説明

単相誘導モータの駆動制御装置

【課題】サーマルプロテクタが開動作したことを正確に判定することが可能な単相誘導モータの駆動制御装置を提供する。
【解決手段】交流電源(1)の電圧を監視して、対応する第1の電圧(V1)を出力する第1の電圧監視手段(15)と、進相コンデンサ(7)の両端電圧を検出して、対応する第2の電圧(V2)を出力する第2の電圧監視手段(17)と、第1、第2の電圧(V1、V2)を比較する比較回路(49)と、を備える。第1の電圧監視手段(15)及び第2の電圧監視手段(17)は、サーマルプロテクタ(11)が作動していないとき及び交流電源(1)がオフされたときに第1、第2の電圧(V1、V2)が第1の大小関係(V1>V2)を満たし、サーマルプロテクタ(11)が作動したときに第1、第2の電圧(V1、V2)が第1の大小関係とは異なる第2の大小関係(V1<V2)を満たすように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は 単相誘導モータの駆動制御装置に関し、特に、サーマルプロテクタを用いて単相誘導モータの過熱時における通電を停止するようにした単相誘導モータの駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先に、特許文献1に係る単相誘導モータの駆動制御装置を提案した。この先願に係る装置は、単相誘導モータの過熱時に該モータと交流電源装置間の接続を断つサーマルプロテクタと、該サーマルプロテクタを介して上記単相誘導モータに通電するモータ駆動用の双方向制御整流素子(トライアック)を備えている。
【0003】
上記サーマルプロテクタが閉じた状態にあるときには、単相誘導モータに接続された進相コンデンサの両端に交流電圧が現われ、一方、単相誘導モータの過熱によってサーマルプロテクタが開いた状態のときには、進相コンデンサの両端電圧が零になる。
そこで、この先願に係る装置では、上記進相コンデンサの両端に現われる交流電圧を利用して該交流電圧の半波に同期したトリガ信号を形成し、このトリガ信号によって上記双方向制御整流素子をトリガするようにしている。したがって、サーマルプロテクタが閉じた状態のときには、該サーマルプロテクタ及び上記双方向制御整流素子を介して単相誘導モータが通電されることになる。
【0004】
この状態でサーマルプロテクタが開動作すると、単相誘導モータが交流電源から切り離されて進相コンデンサの両端電圧が零になるので、上記トリガ信号が形成されなくなるとともに、単相誘導モータが過熱状態にあることを示すアラーム信号が出力される。そして、このアラーム信号に基づいて警報手段やモータ制動用の電磁ブレーキ等が作動される。
【0005】
その後、単相誘導モータの温度が低下してサーマルプロテクタが閉動作した場合には、進相コンデンサの両端電圧に基づいて上記トリガ信号が再び形成されるようになる。このとき、このトリガ信号を上記モータ駆動用の双方向制御整流素子に入力すると、単相誘導モータの通電が再開されて、単相誘導モータが再び過熱することになる。つまり、単相誘導モータの過熱→サーマルプロテクタの開動作→単相誘導モータの温度低下→サーマルプロテクタの閉動作→単相誘導モータの過熱→・・・というように単相誘導モータの過熱が周期的に繰り返されることになる。
そこで、上記先願に係る装置では、サーマルプロテクタが開状態から閉状態に復帰した後においても双方向制御整流素子のオフ状態を維持させることによって、上記単相誘導モータの過熱の繰り返しを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3572112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記進相コンデンサの両端電圧は、サーマルプロテクタが開状態になったときだけでなく、交流電源がオフされた場合においても零になる。このため、上記先願に係る装置は、交流電源がオフされたさいに、サーマルプロテクタが開動作したものと誤判断して上記アラーム信号を出力することになる。 この場合、単相誘導モータが過熱していないにもかかわらず、過熱に伴う処置(例えば、警報器等の作動)が実行されるという不都合が発生する。
そこで、本発明の目的は、サーマルプロテクタが開動作したことを正確に判定することが可能な単相誘導モータの駆動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、単相誘導モータが過熱した場合に作動して該単相誘導モータと交流電源間を電気的に遮断するサーマルプロテクタと、前記単相誘導モータの主巻線と補助巻線に流れる電流の位相を相違させる進相コンデンサとを有する単相誘導モータの駆動制御装置であって、前記交流電源の電圧を監視して、該電圧に対応する第1の電圧を出力する第1の電圧監視手段と、前記進相コンデンサの両端電圧を監視して、該電圧に対応する第2の電圧を出力する第2の電圧監視手段と、前記第1、第2の電圧を比較する比較回路と、を備える。
前記第1の電圧監視手段及び第2の電圧監視手段は、前記サーマルプロテクタが作動していないとき及び前記交流電源がオフされたときに前記第1、第2の電圧が第1の大小関係を満たし、前記サーマルプロテクタが作動したときに前記第1、第2の電圧が前記第1の大小関係とは異なる第2の大小関係を満たすように構成されている。
したがって、前記第1、第2の電圧が前記第2の大小関係になったときの前記比較回路の出力に基づいてアラーム信号を発生すれば、交流電源がオフされた場合にアラーム信号が発生するという不都合が回避される。
【0009】
前記第1の電圧監視手段は、例えば、前記交流電源の電圧に基づく交流電圧によって駆動される発光素子を有する第1のフォトカプラと、該第1のフォトカプラの出力を平滑して前記第1の電圧として出力する平滑回路とを備えるように構成される。また、前記第2の電圧監視手段は、例えば、前記進相コンデンサの両端電圧に基づく交流電圧によって駆動される発光素子を有する第2のフォトカプラと、該第2のフォトカプラの出力を平滑して前記第2の電圧として出力する平滑回路とを備えるように構成される。
【0010】
前記第1、第2の電圧が前記第2の大小関係になった場合には、そのときの前記比較回路の出力に基づいてアラーム信号を発生することができる。
また、前記第1、第2の電圧が前記第2の大小関係になったときの前記比較回路の出力をラッチするラッチ回路を更に設け、前記ラッチ回路がラッチ状態にあるときに前記単相誘導モータの通電を停止するように構成しても良い。
更に、前記サーマルプロテクタを介して前記単相誘導モータに通電するモータ駆動用の双方向制御整流素子を設け、前記ラッチ回路がラッチ状態にあるときに前記双方向制御整流素子に対するトリガ信号の入力を停止するように構成しても良い。
【0011】
前記モータ駆動用の双方向制御整流素子として、前記単相誘導モータの正転動作時及び逆転動作時にそれぞれトリガ信号が入力される第1の双方向制御整流素子及び第2の双方向制御整流素子を備えることができる。
また、前記単相誘導モータに併設された電磁ブレーキに通電するブレーキ駆動用の双方向制御整流素子を更に設け、前記ラッチ回路がラッチ状態にあるときに前記ブレーキ駆動用の双方向制御整流素子へのトリガ信号の入力を停止して前記電磁ブレーキをブレーキ動作させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、交流電源の電圧と進相コンデンサの両端電圧の双方を監視して、サーマルプロテクタが開動作したことを正確に判定することが可能になる。
また、請求項2に係る発明によれば、上記交流電源の電圧と進相コンデンサの両端電圧をアナログ処理することによって上記サーマルプロテクタが開動作したことを判定することができるので、構成の簡単化とコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る単相誘導モータの駆動制御装置の一実施形態を示す回路図である。
【図2】本発明に係る単相誘導モータの駆動制御装置の他の実施形態を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る単相誘導モータの駆動制御装置の実施形態について説明する。
図1において、単相誘導モータ1は、主巻線3、補助巻線5及び接続端子T1〜T3を有し、主巻線3はモータ端子T1、T2間に、補助巻線5はモータ端子T1、T3間にそれぞれ接続されている。そして、このモータ端子T2、T3間には進相コンデンサ7が接続されている。
【0015】
単相商用電源9の出力電圧は、電源ライン9a、9b間に印加される。サーマルプロテクタ11は、単相誘導モータ1の過熱を感知して電気接点を開く周知の構成を有し、該モータ1に内蔵されている。このサーマルプロテクタ11は、一方の端子がモータ端子T1に接続され、他方の端子が電源ライン9aに接続されている。
正逆転切換スイッチ13は、端子a、端子bがそれぞれモータ端子T1、T2に接続され、コモン端子cが他方の電源ライン9bに接続されている。
【0016】
本実施形態は、交流電源9の電圧を監視する第1の電圧監視部15及び進相コンデンサ7の両端電圧を監視する第2の電圧監視視部17を備えている。
第1の電圧監視部15は、フォトカプラ19を備えている。フォトカプラ19の発光ダイオード19aは、アノードが抵抗21を介して電源ライン9aに接続されるとともに、カソードがダイオード23、25を介してモータ端子T2、T3に接続されている。また、このフォトカプラ19のフォトトランジスタ15bは、コレクタが抵抗27を介して監視ポイントP1に接続されるとともに、エミッタが接地されている。そして、監視ポイントP1と直流電源29間には抵抗31が接続され、また、監視ポイントP1と接地間には平滑コンデンサ33が接続されている。
【0017】
第2の電圧監視部17は、フォトカプラ35を備えている。このフォトカプラ35の発光ダイオード35aは、アノードが抵抗37及びダイオード39を介してモータ端子T3に接続されるとともに、カソードがモータ端子T2に接続されている。また、このフォトカプラ35のフォトトランジスタ35bは、コレクタが抵抗41を介して監視ポイントP2に接続されるとともに、エミッタが接地されている。そして、監視ポイントP2と直流電源29間には抵抗43が、また、監視ポイントP2と接地間には平滑コンデンサ45と抵抗47の並列回路が接続されている。
上記監視ポイントP1,P2は、比較回路49の一方、他方の入力端子にそれぞれ接続され、該比較回路49の出力端子はアラーム出力回路51に接続されている。
【0018】
次に、本実施形態に係る単相誘導モータの駆動制御装置の動作について説明する。
単相誘導モータ1が過熱していない状況においては、図示のようにサーマルプロテクタ11が閉状態にある。このとき、正逆転切換スイッチ13が図示のように端子a側に投入されているとすると、進相コンデンサ7によってモータ1の補助巻線5に流れる電流の位相が進められるので、該モータ1が正転する。
このとき、フォトカプラ19の発光ダイオード19aには、交流電源9の出力電圧が抵抗21及びダイオード23を介して印加され、また、フォトカプラ35の発光ダイオード35aには、ダイオード39及び抵抗37を介して進相コンデンサ7の両端電圧が印加される。この結果、上記両発光ダイオード19a、35aは、交流半波電流により発光することになる。
【0019】
ここで、正逆転切換スイッチ13が端子b側に投入されると、進相コンデンサ7によってモータ1の主巻線3に流れる電流の位相が進められる結果、該モータ1が逆転する。
このとき、フォトカプラ19の発光ダイオード19aには、交流電源9の出力電圧が抵抗21及びダイオード25を介して印加され、また、フォトカプラ35の発光ダイオード35aには、上記と同様に、ダイオード39及び抵抗37を介して進相コンデンサ7の両端電圧が印加される。この結果、上記両発光ダイオード19a、35aは、交流半波電流により発光する。
【0020】
このように、サーマルプロテクタ11が閉じているときには、正逆転切換スイッチ13が端子a、bのいずれの側に投入されていても両発光ダイオード19a、35aが発光する。そして、これらの発光ダイオード19a、35aの発光に伴って対応するフォトトランジスタ19b、35bがオンするので、該フォトトランジスタ15b、17bのコレクタからはデューティ比約50%のパルス状電圧が出力される。
【0021】
フォトトランジスタ19bの出力電圧は、抵抗27、31及び平滑コンデンサ33によって平滑され、その平滑された電圧が監視ポイントP1の電圧(平滑コンデンサ33の両端電圧)V1になる。また、フォトトランジスタ35bの出力電圧は、抵抗41、43及び平滑コンデンサ45によって平滑され、その平滑された電圧が監視ポイントP2の電圧(平滑コンデンサ45の両端電圧)V2になる。
本実施形態では、このときの電圧V1、V2の関係、つまり、交流電源9の出力電圧と進相コンデンサ7の両端電圧が共に正常な値を示すときの電圧V1、V2の関係がV1>V2となるように抵抗27、31、41、43、47及びコンデンサ33、47の値が選定されている。
【0022】
比較回路49は、上記電圧V1,V2を比較し、V1>V2のときにその出力端子が「H」レベルとなり、また、V1<V2のときにその出力端子が「L」レベルとなる。従って、サーマルプロテクタ11が閉じかつ交流電源9の出力電圧と進相コンデンサ7の両端電圧が共に正常な値を示すときには、比較回路49の出力端子が「H」レベルになる。
【0023】
次に、サーマルプロテクタ11が単相誘導モータ1の過熱を検知して開動作した場合について説明する。
この場合、第1の電圧監視部15のフォトカプラ19は、サーマルプロテクタ11が閉じている場合と同じ動作を継続する。なぜなら、フォトカプラ19の発光ダイオード19aの印加電圧は、サーマルプロテクタ11の開動作の影響を受けないからである。
【0024】
一方、第2の電圧監視部17のフォトカプラ35は次のように動作する。すなわち、サーマルプロテクタ11が開動作すると、進相コンデンサ7の両端電圧が零になるので、発光ダイオード35aの発光動作が停止し、その結果、フォトトランジスタ35bがオフ状態におかれることになる。
この状態では、監視ポイントP2の電圧V2が直流電源27の電圧値Vccを抵抗43と抵抗47で分圧した値を示す。
本実施形態では、このときに監視ポイントP1、P2の電圧V1、V2の関係がV1<V2になるように抵抗27、31、43、47及びコンデンサ33、47の値が選定されている。
したがって、サーマルプロテクタ11が開動作した場合には、比較回路49の出力端子が異常動作状態を示す「L」レベルに変化する。このように比較回路49の出力端子が「L」レベルになると、該出力端子に接続されたアラーム出力回路51から図示していないアラーム対処機器(警報手段を含む)にアラーム信号が出力される。
【0025】
次に、上記比較回路49の出力端子が正常動作状態を示す「H」レベルである状態において、図示していない電源スイッチの操作等によって交流電源9がオフされた場合について説明する。
この場合、フォトカプラ19の発光ダイオード19aの印加電圧及びフォトカプラ35の発光ダイオード35aの印加電圧が共に消失するので、それらのフォトカプラ19、35のフォトトランジスタ17a、17bが共にオフする。これに伴い、監視ポイントP1の電圧V1が直流電源27の電圧値Vccまで上昇するとともに、監視ポイントP2の電圧V2が上記電圧値Vccを抵抗43と抵抗47で分圧した値を示すことになる。つまり、電圧V1、V2はV1>V2になる。この結果、比較回路49の出力端子は、交流電源9がオフされる前の「H」レベルを維持することになる。かくして、本実施形態によれば、交流電源9がオフされた場合に上記アラーム信号が発生するという不都合を回避することができる。
【0026】
図2に本発明の他の実施形態を示す。この実施形態では、図1に示す正逆転切換スイッチ13に代わる無接点スイッチ回路14が設けられ、更に、ラッチ回路53及びトリガ回路55が設けられている。そして、本実施形態におけるモータ1には、電磁部ブレーキ6が組込まれている。
この電磁部ブレーキ6は、無励磁作動形、つまり、通電されてないときにブレーキ動作するものである。
無接点スイッチ回路14は、単相誘導モータ1の主巻線3、補助巻線5及び電磁ブレーキ6を駆動するための双方向制御整流素子(トライアック)14a、14b及び14cを備えている。そして、トリガ回路55は、図示していない上位の制御機器から正転コマンド信号、逆転コマンド信号およびブレーキ解放コマンド信号が入力された際に、それぞれ双方向制御整流素子14a、14bおよび14cをトリガしてそれらを導通させる。
【0027】
双方向制御整流素子14aが導通すると、図1の正逆転切換スイッチ13を端子a側に投入した場合と等価な駆動回路が構成され、また、双方向制御整流素子14bが導通すると、上記正逆転切換スイッチ13を端子b側に投入した場合と等価な駆動回路が構成される。そして、双方向制御整流素子14cが導通すると、電磁ブレーキ6が励磁されてモータ1が回転可能な状態になる。
そこで、トリガ回路55に正転コマンド信号およびブレーキ解放コマンド信号が入力されているときにモータ1が正転駆動され、また、トリガ回路55に逆転コマンド信号およびブレーキ解放コマンド信号が入力されているときにモータ1が逆転駆動される。
【0028】
ところで、サーマルプロテクタ11が開いた後においては、モータ1に流れていた電流が遮断されるので、時間経過と共にモータ1の温度が徐々に低下する。そして、モータ1の温度が所定の温度まで低下した時点でサーマルプロテクタ11が再び閉じることになる。したがって、モータ1が過熱する原因が取除かれない場合には、サーマルプロテクタ11の開閉が繰り返されること、換言すれば、モータ1の過熱が繰り返されることになる。
【0029】
しかし、本実施形態によれば、モータ1の過熱が繰り返されるという上記の不都合を回避することができる。
すなわち、前記したように、比較回路49の出力端子は、サーマルプロテクタ11が開動作した場合にのみ異常動作状態を示す「L」レベルとなる。ラッチ回路53は、比較回路49の出力端子が「L」レベルに変化した場合にその変化をラッチし、前記した上位の制御機器からリセット信号が入力されるまでそのラッチ状態を維持する。
そして、ラッチ回路53は、アラームの発生を指示するコマンド信号をアラーム出力回路51に出力するとともに、双方向制御整流素子14a、14b及び14cへのトリガ信号の出力停止を要求するコマンド信号をトリガ回路55に出力する。
これに伴い、アラーム出力回路51は、図示していないアラーム対処機器(警報手段を含む)にアラーム信号を出力する。また、トリガ回路55は、双方向制御整流素子14a、14b及び14cに対するトリガ信号の出力を停止する。
【0030】
双方向制御整流素子14a、14bへのトリガ信号の出力が停止されると、その後にモータ1の温度が低下してサーマルプロテクタ11が閉状態に戻ったとしても、モータ1は作動されない。なぜなら、ラッチ回路53から上記トリガ信号の出力停止を要求するコマンド信号が継続して出力されるからである。したがって、本実施形態によれば、サーマルプロテクタ11の開閉が繰り返されること、つまり、モータ1の過熱が繰り返されることが回避されることになる。
【0031】
一方、双方向制御整流素子14cへのトリガ信号の出力が停止されると、前記無励磁作動形の電磁ブレーキ6への通電が停止する。この結果、電磁ブレーキ6がブレーキ動作して、モータ1のロータが機械的にロックされる。それ故、本実施形態によれば、サーマルプロテクタ11の開動作下においてモータ1の駆動物が不測に移動するなどの不都合を防止することができる。
【0032】
なお、モータ1の過熱原因が取除かれると、上記上位機器からラッチ回路53にリセット信号が入力されて、該ラッチ回路53がリセットされる。したがって、アラーム出力回路51からのアラーム信号の出力が停止されるとともに、トリガ回路55が上位機器からのコマンド信号に従ったトリガ信号をサイリスタ回路14に出力する状態になる。
【0033】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形態様を取り得るものである。
すなわち、図1に示す実施形態では、フォトカプラ15の発光ダイオード15aのカソードをダイオード21、23を介してモータ1の端子T2、T2に接続しているが、図2に示す実施形態の場合と同様に、発光ダイオード15aのカソードをダイオード24を介して電源ライン9bに接続するようにしてもよい。この構成によれば、ダイオードの使用数が減るものの、ダイオード24を電源ライン9bに接続するための端子が必要になる。
【0034】
また、図1に示す実施形態では、図2に示すラッチ回路53を使用していないが、この実施形態においてもラッチ回路53とアラーム出力回路51とを組み合わせた構成を採用することができる。この場合、交流電源9をオンオフする電源スイッチ素子をラッチ回路53の出力信号でオフさせるように構成することによって、モータ1の過熱が繰り返されることを回避することができる。
【0035】
さらに、図2に示す実施形態では、電磁部ブレーキ6として無励磁作動形のものを使用しているが、この電磁部ブレーキ6として励磁作動形、つまり、通電に伴ってブレーキ動作するものを使用してもよい。
この場合、ラッチ回路53は、そのラッチ動作時(サーマルプロテクタ11の開動作時)に、双方向制御整流素子14cへのトリガ信号の出力を要求するコマンド信号をトリガ回路55に出力するように構成される。したがって、サーマルプロテクタ11が開動作した場合には、上記励磁作動形の電磁部ブレーキ6が励磁されてブレーキ動作することになる。もちろん、この励磁作動形の電磁部ブレーキ6を使用する場合には、トリガ回路55に入力される上記ブレーキ解放コマンド信号によって双方向制御整流素子14cがオフされることになる。
【符号の説明】
【0036】
1 単相誘導モータ
3 主巻線
5 補助巻線
6 電磁ブレーキ
7 進相コンデンサ
9 交流電源
11 サーマルプロテクタ
13 正逆転切換スイッチ
14 無接点スイッチ回路
14a〜14c 双方向制御整流素子
15 第1の電圧監視部
17 第2の電圧監視部
19、35 フォトカプラ
21、27、31、37,41,43、47 抵抗
23、24、25、39 ダイオード
33、45 平滑コンデンサ
49 比較回路
51 アラーム出力回路
53 ラッチ回路
55 トリガ回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相誘導モータが過熱した場合に作動して該単相誘導モータと交流電源間を電気的に遮断するサーマルプロテクタと、前記単相誘導モータの主巻線と補助巻線に流れる電流の位相を相違させる進相コンデンサとを有する単相誘導モータの駆動制御装置であって、
前記交流電源の電圧を監視して、該電圧に対応する第1の電圧を出力する第1の電圧監視手段と、
前記進相コンデンサの両端電圧を監視して、該電圧に対応する第2の電圧を出力する第2の電圧監視出手段と、
前記第1、第2の電圧を比較する比較回路と、
を備え、
前記第1の電圧監視手段及び第2の電圧監視手段は、前記サーマルプロテクタが作動していないとき及び前記交流電源がオフされたときに前記第1、第2の電圧が第1の大小関係を満たし、前記サーマルプロテクタが作動したときに前記第1、第2の電圧が前記第1の大小関係とは異なる第2の大小関係を満たすように構成されていることを特徴とする単相誘導モータの駆動制御装置。
【請求項2】
前記第1の電圧監視手段は、前記交流電源の電圧に基づく交流電圧によって駆動される発光素子を有する第1のフォトカプラと、該第1のフォトカプラの出力を平滑して前記第1の電圧として出力する平滑回路とを備え、
前記第2の電圧監視手段は、前記進相コンデンサの両端電圧に基づく交流電圧によって駆動される発光素子を有する第2のフォトカプラと、該第2のフォトカプラの出力を平滑して前記第2の電圧として出力する平滑回路とを備えることを特徴とする請求項1に記載の単相誘導モータの駆動制御装置。
【請求項3】
前記第1、第2の電圧が前記第2の大小関係になったときの前記比較回路の出力に基づいてアラーム信号を発生するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の単相誘導モータの駆動制御装置。
【請求項4】
前記第1、第2の電圧が前記第2の大小関係になったときの前記比較回路の出力をラッチするラッチ回路を更に備え、該ラッチ回路がラッチ状態にあるときに前記単相誘導モータの通電を停止するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の単相誘導モータの駆動制御装置。
【請求項5】
前記サーマルプロテクタを介して前記単相誘導モータに通電するモータ駆動用の双方向制御整流素子を備え、前記ラッチ回路がラッチ状態にあるときに前記双方向制御整流素子に対するトリガ信号の入力を停止するように構成したことを特徴とする請求項4に記載の単相誘導モータの駆動制御装置。
【請求項6】
前記モータ駆動用の双方向制御整流素子として、前記単相誘導モータの正転動作時及び逆転動作時にそれぞれトリガ信号が入力される第1の双方向制御整流素子及び第2の双方向制御整流素子を備えることを特徴とする請求項5に記載の単相誘導モータの駆動制御装置。
【請求項7】
前記単相誘導モータに併設された電磁ブレーキに通電するブレーキ駆動用の双方向制御整流素子を更に備え、前記ラッチ回路がラッチ状態にあるときに前記ブレーキ駆動用の双方向制御整流素子へのトリガ信号の入力を停止して電磁ブレーキをブレーキ動作させるようにしたことを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の単相誘導モータの駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−244592(P2011−244592A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114484(P2010−114484)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】