説明

印刷装置、印刷制御方法及びプログラム

【課題】 インクリボンのインク面のサイズを単位とした印刷を1つの画像に対して複数回行う分割印刷により、その印刷面よりも長尺な画像を用紙へ印刷可能とする印刷装置を提供する。
【解決手段】 インクリボンに塗布された複数色のインクを用いて一面分の画像を印刷する印刷方法により、複数面分のインクを用いて1枚の画像を連続紙上に印刷可能な印刷装置である。印刷装置は、複数面分のインクリボンを用いて1枚の印刷画像を印刷する場合に、印刷画像を分割することにより、1面分のインクリボンにより印刷される印刷画像中の領域を設定する(S505)。そして、設定された領域に基づいて、複数面分のインクリボンを用いて1枚の印刷画像を印刷する(S511〜S524)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、専用のインクリボンやインクリボンに塗布されたインクを、用紙などの記録媒体に熱転写して印刷を行うサーマル印刷装置などの印刷装置がある。例えば、この印刷装置を用いたものとしては、デジタルスチルカメラなどで撮像した画像データやPC(Personal Computer)などで加工した画像データにおける画像をプリントして写真を作成するホームラボが知られている。
【0003】
ここで、上述した印刷装置の概略を図18(a)、(b)を参照して説明する。図18(a)に示すように、印刷部分において、用紙100は、グリップローラ153でグリップされながら搬送される。用紙100は、その搬送途上において、サーマルヘッド155によりインクリボン103のインクが熱転写されることで印刷が行われる。なお、用紙100がロール用紙の場合は、裁断部154において例えばLサイズの長さで裁断される。インクリボン103は、供給ボビン150から供給され、巻き取りボビン151により巻き取られる。
【0004】
図18(b)に示すように、インクリボン103は、リボンベースフィルム105に染料層104を塗布して形成されている。用紙100は、用紙ベースフィルム102上において、インクリボン103の染料が転写される受容層101をもって形成される。印刷時には、プラテンローラ152とサーマルヘッド155とにより、インクリボン103と用紙100とが重ね合わせた状態で圧接される。圧接された部分では、用紙100とインクリボン103とを走査しながらサーマルヘッド155による加熱が行われ、インクリボン103のインクを昇華させて用紙100へ転写することにより画像が形成される。
【0005】
次に、図19を参照してインクリボンと用紙のサイズ構成を説明する。図19に示すインクリボンI1は、主走査方向の幅がWa、副走査方向のサイズがLaの用紙P1に印刷を行うためのインクリボンであり、インクリボンの幅は、用紙P1の幅Waと同じ幅となっている。インクリボンI1は、用紙P1に色を形成するためのイエロー(Yellow)、マゼンタ(Magenta)、シアン(Cyan)の各インク面を有する。また、インクリボンI1は、各インク面に次いで、印刷後の用紙P1上に保護層を形成するためのオーバーコート(OverCost)面を有する。インクリボンI1では、上述した4種類のインク面が用紙P1のサイズに対応した長さLaで繰り返し形成されている。すなわち、インクリボンI1において、幅Waと長さLaの各インク面とオーバーコート面の4つのインク面を使って、用紙P1の1面をちょうど覆って印刷するように予め規定されている。そして、インクリボンI1には、予めインク面サイズが規定された単色の印刷面が、規則的な色の並び(イエロー・マゼンタ・シアン・オーバーコートの順)で副走査方向において繰り返し形成されている。用紙P1のサイズとインク面のサイズは等しいと説明したが、インク面は用紙サイズよりも大きくしておいてもよい。用紙P1の印刷領域にインクを転写できる分のインク面サイズであればよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−82610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のようなインクリボンを用いて印刷を行う場合、イエロー・マゼンタ・シアン・オーバーコートの1組のインクリボンを用いて印刷できるサイズはインク面のサイズにより予め決まっている。従って、例えば、Lサイズ用のインクリボンを用いてLサイズよりも大きなサイズの画像を印刷することができなかった。
【0008】
本発明は、このような課題を解決することを目的としてなされたものである。本発明の目的は、インクリボンのインク面のサイズを単位とした印刷を1つの画像に対して複数回行う分割印刷により、その印刷面よりも長尺な画像を用紙へ印刷可能とする印刷装置及び印刷制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の印刷装置は、インクリボンに塗布された複数色のインクを用いて一面分の画像を連続紙に印刷する印刷手段を有し、複数面分のインクを用いて1枚の画像を連続紙上に印刷可能な印刷装置であって、複数面分のインクリボンを用いて1枚の印刷画像を印刷する場合に、印刷画像を分割することにより、1面分のインクリボンにより印刷される印刷画像中の領域を設定する設定手段と、設定手段により設定された領域に基づいて、複数面分のインクリボンを用いて1枚の印刷画像を印刷手段により印刷するための制御を行う制御手段とを有することを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の印刷装置は、インクリボンに塗布された複数色のインクを用いて一面分の画像を連続紙に印刷する印刷手段を有し、複数面分のインクリボンを用いて1枚の画像を連続紙上に印刷可能な印刷装置であって、複数面分のインクリボンを用いて1枚の印刷画像を印刷する場合に、1面分のインクリボンで印刷される印刷画像中の各領域を表示手段に表示する表示制御手段と、表示手段に表示された領域を操作部材への操作に応じて変更するための変更手段と、変更手段により変更された領域に基づいて、複数面分のインクリボンを用いて1枚の印刷画像を印刷するための制御を行う制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、インクリボンの印刷面のサイズを単位とした印刷を1つの画像に対し複数回行う分割印刷により、その印刷面よりも長尺な画像を用紙へ印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る印刷装置の構成を例示するブロック図である。
【図2】本実施形態に係る印刷装置の印刷処理を示すフローチャートである。
【図3】任意のアスペクト比の印刷画像枠を設定する時のユーザインターフェイス表示例である。
【図4】(a)は、印刷対象画像を例示する概念図であり、(b)は、印刷対象画像から印刷に要するインクリボンの面数と、用紙の長さとの見積もりを例示する概念図である。
【図5】(a)は、印刷に必要なインクリボンの面数を表示するユーザインターフェイスの表示例であり、(b)は、印刷に必要なインクリボンの面数を表示するユーザインターフェイスの表示例である。
【図6】画像分割処理を示すフローチャートである。
【図7】(a)は、画像分割処理で画像の分割線を設定していく様子を例示する概念図であり、(b)は、画像分割処理で画像の分割線を設定していく様子を例示する概念図であり、(c)は、画像分割処理で画像の分割線を設定していく様子を例示する概念図であり、(d)は、画像分割処理で画像の分割線を設定していく様子を例示する概念図であり、(e)は、画像分割処理で画像の分割線を設定していく様子を例示する概念図であり、(f)は、画像分割処理で画像の分割線を設定していく様子を例示する概念図であり、(g)は、画像分割処理で画像の分割線を設定していく様子を例示する概念図であり、(h)は、画像分割処理で画像の分割線を設定していく様子を例示する概念図である。
【図8】分割線を表示して確認する時のユーザインターフェイス表示例である。
【図9】印刷対象画像を分割線に沿ってインクリボンの2つの面で印刷する画像へ分割する様子を例示する概念図である。
【図10】長尺なロール用紙に様々なアスペクト比の画像を印刷する例を示す概念図である。
【図11】様々なアスペクト比の用紙に様々なアスペクト比の画像を印刷する例を示す概念図である。
【図12】様々なアスペクト比の用紙に単色インクリボンを用いて様々なアスペクト比の画像を印刷する例を示す概念図である。
【図13】他の実施形態に係る印刷装置の印刷処理を示すフローチャートである。
【図14】インクリボンの第n面から第n+3面までを使用して印刷対象画像を印刷する際の、分割可能領域と非分割領域の設定例を示す概念図である。
【図15A】、
【図15B】インクリボンの第n面から第n+3面までを使用して印刷対象画像を印刷する際の、分割可能領域と分割領域の設定を含む画像分割処理を示すフローチャートである。
【図16】インクリボンの印刷面の使用面数を増加させて分割可能領域を設定する際の自由度を上げることが可能な印刷処理を示すフローチャートである。
【図17A】、
【図17B】分割可能領域を設定する際の自由度を上げることが可能な印刷処理における画像分割処理を示すフローチャートである。
【図18】(a)は、従来のインクリボンを用いる印刷装置における印刷部の概略図であり、(b)は、従来のインクリボンのインクを印刷用紙へ転写する部分の概略図である。
【図19】従来の用紙とインクリボンとの関係を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について図を参照して説明するが、この発明は以下の実施の形態に限定されない。また、この発明の実施の形態は発明の最も好ましい形態を示すものであり、発明の範囲を限定するものではない。例えば、以下に説明する実施形態において例示される構成部品の寸法、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、本発明がそれらの例示に限定されるものではない。
【0014】
本実施形態に係る印刷装置は、上述のように、複数色のインクが塗布され、複数のインク面が順に規則的に形成されたインクリボンを用いる。そして、インクリボンに塗布された複数色のインクを用いて1面分の画像を連続紙に印刷する方法により、複数面分のインクを用いて1枚の画像を連続紙上に印刷可能な印刷装置である。
本実施形態の印刷装置における、印刷すべき画像データの分割方法及び分割した画像データによる印刷方法を説明する。すなわち、以下で説明する分割方法で画像データを分割し、その分割された画像データで印刷された画像を長辺方向でつなぎ合わせた場合は、余白が生じず、1つの連続した画像となる。特にロール紙のような連続紙を用いる場合は、1枚の用紙に複数面分のインクリボンを用いて印刷できる。したがって、分割印刷により、通常のサイズよりも大きい用紙サイズとなる1枚の印刷物を得ることができる。
【0015】
本実施形態におけるインクリボンは、図19で例示したインクリボンと同様、用紙に色を形成する為のイエロー、マゼンタ、シアンの各インク面を有し、各インク面に次いで、印刷後の用紙上に保護層を形成する為のオーバーコート面を有する。また、インクリボンは、上述した4種類の印刷面が用紙のサイズに対応した一定の長さで繰り返し形成されている。したがって、インクリボンでは、所定サイズの単色の印刷面が規則的な色の並びで走査方向において繰り返し形成されている。
【0016】
なお、以下の説明では、1組のインクリボンで印刷可能な範囲をW×Lとする。この場合、インクリボンには、W×Lまたはこれより少し大きいサイズのインク面が各色順に配置されている。
【0017】
図1は、本実施形態に係る印刷装置400の構成を例示するブロック図である。図1に示すように、CPU401(Central Processing Unit)は印刷装置400全体の中央制御を行い、RAM402(Random Access Memory)はCPU401にワークエリアを提供する。ROM403(Read Only Memory)は、CPU401の処理手順を含むプログラムデータや、印刷部416のインクリボンの印刷面のサイズ等の各種設定情報を記憶する。ROM403は、例えばフラッシュメモリなどの書き換えが可能な不揮発性メモリであってよい。
【0018】
なお、ROM403は、印刷部416に装着される複数種のインクリボンごとに印刷面のサイズ等の設定情報を記憶していてよい。この場合、CPU401は、印刷部416に装着されたインクリボンの種別をセンサなどで検知してROM403を参照することで、インクリボンの種別に応じた設定情報を取得できる。
【0019】
画像処理部404は、CPU401の制御の下で各種画像処理を行うDSP(Digital Signal Processor)などであり、例えばデジタル画像データ等を画面表示可能なデータに変換するために用いられる。表示部制御部405は、CPU401の制御の下、LCD406やLED407での表示出力を制御する。LCD406(Liquid Crystal Display:液晶表示器)は、画面に各種画像を表示する。LED407(Light Emitting Diode:発光ダイオード)は、処理状態を示すインジケータとして使用される。
【0020】
外部記憶装置制御部408は、印刷装置400と接続する外部記憶装置へのデータの書き込みやデータの読み出しを制御する。ソケット409は、コンパクトフラッシュ(登録商標)やメモリースティック(登録商標)等の外部記憶装置と接続する。したがって、外部記憶装置制御部408では、ソケット409と接続した外部記憶装置へのデータの書き込みや外部記憶装置に記憶されたデータの読み出しの制御が行われる。
【0021】
内部記憶装置制御部410は、印刷装置400の内部に設けられたフラッシュメモリ411等の記憶媒体に記憶されたデータの読み出しや、その記憶媒体へのデータの書き込みを制御する。操作制御部412は、ユーザから各種操作を受け付けるボタン等からの操作情報の受け付けを制御する。例えば、操作制御部412は、操作キー413、操作ボタン414の操作情報を受け付けてCPU401へ出力する。
【0022】
印刷制御部415は、印刷部416におけるインクリボンを用いた用紙への印刷を制御する。印刷部416は、熱昇華型の印刷部であり、インクリボンのインクを用紙へ転写する。具体的には、前述した図18(a)、(b)と同様な構成であり、インクリボンのインクを用紙へ転写して用紙への印刷を行う。また、印刷部416には、装着されたインクリボンの種別や残量を検知してCPU401へ出力するセンサ(図示しない)が備えられている。残数検出手段としてのCPU401は、このセンサからの出力に基づいて、印刷面のサイズを単位とした印刷の残り回数を算出する。また、印刷部416には、給紙トレイ(図示しない)に載積された用紙の枚数や用紙ロールの残量などを検知してCPU401へ出力するセンサ(図示しない)が備えられている。通信制御部417は、USBやIEEE1394などにより通信コネクタ418を介して通信可能に接続された外部機器との通信を制御する。
【0023】
印刷装置400において、印刷部416で印刷すべき画像データの入力は、通信コネクタ418を介して接続された外部機器、ソケット409に接続された外部記憶装置又は印刷装置400の内部に設けられたフラッシュメモリ411などから行われる。
【0024】
図2は、本実施形態に係る印刷装置400における印刷処理を示すフローチャートである。具体的には、図2のフローチャートは、画像データを選択してから印刷を行う領域を枠で設定し、その枠に囲まれた領域を前述した条件で用紙に印刷するため、インクリボンの印刷面のサイズを単位とした印刷を複数回繰り返して行う処理を示している。
【0025】
なお、以下に例示する印刷処理では、インクリボンの4種類の面を1組としたインクリボンの2つの組を用いて、インクリボン1組による印刷を2回繰り返している。印刷が1回で済む場合は分割することなく通常の印刷処理を行えばよいため、本実施の形態では、印刷面のサイズを単位とした印刷が2回以上行われるものとする。
【0026】
図2に示すように、S501でCPU401は、操作キー413や操作ボタン414から受け付けたユーザの指示に応じて選択された印刷すべき画像データをLCD406に表示させる。このユーザの指示で選択される画像データは、ソケット409に接続された外部記憶装置やフラッシュメモリ411に記憶されているものとする。
【0027】
次いで、CPU401は、S502において、LCD406に操作画面を表示させ、操作キー413や操作ボタン414からユーザの指示を受け付けるユーザインターフェイスにより、任意のアスペクト比の印刷画像枠を設定する。印刷画像枠は、S501で選択された画像データの画像において、印刷すべき画像領域を示す枠である。
【0028】
ここで、S502において印刷画像枠を設定するユーザインターフェイスの表示例を図3を参照して説明する。図3に示すように、LCD406にはS501で選択された画像が表示される。ユーザは操作キー413や操作ボタン414を操作して画像に対して任意のアスペクト比の印刷画像枠500を設定する。
【0029】
次いで、CPU401は、S503において、選択された印刷画像枠500内の画像領域を印刷すべき印刷対象画像として抽出する。次いで、CPU401は、S504において、印刷対象画像の印刷サイズの短辺方向の長さを印刷部416に装着されているインクリボンの印刷面の短辺長Wに規定する。次いで、S505でCPU401は、S504で短辺長Wに短辺方向の長さが規定された印刷対象画像の印刷サイズについて、長辺方向の長さを印刷面の長辺長Lで換算した値で割り、印刷に要するインクリボンの面数(組数)を計数し、用紙の長さを見積もる。すなわち、S505では、印刷面のサイズを単位とした印刷が何回必要かを計数する。ここで、印刷に要するインクリボンの面数とは、イエロー、マゼンタ、シアン・オーバーコートのインク面を1組として、印刷に必要となるインクリボンの組数のことである。
【0030】
ここで、図4(a)、図4(b)を参照して、印刷に要するインクリボンの面数と、用紙の長さとの見積もりについて説明する。図4(a)))に示すようなS503で抽出された印刷対象画像は、その短辺方向の長さが印刷面の短辺長Wに合わせた長さに換算される。この換算は、印刷対象画像のアスペクト比を不変にして行われる。次いで、図4(b)に示すように換算後の印刷対象画像を印刷面の長辺長Wで割ることで、印刷に要するインクリボンの面数と用紙の長さを算出することができる。すなわち、S505では、印刷対象画像のサイズと印刷面のサイズから、印刷対象画像のアスペクト比を不変とし、印刷面の幅に印刷対象画像の短辺を合わせて印刷する際の、インクリボンの面数と用紙の長さが算出される。図示例では、印刷対象画像のサイズが印刷面の1面と1/3面であるため、2面分のインクリボンと1/3面分の用紙が印刷に必要となる。
【0031】
次いで、CPU401は、S506において、S505で見積もった印刷に必要なインクリボンの面数を、ユーザインターフェイスであるLCD406上に表示させる。具体的には、ユーザインターフェイスでは、図5(a)に示すように、選択された画像データからトリミングした印刷対象画像を全体表示する。また、ユーザインターフェイスでは、インクリボンの印刷面のサイズに対応した区切りを印刷対象画像に重畳して表示するとともに、同一画面上に消費するインクリボンの印刷面の数を表示する。
【0032】
次いで、CPU401は、S507において、ユーザから処理を続行するか否かの操作指示を操作キー413や操作ボタン414から受け付け、その操作指示に応じて処理を続行するか否かを判断する。S507において処理を続行する場合、CPU401は、S508へ処理を進め、画像分割処理を行う。また、S507において処理を続行しない場合、CPU401は、S502へ処理を戻し、印刷画像枠500の再設定を行わせる。
【0033】
なお、CPU401は、S507において、S505で見積もったインクリボンの面数と用紙の長さが印刷部416に装着されているインクリボンの残り面数と用紙の残り長さを超える場合も、処理を続行しないと判定してよい。この際に、CPU401は、図5(b)に示すように、印刷に必要なインクリボンの面数を表示するユーザインターフェイスにおいて、インクリボンが不足しているなどの警告表示をさせて、印刷対象画像の再設定を行う旨の情報を表示させる。
【0034】
ここで、S508で行う画像分割処理の内容を図6、図7(a)〜図7(h)を参照して詳細に説明する。図9は、画像分割処理を示すフローチャートである。図7(a)〜図7(h)は、画像分割処理で画像の分割線を設定していく様子を例示する概念図である。
【0035】
図6に示すように、画像分割処理が開始されると、顔領域検出手段としてのCPU401は、印刷対象画像に対して顔位置検出処理を行う(S901)。ここで、顔位置検出前の印刷対象画像を図7(a)に、顔位置検出後の印刷対象画像を図7(b)に示す。S901では、印刷対象画像から人物の顔領域を検出し、図7(b)に示すように、検出された顔領域にフレーム901、902、903を設定する。本実施形態では、3名の顔がフレーム901、902、903として認識されている。
【0036】
なお、顔位置検出処理における人物の顔領域の検出方法は、公知の技術を適用可能であり、本発明とは直接関係しないため、詳細な説明は省略する。なお、公知の検出技術としては、ニューラルネットワークなどを利用した学習に基づく手法、テンプレートマッチングを用いて目、鼻、口等の形状に特徴のある部位を画像から探し出し、類似度が高ければ顔とみなす手法などがある。また、他にも、肌の色や目の形といった画像特徴量を検出し、統計的解析を用いた手法等、多数提案されている。一般的には、これらの手法を複数組み合わせ、顔領域の検出精度を向上させている。
【0037】
次いで、CPU401は、S902において、S901で検出した顔領域を、非分割領域として設定する。ここで、顔領域を非分割領域として設定した後の印刷対象画像を図7(c)に示す。同図に示すように、本実施形態では、3名の顔領域を覆うように非分割領域910、911、912が設定される。なお、図示例では、非分割領域を矩形の顔領域としているが、非分割領域の形状は特に矩形に限定するものではない。非分割領域の設定では、例えば顔領域以外でも他の要素を検出して、その要素を覆うように非分割領域を設定してよい。
【0038】
次に、CPU401は、図7(d)に示すように、印刷対象画像の長辺方向の長さを印刷面の長辺長Lで換算する。そして、CPU401は、印刷対象画像の両端からインクリボンの印刷面サイズの面を並べて、長辺方向に隙間が生じないようにする。すなわち、CPU401は、インクリボンの印刷面サイズの面が重複する領域が生じるまで、印刷対象画像の両端側から印刷面サイズの面を並べていく。本実施形態で例示する印刷対象画像は、1面と1/3面分の印刷面サイズの面を必要とするため、両端側から1面づつ並べられることとなる。
【0039】
CPU401は、印刷対象画像に並べられた印刷面サイズの面において、第1面領域(左端から並べた領域)の最大長さをL(1)max、第2面領域(右端から並べた領域)の最大長さをL(2)maxとして設定する。そして、分割可能領域決定手段としてのCPU401は、L(1)maxとL(2)maxの重複する領域Lx(1,2)を分割可能領域として設定する。この時、CPU401は、S902などで予め非分割領域が設定されている場合はその領域を避けるように分割可能領域を設定する。次いで、CPU401は、領域L(1)max―Lx(1,2)、領域L(2)max―Lx(1,2)をそれぞれ非分割領域920、921として設定する(S903)。したがって、印刷対象画像の分割線は分割可能領域Lx(1,2)の範囲で設定されることとなる。
【0040】
次いで、CPU401は、S904において、エッジ検出処理の条件J1を設定する。S904では、条件J1:エッジ強度閾値T1=最大として設定する。エッジとは、画像の濃度勾配に基づく画像の輪郭である。濃度変化が大きく変化範囲が狭いほどエッジ強度は大きく、濃度変化が小さく変化範囲が広いほどエッジ強度は小さくなる。したがって、S904では、濃度変化が大きく変化範囲が狭いエッジの検出条件が設定される。なお、条件J1:エッジ強度閾値T1は、単一の値であっても、値に一定の幅があってもよい。
【0041】
次いで、第1のエッジ検出手段、第2のエッジ検出手段としてのCPU401は、S905において、印刷対象画像の分割可能領域に対してエッジ検出処理を行い、設定された条件J1に合致するエッジが検出されたか否かを判定する(S906)。S906において条件J1に合致するエッジが検出されなかった場合、CPU401は、S907において、エッジ検出処理の条件J1のエッジ強度閾値T1を、任意の刻み幅だけ小さくするように変更する。エッジ強度閾値T1を変更した後、CPU401は、S905へ処理を戻すことで、S906において条件J1に合致するエッジが検出されるまでエッジ検出処理を繰り返して行う。
【0042】
S906で条件J1に合致するエッジが検出された場合、分割線設定手段としてのCPU401は、画像内にあるエッジとエッジの強度をメモリに記憶させる(S908)。次いで、CPU401は、画像内においてエッジ強度が最大のエッジに沿った線を第1分割線として設定する(S909)。
【0043】
ここで、S905で印刷対象画像の分割可能領域に対してエッジ検出処理を行った後の画像を図7(e)に例示する。また、S909で第1分割線を設定した後の印刷対象画像を図7(f)に例示する。図7(e)に示すように、S905では、条件J1に合致するエッジ930が分割可能領域で検出される。次いで、図7(f)に示すように、S909では、条件J1で検出されたエッジの中で強度が最大のものが第1分割線940として設定される。図示例では、分割可能領域に含まれる標識に沿って第1分割線940が設定されている。
【0044】
次いで、CPU401は、S910において、設定された分割線が印刷対象画像の短辺方向で画像を横断しており、分割線に沿って印刷対象画像が分断可能であるか否かを判定する。S910において横断している場合、CPU401は処理をS919へ進める。図7(f)の例では、第1分割線940が印刷対象画像の短辺方向で画像を横断していないため、分割線に沿った分断ができないと判定される。
【0045】
S910において横断していない場合、CPU401は、S911において、エッジ検出処理の条件J2を設定する。S911では、条件J2:エッジ強度閾値T2=最大として設定する。なお、条件J2:エッジ強度閾値T2は、単一の値であっても、値に幅があってもよい。
【0046】
次いで、CPU401は、S912において、エッジ検出処理の条件J2:エッジ強度閾値T2=0であるか否かを判定する。S912においてエッジ強度閾値T2=0でない場合、CPU401は、S913でエッジ検出処理の条件J2:エッジ強度閾値T2を、任意の刻み幅だけ小さく逓減するように変更する。なお、エッジ検出精度を上げるため、S913でのエッジ強度閾値T2の刻み幅は、S907におけるエッジ強度閾値T1の刻み幅よりも小さいものとする。
【0047】
次いで、CPU401は、S914で分割線端を起点とするエッジ検出処理を行い、エッジ検出処理の条件J2に合致するエッジが検出されたか否かを判定する(S915)。S915においてエッジが検出されなかった場合、CPU401は、処理をS912へ戻し、エッジ検出処理の条件J2:エッジ強度閾値T2=0になるまで、S912、S913、S914、S915を繰り返す。
【0048】
S915でエッジが検出された場合、CPU401は、画像内にあるエッジとその強度をメモリに記憶させる(S916)。次いで、CPU401は、S917で分割線端を起点とし、エッジ強度が最大のエッジの組み合わせで分割線を延長し、S910に処理を戻す。したがって、印刷装置400では、分割線が画像短辺方向で横断するまで、エッジ検出処理におけるエッジ強度の閾値を徐々に逓減しながらエッジ検出処理を繰り返し行い、その過程で順次検出されたエッジに沿った分割線の延長を行う。
【0049】
なお、ルーチンL1のS912において、エッジ強度閾値T2=0である場合、CPU401は、S918で分割線端から画像短辺方向で横断するまでの最短距離を結ぶラインで分割線を延長し、S919へ処理を進める。すなわち、S918では、画像のエッジに沿って設定された分割線の終端が画像の縁(画像長辺)に至らない場合に、その終端から画像の長辺へ至る距離が最短となるように分割線を延長して設定する。
【0050】
ルーチンL1の処理を図7(g)を参照して説明する。図7(g)に示すように、第1分割線940は画像短辺方向で横断していない。ルーチンL1の処理では、S910でYESと判定されるか、S912でYESと判定されるまで、第1分割線端950を起点とする分割線延長が行われる。したがって、ルーチンL1では、検出されたエッジを含むように分割線が延長されていくこととなる。具体的には、ルーチンL1では、分割線が画像短辺方向で横断するまで、エッジ強度の閾値を徐々に下げながらのエッジ検出処理が繰り返し行われ、検出されたエッジを含むように分割線の延長が行われることとなる。また、エッジ強度の閾値が0まで下がった場合は、分割線端から画像長辺に至るまでの分割線の延長が最短距離で行われることとなる。後述するS919に到達した時点では、図7(h)の分割線960で示されるとおり、分割線は画像短辺方向に横断している。
【0051】
S919において、表示制御手段としてのCPU401は、画像短辺方向に横断するまで延長された分割線を印刷装置400のユーザインターフェイスであるLCD406上に表示させる。具体的には、図8に示すように、LCD406上には、確認画面として、画像短辺方向に横断するまで延長され、一方の画像長辺から他方の画像長辺に至る分割線960が印刷対象画像に重畳して表示される。次いで、CPU401は、S920において、表示された分割線の設定で処理を続行するか否かの指示を操作キー413や操作ボタン414を介してユーザから受け付け、その指示に応じて処理を続行するか否かを判定する。
【0052】
S920において表示された分割線の設定で処理を続行せず、操作部材である操作キー413や操作ボタン414を介して分割線の再設定指示をユーザから受け付けて分割線の設定をやり直す場合、CPU401は、S921で分割線の設定を消去する。次いで、CPU401は、最初に設定した第1分割線を以後のフローの分割線候補から除外し、図6に示すフロー終了まで第1分割線として再設定させないこととする(S922)。そして、CPU401は、S904に処理を戻す。これにより、CPU401は、ユーザから分割線の再設定指示を受け付けた場合に、設定された分割線とは異なるエッジを含むように新たな分割線を設定することととなる。
【0053】
S920において表示された分割線の設定で処理を続行する場合、CPU401は、S923で分割線960を確定する。次いで、CPU401は、S924で分割線960の左側の画像をインクリボンの第1面で形成する画像とし、その分割線960に応じて画像データm列目の副走査方向(用紙の搬送方向)の長さL1mを定義する。さらに、CPU401は、S925で分割線960の右側の画像をインクリボンの第2面で形成する画像とし、その分割線960に応じて画像データm列目の副走査方向の長さL2mを定義する。次いで、CPU401は、S926で分割線960を境界に画像データを、第1面領域の画像データ(第1面の印刷に係る分割画像)、第2面領域の画像データ(第2面の印刷に係る分割画像)に分割し、図6のフローを終了する。
【0054】
S926で画像データを分割する際の様子を図9に例示する。図9に示すように、S926では、定義済みのインクリボンの第1面領域、第2面領域を画像データに重ね合わせて、第1面領域に係る画像データ970、第2面領域に係る画像データ980に分割する。分割後の画像データは、分割線960を境界として左側の画像データ970をインクリボンの第1面領域の印刷で、右側の画像データ980をインクリボンの第2面領域の印刷で利用されることとなる。したがって、印刷対象画像について、分割線960を境界とした左側の領域は、インクリボンの第1面を用い、画像データ970に応じて形成されることとなる。また、分割線960を境界とした右側の領域は、インクリボンの第2面を用い、画像データ980に応じて形成されることとなる。
【0055】
図2のフローに戻ると、CPU401は、S508の画像分割処理の後、S509でインクリボンの第1面領域について、画像データm列目の副走査方向の長さをL1mの最大値を最大長とした第1面領域に関するモータステップ組み合わせP1を定義する。次いで、CPU401は、S510でインクリボンの第2面領域について、画像データm列目の副走査方向の長さをL2mの最大値を最大長とした第2面に関するモータステップ組み合わせP2を定義する。
【0056】
次いで、CPU401は、印刷部416でインクリボンの第1面領域での印刷開始位置まで用紙を搬送させ(S511)、画像処理部404で画像データ970を印刷可能なデータに変換させて印刷データを生成する(S512)。次いで、CPU401は、生成した印刷データをもとに、印刷部416で第1面イエロー、第1面マゼンダ、第1面シアンを用紙に印刷させる(S513、S514、S515)。
【0057】
次いで、CPU401は、第1面領域での画像データの印刷が終わった後、印刷部416でインクリボンの第2面領域での印刷開始位置まで用紙を搬送させる(S516)。次いで、CPU401は、画像処理部404で画像データ980を印刷可能なデータに変換させて印刷データを生成する(S517)。次いで、CPU401は、生成した印刷データをもとに、印刷部416で第2面イエロー、第2面マゼンダ、第2面シアンを用紙に印刷させる(S518、S519、S520)。
【0058】
次いで、CPU401は、第2面領域での画像データの印刷が終わった後、印刷部416でインクリボンの第1面領域での印刷開始位置まで用紙を搬送させ(S521)、第1面オーバーコートを用紙に印刷させる(S522)。次いで、CPU401は、印刷部416でインクリボンの第2面領域での印刷開始位置まで用紙を搬送させ(S523)、第2面オーバーコートを用紙に印刷させる(S524)。
【0059】
なお、S521〜S524のオーバーコート印刷において、第1面オーバーコート領域と第2面オーバーコート領域の分割線は、次に示す条件を満たしていればどの様な形状であっても構わない。ただし、オーバーコート領域は各面のイエロー、マゼンタ、シアンの印刷領域を覆うように規定される。
条件:オーバーコート領域の第1面と第2面の分割線は、L(1)maxとL(2)maxの重複する分割可能領域Lx(1,2)の中にある。
【0060】
つまり、オーバーコートに関する印刷領域の分割線は、第1面の画像データ970、第2面の画像データ980の印刷領域と同領域に分割しても良いし、分割可能領域Lx(1,2)の中で直線的に領域を分割してもよい。すなわち、オーバーコートに関する印刷領域の分割線は、上述した条件を満たす限り、イエロー、マゼンダ、シアンに関する印刷領域の分割線とは異なってよい。
【0061】
次いで、CPU401は、裁断部154を駆動させて印刷後の用紙をカットさせ(S525)、カットした用紙を排出させる(S526)。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によれば、印刷装置400において、インクリボンの印刷面のサイズを単位とした印刷を複数回行う分割印刷を、印刷面サイズよりも長辺方向に長い長尺用紙に対して行う際に、次のような印刷が可能である。
・印刷対象画像において、インクリボンの印刷面のサイズを単位とした印刷を複数回行う際の分割位置を、顔領域とエッジ強度の低い中間調領域とを避けて、目立たない領域に設定することができる。
【0063】
本実施形態では、インクリボンの2面を使用する印刷処理について説明した。図10に示すように、ロール用紙P2に対する印刷結果とインクリボンI1とを並べて比較すると、インクリボンI1の2つの印刷面に対し、ロール用紙P2における印刷面は1.3面分程度の大きさとなる。しかしながら、本実施形態で例示した印刷処理は一例であって、インクリボンの2面のみの使用に限ったものではない。印刷対象画像が更に長辺方向に長く、ロール用紙P2における印刷面が2.5面程度の大きさとなる場合においては、図10に例示するように、インクリボンの3面を使用して印刷することが可能である。
【0064】
要は、図6のフローで説明したような印刷対象画像への分割線の設定と画像分割とを行い、図2のフローで説明したようなインクリボンの印刷面のサイズを単位とした印刷を複数回繰り返して行えばよい。例えば、図10に例示するような印刷対象画像がロール用紙P2において2.5面程度の大きさとなる場合は、印刷結果を得る処理をインクリボンの3面に亘って行えば良い。つまり、本実施形態に例示した処理を複数回繰り返して行うことで、用紙又はインクリボンが尽きるまで、長辺方向のアスペクト比が長い画像データの印刷を行うことができる。
【0065】
<他の実施形態>
なお、上述した実施の形態における記述は、一例を示すものであり、これに限定するものではない。上述した実施の形態における構成及び動作に関しては、適宜変更が可能である。
【0066】
上述した実施形態では印刷装置として、熱昇華型の印刷装置を例にして説明したが、印刷装置は熱昇華型に限るものではない。例えば、予めサイズが規定された印刷面が繰り返し形成されたインクリボンを用いる印刷装置であればよい。
【0067】
また、本実施形態では、長辺方向の長さに制限の無いロール用紙を例に説明したが、印刷する用紙はロール用紙に限ったものではない。
図11に示すように、用紙の長さは、以下に述べるような印刷対象画像の印刷面以上の長さであってもよい。
・1.3面分の印刷対象画像に対し、2面分のインクリボンI1と1.3面分の用紙P3。
・1.3面分の印刷対象画像に対し、2面分のインクリボンI1と1.83面分の用紙P4。なお、印刷対象画像の印刷開始位置は1.83面分の用紙P4内に納まればよい。
・3.5面分の印刷対象画像に対し、4面分のインクリボンI1と4面分の用紙P4。
このように、用紙の端を印刷開始位置とせずに、用紙の端とインクリボンの端を対応させて、インクリボンの印刷開始位置に対応した位置から印刷対象画像を印刷しても良い。その場合、用紙は、印刷対象画像のサイズよりも大きいサイズが必要となるが、使用するインク面に対応する用紙サイズ以下となる。
【0068】
また、1.3面分の印刷対象画像に対して、図11では2面分のインクリボンを使用しているが、分割線(分割位置)によっては、3面分のインクリボンを使用してもよい。しかし、この場合、使用する3面分のインクリボンのうち、実際には印刷に使用しない領域が大きくなってしまう。従って、インクリボン節約モードを設けることができる。そして、インクリボン節約モードのときは、印刷対象画像を印刷するために必要となるインク面数を、印刷画像のアスペクト比と、一面分のインクリボンで印刷可能な領域のアスペクト比とに基づいて算出する。そして、算出したインク面数以上を使用するような分割を行わないように分割線を規制し、印刷に必要となるインクリボン面数が増加しない範囲で分割線を選択可能にすると良い。ここで、分割線の規制方法としては、印刷に必要となるインク面数が増加するような分割線をユーザが指定した場合はその旨を警告して表示したり、そのような分割線での分割は指定できないようにするとよい。また、自動で分割線を算出する場合、インクリボン面数が増加しない位置の分割領域を選択することができる。また、分割線の決定後にインクリボン面数を算出して、算出した面数が印刷対象画像を印刷するのに必要なインクリボン面数の最小値でない場合は、他の分割線を選択するよう警告しても良い。
【0069】
また、本実施形態では、印刷対象画像の設定について、印刷装置400で画像データを選択してから印刷画像枠を設定し、その印刷画像枠に囲まれた画像データを抽出して設定することを例示した。しかしながら、印刷対象画像の設定については、上述した設定に限るものではない。例えば、画像データを選択してから印刷画像枠を設定せず、選択された画像データをそのまま印刷対象画像として設定してもよい。
【0070】
また、本実施形態では、インクリボンとして、次の構成のインクリボンを例示した。
・イエロー(Yellow)、マゼンタ(Magenta)、シアン(Cyan)の各インク面、印刷後の用紙を保護する為のオーバーコート(OverCost)面の4種類が一定ピッチで繰り返し形成されている。
【0071】
しかしながら、インクリボンは上記構成に限るものではなく、印刷色素を有し、予めサイズが規定された印刷面が一定ピッチで繰り返し形成されていればよい。例えば、図12に示すように、ブラック(Black)のインク面が一定ピッチで繰り返し形成されており、1種類のインク面による単色印刷を行うインクリボンI2であってもよい。
【0072】
また、本実施形態では、分割印刷を行う際の印刷処理として、インクリボンの印刷面のサイズを単位とした印刷に用いるインクリボンのインク面での印刷を全て行った後に、オーバーコート面を印刷している。しかしながら、印刷処理は、上述した印刷順序に限ったものではない。
【0073】
例えば、インクリボンの第n面のインク面を印刷した後に、その第n面のオーバーコード面を印刷し、それを複数面繰り返してもよい。より具体的には、図13に示すフローのように、S1611〜S1616により第1面のインク面とオーバーコート面の印刷を行う。次いで、S1617〜S1622により第2面のインク面とオーバーコート面の印刷を行う。
【0074】
また、本実施形態では、印刷対象画像における分割線の設定を、インクリボンの2つの印刷面サイズの面の重複領域を使うことを例として説明したが、分割線の設定はこれに限ったものではない。例えば、印刷対象画像のアスペクト比がインクリボンの2つの印刷面サイズの面を必要とするサイズではなく、第n面〜第n+3面までを必要とするサイズとして説明する。この場合も、インクリボンの印刷面の面積をW×Lとして、印刷対象画像の長辺方向の長さを、インクリボンの印刷面における長辺方向の長さに換算する。次いで、印刷対象画像の両端から、長辺方向において隙間が生じないように、且つ、印刷面サイズの面の第n面と第n+2面とが重ならないようにし、次のとおりの設定を行う。
・インクリボンの第n面領域の最大長さをL(n)max、インクリボンの第n+1面領域の最大長さをL(n+1)maxとして設定する。
・そして、L(n)max〜L(n+1)maxの重複する領域Lx(n,n+1)を分割可能領域として設定し、それ以外の領域を非分割領域として設定する。
【0075】
上述した設定により、インクリボンの第1面領域から第n面領域までの印刷対象画像の分割線を設定することができる。具体的には、分割可能領域と非分割領域の設定例を図14に示し、分割領域と非分割領域の設定を含む画像分割処理の例を図15A、図15Bに示す。
【0076】
図14に示すように、分割領域と非分割領域の設定では、L(n)max〜L(n+1)maxの重複する領域Lx(n,n+1)を分割可能領域として設定する。また、L(n+1)max〜L(n+2)maxの重複する領域Lx(n+1,N+2)を分割可能領域として設定する。また、L(n+2)max〜L(n+3)maxの重複する領域Lx(n+2,N+3)を分割可能領域として設定する。
【0077】
また、図15に示すように、分割領域と非分割領域の設定を含む画像分割処理は、図6に例示した画像分割処理と略同じであり、第1分割線を設定する前に、次のとおりに分割領域を設定することが大きく異なる。CPU401は、S1706において、印刷対象画像の中で、エッジ強度が大きいエッジをより多く含む領域を分割領域Ly(n,n+1)とし、インクリボンの第n面から第n+3面までを配置する。より具体的には、S1706では、図14の例における印刷対象画像の両端にL(n)max、L(n+3)を配置する。次いで、残りのL(n+1)max、L(n+2)maxを、強度が大きいエッジを多く含む領域が分割領域となるように配置する。これにより、エッジ強度が大きいエッジをより多く含む領域は分割可能領域として設定されることになる。
【0078】
また、本実施形態では、印刷対象画像の分割線を、インクリボンの2つの印刷面サイズの面が重複する分割可能領域Lx(1,2)の範囲で設定することを例として説明した。しかしながら、分割線の設定はこれに限るものではない。例えば、インクリボンの2つの面が重複する分割可能領域Lx(1,2)の範囲において、分割線を顔領域とエッジ強度の低い中間調領域を避けて目立たない領域に設定することが困難な場合は、分割可能領域を再設定してもよい。
【0079】
具体的には、インクリボンの使用面数を1つ増加させることで、分割可能領域を設定する際の、分割可能領域の設定位置の自由度を上げさせる。これにより、前に設定した領域以外でインクリボンの面が重複する分割可能領域を再設定し、分割線の設定を行うことができる。また、それはインクリボンの使用面数によらず適用可能である。
【0080】
より具体的には、インクリボンの使用面数を増加させて分割可能領域を設定する際の自由度を上げることが可能な印刷処理を図16に示す。また、分割可能領域を設定する際の自由度を上げることが可能な印刷処理における、分割領域と非分割領域の設定を含む画像分割処理を図17A、図17Bに示す。なお、以下の説明では、図2、図6に例示した印刷処理及び画像分割処理と異なる部分についてのみ説明する。
【0081】
先ず、図17A、図17Bに例示した画像分割処理において、図6に例示したフローチャートとの違いは、次の判断とその判断に応じた処理が含まれることである。
・図17Aに示すように、CPU401は、S2012において、エッジ検出処理の条件J1のエッジ強度閾値T1が予め設定された規定値以上であるか否かを判定する。
・また、CPU401は、S2024において、分割線端から画像短辺方向で横断するまでの最短距離を結ぶラインで分割線を延長できるか否かを判定する。例えば、最短距離を結ぶラインが顔領域やエッジ強度の低い中間調領域を横断してしまう場合は、分割線を延長できないと判定する。
・S2012及びS2024でNOの場合、CPU401は、S2013において現在必要なインクリボンの面数では画像分割が不可能であるとし、分割線の設定を消去して(S2014)、画像分割処理を終了する。
【0082】
また、図16に例示した印刷処理において、図2に例示したフローチャートとの違いは、次の判断とその判断に応じた処理が含まれることである。
・図16に示すように、CPU401は、S1909において、現在必要なインクリボンの面数で画像分割が可能であるか否かを判定する。具体的には、S1909では、前に行われた画像分割処理中のS2013により画像分割が不可能となっているか否かが判定される。
・S1909において画像分割が不可能である場合、CPU401は、S1910において、必要なインクリボンの面数を1面分増加させてS1906に処理を戻す。
【0083】
上述した処理により、インクリボンの使用面数が1つ増加されるため、分割可能領域を設定する際の設定位置の自由度を上げることができる。したがって、分割線を顔領域とエッジ強度の低い中間調領域を避けて目立たない領域に設定することが困難な場合であっても、分割可能領域を再設定し、適切な分割可能領域で分割線の設定を実行させることができる。
【0084】
上述の実施形態は、システム或は装置のコンピュータ(或いはCPU、MPU等)によりソフトウェア的に実現することも可能である。従って、上述の実施形態をコンピュータで実現するために、該コンピュータに供給されるコンピュータプログラム自体も本発明を実現するものである。つまり、上述の実施形態の機能を実現するためのコンピュータプログラム自体も本発明の一つである。
【0085】
なお、上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムは、コンピュータで読み取り可能であれば、どのような形態であってもよい。例えば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等で構成することができるが、これらに限るものではない。上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムは、記憶媒体又は有線/無線通信によりコンピュータに供給される。プログラムを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ等の磁気記憶媒体、MO、CD、DVD等の光/光磁気記憶媒体、不揮発性の半導体メモリなどがある。上述の実施形態を実現するためのコンピュータプログラムをネットワークを介してサーバから供給しても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクリボンに塗布された複数色のインクを用いて一面分の画像を連続紙に印刷する印刷手段を有し、複数面分のインクを用いて1枚の画像を連続紙上に印刷可能な印刷装置であって、
複数面分のインクリボンを用いて1枚の印刷画像を印刷する場合に、前記印刷画像を分割することにより、1面分のインクリボンにより印刷される前記印刷画像中の領域を設定する設定手段と、
前記設定手段により設定された領域に基づいて、複数面分のインクリボンを用いて1枚の印刷画像を前記印刷手段により印刷するための制御を行う制御手段とを有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記印刷画像のエッジを検出する第1のエッジ検出手段を有し、
前記設定手段は、前記エッジ検出手段により検出したエッジに基づいて、前記印刷画像を分割する分割線を設定することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷画像を印刷するのに必要となる面数を算出する算出手段とを有し、
前記設定手段は、前記算出手段により算出された面数となるように、前記印刷画像を複数の領域に分割することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記画像から人物の顔を含む顔領域を検出する顔領域検出手段を更に備え、
前記設定手段は、前記顔領域検出手段により検出された顔領域を避けて前記印刷画像を分割する分割線を設定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷画像のサイズと一面分のインクリボンで印刷可能な印刷領域のサイズに基づいて、前記印刷画像を分割する際に分割可能とする分割可能領域を決定する分割可能領域決定手段をさらに有し、
前記設定手段は、前記分割可能領域決定手段が決定した分割可能領域の中から前記印刷画像を分割する分割線を設定することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記設定手段は、ユーザからの指示に応じて分割領域を変更可能であり、
1枚の印刷画像を印刷するのに必要なインクリボンの面数が増加しない範囲で、1面分のインクリボンで印刷される前記印刷画像中の領域を変更可能とすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記設定手段は、前記印刷画像のアスペクト比と、一面分のインクリボンで印刷可能な領域のアスペクトとに基づいて、前記領域を変更可能な範囲を決定することを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記第1のエッジ検出手段は、前記分割可能領域に含まれる画像のエッジの中でエッジ強度が予め設定された閾値を満たすエッジを検出し、
前記設定手段は、前記閾値を満たすエッジによって前記印刷画像を分割するための分割線が設定できない場合、前記閾値を逓減して検出されたエッジをさらに用いて前記分割線を設定することを特徴とする請求項5記載の印刷装置。
【請求項9】
前記設定手段は、前記第1のエッジ検出手段により検出された画像のエッジを含み、且つ前記印刷画像を分割するための分割線が最短となるように当該分割線を設定することを特徴とする請求項2ないし8のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記印刷画像のサイズと一面分のインクリボンで印刷可能な印刷領域のサイズに基づいて、前記印刷画像を分割する際に分割可能とする分割可能領域を決定する分割可能領域決定手段とを有し、
前記第1のエッジ検出手段は、前記分割可能領域に含まれる画像のエッジの中で予め設定された閾値を満たすエッジ強度のエッジを検出し、
前記設定手段は、前記第1のエッジ検出手段において前記閾値を満たすエッジが検出できない場合、又は、前記第1のエッジ検出手段により検出された画像のエッジを含むように設定された前記印刷画像を分割するための分割線の終端が前記印刷画像の縁に至らない場合に、前記分割可能領域を再設定することを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記設定手段により設定された前記印刷画像を分割するための分割線を前記印刷画像に重畳させて表示するための表示手段と、を有することを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項12】
インクリボンに塗布された複数色のインクを用いて一面分の画像を連続紙に印刷する印刷手段を有し、複数面分のインクリボンを用いて1枚の画像を連続紙上に印刷可能な印刷装置であって、
複数面分のインクリボンを用いて1枚の印刷画像を印刷する場合に、1面分のインクリボンで印刷される前記印刷画像中の各領域を表示手段に表示する表示制御手段と、
前記表示手段に表示された領域を操作部材への操作に応じて変更するための変更手段と、
前記変更手段により変更された領域に基づいて、複数面分のインクリボンを用いて1枚の印刷画像を印刷するための制御を行う制御手段とを有することを特徴とする印刷装置。
【請求項13】
インクリボンに塗布された複数色のインクを用いて一面分の画像を連続紙に印刷する印刷装置において、複数面分のインクを用いて1枚の画像を用紙上に印刷するための印刷制御方法であって、
複数面分のインクリボンを用いて1枚の印刷画像を印刷する場合に、前記印刷画像を分割することにより、1面分のインクリボンにより印刷される前記印刷画像中の領域を設定する設定工程と、
前記設定工程により設定された領域に基づいて、複数面分のインクリボンを用いて1枚の印刷画像を前記印刷装置により印刷するための制御を行う制御工程とを有することを特徴とする印刷制御方法。
【請求項14】
インクリボンに塗布された複数色のインクを用いて一面分の画像を連続紙に印刷する印刷装置において、複数面分のインクを用いて1枚の画像を用紙上に印刷するための印刷制御方法であって、
複数面分のインクリボンを用いて1枚の印刷画像を印刷する場合に、1面分のインクリボンで印刷される前記印刷画像中の各領域を表示手段に表示する表示制御工程と、
前記表示手段に表示された領域を操作部材への操作に応じて変更するための変更工程と、
前記変更工程により変更された領域に基づいて、複数面分のインクリボンを用いて1枚の印刷画像を前記印刷装置で印刷するための制御を行う制御工程とを有することを特徴とする印刷制御方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載の印刷制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項16】
請求項15に記載のプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17A】
image rotate

【図17B】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2010−188627(P2010−188627A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35811(P2009−35811)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】