説明

印刷またはコーティング方法

【課題】 印刷またはコーティング方法において、狭い範囲の特定の波長だけでなく、広い範囲の波長の中の特定の波長の光に反応するインキまたはニスを選択できる。
【解決手段】 印刷ユニット3A,3Bまたは印刷ユニット4A,4Bによって紙10に印刷された高反応型インキを光照射装置52,72のオゾンレスランプから照射された光によって硬化させる。光照射装置52,72は、オゾンレスランプから照射される光のうち熱発生領域の波長を除去するカットフィルタを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被転写体にインキまたはニスを転写し、このインキまたはニスをランプから照射される光により硬化させる印刷またはコーティング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から紫外線硬化型インキまたはニスを用いて被転写体としてのシートに印刷またはコーティングし、このシートに対してUVランプにより紫外線を照射させて、紫外線硬化型インキまたはニスを硬化させる印刷またはコーティング方法が公知である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、紫外線等の光を照射することにより、迅速に硬化する光重合開始剤を含む光硬化型インキについても公知である(例えば特許文献2参照)。
【0004】
近年、省エネルギーで環境負荷が少ない印刷またはコーティング方法が開発されている。これは、従来のUVランプに替えてUV波長を発生させる発光ダイオード(LED−UV)により紫外線硬化型インキまたはニスを硬化させるものである(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭54−123305号公報
【特許文献2】特開2009−221441号公報
【特許文献3】特開2008−307891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の印刷またはコーティング方法においては、発光ダイオード(LED−UV)から発せられる波長の領域幅が極めて狭い範囲(例えば370nm−380nm)であるため、この発光ダイオードから照射される光によって硬化されるインキまたはニスも、この狭い範囲の波長の光に反応するもののみしか使用することができないという問題があった。
【0007】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、省エネルギーで環境負荷が少ない印刷またはコーティング方法を提供することにある。さらに本願の目的とするところは、インキまたはニスの選択の幅が広い印刷またはコーティング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明は、被転写体に対して高反応型インキまたは高反応型ニスを転写し、オゾンレスランプにより前記高反応型インキまたは高反応型ニスを硬化させるものである。
【0009】
本発明は、前記発明において、前記オゾンレスランプの光のうち熱発生領域の波長を除去した光を前記被転写体に照射するものである。
【0010】
本発明は、前記発明のいずれか一つの発明において、前記高反応型インキまたは高反応型ニスは、前記被転写体に照射される光の波長領域の範囲内の特定の波長で硬化するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低出力のオゾンレスランプを使用しても、高反応型インキが充分に硬化するため、オゾンレス、省エネルギー、パウダーレス(裏刷り防止のためのパウダー散布が不要)となるので、環境に配慮した印刷またはコーティングシステムを構築することができる。また、オゾンレスのためオゾン処理のための処理装置が不要となり省エネルギーとなる。また、低出力のオゾンレスランプの使用により、ダクトや周辺装置が不要となるため省スペースとなる。また、インキ業界においては、LED−UVのように限定された波長の制限の中で開発する必要がなく、オゾンレスランプから出力される広範囲の波長の中から任意の波長で迅速に硬化するものを開発すればよいから、インキ本来の使命である印刷品質が良好なものを開発することができる。また、ユーザーにおいては、LED−UV用のインキまたはニスは勿論、その他の高反応型インキまたは高反応型ニスも使用できるため、選択枝が増えて印刷物に最適なインキを使用することができる。
【0012】
前記発明のうちの一つの発明によれば、オゾンレスランプの光のうち熱発生領域の波長を除去することにより、被転写体に与える熱を低減させることができるため、被転写体の熱変形を防ぎ、品質を向上させることができる。
【0013】
前記発明のうちの一つの発明によれば、高反応型インキまたは高反応型ニスを、狭い範囲の特定の波長だけでなく、広い範囲の波長の中の任意の波長の光に反応するインキまたはニスから選択できるため、インキまたはニスの選択枝が拡がる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る印刷またはコーティング方法を採用した枚葉輪転印刷機の概略の構成を示す側面図である。
【図2】図1におけるII部の拡大図である。
【図3】図1におけるIII 部の拡大図である。
【図4】本発明に係る印刷またはコーティング方法に採用した光照射装置の構造を説明するための断面図である。
【図5】本発明に係る印刷またはコーティング方法を採用した枚葉輪転印刷機の給水装置の構成を説明するための胴の配列図である。
【図6】本発明に係る印刷またはコーティング方法に採用したオゾンレスランプから照射される光の波長の分布を示す図である。
【図7】本発明に係る印刷またはコーティング方法を採用した枚葉輪転印刷機の第2の実施例の概略の構成を示す側面図である。
【図8】図7におけるVIII部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施の形態を図1ないし図6に基づいて説明する。
〔実施の形態1〕
【0016】
図1に全体を符号1で示す液体転写装置としての枚葉輪転印刷機は、被転写体供給装置としての給紙装置2と、液体転写ユニットしての二つの印刷ユニット3A,3Bと、同じく液体転写ユニットとしての二つの印刷ユニット4A,4Bと、排紙装置5とによって概ね構成されている。給紙装置2には、被転写体としての枚葉紙10を積載し、枚葉紙10の減量にしたがい自動的に上昇する紙積台11が設けられており、枚葉紙10の上方には、これを1枚ずつ吸引して差板12に送り出す図示しないサッカ装置が配設されている。
【0017】
13は差板12に送り出されてきた枚葉紙10の前端をくわえ、渡し胴14の爪にくわえ替えさせるスイング装置である。上記した各印刷ユニット3A,3B,4A,4Bには、刷版が装着された版胴16と、後述する転写液体供給装置としてのインキ装置20および給水装置35から供給される転写液体としてのインキおよび湿し水によって刷版の版面に形成された画像が転写されるゴム胴17と、枚葉紙10を保持し搬送してゴム胴17との間を通過する際に枚葉紙10に印圧を加えてゴム胴17上の画像を枚葉紙10に転写させる倍径の圧胴18とがそれぞれ設けられている。19は印刷ユニット3A,3Bの各圧胴18,18との間および後述する反転装置45の吸着胴46と印刷ユニット3Bの圧胴18との間ならびに印刷ユニット4A,4Bの各圧胴18,18との間に設けられた渡し胴である。
【0018】
次に、図5を用いて、各印刷ユニット3A,3B,4A,4Bに設けられたインキ装置20および給水装置35について説明する。インキ装置20は、インキ供給装置21とインキローラ群22とによって構成されている。インキ供給装置21は、インキ壷ローラ23と、左右のインキせきによって高反応型転写液体としての高反応型インキ25が蓄えられたインキ壺24とが備えられている。ここで、高反応型インキとは、後述する光照射装置52,72,172からの小さい光照射エネルギーで硬化するUVインキのことをいい、高反応型UVインキ、高感度型インキ、高感度型UVインキともいう。換言すれば、光照射エネルギーが大きいオゾン発生領域の波長の光を必要とせずに、迅速に硬化するUVインキのことをいう。この高反応型インキ25は、その反応する波長が光照射装置52,72,172から照射される光の波長の範囲の中であれば、例えばLEDから照射される光のように単一の波長で反応するものでもよく、範囲をもった波長で反応するものでもよい。
【0019】
インキローラ群22は、版胴16の周面に対接しているインキ着けローラ27と、これを支持する振りローラ28と、この振りローラ28の上方に設けられた三本の練りローラ29と、インキ壷ローラ23と練りローラ30とに交互に接触する呼び出しローラ31と、練りローラ32と振りローラ33とによって概略構成されている。
【0020】
給水装置35は、水舟36内の湿し水37に浸漬された水元ローラ38と、版胴16の周面に対接している水着ローラ39と、これら水元ローラ38と水着ローラ39との間に設けられた互いに対接している調量ローラ40および移しローラ41との四本のローラによって構成されている。このうち、水元ローラ38と水着ローラ39とは版胴16とは逆方向(反時計方向)に回転駆動され、調量ローラ40と移しローラ41とは版胴16と同じ方向(時計方向)に回転駆動されている。
【0021】
これら四本のローラ38ないし41のうち、互いに接触する一対のローラ40,41が逆スリップするように、すなわち互いの接触点Aにおいて接触面が互いに反対方向に回転するように回転駆動されている。換言すれば、これら両ローラ40,41は共に同じ方向である時計方向に回転駆動されている。このように構成されていることにより、水舟36から水元ローラ38に引き上げられた湿し水37は、調量ローラ40との接触点において、調量ローラ40に転移される。
【0022】
調量ローラ40と移しローラ41とが逆スリップするように回転駆動されることにより、接触点Aにおいて必要最小限で一定量の湿し水37が移しローラ41に転移されるため、版胴16に装着された刷版の版面には、インキに対して最適量の湿し水37が供給され、インキ装置20のインキ着けローラ27から版面に供給される高反応型インキ25の過乳化を規制することができる。
【0023】
図2において45は従来から広く知られている反転装置であって、印刷ユニット3B側の渡し胴19に対接し爪48,48が設けられた吸着胴46と、この吸着胴46および印刷ユニット4A側の圧胴18に挟まれてこれら胴46,18に対接する反転胴47とを備えている。この反転装置45は、吸着胴46に対する反転胴47の回転方向の位相を替えて、反転胴47の図示しないくわえ爪装置に吸着胴46に保持される枚葉紙10の先端(くわえ側)を受け渡したり、後端(尻側)を受け渡したりすることにより、吸着胴46の爪48にくわえられた枚葉紙10の表裏を反転させた状態と反転させずに反転胴47に受け渡すことを選択できるように構成されている。
【0024】
49は吸着胴46の周面にエアーを吹き付けるエアー吹きノズルであって、渡し胴19から吸着胴46に受け渡された枚葉紙10の暴れを規制する。50は吸着胴46の周面に添接されたコロガイドであって、吸着胴46によって搬送される枚葉紙10を吸着胴46の周面に密着させる。51は吸着胴46の周面から一定の間隔をおいて設けられた断面が円弧状に形成された紙ガイドである。
【0025】
52は吸着胴46によって搬送される枚葉紙10に対して光を照射して前記印刷ユニット3A,3Bにおいて印刷された高反応型インキ25を硬化させるオゾンレスランプとしての光照射装置である。この光照射装置52は、図4に示すように一面に照射口53aが開口された箱状の筺体53を備えており、この筺体53の中央部にオゾンレスUVランプ54が固定され、このオゾンレスUVランプ54から照射される光は、反射ミラー55,55に反射して照射口53aから照射される。
【0026】
オゾンレスUVランプ54は、放電ランプとしてのUVランプの発光管に使用されている石英ガラスに少量の不純物を含ませた石英を用いたものであって、この石英によってオゾン発生領域の波長の光を吸収させてオゾンの発生を規制したものである。すなわち、本発明のオゾンレスUVランプ54から照射される光には、図6に示すように、オゾン発生波長である254nmを含むオゾン発生領域(波長が270nm以下)の波長は含まれていない。これに対して、メタルハライドランプから照射される光には、オゾン発生領域の波長が含まれている。また、LEDから照射される光には、オゾン発生領域の波長は含まれていないが、波長が370nm〜380nmでの狭い波長領域内の光のみが照射されている。
【0027】
光照射装置52の照射口53aはカットフィルタ56が設けられており、このカットフィルタ56はオゾンレスUVランプ54から照射される光のうち、熱発生領域の波長(図6において波長400nm以上の波長)を吸収する。したがって、光照射装置52から照射される光は、オゾン発生領域の波長および熱発生領域の波長を除いた波長「270nm〜400nm」の範囲の光が照射される。
【0028】
なお、本実施の形態のオゾンレスUVランプ54は、放電ランプとしてUVランプを用いた例を示したが、ここでのオゾンレスランプは、発光体としてLEDを用いることなく、ネオン、キセノン等の気体や水銀、ナトリウム、スカンジウム等の金属蒸気あるいはこれらの混合気体中の放電によって発光する放電ランプを備え、放電ランプを有する光照射装置からオゾンを発生させる波長を含まない光を照射する光照射装置のことをいう。
【0029】
また、本実施の形態では、オゾンレスUVランプ54自体から照射される光がオゾン発生領域の波長を含まないようにしたが、カットフィルタ56によって、熱発生領域の波長を吸収するだけではなく、オゾン発生領域の波長を吸収するようにしてもよく、その場合は、オゾンレスUVランプ54をそのまま用いてもよいし、オゾンレスUVランプ54に替えてオゾンを発生させる波長を含む光を照射する放電ランプを用いてもよい。また、熱発生領域の波長を吸収する必要がない場合は、照射口53aに設けたカットフィルタ56は使わずに、オゾンレスUVランプ54から照射される光をそのままを照射口53aから照射するようにしてもよい。
【0030】
また、光照射装置52から照射される光の波長を「270nm〜400nm」の範囲と設定したが、これは、光照射装置52から照射される光の波長が、必ずしもこの波長範囲の全域にあるということではなく、この波長範囲内における任意の範囲の波長でもよく、要は波長の下限が「260nm〜300nm」の範囲であり、上限が「380nm〜420nm」の範囲であればよい。このように、光照射装置52から照射される光の波長を「270nm〜400nm」の広い範囲と設定したことにより、上記した高反応型インキ25を、従来の狭い範囲の特定の波長だけでなく、広い範囲の波長の中の特定の波長の光に反応するインキから選択できるため、インキの選択枝が拡がる。
【0031】
図2において、53,54は光照射装置52から照射され枚葉紙10や吸着胴46の周面から反射された光が枚葉輪転印刷機1の外部に漏洩するのを規制するための遮光板である。
【0032】
次に、図1および図3を用いて、排紙装置5について説明する。図3において、60は印刷ユニット4Bの圧胴18に対接する渡し胴であって、圧胴18によって搬送された枚葉紙10をくわえ替える爪61,61が設けられている。63は渡し胴60に対接する渡し胴であって、渡し胴60の爪61から枚葉紙10をくわえ替える爪64,64が設けられている。図3において、62,65は紙ガイドである。
【0033】
図1において、67,68は排紙装置5の前後に設けられたスプロケットであって、これらスプロケット67,68間には、左右一対の無端状の排紙チェーン69が張架されている。この排紙チェーン69上には、渡し胴63の爪64からくわえ替えられる枚葉紙10をくわえる爪竿(図示せず)が一定の間隔をおいて配設されており、この爪竿にくわえられる枚葉紙10は矢印B方向に走行する排紙チェーン69によって搬送される。排紙チェーン69によって矢印B方向に搬送された枚葉紙10は、図示しない爪解放用のカム手段によって爪竿によるくわえが解放されることにより、紙積台70に落下して積載される。
【0034】
図3において、72は上記した光照射装置52と同じ構造を有する光照射装置であって、渡し胴63の爪64にくわえられて搬送された枚葉紙10の上記した印刷ユニット4A,4Bによって印刷された高反応型インキ25を硬化させる。73,74は光照射装置72から照射され枚葉紙10や渡し胴63の周面から反射された光が枚葉輪転印刷機1の外部に漏洩するのを規制するための遮光板である。75は排紙装置5内で発生した熱等を枚葉輪転印刷機1の外部に排気するファンである。
【0035】
次に、このように構成された枚葉輪転印刷機1において、枚葉紙10の両面に印刷された高反応型インキを光照射装置52,72によって硬化させる方法について説明する。予め、図2において、反転装置45の吸着胴46に対する反転胴47の回転方向の位相を、反転胴47の図示しないくわえ爪装置が吸着胴46に保持される枚葉紙10の後端(尻側)に対向する位相に調整する。すなわち、吸着胴46から反転胴47に受け渡された枚葉紙10が反転胴47により表裏を反転されるように切り替えておく。
【0036】
この状態で、図1において、給紙装置2から図示しないサッカ装置によって一枚ずつ差板12に送り出された枚葉紙10は、スイング装置13から渡し胴14を介して印刷ユニット3Aの圧胴18の爪にくわえ替えられて搬送される。圧胴18によって搬送された枚葉紙10は、圧胴18とゴム胴17との間を通過するときに表面に一色目が印刷され、渡し胴19を介して印刷ユニット3Bの圧胴18の爪にくわえ替えられて搬送される。圧胴18によって搬送された枚葉紙10は、圧胴18とゴム胴17との間を通過するときに表面に二色目が印刷される。
【0037】
二色目が印刷された枚葉紙10は渡し胴19を介して反転装置45の吸着胴46の爪48にくわえ替えられて搬送され、光照射装置52から照射される光によって、表面に印刷された高反応型インキ25が硬化される。このとき、光照射装置52から照射される光はオゾンを発生させる波長を含まない光であるため、オゾンを処理するための処理装置が不要になる。
【0038】
また、光照射エネルギーが小さい低出力のオゾンレスランプを使用するため、冷却用のダクトや周辺装置が不要になるから省スペースおよび省エネルギーを実現することが可能になる。また、硬化させるインキが小さい光照射エネルギーで硬化する高反応型インキであることにより迅速に硬化するので、裏刷りを防止するためのパウダーが不要になるから、パウダーを噴射する装置および噴射されたパウダーを処理する装置が不要なる。
【0039】
また、インキ業界においては、LED−UV用のインキのように限定された波長の制限の中で開発する必要がなく、オゾンレスランプから出力される広範囲の波長の中から任意の波長で迅速に硬化するものを開発すればよいから、インキ本来の使命である印刷品質が良好なものを開発することができる。また、ユーザーにおいては、LED−UV用のインキは勿論、その他の高反応型インキも使用できるため、選択枝が増えて印刷物に最適なインキを使用することができる。
【0040】
また、給水装置35を構成している四本のローラのうち、調量ローラ40と移しローラ41とが逆スリップするように回転駆動されることにより、接触点Aにおいて必要最小限で一定量の水量の湿し水37が移しローラ41に転移されるため、版胴16に装着された刷版の版面に、最適量の湿し水37が供給され、インキ装置20のインキ着けローラ27から版面に供給される高反応型インキ25の過乳化を規制することができる。このように、高反応型インキ25の過乳化を規制することができるため、高反応型インキ25の乳化状態を最適な状態とすることができ、小さい光照射エネルギーのオゾンレスUVランプ54による照射でも、高反応型インキ25を確実に硬化させることができる。
【0041】
また、オゾンレスUVランプ54の光のうち、熱発生領域の波長を除去したことにより、枚葉紙10に与える熱を低減させることができるため、枚葉紙10の熱変形を防ぎ、品質を向上させることができる。
【0042】
光照射装置52によって表面に印刷された高反応型インキ25が硬化された枚葉紙10は、反転胴47によって表裏が反転させられ、印刷ユニット4Aの圧胴18の爪にくわえ替えられて搬送される。圧胴18によって搬送された枚葉紙10は、圧胴18とゴム胴17との間を通過するときに裏面に一色目が印刷され、渡し胴19を介して印刷ユニット4Bの圧胴18の爪にくわえ替えられて搬送される。圧胴18によって搬送された枚葉紙10は、圧胴18とゴム胴17との間を通過するときに裏面に二色目が印刷される。
【0043】
裏面に二色目が印刷された枚葉紙10は渡し胴60の爪61にくわえ替えられて搬送され、渡し胴60の爪61から渡し胴63の爪64にくわえられて搬送されるときに、光照射装置72から照射される光によって裏面に印刷された高反応型インキ25が硬化される。裏面に印刷された高反応型インキ25が硬化された枚葉紙10は、渡し胴63の爪64から排紙チェーン69の排紙爪にくわえ替えられ矢印B方向に搬送された後、排紙装置5の紙積台70上に落下して積載される。
【0044】
なお、上述した第1の実施の形態においては、反転装置45で枚葉紙10を反転させ、後刷面印刷ユニット4A,4Bによって枚葉紙10の裏面に印刷するようにしたが、反転装置45で枚葉紙10を反転させることなく、印刷ユニット4A,4Bによって枚葉紙10の表面に印刷するようにしてもよく、その場合は、光照射装置72から照射される光によって枚葉紙10の表面に印刷された高反応型インキ25が硬化される。
〔実施の形態2〕
【0045】
次に、図7および図8を用いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、この第2の実施の形態において、上述した第1の実施の形態で説明した同一または同等の部材については同一の符号を符号を付し詳細な説明は適宜省略する。この第2の実施の形態の枚葉輪転印刷機101が上述した第1の実施の形態の枚葉輪転印刷機1と異なる点は、反転装置45が備えられてなく、枚葉紙10の片面のみを印刷するようにした点にある。
【0046】
すなわち、枚葉輪転印刷機101は、枚葉紙10を一枚ずつ差板12に送り出す給紙装置102と、送り出された枚葉紙10の表面を印刷する四つの印刷ユニット103Aないし103Dと、印刷された枚葉紙10が排出される排紙装置105とによって概略構成されている。113は差板12に送り出されてきた枚葉紙10の前端をくわえ、印刷ユニット103Aの圧胴18の爪にくわえ替えさせるスイング装置である。
【0047】
各印刷ユニット103Aないし103Dの版胴16には、図示を省略しているが、上述した第1の実施の形態と同じインキ装置20および給水装置35が備えられている。排紙装置105には、印刷ユニット103Dの圧胴18と対接する排紙胴166が備えられており、この排紙胴166と同軸上に固定されたスプロケット167と排紙装置105の後部側に設けられたスプロケット168との間には、左右一対の無端状の排紙チェーン169が張架されている。
【0048】
この排紙チェーン169上には、圧胴18の爪からくわえ替えられる枚葉紙10をくわえる爪竿(図示せず)が一定の間隔をおいて配設されており、この爪竿にくわえられる枚葉紙10は矢印C方向に走行する排紙チェーン169によって搬送される。排紙チェーン169によって矢印C方向に搬送される枚葉紙10は、図示しない爪解放用のカム手段によって排紙爪のくわえが解放されることにより、紙積台70に落下して積載される。
【0049】
図8において、172は上記した光照射装置52,72と同じ構造を有する光照射装置であって、排紙チェーン169の排紙爪にくわえられて搬送される枚葉紙10に上記した印刷ユニット103Aないし103Dによって印刷された高反応型インキ25を硬化させる。173,174は光照射装置172から照射され枚葉紙10や後述するエアーガイド176から反射した光が枚葉輪転印刷機1の外部に漏洩するのを規制するための遮光板である。176は排紙チェーン169に沿って設けられた冷却装置付きエアーガイドである。
【0050】
次に、このように構成された枚葉輪転印刷機101において、枚葉紙10に印刷された高反応型インキを光照射装置172によって硬化させる方法について説明する。図7において、給紙装置2から図示しないサッカ装置によって一枚ずつ差板12に送り出された枚葉紙10は、スイング装置113から印刷ユニット103Aの圧胴18の爪にくわえ替えられて搬送される。
【0051】
圧胴18によって搬送された枚葉紙10は、圧胴18とゴム胴17との間を通過するときに表面に一色目が印刷され、渡し胴19を介して印刷ユニット103Bの圧胴18の爪にくわえ替えられて搬送される。圧胴18によって搬送された枚葉紙10は、圧胴18とゴム胴17との間を通過するときに表面に二色目が印刷される。この後、順次、印刷ユニット103C,103Dによって、表面に三色目および四色目が印刷された枚葉紙10は、印刷ユニット103Dの圧胴18から排紙チェーン69の排紙爪にくわえ替えられ矢印C方向に搬送される。
【0052】
排紙チェーン169によって搬送される枚葉紙10は、光照射装置52から照射される光によって表面に印刷された高反応型インキ25が硬化され、さらに排紙チェーン169によって矢印C方向に搬送された後、排紙装置5の紙積台70上に落下して積載される。この第2の実施の形態においても、上述した第1の実施の形態と同様な作用効果が得られる。
【0053】
なお、本実施の形態においては、枚葉紙10に高反応型インキ25を印刷する方法を説明したが、枚葉紙10に対してオゾンレスUVランプ54から照射される小さい光照射エネルギーで硬化する高反応型転写液体としての高反応型ニスをコーティングするコーティング方法に適用してもよい。また、給水装置35を四本のローラ38ないし41によって構成したが、必要に応じて五本以上としてもよい。また、被転写体を枚葉紙10としたが、ウェブでもよく、また、紙ではなくてフィルム状のシートでもよい。
【符号の説明】
【0054】
1,101…枚葉輪転印刷機(液体転写装置)、10…枚葉紙(被転写体)、16…版胴、20…インキ装置、25…高反応型インキ(高感度型インキ)、35…給水装置、37…湿し水、40…調量ローラ、41…移しローラ、52,72,172…光照射装置、54…オゾンレスランプ、56…カットフィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被転写体に対して高反応型インキまたは高反応型ニスを転写し、オゾンレスランプにより前記高反応型インキまたは高反応型ニスを硬化させることを特徴とする印刷またはコーティング方法。
【請求項2】
前記オゾンレスランプの光のうち熱発生領域の波長を除去した光を前記被転写体に照射することを特徴とする請求項1記載の印刷またはコーティング方法。
【請求項3】
前記高反応型インキまたは高反応型ニスは、前記被転写体に照射される光の波長領域の範囲内の特定の波長で硬化することを特徴とする請求項2記載の印刷またはコーティング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−156790(P2011−156790A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21336(P2010−21336)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000184735)株式会社小森コーポレーション (403)
【Fターム(参考)】