説明

印刷装置、印刷プログラムおよび印刷方法

【課題】印刷結果の画質を向上させる。
【解決手段】少なくとも主画像を印刷するための主画像データMIDと背景画像を印刷するための背景画像データBIDとから成る画像データに基づいて印刷するときに、印刷媒体に印刷されたときの主画像MIと背景画像BIの重複箇所を検出し、この検出結果に基づいて主画像データMIDを修正することによって上記重複箇所の主画像データMIDを修正することができる。このようにして修正された背景画像データBIDと主画像データMIDとに基づく印刷を所定の順序で印刷媒体に対して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷プログラムおよび印刷方法に関し、特に、画像データに基づいて印刷媒体に印刷する印刷装置、印刷プログラムおよび印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置において印刷画質の向上は必須課題であり、従来、画像データの階調値に応じて濃色インクと淡色インクの発生比率を調整したり(例えば特許文献1参照)、印刷・測色条件の相違に起因する色ずれを補償する際に参照する補正テーブルを備えさせたり(例えば特許文献2参照)、様々な工夫が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−291459号公報
【特許文献2】特開2008−72366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、白以外の印刷媒体(透明メディア等)に印刷装置で画像を印刷することが増えてきている。このような印刷媒体に印刷する際には、主たる画像を印刷媒体上に形成させるカラー画像の印刷結果における色再現性を向上するために、カラー画像が印刷される範囲に予め下地となる背景画像を印刷することがある。また、この背景画像としては、白ベタの画像のみならずCMYK等のカラーインクを用いて印刷することになるカラー色成分を有するカラー画像やグラデーション画像も用いられる。このように、同じ箇所に重複して複数画像を印刷する手法は、未だ成熟しておらず、さらなる画質の向上が望まれていた。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、第1の画像データと第2の画像データが有る場合であって、第1の画像データに基づく印刷位置と重複する箇所に第2の画像データに基づく印刷を行う場合に、印刷結果の画質を向上させることが可能な印刷装置、印刷プログラムおよび印刷方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の印刷装置は、少なくとも、主画像を印刷するための第1画像データと背景画像を印刷するための第2画像データとから成る画像データに基づいて所定の印刷媒体に印刷する印刷装置であって、上記印刷媒体に印刷されたときの上記主画像と上記背景画像の重複箇所を検出する検出手段と、上記第1画像データを修正することによって上記重複箇所の上記主画像を修正する画像修正手段と、上記印刷媒体に対して上記第1画像データに基づいて行う主画像の印刷と上記第2データに基づいて行う背景画像の印刷とを所定の順序で行う印刷手段と、を備える構成としてある。
【0007】
上記構成において、主画像と背景画像とは上記印刷手段によって同一の印刷媒体に対して印刷される。そして、その印刷結果は、上記主画像と上記背景画像とを重ね合わせた状態で観察される。主画像は観察者に近い層に形成され、背景画像は主画像よりも観察者から遠い層に形成される。従って、主画像と背景画像とが重複して形成されている部位では、主画像を形成したときの色材密度次第では背景画像が透けて見えるため、主画像の色と背景画像の色とが混ざった色として観察されることになる。
【0008】
このような色の混じりあいによる主画像の見えの変動を防止するために、まず検出手段が上記主画像と上記背景画像の重複箇所を検出する。上記主画像と上記背景画像の重複箇所は、上記第1画像データの印刷エリア同士と上記第2画像データの印刷エリアの重複領域であってもよいし、上記第1画像データによって実際にインクやトナー等の色材を印刷媒体に付着させる領域と上記第2画像データによって実際にインクやトナー等の色材を印刷媒体に付着させる領域との重複領域であってもよい。後者の方が重複箇所が少なくなるため、上記画像修正手段における背景画像の修正をピンポイントで実行することが出来る。
【0009】
上記画像修正手段による修正対象は主画像であっても背景画像であってもよいが、背景画像で印刷結果の基調的な色を印刷している場合や、背景画像で微妙な色合いを表現している場合には、背景画像を変更したくないことがある。そこで本発明では、主画像を変更することにより、背景画像によって主画像に発生する色の変動を抑制することにした。このように、重複印刷される一方の画像を修正するための手段を設けることにより、重複印刷による画質の低下を防止する修正を行うことが可能となる。よって、印刷結果の画質を向上させることが可能になる。
【0010】
本発明の選択的な一態様として、画像データに基づく印刷結果の測色値を所定の予測モデルで予測する予測手段を更に備え、上記画像修正手段は、上記第1画像データによる印刷結果を上記予測手段に予測させた第1測色値と、上記第2画像データおよび修正後の第1画像データとに基づいて印刷された印刷結果を上記予測手段に予測させた測色値と、の差分が極小化するように上記第1画像データを修正する構成としてもよい。すなわち、実際に印刷された印刷結果を予測モデルで予測しつつ、印刷結果における主画像の見えが最も変動しない画像データを探索し、この画像データを修正後の第1画像データとする。よって、印刷結果における実際の見えを極力おさえた印刷結果を得られることになる。
【0011】
本発明の選択的な一態様として、上記第1画像データには印刷結果における色変動を許容するか否かを示す色変動許容値が設定されており、上記画像修正手段は、上記第1画像データにおいて上記重複箇所の上記主画像の色変動を上記色変動許容値にて許容していない場合には上記重複箇所の上記背景画像を修正し、上記第1画像データにおいて上記重複箇所の上記主画像の色変動を上記色変動許容値にて許容している場合には上記重複箇所の上記背景画像を修正しない構成としてもよい。すなわち、作成者が、背景画像が透過して見えることを念頭において主画像を作成している場合には、色の見えを変更する必要が無いため、このような場合には色の影響を考慮した画像修正処理を行う必要が無い。よって、作成者の意図を依り確実に反映しつつ画質の向上を図れる。
【0012】
本発明の選択的な一態様として、上記画像修正手段は、上記重複箇所の上記主画像が印刷結果における色変動を許容しないことが予め設定されている特定色である場合に、上記重複箇所の上記背景画像を修正する構成としてもよい。すなわち、作成者が明示的に指定しなくとも、色変動を許容しないことが予め分かっている特定色については、色変動を防止することができるようになる。このような特定色の色変動を防止するためには、予め色変動許容値が自動的に色変動を許容しない値に設定されるようにして実現することもできる。
【0013】
本発明の選択的な一態様として、上記画像修正手段は、上記背景画像の上記重複箇所にカラー色成分があり且つ上記主画像の上記重複箇所にカラー色成分がある場合には上記背景画像の上記重複箇所を修正し、上記背景画像にカラー色成分があり且つ上記主画像の上記重複箇所にカラー色成分が無い場合には上記背景画像の上記重複箇所を修正せず、上記背景画像の上記重複箇所にカラー色成分が無い場合には上記背景画像の上記重複箇所を修正しない構成としてもよい。すなわち、主画像の該当する重複箇所にカラー色成分が含まれないのであれば、主画像に色変動はそもそも起こらないし、背景画像の重複箇所にカラー色成分が含まれない場合も、主画像に色変動は起こらない。従って、このような場合については画像修正がされないようにすることにより、より適格な画質の向上を実現できる。
【0014】
上述した印刷装置は、他の機器に組み込まれた状態で実施されたり他の方法とともに実施されたりする等の各種の態様を含む。また、本発明は前記印刷装置を備える印刷システム、上述した装置の構成に対応した工程を有する印刷方法や印刷制御方法、上述した装置の構成に対応した機能をコンピューターに実現させる印刷プログラム、該印刷プログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体、等としても実現可能である。これら印刷システム、印刷方法、印刷制御方法、印刷プログラム、印刷プログラムを記録した媒体、の発明も、上述した作用、効果を奏する。むろん、請求項2〜6に記載した構成も、前記システムや前記方法や前記プログラムや前記記録媒体に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】印刷装置の概略的な構成を示した説明図である。
【図2】PCのハードウェア構成を示したブロック図である。
【図3】プリンターのハードウェア構成を示したブロック図である。
【図4】印刷装置のソフトウェア構成を示したブロック図である。
【図5】主画像と背景画像を概念的に示した説明図である。
【図6】主画像データと背景画像データの組合せの一例を示した説明図である。
【図7】主画像データと背景画像データの組合せの他の例を示した説明図である。
【図8】プリンタードライバーの実行する印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】色変換テーブルLUTmの一例を部分的に示した説明図である。
【図10】色変換テーブルLUTbの対応関係の一例を部分的に示した図である。
【図11】印刷データ作成処理において作成される制御コマンドの一例を示す説明図である。
【図12】プリンタードライバーの実行する印刷処理の第二実施形態の流れを示すフローチャートである。
【図13】フォワードモデルコンバータについて説明する図である。
【図14】インバースモデルLUT_invの一例を示した説明図である。
【図15】プリンタードライバーの実行する印刷処理の第3実施形態の流れを示すフローチャートである。
【図16】プリンターの実行する印刷処理のフローチャートである。
【図17】ラスターバッファーおよびヘッドバッファーの詳細構成を示す説明図である。
【図18】プリンターのプリントヘッドの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
(1)本実施形態の構成:
(2)プリンタードライバーによる印刷処理:
(3)プリンターでの印刷処理:
(4)変形例:
(5)まとめ:
【0017】
(1)本実施形態の構成:
図1は、本実施形態にかかる印刷装置の構成を概略的に示す説明図である。同図において、本実施形態の印刷装置は、プリンター100とパーソナルコンピューター200(PC200)を備えている。プリンター100は、インクを吐出して印刷媒体上に画像を形成するインクジェット式プリンターである。PC200は、プリンター100に印刷用の画像データや制御コマンド等からなる印刷制御データを出力することにより、プリンター100に印刷を行わせる印刷制御装置として機能する。プリンター100とPC200は、通信ケーブルや無線通信回線等によって通信可能に接続されている。
【0018】
本実施形態のプリンター100は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、ライトシアン(lc)、ライトマゼンタ(lm)、ホワイト(W)の計7色のインクを搭載しており、これらの中から適宜選択された色のインクを用いて印刷を行う。すなわち、プリンター100はWインクを用いることにより、印刷媒体に対して、白色もしくは白色に近い色の下地を形成する印刷を行ったり、カラー画像を印刷したり、下地とカラー画像を所定の順で重複して印刷したりすることができる。
【0019】
(1−1)ハードウェア構成:
図2は、PC200の構成を概略的に示す説明図である。同図に示すように、PC200は、CPU205、RAM210、ROM215、ディスプレイインターフェース225(DIF225)、操作入力機器インターフェース230、ハードディスク235(HD235)、USBインターフェース240を備えている。各部205〜230はバス等の通信回線を介して接続されており、チップセット等の制御コントローラーの制御に従って相互通信可能になっている。ディスプレイインターフェース225には表示装置としてのディスプレイ225aが接続されている。操作入力機器インターフェース230には操作入力機器230aとしてのマウスやキーボードが接続されている。USBインターフェース240は、プリンター100のUSBインターフェース155と通信可能になっている。
【0020】
図3は、プリンター100の構成を概略的に示す説明図である。同図に示すように、プリンター100は、CPU105、RAM110、ROM115、プリントヘッド120、ヘッドコントローラー125、CMYKlclmW各色のインクタンクが搭載されたキャリッジ、キャリッジコントローラー135、キャリッジモーター140、印刷媒体送りモーター145、印刷媒体送りコントローラー150、USBインターフェース155、を備えている。各部105,110,115,125,135,150,155は、バス等の通信回線を介して接続されており、チップセット等の制御コントローラーの制御に従って相互通信可能になっている。CPU105はROM115に記憶されているプログラムを適宜RAMをワークエリアとして利用しつつプログラムに従って演算処理を行うことにより、プリンター100全体を制御する制御部として機能する。
【0021】
プリントヘッド120はインクを吐出するノズル群を備えており、キャリッジに搭載されている。キャリッジモーター140はキャリッジを所定の方向(主走査方向)に移動させる駆動機構であり、キャリッジコントローラー135の制御に従って動作する。印刷媒体送りモーター145は印刷媒体を主走査方向と直交する方向(副走査方向)に搬送する駆動機構であり、印刷媒体送りコントローラー150の制御に従って動作する。プリントヘッド120の各ノズルは各色のインクタンクに対応するように配置されており、ヘッドコントローラー125の制御に従い、対応するインクタンクのから色インクを取得して吐出する。制御部は、キャリッジコントローラー135と印刷媒体送りコントローラー150とヘッドコントローラー125を連動して制御することにより、印刷媒体上に画像を形成する。
【0022】
(1−2)ソフトウェア構成
図4は、印刷装置のソフトウェア構成を概略的に示す説明図である。同図に示すように、PC200のHD235には、アプリケーションプログラムAPLとプリンタードライバーPDrv、主画像用の色変換テーブルLUTm、背景画像用の色変換テーブルLUTb、主画像用のハーフトーンリソースHTRm、背景画像用のハーフトーンリソースHTRbが記憶されている。
【0023】
<アプリケーション>
アプリケーションプログラムAPLは、透明フィルム等の印刷媒体上へ印刷する画像の画像データを作成してプリンタードライバーに出力するアプリケーションプログラムである。このようなアプリケーションプログラムとしては、レタッチプログラムのように画像を加工・修正するアプリケーション、ドロープログラムのようにコンピューター上で画像を描くアプリケーション、ワープロソフトのように文書を作成するアプリケーション等、様々なプログラムが該当する。
【0024】
アプリケーションプログラムAPLは、画像や文書そのものを表す主画像と、画像や文書の背景を表す背景画像と、をそれぞれに調整可能であるものとする。また、アプリケーションプログラムAPLは、主画像と背景画像の各々に対応する画像データを作成してプリンタードライバーに出力する機能を有しているものとする。本実施形態においては、主画像に対応する画像データを主画像データMID(主画像データが複数ある場合は適宜「第1」、「第2」・・・などを付し、符号は「MID1」、「MID2」等とする。)、背景画像データに対応する画像データを背景画像データBID(背景画像データが複数ある場合は適宜「第1」、「第2」・・・などを付し、符号は「BID1」、「BID2」等とする。)と記載する。
【0025】
本実施形態においては、主画像データはCMYKの各色データの階調値の組合せで構成され、背景画像データは、CMYKの各色データの階調値に加えて白(W)の濃度の階調値を示す濃度値Tで構成されている。なお、本実施形態では色データとしてCMYKの4色を採用して説明を行うが、色データはCMYKの組合せに限定されるものではなく、RGBの3原色で表されたRGBデータやL***の各値で表されたLabデータであっても構わない。
【0026】
また、「主画像」と「背景画像」という名称は、必ずしも一方が主要な画像であり他方が従属的な画像であるといった主従の関係があるものに限る必要は無く、画像データを印刷媒体に印刷するときの印刷順と、印刷結果に対して想定されている観察方向に応じて決定される名称に過ぎない。
図5は、主画像と背景画像を概念的に示した説明図である。図5(a)に示すように、例えば、透明フィルム等の印刷媒体上に先に「背景画像」を印刷してからその後「主画像」を印刷することにより、印刷媒体の印刷面側から観察したときの背景として背景画像が印刷され、背景画像の手前側に主画像が形成されるタイプの印刷が可能となる。
また、図5(b)に示すように、透明フィルム上に先に「主画像」を印刷してからその後「背景画像」を印刷することにより、印刷媒体の印刷されていない面側から観察したときの背景として背景画像が印刷され、背景画像の手前側に主画像が形成されるタイプの印刷が可能となる。
また、図5(c)に示すように、印刷媒体の一方の面を表面として表面から観察されることを想定すると、表面に「主画像」を印刷し、裏面に「背景画像」を印刷することにより、観察方向から見ると「主画像」の背景として「背景画像」が印刷されることになる。
図5(a)〜(c)において、「背景画像」のみに注目すると、「背景画像」が観察者の側に印刷される場合(表面背景タイプ)と、「背景画像」が観察者の反対側に印刷される場合(裏面背景タイプ)とに分類することができる。
【0027】
ユーザーは印刷物の使用態様に応じて、主画像と背景画像の何れを先に印刷するかを選択する。すなわち印刷面側から観察される印刷物であれば背景画像を先に印刷するように指定し、印刷面の裏面側から観察される印刷物であれば主画像を先に印刷するように指定することになる。アプリケーションプログラムAPLは、ユーザーにより指定された印刷順を指定するための印刷順指定データsを含む印刷順指定データPODを生成する。
以上のようにして作成した主画像データMIDと背景画像データBIDと印刷順指定データPODとを含んだ印刷データPDを、アプリケーションプログラムはプリンタードライバーPDrvに出力する。
【0028】
また、主画像データと背景画像データは、各々1つの画像データであってもよいが、複数の画像データの組合せで構成されてもよい。例えば、主画像データを作成する際に複数の画像レイヤーに分けて作成した場合に、各レイヤーデータを各々1つの画像データとして出力した場合がこれに該当する。
【0029】
図6は、主画像データと背景画像データの組合せの一例を示した説明図である。同図は、アプリケーションプログラムAPLから主画像MIを含む主画像データMIDと背景画像BI1を含む第1背景画像データBID1と背景画像BI2を含む第2背景画像データBID2が出力された場合の例である。
同図において、主画像データMIDには、「TEXT」の文字画像が主画像MIとして含まれている。主画像データMIDには、各画素毎、もしくは画像を複数領域に分割して各領域毎に、印刷結果における色変動を許容するか否かの設定値が設定されている。以下の説明では、この設定値を「色変動許容値」と記載することにする。「色変動許容値」が「非許容」に設定されていれば、背景画像BI1,BI2がどのような色であっても、印刷結果の色の見えが変わらないように背景画像BI1,BI2による影響を除去するために画像データを調整する処理を行う。一方、「色変動許容値」が「許容」に設定されていれば、背景画像BI1,BI2の色を調整する処理は行わない。
【0030】
この「色変動許容値」は、通常の画像データに新たなパラメーターとして設けることも出来るが、現状で一般的に利用されている画像データで利用されているパラメーターを流用することもできる。
例えば、フォトショップ等の汎用アプリケーションで利用されるαチャンネルなどのような透過情報TIを利用することができる。透過情報TIは、主画像データの各画素に設定されるものであり、背景画像の透過/非透過を示す情報である。すなわち、色変動許容値の「許容」「非許容」は、完全透過(透過率100%)と完全非透過(透過率0%)に対応するパラメーターとなる。なお、αチャンネルで透過率を0〜100%の間の任意の値に設定することが出来るように、色変動許容値も「許容」と「非許容」の間の任意の度合を設定可能とし、背景からの影響を許容する度合として指定できるようにしてもよい。背景からの影響を許容する度合を設定した場合の例として、後述の変形例にαチャンネルで透過率を0〜100%の間の任意の値に設定した場合について記載してある。
【0031】
また、「色変動許容値」は、主画像データMIDを解析した解析結果に応じて決定されるようにしてもよい。例えば、主画像データMID全体の各画素データをスキャンしてその画像特徴量を解析することにより主画像データMIDがどのような種類の画像(2値画像、コンピューターグラフィックスで作成された画像、写真画像、コーポレートカラーのような色変動を許容しない特定色を含む画像、文書画像、等)であるかを特定し、この画像種類に応じて色変動許容値を設定することができる。
例えば、主画像データMIDが2値画像やコンピューターグラフィックスで作成された画像やコーポレートカラーのような色変動を許容しない特定色を含む画像である場合は、画像データを作成する際に色を厳密に指定しつつ作成された画像であると判断し、色変動許容値を「非許容」に設定する。また、写真画像であれば背景に影響されない印刷が望まれていると判断してやはり色変動許容値を「非許容」に設定する。一方、文書画像であれば多少の色変動は許容されるものと判断して「許容」に設定する。むろんこれらは一例であり、「許容」となる画像種類と「非許容」となる画像種類が逆であっても構わないし、ユーザーの希望に応じて画像種類毎に色変動許容値をどちらに設定するかを予めUIなどで設定できるようにしておいてもよい。
【0032】
図6において、第1背景画像データBID1は、白以外の色で構成される背景画像BI1としてのグラデーション画像を表すものである。すなわち、第1背景画像データBID1は、Wインク以外のCMYKlclmインクで印刷される背景画像である。図6においては、第1背景画像データBID1は、画像右端に近づくほど徐々に色が濃くなる画像としてある。
【0033】
また、図6において、第2背景画像データBID2は白画像で構成された背景画像BI2を表すものであり、画素毎に白の濃度、すなわち白インクのインク記録率やインク被覆率を指定された画像データである。すなわち、第2背景画像データBID2は、CMYKlclmインクを使わずにWインクだけで印刷される背景画像である。図6においては、白画像の濃度を画像の部位毎に異なるように作成された画像を示してあり、画像の左半分は白画像の濃度をN%、画像の中ほどから右4分の1までの濃度をM%、画像の右4分の1の濃度をP%としてある。
後述の印刷処理の第1実施形態と第2実施形態においては、以上説明した図6の各画像データを入力データとして印刷する際に、背景画像BI1や背景画像BI2による主画像MIに対する影響を考慮しつつ行う印刷の例を説明する。
【0034】
図7は、主画像データと背景画像データの組合せの他の例を示した説明図である。同図は、アプリケーションプログラムAPLから第1主画像データMID1と第2主画像データMID2と第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2が出力された場合の例である。第1主画像データMID1とMID2は、レイヤー的に作成されて各々1つの画像データとして出力された画像データである。
図7においては、第1主画像データMID1は、第1主画像MI1としての文字画像「TEXT」が含まれており、この文字画像を構成する各画素は完全透過設定となっている。一方、第2主画像データMID2は、第2主画像としての所定のカラー画像が含まれており、このカラー画像を構成する各画素は完全非透過設定となっている。第1背景画像データBID1、第2背景画像データBID2については、図6と同様である。
これら第1主画像データMID1とMID2は、第1主画像データMID1が上位レイヤーとして作成され第2主画像データMID2が下位レイヤーとして作成されている。これら主画像データMID1,MID2は印刷処理の中で1つの画像データに合成され、プリンター100に出力される際には1つの画像データとして印刷される。ただし、下位レイヤーに対する透過設定が各画像データ毎に設定されているため、合成する前に各画像データに対する背景画像の影響を考慮しておく必要がある。
後述の印刷処理の第3実施形態においては、図7に示した各画像データを入力データとして印刷する際に、背景画像による主画像に対する影響を考慮しつつ行う印刷の例を説明する。
【0035】
<プリンタードライバー>
図4に示すように、PC200においてプリンター100のプリンタードライバープログラムをオペレーティングソフト等の基本ソフト上で実行することにより、画像データ取得部M1、影響判定部M2、影響除去部M3、色変換部M4、ハーフトーン処理部M5、印刷データ作成部M6、フォワードモデルコンバータM7の各モジュールに相当する機能が実現される。また、プリンター100の制御部でファームウェア等の制御プログラムが実行されることにより、コマンド処理部M11に相当する機能が実現される。
【0036】
影響判定部M2は、主画像データMIDに基づいて印刷される主画像MIの色味が、背景画像データBIDに基づいて印刷される背景画像BIの影響を受けて変動するか否かを判断するモジュールである。影響判定部M2は、主画像MIが背景画像BIに影響されて変動する場合は、影響除去部M3にその影響を除去するための処理を指示する。影響判定は、例えば、主画像データMIDと背景画像データBIDの画素データ単位で実行され、印刷媒体上の同一位置の印刷に利用される画素データ同士を対比することにより実行することができる。
【0037】
具体的には、主画像データMIDの画素データが白を除くカラーの色成分(以下、「カラー色成分」と記載する。)を有している場合であって、この画素データと同じ位置に印刷される背景画像データの画素データにカラー色成分を有している場合に、背景画像BIの色が主画像MIの色に影響を及ぼすと判断する。カラー色成分を有するということは、CMYKの少なくとも1色の階調値が0でないことである。また、主画像データMIDの画素データがカラー色成分を有している場合であって、この画素データと同じ位置に印刷される背景画像データBIDの画素データにカラー色成分を有していない場合には、影響が無いものと判断することができる。また、主画像データMIDの画素データがカラー色成分を有していない場合は、影響を受ける対象が無いので、影響がないものと判断することができる。むろん、背景画像データBIDの画素データのカラー色成分が微量と見做しうる許容量以下であれば(画素データの階調値やこれにより発生するインク量が、所定量以下であれば)、主画像MIに影響を与えないと判断するようにしてもよい。
【0038】
影響除去部M3は、背景画像データBIDもしくは主画像データMIDの少なくとも一方を修正することにより、背景画像BIによる主画像MIへの影響を除去したり、影響が許容しうる範囲内に収まるように調整する。
背景画像データBIDを修正する場合は、例えば、該当する画素データのCMYK各色の階調値を0に変更したり、この階調値に基づいて作成される各色インクのインク量データB_inkを0に変更したりすることによって主画像MIに対する背景画像BIの影響を除去することができる。むろん、階調値を0に変更するのではなく、画素データに含まれるカラー色成分を表す色データを許容できる範囲内に変更するようにしても構わない。背景画像データBIDを修正する場合の具体的な方法については後述の第1実施形態で説明する。
主画像データMIDを修正する場合は、例えば、背景画像データBIDのカラー色成分の色データによって形成される印刷結果における色味が相殺されるような調整を主画像データMIDに行うことによって、主画像MIに対する背景画像BIの影響を除去することができる。主画像データMIDを修正する場合の具体的な方法については、後述の第2実施形態で説明する。
【0039】
色変換部M4は、HD235に予め記憶された色変換テーブルLUTm,LUTbを適宜参照しつつ、主画像データMIDや背景画像データBIDのCMYK各色の階調値をプリンター100に搭載されている各インク色の階調値に変換する。この各インク色の階調値は、印刷ヘッドのノズルから各画素に対応する範囲内にと出されるインク量に比例する値であるため、インク記録率とも呼ばれる。なお、色変換部M4は、同一色の淡インクと濃インクと階調値を振り分けるための、いわゆる分版処理も同時に行うように構成されている。
【0040】
ハーフトーン処理部M5は、HD235に予め記憶されたハーフトーンリソースHTRm、HTRbを適宜参照しつつ、各インク色について生成された階調値を画素毎にインクの吐出/非吐出の2値化するとともに、吐出するインクの量を特定したハーフトーン画像データを生成する。
印刷データ作成部M6は、ハーフトーン画像データを受取ってプリンター100で使用される順に並べ替え、一回の主走査にて使用されるデータを単位にして、逐次、プリンター100に出力する。
【0041】
(2)プリンタードライバーによる印刷処理:
(2−1)印刷処理の第1実施形態:
図8は、プリンタードライバーPDrvの実行する印刷処理の流れを示すフローチャートである。同図に示す印刷処理においては、主画像データMIDと第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2と印刷順指定データPODとにより構成される印刷データPDに基づいて印刷を行う。その際、主画像データMIDと第1背景画像データBID1の間、もしくは主画像データMIDと第2背景画像データBID2の間で印刷範囲が重複する場合には、その重複箇所について第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2を修正する。その結果、印刷結果は印刷データPDを作成したユーザーの意図に沿うように修正される。なお、本第1実施形態の印刷処理においては、主画像データMIDは修正されない。
【0042】
本第1実施形態の印刷処理は、アプリケーションプログラムAPLから印刷データPDが入力されたときに開始される。処理が開始されると、ステップS100(以下、「ステップ」の記載を省略する。)において、画像データ取得部M1が、アプリケーションプログラムAPLから入力された主画像データMIDと第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2と印刷順指定データPODを取得する。
【0043】
次にS105において、影響判定部M2が、主画像データMIDによって印刷される印刷結果の見え(色再現)に対し、第1背景画像データBID1や第2背景画像データBID2の印刷結果が影響を与えるか否かを判断する。より具体的には、主画像データMIDを構成する複数の画素データの中から順次1つの画素データM_Pixを選択して取得するとともに、この画素データM_Pixと同じ位置の印刷に利用される第1背景画像データBID1の画素データB1_Pixと第2背景画像データBID2の画素データB2_Pixを選択して取得する。そして、画素データB1_Pix,B2_Pixによる印刷結果が画素データM_Pixによる印刷結果に影響を与えるか否かを判断する。
【0044】
影響を与えるか否かは、以下の複数の方法で判断される。
まず、影響判定部M2は、画素データB1_Pixと画素データB2_Pixの各々がカラー色成分を有しているか否かを判断し、次に画素データM_Pixがカラー色成分を有しているか否かを判断する。
【0045】
影響判定部M2は、画素データB1_Pix,B2_Pixが白色だけで構成されている場合は、背景画像BI1,BI2が主画像MIに影響を与えないと判断してS120に進む。
また、画素データB1_Pix,B2_Pixがカラー色成分を有している場合であっても、画素データM_Pixがカラー色成分を有していない場合には、影響判定部M2は、背景画像BI1,BI2が主画像MIに影響を与えないと判断してS120に進む。
一方、画素データB1_Pix,B2_Pixの少なくとも一方がカラー色成分を有している場合であって、画素データM_Pixがカラー色成分を有している場合には、背景画像BI1,BI2の少なくとも一方が主画像MIに影響を与える可能性があると判断してS110に進む。
【0046】
なお、S105では、背景画像の画素データB1_Pix,B2_PixのCMYK各色データが0であるか否かで判断分岐を行ったが、背景画像の画素データB1_Pix,B2_Pixのカラー色成分が微少量であれば主画像に与える影響も少ないことを考慮して、この微少量を示す所定の閾値以下のカラー色成分を有しているか否かで判断分岐を行ってもよい。この所定の閾値は、実際に印刷を行って各色データ毎に決定したり、色データの組合せごとに決定したりするなど、実験的に決定することができる。
【0047】
ただし、画素データM_Pixが予め指定されている特定の画像を構成する画素データである場合は、背景画像の画素データB1_Pix,B2_Pixのカラー色成分が微少量であるか否かに関わらず、影響があると判断してS110に進むことが好ましい。
例えば、画素データM_Pixが特定色の色を印刷するための色データである場合(CMYK各色データの比率が特定の比率である場合)には、背景画像の画素データB1_Pix,B2_Pixのカラー色成分が微少量であってもS110に進んで、背景画像の画素データB1_Pix,B2_Pixによる主画像の画素データM_Pixへの影響を除去することが好ましい。ここで言う特定色とは、例えば、コーポレートカラー(シンボルカラー)であり、厳密に色彩を固定した印刷を要求される色であり、色の変動を許容しないことを予め指定された色である。
また画素データM_Pixが二値画像の一部を構成する画素であったり、コンピューターによって描いた図形の一部を構成する画素であったりする場合にも、背景画像の画素データB1_Pix,B2_Pixのカラー色成分が微少量であるか否かに関わらず影響があると判断してS110に進むことが好ましい。主画像データMIDには、コンピューターによって描いた図形の画像であるか否かを示すパラメーターや、二値画像であるか否かを示すパラメーターが設定されているものとする。
【0048】
S110において、影響判定部M2は、S105で選択された画素データの透過情報TIを参照して、S105で選択された画素データM_Pixが透過設定であるか否かを判断する。すなわち、背景画像BI1,BI2によって主画像MIが影響を受けることを許容する設定であるか否かを判断する。背景画像BI1,BI2が主画像MIを透過して印刷結果に現れることを予め想定して作成された画像データであれば、背景画像BI1,BI2が主画像MIに影響を与えても構わないからである。影響判定部M2は、S105で選択された画素データM_Pixの透過情報TIが透過設定の場合はS120に進み、S105で選択された画素データM_Pixが非透過設定の場合はS115に進む。
【0049】
S115において、影響除去部M3は、S105で選択された画素データB1_Pix,B2_Pixに対して、主画像に対する影響を極小化するように色味の補正を行う。本第1実施形態においては、影響除去部M3は、S105で選択された画素データB1_Pix,B2_Pixからカラー色成分を除去する処理を行う。すなわち、影響除去部M3は、画素データB1_Pixを構成する各色データのうち、白色データを除いたCMYK色の階調値を0に変更する。また、影響除去部M3は、画素データB2_Pixを構成する白データの濃度階調値を100%とし、該画素データB2_Pixによって白ベタが印刷されるように変更する。
以上のS105〜S115の処理は、主画像データMIDおよび第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2の全ての画素データがS105で選択されるまで、順次実行される。
以上のS105〜S115の処理を行うことにより、印刷データPDに基づいて印刷された印刷結果において、背景画像BI1,BI2が主画像MIの見えに影響しないようにすることができる。
【0050】
S120において、色変換部M4は、主画像データMIDから主画像のインク量データM_inkを作成する。すなわち、色変換部M4は、主画像データMIDの中から1つの画素データM_Pixを選択し、色変換テーブルLUTmを参照しつつ、主画像データMIDの各画素データM_Pixをインク色別の階調値であるインク量データ(インク色別階調値)に変換していく。上述したように、本実施形態では、CMYKlclmWの計7色のインクを用いて印刷を行う。従って、S120の色変換処理では、色変換テーブルLUTmを参照して、CMYK値を7つのインク色のそれぞれの階調値に変換する。
【0051】
図9は、色変換テーブルLUTmの一例を部分的に示した説明図である。同図に示すように、色変換テーブルLUTmには、予め設定されたCMYK値とインク色であるCMYKlclmの各階調値との対応関係が規定されている。なお、同図に示した色変換テーブルLUTmでは、CMYKの各色データの階調値を0以上100以下の範囲で規定しており、インク色の階調値を0以上255以下の範囲で規定している。また、図9に示すように、本実施形態では主画像データMIDから変換して生成されるインク量データにはCMYKlclmの6色のインクが使用され、Wインクは使用されないようになっている。
【0052】
S125において、影響判定部M2は、背景画像BI1,BI2が主画像MIに与える影響を主画像のインク量データM_inkに基づいて判断し、影響があると判断した場合はS130に進み、影響がないと判断した場合はS135に進む。ここで判断する影響とは、印刷ムラや粒状性の悪化に関する影響であり、主画像のインク量データM_inkのインク被覆率に基づいて判断を行う。
【0053】
より具体的には、S125において、影響判定部M2は、まず主画像のインク量データM_inkの中か画素データM_ink_Pixを1つ選択して取得し、この画素データM_ink_Pixによって印刷を行ったときにベタ埋まりするか否かを判断する。ベタ埋まりするか否かの判断は、画素データM_ink_Pixのインク記録率(インク被覆率)が所定の閾値超えるか否かによって行われる。
【0054】
すなわち、影響判定部M2は、画素データM_ink_Pixのインク量データに基づいてインク被覆率を算出し、そのインク記録率が所定の閾値を超える場合はベタ埋まりしていると判断してS310に進み、所定の閾値を超えない場合はベタ埋まりしていいないと判断する。S125で選択された画素データM_ink_Pixがベタ埋まりしていないと判断した場合は、主画像のインク量データM_inkの全画素データについてベタ埋まり判定を完了するまで順次画素データを選択してS125のベタ埋まり判定を行い、主画像のインク量データM_inkの全画素データについてベタ埋まり判定を完了するとS135に進む。
【0055】
S130において、影響除去部M3は、S125で選択された画素インク量データM_ink_Pixに対応する位置の画素データM_Pixに対して、色の補償(色味の補正)を行う。本実施形態においては、影響除去部M3は、S125で選択された画素データB1_Pixからカラー色成分を除去する処理を行う。すなわち、影響除去部M3は、S125で選択された画素インク量データM_ink_Pixに対応する位置に印刷された第1背景画像データBID1の画素データB1_Pixと第2背景画像データBID2の画素データB2_Pixを構成する各色データのうち、白色データを除いた色データの階調値を0に変更する。S130の処理が終了すると、主画像のインク量データM_inkの全画素データについてベタ埋まり判定を完了するまで順次画素データを選択してS125のベタ埋まり判定を行い、主画像のインク量データM_inkの全画素データについてベタ埋まり判定を完了するとS135に進む。
以上の処理を行うことにより、第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2は、印刷結果における印刷ムラや粒状性の悪化を防止可能なデータとなる。
【0056】
S135において、ハーフトーン処理部M5は、主画像のインク量データM_inkから1画素のインク色別階調値を取り出し、インク色毎にディザパターンを参照して2値化処理(ハーフトーン処理)を行う。2値化処理は予め設定された主画像用のハーフトーンリソースHTRmを参照して実行される。そして、ハーフトーン処理部M5は、S135の2値化処理を全インク色について実施するまで主画像のインク量データM_inkから順次インク色別階調値を取り出して2値化処理を繰り返す。主画像のインク量データM_inkを構成するインク色別階調値についてS135の2値化処理が完了すると、主画像の2値データMBDが作成される。
【0057】
S140において、第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2を合成した合成背景画像データBID’を作成し、色変換部M4が合成背景画像データBID’に対して色変換処理を行い、色変換後の合成背景画像データBID’に対してハーフトーン処理部M5がハーフトーン処理を行う。
図10は、色変換部M4が背景画像データの色変換を行う際に参照する色変換テーブルLUTbの対応関係の一例を部分的に示した図である。同図に示すように、色変換テーブルLUTbでは、白インクの量を濃度値Tで指定できるようになっている。また、薄めの色で構成される背景画像の印刷に適するように、CMYK各色データの階調値は0〜100の間の0〜15が入力値として設定されており、低めの階調値とインク量との対応関係が規定されている。
色変換部M4は色変換テーブルLUTbを参照しながら合成背景画像データBID’の各画素データをインク量データに変換することにより合成背景画像のインク量データB_inkを作成し、ハーフトーン処理部M5はインク量データB_inkの各画素のインク色別階調値にインク色毎にディザパターンを参照して2値化処理を行って、合成背景画像データBID’の2値データBBDを作成する。なお、本実施形態では、背景画像データの合成を予め行ってから色変換処理とハーフトーン処理を行ったが、各背景画像データを色変換した後で合成を行ってもよいし、ハーフトーン処理まで終了してから合成してもよい。
【0058】
S145において、印刷データ作成部M6は、主画像の2値データMBD,BBD並びに印刷順指定データPODに基づいて、主画像MIや各背景画像BI1,BI2をプリンター100に印刷させるための制御コマンドを作成する。以下の説明では、主画像MIをプリンター100に印刷させるための制御コマンドを作成する場合を例にとって説明するが、合成背景画像をプリンター100に印刷させるための制御コマンドも同様の処理を行って作成されるものとする。
図11は、印刷データ作成処理において作成される制御コマンドの一例を示す説明図である。制御コマンドは、印刷順指定コマンドと、垂直位置指定コマンドと、水平位置指定コマンドと、各ドットデータ(ラスターデータ)およびインクコードを含んで構成されている。
【0059】
印刷順指定コマンドは、アプリケーションプログラムAPLから入力された印刷順指定データPODに基づいて作成される。
図11(a)は印刷順指定コマンドの例である。同図に示すように、印刷順指定コマンドは、コマンド先頭を示す識別子Escと、印刷順指定コマンドであることを示す識別子“j”と、コマンド長(本実施形態においては2バイト)nL,nHと、印刷順指定データsと、を含んで構成されている。例えば、印刷順指定データsの値は、印刷順指定データPODが「M−B印刷」を示す場合は「0」とし、印刷順指定データPODが「B−M印刷」を示す場合は「1」とすることができる。「M−B印刷」とは、主画像を先に印刷して背景画像を後に印刷することを意味し、「M−B印刷」とは背景画像を先に印刷して主画像を後に印刷することを意味する。なお、本明細書では、印刷順指定データPODがアプリケーションプログラムAPLによって作成されることとしたが、プリンタードライバーPDrvによって印刷順指定データPODが作成されてもよいし、アプリケーションプログラムAPLが作成した印刷順指定データPODをプリンタードライバーPDrvによって修正してもよい。
【0060】
垂直位置指定コマンドは、ハーフトーン処理部M5の出力した主画像データMIDに対応して作成された主画像の2値データMBDに基づいて作成される。垂直位置指定コマンドは、垂直方向(副走査方向:印刷媒体の搬送方向)の画像の開始位置を指定するコマンドである。垂直位置指定コマンドは、全インクに共通のコマンドとして作成される。
【0061】
水平位置指定コマンドは、主画像形成の際の1つのインク色についての水平方向(主走査方向)の画像形成の開始位置を指定するコマンドである。水平位置指定コマンドは、ハーフトーン処理部M5の出力した主画像の2値データMBDの各インク色毎に作成される。印刷データ作成部M6は、1つのインク色についての2値データを参照し、水平方向における前記1つのインク色についての主画像の2値データMBDの開始位置を特定し、この開始位置を指定するための水平位置指定コマンドを作成する。
【0062】
図11(b)にはラスターコマンドの例が示してある。同図に示すように、ラスターコマンドは、コマンド先頭を示す識別子Escと、ラスターコマンドであることを示す識別子iと、インクコードrと、1画素あたりのビット数bと、水平方向(X方向)長さ(本実施形態においては2バイト)nL,nHと、垂直方向(Y方向)長さ(本実施形態においては2バイト)mL,mHと、ラスターデータ(ドットデータ)d1,d2,・・・,dnと、を含んでいる。ドットデータは1ラスター毎に作成される。インクコードrは各インク色に固有のコードである。HD235には、各インク色に固有のインク略称とインクコードとが対応付けたインクコード表が保存されており、このインクコード表を参照することにより各インク色のインクコードを検索し、ラスターコマンドに付与するべきインクコードを得ることができる。
【0063】
S150において、プリンタードライバーPDrvは、S145で作成された主画像の印刷制御データ(印刷順指定コマンド、垂直位置指定コマンド、水平位置指定コマンド、ラスターコマンド)と背景画像の印刷データをプリンター100へ送信する。以上で、プリンタードライバーPDrvによる処理が完了する。
【0064】
(2−2)印刷処理の第2実施形態:
図12は、プリンタードライバーPDrvの実行する印刷処理の流れを示すフローチャートである。同図に示す印刷処理においては、主画像データMIDと第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2と印刷順指定データPODとにより構成される印刷データPDに基づいて印刷を行う。その際、主画像データMIDと第1背景画像データBID1の間、もしくは主画像データMIDと第2背景画像データBID2の間で印刷範囲が重複する場合には、その重複箇所について主画像データMIDを修正する。その結果、印刷結果は印刷データPDを作成したユーザーの意図に沿うように修正される。なお、本第2実施形態の印刷処理においては、第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2は修正されない。
【0065】
本第2実施形態の印刷処理は、アプリケーションプログラムAPLから印刷データPDが入力されたときに開始される。処理が開始されると、S200において、画像データ取得部M1が、アプリケーションプログラムAPLから入力された主画像データMIDと第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2と印刷順指定データPODを取得する。
【0066】
次にS205において、影響判定部M2が、主画像データMIDによって印刷される印刷結果の見え(色再現)に対し、第1背景画像データBID1や第2背景画像データBID2の印刷結果が影響を与えるか否かを判断する。この判断処理における判断手法は、第1実施形態と同様である。影響判定部M2は、影響があると判断した場合はS210に進み、影響しないと判断した場合はS220に進む。
【0067】
S210において、影響判定部M2は、S205で選択された画素データの透過情報TIを参照して、S205で選択された画素データM_Pixが透過設定であるか否かを判断する。影響判定部M2は、S205で選択された画素データM_Pixの透過情報TIが透過設定の場合はS220に進み、S205で選択された画素データM_Pixが非透過設定の場合はS215に進む。
【0068】
S215において、影響除去部M3は、S105で選択された画素データM_Pixを、背景画像の画素データB1_Pixのカラー色成分によって受ける影響を考慮した色に修正する。なお、本第2実施形態において第2背景画像データBID2はカラー色成分を有していないため、S215では考慮しないが、カラー色成分を有するのであれば第2背景画像データBID2についても考慮する。影響除去部M3は、概略、画素データM_Pixを補色方向に補正することにより、画素データB_Pixによる色の影響を相殺する画素データに補正することになる。本実施形態では実際に印刷されたときの印刷物上における色の見えが、主画像データMIDを白色の印刷物上に印刷したときの見えと一致するような画素データとなるように補正する例を説明する。
【0069】
図13は、主画像を補正することにより背景画像の影響を除去する手法の説明図である。まず、影響除去部M3は、画素データM_Pixを色変換テーブルLUTmを参照してインク量データに変換するとともに、画素データB1_Pixと画素データB2_Pixを色変換テーブルLUTbを参照してインク量データに変換し、それぞれのインク量データをフォワードモデルコンバータM7に入力することにより、CIELAB表色系におけるデータに変換する。
【0070】
図14(a)は、フォワードモデルコンバータM7について説明する図である。同図に示すように、フォワードモデルコンバータM7は、分光プリンティングモデルコンバーターM71と色算出部M72とを備えている。なお、「フォワードモデル」とは、インク量を機器独立表色系の色彩値(測色値)に変換する変換モデルを意味する。本第2実施形態では、機器独立表色系としてCIE−Lab表色系を採用した場合を例にとって説明している。なお、以下の説明では、CIE−Lab表色系の色彩値を、単に「L***値」または「Lab値」と記載することにする。
【0071】
図14(a)に示すように、フォワードモデルコンバータM7の前段を構成する分光プリンティングモデルコンバーターM71は、複数種類のインクのインク量データを、そのインク量に応じて印刷されるカラーパッチの分光反射率R(λ)に変換する。なお、本明細書において「カラーパッチ」という用語は、有彩色のパッチに限らず、無彩色のパッチも含む広い意味で使用される。本実施例では、CMYKlclmの6種類のカラーインクを利用可能なカラープリンタを想定しており、分光プリンティングモデルコンバーターM71もこの6種類のカラーインクのインク量を入力としている。但し、プリンターで使用する複数種類のインクとしては、任意のインクセットを利用することが可能である。
色算出部M72は、分光反射率R(λ)からLab値を算出する。このLab値の算出には、予め選択された光源(例えば標準の光D50)がカラーパッチの観察条件として使用される。
なお、分光プリンティングモデルコンバーターM71を作成する方法としては、例えば特表2007−511175号公報に記載された方法を採用することが可能である。
【0072】
以上のフォワードモデルコンバータM7に各画素データに対応するインク量データを入力することにより、画素データM_PixはLというLab値に変換され、画素データB1_PixはLというLab値に変換されたものとする。
次に、影響除去部M3は、CMYK各色の階調値の任意の組合せにより表現される画素データの中から、以下の(1)に示す目的関数を極小化する、画素データを探索する。ここで言う、画素データは、主画像データMIDを表現するための階調値により表現されるデータである。
【数1】

【0073】
上記(1)式において、LはS105で選択された画素データM_PixをフォワードモデルコンバータM7で変換したときのLab値であり、Lは主画像データMIDが取りうる任意のCMYK階調値の組合せをフォワードモデルコンバータM7で変換したときのLab値である。上記(1)式の目的関数は、L
とLとの和と、Lとの差分が極小化するようになっている。すなわち、LのフォワードモデルコンバータM7による変換の元となるCMYK値で主画像を印刷しつつ画素データB1_Pixに基づいて印刷したときの色の見えが、画素データM_Pixを白色の印刷媒体上に印刷したときの色の見えと最も近くなったときに、極小化するようになっている。
【0074】
影響除去部M3は、主画像データMIDが取りうるCMYK階調値の組合せを順次フォワードモデルコンバータM7に入力してLab値に変換し、得られたLを順次上記(1)式に代入することによりCMYK階調値の各組合せに対する評価値を順次算出する。そして、影響除去部M3は、算出された評価値の中で評価値が最小となるLに対応するCMYK階調値の組合せ、すなわち、目標関数を極小化させるCMYK階調値の組合せを探索する。このようにして算出されたCMYK階調値の組合せを、影響除去部M3は、S205で選択した画素データM_Pixの新たな画素データとする。目標関数Eを極小化するLは、Lを補色方向にシフトさせる色に対応する。
【0075】
なお、影響除去部M3は、画素データM_Pixを修正する代わりに、フォワードモデルコンバータM7によって評価値が極小化するLab値を、そのままインク量データに変換しても構わない。この場合、影響除去部M3は、インバースモデルLUT_invを参照してLab値からインク量データを算出することになる。すなわち、後述のS220で実行する主画像データMIDの分版処理を行うことなく、主画像データMIDに対応するインク量データM_inkを生成することになる。
【0076】
図14(b)は、インバースモデルLUT_invの一例を示した説明図である。「インバースモデル」とは、機器独立表色系の色彩値をインク量に変換する変換モデルを意味している。同図に示すようにインバースモデルLUT410は、L***値を入力とし、インク量を出力とするルックアップテーブルである。
LUT410は、例えば、L***空間を複数の小セルに区分し、各小セル毎に最適なインク量を選択して登録したものである。この選択は、例えば、そのインク量で印刷されるカラーパッチの画質を考慮して行われる。一般に、或る1つのL***値を再現するインク量の組合せは多数存在する。そこで、LUT410では、ほぼ同じL***値を再現する多数のインク量の組合せの中から、画質等の所望の観点から最適なインク量を選択したものが登録されている。なお、小セル毎に最適なインク量を選択してLUT410を作成する方法としては、例えば前記特表2007−511175号公報に記載された方法を採用することが可能である。
【0077】
以上のS205〜S215の処理は、主画像データMIDの全ての画素データをS205で選択し終わるまで順次実行される。
以上の処理を行うことにより、主画像データMIDによって印刷される主画像が下地画像の影響で、製作者の意図していない色になってしまうことを防止することができる。
【0078】
S220において、色変換部M4は、主画像データMIDの中から1つの画素データM_Pixを選択し、色変換テーブルLUTmを参照しつつ、主画像データM_Pixをインク色別の階調値である主画像のインク量データM_ink(インク色別階調値)に変換する。またS220において、ハーフトーン処理部M5は、主画像のインク量データM_inkから1画素分のインク色別階調値を取り出し、インク色毎にディザパターンを参照して2値化処理(ハーフトーン処理)を行う。これらS220の処理により、主画像の2値データMBDが作成される。これらのS220で行う色変換処理やハーフトーン処理は、S120やS135の処理と同様である。
【0079】
S225において、第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2を合成した合成背景画像データBID’を作成すると共に色変換部M4が合成背景画像データBID’に対して色変換処理を行ってインク量データB_inkを作成し、作成されたインク量データB_inkに対してハーフトーン処理部M5がハーフトーン処理を行って、合成背景画像データBID’に対する2値データBBDを作成する。これらS225で行う色変換処理やハーフトーン処理は、S140の処理と同様である。
【0080】
S230において、印刷データ作成部M6は、主画像の2値データMBD,背景画像の2値データBBD並びに印刷順指定データPODに基づいて、主画像MIや各背景画像BI1,BI2をプリンター100に印刷させるための制御コマンドを作成する。S230の印刷データ作成処理は、S145の処理と同様である。
【0081】
S235において、プリンタードライバーPDrvは、S230で作成された印刷制御データ(印刷順指定コマンド、垂直位置指定コマンド、水平位置指定コマンド、ラスターコマンド)をプリンター100へ送信する。以上で、プリンタードライバーPDrvによる処理が完了する。
【0082】
(2−3)印刷処理の第3実施形態:
次に、主画像MIが、図7のように2つの主画像MI1を含む第1主画像データMID1と主画像MI2を含む第2主画像データMID2で構成されている場合の印刷処理について説明する。この印刷処理を、第3実施形態とする。本第3実施形態にかかる印刷処理は、レイヤー的に複数の主画像を重複合成してから印刷するための主画像データが複数入力されたときの処理である。本第3実施形態においては、複数の主画像データのそれぞれについて背景画像データによる影響を除去する処理を行った上でこれらの複数の主画像データを合成し、さらに合成された主画像データについて背景画像データによる影響を除去する処理を行う。このとき、合成前の主画像データについては上述した第1実施形態の手法で背景画像データによる影響を除去し、合成後の主画像データについては上述した第2実施形態の手法で背景画像データによる影響を除去する。
【0083】
図15は、プリンタードライバーの実行する印刷処理の第3実施形態の流れを示すフローチャートである。同図に示す処理は、詳細部分は第1実施形態の処理と同様であるため、各ステップにおける詳細な説明は省略する。
図15に示す処理では、まずアプリケーションプログラムAPLから第1主画像データMID1と第2主画像データMID2、第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2、印刷順指定データPODを取得し(S300)、第1主画像データMID1と第2主画像データMID2に対して第1背景画像データBID1や第2背景画像データBID2が影響するか否かを判断する(S305)。そして、S305において、第1主画像データMID1と第2主画像データMID2に対して第1背景画像データBID1または第2背景画像データBID2が影響すると判断した場合はS310に進み、第1主画像データMID1と第2主画像データMID2に対して第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2の少なくとも一方が影響しないと判断した場合はS380に進む。
【0084】
S310においては、第1主画像データMID1を構成する各画素データM1_Pixについて透過設定であるか否かを判断し、透過設定の画素データM1_Pixと判断された画素データについては(S310:Yes)、該画素データM1_Pixと対応する位置における第1背景画像データBID1の画素データB1_Pixの階調値を0にするとともに第2背景画像データBID2の画素データB2_Pixの白濃度が100%の白ベタになるようにする処理、すなわち白抜き処理を実行する(S315)。一方、第1主画像データMID1を構成する各画素データM1_Pixのうち非透過設定の画素データについては白抜き処理を行わずにS320に進む(S310:No)。
【0085】
S320において、色変換部M4は、第1主画像データMID1から主画像のインク量データM1_inkを作成する。そして、影響判定部M2は、背景画像が主画像に与える影響を主画像のインク量データM1_inkに基づいて判断し(S325)、背景画像によって影響されると判断された第1主画像データMID1の画素データM1_Pixと対応する位置の第1背景画像データBID1の画素データB1_PixについてはS330に進んで白抜き処理を実行し(S325:Yes)、背景画像によって影響されないと判断された第1主画像データMID1の画素データM1_Pixと対応する位置の画素データB1_Pixについては白抜き処理を行わずにS335に進む(S325:No)。
【0086】
S310〜S355では、S310〜S330と同様の処理を、第2主画像データMID2と第1背景画像データBID1との間の関係に基づいて行う。
S360では、第1主画像データMID1と第2主画像データMID2とを合成して合成主画像データMID’を作成する。この合成は、フォトショップ等で言う、いわゆるオーバーレイの指定に従って実行される。
【0087】
次に、影響判定部M2が、合成主画像データMID’によって印刷される印刷結果の見え(色再現)に対し、第1背景画像データBID1と第2背景画像データBID2の少なくとも一方の印刷結果が影響を与えるか否かを各画素データ毎に判断する(S365)。影響判定部M2は、影響があると判断した画素データについては該画素データが透過設定であるか否かを判断し(S370)、透過設定になっている場合はS375に進み(S370:Yes)、非透過設定の場合はS385に進む(S370:No)。一方、影響が無いと判断した画素データについては、そのままS385に進む(S365:No)。
【0088】
S375では、影響除去部M3が、背景画像によって影響されると判断された画素データM’_Pixについて、該画素データに対応する位置の第1背景画像データBID1の画素データB1_Pixのカラー色成分によって受ける影響を考慮した色に修正する。このS375での処理は、上記第2実施形態のS215の処理と同様である。合成主画像データMID’の全画素データについてS365〜S375の処理が終了するとS385が実行される。
なお、以降のS385〜S400処理は、上記第2実施形態におけるS220〜235の処理と同様である。
【0089】
(3)プリンターでの印刷処理:
以上のようにして各実施形態で作成されて出力された印刷制御コマンドがプリンター100に入力されると、プリンター100は印刷制御コマンドに基づいた印刷を実行する。
図16は、プリンター100の実行する印刷処理のフローチャートである。同図に示す処理は、プリンター100の制御部において実行されるコマンド処理部M11によって実行される。
S505では、PC200のプリンタードライバーPDrvから受信した印刷制御データを受信する。
S510では、受信したコマンドの種類を判断し、コマンドの種類に応じてS515〜S530の何れかの処理を行う。すなわち、受信したコマンドが印刷順指定コマンドの場合はS515に進み、受信したコマンドが水平位置指定コマンドの場合はS520に進み、受信したコマンドが垂直位置指定コマンドの場合はS525に進み、受信したコマンドがラスターコマンドの場合はS530に進む。
【0090】
S515では、受信した印刷順指定コマンドによって指定された印刷順指定データPODをRAM130に保存する。S520では、受信した水平位置指定コマンドによって指定された水平位置を、水平方向の印刷開始位置Xとして更新する。S525では、受信した垂直位置指定コマンドによって指定された垂直位置を、垂直方向の印刷開始位置Yとして更新する。S530では、受信したラスターコマンドに含まれるラスターデータをインクコード別のラスターバッファー132へ記憶する。
【0091】
図17は、ラスターバッファー132およびヘッドバッファー127の詳細構成を示す説明図である。同図の上段にはカラー画像用のラスターバッファー132cを示しており、同図の中段には背景画像用のラスターバッファー132wを示してある。同図に示すように、ラスターバッファー132は、インクコード別に領域が割り当てられている。カラー画像用のラスターバッファー132cは、カラー画像用の各インクコードに対応する領域の集合として構成されており、背景画像用のラスターバッファー132wも、背景画像用の各インクコードに対応する領域の集合として構成されている。
ラスターバッファー132の各領域のX方向のサイズは画像サイズに対応しており、Y方向のサイズはプリントヘッド120の高さの2分の1以上のサイズとなっている。
ラスターバッファー132には、どこまでラスターデータ受信したかを示すY方向のラスターバッファーポインターを有している。
【0092】
図17の下段には、ヘッドバッファー127を示している。図17に示すように、ヘッドバッファー127は、7つのインク色別に領域が割り当てられている。すなわち、ヘッドバッファー127は、シアン用(C,WC用)の領域と、マゼンタ用(M,WM用)の領域と、イエロー用(Y,WY用)の領域と、ブラック用(K,WK用)の領域と、ライトシアン用(lc,Wlc用)の領域と、ライトマゼンタ用(lm,Wlm用)の領域と、ホワイト用(W,WW用)の領域と、の集合として構成されている。
ヘッドバッファー127の各領域のX方向のサイズは、キャリッジの走査距離に対応しており、Y方向のサイズはプリントヘッド120のノズル列146を構成するノズル数に対応している。またヘッドバッファー127のインク色別の領域のそれぞれは、上流用ヘッドバッファー127uと下流用ヘッドバッファー127lとに2分されている。
【0093】
図18は、プリンター100のプリントヘッド120の構成を示す説明図である。図18(a)および(b)に示すように、プリントヘッド120は、7つのインク色のそれぞれに対応するノズル列146が設けられている。ノズル列146は、Y方向(印刷媒体送り方向)に沿って伸びるように形成されている。
また、図18(c)に示すように、各ノズル列146は、Y方向に沿って並ぶ32個のノズル群により構成されている。本実施形態においては、ノズル列146を構成するノズル群のうち、印刷媒体送り方向の上流側半分に位置するノズル群(ノズル1〜ノズル16)を上流ノズル群とし、印刷媒体送り方向の下流側半分に位置するノズル群(ノズル17〜ノズル32)を下流ノズル群とする。
【0094】
図18(a)に示すように、印刷媒体上に背景画像を先に印刷する際には、プリントヘッド120の各ノズル列146の上流ノズル群を用いて背景画像の形成を行い、下流ノズル群を用いて主画像の形成を行う。また、図18(b)に示すように、印刷媒体上に主画像を先に印刷する際には、プリントヘッド120の各ノズル列146の上流ノズル群を用いて主画像の形成を行い、下流ノズル群を用いて背景画像の印刷を行う。
【0095】
図17に示すように、上流用ヘッドバッファー127uは、上流ノズル群に対応するヘッドバッファーであり、下流用ヘッドバッファー127lは、下流ノズル群に対応するヘッドバッファーである。
【0096】
S535では、プリントヘッド120の高さの2分の1に対応するラスターバッファー132にラスターバッファーが格納されているか否かを判断する。格納されていない場合はS580に進んで、S580でラスらーバッファーポインターを更新する。一方、格納されている場合はS540に進む。
【0097】
S540では、RAM130に記憶された印刷順指定データPODに基づいて、主画像と背景画像の何れを先に印刷するかを判断する。主画像を先に印刷する場合はS545に進み、背景画像を先に印刷する場合はS550に進む。
S545では、主画像用のラスターバッファー132cから上流用ヘッドバッファー127uへラスターデータを転送すると共に、背景画像用のラスターバッファー132wから下流用ヘッドバッファー127lへラスターデータを転送する。従って、プリントヘッド120の各ノズル列146の上流ノズル群を用いて主画像の形成が行われ、下流ノズル群を用いて背景画像の形成が行われる。
S550では、主画像用のラスターバッファー132cから下流用ヘッドバッファー127lへラスターデータを転送すると共に、背景画像用のラスターバッファー132wから上流用ヘッドバッファー127uへラスターデータを転送する。従って、プリントヘッド120の各ノズル列146の上流ノズル群を用いて背景画像の形成が行われ、下流ノズル群を用いて主画像の形成が行われる。
なお、上流ノズル群と下流ノズル群とでは、物理的な用紙上の印刷位置が異なるため、ラスターバッファー132からラスターデータを転送する際は、上流ノズル群と下流ノズル群との対応するラスターデータが用紙上で対応する位置に印刷されるように、印刷位置の差に相当するタイミング差をつけてラスターバッファー上の転送開始データ位置を決定する。
【0098】
S555では、印刷媒体送りコントローラー150を制御して、印刷媒体PMの印刷開始位置とプリントヘッド120の位置が副走査方向において一致するように、印刷媒体PMを搬送する。
S560では、キャリッジコントローラー135を制御して、印刷媒体PMの印刷開始位置とプリントヘッド120の位置が主走査方向において一致するように、プリントヘッド120を移動する。
S565では、主走査を行ってプリントヘッド120の副走査方向の長さに相当する範囲分の印刷を実行する。このとき、上流ノズル群による画像の形成と下流ノズル群による画像の形成が並行して実行される。
【0099】
S570では、ラスターバッファー132のラスターバッファーポインターをクリアする。
S575では、印刷画像PIの全体を印刷完了したか否かを判断する。印刷完了していない場合は、印刷完了したと判断されるまでS505〜S570の処理を繰り返し実行する。印刷完了している場合は、図16の印刷処理を終了する。
【0100】
(4)変形例:
上述した各実施形態においては、透過率が完全透過か完全非透過である場合を例にとって説明を行ったが、主画像データに0%や100%以外の透過率が設定されている可能性もある。このような場合に、上述した第2実施形態の主画像データMIDや第3実施形態の合成主画像データMID’を補正して背景画像データによる影響を除去する処理では、その透過率を考慮する必要がある。
【0101】
そこで、本変形例では、主画像データの画素データから作成されたLab値と、背景画像データから作成されたLab値とに、その印刷結果に対する反映度合(その背景画像データにおける画素データのカラー色成分を印刷結果に反映するべき度合)に応じた重み付けを行った目的関数を設定する。例えば、主画像データの画素データに設定されている透過率がT%のとき、目的関数は、以下の式(2)ようにすることができる。
【数2】


この目的関数を極小化するLに対応するCMYK値は、入力された背景画像データのカラー色成分がT%だけ印刷結果の見えに寄与するように印刷されたときに、主画像データの見えが作成者の意図していたい色の見えからのずれが極小化するようになっている。
【0102】
なお、上記式(2)を目的関数として主画像データの画素データを補正した場合は、第1背景画像データBID1の対応する画素データについても、その透過率に応じたLab値((T/100)L、(T/100)a)、(T/100)b)に対応するCMYK値に修正することになる。むろん、主画像データMIDの場合と同様に、インバースモデルLUTを参照して、直接、透過率に応じたLab値((T/100)L、(T/100)a)、(T/100)b)からインク量データM_inkを算出してもよい。
【0103】
(5)まとめ:
以上説明したように、上述した各実施形態のプリンター100によれば、少なくとも主画像を印刷するための主画像データMIDと背景画像を印刷するための背景画像データBIDとから成る画像データに基づいて印刷するときに、印刷媒体に印刷されたときの主画像MIと背景画像BIの重複箇所を検出し、この検出結果に基づいて主画像データMIDを修正することによって上記重複箇所の主画像データMIDを修正することができる。このようにして修正された背景画像データBIDと主画像データMIDとに基づく印刷を所定の順序で印刷媒体に対して行うことにより、印刷結果の画質を向上させることが可能となる。
【0104】
なお、本発明は上述した実施形態や変形例に限られず、上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、等も含まれる。
【符号の説明】
【0105】
100…プリンター、105…CPU、110…RAM、115…ROM、120…プリントヘッド、125…ヘッドコントローラー、135…キャリッジコントローラー、140…キャリッジモーター、145…印刷媒体送りモーター、150…印刷媒体送りコントローラー、155…USBインターフェース、200…パーソナルコンピューター、205…CPU、210…RAM、215…ROM、225…ディスプレイインターフェース、225a…ディスプレイ、230…操作入力機器インターフェース、230a…操作入力機器、235…ハードディスク、240…USBインターフェース、APL…アプリケーションプログラム、PDrv…プリンタードライバー、M1…画像データ取得部、M2…影響判定部、M3…影響除去部、M4…色変換部、M5…ハーフトーン処理部、M6…印刷データ作成部、M7…フォワードモデルコンバータ、M11…コマンド処理部、M71…分光プリンティングモデルコンバーター、M72…色算出部、PD…印刷データ、POD…印刷順指定データ、MID…主画像データ、MID1…第1主画像データ、MID2…第2主画像データ、M_ink…主画像のインク量データ、MBD…主画像の2値データ、BID…背景画像データ、BID1…第1背景画像データ、BID2…第2背景画像データ、B_ink…背景画像のインク量データ、BBD…背景画像の2値データ、HTRm…主画像用ハーフトーンリソース、HTRb…背景画像用ハーフトーンリソース、LUTm…色変換テーブル、LUTb…色変換テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づいて印刷媒体に印刷する印刷装置であって
上記画像データは、少なくとも、主画像を印刷するための第1画像データと背景画像を印刷するための第2画像データとから成り、
上記印刷媒体に印刷されたときの上記主画像と上記背景画像の重複箇所を検出する検出手段と、
上記第1画像データを修正することによって上記重複箇所の上記背景画像を修正する画像修正手段と、
上記印刷媒体に対し上記第1画像データに基づいて行う主画像の印刷と上記第2画像データに基づいて行う背景画像の印刷とを所定の順序で行う印刷手段と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
画像データに基づく印刷結果の測色値を所定の予測モデルで予測する予測手段を更に備え、
上記画像修正手段は、上記第1画像データによる印刷結果を上記予測手段に予測させた第1測色値と、上記第2画像データおよび修正後の第1画像データとに基づいて印刷された印刷結果を上記予測手段に予測させた測色値と、の差分が極小化するように上記第1画像データを修正する請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
上記第1画像データには印刷結果における色変動を許容するか否かを示す色変動許容値が設定されており、
上記画像修正手段は、上記第1画像データにおいて上記重複箇所の上記主画像の色変動を上記色変動許容値にて許容していない場合には上記重複箇所の上記主画像を修正し、上記第1画像データにおいて上記重複箇所の上記主画像の色変動を上記色変動許容値にて許容している場合には上記重複箇所の上記主画像を修正しないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
上記画像修正手段は、上記重複箇所の上記主画像が印刷結果における色変動を許容しないことが予め設定されている特定色である場合に、上記重複箇所の上記主画像を修正することを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
上記画像修正手段は、上記背景画像の上記重複箇所にカラー色成分があり且つ上記主画像の上記重複箇所にカラー色成分がある場合には上記主画像の上記重複箇所を修正し、上記背景画像にカラー色成分があり且つ上記主画像の上記重複箇所にカラー色成分が無い場合には上記主画像の上記重複箇所を修正せず、上記背景画像の上記重複箇所にカラー色成分が無い場合には上記主画像の上記重複箇所を修正しないことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
画像データに基づいて印刷媒体に印刷する機能をコンピューターに実現させるための印刷プログラムであって
上記画像データは、少なくとも、主画像を印刷するための第1画像データと背景画像を印刷するための第2画像データとから成り、
上記印刷媒体に印刷されたときの上記主画像と上記背景画像の重複箇所を検出する検出機能と、
上記第1画像データを修正することによって上記重複箇所の上記主画像を修正する画像修正機能と、
上記印刷媒体に対し上記第1画像データに基づいて行う主画像の印刷と上記第2画像データに基づいて行う背景画像の印刷とを所定の順序で行う印刷機能と、
をコンピューターに実現させることを特徴とする印刷プログラム。
【請求項7】
少なくとも主画像を印刷するための第1画像データと背景画像を印刷するための第2画像データとから画像データが成る場合に、これら画像データに基づいて印刷媒体に印刷する印刷方法であって、
上記印刷媒体に印刷されたときの上記主画像と上記背景画像の重複箇所を検出する検出工程と、
上記第1画像データを修正することによって上記重複箇所における上記主画像を修正する画像修正工程と、
上記印刷媒体に対して上記第1画像データに基づいて行う主画像の印刷と上記第2画像データに基づいて行う背景画像の印刷とを所定の順序で行う印刷工程と、
を備えることを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−76393(P2011−76393A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227536(P2009−227536)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】