持されている。
【0040】
第1ステージ11は、第1ステージ11の上面に対して反対側の面(以下、下面とする)が、第2ステージ12の底面12aから離れた状態で、第2ステージ12の側壁12bに支持されている。また、第1ステージ11の側面は、第2ステージ12の側壁12bとの間に隙間ができないように接触している。これにより、保持ステージ10内には、第1ステージ11と第2ステージ12とに囲まれた真空引き用の空間15が形成される。
【0041】
この真空引き用の空間15は、第1ステージ11に設けられた通気孔14と、第2ステージ12に設けられた配管13とをつなぐように形成されている。通気孔14は、第1ステージ11の上面に形成された溝21の底部から第1ステージ11を貫通し、溝21と真空引き用の空間15とをつなぐように形成されている。また、通気孔14は、第1ステージ11に少なくとも1つ以上設けられている。
【0042】
配管13は、例えば、第2ステージ12の側壁12bを貫通し、第2ステージ12の外側に露出する。配管13の、第2ステージ12の外側に露出した部分は、図示省略するバルブを介して減圧手段に連結されている。減圧手段によって真空引きが行われることにより、通気孔14、真空引き用の空間15および配管13を通る空気の流れ(実線矢印)16が形成され、第1ステージ11の上面側の空気が吸引される。
【0043】
後述するように、第1ステージ11の上面には、半導体チップ1aの粘着シート2が貼り付けられた面を下側(第1ステージ11側)にして半導体チップ1aが載置される。このため、減圧手段によって真空引きが行われることにより、粘着シート2、第1ステージ11の溝21および第2ステージ12で囲まれた空間(以下、閉空間とする)が減圧される。これにより、粘着シート2が溝21の側壁に沿って変形し、粘着シート2の溝21に対向する部分が半導体チップ1aから剥離される。
【0044】
第2ステージ12は、図4(a)に示すように、その上面が第1ステージ11の上面と同じ高さとなるように設けられている。すなわち、第2ステージ12は、第2ステージ12の上面から第1ステージ11の上面にわたって平坦になるように設けられている。あるいは、図4(b)に示すように、リブウエハ(不図示)に対応して、リブ部の厚さの分だけ第2ステージ12の上面を第1ステージ11の上面よりも低くしてもよい。第2ステージ12の上面には、溝21は設けられていない。これにより、第1ステージ11に粘着シート2を介して半導体チップ1aが載置されたときに、粘着シート2、第1ステージ11の溝21および第2ステージ12で囲まれた閉空間が形成される。
【0045】
減圧手段は、第1ステージ11の上面に粘着シート2を介して半導体チップ1aが載置されたときに形成される粘着シート2、第1ステージ11の溝21および第2ステージ12で囲まれた閉空間を減圧する。そして、減圧手段は、半導体チップ1aに貼り付けられた粘着シート2を溝21の内壁に沿うように変形させる。具体的には、減圧手段は、半導体チップ1aと粘着シート2との接触部分が突起部22の半導体チップ1a側の端部(以下、頂点部とする)に対応する部分のみになるまで当該閉空間を減圧する。
【0046】
また、ピックアップ装置の保持ステージ10の上方には、半導体チップ1aをピックアップするコレット(不図示)が設けられている。コレットは、減圧手段によって粘着シート2、第1ステージ11の溝21および第2ステージ12で囲まれた閉空間が減圧された後に、半導体チップ1aを吸引して吸着し、第1ステージ11から半導体チップ1aをピックアップする。
【0047】
具体的には、コレットは、半導体チップ1aと粘着シート2との接触部分が突起部22に対応する部分のみになるまで粘着シート2が変形された後に、半導体チップ1aを吸引してピックアップする。コレットは、第1ステージ11の突起部22に粘着シート2を介して保持された半導体チップ1aと予め定めた間隔をあけて配置される。その理由は、コレットを半導体チップ1aに押し付けずに半導体チップ1aをピックアップすることができ、半導体チップ1aの表面に形成された素子構造などに傷がつくことを防止することができるからである。
【0048】
さらに、ピックアップ装置は、粘着シート2を加熱する加熱手段(不図示)を備えていてもよい。加熱手段によって粘着シート2を加熱することにより、粘着シート2が変形しやすくなる。具体的には、加熱手段は、例えば、粘着シート2、第1ステージ11の溝21および第2ステージ12で囲まれた閉空間を加熱するヒーターであってもよい。
【0049】
ピックアップ装置を構成する保持ステージ10、減圧手段、コレット、加熱手段、および後述する駆動部や検出部、画像処理部の制御は、例えば、ピックアップ装置におけるROM、RAM、磁気ディスク、光ディスクなどに記録されたプログラムやデータを用いて、CPUが所定のプログラムを実行することによって行われる。
【0050】
つぎに、第1ステージ11の溝21および突起部22について詳細に説明する。図5は、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の要部を模式的に示す鳥瞰図である。図5には、図3に示す第1ステージ11の一部分11aの拡大図を示す。図5に示すように、溝21は、所定の間隔で設けられた複数の第1溝部21aと、第1溝部21aに直交し、かつ所定の間隔で設けられた第2溝部21bと、からなる。第1,2溝部21a,21bは、例えば、第1ステージ11の上面から第1ステージ11の下面に達しない深さで設けられている。
【0051】
隣り合う第1溝部21a間、および隣り合う第2溝部21b間の間隔は、矩形状の半導体チップ1aの短辺の長さ以下であるのが望ましい。その理由は、半導体チップ1aの短辺を少なくとも2つの突起部22で保持することができるからである。第1,2溝部21a,21bの断面形状は、第1ステージ11の深さ方向に向かって徐々に幅が狭くなる逆三角形状や、第1ステージ11の深さ方向に向かって幅がほぼ等しい矩形形状であるのが好ましい。その理由は、第1ステージ11の上面に第1,2溝部21a,21bを形成する際に、加工しやすいからである。
【0052】
突起部22は、複数の第1,2溝部21a,21bによって、第1ステージ11の上面に複数設けられ、粘着シート2を介して半導体チップ1aを保持する。突起部22は、角錐台状をなす。そして、突起部22の半導体チップ1a側の端部(頂点部)22aには、半導体チップ1aが面接触する平面が設けられている。突起部22の頂点部22aは、第1ステージ11の上面に保持される半導体チップ1aの例えば裏面に平行な平坦面となっており、半導体チップ1aの第1ステージ11側の面に面接触する。
【0053】
突起部22は、半導体チップ1aを吸引してピックアップするコレット(不図示)によって、突起部22上の半導体チップ1aを傾けることなくピックアップすることができる形状であればよい。具体的には、突起部22の形状は、角錐台状に限らず、例えば角錐状や立方体状であってもよい。突起部22の形状が角錐状である場合、突起部22の頂点部22aは、半導体チップ1aに点接触する。各突起部22は、各頂点部22aが同一面内に位置するように、それぞれ同じ高さで設けられている。
【0054】
突起部22の頂点部22aの表面積は、例えば、突起部22の頂点部22aに粘着シート2を介して保持される半導体チップ1aをピックアップするコレットの吸引力によって決定される。具体的には、半導体チップ1aと突起部22の頂点部22aとの間にある粘着シート2のみが半導体チップ1aに貼り付いている状態のときに、半導体チップ1aと粘着シート2との密着力が、コレットによって半導体チップ1aをピックアップすることができる程度の密着力となるように、突起部22の頂点部22aの表面積を決定する。
【0055】
つぎに、第1ステージ11の第1,2溝部21a,21bおよび突起部22と、半導体チップ1aとの位置関係について説明する。図6は、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の保持ステージに載置された状態の半導体チップを示す平面図である。また、図7は、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の保持ステージに載置された状態の半導体チップを示す断面図である。図6では、図示を省略するが、半導体チップ1aは、粘着シートを介して第1ステージ11上に載置されている。
【0056】
図6に示すように、半導体チップ1aは、半導体チップ1aの一辺にあたる第1端部1d−1全体が第1溝部21aおよび第2溝部21b上に位置しないように第1ステージ11に載置される。具体的には、半導体チップ1aの第1端部1d−1が第1溝部21a(または第2溝部21b)の長手方向の端部に対して所定の角度θをなすように、第1ステージ11上に半導体チップ1aが載置される。これにより、半導体チップ1aの第1ステージ11側の面において、半導体チップ1aの第1端部1d−1に少なくとも1つの突起部22の頂点部22aが接触する。
【0057】
図6には、半導体チップ1aの第1端部1d−1と第1溝部21aの長手方向の端部とが所定の角度θをなしている状態を示し、以降、半導体チップ1aの第1端部1d−1と第1溝部21aの長手方向の端部とが所定の角度θをなすこととして説明する。また、図6では、半導体チップ1aが載置されている突起部22を点線で示す。
【0058】
このように半導体チップ1aの第1端部1d−1と第1溝部21aの長手方向の端部との位置を設定することで、減圧手段による負圧によって粘着シートの第1,2溝部21a,21bに対向する部分が半導体チップ1aから剥離され、突起部22の頂点部22aのみで半導体チップ1aが保持されたときに、粘着シートによって半導体チップ1aの第1端部1d−1を下向き(第1ステージ11側)に引っ張る力が分散される。
【0059】
具体的には、突起部22の頂点部22aのみで半導体チップ1aが保持されたとき、突起部22の頂点部22aに対応する部分でのみ半導体チップ1aと粘着シートとが密着した状態となる。このため、半導体チップ1aの第1ステージ11側の面において、半導体チップ1aの第1端部1d−1に少なくとも1つの突起部22の頂点部22aが接触していることで、半導体チップ1aの第1端部1d−1に、粘着シートによる引っ張り力が発生する部分と発生しない部分とを生じさせることができる。
【0060】
また、半導体チップ1aの他の一辺にあたる第2〜4端部1d−2〜1d−4についても、半導体チップ1aの第1端部1d−1と同様に、それぞれ第1溝部21aまたは第2溝部21bの長手方向の端部と角度θをなすように、第1ステージ11上に半導体チップ1aが載置される。具体的には、半導体チップ1aの第1端部1d−1と第1溝部21aの長手方向の端部とが角度θをなす場合、第2,4端部1d−2,1d−4が第2溝部21bの長手方向の端部と角度θをなし、第3端部1d−3が第1溝部21aの長手方向の端部と角度θをなすように、第1ステージ11上に半導体チップ1aが載置される。
【0061】
このように半導体チップ1aの第2〜4端部1d−2〜1d−4と第1,2溝部21a,21bの長手方向の端部との位置を設定することで、半導体チップ1aの第1ステージ11側の面において、半導体チップ1aの第2〜4端部1d−2〜1d−4には、それぞれ少なくとも1つの突起部22の頂点部22aが接触する。このため、上述した半導体チップ1aの第1端部1d−1と同様に、半導体チップ1aの第2〜4端部1d−2〜1d−4の、それぞれ突起部22の頂点部22aに接触する部分にのみ粘着シートによる引っ張り力が生じる。
【0062】
半導体チップ1aの第1〜4端部1d−1〜1d−4のそれぞれにおいて粘着シートによる引っ張り力が分散されるので、半導体チップ1aと粘着シートの密着力が一の端部で局所的に強くなることを回避することができる。このため、コレットによって半導体チップ1aをピックアップするときに、第1,2溝部21a,21bに対向する部分から粘着シートが剥離された半導体チップ1aが第1ステージ11の上面に対して傾いてしまうことを防止することができる。
【0063】
半導体チップ1aの第1〜4端部1d−1〜1d−4と第1ステージ11の第1,2溝部21a,21bの長手方向の端部とがそれぞれ所定の角度θをなすように、半導体チップ1aと第1ステージ11との位置を調整するには、例えば、第1ステージ11上に載置された半導体チップ1aに合わせて第1ステージ11を回転させればよい。この場合、ピックアップ装置は、例えば、第1ステージ11に載置される前の半導体チップ1aの第1〜4端部1d−1〜1d−4の位置や第1,2溝部21a,21bの長手方向の端部に対する角度などを検出する検出部、および第1ステージ11の中心軸周りに第1ステージ11を回転させる駆動機構を備えていてもよい。
【0064】
また、粘着シートを支持するダイシングフレームを回転させることで、第1ステージ11の第1,2溝部21a,21bの長手方向の端部に対する半導体チップ1aの第1〜4端部1d−1〜1d−4の角度θを調整してもよい。この場合、ピックアップ装置の備える駆動機構によって、例えば、第1ステージ11上に半導体チップ1aが載置された後に半導体ウエハ1(ダイシング前の半導体チップ1a)の中心軸周りにダイシングフレームを回転させてもよい。
【0065】
また、ピックアップ装置の保持ステージ10に半導体チップ1aを搬送する搬送手段によって、第1ステージ11上に半導体チップ1aが載置される前に、半導体ウエハ1の中心軸周りにダイシングフレームを回転させることで、第1ステージ11の第1,2溝部21a,21bの長手方向の端部に対する半導体チップ1aの第1〜4端部1d−1〜1d−4の角度θを調整してもよい。
【0066】
図6では、第1ステージ11上に載置された1つの半導体チップ1aについて説明したが、この半導体チップ1aに隣り合う図示省略する他の半導体チップにおいても、半導体チップ1aと同様に、第1,2溝部21a,21bと角度θをなすように第1ステージ11上に載置される。図6に示すように半導体チップ1aの第1〜4端部1d−1〜1d−4と第1ステージ11の第1,2溝部21a,21bとのなす角度θを調整して、半導体チップ1aが第1ステージ11上に載置された状態を図7(a)に示す。
【0067】
図7(a)には、例えば、第1ステージ11上に載置された半導体チップ1aの第1端部1d−1に平行な切断線で保持ステージ10を切断したときの断面構成を示している。図7(a)に示すように、第1ステージ11上に粘着シート2を介して半導体チップ1aが載置されることで、半導体チップ1aは、粘着シート2を介して複数の突起部22の頂点部22aに接する。これにより、粘着シート2、第1ステージ11の第1,2溝部21a,21bおよび第2ステージ12で囲まれた閉空間23が形成される。図7(b)は、リブウエハのリブ部が残った状態を示す図である。図7(b)に示すように、リブウエハに対応して、リブ部の厚さの分だけ第2ステージ12の上面を第1ステージ11の上面よりも低くしておくことで、リブウエハにおいても図7(a)に示す平坦な半導体ウエハと同様に、粘着シート2、第1ステージ11の第1,2溝部21a,21bおよび第2ステージ12で囲まれた閉空間23が形成される。
【0068】
つぎに、実施の形態にかかるピックアップ装置による半導体チップ1aのピックアップ方法について説明する。図8〜11は、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の動作について順に示す断面図である。図8〜11は、図7に示すように保持ステージ10の第1ステージ11の上面に載置された1つの半導体チップ1aについて示す。まず、図8に示すように、第1ステージ11の上面に、ダイシングフレーム3に固定された半導体チップ1aを、粘着シート2が貼り付けられた側の面を下にして載置する。
【0069】
これにより、半導体チップ1aは、粘着シート2を介して複数の突起部22の頂点部22aに接触した状態となる。そして、粘着シート2、第1ステージ11の溝21(第1,2溝部21a,21b)および第2ステージ12で囲まれた閉空間23が形成される。このとき、上述したように、半導体チップ1aの各端部には、少なくとも1つの突起部22の頂点部22aが接触している。
【0070】
つぎに、減圧手段(不図示)によって、通気孔14を介して閉空間23を減圧する。これにより、半導体チップ1aに貼り付けられた粘着シート2の、溝21に対向する部分に負圧が生じ、粘着シート2のみが溝21の内壁に沿って変形する。このようにして、図9に示すように、粘着シート2の、溝21に対向する部分が半導体チップ1aから剥離され、半導体チップ1aと粘着シート2とは、突起部22の頂点部22aに対応する部分のみで密着した状態となる。このため、半導体チップ1aから粘着シート2がほぼ剥離された状態となり、半導体チップ1aと粘着シート2との密着をコレットの吸引力のみで吸引可能な程度に低くすることができる。
【0071】
つぎに、図10に示すように、突起部22の頂点部22aに保持された半導体チップ1aから予め定めた間隔hをあけて半導体チップ1aの上方に配置されたコレット31によって、半導体チップ1aを吸引して吸着する。上述したように、半導体チップ1aの各端部は、少なくとも1つの突起部22の頂点部22aに接触しているため、コレット31によって半導体チップ1aを吸引したときに、半導体チップ1aが第1ステージ11の上面に対して傾くことはない。
【0072】
半導体チップ1aと粘着シート2との密着力は十分に低くなっているので、コレット31と半導体チップ1aとの間隔hを例えば1mm以下とすることができる。これにより、コレット31の吸引力のみで半導体チップ1aをピックアップすることができる。また、コレット31を半導体チップ1aに押し付けずに、半導体チップ1aをピックアップすることが好ましい。このため、コレット31と半導体チップ1aとの間隔hは、コレット31が半導体チップ1aに押し付けられない間隔であればよく、コレット31と半導体チップ1aとが接触していてもよい。すなわち、コレット31と半導体チップ1aとの間隔hは0mm以上であるのが好ましい。コレット31と半導体チップ1aとの間隔hを0mm以上とすることで、半導体チップ1aの表面に形成された素子構造などに傷がつくことを防止することができる。
【0073】
また、コレット31によって半導体チップ1aを吸引している間、減圧手段によって閉空間23を減圧しつづける。これにより、半導体チップ1aから剥離された粘着シート2は、溝21の内壁に接した状態で維持されるので、コレット31によって半導体チップ1aを吸引するときに粘着シート2がコレット31に貼り付くことはない。このようにして、図11に示すように、第1ステージ11から半導体チップ1aがピックアップされる。
【0074】
ピックアップ装置が加熱手段を備えている場合、加熱手段によって粘着シート2を加熱しながら、減圧手段によって閉空間23を減圧してもよい。加熱手段によって粘着シート2を加熱することで、粘着シート2は変形しやすくなる。このため、粘着シート2は、第1ステージ11の溝21の内壁に沿って容易に変形し、半導体チップ1aから剥離される。
【0075】
つぎに、半導体チップ1aの端部が第1ステージ11の溝21の長手方向の端部に対して所定の角度θをなすように、保持ステージ10に半導体チップ1aを載置するための構成(駆動手段、以下、半導体チップ1aと第1ステージ11との位置合わせのための構成とする)について説明する。ピックアップ装置は、第2ステージ12に対し同心に第1ステージ11が回転する構成としてもよい。
【0076】
まず、第1ステージ11上に半導体チップ1aが載置される前に、予め、第1ステージ11の中心軸周りに第1ステージ11を機械的に回転させる。一般的な搬送処理によって搬送されてくる半導体チップ1aの端部の位置は第1ステージ11に対して常に同じ位置となるので、第1ステージ11に半導体チップ1aを載置する前に、予め、半導体チップ1aの端部の予定位置に合わせて第1ステージ11を回転させる。
【0077】
一方、半導体ウエハ1には、一般的な貼付処理によって、精度よく(例えば、誤差±3度など)粘着シート2を貼り付ける。そして、半導体ウエハ1は、個々の半導体チップ1aに切断された後、一般的な搬送処理によって、粘着シート2に貼り付いた状態で第1ステージ11上に搬送される。上述したように、第1ステージ11は、予め、半導体チップ1aの端部の予定位置に合わせて回転されている。
【0078】
このため、一般的な搬送処理によって半導体チップ1aを第1ステージ11上に載置するだけで、半導体チップ1aの端部が第1ステージ11の溝21の長手方向の端部に対して所定の角度をなすように、第1ステージ11上に半導体チップ1aが載置される。したがって、特殊な検出機構などを用いずに、半導体チップ1aと第1ステージ11との位置合わせを行うことができる。
【0079】
第1ステージ11を回転させる方法について具体的に説明する。図12は、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置のピックアップ部を模式的に示す斜視図である。図13は、図12に示す半導体装置の製造装置のピックアップ部の動作を示す平面図である。図12,13には、ピックアップ装置の保持ステージ10を示す。ピックアップ装置は、第1ステージ11の中心軸周りに第1ステージ11のみを回転させるために、第1ステージ11を回転させるモータ(不図示)や、このモータの回転量を制御する制御回路(不図示)などを備えていてもよい。第1ステージ11と第2ステージ12とは、第1ステージ11のみが回転可能な状態で組み立てられている。
【0080】
図12に示すように、第2ステージ12の上面には、第1ステージ11の回転角度を計測するメモリ17が設けられている。このため、図13に示すように、第1ステージ11の溝21の長手方向を基準にして、第1ステージ11の中心軸周り(白抜き矢印で図示)42に第1ステージ11を回転させ、半導体チップ1aの端部の予定位置41をメモリ17の所定のメモリに合わせる。これにより、半導体チップ1aと第1ステージ11との位置合わせを行うことができる。半導体チップ1aの端部の予定位置41とメモリ17との位置は、例えば、第1ステージ11の上方に備えられたカメラ(不図示)などでおこなってもよい。
【0081】
つぎに、半導体チップ1aと第1ステージ11との位置合わせのための構成の別の一例について説明する。通常、ピックアップ装置には、半導体チップ1aおよび保持ステージ10の画像情報を取得する画像処理部を備える。このため、画像処理部によって取得された画像に基づいて、半導体チップ1aと第1ステージ11との位置合わせを行ってもよい。この場合、画像処理部は、例えば、保持ステージ10の上方から、半導体チップ1aおよび保持ステージ10を撮影する。
【0082】
具体的には、次のように半導体チップ1aと第1ステージ11との位置合わせを行う。図14は、実施の形態にかかる半導体装置の製造装置の別の一例のピックアップ部を模式的に示す平面図である。図15は、図14に示す半導体装置の製造装置のピックアップ部の動作を示す平面図である。図14に示すように、ピックアップ装置は、例えば、半導体チップ1aを搬送する一般的な搬送手段50と、画像処理部(不図示)と、さらに備える。搬送手段50は、例えば、半導体チップ1aを保持する保持部51と、保持部51の位置を変化させるアーム52とを備える。半導体ウエハ1は、粘着シート2に貼り付いた状態でダイシングフレーム3に固定されている。
【0083】
まず、搬送手段50の保持部51によって、粘着シート2に貼り付いた状態で個々の半導体チップ1aに切断された半導体ウエハ1を保持した後、保持部51に連結されたアーム52を動かし、半導体チップ1aを第1ステージ11の上方に搬送する。つぎに、画像処理部によって、保持ステージ10の上方から、半導体チップ1aおよび第1ステージ11の画像を取得する。画像処理部によって取得された画像は、半導体チップ1aの端部の位置、第1ステージ11の溝21の長手方向の端部の位置などを確認可能な画像であればよい。例えば、画像処理部によって撮影される画像を図15に模式的に示す。
【0084】
つぎに、画像処理部によって取得された画像に基づいて、半導体チップ1aの端部の位置、および、第1ステージ11の溝21の長手方向の端部の位置情報を取得する。つぎに、図15に示すように、取得した位置情報に基づいて、半導体チップ1aの端部と第1ステージ11の溝21の長手方向の端部との所定の角度θからのずれαを補正する。具体的には、搬送手段50によって、半導体チップ1aの中心軸周り(白抜き矢印で図示)53に半導体チップ1aを回転させることで、ずれαを補正する。
【0085】
その後、搬送手段50によって、固定された第1ステージ11上に半導体ウエハ1を載置する。これにより、半導体チップ1aは、その端部と第1ステージ11の長手方向の端部とが所定の角度θとなるように載置される。画像処理部によって取得された画像に基づいて半導体チップ1aと第1ステージ11との位置合わせを行うピックアップ装置においては、半導体チップ1aを回転させずに、予め、第1ステージ11を回転させておいてもよい。この場合、一般的な搬送処理によって、半導体チップ1aと第1ステージ11との位置合わせを行うことができる。
【0086】
また、上述した半導体チップ1aと第1ステージ11との位置合わせのための構成例の他に、例えば、一般的な搬送処理において、ダイシングフレーム3は、第1ステージ11に対して常に同じ位置に設置される。このため、半導体チップ1aの端部と第1ステージ11の長手方向の端部とが所定の角度θとなるように、粘着シート2やダイシングフレーム3に半導体チップ1aを貼り付けた後、一般的な搬送処理によって、第1ステージ11に半導体チップ1aを載置してもよい。この場合においても、一般的な搬送処理のみで、半導体チップ1aと第1ステージ11との位置合わせを行うことができる。
【0087】
以上、説明したように、実施の形態によれば、半導体チップ1aの第1〜4端部1d−1〜1d−4と第1,2溝部21a,21bの長手方向の端部とが所定の角度θをなすように半導体チップ1aを第1ステージ11上に載置する。これにより、矩形状の平面形状を有する半導体チップ1aの第1ステージ11側の面において、半導体チップ1aの第1〜4端部1d−1〜1d−4の少なくとも一の端部に粘着シート2を介して少なくとも1つの頂点部22aが接触する。このため、減圧手段によって粘着シート2および溝21で囲まれた閉空間23が減圧され、粘着シート2の溝21に対向する部分が半導体チップ1aから剥離されたときに、半導体チップ1aの第1ステージ11側において、半導体チップ1aの第1〜4端部1d−1〜1d−4には、粘着シート2に密着している部分と密着していない部分とが生じる。したがって、吸引手段によって半導体チップ1aを吸引するときに、半導体チップ1aの第1〜4端部1d−1〜1d−4を第1ステージ11側に引っ張る粘着シート2による引っ張り力が分散される。このため、吸引手段によって半導体チップ1aを吸引するときに、半導体チップ1aがステージに対して傾いた状態となることはないので、半導体チップ1aがステージに対して傾くことにより生じる半導体チップの欠けや傷を防止することができる。したがって、高品質な状態で半導体チップ1aを粘着シート2から剥離しピックアップすることができる。
【0088】
また、上述した発明によれば、減圧手段によって粘着シート2、第1ステージ11の溝21および第2ステージ12で囲まれた閉空間23が減圧されることで、粘着シート2の溝21に対向する部分が半導体チップ1aから剥離され、半導体チップ1aは粘着シート2を介して複数の頂点部22aのみに保持される。このため、半導体チップ1aと粘着シート2との密着力を吸引手段の吸引力のみで半導体チップ1aをピックアップ可能な程度まで低下させることができる。これにより、半導体チップ1aを粘着シート2から確実に剥離しピックアップすることができる。また、半導体チップ1aと粘着シート2との密着力を吸引手段の吸引力のみで半導体チップ1aをピックアップ可能な程度まで低下させることができるので、吸引手段によって半導体チップ1aをピックアップするときに、従来のようにニードルなどを用いて半導体チップ1aを突き上げる処理を行う必要がない。したがって、半導体チップ1aの表面にニードルなどによって傷が生じることを防止することができる。これにより、高品質な状態で半導体チップ1aを粘着シート2から剥離しピックアップすることができる。
【0089】
さらに、上述した発明によれば、半導体チップ1aと粘着シート2との密着力を吸引手段の吸引力のみで半導体チップ1aをピックアップ可能な程度まで低下させることができるので、コレット31を半導体チップ1aに押し付けることなく、コレット31の吸引力によって半導体チップ1aを確実にピックアップすることができる。
【0090】
このように、半導体チップ1aを第1ステージ11に対して傾かせることなく、かつ半導体チップ1aに欠けや割れを生じさせることなく第1ステージ11上の半導体チップ1aをピックアップすることができる。このため、実施の形態にかかるピックアップ装置により、薄化された半導体チップ1aをピックアップすることが可能であり、薄化された半導体チップ1aを安全に搬送することができる。
【0091】
以上において本発明では、第1ステージに格子状に第1,2溝部を設けた構成を例に説明しているが、上述した実施の形態に限らず、半導体チップの端部と溝の長手方向の端部とが所定の角度をなすように第1ステージに半導体チップを載置することができればよく、例えばストライプ状に第1溝部のみを設けた構成としてもよい。また、本発明は、薄化された半導体ウエハの裏面に粘着シートを貼り付ける前に、半導体ウエハの裏面側に裏面電極などを形成した場合においても同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上のように、本発明にかかる半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置は、ダイシングカットされた半導体チップを粘着シートからピックアップして個々の半導体チップに分離する際に有用である。
【符号の説明】
【0093】
1 半導体ウエハ
1a 半導体チップ
2 粘着シート
3 ダイシングフレーム
10 保持ステージ
11,12 保持ステージを構成するステージ(第1,2)
13 真空引き用の配管
14 通気孔
15 真空引き用の空間
16 空気の流れ
21 溝
21a,21b 溝部(第1,2)
22 突起部
22a 突起部の頂点部
23 閉空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングによって切断された半導体チップを粘着シートから取り上げる、半導体装置の製造方法であって、
前記半導体チップが載置されるステージに設けられた溝の長手方向の端部に対して前記半導体チップの端部が所定の角度をなすように、前記粘着シートが貼り付けられた側の面を前記ステージ側にして前記ステージに前記半導体チップを載置する載置工程と、
前記ステージに接する前記粘着シートおよび前記ステージに設けられた前記溝で囲まれた空間を減圧し、前記溝の開口部側の端部によって形成された頂点部に前記粘着シートを介して前記半導体チップを保持する保持工程と、
前記頂点部に保持された前記半導体チップを吸引して取り上げる吸引工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記載置工程では、前記半導体チップの前記ステージ側の面において、前記半導体チップの端部の少なくとも1辺に前記頂点部が接触するように、前記ステージに前記半導体チップを載置することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記保持工程では、前記空間を減圧し、前記半導体チップに貼り付けられた前記粘着シートを前記溝の内壁に沿うように変形させることで、前記頂点部に前記半導体チップを保持することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記保持工程では、前記半導体チップと前記粘着シートとの接触部分が前記頂点部に対応する部分のみになるまで前記空間を減圧し、前記頂点部に前記半導体チップを保持することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
ダイシングによって切断された半導体チップを粘着シートから取り上げる半導体装置の製造装置であって、
前記半導体チップが載置されるステージと、
前記ステージの前記半導体チップが載置される面に所定の間隔で設けられた複数の溝と、
前記溝の開口部側の端部によって形成され、前記粘着シートを介して前記半導体チップを保持する頂点部と、
前記ステージに設けられ、前記溝に連結された少なくとも1つの通気孔と、
前記ステージに載置された前記半導体チップの、前記ステージ側の面に貼り付いている前記粘着シート、および前記ステージに設けられた前記溝で囲まれた空間を、前記通気孔を介して減圧する減圧手段と、
前記減圧手段によって前記空間が減圧されることで前記頂点部に保持された前記半導体チップを吸引して取り上げる吸引手段と、
を備え、
前記半導体チップの端部が前記溝の長手方向の端部に対して所定の角度をなすように、前記粘着シートが貼り付けられた側の面を前記ステージ側にして前記ステージに前記半導体チップが載置されることを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項6】
前記半導体チップの前記ステージ側の面において、前記半導体チップの端部の少なくとも1辺に前記頂点部が接触するように、前記ステージに前記半導体チップが載置されることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項7】
前記頂点部に前記半導体チップに面接触する平面を設けたことを特徴とする請求項5または6に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項8】
前記減圧手段は、前記半導体チップに貼り付けられた前記粘着シートを前記溝の内壁に沿うように変形させることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一つに記載の半導体装置の製造装置。
【請求項9】
前記減圧手段は、前記半導体チップと前記粘着シートとの接触部分が前記頂点部に対応する部分のみになるまで前記空間を減圧することを特徴とする請求項5〜8のいずれか一つに記載の半導体装置の製造装置。
【請求項10】
ダイシングによって切断された半導体チップを粘着シートから取り上げる半導体装置の製造装置であって、
前記半導体チップが載置されるステージと、
前記ステージの前記半導体チップが載置される面に所定の間隔で設けられた複数の溝と、
前記溝の開口部側の端部によって形成され、前記粘着シートを介して前記半導体チップを保持する頂点部と、
前記ステージに設けられ、前記溝に連結された少なくとも1つの通気孔と、
前記ステージに載置された前記半導体チップの、前記ステージ側の面に貼り付いている前記粘着シート、および前記ステージに設けられた前記溝で囲まれた空間を、前記通気孔を介して減圧する減圧手段と、
前記減圧手段によって前記空間が減圧されることで前記頂点部に保持された前記半導体チップを吸引して取り上げる吸引手段と、
前記半導体チップを前記ステージに載置する際に、前記半導体チップの端部が前記溝の長手方向の端部に対して所定の角度をなすように前記ステージまたは前記半導体チップを回転させる駆動手段と、
を備えることを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項1】
ダイシングによって切断された半導体チップを粘着シートから取り上げる、半導体装置の製造方法であって、
前記半導体チップが載置されるステージに設けられた溝の長手方向の端部に対して前記半導体チップの端部が所定の角度をなすように、前記粘着シートが貼り付けられた側の面を前記ステージ側にして前記ステージに前記半導体チップを載置する載置工程と、
前記ステージに接する前記粘着シートおよび前記ステージに設けられた前記溝で囲まれた空間を減圧し、前記溝の開口部側の端部によって形成された頂点部に前記粘着シートを介して前記半導体チップを保持する保持工程と、
前記頂点部に保持された前記半導体チップを吸引して取り上げる吸引工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記載置工程では、前記半導体チップの前記ステージ側の面において、前記半導体チップの端部の少なくとも1辺に前記頂点部が接触するように、前記ステージに前記半導体チップを載置することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記保持工程では、前記空間を減圧し、前記半導体チップに貼り付けられた前記粘着シートを前記溝の内壁に沿うように変形させることで、前記頂点部に前記半導体チップを保持することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記保持工程では、前記半導体チップと前記粘着シートとの接触部分が前記頂点部に対応する部分のみになるまで前記空間を減圧し、前記頂点部に前記半導体チップを保持することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
ダイシングによって切断された半導体チップを粘着シートから取り上げる半導体装置の製造装置であって、
前記半導体チップが載置されるステージと、
前記ステージの前記半導体チップが載置される面に所定の間隔で設けられた複数の溝と、
前記溝の開口部側の端部によって形成され、前記粘着シートを介して前記半導体チップを保持する頂点部と、
前記ステージに設けられ、前記溝に連結された少なくとも1つの通気孔と、
前記ステージに載置された前記半導体チップの、前記ステージ側の面に貼り付いている前記粘着シート、および前記ステージに設けられた前記溝で囲まれた空間を、前記通気孔を介して減圧する減圧手段と、
前記減圧手段によって前記空間が減圧されることで前記頂点部に保持された前記半導体チップを吸引して取り上げる吸引手段と、
を備え、
前記半導体チップの端部が前記溝の長手方向の端部に対して所定の角度をなすように、前記粘着シートが貼り付けられた側の面を前記ステージ側にして前記ステージに前記半導体チップが載置されることを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項6】
前記半導体チップの前記ステージ側の面において、前記半導体チップの端部の少なくとも1辺に前記頂点部が接触するように、前記ステージに前記半導体チップが載置されることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項7】
前記頂点部に前記半導体チップに面接触する平面を設けたことを特徴とする請求項5または6に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項8】
前記減圧手段は、前記半導体チップに貼り付けられた前記粘着シートを前記溝の内壁に沿うように変形させることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一つに記載の半導体装置の製造装置。
【請求項9】
前記減圧手段は、前記半導体チップと前記粘着シートとの接触部分が前記頂点部に対応する部分のみになるまで前記空間を減圧することを特徴とする請求項5〜8のいずれか一つに記載の半導体装置の製造装置。
【請求項10】
ダイシングによって切断された半導体チップを粘着シートから取り上げる半導体装置の製造装置であって、
前記半導体チップが載置されるステージと、
前記ステージの前記半導体チップが載置される面に所定の間隔で設けられた複数の溝と、
前記溝の開口部側の端部によって形成され、前記粘着シートを介して前記半導体チップを保持する頂点部と、
前記ステージに設けられ、前記溝に連結された少なくとも1つの通気孔と、
前記ステージに載置された前記半導体チップの、前記ステージ側の面に貼り付いている前記粘着シート、および前記ステージに設けられた前記溝で囲まれた空間を、前記通気孔を介して減圧する減圧手段と、
前記減圧手段によって前記空間が減圧されることで前記頂点部に保持された前記半導体チップを吸引して取り上げる吸引手段と、
前記半導体チップを前記ステージに載置する際に、前記半導体チップの端部が前記溝の長手方向の端部に対して所定の角度をなすように前記ステージまたは前記半導体チップを回転させる駆動手段と、
を備えることを特徴とする半導体装置の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−102126(P2013−102126A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−172117(P2012−172117)
【出願日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
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